JP2010059128A - 2炭素置換カルボラン型溶融塩及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規なカルボランの溶融塩を提供する。
【解決手段】以下の式で表される2炭素置換カルボラン型溶融塩とする。
【化8】

(式中、Zは、置換されていてもよい、o−カルボランア二オン、m−カルボランアニオン又はp−カルボランアニオンを表し、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、又は置換基を表し、R3及びR4は、水素又は置換基を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、イオン性カルボラン誘導体及びその製造方法に関する。
2炭素置換カルボラン(C2B10H12、dicarba-closo-dodecaborane)は、ホウ素と炭素のクラスター化合物である二十面体水素化ホウ素クラスターの骨格中に2個の炭素を有する中性の有機化合物である。図5に示すように、カルボランは、化合物中の2個の炭素の相対的な位置関係によって、o−カルボラン(1,2-dicarba-closo-dodecaborane (closo-1,2-C2B10H12))、m−カルボラン( (o-carborane )、1,7-dicarba-closo-dodecaborane (closo-1,7-C2B10H12))、p−カルボラン(1,12-dicarba-closo-dodecaborane (closo-1,12-C2B10H12) )の3種類に分類される。これらは比較的入手が容易で、安定性が高く、多面体構造中に存在する2つの炭素を利用して様々な置換基を導入することができるという利点を持っている。
カルボランは、そのホウ素密度の高さ及び誘導体化の容易性から、癌の放射線療法として期待される、低エネルギーの中性子線を用いるホウ素中性子捕捉療法(BNCT;Boron-Neutron-Capture-Therapy)に用いるホウ素化合物としての注目されている。BNCTは、放射線増感剤として働く10Bを癌細胞に集積させておき、低エネルギーの中性子線;熱中性子線(<0.5eV)或いは熱外中性子線(0.5eV〜10keV)をできるだけ限局的に照射して癌細胞を殺傷する治療方法である。BNCTは、正常細胞に対する放射線の照射を防ぎつつ癌細胞選択的な治療が理論上最も期待できる放射線治療であると言われている。BNCTでは、109 10B Atoms/cellという高濃度で10B化合物を腫瘍中に選択的に集積させることが必要である。
BNCT剤の分子設計を考える場合、疎水性が高いホウ素化合物は正常細胞や血管内に存在する様々な生体高分子との間で疎水結合を形成しやすく癌細胞以外の組織にも蓄積する可能性が高くなってしまうため、適度な親水性を付与することが重要である。
しかし、カルボランは、本来的に非常に疎水性が高い構造であるため、その誘導体の多くが疎水性となる。このため、カルボランに適度な親水性を付与したカルボラン誘導体の開発が望まれている。
親水化されたカルボラン誘導体の開発にあたり、糖やアミノ酸などの水溶性部位の導入のほか、イオン性ホウ素キャリアー(ホウ素系有機溶融塩)の合成が検討されている。これまで、イオン性ホウ素キャリアーとしては、多面体水素化ホウ素クラスターの一種であるcarba-closo-dodecaborate anion又はその誘導体のセシウム塩や銀塩とイミダゾリウムハライドあるいはピリジニウムハライドとイオン交換させる手法が知られている(非特許文献1、2)(図6参照)。
A. S. Larsen, J. D. Holbrey, F. S. Tham, C. A. Reed, J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 7264-7272. Y. Zhu, C. Chimg, K. Carpenter, R. Xu, S. Selvaratnam, N. S. Hosmane, J. A. Maguire, Apple. Organometal. Chem. 2003, 17, 346-350.
