JP2010088901A - 応答性常磁性mri造影剤 - Google Patents

応答性常磁性mri造影剤 Download PDF

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Abstract

【課題】応答性常磁性CEST造影剤を使用して、物理的又は化学的なパラメータのinvivo又はinvitroの測定のためのCEST手順に基づく方法を提供する。
【解決手段】飽和能が重要な物理的又は化学的なパラメータと相関している交換可能プロトンを少なくとも1つ含む応答性常磁性CEST造影剤が利用され、調査される器官又は組織における該パラメータに対して応答性のCESTMR画像が表示される。使用する常磁性造影剤は応答性薬剤、即ち、CEST剤の特徴的な特質を、診断的に重要な物理的又は化学的なパラメータに対して感受性であるという事実と組み合わせた薬剤である。従って、造影剤は水媒体プロトンとの化学交換における可動プロトンを少なくとも1つ含み、かつ該交換可能プロトンの共鳴周波数で適切な高周波印加磁場が適用された場合に、該可動プロトンと水媒体プロトンとの間の飽和移動(ST)効果を生成させることができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、少なくとも1つのCEST応答性常磁性造影剤の使用を含む、診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータのin vivo、ex vivo又はin vitroの測定のためのCEST手順に基づく方法に関するものである。
発明の背景
磁気共鳴画像法(MRI)の可能性が、造影剤(CA)、即ち組織プロトンの緩和速度の著しい変化を促進することができる化学物質の投与と併せて、この診断モダリティが適用された場合に、さらに増強され得ることは、現在よく確立されている。画像に対して及ぼす主要な効果によって、CAは、陽性剤又は陰性剤に分類される。陽性CAは、その配位圏内の水分子の交換によってバルク水の緩和速度に影響を与える、主としてGd(III)イオン又はMn(II)イオンを含有している常磁性錯体に代表される(Caravan Pら Chem Rev 1999, 99: 2293-2352;医学的磁気共鳴画像法における造影剤の化学(the Chemistry of Contrast Agents in Medical Magnetic Resonance Imaging)、Chichester, UK: John Wiley&Sons;2001年 45〜120頁)。T1及びT2に対するそれらの効果は類似しているが、通常、ほとんどの生物学的組織においてT1はT2より有意に長く、それらの効果は、より多くの場合、T1強調画像において活用され、従って画像中により明るいスポットをもたらす。
対照的に、陰性CAは、T2強調画像において、T2を短縮させ、水信号を縮小させることにより改良されたコントラストを得るために使用される。
さらに、可動プロトンを含有している化学物質が、交換過程を介した水プロトン緩和時間の縮小によってT2剤として機能し得ることが初期に報告された(Aime Sら、Invest Radiol 1988; 23(Suppl 1): S267〜S2706)。
効率的に水信号を縮小させるための異なる方式は、それを飽和している交換可能プロトンの共鳴周波数において、適切な高周波パルス(rf)が適用された場合に起こる。これは、飽和移動(saturation transfer)効果によるバルク水信号強度の正味の減少をもたらす。
この代替的なMRIコントラスト増強技術は、化学交換依存性飽和移動(Chemical Exchange Dependent Saturation Transfer)(CEDST、又はより一般的にはCEST)と命名されている(Balaban RS.: Young IR編、医用磁気共鳴画像法及び分光法の方法(Methods in Biomedical Magnetic Resonance Imaging and Spectroscopy)、Chichester, UK: John Wiley& Sons; 2000年 第1巻 661〜6667頁)。
この技術のための適切な造影剤は、化学的に交換可能なプロトンを少なくとも1つ含む。
ほとんどの先行技術の造影剤(従来のT1及びT2を縮小させるMRI造影剤、又はCEST剤)の効力は、投与された錯化合物の異なる細胞取り込み、又は標的とされた器官もしくは組織の細胞外空間における異なる分布に関連している。標的と周辺組織との間で取り込みが類似している場合、コントラストは検出可能でない。
さらに、先行技術の造影剤は、標的とされた組織又は器官の画像の作製に特別に向けられたものであり、一般に、生理学的/病理学的な状態の定量的評価を表し得る、調査された組織の特定の物理学的又は化学的なパラメータのレポーターとして機能することはできない。
それらとは異なり、WO00/66180は、in vivoのCEST MRI分析を実行するため、そしてin vivo及びin vitroの両方におけるpH及び温度のような物理学的又は化学的なパラメータの測定のため効率的に機能する、妥当なプロトン交換及び化学シフトの特性を賦与された化学基を少なくとも1つ含むCEST MRI造影剤の投与を含む、MRI画像のコントラストを増強するための方法を開示している。造影剤濃度に対して非依存的なpH測定のためのレシオメトリック(ratiometric)法も開示されている。
特許請求の範囲に記載された方法を実行するのに有用なものとして、Balaban及び共同研究者らによって開示された薬剤は、全て、OH又はNHの交換可能プロトンを有する反磁性有機分子である。
一般に、CEST適用のための造影剤の可動プロトンは、コアレッセンス(coalescence)条件よりは遅いが、急速な水プロトンとの交換速度(kex)を有していなければならず、この条件は、好適にはkevΔν〜1/2π[Δνは、2つの交換プール間の化学シフト間隔(Hz)である]の時に到達される。これに関して、より大きいΔν値は、より高いkev値の活用を可能にし、従って増強されたCEST効果をもたらす。
Balabanにより特許請求の範囲に記載された反磁性系は、有利に、適度に短い緩和速度を賦与されているが、NH又はOH交換可能プロトン信号とバルク水信号との化学シフト間隔はわずか1〜5ppmの範囲内である。従って、バルク水又はタンパク質結合水の飽和を回避しながらのこれらの可動プロトンの飽和は、実際、重大な問題を提起し得る。小さいΔν値の他に、in vivoにおける毒性又は生理学的な効果の高い確率をもたらす、充分に大きいCEST効果を生成させるために通常必要とされるそれらの高い濃度が、そのような反磁性薬剤のさらなる限界となっている。
WO02/43775は、側鎖(pendent arms)がアミド基を含むテトラアザシクロドデカン配位子、その配位子に配位した常磁性金属イオン及びそれと会合した水分子を含む、常磁性金属イオンに基づくマクロ環式CEST造影剤を開示している。該薬剤は、磁化移動(magnetization transfer)メカニズムに基づく画像コントラストを作製するのに有用であることが報告されている。
その明細書は、側鎖内のアミドに関連したプロトンの298Kにおける滞留寿命(residence lifetime)、τM 298(τM=1/kex)に対するpHの効果、及び特許請求の範囲に記載された化合物のうちの1つの同じアミド基に関連した2個の磁気的に異なる交換可能プロトンの飽和中に得られる磁化移動効果のpH依存性を例証している(それぞれ、図(figure)25及び実験(experiment)13)。しかしながら、その明細書は、磁化移動に対するpH効果の、特許請求の範囲に記載された薬剤のクラス全体への適用可能性を教示していないし、又は示唆すらしていない。さらに、明細書も実験13も、ヒト又は動物の身体器官、体液又は組織における診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータの測定のために一般的に適用可能な方法における、特許請求の範囲に記載された化合物の可能性のある使用を教示又は示唆しておらず;まして、局所造影剤濃度に対して非依存的に該測定が得られる方法における可能性のある使用など教示又は示唆していない。同時に、WO02/43775明細書は、該測定がいかにして実施され得るかを教示していない。
発明の概要
本発明は、応答性常磁性CEST造影剤の投与を含む、診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータのin vivo、in vitro又はex vivoの測定のための、CEST手順に基づく方法に関するものである。
特に、
− 飽和能が重要な物理学的又は化学的なパラメータと相関している交換可能プロトンを少なくとも1つ含む応答性常磁性CEST造影剤が利用され、
− 調査される器官又は組織における該パラメータに対して応答性のCEST MR画像が表示される、ヒト又は動物の身体器官、体液又は組織における診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータの、磁気共鳴画像法技術の使用による測定のための方法が、本発明の目的である。
本発明の方法において使用するための常磁性造影剤は、応答性薬剤、即ち、CEST剤の特徴的な特質を、それが可能にする飽和移動効果が、診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータに対して感受性であるという事実と組み合わせた薬剤である。従って、本発明の方法において使用するための造影剤は、水媒体プロトンとの化学交換における可動プロトンを少なくとも1つ含み、かつ該交換可能プロトンの共鳴周波数で適切な高周波印加磁場が適用された場合に、診断的に重要な物理化学的パラメータにのみ相関している、該可動プロトンと水媒体プロトンとの間の飽和移動(ST)効果を生成させることができる常磁性化合物である。
本発明の好ましい方法において、診断的に重要な物理化学的パラメータに対して応答性であり、投与された造影剤濃度に対して非依存性であるCEST MR画像の表示を可能にする、少なくとも2つの磁気的に異なる可動プロトン又はプロトンプールを賦与されたCEST常磁性造影剤が投与される。
本発明の方法において使用するための応答性常磁性CEST造影剤は、WO00/66180の先行技術の反磁性化合物に影響を与える限界を克服する。本発明の常磁性応答性薬剤の分子構造は、実際、有利に、化学シフト及び可動プロトンと水プロトンとの交換速度に関する最適な値を探究するために選択され得る。さらに、WO00/66180の反磁性薬剤の構造は、容易には増加させることができない比較的少数の可動プロトンを含んでいる。反対に、本発明の応答性CEST剤の不安定プロトンの数は、有利に、増加させることが可能であり、その結果として、投与される薬剤の量は縮小する。
WO02/43775と比較した場合、本発明は、ヒト又は動物の身体器官、体液又は組織における診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータの測定のための一般的な方法を提供する。本法は、該パラメータに対して応答性の常磁性CEST造影剤の使用に基づいている。この方法によれば、投与された薬剤の局所濃度に対して非依存的な測定が実行され得る。
本発明の方法において使用するための応答性常磁性薬剤は、好ましくは、常磁性金属イオンのキレート化錯体を少なくとも1つ含む。常磁性金属イオンは、印加される可動プロトンの化学シフト値に有意に影響を与えるために適切に短い電子緩和時間を有する任意の遷移金属イオン又はランタニド(III)金属イオンである。好ましい常磁性金属イオンは、鉄(II)(高スピン)、鉄(III)、コバルト(II)、銅(II)、ニッケル(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、ジスプロシウム(III)、エルビウム(III)、テルビウム(III)、ホルミウム(III)、ツリウム(III)、イッテルビウム(III)及びユーロピウム(III)からなる群の中で選択される。
Ln(III)金属イオンとも呼ばれるランタニド(III)金属イオンは、特に好ましい。
本発明の方法において使用するための常磁性錯体のキレート配位子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はリン原子に結合した可動プロトンを少なくとも1つ賦与された任意の有機配位子であり得る。好ましくは、可動プロトンは、金属イオンに配位したアミド基に属する。
本発明の可動プロトンのさらに適切な起源は、キレート化錯体の常磁性中心に配位した(1個以上の)水分子により表される。この特定の例において、バルク水プロトンの緩和時間は、それらの圏内配位水プロトンとの交換によって影響される。
本発明の方法において使用するための応答性薬剤は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)のマクロ環式テトラ−アミド誘導体、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸(DO3A)のトリス−アミド誘導体、及びヘキサ−アザ−マクロ二環式(macrobicycle)サルコファジン(sarcophagine)(3,6,10,13,16,19−ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン)の誘導体と、先に示された好ましい金属イオンとのキレートを含む。
式(I):
Figure 2010088901

