JP2010014407A - バイオチップ基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】微量の生体由来試料のような被験液を流す微細な流路を確実に形成でき、その被験液を加圧して低温乃至高温で流しても破損せず、そのバイオ成分を正確かつ簡便に短期間で分析したり反応させたりできる簡易で製造し易い小型のバイオチップ基板を提供する。
【解決手段】バイオチップ基板1は、重ねられた樹脂成形シート11・12を有しており、前記シート11・12の向き合った重ね面15・16同士の一部に、液注入口13a〜cから液排出口14a〜bへ至る非接着の筋条17が設けられており、前記筋条17に沿う両脇で、前記シート11・12同士が接着されていることによって、前記液注入口13a〜cの少なくとも一つから注入される被験液の流路となる前記筋条17が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、液状の生体由来試料を被験液としてそのバイオ成分を微量分析する装置や、バイオ成分を化学的に微量合成したりするマイクロリアクターに用いられる、バイオチップ基板に関するものである。
血液や尿などの生体由来試料を微量だけ用いて、酵素の特異的基質選択性を利用し、試料中の基質と作用する酵素反応量やその基質量を酵素又は基質で発色する試薬による着色度合いで定量したり、酵素含有膜を用い酵素反応量を電極で電気信号に変換して基質量を定量したりする分析や、DNA抽出・そのPCR増幅や、イオン濃度測定や、DNA又はタンパク質又はペプチドの微量合成などを行うのに、バイオチップ基板が用いられる。
市販のバイオチップ基板は、各種反応をさせるための溝を樹脂プレート上にレーザー照射により掘り込んだり、ガラスプレート上の金属層や二酸化ケイ素層をエッチングして溝を形成させたりした後、その溝ごと別なプレートで覆って接着剤で貼り合せたものである。
例えば、特許文献1に、シリコン基板上の二酸化シリコン膜をレジスト膜で被覆してから、パターン化したフォトマスクで被覆し、フッ酸でエッチングして、バイオセンサ収容領域と液状被検体の流路とになる溝を形成するリソグラフィーの後、再びリソグラフィーによりバイオセンサ用電極・配線を形成し、そこに生体触媒等を固定し、ガラス基板でカバーして、エポキシ系接着剤で固定したバイオセンサが、開示されている。
このようなバイオセンサは、溝へ液状被検体を加圧して流す際に、接着されている基板と基板とが圧力に耐えられなくなり剥離してしまい、破損し易いというものであった。
特公平08−20396号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、微量の生体由来試料のような被験液を流す微細な流路を確実に形成でき、その被験液を加圧して低温乃至高温で流しても破損せず、そのバイオ成分を正確かつ簡便に短期間で分析したり反応させたりできる簡易で製造し易い小型のバイオチップ基板を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載のバイオチップ基板は、重ねられた樹脂成形シートを有しており、前記シートの向き合った重ね面同士の一部に、液注入口から液排出口へ至る非接着の筋条が設けられており、前記筋条に沿う両脇で、前記シート同士が接着されていることによって、前記液注入口の少なくとも一つから注入される被験液の流路となる前記筋条が形成されていることを特徴とする。
請求項2に記載のバイオチップ基板は、請求項1に記載されたもので、前記樹脂成形シートが弾性を有し、前記筋条が、外部からの圧迫により、及び/又は前記被験液の加圧注入により、押し広げられて前記流路を形成することを特徴とする。
請求項3に記載のバイオチップ基板は、請求項2に記載されたもので、重ねられた前記樹脂成形シートの少なくとも一方の重ね面で、前記筋条が、金属蒸着膜、又はマスキング樹脂層により、被覆されていることによって、前記非接着の筋条として形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載のバイオチップ基板は、請求項1に記載されたもので、重ねられた前記樹脂成形シートに挟まれているスペーサで仕切られていることによって、前記筋条が前記流路を形成しており、前記樹脂成形シートと前記スペーサとが、接着されていることを特徴とする。
請求項5に記載のバイオチップ基板は、請求項1〜4の何れかに記載されたもので、前記接着すべき前記樹脂成形シートと、必要に応じそれに挟まれるスペーサとの内の少なくとも何れかの接着される面が、コロナ放電処理またはプラズマ処理され、その処理がされた面同士が、重ねられて前記接着されていることを特徴とする。
請求項6に記載のバイオチップ基板は、請求項1に記載されたもので、前記接着すべき前記樹脂成形シートと、必要に応じそれに挟まれるスペーサとが、ヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物とを含有しており、その両者が、前記ビニル基含有化合物のビニル基への前記ヒドロシリル基含有化合物のヒドロシリル基の付加反応により形成されたケイ素−炭素の結合を介して、前記接着されていることを特徴とする。
請求項7に記載のバイオチップ基板は、請求項1に記載されたもので、前記接着すべき前記樹脂成形シートと、必要に応じそれに挟まれるスペーサとの内の接着すべき一方が、その表面に有する水酸基の脱水素基に、ヒドロシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基を、シリルエーテル結合されたものであり、他方が、前記活性シリル基と反応するヒドロシリル、ビニルシリル、ヒドロキシシリル、アルキルオキシシリル、アルケニルオキシシリル、アシルオキシシリル、イミノオキシシリル、アルキルアミノシリルから選ばれる少なくとも1種類の反応基を含有する化合物を含んでおり、その両者が、前記反応により形成されたケイ素−炭素とケイ素−酸素との何れかの結合を介して、前記接着されていることを特徴とする。
請求項8に記載のバイオチップ基板は、請求項1に記載されたもので、前記樹脂成形シートが、シリコーン樹脂でできていることを特徴とする。
請求項9に記載のバイオチップ基板は、請求項1に記載されたもので、前記筋条が、複数あって、途中で集束し又は分岐していることを特徴とする。
請求項10に記載のバイオチップ基板は、請求項1に記載されたもので、前記被験液のバイオ成分の検出試薬と、前記被験液のバイオ成分への反応試薬と、バイオセンサとの少なくとも何れかが、前記筋条の途中に配置され、及び/又は、
前記検出試薬と、前記反応試薬と、合成試薬との少なくとも何れかが、前記液注入口から注入されていることを特徴とする。
本発明のバイオチップ基板は、被験液を流す0.5μm〜5mm幅の微細な筋条による直線や曲線を組合わせた線状やその末端乃至途中で拡大したり集束又は分岐したりした複雑な形状などの任意のパターンの流路が確実に形成されるものである。しかもバイオチップ基板を形成している複数の樹脂形成シート同士が、その筋条以外の部位で分子間の化学的な共有結合のような強固な接着をしているから、接着剤による物理的な接着よりも遥かに強く接着されている。そのため、そのような微細な流路に被験液を透過させるために常圧〜5気圧程度の圧力をかけて被験液を流しても、また氷冷下〜80℃程度、好ましくは20℃〜80℃程度の低温乃至高温の温度範囲で加熱冷却を繰り返しながら被験液を流しても、バイオチップ基板は破損せず、その被験液のバイオ成分を正確かつ簡便に短期間で分析したり反応させたりすることができる。
このバイオチップ基板は、数mm〜十数cm程度で極めて小型であり簡易な構造であるので、安価で大量に歩留まり良く製造することができるものである。
このようなバイオチップ基板は、ディスポーザブルで用いられる場合、別な系統の被験液の混入による汚染の恐れが無く、信頼性のある結果を得ることができるものである。
バイオチップ基板は、小型で多機能にすることができるから、大掛かりな分析装置などを用いなくてもポータブルの分析装置を用いて、屋内のみならず屋外でも迅速に分析結果を得るのに使用される。
バイオチップ基板に用いられる分析試薬や反応試薬は極微量で済むうえ、フラスコや試験管での分析や反応に比べて廃液量が格段に少なくなるので、環境保全にも資する。
発明を実施するための好ましい形態
以下、本発明を実施するための好ましい形態の例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
バイオチップ基板1は、図1に示すように、2枚のシリコーン樹脂製の成形シート11・12が重ねられたものである。樹脂成形シート11・12に、必要により加硫剤として、ヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物が含有されて、両シート11・12の表面からこれらの化合物分子の一部が露出している。下側の樹脂成形シート12の上面に、被験液を流すべき経路に対応する金属層8a・18a’の筋条17が付されている。上側の樹脂形成シート11に、筋条17の始端及び末端に対応する液注入口13a・13b・13c及び液排出口14a・14bが、貫通して設けられている。
途中の筋条17の近傍にヒーター19が設けられ、終端の一つにバイオセンサである電極20が設けられている。
上側の樹脂成形シート11の下面15と、下側の樹脂成形シート12の上面16との重ね面は、一方の面15(又は16)の表面に露出しているヒドロシリル基含有化合物分子のヒドロシリル基(SiH基)と、他方の面16(又は15)の表面に露出しているビニル基含有化合物分子のビニル基(CH=CH−基)とが反応して形成されたケイ素−炭素の共有結合により、接着される。
下側の樹脂成形シート12上の筋条17は、ヒドロシリル基含有化合物分子とビニル基含有化合物分子とが露出しないように、樹脂形成シート12を覆っているので、上側の樹脂成形シート11上のこれら化合物分子と共有結合できない。従って、筋条17の部位は、樹脂成形シート11・12の重ね面15・16で非接着になっている。一方、筋条17に沿う両脇は、化学結合により、強固に接着されている。金属層は必要により、その後、酸で洗浄して除去して用いてもよい。
筋条17の両脇側を樹脂シートの外周側からシート面に平行に圧迫したり、被験液の上流側から外部より圧迫したり、あるいは、被験液が加圧注入されたりすると、筋条17が押し広げられてあたかも管のような流路を形成することができる。また、外部からの加圧または被験液の加圧注入の圧力の度合いにより、殆ど隙間のない状態の流路も実現でき、極めて微量な試験も可能とする。
