JP2010207268A - 治療用生体磁気刺激方法及び装置 - Google Patents

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信和 中里
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敏晶 市原
Kenji Ishii
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Abstract

【課題】麻痺により随意運動が困難になった筋肉を増強又は回復させる方法において、電位計の近傍に設置された磁気刺激コイルに起因して発生する過大電圧によって電位計が破壊されることがない治療用生体磁気刺激方法を提供する。
【解決手段】電位計で検出した筋電位あるいは脳波からの活動電位をトリガーとして、磁気刺激装置で発生させた磁気パルスによって大脳の運動野又は筋肉を磁気刺激することにより、筋肉の動きを増強又は回復させる方法において、電位計で筋電位あるいは活動電位を検出した後、その電位計の入力回路を電気的に遮断し、その後に磁気パルスによって磁気刺激を行い、磁気パルスによる誘起電圧の影響が消滅した後に再度入力回路を導通させることを特徴とする治療用生体磁気刺激方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、麻痺により自発運動が困難な筋肉を、本人の意思と努力によってわずかでも動かし、それに伴って生じる筋電位あるいは脳波からの活動電位をトリガー信号として、パルス磁場を発生させて、大きな筋収縮を生じさせることにより、筋肉の動きを増強又は回復させる方法及び装置、特に脳及び神経の可塑性によって新しい神経回路を形成させ、リハビリテーションを効果的に行う方法と技術に関する。
脊髄損傷による四肢麻痺や、脳卒中による片麻痺の機能回復を補助する手段として、経皮電気的神経刺激TENSが広く用いられている。この原理は損傷を受けた脳、神経の可塑性を活用するもので、外部からの電気刺激で手や足を動かすことにより、新しい神経回路を形成し機能を回復するものである。
経皮電気的神経刺激をさらに発展させた技術として機能的電気刺激法FESがある。これは複数の電極を筋肉に埋め込んで、コンピュータからの信号で筋肉を電気刺激によって順次動かすことによって、歩行や把握などの複雑な動作の実現を目指す方法である。しかし、これらの電気刺激法は、現象的には感電と同じなので電気ショックによる不快感や痛みを伴い、従って大きな筋収縮を得ることが困難である問題がある。
神経を刺激する他の方法として、磁気刺激がある。これは、神経の近くに置いたコイルにパルス電流を流すことによって生じるパルス磁場によって神経を磁気的に刺激する方法である。この磁気刺激法は電極を貼り付ける、埋め込むなどの工程が不要であり、加えて電気ショック感や痛みがほとんどないので、強い刺激が得られるという、前記電気刺激法に比べて、大きな利点がある。
磁気刺激法がリハビリテーションに有効なことは公知である。一例として、磁気刺激による誘発筋運動によって中枢神経系が再構築されることが知られている(非特許文献1参照)。また、脳血管障害によって生じた片麻痺の治療に効果があることが知られている(非特許文献2参照)。さらに、磁気刺激は、活動が弱った筋肉のリハビリテーションに広く応用されている(特許文献1〜4参照)。
本発明者らは、このような従来技術を前提に、運動機能に損傷を受けた部位近傍に、電位を測定する器具を設置し、筋肉の自発運動により発生する筋電位、あるいは自発運動の企図と実行に伴う脳波からの活動電位を検出し、次にこの筋電位あるいは脳波からの活動電位をトリガー信号として、パルス電源の磁気刺激コイルに電流を流すことによって、パルス磁場を発生させ、そしてこのパルス磁場によって大脳の運動野又は筋肉を刺激する方法を、開発した(特許文献5参照)。
