JP2010259402A - 風味を向上させたアレルゲン低減化乳組成物及びその製造方法 - Google Patents

風味を向上させたアレルゲン低減化乳組成物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】風味を向上させた、加水分解乳を含む乳組成物及び該乳組成物の製造方法、および該乳組成物を含む、アレルギー反応を抑制するための乳製品を提供する。
【解決手段】加水分解乳と、乳清原料を陰極と陽極を用いて通電した後に陰極側で得られる乳清処理液とを混合することにより、加水分解乳の遊離アミノ酸に由来する苦みを著しく低下させ、乳特有の風味を向上させた乳組成物を得る。この乳組成物は、アレルギー反応を抑制するために使用される。
【選択図】なし

Description

本発明は、風味を向上させたアレルゲン低減化乳組成物及びその製造方法に関する。さらに本発明は、該乳組成物を含む、アレルギー反応を抑制するための乳製品に関する。
牛乳アレルギー用乳として、タンパク質分解酵素による加水分解乳が用いられている。しかし、酵素分解によって牛乳タンパク質の10〜60%は遊離アミノ酸にまで分解されている。そのため、この遊離アミノ酸に由来する苦みが強く感じられ、乳飲用に際して大きな障害となっている。実際、牛乳アレルギー用加水分解乳を哺乳させると、生後1月の乳児では一時的な哺乳量の低下がみられ、生後7月の乳児では明らかな拒否反応が認められる(非特許文献1を参照)。乳の風味は、消化や体熱産生の機能に影響し(非特許文献2を参照)、乳児期に苦みを有する加水分解乳での哺乳を経験すると、成長後の味覚や味の嗜好にまで影響する(非特許文献3を参照)。本発明者らは、加水分解によらずに乳清タンパク質を低アレルゲン化するミルクの製造に成功している(特許文献1を参照)。特許文献1に記載の方法は、乳特有の風味が増加することが分かった。
国際公開WO2006/080424号
Mennella J.A. et al, J. Dev. Behav. Pediatr., (1996), Vol. 17, pp.386-391 leBlanc J. et al., Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord., (1997), vol.21, pp.1100-1103 Mennella J. A. et al., Early Hum Dev., (2002), vol.68, pp.71-82
このように、加水分解乳は、風味がよくなく食としての官能性に大きな問題があるために、両親や同胞にアレルギー疾患がみられるアレルギー・ハイリスク児に受け入れられていない。そこで本発明者らは、加水分解ミルクについて、低アレルゲン性を維持しつつ、乳特有の風味を増して食としての官能性を向上させることができれば、加水分解乳のニーズの高い乳アレルギー・ハイリスク児に広く受け入れられ、医療界及び食品界の発展に寄与できるのではないかと考えた。
そこで、本発明の目的は、風味を向上させた、加水分解乳を含む乳組成物及び該乳組成物の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、該乳組成物を含む、アレルギー反応を抑制するための乳製品を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を積み重ねた結果、加水分解乳と、本発明者らによって完成された加水分解によらずに低アレルゲン化した乳清原料を製造する方法(特許文献1を参照)に改良を加えて製造した乳清処理液とを混合することにより、加水分解乳の遊離アミノ酸に由来する苦みを著しく低下させ、乳特有の風味を向上させた乳組成物を得ることに成功した。また、乳清処理液の調製に用いた乳清原料はタンパク質としての構造を保っているため、上記乳組成物は、本来乳清が有する生理機能、例えば、消化管でのビタミンA、鉄分の吸収、粘膜保護、抗菌、ウイルス中和作用などの効果を奏する。本発明者らは、これらの知見に基づいて、本発明を完成させた。
したがって、本発明によれば、加水分解乳と、乳清原料を陰極と陽極を用いて通電した後に陰極側で得られる乳清処理液とを含む乳組成物が提供される。
好ましくは、乳組成物は、アレルギー反応を抑制するために使用される。
