JP2010179311A - 双ロール式連続鋳造圧延方法及びその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】緻密な制御を必要とせず、装置の大型化やコストの増大の問題を抑制しながら、厚さが相対的に薄い金属板材を双ロール式連続鋳造圧延法で安定して良好に鋳造する。
【解決手段】所定寸法のロールギャップGを介して相対向し相互に反対方向に回転する一対のロール12,13間に金属の溶湯を導入し、該溶湯を前記ロール表面12d,13dで冷却して凝固させつつ前記ロール12,13で圧延して帯状の金属板材を得る双ロール式連続鋳造圧延方法において、前記一対のロール12,13として、その全長に亘って略一定寸法のロールギャップGを形成し、かつ長さ方向の少なくとも一部の範囲において径rが長さ方向に沿って変化する形状の一対のロール12,13を用いる。
【選択図】図3
【解決手段】所定寸法のロールギャップGを介して相対向し相互に反対方向に回転する一対のロール12,13間に金属の溶湯を導入し、該溶湯を前記ロール表面12d,13dで冷却して凝固させつつ前記ロール12,13で圧延して帯状の金属板材を得る双ロール式連続鋳造圧延方法において、前記一対のロール12,13として、その全長に亘って略一定寸法のロールギャップGを形成し、かつ長さ方向の少なくとも一部の範囲において径rが長さ方向に沿って変化する形状の一対のロール12,13を用いる。
【選択図】図3
Description
本発明は双ロール式連続鋳造圧延方法及びその装置に関し、金属板材の鋳造の技術分野に属する。
近年、自動車車体の軽量化要求に伴い、フレームやパネル等の車体各部位へのアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金の適用が進められている。従来、このような軽合金の板材の製造方法として、半連続鋳造法(DC法)がよく知られている。これは、図7に示すように、板材原料を溶解することから始まり、スラブ鋳造、均質化処理、面削、加熱、熱間圧延、冷間圧延の各工程を経て、最終的に金属板材を得るものである。一方、原料を溶解した溶湯から金属板材を直接製造する連続鋳造圧延法(CC法)もよく知られている。
CC法の代表的なものの1つに、双ロール式連続鋳造圧延法がある(特許文献1参照)。これは、図8に示すように、所定寸法のロールギャップを介して相対向し相互に反対方向に回転する一対のロール間に金属の溶湯をノズルで導入し、該溶湯を前記ロール表面で冷却して凝固させつつ前記ロールで圧延して帯状の金属板材を得るものである。一般に、CC法は、DC法に比べて、工程が少なくて済み、コストや投入エネルギあるいは二酸化炭素の排出量の削減が図られ、急冷凝固により材料特性が向上するという利点がある。
ここで、図8には図示していないが、ロールには水冷機構が内蔵され、ロールはこの水冷機構によって冷却されている。そして、溶湯が前記ロールギャップを通過する前に、この水冷されているロールの表面に接触して冷却されると、各ロール側に凝固シェルが生成する。次に、この2つの凝固シェルがロールの回転に連れて合わさっていき、前記ロールギャップを通過する際に、ロール間の圧下荷重で圧着されて、前記ロールギャップで規定される厚さの板材が鋳造されることとなる。
ところで、前記圧下荷重は、凝固シェルがロールギャップを通過する際に該ロールギャップを押し広げようとする力、つまり一対のロールを離反させようとする離反力の反力として凝固シェルに作用するものである。したがって、鋳造しようとする板材の厚さが薄いほど、つまりロールギャップが狭いほど、凝固シェルの側からロールの側に作用する離反力が大きくなり、この離反力に打ち勝って所定寸法のロールギャップを保つため、つまり圧下荷重を実現するためには、例えばロールを支持するシリンダ等の装置の大型化やコストの増大を招くこととなる。本発明者の知見によれば、例えば厚さが4mm以下の金属板材を双ロール式連続鋳造圧延法で得ようとするときに問題が顕著化する。
この問題に対処するために、例えばロールの周速度や冷却の度合い等を制御して凝固シェルの厚さをできるだけ薄くすることが考えられるが、緻密な制御が要求されるばかりでなく、安定して良好な板材を得るためには、ある程度以上の厚さの凝固シェルが必要であり、凝固シェルの厚さを過度に薄くすることは現実的でない。
