JP2010174153A - バイオマス由来の液体燃料合成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】設置面積も少なくて済み、その取り扱いも容易で、かつ簡易小型化装置でありながら、バイオマスからバイオマス由来の液体燃料を低圧・低温で効率よく合成でき、分散型プラントして、極めて優れた使用特性を備えたバイオマス由来の液体燃料合成装置を提供する
【解決手段】少なくとも下記の(i)〜(vii)の手段を備えたバイオマス由来の液体燃料合成装置。
(i)バイオマスをガス化する手段
(ii)バイオマスのガス化により得られるバイオマスガスを0.7MPa以上〜1MPa未満に圧縮する手段
(iii)圧縮されたバイオマスガスを、触媒が充填された液体燃料反応槽と、圧力調整用加熱容器に供給する手段
(iv)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、液体燃料反応槽を加熱することにより、液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの温度を、液体燃料合成に適した温度に昇温する手段
(v)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、圧力調整用加熱容器を加熱することにより、圧力調整用加熱容器及び液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの圧力を、液体燃料合成に適した圧力に昇圧する手段
(vi)上記液体燃料反応槽で合成されたバイオマス液体燃料を冷却して、バイオマス液体燃料と未反応バイオマスガスに分離する手段
(vii)上記圧力調整用加熱容器を常温迄冷却することにより、分離された未反応バイオマスガスを回収し、(iii)及び(v)に再利用する未反応バイオマスガスの循環・再液化手段
【選択図】なし

Description

本発明は、バイオマスを原料とするメタノールやFT油等のバイオマス由来の液体燃料の合成装置に関する。
バイオマスは、再生時(成長時)に二酸化炭素を吸収・固定しているため、エネルギー源として利用したとしてもトータル的にみて大気中の二酸化炭素を増加させることがない、自然由来の炭化水素で、唯一の再生可能な有機性炭化水素である。
その形態も、木質系・草本系バイオマス、農林産業廃棄物系バイオマス等の乾燥系、生ゴミ・下水汚泥・畜産糞尿系バイオマス等の高含水系等と多種多様である。
また、バイオマス賦存量は極めて多く、年間の純生産量(再生量、固定量とも言う)だけでも現在の全世界一次エネルギー年間利用量の5から8倍に相当すると推定されている。
しかし、バイオマスは原料自体が石油、石炭などに比べてそのエネルギー密度が低く、嵩容量が大きい固体であるため取り扱いが難しく、また「広く薄く」分布するため一ヶ所で発生・収集できる量が少ない(日本国内では数トン/日)。また、高含水系バイオマスは勿論、乾燥系バイオマスでも体積あたりの発熱量が低いため貯蔵・輸送にコストがかかることから、バイオマスを、経済性に優れたガス燃料として利用する方法や貯蔵も容易な液体燃料への変換改質原料として利用する方法が強く要請されている。
バイオマスを燃料として利用する方法としては、これをガス化し、得られるバイオマスガスでガスエンジンを動かし、ガス化発電を行う方法がこれまでに広く研究され、実用化のためのプラント試験も日本はもとより世界各地で行われている。
しかし、電気は需要変動が大きく、たとえば日中は多く、夜間は少なく、また夏場は多く、春秋は少ないことが知られている。この需要変動へ対応するため、夜間にシステムを停止または出力を下げる等の対策が採られるが、夜間停止・出力低下に加え、立上げ立下げ時にガス組成が変動するためこの間に生成したガスを利用できない等、システム稼働率が低下する。そのため初期コストの回収期間が長期化する等の課題が多い。
このような問題を克服するため、バイオマスガスから液体燃料(メタノールやFT合成油:ノルマルパラフィン)を合成するシステム(ガス化・液体燃料合成システム)の研究開発が盛んに行われるようになった。
これは、(1)液体燃料は貯蔵・運搬が容易なので、連続的にガス化・液体燃料合成を行え、エネルギー変換効率とシステム稼働率の向上が図れること、(2)また、既存設備(ガソリンエンジン発電機やディーゼルエンジン発電機、重油バーナー、車両等)の燃料に利用できるため、初期コスト低減及び初期コスト回収期間短縮が可能となったこと、(3)近年開発されたバイオマスの噴流床ガス化方式や流動床ガス化方式によれば、バイオマスガス組成を制御可能で、特にCOとH2の組成制御ができるため、生成したガスからメタノールやFT合成油などの液体燃料の効率な製造が可能となったこと等が理由とされる。
これ迄開発されたバイオマスガス化・液体燃料合成試験プラントの概略を図4に示す。
以下、図4に沿って、従来のバイオマスガス化・液体燃料合成試験プラントを説明する。
乾燥系バイオマスは、酸素含有率が高く、石炭より低温で反応するので、ガス化温度は通常900℃である。小規模つまり原料バイオマス量が少ないこと(数トン/日)とガス化温度が低いこと(900℃)以外、ガス化フローは石炭ガス化・液体燃料合成プラントと同じである。