この刺激によって、筋肉の動きが増強されることになる。そして、これを繰り返し、外部からの磁気刺激で手や足を大きく動かすことにより、既存の神経回路の強化又は新たな神経ネットワークを構築させて、運動機能を回復させることができ、運動機能を回復させる手段として極めて有効であることが確認された。
この筋肉の動きを増強又は回復させる装置としては、筋肉の自発運動に伴う筋電位若しくは関節の運動に伴う関節運動を検出する検出装置、あるいは自発運動の企図と実行に伴う脳波からの活動電位を検出する検出装置又は近赤外線スペクトロスコピーからの脳血流変化を検出し、この検出した脳血流変化を電気信号に変換する装置、前記装置により検出された筋電位若しくは関節運動を検出しこれを電気信号に変換した電位、脳波からの活動電位、又は脳血流変化を電気信号に変換して得た電位をトリガー信号としてパルス電源の磁気刺激コイルに磁気パルスを発生させる装置、発生した磁気パルスによって大脳の運動野又は筋肉を磁気刺激する装置から構成される。
このような装置を用いて、磁気刺激を効果的に行うためには、筋電位検出部位と磁気刺激部位とが近接していることが好ましいのであるが、電位計の近傍で磁気刺激を行うと、時として磁気刺激装置(コイル)から発生した過大な誘起電圧が電位計にノイズとして入力され、高価な電位計が破壊するという問題が生じた。
従来の電気パルスにより脳や神経に刺激を加えながら、筋肉の活動電位を測定する方法では、電気刺激を行う場合の刺激電圧は極めて低く、刺激部位は細い電極の周囲に限定されるため、刺激用の電圧によって電位計が破壊されることはなかったのである。このようなことから、上記の大脳の運動野又は筋肉を磁気刺激する装置の見直しが必要となった。
磁気刺激に伴う誘発電位波形を観察する際に、磁気パルスによる誘発電位妨害波形(アーチファクト)の混入を防止するために、増幅器の回路を機械的に150ミリ秒間閉じ、その間に磁気パルスを発射する方法が知られている(非特許文献3)。しかし、この方法は波形観察が目的であって、増幅回路の破壊防止を目的としていない。また、高速の繰り返し測定を目的としていないので、回路遮断は機械的であり、遮断時間を150ms(ミリ秒)以下にすることはできない。
医歯薬出版株式会社「磁気刺激法の基礎と応用」、真野著、中枢神経の再構築、P.127 医歯薬出版株式会社「磁気刺激法の基礎と応用」、出江著、脳血管障害、P.198 S.Izumi, M.Takase, M.Arita, Y.Masakado, A.Kimura and N.Chino, Transcranial magnetic stimulation-induced changes in EEG and responses recorded from the scalp of healthy humans, Electroencephalography and clinical Neurophysiology 103(1997)319-323
特開平9−276418号公報 特開平10−234870号公報 特開平11−333003号公報 特公表2001−526947号公報 特願2009−010212
リハビリテーションによって新しい神経回路を形成するために、他動的に筋肉を動かすよりも、本人の意欲で筋肉を動かし、努力した時に外部からの刺激で筋肉の動きを増強すると治療効果が大きい。この目的のために、本発明は磁気刺激の開始トリガー信号に、被検者の筋電位あるいは自発運動の企図と実行に伴う脳波からの活動電位を検出し、これを電気信号に置換した電位を用いて筋肉の動きを増強又は回復させる技術を提供することを前提とし、特に検出電極がパルス電源に近接して設置される場合でも、パルス磁場に起因する過大な誘導起電力によって電位計の入力回路が破壊するのを防止できる機能を備えた治療用生体磁気刺激方法及び装置を提供するものである。
