JP2010042430A - 鋼板のレーザ溶接方法、レーザ溶接装置、および溶接鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】板幅方向に走行し、鋼板の表面に平行に貫通する磁束を発生させる誘導加熱装置で突き合わせ部分を加熱した後にレーザ溶接する場合に、溶接欠陥の発生を防止することのできる鋼板のレーザ溶接方法、レーザ溶接装置、および溶接鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】加熱は、複数の鋼板のうち板幅が狭い方の鋼板の板幅方向の一方の端部から他方の端部に向けて移動しつつ鋼板の表面に平行に該鋼板を貫通する磁束を発生させる誘導加熱装置により行われ、誘導加熱装置のコイルの長さをLとしたとき、鋼板の他方の端部からみて0.6Lである位置にコイルの尾端が達するまでに誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E1’に比べ、コイルの尾端が鋼板の他方の端部から0.6Lの位置を通過して鋼板の他方の端部に達するまでに誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E2’の方が小さくなるように加熱が行われる。
【選択図】図6
【解決手段】加熱は、複数の鋼板のうち板幅が狭い方の鋼板の板幅方向の一方の端部から他方の端部に向けて移動しつつ鋼板の表面に平行に該鋼板を貫通する磁束を発生させる誘導加熱装置により行われ、誘導加熱装置のコイルの長さをLとしたとき、鋼板の他方の端部からみて0.6Lである位置にコイルの尾端が達するまでに誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E1’に比べ、コイルの尾端が鋼板の他方の端部から0.6Lの位置を通過して鋼板の他方の端部に達するまでに誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E2’の方が小さくなるように加熱が行われる。
【選択図】図6
Description
本発明は、鋼板の突き合わせ部分のレーザ溶接方法、レーザ溶接装置、および溶接鋼板の製造方法に関する。
一般的に、熱延鋼板や冷延鋼板等の鋼板を処理するプロセスライン(酸洗、焼鈍、圧延、巻戻し、検査等のライン)においては、連続的に鋼板が供給され、供給された鋼板を連続的に処理する連続ラインがよく用いられる。
このような連続的に処理可能な連続ラインに対して、処理する鋼板を連続的に供給するためには、この連続ラインの上流工程において、鋼板と鋼板を突き合わせ溶接することによって途切れることなく鋼板を連続ラインへ供給する必要がある。
この連続ラインの上流工程に配置される一般的な溶接装置として、先行する鋼板である溶接材(以下、先行被溶接材という)の端面と、先行被溶接材に対して後行する鋼板である溶接材(以下、後行被溶接材という)の端面とを溶接して接続する溶接装置がある。さらに、溶接する被溶接材が高炭素鋼及び高張力鋼板である場合に、生産性の向上、品質の安定化を目的としてレーザ光を用いて溶接するレーザ溶接装置がよく用いられている。しかしながら、このような高炭素鋼および高張力鋼板のレーザ溶接においては、溶接後の急冷による被溶接材内部のマルテンサイト生成に伴い、溶接割れを生起することが多い。そのため、マルテンサイト生成度合いを低減して溶接割れを少なくさせるため、被溶接材の急激な温度変化を低減する必要があった。
例えば、特許文献1には、レーザ溶接を行う端面を相対させた鋼板の突き合わせ溶接部に沿い溶接機の溶接トーチの移動に同期して走行する台車と、この台車に回転可能に配設するとともに、台車の走行に伴い溶接部に下方から裏当てするように構成したロータリー式裏当て部材と、台車の走行に伴い溶接トーチに先行して突き合わせ部及びその近傍部分を予熱するコイルを備える板継溶接装置が記載されている。
特許文献2には、高周波誘導加熱装置のコイル部に関し、被加熱材の両端部における加熱コイル部と被加熱材との間の間隔よりも、被加熱材の中央部における加熱コイル部と被加熱材との間の間隔の方が小さくなるように配置する高周波誘導加熱装置について記載されている。これによれば、レーザの突き合わせ溶接において鋼板の板厚を貫通する磁束を発生させる誘導加熱コイルと被加熱材との間隔を幅方向に調節することができ、幅方向の温度が均一になるように予熱して溶接割れを防止することが可能となる。
特開平6−312285号公報
特開平4−242094号公報
連続ラインに鋼板が供される前には、鋼板表面のスケール粉などの異物を除去するために鋼板表面にスプレー水を供給することが一般的に行われている。あるいは、鋼板表面のスケール粉等の異物がロールに付着しないように、ロール表面にスプレー水を吹きかけながら通板する場合もある。また、スプレー水を供給しない場合であっても、鋼板が水冷却工程などを経ている場合には、鋼板に冷却水が残存していることがある。従って、上記した鋼板の溶接を行う際には、鋼板端部の突き合わせ部分が洗浄水や冷却水により濡れている場合が多い。このように水分が残存した突き合わせ部にレーザを照射して溶接を行うと水蒸気が発生する。この水蒸気は、溶融金属を吹き飛ばして溶接部の表面が大きく窪んだ欠陥を形成したり、溶接金属中に残存してブローホール欠陥を形成する。このような欠陥を含んだ溶接部は、接合強度の低下を招く。その結果、連続ラインの途中で溶接部から鋼板が破断し、製造ラインを止めて復旧させることが必要となる。これは製造効率上回避すべき問題である。一方、レーザ溶接を用いるために水による洗浄をしない場合にはスケール粉等が鋼板に残り、これが後の処理により鋼板表面に生じるキズ等の原因となる場合があった。
特許文献1に記載の板継溶接装置では、被溶接材の板厚方向に磁束を発生させるので、被溶接材の端面間の接触状況により貫通磁束量が変化し、安定した均一な加熱が難しい。従って、水分除去、又はその他の理由で加熱した場合に、当該不均一な加熱に起因する被溶接材の変形が生じ、溶接欠陥が発生することがあった。
また、特許文献2に記載の高周波誘導加熱装置では、コイル部が被溶接材の板幅より大きいことが必要であり、大きな板幅の鋼板に対応するためには大きなコイル部が必要であった。
一方、これに対して幅方向に走行する誘導加熱コイルを用い、レーザ溶接の前に突き合わせ部を誘導加熱する方法においては、部分加熱にともない被溶接材が変形するため、溶接欠陥が発生しやすい。
そこで本発明は、板幅方向に走行し、鋼板の表面に平行に貫通する磁束を発生させる誘導加熱装置を用いて、突き合わせ部分を加熱した後にレーザ溶接する場合において、溶接欠陥の発生を防止することのできる鋼板のレーザ溶接方法、レーザ溶接装置、および溶接鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
以下、本発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、複数の鋼板の端面同士を突き合わせ、該鋼板の突き合わせ端部を加熱し、加熱した突き合わせ端部にレーザビームを照射して突き合わせ端部を溶接する鋼板のレーザ溶接方法であって、加熱は、複数の鋼板のうち板幅が狭い方の鋼板の板幅方向の一方の端部から他方の端部に向けて移動しつつ鋼板の表面に平行に該鋼板を貫通する磁束を発生させる誘導加熱装置により行われるとともに、誘導加熱装置に備えられるコイルの長さをLとしたとき、鋼板の他方の端部からみて0.6Lである位置にコイルの尾端が達するまでに誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E1’に比べ、コイルの尾端が鋼板の他方の端部からみて0.6Lである位置を通過して鋼板の他方の端部に達するまでに誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E2’の方が小さくなるように加熱が行われることを特徴とする鋼板のレーザ溶接方法により前記課題を解決する。
ここで、「複数の鋼板のうち板幅が狭い方の鋼板」において、複数の鋼板の板幅が異なる場合を示しているが、本発明ではこのように板幅が異なる場合の他、当該複数の鋼板が同じ板幅である場合も含むものとする。このとき、板幅が狭い方の鋼板は複数の鋼板のうちいずれの鋼板であってもよい。以下同様である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鋼板のレーザ溶接方法において誘導加熱装置の移動速度は一定であり、誘導加熱装置が発生させる磁束を変更することにより単位時間当たりのエネルギ平均値E1’、E2’を調整することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の鋼板のレーザ溶接方法において、鋼板の他方の端部からみて0.6Lの位置にコイルの尾端が達するまでは誘導加熱装置の出力は一定とし、鋼板の他方の端部からみて0.6Lの位置をコイルの尾端が通過した後に誘導加熱装置の出力を減少させることによりエネルギ平均値E1’、E2’を調整することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼板のレーザ溶接方法において、エネルギ平均値E1’とエネルギ平均値E2’とがE2’/E1’≦0.7を満たすことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼板のレーザ溶接方法において、突き合わせ部の加熱により該突き合わせ部の鋼板表面温度がいずれも200℃以上に達することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鋼板のレーザ溶接方法で溶接する工程を含むことを特徴とする溶接鋼板の製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
