JP2010005870A - 親水性部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】親水性、ドライ・ウェット耐傷性、柔軟性が高く、防汚性に優れた親水性部材を提供すること。
【解決手段】基材上に少なくとも親水性層を備えた親水性部材であって、該親水性層が、親水性基を含む構造単位を1分子内に30モル%以上含み、かつアルコキシシリル基を少なくとも1つ含む親水性ポリマーを含有する組成物から形成され、該親水性層中の該親水性ポリマーのアルコキシシリル基の縮合率が30%〜70%であり、該親水性ポリマーのアルコキシシリル基とシラノール基の数の比(SiOR/SiOH)が0.1〜15であり、該親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下であることを特徴とする親水性部材。
【選択図】なし

Description

本発明は、親水性部材に関し、詳細には、ドライ・ウェット耐傷性、柔軟性、防汚性に優れた親水性部材に関する。
従来、建築物、土木構築物、自動車等の躯体の保護、意匠性の付与および、美観の向上のため塗装仕上げが行われている。特に、近年フッソ樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料あるいはポリウレタン樹脂塗料等の高耐久性塗料の出現により、躯体の保護に関しては大きな進歩を遂げた。しかしながら、これら高耐久性塗料ではそれらの表面は、樹脂本来の特性から、疎水性・親油性を示すものが一般的である。従って、これらの表面に汚れ物質として、油分等が付着した場合、容易に除去することができず、また蓄積することにより、該表面を有する製品・部材の機能・特性を著しく低下させることがあった。また高湿度の条件や降雨下に曝される製品・部材では、水滴が付着することにより、透明な機能を有する製品・部材において、光の乱反射により光の透過性が阻害される問題があった。ガラスや金属等の無機表面を有する製品・部材においても、油分等の汚れ物質の付着に対する防汚性は十分とは言えず、水滴の付着による防曇性についても十分ではなかった。特に自動車用ガラス、建材用ガラスでは、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着する場合や、水滴の付着によりガラスを透して(鏡の場合は反射して)視界を確保することが妨げられる場合が多く、防汚性や防曇性の機能付与が強く求められていた。
防汚性の観点から、汚れ物質を油分等の有機系物質と想定すると、汚れ防止の為には材料表面との相互作用を低減する、即ち親水化するか、撥油化する必要がある。また防曇性に対しても、付着水滴を表面に一様に拡げる拡張濡れ性(即ち親水性)を付与するか、付着水滴を除去し易くさせる撥水性を付与することが必要となる。従って、現在検討されている防汚・防曇材料は、親水化や撥水・撥油化に依拠しているものが多い。
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。
その他の表面親水性機能を有する部材として、従来から光触媒として酸化チタンの利用が知られている。これは、光照射による有機物の酸化分解機能と親水化機能に基づくもので、例えば、特許文献1において、基材表面に光触媒含有層を形成すると、光触媒の光励起に応じて表面が高度に親水化されることが開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防曇、防汚等の機能を付与できることが報告されている。酸化チタンをガラス表面にコーティングした部材は、セルフクリーニング材料として、建材用窓ガラスや自動車用フロントガラスに使用されているが、防汚性や防曇性の機能発現には、長時間太陽光の下に曝すことが必要であり、長期経時での汚れの蓄積により、その性質が劣化することは避けられなかった。また膜強度が十分とは言えず、耐久性の向上が必要であった。またプラスチック基板上に酸化チタン層を設けたセルフクリーニングフィルムも自動車用サイドミラー等に使用されているが、同じく十分な膜強度を有さず、より良好な耐摩耗性を有する親水性材料が求められていた。
また、撥水・撥油性に基づく防汚・防曇性材料としては、主にシリコーン化合物やフッ素化合物が使用されている。例えば、基板表面を末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚材料が特許文献2に、ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物を有する材料が特許文献3に、二酸化珪素を主成分とする光学薄膜とパーフルオロアクリレートとアルコキシシラン基を有するモノマーとの共重合体との組合せが特許文献4に開示されている。しかしながらこれらのシリコーン化合物やフッ素化合物を用いた防汚材料は、防汚性が不十分であり、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れを除去し難く、フッ素やシリコーン等の表面エネルギーの低い化合物による表面処理は、経時による機能の低下が懸念され、耐久性の優れた防汚・防曇性部材の開発が望まれていた。
一方、特許文献5には、シリル基を有するエマルションまたは水溶性樹脂、エポキシ基を有する化合物、有機アルミニウム化合物を含有する硬化性組成物等が提案されている。しかしながら、これらの硬化性組成物により得られる被覆膜は十分な親水性表面を得ることができず、耐水性、防汚性、耐候性が低い。このため、さらなる改善が望まれる。
国際公開第96/29375号パンフレット 特開平4−338901号公報 特公平6−29332号公報 特開平7−16940号公報 特開平7−11152号公報
本発明は前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、親水性、ドライ・ウェット耐傷性、柔軟性が高く、防汚性に優れた親水性部材を提供することである。
上記課題は下記構成の手段によって解決された。
1. 基材上に少なくとも親水性層を備えた親水性部材であって、該親水性層が、親水性基を含む構造単位を1分子内に30モル%以上含み、かつアルコキシシリル基を少なくとも1つ含む親水性ポリマーを含有する組成物から形成され、該親水性層中の該親水性ポリマーのアルコキシシリル基の縮合率が30%〜70%であり、該親水性ポリマーのアルコキシシリル基とシラノール基の数の比(SiOR/SiOH)が0.1〜15であり、該親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下であることを特徴とする親水性部材。
2. 前記水滴接触角が10°以下であることを特徴とする上記1に記載の親水性部材。
3. 前記縮合率が50%〜65%であることを特徴とする上記1または2に記載の親水性部材。
4. 前記親水性ポリマーが下記一般式(II)で表される構造を含むことを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の親水性部材。
Figure 2010005870
一般式(II)中、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、Xは下記一般式(a)で表されるアルコキシシリル基を表し、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または連結基を表し、Yは−NHCOR、−CONH2、−N(R)2、−CON(R)2、−COR、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M、−(CHCHO)H、−(CHCHO)CHまたはN(R)31を表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはオニウムを表し、nは整数を表し、Z1はハロゲンイオンを表す。
