JP2010208985A - 粘膜ワクチン用アジュバント - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、有効かつ安全な粘膜ワクチン用アジュバントを提供することを課題とする。より具体的には、コレラ毒素などの細菌毒素を用いることなく、有効かつ安全な粘膜ワクチン用アジュバントを提供することを課題とする。
【解決手段】IL−33からなる粘膜ワクチン用アジュバントによる。本発明の粘膜ワクチン用アジュバントは、経粘膜感染病原体由来抗原とともに使用したときに、IgG、ならびに各アイソタイプであるIgGおよびIgG2a抗体を効率よく誘導する。さらに、IL−33を経鼻的に投与した場合でも、口腔、膣、腸粘膜等の全身粘膜面において、抗原特異的IgAが分泌され、優れた粘膜ワクチン用アジュバントといえる。
【選択図】図3

Description

本発明は、粘膜ワクチン用アジュバントに関し、さらに粘膜ワクチン用アジュバント並びに粘膜ワクチンを含む、粘膜ワクチン組成物に関する。
インフルエンザ等の感染症の予防にはワクチンが最も有効である。従来の注射によるワクチンは、全身レベルでの免疫を誘導するが、粘膜面での免疫(IgA抗体の分泌)を誘導できない。全身系での免疫のみならず、感染がおこる場である粘膜面での免疫も誘導し、二段構えの防御を可能とする粘膜ワクチンの確立に大きな期待が寄せられている。鼻腔および口腔に始まる、上気道、腸管、泌尿生殖器などの粘膜面は、絶えず外界と接しており、アレルゲンや病原微生物と対峙して、正と負の免疫応答、つまり積極的排除と共生をうながし、外界との免疫学的恒常性を維持する粘膜免疫システムが存在する。この粘膜免疫システムを利用したワクチンが粘膜ワクチンである。粘膜ワクチンについて、総説的な報告がある(非特許文献1)。
経粘膜的にワクチン抗原を単独投与した場合、抗原の物理的排除、免疫担当組織への不確実な抗原の送達などの弱点により、粘膜ワクチンは期待したほどの特異的免疫反応を粘膜に誘導できないといわれている。粘膜ワクチンの実用化に向けた工夫として、重要なのは免疫増強効果のある粘膜アジュバントおよびワクチン抗原の粘膜誘導組織への送達法の開発である。上述のように、粘膜ワクチンでは、ワクチン抗原単独の投与では効率よく免疫を誘導できないため、アジュバントの併用が不可欠である。免疫用アジュバントは、ウイルス、微生物、または合成物由来の抗原の存在下でワクチン等を投与したときに、免疫系の反応を増大させうる物質である。それらは、投与部位に続いて、リンパ節に多量のマクロファージを出現させ、特定の免疫グロブリン等の産生を増加させ、免疫防御機構に関与する多くの細胞を刺激する。
これまでに、粘膜ワクチン用のアジュバントとして、多くの報告があり、例えばベロ毒素1のBサブユニットの5量体(特許文献1)、二本鎖RNA(Poly(I:C))(特許文献2、特許文献3)、CpG含有一本鎖デオキシヌクレオチド(特許文献4)等が開示されている。コレラ毒素等、細菌毒素が粘膜ワクチンアジュバントとして有効であることが報告されているものの、臨床応用等では重大な副作用を呈したことなどの理由により開発は断念されており、いまだ有効かつ安全な粘膜ワクチンアジュバントが実用化されているとはいえない。
インターロイキン18(IL−18)ポリペプチドとサポニンアジュバントおよび免疫原性組成物を哺乳動物に投与して、抗原に対する免疫応答を増強する方法について開示がある(特許文献5)。しかしながら、ここではIL−18単独での粘膜アジュバントとしての使用に関しては、開示されていない。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を免疫原性組成物としたとき、IL−1、IL−12、IL−18およびGM−CSFから選択される各種サイトカインを組み合わせて、マウスに経鼻投与した場合に、皮下投与した場合と比べて、血清、膣洗浄液、糞便および唾液中により高いIgAの産生を認め、これらの物質の組み合わせが粘膜アジュバントとして機能しうることが報告されている(非特許文献2)。しかしながら、個々のインターロイキン単独で用いた場合の効果については、IgGの産生を調べているのみであって、IgAについては開示がない。
新世代のアジュバントについて報告があるが(非特許文献3)、より有効かつ安全な粘膜ワクチンアジュバントシステムが確立できれば、感染症に対するワクチンの開発に大きく寄与することになる。
特開2003−321392号公報 特開2005−97267号公報 特開2007−77073号公報 特開2008−521385号公報 特開2007−508272号公報
