JP2010154110A - スピーカアレイのシェーディング係数演算装置、このシェーディング係数演算装置が組み込まれたスピーカアレイ、およびプログラム - Google Patents

スピーカアレイのシェーディング係数演算装置、このシェーディング係数演算装置が組み込まれたスピーカアレイ、およびプログラム Download PDF

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Abstract


【課題】遅延アレイ方式のスピーカアレイにおいて、主ローブにおける最大再生音圧の低下を回避しつつ、サイドローブの発生を抑止することを可能にする。
【解決手段】遅延アレイ方式のスピーカアレイにおいて、音の目標到達領域であるターゲットエリアに近づく程そのターゲットエリアに対向するように球面から歪んだ非球面状となり、かつ、アレイ面にて互いに隣り合うスピーカユニットから出力される音波の位相が揃うように各スピーカユニットに与える遅延オーディオ信号の遅延量が設定されている場合には、各スピーカユニットに与える遅延オーディオ信号に乗算するシェーディング係数を、合成波面の中央から遠いところに位置する音波を放射するスピーカユニットほど小さな値とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数のスピーカユニットを有するスピーカアレイにより音の目標到達領域であるターゲットエリアに向けて音を放射する際に、サイドローブの発生を抑止する技術に関する。
この種のスピーカアレイシステムの一例としては、遅延アレイ方式のものが挙げられる(例えば、特許文献1:段落0014および図9)。遅延アレイ方式のスピーカアレイシステムでは、スピーカアレイを形成する複数のスピーカユニットの各々に与えるオーディオ信号の遅延時間差(スピーカアレイにオーディオ信号が入力されてから各スピーカユニットにそのオーディオ信号を与えるまでの時間差)を適宜調整することによって、各スピーカユニットから出力される音波の合成波面の進行方向およびその広がり具合の制御(以下、指向性制御)が行われる。
特開2006−109343号公報
遅延アレイ方式のスピーカアレイでは、ターゲットエリアを覆うような広がりを有する音圧分布(以下、主ローブ)が形成されるように、その指向性制御が行われるのであるが、アレイ長が有限であることに起因して、本来狙った方向(すなわち、主ローブの方向)以外に音圧が高くなるような音圧分布が副次的に生じる場合がある(図17参照)。このような副次的な音圧分布はサイドローブと呼ばれている。従来、このようなサイドローブの発生を抑止するために、図17に示すようにスピーカアレイの端部に位置するスピーカユニット(すなわち、アレイ面の中央からの距離が遠い位置に配置されているスピーカユニット)から出力される音波ほど音圧を低く抑えるシェーディング補正(窓関数の乗算)が行われていた。しかし、このようなシェーディング補正を行うと、端部に近いスピーカユニットほど主ローブの形成への寄与も小さくなるため、その主ローブにおける最大再生音圧が低下するという問題点があった。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたものであり、遅延アレイ方式のスピーカアレイにおいて、主ローブにおける最大再生音圧の低下を回避しつつ、サイドローブの発生を抑止することを可能にする技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明は、スピーカアレイを構成する複数のスピーカユニットの各々から出力される音波の合成波面がその目標到達領域であるターゲットエリアに近づく程そのターゲットエリアに対向するように球面から歪んだ非球面状となり、かつ、前記スピーカアレイにて互いに隣り合うスピーカユニットから放射される音波の位相が揃うように前記スピーカアレイの指向性制御が行われている状態において、前記複数のスピーカユニットの各々について、そのスピーカユニットから出力される音波の波面が前記合成波面上に占める位置を算出する波面位置演算手段と、前記複数のスピーカユニットの各々に与えるオーディオ信号に乗算するシェーディング係数を演算する手段であって、前記波面位置演算手段により算出される波面の位置が前記合成波面の中央から遠い音波を出力するスピーカユニットほどシェーディング係数の値が小さくなるようにその演算を行うシェーディング係数演算手段とを有することを特徴とするシェーディング係数演算装置、およびコンピュータ装置を上記各手段として機能させることを特徴とするプログラムを提供する。
このようなシェーディング係数演算装置およびプログラムにより算出されるシェーディング係数を、非球面状の合成波面の音波を放射する遅延アレイ方式のスピーカアレイに設定しシェーディング補正を行わせることで、波面位置が合成波面の中央から遠い音波(すなわち、主ローブの形成への寄与が小さい音波)を出力するスピーカユニットほどその出力音波の音圧を低く抑え、サードローブの発生の抑止効果を高めるとともに、主ローブ内での最大再生音圧の低下を抑えることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(A:構成)
図1は、本発明の一実施形態であるスピーカアレイ1の構成例を示す図である。
このスピーカアレイ1は、図1に示すように、スピーカユニットSP−i(i=1〜N:Nは3以上の自然数)、遅延手段20、増幅手段30、ユーザインタフェイス(以下、「UI」)提供手段40および制御手段50を有している。
スピーカユニットSP−iの各々は、スピーカ軸が互いに平行になるように(すなわち、平面状のバッフル面を形成するように)配列されている。これらスピーカユニットSP−iの各々から出力される音波の同時刻における波面の包絡面が、スピーカアレイ1から放射される音波の合成波面となる。スピーカユニットSP−iとしては、例えばコーン型スピーカなどの広い指向性を有するスピーカを用いれば良い。また、スピーカユニットSP−i(i=1〜N)は、全て同一の音響特性を有するものであっても良く、出力音域が一部だけ重なり合うなど音響特性の異なる複数種のものであっても良い。