[式中:
Figure 2010088901

]のキレート配位子を含む好ましい常磁性造影剤は、Ln(III)金属イオンとキレート化されており、さらに好ましくはその常磁性金属中心に配位した水分子を含む。
もう1つの好ましい化合物のクラスは、式(II):
Figure 2010088901

[式中:
*R=R’=−NO2]のキレート配位子を有する常磁性錯体を含む。
本明細書において配位子B又はDOTAM−ヒドラジドと呼ばれる、式:
Figure 2010088901

の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−酢酸テトラアジド誘導体、及びそれの遷移金属イオン又はランタニド(III)金属イオンとのキレート化体は、新規であり、かつ本発明のさらなる目的である。
式:
Figure 2010088901

の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−酢酸テトラグリシンアミドキレート配位子は、本明細書において配位子A又はDOTAM−Glyと呼ばれる。
本発明のLn(III)錯化合物のアミドN−Hプロトンの印加により発生するCEST効果は、ST効果が印加時間の関数として測定される一連のCEST実験に基づき試験された(25μTの印加力(irradiation power)、ここで、Tとはテスラを意味する)。特に、Ln=Dy、Ho、Er、Tm、Ybの5個のLn−DOTAM−Glyキレートがテストされた。図3に含まれる実験結果は、最も効率的な飽和移動が、pH8.1でYb(III)錯体(30mM)で観察されることを示しており、ここで観察された2sの印加後のおよそ70%の飽和効果は、極めて効率的な飽和移動を示していると考えられる。アミノ酸のような反磁性分子で類似の結果に到達するためには、はるかに高い濃度(125mM)が要求される。さらに、類似の結果は、pH5、即ち、生理学的範囲からはるかに離れたpH値においてのみ得られる(Ward KMら J Magn Res 2000;143:79-87)。
その他のLn(III)−DOTAM−Gly錯体に関して、図3に報告されたデータは、CEST効果が最小であるDy(III)キレートからYb(III)錯体までのランタニド系列の飽和移動効果の明白な傾向を示している。
ST効果の全体的な視覚化は、CESTスペクトルにより表され、pH8.1におけるYb−DOTAM−Glyの30mM溶液について、その一例が図4に報告される。そのスペクトルは、より高い値に規準化された水信号の強度を、印加オフセットの関数として報告している。明らかに、効果は水の共鳴周波数(0ppm)において最大であるが、印加周波数が水からおよそ−16ppmに設定された場合、有意な水の飽和が観察され、残存している信号は20%よりわずかに少ないことが直ちに明らかである。しかしながら、この効果には、水信号の直接飽和が部分的に不随するため、「真の」CEST効果は、オフレゾナンス飽和も考慮することにより定量的に評価される。これは、図3に報告された実験において測定されたMS/MO比の値が、図4中の矢印により示された二つの値の比であることを意味する。
Eu−DOTAM−Glyキレートに関して、アミドプロトンとバルク水との間の化学シフト間隔は、テストされた他のLn(III)イオンより小さい(4.2ppm)(図2参照)。他のLn−DOTAM−Gly錯体に使用されたのと同じスクエアパルス(square pulse)のアミドプロトンへの印加は、バルク水に対する顕著な直接飽和効果のため、飽和移動効果の検出を可能にしない。この理由のため、選択的な形のサチュレーションパルスを使用するのが便利である。各20msの270°e−burp1パルスの列(全印加時間4s、印加力1.2μT)を使用することにより測定されたST効果は、23%であった(pH7.7、30mM、312°K、7.05T)。
このキレートにおいて、312°Kにおいてバルク水からおよそ50ppm低磁場において共鳴するEu(III)イオンに配位した水プロトンを印加することにより飽和移動効果を検出することも可能であることを考慮することは注目に値する。この信号は極めてブロードであるため、この場合にも、全てのスピンを同時に励起するため、選択形パルスを使用するのが便利である。これに基づき、およそ85%の顕著なST効果が測定された(各1msの90°e−burp1パルスの列、全印加時間4s、印加力15.7μT、pH7.7、30mM、312°K、7.05T)。
本発明のランタニドキレート化錯体により示されたST効果は、さらに、診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータに対して著しく感受性であり、このことは、in vivo又はin vitroのいずれかにおける該パラメータの測定のための本発明の方法におけるそれらの有利な使用を可能にする。
重要なパラメータのリストは、造影剤及び周囲の水からの飽和移動を制御する因子少なくとも1つに影響することができる診断的に重要な任意の物理学的又は化学的なパラメータを含む。
特に、該パラメータは、ヒト又は動物の身体器官又は組織における、温度、pH、代謝産物濃度、O2又はCO2の分圧、酵素活性を含む。
本発明の方法によると、飽和移動の量は、以下の方程式に従い、診断的に重要な任意の物理学的又は化学的なパラメータに関連している。
Figure 2010088901
この方程式によると、観察された飽和移動効果は、便利に、(1−MS/MO)[式中、MSは、可動プロトン共鳴に対応する周波数(νon)における印加時の水信号の強度を示し、MOは、周波数νoffにおける印加時に測定された水信号強度を示し、νoff=−νonかつνwater=0である]として定量される。
νoffにおける印加は、水信号に対する直接飽和効果の評価を可能にする。
方程式1により示されるように、ST効果は、
− 印加時間t;
− 印加されたプロトンの擬一次動力学的定数速度kex
− 印加された可動プロトンの数n;
− 可動プロトンの印加時のバルク水の縦緩和速度Rlirr
− 常磁性薬剤のモル濃度[C]及びバルク水プロトンのモル濃度[H2O](純粋中111.2M)
に依存する。
本発明の方法において使用するための好ましい常磁性キレートは、全て、金属中心に配位した交換可能水分子を保有していると仮定して差し支えない。この理由のため、RlirrはRと概念的に異なっており、Rlirrは反磁性薬剤よりも常磁性系の方が高い可能性が高く、さらに、それは、金属錯体の濃度及びkex値の両方に依存する。
方程式1は、STの効率が、交換プロトンの濃度に依存し、従って造影剤の濃度(n[C])に依存することを示している。この知見は、重要な診断パラメータの測定を、造影剤濃度に対して依存性にする。従って、該パラメータの測定が、濃度が測定され得るin vitroで実施される場合には問題は起こらないが、投与された薬剤の局所濃度を知ることなく、in vivoでそれらを正確に測定することは不可能である。
従来のGd(III)に基づく造影剤の緩和増強能に関して一般的に観察されるものとは異なり、常磁性薬剤の濃度とST効果との関係は直線的でない。実際、ST効果の定常状態値は、
Figure 2010088901

によって測定され、Rirrの濃度依存性を考慮に入れたとしても、造影剤の濃度の依存性が、従来のMRI造影剤ほど著しくないことが明らかである。
従って、CEST造影剤の効力に対して濃度が果たす限定された役割にも関わらず、依然として、モニタリングされるパラメータのin vivoの正確な測定のためには、薬剤の局所濃度の正確な知識が必要不可欠である。
この問題は、本発明の好ましい方法に従い、ST効果が重要な物理化学的パラメータからの異なる依存性を示す二つの磁気的に異なる不安定プロトンのプールを考慮することにより解決され得る。この目標に到達するには、実際、二つの戦略が可能である。
i)二つの磁気的に非等価な可動プロトンプールの両方を賦与された単一CEST分子を含む常磁性造影剤の使用、又は
ii)可動プロトンのセット少なくとも1つを各々賦与された二つの異なるCEST単位を含む常磁性造影剤の使用。後者の場合、二つの分子は、同じ体内分布パターンを有していなければならない。
局所造影剤濃度に対して非依存的な、診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータの測定のための第一の好ましい方法において、バルク水プロトンとの交換における可動プロトンの磁気的に非等価なプールを少なくとも二つ有する単一常磁性化合物が使用される。
この方法によると、二つの異なる可動プロトンのプールに対して選択印加が実行される。次いで、投与された造影剤の絶対濃度からのST効果の依存性を除去し、薬剤の局所濃度から非依存的な、in vitro(ex vivo)及びin vivoの両方における重要な物理化学的パラメータの測定を可能にするため、レシオメトリック法が活用される。
好ましくは、化合物は、常磁性錯体又はその生理学的に許容される塩である。金属イオンは、好ましくは、常磁性錯分子に属する二つの磁気的に異なる可動プロトンのセットの関与により、ST効果を誘導する能力に基づき、常磁性の遷移金属イオン又はLn(III)金属イオンの中で選択される。キレート配位子は、少なくとも二つのプールを賦与された任意の有機単量体配位子からなっていてもよいし、又は、1つのプールが常磁性錯体の金属中心に配位した水プロトンにより表される場合には、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子に結合した可動プロトンのプールを少なくとも1つ賦与された任意の有機単量体配位子からなっていてもよい。好ましくは、可動プロトンプールは、第一のものはキレート配位子のアミド基に属し、第二のものは金属配位水プロトンに属する。より好ましくは、可動プロトンプールは、第一のものは配位アミド基に属し、第二のものはキレート配位子A、C、D、E、F、G、H、LのEu(III)錯体の金属結合水プロトンに属する。
この好ましい方法において使用するための異なる造影剤は、キレート配位子が、少なくとも1つの可動プロトンのプールを各々賦与された二つの等しいもしくは異なるキレート単位を含む二量体配位子からなり、かつ2つの金属イオンが、二つの可動プロトンプールのセットの関与により、異なるST効果を誘導する能力に基づき、遷移金属イオンもしくはLn(III)金属イオンの中で適切に選択されたものである常磁性錯体又はその生理学的に許容される塩を含む。可動プロトンプールは、好ましくは、第一のものは、第一の部分の金属イオンに配位した水プロトンにより表され、第二のものは、第二の部分の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子に結合した可動プロトンにより表されてもよいし、あるいはそれら両方が、二つの異なるLn(III)金属イオンに配位した水プロトンにより、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子もしくはリン原子に結合した可動プロトンにより表されてもよい。
より好ましくは、可動プロトンプールは、第一のものは式:
Figure 2010088901