以上の課題に鑑み、本願発明は、
1)電位計で検出した筋電位あるいは脳波からの活動電位をトリガーとして、磁気刺激装置で発生させた磁気パルスによって大脳の運動野又は筋肉を磁気刺激することにより、筋肉の動きを増強又は回復させる方法において、電位計で筋電位あるいは活動電位を検出した後、その電位計の入力回路を電気的に遮断し、その後に磁気パルスによって磁気刺激を行い、磁気パルスによる誘起電圧の影響が消滅した後に再度入力回路を導通させることを特徴とする治療用生体磁気刺激方法、
2)磁気パルス発生用トリガーに同期した特定の時間幅を有する入力回路遮断信号によって電位計の入力回路を電気的に遮断し、その間に磁気パルスによって磁気刺激を行うことを特徴とする上記1に記載の治療用生体磁気刺激方法。
3)入力回路遮断信号の時間幅が1msから50msであることを特徴とする上記2に記載の治療用生体磁気刺激方法
4)短時間に複数回の磁気刺激を反復する上記1〜3のいずれか一項に記載の治療用生体磁気刺激方法
5)磁気刺激の反復時間が1msから100msである上記4記載の治療用生体磁気刺激方法、を提供する。
また、本願発明は、
6)電位計で検出した筋電位あるいは脳波からの活動電位をトリガーとして、磁気刺激装置で発生させた磁気パルスによって大脳の運動野又は筋肉を磁気刺激することにより、筋肉の動きを増強又は回復させる装置において、一時的に電位計の入力回路を電気的に遮断する遮断回路を備えることを特徴とする治療用生体磁気刺激装置、
7)磁気パルス発生用トリガーに同期した特定の時間幅を有する入力回路遮断信号を発生する遮断回路であることを特徴とする上記6記載の治療用生体磁気刺激装置、
8)入力回路遮断信号の時間幅が1msから100msであることを特徴とする上記7記載の治療用生体磁気刺激装置、
9)短時間に複数回の磁気刺激を反復する装置を有する上記6〜8のいずれか一項に記載の治療用生体磁気刺激装置、
10)磁気刺激の反復時間を1msから100msとする装置を備えた上記9記載の治療用生体磁気刺激装置、を提供する。
本発明は、電気刺激の代わりに磁気刺激を用いることにより、刺激用の貼り付けや埋め込み電極を不要とし、加えて不快な電気ショックや痛みを伴うことがないので、外部刺激によって大きな筋肉の収縮を実現することが可能となるものであり、不自由な筋肉が本人の意思で、少しでも動いた時に磁気刺激による大きな筋収縮を生じさせて患者の回復を図るものである。これは、電気刺激のような電気ショックや痛みを伴わないので、長時間のリハビリテーションが可能であり、治療効果を画期的に高めることができる効果を有する。
そして、本願発明は、このような治療法において問題となっていた電位計が破壊するのを防止するものであり、トリガーパルスを発する直前に、電位計の回路を遮断し、磁気パルス発射後に回路を再開する機能を持たせるものである。磁気刺激装置と電位計が近傍に設置されても、磁気刺激コイルに起因して発生する過大電圧によって筋電位計が破壊されることがないので、筋電位計の電極の位置に制約を受けることなく、磁気刺激を行うことができる効果を有し、有効な治療・診断を短時間に繰り返すことができるという優れた効果を有する。
遮断信号を設けた場合の、筋電位信号、パルス電流、遮断信号の関係を示す説明図である。 筋電位計、遮断回路、パルス電源を順に配列した様子を示す説明図である。 手首に電位検出用の電極を貼り付けて、磁気刺激用コイルを固定し、磁気パルスを発生させる試験の様子を示す写真である。 電極から5cm、10cm、15cm、20cm、25cm離れた位置に磁気刺激用コイルを固定して磁気パルスを発生させた場合の、各位置において発生したパルス磁場による電極への誘導電位を示す図である。 950mVのノイズ電圧が発生した場合の様子を示す図である。
