JP2010106409A - 耐熱性筒状シームレス編物 - Google Patents

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Abstract

【課題】肉厚で断熱性が高く、円筒形状を保ちやすく、かつ製造コストの安い耐熱性筒状シームレス編物を提供する。
【解決手段】本発明の耐熱性筒状シームレス編物20は、耐熱性繊維を含む紡績糸と、ループ状耐熱性繊維を含む意匠撚糸で構成され、外面22に前記耐熱性繊維を含む紡績糸が前記意匠撚糸に比較して相対的に多く存在し、内面21に前記意匠撚糸が前記耐熱性繊維を含む紡績糸に比較して相対的に多く存在し、前記ループ状耐熱性繊維が密に詰まった状態であり、前記筒状シームレス編物断面の切断面23は、内面の前記ループ状耐熱性繊維が外面に反転している。
【選択図】図3

Description

本発明は、断熱性、耐熱性、防炎性、難燃性の高い耐熱性筒状シームレス編物に関する。
従来から耐熱性筒状シームレス部材は、モーター部品用保護スリーブ、高熱パイプなどの保護カバー、ホース、パッキング、ガスケット等の産業用途に使用されている。例えばモーター部品用保護スリーブは、モーター部品(例えばコイル、ワイヤー、配線類、結束紐等)を包み込んだ状態でモーターに組み込まれる。近年、内燃エンジンと蓄電池・電動モーターを併用したハイブリッドカーが多くなり、モーター部品用保護スリーブの需要も高い。
従来の保護スリーブなどは、円筒状の組紐からなる保護スリーブが用いられている。モーター類の中でも地球温暖化防止の観点から近年特に注目を浴びている電気自動車、またはハイブリット車(内燃エンジンと電動モーターを組み合わせたもの)に用いられるモーターは駆動用、発電用、充電用等があるが、瞬時の加速・減速に対応しなければならず、とりわけ高効率であることが要求され、使用条件が過酷になっている。その結果、モーターからの発熱が高くなり、モーターを構成する材料は高温かつ長時間の使用に耐えられるものでなければならない。このような背景から、モーター部品用保護スリーブとして耐熱性繊維を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
しかし上記特許文献1〜3は、通常のマルチフィラメント糸または紡績糸を用いて中空の組紐とするものであり、組紐は製造コストが高く、厚さが薄くて断熱性が低く、円筒形状はつぶれ易いという問題があった。
特開2001−123324号公報 特開2001−248075号公報 特開2007−063730号公報
本発明は、肉厚で断熱性が高く、円筒形状を保ちやすく、かつ製造コストの安い耐熱性筒状シームレス編物を提供する。
本発明の耐熱性筒状シームレス編物は、耐熱性繊維を含む紡績糸と、ループ状耐熱性繊維を含む意匠撚糸で構成される耐熱性筒状シームレス編物であって、外面に前記耐熱性繊維を含む紡績糸が前記意匠撚糸に比較して相対的に多く存在し、内面に前記意匠撚糸が前記耐熱性繊維を含む紡績糸に比較して相対的に多く存在し、前記ループ状耐熱性繊維が密に詰まった状態であり、前記筒状シームレス編物断面の切断面は、内面の前記ループ状耐熱性繊維が外面に反転していることを特徴とする。
本発明の耐熱性筒状シームレス編物は、外面に耐熱性繊維を含む紡績糸が相対的に多く存在し、内面に意匠撚糸が相対的に多く存在し、ループ状耐熱性繊維が密に詰まった状態であり、前記筒状シームレス編物断面の切断面は、内面の前記ループ状耐熱性繊維が外面に反転している構成とすることにより、肉厚で断熱性が高く、円筒形状を保ちやすく、かつ製造コストの安い耐熱性筒状シームレス編物を提供できる。すなわち、ループ状耐熱性繊維は空気を多く含み、この空気は対流しないので断熱性が高い。また、筒状シームレス編物を断面方向に切断したとき、ループ状耐熱性繊維が外面に反転するほどループ密度が高いため、圧縮してもつぶれにくい。さらに、ループ状耐熱性繊維が外面に反転するので、ほつれ防止などの端面処理をしなくてもほつれは生じない。
本発明において耐熱性繊維は、融点又は分解点が約350℃以上、好ましくは400℃以上であれば、無機繊維又は有機繊維のいかなるものであってもよい。好ましくはアラミド繊維(パラ系アラミドの融点又は分解点:480〜570℃、メタ系同:400〜430℃)、ポリベンズイミダゾール繊維(ガラス転移温度:400℃以上)、ポリベンズオキサゾール繊維(融点又は分解温度:650℃)、ポリベンズチアゾール繊維(融点又は分解温度:650℃)、ポリアミドイミド繊維(融点又は分解温度:350℃以上)、メラミン繊維(融点又は分解温度:400℃以上)、ポリイミド繊維(融点又は分解温度:350℃以上)、ポリアリレート繊維(融点又は分解温度:400℃以上)及び炭素繊維(融点又は分解温度:2000〜3500℃)から選ばれる少なくとも一つである。これらの繊維は編物又は織物に加工しやすい。繊度は綿番手で1〜50番程度が好ましい。単糸で使用することもできるし、複数本引き揃えるか、あるいは合撚して使用できる。
