JP2010190565A - 太陽エネルギ収集装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】住宅の屋根にも載せうる軽量な太陽エネルギ収集装置乃至太陽光発電機を実現しその追尾システムも低コスト且つ軽量にする。
【解決手段】トラフリフレクタ101及びそれを回動させるモータ(駆動システム)142によって太陽光発電機(太陽エネルギ収集装置)100を構成する。リフレクタ101は、略平坦形状の上部開口面112及びその面112に対向する下部凸面115を有する単体の固体光学素子110、面112を通過した太陽光ビームBが面112に向かって反射しその面112上の直線状領域に集まるよう面115に密接されたミラー130、並びにミラー130によって集められた光を受光するよう固定配置された直線状の光起電レシーバ(太陽エネルギ収集素子)120を備える。モータ142は、面112に対し不平行な軸Zを中心にリフレクタ101を回動させる。
【選択図】図1(B)

Description

本発明は太陽エネルギ収集装置の改良に関する。
太陽エネルギ収集装置としては従来からトラフリフレクタ型の太陽光発電機が知られている。図15(A)〜図15(C)にその一例構成50を示す。この太陽光発電機50は、概略、樋型反射器(トラフリフレクタ)51、太陽光ビームBがその焦線(focal line)FL上に集まるようリフレクタ51上に形成された反射面52、その焦線FLに沿って配置された長尺のフォトレセプタ53、そのフォトレセプタ53をリフレクタ51に対し固定されるように支持する支持腕55、並びにリフレクタ51を支持し焦線FLと平行な水平軸X周りで回動させる図示しない追尾システムを備えている。こうした発電機50を使用する場合、通常は、図示の通りその水平軸Xが南北方向に揃うようにリフレクタ51を配置した上で、1日の間に太陽が示す動き(太陽の日周運動)に応じ追尾システムがリフレクタ51を東西方向に回動させる。これによって、ビームBを継続的に面52上に集めることができる。
しかしながら、この種の発電機で十分高い発電効率を得るには、そのリフレクタ素材や反射面形状を緻密に選定・設計し、リフレクタが搭載されている基台をしっかりと支持固定し、その基台と共に追尾システムを構成しているモータでその基台を精密に駆動してトラフリフレクタの向きを精密に制御することが必要である。雨風に耐えられる構造にすることも求められる。そのため、この種の発電機はコンクリート製又は金属製の土台上に設置するのが普通で、一般住宅の屋根に載せるにはかなりの工作が必要であった。また、小型のトラフリフレクタを多数横並びに配置し単一のモータで一斉に駆動する構成とすることも可能であるが、そうした構成ではヒンジや連結腕を多数使用しなければならない。太陽光を精密に合焦させるにはそれら多数のヒンジ及び腕を互いに同期して且つ精密に回動させねばならないが、その状態を実現・維持するのは施工上及びコスト上難しいことである。
本発明の目的は、従来の太陽光発電機で発生するこれらの問題を解決乃至緩和し、住宅の屋根にも載せうる軽量な太陽エネルギ収集装置乃至太陽光発電機を、使用する光起電素材の量を従来のフラットソーラーパネル等に比べ抑えつつ、また高コスト又は重量な追尾システムを使用することなく実現することにある。
このような目的を達成するため、本発明に係る太陽エネルギ収集装置は、(1)略平坦形状の開口面及びその上部開口面に対向する下部凸面を有する単体の固体光学素子、その固体光学素子の上部開口面を通過した太陽光がその上部開口面に向かって反射しその上部開口面上の直線状領域に集まるようその固体光学素子の下部凸面に対し密接されたミラー、並びにそのミラーによって集められた光を受光するよう固定配置された直線状の太陽エネルギ収集素子を備えるトラフリフレクタと、(2)固体光学素子の上部開口面に対し不平行な軸を中心にしてトラフリフレクタを回動させる手段と、を備える。好ましくは、その屈折率が1.05〜2.09の範囲内にある素材で固体光学素子を形成し、且つその下部凸面上に堆積された金属層又は被着された反射膜でミラーを形成する。
また、本発明に係る太陽光発電方法では、(1)略平坦形状の上部開口面及びその上部開口面に対向する下部凸面を有する単体の固体光学素子と、直線状の太陽エネルギ収集素子と、固体光学素子の上部開口面を通過した太陽光がその上部開口面に向かって反射し太陽エネルギ収集素子に集まるようその固体光学素子の下部凸面に対し密接されたミラーと、を備えるトラフリフレクタを使用し、(2)太陽エネルギ収集素子がその支持面に対してある角度をなすよう、平坦な支持面の上にトラフリフレクタを配置した上で、(3)その回動の最中も太陽エネルギ収集素子がトラフリフレクタ用の支持面に対し上述の角度を保つよう、その支持面に対し略直交する軸を中心にしてトラフリフレクタを回動させる。
本発明の第1実施形態に係るトラフリフレクタ型太陽光発電機の概略構成を示す分解斜視図である。 その俯瞰斜視図である。 そのトラフリフレクタの稼働状態を示す横断面図である。 同じくその縦断面図である。 本発電機の住宅屋根への設置形態を示す斜視図である。 本発電機におけるトラフリフレクタの稼働時姿勢、特に日の出直後の姿勢を示す斜視図である。 同じく正午頃の姿勢を示す斜視図である。 同じく日の入り直前の姿勢を示す斜視図である。 本発明の第2実施形態に係るトラフリフレクタ型太陽光発電機の概略構成を示す俯瞰斜視図である。 本発電機におけるトラフリフレクタの稼働時姿勢、特に日の出直後の姿勢を示す上面図である。 同じく正午頃の姿勢を示す上面図である。 同じく日の入り直前の姿勢を示す上面図である。 本発明の第3実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機の概略構成を示す俯瞰斜視図である。 本発明の第4実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機の概略構成を示す分解斜視図である。 第3実施形態に係る発電機の稼働時姿勢、特に日の出直後の姿勢を示す上面図である。 同じく正午頃の姿勢を示す上面図である。 同じく日の入り直前の姿勢を示す上面図である。 本発明の第5実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機の概略構成、特にその日の出直後の姿勢を示す斜視図である。 同じく正午頃の姿勢を示す斜視図である。 同じく日の入り直前の姿勢を示す斜視図である。 本発明の第6実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機の概略構成、特にそのティルト機構で小さくティルトさせたときの姿勢を示す斜視図である。 同じく大きくティルトさせたときの姿勢を示す斜視図である。 本発明の第7実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機の概略構成を示す斜視図である。 本発明の第8実施形態におけるトラフリフレクタ用固体光学素子の概略構成を示す断面図である。 本発明の第9実施形態におけるトラフリフレクタ用固体光学素子の概略構成を示す断面図である。 本発明の第10実施形態におけるトラフリフレクタ用固体光学素子の概略構成を示す断面図である。 本発明の第11実施形態におけるトラフリフレクタ用固体光学素子の概略構成を示す断面図である。 本発明の第12実施形態におけるトラフリフレクタの概略構成を示す断面図である。 本発明の第13実施形態におけるトラフリフレクタ用固体光学素子の概略構成を示す断面図である。 本発明の第14実施形態におけるトラフリフレクタ用固体光学素子の概略構成を示す断面図である。 本発明の第15実施形態におけるトラフリフレクタ用固体光学素子の概略構成を示す断面図である。 従来技術に係るトラフリフレクタ型太陽光発電機の概略構成、特に日の出直後の姿勢を示す斜視図である。 同じく正午頃の姿勢を示す斜視図である。 同じく日の入り直前の姿勢を示す斜視図である。