本発明の筋肉の動きを増強又は回復させる方法は、まず筋肉の自発運動により発生する筋電位若しくは関節の動きを各種センサー(検出装置)により検出し、これを電気信号に変換した電位、あるいは自発運動の企図と実行に伴う脳波からの活動電位を検出する、又は自発運動に伴う近赤外線スペクトロスコピーからの脳血流変化を検出し、これを電気信号に変換した電位を得る。
前記筋電位は筋電図、筋活動電位、活動電位、筋放電と称される場合があり、また前記脳波からの活動電位は神経活動電位と称される場合もあるが、本発明はこれらを包含するものである。筋電位もしくは脳波からの活動電位を検出する際に、運動機能に損傷を受けた部位近傍に、電位を測定する器具を設置する。
この方法はあくまで患者の意思により行動した場合の筋肉の自発運動により発生する電位を測定することが基本である。なお、この場合、脳の運動機能に障害を受けた場合の麻痺であり、末梢神経の病気ではない場合に有効となる。
本願発明において、上記の患者の意思により行動した場合の筋肉や関節の自発運動若しくは脳波からの活動電位から発生する電位又は自発運動に伴う近赤外線スペクトロスコピーからの脳血流変化から検出して得た電位は、運動機能が低下しているだけに、微弱にならざるを得ない。
また、この機能低下の状態を続ける場合には、自発運動により発生する電位のさらなる低下を余儀なくされることが十分に予想される。これらにより発生する電位を磁気パルスによって大脳の運動野又は筋肉を磁気刺激する。電位又は磁気は任意に増幅させることができるので、必要に応じて磁気刺激を調節することができる。
この結果、筋肉の動きが増強される。これを繰り返し、外部からの磁気刺激で手や足を動かすことにより、既存の神経回路の強化又は新たな神経ネットワークを構築させて、機能を回復させる。すなわち、末梢神経刺激により新たな神経ネットワークの再構築を誘発させ、機能回復を狙うものである。
この場合、「新たな神経ネットワークを構築する」ということは、神経細胞の新生を意味するものではなく、損傷を受けていない神経を利用して神経相互の連絡を良くし、新たなネットワークを形成することを意味するものである。
なぜ、このような操作により機能が回復するのかということを理論的に説明することは難しいが、手や足を動かすことにより、それをつかさどる脳細胞又は神経回路が逆に刺激を受け、その機能回復を促進するのではないかと推測される。
上記の通り麻痺により自発運動が困難な筋肉を、本人の意思と努力によってわずかでも動かし、その際に生じる筋肉や関節の自発運動若しくは脳波からの活動電位から発生する電位又は自発運動に伴う近赤外線スペクトロスコピーからの脳血流変化から検出して得た電位をトリガー信号として、パルス磁場を発生させて、大きな筋収縮を生じさせることにより、筋肉の動きを増強又は回復させることができる。
機能低下の状態を続ける場合には、随意運動により発生する電位のさらなる低下となる可能性があるので、急速な回復が必要である。新たな神経ネットワークを構築させて、リハビリテーションを行うことは重要であり、極めて有効である。
本願発明においては、短時間に複数回の磁気刺激を反復することが有効である。そして、この磁気刺激の反復時間が1msから100msであるのが望ましい。100msを超える場合には、屈曲が複数回に分かれ、効果の増大はないので100ms以下とするのが望ましい。
本願発明の筋肉の動きを増強又は回復させる方法では、コイルに電流が流れるとコイルの温度上昇を伴う。この場合、コイルに大電流が流れた場合には、患者が火傷することもあるので、パルス電源に複数の磁気刺激コイルを接続し、スイッチで切り替えながら順次使用することが望ましい。
本発明の筋肉の動きを増強又は回復させる方法は、外部からの磁気刺激で手や足を動かすことにより、新たな神経ネットワークを構築させて機能を回復させる。
また、筋電位若しくは関節の動きを各種センサーで検出しこれを電気信号に変換した電位(「関節の動きから得た電位」と略記する。)又は脳波からの活動電位を検出する電極は、運動機能に損傷を受けた部位近傍の皮膚に貼り付けるだけであり、電気ショックや痛みの原因となることはない。