本発明の別の側面によれば、本発明の乳組成物を含む、アレルギー反応を抑制するための乳製品が提供される。
好ましくは、加水分解乳が牛乳を加水分解して得られる。
本発明の別の側面によれば、加水分解乳と、乳清原料を陰極と陽極を用いて通電した後に陰極側で得られる乳清処理液とを混合することを含む、本発明の乳組成物の製造方法が提供される。
本発明によれば、加水分解乳と通電処理した乳清処理液とを混合することによって、乳特有の風味を付加させたアレルゲン低減化乳組成物が提供される。乳清原料に直流電流で通電処理を行い、その陰極側で得られる乳清処理液は低アレルゲン化されているばかりでなく、乳特有の風味を増しており、これが加水分解乳と混じることによって、加水分解乳の苦みが著しく低下し、乳特有の風味を付加することができる。
低アレルゲン化乳はアレルギー反応を抑制するために使用することができる。ヨーロッパ小児アレルギー臨床免疫学会やヨーロッパ小児消化器・肝臓・栄養学会は、両親・同胞にアレルギー疾患がみられるアレルギー・ハイリスク児には、加水分解乳を用いた哺育を推奨している。またアメリカ小児科学会は、アレルギー・ハイリスク乳児に授乳する母親にも加水分解乳の飲用を推奨している。しかしながら、加水分解乳には乳としての風味がなく強い苦みが障害となって、予想される市場規模の割には広く飲用されるに至っていない。本発明の乳組成物や乳製品は、加水分解乳の食としての官能性を著しく向上させたものであり、アレルギー・ハイリスク乳児の成長を促しつつ、乳成分を摂取することで生じる免疫疾患、特にアレルギー反応を抑制することが期待できる。
実施例で用いた大型電気分解装置全体像(A)、白金電極および液体採取用コック部分の拡大像(B)、および冷却用シリコンチューブを装着した像(C)である。 牛乳アレルギー患者(T.Y.)の前腕内側皮膚面で、ミルク-A、ミルク-Bおよびミルク-Cを用いた時に生じたアレルギー反応の例を示した写真である。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の乳組成物は、加水分解乳と、乳清原料を陰極と陽極を用いて通電した後に陰極側で得られる乳清処理液とを含む。
加水分解乳は、乳アレルギー疾患、特に牛乳アレルギー疾患をもたらすアレルゲン性物質、すなわち、乳清タンパク質ないしカゼインタンパク質を加水分解してアレルゲン性を低減化した乳である。アレルゲン物質としては、例えば、分子量が5,000より大きいタンパク質が挙げられ、具体的には牛乳に含まれるカゼイン及びβ-ラクトグロブリンなどがある。加水分解乳の具体例は、カゼイン及び乳清原料を分子量が3,500以下になるまでに加水分解した牛乳を挙げることができる。
牛乳成分を、酸などを加えることによって沈殿するカゼイン(牛乳成分の約8割のタンパク質)と、牛乳からカゼインを除いた乳清(牛乳成分の約2割のタンパク質を含む)とに分けた場合、牛乳由来の加水分解乳は次の3種に大別できる:(1)全牛乳(カゼインおよび乳清)を加水分解したもの、(2)カゼインのみ単離して加水分解したもの、(3)乳清のみを単離して加水分解したもの。本発明の乳組成物における加水分解乳は、上記(1)〜(3)のいずれか、またはこれらを組み合わせて使用できる。また、加水分解乳は、市販品又は市販品の粉末乳を製造業者の指示に従って調整した調整乳であってもよい。加水分解乳の市販品としては、たとえば、上記(1)の加水分解乳に相当する森永乳業社のMA−mi(分子量1,000以下、上限濾過カット処理);上記(2)の加水分解乳に相当する森永乳業社のMA−1及びビーンスターク社のペプディエット(分子量1,500以下、上限濾過カット処理);並びに上記(3)の加水分解乳に相当する明治乳業社のミルフィー(分子量3,500以下、平均分子量800)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
牛乳は乳幼児にとって基本となる栄養源である。しかしながらそのアレルゲン活性は高く、わが国の食物アレルギーの原因食品としては2番目に多く報告され、乳児の2%に認められている(飯倉洋治ほか。即時型食物アレルギーの疫学。日本小児アレルギー学会誌(2002)、16巻。139−143頁)。これらの乳幼児では乳製品を摂取することによって、皮膚にじんま疹やアトピー性皮膚炎が生じたり、呼吸困難や下痢、嘔吐がおこったり、まれに意識障害がみられている(松本知明(著)。わかりやすい小児のアレルギー疾患、金芳堂出版、2003年,1−151頁)。
