JP2010134840A - 将来財務予測システム、将来財務予測方法及び将来財務予測プログラム - Google Patents

将来財務予測システム、将来財務予測方法及び将来財務予測プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】企業等の将来財務を精度良く、かつ中立的な立場で予測し、その結果として企業等の信用リスクを精度良く計測する。
【解決手段】財務諸表を作成する特定の法人の過去の財務データに基づき、特定の法人について将来期(t+1)の純資産の変化額を算出し、特定の法人について直前期(t)より前の期(t−1)から直前期(t)への財務データの変化を抽出し、直前期(t)の財務戦略パターンを選択し、財務戦略マップに基づいて直前期(t)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定し、将来期(t+1)の財務戦略パターンと直前期(t)の財務戦略パターンにより財務バランス係数を特定し、特定された財務バランス係数と将来期(t+1)の純資産の変化額に基づき、将来期(t+1)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して将来期(t+1)の貸借対照表を算出する。
【選択図】図1

Description

本発明は、将来財務予測システム、将来財務予測方法及び将来財務予測プログラムに関し、特に、過去の財務データから将来の財務データを予測する将来財務予測システム、将来財務予測方法及び将来財務予測プログラムに関する。
近年、企業等の財務諸表を作成する法人の将来の信用リスクを予測する技術の必要性が高まっている。非特許文献1には、算定者がインタビュー等で収集した企業の将来事業及び経営計画、経済見通し並びに競合状況などをもとに、将来事業計画を作成し、予測BS(貸借対照表)及びPL(損益計算書)が作成することが開示されている。非特許文献1では、個社の要因が大きく反映される半面、企業を取り巻く客観的環境(経済環境及び市場環境)を十分に反映することができておらず、また算定者(もしくは算定依頼者)の立場や主観的判断に依拠する部分が多い。結果として、描かれた企業の将来像が算定者にとって良い方向へとバイアスがかかりやすい、という欠点があった。
具体的には、売上高の予測では、過去の財務情報と企業側責任者とのインタビューから販売数量、単価及び経営見通し等を作成し、予測するという手法が用いられている(非特許文献2)。
また、特許文献1には、企業から公開された過去の財務諸表データに基づき、各種の財務指標値を算出する過去財務指標値算出手段を有する企業価値分析装置に関する技術が開示されている。特許文献1にかかる企業価値分析装置は、過去の財務諸表データおよび各種財務指標値に基づいて将来の財務諸表データを生成する将来財務諸表データ生成手段を備えるものである。特に、特許文献1にかかる将来財務諸表データ生成手段は、将来財務データ入力画面に対して、ユーザからの将来財務データの入力を受け付け、入力された将来財務データに基づき、将来財務諸表データを生成するものである。
内閣府経済社会総合研究所編、「本格的な展開期を迎えたわが国のM&A活動」(内閣府M&A研究会報告書)、平成18年10月、pp.128-130 枡谷克悦、『企業価値評価の実務』、清文社、2003年7月 特開2002−15108号公報
しかしながら、上述した非特許文献1及び2の手法では、精度の高い予測を行うことに限界がある。その理由は、現在のBSの構成とその変動が将来の企業の成長に与える影響が織り込まれていないためである。例えば、全ての勘定科目を個別に精緻に予測し、その積み上げとしてBS及びPLを作成する場合、個別の予測誤差も積み上がってしまうため、結果として予測されるBS及びPLが実際と比較して大きく異なる可能性がある。また、成長中の企業と縮小中の企業で予測手法を変えることが困難であるためである。さらに、事実上予測する会社の過去の財務情報だけに依存して将来の予測を行っており、同社の過去の情報と算定者(算定依頼者を含む)の立場と主観的情報に過度に依存してしまうためである。
また、特許文献1では、ユーザからの将来財務データの入力を必要とするため、繰り返し行うことにより精度を高くすることには、限界がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、企業等の将来財務を精度良く、かつ中立的な立場で予測し、その結果として企業等の信用リスクを精度良く計測できる将来財務予測システム、将来財務予測方法及び将来財務予測プログラムを提供することである。
本発明の第1の態様にかかる将来財務予測システムは、財務諸表を作成する特定の法人について過去の財務データから将来の財務データを予測するものである。過去の財務データを格納する財務データ記憶部と、連続する財務データの変化のパターンを特定する財務戦略パターンを格納する財務戦略パターン記憶部と、所定期の財務戦略パターンから当該所定期の翌期の財務戦略パターンへの推移を確率により定義した財務戦略マップを格納する財務戦略マップ記憶部と、所定期の財務戦略パターンと前記所定期の翌期の財務戦略パターンとの組み合わせに対応する、純資産の変化額に対する貸借対照表中の他項目の変化額を特定する財務バランス係数を格納する財務バランス係数記憶部と、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純資産の変化額を算出する将来純資産変化額算出手段と、前記特定の法人について将来期(t+1)の貸借対照表を算出する将来貸借対照表算出手段と、を備え、前記将来貸借対照表算出手段は、前記特定の法人について前記財務データ記憶部に格納された財務データに基づいて直前期(t)より前の期(t−1)から直前期(t)への財務データの変化を抽出し、前記財務戦略パターン記憶部から当該変化に対応する直前期(t)の財務戦略パターンを選択し、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップに基づいて当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定し、当該特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンと前記直前期(t)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数記憶部から財務バランス係数を特定し、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出手段により算出された将来期(t+1)の純資産の変化額に基づき、将来期(t+1)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して前記将来期(t+1)の貸借対照表を算出する。
このように、本発明にかかる将来財務予測システムは、財務戦略パターンを定義することで、過去の連続する二期における財務データの変化をパターンにより把握ができる。そして、財務戦略マップにより財務戦略パターンの推移を確率により定義することで、選択された財務戦略パターンから将来期の財務戦略パターンを特定することができる。さらに、財務戦略パターンの推移の組み合わせごとの財務バランス係数と、別途、過去の財務データから算出される将来期の純資産の変化額とを用いることで、将来の貸借対照表中の項目の変化額を算出することができる。そのため、企業等の将来財務を精度良く、かつ中立的な立場で予測し、その結果として企業等の信用リスクを精度良く計測できる。
また、前記財務バランス係数記憶部に格納された財務バランス係数は、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を特定することが望ましい。これにより、貸借対照表を流動資産、固定資産、負債及び純資産の4つに単純化することができ、全ての勘定科目を個別に予測する場合に比べて予測誤差を抑え、予測精度を高めることができる。
さらに、前記将来純資産変化額算出手段は、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純利益を算出し、当該将来期(t+1)の純利益に基づいて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出し、前記将来貸借対照表算出手段は、前記将来純資産変化額算出手段により算出された将来期(t+1)の純資産の変化額から当該特定された財務バランス係数により流動資産、固定資産及び負債の変化額を算出して前記将来期(t+1)の貸借対照表を算出することが望ましい。これにより、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を求めることができ、簡易に将来期の貸借対照表を算出することができる。
また、前記将来貸借対照表算出手段は、モンテカルロ法に基づくシミュレーションにより、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップから当該特定された直前期(t)の財務戦略パターンにより将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定するようにするとよい。これにより、確率に応じて複数の将来期の財務戦略パターンを用いて予測することができるため、予測精度を高めることができる。
また、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップは、景気の拡大期及び縮小期ごとに定義し、前記将来貸借対照表算出手段は、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップから当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンにより前記景気の拡大期及び縮小期に応じた将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定するとよい。これにより、成長中の企業等と縮小中の企業等で予測手法を変えることができ、企業等の状態に応じた適切な予測を行うことができる。
また、前記財務戦略パターン記憶部に格納された財務戦略パターンは、当期純利益、固定資産増分、有利子負債増分、流動資産増分、前記固定資産増分と前記有利子負債増分の絶対値比較、前記有利子負債増分と前記流動資産増分の絶対値比較、並びに、前記流動資産増分と前記固定資産増分の絶対値比較に関する条件の組み合わせの128通りであることが望ましい。これにより、適切な財務戦略パターンの選択することができる。
また、前記将来純資産変化額算出手段は、前記過去の財務データに基づき、個社ごとの売上高成長率の予測値を用いて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出するとよい。これにより、複数期に渡る過去の財務データを用いることで将来期の損益計算書について適切な予測を行うことができる。
また、前記将来純資産変化額算出手段は、前記過去の財務データ及びマクロ経済変数を用いて、個社ごとの売上高成長率の予測値を算出するとよい。これにより、1社の情報だけでなく、周囲の経済状況全般を加味した精度の高い予測を行うことができる。
また、前記将来純資産変化額算出手段は、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、前記将来純資産変化額算出手段により算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出手段により算出された将来期(t+1)の貸借対照表の整合性を調整する整合性調整手段をさらに備えることが望ましい。これにより、予測された将来期のBSとPLとの矛盾をなくすことができる。
また、前記将来純資産変化額算出手段は、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、前記将来純資産変化額算出手段により算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出手段により算出された将来期(t+1)の貸借対照表からキャッシュフロー計算書を算出するキャッシュフロー計算書算出手段をさらに備えることが望ましい。これにより、キャッシュフロー計算書を用いた将来の分析を行うことができる。