上記方法によって得られる有機溶融塩は優れた特性が期待されるものの、その合成方法は、原料入手も容易でないほか煩雑であり、銀塩やセシウム塩などの副生成物との分離も困難を伴うものであった。
そこで、本発明は、新規なカルボランの溶融塩及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、カチオンとアニオンの組合せにより様々な極性を発現させることができるイオン液体に着目し、カルボランに親水性を付与するための分子設計に利用した。本発明者らは、カルボランをイミダゾリウムアニオンとの塩とすることができ、これによりカルボランの極性を向上させうることができるという知見を得た。本発明によれば以下の手段が提供される。
本発明によれば、以下の式で表される2炭素置換カルボラン型溶融塩が提供される。
(式中、Zは、置換されていてもよい、o−カルボランア二オン、m−カルボランアニオン又はp−カルボランアニオンを表し、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基を表し、R3及びR4は、水素原子又は置換基を表す。)
本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩において、前記式中、Z-は置換されていてもよいo−カルボランアニオンを表すものであってもよいし、前記式中、R1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基を表すものであってもよい。
本発明によれば、以下の式で表されるイミダゾリウム誘導体カチオンをカチオン席に有する塩を準備する工程と、
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基を表し、R3及びR4は、水素原子又は置換基を表す。)
前記塩の前記イミダゾリウム誘導体カチオンのイミダゾリウム環の2位の炭素原子をカルベン化してカルベン化イミダゾリウム誘導体を得る工程と、
前記カルベン化イミダゾリウム誘導体に、置換されていてもよいo−カルボラン、m−カルボラン又はp−カルボランを接触させてカルボランアニオンを生成させる工程と、
を備える、2炭素置換カルボラン型溶融塩の製造方法が提供される。
本発明は、上記式(1)で表される2炭素置換カルボラン型溶融塩及びその製造方法に関する。本発明のイオン性カルボラン誘導体は、イミダゾリウムアニオンとカルボランアニオンとからなる塩である。カルボランをアニオン化して溶融塩基との塩として取得できたことで、カルボランの極性を高めることができ、カルボランの疎水性に基づくBNCT剤への適用上の不都合を含む各種の不都合を抑制又は回避できるようになる。したがって、本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩は、BNCT剤あるいはその原料を提供することができる。
また、本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩の製造方法によれば、イミダゾリウム誘導体をカルベン化し、このカルベンに、カルボランのブレンステッド酸のプロトンを引き抜かせることでカルボランアニオンとイミダゾリウムカチオンとからなる塩を容易に取得できる。以下、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
(2炭素置換カルボラン型溶融塩)
本発明のカルボラン型溶融塩は、2炭素置換カルボランアニオンをアニオン席に有し、イミダゾリウム誘導体アニオンをアニオン席に有する塩である。イミダゾリウム誘導体のアニオンとしては、それぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基を表している。炭化水素基は、アルキル基;シクロヘキシル基やアダマンチル基等のシクロアルキル基;ビニル基やアリル基などのアルケニル基;アルキニル基;フェニル基、メシチル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。これらは、直鎖状でも分岐状であってもよい。好ましくは、炭素数が1〜20である。さらに好ましくは炭素数が1〜10である。一層好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。これら炭化水素基が有していてもよい置換基としては、特に限定しないが、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アミド基、アシル基等が挙げられる。