一般式(a): −Si(R102a(OR1013-a
(一般式(a)中、R101は水素原子またはアルキル基を表し、R102は水素原子またはアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれる1価の炭化水素基を表し、aは0〜2の整数を表す。R101またはR102は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。)
5. 前記組成物が、さらに触媒を含むことを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の親水性部材。
6. 前記組成物が、前記触媒を加えた後、10分間〜10時間攪拌した組成物であることを特徴とする上記5に記載の親水性部材。
本発明によれば、親水性、ドライ・ウェット耐傷性、柔軟性が高く、防汚性に優れた親水性部材を提供することができる。
本発明の親水性部材は、基材上に少なくとも親水性層を備えており、該親水性層が、親水性基を含む構造単位を1分子内に30モル%以上含み、かつアルコキシシリル基を少なくとも1つ含む親水性ポリマーを含有する組成物から形成され、該親水性層中の該親水性ポリマーのアルコキシシリル基の縮合率が30%〜70%であり、該親水性ポリマーのアルコキシシリル基とシラノール基の数の比(SiOR/SiOH)が0.1〜15であり、該親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下である。
以下に本発明をより詳細に説明する。
[親水性ポリマー]
親水性層を形成するための組成物(親水性組成物ともいう)に含まれる親水性ポリマーは、親水性基を含む構造単位を1分子内に30モル%以上含み、かつアルコキシシリル基を少なくとも1つ有する。
親水性ポリマーの主鎖構造は特に限定されない。好ましい主鎖構造としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム等が挙げられ、特にアクリル樹脂、メタクリル樹脂が好ましい。親水性ポリマーは共重合体であってもよく、該共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
アルコキシシリル基は、水と反応してシラノール(Si−OH)を生成する基であり、好ましくは下記一般式(a)で表される。
一般式(a): −Si(R102a(OR1013-a
一般式(a)中、R101は水素原子またはアルキル基、R102は水素原子またはアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0〜2の整数を示す。R101またはR102は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
101がアルキル基を表す場合は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、R102がアルキル基を表す場合は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、アリール基を表す場合は炭素数6〜25のアリール基が好ましく、アラルキル基を表す場合は炭素数7〜12のアラルキル基が好ましい。
アルコキシシリル基は、好ましくは炭素原子に結合したアルコキシシリル基である。
アルコキシシリル基は、ポリマー主鎖の末端に一つまたは複数有する場合や、側鎖に一つまたは複数有する場合などがある。2以上のアルコキシシリル基を含む場合、該2以上のアルコキシシリル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
アルコキシシリル基は、後述するSi、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド(金属アルコキシドともいう)の加水分解、重縮合物に反応して化学結合を形成できる。また、アルコキシシリル基同士が化学結合を形成してもよい。親水性ポリマーは、水溶性であることが好ましく、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と反応することにより水不溶性になることが好ましい。この場合の化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。該化学結合は、共有結合であることが好ましい。
親水性基としては、好ましくはカルボキシル基、カルボキシル基のアルカリ金属塩、スルホン酸基、スルホン酸基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基等の官能基が挙げられる。これらの基は、ポリマー中のどの位置に存在しても良い。ポリマー主鎖より直接、または連結基を介し結合しているか、ポリマー側鎖やグラフト側鎖中に結合しており、複数個が存在するポリマー構造が好ましい。
また、本発明に使用される親水性ポリマーは、好ましくは金属アルコキシドと、触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマーであるのがよい。金属アルコキシド化合物と、触媒の作用により結合を生じる基としては、前記の一般式(a)で表されるアルコキシシリル基のほか、カルボキシル基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、無水カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、メチロール基、メルカプト基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和基、エステル基、テトラゾール基などの反応性基が挙げられる。
親水性基を含む繰り返し単位とアルコキシシリル基との間や、親水性基を含む繰り返し単位と主鎖との間に連結基が介在していることが好ましい。
親水性ポリマーは、下記一般式(I)、(II)または(III)で表される構造を含む親水性ポリマーであることが好ましい。
Figure 2010005870
一般式(I)、(II)および(III)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR10はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、Xは上記一般式(a)で表されるアルコキシシリル基を表し、A、L1、L2、L3、L4、およびL5は、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR、−CONH2、−N(R)2、−CON(R)2、−COR、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M、−(CHCHO)H、−(CHCHO)CHまたはN(R)31を表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはオニウムを表し、nは整数を表し、Z1はハロゲンイオンを表し、Bは下記一般式(IV)で表される構造を有する基を表す。
Figure 2010005870
一般式(IV)中、R11、R12、L6およびYの定義は一般式(II)中のR3、R4、L2およびYの定義と同じである。
一分子当たりのアルコキシシリル基を数多く導入することができ、常温乾燥によって非常に良好な硬化性を得ることができることから、一般式(II)で表される構造を含む親水性ポリマーが最も好ましい。
(一般式(I)で表される構造を有する親水性ポリマー)
一般式(I)で表される構造を有する親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter(Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
