JP2010195752A - 骨形成促進剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価且つ安全で効果の高い骨形成促進剤を提供すること。
【解決手段】本発明の骨形成促進剤は、ホスファチジン酸を有効成分として含有する。例えば、大豆、菜種、米等の植物素材由来、イカや魚などの水産物由来、卵黄などの動物素材由来のリン脂質を含有する天然レシチンをホスホリパーゼDなどの酵素により酵素処理して調製したホスファチジン酸を有効成分としていることから、日常的に摂取可能で副作用がなく、飲食物に含ませることも可能である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の骨形成促進剤は、ホスファチジン酸を有効成分として含有する。例えば、大豆、菜種、米等の植物素材由来、イカや魚などの水産物由来、卵黄などの動物素材由来のリン脂質を含有する天然レシチンをホスホリパーゼDなどの酵素により酵素処理して調製したホスファチジン酸を有効成分としていることから、日常的に摂取可能で副作用がなく、飲食物に含ませることも可能である。
【選択図】なし
Description
本発明は、骨形成促進剤に関する。
近年、高齢化社会が進むにつれて、骨粗鬆症、骨折、腰痛などの骨疾患が急増している。骨組織には、骨芽細胞および破骨細胞が存在し、健康な骨は、骨芽細胞による骨の形成と破骨細胞による骨の再吸収とのバランスが保たれている。骨疾患は、このような骨の形成と骨の再吸収とのバランスが崩れることによって引き起こされる。現在、骨疾患を治療するために、エストロゲン類、ビタミンD3などの薬剤が使用されている。しかし、これらの薬剤には副作用のおそれがある。
骨疾患を予防するためには、カルシウム塩のサプリメント、牛乳、小魚などのようなカルシウムを多く含む食品などを、日常的に摂取する必要がある。しかし、これらのサプリメント、食品などは、摂取しても速やかに体内に吸収されにくいため、カルシウムの吸収量には限界がある。
例えば、乳清成分タンパク質およびそのペプチド画分が、骨の形成促進および骨の吸収抑制作用を有し、その作用によって骨が強化されることが開示されている(特許文献1〜4)。コラーゲンまたはゼラチンから得られるトリペプチドを有効成分とする骨の強化または密度向上剤(特許文献5)が報告されている。
タンパク質以外の成分を含有する骨形成促進剤などとしては、キノコから単離された(22E,24R)−エルゴスタ−7,22−ジエン−3β,5α,6β−トリオールで表される骨形成促進剤(特許文献6)、食用キノコから抽出されるエストロゲン様活性物質を含む骨粗鬆症の予防食品および治療薬(特許文献7)、動物の血漿抽出物を含有する骨形成促進および骨吸収抑制剤(特許文献8)、およびα−オキシ脂肪酸およびスフィンゴシン骨格を有する化合物を有効成分とする骨形成促進剤(特許文献9)などが開示されている。
しかし、これらの骨形成促進剤は、副作用のおそれや天然物などから有効成分を単離して調製される為製造コストが高くなるという問題点があった。
他方、安価で大量に製造し得、副作用の心配もない骨形成促進剤として、リゾホスファチジルエタノールアミンなどのリゾレシチンを有効成分とするものが開示されている(特許文献10)。
ところで、ホスファチジン酸(PAという場合がある)は最も基本的なグリセロリン脂質として古くから研究の対象とされてきた。各種の生体組織からの脂質抽出物中に、代謝中間体或いは前駆体としてわずかながら広く分布している。PAは、脂質性シグナル因子としての機能を持っており、種々のタンパク質と相互作用することが知られている(非特許文献1)。最近では、m―TOR(mammalia target of rapamycin)と呼ばれるタンパク質がPAによって直接的に活性化されることが報告され注目を集めている(非特許文献2)。他にもPAにはプロテインキナーゼC(PKC)を活性化して毛髪再生を促進する作用(特許文献11)、腫瘍細胞の膜流動性を向上させ多剤耐性を一変させる作用(特許文献12)が知られているが、PAが骨形成促進作用を持つことは全く知られていなかった。
