JP2010175251A - 表面増強ラマン分光測定方法及び本方法を用いた表面増強ラマン分光装置 - Google Patents

表面増強ラマン分光測定方法及び本方法を用いた表面増強ラマン分光装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2010175251A
JP2010175251A JP2009014947A JP2009014947A JP2010175251A JP 2010175251 A JP2010175251 A JP 2010175251A JP 2009014947 A JP2009014947 A JP 2009014947A JP 2009014947 A JP2009014947 A JP 2009014947A JP 2010175251 A JP2010175251 A JP 2010175251A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
light
enhanced raman
cell
semiconductor laser
light source
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2009014947A
Other languages
English (en)
Inventor
Masahiko Shioi
正彦 塩井
Tatsuro Kawamura
達朗 河村
Masaru Minamiguchi
勝 南口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2009014947A priority Critical patent/JP2010175251A/ja
Publication of JP2010175251A publication Critical patent/JP2010175251A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Investigating, Analyzing Materials By Fluorescence Or Luminescence (AREA)

Abstract

【課題】金ナノロッド等の形状異方性を有する金属微粒子が同一方向で固定化されていなくとも、高精度に被検物質の濃度が測定することができる表面増強ラマン分光方法および装置を提供する。
【解決手段】被検物質を、形状異方性を持つ金属微粒子105aが形成されたセル105に供給し、前記セル105に光を照射し、前記光の偏光状態を偏光制御器102により変化させながら、前記セルを透過、または、散乱、または、反射した光を検出し、検出された光の光量から、最適な偏光状態を決定する。得られた偏光状態になるよう偏光素子を制御し、最適な偏光状態で前記セルに光を照射し、表面増強ラマン散乱を発生させ、発生した表面増強ラマン散乱光を検出する。検出された表面増強ラマン散乱光を分析することにより、被検成分濃度を高精度に算出する。
【選択図】図1

Description

本発明はラマン分光法にかかり、特に、形状異方性をもつ金属微粒子に光を照射した際に発生する局在化表面プラズモン共鳴による電場増強効果により励起される表面増強ラマン分光法を利用した特定物質の濃度を計測する技術に関するものである。
従来より、ラマン分光法は様々な応用に用いられており、例えば、ラマン分光法を用いて生体成分の濃度を測定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。ラマン分光法を用いることにより、生体成分中の特性成分の濃度を消耗品である試薬、試験紙片及び酵素などを不要にし、さらにはそれらの消耗品の使用前の保存安全性や使用後の廃棄の問題、誤差を生じる原因となる煩雑な操作や他の成分による干渉作用などの問題をなくし、さらに多成分を同時に定量測定することができる。この従来の技術を第1の従来技術と呼ぶ。
表面増強ラマン分光測定方法としては、金ナノロッドのような形状が非対称な金属ナノ粒子を表面増強ラマン分光に応用する技術が開示されている。金ナノロッドとは、形状が均一な「ロッド状(棒状)」の金ナノ粒子(金ナノロッド)であり、可視から近赤外の領域に表面プラズモンに由来する強い二本の吸収バンドを持つ。一つは金ナノロッドの短軸方向の局在化表面プラズモン共鳴波長であり、可視域(520nm付近)に吸収ピークが存在する。もう一つは長軸方向の局在化表面プラズモン波長であり、赤色から近赤外域(600〜1300nm)に吸収ピークを持つ。金ナノロッドの形状制御によって二つの吸収ピーク位置を変えることができることが知られており、球状の金ナノ粒子よりも増強度が高いとされている。この従来の技術を第2の従来技術と呼ぶ。
特開平9−079982号公報 特開2005-233637号公報
しかしながら、前記第1の従来技術では、典型的には、試料物質に入射するフォトンの10-7しかラマン散乱されない。従って、ラマン散乱されたフォトンを検出するために、ラマン分光器においては一般に、高出力レーザ及び高感度検出器が採用されている。絶対的な意味において散乱断面積が小さいのみならず、散乱されたフォトンが入射フォトンと同じエネルギーを有するレイリー散乱に比較しても小さい。これはつまり、小さなラマン信号を大きなレイリー信号及び入射信号から分離することに関して問題がある場合が多いということであり、特に、ラマン信号のエネルギーが入射信号のエネルギーに近い場合に問題となる。高出力レーザはかさばり高価であるだけでなく、非常に高い出力においては、その光放射の強度により試料物質が破壊される可能性がある。従って、光放射源の強度には上限が課される。同様に、高感度検出器もかさばり高価であることが多く、例えば液体窒素により冷却される必要がある。それに加えて、許容可能な信号対雑音比を有するラマンスペクトル信号を得るために長い積分時間が必要とされるので、検出は時間がかかるプロセスであることが多いという課題を有していた。
また、金ナノロッドのような形状異方性を持つ金属微粒子を用いて、表面増強ラマン散乱を励起するためには、局在化表面プラズモン共鳴における共鳴波長と表面増強ラマン励起波長を一致させる必要がある。また、タンパク質等を含む血清、尿などの生体由来材料を、表面増強ラマン分光法を利用して解析する際、蛍光を抑えるという観点から、近赤外域の波長で表面増強ラマン散乱を励起することが好ましい。例えば、金ナノロッドでは、長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴における共鳴波長が近赤外領域の波長となるため、長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴波長を利用して表面増強ラマン散乱を励起することが好ましい。
