JP2010234034A - 圧力式穿刺注射器 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬膜外麻酔における穿刺手技は、硬膜外腔到達確認手順を逐次行いながら術者が感覚を頼りに針を進める難度の高い手技であり、術者の熟練を要求するとともに煩雑な手順による術式時間の増加の原因ともなっている。また針を刺しすぎてしまうと硬膜内の神経を傷つけてしまう危険がある。
【解決手段】針先端で外部と通じた液室の圧力により針を進ませることにより、筋肉組織などの高圧部分では針が進行し、針先端が硬膜外腔に達して低圧となると液室の圧力が低下し、針がそれ以上進まなくなるものである。この状態でプランジャをさらに押し続けても、液体が硬膜外腔に放出されるのみで針は進行しない。そのため、術者に熟練を必要とせず安全で手早い穿刺が可能となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、体内の空隙に針先端が到達させる手技を支援する圧力式穿刺注射器に関する。特に硬膜外麻酔において好適な圧力式穿刺注射器に関する。
硬膜外麻酔は硬膜外腔に麻酔薬を投与する麻酔法であり、硬膜外麻酔を行うためには針先を硬膜外腔に到達させる穿刺手技が必要となる。このとき、硬膜外腔は数mmの奥行きの狭い空間であることに加え、針を刺しすぎると奥の硬膜の神経組織を損傷してしまうため、難度の高い手技である。
現在の一般的な手技では翼付きの針を人間が進めることで穿刺を行い、針先が硬膜外腔に達したことを確認する方法として、先端が硬膜外腔手前の黄靱帯を貫通したときの反力変化を人間が感じる方法や、針の後端開口部に水滴をつけて針を徐々に進め針が硬膜外腔に達したときに硬膜外腔の陰圧により水滴が針内部に吸い込まれる現象を確認する水滴法、そして針の後端にシリンジを装着して圧をかけたときにシリンジ内部の液体または気体が押し返されずに硬膜外腔に流入することを確認する抵抗消失法などがある。
これらの硬膜外腔到達確認を逐次行いながらの穿刺術式は、術者の熟練を要求するとともに、煩雑な手順による術式時間の増加の原因ともなっている。
そこで、例えば、加速度センサーを麻酔針に搭載し、針先が靭帯を突き破って腔に達するときの速度の変化、即ち穿刺クリック感を検出することで、熟練度の低い術者に穿刺感覚を伝えることができるとしている技術が知られている(特許文献1参照)。
特開2004−313672号公報
しかしながら、特許文献1記載の穿刺クリック感検出装置は針先の目標到達を術者に知らせるための装置であり、術者がそれに気づかずさらに針を進めようとすれば針を刺しすぎてしまう危険性がある。また、術者が慎重に針を進めることによって速度が小さくなれば、速度の変化もより小さくなり、加速度による検出は困難になる。したがって、依然として、術者には相当の熟練度が要求されているという問題があった。
そこで、本発明は、上記の問題を鑑みて、発明者らの鋭意研究の結果なされたものであり、術者に相当な熟練度を要せずに、針の刺しすぎの危険性や針先の目標到達の検出および感知を容易とする圧力式穿刺注射器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、次の発明が提供される。すなわち、筒状の外筒部と、前記外筒部と気密性を保ちながら移動することのできるプランジャと、中空針ないし針取付部とを有する注射器であって、前記外筒部と気密性を保ちながら移動することのできる移動子を備え、前記中空針ないし針取付部が前記移動子に固定され、前記外筒部と前記プランジャと前記移動子で囲まれた液室が構成され、前記液室の内部の圧力によって前記移動子が移動するように配置され、前記液室が前記中空針ないし針取付部の先端で外部への開放端を有していることを特徴とする圧力式穿刺注射器である。
本発明によれば、術者に相当な熟練度を要せずに、針の刺しすぎの危険性や針先の目標到達の検出(感知)を容易とした、安全で手早い穿刺が可能な圧力式穿刺注射器が提供される。