請求項7に記載の発明は、複数の鋼板の端面同士を突き合わせ、該鋼板の突き合わせ部分にレーザビームを照射して突き合わせ部分を溶接する鋼板のレーザ溶接装置であって、複数の鋼板のうち板幅が狭い方の鋼板の板幅方向の一方の端部から他方の端部に向けて走行しながら鋼板の表面に平行に貫通する磁束を発生させることにより突き合わせ部分を加熱する誘導加熱装置と、誘導加熱装置に備えられるコイルの長さをLとしたとき、鋼板の他方の端部からみて0.6Lの位置にコイルの尾端が達するまでに誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E1’に比べ、コイルの尾端が鋼板の他方の端部からみて0.6Lの位置を通過して鋼板の他方の端部に達するまでに誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E2’を小さくするように誘導加熱装置の磁束を前記鋼板の板幅方向に調整する調整手段と、誘導加熱装置により加熱された突き合わせ部分をレーザにより溶接するレーザ溶接手段とを備えることを特徴とする鋼板のレーザ溶接装置を提供することにより前記課題を解決する。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の鋼板のレーザ溶接装置において、鋼板の他方の端部には、鋼板の表面温度を測定する温度計、鋼板の突き合わせ部分の間隔を測定する装置、および突き合わせ部における複数の鋼板の段差を測定する装置の少なくとも1つを具備することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の鋼板のレーザ溶接装置において、レーザ溶接手段は、並列された複数のファイバ状またはディスク状の結晶体から構成されるレーザビーム発振器と該発振器から放出されるレーザ光を伝送する光ファイバとを備えることを特徴とする。
本発明によれば、板幅方向に走行し、鋼板の表面に平行に貫通する磁束を発生させる誘導加熱装置を用いて、突き合わせ部分を加熱した後にレーザ溶接する方法において、アンダーフィル、段状等の溶接欠陥の発生を防止することのできる鋼板のレーザ溶接方法、レーザ溶接装置、および溶接鋼板の製造方法を提供することが可能となる。
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
以下に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
図1は、1つの実施形態に係るレーザ溶接装置1の斜視図である。図1に示すように、レーザ溶接装置1は、板状の被溶接材を保持するクランプ2と、図1のY方向に移動しながらX方向に搬送される被溶接材を溶接する溶接キャリッジ3と、YAG系レーザ発振器、又は複数のファイバ状結晶体を並列に配置したファイバ状レーザ発振器あるいはディスク状レーザ発振器等の発振器4を備える。加えて、この発振器4から発光された光を伝送する光ファイバ12及び該光ファイバ12により伝送されたレーザ光を被溶接材の突き合わせ部に照射する加工ヘッド9を具備する。
なお、ファイバ状レーザ発振器とは、ダブルクラッドファイバのコアファイバにYb(イッテリビウム)を添加し、このダブルクラッド層に導入されたLD(レーザダイオード)励起光が伝送することで、コアファイバが励起・増幅することによりレーザビームを取り出すモジュールを並列に接続して出力を増加するように構成された公知の発振器である。
本発明に係るレーザ溶接装置は、この他にもあらゆるレーザ発振器に、例えば炭酸ガスレーザ発振器に適用可能であり、同様に被溶接材の溶接部の形状不良を低減させることができる。
なお、ファイバ状レーザ発振器とは、ダブルクラッドファイバのコアファイバにYb(イッテリビウム)を添加し、このダブルクラッド層に導入されたLD(レーザダイオード)励起光が伝送することで、コアファイバが励起・増幅することによりレーザビームを取り出すモジュールを並列に接続して出力を増加するように構成された公知の発振器である。
本発明に係るレーザ溶接装置は、この他にもあらゆるレーザ発振器に、例えば炭酸ガスレーザ発振器に適用可能であり、同様に被溶接材の溶接部の形状不良を低減させることができる。
図2は、レーザ溶接装置1の溶接キャリッジ3の断面を示した断面図である。図2に示すように、溶接キャリッジ3は、搬送される被溶接材の両端を切断する手段であるギロチンシャー5(5a、5b)と、クランプ2により保持された被溶接材のうち突き合わされた部分を板厚の上下方向から押圧することによって整形する手段である整形ロール6(6a、6b)を備えている。さらにレーザ溶接装置1は、整形ロール6(6a、6b)により整形された被溶接材を誘導加熱する第1の加熱手段である予熱処理用誘導加熱ヘッド7と、予熱処理用誘導加熱ヘッド7により加熱された被溶接材にレーザ光を照射することによってこの被溶接材を溶接する手段である加工ヘッド9とを具備している。また、レーザ溶接装置1には、加工ヘッド9の直下に配置され、溶接中の先行被溶接材及び後行被溶接材の端面を下面から支えると共に、溶接中の被溶接材の下面から漏洩するレーザ光が外部に照射されるのを防止するバックロール8と、加工ヘッド9により溶接された被溶接材を誘導加熱する第2の加熱手段である後熱処理用誘導加熱ヘッド10と、加工ヘッド9により溶接された溶接部を板厚の上下方向から挟み込むことによって整形する加圧手段である加圧ロール11a、11bとが設けられている。
溶接キャリッジ3は、被溶接材を上下から挟むように配設され、サーボモータにより回転速度を制御されたボールネジ(図示せず)を介し、矢印Yの正方向、又は矢印Yの逆方向に移動する。また、ギロチンシャー5(5a、5b)、整形ロール6(6a、6b)、予熱処理用誘導加熱ヘッド7、バックロール8、加工ヘッド9、後熱処理用誘導加熱ヘッド10、及び加圧ロール11a、11bは所定の間隔を設けてY方向に並列されている。
図3は、クランプ2、および被溶接材を切断するギロチンシャー5を説明するための図である。図3に示すように、クランプ2は、先行被溶接材100aをクランプする前方クランプ2Fと後行被溶接材100bをクランプする後方クランプ2Rとを備えている。前方クランプ2Fは、前方クランプ下部2Fa、前方クランプ上部2Fb、及び前方クランプ上部2Fbを上下方向に駆動させる前方クランプシリンダ2Fcを備えている。同様に、後方クランプ2Rは、後方クランプ下部2Ra、後方クランプ上部2Rb、及び後方クランプ上部2Rbを上下方向に駆動させる後方クランプシリンダ2Rcを備えている。ここで、クランプ下部2Fa、2Raは、クランプ上部2Fb、2Rbに比べてその前方と後方との間隔が広く形成されている。これによりクランプ上部2Fb、2Rbでは突き合わせ面にできるだけ近い位置を押さえることができる。一方、クランプ下部2Fa、2Ra間には、下部シャー刃5a、予熱処理用誘導加熱ヘッド7、後熱処理用誘導加熱ヘッド10等の比較的大きい機器を被溶接材の下面に近づけることができる。
また、図3に示すように、ギロチンシャー5は、下部シャー刃5a、上部シャー刃5b、及び上部シャー刃5bを上下方向に駆動させるシリンダ5cとを備えている。そして、ギロチンシャー5は、溶接キャリッジ3の移動に伴い、前方クランプ2Fと後方クランプ2Rとの間に進入し、または後退する。
図4は、予熱処理用誘導加熱ヘッド7の加熱作用について説明するための図である。図4に示すように、予熱処理用誘導加熱ヘッド7は、鉄心7aとこの鉄心7aに巻回されたコイル7bとを備える。そして、電源(図示しない)からこのコイル7bに電流を通電して磁束(交番磁束)を発生させ、この磁束を被溶接材100a、100bに貫通させることにより被溶接材100a、100bに渦電流を誘起させて、この渦電流によりジュール熱を発生させて被溶接材100a、100bを加熱する。
ここで、予熱処理用誘導加熱ヘッド7の鉄心7a、コイル7bによって発生した磁束は、図4に示すように、被溶接材100a、100bの板厚方向に対して直角な方向、即ち、被溶接材100a、100bの表面に平行に貫通する。従って、被溶接材100a、100bの突き合わせ端面の板幅方向における接触・非接触の状態、すなわち被溶接材の対向した端面間の隙間の有無に拘わらず、被溶接材100a、100bを貫通する磁束量は板幅方向に同程度となる。これにより、予熱処理用誘導加熱ヘッド7は、被溶接材100a、100bの突き合わせ部(溶接部)を加熱昇温するので、該突き合わせ部を効率よく予熱することができる。なお、図4では、予熱処理用誘導加熱ヘッド7を被溶接材の下方に設ける場合を示したが、これに限定されるものでなく、被溶接材の上方に設けてもよい。