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本発明は、有効かつ安全な粘膜ワクチン用アジュバントを提供することを課題とする。より具体的には、コレラ毒素などの細菌毒素を用いることなく、有効で安全な粘膜ワクチン用アジュバントを提供することを課題とする。
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、インターロイキン33(IL−33)に着目し、粘膜ワクチン用アジュバントとしての機能を有することを見出し、本発明を完成した。
本発明は、すなわち以下よりなる。
1.インターロイキン33(IL−33)からなる粘膜ワクチン用アジュバント。
2.IgA誘導用の請求項1に記載の粘膜ワクチン用アジュバント。
3.前項1または2に記載の粘膜ワクチン用アジュバントを含む粘膜ワクチン用補助剤。
4.粘膜ワクチンを有効成分とし、さらに前項1または2に記載の粘膜ワクチン用アジュバントを含む粘膜ワクチン組成物。
5.粘膜ワクチンが、経粘膜感染病原体由来の抗原物質を含む前項4に記載の粘膜ワクチン組成物。
6.経粘膜感染病原体が、インフルエンザウイルスである前項5に記載の粘膜ワクチン組成物。
7.前項6に記載の粘膜免疫ワクチン組成物を含む、点鼻用または経口用の粘膜ワクチン製剤。
本発明の粘膜ワクチン用アジュバントは、経粘膜感染病原体由来抗原に対して、IgG、ならびに各アイソタイプであるIgGおよびIgG2a抗体を効率よく誘導することが確認された。IgG2a抗体を効率よく誘導することから、本発明の粘膜ワクチン用アジュバントは、液性免疫のみならず、細胞性免疫も増強しうることが示唆された。さらにin vivoの系において、本発明の粘膜ワクチン用アジュバントおよび抗原を経鼻的に投与したところ、唾液、膣洗浄液および糞便において効率的にIgAを産生することが確認された。このことから、IL−33を経鼻的に投与した場合でも、口腔、膣、腸粘膜等の全身粘膜面において抗原特異的IgAが分泌され、IL−33は優れた粘膜ワクチン用アジュバントといえる。さらに、IL−33はサイトカインの一種であり、副作用の少ない粘膜ワクチン用アジュバントといえる。
インフルエンザ抗原に対するIL−33の抗体誘導能を、血清IgGにより確認した図である。(実施例1) インフルエンザ抗原に対するIL−33のIgG各アイソタイプ抗体誘導能を確認した図である。(実施例2) インフルエンザ抗原に対するIL−33の、全身粘膜面におけるIgA抗体誘導能を確認した図である。(実施例3)
本発明の、粘膜ワクチン用アジュバントは、サイトカインの一種であるIL−33からなる。IL−33は、IL−1およびIL−18とともに、IL−1ファミリーに属するといわれている。IL−1は、マクロファージや血管内皮から産生される炎症性サイトカインとして知られている。IL−1にはIL−1α、IL−1βが存在し、ともにTNF−αと同様に強い炎症反応を惹起し、代謝を亢進し血圧低下を引き起こす。
一方、IL−18は、Tヘルパー1(Th1)細胞を刺激し、インターフェロンγ(IFNγ)の発現を誘導することが報告されている(J. Immunology, 168, 2282-2287 (2002))。また、IL−33は、Toll-IL−1受容体(TIR)ドメイン含有受容体ST2と結合し、Tヘルパー2(Th2)免疫調節活性を有することが報告されている(Immunity, 23, 479-490 (2005))。Th1はIFNγやIL−2などを産生して、主にT細胞系の活性化に働き、Th2はIL−4やIL−6などを産生して、主にB細胞系の活性化に働くといわれている。IL−33の核内標的はまだ明らかになっていないが、炎症組織におけるIL−33の発現、核内リプレッサー活性、ST2の競合活性から、IL−33はIL−1とは異なり、炎症を軽減する可能性があることが示唆される。したがって、IL−1、IL−18およびIL−33は、同じIL−1ファミリーに属するものの、個々のサイトカインの機能は異なり、不明な点も多く残されている。
本発明の粘膜ワクチン用アジュバントとして機能するIL−33は、GenBank Accession No. #Q8BVZ5(Ser 109-Ile 266)に示すアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸配列残基が、置換、欠失、付加または導入された配列からなるアミノ酸配列を有する。
