JP2010090878A - 波浪発電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な浮遊形式で波浪の上下運動エネルギーを効率よく電力に変換することのできる波浪発電装置を提供する。
【解決手段】フロート1の中心位置に相反転方式水力発電ユニット2が配置される。この水力発電ユニット2のケーシングに、剛体であるアーム3が固定され、アーム3の先端にフレキシブルジョイント5が設けられ、フレキシブルジョイント5とフロート1をハンガーロッド4でほぼ垂直に連結することにより、水力発電ユニット2がフロート1の上下動に応じて上下動するように構成される。本装置では波浪1周期の位置にフロート1を対で設けるので、その中間位置の波浪の上下運動はフロート1の運動と逆になる。すなわち、従来方式に比べて、水力発電ユニット2に与えられる相対速度は2倍、動力は8倍となる。また、上述した2倍の上下速度に加えて相反転ランナの採用により、4倍の相対回転速度が得られ、起電圧の4倍による送電ロスが減少できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、クリーンエネルギーとしての波浪(波力)を利用した波浪発電装置に関する。
持続可能な循環型社会の構築を目指してエネルギー問題を着実に解決する必要がある。地球表面の2/3を覆っている海洋は、世界の陸地に存在する包蔵水力19.4兆kWhより理論上3桁以上のエネルギーを包蔵している。その未利用潜在能力は一面、希望を持たせてくれるように錯覚するが、従来技術の延長線上で対応できるほど楽観的なものではない。海洋エネルギーは、エネルギー資源として余り開発されていないだけに、あらゆる面でもともと使いづらい資源であり、個々の資源環境に適した新たな利用技術を準備しないと、取らぬ狸の皮算用になりかねない。
波力に着目すると、波のエネルギーを直接油圧シリンダーで吸収する方式、振り子方式、ブリストル振動ブイ方式、連結いかだ方式などがある。また、波のエネルギーを一旦空気エネルギーに変換(一次変換)して空気タービンを駆動する(二次変換)方法がある。一次変換には水平運動SEAクラム方式、振動水中方式があり、二次変換の空気タービンには、ウエルズ形と衝動形が用いられている。
現在の主流は上述の(1)振動水中方式(湾岸固定式と浮遊式がある)と空気タービンの組み合わせである。また、(2)越流波を浮遊プラットフオームに設けた上部タンクに集めるか、あるいは岸壁に固定した水車吸込み口に直接導き、下部海面との落差を利用して水車を駆動する方法も提案されている。
しかしながら、上記の(1)(2)の方式では、それぞれ、次のような問題を抱えている。(1)ケーソンや浮体の空気室での波浪エネルギー吸収率が悪く、かつタービンを駆動する空気は低密度のため出力の向上には限界があり、大容量の空気室を準備する必要がある。(2)越流波の集積効率が悪く、また水車を駆動する海水に多くの気泡が混在し、発電効率は期待できない。このように、両者とも、発電能力に比べて機器が大きくなり、また建設初期コストが膨大となる。このことは,未だに大容量商用発電所が現れない理由のひとつである。
一方、このような従来の波浪エネルギー/電力変換装置の問題を解消する波浪発電装置として、特許文献1,2に開示されているような相反転方式水力発電装置がある。
特許文献1に開示された発電装置を図9に示す。同図に示されているように、この発電装置は、ブイ31に鋼索32を介して支持された上下方向に長い円筒状の筒体33の上下に、それぞれ軸受34,35に支持された2個の水車(一般的にはランナと呼ぶ)36,37を互いに反対方向に回転するように設け、一方の水車36と発電機38を一体に内設した内筒39とを一体化するとともに、他方の水車37の水車軸40を内筒39の下端開口を通して発電機38に連結したものである。なお、41,42は各軸受34,35を内筒39に一体に支持する支材である。
ここで、発電機38への入力軸、すなわち下方の水車37の水車軸40に対する軸封はシール等を用いず、上方の軸受34から上方の水車36の中空水車軸を通して内筒39内に圧縮空気を供給することにより行われる。
したがって、波高変動に伴って上下変動するブイ31により筒体33が上下移動し、それに伴って筒体33内に上下方向に正逆水流が発生すると、各水車はそれぞれ互いに反対方向に回転し、内筒39の発電機38が上方の水車36とともに回転するとともに、発電機38の軸が下方の水車37の回転とともに発電機38とは反対方向に回転し、発電機38に増速された回転力が与えられることになる。また、この場合、2個の水車36,37が互いに反対方向に回転するため、筒体33が水車36,37の回転の影響を受けることがなくなり、筒体33の回り止めが不要になる。