また、前記将来純資産変化額算出手段は、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、前記将来純資産変化額算出手段により算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出手段により算出された将来期(t+1)の貸借対照表からスコアリングモデルにより将来の倒産確率及び財務スコアを算出する算出手段をさらに備えることが望ましい。これにより、精度の高い格付けを行うことができる。
さらに、前記将来純資産変化額算出手段は、前記整合性調整手段により調整された前記将来期(t+1)の損益計算書及び貸借対照表に基づき、前記特定の法人について将来期(t+2)の損益計算書を算出し、前記将来貸借対照表算出手段は、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップに基づいて前記特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+2)の財務戦略パターンを特定し、当該特定された将来期(t+2)の財務戦略パターンと前記将来期(t+1)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数記憶部から財務バランス係数を特定し、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出手段により算出された将来期(t+2)の損益計算書に基づき、将来期(t+2)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して前記将来期(t+2)の貸借対照表を算出することが望ましい。これにより、t+2期以降の複数の将来期についての損益計算書及び貸借対照表を算出することができ、かつ、精度を高めることができる。
本発明の第2の態様にかかる将来財務予測方法は、財務諸表を作成する特定の法人について過去の財務データから将来の財務データを予測するものである。過去の財務データを入力する財務データ入力ステップと、連続する財務データの変化のパターンを特定する財務戦略パターンを入力する財務戦略パターン入力ステップと、所定期の財務戦略パターンから当該所定期の翌期の財務戦略パターンへの推移を確率により定義した財務戦略マップを入力する財務戦略マップ入力ステップと、所定期の財務戦略パターンと前記所定期の翌期の財務戦略パターンとの組み合わせに対応する、純資産の変化額に対する貸借対照表中の他項目の変化額を特定する財務バランス係数を入力する財務バランス係数入力ステップと、前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純資産の変化額を算出する将来純資産変化額算出ステップと、前記特定の法人について前記財務データ入力ステップにより入力された財務データに基づいて直前期(t)より前の期(t−1)から直前期(t)への財務データの変化を抽出し、前記財務戦略パターン入力ステップにより入力された財務戦略パターンの中から当該変化に対応する直前期(t)の財務戦略パターンを選択する直前期財務戦略パターン選択ステップと、前記財務戦略マップ入力ステップにより入力された財務戦略マップに基づいて当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する将来期財務戦略パターン特定ステップと、当該特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンと前記直前期(t)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数入力ステップにより入力された財務バランス係数の中から財務バランス係数を特定する財務バランス係数特定ステップと、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+1)の純資産の変化額に基づき、将来期(t+1)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して将来期(t+1)の貸借対照表を算出する将来期貸借対照表算出ステップと、を備える。これにより、企業等の将来財務を精度良く、かつ中立的な立場で予測し、その結果として企業等の信用リスクを精度良く計測できる。
また、前記財務バランス係数入力ステップにおいて入力される財務バランス係数は、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を特定することが望ましい。これにより、貸借対照表を流動資産、固定資産、負債及び純資産の4つに単純化することができ、全ての勘定科目を個別に予測する場合に比べて予測誤差を抑え、予測精度を高めることができる。
さらに、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純利益を算出し、当該将来期(t+1)の純利益に基づいて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出し、前記将来貸借対照表算出ステップは、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+1)の純資産の変化額から当該特定された財務バランス係数により流動資産、固定資産及び負債の変化額を算出して前記将来期(t+1)の貸借対照表を算出することが望ましい。これにより、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を求めることができ、簡易に将来期の貸借対照表を算出することができる。
また、前記将来期財務戦略パターン特定ステップは、モンテカルロ法に基づくシミュレーションにより、前記財務戦略マップ入力ステップにより入力された財務戦略マップから当該特定された直前期(t)の財務戦略パターンにより将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定するようにするとよい。これにより、確率に応じて複数の将来期の財務戦略パターンを用いて予測することができるため、予測精度を高めることができる。
また、前記財務戦略マップ入力ステップにおいて入力される財務戦略マップは、景気の拡大期及び縮小期ごとに定義し、前記将来期財務戦略パターン特定ステップは、前記財務戦略マップ入力ステップにより入力された財務戦略マップから当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンにより前記景気の拡大期及び縮小期に応じた将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定するとよい。これにより、成長中の企業等と縮小中の企業等で予測手法を変えることができ、企業等の状態に応じた適切な予測を行うことができる。
また、前記財務戦略パターン入力ステップにより入力された財務戦略パターンは、当期純利益、固定資産増分、有利子負債増分、流動資産増分、前記固定資産増分と前記有利子負債増分の絶対値比較、前記有利子負債増分と前記流動資産増分の絶対値比較、並びに、前記流動資産増分と前記固定資産増分の絶対値比較に関する条件の組み合わせの128通りであることが望ましい。これにより、適切な財務戦略パターンの選択することができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記過去の財務データに基づき、個社ごとの売上高成長率の予測値を用いて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出するとよい。これにより、複数期に渡る過去の財務データを用いることで将来期の損益計算書について適切な予測を行うことができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記過去の財務データ及びマクロ経済変数を用いて、個社ごとの売上高成長率の予測値を算出するとよい。これにより、1社の情報だけでなく、周囲の経済状況全般を加味した精度の高い予測を行うことができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表の整合性を調整する整合性調整ステップをさらに備えることが望ましい。これにより、予測された将来期のBSとPLとの矛盾をなくすことができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表からキャッシュフロー計算書を算出するキャッシュフロー計算書算出ステップをさらに備えることが望ましい。これにより、キャッシュフロー計算書を用いた将来の分析を行うことができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表からスコアリングモデルにより将来の倒産確率及び財務スコアを算出する算出ステップをさらに備えることが望ましい。これにより、精度の高い格付けを行うことができる。
さらに、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記整合性調整ステップにより調整された前記将来期(t+1)の損益計算書及び貸借対照表に基づき、前記特定の法人について将来期(t+2)の損益計算書を算出し、前記将来期財務戦略パターン特定ステップは、前記財務戦略マップ入力ステップにより入力された財務戦略マップに基づいて前記特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+2)の財務戦略パターンを特定し、前記財務バランス係数特定ステップは、当該特定された将来期(t+2)の財務戦略パターンと前記将来期(t+1)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数入力ステップにより入力された財務バランス係数の中から財務バランス係数を特定し、前記将来期貸借対照表算出ステップは、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+2)の損益計算書に基づき、将来期(t+2)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して前記将来期(t+2)の貸借対照表を算出することが望ましい。これにより、t+2期以降の複数の将来期についての損益計算書及び貸借対照表を算出することができ、かつ、精度を高めることができる。
本発明の第3の態様にかかる将来財務予測プログラムは、財務諸表を作成する特定の法人について過去の財務データから将来の財務データを予測する将来財務予測処理をコンピュータに実行させるものである。過去の財務データを財務データ記憶部へ格納する財務データ格納ステップと、連続する財務データの変化のパターンを特定する財務戦略パターンを財務戦略パターン記憶部へ格納する財務戦略パターン格納ステップと、所定期の財務戦略パターンから当該所定期の翌期の財務戦略パターンへの推移を確率により定義した財務戦略マップを財務戦略マップ記憶部へ格納する財務戦略マップ格納ステップと、所定期の財務戦略パターンと前記所定期の翌期の財務戦略パターンとの組み合わせに対応する、純資産の変化額に対する貸借対照表中の他項目の変化額を特定する財務バランス係数を財務バランス係数記憶部へ格納する財務バランス係数格納ステップと、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純資産の変化額を算出する将来純資産変化額算出ステップと、前記特定の法人について前記財務データ記憶部に格納された財務データに基づいて直前期(t)より前の期(t−1)から直前期(t)への財務データの変化を抽出し、前記財務戦略パターン記憶部に格納された財務戦略パターンの中から当該変化に対応する直前期(t)の財務戦略パターンを選択する直前期財務戦略パターン選択ステップと、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップに基づいて当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する将来期財務戦略パターン特定ステップと、当該特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンと前記直前期(t)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数記憶部から財務バランス係数を特定する財務バランス係数特定ステップと、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+1)の純資産の変化額に基づき、将来期(t+1)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して将来期(t+1)の貸借対照表を算出する将来期貸借対照表算出ステップと、を備える。