FEBS Lett. , 531, 65-8, 2002
Science, 294, 1942-45, 2001
本発明の目的は、副作用の心配がなく、安価に大量に製造し得る、効果の高い骨形成促進剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ホスファチジン酸に骨形成促進効果をあることを見出し本発明に到達した。
すなわち本発明は、ホスファチジン酸を有効成分とすることを特徴とする骨形成促進剤を要旨とするものである。
また、本発明の第二は、前記した骨形成促進剤を含むことを特徴とする飲食品を要旨とするものである。
本発明によれば、ホスファチジン酸を有効成分とする骨形成促進剤及びそれらを配合した飲食品が提供される。この骨形成促進剤は、日常的に摂取可能で生体親和性に優れ、副作用がなく、そして大量にかつ安価に製造し得る。本発明の骨形成促進剤及びこれを含む飲食品は、日常的に摂取することができるので、骨疾患の予防効果および治療効果が期待できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
骨の形成は、次のような過程によって行われる。まず、骨芽細胞前駆細胞が、破骨細胞によって形成された骨吸収窩上で活発に増殖する。次いで、増殖した骨芽細胞前駆細胞が、骨芽細胞に分化する。このとき、骨芽細胞の増殖・分化のマーカーの1つであるアルカリホスファターゼ(ALP)が発現して、このALPの活性が上昇する。次いで、I型コラーゲン、オステオカルシンなどの細胞外骨基質タンパク質が合成され、骨基質にハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウムが沈着し石灰化が進行し、骨芽細胞中のカルシウムの沈着量が増加する。次いで、骨芽細胞は、周囲の骨基質に埋め込まれて骨細胞となり、造骨活動は停止する。
骨を健康に保つためには、骨を強くする、すなわち上述のように骨の形成を促進させる必要がある。あるいは、骨吸収の抑制、すなわち破骨細胞前駆細胞の増殖抑制、破骨細胞への分化の抑制、成熟破骨細胞の機能の抑制などによっても、骨を健康に保つことができる。
本発明の骨形成促進剤は、必須成分としてホスファチジン酸を単独又は2つ以上組み合わせたものを含有する。本発明に用いられるホスファチジン酸は本発明の効果を損なうものでない限りいかなるものを用いてもよい。例えば、大豆、菜種、米、落花生、トウモロコシ、胡麻、綿実、オリーブ、紅花、ヒマワリ、パーム、パーム核、その他穀物類、種実類、果菜類、葉菜類、茎菜類、根菜類、花菜類等の植物素材由来、イカや魚などの水産物由来、卵黄などの動物素材由来、酵母、カビ、キノコなどの菌類由来や細菌類由来のホスファチジン酸、リン脂質を含有する素材(抽出物なども含む)や各種レシチンをホスホリパーゼなど酵素処理して調製したホスファチジン酸、更には化学合成品や酵素合成品を用いることも可能である。
例えば、ホスファチジン酸はリン脂質を含有する天然レシチンと酵素との反応によって得られる。リン脂質を含有する天然レシチンとしては、例えば、大豆、菜種、米、落花生、トウモロコシ、胡麻、綿実、オリーブ、紅花、ヒマワリ、パーム、パーム核、その他穀物類、種実類、果菜類、葉菜類、茎菜類、根菜類、花菜類等の植物素材由来、イカや魚などの水産物由来、卵黄などの動物素材由来のレシチン、酵母、カビ、キノコなどの菌類や真菌類由来が挙げられるが、リン脂質を含む素材であれば特に限定されない。酵素としては、各種起源のホスホリパーゼDが用いられる。酵素反応は、例えば、リン脂質を含有する天然レシチンとTriton X−100をトリス緩衝液(pH5.5)に懸濁し、カルシウムイオン存在下、PLDを添加して37℃で撹拌して行う。
ホスホリパーゼDは、細胞膜の主要構成成分であるホスファチジルコリンを加水分解し、ホスファチジン酸とコリンを産生するリン脂質加水分解酵素である。ホスホリパーゼDは植物を始め、藻類、哺乳類、粘菌、細菌など生物に広範囲に分布するが、いずれのものを用いても良い。酵素反応条件は使用する酵素の性質に応じて、当業者により適宜決定され得る。