また、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は各種置換基とすることができる。置換基としては、アルキル基;ビニル基やアリル基などを含むアルケニル基;アルキニル基;フェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、ニトロ基、ニトロソ基、アルコキシル基、アミド基、エステル基、アシル基等が挙げられる。典型的には、炭素数が1〜10の、一層好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。これらの置換基は、特に限定しないが、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基等で置換されていてもよい。
本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩は、置換されていてもよい、o−カルボランアニオン、m−カルボランアニオン又p−カルボランアニオンのいずれかのカルボランアニオンを備えている。これらのカルボランアニオンを式(3)に示す。
これらのカルボランアニオンのなかでも、o−カルボランアニオンは、原料入手容易性等から好ましく用いることができる。カルボランアニオンは、カルボランの炭素原子上に特に置換基を有していなくてもよいが、2つの炭素原子のうち一方において置換基を有することができる。こうした置換基としては、それぞれハロゲン原子等で置換されていてもよい、各種アルキル基;アリル基やビニル基などを含むアルケニル基;アルキニル基;フェニル基、トリフルオロフェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;シリル基;アルコキシル基;アシル基;ジアルキルアミノ基などのアミノ基;ホスフィノ基;エステル基等が挙げられる。
本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩は、原料であるカルボランよりも極性溶媒に対して高い溶解性を備えることができる。ピリジニウム誘導体アニオンにおける置換基の種類にもよるが、好ましくは、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類、ジメチルスルホキサイド、テトラヒドロフラン・水(1:1)混液から選択される1種又は2種以上の極性溶媒に一定の溶解性を示すことが好ましい。溶解性は、例えば、実施例にも示すように、一定量(典型的には、3mg以上5mg以下程度)を採取し、一定量の溶媒(典型的には、1ml以上2ml以下程度)を室温(1℃〜30℃)で添加し、30秒間攪拌後に5分静置して目視で溶解状態を確認することによって行うことができる。
本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩の融点は特に限定しないが、アニオンが不活性な溶媒としての可能性を考慮すると、50℃以下の融点を備えていることが好ましく、より好ましくは、室温(1℃以上30℃以下)において、例えば、25℃以下の融点を備えるなど、室温(1℃以上30℃以下)で液体として存在可能な融点を備えていることが好ましい。
本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩は、一定以上のイオン伝導性を有していてもよい。例えば、50℃において、2.00×10-5 Scm-1以上のイオン伝導度を備えることができる。こうした2炭素置換カルボラン型溶融塩は、各種電池の電解質材料として利用可能である。
(カルボラン型アニオン種)
本発明によれば、上記式(3)で表される新規なカルボラン型アニオン種も提供される。このアニオン種は、従来のイオン液体に用いられるアニオン種よりも不活性であり、反応溶媒として有用である。
(2炭素置換カルボラン型溶融塩の製造方法)
本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩の製造方法は、イミダゾリウム誘導体カチオンをカチオン席に有する塩を準備する工程と、前記塩からカルベン化イミダゾリウム誘導体を得る工程と、前記カルベン化イミダゾリウム誘導体に、2炭素置換カルボラン誘導体を接触させて、2炭素置換カルボランアニオンを生成させる工程と、を備えることができる。
本発明の製造方法によれば、入手しやすい原料から、簡易な工程で2炭素置換カルボラン型溶融塩を得ることができる。すなわち、困難な精製ステップを伴わなくても容易に純度の高い溶融塩を得ることができる。また、カルベン化工程以降をワンポットで実施することも可能である。