特開昭61−261677号公報 特開平10−201197号公報
このように、特許文献1に記載された相反転方式水力発電装置は、上方の水車(以降,ランナと呼ぶ)と下方のランナが互いに反対方向に回転するために、同じ波浪の上下の相対移動量に対し、従来の方式よりも2倍の相対回転速度すなわち起電圧(磁界を切る速度に比例)を得ることができることが利点である。
しかし、この相反転方式水力発電装置を1個のフロートに吊して使用すると、波浪1波長分の上下単振動運動エネルギーしか利用できないという問題点を有している。
本発明は、簡単な浮遊形式で波浪の上下運動エネルギーを格段に効率よく電力に変換することのできる波浪発電装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明の第1の構成に係る波浪発電装置は、フロートを波浪の1ピッチ位置に対で設け、前記対のフロートの中間位置に水力発電ユニット全体あるいはランナ部を没水させたことを特徴とする。
絶対座標系での波浪による発電装置の運動はフロートの上下によって決定される。従来はこの運動を利用している。しかし、本装置では波浪1周期の位置にフロートを対で設けるので、その中間位置の波浪の上下運動はフロートの運動と逆になる。すなわち、水力発電ユニットに与えられる速度は2倍、すなわち動力(仕事率、速度の3乗に比例)は従来方式の2倍となる。これにより、1点の波浪の上下動を利用した水力発電ユニットに対し、波浪の上下運動エネルギーを格段に効率よく電力に変換することができる。
本発明の第2の構成に係る波浪発電装置は、フロートを波浪の1ピッチ間隔で複数設け、各フロートの中間位置にそれぞれ水力発電ユニット全体あるいはランナ部を没水させて設けたことを特徴とする。
この第2の構成においては、多数のフロートを波浪の1ピッチ間隔で数ピッチ配置し、各ピッチの中間位置において、水力発電ユニットをフロートにより支持したものである。これにより、第1の構成の波浪発電装置が単数の水力発電ユニットにより構成されているのに対し、複数の水力発電ユニットを有するので、一極集中大容量発電が可能となる。
本発明の第3の構成に係る波浪発電装置は、第1の構成または第2の構成の水力発電ユニットとして、相反転方式水力発電装置を用いたことを特徴とする。
上述したように、相反転方式水力発電装置は、従来の方式よりも起電圧を高めて送電ロスを減少させるとともに、内外二重の回転電機子(前後二段のランナ)に働く相反回転トルクがユニット内で相殺されるので反作用としての力を外部に一切出さない。後者はランナ径をいくら大きくとっても装置全体は静止していることを意味し、一基での大容量化が期待できるとともに、ワイヤ1本でも簡単に係留できる。
本発明の波浪発電装置は、フロートを波浪の1ピッチ位置に対で設け、前記対のフロートの中間位置に水力発電ユニット全体あるいはランナ部を没水させた構成であるので、従来の、1点の波浪の上下動を利用した発電装置に対して8倍の動力(仕事率)を発電装置に与えることができ、波浪の上下運動エネルギーを格段に効率よく電力に変換することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて具体的に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る波浪発電装置を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面図である。図において、波浪Wの1周期分のピッチでフロート1が配置され、フロート1の中心位置に相反転方式水力発電ユニット2が配置されている。本例では、相反転方式水力発電ユニット2のケーシングに剛体であるアーム3が固定され、アーム3の先端にフレキシブルジョイント5が設けられ、フレキシブルジョイント5とフロート1をハンガーロッド4でほぼ垂直に連結することにより、相反転方式水力発電ユニット2がフロート1の上下動に応じて上下動するように構成されている。なお、相反転方式水力発電ユニット2をフロート1に係留する方法としては、図1に示す例のほかに、図2に示すようにアーム3を相反転方式水力発電ユニット2のケーシングの上部に設け、先端部を水中に曲げて、その先端にハンガーロッド4の下端を連結してハンガーロッド4の上端をフロート1に結合する構成としてもよい。また、図3に示すようにアーム3を相反転方式水力発電ユニット2のケーシングの上部に設け、アーム3を伸ばした先端の下部に、フロート1を取り付けるようにしてもよい。
