JP2010042972A - 13cの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原料として汎用の炭化水素化合物を用い、放射性廃棄物が発生しない非放射性の安定同位体13Cの製造方法を提供する。
【解決手段】炭素化合物原料と水素とイオウ化合物とを反応触媒としてニッケル焼結体又はニッケル合金の焼結体の存在下に500℃〜1000℃で反応させる。イオウ化合物のイオウ含有率が前記炭素化合物に対して50ppm〜7%であり、前記水素の圧力が9.8×10Pa〜22.3×10Paである。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素化合物を原料として、13C(質量数13の非放射性の炭素の安定同位体)を製造する方法に関するものであり、特に低温において非放射性の炭素の安定同位体である13Cを得るための13Cの製造方法に関するものである。
従来、重水素と三重水素を1億度以上に加熱し、核融合反応を起こしてヘリウム等を生成し非常に大きな核融合エネルギーを得る方法が行われている。この方法は原料がほぼ無尽蔵で、原理的に暴走しない、二酸化炭素の発生が無く、高レベルの放射性廃棄物が生じない等の利点がある。
また、特開平08−211191号公報(特許文献1)には、重水素、三重水素を数千アンペアの大電流によるアーク放電によりプラズマを発生させ、数千万度で核融合反応させる技術が開示されている。
また、非特許文献1に示されたように、現在、常温核融合の研究も活発になされているが、未だ学問研究の段階で、工業化レベルの域には達していない。
また、PCT公報WO2008/072546(特許文献2)には、簡易装置により、反応温度を大幅に低下させ、1000℃以下の温度とし、原料として汎用の炭化水素化合物を用いて、水素とイオウ化合物の存在下に、白金触媒、パラジウム触媒等を用いて、放射性廃棄物を発生させることがなく、非放射性の炭素の同位体である13Cを得るための13Cの製造する技術が開示されている。
特開平08−211191号公報 WO2008/072546 日本原子力学会誌 Vol.47,No.9(2005)大阪大学 高橋 亮人、三菱重工株式会社 岩村 康弘著 p.62−p.63
しかしながら、従来の技術によれば、原料として汎用の炭素化合物を用いて、水素とイオウ化合物の存在下に放射性廃棄物を発生させることがなく、非放射性の炭素の安定同位体である13Cを得るための13Cの製造方法では、反応触媒として生産量が少なく特殊な白金触媒やパラジウム触媒等を用いるために、汎用的な技術とすることが難しい問題があった。
以上の課題を解決するために、先ず第1の発明は、炭素化合物を原料として、水素とイオウ化合物と反応触媒の存在下で、500℃〜1000℃の反応により、非放射性の炭素の安定同位体である13Cを得る製造方法において、反応触媒がニッケル焼結体又はニッケル合金の焼結体であることを特徴とする13Cの製造方法である。
また、第2の発明は、前記イオウ化合物のイオウ含有率が前記炭素化合物に対して50ppm〜7%であることを特徴とする前記第1の発明に記載の13Cの製造方法である。
また、第3の発明は、前記水素の圧力が9.8×10Pa〜22.3×10Pa(10kg/cm〜250kg/cm)であることを特徴とする前記第1の発明に記載の13Cの製造方法である。
また、第4の発明は、炭素化合物を原料として、水素と不活性ガスの混合ガスとイオウ化合物と反応触媒の存在下で、500℃〜1000℃の反応により、非放射性の炭素の安定同位体である13Cを得ることを特徴とする前記第1の発明に記載の13Cの製造方法である。
本発明において、炭素化合物としては、大きく分類すると、気体、液体、固体が選ばれる。気体の代表例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素があり、液体の代表例としては、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、アントラセン、ガソリン、軽油、灯油、重油、クレソート油、コールタール等がある。更に固体の代表例としては、活性炭素、カーボンブラック、石炭、コークス等がある。これらは、単独で使用することも出来るし、上記の気体、液体、固体の炭素化合物をそれぞれ任意に混合して使用することも可能である。
また、本発明において、水素は原子核に陽子1個のもの(H)以外に原子核に陽子1個と中性子1からなる重水素(D)や陽子1つと中性子2からなる三重水素(T:トリチウム)等の水素の同位体も原料として可能であるが、工業的に汎用ガスとして使用される水素が最も好ましい。
また、本発明において、不活性ガスと水素を併用しても本発明の反応が進行する。不活性ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスが挙げられる。例えば水素をHeで100倍ほど希釈し、水素ガス圧力が1気圧(1013×10Pa)のレベルでも、反応温度を高めてやれば、同等な反応速度を得ることができる。安全性の面から、ほとんどの物質と反応しない不活性ガスとの併用が可能であり好ましい。