予熱処理用誘導加熱ヘッド7は、被溶接材100a、100bの板幅方向に走行する。図5に説明図を示した。図5では、被溶接材100a、100bの板幅方向を紙面左右方向とし、予熱処理用誘導加熱ヘッド7が被溶接材100a、100bの突き合わせ部の下方を当該板幅方向に左から右に走行する場面を模式的に示した。なお、図5において、Lは予熱処理用誘導加熱ヘッドに備えられるコイル7bの長さであり、Wは複数の被溶接材のうち板幅の狭い方の被溶接材の板幅である。本実施形態では2つの被溶接材100a、100bの板幅は同じである。本発明は当該複数の鋼板が同じ板幅である場合も含むものとし、このときにはWはいずれの鋼板の板幅であってもよい。
はじめに、図5(a)に示したように、予熱処理用誘導加熱ヘッド7は、該予熱処理用誘導加熱ヘッド7のコイル7bの先端が被溶接材100a、100bの幅方向一端(溶接始端)と同じ位置となるように配置される。そして当該図5(a)の状態から予熱処理用誘導加熱ヘッド7の出力が開始されるとともに、紙面右側への移動も始められる。そして最終的には図5(c)に示したようにコイル7bの尾端7tが被溶接材100a、100bの幅方向他端(溶接終端)と同じ位置になるまで移動する。このように予熱処理用誘導加熱ヘッドを移動式にすることにより、板幅の変更に応じて移動距離を変更するのみで対応することができ、汎用性、利便性を向上させることが可能である。本実施形態では上記のように被溶接材100a、100bの板幅が同じなので、溶接始端はいずれの被溶接材においても板幅方向一端となり、溶接終端は板幅方向他端となる。しかし、被溶接材の板幅が異なる場合には、溶接始端は板幅の狭い方の鋼板の板幅方向一端となり、溶接終端は板幅の狭い方の鋼板の板幅方向他端となる。
ここで、本発明では図5(a)に示した加熱開始から、図5(c)に示した加熱終了までの間の図5(b)に示した所定の位置で予熱処理用誘導加熱ヘッド7の出力を変更する。所定の位置は、図5(b)に示したように、コイル7bの尾端7t側においてコイル7bと被溶接材100a、100bとの重なりがXとなる位置である。ここで、当該Xを表すものとして、図5(a)におけるコイル7bの尾端7tを0(移動始点)とし、出力を変更する所定位置における尾端7tの位置を予熱制御開始点Sとする(図5(b)参照。)。従って、移動始点と予熱制御開始点との距離はSとなる。
さらに詳しく説明する。図6は、コイル7bの尾端7tの位置と、コイル予熱処理用誘導加熱ヘッド7の出力との関係を模式的なグラフで表したものである。図6は横軸にコイル7bの尾端位置を示した。横軸の左端は図5(a)におけるコイル7bの尾端位置であり、移動始点である。また、横軸の右端は図5(c)におけるコイル7bの尾端位置で、該尾端7tが被溶接材100a、100bの溶接終端位置に達した位置であり、これを移動終点とする。すわなち、移動終点はL+Wで表される。また、図6のグラフの2つの縦軸のうち左側の軸(第1縦軸)は予熱処理用誘導加熱ヘッド7の出力を示している。一方、右側の軸(第2縦軸)は、予熱処理用誘導加熱ヘッド7が単位時間当たりに出力するエネルギ平均値E’を表している。
図6からわかるように、この場合には移動始点から予熱制御開始点Sまでは予熱処理用誘導加熱ヘッド7の出力を一定値Q1とし、予熱制御開始点S以降に当該出力を単調に減少させ、移動終点で出力を0とする。またこの場合では、移動始点からの距離がL+W−0.6Lで表される位置に対して予熱制御開始点Sは移動終点側となるように制御されている。なお、ここでは予熱処理用誘導加熱ヘッド7を等速で移動させることを考える。
かかる場合、コイル7bの尾端7tが移動始点から位置L+W−0.6Lまで移動する際(図6にAで示した領域)に予熱処理用誘導加熱ヘッド7が出力した総エネルギはE1で表される。また、コイル尾端7tが位置L+W−0.6Lから移動終点まで移動する際(図6にBで示した領域)に予熱処理用誘導加熱ヘッド7が出力した総エネルギはE2で表される。ここで、コイル尾端7tが移動始点から位置L+W−0.6Lまで移動するために要した時間をt1とすると、この際に単位時間当たりに出力した予熱処理用誘導加熱ヘッド7が出力するエネルギ平均値E1’は、E1/t1で表される。同様に、コイル尾端7tが位置L+W−0.6Lから移動終点まで移動するために要した時間をt2とすると、この際に単位時間当たりに出力した予熱処理用誘導加熱ヘッド7が出力したエネルギ平均値E2’は、E2/t2で表される。本発明では当該E1’、E2’に関し、E1’>E2’、すなわちE2’/E1’<1.0が成立するように予熱処理誘導加熱ヘッド7の出力を調整することを特徴とする。ここでE2’/E1’を「エネルギ比率」とする。これによりアンダーフィル欠陥や段状の欠陥を抑制することができる。これら欠陥を抑制することができる理由については後で詳しく説明する。
予熱処理用誘導加熱ヘッド7の出力は、E2’/E1’<1.0を満たしていればよく、必ずしも図6のような出力パターンに限定されるものではない。図7〜図9には他の例を示した。図7(a)は、予熱制御開始位置Sより移動始点側は一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力Q1を維持し、予熱制御開始位置Sより移動終点側では予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とする場合である。これによればE2は移動始点から距離L+W−0.6である位置から予熱制御開始位置Sまでに出力された値となり、エネルギ平均値はE2’で表され、E2’/E1’<1.0を満たす。図7(b)は、予熱制御開始位置Sより移動始点側は一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力Q1を維持し、予熱制御開始位置Sより移動終点側では予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を当該一定の誘導加熱ヘッド出力より低い出力Q2に維持する場合である。これによってもE2’/E1’<1.0を満たす。
図8は、予熱制御開始位置Sより移動始点側は一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力Q1を維持し、予熱制御開始位置Sより移動終点側で予熱処理用誘導加熱ヘッド出力のON/OFFを繰り返す場合である。これによってもE2’/E1’<1.0を満たすことができる。
図9は、予熱制御開始位置Sが位置L+W−0.6Lに一致する場合である。図9(a)では、位置L+W−0.6Lより移動始点側は一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力Q1を維持し、位置L+W−0.6Lより移動終点側は、単調にその出力を減少させている。図9(b)では、位置L+W−0.6Lより移動終点側でその出力を0としている。かかる場合にもE2’/E1’<1.0を満たすことができる。
以上、図6〜図9に予熱処理用誘導加熱ヘッド出力の例を示したがE2’/E1’<1.0を満たすものであればこれらパターンに限定されることはない。ここではいずれも予熱制御開始点SがL+W−0.6Lの位置よりも移動始点側にくることはないが、予熱制御開始点SがL+W−0.6Lの位置よりも移動始点側であってもよい。また、上記したパターンはいずれも直線的な制御の組み合わせであったが、これに限定されるものではなく、曲線的なパターンでもよい。
以上の例では、予熱処理用誘導加熱ヘッドの移動速度を等速とし、該予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を変更することによりE2’/E1’<1.0とすることについて説明した。しかし、予熱処理用誘導加熱ヘッドの移動速度を変更することによってもこれが可能である。例えば予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を一定とし、図6の予熱制御開始位置S以降で予熱処理用誘導加熱ヘッドの移動速度を上げることにより、E2’/E1’<1.0を満たす加熱をすることもできる。
また、予熱中に実際に突き合わせ端部の温度、隙間量または段差量を測定し、これを予熱制御にフィードバックしてこの測定値に基づき、E2’を調整することもできる。これによれば、個々の予熱に対してより確実な予熱制御をすることが可能なり、さらに欠陥発生防止の信頼性を向上させることができる。突き合わせ端部の温度を測定する温度センサとしては、例えば赤外線を用いた非接触式温度測定器を挙げることができる。また、突き合わせ端部の隙間量や段差量の測定としては例えばレーザセンサを用いた非接触形状測定器を用いることができる。