例えば、スピーカユニットSP−i(i=1〜N)として同一の音響特性を有するものを用いる場合は、図2(A)に示すように、各スピーカユニットSP−iをマトリクス状に等間隔に配列してアレイ面を構成すれば良い。一方、音響特性が異なる複数種のものを用いる場合は、図2(B)に示すように、高音域をサポートする小型のスピーカユニットSP−iをマトリクス状に配列した周囲に低音域をサポートする大型のスピーカユニットSP−iを配列してアレイ面を構成すれば良い。また、図2(C)に示すように、各スピーカユニットSP−iを折れ線(図2(C)では点線で表記)の端点および頂点に配置してアレイ面を構成しても良い。ただし、スピーカユニットSP−iを平面状に配列してアレイ面を構成する際には、少なくとも1つの方向(本実施形態では、鉛直方向)に沿って3個以上のスピーカユニットSP−iが配列されている必要がある。その理由については後に明らかにする。
遅延手段20は、例えばDSP(Digital Signal Processor)である。遅延手段20は、音源2から与えられる入力オーディオ信号INに遅延処理を施して遅延オーディオ信号X−i(i=1〜N)を生成し、増幅手段30に与える。ここで、音源2から与えられる入力オーディオ信号INがアナログ信号である場合には、A/D変換器によってその入力オーディオ信号INをデジタル信号に変換して遅延手段20に与えれば良い。本実施形態では、上記遅延処理として所謂1タップディレイ処理が実行される。この1タップディレイ処理は、複数のシフトレジスタを用いて実施される態様であっても良く、また、RAM(Random Access Memory)を用いて実施される態様であっても良い。例えば、RAMを用いた態様であれば、入力オーディオ信号INを上記RAMへ書き込み、その書き込みを行った時からスピーカユニットSP−i(i=1〜N)の各々に対応する遅延に応じた時間が経過した時にRAMから読み出し、遅延オーディオ信号X−iとして増幅手段30に与える処理を遅延手段20に実行させるようにすれば良い。このように本実施形態では、遅延オーディオ信号X−iの各々を1タップディレイ処理により生成するため、FIR(Finite Impulse
Response)型の処理で上記遅延オーディオ信号を生成する場合に比較して、遅延手段20を小規模なDSPで構成することが可能になる。
増幅手段30は、図1に示すように、スピーカユニットSP−i(i=1〜N)の各々に対応する乗算器31−i(i=1〜N)を含んでいる。乗算器31−iは、遅延オーディオ信号X−iを受け取り、制御手段50から与えられるシェーディング係数SF−iを乗算して出力する。これにより各スピーカユニットSP−iから出力される音波の音圧レベルが調整され、シェーディング補正が実現される。増幅手段30から出力される遅延オーディオ信号X−iの各々は、D/A変換器(図1では図示略)によってアナログオーディオ信号に変換され、対応するスピーカユニットSP−iに与えられる。
以上に説明したことから明らかなように、スピーカアレイ1は所謂遅延アレイ方式のスピーカアレイである。従来の遅延アレイ方式のスピーカアレイでは、各スピーカユニットSP−iから出力される音波の合成波面が球面状となるように遅延の付与が行われていた。このような態様では、その合成波面の目標到達領域(以下、ターゲットエリア)の法線方向とスピーカアレイ1のアレイ面の法線方向とが一致している場合(すなわち、アレイ面とターゲットエリアとが対向している場合)には、特段の問題を生じさせない。しかし、ターゲットエリアの法線方向とアレイ面の法線方向とが異なる場合には、そのターゲットエリア内での音圧分布にばらつきが生じるといった問題があった。そこで、本実施形態では、各スピーカユニットSP−iから出力される音波の合成波面が非球面状となるようにすることで、ターゲットエリア内での音圧分布が略均一になるようにしているのである。ここで、非球面状の波面とは、図3に示すように、ターゲットエリアとの距離が短くなるほどそのターゲットエリアに対向するように歪んだ波面のことである。
加えて、本実施形態では、サイドローブの発生を抑止するためのシェーディング補正の仕方にも特徴がある。従来のシェーディング補正は、図17に示すように、スピーカアレイの端部に近いスピーカユニットほどその出力音波の音圧が低くなるように、シェーディング係数が設定されていた。これに対して、本実施形態では、各スピーカユニットSP−iから出力される音波がその合成波面にて占める位置に応じてシェーディング係数SF−iの設定が為されるのである。詳細については後述するが、本実施形態では、合成波面上にて占める位置がその合成波面の中央から遠い音波を出力するスピーカユニットSP−iほどその出力音波の音圧が低くなるようにシェーディング係数SF−iが設定される。
スピーカユニットSP−iの各々から出力される音波の合成波面が図3に示す非球面状の波面となるようにするためには、各スピーカユニットSP−iに対応する遅延を適切に定めなければならない。しかし、球面状の合成波面を形成させる場合に比較して非球面状の合成波面が形成されるようにするための遅延を定める計算は複雑であり、かかる計算を人手で行うことには多大な労力を要する。そこで、本実施形態に係るスピーカアレイ1では、図3に示す非球面状の合成波面を手軽に形成させることができるようにするための工夫が為されている。具体的には、本実施形態に係るスピーカアレイ1では、図1に示すUI提供手段40と制御手段50とがこの役割を果たす。
図1のUI提供手段40は、スピーカアレイ1とターゲットエリアとの位置関係やそのターゲットエリアの形状および大きさを示す情報(以下、エリア情報AI)などの各種情報をユーザに入力させる入力手段の役割を担う。一方、制御手段50は、スピーカユニットSP−iの各々から出力される音波の合成波面がエリア情報AIで示されるターゲットエリアに向う非球面状となるようにするための遅延D−i(i=1〜N)をそのエリア情報AIに基づいて演算し遅延手段20に与えるとともに、各乗算器31−iに設定するシェーディング係数SF−iの演算を行う。
UI提供手段40の具体例としては、各種入力画面を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ)とその駆動制御を行う駆動回路、スピーカアレイ1の利用者に各種情報の入力操作を行わせるための操作部(例えば、キーボードやマウスなど)などが挙げられる。上記エリア情報AIを利用者に入力させる手法としては、種々の態様が考えられる。例えば、コンサートホールなどスピーカアレイ1が設置され、ターゲットエリアが区画される音響空間内に3次元座標を想定し、スピーカアレイ1やターゲットエリアの配置位置を示す座標値をキーボードで入力させる態様が考えられる。また、図4に示すような仮想3次元座標空間の画像を表示部に表示させ、ポインティングデバイスを用いたドラッグアンドドロップなどの操作によってエリア情報AIを入力する態様であっても良い。このように、UI提供手段40を介して入力されたエリア情報AIは制御手段50に与えられる。