の二量体錯化合物[Eu−Yb(bisDOTAMGLy)]のEu(III)金属イオンに配位した水プロトンに属し、第二のものはYb(III)に配位したアミド基に属する。
(bisDOTAMGLy)二量体キレート配位子は、二つの常磁性の遷移金属イオン又はLn(III)金属イオンとキレート化したその錯体と同様に、新規であり、かつ本発明のさらなる目的を構成する。
第二の戦略によると、CEST MRI画像法の使用による診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータの測定のためのもう1つの好ましい方法において、二つの常磁性錯化合物が使用される。この場合、二つのCEST剤は、同じ体内分布パターンを有していなければならない。この方法によると、二つの常磁性薬剤により提供される二つの異なる可動プロトンのプールの選択印加が実施される。この場合にも、投与された造影剤の絶対濃度からの飽和移動効果の依存性を除去するレシオメトリック法が活用される。この方法は、薬剤の局所濃度から非依存的であるが、二つの薬剤の間の既知の濃度比による、in vitro(ex vivo)及びin vivoの両方における該物理学的又は化学的なパラメータの測定を可能にする。
好ましくは、二つの常磁性化合物は、二つのキレート化常磁性イオンが異なっている、常磁性キレート錯体又はその生理学的に許容される塩である。該二つの金属イオンは、好ましくは、二つの磁気的に異なる交換プロトンプールの関与により、飽和移動効果を促進する能力に基づき、常磁性Ln(III)イオンの中で選択される。二つのキレート配位子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子に結合した可動プロトンを少なくとも1つ賦与された任意の有機配位子からなっていてもよく、等しくても又は異なっていてもよいが、二つの金属錯体に同じ体内分布パターンが付与されるよう適切に選択される。好ましくは、可動プロトンは、アミド基、より好ましくは、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸テトラグリシンアミド(配位子A)、10−[(3−メトキシフェニル)メチル]−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス−[(アミノカルボニル)メチル](配位子G)の中で選択されたキレート配位子の配位アミド基に属するか、又はテトラヒドラジド誘導体(配位子B)内の金属配位水プロトンに属する。
さらに好ましいのは、Eu(III)−DOTAM−Gly又はその生理学的に許容される塩と共にYb(III)−DOTAM−Glyを含む造影剤の、この方法における使用である。第一の錯体は、化学交換アミドプロトン(312°KにおいてΔδ=16ppm)の利用可能性のため選択され、第二のものは金属配位水分子に属するプロトン(312°Kにおいておよそ50ppmのΔδ)のため選択された。
等しく好ましいのは、Eu(III)−DOTAM−Gly又はその生理学的に許容される塩と一緒のTm(III)−DOTAM−Gly(アミドプロトンの印加)の使用である。
同じ電荷、親水性/親油性バランス及び類似の構造を有するため、両方の対の二つの金属錯体は、同じ体内分布パターンを示すことが合理的に予想される。
局所造影剤濃度に対して非依存的な診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータの測定のための本発明の最も好ましい方法において、少なくとも二つの異なる交換可能プロトン又はそのプロトンプール(第一のものは、診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータにのみ応答性であり、第二のものは、局所薬剤濃度にのみ依存するCEST効果を示す)を賦与された応答性常磁性CEST造影剤が投与される。
この方法によると、二つの異なる可動プロトンのプールの選択印加が実施され、局所造影剤濃度に対して非依存的な、in vitro(ex vivo)及びin vivoの両方における重要な物理学的又は化学的なパラメータの測定が得られる。
本発明のさらなる目的は、CEST MR画像法の使用によるヒト又は動物の身体器官、体液又は組織における該パラメータの測定のための医薬組成物の調製のための、水媒体プロトンとの化学交換における可動プロトンを少なくとも1つ賦与されており、かつ該交換可能プロトンの共鳴周波数で適切な高周波rf印加磁場が適用された場合に、診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータに対して感受性の、該可動プロトンと水プロトンとの間の飽和移動効果を生成させることができる常磁性キレート錯体を含むCEST造影剤の使用である。
好ましくは、該常磁性化合物は、Ln(III)金属イオンとキレート化した、式(I):
Figure 2010088901

[式中:
Figure 2010088901

]のキレート配位子を含む。
もう1つの好ましい常磁性化合物は、式(II):
Figure 2010088901

[式中:
*R=R’=−NO2]のキレート配位子を含む。
さらに好ましくは、該常磁性化合物は、[Eu−Yb(bisDOTAMGLy)]キレート化錯体である。
さらなる面において、本発明は、CEST MR画像法の使用による、局所造影剤濃度に対して非依存的な、ヒト又は動物の身体器官、体液又は組織における診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータの測定のための医薬組成物の調製のための、水媒体プロトンとの化学交換における可動プロトンを少なくとも1つ各々含む、同じ体内分布パターンを示さなければならない二つの常磁性キレート化錯体の使用に関する。好ましいのは、Eu(III)−DOTAM−Glyもしくはその生理学的に許容される塩と一緒のYb(III)−DOTAM−Gly、又は場合によっては、Eu(III)−DOTAM−Glyと一緒のTm(III)−DOTAM−Glyの、この範囲のための使用である。
さらなる面において、本発明は、該交換可能プロトンの共鳴周波数で適切な高周波rf印加磁場が適用された場合に、診断的に重要な物理学的もしくは化学的なパラメータにのみ感受性の、該可動プロトンと水プロトンとの間の飽和移動効果を生成させることができる、水媒体プロトンとの化学交換における可動プロトンもしくはプロトンプールを少なくとも1つ、好ましくは少なくとも二つ含む常磁性キレート錯体又はその生理学的に許容される塩を含むCEST造影剤を、生理学的に容認される担体と共に含む医薬組成物に関する。
この医薬組成物は、好ましくは、Eu(III)−DOTAM−Gly、Eu(III)−DOTAM−ヒドラジド、配位子G及びMのCo(II)(高スピン)キレート錯体、キレート配位子C、G、H及びLのLn(III)キレート錯体、[Eu−Yb(bisDOTAMGLy)]又はそれらの生理学的に許容される塩の中で選択された常磁性キレート化錯体を、生理学的に容認される担体と共に含む。
また、好ましくは、医薬組成物は、二つの常磁性金属イオンが異なっており、かつ窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子に結合した可動プロトンを少なくとも1つ賦与された任意の有機配位子からなり得るキレート配位子が、二つの金属錯体に同じ体内分布パターンが付与されるよう適切に選択されている、二つの常磁性キレート化錯体又はそれらの生理学的に許容される塩を、生理学的に容認される担体と共に含む。より好ましくは、両キレート配位子は同じである。
二つの常磁性錯体は、好ましくは、キレート化金属イオンによって選択される等しいモル量又は既知のモル比で含まれる。該比は、1〜30の範囲であり得、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、最も好ましくは1〜2の範囲であり、より低い量で含まれる常磁性化合物の要求される最小モル濃度は少なくとも0.05mMであり、含まれる常磁性CEST造影剤の全濃度は、0.001〜1.0Mの範囲である。
最も好ましくは、この医薬組成物は、Eu(III)−DOTAM−Glyと一緒のYb(III)−DOTAM−Gly、もしくはEu−DOTAM−Glyと一緒のTm−DOTAM−Gly、又はそれらの生理学的に許容される塩を、生理学的に容認される担体と共に含む。
本発明の医薬調製物は、脈管内(intravasally)(例えば、静脈内、動脈内、室内等)に適切に注射されてもよいし、又はクモ膜下腔内投与、腹腔内投与、リンパ内(intralymphatic)投与、腔内(intracavital)投与、経口投与もしくは経腸投与によって使用されてもよい。
注射可能な医薬製剤は、典型的には、活性成分及び医薬的に許容される賦形剤を、薬理学的な見地から適切な純度の水に溶解させることにより調製される。得られた製剤を、適切に滅菌し、そのまま使用してもよいし、又は別法として、凍結乾燥させ、使用前に再生させてもよい。
これらの製剤は、体重1kg当たり0.01〜0.5mmolの範囲の用量で、診断的な要求に応じた濃度で投与され得る。
本発明の好ましい方法の有効性をテストするため、pH8.1の16mMのEu−DOTAM−Gly及び20mMのYb−DOTAM−Glyを含有している溶液のCESTスペクトル(7.05T、312°K、印加力25μT、印加時間4s)を示し、その結果を図8に含める。興味深いことに、約50ppm(水信号より低磁場)を中心とした「ピーク」(極めてブロード)の検出は、Eu−DOTAM−Glyの配位水プロトンが印加された場合に起こる飽和移動の明白な指標である。
本発明の好ましい方法を基本としているレシオメトリック法は、方程式1の再編成から導かれたものであり、以下の方程式:
Figure 2010088901

