JP2010208991A - リンパ管の安定化剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】リンパ管の安定化を図り、リンパ管の回収機能を維持・亢進するのに有効な薬剤の提供。
【解決手段】アペリンを含んで成るリンパ管の安定化剤。
【選択図】図4

Description

本発明はアペリンを含んで成るリンパ管の安定化剤、さらには皮膚細胞における内因性アペリンの発現を指標としてリンパ管安定化剤のスクリーニング方法を提供する。
血液は、心臓から送り込まれて毛細血管・静脈を経て心臓へもどる。この血管系とは別個に組織液の排水路を形成するものがリンパ管である。リンパ管は、末梢組織で血管から漏出した間質液、タンパク質、脂肪、細胞などを血管系へと環流することにより血液量を一定に保ち、閉鎖循環系を維持する。皮膚に存在する毛細血管では、内皮細胞の外側を基底膜が取り囲み、さらに周皮細胞が付着している。一方、毛細リンパ管では、内皮細胞の外には基底膜がほとんどなく、周皮細胞の付着もない。この構造が、効率よく間質から体液や細胞を取り込むために役立っている(実験医学 Vol. 24, No18 (2006), pp. 133-138)。これまでに、チロシナーゼ型受容体 VEGFR (血管内皮成長因子受容体)-3 がリンパ管内皮細胞に特異的に発現することが示され、そのリガンドである VEGF-C および VEGF-D がリンパ管の新生を誘導することが示された。また、最近、血管安定化因子としてしられる アンジオポエチン-1 (Ang1) がリンパ管内皮細胞に発現する受容体 Tie2 (Ig及び EGF ホモロジードメインを有するチロシンキナーゼ)を介して、VEGF-A はリンパ管内皮細胞に発現する VEGFR2 を介してリンパ管新生を誘導していることが明らかになった(Jussila L and Alitalo K, (2006) Vascular growth factors and lymphangiogenesis. Phisiol Rev 82:673-700)。また、リンパ管の機能に関しては、以下の報告がある。VEGF-A を発現するアデノウイルスを感染させたマウス耳では、顕著なリンパ管新生が見られたが、構造的な異常とともに、コロイダルカーボンを耳に注入した実験から、リンパ管の回収機能も顕著に阻害されていることが明らかになった(Nagy et al., (2002) Vascular permeability factor/ vascular endothelial growth factor induces lymphangiogenesis as well as angiogenesis. J Exp Med 196: 1497-1506)。つまり、リンパ管の機能にはリンパ管内皮細胞が適切に配置して裏打ちされていることが必要であると考えられる。これをわれわれは“リンパ管の安定化”と定義する。
皮膚に対する物理的あるいは化学的刺激は血管新生や VEGF-A などによる血管透過性を誘導して、この結果組織液の貯留と浮腫が生じる。一方で、これらの刺激は直接的にリンパ管の新生・拡張を誘導することも知られている。これまでに、紫外線炎症によってリンパ管の拡張が観測され、染料を注入した実験からリンパ管の機能が障害されていることが明らかになった。血管拡張に伴う水分の真皮内への漏出にともない、リンパ管は拡張して間質液を回収しようとしていると考えられる。しかしながら、過剰なリンパ管の拡張はその回収機能を逆に低下させ浮腫を遅延していると考えられた(Kajiya K., Hirakawa S., and Detmar M., (2006) VEGF-A mediates UVB-induced impairment of lymphatic vessel function. Am J Pathol 169: 1496-1503)。つまり、組織間液の速やかな回収には、リンパ管の過剰な拡張を誘導しないような“リンパ管の安定化”が必要であると考えられる。
これまでに、リンパ管の機能不全が関与する病態としては、先天性リンパ浮腫とともに、フィラリア、手術、悪性腫瘍、炎症にともなう二次性のリンパ浮腫、が知られている。先天性のリンパ浮腫としてはミルロイ病、メージュ病、リンパ浮腫−睫毛重生(lymphedema-distichiasis)症候群がある。ミルロイ病ではリンパ管の無形成や低形成が報告され、一方でリンパ浮腫−睫毛重生症候群ではリンパ管の過形成が報告されている。これらからも、リンパ管の新生だけではなくリンパ管の安定化によって回収機能を保持することが必要であると考えられる(実験医学 Vol. 24, No18 (2006), pp. 139-143)。