制御手段50は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)501と、例えばFlashROMなどの不揮発性メモリ502と、RAMなどの揮発性メモリ503とを含んでいる。この不揮発性メモリ502には、本実施形態に係るスピーカアレイの特徴を顕著に示す処理をCPU501に実行させる制御プログラム502a、アレイ情報502b、およびシェーディング関数情報502cが予め格納されている。一方、揮発性メモリ503は、制御プログラム502aをCPU501が実行する際のワークエリアとして利用される。
アレイ情報502bとは、スピーカアレイ1のアレイ面を構成するスピーカユニットSP−i(i=1〜N)の各々のそのアレイ面における配置位置を示す情報(例えば、アレイ面の左上端や中心を原点とする2次元座標における各スピーカユニットSP−iの座標位置を示す情報)である。一方、シェーディング関数情報502cとは、シェーディング補正に使用する窓関数f(x)を表すデータである。この窓関数f(x)としては、以下の数1(ただし、数1では、−1≦x≦1、M=15程度)で表されるKaizer窓や、数2(この数2でも、−1≦x≦1)で表されるHanning窓を用いることが考えられる。そして、シェーディング関数情報502cとしては、例えば数1や数2で示される関数関係を表すテーブル(すなわち、−1〜1までの複数のxの値の各々に対応付けて、数1や数2に示すf(x)の値が書き込まれたテーブル)や、数1や数2に示す数式を表す数式データを用いることが考えられる。本実施形態では、窓関数f(x)としては、数1に示すKaizer窓が採用されており、その関数関係を表すテーブルがシェーディング関数情報502cとして採用されている。
Figure 2010154110

Figure 2010154110
制御プログラム502aにしたがってCPU501が実行する処理としては、図5に示す遅延制御処理とシェーディング補正制御処理とが挙げられる。図5に示すように、遅延制御処理には、エリア設定処理SA01、鉛直方向演算処理SA02、水平方向演算処理SA03、および遅延設定処理SA04の4つの処理が含まれる。シェーディング補正制御処理には、波面位置演算処理SB01、およびシェーディング係数演算処理SB02の2つの処理が含まれる。
以上がスピーカアレイ1の構成である。
(B:動作)
次いで、制御プログラム502aにしたがってCPU501が実行する各処理の内容を詳細に説明する。
(B−1:遅延制御処理)
まず、遅延制御処理について説明する。図5に示すように、この遅延制御処理では、まず、エリア設定処理SA01が実行される。このエリア設定処理SA01は、スピーカユニットSP−iに与える遅延オーディオ信号X−iの遅延D−iを算出する際に利用する領域であるカバーエリアを、エリア情報AIの示すターゲットエリアを覆うように設定し、さらに、各スピーカユニットSP−iから出力される音波の上記カバーエリア内での目標到達点をそのスピーカユニットSP−iのアレイ面における配置位置に応じて決定する処理である。このエリア設定処理SA01では、CPU501は、上記カバーエリアの位置、形状および大きさを示すとともに上記各目標到達点の位置を示すカバーエリア情報を生成し、揮発性メモリ503へ書き込む。このようにして揮発性メモリ503に書き込まれるカバーエリア情報は、鉛直方向演算処理SA02や水平方向演算処理SA03、シェーディング補正制御処理で利用される。
例えば、図6に示すように、スピーカアレイ1のアレイ面の鉛直方向の中心線(図2(A)、(B)および(C)におけるC−C´線)を通る断面と水平面との交線上に中心を有し、かつ、そのアレイ面の法線方向に直交する方向の法線を有するターゲットエリアを示すエリア情報AIがUI提供手段40より与えられた場合には、そのアレイ面の平行な二辺(図6では、辺SA−SDおよび辺SB−SC)に平行な二辺(図6では、辺TA−TDおよび辺TB−TC)を有する矩形状のカバーエリアが、上記ターゲットエリアを覆う大きさで設定される。
カバーエリア内における上記各目標到達点の位置は、カバーエリアとスピーカアレイ1との位置関係、カバーエリアとスピーカアレイ1のアレイ面の水平方向の辺の長さの比(すなわち、辺TA−TDの長さと辺SA−SDの長さの比)、他方の辺の長さの比、およびアレイ情報502bの示す各スピーカユニットSP−iの配置位置に基づいて幾何学的に決定される。このため、カバーエリア内における各目標到達点の配列についての幾何学的関係(例えば、各スピーカユニットが格子状に配列されている等)は、スピーカアレイ1における各スピーカユニットSP−iの配列についての幾何学的関係に一致することになる。例えば、スピーカ面にて水平方向に一列に並ぶスピーカユニットの配列と、それらスピーカユニットの各々に対応する目標到達点の配列とは平行になる。ここで、カバーエリアの形状を矩形状とし、スピーカアレイ1における各スピーカユニットSP−iの配列についての幾何学的関係が維持されるように各目標到達点を配列するようにしたのは、後段の鉛直方向演算処理SA02および水平方向演算処理SA03における演算を容易にするためである。
後段の鉛直方向演算処理SA02〜遅延設定処理SA04では、揮発性メモリ503に格納されているカバーエリア情報の表すカバーエリアに対して非球面状の波面(図3参照)を有する音波が放射されるように各スピーカユニットSP−iに対応する遅延が演算される。図3に示す非球面状の波面を有する音波が放射されるため、上記カバーエリア内では音圧分布が略均一になる。そして、エリア情報AIで示されるターゲットエリアは上記カバーエリアによって被覆されるのであるから(図6参照)、そのターゲットエリア内でも、音圧分布が略均一になるのである。