[式中、上付のA及びBは、交換プール磁気パラメータが参照されている常磁性錯化合物を明らかにするものである]により表される。上記の実験において、例えば、A=Yb−DOTAM−GlyかつB=Eu−DOTAM−Glyであり、かつ[A]/[B]比を表すKconcは1.25である。印加された不安定プロトンの各プールに関する二つのRlirr値の存在は、原則として、二つのプロトンプールで異なる、バルク水と印加された可動プロトンとの間の交換速度に、Rlirr値が依存するという事実による。
二つの可動プロトンのプールを含む単一化合物が考慮された場合にも同じ方程式が当てはまるが、この場合には明らかに、Kconcは1に等しい。
pH応答性CEST剤
一般的に述べると、本発明の方法によるpH応答性CEST剤としての優れた候補は、Ln(III)金属イオン又は遷移金属と、水プロトンとの化学交換が塩基触媒又は酸触媒を受ける可動プロトンを少なくとも1つ含むキレート配位子とを含む、任意の常磁性錯化合物であり得る。
さらに、その可動プロトンの化学シフト修飾を誘導するような方式で、pHによって構造が変化する任意の常磁性錯体が、等しく、本発明の方法によるpH応答性CEST剤として使用され得る。
適切なpH応答性CEST剤は、さらに、常磁性金属中心に配意した水分子の数がpHに依って変化し、バルク水プロトンの緩和速度の変化が起こる、全ての常磁性錯化合物を含む。この種のpH応答性薬剤は、例えば、式:
Figure 2010088901