本発明に用いられるホスファチジン酸を構成する脂肪酸は少なくとも一つ以上が不飽和脂肪酸であることが望ましく、その不飽和脂肪酸の不飽和度が1以上で炭素数が4以上であることがより望ましい。より具体的にはブテン酸(C4:1、例えばクロトン酸、イソクロトン酸など)、ペンテン酸(C5:1)、ヘキセン酸(C6:1)、ヘプテン酸(C7:1)、オクテン酸(C8:1)、ノネン酸(C9:1)、デセン酸(C10:1)、ウンデセン酸(C11:1)、ドデセン酸(C12:1、例えばラウロレイン酸など)、トリデセン酸(C13:1)、テトラデセン酸(C14:1、例えばミリストレイン酸、ミリステライジン酸など)、ペンタデセン酸(C15:1)、ヘキサデセン酸(C16:1、例えばパルミトレイン酸、パルミテライジン酸など)、ヘプタデセン酸(C17:1)、オクタデセン酸(C18:1、例えばペトロセリン酸、ペトロセライジン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸など)、ノナデセン酸(C19:1)、エイコセン酸(C20:1、例えばガドレイン酸、ゴンドレン酸など)、ドコセン酸(C22:1、例えばエルカ酸、ブラッシジン酸、セトレイン酸など)、テトラコセン酸(C24:1、例えばネルボン酸など)、ヘキサコセン酸(C26:1)、オクタコセン酸(C28:1)、トリアコンテン酸(C30:1)、ペンタジエン酸(C5:2)、ヘキサジエン酸(C6:2、例えばソルビン酸など)、ペプタジエン酸(C7:2)、オクタジエン酸(C8:2)、ノナジエン酸(C9:2)、デカジエン酸(C10:2)、ウンデカジエン酸(C11:2)、ドデカジエン酸(C12:2)、トリデカジエン酸(C13:2)、テトラデカジエン酸(C14:2)、ペンタデカジエン酸(C15:2)、ヘキサデカジエン酸(C16:2)、ヘプタデカジエン酸(C17:2)、オクタデカジエン酸(C18:2、例えばリノール酸、リノエライジン酸など)、エイコサジエン酸(C20:2)、ドコサジエン酸(C22:2)、テトラコサジエン酸(C24:2)、ヘキサコサジエン酸(C26:2)、オクタコサジエン酸(C28:2)、トリアコンタジエン酸(C30:2)、ヘキサデカトリエン酸(C16:3)、オクタデカトリエン酸(C18:3、例えばα−リノレン酸、γ−リノレン酸、など)、エイコサトリエン酸(C20:3、例えばジホモ−γ−リノレン酸、ミード酸など)、ドコサトリエン酸(C22:3)、テトラコサトリエン酸(C24:3)、ヘキサコサトリエン酸(C26:3)、オクタコサトリエン酸(C28:3)、トリアコンタトリエン酸(C30:3)、オクタデカテトラエン酸(C18:4、例えばステアリドン酸など)、エイコサテトラエン酸(C20:4、例えばアラキドン酸など)、ドコサテトラエン酸(C22:4、例えばアドレン酸など)、テトラコサテトラエン酸(C24:4)、ヘキサコサテトラエン酸(C26:4)、オクタコサテトラエン酸(C28:4)、トリアコンタテトラエン酸(C30:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサペンタエン酸(C22:5、例えばクルパドノン酸など)、テトラコサペンタエン酸(C24:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)、テトラコサヘキサエン酸(C24:6、例えばニシン酸など)、などが挙げられる。
上記に示した直鎖不飽和脂肪酸以外にもルメン酸(C18:2)、カレンジン酸(C18:3)、ジャカリン酸(C18:3)、エレオステアリン酸(C18:3)、カタルピン酸(C18:3)、プニカ酸(C18:3)、ルメレン酸(C18:3)のような共役脂肪酸、リシノレイン酸(C18:1)やリシネライジン酸(C18:1)、ジモルフェコリン酸(C18:2)のような水酸化不飽和脂肪酸、ベモリン酸(C18:1)のようなエポキシ脂肪酸、ウロフラン酸のようなフラノイド脂肪酸、ミコリン酸のような高分子量の分岐鎖不飽和脂肪酸、その他メトキシ不飽和脂肪酸や環状不飽和脂肪酸などであってもよく、不飽和度が1以上で炭素数が4以上であれば構造や種類は特に限定されない。