鉛直方向演算処理SA02は、スピーカユニットSP−i(i=1〜N)の各々について、スピーカアレイ1のアレイ面における鉛直方向の配置位置に応じた遅延(以下、第1の遅延)D1−iを演算する処理である。この鉛直方向演算処理SA02では、まず始めに、以降の処理における演算量を削減するために、スピーカユニットSP−iの各々をアレイ情報502bの示す鉛直方向の配置位置に応じてグループ分けする処理が実行される。具体的には、鉛直方向の配置位置が同一であるスピーカユニットSP−i同士を1つのグループとする処理が実行されるのである。上記グループに属するスピーカユニットSP−iの鉛直方向の配置位置は同一であるため、上記グループの数分だけ上記第1の遅延を演算すれば、全てのスピーカユニットSP−iについての第1の遅延が算出される。
上記グループの各々に属するスピーカユニットSP−iは、スピーカアレイ1のアレイ面における鉛直方向の配置位置が同一であるから、水平方向に一列(すなわち、ライン状)に並んでいる。以下では、上記各グループのことを「仮想スピーカラインVSL−j」と呼ぶ。ただし、添え字jは、スピーカアレイ1のアレイ面において最上段に位置するものから数えた仮想スピーカラインのライン番号である。例えば、各スピーカユニットSP−iが図2(A)に示すようにマトリクス状に配置されている場合には、仮想スピーカラインVSL−jの各々は、アレイ面にて鉛直方向に並ぶ実際のスピーカラインの各々に一致する。また、各スピーカユニットSP−iの配置態様が図2(B)に示す態様であれば、図7に示すように、9本の仮想スピーカラインVSL−j(j=1〜9)に分類され、図2(C)に示す態様であれば、3本の仮想スピーカラインVSL−j(j=1〜3)に分類される。
次いで、鉛直方向演算処理SA02では、仮想スピーカラインVSL−jの各々について、その仮想スピーカラインVSL−jに属する各スピーカユニットSP−iを代表するスピーカユニットが定められる。本実施形態では、以降の処理における演算を簡略化するために、仮想スピーカラインVSL−jにて中央に位置するスピーカユニット(すなわち、図7のC−C´線上に位置するスピーカユニット)がその仮想スピーカラインVSL−jに属する各スピーカユニットSP−iの代表とされる。ここで、図7に示す仮想スピーカラインVSL−1、VSL−3、VSL−7およびVSL−9のように、中央にスピーカユニットが存在しない仮想スピーカラインについては、その中央にスピーカユニットを仮想し、この仮想したスピーカユニットがその仮想スピーカラインに属する各スピーカユニットSP−iの代表とされる。以下では、仮想スピーカラインVSL−jに属するスピーカユニットSP−iを代表するスピーカユニットのことを、実際に存在するものであるか仮想のものであるかを問わず、「仮想スピーカユニットVSP−j」と呼ぶ。以降、CPU501は、仮想スピーカユニットVSP−jの位置座標と、その仮想スピーカユニットVSP−jについての目標到達点TP−jとを用いて、その仮想スピーカユニットVSP−jについての第1の遅延を以下の手順で演算する。
CPU501は、まず、仮想スピーカユニットVSP−jの位置座標とその目標到達点TP−jとを通る直線L−jと、その仮想スピーカユニットVSP−jの次にカバーエリアからの距離が長い仮想スピーカユニットVSP−m(m=j+1、以下、同じ)とその目標到達点TP−mとを通る直線L−mと、の交点Kjmの位置座標を求め、これら交点Kjmの位置座標を表す交点情報を揮発性メモリ503に書き込む。例えば、スピーカアレイ1のアレイ面が図2(B)に示すように構成され、各スピーカユニットSP−iが9本の仮想スピーカラインVSL−jにグループ分けされる場合には、図8(A)および(B)に示すように、9個の仮想スピーカユニットVSP−jとその各々に対応するカバーエリア内の目標到達点TP−jとを通る9本の直線L−jが描かれ、図9(A)および(B)に示すように交点K12からK89までの8個の交点の座標が求まる。このようにして揮発性メモリ503に格納される交点情報は、本鉛直方向演算処理SA02で利用されるとともに、シェーディング補正制御処理でも利用される。
次いで、CPU501は、図9(A)に示すように、カバーエリアからの距離が最も長い仮想スピーカユニット(すなわち、仮想スピーカユニットVSP−1)について、交点情報の表す交点のうち当該仮想スピーカユニットに対応するもの(すなわち交点K12)をターゲットエリアへ向けて放射する音波についての音響中心FV1(仮想音源の位置)とし、この音響中心FV1から仮想スピーカユニットVSP−j(j≧2)の各々へ至る経路を定める。より詳細に説明すると、CPU501は、仮想スピーカユニットVSP−jの各々について、当該仮想スピーカユニットVSP−jよりもカバーエリアからの距離が長い仮想スピーカユニットVSP−jに対応する交点をその距離の長い順に全て経由するように音響中心FV1から当該仮想スピーカユニットへ至る経路を定める。
例えば、仮想スピーカユニットVSP−1については、図9(A)に示すように、音響中心FV1から直線L−1に沿って仮想スピーカユニットVSP−1に至る経路r1が定められ、仮想スピーカユニットVSP−2については、音響中心FV1から直線L−2に沿って仮想スピーカユニットVSP−2に至る経路r2が定められる。同様に、仮想スピーカユニットVSP−3については、音響中心FV1から、交点K23を経て仮想スピーカユニットVSP−3に至る経路が定められる。そして、仮想スピーカユニットVSP−9については、図9(B)に示すように、音響中心FV1から交点K23,K34・・・K89を経てその仮想スピーカユニットVSP−9に至る経路r9が定められる。これにより、音響中心FV1から各仮想スピーカユニットVSP−jに至る経路として、上記各交点で屈折しつつ伝播する屈折波的な経路が定められるのである。ここで注目すべき点は、スピーカアレイ1のアレイ面にてスピーカユニットSP−iが鉛直方向に2個だけ並んでいる場合には、上記手順より求められる経路(すなわち、音響中心から上記2つのスピーカユニットSP−iの各々に至る経路)は、球面状の合成波面を形成させる場合における従来の遅延アレイ方式により算出される経路と同一になる点である。このため、本実施形態に係るスピーカアレイ1においては、鉛直方向に3個以上のスピーカユニットSP−iが配列されていなければならないのである。
次いで、CPU501は、仮想スピーカユニットVSP−jの各々に対応する遅延を、上記のようにして定めた経路のうちで最短のもの(本実施形態では、r1)と、各仮想スピーカユニットVSP−jについて定めた経路との経路差に応じて演算する(例えば、その経路差を音速で除算して遅延を算出する)。このようにして、各仮想スピーカユニットVSP−jについて演算した遅延を、その仮想スピーカユニットVSP−jと鉛直方向の配置位置が同一である各スピーカユニットSP−iについての第1の遅延D1−iとするのである。