のキレート配位子HのLn(III)キレート化錯体に代表される。
スルホンアミド基がプロトン化型で存在する場合には、Ln(III)イオンが9配位(nona-coordinated)され、2つの可動水分子が金属中心に結合する。反対に、スルホンアミド基が脱プロトン化された場合、それは、金属イオンを配位できるようになり、その結果、8配位(octa-coordinated)される(水分子はそれに配位されない)。3つの側鎖上の6個の交換可能アミドプロトンの化学シフトは、錯体のプロトン化型と脱プロトン化型との間のモル比、即ち溶液のpHに依存する。この方式において、(プロトン化型又は脱プロトン化型の)錯体のアミドプロトンの印加時の飽和移動効果は、周辺媒体のpHに対して感受性である。
pH応答性常磁性CEST剤のさらなる例は、Eu−DOTAM−ヒドラジド(配位子B)キレート化錯体により表される。この化合物において、6.5を超えるpHにおいて起こるプロトン解離は、pH<6.5における遅い交換の条件(kexΔν<1/2π)から、2つの信号間のコアレッセンス(kexΔν>1/2π)へと、Eu(III)イオンに結合した水分子の交換速度の有意な加速を引き起こす。実際、Eu(III)イオンに結合した水プロトンの共鳴周波数(15000HzのΔν)における印加時に観察されるSTは、6.5より高いpH値において減少する(図5)。
アミド基の可動プロトンにより促進されるST効果のpH依存性として、Ln(III)DOTAM−Gly錯体及びLn(III)−配位子G錯体は、pH応答性CEST剤の適切なクラスの例を表す。
ST効果のpH依存性が、Yb−配位子G錯化合物(20mM、312°K、印加力25μT、印加時間4s)に関して評価されており、その結果を図6に示す。ST効果は著しくpH依存性であり、pH7.2で最大となり、5.5未満のpH値ではほぼ無視しうる程度である。
ST効果のpH依存性は、Yb−DOTAM−Gly誘導体(30mM、312°K、印加力25μT、印加時間4s)に関しても評価されており、その結果を図6−2に示す。ST効果は著しくpH依存性であり、pH8.1で最大となり、6未満のpHではほぼ無視しうる程度である。pH依存性は5.5〜8.1のpH域において直線的(回帰係数=0.996)であるのに対し、より高いpH値においては、過度のN−H共鳴の交換ブロード化のため、飽和移動はより低効率となる可能性が高い。この挙動は、ST効果のpH依存性が、Yb(III)錯体のアミドN−Hプロトンの塩基触媒プロトン交換により主に発生するという仮説を支持する。興味深いことに、2sの印加時にも類似の結果が得られた。ST効果が著しくpH感受性であり、さらに、それが生理病理学的pH区間で適切に調整されるため、これらの結果は、このキレートのin vivo適用にとって極めて有望である。
さらに、異なるpH値の薬剤の30mM溶液を含有しているファントムの標準的なプロトン密度(PDW)1H水MR画像が、ブルカーファーマスキャン(Bruker Pharmascan)イメージャーで7.07T及び298°Kで記録された(図7)。興味深いことに、直接測定されたCEST効果が極めて低い(12%)pH5.4ですら、画像差の対応するコントラストは全く無視しうる程度ではない。
本発明の好ましい方法により、ランタニドイオンが異なる二つのLn(III)−DOTAM−Glyキレートの混合物を使用することにより、CEST効果のpH依存性がテストされた。従って、Yb−DOTAM−Gly錯体及びEu−DOTAM−Gly錯体が、それぞれアミドN−Hプロトン及び金属配位水プロトンの交換に関連したCEST効果を活用するため選択された。図8に、pH8.1の16mMのEu−DOTAM−Gly及び20mMのYbDOTAM−Glyを含有している溶液から得られたCESTスペクトル(B0=7.05T、312°K、印加力25μT、印加時間4s)を示す。バルク水の直接飽和によるピークとは別に、CESTスペクトルは、二つの付加的なピークを特徴としており、一方は、比較的狭く、バルク水の化学シフトからおよそ16ppm高磁場にシフトし、他方は、極めてブロードであり、およそ50ppm低磁場にシフトしている。明らかに、第一のピークは、Yb(III)錯体の4つのアミドN−Hプロトンに対応しているのに対し、第二のピークは、Eu(III)に基づくキレートの配位水のプロトンに関連している。本発明の方法が基本としているレシオメトリック法によると、[(MO−MS)/MSYbL/[(MO−MS)/MSEuL比として評価されたCEST効果は、造影剤の絶対濃度に対して依存性でなく、相対濃度比に対してのみ依存性である。これに基づき、[(MO−MS)/MSYbL/[(MO−MS)/MSEuL比のpH依存性を、16mMのEu−DOTAM−Gly及び20mMのYb(III)に基づくキレートを含有している溶液で、7.05T、312Kで調査した(印加時間4s、印加力25μT)。図9に報告された結果は、本発明の系のpHに対する高い応答性を示している。興味深いことに、本法の良好な感受性を保証する、そのような系で観察された著しいpH依存性は、基本的には、Yb(III)キレートにより示されたST効果のpH依存性による。実際、Eu−DOTAM−Gly錯体内の配位水のプロトンの印加により発生するST効果は、調査された5.5〜8.5のpH域において基本的に影響を受けない(図10)。これは、反磁性系においてBalaban及びWardにより報告されたもの(Ward KM及びBalaban RS.Magn Res Med 2000; 44: 799〜802)より相当大きい6.5〜8.1のpH域における、ST比の顕著なpH依存性をもたらす、Yb(III)キレートのpH依存性の完全な活用を可能にする。
もう1つの実験において、本発明者らは、2つの磁気的に非等価な可動プロトンのプールを賦与された単一常磁性錯体が使用された場合の、in vitroにおけるpH測定のための本発明の好ましい方法のうちの1つの有効性をチェックした。図11に、312°K及び7.05TにおけるEu−DOTAM−Glyの30mM溶液に関するレシオメトリックプロット(配位水プロトンに対するアミドプロトン)のpH依存性を報告する。
その実験は、この錯体のために先に報告したのと同じ印加のモダリティ(選択e−burpパルス)を2秒間2つの可動プロトンのプールに印加することにより実施された。