最初に乾燥系バイオマスや有機廃棄物等を収集する。日本国内の平均的な製材所や木工所で収集できる量は数トン/日である。これらをたとえば、噴流床方式または流動床方式のガス化炉でガス化する。ガス化温度は900℃である。ガス化剤として主に水蒸気や酸素を用いる。これは、バイオマスは水蒸気と反応することにより、効率良くガス化されること、後述のように水蒸気量を調整することにより、ガス組成を調整できること、酸素によりバイオマスを部分酸化することにより、ガス化に必要な温度と熱を発生できることなどの理由による。
ガス化炉から排出されるガスは未反応の水蒸気とバイオマスから生成されたガス(バイオマスガス)と低温(300℃〜400℃以下)で液化・固化するタールである。このガス温度は850℃〜900℃なので、ガスの熱を熱交換器で回収し、ガス化剤の水蒸気や酸素を加熱する(廃熱回収・利用)。温度が下ったガスを精製・冷却し、水蒸気とタールを除去する。
ついで、得られたバイオマスガスをガスホルダに貯蔵する。ガスホルダの貯蔵圧力は常圧である。バイオマスガスの主成分はH2、CO、CH4、CO2である。この内、液体燃料(メタノールやFT油)合成の原料になるガスはH2とCOである。
液体燃料合成反応は反応速度とCO転化率で評価できる。一般に温度が高いほど反応速度は速い。現在市販されている触媒を用いる場合、180℃程度以下だと反応速度が低すぎ、液体燃料は殆ど合成されないので、200℃以上に加熱しなければならない。CO転化率は原料のCOが液体燃料へ転化される割合を示し、一般に温度が高いほどCO転化率は低く、圧力が高いほどCO転化率は高い。
液体燃料合成部分は、石炭・天然ガスを原料とする化石燃料プラントと同じで、多量の原料ガスから短時間で液体燃料を合成するのに適している。合成条件は高圧(約20MPa, 約200気圧)、高温(約300℃)である。高圧コンプレッサを用い原料ガスを20MPaへ昇圧し、液体燃料反応槽へ送り込む。液体燃料反応槽内で300℃へ加熱する。20MPa、300℃でのCO転化率は約50%、つまりCOの約50%が液体燃料へ転化される。残り約50%のバイオマスガスは未反応である。
この温度・圧力では液体燃料もガス状である。高圧コンプレッサからバイオマスガスが液体燃料反応槽へ連続的に流れ込むので、未反応のバイオマスガスとガス状の液体燃料の混合ガスは液体燃料反応槽から冷却器へ押し出される。冷却器で液体燃料は液化する。気液分離器により、液化した液体燃料と未反応バイオマスガスを分離する。
未反応のバイオマスガスは次段の液体燃料反応槽へ流れ、同様に液体燃料が合成される。多段の液体燃料反応槽を使う(多段合成)により、CO転化率を等価的に向上できる。20MPa、300℃の場合、2段合成での等価CO転化率は約75%、3段合成での等価CO転化率は約90%である。段数を増やすと等価CO転化率は高くなるが、バイオマスガスを100%液体燃料へ転化することはできないので、最終段出口で、未反応バイオマスガスを処理する(通常は燃焼処理)。多段合成のメリットは、反応速度を速くするため温度を高くしても、CO転化率を高くできること、つまりバイオマスガスから液体燃料が連続的に合成されるため合成量が多いこと、高圧コンプレッサからバイオマスガスが送り込まれるため、ガスが最終段出口へ順次流れて行くこと等である。
しかしながら、これまでのバイオマスガス化・液体燃料合成試験プラントは、その規模が数トン/日に過ぎないにも拘わらず、図4に示されるようにその規模が約一千倍にも相当する1000トン/日以上である化石燃料プラント用に開発された大規模システムをそのまま適用している。
このため、高価で取り扱いが難しく定期点検も手間と時間と費用を要する高圧コンプレッサを必要とすること、多段合成のため、高圧ガス部分が大きくなり、高価になること、高圧ガス部分が大きくなるため、第1種高圧ガス設備となり、都道府県知事認可や高圧ガス製造責任者専任や毎年の定期検査などが必要になること、手続きが煩雑になること、運転コストが増大すること、未反応ガスの最終処理設備が必要となること、多量の可燃ガス(水素、一酸化炭素、メタン)を高温(300℃)高圧(20MPa)で取り扱うため、爆発を防ぐための設備を必要とすること、高圧ガス管理体制整備を義務づけられていること、その使用に関し細心の注意が必要となる、といった数多くの問題点があった。
特に、従来のバイオマスガス化・液体燃料合成試験プラントでは、バイオマスガスのガス圧縮器として化石燃料プラント用と同様な高圧コンプレッサ(10MPa〜20MPa)が使用されている。このような高圧コンプレッサの利用に関して、我が国では1MPa(約10気圧)以上の設備は高圧ガス関連法規の規制対象としており、高圧設備(高圧コンプレッサ、配管、容器等)は都道府県知事への届出または認可(規模による)が必要、半年に1回の点検、3年に1回の開放検査、高圧ガス製造責任者の選任等が義務づけられている。また、その貯蔵量が300立米(標準状態換算)を越えると、高圧ガス貯蔵所として都道府県知事の認可が必要で、高圧ガス管理体制(責任者、管理者、通報等)の整備が義務づけられており、その使用に関しては細心の注意と厳格な管理体制が必要となる。
また、コンプレッサの価格は例えば、標準状態換算処理量(0℃、1気圧)1000リットル(1立米)/時程度の低圧コンプレッサ(1MPa未満)だと本体価格約20万円、付帯設備を入れても100万円以下だが、高圧コンプレッサ(10MPa〜20MPa)だと本体価格約300万円、付帯設備を入れると1000万以上で、価格は10倍以上になる。