そこで、いったん一対のロールから引き抜かれた鋳造直後の板材(as−cast材)をさらに別途冷間圧延等して引き伸ばし、厚さを薄くすることが考えられるが、そのために装置の大型化やコストの増大を招くこととなる。特に、マグネシウム合金の場合は、一般に、圧延による引き伸ばし比率が小さいため、圧延を多段階に亘って行わなければならず、装置の大型化やコストの増大の問題が一層大きくなる。
本発明は、双ロール式連続鋳造圧延法における前記のような不具合に対処するもので、緻密な制御を必要とせず、かつ装置の大型化やコストの増大の問題を抑制しながら、厚さが相対的に薄い金属板材を安定して良好に鋳造することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明では次のような手段を用いる。なお、以下の本発明の開示において、後述する発明の実施形態で用いられる符号を参考までに付記する。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、所定寸法のロールギャップGを介して相対向し相互に反対方向に回転する一対のロール12,13間に金属の溶湯Xを導入し、該溶湯Xを前記ロール表面12d,13dで冷却して凝固させつつ前記ロール12,13で圧延して帯状の金属板材Yを得る双ロール式連続鋳造圧延方法であって、前記一対のロール12,13として、その全長に亘って略一定寸法のロールギャップGを形成し、かつ長さ方向の少なくとも一部の範囲において径rが長さ方向に沿って変化する形状の一対のロール12,13を用いることを特徴とする。
次に、本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の双ロール式連続鋳造圧延方法において、径rが変化する範囲が長さ方向の一部であるロール12,13を用いるとき、又は、径rが変化する度合いが変化するロール12,13を用いるときは、該ロール12,13で圧延して得られた金属板材Yを平板状に矯正することを特徴とする。
ここで、「径rが変化する度合い」とは、より具体的には、長さ方向の変化に対する径rの変化の割合である。
次に、本願の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の双ロール式連続鋳造圧延方法において、径rが変化することにより生成するロール表面12d,13dの傾斜面又は湾曲面に垂直に作用する力Fのロール12,13の長さ方向の成分(Fsinθ)の総和が零に設定されたロール12,13を用いることを特徴とする。
次に、本願の請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の双ロール式連続鋳造圧延方法において、前記一対のロール12,13を上下に配置し、径rが変化することにより生成するロール表面12d,13dの傾斜面又は湾曲面がロール12,13の端部にあり、上側のロール12の下部及び下側のロール13の上部において、前記傾斜面又は湾曲面がロール12,13の端面側に向けて上向きであるロール12,13を用いることを特徴とする。
また、本願の請求項5に記載の発明は、所定寸法のロールギャップGを介して相対向し相互に反対方向に回転する一対のロール12,13間に金属の溶湯Xを導入し、該溶湯Xを前記ロール表面12d,13dで冷却して凝固させつつ前記ロール12,13で圧延して帯状の金属板材Yを得る双ロール式連続鋳造圧延装置10であって、前記一対のロール12,13として、その全長に亘って略一定寸法のロールギャップGを形成し、かつ長さ方向の少なくとも一部の範囲において径rが長さ方向に沿って変化する形状の一対のロール12,13が備えられていることを特徴とする。
次に、本願の請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の双ロール式連続鋳造圧延装置10において、径rが変化する範囲が長さ方向の一部であるロール12,13が備えられているとき、又は、径rが変化する度合いが変化するロール12,13が備えられているときは、該ロール12,13で圧延して得られた金属板材Yを平板状に矯正する矯正装置16が備えられていることを特徴とする。