(塩の準備工程)
イミダゾリウム誘導体カチオンは、式(2)に示すとおりであり、式(2)におけるR1〜R4は、式(1)におけるのと同義である。イミダゾリウム誘導体カチオンをカチオン席に有する塩におけるアニオン席には、特に限定しないで各種アニオンを用いることができる。例えば、ハロゲン化物イオン、BF4 -、PF -、CF3SO3 -、硝酸イオン、過塩素酸イオン,CF3COO-、(CF3SO22-、(CF3CF2SO22-等が挙げられるが、水溶性や生体導入の観点から好ましくは、ハロゲン化物イオンである。
この種の塩は商業的に入手してもよいが、合成により取得する方法は、特に限定しないでイオン液体の合成方法として公知の方法を採用することができる。例えば、アニオン交換法、酸エステル法、中和法等により得ることができる。なお、アニオン席にハロゲン化物イオンを有する塩は、イミダゾール環化合物に対してハロゲン化アルキルを用いた求電子付加反応により取得できる。
(カルベン化工程)
イミダゾリウム誘導体カチオンをカルベン化するには、アルキルリチウム、フェニルリチウムなどの有機リチウム化合物;tert−ブチルカリウムアルコラートなどのアルカリ金属アルコラート;水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化カルシウムなどの金属の水素化物及び、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)などの塩基を用いて2位の炭素原子からプロトンを引き抜くのが有利である。例えば、n−へキサンなど適当な溶媒下、イミダゾリウム誘導体カチオンを有する塩とn−ブチルリチウムなどの塩基を0℃近傍の低温で混合し、その後、室温付近で一定時間反応させることができる。イミダゾリウム誘導体カチオンに対しておおよそ等モルのアルキルリチウムを用いることが好ましい。反応時間は、特に限定しないが、数分以上数時間程度以下とすることができる。
(カルボランアニオン生成工程)
カルボランアニオンは、上記カルベン化工程で得られた産物と置換されていてもよいo−、m−又はp−2炭素置換カルボランとを接触させることによって得ることができる。2炭素置換カルボランが備えることのできる置換基は、本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩におけるのと同様の置換基が挙げられる。
本工程は、カルベン化工程で得られる反応液からカルベン化イミダゾリウム誘導体を抽出分離し、その後分離したカルベン化体と2炭素置換カルボランとを接触させて実施することもできる。また、カルベン化工程の反応液に対して2炭素置換カルボランを供給することにより、両者を接触させることで実施してもよい。こうすることで、カルベン化工程とカルボランアニオン生成工程とを一挙にワンポットで行うことができる。なお、2炭素置換カルボランは、カルベン化工程反応液に対して適当な溶媒で溶解した状態で添加することもできる。
カルベン化イミダゾリウム誘導体と2炭素置換カルボランとの接触は、0℃近傍の低温で行うことが好ましく、その後、室温で一定時間反応させることが好ましい。反応時間は、特に限定しないが、10時間以上30時間以下程度とすることができる。
カルベン化体と2炭素置換カルボランとの接触により、カルベンが2炭素置換カルボランの炭素原子に結合したプロトンを引き抜き、この結果、式(3)で表される2炭素置換カルボランアニオン(置換されていてもよい)が生成する。同時に、イミダゾリウム誘導体はアニオンとなり、本発明の2炭素置換カルボラン型溶融塩が生成される。
以下、本発明の具体例につき、実施例を挙げて説明する。なお、以下の実施例は本発明を説明するものであって、本発明を限定するものではない。
以下の実施例では、以下に示すスキーム1に基づいて、4種のイオン性化合物を合成した。スキーム1では、イミダゾール誘導体をハロゲン化アルキル反応させて、ハロゲン化物イオンをアニオン種とするイオン性化合物を準備した。このイオン性化合物に、n-ブチルリチウムを加えて、イミダゾール環の2位のプロトンを引き抜くことによってイミダゾリウム環のカルベン化を行い、さらに、o−カルボランを加えることで、2炭素置換カルボラン型アニオン[closo-1,2-C2B10H11]- をアニオン席に有し、イミダゾール誘導体カチオンをカチオン席に有する2炭素置換カルボラン型溶融塩を得た。以下、各ステップについて具体的に説明する。