このように、従来の装置は、「1000トン/日という、大規模なプラント」で「高度に専門的な高温、高圧反応」を伴う、石炭、天然ガスなどの化石燃料のメタノール化技術を転用したものであることから、大掛かりで高価な装置設計を余儀なくされ、また高圧コンプレッサなどの使用や取り扱いやその初期コスト及びランニングコストが複雑・高価となるといった数多くの問題点があった。
このため、日本国内の各地域に「広く薄く」分散し、一ヶ所で発生・収集できる量が1日当たり数トンと少ないため、小型化し簡易分散化の可能な設備が要請されている、バイオマスガスを利用した液体燃料合成装置としての適合性に劣るものであった。
最近、このような問題を解消する装置として、液体燃料合成槽を5段にすることで、バイオマスからメタノールを合成する方法が提案されている(特許文献1)。この公報によれば、0.5MPa〜5MPaの範囲でメタノール合成可能としている。
しかし、この特許文献1の実用機(非特許文献1参照)では、3MPaの高圧コンプレッサを用いている。このため、特許文献1の方法では、実質的に高圧コンプレッサが必要となり、また5段なので高圧ガス部分が大きく、第1種高圧ガス設備となり、都道府県知事認可や高圧ガス製造責任者専任や毎年の定期検査などが必要になること、手続きが煩雑になること、運転コストが高くなるといった難点があった。
また、この方法では、5段合成を行っているが、3MPaの場合の等価的CO転化率は最大70%程度に過ぎないので、相当量(30%程度以上)のバイオマスガスが無駄となり、液体燃料への転化率が低くなり、また未反応バイオマスガスの処理設備(通常燃焼)が必要となる。
更に、この方法では、液体燃料反応槽等の加熱に電気ヒーターを用いるだけであり、ガス化直後の高温ガスの熱を利用しておらず、そのためシステム全体のエネルギー効率がそれ程高くないといった問題点があった。
特開2005−132739号公報
「小規模C1化学変換プラントのための小型・効率的メタノール合成装置」[online]インターネット<URL:http//ss.niai.affrc.go.jp/SEIKA/04/ch04023.html> 「小型噴流床型バイオマスガス化装置の設計と試作」環境技術 34巻7号 522ページ〜527ページ (2005)
本発明は、上記従来技術の実状に鑑みなされたものであって、設置面積も少なくて済み、その取り扱いも容易で、かつ簡易小型化装置でありながら、バイオマスからバイオマス由来の液体燃料を低圧・低温で効率よく合成でき、分散型プラントとして、極めて優れた使用特性を備えたバイオマス由来の液体燃料合成装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、バイオマスからバイオマス由来の液体燃料を低圧・低温で効率よく合成でき、分散型プラントとして、極めて優れた使用特性を備えたバイオマス由来の液体燃料合成装置の研究を長年研究した結果、以下の知見を得た。
(A)バイオマス由来の液体燃料合成プラントを普及させるためには、初期設備コストと運転コストを低減させる必要があること。
(B)プラントにはスケールメリットがあり、プラントが大きくなると原料量当り(トン当り)の初期設備コストも運転コストも下るので、1000トン/日という大規模な化石燃料ガス化・液体燃料合成プラントの流用は有利でなく、数トン/日規模に応じた小規模液体燃料合成設備の開発が必要であること。
(C)設備中で最も高価な高圧コンプレッサを利用しないことがコスト削減に最も有効であること。
(D)日本国内法規で、高圧ガス設備規模で第1種高圧ガス設備と第2種高圧ガス設備に分類されており、高圧ガス設備を小さくし、第2種高圧ガス設備にすると、手続きも管理も簡単になり、コスト削減に有効であり、運転が容易で少人数での運転が必要であること。
(E)少量のバイオマスガスを有効に利用するため、つまりCO転化率を高くするために、バイオマスガスの循環・再液化が必要であること。
(F)バイオマスガスの循環・再液化には、高価で機構も複雑な高圧ガス循環用ポンプを用いないことが、コスト削減に有効であること。
本発明は、上記各種知見を総合的に組み合わせることにより完成されたものである。
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
〈1〉 少なくとも下記の(i)〜(vii)の手段を備えたバイオマス由来の液体燃料合成装置。
(i)バイオマスをガス化する手段
(ii)バイオマスのガス化により得られるバイオマスガスを0.7MPa以上〜1MPa未満に圧縮する手段
(iii)圧縮されたバイオマスガスを、触媒が充填された液体燃料反応槽と、圧力調整用加熱容器に供給する手段
(iv)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、液体燃料反応槽を加熱することにより、液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの温度を、液体燃料合成に適した温度に昇温する手段
(v)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、圧力調整用加熱容器を加熱することにより、圧力調整用加熱容器及び液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの圧力を、液体燃料合成に適した圧力に昇圧する手段。
(vi)上記液体燃料反応槽で合成されたバイオマス液体燃料を冷却して、バイオマス液体燃料と未反応バイオマスガスに分離する手段
(vii)上記圧力調整用加熱容器を常温迄冷却することにより、分離された未反応バイオマスガスを回収し、(iii)及び(v)の手段に再利用する未反応バイオマスガスの循環・再液化手段
