JP2010150681A - 低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維およびその製造方法 - Google Patents

低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温での熱収縮率が低い低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供すること。
【解決手段】特定量のハロゲン原子を含むリン酸エステルを全芳香族ポリアミドに配合し、得られた未延伸糸に特定倍率の湿熱一段延伸を施し、さらに、特定倍率の弛緩熱処理を施すことにより、最大熱収縮率が4.0%以下、引張強度が2.8cN/dtex以上、限界酸素指数(LOI値)が28以上である、ハロゲン原子を含むリン酸エステル含有低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱収縮特性の改善されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維に関するものである。さらに詳しくは、高温の炎や火の玉に接触した際の収縮を抑制することのできる、ハロゲン原子を含むリン酸エステルを含有する低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維に関するものである。
従来、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミドは、耐熱性および難燃性に優れていることが知られている。これらの全芳香族ポリアミドは、アミド系極性溶媒に可溶であり、全芳香族ポリアミドを該溶媒に溶解した重合体溶液から、乾式紡糸、湿式紡糸、半乾半湿式紡糸などの方法により繊維となし得ることもよく知られている。
かかる全芳香族ポリアミドのうち、ポリメタフェニレンイソフタルアミドで代表されるメタ型全芳香族ポリアミド(「メタアラミド」と称されることもある)の繊維は、耐熱・難燃性繊維として特に有用なものであり、これらの特性を発揮する分野、例えば、フィルター、電子部品などの産業用途や、耐熱性、防炎性、耐炎性が重視される防護衣などの防災安全衣料用などで用いられている。
なかでも、防護衣は、溶鉱炉、電気炉、焼却炉などの高温炉前で着用する防護衣、消火作業に従事する人のための消防衣料、高温火花を浴びる溶接作業用の溶接防護衣、引火性の強い薬品を取り扱う人のための難燃作業服など、幅広く使用されている。
そして、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その優れた耐熱性、難燃性、自己消化性に加えて、一般の糸質が、衣料用繊維、例えば、綿、羊毛などの天然繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの合成繊維によく似ているため、加工性、着心地、洗濯性、衣裳性などの面で、従来防護衣に使用されていたガラス繊維、石綿繊維、フェノール樹脂繊維、金属箔コーティング素材などよりも優れていることが認められている。
しかしながら、現有のメタ型全芳香族ポリアミド繊維製の防護衣は、高温の炎または火の玉に接触した際に、素材が収縮したり、さらには穴あき現象を生じることがあり、その防護性能、特に防火性に限界があり、これにより、消火活動、人命救助活動の範囲にも限界が生じていた。
このため、メタ型全芳香族ポリアミド繊維製の防護衣素材には、特に高温の炎または火の玉に接触した際の素材の収縮、さらには穴あき現象を抑制することが望まれていた。
これに対して、従来、全芳香族ポリアミド繊維の耐炎性、低収縮性を改善することを目的としては、ポリマーに有機リン系化合物、含リンフェノール樹脂、ハロゲン化合物などを添加する方法が提案されている。例えば、特許文献1においては、全芳香族ポリアミドにハロゲン原子含有の有機リン化合物を配合して、低収縮性を改善する方法が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載された繊維は、防護衣素材としての用途拡大を図る上で、未だ十分な低収縮性が発現されるものではなかった。
また、別の方法として、特許文献2には、全芳香族ポリアミドとポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリスルフィドスルホンなどの可溶性樹脂とのブレンドからなる、高温での乾熱収縮率の優れた繊維およびその製造方法が提案されている。しかしながら、特許文献2においては、実施例中で200℃での乾熱収縮率を言及しているが、さらに高温の炎または火の玉に接触した際の素材の収縮、つまり高温下での収縮特性については全く言及されていない。また、現実に、特許文献2に記載された繊維の構成および製造方法によっては、さらに高温下での優れた収縮特性は得られないことは容易に想像できる。
特開昭53−122817号公報 特開平5−321026号公報
本発明は、前記のごとき従来技術の問題を解消するためになされたもので、その目的とするところは、高温下での熱収縮特性に優れた低収縮性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供することにある。
本発明者は、前記の課題に鑑み鋭意検討を重ねた。その結果、特定量のハロゲン原子を含むリン酸エステルを全芳香族ポリアミドに配合し、得られた未延伸糸に特定倍率範囲での湿熱一段延伸を施し、さらに、特定倍率範囲での弛緩熱処理を施すことにより、高温下での熱収縮特性の改善された低収縮全芳香族ポリアミド繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、最大熱収縮率が4.0%以下、引張強度が2.8cN/dtex以上、限界酸素指数(LOI値)が28以上である、ハロゲン原子を含むリン酸エステル含有低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維に関する。
