JP2010142841A - 半田ごてチップおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半田の広い温度範囲で、作業上十分な半田の濡れ性を確保できるとともに、耐溶食性に優れた半田ごてチップを提供する。
【解決手段】酸化アルミニウムに鉄を含有させた酸化アルミニウムセラミックスによって構成される半田ごてチップ1であって、酸化アルミニウムセラミックスにおける酸化アルミニウムの粒径は、0.8μm以上1.5μm以下である。この粒径の制御により、半田溶融時における静止接触角度は、半田の濡れ性が良好な80〜100度になる。
【選択図】図12
【解決手段】酸化アルミニウムに鉄を含有させた酸化アルミニウムセラミックスによって構成される半田ごてチップ1であって、酸化アルミニウムセラミックスにおける酸化アルミニウムの粒径は、0.8μm以上1.5μm以下である。この粒径の制御により、半田溶融時における静止接触角度は、半田の濡れ性が良好な80〜100度になる。
【選択図】図12
Description
本発明は、半田ごてチップおよびその製造方法に関する。特に、鉛含有の有無によらず、広い温度範囲(230〜350℃)で作業上十分なる半田濡れ性を有し、かつ耐溶食性に優れた半田ごてチップおよびその製造方法に関する。
近年では、エレクトロニクス機器の廃棄に関わる環境負荷軽減に対して、配線の接続等に用いられる半田も、従来のSn−Pb系からPbが取り除かれた、いわゆるPbフリー半田が主流で用いられるようになってきている。
しかし、Pbフリー半田は、従来のSn−Pb系半田に比べて、濡れ性が悪く、しかも融点が高いという問題点を有している。このため、Pbフリー半田が使用される場合には、半田ごての先端部(チップ)が溶食され易く、これを要因として、チップの寿命低下といった問題が生じる。
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、酸化アルミニウム(Al2O3)にニッケル(Ni)や鉄(Fe)を複合・焼結させることで、Pbフリー半田に対して優れた濡れ性や耐溶食性を有する半田ごてチップが開発されている。
しかしながら、特許文献1では、半田の温度が半田用フラックスの活性限付近である350℃に達した際に、チップ材料自身の表面酸化およびフラックスの酸化により、半田の濡れ性にばらつきが生じることが報告されている。半田付け作業は、半田の温度が上述のように高温となる際にも行われるため、より広い温度範囲で半田の濡れ性を確保できる半田ごてチップが求められる。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、半田の広い温度範囲で、作業上十分な半田の濡れ性を確保できるとともに、耐溶食性に優れた半田ごてチップ及びその製造方法を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点における半田ごてチップは、酸化アルミニウムに鉄を含有させた酸化アルミニウムセラミックスによって構成される半田ごてチップであって、前記酸化アルミニウムセラミックスにおける酸化アルミニウムの粒径は、0.8μm以上1.5μm以下であることを特徴とする。
好ましくは、前記酸化アルミニウムセラミックスには、酸化アルミニウム粒子の分散材として酸化チタンが含有されていることを特徴とする。
本発明の第2の観点における半田ごてチップの製造方法は、酸化アルミニウム及び鉄の含有粉末と酸化アルミニウム粒子の分散材としての酸化チタンの粉末とを乾式混合粉砕することで、前記酸化アルミニウム、鉄、及び酸化チタンの粉末が混合された混合原料粉末を生成する粉砕工程と、前記混合原料粉末を、所定圧力下で焼結する焼結工程とを具備することを特徴とする。
好ましくは、前記焼結工程では、1000度以上1200度以下の温度で、前記混合原料粉末を焼結することを特徴とする。
好ましくは、前記焼結工程によって得られた酸化アルミニウムセラミックスを常圧下で加熱する加熱工程をさらに具備し、前記加熱工程では、1300度以上1400度以下の温度で、前記酸化アルミニウムセラミックスを加熱することを特徴とする。