アレルゲン性物質を加水分解する方法は特に制限がなく、例えば、ククミシン、プラスミン、ウロキナーゼ、トリプシン、キモトリプシンなどのプロテアーゼによって、該酵素が適した条件下でアレルゲン性物質を加水分解する方法を利用することができる。
加水分解乳に含まれるタンパク質の分子量は、3,500以下であればよく、好ましくは1,000以下であり、より好ましくは800以下である。
本明細書でいう乳清原料は、乳成分を含む任意の原料を意味し、例えば、生乳(牛乳)、加工乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、脱脂乳、濃縮乳などでもよいし、これらを含有した液体、粉末を水や湯で復元した液体、これら液体の濃縮液又は希釈液等でもよい。
本発明の乳組成物に含まれる乳清処理液は、乳清原料を陰極と陽極を用いて通電した後に陰極側で得られる溶液である。乳清処理液の調製は、国際公開WO2006/080424号公報の記載を参照して実施することができる。
ただし、本発明の乳組成物において、乳清処理液は、加水分解乳の有する苦味などの風味を改善するために含まれる。したがって、上記公報では実質的に乳清タンパク質、およびその中で最もアレルゲン活性の強いβ−ラクトグロブリンをそれぞれ精製して電気分解しているが、本発明の乳組成物に含まれる乳清処理液は、適当量の脂肪成分の他に、ミネラル成分などの低分子物質を含んだ乳清原料を用いて調製することが好ましい。たとえば、乳清処理液の調製に使用する乳清原料は、市販の低脂肪乳(乳脂肪分が0.5%〜1.5%)又は無脂肪乳(乳脂肪分が0.5%未満)からカゼインを除去したものなどを用いることができ、好ましくはカゼイン除去後にエーテル等を用いた脱脂操作や透析等による低分子物質の除去操作を実施せずに得られたものである。
通電処理を行うために使用する装置としては、通常の水溶液などを電気分解するために使用される通常の電気分解装置であれば特に限定されない。イオン交換膜や中隔膜を用いた電気分解方法を用いることも可能である。例えば、適当な大きさのガラス管を2本用意し、中央部をガラス管で連結してH型とし、これを台座に設置する。左右二本の管口の下方は各々白金電極板および液体採取用ガラスコックを装着したゴムで栓する。この装置に、乳清原料を充填し、二本の白金電極(陰極及び陽極)を直列に接続した回路間に通電することができる。通電中は、装置内で発生する熱を冷却するために、ガラス管を冷却することが好ましい。通電処理後に、陰極側の液体を採取して得られるものが、乳清処理液である。
通電処理の際に用いる電極としては、白金電極以外にも、例えば陽極として、フェライト電極、白金メッキチタニウム電極などを使用することができ、陰極としてステンレス電極、白金メッキチタニウム電極などを使用することもできる。
通電は、乳清原料を2本の電極間で滞留させておくか、あるいは2本の電極間に連続して流れている状態において、直流電流を通電して行うことができる。
電流の量は、0.1A以上が好ましく、0.1〜20Aがさらに好ましく、0.5〜5Aが特に好ましい。電気伝導度、電極間の距離、温度などに応じて電流の量は適宜設定することができる。
また通電時間は、数秒〜数時間の任意の時間で行うことができるが、好ましくは1分以上3時間以内であり、より好ましくは5分以上1時間以内である。
電流及び電圧の量と通電時間を調整することにより、乳清原料に注入される全電気エネルギーを設定することができる。注入される全電気エネルギーは、10キロジュール以上が好ましく、20キロジュール以上がさらに好ましく、例えば10〜1000キロジュール、より好ましくは20〜700キロジュール、さらに好ましくは30〜600キロジュール、なおさらに好ましくは50〜500キロジュールに設定することができる。
通電処理後に、陰極側電極周囲の液体を採取して使用してもよいし、陰極側処理槽全体の液体を採取して使用してもよいが、好ましくは陰極側電極周囲の液体を採取して使用することができる。