一般式(I)で表されるポリマーの質量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000乃至100万がさらに好ましく、2000乃至10万が最も好ましい。
一般式(I)で表される構造を有する親水性ポリマーは、末端に反応性基を有する親水性ポリマーである。上記一般式(I)において、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R1、R2は、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から8までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、ヒドロキシメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
親水性の観点から上記のなかでもヒドロキシメチル基が好ましい。
AおよびL1は単結合または有機連結基を表す。ここで、AおよびL1が有機連結基を表す場合、AおよびL1は非金属原子からなる多価の連結基を表し、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、および0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。具体的には、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、およびそれらの組合せから選ばれることが好ましく、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−または−S−または−CO−または−NH−を含む組合せで、2価の連結基であることが好ましい。
より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
Figure 2010005870
AおよびL1は、より好ましくは、−CHCHCHS−、−CHS−、−CONHCH(CH)CH−、−CONH−、−CO−、−CO−、−CH−である。
一般式(I)中、Yは−NHCOR、−CONH2、−N(R)2、−CON(R)2、−COR、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M、−(CHCHO)H、−(CHCHO)CHまたはN(R)31を表し、ここで、Rは、好ましくは炭素数1〜18の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはオニウムを表し、nは整数を表し、Z1はハロゲンイオンを表す。また、−CON(R)2のように複数のRを有する場合、R同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R1、R2がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
Rとしては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
Yとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH2、−COOH、−SO3 -NMe4 +、−SO3 -+、−(CHCHO)H、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−NHCOCH3、−CONH2、−CON(CH2、−SO3 -+、−(CHCHO)H、である。
nは1〜100の整数を表すことが好ましい。
一般式(I)で表される構造を有する親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
Figure 2010005870
上記式(i)および(ii)において、A、R1〜R2、L1、X、Yは、上記一般式(I)中のものと同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーは親水性基Yを有しており、このモノマーが親水性ポリマーにおける一構造単位となる。
一般式(I)で表される構造を含む親水性ポリマーは、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
一般式(I)で表される構造を含む親水性ポリマーの質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
本発明に好適に用い得る一般式(I)で表される構造を有する親水性ポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2010005870
(一般式(II)で表される構造を有する親水性ポリマー)
前記一般式(II)において、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、具体的な例および好ましい範囲は上記一般式(I)のR1、R2と同様である。L2、L3は、それぞれ独立に単結合または連結基を表し、具体的な例および好ましい範囲は上記一般式(I)のL1と同様である。YおよびXの定義は一般式(I)中のものと同じであり、具体的な例および好ましい範囲も同様である。
一般式(II)において、L3が単結合、または、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−および−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。
一般式(II)で表される構造を有する親水性ポリマーを合成するための各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
一般式(II)で表される構造を有する親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。
具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(1996年、共立出版)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、1992年、共立出版)、新実験化学講座19(1978年、丸善)、高分子化学(I)(日本化学会編、1996年、丸善)、高分子合成化学(物質工学講座、1995年、東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
一般式(II)で表される構造を有する親水性ポリマーは、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
一般式(II)で表される構造を含むポリマーの質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
一般式(II)で表される構造を含む親水性ポリマーの共重合比率は、Yを含有する構造単位のモル比(m2)とXを含有する構造単位のモル比(n2)が、m2/n2=30/70〜99/1の範囲が好ましく、m2/n2=40/60〜98/2がより好ましく、m2/n2=50/50〜97/3が最も好ましい。m2/n2が30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、m2/n2が99/1以下であれば、反応性基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
共重合比の測定は、核磁気共鳴装置(NMR)や、標準物質で検量線を作成し、赤外分光光度計により測定することができる。
以下に、一般式(II)で表される構造を有する親水性ポリマーの具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体またはブロック共重合体であることを意味する。