以下、本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)が本発明を理解し実施することができるよう、特定の用途及び条件の許での実施形態を説明する。その説明中、相対的な向きを判りやすく示すため「垂直」「水平」なる語を使用するが、何か絶対的な座標系を指定するものではないのでその点に留意されたい。また、いわゆる当業者であれば、これから説明する諸実施形態に対し様々に変形を施すことができ、また本願記載の原理を適用して本発明を様々な形態で実施することができよう。即ち、本発明はこれから説明する形態以外の形態でも実施することができる。本発明の構成要件に関しては別紙特許請求の範囲を参照されたい。
図1(A)及び図1(B)に、本発明の第1実施形態に係るトラフリフレクタ型太陽光発電機100の概略構成を示す。図1(A)に示したのは分解斜視外観、図1(B)に示したのは俯瞰斜視外観である。この発電機100は本発明に係る太陽エネルギ収集装置の一例であり、図1(B)から読み取れるように図15(A)〜図15(C)に示した従来のトラフリフレクタ型太陽光発電機50との類似点を有している。例えば、そのトラフリフレクタ101に入射する太陽光ビームBを樋型放物面鏡(パラボラトラフミラー)130で反射させてリフレクタ101の焦線FL上に集める点、その焦線FL沿いに配された太陽エネルギ収集素子(フォトレセプタ)でそれを受光する点、そのリフレクタ101の向きを太陽光の収集に適した向きにする追尾システム140を備える点等である。その反面、この発電機100は、次の二点で従来の発電機50と大きく異なっている。第1に、そのリフレクタ101が固体光学素子110を備えており、その素子110上にミラー130と太陽エネルギ収集素子たる光起電性受光器(PVレシーバ)120とが固定配設されていることである。第2に、リフレクタ101の上部にあり焦線FLと平行な開口面112に対し平行でない軸Zを中心にして、追尾システム140がリフレクタ101を回動乃至回転させることである。
次に、トラフリフレクタ101の構成諸部材について図1(A)及び図1(B)を参照して概要を説明する。即ち、略平坦な上部開口面112及び線形放物形状の下部凸面115を有する透明な固体光学素子110、面112上に実装されたPVレシーバ120、並びに面115に密接されたパラボラトラフミラー130について説明する。
まず、固体光学素子110は、光学用透明素材の一体成形、押出等によって形成された単体素子である。その断面は全長に亘り同一形状、上部開口面112は低光反射性の略平坦面、下部凸面115は線形放物形状の面(樋に沿って放物線を並べた面)となっている。本実施形態では、英国Pilkington PLC製のガラスOptiwhite等の低鉄組成ガラスを既知のガラス成形法で成形してこの素子110を実現している。こうした素材及び手法を使用するのは、粘度が高い低鉄組成ガラスを成形することで、その表面欠陥が少ない品が得られるからである。この品は表面凹凸が少なく不純物が付着しにくいので、他種素材、他種製造法では得られない幾つかの長所、例えば秀でた光透過率や表面特性を備える素子110となる。但し、これ以外の透光性素材や製造法で素子110を形成し本発明を実施することもできる。素子110に相応しい特性を有する透明素材であればよいので、例えばシリコーン系、ポリエチレン系、ポリカーボネート系、アクリル系等の透明ポリマ素材や、低鉛組成ガラスも、素子110の素材として使用することができる。また、プラスチック等の透明ポリマ素材を加工及び研磨して単体の素子110を形成するという製造法や、複数個の素子片を接着等の手段で一体化させて素子110を形成するという製造法も、使用することができる。いわゆる当業者にとり既知の製造法のなかには、研磨を(ほとんど)行わずに十分な機械公差を保てる成形手法もあるので、その手法を使用しポリマ素材を成形すれば、高性能光学素子を低コストで製造することができる。
次に、パラボラトラフミラー130は固体光学素子110の下部凸面115に密接(例えば堆積)されている。素子110に入射した太陽光は、このミラー130の反射面にて素子110内に反射され、構造的に決まる焦線FL上に集まっていく。なお、「密接」とは、ミラー130・凸面115間に空隙がない、即ちミラー130の反射面と素子110の凸面115がほぼ同じ線形放物形状でほぼ同じ位置を占めている、という意味である。「焦線FL」とは、ミラー130の個々の断面で発生する焦点FP(図2(A)参照)をミラー130の全長に亘り連ねたもののことである。図2(A)に示すように、本実施形態における焦線FLは、素子110の上部にある平坦な開口面112、特にその中心線近傍領域に重なっている。面112を介しビームBとして入射した太陽光は、ミラー130によって反射され、その領域内に集まってくる。実際には、焦線FLと面112の相対的位置関係が既知且つ固定的であればよいので、焦線FLが面112の中心線近傍領域に重なる必要はない。例えば面112から見て上方又は下方に焦線FLの位置がずれていてもよい。
このパラボラトラフミラー(第1ミラー)130は幾通りかの手法で形成することができる。第1の手法は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)等の光反射性素材をスパッタリング等で固体光学素子110の下部凸面115上に直接堆積(成長)させることで、優れた光学特性を有する反射膜を低コストで形成する手法である。既知の鏡面形成法に従いスパッタリング等を実行して反射膜を形成すると、その反射膜即ちミラー130は自然にその面に密着し、その内寄り面は自然にその面115と同形状になる。従って、ミラー130に求められる鏡面形状に見合った凸面115が生じるよう型、押出等で成形を行い素子110を形成することにより、所望形状のミラー130を効率的且つ所望位置に形成することができる。従来のトラフリフレクタと違い、組立コストや位置決めコストが嵩むこともない。更に、この手法で反射膜を成長させると凸面115に密着したミラー130が形成され、その状態で固定されるので、光学的に望ましい線形放物形状及び位置が自動的に保たれることとなる。即ち、素子110上に成長させた反射膜は、手を加えない限りその形状及び位置が変わらないので、上部開口面112に対するミラー130の位置が固定されることとなる。従来の発電機では、複数個の部分ミラーを配列又は連結してミラーを形成していたので部分ミラー間の位置合わせ乃至位置調整が必要であったが、この手法であればそうした作業は不要である。また、第2の手法は、可撓性のある反射膜(例えばポリマを基材とする膜)を別途形成し、凸面115上に重なるよう付着(例えば接着)させることで、その面115上にミラー130を実装する手法である。第1の手法で面115上に直に形成される反射膜と同様、この反射膜乃至ミラー130も、実装工程を通じ、自然とその面115に対し正確に位置合わせされる。また、多少反射率が劣るものの、この手法であれば、凸面115上に直に反射膜を形成する手法よりも製造コストを抑えることができる。