また、自発運動に伴う近赤外線スペクトロスコピーからの脳血流変化を検出する際にも、患者の体内に器具を埋め込む必要はないので、同様に患者に負担をかけることがない。
コイルが生じるパルス磁場近傍の神経には、電磁誘導によって活動電位を生じ、脳の運動野や脊髄が麻痺した患者の場合も、手や足を大きく動かすことが可能となる。このようにして生じた運動は、脳及び神経の可塑性によって、新たな神経ネットワークを構築する可能性があり、リハビリテーション効果を増強することに極めて有用である。運動機能の回復によって、筋電活動が増大してくるので、それに合わせて検出感度を調節し、また刺激出力を調節することができる。
ここで問題となるのは、磁気刺激装置(コイル)から発生した過大な誘起電圧が電位計にノイズとして入力され、電位計が破壊されることである。磁気刺激を効果的に行うためには、筋電位検出部位と磁気刺激部位とが近接していることが好ましいのであるが、このような近傍配置では特に電位計の破壊が生じやすくなる。この破壊の度に、高価な電位計の交換が必要となるので、早急な対策が必要であった。
本発明は、電位計で筋電位あるいは活動電位を検出した後、その電位計の入力回路を電気的に遮断し、その後に磁気パルスによって磁気刺激を行い、磁気パルスによる誘起電圧の影響が消滅した後、再度入力回路を導通させるものである。
具体的には、まず電位計がトリガーとなるレベルの筋電位若しくは脳波からの活動電位を検出すると、一定の時間だけ電位計の入力回路を遮断するあるいはアースに落として、外部からの入力を遮断する。
上記電位計の入力回路を一時的に遮断する方法としては、電位計に遮断回路を設けることにより行うことができる。図1は、遮断信号を設けた場合の、筋電位信号、パルス電流、遮断信号の関係を示す説明図である。
この遮断回路は、磁気パルス発生用トリガーに同期した特定の時間幅を有する入力回路遮断信号を検知すると、その間、入力回路が電気的に遮断された状態を作りだすことができる。
入力回路遮断信号の時間幅は、1msから100msであることが好ましい。1ミリ秒未満では磁気パルスによる誘起電圧の影響が十分に消滅せず、100ms超では電位測定を即時に繰り返すことができないからである。
次に、電位計の入力回路が一時的に遮断している間、筋電位もしくは脳波からの活動電位を遅延トリガー信号としてパルス電源の磁気刺激コイルに磁気パルスを発生させる。図2に、筋電位計、遮断回路、パルス電源を順に配列した様子を示す。
このように電位計の入力回路を遮断している間に、磁気パルスを発生させることによって、パルス磁場に起因する強い誘導起電力が電位計の入力回路を破壊することは皆無となる。これによって、筋電位検出部位と磁気刺激部位とが近接して配置することが可能となるので、患者の治療及び診断効果を一層高めることができる。
本願発明の詳細を実施例に基づいて説明する。なお、この実施例は当業者の理解を容易にするためのものである。すなわち、本願発明は明細書の全体に記載される技術思想によってのみ限定されるものであり、本実施例によってのみ限定されるものでないことは理解されるべきことである。
図3に示すように、手首に電位検出用の電極を貼り付けて、電極から5cm、10cm、15cm、20cm、25cm離れた位置に磁気刺激用コイルを固定して磁気パルスを発生させた。図4に、上記各位置において発生したパルス磁場による電極への誘導電位を示す。コイルには巻き数10回のケイ素鋼コア付きを使用し、パルス電圧とパルス幅を1000Vと0.2msとした。図4では、20cmの位置で、200mVが測定された。
この時、コイル中央の磁場強度は1.1テスラであり、各距離で電位検出電極に発生した磁気パルスに対応する誘導電圧は65〜12mVであった。しかし、磁気パルスの立ち上がりと停止する瞬間に、200〜950mVのノイズ電圧が発生した。図5に、950mVのノイズ電圧が発生した場合の様子を示す。このように、誘導電位が950mVの高電位に達する場合もある。