〈2〉 上記液体燃料反応槽の温度が200℃〜300℃、内部圧力が2MPa〜3MPaであり、加熱時の圧力調整用加熱容器の温度が300℃〜600℃に維持されていることを特徴とする〈1〉に記載のバイオマス由来の液体燃料合成装置。
本発明のバイオマス由来の液体燃料合成装置は、高圧コンプレッサに代えて低圧コンプレッサポンプを用い、また、利用バイオマスガス化の際に生じる極めて発熱量の高い廃熱を液体燃料転換装置(液体燃料反応槽)および昇圧装置(圧力調整用加熱容器)の熱源として利用し、液体燃料合成に必要な温度・圧力への昇温・昇圧することによりバイオマスガスから液体燃料を合成すると共に分離された未反応バイオマスガスを加熱・冷却することにより、高価で複雑な機構の高圧ガス循環用ポンプを用いず、循環・再液化を行うことにより、高CO転化率を実現する圧力調整用加熱容器などの手段を備えたことから、設置面積も少なくて済み、その取り扱いも容易で、かつ簡易小型化装置でありながら、バイオマスからバイオマス由来の液体燃料を効率よく合成でき、分散型プラントとして、極めて優れた使用特性を有する。
したがって、本発明液体燃料合成装置は、バイオマス発生量が数トン/日の、森林組合、製材所、木工所等に利用でき、多数の需要が期待できる。
すなわち、日本は国土の6〜7割を森林が占める林産国であるが、現在、日本の林産業は海外からの安い輸入木材に競合できず、非常に苦しい状況にある。また山林を抱える地方の自治体も財政、産業的に苦しい状況にあり、地域産業創生もかねて、これらの木質バイオマスを利用した地域事業を起こそうとする試みが多くの箇所で行われている。
また、バイオマスからの発電、熱製造に関しては、ペレット製造、あるいは燃焼発電、ガス化発電などが試みられているが、前述のように需要と供給先のミスマッチなどの問題から、次の展開として夜間製造や輸送・貯蔵の観点から有利な液体燃料製造を望んでいる。従来のガス化経由の液体燃料製造に関しては、前述のように、現時点では石炭、天然ガス技術を転用した「大規模な」「専門的な高温、高圧反応」であることから、小規模な地域自治体での取り扱いは困難であったが、本装置によれば、高圧コンプレッサを利用することなく、また専門家を常時滞在させる必要もなく、小規模で液体燃料を製造できるため、バイオマス発生量が数トン/日の、森林組合、製材所、木工所等に利用でき、展開が見込まれる。また、圧縮動力の大きい高圧コンプレッサを利用することなく、圧縮動力の小さい低圧コンプレッサを利用することで、圧縮動力を約1/5へ低減できること、従来は有効利用されることなく捨てられていた熱を有効利用することから、システムのエネルギー利用効率向上と運転コストの低減が可能である。
本発明のバイオマス由来の液体燃料合成装置の説明図。 実施例で用いた本発明のバイオマス由来の液体燃料合成装置の説明図。 本発明で用いる代表的な気液分離器の説明図。 従来のバイオマス由来の液体燃料合成装置の説明図。
本発明のバイオマス由来の液体燃料合成装置は、少なくとも下記の(i)〜(vii)の手段を備えたことを特徴としている。
(i)バイオマスをガス化する手段
(ii)バイオマスのガス化により得られるバイオマスガスを0.7MPa以上〜1MPa未満に圧縮する手段
(iii)圧縮されたバイオマスガスを、触媒が充填された液体燃料反応槽と、圧力調整用加熱容器に供給する手段
(iv)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、液体燃料反応槽を加熱することにより、液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの温度を、液体燃料合成に適した温度に昇温する手段
(v)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、圧力調整用加熱容器を加熱することにより、圧力調整用加熱容器及び液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの圧力を、液体燃料合成に適した圧力に昇圧する手段
(vi)上記液体燃料反応槽で合成されたバイオマス液体燃料を冷却して、バイオマス液体燃料と未反応バイオマスガスに分離する手段
(vii)上記圧力調整用加熱容器を常温迄冷却することにより、分離された未反応バイオマスガスを回収し、(iii)及び(v)の手段に再利用する未反応バイオマスガスの循環・再液化手段
以下、図1によりこれらの手段を順次説明する。
[(i)バイオマスをガス化する手段]
このバイオマスをガス化する手段は、従来公知のバイオマスのガス化手段が適用される。
バイオマスとしては、木質系・草本系バイオマス、農林産業廃棄物系バイオマス等の乾燥系、生ゴミ・下水汚泥・畜産糞尿系バイオマス等の高含水系等と多種多様なものが使用できる。この中でも木質系たとえば、第二次大戦直後に多量に植林され現在伐採期を迎えたものの、外材におされ殆ど利用されていないスギを用いることが好ましい。
ガス化の形式は、ガス化圧力(常圧、加圧)、ガス化温度(700℃以下の低温、700℃以上の中高温、灰融点以上の高温溶融)、ガス化剤(空気、酸素、水蒸気およびこれらの組み合わせ)、加熱方式(直接型、間接型)、ガス化炉形式(固定床、流動床、噴流床、ロータリキルンなど)等によって分けられるが、本発明ではこれらの全てを適用することができる。