本発明の骨形成促進剤は、上記したホスファチジン酸を有効成分として含有するものであるが、ホスファチジン酸の含有量は、本発明の骨形成促進剤中に、好ましくは0.011〜100質量%、より好ましくは0.1〜100質量%、最も好ましくは、1〜100質量%の割合で含有される。
本発明の骨形成促進剤には、ホスファチジン酸以外には、由来や調製方法によって異なるが、リゾホスファチジン酸(LPA)、ホスファチジルコリン(PC)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、ホスファチジルセリン(PS)、リゾホスファチジルセリン(LPS)等のグリセロリン脂質、アシルグリセロール類(トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール)、遊離脂肪酸類、グリセロールリン酸(GPA)、グリセロール、グリセロ糖脂質、ステロール類、スフィンゴ脂質(スフィンゴシン、スフィンゴシン−1−リン酸、スフィンゴミエリン、セラミド、セラミド−1−リン酸、グルコシルセラミド等)などが含有されていてもよい。
本発明の骨形成促進剤は、骨芽細胞前駆細胞の増殖および骨芽細胞への分化を促進し、コラーゲン産生を亢進すると共にアルカリホスファターゼ(ALP)活性を増強させる。更に本発明の骨形成促進剤は破骨細胞の分化を抑制することにより、骨形成の促進のみならず骨吸収の抑制の両面から骨バランスを骨形成優位の方向にシフトさせる。
また、本発明の骨形成促進剤は、経口摂取可能な形態、例えば粉末、散剤、顆粒、錠剤、カプセルなどの剤型にすることができ、また飲料などの食品に配合することもできる。
本発明の飲食品は、本発明の骨形成促進剤を含むものであり、本発明の飲食品は、日常的に摂取しやすくなり、そのため骨疾患の予防および治療が可能となる。本発明の飲食品の摂取量は特に制限はないが、通常、ホスファチジン酸の量が0.0001〜100g/日、好ましくは0.001〜10g/日、さらに好ましくは0.01〜5g/日となるような量である。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、この範囲に限定されるものではない。
実施例1
卵黄レシチンPL−30S(キユーピー株式会社製)200gにヘプタンとアセトンとの混合溶液(3:1(容量比))2Lを加えて溶解し、20,000UのホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)を含む酵素溶液(0.1Mトリス緩衝液、pH=5.6)740mLを添加して、撹拌しながら37℃で20時間酵素反応させた。分液後、ホスファチジン酸を含む有機溶媒層をエバポレーターで減圧濃縮(約3倍濃縮)し、濃縮物の5倍容量のアセトンを加えた。沈殿した不溶物を分別し、減圧乾燥してホスファチジン酸晶析物50gを得た。HPLCで測定すると(UV204nm)、得られた晶析物中にはホスファチジン酸が90%含まれていた。このホスファチジン酸(PA)晶析物をそのまま本発明の骨形成促進剤とした。
卵黄レシチンPL−30S(キユーピー株式会社製)200gにヘプタンとアセトンとの混合溶液(3:1(容量比))2Lを加えて溶解し、20,000UのホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)を含む酵素溶液(0.1Mトリス緩衝液、pH=5.6)740mLを添加して、撹拌しながら37℃で20時間酵素反応させた。分液後、ホスファチジン酸を含む有機溶媒層をエバポレーターで減圧濃縮(約3倍濃縮)し、濃縮物の5倍容量のアセトンを加えた。沈殿した不溶物を分別し、減圧乾燥してホスファチジン酸晶析物50gを得た。HPLCで測定すると(UV204nm)、得られた晶析物中にはホスファチジン酸が90%含まれていた。このホスファチジン酸(PA)晶析物をそのまま本発明の骨形成促進剤とした。
実施例2
市販の試薬である、1、2−DIoleoyl−sn−glycero−3−phosphate sodium salt (DOPA;SIGMA社製)を購入し、これを本発明の骨形成促進剤とした(純度98%)。