ここで、E2’/E1’<1.0を満たすことにより、これを満たさない予熱でレーザ溶接をした場合に比べて、アンダーフィル欠陥や段状欠陥を抑制することが可能となる。ただし、より効果的にこれら欠陥を抑制する観点からはE2’/E1’≦0.7であることが好ましい。
予熱処理用誘導加熱ヘッド7による加熱の程度は上流工程における水洗浄の程度、被溶接材の板厚、予処理用誘導加熱ヘッド7の被溶接材との位置関係等により、適切な到達温度、及び保持時間が採用される。従って特に限定されるものではない。その中でも、確実に水分を除去してブローホール欠陥を防止すること、および製造効率及びエネルギ効率の観点から、突き合わせられた部分における被溶接材の表裏面の温度がいずれも200℃以上とされるとともに、これが1秒間以上保持される加熱が好ましい。これにより必要以上のエネルギを消費することなく、かつ製造効率を適切に維持することが可能となる。
当該ブローホール欠陥を防止する観点から、被溶接材の溶接端部の温度を温度センサにより測定し、例えば200℃以下となりそうな場合に予熱処理用誘導加熱ヘッドにその旨の信号を送る等することもできる。当該信号を受信した予熱処理用誘導加熱ヘッドは、その出力を上げることにより被溶接材の終端温度を上げることが可能である。ただし、これは上記E2’/E1’<1が満たされる範囲で行われることが必要である。当該温度センサとして例えば赤外線を用いた非接触式温度測定器を挙げることができる。
図1、図2に戻り、引き続きレーザ溶接装置1について説明する。バックロール8は、加工ヘッド9の直下に配置されている。バックロール8は、溶接中の被溶接材100a、100bの端面を下面から支え、被溶接材100a、100bの突き合わせ精度の向上を図り、又溶接中の被溶接材100a、100bの下面から漏洩するレーザビームが外部に照射されるのを防止する。
整形ロール6は、図2に示すように、下部整形ロール6aと、上部整形ロール6bと、上部整形ロール6bを上下方向に駆動するシリンダ6c(図示せず)とを備えている。下部整形ロール6a及び上部整形ロール6bは上下に配置されており、シリンダ6cにより下部整形ロール6aと上部整形ロール6bとの上下間隔を調整することができる。また、下部整形ロール6a及び上部整形ロール6bは各々支持軸(図示せず)を中心に回転する構造を有する。
後熱処理用誘導加熱ヘッド10は、鉄心とこの鉄心に巻回されたコイルとを備える。そして、電源からこのコイルに電流を通電して磁束(交番磁束)を発生させ、この磁束を被溶接材100a、100bに貫通させることにより被溶接材100a、100bに渦電流を誘起させて、この渦電流によりジュール熱を発生させて被溶接材100a、100bを加熱する。ここで、後熱処理用誘導加熱ヘッド10の鉄心、コイルによって発生した磁束は、被溶接材100a、100bの板厚方向に対して直角な方向、即ち、被溶接材100a、100bの表面に平行に貫通する。従って、被溶接材100a、100bの突き合わせ端面の板幅方向における接触・非接触の状態、すなわち被溶接材の対向した端面間の隙間の有無に拘わらず、被溶接材100a、100bを貫通する磁束量は板幅方向に同程度となる。これにより、後熱処理用誘導加熱ヘッド10は、被溶接材100a、100bの溶接部を均一に加熱昇温するので後熱を均一に行うことができる。
加圧ロール11は、図2に示すように、下部加圧ロール11aと、上部加圧ロール11bと、上部加圧ロール11bを上下方向に駆動するシリンダ11c(図示せず)とを備えている。下部加圧ロール11a及び上部加圧ロール11bは上下に配設されており、下部加圧ロール11aと上部加圧ロール11bとの上下間隔は、シリンダ11cにより調整させる。また、下部加圧ロール11a及び上部加圧ロール11bは、各々支持軸(図示せず)を中心に回転する構造を有する。
以上のような構成を備えるレーザ溶接装置1により、突き合わせ端部のレーザ溶接においてアンダーフィル欠陥、段状の欠陥を防止することができる。次に、当該レーザ溶接装置1を用いて行われるレーザ溶接方法について説明する。ここでは、理解容易のためレーザ溶接装置1を用いておこなうレーザ溶接方法について説明するが、必ずしも当該方法はレーザ溶接装置1によることに限定されるものではなく、発明の趣旨を満たすものであればどのようなレーザ溶接装置によってもよい。
まず、先行被溶接材100aが、図1の矢印Xで示す方向に向かってレーザ溶接装置1の溶接キャリッジ3内に搬送される。その後、搬送された先行被溶接材100aの尾端と所定の間隔を空けて後行被溶接材100bが、レーザ溶接装置1の溶接キャリッジ3内に搬送される。
そして、溶接キャリッジ3内へ搬送された先行被溶接材100aは、図3に示すように、先行被溶接材100aの尾端がギロチンシャー5内に導かれ図3に示す位置で停止する。また、溶接キャリッジ3内へ搬送された後行被溶接材100bも同様に、後行被溶接材100bの先端が同じギロチンシャー5内に導かれ図3に示す位置で停止する。
その後、クランプ2F、2Rが先行被溶接材100a及び後行被溶接材100bを固定する。具体的には、前方クランプ上部2Fbが前方クランプシリンダ2Fcの動力により下降し、前方クランプ下部2Faとの間で、先行被溶接材100aを挟み込むことによって固定する。同様に、後方クランプ上部2Rbが後方クランプシリンダ2Rcの動力により下降し、後方クランプ下部2Raとの間で、後行被溶接材100bを挟み込むことによって固定する。
そして、溶接キャリッジ3に内蔵されたギロチンシャー5の上部シャー刃5bがシリンダ5cの動力により下降し、下部シャー刃5aとの間で挟み込むことによって、先行被溶接材100a及び後行被溶接材100bの対向する端部を同時に切断する(切断工程)。これにより、先行被溶接材100aの断面と後行被溶接材100bの断面とをほぼ平行することができ、溶接を容易にすることができる。
次に、レーザ溶接装置1のギロチンシャー5は、上部シャー刃5bを上昇させる。そして、後行被溶接材100bを拘束している後方クランプ2Rを上部シャー刃5bの刃幅分だけ先行被溶接材100aを拘束している前方クランプ2F側へ移動させる。これにより、先行被溶接材100aの尾端と後行被溶接材100bの先端とが突き合わされる(突き合わせ工程)。
図10は、ギロチンシャー5により切断された先行被溶接材100a及び後行被溶接材100bの板厚方向からみた断面を示す断面図であり、図11は、ギロチンシャー5で切断した後の被溶接材100a、100bを突き合わせた状態を示した平面図である。図10に示すように、ギロチンシャー5で切断した後、先行被溶接材100a及び後行被溶接材100bの端面を突き合わせると、微小な形状のばらつきが生じたり、かえりが発生したりする場合がある。さらに図11に示すように、被溶接材100a、100bの突き合わせ部に部分的にギャップが生じる場合がある。
このような突き合わせ状態において先行被溶接材100aと後行被溶接材100bとを溶接した場合、板端の突き合わせギャップの変化により段差溶接または穴あき溶接が生じることがある。
そこで、整形ロール6(6a、6b)が、ギロチンシャー5で切断した後の突き合わせ部を押圧する(整形工程)ことで、切断によって生じるかえりや切断形状のばらつき等の突き合わせ部における形状不良を矯正することができる。
具体的には、まず、レーザ溶接装置1は、図2に示した矢印Yで示す方向に溶接キャリッジ3を移動させる。その際、上部整形ロール6bは、予め設定された上部整形ロール6bと下部整形ロール6aとの間隔となるように、シリンダ6cの動力により下降される。そして、溶接キャリッジ3のY方向への移動と共に、図12に示すように、上部整形ロール6bは先行被溶接材100aと後行被溶接材100bとの突き合わせ部に乗り上げ、回転しながら予め設定された荷重にて先行被溶接材100a及び後行被溶接材100bの突き合わせ部を押圧する。これにより、切断によって生じる被溶接材100a、100bの突き合わせ部の形状不良を矯正することができる。
次に、レーザ溶接装置1は、さらに図2に示した矢印Yで示す方向に溶接キャリッジ3を移動させる。溶接キャリッジ3の移動に伴い、被溶接材100a、100bの突き合わせ部は、予熱処理用誘導加熱ヘッド7の上部に達する。ここで、被溶接材100a、100bの突き合わせ部は、予熱処理用誘導加熱ヘッド7によりレーザ溶接の予熱に必要な温度になるように誘導加熱される(第1の加熱工程)。具体的には、上記したように予熱処理用誘導加熱ヘッド7を突き合わせ端部に沿って移動させるとともに、その出力をE2’/E1’<1.0となるように制御する。これにより溶接部における各種欠陥を防止することができる。以下に詳しく説明する。
図13(a)に示したように、突き合わせ端部は加熱により図13(a)に矢印で示した方向(溶接方向)に伸びを生じる。一方、クランプ2で固定された部分は拘束されており、多少の滑りを想定しても伸びが殆ど生じないと考えられる。この突き合わせ部分とクランプ固定部分との伸び差により、突き合わせ部分の隙間が拡大するような被溶接材の回転変形が生じる。突き合わせ部の一端から他端まで同じように加熱(予熱)すると、その終端部で図13(a)に示したように間隙が生じる。この状態で溶接することにより図13(b)にHで示したようなアンダーフィル欠陥が発生してしまう。ここで、アンダーフィル欠陥は終端部で大きい(深い)傾向にあり、これは隙間量が終端部に向けて蓄積されていくためであること、および板幅方向端部では自由端が多く、拘束が小さいので易いことが原因であると推察する。