通常の検出対象の筋電位は0.1〜1mV程度であるため、このノイズ電圧は筋電位に対して1000〜10000倍もの高電圧となっている。その結果、磁気コイルの近傍に設置された電位計の回路に高電圧のノイズ電圧が入り込み回路を破壊した。
このため、磁気パルスによって磁気刺激を行う直前に、電位計の入力回路を電気的に5msの間遮断し、遮断の2ms後に磁気パルスを発射した。磁気パルスによる誘起電圧の影響が消滅した3ms後に再度入力回路を導通させて、同様に実験を行った。
この結果、電位計はノイズ電圧の過大入力による動作不良を起こすことなく、電位計の連続使用が可能となり、さらに筋電位検出部位と磁気刺激部位とが近接して配置することができるので、治療及び診断効果を高めることが可能となった。
なお、上記磁気パルスの発射時刻(時間)、遮断時間、入力回路の再導通時刻(時間)の調整は、必要とされる磁気刺激の状況に応じて、任意に調節できることは言うまでもない。
麻痺により随意運動が困難な筋肉を、本人の意思と努力によってわずかでも動かし、その際に生じる電位をトリガーとして、パルス磁場を発生させて、大きな筋収縮を生じさせることにより、筋肉の動きを増強又は回復させることが可能である。さらに、磁気刺激装置と電位計が近傍に設置されても磁気刺激コイルに起因する過大電圧によって筋電位計が破壊されることがないため、筋電位計の電極の位置に制約を受けることなく磁気刺激を行うことができるので、磁気刺激法による治療、診断に有効である。

Claims (10)

  1. 電位計で検出した筋電位あるいは脳波からの活動電位をトリガーとして、磁気刺激装置で発生させた磁気パルスによって大脳の運動野又は筋肉を磁気刺激することにより、筋肉の動きを増強又は回復させる方法において、電位計で筋電位あるいは活動電位を検出した後、その電位計の入力回路を電気的に遮断し、その後に磁気パルスによって磁気刺激を行い、磁気パルスによる誘起電圧の影響が消滅した後に再度入力回路を導通させることを特徴とする治療用生体磁気刺激方法。
  2. 磁気パルス発生用トリガーに同期した特定の時間幅を有する入力回路遮断信号によって電位計の入力回路を電気的に遮断し、その間に磁気パルスによって磁気刺激を行うことを特徴とする請求項1に記載の治療用生体磁気刺激方法。
  3. 入力回路遮断信号の時間幅が1msから100msであることを特徴とする請求項2に記載の治療用生体磁気刺激方法。
  4. 短時間に複数回の磁気刺激を反復する請求項1〜3のいずれか一項に記載の治療用生体磁気刺激方法。
  5. 磁気刺激の反復時間が1msから100msである請求項4記載の治療用生体磁気刺激方法。
  6. 電位計で検出した筋電位あるいは脳波からの活動電位をトリガーとして、磁気刺激装置で発生させた磁気パルスによって大脳の運動野又は筋肉を磁気刺激することにより、筋肉の動きを増強又は回復させる装置において、一時的に電位計の入力回路を電気的に遮断する遮断回路を備えることを特徴とする治療用生体磁気刺激装置。
  7. 磁気パルス発生用トリガーに同期した特定の時間幅を有する入力回路遮断信号を発生する遮断回路であることを特徴とする請求項6記載の治療用生体磁気刺激装置。
  8. 入力回路遮断信号の時間幅が1msから100msであることを特徴とする請求項7記載の治療用生体磁気刺激装置。
  9. 短時間に複数回の磁気刺激を反復する装置を有する請求項6〜8のいずれか一項に記載の治療用生体磁気刺激装置。
  10. 磁気刺激の反復時間を1msから100msとする装置を備えた請求項9記載の治療用生体磁気刺激装置。
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