ここで、「径rが変化する度合い」とは、より具体的には、長さ方向の変化に対する径rの変化の割合である。
次に、本願の請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の双ロール式連続鋳造圧延装置10において、径rが変化することにより生成するロール表面12d,13dの傾斜面又は湾曲面に垂直に作用する力Fのロール12,13の長さ方向の成分(Fsinθ)の総和が零に設定されたロール12,13が備えられていることを特徴とする。
次に、本願の請求項8に記載の発明は、請求項5から7のいずれか1項に記載の双ロール式連続鋳造圧延装置10において、前記一対のロール12,13が上下に配置され、径rが変化することにより生成するロール表面12d,13dの傾斜面又は湾曲面がロール12,13の端部にあり、上側のロール12の下部及び下側のロール13の上部において、前記傾斜面又は湾曲面がロール12,13の端面側に向けて上向きであるロール12,13が備えられていることを特徴とする。
まず、本願の請求項1、5に記載の発明によれば、双ロール式連続鋳造圧延方法又はその装置において、溶湯Xを冷却して凝固させつつ圧延する一対のロール12,13が、長さ方向の少なくとも一部の範囲において径rが長さ方向に沿って変化する形状とされているから、この径rの変化によりロール表面12d,13dには傾斜面又は湾曲面が生成することとなる。
したがって、この傾斜面又は湾曲面においては、該傾斜面又は湾曲面に垂直に作用する力、すなわち凝固シェルZ側からロール12,13側に作用する離反力Fが、ロール12,13の長さ方向の成分(Fsinθ)と、ロール12,13の幅方向の成分(Fcosθ)とに分割され、これらのうち幅方向の成分(Fcosθ)のみが、ロール12,13の軸心12c,13cと直交して、一対のロール12,13を離反させようとする力となる。なお、長さ方向の成分(Fsinθ)は、ロール12,13の軸心12c,13cと平行となって、一対のロール12,13を長さ方向に相互に逆向きに横移動させようとするスラスト力となる。
これに対し、径rの変化がない円柱状のロール12,13においては、ロール表面12d,13dに垂直に作用する離反力Fが、そのままロール12,13の軸心12c,13cと直交して、一対のロール12,13を離反させようとする力となる。
それゆえ、径rの変化があり、ロール表面12d,13dに傾斜面や湾曲面が生成しているロール12,13は、径rの変化がなく、ロール表面12d,13dに傾斜面や湾曲面が生成していないロール12,13に比べて、凝固シェルZ側からロール12,13側に作用する離反力Fが同じでも、一対のロール12,13を離反させようとする力が弱められることとなる。
その結果、厚さが相対的に薄い金属板材Yを鋳造する場合でも、例えばロール12を支持するシリンダ14等の装置の大型化やコストの増大を招くことがなくなる。さらに、ロール12,13の周速度や冷却の度合い等を緻密に制御することも必要としない。またそれゆえ、凝固シェルZの厚さが過度に薄くなったりせず、安定して良好な金属板材Yが得られることとなる。
しかも、ロール12,13の全長に亘ってロールギャップGが略一定寸法に維持されているから、該ロールギャップGで規定される厚さの金属板材Yが確実に鋳造されることとなる。
次に、本願の請求項2、6に記載の発明によれば、径rが変化する範囲が長さ方向の一部であるロール12,13を用いるとき、又は、径rが変化する度合いが変化するロール12,13を用いるとき、つまり、平板状でない金属板材Yが鋳造されるときは、該金属板材Yを平板状に矯正するから、汎用性のある平板状の金属板材Yが最終的に得られることとなる。
なお、鋳造された金属板材Yを平板状に矯正する装置(例えばレベラー矯正装置)16は、一般に、連続鋳造圧延装置10にもともと具備されているものであるから、これによる装置の大型化やコストの増大という問題は起らない。