アペリンは、1998年に、長らくオーファン受容体であった7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体であるAPJに対する結合因子として牛の胃の細胞抽出液から単離された分子である。アペリンの cDNA は77アミノ酸をコードするが、この前駆体からロング・フォーム(42〜77アミノ酸)とショート・フォーム(65〜77アミノ酸)が形成される。どちらのアペリンもAPJの活性化を誘導することが知られている。これまで、心血管系や中枢神経系で、APJの発現が報告されてきており、心臓では心筋収縮作用、神経系ではバソプレシンの発現を制御するなど、体液の調節機構に関与することが示唆されてきている。また、APJはエイズウイルスの受容体として感染にも関与することから、種々の観点からの創薬のターゲットとしてにわかに注目を浴びつつある受容体である。APJの発現は、血管系においては、血管内皮細胞や壁細胞に発現するとされてきており、アフリカツメガエルを用いた遺伝子ノックダウンの実験にて、アペリン/APJシステムが血管発生に必須の役割を果たすことが示され、またマウスやヒトにおいても本受容体の発現が内皮細胞に認められることから、哺乳類においても血管形成に関与することが予想されてきた(実験医学 Vol. 26, No.9(2008), pp. 1380-1383)。また、近年、アペリンのノックアウトマウスの解析や、試験管内での血管系解析を通して、血管内皮細胞がAng1で刺激を受けた際に分泌するアペリンが血管径を制御することが報告されている(Kidoya et al, (2008) Spatial and temporal role of the apelin/APJ system in the caliber size regulation of blood vessels during angiogenesis. EMBO J 27: 522-534)。
しかしながら、これまでに、アペリンが皮膚リンパ管の機能安定化に関与することについては何ら明らかになっていない。
実験医学 Vol. 24, No18 (2006), pp. 133-138 Jussila L and Alitalo K, (2006) Vascular growth factors and lymphangiogenesis. Phisiol Rev 82:673-700 Nagy et al., (2002) Vascular permeability factor/ vascular endothelial growth factor induces lymphangiogenesis as well as angiogenesis. J Exp Med 196: 1497-1506 Kajiya K., Hirakawa S., and Detmar M., (2006) VEGF-A mediates UVB-induced impairment of lymphatic vessel function. Am J Pathol 169: 1496-1503 実験医学 Vol. 24, No18 (2006), pp. 139-143 実験医学 Vol. 26, No.9(2008), pp. 1380-1383 Kidoya et al, (2008) Spatial and temporal role of the apelin/APJ system in the caliber size regulation of blood vessels during angiogenesis. EMBO J 27: 522-534
本発明の課題は、リンパ管の安定化を図り、リンパ管の回収機能を維持・亢進するのに有効な薬剤の提供にある。
このたび、本発明者は、ウエスタンブロッティング法によって、ヒトリンパ管内皮細胞(以下、LEC)においてアペリンの受容体であるAPJが発現していることを確認した。また、リガンド活性を有するアペリン13、及び36でLECに刺激を負荷したところ、LECによる管腔形成が観察された。さらに、アペリンを表皮で高発現する遺伝子を導入したマウスに紫外線照射した場合には、野生型マウスと比較してリンパ管の透過性、及び拡張が有意に抑制されたことを確認した。これらの結果は、アペリンがリンパ管機能の安定化に寄与することを示すものである。
リンパ管は、皮膚では真皮内に存在し、不要な水分や老廃物を回収して排出する機能を有する。かかるリンパ管の機能は、紫外線照射等の物理的あるいは化学的刺激を受けるとリンパ管が拡張し脆くなることによって損なわれることが知られており、その結果、不要な水分や老廃物が真皮内に蓄積されることよって、浮腫、むくみ等の皮膚の炎症の原因になるものと考えられる。