そして、PVレシーバ120は、図1(B)及び図2(A)に示すように、上部開口面112の中心線近傍領域で焦線FLと重なるよう、その固体光学素子110上に固定配置されている。その素子110の下部凸面115からレシーバ120に至る光路上に空隙は発生しておらず、レシーバ120のうち太陽光を受光する部分である能動面125は素子110の内部を向いている。従って、パラボラトラフミラー130によって反射された太陽光は、レシーバ120の能動面125上にほぼ全て集まることとなる。また、このレシーバ120は素子110の長手方向に延びる長尺構造を採っており、その構造はミラー130に対する位置関係が固定されるよう開口面112上に固着されている。具体的には、この長尺構造は、入射太陽光を電力に変換する能力(光起電能)のある半導体ピース乃至ストリップを複数個、シリコン半導体等を用いて既知手法で製造し、それらのピース乃至ストリップを適宜配列し、そして隣同士のピース乃至ストリップ間をワイヤ等の導体(図示せず)で縦続接続する、という手法で形成されている。更に、これは本発明の実施にとり必須ではないが、レシーバ120は従来からソーラーパネルの製造に広く使用されている光起電(PV)シリコン素材で形成することができる。その場合、同じ素材を使用する従来のソーラーパネルに比べ、単位能動面積当たりで10倍以上の電力を発生させることができる。また、他種PV素材を薄膜成長させた素子や、(その素子がコスト的に許容できる水準になった暁には)マルチジャンクションプロセス等で形成される高効率素子も、レシーバ120又はその構成部品として使用することができる。
透明な固体光学素子110を用いトラフリフレクタ101を形成することで生じる効果、特に図15(A)〜図15(C)に示した従来のトラフリフレクタ型太陽光発電機50に対する長所としては、既に述べたものの他に次に述べる諸事項がある。
第1に、パラボラトラフミラー130の形成個所として下部凸面115を利用すると共にPVレシーバ120の配置個所として上部開口面112を利用しているので、その面112を介しビームBとして固体光学素子110に入射した太陽光は、凸面115上のミラー130による反射でPVレシーバ120上に集められるまでずっと、素子110内だけを通ることとなる。即ち、ビームBが過ぎる空気対固体界面が1個だけ(開口面112だけ)となるので、従来の多部品型太陽エネルギ収集装置に比べて損失が少なくなる。開口面112に抗反射被覆を設ければ、その空気対固体界面で生じる損失は更に少なくなる。また、この構成では、ミラー130の反射面とレシーバ120の能動面125が常に素子110で覆われていて塵埃や腐食で劣化することがない分、メンテナンスの頻度も抑えることができる。塵埃や天候に曝されるのは専ら開口面112(及びレシーバ120の背面にある非能動面)であるので、そのメンテナンスも割合に簡単な清掃で足りる。
第2に、光学素子110が固体であり上部開口面112・下部凸面115間の位置関係が変わらないので、パラボラトラフミラー130・PVレシーバ120間の位置関係は、製造に起因する誤差や屋外環境への曝露による変化が僅かにありうるだけで、基本的にはその形成・実装後に変わることがない。そのため、メンテナンスコストを抑えつつ、好適な光学的動作を確保することができる。即ち、ミラー130の形成に使用している透明な固体部品(素子110)をレシーバ120の実装先支持部材としても使用しているので、ミラー130・レシーバ120間の位置関係が経時的に安定且つ確実に保たれる。
第3に、太陽エネルギ収集素子として使用されているPVレシーバ120の通常稼働時セル温度(NOCT)を低下させることができる。即ち、固体光学素子110で太陽光を屈折させているのでパラボラトラフミラー130を狭幅にすることができ、その上に配するレシーバ120も狭幅にすることができるので、単位面積当たり放熱量をさほど大きくしなくてもそのレシーバ120のNOCTを抑えることができる。また、レシーバ120の背面(図で上側の面)は“遊んで”いるスペースであるので、図示しないが、その面から立ち上がるように放熱フィンを設けることもできる。
第4に、トラフリフレクタ101が小断面且つ低背でその製造コストも低いので、後述の如くトラフリフレクタを複数本並べて連動させるアレイも低コストで製造可能である。上述の如く固体光学素子110を狭幅にすれば、そうして形成されるトラフリフレクタアレイも低背且つ軽量になる。その形成も容易である。また、その素材としてポリカーボネート系、アクリル系等のポリマ素材を使用することで、更に低背且つ軽量なトラフリフレクタユニットを製造することができる。そうしたトラフリフレクタユニットを複数本並べて連動させるアレイも比較的低背になる。こうした低背なアレイは大きなスペース無しで輸送及び保管することができ(高密度収納が可能で)、それを含めた総実装コストがかなりの程度抑えられる。
また、従来の発電機50に対する第2の相違点として前述した通り、本実施形態の太陽光発電機100では、固体光学素子110の上部開口面112(及びそれと平行な焦線FL)に対し不平行な軸Zを中心にして、追尾システム140がトラフリフレクタ101を回転乃至回動させている。即ち、図1(B)に示す如く、発電機100が搭載されている支持面S及びその素子110の開口面112が焦線FLに対し平行であり、軸Zがそれらの面112及びS(ひいては焦線FLが属する面)に直交しているので、面112上におけるPVレシーバ120は、その下方にある面Sと平行なある面P内に保たれる。こうした配置を採用しているため、システム140に課すパワー及び構造強度上の技術的条件を、市販のトラフリフレクタ型太陽光発電機に課されるそれに比べて、かなり低くすることができる。そのため、これから詳述する通り、経済的で住宅の屋根にも載せられる太陽光発電機となる。
その追尾システム140は、更に、トラフリフレクタ101の長手方向を基準として太陽の方角を検知し、その受光面Pに太陽光が入射する方角に対しリフレクタ101の長手方向が実質的に平行になるようそのリフレクタ101を回動させる、という仕組みを採っている。具体的には、太陽の位置を図示しないセンサで検知し、リフレクタ101に求められる軸Z周り回動角θを図示しないプロセッサ等の機構で導出し、その結果に基づきモータ142を稼働させ軸Z周りでリフレクタ101を回動させている。そのモータ142は、図1(B)に示す如く、発生させた機械力例えばトルクが伝達されてリフレクタ101が軸Z周りで回動するよう、アクスル145等を介しリフレクタ101に機械連結されている。軸Z周り回動角θの導出は、地球から見た太陽の動きを示す精密な数式と、その太陽光発電機100の位置とに基づく厳密な計算で行っている。その計算に際しては、GPS(全地球測位システム)受信機、フォトセル等のセンサ群からフィードバックされる情報に従い駆動系統の誤差を補償している。なお、このフィードバックシステムは必須なものではない。