ところが、長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴波長により表面増強ラマン散乱を励起するためには、金ナノロッドの長軸方向に電場成分を持つ偏光状態の光で励起する必要がある。一般的に金ナノロッドは同一方向に配向しセル等に固定化することは困難である。また、近赤外領域に発振波長を持つ半導体レーザは、その構造上の特性により、一方向に偏光した光が放射される。したがって、半導体レーザを利用して、金ナノロッドの局在化表面プラズモン共鳴波長の光を入射することにより、表面増強ラマン散乱を励起し、表面増強ラマン分光法による分析を行うには、セル等に金ナノロッドが同一方向に配向していない状態で固定化されているため、固定化状態により、所望の長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴波長により、表面増強ラマン散乱が励起される確率が低くなり、最悪、長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴波長では、表面増強ラマン散乱が励起されない可能性があるという課題を有していた。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、金ナノロッド等の形状異方性を有する金属微粒子が同一方向で固定化されていなくとも、表面増強ラマン散乱を励起するための光源の偏光状態を制御することにより、測定感度が低下することを防止することで、高精度に被検物質の濃度が測定できる表面増強ラマン分光方法、および、表面増強ラマン分光装置を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の表面増強ラマン分光方法は、
a) 被検物質を、形状異方性を持つ金属微粒子が形成されたセルに供給する工程、
b) 前記セルに光を照射する工程、
c) 前記光の偏光状態を変化させながら、前記セルを透過、または、散乱、または、反射した光を検出する工程、
d) 工程c)により検出された光の光量から、最適な偏光状態を決定する工程、
e) 工程d)で得られた偏光状態になるよう偏光素子を制御する工程、
f) 工程e)の偏光状態で前記セルに光を照射し、表面増強ラマン散乱を発生させる工程、
g) 工程f)により発生した表面増強ラマン散乱光を分光し、検出する工程、
h) 工程g)により検出された表面増強ラマン散乱光から被検物質濃度を算出する工程
を含む。
また、本発明の表面増強ラマン分光装置は、前記方法を利用した、表面増強ラマン散乱を励起するための光を放射する光源と、形状異方性を持つ金属微粒子が形成されたセルと、前記セルを透過、反射、または、散乱した光を検出、または、分光し、分光された光を検出する分光手段と、表面増強ラマン散乱を前記光源からの光を減衰させる光学フィルターと、前記光源から放射された光の偏光状態を変更・制御する偏光制御手段とを備え、前記分光手段により検出された光量に基づいて前記偏光制御手段の制御値を決定し、前記偏光制御手段を制御する演算部とを備える。
本構成によって、金ナノロッド等の形状異方性を有する金属微粒子が同一方向で固定化されていなくとも、表面増強ラマン散乱を励起するための光源の偏光状態を制御することにより、測定感度が低下することを防止することで、高精度に被検物質の濃度が測定できる。
本発明の表面増強ラマン分光方法および本方法を用いた表面増強ラマン分光装置によれば、金ナノロッド等の形状異方性を有する金属微粒子が同一方向で固定化されていなくとも、表面増強ラマン散乱を励起するための光源の偏光状態を制御することにより、測定感度が低下することを防止することで、高精度に被検物質の濃度が測定できる。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態について図1〜6を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における表面増強ラマン分光装置100の構成を示す図である。図1において、局在化表面プラズモン共鳴波長を含む光を放射する半導体レーザ101、半導体レーザから放射された光の偏光状態を制御する偏光制御器102、半導体レーザ101から放射された光を整形するレンズ系104、被検物質を保持し、金ナノロッド105aが設けられているセル105、半導体レーザ101が放射する波長に対応したノッチフィルターが装着されたスロットと、局在化表面プラズモン共鳴波長を測定する際に利用するノッチフィルターが装着されていないスロットを備える光学フィルターホイール106、グレーティング分光を行う際に光を略点光源状に整形するスリット107、スリット107を透過した光を波長に応じて分散させながら反射するグレーティング素子108、分散した光を検出する複数の受光領域を持つ光検出器109、偏光制御器102を制御し、また、偏光制御器102の制御状態と光検出器109が受光した光の強度から最適な偏光状態を算出し、算出した最適な偏光状態に基づき偏光制御器102を制御し、また、半導体レーザ101から放射された光により発生した表面増強ラマン分光スペクトルを分析することにより被検物質の濃度を算出するマイクロコンピュータ110である。
ここで、半導体レーザ101、偏光制御器102、光学フィルターホイール106、マイクロコンピュータ110はそれぞれ、本発明における光源、偏光制御手段、光学フィルター、演算部に相当する。また、スリット107、グレーティング素子108、光検出器109は本発明における分光手段に相当する。本実施の形態において分光手段として、グレーティング素子108と複数の受光領域を持つ光検出器109を用いたが、所定の波長を分光できる公知技術であれば、特に限定することなく利用できる。例えば、干渉フィルター等の分光フィルターや、音響光学素子と単一の受光領域を持つ光検出器等を利用することができる。
また、本発明の表面増強ラマン分光装置は、メモリ111を備えていてもよい。メモリ111には、複数の受光領域を持つ光検出器109の各セルに対応する波長のデータや、被検物質の濃度を算出するための表面増強ラマン散乱光の各波数における強度と被検物質の濃度の相関関係に関するデータを保持している。
図2は、本発明の第1の実施の形態におけるセル105の断面を示す図である。セル105は、基板105cに固定化された金ナノロッド105a(短軸サイズ=数nm〜25nm程度、長軸=50〜500nm程度)、スペーサー105b、基板105c、カバーガラス105e、スペーサー105bとカバーガラス105eで形成される被検溶液保持空間105d、被検溶液の供給口、排出口(図示せず)から構成される。ここで、基板105cに固定化された金ナノロッド105aは、本発明における金属微粒子に相当する。ここで、ロッド状に形成された金微粒子142aの製法としては、公知の技術を特に限定なく利用することができる。例えば、電解法、化学還元法、光還元法等が利用できる。ロッド状に形成された金微粒子142aを基板に固定化する技術としては、例えば、静電相互作用を利用する方法を利用することができる。
基板105cとしては、半導体レーザ101、および、表面増強ラマン散乱光の波長の光が透過するものであれば、公知技術を特に限定することなく利用することができる。例えば、SiO2は、前記光の波長に対して透明であるため好ましい。