したがって、本願は以下の発明を包含する:
1.アペリンを含んで成るリンパ管の安定化剤。
2.むくみを改善又は予防するための1のリンパ管の安定化剤。
3.1のリンパ管の安定化剤を適用することからなる、むくみを改善又は予防するための美容学的方法。
4.リンパ管の安定化剤をスクリーニングする方法であって、皮膚細胞における内因性アペリンの発現を亢進する薬剤をリンパ管の安定化剤として選定することを特徴とする方法。
本発明に係るリンパ管の安定化剤を使用することにより、むくみ等の改善・予防が可能となる。
SDS−PAGEによるヒト微小血管内皮細胞(以下、HMVEC)及びLECにおけるAPJの発現を示すウエスタンブロッド写真である。 LECにおける管腔形成を示す光学顕微鏡写真図である。 管腔の大きさとアペリン濃度の関係を示すグラフである。 アペリン表皮高発現マウス及び野生型マウスにおいて、エバンスブルーにより可視化したリンパ管の状態を紫外線照射後0、5、15分後に観察し、撮影した画像に基づく透過性を数値化したグラフである。 紫外線を照射したアペリン表皮高発現マウス及び野生型マウスにおけるリンパ管及び血管染色を示す写真である。 紫外線照射前後におけるアペリン表皮高発現マウス及び野生型マウスのリンパ管及び血管の大きさを定量的に示すグラフである。
ヒトアペリンは、心臓、肺、腎臓、脂肪、胃、脳、副腎、内皮など様々な部位での発現が報告されており、77アミノ酸の前駆タンパク質に由来する以下の36アミノ酸から成るアペリンAPJ受容体のリガンドとして知られる(Kawamata Y et al, (2001) Molecular properties of apelin: tissue distribution and receptor binding. BIOCHIMICA ET BIOPHYSICA ACTA. 2-3:162-171)。また、アペリンには、そのアミノ酸がN末端及び/又はC末端が欠落した変異体、例えばアペリン−13(アペリンの第24〜36番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド)なども知られ、よって本明細書において「アペリン」という場合、36アミノ酸から成る全長ヒトアペリンに限らず、アペリンの活性を有する限り、その1または数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアペリン変異体、並びにこれらのフラグメントも包含する。また、アペリンには、ヒト由来のみならず、ヒト以外の霊長類や、ラット、マウス、ウサギなどといったげっし動物由来のものも含まれる。さらに、本明細書でいうアペリンをコードする遺伝子とは、アペリンをコードする遺伝子の他に、その1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたものであってアペリン活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子、さらにはアペリンをコードする遺伝子に対し高ストリンジェント条件下でハイブリダイズするものであってアペリン活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を含む。ここでいう「アペリン活性」とは、アペリンがその受容体であるAPJに結合することによって、細胞内シグナル伝達分子であるAktをリン酸化することや、細胞内のcAMP濃度を減少させることとして定義される。なお、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、例えばナトリウム濃度が約10〜40mM、好ましくは約20mM、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃であることを含む条件をいう。
APJ受容体は、AGTRL1(アンジオテンシン受容体様1)とも称され、GPCRの1つであり、380のアミノ酸から成る。この膜貫通領域は、アンジオテンシン(AT1)受容体と40〜50%の相同性を示す。アペリン/APJシグナルは、血管ではANG1/Tie2の下流シグナルであり、心筋の収縮や、血圧及び血流、並びに血管形成に関与することが報告されている(Kidoya et al, (2008) Spatial and temporal role of the apelin/APJ system in the caliber size regulation of blood vessels during angiogenesis. EMBO J 27: 522-534等)。