本発明によれば、半田を構成する酸化アルミニウムセラミックスにおいて、酸化アルミニウムの粒径が、0.8μm以上1.5μm以下に制御されることで、半田の温度が350℃に至った際でも、半田の濡れ性は良好になる。これにより、幅広い作業温度下で十分な半田の濡れ性を確保することができる。
また、半田ごてチップは、酸化アルミニウムセラミックスにより構成されていることから、耐溶食性に優れて、長寿命であり、例えば融点の高いPbフリー半田が用いられる場合であっても、半田による溶食を回避できる。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
図1は、本発明の実施の形態における半田ごてチップの外観を示す図である。半田ごてチップ1は、酸化アルミニウム(Al2O3)及び鉄(Fe)の含有粉末に、酸化アルミニウム粒子の分散材としての酸化チタン(TiO2)の粉末を添加させて形成した酸化アルミニウムセラミックス片により構成される。半田ごてチップ1は、濡れ性を良好にする観点においては、少なくとも溶融半田の接触箇所が酸化アルミニウムセラミックスにより構成されていればよい。しかし、図示のごとく、半田ごてチップ1全体が金属含有の酸化アルミニウムセラミックスを成形して構成されていれば、半田付け対象物との接触によるチップの劣化を防ぐことができ、また製造工程も簡素化する。したがって、本実施の形態では図示の場合を例に説明する。
セラミックスは、耐溶食性が高く半田の溶食に対して高い抵抗を示す。そして、セラミックスのうち、酸化アルミニウムセラミックスは、原料のコストが安価である。このため、本実施の形態では、半田ごてチップ1を酸化アルミニウムセラミックスにより構成している。
また、酸化アルミニウムセラミックスも含め、セラミックスは、金属材料に比べて表面エネルギーが小さいため、半田に対する付着性、すなわち濡れ性が悪い。そこで、酸化アルミニウムセラミックスには、酸化アルミニウムの焼結温度(1300℃程度)よりも低い融点を有し、濡れ性の良い鉄を含有させている。
そして本実施の形態では、半田ごてチップ1の濡れ性を向上させるため、酸化アルミニウムセラミックスにおける酸化アルミニウムの粒径は、0.8μm以上1.5μm以下に制御されている。この粒径の制御は、以下に示す製造方法により半田ごてチップ1が製造される過程で実現される。
図2は、本実施の形態における半田ごてチップ1の製造方法を示すフロー図である。本実施の形態の半田ごてチップ1の製造方法は、酸化アルミニウムの粉末、鉄の粉末、及び酸化チタンの粉末を乾式混合粉砕することで、これらの粉末が混合された混合原料粉末を得る粉砕工程(ステップS1)と、前記混合原料粉末を製粒する製粒工程(ステップS2)と、製粒された混合原料粉末を所定圧力下で焼結することで、酸化アルミニウムセラミックス片を形成する焼結工程(ステップS3)と、酸化アルミニウムセラミックス片を加熱する加熱工程(ステップS4)と、該加熱された酸化アルミニウムセラミックス片を加工する加工工程(ステップS5)とを具備している。以下、これらの工程について詳しく説明する。
粉砕工程(ステップS1)では、純度が99.99%であり平均粒径が0.15μmである酸化アルミニウムの粉末に、純度が99.5%であり平均粒径が5.9μmである鉄の粉末を含有させる。鉄の粉末の添加量は80wt%である。さらに、純度が99.9%であり平均粒径が0.8μmである酸化チタンの粉末を添加する。そして、これらの粉末をアルゴン(Ar)雰囲気とした所定の容器内で24時間乾式混合粉砕することで、上述の粉末(酸化アルミニウムの粉末、鉄の粉末、酸化チタンの粉末)が混合された混合原料粉末を生成する。
製粒工程(ステップS2)では、100メッシュの篩いに混合原料粉末を通過させて、混合原料粉末の粒径を均一にする。