ここで、前記ハロゲン原子を含むリン酸エステルの含有割合は、メタ型全芳香族ポリアミド質量を基準として、3.0〜20.0質量%が好ましい。
また、前記メタ型全芳香族ポリアミドとしては、好ましくはポリメタフェニレンイソフタルアミドである。
次に、本発明は、ハロゲン原子を含むリン酸エステルの含有量が、メタ型全芳香族ポリアミド質量を基準として3.0〜20.0質量%であるメタ型全芳香族ポリアミド未延伸繊維に、3.0〜4.5倍の湿熱一段延伸を施し、その後に0.6〜0.95倍の弛緩熱処理を施すことを特徴とする前記低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法に関する。
本発明の低収縮全芳香族ポリアミド繊維は、高温での熱収縮性が極めて低い。このため、耐熱性に優れた各種繊維製品を提供することができる。また、湿熱一段延伸により高強度を維持することができるため、使用環境の厳しい防護衣料用途への素材展開について極めて有用である。さらに、顔料を添加することができるため、意匠性に優れた防護衣料用途へ特に好適である。
<メタ型全芳香族ポリアミド繊維>
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、以下の特定の物性を備える。本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性、構成、および、製造方法等について以下に説明する。
[メタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性]
〔最大熱収縮率〕
本発明の低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その最大熱収縮率が4%以下、好ましくは0〜3%である。前記最大熱収縮率が4%を超える場合には、最終的に得られる繊維製品の耐熱性が不十分となり、高温の炎や火の玉に接触すると穴あきなどの問題が発生しやすくなり、本発明の目的を達成することができない。
最大熱収縮率を4%以下とするためには、メタ型全芳香族ポリアミド中に添加されるハロゲン原子を含むリン酸エステルを特定量とし、繊維の製造工程において、特定倍率範囲での弛緩熱処理を行えばよい。
なお、ここでいう「最大熱収縮率」とは、以下の方法により測定されるものである。
(最大熱収縮率の測定方法)
熱機械分析装置(SII社製、商品名:EXSTAR 6000)を用いて、繊維サンプルを480dtexに分繊し、これをチャックに挟み測定試料とする。この時の測定試料長は10mmとする。測定条件は25℃〜450℃までの昇温速度100℃/分の等温昇速とし、繊維試料に1.2cNの負荷荷重を与えた状態で各温度での試料繊維初期長に対する収縮率を測定する。得られた各温度の収縮率結果より、収縮率が最大となる温度での収縮率を求め、最大収縮率とする。
〔引張強度〕
本発明の低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度は、2.8cN/dtex以上、好ましくは2.8〜4.0cN/dtexである。2.8cN/dtex未満では、消防衣料、難燃作業服等とした際の強度が不十分となるため好ましくない。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の引張強度を2.8cN/dtex以上とするためには、繊維の製造工程において、特定倍率範囲での湿熱一段延伸を行えばよい。
〔限界酸素指数(LOI)〕
本発明の低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維の限界酸素指数(LOI)は、28以上、好ましくは30以上である。LOI値が28未満では、消防衣料、溶接防護衣、難燃作業服等とした際の耐炎性が不十分となり好ましくない。
限界酸素指数(LOI値)を28以上とするためには、メタ型全芳香族ポリアミド中に添加されるハロゲン原子を含むリン酸エステルを特定量とすればよい。
なお、本発明における「限界酸素指数(LOI)」とは、JIS K 7201のLOI測定法に基づき、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなる紡績糸(番手:20/2)を用いて作成された綾織物(目付け:280g/m)につき、以下の測定条件で測定して得られる値をいう。
(測定条件)
試験片の形 :V
寸法 :140mm×52mm
点火手順 :B(伝ぱ点火)
酸素濃度間隔:0.2%
<メタ型全芳香族ポリアミド>
[メタ型全芳香族ポリアミドの構成]
本発明のメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、本発明の目的を損なわない範囲内で、パラ型等の他の共重合成分が共重合されていてもよい。
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性の観点から、メタフェニレンイソフタルアミド単位を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドである。メタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドとしては、メタフェニレンイソフタルアミド単位が、全繰り返し単位の90モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
〔メタ型全芳香族ポリアミドの原料〕
(メタ型芳香族ジアミン成分)