前記意匠撚糸は、一例として芯糸とループヤーンと押さえ糸で構成され、前記芯糸とループヤーンと押さえ糸はいずれも耐熱性繊維を使用するのが好ましい。芯糸に対してループヤーンは2〜10倍オーバーフィードして作成すると、芯糸の周囲にあらゆる方向にランダムにループが形成できる。意匠撚糸の繊度は綿番手で0.5〜50番程度が好ましい。単糸で使用することもできるし、複数本引き揃えるか、あるいは合撚して使用できる。
本発明の編物は、多層構造にし、一方の面に耐熱性繊維を含む紡績糸を多く存在させ、他方の面に意匠撚糸を多く存在させるようにして形成する。このような編物の組織としては、ダブルニット、ダブルジャージ、両面編地、ダブルラッシェル、二重編物、シングルジャージ及びスムース編物から選ばれる少なくとも一つの組織がある。
前記筒状シームレス編物を100重量%としたとき、意匠撚糸の割合が50重量%を超え90重量%未満、紡績糸の割合が10重量%を超え50重量%未満であることが好ましい。さらに好ましくは、意匠撚糸の割合が52〜85重量%、紡績糸の割合が15〜48重量%の範囲である。前記の範囲であれば、筒状シームレス編物の内面にループをより多く存在させることができる。加えて、表糸に使用する紡績糸の割合が意匠撚糸の割合より相対的に少ないので、編物全体としてストレッチ性(伸び)を大きくでき、かつ筒状シームレス編物をふんわりとした丸形状に保持できる利点がある。
前記耐熱性筒状シームレス編物の両端を縫製により繋ぎ、ループ状に形成してもよい。この形状はパッキング(ガスケット)として有用である。
本発明の編物の厚さは0.3mm以上10mm以下が好ましく、さらに0.5mm以上6mm以下が好ましい。前記の厚さであれば、耐熱性はさらに高くなる。また、前記耐熱性筒状シームレス編物の単位長さ当たりの重量は50〜1000g/mの範囲であることが好ましい。前記の範囲の重量であれば、実用的な円筒部材とすることができる。好ましくは60〜600g/mの範囲である。
さらに、前記耐熱性筒状シームレス編物は、破断に至らない荷重における伸長率が5〜20%であることが好ましい。前記の範囲であれば、フレキシビリティーと可撓性が実用的に十分である。また、パッキング(ガスケット)に適用する場合、伸ばしたまま緊張状態で対象物に設置したり、一たん伸ばしその後に伸びを弛緩させて設置することもできる。前記において「破断に至らない荷重」とは、手で伸ばして機械に取り付けることができる程度の荷重を含む。
以下図面を用いて説明する。図1Aは本発明で使用する一実施例の意匠撚糸1の側面図、図1Bは同断面図である。この意匠撚糸1は、芯糸2とループヤーン3とその上からの押さえ糸4で構成される。芯糸2、ループヤーン3、押さえ糸4はともに耐熱性繊維である。
図2A−Bは本発明の一実施例における両面編物10の組織図である。図2A−Bに示すように、耐熱性繊維からなる紡績糸11と意匠撚糸12とが引き揃えられ、紡績糸11が筒状シームレス編物の外面に配置され、意匠撚糸12が内面に配置される。意匠撚糸12には多数のループ13が突出しており、両面編物10の内面に多く存在している。これにより空隙を多く含むことになり、断熱作用を発揮する。外面には耐熱性繊維からなる紡績糸11が多く存在するので、耐熱性、防炎性、難燃性を発揮する。
この筒状シームレス編物は、例えば島精機社製の全自動横編機を使用して編成できる。この編機は編針列が2列あり、1列目の終わりの編針で2列目の最初の編針に受け渡し、2列目の終わりの編針で1列目の最初の編針に受け渡して筒状シームレス編物を編成する。この編機自体は手袋編機や靴下編機として使用されている。
この編機のうち、本発明に特に好適なのは、3〜7ゲージ(1インチ間に編針が3〜7本)の編機である。本発明ではループヤーン(花糸)を含む意匠撚糸を使用するため、見掛け上の糸の太さはかなり太い。このため、針密度は3〜7ゲージの範囲の編機が好ましい。
図3は本発明の一実施例における筒状シームレス編物20の外観を示す斜視図である。この筒状シームレス編物20の外面22は、ループ繊維が僅かに露出しているが、紡績糸がリッチである。また、内面21は意匠撚糸のループ繊維が密に詰まった状態であり、切断面23は、内面のループ繊維が外面に反転している。このループ繊維の反転により、切断面はほつれにくい。この筒状シームレス編物20は、この状態でモーター部品用保護スリーブ、電線保護カバー、高熱パイプなどの保護カバー、ホース等に適用できる。