焼結工程(ステップS3)では、篩いにかけた混合原料粉末を40MPaの圧力下で2時間ホットプレス焼結することで、酸化アルミニウムセラミックス片を形成する。この際の焼結温度は、1000℃以上1200℃以下である。この範囲に焼結温度が調節されることで、酸化アルミニウムセラミックス片は密実で十分な強度を有するものとなる。
加熱工程(ステップS4)では、酸化アルミニウムセラミックス片を、常圧下で2時間加熱する。この際の加熱温度は、1300℃以上1400℃以下である。
加工工程(ステップS5)では、酸化アルミニウムセラミックス片を円錐形に切削し、表面を砥粒粗さ♯1000の研磨材にて鏡面仕上げする。この結果、図1に示した半田ごてチップ1が得られる。
上述の製造方法によれば、粉砕工程における酸化チタンの添加や乾式ミリング法の実施、焼結工程における焼結温度の調整、及び加熱工程の実施により、酸化アルミニウムの粒径は0.8μm以上1.5μm以下に制御される。この結果、半田の濡れ性は良好になる。この知見は、半田試験および走査型電子顕微鏡(SEM)の観察等により明らかになったものであり、以下これについて説明する。
本試験は、製造過程が異なる半田ごてチップの試験体を比較することで、半田の濡れ性に対して影響を及ぼす要因を確認したものである。試験に用いた試験体はいずれも、その製造過程において、酸化アルミニウムの粉末(純度99.99%,平均粒径0.15μm)に、鉄の粉末(純度99.5%,平均粒径5.9μm)を、80wt%複合させたものとなっている。
そして各試験体を製造するにあたって、酸化アルミニウム及び鉄の粉末に酸化チタンの粉末を添加する際には、この添加量の相違による影響を確認するために、試験体毎に酸化チタンの添加量を様々設定した。なお、酸化チタンの粉末は、純度が99.9%であり平均粒径が0.8μmであるものを使用した。
そして上述の酸化アルミニウム・鉄・酸化チタンの粉末を混合する際には、混合方法の相違による影響を確認するために、一部の試験体については乾式ミリング法による混合を行い、他の試験体については湿式ミリング法による混合を行った。乾式ミリング法による混合はアルゴン(Ar)雰囲気中で行い、湿式ミリング法による混合はエタノール中で行っている。
そして混合材料をホットプレス焼結する際には、焼結温度やプレス圧力の相違による影響を確認するために、試験体毎に焼結温度やプレス圧力を様々設定した。なお、いずれの試験体についても、窒素(N2)雰囲気中で2時間焼結を行っており、焼結温度は1000℃以上1300℃以下の範囲内で設定され、プレス圧力は5MPa以上40MPa以下の範囲内で設定されている。
そして、ホットプレス焼結によって得られた酸化アルミニウムセラミックス片を加工する際には、酸化アルミニウムセラミックス片を5×10×40mmの寸法に研削加工した後、その表面をバフ研磨で鏡面仕上げした。そしてさらに、この鏡面仕上げした酸化アルミニウムセラミックス片を、アセトン中で1時間超音波脱脂洗浄後、温風下で乾燥させ、一定時間デシケータ内で保存した。なお、焼結工程後の加熱処理の実施による影響を確認するために、一部の試験体については、ホットプレス焼結後に加熱処理を行った上で、上述の加工を行った。
粉砕工程における酸化チタンの添加量およびミリング方法の相違による酸化アルミニウム粒子の分散の状態の違いを検証すべく、試験体の微細組織を走査型電子顕微鏡(以下、SEM)により観察した。観察を行った試験体は、湿式ミリングが行われ、酸化チタンが未添加である試験体Aと、乾式ミリングが行われ、酸化チタンが添加された試験体Bとである。これら試験体A,Bは、同一の焼結条件(焼結温度1300℃、圧力20MPa)下で形成されている。
図3は、SEMによる撮影写真(以下、SEM写真)を示しており、(a)は試験体AのSEM写真を示し、(b)は試験体BのSEM写真を示している。(a)(b)において黒く写っている部分Cは、酸化アルミニウムの粒子であり、(b)に示す試験体Bでは、(a)に示す試験体Aよりも、酸化アルミニウムの粒子は均一に分散していた。このことから、酸化チタンを添加させることや乾式ミリングを行うことで、酸化アルミニウムの粒子を効果的に分散させることができることが確認された。