以下の実施例で用いた試薬は、特に記載のない限り、商業的に入手した上、必要に応じて乾燥、蒸留を行って使用した。
(イオン性化合物7aの合成)
イオン性化合物7aは、文献(A. Lewandowski, M. Galinski, Journal of Physics and Chemistry of Solids 2004, 65, 281-286.)に従って合成した。すなわち、窒素下でナスフラスコに1,1,1-トリクロロエタン (66.7 ml) とN-メチルイミダゾール(12.0 ml, 151 mmol)を入れたものに1-ブロモエタン(34 ml, 452 mmol) を20分間かけて滴下して60 ℃で2時間還流した。生成した無色透明の粘性液体を、加熱しながら1,1,1-トリクロロエタン(100 ml) で2回洗浄し、加熱真空乾燥を行った。無色透明固体7aを得た (17.8 g, 93.3 mmol, 収率61.8 %)。生成物の構造確認は1H-NMR測定(DMSO)を行った。
(2炭素置換カルボラン型溶融塩4a([EMIm]+[closo-1,2-C2B10H11]-)の合成)
まず、窒素下でイオン性化合物7a(204 mg, 1.07 mmol)をシュレンク管に入れ、0 ℃でn-ブチルリチウム(へキサン)1.63 mol/l(1.2 mmol)を加え、室温に戻して60 分間反応させた。次いで、0 ℃ でTHF(0.42 mmol)に溶解させた2炭素置換カルボラン(closo-1,2-C2B10H12 )化合物9(145 mg, 1.01 mmol)を加え、室温に戻して12時間反応させ、真空乾燥を行った。2-プロパノールで抽出し、diethylether中への再沈殿を行い、真空乾燥後に生成物の黄色透明固体(化合物4a、249 mg, 91 %)を得た。精製後の生成物に関しては多面体ホウ素クラスター類の検出試薬PdCl3-HCl(1 % PdCl2/HCl水溶液(G. R. Wellum, E. I. Tolpin, L. P. Andersen, J. Chromatogr.1975, 103, 153.))を用いたTLC分析を行ったところ副生成物は確認されなかった。
生成物の構造確認はTLC(PdCl2-HCl法)、1H-NMR測定(CD 3 OD)、13C-NMR測定(CD3OD)、11B-NMR測定(CD3OD)、元素分析によって行った。核磁気共鳴(NMR)スペクトルにはBruker ARX-400 (400 MHz)、 11B-NMRスペクトルにはJEOL-A 400 Win Alipha FT-NMR SYSTEMを用いた。以下の化合物についても同一装置を用いた。結果は以下の通りであった。また、1H-NMR測定結果を図1に示し、11B-NMR測定結果を図2に示す。
1H-NMR(CD3OD, 400 MHz):δ(ppm)0.8〜3.0 (br, -NH2H3, [closo-1,2-C2B10H11]-), 3.8 (3H, -NCH3), 4.3 (2H, -NCH2CH3), 7.5 (2H, -CHCHN)
11B-NMR(CD3OD, 400 MHz):δ(ppm)-56.0, -48.9, -43.1, -39.4, -35.6, -32.9, -31.6, -28.8, -22.3, -21.2 -15.6 ([closo-1,2-C2B10H11]-)
図1に示すように、CD3ODを溶媒としたイオン性化合物4aの1H-NMR測定では、イミダゾリウムカチオン由来ピークが観測され、closo-1,2-C2B10H12 (化合物9)と比較して2炭素置換カルボラン型アニオン [closo-1,2-C2B10H11]- 由来の波状ピークシフト、形状変化が確認できた。なお、C-d位のプロトンはCD3ODのプロトンとのプロトン交換を起こしているためピークが観測されていない。
また、図2に示すように、11B-NMR測定を行ったところ、ピークの形状の変化から、closo-1,2-C2B10H12 (化合物9)よりも構造の対称性が低い2炭素置換カルボラン型アニオン [closo-1,2-C2B10H11]- を有する2炭素置換カルボラン型溶融塩4aが生じたことがわかった。
(イオン性化合物7bの合成)
イオン性化合物7bは、は文献(J. S. Wilkes, J. A. Levisky, R. A. Wilson, C. L. Hussey, Inorg. Chem. 1982, 21, 1263-1264.)に従って合成した。窒素下でナスフラスコにN-メチルイミダゾール (30.0 ml, 376 mmol)(5a)と1-クロロブタン(6b) (79 ml, 756 mmol)を入れ65 ℃で62時間還流した。上澄みを除去し酢酸エーテル (300 ml) で4回洗浄した後に加熱真空乾燥を行った。淡黄色のやや粘度の高い液体7bを得た(46.4 g, 266 mmol, 収率70.6 %) 。生成物の構造確認は1H-NMR測定(DMSO)を行った。