これにより、企業等の将来財務を精度良く、かつ中立的な立場で予測し、その結果として企業等の信用リスクを精度良く計測できる。
また、前記財務バランス係数記憶部に格納された財務バランス係数は、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を特定することが望ましい。これにより、貸借対照表を流動資産、固定資産、負債及び純資産の4つに単純化することができ、全ての勘定科目を個別に予測する場合に比べて予測誤差を抑え、予測精度を高めることができる。
さらに、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純利益を算出し、当該将来期(t+1)の純利益に基づいて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出し、前記将来貸借対照表算出ステップは、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+1)の純資産の変化額から当該特定された財務バランス係数により流動資産、固定資産及び負債の変化額を算出して前記将来期(t+1)の貸借対照表を算出することが望ましい。これにより、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を求めることができ、簡易に将来期の貸借対照表を算出することができる。
また、前記将来貸借対照表算出ステップは、モンテカルロ法に基づくシミュレーションにより、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップから当該特定された直前期(t)の財務戦略パターンにより将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定するようにするとよい。これにより、確率に応じて複数の将来期の財務戦略パターンを用いて予測することができるため、予測精度を高めることができる。
また、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップは、景気の拡大期及び縮小期ごとに定義し、前記将来貸借対照表算出ステップは、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップから当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンにより前記景気の拡大期及び縮小期に応じた将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定するとよい。これにより、成長中の企業等と縮小中の企業等で予測手法を変えることができ、企業等の状態に応じた適切な予測を行うことができる。
また、前記財務戦略パターン記憶部に格納された財務戦略パターンは、当期純利益、固定資産増分、有利子負債増分、流動資産増分、前記固定資産増分と前記有利子負債増分の絶対値比較、前記有利子負債増分と前記流動資産増分の絶対値比較、並びに、前記流動資産増分と前記固定資産増分の絶対値比較に関する条件の組み合わせの128通りであることが望ましい。これにより、適切な財務戦略パターンの選択することができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記過去の財務データに基づき、個社ごとの売上高成長率の予測値を用いて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出するとよい。これにより、複数期に渡る過去の財務データを用いることで将来期の損益計算書について適切な予測を行うことができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記過去の財務データ及びマクロ経済変数を用いて、個社ごとの売上高成長率の予測値を算出するとよい。これにより、1社の情報だけでなく、周囲の経済状況全般を加味した精度の高い予測を行うことができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表の整合性を調整する整合性調整ステップをさらに備えることが望ましい。これにより、予測された将来期のBSとPLとの矛盾をなくすことができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表からキャッシュフロー計算書を算出するキャッシュフロー計算書算出ステップをさらに備えることが望ましい。これにより、キャッシュフロー計算書を用いた将来の分析を行うことができる。
また、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表からスコアリングモデルにより将来の倒産確率及び財務スコアを算出する算出ステップをさらに備えることが望ましい。これにより、精度の高い格付けを行うことができる。
さらに、前記将来純資産変化額算出ステップは、前記整合性調整ステップにより調整された前記将来期(t+1)の損益計算書及び貸借対照表に基づき、前記特定の法人について将来期(t+2)の損益計算書を算出し、前記将来期財務戦略パターン特定ステップは、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップに基づいて前記特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+2)の財務戦略パターンを特定し、前記財務バランス係数特定ステップは、当該特定された将来期(t+2)の財務戦略パターンと前記将来期(t+1)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数記憶部から財務バランス係数を特定し、前記将来期貸借対照表算出ステップは、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+2)の損益計算書に基づき、将来期(t+2)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して前記将来期(t+2)の貸借対照表を算出することが望ましい。これにより、t+2期以降の複数の将来期についての損益計算書及び貸借対照表を算出することができ、かつ、精度を高めることができる。
本発明によれば、企業等の将来財務を精度良く、かつ中立的な立場で予測し、その結果として企業等の信用リスクを精度良く計測できる将来財務予測システム、将来財務予測方法及び将来財務予測プログラムを提供することができる。
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
<発明の実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1にかかる将来財務予測システム1を含む全体構成を示すブロック図である。将来財務予測システム1は、特定企業について過去の財務データから将来の財務データを予測するものである。将来財務予測システム1は、ネットワーク2を介して、クライアント端末3a及び3bと接続されている。将来財務予測システム1は、将来財務予測装置10、通信装置20及び記憶装置30を備える。
将来財務予測装置10は、汎用的なコンピュータシステムであり、図示しない構成としてCPU(中央演算装置)、並びに、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びHDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段がバスに接続されて構成されている。HDDは、不揮発性記憶装置であり、OS(Operating System)及び本発明の実施の形態1にかかる将来財務予測処理を実現する将来財務予測プログラムを格納する。また、CPUは、記憶装置30に対してデータの参照及び更新、通信装置20を制御してネットワーク2を介したクライアント端末3a及び3bとのデータの送受信、及び、将来財務予測処理等を制御する。将来財務予測装置10は、CPUがRAM、ROM、又はHDDに格納されたOS及び将来財務予測プログラムを読み込み、実行する。これにより、将来財務予測装置10は、将来財務予測処理を行うことができる。
尚、将来財務予測装置10は、1台である必要はなく、複数台に分散されたコンピュータにより処理されても構わない。また、将来財務予測装置10は、クライアント端末3a又は3bの機能を備えていても構わない。
通信装置20は、将来財務予測装置10に接続され、将来財務予測装置10のCPUからの指示を受け、ネットワーク2を介してクライアント端末3a及び3bとデータの送受信を行う。また、通信装置20は、クライアント端末3a及び3bからの要求を将来財務予測装置10へ伝える。
記憶装置30は、将来財務予測装置10に接続され、財務データ記憶部31、財務戦略パターン記憶部32、財務戦略マップ記憶部33、財務バランス係数記憶部34及びマクロ経済情報記憶部35を備える。記憶装置30は、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置であることがのぞましい。また、記憶装置30は、1台である必要はなく、複数台に分散された記憶装置であっても構わない。すなわち、財務データ記憶部31、財務戦略パターン記憶部32、財務戦略マップ記憶部33、財務バランス係数記憶部34及びマクロ経済情報記憶部35は、別々の記憶装置内に存在してもよい。または、財務データ記憶部31、財務戦略パターン記憶部32、財務戦略マップ記憶部33、財務バランス係数記憶部34及びマクロ経済情報記憶部35は、複数の記憶装置に分散して管理されても構わない。また、記憶装置30は、将来財務予測装置10に内蔵されたものであっても構わない。
財務データ記憶部31は、複数の期における過去の財務データを格納する記憶手段である。財務データ記憶部31に格納される財務データは、将来財務予測システム1による分析対象となる複数の企業における事業の決算書である。例えば、企業の財務諸表であり、少なくとも連続した過去3期分以上のデータである。また、財務データ記憶部31は、当該決算書である損益計算書311及び貸借対照表312を含む。尚、財務データは、これ以外のものを含むものとする。
財務戦略パターン記憶部32は、連続する二期における前記財務データの変化のパターンを特定する複数の財務戦略パターンを格納する記憶手段である。財務戦略パターンは、財務項目に関する条件を設定し、条件の組み合わせによって戦略区分として戦略番号を定義したものである。図2は、本発明の実施の形態1にかかる財務戦略パターンの定義の例を示す図である。図2の例では、条件として、当期純利益、固定資産増分、有利子負債増分、流動資産増分、前記固定資産増分と前記有利子負債増分の絶対値比較、前記有利子負債増分と前記流動資産増分の絶対値比較、並びに、前記流動資産増分と前記固定資産増分の絶対値比較という7つの財務項目の変化を定義している。そして、これら7つの条件について、各2通りの場合について合計128通りの組み合わせを戦略番号として定義している。これにより、将来財務予測装置10は、適切な財務戦略パターンの選択をすることができる。尚、財務戦略パターン記憶部32に格納された財務戦略パターンは、適宜、条件を変更可能であり、128通り以外、例えば64通りのパターン定義に基づいたマップを作成することもできる。そのため、財務戦略パターン記憶部32に格納される財務戦略パターンの種類及び条件はこれに限定されない。