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(一般式(III)で表される構造を有する親水性ポリマー)
一般式(III)で表される構造を有する親水性ポリマーとしては、反応性基を有する幹ポリマーに親水性基を有する側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーを挙げることができる。
上記一般式(III)において、R7、R8、R9およびR10の定義は、上記一般式(I)のR1、R2の定義と同じであり、具体例および好ましい範囲も同様である。L4、L5の定義は、上記一般式(I)のL1の定義と同じであり、具体例および好ましい範囲も同様である。Bは、上記一般式(IV)で表される構造を有する基を有し、一般式(IV)中の、R11、R12、L6およびYの定義は、一般式(II)中のR3、R4、L2およびYの定義と同じであり、具体例および好ましい範囲も同様である。Xの定義は上記一般式(I)におけるXの定義と同じであり、具体例および好ましい範囲も同様である。
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作成することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、および“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に、1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる親水性グラフトポリマーを作成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用されるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と反応性基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、およびその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基もしくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖もしくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の質量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以上であれば有効な親水性が得られ、また10万以下であれば主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が高くなる傾向があり、いずれも好ましい。
一般式(III)で表される構造を有する親水性ポリマーは、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
一般式(III)で表される構造を有する親水性ポリマーは、質量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、さらに好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万以下であれば親水性被膜形成用塗布液を調製する際に溶媒への溶解性が悪化することなく、塗布液粘度が低くなり、均一な被膜を形成し易いなどハンドリング性に問題がなく、好ましい。
以下に、一般式(III)で表される構造を有する親水性ポリマーの具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体またはブロック共重合体であることを意味する。
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一般式(III)で表される構造を有する親水性ポリマーの共重合比率は、親水性基Yの量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、Yを含有する構造単位のモル比(m3)とXを含有する構造単位のモル比(n3)が、m3/n3=30/70〜99/1の範囲が好ましく、m3/n3=40/60〜98/2がより好ましく、m3/n3=50/50〜97/3が最も好ましい。m3/n3が30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、m3/n3=99/1以下であれば、アルコキシシリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
共重合比の測定は、核磁気共鳴装置(NMR)や、標準物質で検量線を作成し、赤外分光光度計により測定することができる。
本発明における親水性組成物は、一般式(I)、(II)または(III)で表される構造を含む親水性ポリマーを単独または2種以上含有してもよい。
一般式(I)、(II)または(III)で表される構造を含む親水性ポリマーは親水性組成物の全固形分に対して20〜99.5質量%使用されることが好ましく、30〜99.5質量%使用されることがさらに好ましい。
親水性組成物が一般式(I)で表される構造を含む親水性ポリマーと、一般式(II)または(III)で表される構造を含む親水性ポリマーとを含有する場合の好ましい質量比率は、(一般式(I)で表される構造を含む親水性ポリマー/前記一般式(II)または(III)で表される構造を含む親水性ポリマー)が50/50〜5/95である。
一般式(I)、(II)または(III)で表される構造を有する親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの5%水溶液の20℃で測定した粘度が0.1〜100mPa・s、好ましくは0.5〜70mPa・s、さらに好ましくは1〜50mPa・sの範囲にあると良好な膜物性を与える。粘度は、E型粘度計(商品名:RE80L、東京計器(株)製)で測定することができる。
親水性基を含む構造単位を1分子内に30モル%以上含み、かつアルコキシシリル基を少なくとも1つ含む親水性ポリマーを合成する際に用いられる溶媒としてはテトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
親水性ポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、レドックス系開始剤等公知の化合物が使用できる。
[架橋剤]
親水性組成物中に、前記一般式(I)で表される構造を含む親水性ポリマーを含有する場合は、良好な硬化性を得るために架橋剤を含有することが好ましい。また、親水性組成物中に前記一般式(II)または一般式(III)で表される構造を含む親水性ポリマーを含有する場合は架橋剤を含有しない場合でも良好な硬化性を得ることはできるが、膜強度が非常に優れた塗膜を得るためには架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物(金属アルコキシドともいう)がとくに好ましい。金属アルコキシドは、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシド同士が重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、さらに前記親水性ポリマーとも化学結合することができる。金属アルコキシドは一般式(V−1)または一般式(V−2)で表すことができ、式中、R20は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R21はアルキル基またはアリール基を表し、ZはSi、TiまたはZrを表し、mは0〜2の整数を表す。R20およびR21がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