(2炭素置換カルボラン型溶融塩4b([BMIm]+[closo-1,2-C2B10H11]-)の合成)
まず、窒素下でイオン性化合物7b(269 mg, 1.70 mmol)をシュレンク管に入れ、0 ℃でn-ブチルリチウム(へキサン)1.63 mol/l(1.80 mmol) を加え、室温に戻して10分間反応させた。次いで、0 ℃ でTHF(0.8 ml)に溶解させた2炭素置換カルボラン(closo-1,2-C2B10H12 )(化合物9)(245 mg, 1.70 mmol)を加え、室温に戻して12時間反応させた。生成物は真空乾燥後、2-プロパノールで抽出し、ジエチルエーテル中への再沈殿を行い、真空乾燥後に生成物の白黄色透明固体(化合物4b、232 m g, 49 %)を得た。精製後の生成物に関しては、実施例1と同様、多面体ホウ素クラスター類の検出試薬PdCl3-HClを用いたTLC分析を行ったところ副生成物は確認されなかった。生成物の構造確認は1H-NMR測定(CD3OD)によって行った。結果は以下の通りであり、化合物4bの合成を確認できた。
1H-NMR(CD3OD, 400 MHz):δ(ppm)0.8〜3.0(br, -NCH2CH2CH2CH3, [closo-1,2-C2B10H11]-), 3.8 (3H, -NCH3), 4.2 (2H, -NCH2CH2CH2CH3), 7.6 (2H, -CHCHN)
(2炭素置換カルボラン型溶融塩4c([EBIm]+[closo-1,2-C2B10H11]-)の合成)
まず、窒素下でイオン性化合物7c(189 mg, 1.00 mmol)をシュレンク管に入れ、0 ℃でn-ブチルリチウム(へキサン)1.63 mol/l(1.00 mmol) を加え、室温に戻して30分間反応させた。次いで、0 ℃ でTHF(0.4 ml)に溶解させたcloso-1,2-C2B10H12(化合物9)(144 mg, 1.00)を加え、室温に戻して19時間反応させた。生成物は真空乾燥後、2-プロパノールで抽出し、ジエチルエーテル中への再沈殿を行い、真空乾燥後に生成物の白黄色半透明固体(化合物4c、187 mg, 37 %)を得た。精製後の生成物に関しては、実施例1と同様、多面体ホウ素クラスター類の検出試薬PdCl3-HClを用いたTLC分析を行ったところ副生成物は確認されなかった。生成物の構造確認は1H-NMR測定(DMSO)によって行った。結果は、以下の通りであり、化合物4cの合成を確認できた。
1H-NMR(DMSO, 400 MHz):δ(ppm)0.8〜3.0(-NCH2CH3, -NCH2CH2CH2CH3, [closo-1,2-C2B10H11]-), 4.3 (2H, -NCH2CH2CH2CH3), 4.5〜4.6 (2H, -NCH2CH3), 7.4 (2H, -CHCHN)
(2炭素置換カルボラン型溶融塩4aのDSC測定)
化合物4aのDSC測定を行った。示差走査熱量(DSC)測定にはセイコーインスツルメンツ製 DSC-6200示差走査熱量計を用いた。結果を図3に示す。
図3に示すように、溶融塩化合物4aの融点は27.5 ℃であった。この融点は、現在報告されているcarborane類を有する溶融塩 の中で、Zhuが報告した1炭素置換カルボラン型アニオン(carba-closo-dodecaborate anion [closo-CB11H12]- )を有する溶融塩 [N-pentyl-C5H5N]+[closo-CB11H12]-(mp 19 ℃)(Y. Zhu, C. Chimg, K. Carpenter, R. Xu, S. Selvaratnam, N. S. Hosmane, J. A. Maguire, Apple. Organometal. Chem. 2003, 17, 346-350.)に続く低い融点であった。また、Larsenらが報告した[closo-CB11H12]-を有する溶融塩 [EMIm]+[closo-CB11H12]- (mp 122 ℃)よりも低い融点であった(A. S. Larsen, J. D. Holbrey, F. S. Tham, C. A. Reed, J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 7264-7272.)。