もっとも、本発明では、最終的にメタノールやFT油などの液体燃料を得ることを目的としているので、これらの液体燃料に適した組成のバイオマスガスを効率的に得ることができるガス化法を採用することが好ましい。このようなガス化方式としては、たとえばガス化温度を850〜900℃とする流動床方式や同じくガス化温度を800〜1000℃とする噴流床方式などが挙げられる。
この噴流床方式・流動床方式では、バイオマスは通常約900℃の高温で分解される。ガス化炉ではガス化剤の酸素を用い、バイオマスの一部を燃焼させ高温を発生させる(部分酸化)。水蒸気が存在すると加水分解反応が起き、タールや固体残渣があまり発生しない。また、水蒸気もバイオマス中の炭素やCOと反応するので(H2O+C→H2+CO、H2O+CO→H2+CO2)、水蒸気量等を調整することで、ガス組成(特にH2とCO)を制御できる。
因みに、本発明のメタノール合成反応:2H2+CO → CH3OH、FT油合成反応:(2n+1)H2 + nCO → CnH(2n+2) + nH2Oで表され、望ましいモル比はH2/CO=2程度である。
なお、(i)のガス化工程においては、大量の熱が発生する。たとえば、ガス温度を850℃〜900℃とすれば、その直後の高温ガスの熱を有効に利用すると水蒸気・酸素を最高700℃程度迄加熱できる。したがって、その直後の高温ガスの熱を熱交換器により回収し、水蒸気・酸素を熱交換器で加熱後ガス化炉へ供給すると、ガス化システムの効率が向上する。
更に、本発明においては、後記で言及するように、この廃熱を(iii)及び/又は(v)の工程の加熱源とすることができる。すなわち、熱交換器を用い空気等を加熱し、これを液体燃料反応槽・圧力調整用加熱容器の温度調整に用いると、電気ヒーターを用いる従来方法に比べ、システム効率を向上できる。空気等は最高700℃程度迄加熱できる。
(i)のガス化炉から出たガスの主成分は、バイオマスガス(主成分H2、CO、CH4、CO2)とタール(常温で液化・固化する炭化水素)、未反応の水蒸気の混合ガスである。コンプレッサの圧縮動力Wは体積に比例、初期圧P1と到達圧P2の対数比に比例するのでlog(P2/P1)、温度を下げガスの体積を減少させた方が圧縮動力は小さく、未反応の水蒸気も除去した方が圧縮動力は小さい。タールはコンプレッサや配管で液化・固化すると動作不良や閉塞の原因となるので除去しておく。また、原料バイオマスは微量ながらSやCl等を含まれ、これらは液体燃料合成用触媒を被毒する(失活させる)ので、除去・精製する。たとえば、水洗により(水をスプレーするスクラバ等)冷却と水蒸気除去を行う。タールや微量成分除去は水洗と活性炭等による吸着除去を行う。
[(ii)バイオマスのガス化により得られ、好ましくは精製・冷却されたバイオマスガスを0.7MPa以上〜1MPa未満に圧縮する手段]
水蒸気・タール・微量成分を除去後のバイオマスガスをガスホルダに貯蔵した後、低圧コンプレッサで圧縮する。後述のように低圧コンプレッサは間欠的に作動させ、ガスホルダから液体燃料合成反応槽へバイオマスガスを間欠的に送る。ガス化炉は定常的に動いているので、バイオマスガスは定常的に製造される。低圧コンプレッサが停止している間、製造されたバイオマスガスを貯蔵できるようにガスホルダ容量を決める。
本発明においては、最高圧縮圧1.0MPa未満の低圧コンプレッサを使用する。低圧コンプレッサの圧縮圧の下限値は0.7MPaとする。
0.7MPa未満であると圧力調整用加熱容器を最高温度の600℃まで加熱しても液体燃料反応槽内の圧力が2MP未満で液体燃料合成反応に適した圧力にならない。1.0MPaを超えると高圧ガス関連法規の対象となるので好ましくない。
[(iii)圧縮されたバイオマスガスを、触媒が充填された液体燃料反応槽と、圧力調整用加熱容器に供給する手段]
液体燃料反応槽は、触媒を充填した容器である。この反応槽において、原料バイオマスガス中のCOとH2を、触媒の存在下、加熱・加圧下で反応させ、バイオマス液体燃料を合成する。また、圧力調整用加熱容器は、後記のように、液体燃料反応槽及び圧力調整用加熱容器内のバイオマスガス圧力を液体燃料合成に適した圧力に調整するために用いる。
この工程では、(ii)の手段(低圧コンプレッサ)で0.7MPa以上〜1MPa未満に圧縮されたバイオマスガスを液体燃料反応槽と圧力調整用加熱容器へ充填できるよう、パイプで接続する。後記のように低圧コンプレッサは間欠的に運転するので、低圧コンプレッサが停止中に、バイオマスガスが液体燃料反応槽及び圧力調整用加熱容器から低圧コンプレッサへ逆流することがないよう、パイプの途中に逆止弁1を設ける。
液体燃料反応槽内での、メタノール合成反応は以下の式で表される。
2H2+CO → CH3OH
FT油合成反応は以下の式で表される
(2n+1)H2 + nCO → CnH(2n+2) + nH2O
触媒としては、従来公知のCu−Zn系(メタノール合成反応用)、Co系・Ru系・Fe系(FT油合成反応用)の各種触媒が使用できる。加熱温度は使用触媒によって異なるが、通常200℃〜300℃、好ましくは220℃程度である。また、圧力は、2MPa〜3MPa、好ましくは2.5MPa程度である。
H2とCOがバイオマス液体燃料へ転換される割合は、温度と圧力に依存し、10%〜50%程度で、90%〜50%が未反応である。温度が高いので、バイオマス液体燃料はガス状である。液体燃料反応槽内では、未反応バイオマスガスとガス状のバイオマス液体燃料の混合ガスである。