乳組成物には、加水分解乳及び乳清処理液の他に、アレルゲン性物質ではなく、かつ乳組成物の乳本来の風味を損なうものでなければ、種々の物質を制限なく含み得る。乳組成物における加水分解乳と乳清処理液の割合(加水分解乳の容積/乳清処理液の容積)は、加水分解乳の風味が改善されており、さらに下記に示す皮膚アレルギー反応低下率が個々の被験者に対して20%以上、好ましくは30%以上であり、かつ被験者集団(n>3)に対して平均35%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上であれば特に制限されないが、好ましくは10〜0.1、より好ましくは5〜0.5である。例えば、加水分解乳と乳清処理液の割合(加水分解乳の容積/乳清処理液の容積)が1である乳組成物は、加水分解乳の風味が改善されており、さらに皮膚アレルギー反応低下率が個々の被験者に対して30%以上であり、かつ被験者集団(n=5)に対して平均50%以上である。
皮膚アレルギー反応低下率(%)は、下記の通りに求めることができる:
皮膚アレルギー反応低下率(%)=(1−(乳組成物の膨疹径−生理食塩液の膨疹径)/(無脂肪牛乳(乳脂肪分約0.4%)の乳清液の膨疹径−生理食塩液の膨疹径))×100
ここで、無脂肪牛乳の乳清液は、無脂肪牛乳を約50℃に保温して酢酸を加え、カゼインタンパク質を沈殿除去したものとして得られる。膨疹径は、乳組成物、生理食塩液または乳清液を被験者の前腕内側皮膚に約20μl滴下し、次いで小児用ブリック針などで穿刺して約20分後に表面に出現する膨疹の最大直径である。
乳組成物を調製する際の加水分解乳と乳清処理液を混合する方法は、手動による方法であっても機械的な方法であってもよく、これまでに知られている方法を制限なく用いることができる。
本発明の乳組成物を用いれば、アレルギー反応を抑制するための乳製品を製造することができる。したがって、本発明の別の側面によれば、本発明の乳組成物を含む、アレルギー反応を抑制するための乳製品が提供される。本発明の乳製品は、牛乳またはその一部を原料とし、これを加工した製品を意味し、例えばクリーム、バター、バターオイル、チーズ、アイスクリーム、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料、及び乳飲料(生乳や還元乳以外に、コーヒー抽出液や果汁などを原材料に加えた飲料)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。本発明の乳製品はアレルゲン性が低減化しており、アレルギー患者に対してアレルギー反応を抑制しつつ乳本来の栄養素を提供することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
1.乳組成物の製造方法
無脂肪牛乳(やまぐち県酪乳業KK、乳脂肪0.4%、無脂乳固形分8.6%)に直流電流で通電した。まずこの牛乳を50℃に暖めて酢酸を加え、カゼイン蛋白を沈殿させ乳清液(ホエー)を採取した。
乳清液への通電処理は、次のようにして実施した。長さ300mm、口径30mmのガラス管を2本用意し、中央部を長さ40mm、口径25mmのガラス管で連結してH型とし、これを台座に設置する。左右二本の管口の下方は各々白金電極板および液体採取用ガラスコックを装着したゴムで栓する。この装置に上記の乳清液250mlを満たし、二本の白金電極を直列に接続した回路間に通電する。ガラス管は内径2ミリのシリコンチューブでくまなく覆い、−2℃の冷却水を循環させた。
乳清液に対して最適電流値1A前後で通電する場合、電圧値は250Vとなり、乳清液の電気抵抗は約250オームであった。この条件下で30分間まで通電し、全電気エネルギー約450キロジュールまで通電した。試料は管口下方にある液体採取用ガラスコックをひねり50ml採取した。図1に通電中の装置の全体写真(A)と、管口下方の白金電極板および液体採取用ガラスコックの拡大写真(B)、ガラス管周囲をシリコンチューブで覆った写真(C)を示す。
乳清液に通電処理することによるpH、酸化還元電位(ORP)および蛋白濃度の変化を測定した。蛋白濃度はローリイ法で測定した(Fryer H. J. L., Davis G. E. Lowry protein assay using an automatic microtiter plate spectrophotometer. Anal. Biochem. (1986), vol. 153, p262-266.を参照)。陽極側でpHが低下して酸化電位が高くなり、陰極側ではpHが上昇し還元電位が高くなった(表1)。
2.皮膚テスト