市販の試薬である、1、2−DIoleoyl−sn−glycero−3−phosphate sodium salt (DOPA;SIGMA社製)を購入し、これを本発明の骨形成促進剤とした(純度98%)。
比較例1
卵黄レシチンLPL−30S(キユーピー株式会社製)100gにヘプタンとアセトンとの混合溶液(3:1(容量比))100mLを加えて溶解し、1,0000UのホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)および1.35モルのエタノールアミンを含む酵素溶液(0.1Mトリス緩衝液、pH=8.0)40mLを添加して、撹拌しながら30℃で20時間酵素反応させた。分液後、ホスファチジルエタノールアミンを含む有機溶媒層をエバポレーターで減圧濃縮(約3倍濃縮)し、濃縮物の5倍容量のアセトンを加えた。沈殿した不溶物を分別し、減圧乾燥してホスファチジルエタノールアミン晶析物27gを得た。
卵黄レシチンLPL−30S(キユーピー株式会社製)100gにヘプタンとアセトンとの混合溶液(3:1(容量比))100mLを加えて溶解し、1,0000UのホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)および1.35モルのエタノールアミンを含む酵素溶液(0.1Mトリス緩衝液、pH=8.0)40mLを添加して、撹拌しながら30℃で20時間酵素反応させた。分液後、ホスファチジルエタノールアミンを含む有機溶媒層をエバポレーターで減圧濃縮(約3倍濃縮)し、濃縮物の5倍容量のアセトンを加えた。沈殿した不溶物を分別し、減圧乾燥してホスファチジルエタノールアミン晶析物27gを得た。
次いで、13,500UのホスホリパーゼA2(PLA2ナガセ:ナガセケムテックス株式会社製)を含む緩衝液(0.1Mトリス緩衝液、50mM塩化カルシウム、pH8)100mLに、得られたホスファチジルエタノールアミン晶析物9gを分散させ、撹拌しながら30℃で20時間酵素反応させた。反応終了後、反応液にエタノール1Lを添加してリゾホスファチジルエタノールアミンを抽出し、減圧ろ過によってリゾホスファチジルエタノールアミン抽出液を得た。このリゾホスファチジルエタノールアミン抽出液をエバポレーターで減圧濃縮(約3倍濃縮)し、濃縮物の5倍容量のアセトンを加えた。沈殿した不溶物を分別し、減圧乾燥してリゾホスファチジルエタノールアミン晶析物5gを得た。HPLCで測定すると(UV204nm)、得られた晶析物中にはLPEが70%含まれていた。このリゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)晶析物を比較例1とした。
試験例1(コラーゲン産生量)
新生マウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞(MC3T3−E1:理研バイオリソースセンター)を24ウェルプレートに2.5×104 cells/wellずつ播種し、37度、5%炭酸ガス存在下、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むMEMα培地(和光純薬工業製)で培養した。24時間後、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むMEMα培地(FBSを含まない)で細胞を洗浄し、実施例1及び2の骨形成促進剤をホスファチジン酸濃度として10μg/ml含むMEMα培地(0.1%BSA添加)と交換した。同様に、比較例1の晶析物をリゾホスファチジルエタノールアミン濃度として10μg/ml含むMEMα培地(0.1%BSA添加)と交換した。3日後に同様の培地と交換し、計7日間培養を継続した。コラーゲン産生量は、−20度に冷却した70%エタノールで細胞を固定化した後、Sircol Soluble Collagen Assay Kit(Biocolor社製)を用いて測定した。細胞増殖活性及びコラーゲン産生促進作用は無添加群の測定値を100として評価した。