次に、図2(A)及び図2(B)を参照して太陽光発電機100の動作をより詳細に説明する。まず、図2(A)の如くトラフリフレクタ101の長手方向と発電機100に対する太陽光入射の方角とが平行である場合、その太陽光はパラボラトラフミラー130で反射され、その焦線FL沿いにあるPVレシーバ120へと集まっていく。この現象は、放物面リフレクタに入射された平行光ビームがそのリフレクタで反射されて焦点に集まる、という周知現象に似ているが、この例では単一の焦点FPではなく焦線FLが形成されている(図2(A)の方向からは単一の焦点FPに見えるが実際には図2(B)の如く焦線FLである)。例えば、図2(B)で右斜め上(図2(A)で紙面奥)から入射している太陽光ビームBは、ミラー130で反射された後、図2(B)で左斜め上(図2(A)で紙面手前)へと進んでいる。
この集光方式には従来の集光方式にない幾つかの長所がある。第1に、従来のカセグレン型太陽光集光器なら600〜10000倍程度の高集光率が求められるところ、図2(A)及び図2(B)に示した集光方式では10〜100倍程度の集光率で足りる。従って、リフレクタ素材、リフレクタ形状及び追尾精度についての技術的条件が緩和される。第2に、従来のフラットアレイ型ソーラーパネルではシリコン素材のコストが嵩むところ、図2(A)及び図2(B)に示した集光方式では、その集光率が25倍程度とあまり高くない場合でも、PVレシーバ120用PVシリコン素材のコストは、発電機100全体のコストに比しまた従来のフラットアレイ型ソーラーパネルでのコストに比し、かなり低コストになる。
第3に、焦線FLと平行な方角から非零入射角で入射した太陽光ビームBは、縦断面図たる図2(B)から読み取れるように、トラフリフレクタ101まで進んでそこで反射され、その後にPVレシーバ120上に集まってくる。これに似た平行光ビーム集光現象は、円柱レンズ、円柱フレネルレンズ、湾曲/屈曲円柱フレネルレンズ等に平行光ビームを通したときにも生じうる。しかし、そうしたレンズを使用すると、その屈折特性の影響で、太陽光入射角の増大につれて焦線位置がレンズ寄りに動いてしまう。トラフならばこれを避けて反射系の特性を維持することができる。
第4に、図2(B)に示す如く固体光学素子110を使用しているので、PVレシーバ120上の非照射領域が狭くなるといった効果も発生する。まず、太陽光ビームBが素子110に入射する角度Δは、そのトラフリフレクタ101から見た太陽の位置で決まる。そのため、図2(B)中に破線で示すように、通常は斜め上からビームBが入射してくる。斜め上からビームBが入射すると、パラボラトラフミラー130で反射された太陽光が(ほとんど)当たらない非照射領域がレシーバ120の縁に発生する。仮に、本実施形態から素子110を取り去ったとしたら、ビームBのうち縁をかすめて入射してきたビームB1はその方向を変えずに進み、ミラー130による反射で角度ΔのビームB1Aとなってレシーバ120に入射するので、レシーバ120の縁に比較的広い非照射領域120Aが発生することとなろう。この領域120Aのサイズは、ミラー130の形状や太陽の仰角で左右されるが、太陽の仰角が小さいほど長く、例えばトラフ幅=1フィート且つ仰角=45°ならその長さは1フィート程にもなるはずである(1フィート=約0.3m)。そのため、レシーバ120の縁付近にPVセルを設けない、多数のバイパスダイオードを設ける、レシーバ120の動作を調整する複雑な機構を設ける、高価なスイッチング素子を使用する、朝夕時間帯の発電を断念する、その任意の組合せ等、何らかの問題軽減策を採ることが必要になる。しかし、本実施形態ではそのリフレクタ101に素子110が備わっているので、そうした有害な端部効果が顕著に現れることはほとんどない。それは、ビームB1が素子110への入射時に屈折して角度αのビームB1Bとなるからである。レシーバ120の縁にはなお非照射領域120Bが発生しうるけれども、ビームB1Bがミラー130で反射されてレシーバ120に入射しているので、その領域120Bは素子110がない場合のそれ(領域120A)に比べてかなり狭くなる。即ち、素子110を形成している光学用透明素材は空気に比べかなり高屈折率であるので、太陽光は素子110への入射時に大きく屈折し、素子110内で開口面112の法線に近い光路を採るので、非照射乃至貧照射領域は狭くなる(120B)。発明者の知見によれば、その実施形態の詳細によるが、素子110の屈折率は1.05〜2.09の範囲内、とりわけ1.15〜1.5の範囲内にするのが望ましい。フレネル損失を抑えるため透明素子(カバー等)の屈折率をできるだけ低くすることが求められる他種システム、例えばフラットアレイ型ソーラーパネル等のPV式太陽エネルギ収集装置での常識からすれば、この範囲設定自体画期的なことである。
一般に、非照射乃至貧照射領域となる個所にPVセルを配置するのはシステム構成上無駄に近いことである。この点からすると、図示例のように非照射領域120Bが狭い構成は有利である。非照射領域が広い構成に比べPVセルを多く配置できるので、昼間時間帯の発電量が多くなり、また朝夕時間帯の発電量も増えるからである。それに加え又は代えて、図2(B)の左端に示した通り、トラフリフレクタ101の端部のうち領域120Bとは逆側の端部にフラットミラー111を配置することもできる。このミラー111で太陽光をPVレシーバ120方向に反射させることで、領域120Bが生じている分を補い、レシーバ120の実効長をリフレクタ101の長さと概ね等しくすることができる。但し、太陽光ビームBが開口面法線に対し大きな角度をなしているときには、レシーバ120を構成しているPVセルのうちミラー111寄りにあるものが、他の大半のセルに比べて高温になることがある。
図3に、太陽光発電機100を住宅300の屋根310に載せた状態の斜視外観を示す。この例では、屋根310の表面(任意勾配γの平坦面)に対し軸Zが実質的に直交するよう屋根310上に発電機100が載っている。その軸Zを中心にトラフリフレクタ101を回動させても、PVレシーバ120の受光面Pは屋根310の表面と平行に保たれる。即ち、住宅300の屋根310の表面に対しほぼ直交する軸Zを中心にしてリフレクタ101を回動させ、その面から立ち上がらないで太陽を追尾するようにしているため、本実施形態の発電機100は、大抵の屋根勾配γの住宅300に設置することができる。更に、リフレクタ101・屋根310間の距離が小さい分、発電機100の支持やリフレクタ101の回動に必要な支持構造(基台)が小型軽量になるため、基台に課せられる技術的条件は緩く、屋根310の改造や葺き直しをせずに済ますことができる。