乳清液のアレルゲン活性評価を、牛乳アレルギー患者に対する皮膚アレルギー反応で行った。この検査実施に当たっては、熊本大学倫理委員会の臨床研究に関する審査を受けた。熊本大学附属病院発達小児科外来を受診した牛乳アレルギー患者の中から、患者本人ないし患者両親に研究内容等についてよく説明して、同意が得られた計5名に検査を施行した。
テスト液としては、以下の3溶液(ミルク−A、ミルク−B、ミルク−C)に加え、陰性反応対照として生理食塩液を、陽性反応対照としてヒスタミン1,000倍液を用いた。
ミルク−A:牛乳カゼイン蛋白の加水分解ミルク(商品名:ペプディエット、大塚製薬KK)の15%溶液0.5mlに、乳清蛋白の加水分解ミルク(商品名:ミルフィー、明治乳業KK)の15%溶液0.5mlを混じた溶液
ミルク−B:牛乳カゼイン蛋白の加水分解ミルク(商品名:ペプディエット、大塚製薬KK)の15%溶液0.5mlに、上記乳清液に通電処理し、陰極側で採取した溶液を0.5ml混じた溶液
ミルク−C:牛乳カゼイン蛋白の加水分解ミルク(商品名:ペプディエット、大塚製薬KK)の15%溶液0.5mlに、上記乳清液0.5mlを混じた溶液
各々を前腕内側皮膚に20μl滴下して、小児用ブリック針(米国リンコリン社製)で穿刺して、20分後に表面に出現する膨疹の最大直径を測定した。なおミルク−Cに対して、ミルク−Aないしミルク−Bでの皮膚アレルギー反応が低下する割合を下記の式で求めた。
皮膚アレルギー反応低下率(%)=(1−(ミルク−Aまたはミルク−Bの膨疹径−陰性対照液の膨疹径)/(ミルク−Cの膨疹径−陰性対照液の膨疹径))×100(%)
図2には、牛乳アレルギー患者の前腕皮内皮膚面で生じたアレルギー反応の典型例を示す。ミルク−Aないしミルク−Bに対する反応が、ミルク−Cに対する反応に比べて著しく弱いことが分かる。
皮膚反応は5名の患者で測定した。ミルク−Cに比べ、ミルク−Aでは平均78%、ミルク−Bでは平均51%低下した(表2)。
3.官能試験
上記のミルク−A、ミルク−B、ミルク−Cの各々1mlを、5mlポリスチレンチューブに入れ、外側をアルミ箔で覆って溶液外観が分からないようにした。この3本を無作為に、医療従事者、専業主婦、および高校生に試飲させた。質問は、ミルクとしての風味および飲みやすさ(苦みのなさ)の2項目のみで、各々優れた方から順位をつけさせた。この順位の数を合計し、最も低い数値であったミルクを、その項目で最も優れていると判定した。
医療従事者10名、専業主婦4名、および高校生6名により試飲した結果、ミルクとしての風味ではミルク−Cが最も合計点が少なく、飲みやすさ(苦みのなさ)に関してはミルク−Bが最も合計点が少なかった。すなわち、風味は通電前の乳清(ミルク−C)が最も優れているという結果であったが、通電後に陰極側で採取した溶液(ミルク−B)との差は1点であり、ほとんど差はない。飲みやすさ(苦みのなさ)では通電処理後に陰極側で採取された乳清(ミルク−B)の方が圧倒的に優れていた(表3)。
乳清原液に直流電流を通電することによって、その陰極側で、乳としての風味を保ったままアレルゲン性を低減化した乳清処理液を得ることができる。この乳清処理液を牛乳アレルギー用乳(加水分解乳)と混合することによって、加水分解乳の乳としての風味を増加させ、かつ苦みを低減することができる。この製法によって、加水分解乳の食としての官能性を向上させることができる。この乳組成物やこの乳組成物を含む乳製品は、乳成分を摂取することで生じる免疫疾患、特にアレルギー反応を抑制することに貢献し得る。

Claims (5)

  1. 加水分解乳と、
    乳清原料を陰極と陽極を用いて通電した後に陰極側で得られる乳清処理液と
    を含む乳組成物。
  2. アレルギー反応を抑制するために使用される、請求項1に記載の乳組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の乳組成物を含む、アレルギー反応を抑制するための乳製品。
  4. 加水分解乳が牛乳を加水分解して得られる、請求項1又は2に記載の乳組成物又は請求項3に記載の乳製品。
  5. 加水分解乳と、乳清原料を陰極と陽極を用いて通電した後に陰極側で得られる乳清処理液とを混合することを含む、請求項1又は2に記載の乳組成物の製造方法。
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