財務戦略マップ記憶部33は、所定期の財務戦略パターンから当該所定期の翌期の財務戦略パターンへの推移を確率により定義した財務戦略マップを格納する記憶手段である。財務戦略マップは、財務戦略パターンの推移の発生確率をマッピングしたテーブルで表現したものである。図3は、本発明の実施の形態1にかかる財務戦略マップの例を示す図である。財務戦略マップは、縦軸に観測開始時点の戦略番号を、横軸に観測終了時点の戦略番号を配置する。そして、財務戦略マップは、観測開始時点の各財務戦略について観測終了時点での財務戦略がどのように変化するかの確率分布を表現している。ここで、観測開始時点と観測終了時点は、必ず一期以上離れている必要がある。つまり、観測終了時点は、所定の期である観測開始時点から一期以上後の期である。観測開始時点の戦略番号を選択した後、例えば、モンテカルロシミュレーションにおいて出される確率により、財務戦略マップから対応する観測終了時点の戦略番号が選択される。
尚、財務戦略マップは、サンプル全体だけではなく、業種別などユーザのニーズに応じた区分別に作成される。また、図3においては、横軸方向の戦略番号1乃至64と65乃至128の2つのグループでそれぞれ合計が100%となるように定義されている。これは、純利益が正の場合と負の場合で場合分けをしたためである。但し、図3における場合分けは、純利益に限定されず、後述する純資産の変化額であればよい。
財務バランス係数記憶部34は、所定期の財務戦略パターンと所定期の翌期の財務戦略パターンとの組み合わせに対応する、純資産の変化額に対する貸借対照表中の他項目の変化額を特定する財務バランス係数を格納する記憶手段である。財務バランス係数は、貸借対照表の項目を集約した項目に対して用いる。ここで、純資産の変化額とは、前期末(t)と当期末(t+1)との純資産の増減額である。また、純資産の変化額は、割合、量を含むものとする。尚、本発明の実施の形態1における以下の説明では、純資産の変化額の例として、損益計算書における当期純利益を用いる。但し、純資産の変化額は、これに限定されない。
図4は、本発明の実施の形態1にかかる財務バランス係数の概念を示す図である。図4に示すように、貸借対照表を固定資産F1、流動資産F2、負債F3及び純資産F4に4分割する。そして、財務バランス係数は、純資産F4の増減1単位に対する固定資産F1、流動資産F2及び負債F3の増減分を、戦略番号の組み合わせごとに測定して定めたものである。例えば、純資産F4の増減額に財務バランス係数341をかけることにより、固定資産F1の増減額が算出される。また、純資産F4の増減額に財務バランス係数342をかけることにより、流動資産F2の増減額が算出される。さらに、純資産F4の増減額に財務バランス係数343をかけることにより、負債F3の増減額が算出される。
つまり、財務バランス係数は、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を特定するものである。これにより、貸借対照表を流動資産、固定資産、負債及び純資産の4つに単純化することができ、全ての勘定科目を個別に予測する場合に比べて予測誤差を抑え、予測精度を高めることができる。尚、財務バランス係数は、図4に分割したもの以外に、負債を流動負債及び固定負債に分割し、流動資産を現金、預金、有価証券に分割した場合に、それぞれに対応する係数を定義してもよい。また、財務バランス係数は、上述した以外の分割であっても構わない。つまり、貸借対照表の複数の項目は、項目を集約した複数のグループのいずれかに分類されればよい。
図5は、本発明の実施の形態1にかかる財務バランス係数表の例を示す図である。財務バランス係数表は、財務戦略マップの通りの推移を辿った企業が、純利益をBSの主要項目にどのような比率で振り分けているか、平均的(標準的)な比率を示している。財務バランス係数は、財務戦略マップの各セルに対応するように生成される。
例えば、当期純利益が100万円と予測された企業があり、観測開始期の戦略番号が3であった企業が観測終了時点で戦略番号6を取ったという場合、図5の財務バランス係数344より、固定資産を143万円、流動資産を367万円、負債を410万円、それぞれ増加するというのが平均的な姿であることを示している。
尚、上述した財務戦略パターン、財務戦略マップ及び財務バランス係数は、将来期のBS及びPLを予測するための予測用パラメータである。また、財務戦略パターン記憶部32、財務戦略マップ記憶部33及び財務バランス係数記憶部34には、初期値として、標準の値が格納されている。
マクロ経済情報記憶部35は、マクロ経済や景気要因予測のファクターであるマクロ経済情報を格納する記憶手段である。マクロ経済情報は、例えば、日銀短観、景気動向指数等であればよい。
ネットワーク2は、インターネット、公衆網、専用線及び移動体通信網等の通信ネットワークであればよい。
クライアント端末3a及び3bは、将来財務予測システム1の通信装置20に対して、各種データを入力し、また、通信装置20から出力されるデータを画面等の表示装置に表示する端末である。クライアント端末3a及び3bは、例えば、通信装置20との通信機能を備えたパーソナルコンピュータであればよい。尚、将来財務予測システム1に接続されるクライアント端末の台数をこれに限定されない。
図6は、本発明の実施の形態1にかかる将来財務予測処理の流れを示すフローチャート図である。まず、将来財務予測装置10は、データの入力及びパラメータの設定を受け付ける(S10)。例えば、将来財務予測装置10は、クライアント端末3a又は3bからネットワーク2を介して、複数の企業の過去3年以上の財務データの入力を受け付ける。そして、将来財務予測装置10は、損益計算書311及び貸借対照表312を含む当該財務データを財務データ記憶部31へ格納する。また、将来財務予測装置10は、クライアント端末3a又は3bからネットワーク2を介して、財務戦略パターン、財務戦略マップ、財務バランス係数及びマクロ経済情報の設定を受け付ける。そして、将来財務予測装置10は、当該財務戦略パターンを財務戦略パターン記憶部32へ格納し、当該財務戦略マップを財務戦略マップ記憶部33へ格納し、当該財務バランス係数を財務バランス係数記憶部34へ格納し、当該マクロ経済情報をマクロ経済情報記憶部35へ格納する。
次に、将来財務予測装置10は、個社ごとの売上成長率の予測処理を行う(S20)。すなわち、将来財務予測装置10は、過去の財務データ及びマクロ経済変数を用いて、個社ごとの売上高成長率の予測値を算出する。具体的には、将来財務予測装置10は、過去の財務データ、マクロ経済指標、将来予測指標をもとに、将来期の売上高成長率を必要な年数分だけ作成する。これにより、1社の情報だけでなく、周囲の経済状況全般を加味した精度の高い予測を行うことができる。尚、売上成長率の予測処理の詳細は、図8及び図9を用いて、後述する。
ここで、本発明の実施の形態1にかかる売上成長率の予測処理の概念を説明するため、図7に、売上高伸び率における従来型モデルと本発明の予測モデルとの比較を示す。図7(a)は、従来型モデルを用いた場合における売上高伸び率の予測処理の概念を示す図である。まず、連続するt−5期、t−4期、・・・、t期の財務データから、各期における売上高伸び率を算出する。そして、t−5期からt期の平均値を算出する。図7(a)の直線の実線は、過去の平均値を示す。その後、当該直線を将来へ延長して、t+1期、t+2期以降の予測値とする。図7(a)の直線の破線は、将来の予測値を示す。この場合、t−5期からt−3期に比べ、t−2期からt期は、売上高伸び率が高いが、t期の直後であるt+1期の売上高伸び率の予測は、t期より低いものとなってしまう。つまり、従来型モデルでは、予測処理の精度が低い。
図7(b)は、本発明の実施の形態1にかかる予測モデルを用いた場合における売上高伸び率の予測処理の概念を示す図である。ここでは、まず、図7(a)と同様の過去5期分以上の財務データから、回帰分析により売上高伸び率を推計する。図7(b)には、直線回帰の例を示す。その後、当該直線回帰された直線を将来へ延長して、t+1期、t+2期以降の予測値とする。また、推計された将来のトレンドとパラメータ分布予測をシミュレーションに利用する。ここで、回帰分析には、過去の財務(固定資産伸び率)やマクロ情報(日銀短観)も利用して、成長率の平均値の予測だけでなく、その分布もシミュレーションに利用する。また、回帰分析は、直線回帰に限定されない。
図6に戻って、続いて、将来財務予測装置10は、将来期の貸借対照表及び損益計算書を算出する将来財務算出処理を行う(S30)。尚、将来財務算出処理の詳細は、図10及び図12乃至図19を用いて、後述する。
図11は、本発明の実施の形態1にかかる将来BS,PLの作成の概念を示す図である。将来財務予測装置10は、ステップS20で予測された将来期の売上高成長率、財務データ記憶部31に格納された財務データ、及び、予測パラメータを利用して、将来期でのBS、PLを多数のシナリオに基づき予測する。ここで、予測パラメータとは、財務戦略パターン、財務バランス係数等である。そして、将来財務予測装置10は、複数の将来期のBS及びPLを算出する。尚、通常は数千〜数十万の将来シナリオを準備する。ここで、予測には、例えば、モンテカルロシミュレーションを用いるとよい。例えば、図11に示すように、予測決算書であるBS及びPLを1年後、2年後、・・・、T年後まで複数年分作成される。
図6に戻って、続いて、将来財務予測装置10は、各種将来予測情報を算出する(S40)。すなわち、将来財務予測装置10は、予測された多数のBS及びPLを利用して各種将来予測情報としてPD(Probability of Default:デフォルト確率)等を推計する。例えば、将来財務予測装置10は、図11に示すように、予測された期ごとに推計PD及び格付けを推計する。尚、推計には、例えば、株式会社金融工学研究所製のCrediScore(登録商標)やRADAR(登録商標)などの信用力スコアリングモデルを用いることができる。また、図20は、本発明の実施の形態1にかかるPD分布と財務予測の概念を示す図である。これにより、要注意先となる確率なども計算可能となる。
言い換えれば、将来財務予測装置10は、将来損益計算書算出処理により算出された将来期の損益計算書及び将来貸借対照表算出処理により算出された将来期の貸借対照表から、スコアリングモデルにより将来の倒産確率及び財務スコアを算出する算出手段をさらに備えるものである。これにより、精度の高い格付けを行うことができる。
図8は、図6のステップS20に示した、本発明の実施の形態1にかかる売上高成長率の予測処理の流れを示すフローチャート図である。また、図9は、本発明の実施の形態1にかかる売上高成長率の予測の概念を示す図である。
まず、将来財務予測装置10は、個社の売上高成長率を算出する(S21)。具体的には、将来財務予測装置10は、財務データ記憶部31から財務データを取得し、過去の各時点(例えば、t−5期、t−4期、・・・、t期)の個社ごとの売上高成長率g(t)を算出する。ここで、t期売上高成長率g(t)は、例えば、以下の(1)式により算出される。
g(t) = ln{P(t)/P(t−1)} ・・・(1)
例えば、図9に示すg(t−2)、g(t−1)及びg(t)が算出される。尚、(1)式におけるP(t)及びP(t−1)は、それぞれt期及びt−1期における売上高を示す。
次に、将来財務予測装置10は、売上高成長率モデルを生成する(S22)。例えば、将来財務予測装置10は、例えば、以下の(2)式を用いて、t+1期の売上高成長率をt期までの過去の売上高成長率、及びマクロ変数を説明変数として回帰するモデルを構築する。言い換えれば、将来財務予測装置10は、過去数期分の売上高成長率及びマクロ経済情報であるマクロ指標を用いて、直近の売上高成長率を回帰分析し、各指標に対する感応度(パラメータ)を推計する。
g(t+1) = f(g(t)、g(t−1)、g(t−2)、m1、・・・、mx)+誤差項 ・・・(2)