また、本発明のイオウ(硫黄)化合物は、本発明の反応で含イオウラジカルが生じるものであれば可能で、代表例としては、硫化水素、二酸化イオウ等の無機イオウ化合物、およびメチルメルカブタン、硫化メチル、二硫化メチル、ベンゾチオフェン等の有機イオウ化合物、およびイオウ単体から選ばれる。これらは単独あるいは混合して使用することができる。
反応時のイオウ添加量(イオウ純分)としては、原料の炭素化合物に対して50ppm以上であれば良い。50ppm以下では反応進行速度が遅い場合があり、実用的でない。通常、コールタール、クレオソート油、重油等のイオウ含有率は50ppmから7%以下の範囲であり追添の必要はない。イオウ含有率が7%を超えた場合、反応を阻害することはないが、常温でイオウが固体として析出する場合があり、その時、容器、配管内にイオウが付着して支障をきたすので、好ましくない。
反応温度と圧力については、温度と圧力が高い程、反応はより促進する。しかし、閉鎖型の反応装置では材料の制約から圧力、温度とも上限が決められる。反応における水素の圧力は、9.8×10Pa〜22.3×10Pa(10kg/cm〜250kg/cm)が好ましい。水素の圧力が9.8×10Pa(10kg/cm)未満でも温度が十分高い場合は反応を進行させることができる。例えば、1気圧(1013×10Pa)でも温度を上げれば、100気圧(1013×10Pa)の水素単独の場合と同等な速度で反応が進行する。
反応温度としては、500℃〜1000℃が好ましい。更に600℃〜900℃がより好ましい。600℃よりも低い温度では水素ガスの圧力が十分高くないと反応が起こり難く、900℃を超えると発電や化学工業プラント用の高温装置部材の適用が難しく好ましくない。
反応触媒としては工業的に製造が容易で反応性の高いニッケル焼結体又はニッケル合金触媒の焼結体が好ましい。ニッケル合金としては用いられる合金用金属としては、鉄、クロム、コバルト、モリブデン、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ランタン等が上げられる。
本発明によって得られる13Cの生成とエネルギー発生の原因のメカニズムは、定かでないが、1939年ドイツの物理学者のベーテとワイツゼッカーの提唱した下記のようなC−N−O循環反応の結果、下記の(1),(2),(3)式で示される部分反応の発生であると推定される。
Figure 2010042972
本発明によれば、汎用の炭素化合物を原料として水素とイオウ化合物の存在下に、反応触媒として汎用の工業材料としてニッケル焼結体又はニッケル合金の焼結体を用いることが出来る。また、非放射性の炭素の安定同位体である13Cとエネルギー発生を同時に得ることが出来る。反応装置も簡易なものでよく、反応制御も温度と圧力を制御することによって容易に行われる。
以下、図面を参照しながら本発明に係る13Cの製造方法の一実施形態を具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施形態によって何ら限定されるものではない。また、本発明に係る13Cの製造方法によって得られた13Cの分析は、GC−MS(Gas Chromatography−Mass Spectrometry;ガスクロマトグラフィー質量分析)、13C−NMR(Nuclear Magnetic Resonance;核磁気共鳴)法により行うことが出来る。
図1に示すリアクタ1は、胴体部外径56mm、内径26mmで内容積が88ccのSUS製の円筒型オートクレーブ2を電源3aに接続された電熱式の加熱ヒータ3内に設置し、オートクレーブ本体2a内に炭素化合物11を原料としてイオウ化合物を含むクレオソート油(イオウ含有率0.07%)を1ccと、空隙率(面積率)5%の100%純度のニッケル焼結体を挿入した後、金属製のガスケット10を介してオートクレーブ蓋2bの凸部2b1をオートクレーブ本体2aの凹部2a1に嵌合させ、オートクレーブ本体2a及びオートクレーブ蓋2bのそれぞれの周縁部の6箇所に設けられた貫通孔2a2,2b2に6本のボルト5を挿通し、該ボルト5にナット12を螺合締結してオートクレーブ蓋2bをオートクレーブ本体2aに固定する。
その後、水素供給バルブ7を開放してオートクレーブ2内に水素ガスを供給しながら排気バルブ6を数分間開いたままにして該オートクレーブ2内に残留した空気を水素ガスに置換する。その後、排気バルブ6を閉めてオートクレーブ2内の水素ガスの圧力を100気圧(1013×10Pa)まで上昇させてオートクレーブ2内に水素を充填した後、水素供給バルブ7を閉じる。このようにして、水素ガスを封入したオートクレーブ2が設置された加熱ヒータ3に電源3aから通電してオートクレーブ2の内部温度が640℃になるまで加熱し、該加熱ヒータ3への通電を停止した。その後反応炉の温度はオートクレーブの外壁面の温度より10〜20℃高く推移した。