(R20m−Z−(OR214-m (V−1)
Al−(OR223 (V−2)
以下に、一般式(V−1)または一般式(V−2)で表される金属アルコキシドの具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
ZがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、等を挙げることができる。
ZがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
また、中心金属がAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
上記のなかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが特に好ましい。
Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物は、前記一般式(I)で表される構造を含む親水性ポリマーを用いる場合は親水性組成物の全固形分に対して、1〜80質量%使用されることが好ましく、5〜70質量%使用されることがさらに好ましい。前記一般式(II)または一般式(III)で表される構造を含む親水性ポリマーを用いる場合は親水性組成物の全固形分に対して、0〜80質量%使用されることが好ましく、0〜70質量%使用されることがさらに好ましい。
[硬化触媒]
親水性組成物には、アルコキシシリル基含有親水性ポリマー、さらに金属アルコキシド化合物などの架橋剤を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解および重縮合反応を促進するために硬化触媒を用いることが好ましい。
硬化触媒としては酸性触媒、塩基性触媒または金属錯体を使用することが好ましい。
硬化触媒としては、前記金属アルコキシド化合物などの架橋剤を加水分解、重縮合し、アルコキシシリル基含有親水性ポリマーと結合を生起させる反応を促進する硬化触媒が選択され、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、または、酸、あるいは塩基性化合物を水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、硬化触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、硬化触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのR30COOHで表される構造式のR30を他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
硬化触媒は、金属錯体がとくに好ましい。
金属錯体触媒は、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができる。特に好ましい金属錯体触媒としては、周期律表の2A、3B、4Aおよび5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸またはそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソまたはヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、Sr、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素,Ti、Zrなどの4A族元素およびV、NbおよびTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、AlおよびTiから得られる錯体が優れており好ましい。
上記金属錯体の配位子を構成するオキソまたはヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸およびそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
好ましい配位子はアセチルアセトンまたはアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖または分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖または分岐のカルボキシアルキル基およびヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトンおよびジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性および、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性および皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
また、上記の金属錯体触媒の他に、前記酸性触媒、塩基性触媒を併用してもよい。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
硬化触媒は、親水性組成物の全固形分に対して、0.1〜20質量%使用されるのが好ましく、1〜10質量%使用されるのがさらに好ましい。
[無機微粒子]
親水性組成物は、親水性の向上や、皮膜のひび割れ防止、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子は粒子の中でも親水性が高いため特に好ましい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が10nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、塗膜中に安定に分散して、塗膜の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れる塗膜を形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水性組成物の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
[界面活性剤]
親水性組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)および固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
界面活性剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
[紫外線吸収剤]
塗膜の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.5〜15質量%であることが好ましい。
[酸化防止剤]
親水性組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、欧州特許出願公開第223739号明細書、同309401号明細書、同第309402号明細書、同第310551号明細書、同第310552号明細書、同第459416号明細書、独国特許出願公開第3435443号明細書、特開昭54−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
酸化防止剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.1〜8質量%であることが好ましい。
[溶剤]
親水性組成物による塗膜形成時に、基板に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性組成物に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水性組成物全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
