JP2010229350A - 水溶性ポリアニリン、その製造方法、およびエレクトロクロミック素子 - Google Patents

水溶性ポリアニリン、その製造方法、およびエレクトロクロミック素子 Download PDF

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純 青木
Maiko Yoshida
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Abstract

【課題】水溶性のポリアニリンを製造する新規な方法、それによって得られた水溶性ポリアニリン、および水溶性ポリアニリンの溶液から成膜された膜を電極として用いてなるエレクトロクロミック素子を提供する。
【解決手段】水溶性アニオンポリマー溶液中においてアニリンモノマーを化学酸化重合させることで生成したカチオン性のポリアニリンとポリイオン複合体を形成することにより水溶性ポリアニリンを製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、水溶性ポリアニリン、その製造方法、および水溶性ポリアニリンの溶液から成膜された膜を電極として用いてなるエレクトロクロミック素子に関するものである。
ポリアニリンは導電性高分子として電池やコンデンサなどに用いられ、さらに有機エレクトロニクス分野への応用が期待されている。しかし、ポリアニリン自身は不溶不融な材料のため適用できる用途が限られてきた。
ポリアニリンの水への可溶化の方法としてポリアニリンを水に可溶なスルホン酸基を用いて修飾する誘導体化法が報告されている(特許文献1参照)。他には、ポリアニリンをポリエチレングリコールと混合することで水に分散させる方法も報告されている(特許文献2参照)。
特開08−120167号公報 特開10−60108号公報
特許文献1に記載のものでは、ポリアニリン自身の電気特性、エレクトロクロミック特性も変わってしまう欠点がある。特許文献2に記載のものでは、酸性条件にするためさらにスルホン酸誘導体を添加する必要があり、三成分の割合を制御しなければならない。
本発明は上記点に鑑みて、水溶性のポリアニリンを製造する新規な方法、それによって得られた水溶性ポリアニリン、および水溶性ポリアニリンの溶液から成膜された膜を電極として用いてなるエレクトロクロミック素子を提供することを目的とする。
本発明では水溶性アニオンポリマー溶液中においてアニリンモノマーを化学酸化重合させることで生成したカチオン性のポリアニリンとポリイオン複合体を形成することにより水溶性のポリアニリンを新規に製造した。
その水溶性ポリアニリン溶液からポリアニリン膜を成膜し、エレクトロクロミック素子へ応用した。
水溶性アニオンポリマーとカチオン性ポリアニリンとのポリイオン複合体を形成することにより、水に不溶性のポリアニリンを可溶化した。それによりポリアニリン膜への成膜を容易にすることができた。
本発明は上記の検討を基になされたもので、請求項1に記載の発明では、ポリアニリンとポリスチレンスルホン酸とを組み合わせてなる水溶性ポリアニリンを特徴とし、請求項2に記載の発明では、水溶性アニオンポリマー溶液中においてアニリンモノマーを化学酸化重合させることで生成したカチオン性のポリアニリンとポリイオン複合体を形成することにより水溶性ポリアニリンを製造する方法を特徴とし、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の水溶性ポリアニリンの溶液から成膜された膜を電極として用いてなるエレクトロクロミック素子を特徴とする。
水溶性PANI/PSSの化学構造を示す図である。 水溶性PANI/PSS溶液のUV−vis吸光度スペクトルを示す図である。 PANI/PSS膜の電気化学的挙動を示す図である。 表示極および対向極共にPANI/PSS膜からなるECデバイスの電流−電圧曲線を示す図である。 ECデバイスの表示極のPANI/PSS膜の透過スペクトルを示す図である。 エレクトロクロミックスイッチングしたときの透過率の変化を示す図である。
水溶性ポリアニリン(PANI)/ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PSS)がPPS溶液中での化学酸化重合により調製された。そのPANI/PSSスピンキャスト膜の電気化学的、分光学的およびエレクトロクロミック(EC)挙動が検討された。ECデバイスは表示極および対向極の両電極上に修飾されたエメラルデン(ES)状態のPANI/PSS膜から構成されている。ESは酸化および還元でき、それぞれペルニグラニン(PS)およびルコエメラルデン(LES)になるので、各々の反応が両電極上で起こり、0.8Vという低い駆動電圧が達成された。表示極の色はバイアスゼロでは緑色を示し、バイアスによって暗青色に変わる。コントラストや応答時間などのEC特性が調べられた。