筋条の幅や長さは、その用途に応じて適宜目的とする寸法に設計すればよい。本発明のバイオチップ基板によれば、エッチングや溝を彫刻する従来の溝を形勢するバイオチップ基板よりも機械的切削・化学的侵食のような削除をする必要がなく、0.5μm幅の非接着の筋条の形成が、可能である。バイオチップ基板の厚さは、それを装着する装置やマイクロリアクターの用途や量に応じ、適宜選択されるが、0.5〜10mmであることが好ましい。
このようなバイオチップ基板1は、図2を参照して説明すると、以下のようにして作製される。
同図(A)のようなヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物とを含有するシリコーン製樹脂形成シート12の片面に、同図(B)のようにメッキや蒸着により金属被膜31を付し、さらにその上をフォトレジスト液で塗布し、未硬化レジスト膜32とする。そこに筋条17に対応する位置以外を隠蔽するマスクで覆って露光線を照射して、レジスト膜32を光硬化させた後、隠蔽されていたために硬化しなかった部分を洗浄液で洗い流すと、同図(C)のように硬化したレジスト層32a・32a’が得られる。次いで金属被膜31の露出部分を酸でエッチングすると、同図(D)のように、筋条17に対応する部位に、硬化レジスト層32a・32a’で被覆された金属層18a・18a’が得られる。硬化レジスト層32a・32a’を除去すると、同図(E)のように、金属層18a・18a’が露出する。必要に応じて、ヒーター19やバイオセンサのような電極20を付しておく。ヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物とを含有する別なシリコーン製樹脂形成シート11に、液注入口13a・13b・13c及び液排出口14a・14b(図1参照)を開けておく。樹脂形成シート11・12の重ね面15・16を、コロナ放電処理してから、重ね合わせ、加熱下で加圧圧着させると、上側の樹脂成形シート11の下面15と、下側の樹脂成形シート12の上面16とが、何れかに存するヒドロシリル基含有化合物のヒドロシリル基と他方に存するビニル基含有化合物のビニル基とが付加型反応を起こして、金属層18a・18a’以外の部位で、共有結合を形成する。これによって、同図(F)に示すように、バイオチップ基板1が得られる。
バイオチップ基板1は、例えば微量合成の例について図1及び2を参照して説明すると、以下のようにして使用される。バイオチップ基板をマイクロリアクター(不図示)に装着する。図2(G)のように、バイオチップ基板1の側面側から筋条の流路方向と垂直に、筋条の両脇側へ、圧迫する。すると筋条17が押し広げられて管状の流路を形成する。液注入口13a・13bから、圧力が遺漏しないように密着させたパッキンで覆いながら別々な原料である被験液を注入しつつ加圧する。すると、両方の被験液は、筋状17を流れて混合され、ヒーター19で加熱されて、原料同士が反応する。液注入口13cからバッファのような反応停止剤を同様に注入しつつ加圧する。すると、反応生成物が、液排出口14aに達し、電極20で検出され、そこから排出される。一方、副生成物や廃液が、液排出口14bに達し、そこから排出される。
図1、2で、バイオチップ基板1の筋条17に金属層18a・18a’が付されている例を示したが、バイオチップ基板1は、図3に示すように、その金属層に代え、マスキング樹脂層18b・18b’が付された態様であってもよい。このような態様のバイオチップ基板1は、以下のようにして作製される。同図(A)のようなヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物とを含有するシリコーン製樹脂形成シート12の片面に、同図(B)のようにフォトレジスト液で塗布し、未硬化レジスト膜33とする。そこに筋条17に対応する位置以外を隠蔽するマスクで覆って露光線を照射して、レジスト膜33を光硬化させた後、隠蔽されていたために硬化しなかった部分を洗浄液で洗い流すと、同図(C)のように硬化したレジスト層であるマスキング樹脂層18b・18b’が得られる。必要に応じヒーター19やバイオセンサである電極20を付す。ヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物とを含有する別なシリコーン製樹脂形成シート11に、液注入口13a・13b・13c及び液排出口14a・14b(図1参照)を開けておく。同図(D)のように樹脂形成シート11・12の重ね面を、コロナ放電処理してから、重ね合わせ、加熱下で加圧圧着させると、図2と同様に、共有結合により接着したバイオチップ基板1が得られる。
図1〜3で、金属層18a・18a’、マスキング樹脂層18b・18b’が、下側のシリコーン製樹脂形成シート12に設けられた例を示したが、上側シリコーン製樹脂形成シート11に設けられていてもよく、上下両方のシリコーン製樹脂形成シート11・12に設けられていてもよい。また、必要により酸洗または溶剤洗浄により金属層または樹脂層を除去してもよい。
バイオチップ基板1の別な態様を、図4に示す。このバイオチップ基板1は、ヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物とを含有するシリコーン製樹脂形成シート11・12に、同種のシリコーン製樹脂形成スペーサ21が挟まれたものである。上側樹脂形成シート11に、液注入口13a・13b・13c及び液排出口14a・14bが開けられており、樹脂形成スペーサ21がレーザーカット加工により、被験液の流路となる筋条17が設けられている。樹脂形成シート11・12と、樹脂形成スペーサ21とが、重ね合わせられており、加熱下で加圧圧着されて、図1〜3と同様に、共有結合により接着したバイオチップ基板1となっている。
図1〜4で、同種の樹脂成形シート11・12を用いたバイオチップ基板1の例を示したが、異種の樹脂成形シート、又は同種の樹脂成形シートに挟まれた異種のスペーサを用いたものであってもよい(不図示)。より具体的には、樹脂成形シートの内の一方が、その表面に有する水酸基の脱水素基に、ヒドロシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基を、シリルエーテル結合されたものであり、他方が、前記活性シリル基と反応するヒドロシリル、ビニルシリル、ヒドロキシシリル、アルキルオキシシリル、アルケニルオキシシリル、アシルオキシシリル、イミノオキシシリル、アルキルアミノシリルから選ばれる少なくとも1種類の反応基を含有する化合物を含んでおり、その両樹脂成形シートが、前記反応により形成された前記ケイ素−炭素とケイ素−酸素との何れかの結合を介して、接着された構造であってもよい。
このようなバイオチップ基板は、例えば以下のようにして作製される。
シリコーン樹脂のような高分子樹脂製の下側樹脂成形シートとなる基材表面にコロナ放電処理を施し、水酸基が露出し活性化したシリコーンゴム架橋反応性の基材表面とする。
一方、その水酸基に反応してシリルエーテルを形成させるHSi(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2CH2Si(OC2H5)3のような機能性アルコキシシリル化合物と溶媒との溶液を、水酸基が生成している樹脂成形シートの基材表面に付し、乾燥させた後、加熱する。この機能性アルコキシシリル化合物のトリエトキシシリル基が、樹脂成形シートの基材表面上の水酸基に反応し、前記活性シリル基となり、水酸基の脱水素残基とともに、化学的に強固なシリルエーテル結合を形成する。このアルコキシシリル化合物により、ヒドロシリル含有シリル基のようなシリル基がエーテル結合したシリルエーテルの単分子膜で被覆された下側樹脂成形シートが得られる。このような単分子膜は、最初に使用したシリル化合物の基本単位を超えない分子鎖からなる。
この樹脂成形シートに、筋条や必要に応じてヒーターや電極等を配置してから、シリコーンゴム成分を含む組成物を塗布し又はその組成物で形成した別な樹脂成形シートを当接させて、硬化させると、表面にシリコーンゴムが樹脂成形シート上のシリルエーテルの単分子膜に架橋して接着されたシリコーンゴムである上側樹脂成形シートが形成される。下側樹脂成形シートの表面上のシリルエーテル分子と上側樹脂成形シートのシリコーンゴムとは、シリルエーテル分子とシリコーンゴム成分とが化学反応し共有結合を形成して化学的に架橋したり、シリル基同士で引き付け合って相互作用して電気化学的に架橋したりして、強固に結合している。そのため、上側及び下側の両樹脂成形シートは、筋条以外の部位で強い接着強度を有しつつ接着されており、剥がれ難くなっている。
上側及び下側の両樹脂成形シートを逆にして作製してもよい。ヒドロシリル含有シリル基のようなシリル基でシリルエーテル結合した下側樹脂成形シートの例を示したが、ビニルシリル含有シリル基で例示されるビニル含有シリル基、アルコキシシリル末端含有シリル基、加水分解性基含有シリル基のような活性シリル基でシリルエーテル結合したものであってもよい。液注入口及び液排出口は樹脂成形シートに形成されるもので、一方の樹脂成形シート上に形成されていてもよく、重ねられた樹脂成形シートの重ね面の端に設けられていてもよく、被験液の注入及び排出の際の穿刺によって形成されてもよい。
このような活性シリル基は何れも、樹脂成形シートの基材表面の水酸基に機能性アルコキシシリル化合物のアルコキシシリル基が反応することにより、形成されるものである。
このようなヒドロシリル含有シリル基で樹脂成形シートの基材(Sub.:Substrate)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[1]
Sub.−O−SiR20 ・・・[1]
で表わされる。ヒドロシリル含有シリル基−SiR20は、R20が末端に-SiH(R1)2又は-SiH2(R2)(R1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基)を有し、又はその主鎖の途中に-SiH-基を有しているというもので、ポリシロキシ基となっていてもよいというものである。
−SiR20は、より具体的には、
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
-(CH3O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
-(i-C3H7O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)H2
-(n-C3H7O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
-(n-C4H9O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(t-C4H9O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(CH3O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