[(iv)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、液体燃料反応槽を加熱することにより、液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの温度を、液体燃料合成に適した温度に昇温する手段]
前述のように、バイオマスガスからバイオマス液体燃料を合成するには、バイオマスガスを200℃以上〜300℃以下に加熱しなければならない。その加熱のために(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用いる。
具体的には、熱交換器を用い、ガス化炉から排出される高温のバイオマスガスで、空気等を加熱する。バイオマスガスの温度を850〜900℃程度とすれば、空気等は700℃程度まで加熱可能である。この700℃に加熱された空気等を液体燃料反応槽の外部に流し、液体燃料反応槽を加熱する。空気等の流量を調整することで、液体燃料反応槽内部温度を液体燃料合成反応に適した温度である200℃〜300℃に制御することができる。
[(v)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、圧力調整用加熱容器を加熱することにより、圧力調整用加熱容器及び液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの圧力を、液体燃料合成に適した圧力に昇圧する手段]
前述のように、本発明では低圧コンプレッサを用い、バイオマスガスを0.7MPa以上〜1MPa未満に圧縮する。しかし、バイオマスガスからバイオマス液体燃料を合成するには、バイオマスガスをたとえば2MPa〜3MPaに圧縮しなければならない。本発明においては、圧力調整用加熱容器を加熱することにより、この昇圧を行う。
具体的には(iv)の手段と同様に、ガス化炉から出た高温のバイオマスガスを用い、700℃程度まで加熱した空気等を圧力調整用加熱容器の外部に流し、圧力調整用加熱容器を加熱する。空気等の流量を調整することで圧力調整用加熱容器の内部温度を最高600℃程度まで加熱できる。また、空気等を止めることで圧力調整用加熱容器の温度を常温まで冷却できる。
ボイル・シャルルの法則により、密閉した容器内のガス温度が上昇すると、ガスの圧力は高くなる。圧力調整用加熱容器を加熱すると、バイオマスガスの温度が上昇し、圧力が上昇したバイオマスガスは圧力調整用加熱容器から液体燃料反応槽へ流れる。0.7MPa〜1MPaのバイオマスガスを充填する際、液体燃料反応槽及び圧力調整用加熱容器の温度は常温である。前述のように圧力調整用加熱容器内のバイオマスガスを最高600℃程度まで加熱できるので、ボイル・シャルルの法則により、圧力を3倍程度まで昇圧できる(常温=約300K、600℃=約900K、圧力上昇率=900K/300K=3)。充填時のバイオマスガスの圧力は0.7MPa 以上〜1MPa未満なので、加熱後のバイオマスガスの圧力は2MPa以上〜3MPa程度へ昇圧される。
この場合、圧力調整用加熱容器を加熱しても、バイオマスガスが圧力調整用加熱容器から気液分離器へ逆流することを防止するために、圧力調整用加熱容器出口と液体燃料反応槽の入口の間に逆止弁3を設けることができる。
[(vi)上記液体燃料反応槽で合成されたバイオマス液体燃料を冷却して、バイオマス液体燃料と未反応バイオマスガスに分離する手段]
具体的には冷却器と気液分離器から構成される。図3を用い、構造と機能を説明する。
液体燃料反応槽内では、未反応バイオマスガスとガス状の液体燃料の混合ガスが生成する。後記の手段(vii)により、混合ガスを液体燃料反応槽から冷却器へ取り出す。
冷却器により、混合ガスは0℃以上〜常温以下に冷却される。バイオマス液体燃料は凝縮・液化される。具体的には、混合ガスをパイプに流し、パイプを外側から冷却する。冷却の方法は、冷却水をパイプの表面に流す、冷凍機をパイプに密着させる等、色々な方法が可能である。
冷却器を上、気液分離器を下に、一直線に配置する。液体燃料は冷却器から気液分離器へ流れ落ちる。
気液分離器は、容器内の半分より少し下までパイプを入れ、容器の上部にガス出口がある構造である。バイオマス液体燃料は容器下部に溜まる。未反応バイオマスガスはガス出口から取り出すことができる。気液分離器の底部に液取り出し用弁を設ける。弁を開けると気液分離器の下部に溜まったバイオマス液体燃料を回収することができる。
[(vii)上記圧力調整用加熱容器を常温迄冷却することにより、分離された未反応バイオマスガスを回収し、(iii)及び(v)の手段に再利用する未反応バイオマスガスの循環・再液化手段]
前述のように、液体燃料反応槽内は、合成された液体燃料と未反応バイオマスガスの混合状態にある。バイオマスガスから液体燃料の転化率は、温度と圧力に依存し、10%〜30%程度である。つまり、90%〜70%のバイオマスガスは未反応のままである。手段(vi)により分離した未反応バイオマスガスを繰り返し循環・再液化することにより、ほぼ全量のバイオマスガスを液体燃料へ転化できる。
具体的には、圧力調整用加熱容器の加熱用空気等の供給を停止する。圧力調整用加熱容器の温度が常温まで徐々に下がる。圧力調整用加熱容器内のバイオマスガス温度が低下すると、圧力が下がるので、この混合ガスは液体燃料反応槽から冷却器へ流れる。そして、前述のように冷却器・気液分離器で液体燃料は分離・回収される。未反応バイオマスガスは気液分離器から圧力調整用加熱容器へ流れる。これは、手段(iii)に相当する。