前記メタ型芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフエニルスルホンなど、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基などの置換基を有する誘導体、例えば2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロルベンゼン、2,6−ジアミノクロルベンゼンなどを例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミンのみ、または、メタフェニレンジアミンを70モル%以上含有する混合ジアミンであることが好ましい。
(メタ型芳香族ジカルボン酸成分)
メタ型全芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイドなどのイソフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基などの置換基を有する誘導体、例えば、3−クロルイソフタル酸クロライド、3−メトキシイソフタル酸クロライドなどを例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライドのみ、または、イソフタル酸クロライドを70モル%以上含有する前記の混合カルボン酸ハライドであることが好ましい。
(共重合成分)
前記のメタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分以外で使用しうる共重合成分としては、例えば、芳香族ジアミンとして、パラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノクロルベンゼン、2,5−ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジンなどのベンゼン誘導体、1,5−ナフチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。一方、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライドなどが挙げられる。
これらの共重合成分の共重合比は、あまりに多くなりすぎるとメタ型全芳香族ポリアミドの特性が低下しやすいため、ポリアミドの全酸成分を基準として20モル%以下とすることが好ましい。特に、好適なメタ型全芳香族ポリアミドは、前記した通り、全繰返し単位の90モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるポリアミドであり、なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミドが特に好ましい。
かかるメタ型全芳香族ポリアミドの重合度としては、30℃の98%濃硫酸を溶媒として測定した固有粘度(IV)として、1.3〜3.0の範囲が適当である。
〔メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法〕
メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸クロライド成分とを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、ハロゲン原子を含むリン酸エステルを含有する。ハロゲン原子を含むリン酸エステルの全芳香族ポリアミドへの添加方法は、特に限定されるものではないが、繊維を形成するための紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)に添加することが、メタ型全芳香族ポリアミドとハロゲン原子を含むリン酸エステルを含む均一な紡糸液を作製できるため好ましい。
〔ハロゲン原子を含むリン酸エステル〕
本発明で使用されるハロゲン原子を含むリン酸エステルとしては、例えば、トリスクロロプロピルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、フェニルジクロロプロピルホスフェート、トリスクロルエチルホスフェート、トリスジクロルプロピルホスフェートで代表される含ハロゲンアルキル(フェニル)フォスフェート類、トリスクロロエチルホスファイト、トリス(2・3ジクロロプロピル)ホスファイトで代表される含ハロゲンアルキル(フェニル)フォスファイト類、〔(ClCHCHO)P(O)CHCHO〕Pなどで代表される含ハロゲンポリエステル類、ClCHCHOP(O)(OH)、あるいは(ClCHCHO)P(O)(OH)などで代表される含ハロゲン酸性リン酸エステル類などが挙げられる。これらのリン酸エステルは、1種単独でもあるいは2種以上を併用することもできる。
本発明におけるハロゲン原子を含むリン酸エステルの含有量は、メタ型全芳香族ポリアミド質量を基準として、好ましくは3.0〜20.0質量%、さらに好ましくは5.0〜10.0質量%である。3.0質量%未満となる場合には、期待する低収縮効果が発現せず、一方で、20.0質量%を超える場合には、弛緩熱処理する際に分解してしまい、大量のリン酸エステルを発生するため、生産上好ましくない。
<メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法>
本発明の低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、前記の製造方法によって得られたメタ型全芳香族ポリアミドを用いて、当該メタ型全芳香族ポリアミドとハロゲン原子を含むリン酸エステルとを含む紡糸液(ポリマードープ)を作成し、紡糸・凝固工程、湿熱延伸工程、弛緩熱処理工程を経て製造される。
[紡糸液調製工程]
紡糸液調製工程においては、メタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解し、さらに、ハロゲン原子を含むリン酸エステルを添加して、紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を調製する。紡糸液の調製にあたっては、通常、アミド系溶媒を用い、使用されるアミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPの場合には、通常は10〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