また、数学的にも判るように、太陽がどちらの方角にあっても、図示の通りトラフリフレクタ101をその方角に応じた角度θまで(或いは180°+θまで)回動させることで、太陽光をPVレシーバ120上に全て集めうる状態にすることができる。同じくこの図から読み取れるように、受光面P毎にユニークな法線ベクトルに対する俯角Φを使用し太陽光入射角(仰角)を表すと一般に90°−Φとなる。これは、太陽光を遮るものがない限り、その設置場所及び形態によらずリフレクタ101に太陽光を入射させることができる、ということである。即ち、レシーバ120の向きが太陽の方角から外れていても、その法線ベクトル(即ち軸Z)を中心に受光面P上でリフレクタ101を回動させてそれらを互いに平行にすることで、太陽光がレシーバ120上に存分に集まる状態に変えることができる。
図4(A)〜図4(C)に、ある典型的な一日における太陽光発電機100の日周動作をその発電機100の斜視外観で示す。ここでいう日周動作とは、焦線FL沿いに配置されているPVレシーバ120が受光面P内で回動してその長手方向が太陽の方角と平行に保たれるように、トラフリフレクタ101を回動させる動作のことである。図中の方角表記P1から読み取れるように、この回動動作では、日の出直後はリフレクタ101の長手方向が東西方向に近く(図4(A)参照)、正午頃はほぼ南北方向となり(図4(B)参照)、そして日の入り直前は東西方向に近くなる(図4(C)参照)。この日周動作は、市販されている従来のトラフリフレクタ型太陽光発電機と明らかに相違している。従来型発電機では、多くの場合、トラフリフレクタの長手方向を南北方向に固定しそのトラフリフレクタを水平軸周りに回動させている。また、発明者の知見によれば、トラフリフレクタの長手方向を(南北方向ではなく)東西方向に固定し、そのトラフリフレクタを(太陽の朝夕間移動に応じ東から西へと180°回動させるのではなく)夏から冬へ更に夏へという太陽の年周運動に応じ南北方向にティルトさせる従来型発電機もある。これらの従来型発電機では、本発明の構成と違い、トラフリフレクタの長手方向が南北方向又は東西方向に固定されているし、トラフリフレクタが直交軸周りで回動されているわけでもない。更に、地球上の多くの地帯では太陽が弧を描いて空を馳せるので、トラフリフレクタの長手方向を東西方向に固定したのでは、その角度補正量は僅かであれ太陽の日周運動に応じ焦線沿いにトラフリフレクタを回動させないと、太陽光がうまく集まっている状態を維持することができない。
図5に、本発明の第2実施形態に係るトラフリフレクタ型太陽光発電機100Aの斜視外観を示す。第1実施形態と同じく、この発電機100Aもトラフリフレクタ101を備えており、そのリフレクタ101は上部開口面112及び下部凸面115を有する固体光学素子110を備えている。更に、太陽光ビームBを焦線FL上に集めうる形状のパラボラトラフミラー130が凸面115上にあり、開口面112上の焦線FL沿い部位にはフォトレセプタたるPVレシーバ120が固定されている。反面、この発電機100Aは、その追尾システム140Aを構成している基台145Aが丸い円盤状であり、その基台145Aの縁付近に配した駆動システム142Aで基台145A上のリフレクタ101を下方の支持面SAを基準に回動させる点で、第1実施形態とは異なっている。
このように基台145Aを丸くすると、その上に載るトラフリフレクタ101の重量が支持面SA上に広く分散する。そのため、この太陽光発電機100Aは住宅での使用により適している。また、図示の通り、この基台145Aは、支持面SA上に固定実装された固定基部146と、その基部146上の軌道(図示せず)に沿い基部146に対し回動させうる支持用可動部147とで構成されている。従って、可動部147をその軌道に沿って回動させることで、その上に載っているリフレクタ101を直交軸Z周りで回動させることができる。また、これら基台構成部材は、中実な円盤状の部材としてもよいがここでは中空筒状にしてある。これは、いわゆる当業者には自明な通り、基台145Aの重量を抑えることで、発電機100Aを住宅屋根上への設置に適したものにするためである。即ち、中空であれば屋根又はその周辺の支持構造にかかる負担が減り、その改修の必要性も更に小さくなる。
更に、この基台145Aでは、その周縁間で計測した直径Dが、その焦線FLに沿って計測したトラフリフレクタ101の長さL以上となっている。この直径Dはできるだけ大きくする方がよい。それは、基台145Aが広い方が、太陽光発電機100Aの重量を下側の支持面SA上により広く分散するため、ひいては技術的条件が緩和され住宅の屋根上に設置しやすくなるためである。こうした効果が生じるのは、一つには、丸い基台145Aの上にリフレクタ101の全長が載っているため、そのリフレクタ101のどの部分も等しく回動するからである。その点、トラフリフレクタを長手軸周りで回動させる従来型発電機50、即ちトラフリフレクタのうち駆動ギアから遠い位置にある部分で風力や重力の作用による捻れが顕在化するため正確な集光が望めない構成とは異なっている。
そして、この基台145Aの縁付近には、モータ143A及びギア144Aからなる駆動システム142Aが配されている。ギア144Aの歯は、支持用可動部147の縁上に形成されている歯(又はそれに類するリンク機構)とかみ合っている。モータ143Aは、そのギア144Aを駆動することで、丸いディスク状の可動部147を回動させている。こうした構成では、トラフリフレクタ型太陽光発電機100A自体が小型になるのに加え、数m2程も表面積がある可動部147をたった1個のモータ143Aで駆動することができる。しかも、設置先住宅の屋根と平行な面内で(即ち立ち上がらずに)可動部147が回動するので、勾配のある屋根上に好適に設置することができる。
図6(A)〜図6(C)にこの太陽光発電機100Aの概略動作を示す。この動作では、追尾システム140Aが、トラフリフレクタ101を基準とした太陽の方角を図示しないセンサ乃至フィードバックシステムで検知し、駆動システム142A(図5中のモータ143A及びギア144A)で発生させたトルクを支持用可動部147の縁に作用させることで、前述の如くリフレクタ101を回動させて焦線FLを太陽の方角(太陽光ビームBが到来する方角)と平行にしている。この回転プラットフォームに対しては風力及び重力に耐えるよう厳しい技術的条件を課す必要もなく、またそのモータ143Aを高速回転させる必要もない。モータ143Aで小さなトルクを発生させるだけで、直交軸Zを中心にリフレクタ101を回動させることができる。そのため、この追尾システム140Aは低コストで実現することができる。更に、この構成は、円盤状の基台を複数個備える構成に拡張することができる。その構成では、複数個ある基台の可動部を単一のモータで同期回動させて高いシステム効率を実現することができる。