図4A−Bは本発明の一実施例における筒状シームレス編物20の両端24,25を縫製により繋ぎ合わせてループ状のパッキング30に形成した例である。まず、図4Aの状態にして、両端24,25の反転を伸ばし、次に図4Bに示すようにミシン縫いする。縫製部26は扁平化するが、それ以外の部分は広げると円筒状に保持できる。
図5A−Bは本発明の別の実施例における筒状シームレス編物20の両端24,25を縫製により繋ぎ合わせてループ状のパッキング30に形成した例である。まず、図5Aの状態にして、両端24,25の反転部分を横に向けて突出させ鍔状にし、次に図5Bに示すように突出した部分を縫い合わせるか、又は縁をかがり縫いする。これらの縫製もミシン縫いですることができる。これにより縫製部27は中空の円筒状に保持できる。
図6は、図4B又は図5Bのループ状パッキング30を、金属パイプ32の溶射装置の回転部に設置した例である。金属パイプ32の固定部31とハウジング部33との間に設置し、回転部の隙間34に溶射物が浸入しないように保護する。通常、溶射物は矢印a,bのように金属パイプ32に向かって溶射されるが、矢印c,dに示すような向きに溶射されたときに、ループ状パッキング30が遮蔽材として機能する。
以下実施例を用いて、さらに本発明を具体的に説明する。
(1)意匠撚糸
芯糸、押さえ糸、及びループヤーン(花糸)としてメタ系アラミド繊維糸を使用した。ループヤーン(花糸)は綿番手(以下同じ)の40番単糸(40/1)を3本、芯糸は40番単糸(40/1)を1本、押さえ糸はトータル繊度83.3dtex、フィラメント数36本の加工糸を1本使用し、芯糸に対してループヤーン(花糸)を約5倍オーバーフィードさせて撚糸機に供給して絡みつけ、絡みつけと同時にその上から押さえ糸を撚り数約1000回/mで実撚を掛けた。得られた意匠撚糸は、図1A−Bに示すとおりであり、ループの平均突出長さ3mm、1インチあたり平均70個のループが360°の角度であらゆる角度に突出していた。この意匠撚糸の繊度は2.3530番(綿番手、2260デニール)であった。
(2)耐熱性繊維紡績糸
市販のメタ系アラミド繊維の紡績糸20番単糸(20/1)を使用した。
(実施例1)
島精機社製の全自動横編機(7ゲージ)を使用して筒状シームレス編物を編成した。前記意匠撚糸を1本(59重量%)と、前記耐熱性繊維紡績糸を6本(41重量%)の割合で供給し編成した。編物構造は図2A−Bに示すとおりである。この編物の模式的斜視図を図3に示す。この編物の外径は40mm、内径は30mm、厚さ5mm、重量は62g/mであった。
この編物を図4A−B又は図5A−Bのように縫製してループ状パッキングに形成した。周は750mmであり、手で伸ばすと100mm伸ばすことができ、図6に示す溶射装置に嵌め込むことができた。このループ状パッキング30は、回転部の隙間34に溶射物が浸入しないように保護することができ、遮蔽材としての好適であった。
(実施例2)
実施例1において、前記意匠撚糸を1本(55重量%)と、前記耐熱性繊維紡績糸を7本(45重量%)の割合で供給し編成した以外は実施例1と同様に実施した。この編物の外径は35mm、内径は25mm、厚さ5mm、重量は80g/mであった。この筒状シームレス編物は耐熱ホースカバーとして有用であった。
(実施例3)
実施例1において、前記意匠撚糸を1本(55重量%)と、前記耐熱性繊維紡績糸を7本(45重量%)の割合で供給し編成した以外は実施例1と同様に実施した。この編物の外径は55mm、内径は45mm、厚さ5mm、重量は112g/mであった。この筒状シームレス編物も耐熱ホースカバーとして有用であった。
本発明の編物は、例えばモーター部品用保護スリーブ、電線保護カバー、高熱パイプなどの保護カバー、ホース、パッキング、ガスケット、絶縁スリーブ、遮蔽材、遮音材、消音材、保温材、断熱材、補強材、フィルター等の用途としても有用である。
図1Aは本発明の一実施例における意匠撚糸の側面図、図1Bは同断面図である。 図2A−Bは本発明の一実施例における両面編物の組織図である。 図3は本発明の一実施例における筒状シームレス編物の外観を示す斜視図である。 図4A−Bは本発明の一実施例における筒状シームレス編物の両端を縫製により繋ぎ合わせてループ状のパッキングに形成した斜視図である。 図5A−Bは本発明の別の実施例における筒状シームレス編物の両端を縫製により繋ぎ合わせてループ状のパッキングに形成した斜視図である。 図6は、図4B又は図5Bのループ状パッキングを金属パイプの溶射装置の回転部に設置した断面図である。
符号の説明
1 意匠撚糸
2 芯糸
3 ループヤーン
4 押さえ糸
10 両面編物
11 耐熱性繊維紡績糸
12 意匠撚糸
13 ループ
20 筒状シームレス編物
21 内面
22 外面
23 切断面
24,25 筒状シームレス編物20の端部
26,27 縫製部
30 ループ状パッキング
31 金属パイプの固定部
32 金属パイプ
33 ハウジング部
34 回転部の隙間