次に、本願の請求項3、7に記載の発明によれば、径rの変化によりロール表面12d,13dに生成した傾斜面又は湾曲面に垂直に作用する前記力Fのロール12,13の長さ方向の成分(Fsinθ)、つまり前述したように、一対のロール12,13を長さ方向に相互に逆向きに横移動させようとするスラスト力の総和が零に設定されているから、各ロール12,13を前記スラスト力に抗して支持する必要がなくなる。
そして、本願の請求項4、8に記載の発明によれば、一対のロール12,13を上下に配置した水平引き抜き型(横型)の双ロール式連続鋳造圧延方法又はその装置において、ロールギャップGがロール12,13の端部においてロール12,13の端面側に向けて上向きであるから、一対のロール12,13間に導入された溶湯Xがロール12,13の端面のロールギャップGから垂れ落ちることが防止される。
図1に示すように、本実施形態に係る双ロール式連続鋳造圧延装置10は、水平引き抜き型(横型)であって、一対のロール12,13が上下に配置され、所定寸法のロールギャップGを介して相対向している。ロール12,13は、図示しない駆動装置により、矢印で示すように相互に反対方向に回転駆動される。ロール12,13は、鋼製の水冷式ロールであって、内部に水冷機構12a,13aを内蔵している。
ここで、下側のロール13は固定されているが、上側のロール12はシリンダ14に支持されており、上下に移動可能である。そして、上側のロール12の上下方向の位置に応じてロールギャップGの寸法が決定し、そのロールギャップGの所定寸法がシリンダ14によって保たれる。
前記ロールギャップGを臨んでセラミックス製の耐火性ノズル11が水平に配設されており、このノズル11で一対のロール12,13間に金属の溶湯Xが導入される。導入された溶湯Xは、ロール12,13の表面で冷却されて凝固しつつロール12,13で圧延されて帯状の金属板材Yとなり、矢印で示すように水平方向に引き抜かれる。
この双ロール式連続鋳造圧延装置10による金属板材Yの鋳造条件は、金属の種類等に応じて変動するが、例えば、ロール12,13の周速度が0.5〜10m/min、圧下荷重A(図2、図3参照)が15kN/mm未満、ロールギャップGが10mm未満、溶湯Xの温度が670℃以上、等である。
一対のロール12,13から引き抜かれた鋳造直後の板材Y(as−cast材)は、熱処理装置15及び矯正装置(金属板材Yを平板状に矯正するもの)16を経てコイルに巻き取られるか切断されてシートで保管される。本実施形態では切断装置17が備えられており、シートで保管された後、プレス成形されて、例えば断面形状がクランク形状の自動車車体のフレーム等に塑性加工される。
金属板材Yが6000系のアルミニウム合金の場合は、前記塑性加工(プレス成形)の後、人工時効処理が行われる。その人工時効処理の条件は、例えば、170〜200℃×8〜18時間である。また、金属板材Yが6000系のアルミニウム合金の場合は、前記熱処理装置15で溶体化処理が行われる。その溶体化処理の条件は、例えば、500〜550℃×1時間以上の後、水焼入れである。また、前記矯正装置16ではレベラー矯正が行われる。
次に、金属板材Yが5000系のアルミニウム合金の場合は、前記矯正装置16によるレベラー矯正の後、前記塑性加工(プレス成形)の前に、焼き鈍しが行われる。その焼き鈍しの条件は、例えば、340℃以上である。また、金属板材Yが5000系のアルミニウム合金の場合は、前記熱処理装置15で均質化処理が行われることもある。その均質化処理の条件は、例えば、480〜540℃×4〜10時間である。
次に、金属板材Yが3000系のアルミニウム合金の場合は、5000系のアルミニウム合金の場合と略同様である。ただし、均質化処理の条件が異なり、例えば、530〜610℃×4〜24時間である。
次に、金属板材Yが1000系のアルミニウム合金の場合も、5000系のアルミニウム合金の場合と略同様である。ただし、均質化処理の条件が異なり、例えば、500〜560℃×1〜10時間である。
次に、金属板材YがAZやAM等のマグネシウム合金の場合は、一対のロール12,13から引き抜かれた後、まずレベラー矯正が行われ、次いで、例えば、100〜350℃の条件で焼き鈍しが行われ、その後、塑性加工(プレス成形)が行われる。したがって、この場合は、図1と比べて、熱処理装置15や矯正装置16の配置の順番が異なる。