次に、粉砕工程における酸化チタンの添加量と酸化アルミニウムの粒子の粒径との関係の確認を行った。この際には、試験体を作成するにあたって、焼結条件(焼結温度・プレス圧力)を複数設定し、設定した各条件下で、酸化チタンの添加量を変えることを行った。この結果、上述の焼結条件については同一であるものの、酸化チタンの添加量が異なる複数の試験体を得た。そして、これら試験体について、微細組織をSEMにより撮影するとともに、SEM写真に写されている酸化アルミニウムの粒子を円近似して、その近似形状における長径と短径の平均値を酸化アルミニウムの粒径として算出した(以下、この算出方法を「SEM写真に基づく粒径算出法」として記す)。図4は、この結果得られた酸化アルミニウムの粒径と、酸化チタンの添加量との関係を示している。図4に示すように、いずれの焼結条件においても、酸化チタンの添加量が増加することに伴い、酸化アルミニウムの粒径は小さくなることが確認された。
次に、焼結工程における焼結温度と酸化アルミニウムの粒径との関係の確認を行った。この際には、試験体を作成するにあたって、粉砕工程における酸化チタンの添加量及び焼結工程におけるプレス圧力を複数設定し、設定した各条件下で焼結工程の焼結温度を変えることを行った。この結果、上述の条件(プレス圧力及び酸化チタンの添加量の条件)については同一であるものの、焼結温度が異なる複数の試験体を得た。そして、これら試験体について、前記SEM写真に基づく粒径算出法により、酸化アルミニウムの粒径を算出した。図5は、この結果得られた酸化アルミニウムの粒径と、焼結温度との関係を示している。いずれの条件においても、焼結温度が上昇することに伴い、酸化アルミニウムの粒径は大きくなることが確認された。
次に、焼結工程におけるプレス圧力と酸化アルミニウムの粒径との関係の確認を行った。この際には、試験体を作成するにあたって、粉砕工程における酸化チタンの添加量及び焼結工程における焼結温度の条件を複数設定し、設定した各条件下で焼結工程のプレス圧力を変えることを行った。この結果、上述の条件(酸化チタンの添加量及び焼結温度の条件)については同一であるものの、プレス圧力が異なる複数の試験体を得た。そして、これらの試験体について、前記SEM写真に基づく粒径算出法により、酸化アルミニウムの粒径を算出した。図6は、この結果得られた酸化アルミニウムの粒径と、プレス圧力との関係を示す図である。図6に示すように、いずれの条件においても、プレス圧力が上昇することに伴い、酸化アルミニウムの粒径は大きくなることが把握された。
以上のことから、酸化チタンの添加量、焼結温度、プレス圧力を調整することで、酸化アルミニウムの粒径を制御できることが確認された。
次に、上述の酸化チタンの添加量等の調整により酸化アルミニウムの粒径を制御することが、半田の濡れ性に対していかなる効果を及ぼすか確認した。
まず、酸化チタンの添加量と半田の濡れ性との関係の確認を行った。この際には、試験体を作成するにあたって、酸化チタンの添加量が異なる複数の粉末(酸化アルミニウム及び鉄に酸化チタンを添加させた粉末)を準備して、これらの粉末を乾式ミリング法によって混合した後、ホットプレス焼結を行った。
そして、ホットプレス焼結により得られた酸化アルミニウムセラミックス片の試験体を表面が350℃になるまで加熱した後、試験体上に半田を載せて、試験体上で溶融した半田の静止接触角度を、JISR3257の接触角測定法に従って測定した。この測定における環境は大気中であり、試験体上に載せた半田は、Pbフリー半田として一般的なSn−3Ag−0.5Cu(融点:217〜219℃)である。この測定法によれば、Pbフリー半田が用いられる半田付け作業において、Pbフリー半田が高温(350℃)になる際の静止接触角度が求められる。以下、この測定法により測定された静止接触角度を、「高温下における静止接触角度」として適宜記す。
またこの際には、湿式ミリング法による混合を行った試験体も準備した。この試験体についても酸化チタンの添加量が異なる複数の試験体を作成しており、各試験体に対して、上記と同様の方法により、高温下における静止接触角度の測定を行った。