以上にようにして求まる第1の遅延D1−iを入力オーディオ信号INに与えて遅延オーディオ信号X−iを生成し各スピーカユニットSP−iに与えることによって、上記各経路を通って各スピーカユニットSP−iから出力される音波の波面と音響中心FV1との距離は上記経路によらずに等しくなるとともに、カバーエリアからの距離が短いスピーカユットSP−iから出力される音波ほどその波面の開き角(すなわち、放射角)は大きくなる。このため、各スピーカユニットSP−iから出力される音波の合成波面はカバーエリアからの距離が短いほどそのカバーエリアに対向するように歪むこととなる。また、スピーカアレイ1のアレイ面にて鉛直方向に隣り合う2つのスピーカユニットSP−iの第1の遅延D1−iの差は音響中心FV1からの経路差に応じたものであるため、これら2つのスピーカユニットSP−iの各々から出力される音波の同時刻における位相が揃うことは言うまでもない。
次いで、水平方向演算処理SA03について説明する。水平方向演算処理SA03は、スピーカユニットSP−i(i=1〜N)の各々について、スピーカアレイ1のアレイ面における水平方向の配置位置に応じた遅延(以下、第2の遅延)D2−iを演算する処理である。この水平方向演算処理SA03では、前述した仮想スピーカラインVSL−jの各々について以下の処理を行うことによって、その仮想スピーカラインVSL−jに属する各スピーカユニットSP−iについての第2の遅延が演算される。すなわち、仮想スピーカラインVSL−jに属するスピーカユニットSP−iの各々について、そのスピーカユニットSP−iとその目標到達点とを通る直線を求め、それら直線の交点を当該仮想スピーカラインVSL−jについての水平方向の焦点として求める。このようにして求まった焦点から上記仮想スピーカラインVSL−jに属する各スピーカユニットSP−iへ至る経路の経路差に応じて上記第2の遅延D2−iを演算するのである。
例えば、図10(A)は、図7に示す仮想スピーカラインVSL−1(すなわち、スピーカ面の最上段に位置する仮想スピーカライン)に属するスピーカユニットSP−iについて求まる焦点および経路を示す図であり、図10(B)は、図7に示す仮想スピーカラインVSL−9(すなわち、スピーカ面の最下段に位置する仮想スピーカライン)に属するスピーカユニットSP−iについて求まる焦点および経路を示す図である。このようにして求まる経路差に応じた第2の遅延D2−iを入力オーディオ信号INに与えて遅延オーディオ信号X−iを生成すると、図10(A)および(B)に示すように、カバーエリアからの距離が長い仮想スピーカラインから放射される音波ほど水平方向の開き角(すなわち、水平方向の放射角)が狭くなり、その距離が短いほど上記開き角が大きくなる。なお、この水平方向演算処理SA03についても鉛直方向演算処理SA02と同様の処理を行って図10(C)に示すように、1つの音響中心から各スピーカユニットSP−iに至る屈折波面的な経路を求め、その経路差に応じて上記第2の遅延D2−iを求めても勿論良い。
そして、遅延設定処理SA04においては、以上のようにしてスピーカユニットSP−i(i=1〜N)の各々について演算された第1の遅延D1−iと第2の遅延D2−iの加算値がそのスピーカユニットSP−iに対応する遅延D−iとして遅延手段20に与えられる。ここで注目すべき点は、各仮想スピーカラインVSL−jと、その仮想スピーカラインVSL−jに属するスピーカユニットSP−iについての目標到達点列は平行であるため、上記のようにして求まる水平方向の各焦点は前述したC−C´線断面上に存在することとなる点、すなわち、上記水平方向の各焦点は前述した鉛直方向の各交点と同一平面上に存在することとなる点である。このため、スピーカアレイ1を構成する各スピーカユニットSP−iの各々から出力される音波の合成波面が2次元的に描かれ、図11に示すような非球面状の波面となるのである。
以上が遅延制御処理の内容である。
(B−2:シェーディング補正制御処理)
次いで、シェーディング補正制御処理について説明する。
このシェーディング補正制御処理は、サイドローブの発生を抑えるために遅延オーディオ信号X−i(i=1〜N)の各々に乗算するシェーディング係数SF−i(i=1〜N)を演算して乗算器31−i(i=1〜N)の各々に設定する処理である。このシェーディング補正制御処理では、鉛直方向のシェーディング補正を行うためのシェーディング係数SFV−iと水平方向のシェーディング補正を行うためのシェーディング係数SFH−iとが各々別個独立に演算され、シェーディング係数SF−iは、シェーディング係数SFV−iとシェーディング係数SFH−iの積として演算される。シェーディング係数SFV−iとSFH−iは各々別個に算出されるものの、両者の算出方法は基本的には同一である。具体的には、シェーディング係数SFV−iとSFH−iは、図5に示す波面位置演算処理SB01およびシェーディング係数演算処理SB02により算出される。
波面位置演算処理SB01は、スピーカユニットSP−iの各々に遅延D−iが付与された遅延オーディオ信号X−iを与えて音波を出力させたとした場合に、それら音波の合成波面上にて各スピーカユニットSP−iの出力音波の波面が占める位置(合成波面の中心からのオフセット:以下、波面位置)を演算する処理である。より詳細に説明すると、この波面位置演算処理SB01では、スピーカユニットSP−i(i=1〜N)の各々について、鉛直方向についての波面位置VWX−iと水平方向についての波面位置HWX−iが各々別個に算出される。波面位置VWX−iの演算手順と波面位置HWX−iの演算手順は基本的には同様であるため、以下では、スピーカユニットSP−i(i=1〜N)が図7に示すように9本の仮想スピーカラインVSP−jにグループ分けされる場合を例にとって、鉛直方向の波面位置VWX−iの演算手順について説明する。
前述した鉛直方向演算処理SA02における演算と同様に、仮想スピーカラインVSL−jに属するスピーカユニットSP−iの各々から出力される音波の波面位置VWX−iは、その仮想スピーカラインVSL−jを代表する仮想スピーカユニットVSP−jについて算出される波面位置に一致する。このため、スピーカユニットSP−i(i=1〜N)が図7に示す9本の仮想スピーカラインVSL−jに分類される場合、各仮想スピーカラインVSL−jを代表する仮想スピーカユニットVSP−j(j=1〜9)について鉛直方向の波面位置を算出すれば、全てのスピーカユニットSP−iについて鉛直方向の波面位置VWX−iが算出される。