[高分子化合物]
親水性組成物には、塗膜の物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、または「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
上記高分子化合物の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜20質量%であることが好ましく、0.01〜15質量%であることがより好ましい。
[抗菌剤]
親水性部材に抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性層の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られる。
抗菌剤としては、親水性部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤または、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
上記抗菌剤の添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%が一般的であり、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ膜強度に悪影響を及ぼさない。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
〔基材〕
親水性組成物を基材上に塗布、乾燥し、塗膜(親水性層)を形成することにより、親水性部材を形成することができる。
基材は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基材は、ガラス基板またはでプラスチック基板である。
ガラス基板としては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。また素板ガラスのまま、前記親水性層を塗設できるが、必要に応じ、親水性層の密着性を向上させる目的で、片面または両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
プラスチック基板としては、特に制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルムもしくはシートを挙げることができる。その中でも特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステフィルムが好ましい。なお、光学的には、透明性に優れている方が好ましい場合が多いが、用途によっては半透明、あるいは、印刷されたものも用いられる。プラスチック基板の厚みは、積層する相手によってさまざまである。例えば曲面の多い部分では、薄いものが好まれ、6〜50μm程度のものが用いられる。また平面に用いられ、あるいは、強度を要求されるところでは50〜400μmが用いられる。
基材と親水性層の密着性を向上させる目的で、所望により基材の片面または両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
(下塗り層)
基材と親水性層の間に一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることができる。
親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
さらに、ポリシロキサン等に代表される金属アルコキシドの加水分解縮合物等も好ましく、前記架橋剤として記載した化合物を使用することができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、およびゼラチン類、金属アルコキシドの加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類、金属アルコキシドの加水分解縮合物が好ましい。
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂および水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂および/または水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m2 が好ましく、0.1〜10g/m2 がより好ましい。
〔親水性部材使用時の層構成〕
親水性部材を、防汚性および/または防曇性効果の発現を期待して使用する場合、その目的、形態、使用場所に応じ、適宜別の層を付加して使用することができる。以下に必要に応じ付加される層構成について述べる。
(接着層)
前記親水性部材を、別の基材上に貼り付けて使用する場合、基材の裏面に、接着層として、感圧接着剤である粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などの一般的に粘着シートに用いられるものが使用できる。
光学的に透明なものが必要な場合は光学用途向けの粘着剤が選ばれる。着色、半透明、マット調などの模様が必要な場合は、基材における模様付けのほかに粘着剤に、染料、有機や無機の微粒子を添加して効果を出すことも行うことができる。
粘着付与剤が必要な場合、樹脂、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂およびこれらの水素添加物などの接着付与樹脂を1種類または混合して用いることができる。
本発明で用いられる粘着剤の粘着力は一般に言われる強粘着であり、200g/25mm以上、好ましくは300g/25mm以上、さらに好ましくは400g/25mm以上である。なお、ここでいう粘着力はJIS Z 0237 に準拠し、180度剥離試験によって測定した値である。
(離型層)
前記親水性部材が前記の接着層を有する場合には、さらに離型層を付加することができる。離型層には、離型性をもたせるために、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤しては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、フッ素系化合物、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いることができる。また、ホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤などの各種の離型剤や、この他、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、アクリル−フッ素系共重合樹脂、およびウレタン−シリコーン−フッ素系共重合樹脂などの共重合系樹脂、並びに、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンド、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンドが用いられる。また、フッ素原子および/またはケイ素原子のいずれかの原子と、活性エネルギー線重合性基含有化合物を含む硬化性組成物を、硬化して得られるハードコート離型層としてもよい。
(その他の層)
親水性層の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷つきや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層や、下塗り層に用いた親水性ポリマー層を使用することができる。保護層は、親水性部材を適切な基材へ貼り付けた後には剥がされる。