なお、以上に加えて、適宜、金属板材Yの表面研磨処理を行ってもよい。
次に、本発明の特徴部分である一対のロール12,13の形状について説明する。
図8を参照して前述したように、一対のロール12,13間にノズル11で導入された金属の溶湯XがロールギャップGを通過する前に、水冷されているロール12,13の表面に接触して冷却されると、各ロール12,13側に凝固シェルが生成し、この2つの凝固シェルがロール12,13の回転に連れて合わさっていき、ロールギャップGを通過する際に、ロール12,13間の圧下荷重Aで圧着されて、ロールギャップGで規定される厚さの板材Yが鋳造されることとなる。
ここで、図2に示すように、前記圧下荷重Aは、凝固シェルZがロールギャップGを通過する際に該ロールギャップGを押し広げようとする力、つまり一対のロール12,13を離反させようとする離反力Fの反力として凝固シェルZに作用するものである。したがって、鋳造しようとする板材Yの厚さが薄いほど、つまりロールギャップGが狭いほど、凝固シェルZの側からロール12,13の側に作用する離反力Fが大きくなり、この離反力Fに打ち勝って所定寸法のロールギャップGを保つため、つまり圧下荷重Aを実現するためには、上側ロール12を支持するシリンダ14の大型化ひいてはコストの増大を招くこととなる。
なお、図2において、符号12b,13bはロール12,13の軸であり、圧下荷重Aは、シリンダ14により上側ロール12の軸12bを下方に付勢することにより付与される。
そして、図2に示したように、一対のロール12,13の形状が、径rが長さ方向に沿って変化しない円柱状であるときは、ロール表面12d,13dに垂直に作用する凝固シェルZからの離反力Fが、そのままロール12,13の軸心12c,13cと直交して、一対のロール12,13を離反させようとする力となる。
これに対し、本実施形態では、図3(第1実施形態)に示すように、一対のロール12,13の形状が、長さ方向の全部の範囲において径rが長さ方向に沿って変化する形状とされている。しかも、その径rの変化の度合い(長さ方向の変化に対する径rの変化の割合)が一定とされている。その結果、一対のロール12,13は、ロール表面12d,13dが全範囲で傾斜面となって、円錐状を呈している。
したがって、この円錐状のロール12,13においては、ロール表面12d,13dに垂直に作用する離反力Fが、ロール12,13の長さ方向の成分(Fsinθ)と、ロール12,13の幅方向の成分(Fcosθ)とに分割され、これらのうち幅方向の成分(Fcosθ)のみが、ロール12,13の軸心12c,13cと直交して、一対のロール12,13を離反させようとする力となる。
なお、長さ方向の成分(Fsinθ)は、ロール12,13の軸心12c,13cと平行となって、一対のロール12,13を長さ方向に相互に逆向きに横移動させようとするスラスト力となる。
それゆえ、図3に示した円錐状のロール12,13は、図2に示した円柱状のロール12,13に比べて、凝固シェルZの側からロール12,13の側に作用する離反力Fが同じでも、一対のロール12,13を離反させようとする力が弱められることとなる。
その結果、図3に示した円錐状のロール12,13では、厚さが相対的に薄い金属板材Yを鋳造する場合でも、上側ロール12を支持するシリンダ14の大型化やコストの増大が抑制されることとなる。さらに、ロール12,13の周速度や冷却の度合い等を緻密に制御することも必要としない。またそれゆえ、凝固シェルZの厚さが過度に薄くなったりせず、安定して良好な金属板材Yが得られることとなる。
しかも、図3に示した円錐状のロール12,13では、このロール12,13の全長に亘ってロールギャップGが略一定寸法に維持されているから、該ロールギャップGで規定される厚さの金属板材Yが確実に鋳造されることとなる。
前述したように、この第1実施形態では、ロール12,13の長さ方向の全部の範囲において径rが長さ方向に沿って変化し、かつその変化の度合いが一定であるから、ロール表面12d,13dは、その全範囲で傾きが一定の傾斜面となる。その結果、この一対のロール12,13で鋳造される金属板材Yは平板状となり、矯正装置16による平板状への矯正を省略することができる。