図11に報告されたデータは、この方法の感受性が、図9に報告されたデータに比して極めて有意に縮小した場合ですら、pH依存性が維持されることを示唆している。その理由は、主として、Eu(III)−DOTAM−Gly錯体のアミドプロトンに関するST効果のより低い効率による。
ST効果のpH依存性は、[Yb−Eu(bisDOTAM−Gly)]誘導体(30mM、312K、印加力25μT、印加時間4s)に関しても評価され、その結果は、レシオメトリックプロット(Yb(III)のアミドプロトン対Eu(III)の金属結合水プロトン)の形態で、図12に示される。二量体の溶液のpHに対するレシオメトリックプロットの感受性は、Eu(III)−DOTAMGlyとYb(III)−DOTAMGlyとの混合物(図9)より低い。この差は、二量体のより低いKconc値(1対1.25)によるものである可能性が高い。にも関わらず、二量体の感度は、単一Eu(III)−DOTAMGly錯体(図11)が使用された場合に観察されたものより高い。
温度応答性CEST剤
任意の可動プロトンの交換速度は、温度依存性である。
温度も、常磁性金属によって誘導された交換プロトンの化学シフト値及び水信号のT1値に影響を与え得る。このことに基づき、キレート配位子が少なくとも1つの可動プロトンを含んでいる任意の常磁性錯体が、本発明の方法による温度応答性CEST剤として有利に使用され得る。
混合原子価化合物(D.E.Richardson及びH.Taube Coord.Chem.Rev.1984,60: 107-129)の場合には、温度変動によって引き起こされる電子スピン配置の変化も、本発明の方法による極めて効率的な温度応答性CEST剤の取得のために利用され得る。
本発明の方法による温度に対する応答性は、Eu−DOTAM−ヒドラジド錯化合物(30mM;pH7.4)に関してテストされた。飽和移動の温度依存性は、金属中心に配位した可動水プロトンに印加することによりテストされた。その結果を図13に報告する。本発明の方法による温度に対する応答性は、Tm(III)−DOTAM−Glyを同じ配位子のEu(III)錯体と共に含有している組成物の使用によってもテストされた。本発明の方法による、Tm(III)−DOTAM−Glyのアミドプロトン、及びEu(III)錯体に金属配位した水プロトンの印加により、図13−2に示されるような、満足のゆく結果が得られた。
代謝産物の濃度に対して応答性のCEST剤
特定の代謝産物に対して応答性であるためには、常磁性CEST剤は、非共有結合的に、かつ可能な限り選択的にそれと相互作用することができなければならず、そしてこの相互作用が、例えば化学シフト、交換速度、バルク水の緩和速度、可動プロトンの数のような飽和移動効率を決定するパラメータの変化を促進するものでなければならない。
本発明の好ましい方法による所定の代謝産物に対する応答性は、ヘプタデンテート(heptadentate)10−[(3−メトキシフェニル)メチル]−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス−[(アミノカルボニル)メチル]キレート配位子(配位子G)のYb(III)錯体を使用することによりin vitroでテストされた。この常磁性錯体のキレート配位子は、欧州特許出願01124440.7に開示されたようにして調製された。このキレートは、312°Kにおけるバルク水からの化学シフト間隔が、バルク水信号よりおよそ29ppm高磁場である、6つの可動アミドプロトンを保持している。この錯体は、キレート錯体の金属中心に配位した水分子を交換することができる配位基を賦与されたいくつかの陰イオン性基質と極めて強く相互作用することができる。
この適用にとって重要な陰イオン性基質には、内因性化合物及び外因性化合物の両方が含まれ得る。
より好ましくは、内因性基質は、ラクタート、シトラート、カルボナート、ホスファート、ピルバート、天然アミノ酸、オキサラート、タルトラート、スクシナート、コリン、クレアチン、アセタート及びマロナートからなる群より選択される。
さらに好ましくは、基質は、ヒト代謝産物であり、ラクタート、シトラート、カルボナート及びホスファートが最も好ましい。
さらに、本発明の方法にとって重要な基質分子は、外因性物質であってもよく、ここで、外因性という用語は、本明細書において使用されるように、常磁性錯体との適切な結合を可能にするために最終的に修飾される、薬理学的又は診断的に重要な任意の物質をさす。
非制限的な代表例として、本発明者は、L−ラクタートを考慮した。
金属錯体とL−ラクタートとの間の親和定数は、Gd(III)錯体に対して実施されたリラキソメトリック(relaxometric)測定によって評価された(298°K及びpH6.5においておよそ3000のKA)。NMR周波数の時間尺度において、遊離Yb(III)錯体とラクタート結合Yb(III)錯体との間の交換は遅い。従って、金属錯体の2つの型の可動アミドプロトンの異なる共鳴(遊離型及び結合型についてそれぞれ29ppm及び15ppmのΔω)は、1H−NMRスペクトルにおける生理学的条件(312°K及びpH7.4)において検出され得る。
CEST剤の2つの型に対応する信号は、それらの選択印加を可能にするために十分に離れている。ヘプタデンテート10−[(3−メトキシフェニル)メチル]−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス−[(アミノカルボニル)メチル]キレート配位子のYb(III)錯体の9.3mM溶液中の遊離アミドプロトンの印加によって促進されたST効果のL−ラクタート濃度に対する依存性は、図14に示される(7.05T、pH7.4、312K、印加力1050Hz、印加時間6s)。
興味深いことに、ST効率は、診断的に有意義なラクタート濃度(0〜10mM)の範囲において著しい依存性を示す。
この結果は、0〜10mMの範囲の異なる濃度のL−ラクタートの溶液からなるファントムのPDW 1H−MR画像(298K、pH7.4、7.05T)を記録することにより確認された(図15)。
CEST剤の濃度に対するST効果の非依存性は、例えばYb−G単位及びEu−DOTAM−Gly単位を含む二量体錯化合物の使用により、この発明に従い達成され得る。
2の分圧に対して応答性のCEST剤
配位子GのCo(II)高スピンキレート化錯体は、本発明の方法において使用するためのO2の分圧に対して応答性の常磁性CEST剤の一例を表す。
以下のスキーム:
Figure 2010088901