[構造体の形態]
前記親水性層を有する構造体は、シート状、ロール状あるいはリボン状の形態で供給されてもよく、適切な基材に貼り付けるために、あらかじめカットされたもとして供給することもできる。
[親水性層の物性]
(水滴接触角)
親水性は、汎用的に、水滴接触角で測定される。本発明の親水性部材の表面は、20℃にて測定した表面の空中水滴接触角が15°以下であり、好ましくは10°以下である。
(縮合率)
親水性層における親水性ポリマーのアルコキシシリル基の縮合率は、親水性組成物を塗布、乾燥後、形成された親水性層の表面を削り取って粉状にし、Si−NMR測定から求められる。Si−NMR測定は株式会社日立ハイテクノロジーズ製 Bruker ACANCE DSX−300を用いて行うことができる。
トリアルコキシシリル基の場合、以下の式から算出できる。
Figure 2010005870
ジアルコキシシリル基の場合、以下の式から算出できる。
Figure 2010005870
ここで、T0、T1、T2、T3は3官能Si原子が形成しているシロキサン結合の数、D0、D1、D2は2官能Si原子が形成しているシロキサン結合の数を表す。それぞれの結合の数はSi−NMRのピーク値を積分したものを使用して計算する。
縮合率は、大きすぎるとシラノール(SiOH)量が減少し、親水性が低下する。逆に、小さすぎると架橋密度が低くなり、膜強度が下がる。そのため、縮合率は30〜70%の範囲であることが好ましく、50〜65%の範囲であることがより好ましい。
(SiOR/SiOH)
親水性層における親水性ポリマーのアルコキシシリル基とシラノール基の数の比(SiOR/SiOH)は、13CMNRを用いてSi原子のα位の炭素原子1個当りの積分強度(B)を内部標準として用いて求めることができる。即ち、-SiORのRをR-CHとすると-SiOC-Rとなり、Cの炭素原子の積分強度(C)を用いると、下記の式で求めることができる。13CNMR測定は株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 Bruker ACANCE DSX−300を用いて行うことができる。
SiOR/SiOH=(C/B)/[(1−縮合率/100)−C/B]
SiOR/SiOHは大きすぎると親水性が低下し、小さすぎるとSiOHの相互作用が大きなって膜質が脆くなり耐傷性が低下する。そのため、SiOR/SiOHは0.1〜15が好ましく、0.1〜10がより好ましい。
本発明の親水性ポリマーは親水性が高く非常に水となじみ易いため、アルコキシシリル基は容易に加水分解される。しかし本発明の範囲外の従来の加水分解性シリル基含有親水性ポリマーは親水性が乏しく加水分解が起こり難いため、本発明の範囲内のSiOR/SiOH値にすることができなかった。
親水性層を塗設した親水性部材は、窓ガラス等に適用(使用、貼り付け)する場合、視界確保の観点から透明性が重要である。前記親水性層は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。
前記親水性層の厚さは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがさらに好ましく、0.1μm〜20μmが最も好ましい。膜厚が0.01μm以上の場合は、十分な親水性、耐久性が得ら好ましく、膜厚が100μm以下の場合は、クラックが入るなど製膜性に問題を来たすことがなく、好ましい。
透明性は、分光光度計で可視光領域(400nm〜800nm)の光透過率を測定し評価する。光透過率が100%〜70%が好ましく、95%〜75%がより好ましく、95%〜80%の範囲にあることが最も好ましい。この範囲にあることによって、視界をさえぎることなく、親水性層を塗設した親水性部材を各種用途に適用することができる。
[親水性部材の作製方法]
(親水性組成物の撹拌)
親水性組成物は基材に塗布する前に撹拌することが、アルコキシシリル基の加水分解・縮合率の向上という理由から好ましい。撹拌時間は10分間〜10時間が好ましく、30〜2時間がより好ましい。
また親水性ポリマーを含む組成物に前記硬化触媒を加えて上記時間撹拌することがさらに好ましい。
本発明の親水性部材は、親水性組成物を適切な基材上に塗布し、加熱、乾燥して親水性層を形成することで得ることができる。親水性層形成のための加熱温度と加熱時間は、ゾル液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性と縮合率向上の観点から加熱温度は20〜200℃であることが好ましく、60〜150℃がより好ましい。加熱時間は10秒〜2時間が好ましく、1分〜1時間がより好ましい。
前記親水性部材は、公知の塗布方法で作成することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
前記塗装方法は、例えば刷毛塗り、吹付け塗り、ローラー塗り、浸漬塗りなどの手段で基材表面に塗布することができる。塗布量は特に制限ないが、一般には約0.1〜500μm の範囲で充分と考える。塗膜の乾燥は親水性組成物のタイプに応じて条件を選択することができる。例えば加水分解性シリル基、水酸基およびエポキシ基を必須官能基成分として含有する基体樹脂および金属キレート化合物を含む水性塗料を用いた場合には、室温で1時間〜72時間程度もしくは加熱する場合には40℃〜200℃で1分間〜24時間程度の乾燥をおこなうことができる。
本発明にかかる親水性組成物、親水性膜、および親水性部材が適用可能な用途を例示するが、これらに限定されるものではない。
車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;その他建材用ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ等の種々の乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ等の種々の乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装および塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバーおよび塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装および塗装、トンネル内装および塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバーおよび塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装および塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、雪国用屋根材、アンテナ、送電線、医療用診断装置の各部材、医療用のカテーテル、パソコンやテレビのディスプレイ、化粧品の容器、フィルター、自動車用アルミホイール、カメラのファインダー、CCDのカバーガラス、印刷装置の各部材、および上記物品表面に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
[実施例1〜15]
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面を10分間UV/O処理により親水化し、塗布用基板とした。表1に示した組成の塗布液を25℃で表1に示した攪拌時間で攪拌し、塗布用基板に塗布バーで塗布した後、140℃、30分乾燥して、膜厚3.0μmの親水性膜を形成した。
以下に、表1に示した成分の調製法あるいは入手先を記す。
(親水性ポリマー(1)の合成)