図4は、相反転方式水力発電ユニット2の例を示す断面図である。本例は没水発電機型であり、外側の円筒形ケーシング21の中心部に、ステー羽根22により外側回転電機子23と内側回転電機子24からなる発電部が固定されており、外側回転電機子23を下部のランナ26で回転させ、内側回転電機子24を上部のランナ25で下部のランナ26とは逆方向に回転させることにより発電する構成となっている。
発電に有効な波浪の有義周期は普通5〜20秒(日本近海では7秒程度)であり、上下運動に伴う流れ方向によって発電ユニットのランナの回転方向を変えることができない。このため、往復流でも回転方向が変わらないように、流れに対してランナブレードの翼弦を直角にするウエルズランナあるいは案内羽根を付加した衝動あるいは反動形ランナを上下にそれぞれ設ける。互いに逆方向に回転させる上下二段のランナは発電機の内外二重回転電機子にそれぞれ連結する。本発電ユニットでは回転モーメントが前後二段のランナ(内外の二重回転電機子)間で相殺されて外部に一切力が働かないので、浮遊方式でもランナ径を大きくとった簡易大容量発電が可能となる。本装置は浮遊形式のため、本装置本体は海底あるいは岸壁等にワイヤ等で緩やかに係留する。
図5は、相反転方式水力発電ユニット2の他の例を示す断面図である。本例は洋上発電機型であり、外側の円筒形ケーシング21の中心部に、ステー羽根22により上部のランナ25と下部のランナ26が海中で回転可能に支持されており、ケーシング21の上方に、外側回転電機子23と内側回転電機子24からなる発電部が設けられている。外側回転電機子23を上部のランナ25で回転させ、内側回転電機子24を下部のランナ26で上部のランナ25とは逆方向に回転させることにより発電する構成となっている。また、ステーを海上に設けて、海上から鉛直近くに海中まで柱を設け、海中にある柱の端に上記と同様な方法でフロートを連結すると、ステーの流動抵抗が排除できる。本装置も浮遊形式のため、本装置本体は海底あるいは岸壁等にワイヤ等で緩やかに係留する。
本発明の実施の形態における相反転方式水力発電ユニット2が、波浪の振幅の2倍の振幅の水の移動量を受ける理由について、図6を用いて説明する。図6(1)は、フロート1が波浪の山の位置にある状態、(2)は1/4周期後の状態、(3)は1/2周期後の谷の位置にある状態を示す。フロート1の位置をP、相反転方式水力発電ユニット2の水面からの上部ランナ位置をQ、相反転方式水力発電ユニット2のフロート1からの高さの差をL、波浪の最大振幅をaとすると、図6(1)の状態では、Q=L−2a、(3)の状態ではQ=L+2aとなる。したがって、Pの移動量は2aであるのに対し、Qの移動量は4aとなり、Pの2倍となる。
一般的には、波浪の周波数をfとすると、PとQの位置の時間変化は次のようになる。
P=a×cos(2πft)、Q=L−2P=L−2a×cos(2πft)
この式からも、相反転方式水力発電ユニット2の位置は、波浪の振幅aの2倍で上下動することが分かる。
絶対座標系での波浪による運動はフロートの上下によって決定される。従来はこの運動のみを利用している。しかし、本装置では波浪1周期の位置にフロート1を対で設けるので、その中間位置の波浪の上下運動はフロートの運動と逆になる。すなわち、ランナに与えられる速度は従来方式の2倍となる(動力は8倍)。ランナの回転速度は流速に比例するから、本発電ユニットのように前後二段のランナを互いに逆方向に回転させると、波浪の上下動の2倍と合わせて回転速度は従来の4倍となるので、電気質の確保、起電圧の増加が容易となる。また、このことは発電機の極数の減少、あるいは発電機径の縮小にもつながる。
図7は本発明の第2の実施の形態を示すものであり、フロート1を波浪の1ピッチ間隔で複数設け、各フロート1の中間位置にそれぞれ水力発電ユニット2を没水させて設けたものである。装置全体は、係留ケーブル6で海底あるいは岸壁等に、発電装置の上下動を妨げない状態に緩やかに係留している。各水力発電ユニット2で発電された電力を集電して取り出すことにより、高い電力量を得ることができる。
なお、この実施の形態において、1つの水力発電ユニットと、それと対のフロートからなるものを1セットとした場合、各セットをフリーにしておき、柔軟なワイヤ等でセット間をつなぐ構成とすることもできる。そうすると、セット単位で増設したり、メンテナンスのために1セット単位での移設、引き上げが容易となる。
実験例