ここで、g(t)は、t期売上高成長率、m1、・・・、mxは、マクロ経済情報に含まれるマクロ変数である。尚、マクロ経済情報は、t期日銀短観、t−1期日銀短観、景気一致指数及び企業物価指数等である。
このように、ステップS22において、将来財務予測装置10は、直近時点の売上高成長率を、過去数期分の売上高成長率、マクロ変数で回帰分析する。これにより前期までの情報をもとに直近時点の売上高成長率を予測するモデルを組み立てることができる。
そして、将来財務予測装置10は、生成された売上高成長率モデルから将来期(t+1期)の売上高成長率を算出する(S23)。すなわち、将来財務予測装置10は、直近時点の売上高成長率を予測するモデルをもとに、マクロ指標の予測値等を用いて一期後の売上高成長率を予測する。言い換えれば、将来財務予測装置10は、算出されたパラメータ及びマクロ指標の将来予測値を用いて、t+1期の売上高成長率を予測する。ここで、一期後の売上高成長率を予測する際に用いるマクロ指標の予測値を変化させることでストレステストを行うことが可能となる。
以降、将来財務予測装置10は、一期後の予測と同様に、予測期間分の売上高成長率を予測する。つまり、将来財務予測装置10は、t+1期の予測結果と予測されたパラメータをもとに、t+2期目の売上高成長率を予測する。以降、同様にして予測期間分の売上高成長率を予測する。または、将来財務予測装置10は、一期後の予測で用いた売上高成長率をそのまま用いることも可能である。
尚、売上高成長率の回帰モデルには誤差項の標準偏差も記憶しており、売上高の予測は平均値の予測だけではなく、分散を有した予測が可能である。この結果、売上高成長率の予測では乱数を利用したシミュレーションにより複数の将来予測を実施することが可能となる。
図10は、図6のステップS30に示した、本発明の実施の形態1にかかる将来財務算出処理の流れを示すフローチャート図である。まず、将来財務予測装置10は、将来損益計算書算出処理を行う(S31)。すなわち、将来財務予測装置10は、財務データ記憶部31に格納された過去の財務データに基づき、特定企業について将来期(t+1期)の純利益を含めた将来期の損益計算書を算出する。将来損益計算書算出処理は、過去の財務データに基づき、個社ごとの売上高成長率の予測値を用いて将来期の損益計算書を算出するものである。但し、将来損益計算書算出処理では、損益計算書の全ての項目を必ずしも算出する必要はなく、少なくとも将来期の純資産の変化額を算出すればよい。また、将来損益計算書算出処理では、損益計算書の項目の内、少なくともデフォルト確率等を算出するのに必要最小限の項目を算出するとよい。例えば、売上高、減価償却費、受取利息、支払利息及び当期純利益を算出するとよい。さらに、売上原価、売上総利益、販売管理費、営業利益、営業外収益、営業外費用、経常利益、特別利益、特別損失、税引前損益、法人税等、配当金、役員賞与及び繰越利益を含むことが望ましい。これにより、複数期に渡る過去の財務データを用いることで将来期の損益計算書について適切な予測を行うことができる。
ここで、図12は、本発明の実施の形態1にかかる将来損益計算書算出処理の流れを示すフローチャート図である。まず、将来財務予測装置10は、予測した売上高成長率から翌期(t+1期)の売上高を算出する(S311)。次に、将来財務予測装置10は、翌期の主要PL項目の値を算出する(S312)。主要PL項目とは、例えば、売上高利益率等である。そして、将来財務予測装置10は、例えば、売上高総利益率の過去三期の平均を利用して、t+1期の売上総利益を予測する。また、将来財務予測装置10は、負債額に利息率を掛けて支払利息率を計算する。
続いて、将来財務予測装置10は、翌期(t+1期)の当期純利益を算出する(S313)。図13は、本発明の実施の形態1にかかる予測PLの例を示す図である。このように、将来財務予測装置10は、ステップS20で予測された売上高成長率から売上高を算出する他、主要PL項目の値を算出することにより、最終的に、当期純利益を算出することで、予測PLを算出する。そして、将来財務予測装置10は、当期純利益に基づいて、翌期(t+1期)の純資産を算出する(S314)尚、ステップS314は、ステップS32における将来貸借対照表算出処理に含めても構わない。
図10に戻って、次に、将来財務予測装置10は、将来期の貸借対照表を算出する将来貸借対照表算出処理を行う(S32)。ここで、図10のステップS32に示した、将来貸借対照表算出処理におけるBSの単純化の概念について、図15を用いて説明する。発明が解決しようとする課題で上述したように、現時点の各勘定項目の全てから個別に精緻に将来時点の勘定科目を予測し、その積み上げとしてBS及びPLを作成する場合、個別の予測誤差も積み上がってしまうため、結果として予測されるBS及びPLが実際と比較して大きく異なる可能性がある。しかし、貸借対照表における勘定科目の一部をまとめた純資産の変化量は、それ以外の流動資産、固定資産及び負債の変化量と相関がある。そこで、本発明の実施の形態1では、貸借対照表における勘定科目を流動資産、固定資産、負債及び純資産の4区分に分類して予測を行う。また、純資産の変化量は、損益計算書の内、当期純利益に相当する。そのため、本発明の実施の形態1にかかる将来財務予測装置10は、まず、過去の財務データから将来期(t+1期)における純利益を算出し、当該純利益を純資産の変化量とする。次に、将来財務予測装置10は、財務戦略パターン及び財務戦略マップを用いて、過去の財務データの内、現時点の最新の期である直前期(t期)と直前期の翌期である将来期(t+1期)における財務戦略パターンごとに定義された財務バランス係数を特定する。その後、将来財務予測装置10は、純資産の変化量に対して特定された財務バランス係数をかけることで、例えば、流動資産、固定資産及び負債における変化量を算出する。これにより、将来期の財務データである貸借対照表を算出することができる。
例えば、図15(a)は、現時点の貸借対照表の資産サイドについて、現金・預金、売り掛け、・・・と個別の勘定科目について、将来時点の予測した場合を示す。一方、図15(b)は、貸借対照表における勘定科目を4区分に分類した場合の将来時点を予測した場合を示す。これにより、貸借対照表を流動資産、固定資産、負債及び純資産の4つに単純化することができ、全ての勘定科目を個別に予測する場合に比べて予測誤差を抑え、予測精度を高めることができる。
さらに、前記将来貸借対照表算出処理は、将来期損益計算書算出処理により算出された将来期の純資産の変化額を算出し、当該純資産の変化額から当該特定された財務バランス係数により流動資産、固定資産及び負債の変化額を算出して前記将来期の貸借対照表を算出することが望ましい。これにより、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を求めることができ、簡易に将来期の貸借対照表を算出することができる。つまり、予測処理の計算量を軽減し、処理コストを抑えることができる。
図14は、図10のステップS32に示した、本発明の実施の形態1にかかる将来貸借対照表算出処理の流れを示すフローチャート図である。まず、将来財務予測装置10は、現時点の最新の期である当期(t期)の財務戦略パターンを選択する(S321)。すなわち、将来財務予測装置10は、特定企業について財務データ記憶部31に格納された財務データに基づいて直前期(t期)より前の期(t−1期)から直前期(t期)への財務データの変化を抽出し、財務戦略パターン記憶部32から当該変化に対応する直前期(t)の財務戦略パターンを選択する。具体的には、まず、将来財務予測装置10は、過去の貸借対照表312の内、最新である直前期のt期と、t期より前のt−1期の貸借対照表312を財務データ記憶部31から取得する。そして、将来財務予測装置10は、t期とt−1期の貸借対照表312について、図2に示すような、7つの条件のそれぞれについて、いずれの場合に該当するかを判別し、財務戦略パターン記憶部32を参照して128パターンの中からt期における戦略番号を選択する。
図16は、本発明の実施の形態1にかかる財務戦略パターンの概念を示す図である。図16では、貸借対照表の勘定項目が流動資産、固定資産、負債及び純資産の4区分に単純化された場合に、流動資産が増加、固定資産が増加、負債が増加、純資産が増加である財務戦略パターンを示す。即ち、貸借対照表全体がふくらむケースである。ここでは、財務戦略パターンを戦略番号S1とする。戦略番号S1は、例えば、利益が上がっており、かつ借入による設備投資を実施している場合などが想定される。なお、戦略はさらに細分化されており、実際の当該財務戦略パターンでは、増加する金額が、流動資産>固定資産>負債のケースとなる。
図14に戻って、次に、将来財務予測装置10は、翌期(t+1期)の財務戦略パターンを特定する(S322)。すなわち、将来財務予測装置10は、財務戦略マップ記憶部33に格納された財務戦略マップに基づいて当該選択された直前期(t期)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+1期)のにおける財務戦略パターンを特定する。尚、翌期にどの財務戦略パターンを特定するかは、財務戦略マップの確率にしたがってシミュレーションにより決定される。具体的には、まず、将来財務予測装置10は、財務戦略マップ記憶部33を参照し、図3に示すような財務戦略マップからt期における戦略番号を観測開始期の戦略番号とする。そして、財務戦略マップにおける観測開始期の戦略番号に属する各確率に基づき、任意のシミュレーション、例えば、モンテカルロシミュレーションにより観測終了期である将来期のt+1期の戦略番号を特定する。すなわち、将来貸借対照表算出処理は、モンテカルロ法に基づくシミュレーションにより、財務戦略マップ記憶部33に格納された財務戦略マップから、ステップS321により特定された直前期における財務戦略パターンにより将来期における財務戦略パターンを特定する。これにより、確率に応じて複数の将来期の財務戦略パターンを用いて予測することができるため、予測精度を高めることができる。
図17は、本発明の実施の形態1にかかる財務戦略マップによる将来期財務戦略パターン特定の概念を示す図である。図17では、当期が戦略番号S1である会社が、翌期に戦略番号S2の戦略をとる確率が2%であることを示す。
図14に戻って、続いて、将来財務予測装置10は、財務バランス係数を特定する(S323)。すなわち、将来財務予測装置10は、当該特定された将来期(t+1期)の財務戦略パターンと直前期(t期)の財務戦略パターンにより財務バランス係数記憶部34から財務バランス係数を特定する。例えば、将来財務予測装置10は、財務バランス係数記憶部34の中から、t期及びt+1期の戦略番号から特定される財務バランス係数の組を取得する。図5の場合、将来財務予測装置10は、財務バランス係数344を取得する。
その後、将来財務予測装置10は、翌期(t+1期)の流動資産、固定資産及び負債の変化額を算出する(S324)。すなわち、将来財務予測装置10は、当該特定された財務バランス係数とステップS31における将来期損益計算書算出処理により算出された将来期(t+1期)の純利益に基づき、将来期(t+1期)における貸借対照表中の他の項目の変化額を算出して将来期(t+1期)の貸借対照表を算出する。つまり、将来財務予測装置10は、直前期(t期)から将来期(t+1期)への財務戦略パターンの推移に基づいて、将来期(t+1期)の貸借対照表を算出する。
図18は、本発明の実施の形態1にかかる財務バランス処理の概念を示す図である。ここで、ステップS324により算出された純資産増減額を120百万円とする。また、ステップS323において特定された将来期t+1期の戦略番号をS2とする。戦略番号S2は、流動資産増加、固定資産増加、負債増加及び純資産増加とする。そして、戦略番号S1から戦略番号S2へ推移の場合の財務バランス係数は、以下の(3)式とする。
流動資産増加:固定資産増加:負債増加:純資産増加額 = 2:2:3:1・・・(3)
このとき、純資産増加額120百万円に対して、流動資産増加、固定資産増加及び負債増加は、(3)式の財務バランス係数を用いて240百万円、240百万円及び360百万円と算出される。