この場合、液体燃料反応槽内の混合ガス(未反応バイオマスガスと気体状の液体燃料)が液体燃料反応槽から圧力調整用加熱容器への逆流を防止するために逆止弁-2を設けることができる。
この後、手段(v)を行い、圧力調整用加熱容器を加熱することにより、未反応バイオマスガスを循環・再液化できる。詳細な運転モード・手順は後記する。
本発明の代表的な全体の液体燃料合成モードは好ましくは以下の3つに分けられる。
(イ)バイオマスガス充填モード
液体燃料反応槽を常温まで冷却する。そして、次の(ロ)モードでバイオマスガスを昇圧するため、圧力調整用加熱容器をも常温まで冷却する。低圧コンプレッサを用い、ガスホルダ内のバイオマスガスを0.7MPa以上〜1.0MPa未満に加圧し、このバイオマスガスを液体燃料反応槽と圧力調整用加熱容器に供給する。供給後、低圧コンプレッサを停止する。逆止弁1を設けることにより、低圧コンプレッサの停止による、バイオマスガスの低圧コンプレッサやガスホルダへの逆流を防止することができる。
(ロ)バイオマスガス液化モード
前述のようにガス化直後のガス温度は通常900℃程度なので、熱交換器を通した空気は最高700℃程度迄加熱できる。熱交換器を通した高温の空気等を液体燃料反応槽外部へ流し、液体燃料反応槽を液体燃料合成に適した温度(200℃〜300℃、使用する触媒に依存)に調製する。
熱交換器を通した高温の空気等で圧力調整用加熱容器を加熱し、液体燃料合成に適した圧力(2MPa以上、使用する触媒に依存)にする。液体燃料反応槽内のバイオマスガスは、液体燃料へ転化される。
すなわち、熱交換器を通した高温の空気等を圧力調整用加熱容器外部へ流し、同容器内のガスを加熱するが、液体燃料反応槽や圧力調整用加熱容器全体は密閉されている。
密閉容器内のガス温度が上昇するとボイル・シャルルの法則に従い、ガス圧力が上昇する(pV=nRT、p:圧力、V:体積、T:温度、n:容器内の気体モル数、R:気体定数)。圧力計で圧力を測定し、液体燃料合成に適した圧力(2MPa以上、使用する触媒に依存)になるよう、圧力調整用加熱容器の温度を調整する。
この場合、逆止弁-2を設けると、バイオマスガスは圧力調整用加熱容器から気液分離器への逆流が防止される。つまり、バイオマスガスは、逆止弁-3を通り、圧力調整用加熱容器から液体燃料反応槽ヘ流れる。
前述のように熱交換器を通した空気温度は700℃程度なので、圧力調整用加熱容器を600℃(約900K)程度まで加熱できる。密閉容器内のガスを常温(約300K)から600℃(約900K)迄加熱すると、圧力は約3倍に上昇する(= 900K/300K)。
この場合、液体燃料合成に適した圧力は2MPa以上であることから、(ii)のコンプレッサの常温(加熱前)の圧力は約0.7MPa以上とすることが必要となる。また、法規で低圧コンプレッサの最高使用圧力は1MPa未満と定められているので、低圧コンプレッサで圧縮する圧力範囲は0.7MPa〜1MPa未満でなければならない。
液体燃料反応槽内を温度200℃〜300℃・圧力2MPa以上にすると、バイオマスガスは液体燃料へ転化される。CO転化率は温度・圧力・触媒によって決まるので、そのCO転化率に応じた液体燃料(液体燃料反応槽内ではガス状)と未反応バイオマスガスの混合ガスが液体燃料反応槽内を満たす。
(ハ)未反応バイオマスガス分離・回収モード
圧力調整用加熱容器外部へ流している熱交換器を通した高温の空気等を停止し、圧力調整用加熱容器の温度を下げる。密閉容器内のガス温度が下るとガス圧力が低下するので、液体燃料反応槽内の液体燃料(ガス状)と未反応のバイオマスガスの混合ガスは冷却器へ流れる。液体燃料は冷却器内で液化する。気液分離&液溜で液体燃料から未反応バイオマスガスを分離する。分離した未反応バイオマスガスは圧力調整用加熱容器へ回収される。
この場合、逆止弁-3を設けると、未反応ガスの液体燃料反応槽から圧力調整用加熱容器への逆流が防止される。
圧力調整用加熱容器内のガス温度が下ると(ほぼ常温)、ガスが流れなくなるので、(ロ)を行う。
運転手順
(ロ)→(ハ)→・・を繰り返す毎に、バイオマスガスは少しずつ液体燃料に転化される。そのため、液体燃料合成に適した圧力(2MPa以上)に加圧するためには、圧力調整用加熱容器温度を次第に高くしなければならない。圧力調整用加熱容器温度を最高の600℃程度迄加熱しても2MPaに加圧できなくなったら、圧力調整用加熱容器の加熱を停止、液体燃料反応槽の加熱を停止、常温へ冷却する。
圧力調整用加熱容器が常温、液体燃料反応槽が常温になったら(イ)を行う。
運転手順は(イ)→(ロ)→(ハ)→(ロ)→(ハ)・・(ロ)→(ハ)→(イ)・・の繰返しになる。圧力と圧力調整用加熱容器の温度をモニターすれば、簡単な回路で制御でき、専任の運転要員は不要である。
上述したように、本発明の液体燃料反応槽は一個とすることができるので、高圧ガス部分を小さくでき、第2種高圧ガス設備内に納めることが可能である。
また、圧力調整用加熱容器の加熱・冷却により未反応バイオマスガスを循環・再液化できる。そのためCO転化率は高い。また未反応バイオマスガス全量を液体燃料へ転化できるので、未反応バイオマスガスの処理設備が不要である。圧力調整用加熱容器の加熱は熱交換器で回収した熱を用いるので、システム効率は高い。
更に、従来使われている高圧コンプレッサを用いた多段液化方式や高圧ガス循環用ポンプを用いた循環・再液化方式に比べ小さく・運転も簡単・点検整備が容易・コストが低く・システム効率が高い。高圧の範囲が小さいので第2種高圧ガス設備に納めることが可能である。