水槽(幅670[mm]×長さ3000[mm]×深さ[320mm])に水を高さ150[mm]ほど入れ、水槽の長手方向3000mmの片方の端点に幅一杯に設けた半円柱を上下させることにより定常波を発生させた。この定常波の波長は1500[mm]、周波数は0.8Hz、波の振幅(高低差)は110mmであった。波浪1ピッチの位置にフロートを設け,その中間位置にランナハウジングとして上下を切り取ったペットボトルを設けた簡易モデルを水槽中の水に浮かべた。ランナハウジング位置の波高が高いほどランナハウジングは低い所(水深が深い)にあり、波浪の上下動とランナハウジングの上下動が相反していることが実証された。このとき、ランナハウジング内の相対流速は波浪周期の2倍近くになることを目視で確認した。
以上の説明は、本発明の構成に基づく理論的、実験的なものであるが、以下に、現実の海洋においても、設置しうることについて説明する。というのは、実際の海洋においては、波浪のピッチを決める波長が、季節によって変動して、ある時季ではフロートの間隔は波浪の1ピッチであっても、他の時季では波浪のピッチが変動して、相反転方式水力発電ユニットの移動が0(1/2ピッチのとき)になるのではないかという疑問があるからである。
日本の沿岸の各地点における波浪の観測地の統計値が気象庁のサイトに公表されている(http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/wave/stat/stat.php)。
このサイトに掲載された、沿岸波浪計接地点における有義波高の月/年平均値の例を図8に示す。なお、「有義波」とは、計測した波全部についての波高のうち、高い順から1/3まで取り出し、それらを平均したものである。
図8を見ると、周期の季節変動は大きい所では35%であるが小さい所では13%程度である。また有義波周期と波長は比例関係があると考えられる。季節変動は大きい35%の場合であっても、フロート間の長さを当該変動%の平均長さに設定すれば、季節変動の影響は約半分になるので、季節による変動の影響は17.5%ということになり実用上問題になるような数値ではない。13%程度の場所を選定すれば実用上殆ど無視できる値であると考えられる。この程度の変動はフレキシブルジョイント5とハンガーロッド4等で対応できるから、本発明の波浪発電装置は、十分実現可能である。なお、波浪発電プラントは入念な事前調査に基づいて、波浪の周期や波高が安定している場所が選定されるので、このような危惧はさほど心配する必要なない。
波浪発電の実用化は世界中になく、現在進んでいるものでも実証試験中である。しかし、石油の高騰にもましてエネルギー危機が目前に迫っており、膨大な海洋エネルギーの有効利用は必須である。今後、クリーンエネルギーを創成するための波浪発電装置として、利用が可能である。
本発明の第1の実施の形態に係る波浪発電装置を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面図である。 本発明の第1の実施の形態におけるフロートの支持方法の他の例を示す断面図である。 本発明の第1の実施の形態におけるフロートの支持方法のさらに他の例を示す断面図である。 本発明の実施の形態に用いる相反転方式水力発電ユニットの例を示す断面図である。 本発明の実施の形態に用いる相反転方式水力発電ユニットの他の例を示す断面図である。 波浪の変動に伴うフロートと相反転方式水力発電ユニットの位置の変化を示す説明図である。 本発明の第2の実施の形態に係る波浪発電装置を示すものであり、(a)は平面図、(b)は正面図である。 気象庁のサイトに公表された、沿岸波浪計接地点における有義波高の月/年平均値をしめす表である。 特許文献1に開示された発電装置の構成を示す断面図である。
符号の説明
1 フロート
2 相反転方式水力発電ユニット
3 アーム
4 ハンガーロッド
5 フレキシブルジョイント
6 係留ケーブル
21 円筒形ケーシング
22 ステー羽根
23 外側回転電機子
24 内側回転電機子
25 上部のランナ
26 下部のランナ

Claims (3)

  1. フロートを波浪の1ピッチ位置に対で設け、前記対のフロートの中間位置に水力発電ユニット全体あるいはランナ部を没水させたことを特徴とする波浪発電装置。
  2. フロートを波浪の1ピッチ間隔で複数設け、各フロートの中間位置にそれぞれ水力発電ユニット全体あるいはランナ部を没水させて設けたことを特徴とする波浪発電装置。
  3. 前記水力発電ユニットは、相反転方式水力発電装置を用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の波浪発電装置。
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