-(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(n-C3H7)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(i-C3H7O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(n-C4H9)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(t-C4H9O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k1
-[(-O)(-)SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k2
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k3
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k4
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k5
-(CH3O)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
-(CH3O)CH3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
-(CH3)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
-[(-O)(-)SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H]k6
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H]k7
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C2H4Si(CH3)2H]k8
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]m1Si(CH3)2H、
-(C2H5)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]m2Si(C2H5)2H、
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]m3Si(CH3)2H、
(CH3)3SiO[-Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2)(-)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(OCH3)CH2CH2CH2)(-)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m6Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2)(-)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m7Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m8Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)O[SiH(CH3)O]m9[Si(CH3)2O]n1Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m10[Si(CH3)2O]n2Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(OCH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m11[Si(CH3)2O]n3Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m12[Si(CH3)2O]n4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(OCH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m13[Si(CH3)2O]n5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[-Si(C2H5)O][SiH(C2H5)O]m14Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]m15Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]m16Si(CH3)3
-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]m17Si(CH3)2H、
-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]m18Si(CH3)2H、
-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]m19Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m20Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m21Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m22Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m23Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m24Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m25Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m26Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m27Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m28Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m29Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m30Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m31Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m32Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m33Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m34Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m35Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m36Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m37Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m38Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m39Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m40Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m41Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m42Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m43Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m44Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m45Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m46Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m47Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m48Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m49Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m50Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]m51[HSi(CH3)2OSiC6H5O]n6Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(OCH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]m52[HSi(CH3)2OSiC6H5O]n7Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]m53[HSi(CH3)2OSiC6H5O]n8Si(CH3)2H、
-(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m54[SiCH3(C6H5)O]n9Si(CH3)2H、
-Si(OC2H5)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m55[SiCH3(C6H5)O]n10Si(CH3)2H、
-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m56[SiCH3(C6H5)O]n11Si(CH3)2H、