上述のとおり、アペリンによるリンパ管機能安定化効果はこれまでに何ら明らかになっていない。本発明は、アペリンがリンパ管機能安定化作用を有する、という驚くべき知見に基づくものである。
したがって、本発明の1実施態様において、アペリンを含有するリンパ管の安定化剤を提供する。
本発明に係るリンパ管安定化剤はリンパ管の構造の不安定化を原因とするリンパ液の漏出による様々な皮膚疾患、例えば浮腫(むくみ)の治療・予防に有効な医薬品または化粧品として利用できる。浮腫には、例えば紫外線照射、フィラリア、手術、悪性腫瘍、炎症にともなう二次性のリンパ浮腫や、先天性リンパ浮腫、例えばMilroy病、Meige病、lymphedema-distichiasis症候群がある。
本発明に係るリンパ管安定化剤はまた、むくみや目袋の軽減・予防のための美容学的方法にも利用される。この美容学的方法は、例えば本発明に係るリンパ管安定化剤をむくみなどのある部位に適用し、そのまま放置するか又は例えばリンパ管の流れの方向に即してマッサージなどを施し、リンパ管液の流れを促進するなどして行うことができる。この方法の適用箇所には顔面、首、手足、など、全身のあらゆる部位が挙げられる。
本発明に係るリンパ管安定化剤は、その使用目的に合わせて用量、用法、剤型を適宜決定することが可能である。例えば、本発明のリンパ管安定化剤の投与形態は特に制限されるものではなく、経口、非経口、外用等であってよいが。好ましくは外用剤である。剤型としては、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等の外用剤、注射剤、点滴剤、若しくは坐剤等の非経口投与剤、又は錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤を挙げることができる。
本発明のリンパ管安定化剤中のアペリンの配合量は、用途に応じて適宜決定できるが、一般には剤全量中、0.00001〜20.0質量%、好ましくは0.00001〜10.0質量%である。
また、本発明のリンパ管安定化剤には、アペリン以外に、例えば、通常の食品や医薬品に使用される賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料等、化粧品等に通常用いられる美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
さらに、本発明のリンパ管安定化剤を皮膚外用剤として使用する場合、皮膚外用剤に慣用の助剤、例えばエデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類、レチノイン酸、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等のビタミンA類なども適宜配合することができる。
また、被験体におけるアペリンをコードする遺伝子(アペリン遺伝子)が不活性状態又は沈黙状態にあり、その結果細胞がアペリン欠損又は欠陥状態にあるときは、アペリン遺伝子自体を細胞内に導入するために、アペリン遺伝子を組み込んだベクターを使用することができる。該ベクターにおいては、アペリン遺伝子の発現を亢進させる調節配列、例えばプロモーターやエンハンサーを、アペリン遺伝子に対し作動可能な位置に配置することが好ましい。
アペリン遺伝子を細胞内に導入する方法としては、ウイルスベクターを利用した遺伝子導入方法、あるいは非ウイルス性の遺伝子導入方法(日経サイエンス、1994年4月号、20-45頁、実験医学増刊、12(15)(1994)、実験医学別冊「遺伝子治療 の基礎技術」、羊土社(1996))のいずれの方法も適用することができる。ウイルスベクターによる遺伝子導入方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス等のDNAウイルス、又はRNAウイルスに、アペリンをコードするDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。このうち、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスを用いた方法が、特に好ましい。非ウイルス性の遺伝子導入方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。また、上記遺伝子を実際に医薬として作用させるには、DNAを直接体内に導入する in vivo 法、およびヒトからある種の細胞を取り出し体外でDNAを該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すex vivo法がある(日経サイエンス、1994年4月号、20-45頁、月刊薬事、36(1), 23-48(1994)、実験医学増刊、12(15)(1994))。