今回用いた2炭素置換カルボラン型アニオン [closo-1,2-C2B10H11]- をイミダゾールカチオンのアニオン席に導入したことが、融点の低下につながったものと考えられる。また、多面体水素化ホウ素クラスター型アニオンは従来イオン液体に導入されてきたアニオン種(ハロゲン化物イオン等)よりも安定であるので、著しく不活性なアニオンを有するイオン液体を反応溶媒として設計する上でも有益であることがわかった。なお、カルボランアニオンは現代化学において最も不活性なアニオンの一つとして当業者においては周知である(Reed, C. A et al. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 7264-7272. )。
(2炭素置換カルボラン型溶融塩4aの溶解性試験)
化合物4aにつき、以下の操作方法で溶解性試験を行った。すなわち、約4mgを採取し、室温(1℃〜30℃)で、1ml以上2ml以下程度の各種溶媒と混合し、30秒間攪拌後に5分静置して目視で溶解状態を確認することによって行った。
[表1]
表1に示すように、化合物4aは、メタノール、エタノール及び2−プロパノールなどの低級アルコール類、DMSO、THF・H2O混液(1:1)などの、極性溶媒に溶解した。なお、化合物9(2炭素置換カルボラン)は、THF・H2O混液(1:1)及び水には溶解しなかった。
(2炭素置換カルボラン型溶融塩4aのイオン伝導度測定)
化合物4aのイオン伝導度測定を行った。イオン伝導度測定にはソーラトロン1260を用いた。結果を図4に示す。
図4に示すように、化合物4aのイオン伝導度には、良好な温度依存性が見られ、51 ℃で2.88×10-5Scm-1という比較的高いイオン伝導度を示した。このことからBNCT以外に、液状電解質としての利用が可能であることがわかった。
以上の実施例から明らかなように、イミダゾール系イオン性化合物(イオン液体)のカルベン化を経由する合成法を応用した簡易な手法によって、2炭素置換カルボラン型アニオン[closo-1,2-C2B10H11]-を有する新規の溶融塩4a [EMIm]+[closo-1,2-C2B10H11]-、4b [BMIm]+[closo-1,2-C2B10H11]- 、4c[BEIm]+[closo-1,2-C2B10H11]-を合成することができた。本発明の合成法は、従来の方法よりも効率が良く、しかも、2炭素置換カルボランの種々の誘導体のアニオン種をアニオン席に有する溶融塩の合成が可能である。
化合物4aの1H-NMR測定結果を示す図である。 化合物4aの11B-NMR測定結果を示す図である。 化合物4aのDSC測定結果を示す図である。 化合物4aのイオン伝導度測定結果を示す図である。 o−カルボラン、m−カルボラン及びp−カルボランを示す図である。 従来方法を示す図である。

Claims (4)

  1. 以下の式(1)で表される2炭素置換カルボラン型溶融塩。
    (式中、Zは、置換されていてもよい、o−カルボランア二オン、m−カルボランアニオン又はp−カルボランアニオンを表し、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基を表し、R3及びR4は、水素原子又は置換基を表す。)
  2. 前記式(1)中、Z-は置換されていてもよいo−カルボランアニオンを表す、請求項1に記載の2炭素置換カルボラン型溶融塩。
  3. 前記式(1)中、R1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基を表す、請求項1又は2に記載の2炭素置換カルボラン型溶融塩。
  4. 以下の式(2)で表されるイミダゾリウム誘導体カチオンをカチオン席に有する塩を準備する工程と、
    (式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基を表し、R3及びR4は、水素原子又は置換基を表す。)
    前記塩の前記イミダゾリウム誘導体カチオンのイミダゾリウム環の2位の炭素原子をカルベン化してカルベン化イミダゾリウム誘導体を得る工程と、
    前記カルベン化イミダゾリウム誘導体に、置換されていてもよいo−カルボラン、m−カルボラン又はp−カルボランを接触させてカルボランアニオンを生成させる工程と、
    を備える、2炭素置換カルボラン型溶融塩の製造方法。
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