本発明の第1の実施形態を模式的に示す断面図 本発明の第2の実施形態(狭隘部付外筒)を模式的に示す断面図 本発明の第3の実施形態(内径差付外筒)を模式的に示す断面図 本発明の第4の実施形態(分割式外筒)を模式的に示す断面図 本発明の第5の実施形態(中空針と針取付部とが別体式)を模式的に示す断面図
以下、添付の図面を参照しながら本発明についてより具体的に説明する。図1は本発明の第1の実施形態を模式的に示す断面図である。図1において、Aは本発明の圧力式穿刺注射器を示している。1は外筒部を、2はプランジャを示している。外筒部1とプランジャ2はゴムなどで接し、気密性を保ちながら相互に移動することができる。3は移動子を示し、外筒部1と移動子3はゴムなどで接し、移動子3は気密性を保ちながら外筒部1に沿って滑らかに移動することができる。4は中空針(以下、「針」と表記する場合がある)を示し、移動子3に固定されているか、移動子3上に設けられたルアーロックなどの接続部に固定され、一体となって移動する。外筒部1とプランジャ2と移動子3とで囲まれた空間が液室11であり、液室11は移動子3と中空針4を通じて針先端で外部と通じている。
図1の実施形態の注射器を用いて、穿刺を行う手順を説明する。まず液室11に水や生理食塩水、麻酔薬などの液体を充填する。次に外筒部1や中空針4を持って針先端を皮膚に穿刺する。次にプランジャ2を押すと液室11内の圧力が高くなり、移動子3が圧力に押されて進み中空針4が穿刺されていく。なお、液室11には、空気などの気体を充填してもよい。
そして、図示していないが、針先端が進み硬膜外腔に達すると、硬膜外腔の内圧が低いため液室11内部の圧力が解放され低くなり、移動子3ならびに中空針4が進行しなくなる。プランジャ2を押しても移動子3が移動しないことを確認したら、そこでプランジャ2を押すことを止める。この状態で、もしプランジャ2をさらに押し続けても、液体が硬膜外腔に放出されるのみで針は進行しない。
すなわち、本発明の基本原理は、針先端で外部と通じた液室内の圧力で針を進ませることにより、筋肉組織などの高圧部分では針が進行し、低圧部分である硬膜外腔に針先端が達すると液室圧力が低下し、針がそれ以上進まなくなるのである。
図2は、本発明の第2の実施形態(狭隘部付外筒)を模式的に示す断面図である。図2の実施形態例について説明する。なお、図2の各符号は図1と基本的に共通であるが、5については狭隘部を示している。この狭隘部5は、外筒部1の内壁から内側に出た突起物などによって構成されており、移動子3またはプランジャ2の少なくとも一方の移動範囲を限定する。
まず、移動子3が狭隘部5でプランジャ2側に移動しない位置にセットしておき、中空針4先端が液体中にある状態でプランジャ2を引くことによって、移動子3は移動せず、中空針4を通じて液体が吸い込まれ、液室11に液体を充填することができる。また、針先端を皮膚に穿刺する際、移動子3が狭隘部5にあたることで移動子3が押し返されず外筒部1を持って穿刺することが可能である。その後、プランジャ2を押したときの動作は第1の実施形態の動作と同様である。
図3は、本発明の第3の実施形態(段差付外筒)を模式的に示す断面図である。図3の実施形態例について説明する。なお、図3の各符号は図1と基本的に共通であるが、6は移動子3と移動範囲とプランジャ2の移動範囲とで液室11の断面積が異なるように外筒部1の内側に設けられた段差部を示す。このとき外筒部1の断面積は、移動子3側が大きくてもプランジャ2側が大きくても良い。プランジャ2の力は液室11内の圧力を通じて移動子3に伝わるため、プランジャ2側の断面積が小さいときは軽い力でプランジャ2を押すことができ、プランジャ2側の断面積が大きいときは大きな反力で反力の変化を明確に感じ取りながらプランジャ2を押すことができる。基本的な操作および動作は第1の実施形態の操作および動作と同様である。