図7は、乾式ミリング法による混合を行った試験体についての静止接触角度と酸化チタンの添加割合との関係を示す図であり、図8は、湿式ミリング法による混合を行った試験体についての静止接触角度と酸化チタンの添加割合との関係を示す図である。図7,8の横軸に示す酸化チタンの添加割合は、酸化アルミニウムセラミックスにおける酸化チタンの含有量を酸化アルミニウムの含有量で除した割合である。
図7,8から、酸化チタンの添加割合が増加するに従って、静止接触角度は収束していくことがわかる。このことから、酸化チタンの添加量を増加させることが、半田が高温となる状況下で静止接触角度を所望の値に調節するために効果的であることが確認された。
また図7,8において、酸化チタンの添加割合が同一である試験体のデータ同士(酸化チタンの添加割合が0や1のデータ同士)を比較するとわかるように、乾式ミリングを行った試験体(図7参照)は、湿式ミリングを行った試験体(図8参照)よりも、静止接触角度が小さくなっていた。このことから、乾式ミリング法を行うことが、半田が高温となる状況下で静止接触角度を低下させるため(すなわち濡れ性を向上させるため)に効果的であることが確認された。
次に、焼結温度と半田の濡れ性との関係の確認を行った。この際には、試験体を作成するにあたって、焼結工程におけるプレス圧力及び酸化チタンの添加量の条件を複数設定し、設定した各条件下で焼結工程の焼結温度を変えることを行った。この結果、上述の各条件(焼結工程のプレス圧力及び酸化チタンの添加量の各条件)については同一であるものの、焼結温度が異なる複数の試験体を得た。そして、これら試験体について、前記高温下における静止接触角度を測定した。図9は、この測定により得られた静止接触角度と焼結温度との関係を示している。いずれの条件においても、焼結温度が上昇することに伴い、静止接触角度は低下(濡れ性は向上)していた。このことから、焼結温度を上昇させることが、半田が高温となる状況下で静止接触角度を低下させるため(濡れ性を向上させるため)に効果的であることが確認された。
以上のことから、半田の温度が高温となる状況下で半田の濡れ性を向上させるためには、乾式ミリング法により混合粉砕することや、焼結温度を高く設定することが有効であることがわかった。
上記では、半田の濡れ性を向上させるために、焼結温度を高く設定することが有効であることを述べたが、焼結温度が1300℃付近になる場合には、ホットプレス焼結炉の金型から試料が溶出してしまい、効率よく試験片を採取することができない。このため、焼結工程では、できるだけ低温で焼結することが望まれる。
そこで、一旦低温で焼結した材料を再び加熱することが、半田の濡れ性に如何なる影響を与えるか確認を行った。この際には、焼結温度が異なる複数の試験体を準備し、そのうち、低温(1000℃以上1200℃以下)で焼結された試験体については、再度、常圧下において焼結温度よりも高い温度(1300℃)で加熱した。そして、各試験体について、前記高温下における静止接触角度の測定を行った。図10は、この測定により得られた静止接触角度と焼結温度との関係を示している。図10において、白丸は、焼結後で加熱は行われていない試験体のデータを示し、黒丸は、焼結後さらに加熱が行われた試験体のデータを示している(例えば、焼結温度が1000℃の位置にある白丸Dは、1000℃で焼結が行われたが、加熱は行われていない試験体のデータを示し、焼結温度が1000℃の位置にある黒丸Eは、1000℃で焼結された後、1300℃で加熱された試験体のデータを示している)。この図から、焼結後に加熱処理が行われた試験体については、加熱処理の実施によって、静止接触角度が低下したことがわかる。これにより、加熱処理の実施によって、半田の濡れ性は向上することが確認された。
次に、この原因を調べるために、焼結後に加熱処理した試験体について、加熱処理前後の組織をSEMにより撮影した。図11は、この撮影により得られたSEM写真を示している。(a)は、加熱処理前の組織を示し、(b)は、加熱処理後の組織を示している。