[紡糸・凝固工程]
紡糸・凝固工程においては、前記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させ、繊維状物を得る。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が500〜30,000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、10〜90℃の範囲が適当である。
本発明で使用する繊維を得るための凝固浴は、実質的にアミド系溶媒と水との2成分からなる水溶液で構成される。しかしながら、塩化カルシウム、水酸化カルシウム等の無機塩類がポリマー溶液中から抽出されてくるため、実際には、凝固液にはこれらの塩類が少量含まれる。この凝固浴組成におけるアミド系溶媒としては、メタ型全芳香族ポリアミドを溶解し、水と良好に混和するものであれば特に限定されるものではないが、特に、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン等を好適に用いることができる。
アミド系溶媒と水との最適な混合比は、重合体溶液の条件によっても若干変化するが、一般的に、アミド系溶媒の割合が水溶液全体に対して40質量%〜60質量%の範囲であることが好ましい。この範囲を下回る条件では、凝固繊維中に非常に大きなボイドが生じやすくなり、その後の糸切れの原因となりやすくなる。一方で、この範囲を上回る条件では、凝固が進まず、繊維の融着が起こりやすくなる。
凝固浴の温度は、凝固液組成と密接な関係があるが、一般的には、生成繊維中にフィンガーとよばれる粗大な気泡上の空孔をできにくくする目的で、高温にする方が好ましい。しかしながら、凝固液濃度が比較的高い場合には、あまり高温にすると繊維の融着が激しくなる。このため、凝固浴の好適な温度範囲は20〜70℃であり、より好ましくは25〜60℃である。
なお、凝固浴中での繊維状物(糸条体)の浸漬時間は、1.5〜30秒の範囲とすることが好ましい。浸漬時間が1.5秒未満の場合には、繊維状物の形成が不十分となり断糸が発生する。一方で、浸漬時間が30秒を超える場合には、生産性が低くなるため好ましくない。
[湿熱延伸工程]
湿熱延伸工程においては、凝固浴にて凝固して得られた繊維状物(糸条体)からなる繊維束を、沸水中や高温水蒸気中などの湿熱下で、一段延伸する。
湿熱延伸工程における延伸倍率は、3.0〜4.5倍であり、好ましくは3.5〜4.0倍の範囲である。湿熱一段延伸を実施することで、得られる繊維を高強度とすることができる。湿熱延伸工程における湿熱一段延伸の倍率が3.0倍未満の場合には、延伸が不十分となることから、高強度を発揮することができない。一方で、湿熱一段延伸の倍率が4.5倍を超える場合には、延伸が過剰であるため、均一な性能を発揮することができなくなる。
湿熱延伸時の温度は、通常、50〜100℃、好ましくは80〜100℃である。
[弛緩熱処理工程]
弛緩熱処理工程においては、湿熱延伸工程により一段延伸がなされた繊維に対して、弛緩熱処理を実施する。
熱処理の際の弛緩倍率は、0.6〜0.95倍の範囲であり、0.7〜0.85倍の範囲とすることがさらに好ましい。本発明においては、この範囲で弛緩熱処理することにより、さらに低収縮効果を発現することができる。0.6倍未満で弛緩熱処理を行った場合には、均一な性能を発現することができない。一方で、0.95倍を超える弛緩熱処理を実施した場合には、低収縮効果を発現することができない。
なお、ここでいう弛緩倍率とは、処理前の繊維長に対する処理後の繊維長の比で表される。例えば、弛緩倍率0.6倍とは、弛緩熱処理工程により繊維が原長の60%に制限収縮処理されることを意味する。
なお、前記弛緩熱処理時の温度は、通常、280〜350℃、好ましくは300〜340℃である。
<メタ型全芳香族ポリアミド繊維の用途>
本発明の低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、高温での熱収縮率が低く、かつ繊維強度が高いので、耐熱性防護服や難燃作業服などの防護衣料のほか、フィルター、電子部品などの産業用途などに有用である。
また、ハロゲン原子を含むリン酸エステルの他に顔料を添加することもできるため、意匠性のある防護衣料用途に特に好適である。
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的説明する。なお、実施例中における各物性値は、下記の方法で測定した。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り、質量基準である。
<繊度>
JIS−L−1015に基づき、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛繊度にて表記した。
<引張強度、引張伸度>
JIS−L−1015に基づき、インストロン社製 型番5565を用いて、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
<最大熱収縮率>
熱機械分析装置(SII社製、商品名:EXSTAR 6000)を用いて、繊維サンプルを480dtexに分繊し、これをチャックに挟み測定試料とした。この時の測定試料長は10mmとした。測定条件は25℃〜450℃までの昇温速度100℃/分の等温昇速とし、繊維試料に1.2cNの負荷荷重を与えた状態で各温度での試料繊維初期長に対する収縮率を測定した。得られた各温度の収縮率結果より、収縮率が最大となる温度での収縮率を求め、最大収縮率とした。
<限界酸素指数(LOI値)>