本発明の粘膜ワクチン用アジュバントの作製方法は、特に限定されない。粘膜ワクチン用アジュバントとして機能するIL−33は、例えば天然物由来であってもよいが、遺伝子組換法によっても作製することができる。遺伝子組換法による作製方法は、自体公知の方法によることができる。
本発明の粘膜ワクチン用アジュバントは、粘膜ワクチン用補助剤として使用することができる。粘膜ワクチン用補助剤として使用する場合は、通常、粘膜ワクチンと共に、または前記粘膜ワクチンの投与に前後して、経鼻投与あるいは経口投与など、慣用的な態様で投与することができる。特に経鼻的に投与するのが好ましい。本発明のアジュバントは粘膜ワクチンと共に、通常、液状あるいは粉末状の形態で、鼻腔内あるいは口腔内に滴下、噴霧あるいはスプレーすることにより投与される。このようにして投与される本発明の粘膜ワクチン用補助剤の剤型としては、例えば、液剤、懸濁剤、粉末剤などが挙げられる。液剤としては、精製水、緩衝液などに溶解したものなどが挙げられる。懸濁剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、カゼインなどと共に精製水、緩衝液などに懸濁させたものなどが挙げられる。粉末剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどとともによく混合したものなどが挙げられる。これらの製剤には、通常使用されている吸収促進剤、界面活性剤、保存剤、安定化剤、防湿剤、保湿剤、溶解剤などを必要に応じて添加することができる。
本発明の粘膜ワクチン用アジュバントの投与量は、投与する対象、投与方法、投与形態等によって適宜決定することができる。投与対象は、粘膜ワクチンに含まれる抗原物質の種類に応じて適宜決定することができ、例えばヒトのほか、ヒト以外の哺乳類、鳥類、甲殻類などに投与することができる。本発明の粘膜ワクチン用アジュバントの投与量は、いわゆる当業者により慣用的に決定することができる。
ここで、粘膜ワクチンとは、経粘膜感染病原体由来の抗原物質を含み、粘膜免疫システムを利用したワクチンをいい、いわゆる当業者が用いる一般的な意味で定義される。本発明の粘膜ワクチンに含まれる抗原物質は、経粘膜感染病原体由来であればよく特に限定されないが、天然物由来であっても良いし、遺伝子組換等の手法により人為的に作製されたものであっても良い。経粘膜感染病原体は特に限定されないが、例えばインフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ポリオウイルス、結核菌、コレラ菌、日本脳炎ウイルス、天然痘ウイルス、麻疹ウイルス、黄熱病ウイルス、風疹ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス等が例示され、好ましくはインフルエンザウイルスやヒト免疫不全ウイルスが挙げられ、最も好適にはインフルエンザウイルスが挙げられる。
また粘膜ワクチンの作製方法は、自体公知の方法、または今後開発される方法を適用することができ、特に限定されない。
本発明の粘膜ワクチン用アジュバントは、経粘膜感染病原体由来抗原に対してIgG、ならびに各アイソタイプであるIgGおよびIgG2a抗体を効率よく誘導することができる。IgG2a抗体を効率よく誘導することから、本発明の粘膜ワクチン用アジュバントは、液性免疫のみならず、細胞性免疫も増強しうることが示唆される。さらに、本発明の粘膜ワクチン用アジュバントおよび抗原は、経鼻投与などの局所投与の場合でも、口腔、膣、腸粘膜等の全身粘膜面において、抗原特異的IgAが分泌され得る。
本発明は、粘膜ワクチンを有効成分とし、さらに本発明の粘膜ワクチン用アジュバントを含む粘膜ワクチン組成物にもおよび、さらには粘膜ワクチン組成物を含む粘膜ワクチン製剤にも及ぶ。
本発明の粘膜ワクチン製剤は、経鼻投与あるいは経口投与など、慣用的な態様で投与することができる。特に経鼻的な投与が好ましい。粘膜ワクチン製剤は、通常、液状または粉末状の形態で、鼻腔内あるいは口腔内に滴下、噴霧あるいはスプレーすることにより投与される。このようにして投与される本発明の粘膜ワクチン製剤の剤型としては、例えば、液剤、懸濁剤、粉末剤などが挙げられる。液剤としては、精製水、緩衝液などに溶解したものなどが挙げられる。懸濁剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、カゼインなどと共に精製水、緩衝液などに懸濁させたものなどが挙げられる。粉末剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどとともによく混合したものなどが挙げられる。これらの製剤には、通常使用されている吸収促進剤、界面活性剤、保存剤、安定化剤、防湿剤、保湿剤、溶解剤などを必要に応じて添加することができる。
