JP2010054109A - 加熱室内温度決定方法および加熱室内温度最適化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】各加熱室のヒータ面温度を暫定的に設定する工程と、暫定的に設定された各加熱室のヒータ面温度に基づいて加熱室内温度を決定する工程と、前記加熱室内温度条件下で得られる被加熱物ヒートカーブを計算する工程と、前記の計算により得られた被加熱物ヒートカーブと、予め入力された所望の被加熱物ヒートカーブとの誤差を判断し、誤差が許容範囲に入るまで、暫定的に設定された各室ヒータ面温度を変化させながら、前2工程を繰り返し、誤差が許容範囲となったとき当該ヒートカーブ計算の引数として用いた加熱室内温度を最適加熱室内温度として採用する工程を有する。
【選択図】図1
Description
暫定的に設定された各加熱室のヒータ面温度に基づいて、各加熱室のヒータ面以外の壁温度と室内流体温度とを計算し、前記の各加熱室のヒータ面温度とヒータ面以外の壁温度と室内流体温度とにより規定される加熱室内温度を決定する工程と、前記加熱室内温度条件下で得られる被加熱物ヒートカーブを計算する工程と、前記の計算により得られた被加熱物ヒートカーブと、予め入力された所望の被加熱物ヒートカーブとの誤差を判断し、誤差が許容範囲に入るまで、暫定的に設定された各室ヒータ面温度を変化させながら、前記、計算を行う2工程を繰り返し、誤差が許容範囲となったとき、当該ヒートカーブ計算の引数として用いた加熱室内温度を最適加熱室内温度として採用する工程と、を有することを特徴とするものである。なお、通常ヒータ自体は複雑な形態を有するが、本発明では各加熱室に設けたヒータの集合体を一様温度の面放射体として取り扱い「ヒータ面」という概念を用いている。また、「室内流体温度」は通常、「ヒータ面温度」及び「ヒータ面以外の壁温度」よりもかなり低いことが多く、被加熱物温度に影響を与える温度因子となる。従って、本発明では、「加熱室内温度」をこれら3種類の要素(「ヒータ面温度」「ヒータ面以外の壁温度」「室内流体温度」)により規定される温度と定義して計算を行っている。
ユーザーは図3に示すような、ソフトウエア操作画面を通じて、各室における被加熱物の目標温度1と滞在時間2を入力することができる。当該入力値に基づいて、希望ヒートカーブを描写するプログラムを用いて、所望の被加熱物ヒートカーブ3が得られる。
ST1で得られた所望の被加熱物ヒートカーブを実現しうる各加熱室内温度を計算するために、その初期条件として各加熱室のヒータ面温度を暫定的に設定される。当該設定は、例えば、各室において、被加熱物の滞在時間が5秒未満の場合には、所望のヒートカーブ+100℃、被加熱物の滞在時間が10秒未満の場合には、所望のヒートカーブ+50℃、それ以外の場合は、加熱時間を独立変数として線形補正を行って設定値とするプログラムを用いて行うことができる。なお、ヒータ面に暫定的に温度を与えるのではなく、単位面積あたりの発熱速度を指定して、当該ヒータ面の温度自体も計算値とする方法が別途考えられるが、その場合は暫定的な発熱速度の指定が極めて困難である。
ST2で得られた各加熱室ヒータ面温度の暫定値に基づいて各加熱室の室内温度を計算する当該工程では、各加熱室を各々閉空間とみなし、各々の閉空間における熱収支を、輻射熱解析を用いて計算する際に、下記式(1)〜(7)を連立させた基礎方程式を解くプログラムが実行される。なお、下記式(1)〜(7)を導くために、閉空間内において、伝熱3形態(放射・対流・伝導)すべてを考慮した上での熱収支を解析することを目的として、数値モデルを構築した。従来モデルによる解析では、温度あるいは伝熱量を指定する特別な場合にのみ対応可能であったが、当該数値モデルは、一般の放射非平衡状態を取り扱えるため、より実用的なモデルとなった。特に、非平衡系における流体の取り扱いに関して、実験値との整合性を失わない範囲で可能な限り流体モデルを単純化し、計算の高速化を図った。具体的には、おおむね加熱炉が被加熱物進行方向に長い直方体形状をしていることに着目し、計算領域をすべて長方形の分割面で囲まれた直方体で近似し、形態係数の正確化をはかったこと、および各閉空間内部での流体の供給・排出は考慮し、温度による流体の密度変化も考慮する一方で、流れを閉空間連結方向の1次元に限定したことがあげられる。
t: 時間,
<流体> Tg: 温度, V:体積, C:定圧比熱, M:質量流量,
<壁> Tw:温度, ρ:密度, c:比熱, S:壁面積, X:壁厚み, α:熱伝達率,