図3には、金ナノロッド105aが基板105cに固定化されている例を上面から見た図を示す。図3に示すように金ナノロッド105aは、一定の方向に配向することなく基板105cに固定化されている。しかし、図3に示した例のようにある方向(図3中の矢印120)に配向した金ナノロッド105aが多く含まれる。このような状態では、矢印120の方向に電場が振動する偏光の光を入射すると、金ナノロッド105aの長軸方向の局在化表面プラズモンが共鳴し、長軸方向の電場が増強された金ナノロッド105aの個数が多くなる。この配向方向は、セル105ごとに異なるため、一定方向の偏光を入射して測定すると、セル105ごとに局在化表面プラズモンの共鳴状態が変化し、信号対雑音比が変動する要因になる。したがって、信号対雑音比を各測定で極大化するために、本発明のように偏光を変化させながら測定し、長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴が極大になる偏光状態で測定することが好ましい。
例えば、短軸長が約10nm、長軸長が約30nm、直径が約10nmのロッド状に形成された金微粒子において、空気中では、局在化表面プラズモン共鳴波長は約700nmとなり、屈折率が1変化した場合の局在化表面プラズモン共鳴波長変化量は、約300nmとなる。ここで、被検溶液の屈折率を1.35とした場合、空気の屈折率の差から被検溶液がロッド状に形成された金微粒子105aの周囲に満たされている場合、長軸方向に共鳴した局在化表面プラズモン共鳴波長は約805nmとなる。
ここで、本発明の光源として、約805nmの光を放射する半導体レーザを利用することができる。また、被検溶液の屈折率に応じて、異なる波長を放射する半導体レーザを利用しても良く、金ナノロッド105aの大きさによって局在化表面プラズモン共鳴波長が変化するため、金ナノロッド105aの大きさに応じて半導体レーザ101が放射する波長を変更してもよい。
本実施の形態では、光源として、半導体レーザを利用したが、当該波長を放射できるレーザ光源であれば特に限定なく利用することができる。例えば、波長可変が可能なチタンサファイアレーザ、固体レーザ等を利用することができる。
光学フィルターホイール106は、図4に示すように、半導体レーザ101の光を減衰させる第1のノッチフィルター106aがリング106hにはめ込まれており、リング106hに穴を開けることにより空隙106gが形成されている。図3に示す例では、ともに半円状である第1のノッチフィルター106aと空隙106gがリング106hにはめ込まれることにより円盤状の部材が構成されており、その円盤状の部材の中央部にリング106iが設けられている。このリング106iを図4の矢印のように回転させることにより、第1のノッチフィルター106aと空隙106gとの間で切り替えることができる。リング106iの回転は、マイクロコンピュータ110からの制御信号により制御される。光学フィルターホイール106は、本発明における光学フィルターに相当する。本実施の形態において、光学フィルターとして光学フィルターホイールを利用したが、表面増強ラマン分光測定を行う際に半導体レーザ101の光の波長を減衰させ、また、最適な偏光状態を算出するときに、半導体レーザ101が放射する波長を実質的に減衰させず、測定状態に応じて光学フィルターを切り替えることができれば、特に公知技術を限定なく利用することができる。
次に本実施の形態における表面増強ラマン分光方法および本方法を利用した表面増強ラマン分光装置の動作について、図面を参照しながら説明する。図5には、偏光制御器の最適制御値を測定する際の動作を説明する図を示す。まず、セル105に被検溶液を供給する。セル105に被検溶液が満たされたあと、半導体レーザ101の電源を入れる。この時、光学フィルターホイール106は、空隙106gが光路中に挿入されている。半導体レーザ101から放射された光は、セル105中の金ナノロッド105aを透過する際、被検溶液の屈折率に応じた局在化表面プラズモン共鳴波長において光の消衰が最大となる。金ナノロッド105aを透過した光がスリット107を透過し、グレーティング素子108により分散される。しかし、半導体レーザ101は実質的に単一波長の光を放射するため、光検出器109における各受光領域のうち、半導体レーザ101の波長に対応した受光領域のみが検出した光の量に基づいてマイクロコンピュータ110に電気信号を出力する。
この時、被検溶液が満たされたかどうかを判定するためのセンサを備えていることが好ましい。例えば、カバーガラス105eと基板105cに電極を設けておき、電極に弱い電圧をかけておく。被検溶液が例えば血液である場合、血液には電解質が含まれることから、被検溶液が満たされると電極間に電流が流れ、被検溶液がセル105内に満たされたどうかが判定できる。さらに前記センサの出力を利用して半導体レーザ101の電源を自動的にONにすることが、測定を自動化できるため好ましい。
次に、偏光制御器102を駆動しながら、セル105を透過した半導体レーザ101の光量を測定する。
ここで、偏光制御器102としては、公知の技術を特に限定することなく利用できる。例えば、λ/2波長板を回転させて偏光状態を制御するもの、液晶に電圧を印加して偏光状態を制御するものや、ファラデーローテーター等の偏光ローテーターを利用することができる。また、半導体レーザ101そのものを回転することにより、セル105に照射される光の偏光を制御してもよいし、半導体レーザ101を固定し、セル105cを回転することによりセル105cに照射される光の変更を制御してもよい。このとき、光軸の中心を回転中心として回転させることが好ましい。
また、本発明の実施の形態において、半導体レーザ101が照射する光の偏光状態に合わせてさらに偏光子を備えていてもよい。半導体レーザ101は、その構造上ある方向に偏光した光を照射するが、多少偏光の広がりが存在する。この状態で半導体レーザ101の偏光状態に合わせて偏光子を利用することにより、さらに半導体レーザ101の偏光状態を急峻にできるため好ましい。
金ナノロッド105cは、形状が均一な「ロッド状(棒状)」の金ナノ粒子(金ナノロッド)であり、可視から近赤外の領域に表面プラズモンに由来する強い二本の吸収バンドを持つ。一つは金ナノロッドの短軸方向の局在化表面プラズモン共鳴波長であり、可視域(520nm付近)に吸収ピークが存在する。もう一つは長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴波長であり、赤色から近赤外域(600〜1300nm)に吸収ピークを持つ。例えば、長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴波長である近赤外域の光を用いて表面増強ラマン分光を実施する場合、金ナノロッド105cの長軸方向に電場成分を持つように偏光した光を利用することにより長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴による電場増強効果を引き起こすことができる。以下、本実施の形態において、近赤外域の局在化表面プラズモン共鳴波長を利用して表面増強ラマン散乱を励起する場合について説明する。