アレイ面にて最上段に位置する仮想スピーカユニットVSP−1と、仮想スピーカユニットSP−j(j=2〜9)との経路差Δrvj(j≧2)は、図12(A)に示すように交点FVj−1(図9(A)の交点Kj−1j)がスピーカの後方にある場合には以下の数3で算出され、同交点FVj−1がスピーカの前方にある場合には、以下の数4で算出される。なお、数3および数4においてUckは、アレイ面の中心を原点とした場合の仮想スピーカユニットVSP−kの位置座標(ベクトル)であり、Fvk−1は交点Fvk−1の位置座標(ベクトル)である。つまり、数3および数4において、|Uck−Fvk−1|は仮想スピーカユニットVSP−kと交点Fvk−1との間の距離であり、|Uck−1−Fvk−1|は仮想スピーカユニットVSP−k−1と交点Fvk−1との間の距離である。なお、Δrv1=0。
Figure 2010154110

Figure 2010154110
仮想スピーカユニットVSP−j(j≧2)について、上記のようにして算出される経路差Δrvjに応じた遅延が付与された遅延オーディオ信号を与えたとした場合の出力音波が合成波面上で占める位置と交点FVj−1との間の距離rvwFj(図12(A)参照)は、Δrvj(j=2〜9)の最大値をΔrvmaxとすると、式(1)で算出される。
vwFj=|Ucj−1−Fvj−1|+(Δrvmax−Δrvj−1)・・・(1)
仮想スピーカユニットVSP−j(j≧2)と仮想スピーカユニットVSP−k(k=j−1)の各々から出力される音波の伝播経路に沿った2本の直線(すなわち、図12(B)に示すように交点FVj−1で交わる2本の直線)の為す角度をΔθvj(ラジアン)とすると、この2本の経路で挟まれる上記合成波面の弦長Δlvjは、以下の式(2)で演算される。なお、角度Δθvjは、以下の式(3)で演算される。
Δlvj=Δθvj×rvwFj・・・(2)
Δθvj=arccos(V1j・V2j)ただし、V1j=(Ucj−1−Fvj−1)/|Ucj−1−Fvj−1|、V2j=(Ucj−Fvj)/|Ucj−Fvj|・・・(3)
仮想スピーカユニットVSP−1から出力される音波の波面位置を基準として、上記各弦を連ねて得られる曲線(すなわち、合成波面)上での他の仮想スピーカユニットVSP−jの出力音波の波面位置lは、図13(A)に示すように、以下の式(4)で演算される。
=lj−1+Δlvj(j=2〜9)、l=0・・・(4)
ここで、合成波面の中央lmid(式(4)で算出されるlの相加平均)を基準とすると、仮想スピーカユニットVSP−j(j≧1)から出力される音波の合成波面上での鉛直方向の波面位置xは、図13(B)に示すように、以下の式(5)で表れる。したがって、仮想スピーカラインVSL−jに属するスピーカユニットSP−kについては、式(5)にしたがって算出されるXをその鉛直方向の波面位置VWX−kとすれば良い。
=l−lmid・・・(5)
以上が波面位置演算処理SB01における鉛直方向の波面位置VWX−iの演算手順である。
図5に戻って、シェーディング係数演算処理SB02は、波面位置演算処理SB01により算出される鉛直方向における波面位置VWX−i(或いは、水平方向の波面位置HWX−i)と、シェーディング関数情報502cとを利用して、スピーカユニットSP−iから出力される音波について鉛直方向(或いは、水平方向)のシェーディング補正を行うためのシェーディング係数SFV−i(或いは、シェーディング係数SFH−i)を算出する処理である。以下、シェーディング係数SFV−iを算出する場合を例にとって説明する。
シェーディング係数SFV−iを算出する際には、CPU501は、まず、前述した数Xにより算出される波面位置VWX−i(i=1〜N)の各々を、以下の式(6)にしたがって、その絶対値が1以下になるように規格化し、規格化波面位置VWX´−i(i=1〜N)を算出する。なお、式(6)においてmaxVWXは、|VWX−i|(i=1〜N)の最大値である。
VWX´−i=VWX−i/maxVWX・・・(6)
次いで、CPU501は、シェーディング関数情報502cの表す窓関数f(x)について、x=VWX´−iを代入した場合の関数値(すなわち、f(VWX´−i))を求め、この値を鉛直方向のシェーディング係数SFV−iとする。前述したように、本実施形態では、シェーディング関数情報502cは、−1から1までの範囲のxの値に対応付けてf(x)の値が書き込まれたテーブルであるから、CPU501は、規格化波面位置VWX´−iに対応する関数値が上記テーブルに格納されている場合には、その関数値をシェーディング係数SFV−iとし、規格化波面位置VWX´−iに対応する関数値が上記テーブルに格納されている場合には、補間演算等により算出した値をシェーディング係数SFV−iとする。シェーディング係数SFH−iについても同様に、規格化波面位置HWX´−iの算出およびシェーディング関数情報502cの表すテーブルの参照により算出される。
上記のようにして鉛直方向および水平方向の各シェーディング係数(SFV−iおよびSFH−i)が算出されると、CPU501は両者の積を演算し、その演算結果を乗算器31−iに設定する。以降、この乗算器31−iを介して遅延オーディオ信号X−iをスピーカユニットSP−iに与えることによって、シェーディング補正が実現されるのである。
本実施形態におけるシェーディング補正によれば、合成波面上での波面位置がその合成波面の中央から遠い音波を出力するスピーカユニットSP−iほど、その出力音圧が低く抑えられる。波面位置が合成波面の中央から遠い(換言すれば、波面位置が合成波面の端部に近い)音波ほど主ローブの形成への寄与は小さいと考えられるため、本実施形態によれば、従来のスピーカユニットの位置に応じたシェーディング補正に比較して、主ローブ内での最大再生音圧の低下を抑えつつ、サイドローブの発生を効率的に抑えることができると期待される。