in vivo 法がより好ましい。in vivo 法により投与される場合は、疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内等に投与することができる。in vivo 法により投与する場合は、一般的には注射剤等とされ、必要に応じて慣用の担体を加えてもよい。また、リポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)の形態にした場合は、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤とすることができる。
したがって、本発明の更なる実施態様においては、リンパ管の安定化のための、アペリンをコードする遺伝子を含んで成るベクターを含有するリンパ管安定化剤が提供される。この場合、アペリンをコードする遺伝子は、アペリン遺伝子の発現を亢進させる調節配列と作動可能的に連結されていることが好ましい。
本発明のリンパ管安定化剤中のアペリンをコードする遺伝子を含んで成るベクターの配合量は、用途に応じて適宜決定できるが、一般にはリンパ管安定化剤全量中、0.00001〜20.0質量%、好適には0.00001〜10.0質量%である。
本発明はさらに、リンパ管の安定化剤をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、皮膚細胞における内因性アペリンの発現を亢進する薬剤をリンパ管安定化剤として選定することを特徴とする。内因性アペリンの発現の亢進は、例えば皮膚細胞中のアペリンの量を直接測定することにより決定することができる。なお、皮膚細胞、特に表皮細胞には、角化細胞、顆粒細胞、有棘細胞等が含まれ、ヒト由来であっても、その他の動物、例えばラット、マウス、ウサギなどであってもよい。好ましくは、この測定はアペリンに特異的な抗体を利用し、当業界において周知の方法、例えば蛍光物質、色素、酵素などを利用する免疫染色法、ウエスタンブロット法、免疫測定方法、例えばELISA法、RIA法など、様々な方法により実施できる。また、皮膚細胞からRNAを抽出し、アペリンをコードするmRNAの量を測定することにより決定することもできる。mRNAの抽出、その量の測定も当業界において周知であり、例えばRNAの定量は定量ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により行われる。以上の他、アペリンの既知の生物活性を測定することによりアペリンの発現量を測定することもできる。他に、アペリンの発現はin situハイブリダイゼーション法やその生物活性の測定を通じて決定することができる。
例えば皮膚細胞中の内因性アペリンの発現がコントロール値と比べ30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、最も好ましくは100%以上亢進したら、「リンパ管の安定化剤」と判断する、としてよい。コントロール値としては、限定されるものではないが、例えば統計学的に有意な数(例えば10人分以上、好ましくは100人分以上)の健常人の対応の部位における皮膚細胞の内因性アペリンの発現量の平均値であってよい。
好適な態様において、上記スクリーニング方法は更に、上記亢進能力を有する候補薬剤をモデル動物、例えばアペリン欠損動物や、紫外線照射などによりリンパ管の損傷した動物に適用し、リンパ管安定化効果を確認することを含んで成る。
以下の実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
例1.ヒトリンパ管内皮細胞のウエスタンブロッティング
LECは、人の新生児包皮よりCD45(-)CD34(-)CD31(+)細胞を単離したものを使用した(Kajiya et al, (2005) Hepatocyte growth factor promotes lymphatic vessel formation and function. EMBO J 24: 2885-2895)。LECは、増殖因子などの添加因子を加えたEBM-2(Cambrex; Verviers, Belgium)でコンフルエントまで培養し、タンパク質をPhosphosafe Extraction Reagent(Novagen, Madison, WI) で抽出した。コントロールとして正常ヒト皮膚微小血管内皮細胞(以下HMVEC)も同様の手法で培養を行い、タンパク質を抽出した。総タンパク量をRC DC Protein Assay Kit(BIO-RAD, Hercules, CA) にて定量し、以下のようにウエスタンブロッティングして検出した。等量の総タンパク量を7.5%アクリルアミドゲル(NPU-7.5L, ATTO, Japan)でSDS−PAGEを行い、APJタンパク質の発現は、抗体(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)を用いて、ECL Kitにより発色した。