-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m57[SiCH3(C6H5)O]n12Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO(-)Si(CH3)O[SiH(CH3)O]m58[SiCH3(C6H5)O]n13Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(OC2H5)2CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m59[SiCH3(C6H5)O]n14Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(O-)CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m60[SiCH3(C6H5)O]n15Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(CH3)2CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m61[SiCH3(C6H5)O]n16Si(CH3)2H
が挙げられる。これらの基中、k1〜k8、m1〜m61及びn1〜n16は1〜100までの数である。一つの基に、ヒドロシリル基(SiH基)を、1〜99個有していることが好ましい。
このようなヒドロシリル含有シリル基を形成する機能性アルコキシシリル化合物は、前記のヒドロシリル含有化合物、例えば、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)H
(n-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
(n-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C3H7)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C4H9)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C2H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p1Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p2Si(C2H5)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p3Si(CH3)2H、
(CH3)3SiOSiH(CH3)O[SiH(CH3)O]p4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSiOCH3CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p6Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p7Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p8Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(CH3)O]p9[Si(CH3)2O]q1Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5Osi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p10[Si(CH3)2O]q2Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p11[Si(CH3)2O]q3Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(C2H5)O]p12Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p13Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p14Si(CH3)3
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p15Si(CH3)2H、
Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p16Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p17Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p18Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p19Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p20Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p21Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p22Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p23Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p24Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p25Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p26Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p27Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p28Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p29Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p30Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p31Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p32Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p33Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p34Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p35Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(CH3O)Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p36[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q4Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p37[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q5Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p38[SiCH3(C6H5)O]q6Si(CH3)2H、
Si(OC2H5)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p39[SiCH3(C6H5)O]q7Si(CH3)2H、
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p40[SiCH3(C6H5)O]q8Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO(C2H5O)Si(CH3)O[SiH(CH3)O]p41[SiCH3(C6H5)O]q9Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OC2H5)3CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]p42[SiCH3(C6H5)O]q10Si(CH3)2H
が挙げられる。これらの基中、p1〜p42及びq1〜q10は1〜100までの数である。一つの分子に、ヒドロシリル基を、1〜99個有していることが好ましい。
またビニルシリル含有シリル基で樹脂成形シートの基材(Sub.)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[2]
Sub.−O−SiR21 ・・・[2]
で表わされる。ビニルシリル含有シリル基−SiR21は、R21が-Si-R3基(R3はビニル含有基)を有し、又は該基の主鎖の途中に-Si(R4)-基(R4はビニル含有基)を有しているというものである。
−SiR21は、より具体的には、
-(C2H5O)2SiCH2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2CH2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2-CH=CH2
-C2H5OSi(CH=CH2)OSi(OC2H5)-CH=CH2
-(CH3O)2SiCH2CH2C6H4-CH=CH2
-(CH3O)Si(CH=CH2)O[SiOCH3(CH=CH2)O]r1Si(OCH3)2-CH=CH2
-(C2H5O)Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]r2Si(OC2H5)2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r3-CH=CH2
-(CH3O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r4-CH=CH2
-(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r5-CH=CH2
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r6-CH=CH2