図7(A)に、本発明の第3実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機100Bの俯瞰斜視外観を示す。この発電機100Bでも、前述の太陽光発電機100Aと同じく、支持面上にある丸い基台145Bと、その基台145Bの縁付近にあり軸Z周りで支持面に対し基台145Bを回動させる駆動システム142Bとによって、その追尾システム140Bが構成されている。また、その基台145Bの中央には、発電機100Aで使用しているトラフリフレクタ101に似たトラフリフレクタ101B−1が配されている。しかし、この発電機100Bでは、発電機100Aと違い、その基台145Bの上に、リフレクタ101B−1に加えて更に1本又は複数本のトラフリフレクタ101B−2が固定されている。また、それらのリフレクタ101B−2の焦線FL2は、それぞれ、リフレクタ101B−1の焦線FL1と平行になっている。従って、この発電機100Bでは、基台145Bの縁付近に実装されている単一の小型モータ143Bで、複数本のリフレクタ101B−1及び101B−2を回動させることができる。そのため、駆動に必要な電力を比べると、従来型のトラフリフレクタ型太陽光発電機よりもかなり小さくなる。また、リフレクタ101B−1及び101B−2の重量が基台145Bによって大面積に分散されるため、この発電機100Bは屋根の上に好適に設置することができる。更に、リフレクタ101B−1及び101B−2の背が低くほぼ単一面内で回動するため、従来型のトラフリフレクタ型太陽光発電機に比べ、風や嵐による損傷を受けにくい。そして、図8(A)〜図8(C)に示すように、この発電機100Bの動作は、基台145Bの可動部上に入射してくる太陽光ビームBの方角に対し平行化される焦線が複数本(FL1及びFL2)ある点を除き、前述した実施形態と同様である。
図7(B)に、本発明の第4実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機100B−1の分解斜視外観を示す。この発電機100B−1でも、前述の太陽光発電機100Bと同じく、支持面上にある丸い基台と、その縁付近にあるモータ143B−1で下方の支持面を基準に軸Z周りで基台を回動させる駆動システム142Bとによって、その追尾システム140B−1が構成されている。また、図7(A)に示したものと同じく、複数本のトラフリフレクタ101B−1及び101B−2からなるトラフリフレクタアレイ101Bを備えている。反面、この発電機100B−1では、発電機100Bと違い、支持面に固定配設された中央のベアリング146B−1上に、基台となる丸いターンテーブル145B−1が回動可能に支持されている。また、そのターンテーブル145B−1上には、リフレクタ101B−1及び101B−2が低コスト製造技術で固定実装されたプラテン(支持フレーム)147B−1が可着脱実装されている。従って、この発電機100B−1では、図7(A)を参照して説明済の諸効果が生じるのに加えて、恒久的ロバスト位置決め部材及び交換容易型低コスト太陽光収集部材で構成された非常に低コストなシステムを得ることができる。即ち、アレイ101Bがポリマ等の低コスト素材で形成されていて屋外使用時の寿命が短い場合でも、この発電機100B−1では、定期的な交換スケジュールに従いターンテーブル145B−1上のアレイ101Bを換装することができる。プラテン147B−1・ターンテーブル145B−1間の連結にクイックディスコネクタを使用すれば、その換装も迅速に行える。この構成には他にも利点があるが、それらについては本願出願人が本願と前後して提出する別の特許出願「二体型太陽エネルギ収集システム」(出願番号未付番)を参照されたい。この参照を以てその内容全てを本願に繰り入れることとする。
また、太陽光発電機100B又は100B−1を住宅、商店、公共施設等の屋根に設置する場合、その屋根のどこに基台145Bやターンテーブル145B−1を載せその上のどこにリフレクタ101B−1及び101−B2を載せるかにもよるが、基台145B又はターンテーブル145B−1の直径を約4フィートとし、個々のトラフリフレクタ101B−1及び101−B2の幅を約1インチ、厚みを約0.5インチ、長さを2、3フィート程度とするのが望ましい(1インチ=約2.5cm)。こうした寸法であれば、屋根から上方に張り出す部分全体の厚みを数インチ以内に収めることができ、その製造コストも小さくなる。また、発電機100B及び100B−1では、基台145B又はターンテーブル145B−1を支持面内で回動させながら太陽光を集めることができ、その支持面からの張出がほとんどないので、従来のアレイ型太陽光発電機に比べて機械的条件がかなり緩くなる。こうした例、即ち屋根に載せる例を示すことで強調したいのは、一つには風や嵐に耐えうる頑健な土台無しで発電機100B又は100B−1を設置できることであり、一つには居住空間から離れた場所にその集光素子を配置する必要がないことであり、もう一つには通常の屋根上ソーラーパネルと同じく実装密度がほぼ1:1となることである。
図9(A)〜図9(C)に、本発明の第5実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機100Cの概略斜視外観を示す。この発電機100Cでも、前述の太陽光発電機100Bと同じく、支持面105Cの上方にあり互いに平行になるよう複数本のトラフリフレクタ110Cを支持する丸い支持用可動部147Cと、その可動部147Cを支持面105Cに対しZ軸周りで回動させる駆動システム142Cとによって、その追尾システムが構成されている。また、駆動システム142Cのモータで可動部147Cを回動させると全てのトラフリフレクタ110Cが一緒に動くことや、図9(A)〜図9(C)の如く東から南へ更に東へという日周動作を起こせる点も同様である。しかし、この発電機100Cでは、発電機100Bと違い、円盤状の可動部147Cが支持駆動シャフト145Cに支持され支持面105Cから浮いている。また、そのシャフト145Cで規定される軸Zに対しある角度θをなすよう、可動部147Cに傾斜が付されている。リフレクタ110Cが可動部147C内で整列しているので、軸Z周りで可動部147Cを回動させても可動部147Cにおけるリフレクタ110Cの並びに変化がなく、どのリフレクタ101Cの焦線も角度θの傾斜を保つ点に留意されたい。この発電機100Cのように可動部147Cを浮かせその受光面Pを傾斜させると、回動軸Zが受光面Pと垂直な図5〜図8(C)の構成に比べ風の影響を受けやすくなるが、太陽光の電力変換効率が高まるためある種の業務向けには有益である。
図10(A)及び図10(B)に、本発明の第6実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機100Dの概略斜視外観を示す。この発電機100Dでは、前述の太陽光発電機100Cと同じく垂直な軸Zを中心にして複数本のトラフリフレクタ101Dが回動する。それに加え、それらリフレクタ101Dのアレイには、水平バー152及び簡素なアクチュエータ155からなるティルト機構150が付設されている。この機構150は、リフレクタ101Dの水平軸X周り傾斜角(ティルト角)を、所定範囲内、例えばθ1=約45°(図10(A)参照)からθ2=約90°(図10(B)参照)の範囲内で調整できるように構成されている。従って、その場所の緯度及びその時点の季節乃至日付に応じこの機構150を作動させ、所要角になるようリフレクタ101Dのティルト角を調整することで、緯度による天頂方向の相違を補償し、前述の如く垂直軸Z周りで発電機100Dを日周動作させて太陽を追うことができる。更に、高緯度地帯でこの発電機100Dを使用する際には、機構150を利用して建築資材を節約することができる。また、風力計(及びセンサネットワーク)を利用して気象条件を調べることができる場合、風速が所定値以上になったら機構150を作動させてリフレクタ101Dのアレイをほぼ水平な姿勢にすることで、効率は低下するものの、風が強いときでも引き続き太陽を追尾してそのエネルギを収集することができる。緯度等に相応しいティルト角にするか、それとも水平姿勢にするかを制御するだけなので、このやり方は二軸追尾方式に比し有利である。そして、通常時はリフレクタ101Dのアレイを水平状態で使用し、その上に雪が積もったときに機構150でアレイを傾けその雪を落とすようにすることもできる。この機能は、地球上の多くの高緯度地帯で有益である。