その結果を図1に示す。図1の結果から、APJはHMVECのみならず、LECでも発現されることが判明した。
例2.ヒトリンパ管内皮細胞の管腔形成能の解析
LECを上記と同様の方法でコンフルエントに達するまで培養した。その後、各濃度(50,500,1000 ng/ml)のアペリン-13(ペプチド研究所, Osaka, Japan)とアペリン-36(ペプチド研究所, Osaka, Japan)を各々添加した中和コラーゲンゲルを作製し、細胞に添加した後、24時間37℃でインキュベートを行った。コントロールとしては何も含まない中和コラーゲンゲルを添加した細胞を用いた。その後、LECの管腔形成の様子を光学顕微鏡で観察し、IP-Labソフトウエアを用いて細胞の管腔の大きさの定量化を行った。
図2はLECの管腔形成が生じていることをわかりやすく図示した光学顕微鏡写真図である。そして、図3は管腔の大きさの定量化の結果を示す。アペリン-13及び-36いずれも、濃度依存式に管腔の大きさを増大させることがわかった。
例3.表皮アペリン高発現マウスのリンパ管透過性試験
アペリンをK14プロモーターの制御化で表皮に高発現させたC57/BL6マウス(12週齢)(以下、アペリンTG)に波長280〜340nmの紫外線を計200mJ/cm2照射した。照射3日後、マウスの耳介部に1%エバンスブルーを10μl Hamiltonシリンジを用いて1μl皮内に注入した。注入後、エバンスブルーにより可視化されたリンパ管の状態を0、5、15分後に観察し、写真撮影を行った。コントロールとしては、同様に紫外線を照射した同週齢のC57/BL6マウス(以下、WT)を用いた。撮影した画像を元に、人(N=3)の観察によって透過性度を評価し、その数値をグラフ化し、その結果を図4に示す。WTに比べ、アペリンを高発現するTGマウスのリンパ管透過性は顕著に抑えられることがわかった。よって、アペリンがリンパ管の安定化に寄与していることが示唆された。
例4.表皮アペリン高発現マウスの皮膚リンパ管と血管の免疫染色
上記と同様の手法で紫外線を照射したアペリンTGマウスの耳介部皮膚を採取し、Tissue-Tech OCTコンパウンド(Sakura Finetechnical, Tokyo, Japan)に包埋した。その後、包埋ブロックをクリオスタットにより6μmに薄切し、凍結切片を作製した。作製した組織標本にアセトン固定を施し、ハムスター抗ポドプラニン抗体(Acris Antibodies, Germany)、ラット抗Meca-32抗体(BD Biosciences, Pharmingen, San Diego, CA)を一次抗体に用いて染色を行った。二次抗体にはAlexa Fluor594ヤギ抗ハムスター抗体(Molecular Probes, Eugene, OR)、Alexa Fluor488ウサギ抗ラット抗体(Molecular Probes, Eugene, OR)を用いた。染色後、蛍光顕微鏡を用いてリンパ管、血管を検出し(図5)、IP-Labソフトウエアを用いて大きさの定量化を行った(図6)。
図5aはリンパ管、図5bは血管の染色写真図であり、図5cは図5aとbとを重ねた写真図である。リンパ管及び血管ともに、WTでは矢印で示すように、紫外線照射によるものと考えられる管の開いた状態(いわゆる管の拡張状態)が観察されるのに対し、アペリンを高発現するTGマウスではそのような状態は観察されず、リンパ管、血管ともに、安定な状態であった。また、管の大きさを定量した結果を示す図6から、WTでは紫外線よってリンパ管や血管が拡張して大きくなっているのが確認できたのに対し、TGマウスでは有意に拡張が抑制されており、ここでもアペリンがリンパ管の安定化に寄与していることが示唆された。

Claims (4)

  1. アペリンを含んで成るリンパ管の安定化剤。
  2. むくみを改善又は予防するための請求項1記載のリンパ管の安定化剤。
  3. 請求項1記載のリンパ管の安定化剤を適用することからなる、むくみを改善又は予防するための美容学的方法。
  4. リンパ管の安定化剤をスクリーニングする方法であって、アペリンの発現を亢進する薬剤をリンパ管の安定化剤として選定することを特徴とする方法。
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