偏光制御器102の最適な制御量は、次のように決定することができる。まず、ある偏光状態に設定された偏光制御器102を介してセル105に対して半導体レーザ101から光を照射する。この状態で半導体レーザ101の光量を光検出器109で検出し、対応する電気出力をマイクロコンピュータ110で処理する。次に、偏光制御器102を駆動し、セル105に照射される光の偏光状態を変化させる。この状態で、半導体レーザ101の光量を光検出器109で検出し、対応する電気出力をマイクロコンピュータ110で処理する。この後、さらに偏光制御器102を駆動し、セル105に照射される光の偏光状態を変化させ、この状態で、半導体レーザ101の光量を光検出器109で検出し、対応する電気出力をマイクロコンピュータ110で処理することを繰り返し、偏光制御器102により偏光が180度変化するまで繰り返す。この時、半導体レーザ101が放射する波長は、本実施の形態において被検試料をセル105内に導入した後の局在化表面プラズモン共鳴波長と等しくなるように設定されているため、偏光状態を変化させると、金ナノロッド105aの配向状態に応じてある偏光状態で光検出器109が検出する光量が極小になる位置が存在する。光検出器109が検出する光量が極小になっている場合、局在化表面プラズモン共鳴の発生が極大となり、最適な偏光状態となっていることを意味する。したがって、偏光制御器102を光検出器109が検出する光量が極小になった状態に制御することにより、表面増強ラマン散乱をより強く発生させることができる。
最適な偏光状態を算出した後、マイクロコンピュータ110は、最適な偏光状態の算出結果に基づき、偏光制御器102を駆動すると共に、リング106iを回転させ、第1のノッチフィルター106aを光路中に挿入する。図6には、ノッチフィルター103cが光路中に挿入されている例を示している。
半導体レーザ101の光をセル105に入射すると、金ナノロッド105aにおいて局在化表面プラズモンが励起され、近傍に電場増強領域が発生する。この電場増強領域において、表面増強ラマン散乱光が発生する。発生した表面増強ラマン散乱光は、入射した半導体レーザ101の光とは、波長が異なる。この時、表面増強ラマン散乱光として、ストークス光とアンチストークス光の2種類の表面増強ラマン散乱光が発生する。一般的にストークス光の方が、アンチストークス光に比較して光量が大きい。本実施の形態において、ストークス光、アンチストークス光のどちらを測定してもかまわない。
また、半導体レーザ101をセル105に入射した際、表面増強ラマン散乱光とともに、波長が変化しないレイリー散乱光が発生する。発生した表面増強ラマン散乱光とレイリー散乱光は、共に第1のノッチフィルター106aに入射するが、レイリー散乱光は、第1のノッチフィルター106aにより減衰され、スリット107、グレーティング素子108にはほとんど放射されない。第1のノッチフィルター106aを透過した表面増強ラマン散乱光は、グレーティング素子108により分散させられ、各波長に応じて複数の受光領域を持つ光検出器109に入射される。
ここで、複数の受光領域を持つ光検出器109としては、公知技術を特に限定することなく利用することができる。例えば、CCD(電荷結合素子)、CMOS、1次元フォトディテクターアレイ等を利用することができる。また、受光領域の数としては、例えば4096個の受光領域を持つ1次元CCD素子を利用することができる。
光検出器109に入射した光は、マイクロコンピュータ110により表面増強ラマン散乱光強度とラマンシフト波数が算出される。この時、光検出器109における各受光領域の出力と波数に関するデータはメモリ111を参照する。
表面増強ラマン散乱光強度とラマンシフト波数が算出されると、マイクロコンピュータ110は、さらにメモリ111に格納されている表面増強ラマン散乱光の各波数における強度と被検物質の濃度の相関関係を参照し、被検物質の濃度を算出する。算出された被検物質の濃度は、例えば、スピーカー(図示せず)を通じて音声での通知や、ディスプレイ等(図示せず)に表示させることにより、ユーザに通知される。
メモリ112に格納されている、表面増強ラマン散乱光の強度と波長の関係と被検溶液中の被検物質の濃度との相関を示す相関データは、例えば、以下の手順によって取得することができる。
まず、既知の被検成分濃度(例えば、血糖値)を有する患者について、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係を測定する。この測定を、異なる被検成分濃度を有する複数の患者について行うことにより、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係と、それらに対応する被検物質濃度とからなるデータの組を得ることができる。
次に、このようにして取得したデータの組を解析して相関データを求める。例えば、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係と、それらに対応する被検物質濃度とについて、PLS(Partial Least Squares Regression)法などの重回帰分析法やニューラルネットワーク法などを用いて多変量解析を行うことにより、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係と、それらに対応する被検物質濃度との相関を示す関数を求めることができる。
本実施の形態によれば、金ナノロッド等の形状異方性を有する金属微粒子が同一方向で固定化されていなくとも、表面増強ラマン散乱を励起するための光源の偏光状態を制御することにより、測定感度が低下することを防止することで、高精度に被検物質の濃度が測定できる。
(実施の形態2)
本発明の別の実施の形態について図7を用いて説明する。図7において、図1〜図6と同じ構成要素については、同じ符号を用い、説明を省略する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る表面増強ラマン分光装置の構成を示す図である。図7において、実施の形態1と異なる構成は、光学フィルターとして第1のノッチフィルター106aのみを備えている点である。その他の構成は実施の形態1と同じであるため説明を省略する。
本発明の実施の形態2では、偏光制御器102の最適な制御量を決定する際、実施の形態1とは異なり、直接表面増強ラマン散乱光の光量を測定することにより決定する。このようにすることにより、光学フィルターの制御が不必要となり、システムがより簡易になるため好ましい。
次に本実施の形態における表面増強ラマン分光方法および本方法を利用した表面増強ラマン分光装置の動作について、図7を用いて説明する。まず、セル105に被検溶液を供給する。セル105に被検溶液が満たされたあと、半導体レーザ101の電源を入れる。
この時、被検溶液が満たされたかどうかを判定するためのセンサを備えていることが好ましい。例えば、カバーガラス105eと基板105cに電極を設けておき、電極に弱い電圧をかけておく。被検溶液が例えば血液である場合、血液には電解質が含まれることから、被検溶液が満たされると電極間に電流が流れ、被検溶液がセル105内に満たされたどうかが判定できる。さらに前記センサの出力を利用して半導体レーザ101の電源を自動的にONにすることが、測定を自動化できるため好ましい。
次に、偏光制御器102を駆動しながら、セル105に照射された半導体レーザ101により発生された表面増強ラマン散乱光の光量を測定する。ここで、測定する表面増強ラマン散乱光の光量は、ある特定のラマンシフトに対応する波数の光量を測定すればよい。例えば、最も大きなラマン散乱強度の波数の光量を測定することが好ましい。