また、この第1実施形態では、ロール12,13の径の小さい部分と大きい部分とでは周速度が異なるから、鋳造時に板材Yにせん断歪が付与され、このせん断歪の付与によって、再結晶温度以上の熱処理時に再結晶粒を微細化できる(特に最表面部において)という利点がある。
さらに、この第1実施形態では、2つのロール12,13が相互に同形状であるから、ロール12,13の製作が容易化するという利点もある。
なお、図3において、ロールギャップGが水平になるように、ロール12,13の軸心12c,13cを傾斜させてもよい。これにより、一対のロール12,13間に導入された溶湯Xがロール12,13の端面(図例では右側の端面)のロールギャップGから垂れ落ちることが防止される。
本実施形態では、一対のロール12,13の形状は、図4(a)に示すようなものでもよい(第2実施形態)。第1実施形態と異なる点は、一対のロール12,13の形状が、長さ方向の一部の範囲において径rが長さ方向に沿って変化する形状とされている点である。その他の構成及び作用は第1実施形態と同様である。
その結果、この一対のロール12,13で鋳造される金属板材Yは平板状でないから、矯正装置16で金属板材Yを平板状に矯正することにより、汎用性のある平板状の金属板材Yを最終的に得る。
なお、鋳造された金属板材Yを平板状に矯正する装置(本実施形態ではレベラー矯正装置)16は、一般に、連続鋳造圧延装置10にもともと具備されているものであるから、これによる装置10の大型化やコストの増大という問題は起らない。
また、図4(a)においては、ロール表面12d,13dの一部の範囲に生成する傾斜面は、ロール12,13の中央部にあるが、ロール12,13の端部にあってもよい。また、傾斜面は複数あってもよく、さらに、その傾斜角度が相互に異なっていてもよい。
本実施形態では、一対のロール12,13の形状は、図4(b)に示すようなものでもよい(第3実施形態)。第1実施形態と異なる点は、径rが長さ方向に沿って変化する度合い(長さ方向の変化に対する径rの変化の割合)が1回変化している点である。しかも、その結果生成する2つの傾斜面は、相互に逆向きで、傾斜角度が同じ、かつロール12,13の長さ方向の長さが同じとされている。その他の構成及び作用は第1実施形態と同様である(ただし、2つのロール12,13は形状が相互に異なる)。
その結果、このロール12,13においては、ロール表面12d,13dに垂直に作用する離反力Fの長さ方向の成分(Fsinθ)の総和が零に設定されている。したがって、一対のロール12,13を長さ方向に相互に逆向きに横移動させようとするスラスト力が相殺され、各ロール12,13を前記スラスト力に抗して支持する必要がなくなる。
その場合に、2つの傾斜面は、ロール12,13の端部まで及んであり、上側ロール12の下部及び下側ロール13の上部において、2つの傾斜面は、それぞれロール12,13の端面側に向けて上向きとされている。
その結果、このロール12,13においては、ロールギャップGがロール12,13の端部においてロール12,13の端面側に向けて上向きであるから、一対のロール12,13間に導入された溶湯Xがロール12,13の端面のロールギャップGから垂れ落ちることが防止される。
なお、下側ロール13の長さを上側ロール12の長さよりも長くすると、溶湯Xがロール12,13の端面のロールギャップGから垂れ落ちることがより一層確実に防止される。
図4(c)は第4実施形態を示す。第3実施形態と異なる点は、径rが長さ方向に沿って変化する度合い(長さ方向の変化に対する径rの変化の割合)が変化する回数が複数(図例では11回、その結果生成する傾斜面の数が12)である点である。その他の構成及び作用は第3実施形態と同様である。
その結果、この第4実施形態では、得られる板材Yは断面形状において凹凸が複数回繰り返され、変化の大きい形状であるから、鋳造時及び矯正時に板材Yに歪が付与される部分が多くなり、この歪付与の増加によって、再結晶温度以上の熱処理時に再結晶粒を微細化できるという効果が増大するという利点がある。