図10に戻って、続いて、将来財務予測装置10は、PL項目とBS項目の整合性がないか否かを判定する(S33)。整合性があると判定した場合、ステップS34を行わずにステップS35へ進む。また、整合性がないと判定した場合、将来財務予測装置10は、PLとBSの整合性を合わせるために、収束計算を行う(S34)。すなわち、将来財務予測装置10は、ステップS31の将来損益計算書算出処理により算出された将来期(t+1期)の純利益に基づく損益計算書及びステップS32の将来貸借対照表算出処理により算出された将来期(t+1期)の貸借対照表の整合性を調整する。これにより、予測された将来期のBSとPLとの矛盾をなくすことができる。
例えば、減価償却費などのようにBS項目の値(固定資産)がPL項目(減価償却実施額)の値に及ぼす影響のバランスをとりながら、財務戦略に矛盾が発生しないよう均衡解を求め、最終的な将来予測財務とする。図19は、本発明の実施の形態1にかかる予測PLとBSの調整処理の概念を示す図である。図19では、有利子負債と支払い利息の関係を例示する。
図10に戻って、その後、将来財務予測装置10は、ステップS31乃至S34におけるシミュレーションが十分であるか否かを判定する(S35)。シミュレーションが十分であると判定した場合、将来財務予測装置10は、翌期の計算が不要であるか否かを判定する(S36)。すなわち、将来財務予測装置10は、必要な将来期について全て将来財務を算出したかを判定する。翌期の計算が不要であると判定した場合、将来財務予測装置10は、将来財務算出力を終了する。また、ステップS35において、シミュレーションが十分でないと判定した場合、ステップS31へ戻り、将来財務予測装置10は、ステップS31乃至S34における処理を繰り返す。このように、シミュレーションを繰り返すことにより、将来期(t+1期)の損益計算書及び貸借対照表の精度を高めることができる。
また、ステップS36において、翌期(t+2期)の計算が必要であると判定した場合、ステップS31へ戻り、将来財務予測装置10は、直前期をt+1期、将来期をt+2期としてステップS31乃至S35における処理を繰り返す。例えば、まず、ステップS31において、将来財務予測装置10は、ステップS34により整合性が調整された将来期(t+1)の損益計算書及び貸借対照表に基づき、特定企業について将来期(t+2)の損益計算書を算出する。次に、ステップS322において、将来財務予測装置10は、財務戦略マップ記憶部33に格納された財務戦略マップに基づいて、将来期(t+1)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+2)の財務戦略パターンを特定する。
続いて、ステップS323において、将来財務予測装置10は、特定された将来期(t+2)の財務戦略パターンと将来期(t+1)の財務戦略パターンにより財務バランス係数記憶部34から財務バランス係数を特定する。その後、ステップS324において、将来財務予測装置10は、特定された財務バランス係数とステップS31において算出された将来期(t+2)の損益計算書に基づき、将来期(t+2)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して将来期(t+2)の貸借対照表を算出する。
そして、将来財務予測装置10は、必要に応じて、t+3期以降についても同様に処理を繰り返す。これにより、複数の将来期についての損益計算書及び貸借対照表を算出することができ、かつ、精度を高めることができる。
このように、本発明にかかる将来財務予測システム1は、財務戦略パターンを定義することで、過去の連続する二期における財務データの変化をパターンにより把握ができる。そして、財務戦略マップにより財務戦略パターンの推移を確率により定義することで、選択された財務戦略パターンから将来期の財務戦略パターンを特定することができる。さらに、財務戦略パターンの推移の組み合わせごとの財務バランス係数と、別途、過去の財務データから算出される将来期の純利益からの純資産とを用いることで、将来の貸借対照表中の項目の変化額を算出することができる。
つまり、本発明の実施の形態1にかかる将来財務予測システム1は、企業の将来の信用リスクを予測するものであって、貸借対照表の構成を単純化して認識し、かつ、それらの変動をパターン化して認識することで、企業の将来のBS,PL等を予測し、倒産確率計算などを通して企業の信用リスクを予測することができる。
以上のことから、本発明の実施の形態1にかかる将来財務予測システム1により、企業の将来財務を精度良く、かつ中立的な立場で予測し、その結果として企業の信用リスクを精度良く計測できる。
<その他の発明の実施の形態>
尚、財務戦略マップは、企業の規模、業種又は景気拡大期及び縮小期に分けて準備し、マクロ指標から推測される景気の時期に応じて適切なテーブルを利用するとよい。
また、財務戦略マップ記憶部33に格納された財務戦略マップは、景気の拡大期及び縮小期ごとに定義し、将来貸借対照表算出処理において、財務戦略マップ記憶部33に格納された財務戦略マップから当該選択された直前期(t)における財務戦略パターンにより景気の拡大期及び縮小期に応じた将来期(t+1)における財務戦略パターンを特定するとよい。これにより、成長中の企業と縮小中の企業で予測手法を変えることができ、企業の状態に応じた適切な予測を行うことができる。
また、将来損益計算書算出処理により算出された将来期(t+1)の損益計算書及び将来貸借対照表算出処理により算出された将来期(t+1)の貸借対照表からキャッシュフロー計算書を算出するキャッシュフロー計算書算出手段をさらに備えることが望ましい。これにより、キャッシュフロー計算書を用いた将来の分析を行うことができる。
尚、上述した本発明の実施の形態1では、当期純利益を純資産の変化額として説明したが、これに限定されない。つまり、純資産の変化額は、株主資本等変動計算書上の当期変動額であればよい。当期変動額は、例えば、当期純損失、新株の発行若しくは自己株式の処分、剰余金の配当、自己株式の取得若しくは消却、企業結合による増加若しくは分割型の会社分割による減少、株式資本計数の変動、又は、連結範囲の変動若しくは持分法の適用範囲の変動等であればよい。尚、剰余金には、資本剰余金又は利益剰余金を含む。また、企業結合には、合併、会社分割、株式交換又は株式移転等を含む。また、株式資本計数の変動には、資本金から準備金若しくは剰余金への振り替え、準備金から資本金若しくは剰余金への振り替え、剰余金から資本金若しくは準備金への振り替え、又は、剰余金の内訳科目間の振り替え等を含む。
また、上述した本発明の実施の形態1にかかる将来損益計算書算出処理は、少なくとも純資産の変化額を算出する将来純資産変化額算出処理であってもよい。
尚、上述した本発明の実施の形態1にかかる財務戦略マップは、これに限定されない。
また、本発明の実施の形態1では、財務諸表を作成する特定の法人の一例として特定企業を対象として説明したが、これに限定されない。例えば、本発明の実施の形態1にかかる将来財務予測システム1は、学校法人又は医療法人等についての詳細の財務データを予測することも可能である。
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
本発明の実施の形態1にかかる将来財務予測システムを含む全体構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1にかかる財務戦略パターンの定義の例を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる財務戦略マップの例を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる財務バランス係数の概念を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる財務バランス係数表の例を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる将来財務予測処理の流れを示すフローチャート図である。 (a)従来型モデルを用いた場合における売上高伸び率の予測処理の概念を示す図である。(b)本発明の実施の形態1にかかる予測モデルを用いた場合における売上高伸び率の予測処理の概念を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる売上高成長率の予測処理の流れを示すフローチャート図である。 本発明の実施の形態1にかかる売上高成長率の予測の概念を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる将来財務算出処理の流れを示すフローチャート図である。 本発明の実施の形態1にかかる将来BS,PLの作成の概念を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる将来損益計算書算出処理の流れを示すフローチャート図である。 本発明の実施の形態1にかかる予測PLの例を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる将来貸借対照表算出処理の流れを示すフローチャート図である。 本発明の実施の形態1にかかるBSの単純化の概念を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる財務戦略パターンの概念を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる財務戦略マップによる将来期財務戦略パターン特定の概念を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる財務バランス処理の概念を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかる予測PLとBSの調整処理の概念を示す図である。 本発明の実施の形態1にかかるPD分布と財務予測の概念を示す図である。
符号の説明
1 将来財務予測システム
2 ネットワーク
3a クライアント端末
3b クライアント端末
10 将来財務予測装置
20 通信装置
30 記憶装置
31 財務データ記憶部
311 損益計算書
312 貸借対照表
32 財務戦略パターン記憶部
33 財務戦略マップ記憶部
34 財務バランス係数記憶部
35 マクロ経済情報記憶部
341 財務バランス係数
342 財務バランス係数
343 財務バランス係数
344 財務バランス係数
F1 固定資産
F2 流動資産
F3 負債
F4 純資産
S1 戦略番号
S2 戦略番号

Claims (36)

  1. 財務諸表を作成する特定の法人について過去の財務データから将来の財務データを予測する将来財務予測システムであって、
    過去の財務データを格納する財務データ記憶部と、
    連続する財務データの変化のパターンを特定する財務戦略パターンを格納する財務戦略パターン記憶部と、
    所定期の財務戦略パターンから当該所定期の翌期の財務戦略パターンへの推移を確率により定義した財務戦略マップを格納する財務戦略マップ記憶部と、
    所定期の財務戦略パターンと前記所定期の翌期の財務戦略パターンとの組み合わせに対応する、純資産の変化額に対する貸借対照表中の他項目の変化額を特定する財務バランス係数を格納する財務バランス係数記憶部と、
    前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純資産の変化額を算出する将来純資産変化額算出手段と、
    前記特定の法人について将来期(t+1)の貸借対照表を算出する将来貸借対照表算出手段と、を備え、
    前記将来貸借対照表算出手段は、