また、突き合わせ部始端から終端に向けて移動しながら加熱することにより、終端部が必要以上に加熱され、この状態でレーザ溶接をすると、終端部で適正範囲を超える過剰なエネルギ量が溶接部に投入され、溶融金属が溶接金属部に留まる事ができず、裏面側に吹き飛ばされ、溶接部の湯量が不足し、溶接部の表面にアンダーフィル欠陥が生じるとも推察される。
本発明によれば、突き合わせ部終端において加熱(予熱)のために投入するエネルギを制御しているので、上記のような終端部の間隙、および過加熱を抑制することができる。これによりアンダーフィル欠陥を防止することが可能となる。
また、段状欠陥についても次のように考察することができる。図14に示したようにレーザ溶接装置において、上クランプと下クランプとで被溶接材の長手方向にその位置を変えていると、被溶接材の表裏温度差が生じ、図14(a)に示したような被溶接材の端部が上下方向に曲がる変形を生じることがある。このとき先行被溶接材と後行被溶接材とが全く同じように変形すればよいが、実際には、鋼種、サイズ、表面状態、内部応力のばらつき等によりその変形量が異なる。この状態で溶接を行うと図14(b)に示したように先後溶接材間で板厚方向に段状となる欠陥が発生する。当該欠陥も加熱による温度のムラが原因なので、その加熱が過剰となる突き合わせ部終端で大きく発生する傾向にある。
これに対して本発明によれば、突き合わせ部終端において加熱(予熱)のために投入するエネルギを制御しているので、このような過加熱を抑制することができる。これにより段状の欠陥を防止することが可能となる。
また、予熱処理用誘導加熱ヘッド7による加熱によって、溶接部の冷却速度が小さくなり、マルテンサイトの出現が抑制される効果や、加熱によるマルテンサイトの焼き戻しの効果などが得られる。さらに、整形ロール6(6a、6b)により整形された後に被溶接材100a、100bを誘導加熱するので、熱膨張により突き合わせギャップを最適化することができる。また、後述する加工ヘッド9のレーザパワーの低減や溶接速度の増加の効果を得ることもできる。予熱処理用誘導加熱ヘッド7による予熱の程度は、上流工程における水洗浄の程度、被溶接材100a、100bの厚さ、予熱処理用誘導加熱ヘッド7の被溶接材100a、100bとの位置関係等により、適切な到達温度、及び保持時間が採用される。従って特に限定されるものではない。その中でも、確実に水分を除去してブローホール欠陥を防止すること可能であるとともに、製造効率及びエネルギ効率の観点から、突き合わせられた部分における被溶接材の表裏面の温度がいずれも200℃以上とされるとともに、これが1秒間以上保持される加熱が望ましい。これにより必要以上のエネルギを消費することなく、かつ製造効率を適切に維持することができる。
次に、レーザ溶接装置1は、さらに図2に示した矢印Yで示す方向に溶接キャリッジ3を移動させる。溶接キャリッジ3の移動に伴い、被溶接材100a、100bの突き合わせ部は、バックロール8の上部を通過する。このとき、被溶接材100a、100bは、加工ヘッド9及びバックロール8によって、レ−ザ溶接される(レーザ溶接工程)。具体的には、レーザ発振器4から光ファイバで伝送されたレーザ光が加工ヘッド9から被溶接材100a、100bの突き合わせ部に照射され、これにより、先行被溶接材100aと後行被溶接材100bとが溶接される。レーザの出力、焦点径、焦点位置、溶接速度等の条件は、鋼板の種類及び板厚、突き合わせにおける鋼板同士の間隙の大きさ、鋼板と加工ヘッドとの距離などにより適宜選択される。
さらに、レーザ溶接装置1は、図2に示した矢印Yで示す方向に溶接キャリッジ3を移動させる。溶接キャリッジ3の移動に伴い、被溶接材100a、100bの突き合わせ部(溶接部)は、後熱処理用誘導加熱ヘッド10の上部を通過する。その際、被溶接材100a、100bの突き合わせ部(溶接部)は、後熱処理用誘導加熱ヘッド10により所定温度に誘導加熱される(第2の加熱工程)。例えば、400℃以上900℃以下の温度に加熱する。これにより、溶接後の急冷が抑制されるため、急冷に伴う溶接部の過剰な硬化が抑制され、通板時の破断が防止される。加熱温度は、550℃程度以上800℃以下とすることが望ましい。具体的には、電源(図示しない)から後熱処理用誘導加熱ヘッド10のコイル10aに電流を通電して磁束(交番磁束)を発生させ、この磁束を被溶接材100a、100bに磁束が表面方向と平行になるように貫通させることにより被溶接材100a、100bに渦電流を誘起させて、この渦電流によりジュール熱を発生させて誘導加熱する。
次に、レーザ溶接装置1は、さらに、図2に示した矢印Yで示す方向に溶接キャリッジ3を移動させる。その際、上部加圧ロール11bは、予め設定された上部加圧ロール11bと下部加圧ロール11aとの間隔となるように、シリンダ11cの動力により下降される。そして、溶接キャリッジ3の移動と共に、上部加圧ロール11bは被溶接材100a、100bの溶接部分に乗り上げ、回転しながら予め設定された荷重にて被溶接材100a、100bの溶接部分を押圧する(加圧工程)。これにより、被溶接材100a、100bの表裏面を滑らかに仕上げ、先行被溶接材100aと後行被溶接材100bの板厚が同じ場合は、溶接部の板厚を先行被溶接材100aと後行被溶接材100bの板厚とほぼ同じにすることができる。
また、先行被溶接材100aと後行被溶接材100bの板厚が異なる場合においても、上部加圧ロール11bと下部加圧ロール11aとの押圧により溶接部の表面形状を滑らかにすることができる。
以上により、レーザ溶接装置1によれば、被溶接材100a、100bの突き合わせ部の形状不良を矯正して、溶接部におけるアンダーフィル欠陥、段状の欠陥、及びブローホール欠陥等の欠陥を防止し、溶接割れ等を防止することができる。
上記したどのようなパターンで予熱を制御するかについては、鋼種や寸法等により異なるものである。従って、予め、鋼板の種類、寸法等の種々の板組条件に応じて複数の予熱制御パターンを決定しておくことが好ましい。そして実際には、与えられた板組み条件に基づき複数の予熱制御パターンから一つの制御パターンを選択して適用する方法や、終端部の近傍の温度、隙間量、または段差量の測定可能な計測手段を設け、これら測定値が予め設定した範囲内となるように予熱を幅方向に制御する方法を用いることができる。
以下、実施例によりさらに詳しく説明する。ただし本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例では、予熱処理用誘導加熱ヘッドによる予熱において、上記したE1’、E2’を変更してレーザ溶接を行い、欠陥の発生の有無や程度を評価した。詳しくは次の通りである。
<被溶接材>
被溶接材は以下のものを用いた。
・鋼種:高張力鋼(強度340MPa)の熱間圧延鋼板
・寸法:板厚3.0mm、溶接長さ(板幅)W=300mm
・突き合わせ端面:機械研削による良好端面、突き合わせ端部に霧状の水を噴射
・非加熱時の突き合わせ間隙:0.0mm
実施例では、予熱処理用誘導加熱ヘッドによる予熱において、上記したE1’、E2’を変更してレーザ溶接を行い、欠陥の発生の有無や程度を評価した。詳しくは次の通りである。
<被溶接材>
被溶接材は以下のものを用いた。
・鋼種:高張力鋼(強度340MPa)の熱間圧延鋼板
・寸法:板厚3.0mm、溶接長さ(板幅)W=300mm
・突き合わせ端面:機械研削による良好端面、突き合わせ端部に霧状の水を噴射
・非加熱時の突き合わせ間隙:0.0mm
<予熱処理用誘導加熱装置>
予熱処理用誘導加熱装置は次のような条件とした。
・インダクションヒータ:出力3.0kW(予熱狙い温度:200℃)
・コイルサイズ:溶接方向長さL=330mm、幅6mm
・移動速度:3.0m/分
・移動位置:突き合わせ部の裏面側を突き合わせ部に沿って移動
予熱処理用誘導加熱装置は次のような条件とした。
・インダクションヒータ:出力3.0kW(予熱狙い温度:200℃)
・コイルサイズ:溶接方向長さL=330mm、幅6mm
・移動速度:3.0m/分
・移動位置:突き合わせ部の裏面側を突き合わせ部に沿って移動
<レーザビーム>
レーザビームは次のような条件で照射した。
・レーザの種類:LD−YAGレーザ発振機
・レーザ出力:4.5kW
・レーザ照射位置:インダクションヒータ尾端から265mm後方位置
・レーザビーム:集光距離F200mm、板面上のスポット直径0.6mm
・レーザヘッドの移動速度:3.0m/分
レーザビームは次のような条件で照射した。
・レーザの種類:LD−YAGレーザ発振機
・レーザ出力:4.5kW
・レーザ照射位置:インダクションヒータ尾端から265mm後方位置
・レーザビーム:集光距離F200mm、板面上のスポット直径0.6mm