新生マウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞(MC3T3−E1:理研バイオリソースセンター)を24ウェルプレートに2.5×104 cells/wellずつ播種し、37度、5%炭酸ガス存在下、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むMEMα培地(和光純薬工業製)で培養した。24時間後、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むMEMα培地(FBSを含まない)で細胞を洗浄し、実施例1及び2の骨形成促進剤をホスファチジン酸濃度として10μg/ml含むMEMα培地(0.1%BSA添加)と交換した。同様に、比較例1の晶析物をリゾホスファチジルエタノールアミン濃度として10μg/ml含むMEMα培地(0.1%BSA添加)と交換した。3日後に同様の培地と交換し、計7日間培養を継続した。コラーゲン産生量は、−20度に冷却した70%エタノールで細胞を固定化した後、Sircol Soluble Collagen Assay Kit(Biocolor社製)を用いて測定した。細胞増殖活性及びコラーゲン産生促進作用は無添加群の測定値を100として評価した。
得られた結果を表1に示す。
試験例2(アルカリホスファターゼ活性)
試験例1と同様の方法でMC3T3−E1を播種・培養し、48時間後に、実施例1及び2の骨形成促進剤をホスファチジン酸濃度として10μg/ml含むMEMα培地(0.1%BSA添加)と交換した。同様に、比較例1の晶析物をリゾホスファチジルエタノールアミン濃度として10μg/ml含むMEMα培地(0.1%BSA添加)と交換した。3日後に同様の培地と交換し、計7日間培養を継続した。トリス緩衝生理食塩水(TBS)で細胞を洗浄した後、細胞をエッペンチューブに回収して氷冷下で超音波破砕した。遠心分離後の上清を回収し、Protein assay(Bio−Rad)でタンパク質含有量を測定し、ラボアッセイALP(和光純薬工業製)でアルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定した。ALP活性は、タンパク質あたりで規格化して無添加群の測定値を100として評価した。得られた結果を表1に示す。
試験例1と同様の方法でMC3T3−E1を播種・培養し、48時間後に、実施例1及び2の骨形成促進剤をホスファチジン酸濃度として10μg/ml含むMEMα培地(0.1%BSA添加)と交換した。同様に、比較例1の晶析物をリゾホスファチジルエタノールアミン濃度として10μg/ml含むMEMα培地(0.1%BSA添加)と交換した。3日後に同様の培地と交換し、計7日間培養を継続した。トリス緩衝生理食塩水(TBS)で細胞を洗浄した後、細胞をエッペンチューブに回収して氷冷下で超音波破砕した。遠心分離後の上清を回収し、Protein assay(Bio−Rad)でタンパク質含有量を測定し、ラボアッセイALP(和光純薬工業製)でアルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定した。ALP活性は、タンパク質あたりで規格化して無添加群の測定値を100として評価した。得られた結果を表1に示す。
試験例3(アリザリンレッドS染色)
試験例1と同様の方法でMC3T3−E1を播種・培養し、48時間後に、実施例1及び2の骨形成促進剤をホスファチジン酸濃度として10μg/ml含む石灰化評価培地と交換した。同様に、比較例1の晶析物をリゾホスファチジルエタノールアミン濃度として10μg/ml含む石灰化評価培地と交換した。2日または3日ごとに同様の培地と交換し、32日間培養を継続した。上記の石灰化評価培地は、MEMαにFBSを10%、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム(和光純薬工業製)を50μg/ml、β−グリセロリン酸ナトリウム(和光純薬工業製)を10mM含む培地である。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を洗浄して−20度に冷却した70%エタノールで細胞を固定化した後、0.1M酢酸緩衝液(pH4.2)で40mMに調製したアリザリンレッドS(WAKO)溶液を添加して、37度で10分間インキュベートした。純水で洗浄した後、細胞に染色された色素の濃さでカルシウム量、すなわち石灰化の度合いを目視で評価した。比較対照群の濃さと同程度の場合を±、やや濃い場合を+、濃い場合を++、非常に濃い場合を+++として判定した。得られた結果を表1に示す。