-(-O)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r7-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]s1Si(CH3)3
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]s2[Si(CH3)2O]r8Si(CH3)3
-C2H5OSi(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s3Si(OC2H5)2CH=CH2
-C2H5OSi(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s4Si(CH=CH2)OC2H5-CH=CH2
-(-O)Si(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s5Si(OC2H5)2CH=CH2
-(-O)Si(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s6Si(CH=CH2)(O-)-CH=CH2
-(-O)Si(CH=CH2)O[SiCH3(-)(O-)]s7Si(CH=CH2)(O-)-CH=CH2
-Si(CH=CH2)O[Si(-)OC2H5]s8[Si(O-)CH=CH2]2
-Si(CH=CH2)O[Si(O-)]r9[Si(-)OC2H5]s9[Si(OC2H5)2CH=CH2]2
-Si(CH=CH2)O[Si(-)(O-)]s10[Si(O-)CH=CH2]2
が挙げられる。これらの基中、r1〜r9及びs1〜s10は、1〜30の数である。一つの基に、ビニル基(CH=CH2基)を、1〜30個有していることが好ましい。
ビニルシリル含有シリル基を形成する機能性アルコキシシリル化合物は、前記ビニルシリル含有化合物、例えば、
(C2H5O)3SiCH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2(CH2)7CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)OSi(OC2H5)CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH=CH2
(CH3O)2Si(CH=CH2)O[SiOCH3(CH=CH2)O]t1Si(OCH3)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]t2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t3CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t4CH=CH2
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t5CH=CH2
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t6CH=CH、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t7CH=CH、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u1Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u2[Si(CH3)2O]t8Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiCH3(OC2H5)O]u3Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u4Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u5Si(OC2H5)2CH=CH2
が挙げられる。これらの基中、t1〜t8及びu1〜u5は1〜30までの数である。一つの分子に、ビニル基を、1〜30個有していることが好ましい。
また、アルコキシシリル末端含有シリル基で樹脂成形シートの基材(Sub.)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[3]
Sub.−O−SiR22 ・・・[3]
で表わされる。アルコキシシリル末端含有シリル基−SiR22は、R22が-Si(OR5)2R6基(R5及びR6は炭素数1〜4のアルキル基)、又は-Si(OR7)3基(R7は炭素数1〜4のアルキル基)を有しているものである。−SiR22は、より具体的には、
-(C2H5O)2SiCH2CH2Si(OC2H5)3
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
-(C2H5O)2SiCH=CHSi(OC2H5)3、
-(CH3O)2SiCH2CH2Si(OCH3)3、
-(CH3O)2SiCH2CH2C6H4CH2CH2Si(OCH3)3
-(CH3O)2Si[CH2CH2]3Si(OCH3)3
-(CH3O)2Si[CH2CH2]4Si(OCH3)3、
-(CH3O)CH3SiCH2CH2Si(OCH3)2CH3
-(C2H5O)CH3SiOSi(OC2H5)2CH3
-(C2H5O)Si(OC2H5)2
が挙げられる。
アルコキシシリル末端含有シリル基を形成する機能性アルコキシシリル化合物の例として、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH=CHSi(OC2H5)3
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH3)3(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH2CH2Si(OCH3)3
(CH3O)3Si[CH2CH2]3Si(OCH3)3
(CH3O)2Si[CH2CH2]4Si(OCH3)3
(C2H5O)2Si(OC2H5)2
(CH3O)2CH3SiCH2CH2Si(OCH3)2CH3
(C2H5O)2CH3SiOSi(OC2H5)2CH3
(CH3O)3SiO[Si(OCH3)2O]v1Si(OCH3)3
(C2H5O)3SiO[Si(OC2H5)2O]v2Si(OC2H5)3
(C3H7O)3SiO[Si(OC3H7)2O]v3Si(OC3H7)3
が挙げられる。これらの基中、v1〜v3は0〜30までの数である。
また、加水分解性基含有シリル基で樹脂成形シートの基材(Sub.)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[4]
Sub.−O−Si(R8)a(R9)3-a ・・・[4]
(R8は、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、フッ素置換アルキル基;アラルキル基;アリール基であり、R9は、炭素数1〜12のアシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルカンイミノオキシ基、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基;含窒素複素環基、及びアリールアミノ基であり、aは0〜3の数)で表わされる。より具体的には、加水分解性基含有シリル基−Si(R8)a(R9)3-a中、R8は、H-、F-、CH3-、C2H5-、CH2=CH-、n-C3H7-、i-C3H7-、CH2=CHCH2-、C4H9-、C6H13-、C8H17-、C6H5-、CH3C6H4-、C6H5CH2-、CF3CF2CH2CH2-、CF3CF2CF2CH2CH2-、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2-、CH3O-、C2H5O-が挙げられ、R9は、CH3COO-、CH2=C(CH3)O-、C2H5(CH3)C=NO-、CH3O-、(CH3)2N-、(C2H5)2N-、(i-C3H7)2N-、O(CH2CH2)2N-、(CH3)3CNH-、C6H10NH-、C6H5NH-が挙げられる。
加水分解性基含有シリル基を形成する機能性アルコキシシリル化合物の例として、
CH3Si(OCOCH3)3、(CH3)2Si(OCOCH3)2、n-C3H7Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、C6H5Si(OCOCH3)3、CF3CF2CH2CH2Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、CH3OSi(OCOCH3)3、C2H5OSi(OCOCH3)3、CH3Si(OCOC3H7)3、CH3Si[OC(CH3)=CH2]3、(CH3)2Si[OC(CH3)=CH2]3、n-C3H7Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、C6H5Si[OC(CH3)=CH2]3、CF3CF2CH2CH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH3OSi[OC(CH3)=CH2]3、C2H5OSi[OC(CH3)=CH2]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、(CH32Si[ON=C(CH3)C2H5]2、n-C3H7Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、C6H5Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CF3CF2CH2CH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3OSi[ON=C(CH3)C2H5]3、C2H5OSi[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3Si[N(CH3)]3、(CH3)2Si[N(CH3)]2、n-C3H7Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、C6H5Si[N(CH3)]3、CF3CF2CH2CH2Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、CH3OSi[N(CH3)]3、C2H5OSi[N(CH3)]3、CH3Si[N(CH3)]3などの昜加水分解性オルガノシランが挙げられる。