(緒言)
導電性高分子は導電性、電荷蓄積、半導体挙動やエレクトロクロミック現象などの魅力的な特徴をもっているため有機光・電子デバイスへの応用が期待されている。エレクトロクロミック挙動は導電性高分子の酸化還元状態に対応する色の変化のために起こる。導電性高分子は一般に表示極上に修飾され、導電性高分子の電気化学的酸化および還元によって色変化が起こる。しかしながら、逆反応がエレクトロクロミック挙動の可逆性を補償するために対向極上で必要とされる。
本発明者等はポリアニリン(PANI)がこの要求に適していると考えた。それはポリアニリンが三つの酸化還元状態すなわち、完全還元したルコエメラルデン(LES)、部分酸化したエメラルデン(ES)および完全酸化したペルニグラニン(PS)をとることができるためである。さらに、PANIの三つの酸化還元状態は異なる色すなわち、黄緑(LES)、緑(ES)、暗青色(PS)を示すことが知られているためである。そのため、PANIのES状態が表示および対向極として使うことにより駆動電圧は無修飾の対向電極の場合に比べて低くすることができる。PANIは最もよく研究されている導電性高分子のひとつであり、それは化学的重合や電気化学的重合が容易であり、化学的に安定で安価なためである。
しかしながら、PANIはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)やギ酸などの溶媒以外の一般的な溶媒に不溶不融のため加工性に乏しい。有機溶媒や水溶液へPANIを溶解させる試みが多くの研究者によって行われている。
最近、本発明者等はPANI/ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)ポリイオン複合体がクロロホルムに溶解し、LB膜を形成し、EC特性を有することを報告した。本発明では、水溶性ポリアニリンがPSS溶液中でのアニリンモノマーの化学酸化重合によって調製された。水溶性PANI/PSSは有機溶媒に可溶なポリアニリン誘導体に比べ環境に適していると考えられる。電気化学的、分光学的キャラクタリゼーションがサイクリックボルタンメトリーとUV−vis吸光分光法によって行われた。さらに、表示極および対向極の両電極上にPANI/PSS膜を修飾したECデバイスが作製された。そのPANI/PSS膜からなるECデバイスは分光電気化学によって検討された。
水溶性PANI/PSS溶液は2.5mmolのポリ(4−スチレンスルホン酸)を含む33mMの塩酸溶液中にて2.72mmolのペルオキソ二硫酸アンモニウムを酸化剤として0℃にて2.52mmolのアニリンの化学酸化重合によって調製された。これにより、図1に示す水溶性PANI/PSSを得た。
ITO電極上へのPANI/PSS膜は500rpmで水溶性PANI/PSS溶液をスピンコーティングすることで調製された。UV−vis吸光スペクトルと電気化学スペクトロスコピーは日立U−2800スペクトロメターで測定された。サイクリックボルタンメトリーはITO電極上のPANI/PSS膜を作用電極し、銀電極を参照電極としまた白金線を対極とした三極式セルで0.1Mテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェイト(TBNPF6−)を電解質とした50mMの硫酸を含むアセトニトリル(AcCN)溶液中で行われた。電流−電圧測定が表示極および対向極にITO上のPANI/PSS膜からなる二極式セルで行われた。電気化学スペクトロスコピーはECデバイスを石英セル中に挿入して行われた。
(結果及び考察)
酸化剤の添加後重合溶液の色は10分以内に徐々に明緑色へ変わっていき40分後には暗緑色になった。反応溶液は粘性溶液となったが沈殿物は生じなかったことから水溶性のPANI/PSSポリイオン複合体が形成された。不溶性のPANIポリカチオンと水溶性のPSSポリアニオン間のポリイオン複合体の形成によってPANI/PSSは水に可溶にすることができる。
水溶性PANI/PSS溶液のUV−vis吸光度スペクトルを図2に示す。水溶液中のPANI/PSSのスペクトルは三つの典型的な吸収バンドを750,430および350nmに示す。それぞれポーラロン遷移とπ−π遷移に相当し、PANIの電子状態がエメラルデン塩であることを示している。
次にPANI/PSS膜はITO電極上に水溶性PANI/PSS溶液をスピンコーティングして調製した。その膜は緑色の均一な膜となった。膜は水に可溶であるがAcCNには不溶である。そのため、PANI/PSS膜の電気化学的挙動は図3に示したように50mM硫酸を含む0.1M TBNPF6−のAcCN溶液中でサイクリックボルタンメトリーによって検討された。そのボルタモグラムはPANI/PSS膜の開路電位が0.55V vs Ag/Agとなり、ES状態であることを示している。