・レーザヘッドの移動速度:3.0m/分
その他の条件および説明図を表1、図15〜図17に示した。表1、図15〜図17を参照しつつ説明する。
No.1は、比較例としての例であり、図16(a)に示したように、移動始点から移動終点に至るまで一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力(3kW)とした。
No.2は、図16(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=550mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力(3kW)とし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とした。
No.3は、図16(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=500mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力(3kW)とし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とした。
No.4は、図16(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=470mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力(3kW)とし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とした。
No.5は、図16(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=400mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力(3kW)とし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とした。
No.6は、図17からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=500mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力を3kWとし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0.75kWとした。
No.7は、図17からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=500mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力を3kWとし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を1.50kWとした。
No.8は、図17からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=500mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力を3kWとし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を2.25kWとした。
No.9は、予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とし、予熱を実施しない例であり、No.10は、比較例であり、移動始点から移動終点に至るまで一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力(2.4kW)とした。
No.2は、図16(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=550mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力(3kW)とし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とした。
No.3は、図16(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=500mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力(3kW)とし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とした。
No.4は、図16(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=470mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力(3kW)とし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とした。
No.5は、図16(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=400mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力(3kW)とし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とした。
No.6は、図17からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=500mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力を3kWとし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0.75kWとした。
No.7は、図17からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=500mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力を3kWとし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を1.50kWとした。
No.8は、図17からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=500mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは予熱処理用誘導加熱ヘッド7出力を3kWとし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を2.25kWとした。
No.9は、予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を0とし、予熱を実施しない例であり、No.10は、比較例であり、移動始点から移動終点に至るまで一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力(2.4kW)とした。
表1に示した項目は次のように得ることができる。No.2を例に説明する。
L+W−0.6Lは、上記したように当該位置の前後におけるE1’、E2’を比較する位置である。本実施例では、W=300.0(mm)、L=330.0(mm)であるからその値は432.0(mm)となる。
予熱制御開始位置Sは、図15にSで示したように、予熱の制御を開始したときにおけるコイル尾端の位置である。No.2では550.0(mm)とした。
Xは、予熱制御開始位置Sにおけるコイルと鋼板との重なりの距離を表している。従って、L+W−Sで算出することができ、No.2では630.0−550.0=80.0(mm)である。
X/Lは、上記重なりXをコイルの長さLで除した値であり、No.2では80/330=0.24である。
L+W−0.6Lは、上記したように当該位置の前後におけるE1’、E2’を比較する位置である。本実施例では、W=300.0(mm)、L=330.0(mm)であるからその値は432.0(mm)となる。
予熱制御開始位置Sは、図15にSで示したように、予熱の制御を開始したときにおけるコイル尾端の位置である。No.2では550.0(mm)とした。
Xは、予熱制御開始位置Sにおけるコイルと鋼板との重なりの距離を表している。従って、L+W−Sで算出することができ、No.2では630.0−550.0=80.0(mm)である。
X/Lは、上記重なりXをコイルの長さLで除した値であり、No.2では80/330=0.24である。
予熱処理用誘導加熱ヘッド出力は、予熱制御開始前の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力、及び予熱制御開始後の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を表したものである。No.2では、予熱制御前が3.0(kW)、予熱制御後が0.0(kW)である。