これらの機能性アルコキシシリル化合物は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;塩化メチレンなどのハロゲン化物、ブタン、ヘキサンなどのオレフィン類;テトラヒドロフラン、ブチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類;ジメチルホルムアミド、メチルピロリドンなどのアミド類;及びこれらの混合溶媒などに溶解して使用される。
機能性アルコキシシリル化合物の添加量は、概ね上記の溶剤100gに対して、0.001〜5gの範囲が適当である。0.001g以下では接着効果が十分ではなく、5g以上では条件を制御しても多層薄膜が生成するので好ましくない。
シリコーン製の樹脂成形シートの基材の好ましい例を示したが、シリコーンはシリコーン樹脂でもシリコーンゴムでも好ましく用いられる。その他、高分子樹脂製の基材でもよい。これらの材質は透明材質が好ましく、バイオチップ基板を用い被験液を蛍光発光・染色するときに蛍光波長の透過を阻害しないものであることが好ましい。
高分子樹脂として、例えばセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、二酢酸セルロースのようなセルロース誘導体、表面ケン化酢酸ビニル樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、i-ポリプロピレン、石油樹脂、ポリスチレン、s‐ポリスチレン、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ポリシアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・プロピレン共重合体、1,4‐トランスポリブタジエン、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・フォルマリン樹脂、レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グリプタル樹脂、変性グリプタル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテレンテレフタレート、不飽和ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、ポリカーボネート、6−ナイロン(ナイロンは登録商標)、6'6−ナイロン、6'10-ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリジメチルフェニレンオキサイド、ポリキシレン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PPI、カプトン)、液晶樹脂、ケブラー繊維、炭素繊維とこれら複数材料のブレンド物、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)のような高分子材料、又は天然ゴム、1,4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、水素添加スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、水素添加アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテン、ポリイソブチレン、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ターポリマー、塩素化ポリエチレン、クロルスルフォン化ポリエチレン、アルキル化クロルスルフォン化ポリエチレン、クロロプレンゴム、塩素化アクリルゴム、臭素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンとその共重合ゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどのゴム材料が挙げられる。これらの混合物又はこれらの架橋物であってもよい。
重ね合わせるべき樹脂成形シートは、これらの材料から適宜選択でき、二種類の異なる樹脂成形シートが重ね合わされてもよい。また、重ね合わせるべき樹脂成形シートは、一方はゴム弾性があり、他方はゴム弾性がなく樹脂性の高い材料であり、これらが接着されていてもよい。
樹脂成形シートは、例えば、ゴム状の弾性を有するものである場合、デューロメータA硬さを30〜80の範囲とするものであることが好ましい。またこのようなゴム状の弾性を有する樹脂成形シートと、デューロメータD硬さを20〜90とする通常の樹脂で成形されたシートとを、適宜組み合わせて用いてもよい。
樹脂成形シート基材にコロナ放電を施した例を示したが、大気圧プラズマ処理又は紫外線照射を施してもよい。
コロナ放電は、「コロナ処理」、日本接着学会誌、Vol.36,No.3,126(2000)に記載の方法に準じて、大気圧プラズマ処理は、「プラズマ処理」、日本接着学会誌、Vol.41,No.1,4(2005)に準じて、紫外線照射は、紫外線に暴露させて、夫々処理するというものである。これらの処理によって、L.J.Gerenser:J.Adhesion Sci.Technol.7,1019(1997)に記載のように、樹脂成形シートの基材表面に、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基などが生成したり、表面に出現したりする。
前記の高分子樹脂は、元々水酸基を有するものと有しないものとがあるが、高分子樹脂製の樹脂成形シートの基材表面に水酸基を有しなくともコロナ放電、大気圧プラズマ処理又は紫外線照射の処理を施すことにより、そこに水酸基が効率よく生成される。
それらの最適処理条件は、樹脂成形シートの基材表面の材質の種類や履歴によって異なるが、その表面に55kJ/m以上の表面張力が得られるまで処理し続けることが重要である。これにより、十分な接着強度が得られる。
具体的には、樹脂成形シートの基材表面のコロナ放電処理は、コロナ表面改質装置(例えば、信光電気計測(株)製コロナマスター)を用いて、例えば、電源:AC100V、出力電圧:0〜20kV、発振周波数:0〜40kHzで0.1秒〜60秒、温度0〜60℃の条件で行われる。
また、樹脂成形シートの基材表面の大気圧プラズマ処理は、大気圧プラズマ発生装置(例えば、松下電工(株)製:商品名Aiplasuma)を用いて、例えば、プラズマ処理速度10〜100mm/s,電源:200 or 220V AC(30A)、圧縮エア:0.5MPa(1NL/min)、10kHz/300W〜5GHz、電力:100W〜400W、照射時間:0.1秒〜60秒の条件で行われる。
また、樹脂成形シートの基材の表面の紫外線照射は、紫外線−発光ダイオード(UV-LED)照射装置(例えば、(株)オムロン製のUV-LED照射装置:商品名ZUV-C30H)を用いて、例えば、波長:200〜400nm、電源:100V AC、光源ピーク照度:400〜3000mW/cm2、照射時間:1〜60秒の条件で行われる。
コロナ放電などの前処理後、樹脂成形シートの基材表面を、分子接着剤である機能性アルコキシシリル化合物の溶液に浸漬又は噴霧によって接触させてもよい。浸漬及び噴霧の時間に制限はなく、樹脂成形シートの基材表面が一様に湿潤していることが重要である。
機能性アルコキシシリル化合物を付した樹脂成形シートの基材を、オーブンに入れたり、ドライヤーで温風を送風したり、高周波を照射したりすることにより、加熱しながら乾燥する。加熱・乾燥は、50℃〜250℃の温度範囲で、1〜60分間行われる。50℃以下では、樹脂成形シートの基材表面に生成した水酸基と機能性アルコキシシリル化合物との反応時間が長くかかりすぎて、生産性が低下し、コストの高騰を招く。また、250℃以上では、加熱乾燥時間が短くても樹脂成形シートの基材表面が変形したり、分解したりしてしまう。1分間以下の加熱乾燥では熱の伝達が不十分であるため、樹脂成形シートの基材表面の水酸基と機能性アルコキシシリル化合物との結合が不十分となる。また、60分以上では生産性が低下する。
樹脂成形シートの基材表面の水酸基と機能性アルコキシシリル化合物との反応が不十分な場合には、上記の浸漬と乾燥とを1〜5回程度繰り返してもよい。それにより1回当たりの浸漬及び乾燥時間を短縮し、反応回数を増やす方が反応を十分に進行させることができる。
さらに、前記の機能性アルコキシシリル化合物とシラン化合物とを組み合わせて用いることにより、シリコーンゴム架橋反応性を有するシリルエーテルを、樹脂成形シートの基材表面に形成させることができる。
たとえば、上記の機能性アルコキシシリル化合物で樹脂成形シートの基材表面の水酸基とを反応させた後、シラン化合物、例えば
HSi(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
HSi(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H、
CH3Si(H)2C2H4Si(H)2CH3
HSi(CH3)2C2H4Si(CH3)2H、
HSi(CH3)2OSi(CH3)2H、
HSi(CH3)2O[Si(CH3)2O]x1Si(CH3)2H(但しx1=1〜840)、
(CH3)3SiO[SiH(R17)O]x2[Si(CH3)2O]y1Si(CH3)3(但しR17=CH3-、C2H5-、C6H5-;y1=1〜50;x2=0〜50)、
HSi(CH3)2O[SiC6H5(OSi(CH3)2H)]x3Si(CH3)2H(x3=1〜5)、
HSi(CH3)2O[SiCH3(H)O]x4[SiCH3(C6H5)O]y2Si(CH3)2H(x4=1〜10、y2=1〜10)
が挙げられる。これらのシラン化合物の0.01〜5%アルコール溶液に浸漬して、0〜200℃に1〜60分間加熱することによって、樹脂成形シートの基材が得られる。0.01%以下では反応時間がかかりすぎ、5%以上では洗浄・回収のコストがかかってしまう。0℃以下では反応性が低く、200℃以上では生産性が劣る。1分間以下では反応が完結せず、60分間以上では生産性が劣る。
同様に、以下の不飽和アルコキシシラン化合物、例えば
CH2=CHCH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OC2H5)2OSi(OC2H5)2CH=CH2
CH2=CHC6H4CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OCH3)2O[SiOCH3(CH=CH2)O]x5Si(OCH3)2CH=CH2 (但し、x5=1〜30)、