500ml三口フラスコにアクリルアミド21.0g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル4.3g、及び1−メトキシ−2−プロパノール260gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル1.9gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。その後、反応液をアセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、親水ポリマー(1)を得た。乾燥後の質量は22.1gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により求めたポリマーの質量平均分子量は30,000であった。
以後、実施例にて使用した親水性ポリマーは上記と同様の手法により合成し、評価に使用した。実施例に使用した親水性ポリマー、硬化触媒、架橋剤、界面活性剤を以下に示す。
Figure 2010005870
Figure 2010005870
親水ポリマー(12):ポリアクリルアミド(質量平均分子量10000 和光純薬工業(株)製)
触媒(1):チタン(ジ−i−プロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)(和光純薬工業(株)製)
触媒(2):アルミニウムアセチルアセトナート(和光純薬工業(株)製)
触媒(3):ジルコゾールZA−30(ZrO(C水溶液、第一稀元素化学(株)製)
架橋剤(1):テトラメトキシシラン(和光純薬工業(株)製)
架橋剤(2):エチレングリコールジグリシジルエーテル
界面活性剤:
Figure 2010005870
[比較例1〜7]
表1に示した組成の塗布液を用い、実施例1と同様に親水性膜を形成した。
塗布液、親水性膜および親水性部材を下記方法にて評価した。
(縮合率)
株式会社日立ハイテクノロジーズ製 Bruker ACANCE DSX−300を用いて前記の方法で求めた。
(SiOR/SiOH)
株式会社日立ハイテクノロジーズ製 Bruker ACANCE DSX−300を用いて前記の方法で求めた。
(水滴接触角) 空中水滴接触角(θ)をN=3で測定した(協和界面科学(株)製DropMaster500で測定)。
(鉛筆硬度:ドライ耐傷性)
JIS K 5400に準じ、試験(安田精機製作所製鉛筆引っ掻き硬度試験機553−Mで試験)を行った。
(水擦り性:ウェット耐傷性)
水を含ませた不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で親水性膜を500g荷重で1000往復、2000往復、3000往復、5000往復した後、目視で傷付きを確認し、次のように評価した。
◎:5000往復でも傷付かない
〇:3000往復で傷付かず、5000往復で傷付く
△:1000往復で傷付かず、3000往復で傷付く
×:1000往復で傷付く
(柔軟性)
親水性膜形成用の塗布液をアルミ板に塗布膜厚が0.3mmとなるように塗布し、150℃30分で乾燥させた。この試料についてJIS K5600−5−1に準じ試験を行い割れの有無を評価した。マンドレルは直径2mmのものを用いた。
(防汚性)
カーボンブラック(FW−200、デクサ社製)5gを水95gに懸濁させたスラリーを調製し、親水性部材の表面に、全体が均一になるようにスプレーコートしたあと、60℃1時間乾燥させた。該サンプルを流水で流しながら、ガーゼで洗浄し、乾燥させた後のカーボンブラックの付着状況を明度差(△L)を測定し(MINOLTA製分光測色計CM2600d使用)、次のように評価した。△L値の絶対値が小さいほど明度変化が少なく防汚性に優れる。
◎:△Lの絶対値が0.5未満
○:△Lの絶対値が0.5以上〜1未満
△:△Lの絶対値が1以上〜2未満
×:△Lの絶対値が2以上
評価結果を下記表に示す。
Figure 2010005870
実施例1〜15から本発明の親水性部材は、ドライ耐傷性、ウェット耐傷性、柔軟性、防汚性に優れた親水性部材といえる。
実施例1、2、5、7〜15と実施例3、4を比較することによって攪拌時間が短いと縮合率が減少し、若干水擦り性が低下すること、攪拌時間が長いと縮合率が大きくなってSiOH量が減少し親水性が低下するため若干防汚性が低下することが分かる。
比較例1、5は縮合率が低く、SiOR/SiOHが大きく、親水性が低いためドライ耐傷性、柔軟性、防汚性に劣る。比較例2、4は縮合率が低く、SiOR/SiOHが大きく、親水性が低いためドライ耐傷性、防汚性に劣る。しかし疎水性部位をポリマーに導入することによって柔軟で、ややウェット耐傷性に優れていた。比較例3は無機の架橋剤を添加することによりドライ耐傷性は向上するものの、柔軟性は低下した。また、親水性が低いため防汚性に劣っていた。比較例6は、アルコキシシリル基含有ポリマーでないため、疎水性基が入っていないにもかかわらず親水性が低く、防汚性が劣っていた。比較例7も比較例6と同様親水性が低いため防汚性が劣っていた。また、膜質が非常に脆いため、ドライ・ウェット耐傷性に劣っていた。

Claims (6)

  1. 基材上に少なくとも親水性層を備えた親水性部材であって、該親水性層が、親水性基を含む構造単位を1分子内に30モル%以上含み、かつアルコキシシリル基を少なくとも1つ含む親水性ポリマーを含有する組成物から形成され、該親水性層中の該親水性ポリマーのアルコキシシリル基の縮合率が30%〜70%であり、該親水性ポリマーのアルコキシシリル基とシラノール基の数の比(SiOR/SiOH)が0.1〜15であり、該親水性層表面の20℃での水滴接触角が15°以下であることを特徴とする親水性部材。
  2. 前記水滴接触角が10°以下であることを特徴とする請求項1に記載の親水性部材。
  3. 前記縮合率が50%〜65%であることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性部材。
  4. 前記親水性ポリマーが下記一般式(II)で表される構造を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の親水性部材。
    Figure 2010005870
    一般式(II)中、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表し、Xは下記一般式(a)で表されるアルコキシシリル基を表し、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または連結基を表し、Yは−NHCOR、−CONH2、−N(R)2、−CON(R)2、−COR、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M、−(CHCHO)H、−(CHCHO)CHまたはN(R)31を表し、ここで、Rはアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはオニウムを表し、nは整数を表し、Z1はハロゲンイオンを表す。
    一般式(a): −Si(R102a(OR1013-a
    (一般式(a)中、R101は水素原子またはアルキル基を表し、R102は水素原子またはアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれる1価の炭化水素基を表し、aは0〜2の整数を表す。R101またはR102は複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。)
  5. 前記組成物が、さらに触媒を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の親水性部材。
  6. 前記組成物が、前記触媒を加えた後、10分間〜10時間攪拌した組成物であることを特徴とする請求項5に記載の親水性部材。
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