また、波形は表面吸着波となっており、PANI/PSS膜がAcCN溶液中でITO電極上で安定に存在していることを示唆している。実際、ピーク電流は電位走査速度の平方根には比例せず、電位走査速度の一次に比例した。ボルタモグラムは三つの酸化電流ピークが0.52,0.74および0.88V vs Ag/Agに現れた。それらはLES/ES,中間体ES,ES/PS酸化還元対に帰属する。ボルタモグラムの形は電位走査の繰り返しによっても変化しないことから、PANI/PSS膜が電気化学的に可逆であり、安定な膜であることを明らかにした。
表示極および対向極共にPANI/PSS膜からなるECデバイスが0.8Vという低い電圧で動作することを見出した。電流−電圧曲線(図4)はキャパシターのような充電および放電挙動を示している。充電電流は表示極でのESからPSへの酸化反応と対向極でのESからLESへの還元反応に起因している。その結果、表示極の色は緑から暗青色へ変わる。放電電流は表示極でのPSからESへの還元反応と対向極でのLESからESへの酸化反応に起因している。そのため、表示極の色は暗青色から緑色へ変わる。
一方、裸ITO電極では充電電流はほとんど流れない。これは電極上に酸化還元種が無いためである。対向極に裸ITO電極を用いたECデバイスでは1.8Vの駆動電圧が必要であった。対向極にPANI/PSS膜と裸ITO電極を用いたときの駆動電圧のこの大きな違いは逆反応が対向極で補償されているかどうかによる。逆反応であるESからLESへの還元反応はPANI/PSS膜の存在によって小さな過電圧で起こることができる。一方、裸ITO電極ではAcCN溶媒や電解質の還元反応やインジウムオキサイドの還元析出などの還元反応を起こすために大きな過電圧が必要となる。
バイアス電圧0及び0.8VでのECデバイスの表示極のPANI/PSS膜の透過スペクトルを図5に示す。ゼロバイアスでのECデバイスのスペクトルでは二つの典型的な吸収バンドが430および750nmに見られ、それぞれπ−π*遷移およびポーラロン遷移に帰属される。ECデバイスに0.8Vのバイアス電圧が印加されると、750nmの吸収ピークは660nmへブルーシフトし、430nmの吸収は減少する。0.8Vのバイアス電圧で得られたスペクトルからはポリアニリンは完全には酸化していないが、エメラルデン塩よりもより酸化状態となっている。ECデバイスの色変化は0Vの緑色から0.8Vの暗青色へ変わる。エレクトロクロミックスイッチング特性を検討するため、透過率変化が36%と最大となる637nmの波長が選ばれた。エレクトロクロミックスイッチングは10秒ごとに0Vと0.8Vのステップ電圧を印加したときの透過率の変化を測定することで行った。(図6)透過率応答の形はほぼステップ電圧のそれと等しくなった。このスイッチングはステップ電圧のサイクルごとに透過率変化がほとんどなく極めて安定である。最大透過率変化の90%となる応答時間は約2秒となり、かなり速いことが分かった。
(結論)
PSS溶液中での化学酸化重合により水溶性ポリアニリンを調製した。表示極および対向極の両電極にPANI/PSS膜を使ったECデバイスは0.8Vという低い駆動電圧で動作し、可逆であることを実証した。エレクトロクロミック特性は36%の透過率変化、応答速度2秒と求まった。この水溶性PANI/PSSはEC材料の一つの候補として期待できる。
また、本発明における水溶性アニオンポリマーがポリスチレンスルホン酸であり、ポリアニリンを水溶性にすると共に溶液の酸性を保つ働きもある点において優れている。また、ポリアニリンを用いたエレクトロクロミック素子に関する報告(特開07−128692号公報)があるが、対向極は裸ITO電極用いているため動作電圧が2V必要であった。しかし、本発明では対向極にも水溶性ポリアニリン膜を用いることで動作電圧が0.8Vと半分以下にすることができた。

Claims (3)

  1. ポリアニリンとポリスチレンスルホン酸とを組み合わせてなる水溶性ポリアニリン。
  2. 水溶性アニオンポリマー溶液中においてアニリンモノマーを化学酸化重合させることで生成したカチオン性のポリアニリンとポリイオン複合体を形成することにより水溶性ポリアニリンを製造する方法。
  3. 請求項1に記載の水溶性ポリアニリンの溶液から成膜された膜を電極として用いてなるエレクトロクロミック素子。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017151460A (ja) * 2017-04-17 2017-08-31 株式会社ニコン 撮像装置
CN113564655A (zh) * 2021-07-15 2021-10-29 浙江大学 电沉积聚苯胺-聚苯乙烯磺酸的铵离子检测电极、制备方法和应用

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