試験例1と同様の方法でMC3T3−E1を播種・培養し、48時間後に、実施例1及び2の骨形成促進剤をホスファチジン酸濃度として10μg/ml含む石灰化評価培地と交換した。同様に、比較例1の晶析物をリゾホスファチジルエタノールアミン濃度として10μg/ml含む石灰化評価培地と交換した。2日または3日ごとに同様の培地と交換し、32日間培養を継続した。上記の石灰化評価培地は、MEMαにFBSを10%、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム(和光純薬工業製)を50μg/ml、β−グリセロリン酸ナトリウム(和光純薬工業製)を10mM含む培地である。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を洗浄して−20度に冷却した70%エタノールで細胞を固定化した後、0.1M酢酸緩衝液(pH4.2)で40mMに調製したアリザリンレッドS(WAKO)溶液を添加して、37度で10分間インキュベートした。純水で洗浄した後、細胞に染色された色素の濃さでカルシウム量、すなわち石灰化の度合いを目視で評価した。比較対照群の濃さと同程度の場合を±、やや濃い場合を+、濃い場合を++、非常に濃い場合を+++として判定した。得られた結果を表1に示す。
表1から明らかなように、ホスファチジン酸は骨芽細胞MC3T3−E1に対してコラーゲン産生促進作用、ALP活性増強作用、石灰化促進作用があることが判明した。また、これらの活性はリゾホスファチジルエタノールアミン(比較例1)より高かった。
ddYマウス(♂、7週齢)の骨髄細胞を10cmディッシュに播種し(1×107 cells)、30ng/mlのM−CSF(和光純薬工業製)を含む10%FBS−MEMα培地で1日培養した。非接着性細胞を別の10cmディッシュに移して、前記と同様の培地でさらに3日間培養してマクロファージ(BMDMs:Bone−Marrow Derived Macrophages)を誘導した。誘導したBMDMsをセルスクレイパーではがした後、24ウェルプレートに4×104 cells/wellずつ播種し、50ng/mlのrmM−CSF(和光純薬工業製)と100ng/mlのrrhsRANKL(和光純薬工業製)を含む10%FBS−MEMα培地に、実施例1及び2の骨形成促進剤をホスファチジン酸濃度が10μg/mlとなるように添加して、破骨細胞への誘導を行った。同様に、比較例1の晶析物をリゾホスファチジルエタノールアミン濃度が10μg/mlとなるように添加して、破骨細胞への誘導を行った。5日後(3日目に培地交換)、TRAP染色キット(プライマリーセル社)を用いて細胞を染色し、wellあたりの破骨細胞(赤く染まった巨大細胞)の数をカウントした。破骨細胞数は、無添加群の測定値を100として評価した。
得られた結果を表2に示した。表2よりホスファチジン酸は破骨細胞形成を抑制することが分かった。則ち、ホスファチジン酸は破骨細胞の形成を抑制することで生体において骨吸収を抑制できることが示された。
本発明によれば、ホスファチジン酸を有効成分として含有することにより、副作用がなく効果の高い骨形成促進剤を大量にかつ容易に製造し得る。したがって、本発明の骨形成促進剤及びこれを含む飲食品は、日常的に摂取可能であり骨疾患の予防効果および治療効果が期待できる。
Claims (2)
- ホスファチジン酸を有効成分とすることを特徴とする骨形成促進剤。
- 請求項1記載の骨形成促進剤を含むことを特徴とする飲食品。
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