実施例および比較例で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなる紡績糸(番手:20/2)を用いて、綾織に織成した織物(目付け:280g/m)を作製した。得られた織物につき、JIS K7201のLOI測定法に基づき、以下の測定条件で測定を実施した。
(測定条件)
試験片の形 :V
寸法 :140mm×52mm
点火手順 :B(伝ぱ点火)
酸素濃度間隔:0.2%
<実施例1>
メタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロライドより重合したメタ型全芳香族ポリアミドの21質量パーセントのN−メチル−2−ピロリドン溶液に、ハロゲン原子を含むリン酸エステルをポリマー100質量部に対して20.0質量部となるように添加して、紡糸液を調製した。
続いて、この紡糸液を、孔径0.07mm、孔数3,000のノズルより押し出し、速度9.5m/分で塩化カルシウムを主体とする無機塩浴中に押し出し、凝固を行い、水洗後、沸水中で4.0倍の湿熱一段延伸した後、330℃の熱板上で0.7倍の弛緩熱処理を実施した。
ここで、ハロゲン原子を含むリン酸エステルとしては、大八化学工業株式会社製のトリス(クロロプロピル)ホスフェート[TMCPP:O=P(OCCl)]を用いた。得られた繊維につき、各種の物性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例2>
ハロゲン原子を含むリン酸エステルを、ポリマー100質量部に対して10質量部となるように添加して紡糸液を調製した以外は、実施例1と同様にメタ型全芳香族ポリアミド繊維を作製した。得られた繊維につき、各種の物性を測定した結果を、表1に示す。
<実施例3>
ハロゲン原子を含むリン酸エステルを、ポリマー100質量部に対して7.0質量部となるように添加して紡糸液を調製した以外は、実施例1と同様にメタ型全芳香族ポリアミド繊維を作製した。得られた繊維につき、各種の物性を測定した結果を、表1に示す。
<実施例4>
湿熱一段延伸を3.5倍とし、弛緩熱処理を0.8倍とした以外は、実施例3と同様にメタ型全芳香族ポリアミド繊維を作製した。得られた繊維につき、各種の物性を測定した結果を、表1に示す。
<実施例5>
湿熱一段延伸しを3.5倍とし、弛緩熱処理を0.9倍とした以外は、実施例3と同様にメタ型全芳香族ポリアミド繊維を作製した。得られた繊維につき、各種の物性を測定した結果を、表1に示す。
<実施例6>
ハロゲン原子を含むリン酸エステルを、ポリマー100質量部に対して3.0質量部となるように添加して紡糸液を調製した以外は、実施例1と同様にしてメタ型全芳香族ポリアミド繊維を作製した。得られた繊維につき、各種の物性を測定した結果を、表1に示す。
<比較例1>
ハロゲン原子を含むリン酸エステルを添加しない以外は、実施例1と同様にして、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を作製した。得られた繊維につき、各種の物性を測定した結果を、表1に示す。
<比較例2>
ハロゲン原子を含むリン酸エステルを、ポリマー100質量部に対して1.0質量部となるように添加して紡糸液を調製し、弛緩熱処理を0.8倍とした以外は、実施例1と同様にしてメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得た。得られた繊維につき、各種の物性を測定した結果を、表1に示す。
<比較例3>
弛緩熱処理を1.0倍とした以外は、実施例3と同様にしてメタ型全芳香族ポリアミド繊維を作製した。
<比較例4>
ハロゲン原子を含まないリン酸エステルを、ポリマー100質量部に対して7.0質量部となるように添加して紡糸液を調製した以外は、実施例1と同様にしてメタ型全芳香族ポリアミド繊維を作製した。
ここで、ハロゲン原子を含まないリン酸エステルとしては、大八化学工業株式会社製の下記構造の「商品名:CR−741」を用いた。
(CP(O)OCC(CHOP(O)(OC
得られた繊維につき、各種の物性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2010150681
本発明の低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、高温での熱収縮率が低く、かつ繊維強度が高いので、耐熱性防護服や難燃作業服などの防護衣料のほか、フィルター、電子部品などの産業用途などに有用である。

Claims (4)

  1. 最大熱収縮率が4.0%以下、引張強度が2.8cN/dtex以上、限界酸素指数(LOI値)が28以上である、ハロゲン原子を含むリン酸エステル含有低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
  2. 前記ハロゲン原子を含むリン酸エステルの含有量が、メタ型全芳香族ポリアミド質量を基準として3.0〜20.0質量%である請求項1記載の低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
  3. 前記メタ型全芳香族ポリアミドが、ポリメタフェニレンイソフタルアミドである請求項1または2記載の低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
  4. ハロゲン原子を含むリン酸エステルの含有量が、メタ型全芳香族ポリアミド質量を基準として3.0〜20.0質量%であるメタ型全芳香族ポリアミド未延伸繊維に、3.0〜4.5倍の湿熱一段延伸を施し、その後に0.6〜0.95倍の弛緩熱処理を施すことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の低収縮メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
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