偏光制御器102の最適な制御量は、次のように決定することができる。まず、ある偏光状態に設定された偏光制御器102を介してセル105に対して半導体レーザ101から光を照射する。この状態で半導体レーザ101をセル105に照射することにより発生した表面増強ラマン散乱光の光量を光検出器109で検出し、対応する電気出力をマイクロコンピュータ110で処理する。次に、偏光制御器102を駆動し、セル105に照射される光の偏光状態を変化させる。この状態で半導体レーザ101をセル105に照射することにより発生した表面増強ラマン散乱光の光量を光検出器109で検出し、対応する電気出力をマイクロコンピュータ110で処理する。この後、さらに偏光制御器102を駆動し、セル105に照射される光の偏光状態を変化させ、この状態で半導体レーザ101をセル105に照射することにより発生した表面増強ラマン散乱光の光量を光検出器109で検出し、対応する電気出力をマイクロコンピュータ110で処理することを繰り返し、偏光制御器102により偏光が180度変化するまで繰り返す。この時、半導体レーザ101が放射する波長は、本実施の形態において被検試料をセル105内に導入した後の局在化表面プラズモン共鳴波長と等しくなるように設定されているため、偏光状態を変化させると、金ナノロッド105aの配向状態に応じてある偏光状態で光検出器109が検出する表面増強ラマン散乱光量が極大になる位置が存在する。光検出器109が検出する表面増強ラマン散乱光量が極大になっている場合、偏光状態が最適であることを意味する。したがって、偏光制御器102を光検出器109が検出する光量が極大になった状態に制御することにより、表面増強ラマン散乱をより強く発生させることができる。
最適な偏光状態を算出した後、マイクロコンピュータ110は、最適な偏光状態の算出結果に基づき、偏光制御器102を駆動する。
半導体レーザ101の光をセル105に入射すると、金ナノロッド105aにおいて局在化表面プラズモンが励起され、近傍に電場増強領域が発生する。この電場増強領域において、表面増強ラマン散乱光が発生する。発生した表面増強ラマン散乱光は、入射した半導体レーザ101の光とは、波長が異なる。この時、表面増強ラマン散乱光として、ストークス光とアンチストークス光の2種類の表面増強ラマン散乱光が発生する。一般的にストークス光の方が、アンチストークス光に比較して光量が大きい。本実施の形態において、ストークス光、アンチストークス光のどちらを測定してもかまわない。
また、半導体レーザ101をセル105に入射した際、表面増強ラマン散乱光とともに、波長が変化しないレイリー散乱光が発生する。発生した表面増強ラマン散乱光とレイリー散乱光は、共に第1のノッチフィルター106aに入射するが、レイリー散乱光は、第1のノッチフィルター106aにより減衰され、スリット107、グレーティング素子108にはほとんど放射されない。第1のノッチフィルター106aを透過した表面増強ラマン散乱光は、グレーティング素子108により分散させられ、各波長に応じて複数の受光領域を持つ光検出器109に入射される。
ここで、複数の受光領域を持つ光検出器109としては、公知技術を特に限定することなく利用することができる。例えば、CCD(電荷結合素子)、CMOS、1次元フォトディテクターアレイ等を利用することができる。また、受光領域の数としては、例えば4096個の受光領域を持つ1次元CCD素子を利用することができる。
光検出器109に入射した光は、マイクロコンピュータ110により表面増強ラマン散乱光強度とラマンシフト波数が算出される。この時、光検出器109における各受光領域の出力と波数に関するデータはメモリ111を参照する。
表面増強ラマン散乱光強度とラマンシフト波数が算出されると、マイクロコンピュータ110は、さらにメモリ111に格納されている表面増強ラマン散乱光の各波数における強度と被検物質の濃度の相関関係を参照し、被検物質の濃度を算出する。算出された被検物質の濃度は、例えば、スピーカー(図示せず)を通じて音声での通知や、ディスプレイ等(図示せず)に表示させることにより、ユーザに通知される。
メモリ112に格納されている、表面増強ラマン散乱光の強度と波長の関係と被検溶液中の被検物質の濃度との相関を示す相関データは、例えば、以下の手順によって取得することができる。
まず、既知の被検成分濃度(例えば、血糖値)を有する患者について、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係を測定する。この測定を、異なる被検成分濃度を有する複数の患者について行うことにより、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係と、それらに対応する被検物質濃度とからなるデータの組を得ることができる。
次に、このようにして取得したデータの組を解析して相関データを求める。例えば、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係と、それらに対応する被検物質濃度とについて、PLS(Partial Least Squares Regression)法などの重回帰分析法やニューラルネットワーク法などを用いて多変量解析を行うことにより、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係と、それらに対応する被検物質濃度との相関を示す関数を求めることができる。
本実施の形態によれば、金ナノロッド等の形状異方性を有する金属微粒子が同一方向で固定化されていなくとも、表面増強ラマン散乱を励起するための光源の偏光状態を制御することにより、測定感度が低下することを防止することで、高精度に被検物質の濃度が測定できる。
(実施の形態3)
本発明の別の実施の形態について、図8〜図10を用いて説明する。図8〜図10において、図1〜図7と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
図8は、本発明の実施の形態3に係る表面増強ラマン分光装置の構成を示す図である。図8において、実施の形態1と異なる構成は、光源として、局在化表面プラズモン共鳴波長を測定するために利用するハロゲン光源121、半導体レーザ101a〜101fを備えている点である。ここで、本発明の実施の形態では、局在化表面プラズモン共鳴波長を測定するための光源として、ハロゲン光源121を利用したが、測定する局在化表面プラズモン共鳴波長を含む光源であれば、公知の技術を特に限定することなく利用することができる。例えば、近赤外領域の光を放射する赤外LED等を利用することができる。また、半導体レーザ101a〜101fは、被検溶液の屈折率が変化した際に局在化表面プラズモン共鳴波長が変化するが、この現象を補償するために利用する。半導体レーザ101a〜101fが放射する波長は、被検溶液をセル105内に導入した後の長軸方向の局在化表面プラズモン共鳴波長の光を含むものであれば、公知の技術を特に限定なく利用することができる。例えば、短軸長が約10nm、長軸長が約30nm、直径が約10nmのロッド状に形成された金微粒子において、空気中では、局在化表面プラズモン共鳴波長は約700nmとなり、屈折率が1変化した場合の局在化表面プラズモン共鳴波長変化量は、約300nmとなる。ここで、被検溶液の屈折率を1.35とした場合、空気の屈折率の差から被検溶液がロッド状に形成された金微粒子105aの周囲に満たされている場合、長軸方向に共鳴した局在化表面プラズモン共鳴波長は約805nmとなる。半導体レーザ101a、101b、101c、101d、101e、101fとして、放射する波長が、それぞれ790nm、794nm、798nm、802nm、806nm、810nmであるものを利用することができる。