k:熱伝導率,σ:ステファン・ボルツマン定数
前記の加熱室内温度条件下で得られる被加熱物ヒートカーブを計算する工程では、下記の昇温理論式(8)〜(14)を解くプログラムを実行する。
t : 時間
θ : 被加熱物温度(計算の目的となる物理量)
x : 被加熱物x(進行)方向寸法 (x:0〜X)
y : 被加熱物y(幅)方向寸法 (y:0〜Y)
z : 被加熱物厚さ (z:0〜Z)
k : 被加熱物熱伝導率
a : 被加熱物熱拡散率
V : 被加熱物x方向速度
u : 炉内雰囲気温度
α : 対流熱伝達係数
uH1: 上面ヒータ温度
uH2: 下面ヒータ温度
εH1: 上面ヒータ放射率
εH2: 下面ヒータ放射率
εw : 被加熱物放射率
dF1: (被加熱物上面のある着目点から上面ヒータ面内のある微小面を見た) 形態係数
dF2: (被加熱物下面のある着目点から下面ヒータ面内のある微小面を見た) 形態係数
A1 : 上面ヒータ面面積
A2 : 下面ヒータ面面積
σ : ステファン・ボルツマン常数
(8)〜(12)式の4式は、被加熱物の四周(端面)での熱の授受を表す。一般に第3種境界条件とよばれ、端面での熱流束が、端面温度と周囲温度との差に比例するという考えに基づく。対流加熱による効果を表し、右辺は特にニュートンの冷却則とも呼ばれる。(13)と(14)の両式は、第3種境界条件に輻射(赤外線)加熱による効果を付加したものである。異なる2面間の輻射的熱交換は、ステファン・ボルツマンの法則が一般的に良く使われるが当該式は両面の温度がそれぞれある一定値に保たれているという前提でしか使用できない。(13)(14)の両式は、その点を改良し、相対する2面が任意の温度分布をなす場合にも適用できるようにしたものである。被加熱物面内にある微小面Δwを仮定し、相対する面(ヒータ面)も同様に細かく細分化することを考えると、Δwと全ヒータ面との熱交換は多くの2面間熱交換の総和としてとらえることができる。この考え方を基本にした(13)(14)式を被加熱物の上下面全面で成り立つと仮定すれば、平板状の被加熱物と任意の温度分布を持つ上下ヒータ面との熱交換を数式化したことになる。ただし、(13)(14)式に温度の4乗項が入っており解析的に解くことができない。従って何らかの数値的な方法で解を求める必要がある。本モデルでは、差分法を用いて、理論式を解析する。差分法は偏微分方程式を解く一般的な方法のひとつであり、連続的な微分方程式を、有限個の代表点に付いての代数方程式に変換する方法であるが、計算に際しては、その代表点を選ばなければならない。そのため、計算領域を多数の格子(メッシュ)に分割する必要が生ずる。このようにメッシュを設定することで、処理が困難な積分を、有限の足し算に変換できる。プログラム構築の容易さの観点から、上ヒータ面、被加熱物面、下ヒータ面それぞれについて、両面の格子点x、y座標を一致させることが好ましい。なお、18×18のメッシュに対応したプログラムをひとつ構築しておけば、計算対象の寸法変化に柔軟に対応できる。
前記の計算により得られた被加熱物温度に基づいてヒートカーブを描写するプログラムを用いて、被加熱物温度計算値に基づく被加熱物ヒートカーブ4が得られる。ST5、ST6では、当該被加熱物ヒートカーブ4と、予め入力された所望の被加熱物ヒートカーブ3との誤差を検討するプログラムが実行される。誤差が許容範囲内の場合、当該ヒートカーブ計算の引数として用いた加熱室内温度が最適化の目的値として採用される。一方、誤差が許容範囲外の場合、ST7で暫定的に設定された各室ヒータ面温度を変化させ、当該変化後のヒータ面温度に基づき、再度ST3〜ST6までのプログラムが実行される。前記誤差が許容範囲内になるまで、以上の手順が反復される。
誤差が許容範囲の設定値外の場合、各室において以下のプログラムを適用する。
1)前記誤差(=Xとする)が±10℃以内の部屋は「計算完了」とし、再計算しない。2)Xが±10℃を上回った部屋のみ再度自動で室内温度設定。3)上面温度の再設定値は、各室において、Xを基本として、被加熱物厚み=300μmの時は、設定補正量=X*1.5、被加熱物厚み=100μmの時は、設定補正量=X、その間は、被加熱物厚みを独立変数として線形補間する。