本発明の粘膜ワクチン製剤の投与量は、投与する対象、投与方法、投与形態等によって適宜決定することができる。投与対象は、粘膜ワクチンに含まれる抗原物質の種類に応じて適宜決定することができ、例えばヒトのほか、ヒト以外の哺乳類、鳥類、甲殻類などに投与することができる。
本発明の理解を助けるために、以下に実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
(実施例1)インフルエンザ抗原に対するIL−33の抗体誘導
BALB/cマウス(6〜8週齢、雌性)に、遺伝子組換インフルエンザHAタンパク質抗原(baculovirus-expressed recombinant hemagglutinin (HA) derived from New Cal/99 virus, Protein Sciences社)(1μg)を粘膜ワクチンとし、IL−33(Recombinant Mouse IL-33, R&D systems社)(1μg)を粘膜ワクチン用アジュバントとして混合したものを非麻酔下で経鼻投与した。抗原物質およびIL−33の投与は4週間隔で2回行った。粘膜ワクチン用アジュバントを併用しない系、および本発明の粘膜ワクチンアジュバントの代わりに、公知の粘膜ワクチン用アジュバントであるコレラ毒素Bサブユニット(CTB;List Biological Laboratories社)を0.2、1.0および5.0μg投与した系を比較対照の系とした。
最終免疫後2週目にマウス眼窩静脈より採血し、11000rpmで15分間遠心後、上清を回収した試料について抗HAタンパク質IgG抗体をELISAの系で測定した。
HA溶液(上記遺伝子組換インフルエンザHAタンパク質抗原を50mMの重炭酸塩緩衝液(Sigma-Aldrich社)に溶解したもの、2μg/mL)をELISA用プレートに加え、4℃で一晩放置することで固相した。PBSで2倍希釈したBlock Ace(R)(大日本住友製薬)を用いて室温で1時間ブロッキングした後、各濃度に調製した試料を加えてインキュベートした(室温、2時間)。これらのプレートを0.05%Tween(R)系界面活性剤含有PBS(PBST) で洗浄後、0.2μg/mLに調製したHRP標識IgG抗体(SBA)を加えてインキュベートした (室温、2時間)。プレートを洗浄した後、0.5μg/mLに希釈したHRP標識ストレプトアビジン(ZYMED LAB社)を加え、さらに室温で1時間反応させた。再度、洗浄操作を行い、最後に蒸留水で洗浄した後、基質液(TMBZ ; 3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン、ナカライテスク社)を100μL/mL添加した。2NのHSOを50μL/well添加することにより発色反応を停止させ、吸光波長450nm、副波長690nmにおける吸光度を測定した。
上記の結果、インフルエンザHAタンパク質抗原(1μg)の単独投与では、HA特異的血中IgGは殆ど誘導されなかったのに対し、IL−33(1μg)を粘膜ワクチン用アジュバントとした場合は、CTB(1μg)とほぼ同程度のHA特異的IgGを誘導することが確認された(図1)。
(実施例2)
実施例1と同手法によりマウスに経鼻免疫し、採血したときの、血中の各アイソタイプであるIgG抗体およびIgG2a抗体を、実施例1と同手法にて測定した。HRP標識IgG抗体(SBA)の代わりに、HRP標識IgG抗体(SBA社製)およびHRP標識IgG2a抗体(SBA社製)を用いて各々0.2μg/mLの抗体溶液を調製し、測定した。
上記の結果、IL−33(1μg)を粘膜ワクチン用アジュバントとした場合は、インフルエンザHAタンパク質抗原(1μg)の単独投与に比べて、HA特異的IgGおよびIgG2aのいずれも、より誘導されていることが確認された。特に、IgGについては、CTB(5μg)をアジュバントとした場合よりも多く誘導されていることが確認された(図2)。これにより、IL−33の投与で抗原特異的抗体産生能(液性免疫)がより増強されたことが確認された。また、IgG2aについてもCTB(1μg)とほぼ同程度に誘導することが確認された(図2)。これにより、IL−33は細胞性免疫についても増強効果があることが示唆された。
(実施例3)