(b)に示す加熱処理後の組織では、(a)に示す加熱処理前の組織よりも、酸化アルミニウム(写真で黒く写っている部分C)の粒径は増大していた。このことから、加熱処理の実施による濡れ性の向上は、酸化アルミニウムの粒径の変化に関与している可能性があることがわかった。
(b)に示す加熱処理後の組織では、(a)に示す加熱処理前の組織よりも、酸化アルミニウム(写真で黒く写っている部分C)の粒径は増大していた。このことから、加熱処理の実施による濡れ性の向上は、酸化アルミニウムの粒径の変化に関与している可能性があることがわかった。
そこで、酸化アルミニウムの粒径と静止接触角度との関係の確認を行った。この際には、
酸化アルミニウムの粒径が相違する複数の試験体について、静止接触角度の測定を行った。具体的には、上述した実施の形態の製造方法により製造されることで、酸化アルミニウムの粒径が0.8μm以上1.5μm以下に制御された試験体と、異なる製造方法により製造された結果、酸化アルミニウムの粒径が上記の範囲に属さない試験体とについて、高温下における静止接触角度の測定を行った。図12は、この測定により得られた酸化アルミニウムの粒径と静止接触角度との関係を示している。酸化アルミニウムの粒径が増大することに伴い、静止接触角度は低下しており、酸化アルミニウムの粒径が0.8μm以上1.5μm以下である範囲Fでは、静止接触角度は、半田の濡れ性が良好となる80〜100度になっていた。
酸化アルミニウムの粒径が相違する複数の試験体について、静止接触角度の測定を行った。具体的には、上述した実施の形態の製造方法により製造されることで、酸化アルミニウムの粒径が0.8μm以上1.5μm以下に制御された試験体と、異なる製造方法により製造された結果、酸化アルミニウムの粒径が上記の範囲に属さない試験体とについて、高温下における静止接触角度の測定を行った。図12は、この測定により得られた酸化アルミニウムの粒径と静止接触角度との関係を示している。酸化アルミニウムの粒径が増大することに伴い、静止接触角度は低下しており、酸化アルミニウムの粒径が0.8μm以上1.5μm以下である範囲Fでは、静止接触角度は、半田の濡れ性が良好となる80〜100度になっていた。
以上のことから、高温(350℃)下で優れた半田濡れ性を得るためには、酸化アルミニウムの粒径を0.8μm以上1.5μm以下の範囲に制御することが有効であり、この粒径の制御は、酸化チタンの添加量の調整、乾式ミリング法の実施、焼結温度の調整、焼結工程後における加熱処理の実施により実現できることが確認された。
また発明者らは、半田ごてチップの耐溶食性を確認する試験を行っている。この試験では、上述した実施の形態に示される製造方法により製造された半田ごてチップに、350℃のPbフリー半田を144時間載せた後、半田ごてチップが溶食された深さを測定した。この測定によれば、半田ごてチップの溶食の深さは20μm〜45μmになった。このことから、本実施の形態における半田ごてチップは、従来のチップに比して、3倍以上の耐溶食性を有していることを確認した。
本実施の形態によれば、半田ごてチップを構成する酸化アルミニウムセラミックスにおいて、酸化アルミニウムの粒径が、0.8μm以上1.5μm以下に制御される。これにより、半田の温度が350℃に至った際でも半田の濡れ性は良好になるため、幅広い作業温度下で作業上必要な半田の濡れ性を確保することができる。
また、半田ごてチップは、酸化アルミニウムセラミックスにより構成されていることから、耐溶食性に優れて長寿命であり、融点の高いPbフリー半田が用いられる場合であっても、Pbフリー半田による溶食を回避できる。
また、半田ごてチップを構成する酸化アルミニウムセラミックスに酸化チタンを含有させることで、酸化アルミニウムの粒子を均一に分散させることができる。これにより、酸化アルミニウム粒子の粒径を、上述の0.8μm以上1.5μm以下に制御する上で有利になる。