尚、図1において、8a,8bは熱電対温度計であり、熱電対温度計8aはオートクレーブ2内部に設置されて該オートクレーブ2内部の温度を測定し、熱電対温度計8bはオートクレーブ2の外壁面に設置されて該オートクレーブ2の外壁面の温度を測定し得るものである。熱電対温度計8a,8bにより測定された温度データ情報はパーソナルコンピュータ9に送られて図2に示されるように記録される。
熱電対温度計8a,8bにより測定されたオートクレーブ2内外の温度測定結果を図2に示す。図2において、Cell tempは熱電対温度計8aにより測定されたオートクレーブ2の内部温度を示す。Heater tempは熱電対温度計8bにより測定されたオートクレーブ2の外壁面の温度を示す。図2に示すように、加熱ヒータ3による加熱を停止して後にオートクレーブ2の各部温度が上昇する現象が見られたが、オートクレーブ2の温度を室温に戻して該オートクレーブ2内の残留ガスを採取してから3日後にGC−MS(Gas Chromatography−Mass Spectrometry;ガスクロマトグラフィー質量分析)によりガス成分分析を行った。
その結果、ガス成分は、CO(一酸化炭素)、CH(メタン;Methane),C(エタン;Ethane),C(プロパン;Propane),C10(ブタン;Butane),C(ベンゼン;Benzene),C(トルエン;Toluene)の炭化化合物成分であることが分かった。
また、マススペクトル(Mass Spectrometry)の分析の結果より、ガス成分中に質量数13の非放射性の炭素の安定同位体13Cが確認された。
また、オートクレーブ2内部から回収された固形カーボン状の塊(かたまり)と微量の液体の合計重量は、ほほ充填したクレオソート油と同等であった。
図2において、Cell tempで示す熱電対温度計8aにより測定されたオートクレーブ2の内部温度が、Heater tempで示す熱電対温度計8bにより測定されたオートクレーブ2の外壁面の温度よりも高いことから、オートクレーブ2内部で核融合による発熱反応が起こっていることが分かる。
比較例1
前記実施例1で使用したリアクタ1からなるオートクレーブ・加熱装置を使用して、触媒としてニッケル焼結体に変えて100%純度の密実で表面が平滑なニッケルの薄板をオートクレーブ本体内に挿入する他は、前記実施例1と同じ条件・操作で水素ガスを100気圧(1013×10Pa)で封入し、加熱ヒータ3によりオートクレーブ2を加熱して該オートクレーブ2内部の温度を室温から640℃まで加熱した。オートクレーブ2の内部温度は上昇せず、発熱がほとんど見られなかった。
前記実施例1で使用したリアクタ1からなるオートクレーブ・加熱装置を使用して、オートクレーブ内に触媒としてニッケル焼結体とクレオソート油1ccを入れて。前記実施例1と同様な操作で水素ガスを1気圧(10.13×10Pa)さらにヘリウム70気圧(7091×10Pa)にしてHeater tempを640℃に設定した。42時間後、Cell tempは設定温度より約30度高くなり、発熱反応が確認された。反応後にオートクレーブ内に残った固形物を分析した結果、炭素の50%以上が炭素の安定同位体13Cであることが確認された。
本発明は、原料として汎用の炭素化合物を用い、水素とイオウ化合物の存在下に放射性廃棄物を発生させることが無く、非放射性の炭素の安定同位体13Cを得る13Cの製造方法を提供するものである。
実験装置としてのリアクタの概略図である。 実施例1におけるリアクタの温度変化を示した図であり、Cell tempはオートクレーブ内部温度を示し、Heater tempはオートクレーブ外壁面の温度を示したものである。
符号の説明
1…リアクタ
2…オートクレーブ
2a…オートクレーブ本体
2a1…凹部
2a2…貫通孔
2b…オートクレーブ蓋
2b1…凸部
2b2…貫通孔
3…加熱ヒータ
3a…電源
4…ニッケル焼結体
5…ボルト
6…排気バルブ
7…水素供給バルブ
8a,8b…熱電対温度計
9…パーソナルコンピュータ
10…ガスケット
11…炭素化合物

Claims (4)

  1. 炭素化合物を原料として、水素とイオウ化合物と反応触媒の存在下で、500℃〜1000℃の反応により、非放射性の炭素の安定同位体である13Cを得る製造方法において、反応触媒がニッケル焼結体又はニッケル合金の焼結体であることを特徴とする13Cの製造方法。
  2. 前記イオウ化合物のイオウ含有率が前記炭素化合物に対して50ppm〜7%であることを特徴とする前記請求項1記載の13Cの製造方法。
  3. 前記水素の圧力が9.8×10Pa〜22.3×10Pa(10kg/cm〜250kg/cm)であることを特徴とする前記請求項1に記載の13Cの製造方法。
  4. 炭素化合物を原料として、水素と不活性ガスの混合ガスとイオウ化合物と反応触媒の存在下で、500℃〜1000℃の反応により、非放射性の炭素の安定同位体である13Cを得ることを特徴とする前記請求項1の発明に記載の13Cの製造方法である。
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