次に本実施の形態における表面増強ラマン分光方法および本方法を利用した表面増強ラマン分光装置の動作について、図面を参照しながら説明する。図9には、局在化表面プラズモン共鳴波長を測定する際の動作を説明する図を示す。まず、セル105に被検溶液を供給する。セル105に被検溶液が満たされたあと、ハロゲン光源101の電源を入れる。この時、光学フィルターホイール106は、空隙106gが光路中に挿入されている。ハロゲン光源101から放射された光は、セル105中の三角錘状の銀微粒子105aを透過する際、被検溶液の屈折率に応じた局在化表面プラズモン共鳴波長において光の消衰が最大となる。金ナノロッド105aを透過した光がスリット107を透過し、グレーティング素子108により分散され、光検出器109における各受光領域に到達した光の量からマイクロコンピュータ110が、光検出器109の各受光領域が検出した光の量に基づいて局在化表面プラズモン共鳴波長を決定する。この時、実施の形態1と同じく偏光制御器102を駆動しながら測定を実施する。ここで、ハロゲン光源121を利用して局在化表面プラズモン共鳴波長を測定する際の偏光制御器102は、ハロゲン光源121が放射する光はランダムに偏光していることから、特定方向に偏光した光を透過させる偏光子を利用し、偏光制御は、偏光子を回転させることにより行う。ハロゲン光源121が放射する光を、偏光制御器102を制御しながら測定する。ハロゲン光源121から放射された光は、セル105中の金ナノロッド105aを透過する際、被検溶液の屈折率に応じて局在化表面プラズモン共鳴波長において光の消衰が最大となり、さらに、偏光制御器102の状態に応じて、さらに光の減衰が大きくなる。金ナノロッド105aを透過した光がスリット107を透過し、グレーティング素子108により分散され、光検出器109における各受光領域に到達した光の量からマイクロコンピュータ110が、光検出器109の各受光領域が検出した光の量に基づいて局在化表面プラズモン共鳴波長と偏光制御器102の最適状態を決定する。
この時、実施の形態1と同様に、被検溶液が満たされたかどうかを判定するためのセンサを備えていることが好ましい。例えば、カバーガラス105eと基板105cに電極を設けておき、電極に弱い電圧をかけておく。被検溶液が例えば血液である場合、血液には電解質が含まれることから、被検溶液が満たされると電極間に電流が流れ、被検溶液がセル105内に満たされたどうかが判定できる。さらに前記センサの出力を利用して半導体レーザ101の電源を自動的にONにすることが、測定を自動化できるため好ましい。
局在化表面プラズモン共鳴波長と、最適な偏光制御値を算出した後、マイクロコンピュータ110は、局在化表面プラズモン共鳴波長の算出結果に基づき、半導体レーザ101a〜101fのうち、どの半導体レーザ101を放射するかを決定し、決定した半導体レーザ101を放射するように設定すると共に、半導体レーザ101からセル105の光路中に存在する偏光制御器102を最適な偏光制御値になるように設定し、さらに、リング106iを回転させ、選定した半導体レーザ101が放射する波長に対応するノッチフィルターを光路中に挿入する。
ここで、本実施の形態で利用する、光学フィルターホイール106を図10に示す。光学フィルターホイール106は、図10に示すように、第1のノッチフィルター106a、第2のノッチフィルター106b、第3のノッチフィルター106c、第4のノッチフィルター106d、第5のノッチフィルター106e、及び、第6のノッチフィルター106fがリング106hにはめ込まれており、リング106hに穴を開けることにより空隙106gが形成されている。ここで、第1〜第6のノッチフィルター106a〜106fは、それぞれ半導体レーザ102a〜102fが放射する波長の光を減衰させるノッチフィルターに対応する。図9に示す例では、ともに円状である第1〜第6のノッチフィルター106a〜106fと空隙106gがリング106hにはめ込まれることにより円盤状の部材が構成されており、その円盤状の部材の中央部にシャフト106iが設けられている。このシャフト106iを図10の矢印のように回転させることにより、第1〜第6のノッチフィルター106a〜106fと空隙106gとの間で切り替えることができる。シャフト106iの回転は、マイクロコンピュータ110からの制御信号により制御される。光学フィルターホイール106は、本発明における光学フィルターに相当する。
図9には、半導体レーザ101が局在化表面プラズモン共鳴波長とほぼ等しくなるよう、半導体レーザ101cが放射するように設定され、ノッチフィルター103cが光路中に挿入され、さらに、半導体レーザ101からセル105の光路中に存在する偏光制御器102を最適な偏光制御値になるように設定されている例を示している。例えば、局在化表面プラズモン共鳴波長が805nmであるとき、806nmの光を放射するように半導体レーザ101cを駆動し、これと同時に半導体レーザ101cが放射する波長に対応する第3のノッチフィルター106cを光路中に挿入する。ここで、半導体レーザ101からセル105の光路中に存在する偏光制御器102は、実施の形態1と同様のものを利用することができる。
半導体レーザ101cの光をセル105に入射すると、金ナノロッド105aにおいて局在化表面プラズモンが励起され、近傍に電場増強領域が発生する。この電場増強領域において、表面増強ラマン散乱光が発生する。発生した表面増強ラマン散乱光は、入射した半導体レーザ101cの波長の光とは、波長が異なる。この時、表面増強ラマン散乱光として、ストークス光とアンチストークス光の2種類の表面増強ラマン散乱光が発生する。一般的にストークス光の方が、アンチストークス光に比較して光量が大きい。本実施の形態において、ストークス光、アンチストークス光のどちらを測定してもかまわない。
また、半導体レーザ101cが放射した光をセル105に入射した際、表面増強ラマン散乱光とともに、波長が変化しないレイリー散乱光が発生する。発生した表面増強ラマン散乱光とレイリー散乱光は、共にノッチフィルター106cに入射するが、レイリー散乱光は、ノッチフィルター106cにより吸収され、スリット107、グレーティング素子108にはほとんど放射されない。ノッチフィルター106cを透過した表面増強ラマン散乱光は、グレーティング素子108により分散させられ、各波長に応じて複数の受光領域を持つ光検出器109に入射される。
光検出器109に入射した光は、マイクロコンピュータ110により表面増強ラマン散乱光強度とラマンシフト波数が算出される。この時、光検出器109における各受光領域の出力と波数に関するデータはメモリ111を参照する。