CH2=CHSi(CH3)2O[Si(CH3)2O]y3[Si(R18)2O]x6Si(CH3)2CH=CH2(但し、R18=CH3−,C2H5−,C6H5−,又はCF3CH2CH3−、x6=0〜2100、y3=0〜2100)、
(CH3)3SiO[Si(CH3)2O]y4[SiCH3(CH=CH2)O]x7Si(CH3)3(但し、x7=0〜2100、y4=0〜2100)、
(CH3)3SiO[Si(CH3)2O]y5[SiCH3(CH=CH2)O]x8[SiCH3(R19)O]z1Si(CH3)3(R19=CH3−,C2H5−,C6H5−,又はCF3CH2CH3−、x8=0〜2100、y5=0〜2100、z1=0〜2100)
が挙げられる。これらの不飽和アルコキシシラン化合物で樹脂成形シートの基材表面の水酸基と反応させた後、前記のシラン化合物の0.01〜5%と、白金触媒の10〜1000ppmとの混合物の懸濁液に、0〜200℃、1〜60分間浸漬しても樹脂成形シートが得られる。
このときシラン化合物濃度が0.01%以下では反応時間がかかりすぎ、5%以上では洗浄・回収のコストがかかってしまう。白金触媒濃度が10ppmでは反応速度が遅すぎ、1000ppm以上ではコストが問題となってしまう。0℃以下では反応性が低いので生産性が低く、また200℃以上ではSiH基が酸化されて性能が低下する。1分間以下では反応が完結しない場合もあり、60分間以上では生産性が劣る。
また、機能性ポリアルコキシシランで樹脂成形シートの基材の水酸基と反応させた後、HOSi(CH3)2O[Si(CH3)2O]2Si(CH3)2OHのようなシラノール末端シロキサンの0.01〜5%のメタノール溶液に0〜200℃、1〜60分間浸漬すると、シラノール基を表面に含有した樹脂成形シートが得られる。
このシラノール末端シロキサン濃度が0.01%以下では反応時間がかかりすぎ、5%以上では洗浄・回収のコストがかかってしまう。0℃以下では反応性が低いので生産性が劣り、また200℃以上では多分子膜になる場合もあるので好ましくない。1分間以下では反応が完結しない場合もあり、60分間以上では生産性が劣る。
前記のようにして得られたヒドロシリル(SiH)基、不飽和基、及びシラノール(SiOH)基などの架橋反応性基が導入された下側樹脂成形シートは、以下に説明するようなシリコーンゴム成分組成物やそれで形成された上側シリコーン製樹脂成形シートと接触させて、放置又は加熱することにより架橋接着を起こす。
下側樹脂成形シートを、シリコーンゴム成分組成物やそれで形成された上側シリコーン製樹脂成形シートと接触させて、0〜200℃で1〜240分間、大気圧から100kg/cm2の圧力下で処理すると、バイオチップ基板が得られる。
このとき0℃以下では架橋速度が遅くて生産性に劣るが、200℃以上では使用する高分子樹脂に熱安定性の限界があり好ましくない。1分以下では架橋反応が十分でなく接着しない場合が多く、240分以上では生産性が劣り好ましくない。通常発泡体を製造する以外は大気圧以下ではバイオチップ基板の接着強度が低くなり、100kg/cm2以上にしても特段益がないので好ましくない。
樹脂成形シートを構成するシリコーンゴム成分は、下記化学式[5]
H(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]c[Si(R11)R12O]dSi(CH3)2H ・・・[5]
(式中、R11及びR12は、より具体的にはCH3−,C2H5−,CH2CH=CH2−,n-C3H7−,i-C3H7−,n-C6H13−,n-C8H17−,C6H5−,C6H5CH2−,C6H5CH2CH2−,C10H7−,CF3CH2CH2−,CF3CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,HSi(CH3)2O−で例示される基、cは1〜80の数、またdは0〜80の数)から選ばれたポリHシロキサン、
下記化学式[6]
CH2=CH(CH3)2SiO[SiCH=CH2(CH3)O]e[Si(R13)R14O]fSi(CH3)2CH=CH2 ・・・[6]
(式中、R13及びR14は、より具体的には、CH3−,C2H5−,CH2=CH−,CH2=CHCH2−,n-C3H7−,i-C3H7−,n-C6H13−,n-C8H17−,C6H5−,CH2=CHC6H4−,CH2=CHC6H4CH2−,C6H5CH2CH2−,C10H7−,CF3CH2CH2−,CF3CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,HSi(CH3)2O−で例示される基、eは1〜80の数、fは0〜80の数)
から選ばれたビニルシリコーン類、
又は下記化学式[7]
A-(CH3)2SiO[Si(CH3)2O]g[Si(R15)R16O]hSi(CH3)2-A ・・・[7]
(式中、R15及びR16はCH3−,C2H5−,CH2=CH−,CH2=CHCH2−,n-C3H7−,i-C3H7−,n-C6H13−,n-C8H17−,C6H5−,CH2=CHC6H4−,CH2=CHC6H4CH2−,C6H5CH2CH2−,C10H7−,CF3CH2CH2−,CF3CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−で例示される基、AはHO−、CH3O−,C2H5O−,n-C3H7O−,i-C3H7O−,C6H5O−,CH3COO−、CH2=C(CH3)O−、C2H5(CH3)C=NO−、(CH3)2N−,(C2H5)2N−で例示される基、gは1〜80の数、hは0〜80の数)から選ばれたシラノールシリコーン類誘導体が挙げられる。
シリコーンゴム成分組成物は、これらのシリコーンゴム成分の少なくとも一種類を含んでいる。化学式[5]と化学式[6]の混合物からなる付加型シリコーンゴム組成、化学式[6]のみからなるパーオキサイド型シリコーンゴム組成、及び化学式[7]又は化学式[5]と化学式[7]の混合物からなる縮合型シリコーンゴム組成であってもよい。
シリコーンゴム成分組成物は上記シリコーンゴム成分の他に、充填剤、架橋剤、触媒が加えられていてもよい。
充填剤は、湿式シリカ、乾式シリカ、タルク、ニプシル、カーボンブラック、金属酸化物が挙げられ、10〜100部の範囲内で添加される。10部以下では補強効果が十分でなく、また100以上では充填が困難になってしまう。
シリコーンゴムは、パーオキサイド架橋系、付加型架橋系及び縮合型架橋系などの架橋系で形成される。これにより、架橋して接着したバイオチップ基板が得られる。
パーオキサイド型シリコーンゴム組成には、ベンゾイルぺルオキシド、t-ブチルパーベンゾエイト、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどパーオキサイドが0.5〜5部添加される。0.5部以下では架橋が不十分であり、また5部以上では成型加工中に架橋が起こる恐れがある。
下側樹脂成形シートと、パーオキサイド型シリコーンゴム組成物やそれで形成された上側シリコーン製樹脂成形シートとを当接させて、80〜200℃の温度範囲で1〜60分間加熱すると、それらが架橋したバイオチップ基板が、得られる。80℃以下では架橋したバイオチップ基板が得られ難く、また200℃以上ではシリコーンゴムが黄変する場合がある。1分以下では架橋が不十分であり、また60分以上では生産性が低くコスト高となる。
付加型シリコーンゴム組成には、付加型架橋に使用される触媒として、塩化白金酸、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金オクタナル/オクタノール錯体、トリス(ジブチルスルフィド)ロジュウムトリクロリドなどを1〜100ppmの範囲内で添加して使用される。これが1ppm以下では架橋が不十分であり、また100ppm以上ではコスト高となるので好ましくない。
上記の触媒は、付加型シリコーンゴム組成の化学式[5]のシリコーンゴム、化学式[6]のシリコーンゴム及びこれら混合物のいずれかのシリコーンゴム成分組成物に添加して使用される。
シリコーンゴム成分組成物やそれで形成された上側シリコーン製樹脂成形シートと下側シリコーン製樹脂成形シートとを、0〜150℃の温度範囲で、1〜240分の架橋時間で、加熱処理すると、架橋して、バイオチップ基材を得ることができる。0℃以下では十分に架橋して接着したバイオチップ基材が得られ難く、また150℃以上でも特段問題はない。1分以下では架橋が不十分であり、また240分以上では生産性が低くコスト高となる。樹脂成形シートの厚さが10mmを超えると、熱伝導率が悪くなり、内部の架橋が遅くなるために、金型温度を低温にして、長時間架橋することもある。その場合、段階的に架橋温度を変えることも可能である。比較的薄いゴムの樹脂成形シートの場合、常温で例えば一昼夜かけて架橋させてもよい。その場合は、架橋温度での熱膨張と常温で使用した時の収縮が起こらず、非常に寸法精度の良い樹脂成形シートの成形が可能となる。
化学式[5]のシリコーンゴム、化学式[6]のシリコーンゴムの混合比は両者のSiH基/CH=CH2比が1を目途(化学量論)とするが、一般的には1.3/1〜4.5/1である。1.3/1以下では目的より硬度が低く、また4.5/1以上でも同様の結果となる場合が多い。最適なSiH基/CH=CH2比は充填剤などの添加剤の影響を受けるので、適宜選択する。
特に、樹脂成形シートの基材表面の架橋反応性基SiH基濃度が高い場合には、SiH基/CH=CH2比が高くても接着強度は高くなる。しかし、SiH基濃度が低い場合には、SiH基/CH=CH2比が高いと接着強度は低くなる。また、基材表面の架橋反応性基CH=CH2基濃度が高い場合には、SiH基/CH=CH2比が高くしないと接着強度が高くならない。
縮合型シリコーンゴム組成物には、縮合型架橋剤として、CH3Si(OCOCH3)3、C2H5OSi(OCOCH3)3、CH3Si[OC(CH3)=CH2]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3OSi[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3Si[N(CH3)]3などが0.5〜10部、及び触媒としてビス(エチルヘキシル)スズ、ビス(ネオデカネート)スズ、ジブチルラアウリルスズなどの有機スズ化合物、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などの金属塩や、チタン酸エステル、チタンキレート化合物、アミン類などが0.5〜10部添加される。
縮合型シリコーンゴム組成物中、縮合型架橋剤は化学式[7]のシラノールシリコーン類ゴムに添加され、また触媒は化学式[5]のHシリコーンポリマー又は化学式[7]のシラノールシリコーン類ゴムのどちらか、又はこれらの混合物に添加して使用される。
バイオチップ基板は、以下のような別な態様であってもよい。