なお、前記計算工程で得られたヒータ面温度値は、そのまま実際のヒータ制御温度として採用することはできない。その理由は、ヒータと温度計の位置関係にある。特にヒータが図2の3に示した近赤外線ランプ型であると、ヒータの構造上、発熱体自身の温度を直接、温度計により接触測定することは困難である。その場合ヒータ出力は、ヒータ近傍に設置される温度計が検知する温度を一定に保つように調整され、それを制御温度と呼ぶ。したがって、制御温度は、前記ヒータ面およびヒータ以外の面からの輻射、および室内流体による対流伝熱、の複合により規定される温度となるため、それを決定するために更に別途ロジックによる計算が必要となる。その具体的なロジックは加熱室の構造により変動するが、おおむねST6までの工程で決定されたヒータ面温度、ヒータ面以外の壁温度及び室内流体温度の単純平均もしくは加重平均値となる。その後、当該値が制御系に通信されて、実際の加熱室のヒータが当該制御値により、出力制御される。
図1に示したフローチャートに従って構築されたシミュレーションソフトに、ST3及びST4の計算モデルを適用し、室内温度最適化の迅速性を評価した。所望のヒートカーブを入力し、加熱室内温度最適化の迅速性について評価した。シミュレーションを開始してから約10分で、所望のヒートカーブと誤差3%以内のヒートカーブを実現する加熱室内温度が決定された。コンピュータは、汎用コンピュータを使用した。
熱流体解析用の市販ソフトウェアプログラムを使用し、図1に示したフローチャートに従って加熱室内温度最適化時間を評価した。所望のヒートカーブと誤差3%以内のヒートカーブを実現する加熱室内温度が決定されるまでに、約10時間が必要であった。コンピュータは、汎用コンピュータを使用した。
2 被加熱物
3 ヒータ
4 ソフトウエア操作画面に表示された製品温度入力値
5 ソフトウエア操作画面に表示された製品温度維持時間
6 ソフトウエア操作画面に表示された所望のヒートカーブ
7 ソフトウエア操作画面に表示された設定温度計算値
8 ソフトウエア操作画面に表示された計算値に基づくヒートカーブ
Claims (4)
- 搬送方向に区画された複数の加熱室内を順次移動しながら加熱される被加熱物が、所望のヒートカーブにより加熱されるように各加熱室の温度状態を自動調整するための、加熱室内温度決定方法であって、
予め入力された所望の被加熱物ヒートカーブを実現しうる各加熱室内温度を計算するために、その初期条件として各加熱室のヒータ面温度を暫定的に設定する工程と、
暫定的に設定された各加熱室のヒータ面温度に基づいて、各加熱室のヒータ面以外の壁温度と室内流体温度とを計算し、前記の各加熱室のヒータ面温度とヒータ面以外の壁温度と室内流体温度とにより規定される加熱室内温度を決定する工程と、
前記加熱室内温度条件下で得られる被加熱物ヒートカーブを計算する工程と、
前記の計算により得られた被加熱物ヒートカーブと、予め入力された所望の被加熱物ヒートカーブとの誤差を判断し、誤差が許容範囲に入るまで、暫定的に設定された各室ヒータ面温度を変化させながら、前記、計算を行う2工程を繰り返し、誤差が許容範囲となったとき、当該ヒートカーブ計算の引数として用いた加熱室内温度を最適加熱室内温度として採用する工程と、
を有することを特徴とする加熱室内温度決定方法。 - 暫定的に設定された各加熱室ヒータ面温度に基づいて各加熱室内温度を計算する工程は、
各加熱室を各々閉空間とみなし、空間分割法に基づく輻射熱解析を用いて各々の閉空間における熱収支を計算する際に、
(a) 流体の流れを閉空間の連結方向の1次元に限定した上で、閉空間内部での流体の供給・排出を考慮し、かつ、温度による流体の密度変化を考慮した流体温度に関するエネルギーの保存の式と、
(b) 各閉空間を構成する壁面を分割して分割面とし、分割面内温度一定と仮定した上で、各分割面厚み方向の壁温度に関する熱伝導方程式と、
(c) 各加熱室内壁面の射度に関する行列による代数方程式
を連立して解くことを特徴とする請求項1記載の加熱室内温度決定方法。 - 加熱室内温度条件下で得られる被加熱物ヒートカーブを計算する工程は、
被加熱物形状を平板状に限定し、熱吸収は全て被加熱物の表面からの熱流入によるものとみなし、熱伝導解析により被加熱物の温度分布を計算する際に、
(a) 被加熱物内部での熱移動を表わす基礎方程式と、
(b) 輻射と対流の効果を加味する境界条件式
を解くことを特徴とする請求項1または2記載の加熱室内温度決定方法。 - 請求項1〜3の何れかに記載の加熱室内温度決定方法で最適加熱室内温度として採用された加熱室内温度に基づいて各加熱室制御温度設定値を計算する工程と、計算により得られた各加熱室制御温度設定値を各加熱室ヒータ制御系に通信する工程と、を有することを特徴とする加熱室内温度最適化方法。
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