表面増強ラマン散乱光強度とラマンシフト波数が算出されると、マイクロコンピュータ110は、さらにメモリ111に格納されている表面増強ラマン散乱光の各波数における強度と被検物質の濃度の相関関係を参照し、被検物質の濃度を算出する。算出された被検物質の濃度は、例えば、スピーカー(図示せず)を通じて音声での通知や、ディスプレイ等(図示せず)に表示させることにより、ユーザに通知される。
メモリ112に格納されている、表面増強ラマン散乱光の強度と波長の関係と被検溶液中の被検物質の濃度との相関を示す相関データは、例えば、以下の手順によって取得することができる。
まず、既知の被検成分濃度(例えば、血糖値)を有する患者について、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係を測定する。この測定を、異なる被検成分濃度を有する複数の患者について行うことにより、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係と、それらに対応する被検物質濃度とからなるデータの組を得ることができる。
次に、このようにして取得したデータの組を解析して相関データを求める。例えば、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係と、それらに対応する被検物質濃度とについて、PLS(Partial Least Squares Regression)法などの重回帰分析法やニューラルネットワーク法などを用いて多変量解析を行うことにより、表面増強ラマン散乱光の波長と光強度の関係と、それらに対応する被検物質濃度との相関を示す関数を求めることができる。
本実施の形態によれば、金ナノロッド等の形状異方性を有する金属微粒子が同一方向で固定化されていなくとも、表面増強ラマン散乱を励起するための光源の偏光状態を制御することにより、測定感度が低下することを防止することで、高精度に被検物質の濃度が測定できる。
本発明にかかる表面増強ラマン分光測定方法及び本方法を用いた表面増強ラマン分光装置は、本実施の形態によれば、金ナノロッド等の形状異方性を有する金属微粒子が同一方向で固定化されていなくとも、表面増強ラマン散乱を励起するための光源の偏光状態を制御することにより、測定感度が低下することを防止することで、高精度に被検物質の濃度が測定する際に有用である。
本発明の一実施の形態における表面増強ラマン分光装置の構成を示す図 本発明の一実施の形態におけるセル105の断面を示す図 本発明の一実施の形態における金ナノロッド105cの固体化状態を示す模式図 本発明の一実施の形態における光学フィルターホイール106の斜視図 本発明の一実施の形態における偏光制御器の最適制御値を測定する際の動作を説明する図 本発明の一実施の形態における表面増強ラマン散乱光を測定する際の動作を説明する図 本発明の他の実施の形態における表面増強ラマン分光装置の構成を示す図 本発明の他の実施の形態における偏光制御器の最適制御値を測定する際の動作を説明する図 本発明の他の実施の形態における表面増強ラマン散乱光を測定する際の動作を説明する図 本発明の他の実施の形態における光学フィルターホイール106の斜視図
100 表面増強ラマン分光装置
101 半導体レーザ
101a 半導体レーザ
101b 半導体レーザ
101c 半導体レーザ
101d 半導体レーザ
101e 半導体レーザ
101f 半導体レーザ
102 偏光制御器
103 ミラー
104 レンズ
105 セル
105a 金ナノロッド
105b スペーサー
105c 基板
105d 被検溶液保持空間
106 光学フィルターホイール
106a 第1のノッチフィルター
106b 第2のノッチフィルター
106c 第3のノッチフィルター
106d 第4のノッチフィルター
106e 第5のノッチフィルター
106f 第6のノッチフィルター
106g 空隙
106h リング
106i シャフト
107 スリット
108 グレーティング素子
109 複数の受光領域を持つ光検出器
110 マイクロコンピュータ
111 メモリ
120 金ナノロッドの配向方向のうち最も多く含まれる方向を示す矢印
121 ハロゲン光源

Claims (8)

  1. 被検物質の濃度を表面増強ラマン分光法により測定する方法であって、
    a) 被検物質を、形状異方性を持つ金属微粒子が形成されたセルに供給する工程、
    b) 前記セルに光を照射する工程、
    c) 前記光の偏光状態を変化させながら、前記セルを透過、または、散乱、または、反射した光を検出する工程、
    d) 工程c)により検出された光の光量から、最適な偏光状態を決定する工程、
    e) 工程d)で得られた偏光状態になるよう偏光素子を制御する工程、
    f) 工程e)の偏光状態で前記セルに光を照射し、表面増強ラマン散乱を発生させる工程、
    g) 工程f)により発生した表面増強ラマン散乱光を分光し、検出する工程、
    h) 工程g)により検出された表面増強ラマン散乱光から被検物質濃度を算出する工程
    を含む表面増強ラマン分光測定方法
  2. 前記工程c)において、検出する光量は、工程b)において入射した波長の光である請求項1記載の表面増強ラマン分光方法。
  3. 前記工程c)において、検出する光量は、前記工程b)において入射した光により発生した表面増強ラマン散乱光の光量である請求項1記載の表面増強ラマン分光方法。
  4. 被検物質は、生体に含まれる成分である請求項1から3いずれかに記載の表面増強ラマン分光方法。
  5. 表面増強ラマン散乱を励起するための光を放射する光源と、形状異方性を持つ金属微粒子が形成されたセルと、前記セルを透過、反射、または、散乱した光を検出、または、分光し、分光された光を検出する分光手段と、表面増強ラマン散乱を前記光源からの光を減衰させる光学フィルターと、前記光源から放射された光の偏光状態を変更・制御する偏光制御手段とを備え、前記分光手段により検出された光量に基づいて前記偏光制御手段の制御値を決定し、前記偏光制御手段を制御する演算部とを備える請求項1から4記載のいずれかの方法を利用する表面増強ラマン分光装置。
  6. 前記光源は、半導体レーザである請求項5の表面増強ラマン分光装置。
  7. 前記光源と前記偏光制御手段との間に、前記光源の偏光状態と一致するように設けられた偏光素子をさらに備える請求項5、6いずれかに記載の表面増強ラマン分光装置。
  8. 前記光学フィルターは、前記光源の光を減衰させる表面増強ラマン分光用光学フィルターと前記光源の光に作用しない光学フィルター、または、空隙で構成されている請求項2、5、6、7のいずれかに記載の表面増強ラマン分光装置。