    前記特定の法人について前記財務データ記憶部に格納された財務データに基づいて直前期(t)より前の期(t−1)から直前期(t)への財務データの変化を抽出し、前記財務戦略パターン記憶部から当該変化に対応する直前期(t)の財務戦略パターンを選択し、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップに基づいて当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定し、当該特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンと前記直前期(t)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数記憶部から財務バランス係数を特定し、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出手段により算出された将来期(t+1)の純資産の変化額に基づき、将来期(t+1)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して前記将来期(t+1)の貸借対照表を算出する、
    ことを特徴とする将来財務予測システム。
  2. 前記財務バランス係数記憶部に格納された財務バランス係数は、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を特定することを特徴とする請求項1に記載の将来財務予測システム。
  3. 前記将来純資産変化額算出手段は、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純利益を算出し、当該将来期(t+1)の純利益に基づいて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出し、
    前記将来貸借対照表算出手段は、前記将来純資産変化額算出手段により算出された将来期(t+1)の純資産の変化額から当該特定された財務バランス係数により流動資産、固定資産及び負債の変化額を算出して前記将来期(t+1)の貸借対照表を算出する、
    ことを特徴とする請求項2に記載の将来財務予測システム。
  4. 前記将来貸借対照表算出手段は、モンテカルロ法に基づくシミュレーションにより、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップから当該特定された直前期(t)の財務戦略パターンにより将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の将来財務予測システム。
  5. 前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップは、景気の拡大期及び縮小期ごとに定義し、
    前記将来貸借対照表算出手段は、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップから当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンにより前記景気の拡大期及び縮小期に応じた将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の将来財務予測システム。
  6. 前記財務戦略パターン記憶部に格納された財務戦略パターンは、当期純利益、固定資産増分、有利子負債増分、流動資産増分、前記固定資産増分と前記有利子負債増分の絶対値比較、前記有利子負債増分と前記流動資産増分の絶対値比較、並びに、前記流動資産増分と前記固定資産増分の絶対値比較に関する条件の組み合わせの128通りであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の将来財務予測システム。
  7. 前記将来純資産変化額算出手段は、前記過去の財務データに基づき、個社ごとの売上高成長率の予測値を用いて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の将来財務予測システム。
  8. 前記将来純資産変化額算出手段は、前記過去の財務データ及びマクロ経済変数を用いて、個社ごとの売上高成長率の予測値を算出する、ことを特徴とする請求項7に記載の将来財務予測システム。
  9. 前記将来純資産変化額算出手段は、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、
    前記将来純資産変化額算出手段により算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出手段により算出された将来期(t+1)の貸借対照表の整合性を調整する整合性調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の将来財務予測システム。
  10. 前記将来純資産変化額算出手段は、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、
    前記将来純資産変化額算出手段により算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出手段により算出された将来期(t+1)の貸借対照表からキャッシュフロー計算書を算出するキャッシュフロー計算書算出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の将来財務予測システム。
  11. 前記将来純資産変化額算出手段は、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、
    前記将来純資産変化額算出手段により算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出手段により算出された将来期(t+1)の貸借対照表からスコアリングモデルにより将来の倒産確率及び財務スコアを算出する算出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の将来財務予測システム。
  12. 前記将来純資産変化額算出手段は、前記整合性調整手段により調整された前記将来期(t+1)の損益計算書及び貸借対照表に基づき、前記特定の法人について将来期(t+2)の損益計算書を算出し、
    前記将来貸借対照表算出手段は、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップに基づいて前記特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+2)の財務戦略パターンを特定し、当該特定された将来期(t+2)の財務戦略パターンと前記将来期(t+1)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数記憶部から財務バランス係数を特定し、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出手段により算出された将来期(t+2)の損益計算書に基づき、将来期(t+2)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して前記将来期(t+2)の貸借対照表を算出する、ことを特徴とする請求項9に記載の将来財務予測システム。
  13. 財務諸表を作成する特定の法人について過去の財務データから将来の財務データを予測する将来財務予測方法であって、
    過去の財務データを入力する財務データ入力ステップと、
    連続する財務データの変化のパターンを特定する財務戦略パターンを入力する財務戦略パターン入力ステップと、
    所定期の財務戦略パターンから当該所定期の翌期の財務戦略パターンへの推移を確率により定義した財務戦略マップを入力する財務戦略マップ入力ステップと、
    所定期の財務戦略パターンと前記所定期の翌期の財務戦略パターンとの組み合わせに対応する、純資産の変化額に対する貸借対照表中の他項目の変化額を特定する財務バランス係数を入力する財務バランス係数入力ステップと、
    前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純資産の変化額を算出する将来純資産変化額算出ステップと、
    前記特定の法人について前記財務データ入力ステップにより入力された財務データに基づいて直前期(t)より前の期(t−1)から直前期(t)への財務データの変化を抽出し、前記財務戦略パターン入力ステップにより入力された財務戦略パターンの中から当該変化に対応する直前期(t)の財務戦略パターンを選択する直前期財務戦略パターン選択ステップと、
    前記財務戦略マップ入力ステップにより入力された財務戦略マップに基づいて当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する将来期財務戦略パターン特定ステップと、
    当該特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンと前記直前期(t)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数入力ステップにより入力された財務バランス係数の中から財務バランス係数を特定する財務バランス係数特定ステップと、
    当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+1)の純資産の変化額に基づき、将来期(t+1)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して将来期(t+1)の貸借対照表を算出する将来期貸借対照表算出ステップと、
    を備える将来財務予測方法。
  14. 前記財務バランス係数入力ステップにおいて入力される財務バランス係数は、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を特定することを特徴とする請求項13に記載の将来財務予測方法。
  15. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純利益を算出し、当該将来期(t+1)の純利益に基づいて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出し、
    前記将来貸借対照表算出ステップは、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+1)の純資産の変化額から当該特定された財務バランス係数により流動資産、固定資産及び負債の変化額を算出して前記将来期(t+1)の貸借対照表を算出する、
    ことを特徴とする請求項14に記載の将来財務予測方法。
  16. 前記将来期財務戦略パターン特定ステップは、モンテカルロ法に基づくシミュレーションにより、前記財務戦略マップ入力ステップにより入力された財務戦略マップから当該特定された直前期(t)の財務戦略パターンにより将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する、
    ことを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の将来財務予測方法。
  17. 前記財務戦略マップ入力ステップにおいて入力される財務戦略マップは、景気の拡大期及び縮小期ごとに定義し、
    前記将来期財務戦略パターン特定ステップは、前記財務戦略マップ入力ステップにより入力された財務戦略マップから当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンにより前記景気の拡大期及び縮小期に応じた将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する、
    ことを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1項に記載の将来財務予測方法。
  18. 前記財務戦略パターン入力ステップにより入力された財務戦略パターンは、当期純利益、固定資産増分、有利子負債増分、流動資産増分、前記固定資産増分と前記有利子負債増分の絶対値比較、前記有利子負債増分と前記流動資産増分の絶対値比較、並びに、前記流動資産増分と前記固定資産増分の絶対値比較に関する条件の組み合わせの128通りであることを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載の将来財務予測方法。