また、本実施形態では、利用者により指定されたターゲットエリアに向けて図3に示す非球面状の合成波面が放射され、そのターゲットエリア内では音圧分布が略均一になる、といった効果もある。このように、スピーカアレイ1とターゲットエリアとの位置関係およびそのターゲットエリアの形状や大きさから、非球面状の合成波面を形成するための遅延が演算されるため、利用者に複雑な計算作業等を強いることはない。また、遅延手段20で実行される遅延処理は1タップディレイ処理であるため、遅延手段20を小規模なDSPで構成することが可能であり、スピーカアレイ1の構成が簡素になるといった特徴もある。
(C:変形)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、かかる実施形態に以下に述べる変形を加えても勿論良い。
(1)上述した実施形態では、スピーカアレイ1のアレイ面の法線方向と直交する方向に法線を有する平面内にターゲットエリアを指定させ、そのターゲットエリアを覆うように、矩形状のカバーエリアを設定し、各スピーカユニットSP−iについての目標到達点をそれらスピーカユニットSP−iの配列についての幾何学的関係を保ちつつ定めて、各スピーカユニットSP−iに対応する遅延を求めた。しかし、カバーエリアの形状は矩形に限定されるものではなく、図14(A)に示すように非対称な形状であっても良く、また、図14(B)や図14(C)に示すように水平面に対して1乃至2つの軸方向に傾斜した平面上にターゲットエリアを指定し、そのターゲットエリアを覆うようにカバーエリアを設定しても良い。要は、そのカバーエリア内に各スピーカユニットSP−iについての目標到達点を設定する際に、上記幾何学的関係を保ちつつ設定するようにすれば、上述した鉛直方向演算処理SA02および水平方向演算処理SA03と同一のアルゴリズムで各スピーカユニットSP−iに対応する遅延を求めることができる。
(2)上述した実施形態では、ユーザにより指定されたターゲットエリアを覆うように矩形状のカバーエリアを設定し、そのカバーエリアとスピーカアレイ1の位置関係およびカバーエリアの大きさから、各スピーカユニットSP−iに対応する遅延を求めた。しかし、上記カバーエリアの大さを適宜調整したり、上記カバーエリアの形状を、例えば、図15(A)に示すように、スピーカアレイ1からの距離が短いほどそのカバーエリアの幅が狭く、その距離が長いほどカバーエリアの幅が広い台形状に変形したり、図15(B)に示すように、各仮想スピーカラインに対応する目標到達点群の間隔を変更する調整手段を設け、その調整後のカバーエリアについて前述した遅延制御処理を行って各スピーカユニットSP−iに対応する遅延を求め、さらに、そのような遅延が付与された遅延オーディオ信号に乗算するシェーディング係数をシェーディング係数設定処理により求めても良い。このような調整手段としては、前述したUI提供手段40を用いれば良い。このような調整手段を設けることによって、低域から高域になるにしたがって音圧分布の中心がターゲットエリアの中心に一致するなど聴感に寄与する周波数帯域を中心に音圧分布を改善するなどの微調整をカバーエリアの形状等を介した直感的な操作で行うことが可能になる。
(3)上述した実施形態では、スピーカアレイ1のアレイ面における各スピーカユニットSP−iの鉛直方向の配置位置に応じて仮想スピーカラインを形成させたが、ターゲットエリアとスピーカアレイ1のアレイ面との位置関係によっては、このようなグループ分けでは音圧分布の中心をターゲットエリアの中心に一致させることができない場合がある。そこで、ターゲットエリアとスピーカアレイ1のアレイ面との位置関係によっては、例えば図16に示すように、仮想的な行および列方向を定め、その行方向に並んだスピーカユニットSP−i同士で仮想スピーカラインを形成させて、その列方向については上記鉛直方向演算処理SA02により遅延を求め、その行方向については上記水平方向演算処理SA03により遅延を求めるようにしても良い。
(4)上述した実施形態では、複数のスピーカユニットを平面状のアレイ面を形成するように配列して構成した2次元スピーカアレイに本発明を適用したが、複数のスピーカユニットを曲面状のアレイ面を形成するように配列して構成したスピーカアレイに本発明を適用しても勿論良い。また、複数のスピーカユニットがライン状に配列された1次元スピーカアレイ、すなわち、複数のスピーカユニットの各々が平面上の直線または曲面上の直線に沿って配列されたスピーカアレイに本発明を適用しても勿論良い。この種の一次元スピーカアレイに本発明を適用する場合には、前述した鉛直方向演算処理SA02と水平方向演算処理SA03の何れか一方の処理を実行して各スピーカユニットに対応した遅延を演算するようにすれば良く、また、そのような遅延が付与された遅延オーディオ信号に乗算するシェーディング係数を波面位置演算処理SB01およびシェーディング係数演算処理SB02により演算すれば良い。
(5)上述した実施形態では、ターゲットエリアの配置位置および大きさに応じて遅延手段20に与える遅延をCPU501に演算させるとともに、その遅延が付与された遅延オーディオ信号に乗算するシェーディング係数をCPU501に演算させた。しかし、例えば、幾つかの大きさおよび配置位置のターゲットエリアについての上記遅延およびその遅延が付与された遅延オーディオ信号に乗算するシェーディング係数を予め演算させておき、それらターゲットエリアの大きさや配置位置を示す情報に対応付けて不揮発性メモリ502に格納しておき、ユーザによりターゲットエリアの大きさおよび配置位置が指定された場合には該当する遅延を不揮発性メモリ502から読み出して遅延手段20に与える処理をCPU501に実行させるとともに、該当するシェーディング係数を不揮発性メモリ502から読み出して増幅手段30に設定する処理をCPU501に実行させても勿論良い。
(6)上述した実施形態では、ユーザにより指定されたターゲットエリアを覆うようなカバーエリアを1つだけ設定したが、帯域別に異なる広さまたは形状のカバーエリアを設定し、帯域毎に遅延の算出を行っても良い。何故ならば、高域と低域とを同じ遅延量で制御すると、指向性制御が難しい低域については高域に比較して音圧分布に広がりが生じやすく、全帯域に亘っての音圧分布に偏りが生じてしまうからである。このため、例えば、高域については低域よりも広いカバーエリアを設定するようにすれば、全帯域に亘っての音圧分布をターゲットエリア内では略均一にすることが可能になる。