コイル尾端の移動距離は、コイル尾端が移動始点から、該移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達するまでに移動する距離、および移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、移動終点に達するまでに移動する距離をそれぞれ表したものである。No.2を含む本実施例では、L+W−0.6L=432.0(mm)なので、コイル尾端が移動始点から、該移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達するまでに移動する距離は432.0(mm)であり、移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、移動終点に達するまでに移動する距離は630.0−432.0=198.0(mm)である。
コイル尾端の移動時間は、コイル尾端が移動始点から、該移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達するまでに要した時間、および移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、移動終点に達するまでに要した時間をそれぞれ表したものである。No.2を含む本実施例では、L+W−0.6L=432.0(mm)、コイルの移動速度は3.0(m/分)=50(mm/秒)なので、コイル尾端が鋼板の始端から、該移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達するまでに要する時間は、432.0/50=8.6(秒)であり、移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、鋼板の終端に達するまでに要した時間は、198.0/50=4.0(秒)である。
コイル尾端の移動時間は、コイル尾端が移動始点から、該移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達するまでに要した時間、および移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、移動終点に達するまでに要した時間をそれぞれ表したものである。No.2を含む本実施例では、L+W−0.6L=432.0(mm)、コイルの移動速度は3.0(m/分)=50(mm/秒)なので、コイル尾端が鋼板の始端から、該移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達するまでに要する時間は、432.0/50=8.6(秒)であり、移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、鋼板の終端に達するまでに要した時間は、198.0/50=4.0(秒)である。
E1は上記したように、コイル尾端が移動始点から、該移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達するまでに投入した総エネルギ量なので、No.2の場合には、3.0×8.6=25.8(kW・秒)である。
E2は、コイル尾端が移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、移動終点に達するまでに投入した総エネルギ量なので、No.2の場合には、図16(b)からわかるように(550.0−432.0)/50.0×3.0=7.1(kW・秒)である。
E2は、コイル尾端が移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、移動終点に達するまでに投入した総エネルギ量なので、No.2の場合には、図16(b)からわかるように(550.0−432.0)/50.0×3.0=7.1(kW・秒)である。
E1’は、コイル尾端が移動始点から、該移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達するまでの単位時間当たりのエネルギ平均値である。従ってNo.2の場合には、25.8/8.6=3.0(kW・秒/秒)である。
E2’は、コイル尾端が移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、移動終点に達するまでの単位時間当たりのエネルギ平均値である。従ってNo.2の場合には、7.1/4.0=1.8(kW・秒/秒)である。
E2’は、コイル尾端が移動始点からの距離がL+W−0.6Lである位置に達した後、移動終点に達するまでの単位時間当たりのエネルギ平均値である。従ってNo.2の場合には、7.1/4.0=1.8(kW・秒/秒)である。
エネルギ比率は上記したように、E2’/E1’で定義される値である。No.2では0.6である。
No.1〜No.8について同様に計算をおこなうことにより表1を得た。その結果、表1からわかるように本発明例であるNo.2〜No.8ではいずれもE2’/E1’<1.0を満たしている。一方、比較例であるNo.1ではE2’/E1’=1.0である。
次に溶接後の結果について説明する。評価結果を表2に示した。
ここで表2における板幅中央温度は、被溶接材の幅方向中央部が予熱により達した温度である。また、終端部温度は、被溶接材の溶接終端が予熱により達した温度である。
また、アンダーフィル欠陥は、被溶接材の板厚に対して10%以上の深さのアンダーフィルが生じた場合をアンダーフィル欠陥とし、その量を「多」、「少」、「無」の3つのレベルに分けて目視で判断した。同様に段状欠陥も被溶接材の板厚に対して10%以上の段差を生じた場合を段状欠陥とし、その量を「多」、「少」、「無」の3つのレベルに分けて目視で判断した。
ブローホール欠陥も、その有無を目視で判断し、その量を「多」、「少」、「無」の3つのレベルに分けて判断した。
ここで表2における板幅中央温度は、被溶接材の幅方向中央部が予熱により達した温度である。また、終端部温度は、被溶接材の溶接終端が予熱により達した温度である。
また、アンダーフィル欠陥は、被溶接材の板厚に対して10%以上の深さのアンダーフィルが生じた場合をアンダーフィル欠陥とし、その量を「多」、「少」、「無」の3つのレベルに分けて目視で判断した。同様に段状欠陥も被溶接材の板厚に対して10%以上の段差を生じた場合を段状欠陥とし、その量を「多」、「少」、「無」の3つのレベルに分けて目視で判断した。
ブローホール欠陥も、その有無を目視で判断し、その量を「多」、「少」、「無」の3つのレベルに分けて判断した。
表2からわかるように、比較例であるNo.1は鋼板の終端部温度が380℃にも達し、終端部におけるアンダーフィル欠陥、および段状欠陥が大きく発生している。一方、本発明例であるNo.2〜No.8ではいずれも鋼板終端部温度は低く抑えられ、アンダーフィル欠陥、および段状欠陥の発生を抑制することが可能である。参考例であるNo.9、No.10はアンダーフィル欠陥、および段状欠陥ともに少ないが、これらは加熱(予熱)がされていない又はその加熱量が低い場合であり、本発明のように相当程度の加熱が前提のものとは異なる。
また、No.4、No.5では、アンダーフィル欠陥および段状欠陥は防止することができたが、若干のブローホール欠陥が発生した。これは終端部温度があまり上昇しなかったことによるものと考えられ、かかる観点から鋼板の中央温度に対して終端部温度があまり下がらない程度に予熱制御をすることが好ましい。No.4、No.5から、鋼板中央の温度に対して終端温度が半分(100℃)となるのはX/Lが約0.6となるときである。これを考慮すると、予熱制御開始点Sは移動始点からの距離がL+W−0.6Lとなる位置よりも終端側であることが好ましい。また、かかる観点からE1’とE2’とを対比する境界の適切な位置としてL+W−0.6Lに設定した。
また、No.8では、少なくはあるがアンダーフィル欠陥および段状欠陥が発生した。これは鋼板の終端温度が他に比べて高くなったことによるものと推察する。そこでNo.8のエネルギ比率をみると0.84である。一方、これら欠陥を生じなかったNo.7のエネルギ比率は0.67である。従って、エネルギ比率は0.70以下であることが好ましい。
(実施例2)
実施例2では、実施例1とは異なるパターンで予熱を制御した。表3に条件等、図18に予熱処理用誘導加熱ヘッド出力のパターン等を示した。予熱パターン以外の条件は実施例1と同じである。
実施例2では、実施例1とは異なるパターンで予熱を制御した。表3に条件等、図18に予熱処理用誘導加熱ヘッド出力のパターン等を示した。予熱パターン以外の条件は実施例1と同じである。
No.11は、図18(a)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=465mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力(3.0kW)とし、その後予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を単調に減少させて移動終点では0kWとするものである。