実施例1と同手法によりマウスに経鼻免疫したときの、全身の粘膜面での抗HAタンパク質IgA抗体を測定した。最初の経鼻免疫後6週目に、唾液、膣洗浄液および糞便抽出液を採取し、IgA抗体量を測定した。
唾液、膣洗浄液および糞便抽出液は、以下の方法により回収し、調製した。
1)唾液の回収法;ピロカルピン塩酸塩(和光特級)をPBSに溶解して終濃度0.2、g/mLとなるように調製した。BALB/cマウスにピロカルピン塩酸塩を1mL/マウスで腹腔内投与を行い、唾液を回収した。
2)膣洗浄液の調製法;マウス膣腔内を100μLのPBSで洗浄後、4℃にて14000rpmで20分間遠心操処理し、上清を回収して膣洗浄液を調製した。
3)糞便抽出液の調製法;糞便に100mg/mLとなるようにPBSを加え、4℃で2 時間激しく攪拌した。得られた懸濁液を4℃にて14000rpmで20分間遠心処理し、上清を回収して糞便抽出液を調製した。
IgA抗体量は実施例1と同手法によりELISAの系で測定した。HRP標識IgG抗体(SBA)の代わりに、ビオチン標識IgA抗体(Southern Biotech社)を用いた。また、試料および抗体についてインキュベーションは、各々37℃で2時間行った。
上記の結果、IL−33(1μg)を粘膜ワクチン用アジュバントとした場合は、インフルエンザHAタンパク質抗原(1μg)の単独投与に比べて、各粘膜面でIgAが、より誘導されていることが確認された(図3)。このことから、抗原およびIL−33を経鼻投与した場合でも、全身の粘膜面でIgAが誘導されていることが認められた。
以上詳述したように、本発明の粘膜ワクチン用アジュバントは、経粘膜感染病原体由来抗原に対して、IgG、ならびに各アイソタイプであるIgGおよびIgG2a抗体を効率よく誘導することが確認された。IgG2a抗体を効率よく誘導することから、本発明の粘膜ワクチン用アジュバントは、液性免疫のみならず、細胞性免疫も増強しうることが示唆された。さらに、in vivoの系において、本発明の粘膜ワクチン用アジュバントおよび抗原を経鼻的に投与したところ、唾液、膣洗浄液および糞便抽出液中に効率的にIgAを産生されることが確認された。このことからIL−33を経鼻的に投与した場合でも、口腔、膣、腸粘膜等の全身粘膜面において抗原特異的IgAが分泌され、IL−33は優れた粘膜ワクチン用アジュバントといえる。さらに、IL−33はサイトカインの一種であるため、副作用の少ない粘膜ワクチン用アジュバントといえる。
本発明の粘膜ワクチン用アジュバントは、経粘膜感染する病原体に対するワクチンとともに投与したときに、粘膜IgAの誘導が期待でき、有効と考えられる。また、Th1タイプの免疫応答(IFNγ産生、IgG2a産生)が誘導できていることから、細胞性免疫(CTL)が誘導されていると考えられ、IgA等の抗体誘導だけでは防ぐことの出来ないと考えられているHIV感染等にも有効性が期待される。
最近では、抗原の種類により、現行の皮下注射ワクチンよりも気道の粘膜経由で投与されるワクチンのほうが有効且つ安全であるともいわれている。本発明の粘膜免疫用アジュバントを粘膜ワクチン用補助剤として粘膜ワクチンとともに用いるか、または粘膜ワクチンと本発明の粘膜ワクチン用アジュバントを含む粘膜ワクチン製剤を用いることにより、より効果的に免疫能を増強することができる。
粘膜ワクチンは、注射などによらず、経鼻投与や経口投与が可能であるので、注射器等の医療器具を用いることなく投与することができ、経済的である。さらには侵襲的方法によらずに投与可能であることから、投与される者にとっても負担が軽いものである。本発明の粘膜ワクチン用アジュバントを用いることにより、粘膜ワクチンの投与の可能性が拡大し、有用である。

Claims (7)

  1. インターロイキン33(IL−33)からなる粘膜ワクチン用アジュバント。
  2. IgA誘導用の請求項1に記載の粘膜ワクチン用アジュバント。
  3. 請求項1または2に記載の粘膜ワクチン用アジュバントを含む粘膜ワクチン用補助剤。
  4. 粘膜ワクチンを有効成分とし、さらに請求項1または2に記載の粘膜ワクチン用アジュバントを含む粘膜ワクチン組成物。
  5. 粘膜ワクチンが、経粘膜感染病原体由来の抗原物質を含む請求項4に記載の粘膜ワクチン組成物。
  6. 経粘膜感染病原体が、インフルエンザウイルスである請求項5に記載の粘膜ワクチン組成物。
  7. 請求項6に記載の粘膜免疫ワクチン組成物を含む、点鼻用または経口用の粘膜ワクチン製剤。
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