Claims (7)

  1. 耐熱性繊維を含む紡績糸と、ループ状耐熱性繊維を含む意匠撚糸で構成される耐熱性筒状シームレス編物であって、
    外面に前記耐熱性繊維を含む紡績糸が前記意匠撚糸に比較して相対的に多く存在し、
    内面に前記意匠撚糸が前記耐熱性繊維を含む紡績糸に比較して相対的に多く存在し、前記ループ状耐熱性繊維が密に詰まった状態であり、
    前記筒状シームレス編物断面の切断面は、内面の前記ループ状耐熱性繊維が外面に反転していることを特徴とする耐熱性筒状シームレス編物。
  2. 前記筒状シームレス編物を100重量%としたとき、意匠撚糸の割合が50重量%を超え90重量%未満、紡績糸の割合が10重量%を超え50重量%未満である請求項1に記載の耐熱性筒状シームレス編物。
  3. 前記耐熱性繊維は、アラミド繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリベンズチアゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維及び炭素繊維から選ばれる少なくとも一つの糸である請求項1に記載の耐熱性筒状シームレス編物。
  4. 前記意匠撚糸は、芯糸とループヤーンと押さえ糸で構成され、前記芯糸とループヤーンと押さえ糸はいずれも耐熱性繊維である請求項1又は3に記載の耐熱性筒状シームレス編物。
  5. 前記耐熱性筒状シームレス編物は、ダブルニット、ダブルジャージ、両面編地、ダブルラッシェル、二重編物、シングルニット及びスムース編物から選ばれる少なくとも一つの組織である請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱性筒状シームレス編物。
  6. 前記耐熱性筒状シームレス編物の両端を縫製により繋ぎ、ループ状に形成した請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱性筒状シームレス編物。
  7. 前記耐熱性筒状シームレス編物の単位長さ当たりの重量は50〜1000g/mの範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の耐熱性筒状シームレス編物。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018164967A (ja) * 2017-03-28 2018-10-25 艶金化学繊維株式会社 作業ロボット用耐熱性保護カバー
CN109722778A (zh) * 2018-12-29 2019-05-07 江苏工程职业技术学院 一种超保暖抗低温长毛绒面料的生产方法

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