に従い、O2は、Co(II)高スピン錯体を、Co(III)低スピン反磁性錯体へと転換させることができ、これは、錯化合物の金属中心に配位した交換可能アミドプロトンの印加時のCEST効果の相当の縮小をもたらす。
媒体の酸化還元電位に対して応答性のCEST剤のもう1つの例として、配位子LのLn(III)錯体が調製された。
これらの配位子は、酸化還元電位がin vivoに存在するものと極めて近い(およそ0.8V)、酸化還元スイッチとして機能するジフェニルアミン置換基を含有している。
2の分圧に対して感受性のCEST剤の第三の例は、配位子MのCo錯体により表される。Co−G錯体と同様に、この系の応答性は、常磁性高スピンCo(II)型と反磁性低スピンCo(III)化合物との間の酸化還元平衡による。その他の例とは異なり、この場合には、ST効果は錯体のアミンプロトンの印加により測定される。
2の分圧に対するST効果の依存性は、Eu(III)錯体内の金属結合水プロトン又はその他のLn(III)キレートのアミドプロトンの周波数共鳴のいずれかの印加により観察され得る。ST効果の濃度非依存性は、単一錯体(Eu(III)−Lキレート)、Eu(III)−L化合物とYb(III)−L化合物との混合物を使用することにより、又はEu(III)イオンを含有しているDOTAM−Gly単位に連結された酸化還元感受性単位(例えば、Yb(III)−L錯体、Co−G錯体又はCo−M錯体)によって構成された二量体の使用により、本発明に従い、入手され得る。
20(上)及びH20(下)におけるYb−DOTAM−Glyの1H−NMRスペクトル(7.05T、298K及びpH7)。 Ln−DOTAM−Glyキレートに関するアミドN−Hプロトンとバルク水との間の化学シフト間隔(Δω(ppm))(7.05T、312K)。 DOTAM−GlyのDyキレート(30mM、下向き三角)、Hoキレート(30mM、上向き三角)、Erキレート(40mM、菱形)、Tmキレート(40mM、丸)及びYbキレート(30mM、四角)に関する印加時間(印加力25μT)に対する飽和移動の依存性(B0=7.05T、312K、pH8.1)。 pH8.1のYb−DOTAM−Glyの30mM溶液のCESTスペクトル(B0=7.05T、312K、印加時間4s、印加力25μT)。 Eu−DOTAM−ヒドラジドに配位した可動水プロトンの印加によって生じるpH依存性(30mM;pH7.4、B0=7.05T、312K、印加時間2s、印加力15.7μT)。 Yb−配位子Gの20mM溶液に関する飽和移動効果のpH依存性(B0=7.05T、312K、印加力25μT、印加時間4s)。 Yb−DOTAM−Glyの30mM溶液に関する飽和移動効果のpH依存性(B0=7.05T、312K、印加力25μT、印加時間4s)。 pH域5.4〜8.4のYb−DOTAM−Gly(30mM)の4つのバイアルを含有しているファントムの7.05T PDWスピンエコー像。バイアルを、30mMのYb(III)アクアイオン(aqua-ion)を含有している水に浸漬した(298K、印加時間4s)。画像は、2つのPDW画像(TR=3.04s;TE=18.3ms)の間の差であり、プレサチュレーションパルスは、まず、アミドプロトン(バルク水から−4794Hz)を中心とし、次いで対称的にオフレゾナンス(バルク水から4794Hz)を中心とした。 pH8.1の16mMのEu−DOTAM−Gly及び20mMのYb−DOTAM−Glyを含有している溶液のCESTスペクトル(B0=7.05T、312K、印加時間4s、印加力25μT)。 レシオメトリック法の活用によって生じたpH依存性(Eu−DOTAM−Gly濃度10mM及びYb−DOTAM−Gly濃度12.5mM;7.05T、312K、印加時間4s、印加力25μT)。エラーバーは、5回の独立の測定の標準偏差を示す。 10mMのEu−DOTAM−Gly及び12.5mMのYb−DOTAM−Glyを含有している溶液に関するST効果のpH依存性(7.05T、312K、印加時間4s、印加力25μT)。四角は、Yb(III)錯体のアミドプロトンの印加に関し、丸は、Eu(III)キレート内の配位水プロトンの印加に対応する。 Eu−DOTAM−Glyの30mM溶液のレシオメトリック法の活用によって生じたpH依存性(7.05T、312K、印加時間2s)。飽和は、アミドプロトンについては270°e−burp1パルスの列(各20ms、力1.2μT)を使用し、金属結合水プロトンについては90°e−burp1パルスの列(各1ms、力15.7μT)を使用することにより達成された。 Yb−Eu−bisDOTAM−Gly二量体に関するレシオメトリック法の活用によって生じたpH依存性(薬剤濃度30mM、B0=7.05T、312K、印加時間4s、印加力25μT)。 Eu−DOTAM−ヒドラジドに配位した可動水プロトンの印加によって生じた温度依存性(30mM;pH7.4、B0=7.05T、312K、印加時間2s、印加力15.7μT)。 レシオメトリック法の活用によって生じた温度依存性(Eu−DOTAM−Gly=14mM、Tm−DOTAM−Gly=14mM;7.05T、pH7.4、印加時間4s、印加力25μT)。 バルク水プロトンから−29ppmにおける遊離キレートのアミドプロトンに印加することにより測定された10−[(3−メトキシフェニル)メチル]−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス−[(アミノカルボニル)メチル]キレート配位子のYb(III)錯体の9.3mM溶液のST効果のL−ラクタート濃度に対する依存性(7.05T、312K、pH7.4、印加時間4s、印加力1050Hz)。 0〜10mM域の異なるL−ラクタート濃度を含有しているYb−配位子G(9.3mM)の4つのバイアルを含有しているファントムの7.05T PDWスピンエコー像。画像は、2つのPDW画像の間の差であり、サチュレーションパルスは、まず、遊離錯体のアミドプロトン(バルク水から−8700Hz)を中心とし、次いで対称的にオフレゾナンス(バルク水から8700Hz)を中心とした。
実施例
本発明の化合物の調製は、当業者に周知の手順及び合成工程に従って実施された。非制限的な例が以下に含まれる。
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−酢酸テトラグリシンアミド(DOTAM−Gly)の調製:
Figure 2010088901

このキレート配位子は、以下の工程に従い合成した。
a)対応するテトラエチルエステル誘導体を得るための、塩基としての0.3モルのK2CO3の存在下でのN−(2−ブロモエタノイル)エチルグリシナート(0.3モル)によるTAZA(TAZA=1,3,5,7−テトラアザシクロドデカン、0.075モル)の徹底的なアルキル化
この反応を、アセトニトリル中で70℃で6時間加熱することにより実施した。ろ過による未溶解材料の除去の後、単に溶媒を蒸発させることにより生成物が得られた(収率:91.4%)。
N−(2−ブロモエタノイル)エチルグリシナートは、発表されている手順に従い合成した(Kataki Rら J Chem Soc Perkin Trans 2 1992; 8: 1347-1351)。
b)調節されたテトラエチルエステルのけん化及び所望のテトラカルボン酸の単離
テトラエステルのけん化を、60℃で、エタノール/水(1:1)溶液200mL中で実施した。ほぼ45’、溶液のpHを一定(pH11)に維持するために、NaOH 1N(232mL)を添加した。その反応は、1時間の加熱の後に完了した。得られた橙色の溶液を冷却し、HClによりpH2.2に酸性化した。液体クロマトグラフィー(固相:アンバーライト(Amberlite)(登録商標)XAD−1600;溶出剤:水)によって、そのような溶液からDOTAM−Gly配位子を分離した(収率:88%)。その配位子を、MALDI−TOF質量分析によって特徴測定した(C3240812に関する計算値632.63amu;実測値633.55(MH+))。
Ln(III)錯体の合成
Ln(III)−DOTAM−Gly錯体は、水(室温、pH8、30’)10mL中で、等モル量(0.3mmol)の配位子と対応するLn(III)塩化物とを混合することにより調製した。回収されたキレート錯体を、1H−NMRスペクトルによって特徴測定した。回収されたデータは、予想された構造と一致していた。
配位子B(DOTAM−Gly)の調製
この合成を以下の工程によって実施した。
− N−(ベンジル−オキシカルボニル)−N’−(ブロモアセチル)ヒドラジンの合成(ジクロロ−メタン、0℃)
Figure 2010088901

− 1,4,7,10−テトラ{2−[N’−(ベンジル−オキシ−カルボニル)ヒドラジノ]−2−オキソ−エチル}−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンの合成(アセトニトリル、室温)
Figure 2010088901

− 配位子Bの合成(メタノール、室温)
Figure 2010088901
配位子Cの調製
主要な工程には、以下のものが含まれる。
− 1−(4−ニトロフェニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンの合成(アセトニトリル/水 10:1、60℃)
Figure 2010088901

− 1−(4−ニトロフェニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−トリス−アセトアミドの合成(アセトニトリル、室温)
Figure 2010088901
二量体キレート化錯体[Eu−Yb(bisDOTAMGLy)]の調製
Figure 2010088901