なお、図4(c)においては、上側ロール12に凸条を形成し、下側ロール13に凹溝を形成したが、逆でもよい。
図5(a)は第5実施形態を示す。第4実施形態と異なる点は、各ロール12,13に、凸条と凹溝とを共に形成した点である。その他の構成及び作用は第4実施形態と同様である。
その結果、この第5実施形態では、2つのロール12,13が相互に同形状となって、ロール12,13の製作が容易化するという利点がある。なお、凸条の数、凹溝の数を複数としてもよい。
以上の第2〜5実施形態において、傾斜面の角部は、丸形状や台形形状でもよい。
図5(b)は第6実施形態を示す。図4(b)の第3実施形態と異なる点は、径rが長さ方向に沿って変化する度合い(長さ方向の変化に対する径rの変化の割合)が連続して変化し、その結果、ロール表面12d,13dに湾曲面が生成している点である。その他の構成及び作用は第3実施形態と同様である。この第6実施形態では、矯正装置16による平板状への矯正が容易化、円滑化するという利点がある。
図5(c)は第7実施形態を示す。第6実施形態と異なる点は、下側ロール13の長さが上側ロール12の長さよりも長い点である。また、ロール12,13の端部において、ロールギャップGが広くされている。その結果、鋳造された帯状の金属板材Yは、両側部が厚くなるので、図中符号aで示すように両側部は切断する。その他の構成及び作用は第6実施形態と同様である。この第7実施形態では、凝固シェルZがロールギャップGが広くされたロール12,13の端部に容易に流動するので、厚さが相対的に薄い金属板材Yを鋳造する場合でも、上側ロール12を支持するシリンダ14の大型化やコストの増大がより一層抑制されるという利点がある。
本発明は、図6に示すように、一対のロール12,13が左右に水平に配置される垂直引き抜き型(縦型)の双ロール式連続鋳造圧延装置10に適用することもできる。図中、符号18は、溶湯を溜めるタンディッシュ、符号19は、ロール12,13の両端面に押し当てられて、ロール12,13間の溶湯Xの漏れを防止する耐火性の側堰である。溶湯Xは、タンディッシュ18から、ロール12,13と側堰19,19とで形成される空間に注湯される。ロール12,13で鋳造圧延された帯状の金属板材Yは、矢印で示すように下方に引き抜かれる。
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、双ロール式連続鋳造圧延法において、緻密な制御を必要とせず、かつ装置の大型化やコストの増大の問題を抑制しながら、厚さが相対的に薄い金属板材を安定して良好に鋳造することが可能な技術であるから、金属板材の鋳造の技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
10 双ロール式連続鋳造圧延装置
11 ノズル
12,13 ロール
12a,13a 水冷機構
12b,13b ロール軸
12c,13c ロール軸心
12d,13d ロール表面
14 ロール支持シリンダ
15 熱処理装置
16 矯正装置
17 切断装置
18 タンディッシュ
19 側堰
A 圧下荷重
F 離反力
Fcosθ 幅方向の成分
Fsinθ 長さ方向の成分
G ロールギャップ
r 径
X 溶湯
Y 金属板材
Z 凝固シェル
11 ノズル
12,13 ロール
12a,13a 水冷機構
12b,13b ロール軸
12c,13c ロール軸心
12d,13d ロール表面
14 ロール支持シリンダ
15 熱処理装置
16 矯正装置
17 切断装置
18 タンディッシュ
19 側堰
A 圧下荷重
F 離反力
Fcosθ 幅方向の成分
Fsinθ 長さ方向の成分
G ロールギャップ
r 径
X 溶湯
Y 金属板材
Z 凝固シェル
Claims (8)
- 所定寸法のロールギャップを介して相対向し相互に反対方向に回転する一対のロール間に金属の溶湯を導入し、該溶湯を前記ロール表面で冷却して凝固させつつ前記ロールで圧延して帯状の金属板材を得る双ロール式連続鋳造圧延方法であって、
前記一対のロールとして、その全長に亘って略一定寸法のロールギャップを形成し、かつ長さ方向の少なくとも一部の範囲において径が長さ方向に沿って変化する形状の一対のロールを用いることを特徴とする双ロール式連続鋳造圧延方法。 - 請求項1に記載の双ロール式連続鋳造圧延方法において、