(7)上述した実施形態では、本発明の特徴を顕著に示すシェーディング補正制御処理を制御手段50のCPU501に実行させる制御プログラム502aが同制御手段50の不揮発性メモリに予め格納されていた。しかし、この制御プログラム502aを例えばCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)などのコンピュータ装置読み取り可能な記録媒体に書き込んで配布しても良く、また、インターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより配布しても良い。このようにして配布される制御プログラム502aを一般的なコンピュータ装置に記憶させ、そのコンピュータ装置を制御手段50として機能させることができる。
また、上述した実施形態では、制御プログラム502aにしたがって作動することでCPU501に波面位置演算処理SB01およびシェーディング係数演算処理SB02を実行させたが、波面位置演算処理SB01を実行する波面位置演算手段、およびシェーディング係数演算処理SB02を実行するシェーディング係数演算手段、を各々電子回路で構成し、これら電子回路を組み合わせてシェーディング係数演算装置を構成しても良く、このシェーディング係数演算装置と遅延アレイ方式のスピーカアレイの各部をケーブルで接続するようにしても良い。
この発明の一実施形態であるスピーカアレイ1の構成を示す図である。 同スピーカアレイ1のアレイ面の正面図の一例である。 同スピーカアレイ1に含まれるスピーカユニットSP−iの各々から出力される音波の合成波面の伝播イメージの一例を示す図である。 同UI提供手段40によるターゲットエリアの設定例を示す図である。 同スピーカアレイ1の制御手段50のCPU501が実行する遅延制御処理およびシェーディング補正制御処理の流れを示す図である。 ターゲットエリアとカバーエリアの関係を示す図である。 鉛直方向演算処理SA02で設定される仮想スピーカラインの一例である。 鉛直方向演算処理SA02の処理内容を説明する図である。 鉛直方向演算処理SA02の処理内容を説明する図である。 水平方向演算処理SA03の処理内容を説明する図である。 スピーカアレイ1から放射される音波(各スピーカユニットSP−iから出力される音波の合成波面)の伝播イメージを示す図である。 鉛直方向の波面位置の算出手順を説明するための図である。 鉛直方向の波面位置の算出手順を説明するための図である。 変形例(1)にかかるカバーエリアの設定態様を示す図である。 変形例(2)にかかる調整手段を説明する図である。 変形例(3)にかかる仮想スピーカラインを説明する図である。 従来のシェーディング補正を説明するための図である。
符号の説明
1…スピーカアレイ、2…音源、SP−i(i=1〜N)…スピーカユニット、20…遅延手段、30…増幅手段、31−i(i=1〜N)…乗算器、40…UI提供手段、50…制御手段、501…CPU、502…不揮発性メモリ、502a…制御プログラム、502b…アレイ情報、503…揮発性メモリ。

Claims (3)

  1. スピーカアレイを構成する複数のスピーカユニットの各々から出力される音波の合成波面がその目標到達領域であるターゲットエリアに近づく程そのターゲットエリアに対向するように球面から歪んだ非球面状となり、かつ、前記スピーカアレイにて互いに隣り合うスピーカユニットから放射される音波の位相が揃うように前記スピーカアレイの指向性制御が行われている状態において、前記複数のスピーカユニットの各々について、そのスピーカユニットから出力される音波の波面が前記合成波面上に占める位置を算出する波面位置演算手段と、
    前記複数のスピーカユニットの各々に与えるオーディオ信号に乗算するシェーディング係数を演算する手段であって、前記波面位置演算手段により算出される波面の位置が前記合成波面の中央から遠い音波を出力するスピーカユニットほどシェーディング係数の値が小さくなるようにその演算を行うシェーディング係数演算手段と
    を有することを特徴とするシェーディング係数演算装置。
  2. 複数のスピーカユニットと、
    入力オーディオ信号に前記複数のスピーカユニットの各々に対応した遅延を付与して前記スピーカユニットの数分の遅延オーディオ信号を生成する手段であって、前記複数のスピーカユニットの各々から出力される音波の合成波面がその目標到達領域であるターゲットエリアに近づく程そのターゲットエリアに対向するように球面から歪んだ非球面状となり、かつ、前記スピーカアレイにて互いに隣り合うスピーカユニットから出力される音波の位相が揃うように前記遅延オーディオ信号を生成する遅延手段と、
    前記複数のスピーカユニットの各々について、前記遅延手段から与えられる遅延オーディオ信号に応じて出力する音波の波面が前記合成波面上に占める位置を算出する波面位置演算手段と、
    前記複数のスピーカユニットの各々に与える遅延オーディオ信号に乗算するシェーディング係数を演算する手段であって、前記波面位置演算手段により算出される波面の位置が前記合成波面の中央から遠い音波を出力するスピーカユニットほどシェーディング係数の値が小さくなるようにその演算を行うシェーディング係数演算手段と、
    前記遅延オーディオ信号の各々に前記シェーディング係数演算手段により演算されるシェーディング係数を乗算して該当するスピーカユニットに与えるシェーディング補正手段と、
    を有することを特徴とするスピーカアレイ。
  3. コンピュータ装置を、
    スピーカアレイを構成する複数のスピーカユニットの各々から出力される音波の合成波面がその目標到達領域であるターゲットエリアに近づく程そのターゲットエリアに対向するように球面から歪んだ非球面状となり、かつ、前記スピーカアレイにて互いに隣り合うスピーカユニットから放射される音波の位相が揃うように前記スピーカアレイの指向性制御が行われている状態において、前記複数のスピーカユニットの各々について、そのスピーカユニットから出力される音波の波面が前記合成波面上に占める位置を算出する波面位置演算手段と、
    前記複数のスピーカユニットの各々に与えるオーディオ信号に乗算するシェーディング係数を演算する手段であって、前記波面位置演算手段により算出される波面の位置が前記合成波面の中央から遠い音波を出力するスピーカユニットほどシェーディング係数の値が小さくなるようにその演算を行うシェーディング係数演算手段
    として機能させることを特徴とするプログラム。
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