また焼結工程において、1000℃以上1200℃以下の温度で、酸化アルミニウム、鉄、酸化チタンの粉末が混合された混合原料粉末が焼結されることで、密実で十分な強度を有する酸化アルミニウムセラミックス片を得ることができる。また、焼結温度が上述の温度範囲に抑えられることで、消費電力を小さく抑えることができる。これにより、半田ごてチップの製造コストを安価に抑える上で有利になる。
また、酸化アルミニウムセラミックスを1000℃以上1200℃以下の温度で焼結した後に、常圧下において1300℃以上1400℃以下の温度で加熱することで、酸化アルミニウムの粒子を0.8μm以上1.5μm以下の範囲に制御することができる。
なお図10によれば、1300℃で焼結して加熱処理を行わなかった試験体についての静止接触角度は、1000℃で焼結を行った後、1300℃で加熱した試験体(本実施の形態における製造方法により製作された試験体)についての静止接触角度と、同程度になることがわかる。このことから、焼結温度が1300℃に設定された場合には、加熱処理を実施することなく、本実施の形態の製造方法により製造された半田ごてチップと類似の性質を有する半田ごてチップを得ることができる。また、上述の1300℃に焼結温度を設定する場合には、焼結後に加熱処理を行う必要がないため、製造工程の簡素化が図れる。
本発明の半田ごてチップは、融点の高いPbフリー半田が用いられる場合であっても、半田による溶食を回避できる。このため、Pbフリー半田を用いた半田付け作業に有効に利用することができる。また、半田付けの作業温度は、半田付け対象物の耐熱性や半田の種類等の作業条件に基づき設定されるが、本発明の半田ごてチップによれば、広範囲な温度範囲で十分な半田の濡れ性を確保できるため、様々な作業条件に対して適用可能である。
1 半田ごてチップ
Claims (5)
- 酸化アルミニウムに鉄を含有させた酸化アルミニウムセラミックスによって構成される半田ごてチップであって、
前記酸化アルミニウムセラミックスにおける酸化アルミニウムの粒径は、0.8μm以上1.5μm以下であることを特徴とする半田ごてチップ。 - 前記酸化アルミニウムセラミックスには、酸化アルミニウム粒子の分散材として酸化チタンが含有されていることを特徴とする請求項1に記載の半田ごてチップ。
- 酸化アルミニウム及び鉄の含有粉末と酸化アルミニウム粒子の分散材としての酸化チタンの粉末とを乾式混合粉砕することで、前記酸化アルミニウム、鉄、及び酸化チタンの粉末が混合された混合原料粉末を生成する粉砕工程と、
前記混合原料粉末を、所定圧力下で焼結する焼結工程とを具備することを特徴とする半田ごてチップの製造方法。 - 前記焼結工程では、1000度以上1200度以下の温度で、前記混合原料粉末を焼結することを特徴とする請求項3に記載の半田ごてチップの製造方法。
- 前記焼結工程によって得られた酸化アルミニウムセラミックスを常圧下で加熱する加熱工程をさらに具備し、
前記加熱工程では、1300度以上1400度以下の温度で、前記酸化アルミニウムセラミックスを加熱することを特徴とする請求項3又は4に記載の半田ごてチップの製造方法。
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JP2013157447A (ja) * | 2012-01-30 | 2013-08-15 | Kyocera Corp | 発光素子搭載用基板およびそれを用いた発光装置 |
CN103862126A (zh) * | 2012-12-18 | 2014-06-18 | 白光株式会社 | 焊料处理装置的远端构件 |
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2008
- 2008-12-18 JP JP2008322431A patent/JP2010142841A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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