図11に、本発明の第7実施形態に係るトラフリフレクタアレイ型太陽光発電機100Gの概略斜視外観を示す。この発電機100Gも、前述の発電機100Bと同じく、互いに平行な複数本のトラフリフレクタ101Gが丸い基台145Gと共に回動するよう追尾システムが構成されており、またその基台145Gの縁付近にある図示しない駆動システムで基台145Gをリフレクタ145Gもろとも回動させている。反面、この発電機100Gでは、発電機100Bと違い、複数本あるリフレクタ101Gの長さがいずれも同じで、それらが端部155Gを介し正方形又は長方形のフレーム150G上に実装されており、そのフレーム150Gが基台145Gの上方に可回動実装されている。このようにリフレクタ101Gをいずれも同じ長さにすると、リフレクタ101G上のPVセル列で発生する電圧がどのリフレクタ101Gでも互いにほぼ等しくなるので、発電機100Gに係る電気システムが簡素になるのに加え、その製造組立工程も簡素になる。なお、図中の101G−1はリフレクタ101Gの一例であり、110G−1及び120G−1はその固体光学素子及びPVレシーバである。
図12(A)〜図12(D)に、本発明の第8〜第11実施形態におけるトラフリフレクタの概略断面を示す。
まず、図12(A)に示す第8実施形態のトラフリフレクタ101Hでは、固体光学素子110Hの上部開口面112Hと下部凸面115Hの間が垂直な側壁面113Aで結ばれている。素子110Hの幅W1は1インチ、最下部から最上部までの高さH1は0.375インチである。凸面115H及びそれに密接しているパラボラトラフミラー130Hは、入射してきた太陽光ビームBがそのミラー130Hで反射されPVレシーバ120H上に集まるような形状になっている。レシーバ120Hの幅は、ここでは0.1インチであるが、所望の集光率に応じ任意に設定することができる。
次に、図12(B)に示す第9実施形態のトラフリフレクタ101Jは、第8実施形態より低背であるが、そのPVレシーバ120Jの形状がより複雑で、図示の通り楔状になっている。具体的には、このリフレクタ101Jの固体光学素子110Jは、その上部開口面112Jと下部凸面115Jが楔状の側縁113Jにて線状に接する形状であり、その幅W2は上記と同じく約1インチに設定されているが、最下部から最上部までの高さH2が約0.25インチになっており、レシーバ120Jの幅が任意値例えば約0.1インチに設定されている。注記すべきことに、このレシーバ120Jの角は開口面112Jの中央領域にあるV字断面の溝内に収まっている。これは、太陽光ビームBの低角度散乱による損失がその表面で生じないようにするためである。また、この構成ならレシーバ120Jの総表面積が大きくなる。更に、この素子110Jを平面Pに沿って厳密に二分割した固体光学素子を使用し、その素子の角にある傾斜面(図中のV字溝の片側に相当)上に配置された角付のPVレシーバに集光する構成にすることもできる。
更に、どの太陽エネルギ収集装置でも対処しなければならない問題の一つに、過剰な集光でその光学部品例えばPVレシーバが熱損傷する、という問題がある。この問題に対処するため、図12(C)に示す第10実施形態のトラフリフレクタ101Kでは、上部開口面112K上にあるPVレシーバ120Kの位置が焦線より僅かに下の位置(上の位置でもよい)になるよう、その固体光学素子110K及びパラボラトラフミラー130Kが形成・配置されている。即ち、ビームBとして入射してくる太陽光がミラー130Kでの反射後レシーバ120Kの能動面全体に分散するよう、素子110Kが形成されている。そのため、レシーバ120Kの能増面を広く且つ均等に照明し、熱の発生又は集中を抑えることができる。
そして、図12(D)に示す第11実施形態のトラフリフレクタ101Lでは、固体光学素子110Lの下部凸面115L及びその下のパラボラトラフミラー130Kがファセット型、即ち複数の切り子面を連ねた構成とされている。このようにすると反射光の集中が抑えられるため、リフレクタアレイ内の位置ずれ、追尾システムの不適切動作、PVレシーバ120Lの位置ずれ等があっても、予想外に多量な光がレシーバ120L等の光学部品上に集まることはない。なお、この図では、太陽光ビームBの反射光を示す破線を、記載の明瞭化のため切り子面1個当たり1本としてある。
以上説明したように、本発明の好適な実施形態によれば、軸Z周り回動型追尾システム及び固体光学素子を組み込むこととしたため、固体光学素子の表面にPVレシーバを載せる、その固体光学素子の焦線又はその付近の所望個所にPVレシーバを正しく配置する、それらトラフリフレクタ及びPVレシーバ双方を環境起因性の損傷から守る等の諸機能を兼ね備えた、従来より秀逸な太陽光発電機乃至太陽エネルギ収集装置が得られる。これに加え、その装置の質量対パワー比ひいてはコストを顕著に低減することができる。
また、本発明は、上述した実施形態の実施形態を含め、数多くの形態で実施することができる。本発明をその特徴的構成を活かし多様な形態で実施できること、またそれらの実施形態も例外なく本発明の技術的範囲に包含されることは、いわゆる当業者にとっては自明なことであろう。
例えば、図13にその概略断面を示す第12実施形態のトラフリフレクタ101Mでは、固体光学素子110Mの上部開口面112Mが、互いに平行な複数個のステップ面112M−1、112M−2、112M−3等々で形成されている。即ち、素子110Mの形成に使用する素材する(例えばポリマ)の量が節約されている。但し、屈折歪を抑えるため、ステップ面112M−1、112M−2、112M−3等々を平坦にする必要がある。加えて、下部凸面115M及びその上にあるパラボラトラフミラー130MからPVレシーバ120Mに至る内部反射光路(例えばビームB1Aが辿る光路)が遮られないよう、各段ステップ面の内奥寄り部分位置を設定しておく必要がある。
更に、図14(A)〜図14(C)にその概略断面を示す第13〜第15実施形態のトラフリフレクタでは、固体光学素子上部開口面上の中心線近傍領域沿いに第2ミラーが配置されており、またその開口面の下方(素子内部又は素子下方)に太陽エネルギ収集素子たるPVレシーバが配置されている。