径が変化する範囲が長さ方向の一部であるロールを用いるとき、又は、径が変化する度合いが変化するロールを用いるときは、該ロールで圧延して得られた金属板材を平板状に矯正することを特徴とする双ロール式連続鋳造圧延方法。 - 請求項1又は2に記載の双ロール式連続鋳造圧延方法において、
径が変化することにより生成するロール表面の傾斜面又は湾曲面に垂直に作用する力のロールの長さ方向の成分の総和が零に設定されたロールを用いることを特徴とする双ロール式連続鋳造圧延方法。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の双ロール式連続鋳造圧延方法において、
前記一対のロールを上下に配置し、
径が変化することにより生成するロール表面の傾斜面又は湾曲面がロールの端部にあり、上側のロールの下部及び下側のロールの上部において、前記傾斜面又は湾曲面がロールの端面側に向けて上向きであるロールを用いることを特徴とする双ロール式連続鋳造圧延方法。 - 所定寸法のロールギャップを介して相対向し相互に反対方向に回転する一対のロール間に金属の溶湯を導入し、該溶湯を前記ロール表面で冷却して凝固させつつ前記ロールで圧延して帯状の金属板材を得る双ロール式連続鋳造圧延装置であって、
前記一対のロールとして、その全長に亘って略一定寸法のロールギャップを形成し、かつ長さ方向の少なくとも一部の範囲において径が長さ方向に沿って変化する形状の一対のロールが備えられていることを特徴とする双ロール式連続鋳造圧延装置。 - 請求項5に記載の双ロール式連続鋳造圧延装置において、
径が変化する範囲が長さ方向の一部であるロールが備えられているとき、又は、径が変化する度合いが変化するロールが備えられているときは、該ロールで圧延して得られた金属板材を平板状に矯正する矯正装置が備えられていることを特徴とする双ロール式連続鋳造圧延装置。 - 請求項5又は6に記載の双ロール式連続鋳造圧延装置において、
径が変化することにより生成するロール表面の傾斜面又は湾曲面に垂直に作用する力のロールの長さ方向の成分の総和が零に設定されたロールが備えられていることを特徴とする双ロール式連続鋳造圧延装置。 - 請求項5から7のいずれか1項に記載の双ロール式連続鋳造圧延装置において、
前記一対のロールが上下に配置され、
径が変化することにより生成するロール表面の傾斜面又は湾曲面がロールの端部にあり、上側のロールの下部及び下側のロールの上部において、前記傾斜面又は湾曲面がロールの端面側に向けて上向きであるロールが備えられていることを特徴とする双ロール式連続鋳造圧延装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009022149A JP2010179311A (ja) | 2009-02-03 | 2009-02-03 | 双ロール式連続鋳造圧延方法及びその装置 |
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JP2009022149A JP2010179311A (ja) | 2009-02-03 | 2009-02-03 | 双ロール式連続鋳造圧延方法及びその装置 |
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Family Applications (1)
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JP2009022149A Pending JP2010179311A (ja) | 2009-02-03 | 2009-02-03 | 双ロール式連続鋳造圧延方法及びその装置 |
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2009
- 2009-02-03 JP JP2009022149A patent/JP2010179311A/ja active Pending
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