No.12は、図18(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=465mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力(3.0kW)とし、その後移動始点からの距離が486mm〜527mmの間と568mm〜609mmの間の2回、予熱処理用誘導加熱ヘッド出力3.0kWをパルス的に出力するものである。
No.13は、移動始点から移動終点まで予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を3.0kWで一定とするものの、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=465mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは予熱処理用誘導加熱ヘッドの移動速度を50mm/秒とし、その後その後当該移動速度を100mm/秒とする。
No.12は、図18(b)からわかるように、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=465mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは一定の予熱処理用誘導加熱ヘッド出力(3.0kW)とし、その後移動始点からの距離が486mm〜527mmの間と568mm〜609mmの間の2回、予熱処理用誘導加熱ヘッド出力3.0kWをパルス的に出力するものである。
No.13は、移動始点から移動終点まで予熱処理用誘導加熱ヘッド出力を3.0kWで一定とするものの、予熱制御開始点Sを移動始点からの距離S=465mmとし、移動始点から予熱制御開始点Sまでは予熱処理用誘導加熱ヘッドの移動速度を50mm/秒とし、その後その後当該移動速度を100mm/秒とする。
表3に示した項目の算出方法は上記表1で示した方法と同様である。ただし、No.13において、E2’を算出する際にE2を除する時間のうち、予熱制御開始点Sから移動終点までの時間は、速度を変更しない際にかかる時間を用いた。
表3からわかるように、No.11〜No.13のいずれの場合もエネルギ比率E2’/E1’は1.0より小さくすることができた。表4に評価結果を示す。
表4からわかるようにNo.11〜No.13のいずれの場合にもアンダーフィル欠陥、段状欠陥、およびブローホール欠陥が防止されている。
以上、現時点において最も実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、鋼板のレーザ溶接方法、レーザ溶接装置、および溶接鋼板の製造方法も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
1 レーザ溶接装置
2 クランプ(保持手段)
3 溶接キャリッジ
4 レーザ発振器
5 ギロチンシャー
6 整形ロール(整形手段)
7 予熱処理用誘導加熱ヘッド(第1の加熱手段)
7b コイル
8 バックロール
9 加工ヘッド(レーザ溶接手段)
10 後熱処理用誘導加熱ヘッド(第2の加熱手段)
11 加圧ロール(加圧手段)
100a、100b 被溶接材
2 クランプ(保持手段)
3 溶接キャリッジ
4 レーザ発振器
5 ギロチンシャー
6 整形ロール(整形手段)
7 予熱処理用誘導加熱ヘッド(第1の加熱手段)
7b コイル
8 バックロール
9 加工ヘッド(レーザ溶接手段)
10 後熱処理用誘導加熱ヘッド(第2の加熱手段)
11 加圧ロール(加圧手段)
100a、100b 被溶接材
Claims (9)
- 複数の鋼板の端面同士を突き合わせ、該鋼板の突き合わせ端部を加熱し、加熱した突き合わせ端部にレーザビームを照射して前記突き合わせ端部を溶接する鋼板のレーザ溶接方法であって、
前記加熱は、前記複数の鋼板のうち板幅が狭い方の鋼板の板幅方向の一方の端部から他方の端部に向けて移動しつつ前記鋼板の表面に平行に該鋼板を貫通する磁束を発生させる誘導加熱装置により行われるとともに、
前記誘導加熱装置に備えられるコイルの長さをLとしたとき、前記鋼板の他方の端部からみて0.6Lである位置に前記コイルの尾端が達するまでに前記誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E1’に比べ、前記コイルの尾端が前記鋼板の他方の端部からみて0.6Lである位置を通過して前記鋼板の他方の端部に達するまでに前記誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E2’の方が小さくなるように前記加熱が行われることを特徴とする鋼板のレーザ溶接方法。 - 前記誘導加熱装置の移動速度は一定であり、前記誘導加熱装置が発生させる磁束を変更することにより前記単位時間当たりのエネルギ平均値E1’、E2’を調整することを特徴とする請求項1に記載の鋼板のレーザ溶接方法。
- 前記鋼板の他方の端部からみて0.6Lの位置に前記コイルの尾端が達するまでは前記誘導加熱装置の出力は一定とし、前記鋼板の他方の端部からみて0.6Lの位置を前記コイルの尾端が通過した後に前記誘導加熱装置の出力を減少させることにより前記エネルギ平均値E1’、E2’を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板のレーザ溶接方法。
- 前記エネルギ平均値E1’と前記エネルギ平均値E2’とがE2’/E1’≦0.7を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋼板のレーザ溶接方法。
- 前記突き合わせ部の加熱により該突き合わせ部の鋼板表面温度がいずれも200℃以上に達することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼板のレーザ溶接方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の鋼板のレーザ溶接方法で溶接する工程を含むことを特徴とする溶接鋼板の製造方法。
- 複数の鋼板の端面同士を突き合わせ、該鋼板の突き合わせ部分にレーザビームを照射して突き合わせ部分を溶接する鋼板のレーザ溶接装置であって、
前記複数の鋼板のうち板幅が狭い方の鋼板の板幅方向の一方の端部から他方の端部に向けて走行しながら鋼板の表面に平行に貫通する磁束を発生させることにより突き合わせ部分を加熱する誘導加熱装置と、
前記誘導加熱装置に備えられるコイルの長さをLとしたとき、前記鋼板の他方の端部からみて0.6Lの位置に前記コイルの尾端が達するまでに前記誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E1’に比べ、前記コイルの尾端が前記鋼板の他方の端部からみて0.6Lの位置を通過して前記鋼板の他方の端部に達するまでに前記誘導加熱装置が出力する単位時間当たりのエネルギ平均値E2’を小さくするように前記誘導加熱装置の磁束を前記鋼板の板幅方向に調整する調整手段と、
前記誘導加熱装置により加熱された突き合わせ部分をレーザにより溶接するレーザ溶接手段とを備えることを特徴とする鋼板のレーザ溶接装置。 - 前記鋼板の他方の端部には、前記鋼板の表面温度を測定する温度計、前記鋼板の突き合わせ部分の間隔を測定する装置、および前記突き合わせ部における複数の鋼板の段差を測定する装置の少なくとも1つを具備する請求項7に記載の鋼板のレーザ溶接装置。
- 前記レーザ溶接手段は、並列された複数のファイバ状またはディスク状の結晶体から構成されるレーザビーム発振器と該発振器から放出されるレーザ光を伝送する光ファイバとを備える請求項7又は8に記載の鋼板のレーザ溶接装置。
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JP2008208995A JP2010042430A (ja) | 2008-08-14 | 2008-08-14 | 鋼板のレーザ溶接方法、レーザ溶接装置、および溶接鋼板の製造方法 |
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CN105531073A (zh) * | 2013-06-28 | 2016-04-27 | 通快激光与系统工程有限公司 | 用于机械加工、尤其用于机械焊接加工的方法,以及过程气体供应的调整装置用的控制装置 |
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-
2008
- 2008-08-14 JP JP2008208995A patent/JP2010042430A/ja active Pending
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