JP2009014947A 2009-01-27 2009-01-27 表面増強ラマン分光測定方法及び本方法を用いた表面増強ラマン分光装置 Pending JP2010175251A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009014947A JP2010175251A (ja) 2009-01-27 2009-01-27 表面増強ラマン分光測定方法及び本方法を用いた表面増強ラマン分光装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009014947A JP2010175251A (ja) 2009-01-27 2009-01-27 表面増強ラマン分光測定方法及び本方法を用いた表面増強ラマン分光装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2010175251A true JP2010175251A (ja) 2010-08-12

Family

ID=42706384

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009014947A Pending JP2010175251A (ja) 2009-01-27 2009-01-27 表面増強ラマン分光測定方法及び本方法を用いた表面増強ラマン分光装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2010175251A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012519833A (ja) * 2010-04-20 2012-08-30 パナソニック株式会社 生体に含有される生体成分の濃度を測定する方法
JP2013501917A (ja) * 2010-09-13 2013-01-17 パナソニック株式会社 被検溶液に含まれる抗原の濃度を測定する方法
JP2013019747A (ja) * 2011-07-11 2013-01-31 Seiko Epson Corp 光学デバイス及びそれを用いた検出装置
JP2016031240A (ja) * 2014-07-25 2016-03-07 セイコーエプソン株式会社 測定方法、ラマン分光装置、および電子機器
JP2020034317A (ja) * 2018-08-28 2020-03-05 株式会社堀場製作所 分析方法、分析用セル、及び分析装置

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012519833A (ja) * 2010-04-20 2012-08-30 パナソニック株式会社 生体に含有される生体成分の濃度を測定する方法
JP2013501917A (ja) * 2010-09-13 2013-01-17 パナソニック株式会社 被検溶液に含まれる抗原の濃度を測定する方法
JP2013019747A (ja) * 2011-07-11 2013-01-31 Seiko Epson Corp 光学デバイス及びそれを用いた検出装置
JP2016031240A (ja) * 2014-07-25 2016-03-07 セイコーエプソン株式会社 測定方法、ラマン分光装置、および電子機器
JP2020034317A (ja) * 2018-08-28 2020-03-05 株式会社堀場製作所 分析方法、分析用セル、及び分析装置
JP7201366B2 (ja) 2018-08-28 2023-01-10 株式会社堀場製作所 分析方法、分析用セル、及び分析装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7505128B2 (en) Compact, hand-held raman spectrometer microsystem on a chip
US7639355B2 (en) Electric-field-enhancement structure and detection apparatus using same
US7233643B2 (en) Measurement apparatus and method for determining the material composition of a sample by combined X-ray fluorescence analysis and laser-induced breakdown spectroscopy
US20130176562A1 (en) Method and apparatus for measuring concentration of biogenic substance
US20090257055A1 (en) Hollow-core waveguide-based raman systems and methods
EP2383565A1 (en) Optical device, analyzing apparatus and spectroscopic method
JPH09184809A (ja) 散乱光測定装置
JP2010175251A (ja) 表面増強ラマン分光測定方法及び本方法を用いた表面増強ラマン分光装置
US20150077747A1 (en) Active chemical sensing using optical microcavity
JP2010160043A (ja) 表面増強ラマン分光測定方法及び本方法を用いた表面増強ラマン分光装置
JPH0523617B2 (ja)
KR102237233B1 (ko) 개방형 광학 공진기 캐비티에서의 입자 특성화
US20070030481A1 (en) Molecular detector arrangement
JP5350226B2 (ja) スペクトル情報を得るための装置および方法
US7405822B2 (en) Systems and methods for detection of Raman scattered photons
Tatarkovič et al. The potential of chiroptical and vibrational spectroscopy of blood plasma for the discrimination between colon cancer patients and the control group
JP4584352B1 (ja) 生体成分濃度の測定方法および測定装置
Li et al. Effects of laser excitation wavelength and optical mode on Raman spectra of human fresh colon, pancreas, and prostate tissues
US20090273778A1 (en) Surface enhanced resonant raman spectroscopy
Smulko et al. Noise in biological raman spectroscopy
US8913240B2 (en) Fluorescence spectrophotometer
JP2013176436A (ja) 生体成分濃度測定装置
GB2545843A (en) Fixed position controller and method
JP2002005835A (ja) ラマン分光測定装置及びそれを用いた生体試料分析方法
Liyanage et al. Fluorescence spectroscopy of peptides