樹脂成形シートの基板に、コロナ放電処理のような表面処理を施し、基板上に水酸基を生成させ、(CH2=CH-)(CH3O-)2Si-O-[(CH2=CH-)(CH3O-)Si-O]b1-Si(-OCH3)2(-CH=CH2)のようなビニル含有シリル化合物の溶液に浸漬させて熱処理すると、基板上の水酸基にビニル含有シリル化合物が反応する。それを、白金含有触媒、例えば白金−テトラメチルジビニルジシロキサン錯体のような白金錯体のヘキサン液に浸漬させ、乾燥させると、基板上に白金含有触媒が付されている樹脂成形シートが得られる。その化学的構造は必ずしも明らかではないが、樹脂成形シートの表面で生成した複数のビニル含有シリル基に、白金錯体の白金原子が配位しているものと推察される。
この樹脂成形シートに、ヒドロシリル基含有ポリシロキサン、又はさらにビニル基含有ポリシロキサンや必要に応じて白金含有触媒を含む組成物やそれで形成された樹脂成形シートを当接させ、硬化させる。すると、ヒドロシリル基含有ポリシロキサンのヒドロシリル基が、ビニル含有シリル基同士の架橋重合よりも優先的に、そのビニル含有シリル基の二重結合へヒドロシリル化反応して、高分子量化し、下側樹脂成形シート表面の上に、ポリシロキサン類で形成されるシリコーンゴム製の上側樹脂製成形シートが被覆されて接着されたバイオチップ基板が、得られる。
白金含有触媒として、例えば白金−テトラメチルジビニルジシロキサン錯体のヘキサン溶液、1.85〜2.1%の白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液であるSIP6829.2(Gelest社製の商品名)、3〜3.5%の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の両末端ビニルポリジメチルシロキサン溶液であるSIP6830.3(Gelest社製の商品名)、2.1〜2.4%の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液であるSIP6831.2(Gelest社製の商品名)、2.1〜2.4%の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液の低着色タイプであるSIP6831.2LC(Gelest社製の商品名)、2〜2.5%の白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体の環状メチルビニルシロキサン溶液であるSIP6832.2(Gelest社製の商品名)、2〜2.5%の白金−オクタナル/オクタノール錯体のオクタノール溶液であるSIP6833.2(Gelest社製の商品名)のような白金錯体が挙げられる。白金含有触媒にかえて、ロジウム含有触媒、例えば、3〜3.5%のトリス(ジブチルスルフィド)ロジウムトリクロライドのトルエン溶液であるINRH078(Gelest社製の商品名)のようなロジウム錯体であってもよい。
以上のように、本願発明のバイオチップ基板は、樹脂成形シートの接着において、接着剤層としての厚みがないので、二枚の樹脂成形シートを重ね合わせた厚みとなり、通常のときは、隙間はなく、試験の際、外部からの圧迫や、被験液の加圧注入によって、流路ができるものである。また、二枚の樹脂成形シートの間にスペーサを挟んで接着し、流路を形成する場合にも、接着剤を用いないから接着剤層の厚みが無いので、樹脂成形シートとスペーサとを重ね合わせただけの厚みとなり、スペーサの厚さが正確に流路の高さとなるので、流路断面積と流路全容積とが正確に特定された流路を、形成することができる。
本発明における樹脂成形シートは、通常の成形方法による。
以下に、本発明を適用するバイオチップ基板を試作した例を、示す。
(実施例1)
図1及び3に示すバイオチップ基板1を試作した。すなわち商品名「KE1935A」の1質量部に対し「KE1935B」(いずれも信越化学工業(株)社製、商品名)の1質量部の比率で混合し、0.6mm厚で、縦横100mm×60mmの2枚のシリコーン製の樹脂成形シート11・12を作成した。樹脂成形シート11に液注入口と液排出口とを打ち抜いた。樹脂成形シート12に厚さ4μmのポリエチレンテレフタレート(PET)をマスキング樹脂層18b・18b’として静電気で吸着させた。さらにヒーター19、バイオセンサである電極20を付した。次に樹脂成形シート11・12の重ね面となる面を60Hzの中にヒーターを挟んで重ね面をコロナ放電力600W/31cm、エアーギャップ7mm、速度50cm/分でコロナ放電処理し、その後、マスキング樹脂層を剥離し、面同士を40℃で、2Paの圧力で圧着し、バイオチップ基板1を得た。
(実施例2)
図4に示すバイオチップ基板1を試作した。すなわち実施例1と同種の2枚のシリコーン製の樹脂成形シート11・12と、それの縦横同寸法で0.2mm厚の同素材のスペーサ21とを用いた。スペーサ21をレーザーカット加工し、厚み方向にシートを抜くようにして、平行線の部分で幅30μmの筋条の空隙を設けた。夫々のシートの重ね合わされるべき面を実施例1と同様にコロナ放電処理した後、スペーサ21を樹脂成形シート11・12に挟み込んで実施例1と同様にして加圧接着した。これにより、断面30μm×200μmの流路を持つバイオチップ基板1を得た。
本発明のバイオチップ基板は、迅速に分析結果を知る必要がある救急医療現場での患者の生体成分の分析、犯罪現場で微量な血痕・体液・毛髪・生体組織細胞等の遺留品からDNAを抽出し、そのDNAを増やすPCR増幅し、電気泳動でDNAを特定するDNA解析、新規医薬品探索のための各種医薬候補品の物性・薬効評価、オーダーメード医療のための診断、ペプチドやDNAや機能性低分子の微量合成などに、用いられる。
このバイオチップ基板は、それらの分析装置やマイクロリアクターに装着して、遺伝子診察・治療を行う医療分野や、生体試料を用いた犯罪捜査分野における各種分析、海洋や湖沼等の遠隔地での水中ロボットを用いた微生物探索、医薬品開発における各種合成に用いることができる。
本発明を適用するバイオチップ基板の模式斜視図である。 本発明を適用するバイオチップ基板の製造工程を示す模式断面図である。 本発明を適用する別なバイオチップ基板の製造工程を示す模式断面図である。 本発明を適用する別なバイオチップ基板の模式斜視図である。
符号の説明
1はバイオチップ基板、11は上側の樹脂成形シート、12は下側の樹脂成形シート、13a〜cは液注入口、14a〜bは液排出口、15・16は重ね面、17は筋条、18a・18a’は金属層、18b・18b’はマスキング樹脂層、19はヒーター、20は電極、21はスペーサ、31は金属被膜、32は未硬化レジスト膜・32a・32a’は硬化レジスト層、33は未硬化レジスト膜である。

Claims (10)

  1. 重ねられた樹脂成形シートを有しており、前記シートの向き合った重ね面同士の一部に、液注入口から液排出口へ至る非接着の筋条が設けられており、前記筋条に沿う両脇で、前記シート同士が接着されていることによって、前記液注入口の少なくとも一つから注入される被験液の流路となる前記筋条が形成されていることを特徴とするバイオチップ基板。
  2. 前記樹脂成形シートが弾性を有し、前記筋条が、外部からの圧迫により、及び/又は前記被験液の加圧注入により、押し広げられて前記流路を形成することを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板。
  3. 重ねられた前記樹脂成形シートの少なくとも一方の重ね面で、前記筋条が、金属蒸着膜、又はマスキング樹脂層により、被覆されていることによって、前記非接着の筋条として形成されていることを特徴とする請求項2に記載のバイオチップ基板。
  4. 重ねられた前記樹脂成形シートに挟まれているスペーサで仕切られていることによって、前記筋条が前記流路を形成しており、前記樹脂成形シートと前記スペーサとが、接着されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板。
  5. 前記接着すべき前記樹脂成形シートと、必要に応じそれに挟まれるスペーサとの内の少なくとも何れかの接着される面が、コロナ放電処理またはプラズマ処理され、その処理がされた面同士が、重ねられて前記接着されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のバイオチップ基板。
  6. 前記接着すべき前記樹脂成形シートと、必要に応じそれに挟まれるスペーサとが、ヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物とを含有しており、その両者が、前記ビニル基含有化合物のビニル基への前記ヒドロシリル基含有化合物のヒドロシリル基の付加反応により形成されたケイ素−炭素の結合を介して、前記接着されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板。
  7. 前記接着すべき前記樹脂成形シートと、必要に応じそれに挟まれるスペーサとの内の接着すべき一方が、その表面に有する水酸基の脱水素基に、ヒドロシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基を、シリルエーテル結合されたものであり、他方が、前記活性シリル基と反応するヒドロシリル、ビニルシリル、ヒドロキシシリル、アルキルオキシシリル、アルケニルオキシシリル、アシルオキシシリル、イミノオキシシリル、アルキルアミノシリルから選ばれる少なくとも1種類の反応基を含有する化合物を含んでおり、その両者が、前記反応により形成されたケイ素−炭素とケイ素−酸素との何れかの結合を介して、前記接着されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板。
  8. 前記樹脂成形シートが、シリコーン樹脂でできていることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板。
  9. 前記筋条が、複数あって、途中で集束し又は分岐していることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板。
  10. 前記被験液のバイオ成分の検出試薬と、前記被験液のバイオ成分への反応試薬と、バイオセンサとの少なくとも何れかが、前記筋条の途中に配置され、及び/又は、
    前記検出試薬と、前記反応試薬と、合成試薬との少なくとも何れかが、前記液注入口から注入されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板。
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