高圧の範囲は、パイプ(通常ステンレス製)と容器(通常ステンレス製)のみで構成されている。高圧コンプレッサや高圧ガス循環用ポンプは、製造工場で開放検査を行わなければならず、検査コストも高く、開放検査中は運転できないためランニングコストも高く、消耗品の交換や書類上の手続きも煩雑である。それに対し、パイプと容器の検査は肉厚変化を調べるだけで(超音波検査)簡単に実施でき、ランニングコスト低減が可能である。設置時の手続きも運転時の点検も格段に少ない等、メリットが大きい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
図2に示される液体燃料合成装置を用い、スギ木部からメタノールを合成した。この装置は、小型噴流床型ガス化装置・熱交換器・水冷式冷却器・泡発生式精製器・水封式ガスホルダ・低圧コンプレッサ(圧縮上限:0.98MPa)・小型液化装置からなる。
(A)ガス化装置(小型噴流床型ガス化装置:非特許文献2参照)にスギ木部を投入しガス化した(スギ木部の投入速度3g/分、ガス化温度900℃、ガス化剤水蒸気)。このガス化装置は実験用の小型炉のため熱の逃げが大きい。酸素を用いた部分酸化では、ガス化に必要な熱を十分に発生できないので、電気炉を用いて加熱した。酸素を用いた部分酸化が不要なので、ガス化剤は水蒸気を用いた。噴流床方式の特徴を活かし、H2/CO=2となるようにガス組成を制御した(H2:42%、CO:21%、CH4:8%、CO2:29%)。(B)熱交換器により、ガス化直後のバイオマスガスから廃熱を回収した。この廃熱は後述の液体燃料反応槽と圧力調整用加熱容器の加熱に利用できる。(C)水冷式冷却器により、バイオマスガスを常温へ冷却した。(D)泡発生式精製器により、バイオマスガスを水洗し、微量のSとClを除いた後、(E)水封式ガスホルダにバイオマスガスを蓄えた。(F)低圧コンプレッサで0.98MPaまで昇圧し、(G)小型液化装置を用い液体燃料(メタノール)を合成した。合成には市販の銅-亜鉛メタノール合成触媒(ズードケミー製)を用いた。
常温の(I)液体燃料反応槽と常温の(N)圧力調整用加熱容器と(K)気液分離器及びパイプ(M逆止弁2とO逆止弁3を含む)に上記バイオマスガスを0.98MPaで充填した。液体燃料反応槽を220℃、圧力調整用加熱容器を360℃に加熱すると、液体燃料反応槽圧は2.5MPaとなった。圧力調整用加熱容器を加熱することで、圧力0.98MPaのバイオマスガスを液体燃料合成に必要な圧力2MPa以上に昇圧できることを確認した。圧力2.5MPaで、液体燃料反応槽温度200℃、205℃、210℃、215℃、220℃、225℃、230℃、235℃で、メタノールを合成した。メタノール合成量は220℃で最も多かった。200℃〜220℃では、温度が上がるに従い、メタノール触媒の活性が高くなったためメタノール合成量が増えたと考えられる。前述のように圧力が一定なら温度が上がるとCO転化率は下る。220℃〜235℃では、温度が上がるに従い、CO転化率が下ったためメタノール合成量が減ったと考えられる。(N)圧力調整用加熱容器を加熱(360℃程度)・冷却(常温)を繰り返し、未反応バイオマスガスを循環・再液化できることを確認した。圧力2.5MPa、温度220℃で合成を行った。(K)気液分離器から回収した液体を分析し、メタノールと水の混合物が生成したことを確認した(メタノール濃度:80%程度)。微量成分(SやCl)除去のため、(D)泡発生式精製器により、バイオマスガスを水洗しているので、バイオマスガスは水蒸気を含む。バイオマスガスを圧縮したため、飽和水蒸気量を超え、水が析出したものと考えられる。

Claims (2)

  1. 少なくとも下記の(i)〜(vii)の手段を備えたバイオマス由来の液体燃料合成装置。
    (i)バイオマスをガス化する手段
    (ii)バイオマスのガス化により得られるバイオマスガスを0.7MPa以上〜1MPa未満に圧縮する手段
    (iii)圧縮されたバイオマスガスを、触媒が充填された液体燃料反応槽と、圧力調整用加熱容器に供給する手段
    (iv)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、液体燃料反応槽を加熱することにより、液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの温度を、液体燃料合成に適した温度に昇温する手段
    (v)(i)のバイオマスガス化で生じる廃熱を用い、圧力調整用加熱容器を加熱することにより、圧力調整用加熱容器及び液体燃料反応槽に供給したバイオマスガスの圧力を、液体燃料合成に適した圧力に昇圧する手段
    (vi)上記液体燃料反応槽で合成されたバイオマス液体燃料を冷却して、バイオマス液体燃料と未反応バイオマスガスに分離する手段
    (vii)上記圧力調整用加熱容器を常温迄冷却することにより、分離された未反応バイオマスガスを回収し、(iii)及び(v)の手段に再利用する未反応バイオマスガスの循環・再液化手段
  2. 上記液体燃料反応槽の温度が200℃〜300℃、内部圧力が2MPa〜3MPaであり、加熱時の圧力調整用加熱容器の温度が300℃〜600℃に維持されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオマス由来の液体燃料合成装置。
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