全体的な調製は、以下に図式化された手順に従い実施した。
Figure 2010088901
Figure 2010088901
当業者であれば、上記のスキームの使用によって、そしてキレート単位又はキレート化金属イオンを適切に変化させることによって、本発明の方法による任意の二量体造影剤が容易に入手され得ることを理解するであろう。
NMR法
高分解能作業を、7.05Tで作動するブルカーアバンス(Bruker Avance)300分光計で実施した。
飽和移動実験は、連続波プレサチュレーションスクエアパルス(1050Hzの力)を試料に印加することにより、又は適切なe−burp1選択パルス列を使用することにより、312°Kで実施した。4回のスキャン及び4回のダミースキャンを、全ての実験に使用した。
NMR画像法は、アクティブシールド型グラジエント300mT/mを有する7.05Tブルカーファーマスキャン(Bruker PharmaScan)を使用し、パラビジョン(ParaVison)2.1.1ソフトウェアを実行して実施した。標準的なPDW(プロトン密度強調画像)を、SE(スピンエコー)イメージング系列を使用して(Hermite形の90°及び180°のパルスを使用して)入手した。NMR画像で採用したパラメータは、(TR/TE/NE=3.0s/18.3ms/1);FOV(視野)30×30mm2;スライス厚2mm及び画像マトリックス256×256ポイントであった。2.25ワットの正方形のサチュレーションパルスを、スピンエコー系列のプレディレイ(pre-delay)において4秒間適用した。2つの画像を取得した(一方はバルク水プロトンから−4794Hzにおけるアミドプロトンの飽和により、他方は4794Hzにおけるrf印加オフセットにより)。

Claims (24)

  1. ヒト又は動物の身体器官、体液又は組織における物理学的又は化学的なパラメータのCEST MRI技術の使用による測定方法であって:
    − その飽和能が重要な物理学的又は化学的なパラメータと相関している交換可能プロトンを少なくとも1つ含む応答性常磁性CEST造影剤が利用され、
    − 該パラメータに対して応答性のCEST MR画像が表示される、方法。
  2. CEST造影剤が、磁気的に非等価な可動プロトンのプールを少なくとも2つ含む、請求項1の方法。
  3. 測定がin vitro又はex vivoで実施される、請求項1の方法。
  4. 測定がin vivoで実施される、請求項2の方法。
  5. 重要なパラメータが、温度、pH、代謝産物濃度、O2又はCO2の分圧及び酵素活性より選択される、請求項1の方法。
  6. 応答性常磁性CEST造影剤が、キレート配位子が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子もしくはリン原子に結合した可動プロトンを少なくとも1つ含有している有機配位子であり、かつ常磁性イオンが、鉄(II)(高スピン)、鉄(III)、コバルト(II)、銅(II)、ニッケル(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、ジスプロシウム(III)、エルビウム(III)、テルビウム(III)、ホルミウム(III)、ツリウム(III)、イッテルビウム(III)及びユーロピウム(III)からなる群より選択される常磁性キレート化合物又はそれらの生理学的に許容される塩を含む、請求項1及び2の方法。
  7. 常磁性キレート錯体が、常磁性中心に配位した水分子を含む、請求項6の方法。
  8. CEST造影剤中の可動プロトンが、キレート配位子のアミド基に属するか、又は常磁性キレート錯体の金属結合水プロトンである、請求項7の方法。
  9. キレート配位子が、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)のテトラ−アミド誘導体若しくは1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸(DO3A)のトリス−アミド誘導体又はヘキサ−アザ−マクロ二環式サルコファジン(3,6,10,13,16,19−ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン)の誘導体である、請求項6〜8の方法。
  10. CEST造影剤が、2つの磁気的に非等価な可動プロトンのプールの両方を賦与された単一の常磁性錯化合物、又はその生理学的に許容される塩を含む、請求項2の方法。
  11. CEST造影剤が、異なる可動プロトンのプールを各々提供する、同じ体内分布パターンを有する2つの常磁性錯化合物を含む、請求項2の方法。
  12. キレート配位子が、式(I):
    Figure 2010088901

    [式中:
    Figure 2010088901

    ]の化合物又は式(II):
    Figure 2010088901

    [式中:
    *R=R’=−NO2]の化合物である、請求項9の方法。
  13. 可動プロトンが、第一のものは単量体性キレート配位子のアミド基に属し、そして第二のものは金属配位水分子に属する、請求項10の方法。
  14. 可動プロトンが、第一のものは配位アミド基に属し、そして第二のものはキレート配位子A、C、D、E、F、G、H、LのEu(III)錯体の金属結合水プロトンに属する、請求項13の方法。
  15. 単一の常磁性錯化合物が、2つの異なるLn(III)金属イオンとキレート化した、同一であってもよいし又は異なっていてもよい2つのキレート単位を含む二量体性キレート配位子を含む、請求項10の方法。
  16. キレート錯体が[Eu−Yb(bisDOTAMGLy)]である、請求項15の方法。
  17. CEST造影剤が、場合によりYb(III)DOTAM−Gly又はTm(III)−DOTAM−Glyと共に、Eu(III)DOTAM−Glyを含む、請求項11の方法。
  18. 水媒体プロトンとの化学交換における可動プロトンを少なくとも1つ含み、かつ該交換可能プロトンの共鳴周波数で適切な高周波rf印加磁場が適用された場合に、診断的に重要な物理学的もしくは化学的なパラメータにのみ感受性の、該可動プロトンと水プロトンとの間の飽和移動効果を生成させることができる常磁性キレート化錯体又はその生理学的に許容される塩を含むCEST造影剤を、生理学的に容認される担体と共に含む医薬組成物。
  19. CEST造影剤が、磁気的に非等価な可動プロトンのプールを少なくとも2つ含む常磁性キレート化錯体、もしくは異なる可動プロトンのプールを各々提供する、同じ体内分布パターンを有する2つの常磁性キレート化錯体、又はそれらの生理学的に許容される塩を含有している、請求項18の医薬組成物。
  20. 1〜30の範囲のモル比で2つの常磁性錯体を含む、請求項19の医薬組成物。
  21. 2つの常磁性錯体が、1〜5の範囲のモル比で存在する、請求項20の医薬組成物。
  22. 場合によりYb−DOTAM−Gly又はTm−DOTAM−Glyと共に、Eu(III)−DOTAM−Glyを含む、請求項19〜21の医薬組成物。
  23. CEST MRIの使用によるヒト又は動物の身体器官、体液又は組織における該パラメータの測定のための医薬組成物の調製のための、水媒体プロトンとの化学交換における可動プロトンを少なくとも1つ賦与されており、かつ該交換可能プロトンの共鳴周波数で適切な高周波rfが適用された場合に、診断的に重要な物理学的又は化学的なパラメータに関連した、該可動プロトンと水プロトンとの間の飽和移動効果を生成させることができる常磁性キレート錯体を含むCEST常磁性造影剤の使用。
  24. DOTAMidrazide、鉄(II)(高スピン)、鉄(III)、コバルト(II)、銅(II)、ニッケル(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、ジスプロシウム(III)、エルビウム(III)、テルビウム(III)、ホルミウム(III)、ツリウム(III)、イッテルビウム(III)及びユーロピウム(III)からなる群より選択された常磁性金属イオンとのそのキレート錯体;(bisDOTAMGLy)二量体性キレート配位子、及び上記の群の遷移金属イオン又はLn(III)金属イオン2個とのそのキレート化錯体、並びにそれらの生理学的に許容される塩の中で選択された化合物。
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