図14(A)に示した第13実施形態のトラフリフレクタ101Nの場合、その固体光学素子110Nの上部開口面112N上に平坦な直線状の第2ミラー135Nが配されている。その位置は面112Nの中心線近傍領域112N−1沿いであるので、ビームBとして開口面112N越しに入射した後その下方にあるパラボラトラフミラー(第1ミラー)130Nで反射された太陽光は、ミラー135Nで反射され、その下方にある下部凸面115Nの中央領域115N−1へと送られることとなる。その面115Nの中央領域115N−1沿いには溝116Nがあり、その溝116Nの内面117N上には太陽エネルギ収集素子たるPVレシーバ120Nが配されているので、ミラー135Nで反射された太陽光はそのレシーバ120Nで受光されることとなる。この構成には、装置構成が複雑である分高コストになり、またミラー135Nの付加で影ができて光学的な損失が増える等といった難点があるが、放熱器(図示せず)の配設個所が素子110Nの下面上になるので開口面112Nをより容易に清掃できる、という点で有益である。
図14(B)に示した第14実施形態のトラフリフレクタ101Oの場合、その中心線近傍領域112O−1に沿って延びるよう固体光学素子110Oの上部開口面112Oに溝113Oが形成されており、その溝113Oの内面上に放物柱面状の第2ミラー135Oが配されている。この構成では、凸面115O上にパラボラトラフミラー(第1ミラー)130Oを形成乃至配置する手法と同じ手法で、溝113Oの内面上にミラー135Oを形成乃至配置しているので、ミラー135Oもミラー130Oと同じく自然に位置合わせされる。また、その面115Oの中央領域115O−1沿いに溝116Oを形成する位置が先の例より浅い位置になる分、その溝116Oの内面117O上に配される太陽エネルギ収集素子乃至PVレシーバ120Oの位置が凸面115Oの溝116O外部分に近くなる。従って、放熱器(図示せず)を丸ごと溝116Oの外に配置乃至装着することができる。
図14(C)に示した第15実施形態のトラフリフレクタ101Pの場合、その固体光学素子110Pの下部凸面115Pより下方に、その素子110Pと一体になって動くよう熱交換器160Pが実装されており、その熱交換器160P上に太陽エネルギ収集素子たるPVレシーバ120Pが固定実装されている。また、この素子110Pの上部開口面112Pにも、前掲の例と同じく、その中心近傍領域112P−1に沿って延びるよう溝113Pが形成されており、その溝113Pの内面上には、所望の焦線が形成されるよう工夫された形状の第2ミラー135Pが配されている。パラボラトラフミラー130Pは凸面115Pの中央領域115P−1を覆っていないので、ミラー130P及び135Pで反射された太陽光をその“抜け部分”越しにレシーバ120Pに送ることができるる。この構成では、空気対固体界面が1個所増えるものの、レシーバ120P及び熱交換器160Pの位置が素子110P外になるため、サイクル的熱負荷によるストレスが減ってリフレクタ101Pの寿命が長くなる。
そして、上述した諸実施形態では、光起電素子(PVレシーバ)を太陽エネルギ収集素子として用いた太陽光起電型の構成を示したが、熱電対等の熱起電素子を太陽エネルギ収集素子として用いた熱起電型の構成、例えばトラフリフレクタで反射された太陽光が熱起電素子に集まり熱から直に電力へと変換されるよう上掲の又はそれに類するトラフリフレクタの焦線上にその熱起電素子を配置した構成でも、本発明を遜色なく実施することができる。また、トラフリフレクタに代えプリズム、ウェッジ等の反射乃至内部全反射性光学素子で、その光学素子の長端から外れた場所にある直線状又は矩形状の領域に光を集め、そこに配置されているPVセルでそれを受光する構成にしてもよい。更に、トラフリフレクタに代えて非軸対称錐面型リフレクタ、非軸対称球面型リフレクタ等のトラフ類似リフレクタを形成し、そのリフレクタの長軸に対し平行な位置から外し、その軸に対しある位置差乃至傾斜角度差を呈するように、PVセルを配置した構成にしてもよい。そして、図1(B)では回動軸Zが焦線FLに対して垂直であるが、回動軸と焦線が直交しない形態でも本発明は実施することができる。
100,100A〜100G トラフリフレクタ(アレイ)型太陽光発電機、101,101B〜101P トラフリフレクタ又はそのアレイ、105C,310,S,SA 屋根等発電機支持面、110,110H〜110P 固体光学素子、111 フラットミラー、112,112H〜112P 上部開口面、112M−1〜112M−3 ステップ面、112N−1,112O−1,112P−1 中心線近傍領域、113H 側壁面、113J 側縁、113O,113P,116N,116O 溝、115,115H〜115P 下部凸面、115N−1〜115P−1 凸面中央領域、117N,117O 溝内面、120,120H〜120P PVレシーバ(フォトレセプタ)、120A,120B 非照射領域、125 能動面、130,130H〜130P パラボラトラフミラー、135N〜135P 第2ミラー、140,140A,140B,140B−1 追尾システム、142,142A〜142C,143A,143B,143−B1 リフレクタ駆動システム又はモータ、144A ギア、145,145A〜145G 基台等リフレクタ支持部材、146,146−B1 固定基部又はベアリング、147,147−B1,147C 支持用可動部又はプラテン、150 ティルト機構、150G 方形フレーム、152 水平バー、155 アクチュエータ、155G リフレクタ端、160P 熱交換器、300 住宅、B,B1,B1A,B1B 太陽光ビーム、D 基台直径、FL,FL1,FL2 光学素子焦線、FP 光学素子焦点、H1,H2 素子高さ、L リフレクタ長、P 太陽光受光面、P1 方角表記、W1,W2 素子幅、X 水平軸、Z リフレクタ回動軸、α ビーム反射角、γ 屋根勾配、Δ ビーム入射角、θ リフレクタ回動角/傾斜角、θ1,θ2 ティルト角、Φ ビーム俯角。

Claims (3)

  1. 略平坦形状の上部開口面及びその上部開口面に対向する下部凸面を有する単体の固体光学素子、上記上部開口面を通過した太陽光が当該上部開口面に向かって反射しその上部開口面上の直線状領域に集まるよう上記下部凸面に対し密接されたミラー、並びに上記ミラーによって集められた光を受光するよう固定配置された直線状の太陽エネルギ収集素子を備えるトラフリフレクタと、
    上記上部開口面に対し不平行な軸を中心にして上記トラフリフレクタを回動させる手段と、
    を備える太陽エネルギ収集装置。
  2. 請求項1記載の太陽エネルギ収集装置であって、その屈折率が1.05〜2.09の範囲内にある素材で上記固体光学素子が形成され、且つその下部凸面上に堆積又は被着された金属層等の反射膜で上記ミラーが形成された太陽エネルギ収集装置。
  3. 略平坦形状の上部開口面及びその上部開口面に対向する下部凸面を有する単体の固体光学素子と、直線状の太陽エネルギ収集素子と、上記上部開口面を通過した太陽光が当該上部開口面に向かって反射し上記太陽エネルギ収集素子に集まるよう上記下部凸面に対し密接されたミラーと、を備えるトラフリフレクタを使用する太陽光発電方法であって、
    上記太陽エネルギ収集素子がその支持面に対してある角度をなすよう、平坦な支持面の上に上記トラフリフレクタを配置した上で、
    その回動の最中も上記太陽エネルギ収集素子が上記支持面に対し上記角度を保つよう、当該支持面に対し略直交する軸を中心にして当該トラフリフレクタを回動させる太陽光発電方法。
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