図4は、本発明の第4の実施形態(分割式外筒)を模式的に示す断面図である。図4の実施形態例について説明する。なお、図4の各符号は図1と基本的に共通であるが、7はプランジャ側分割外筒を示し、8は移動子側分割外筒を示す。プランジャ側分割外筒7と移動子側分割外筒8とは、例えばルアーテーパやルアーロックのような気密を保つ結合部(図示せず)で結合されている。そして、プランジャ側分割外筒7と移動子側分割外筒8とが分割されていることにより、プランジャ側分割外筒7に液体をあらかじめ充填した状態で移動子側分割外筒8と結合することができる。プランジャ側分割外筒7と移動子側分割外筒8とを結合した状態で、基本的な操作および動作は第1の実施形態の操作および動作と同様である。
また、プランジャ側分割外筒7と移動子側分割外筒8との間は、パイプや可とう性のチューブなどで連結されていても良い。これにより液室11の容量を大きくせずに、プランジャ2と移動子3の距離を離すことができる。また移動子側分割外筒8によって針の進む方向を定め、それとは独立にプランジャ2の押しやすい方向にプランジャ側分割外筒7を向けることができる。
さらに、プランジャ側分割外筒7と移動子側分割外筒8との間において、図には示していないが、栓、弁があってもよい。これにより、使用しない時の誤動作を防ぐことができる。また液体の逆流を防ぐことができる。液体充填を分岐から行うことができる。またプランジャ側分割外筒7の液室容量が足りない時に、分岐からプランジャ側外筒7を追加することがすることができる。
さらに、プランジャ側分割外筒7と移動子側分割外筒8との間において、図には示していないが、分岐があってもよい。これにより、液体充填を分岐から行うことができる。またプランジャ側分割外筒7の液室容量が足りない時に、分岐からプランジャ側外筒7を追加することがすることができる。
図5は、本発明の第5の実施形態(中空針と針取付部とが別体式)を模式的に示す断面図である。図5の実施形態例について説明する。図5の各符号は図1と基本的に共通であるが、31については移動子3と一体的に固定されている針取付部を示し、41は脱着式中空針を示す。このように、針を脱着式とすることで、穿刺後に針を刺したまま注射器を取り外し、カテーテルを留置する手技に用いることができる。また、必要に応じて針のサイズを適宜に変更することができ、また、破棄する際には分別が容易となる。また、現在流通しているルアーテーパなどの規格に合わせて針取り付け部を設計することで、現行の中空針を使用することができる。針の装着には、矢印に示すように差し込めばよい。使用後、針を外す際には、矢印方向とは逆方向に引き抜くようにすればよい。基本的な操作および動作は第1の実施形態の操作および動作と同様である。
本発明の圧力式穿刺注射器は、原理的に硬膜外腔より先には針が進まない仕組みであるため、より安全に穿刺を行うことが可能である。また術者に必要とされる習熟訓練を低減することができる。また確認手順が簡潔になるため術式時間を短縮することができる。
A 圧力式穿刺注射器
1 外筒
11 液室
2 プランジャ
3 移動子
31 針取付部
4 中空針
41 脱着式中空針
5 狭隘部
6 段差部
7 プランジャ側分割外筒
8 移動子側分割外筒

Claims (3)

  1. 筒状の外筒部と、前記外筒部と気密性を保ちながら移動することのできるプランジャと、中空針ないし針取付部とを有する注射器であって、
    前記外筒部と気密性を保ちながら移動することのできる移動子を備え、
    前記中空針ないし針取付部が前記移動子に固定され、
    前記外筒部と前記プランジャと前記移動子で囲まれた液室が構成され、
    前記液室の内部の圧力によって前記移動子が移動するように配置され、
    前記液室が前記中空針ないし針取付部の先端で外部への開放端を有していることを特徴とする圧力式穿刺注射器。
  2. 前記外筒部の内側に、前記移動子の移動範囲を制限する狭隘部、または前記移動子と前記プランジャの移動範囲で前記液室の断面積が異なるような段差部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧力式穿刺注射器。
  3. 前記外筒部が、分割式であることを特徴とする請求項1記載の圧力式穿刺注射器。
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