  19. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記過去の財務データに基づき、個社ごとの売上高成長率の予測値を用いて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出する、ことを特徴とする請求項13乃至18のいずれか1項に記載の将来財務予測方法。
  20. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記過去の財務データ及びマクロ経済変数を用いて、個社ごとの売上高成長率の予測値を算出する、ことを特徴とする請求項19に記載の将来財務予測方法。
  21. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、
    前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表の整合性を調整する整合性調整ステップをさらに備えることを特徴とする請求項13乃至20のいずれか1項に記載の将来財務予測方法。
  22. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、
    前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表からキャッシュフロー計算書を算出するキャッシュフロー計算書算出ステップをさらに備えることを特徴とする請求項13乃至21のいずれか1項に記載の将来財務予測方法。
  23. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ入力ステップにより入力された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、
    前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表からスコアリングモデルにより将来の倒産確率及び財務スコアを算出する算出ステップをさらに備えることを特徴とする請求項13乃至22のいずれか1項に記載の将来財務予測方法。
  24. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記整合性調整ステップにより調整された前記将来期(t+1)の損益計算書及び貸借対照表に基づき、前記特定の法人について将来期(t+2)の損益計算書を算出し、
    前記将来期財務戦略パターン特定ステップは、前記財務戦略マップ入力ステップにより入力された財務戦略マップに基づいて前記特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+2)の財務戦略パターンを特定し、
    前記財務バランス係数特定ステップは、当該特定された将来期(t+2)の財務戦略パターンと前記将来期(t+1)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数入力ステップにより入力された財務バランス係数の中から財務バランス係数を特定し、
    前記将来期貸借対照表算出ステップは、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+2)の損益計算書に基づき、将来期(t+2)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して前記将来期(t+2)の貸借対照表を算出する、ことを特徴とする請求項21に記載の将来財務予測方法。
  25. 財務諸表を作成する特定の法人について過去の財務データから将来の財務データを予測する将来財務予測処理をコンピュータに実行させる将来財務予測プログラムであって、
    過去の財務データを財務データ記憶部へ格納する財務データ格納ステップと、
    連続する財務データの変化のパターンを特定する財務戦略パターンを財務戦略パターン記憶部へ格納する財務戦略パターン格納ステップと、
    所定期の財務戦略パターンから当該所定期の翌期の財務戦略パターンへの推移を確率により定義した財務戦略マップを財務戦略マップ記憶部へ格納する財務戦略マップ格納ステップと、
    所定期の財務戦略パターンと前記所定期の翌期の財務戦略パターンとの組み合わせに対応する、純資産の変化額に対する貸借対照表中の他項目の変化額を特定する財務バランス係数を財務バランス係数記憶部へ格納する財務バランス係数格納ステップと、
    前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純資産の変化額を算出する将来純資産変化額算出ステップと、
    前記特定の法人について前記財務データ記憶部に格納された財務データに基づいて直前期(t)より前の期(t−1)から直前期(t)への財務データの変化を抽出し、前記財務戦略パターン記憶部に格納された財務戦略パターンの中から当該変化に対応する直前期(t)の財務戦略パターンを選択する直前期財務戦略パターン選択ステップと、
    前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップに基づいて当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する将来期財務戦略パターン特定ステップと、
    当該特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンと前記直前期(t)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数記憶部から財務バランス係数を特定する財務バランス係数特定ステップと、
    当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+1)の純資産の変化額に基づき、将来期(t+1)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して将来期(t+1)の貸借対照表を算出する将来期貸借対照表算出ステップと、
    を備える将来財務予測プログラム。
  26. 前記財務バランス係数記憶部に格納された財務バランス係数は、純資産の変化額に対する流動資産、固定資産及び負債の変化額を特定することを特徴とする請求項25に記載の将来財務予測プログラム。
  27. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の純利益を算出し、当該将来期(t+1)の純利益に基づいて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出し、
    前記将来貸借対照表算出ステップは、前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+1)の純資産の変化額から当該特定された財務バランス係数により流動資産、固定資産及び負債の変化額を算出して前記将来期(t+1)の貸借対照表を算出する、
    ことを特徴とする請求項26に記載の将来財務予測プログラム。
  28. 前記将来貸借対照表算出ステップは、モンテカルロ法に基づくシミュレーションにより、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップから当該特定された直前期(t)の財務戦略パターンにより将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する、
    ことを特徴とする請求項25乃至27のいずれか1項に記載の将来財務予測プログラム。
  29. 前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップは、景気の拡大期及び縮小期ごとに定義し、
    前記将来貸借対照表算出ステップは、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップから当該選択された直前期(t)の財務戦略パターンにより前記景気の拡大期及び縮小期に応じた将来期(t+1)の財務戦略パターンを特定する、
    ことを特徴とする請求項25乃至28のいずれか1項に記載の将来財務予測プログラム。
  30. 前記財務戦略パターン記憶部に格納された財務戦略パターンは、当期純利益、固定資産増分、有利子負債増分、流動資産増分、前記固定資産増分と前記有利子負債増分の絶対値比較、前記有利子負債増分と前記流動資産増分の絶対値比較、並びに、前記流動資産増分と前記固定資産増分の絶対値比較に関する条件の組み合わせの128通りであることを特徴とする請求項25乃至29のいずれか1項に記載の将来財務予測プログラム。
  31. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記過去の財務データに基づき、個社ごとの売上高成長率の予測値を用いて前記将来期(t+1)の純資産の変化額を算出する、ことを特徴とする請求項25乃至30のいずれか1項に記載の将来財務予測プログラム。
  32. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記過去の財務データ及びマクロ経済変数を用いて、個社ごとの売上高成長率の予測値を算出する、ことを特徴とする請求項31に記載の将来財務予測プログラム。
  33. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、
    前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表の整合性を調整する整合性調整ステップをさらに備えることを特徴とする請求項25乃至32のいずれか1項に記載の将来財務予測プログラム。
  34. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、
    前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表からキャッシュフロー計算書を算出するキャッシュフロー計算書算出ステップをさらに備えることを特徴とする請求項25乃至33のいずれか1項に記載の将来財務予測プログラム。
  35. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記財務データ記憶部に格納された過去の財務データに基づき、前記特定の法人について将来期(t+1)の損益計算書をさらに算出し、
    前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された前記将来期(t+1)の損益計算書及び前記将来貸借対照表算出ステップにより算出された将来期(t+1)の貸借対照表からスコアリングモデルにより将来の倒産確率及び財務スコアを算出する算出ステップをさらに備えることを特徴とする請求項25乃至34のいずれか1項に記載の将来財務予測プログラム。
  36. 前記将来純資産変化額算出ステップは、前記整合性調整ステップにより調整された前記将来期(t+1)の損益計算書及び貸借対照表に基づき、前記特定の法人について将来期(t+2)の損益計算書を算出し、
    前記将来期財務戦略パターン特定ステップは、前記財務戦略マップ記憶部に格納された財務戦略マップに基づいて前記特定された将来期(t+1)の財務戦略パターンに対応する将来期(t+2)の財務戦略パターンを特定し、
    前記財務バランス係数特定ステップは、当該特定された将来期(t+2)の財務戦略パターンと前記将来期(t+1)の財務戦略パターンにより前記財務バランス係数記憶部から財務バランス係数を特定し、
    前記将来期貸借対照表算出ステップは、当該特定された財務バランス係数と前記将来純資産変化額算出ステップにより算出された将来期(t+2)の損益計算書に基づき、将来期(t+2)における貸借対照表中の他項目の変化額を算出して前記将来期(t+2)の貸借対照表を算出する、ことを特徴とする請求項33に記載の将来財務予測プログラム。
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