JP2009533035A - 原核細胞において発現させたProDerp1 - Google Patents

原核細胞において発現させたProDerp1 Download PDF

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Abstract

本発明は、デルマトファゴイデス・プテロニッシナス由来の主要タンパク質アレルゲンDer p1の前駆体型であるProDer p1の低アレルギー性組換え誘導体を作製するための新規な方法、およびそのような方法によって作製された誘導体に関する。本発明はさらに、特定のアレルゲンに対するアレルギー応答の予防および/または軽減に有効な免疫原性組成物およびワクチンを製剤化する際の前記低アレルギー性ProDer p1組換え誘導体の使用にも関する。本発明はまた、新規なProDer p1タンパク質および核酸配列にも関する。

Description

本発明は、デルマトファゴイデス・プテロニッシナス(Dermatophagoides pteronyssinus)由来の主要タンパク質アレルゲンDer p1の前駆体型であるProDer p1の低アレルギー性組換え誘導体を作製するための新規な方法、およびそのような方法によって作製された誘導体に関する。本発明はさらに、特定のアレルゲンに対するアレルギー応答の予防および/または軽減に有効な免疫原性組成物およびワクチンを製剤化する際の前記低アレルギー性ProDer p1組換え誘導体の使用にも関する。本発明はまた、新規なProDer p1タンパク質および核酸配列にも関する。
ヒトにおけるアレルギー応答は一般的であり、様々なアレルゲンによって引き起こされ得る。アレルギー性の個体はアレルゲンに敏感であり、血清中に高レベルのアレルゲン特異的IgEが存在することを特徴とし、かつ、Th2型サイトカイン(IL−4、IL−5、およびIL−13)を産生するアレルゲン特異的T細胞集団を有する。アレルゲンの存在下でIgEが肥満細胞および好塩基球の表面に存在するFcεRI受容体に結合すると、細胞が急速に脱顆粒され、続いて、ヒスタミンならびに炎症反応の他の前もって形成された媒介物質および新しく形成された媒介物質が放出される。これに加えて、T細胞想起応答の刺激によりIL−4およびIL−13が産生され、これらは共に協力して、B細胞応答をさらにアレルゲン特異的IgE産生へとスイッチする。早期および晩期のアレルギー応答発生に関する詳細については、Joost Van Neevenら、1996年、Immunology Today、17巻、526頁を参照されたい。非アレルギー性個体において、同じ抗原に対する免疫応答は、IFN−γなどのTh1型サイトカインをさらに含む場合がある。これらのサイトカインは、高レベルのアレルゲン特異的IgEを含めて、高レベルのTh2型免疫応答を阻害することによってアレルギー応答の発生を妨げることができる。この点に関して重要なことは、IgE合成が、B細胞上のCD23(FcεRII)受容体へのIgE/アレルゲン複合体の結合によって媒介される阻害性のフィードバック機序によって制御され得るということである(Luoら、J.Immunol.、1991年、146巻(7号)、2122〜9頁;Yuら、1994年、Nature、369巻(6483号)、753〜6頁)。細胞に結合されたCD23を欠く系では、IgE合成のこの阻害は起こらない。
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、および通年性鼻炎などアレルゲンに対抗するIgEによって媒介されるI型アレルギー性疾患は、世界人口の20%超に発症する。このようなアレルギー応答の治療における現在の戦略としては、抗ヒスタミン処置によってヒスタミン放出の症状作用を妨げるための手段、および/または抗炎症性コルチコステロイドの局所投与が挙げられる。開発中である他の戦略としては、肥満細胞の脱顆粒を防ぐために宿主の免疫系を使用するものが挙げられる(Stanworthら、EP 0477231 B1)。他の形態の免疫療法が説明されている(Hoyneら、J.Exp.Med.、1993年、178巻、1783〜1788頁;Holtら、Lancet、1994年、344巻、456〜458頁)。
即時の症状ならびに晩期の症状は薬理学的処置によって寛解され得るが、アレルゲン特異的な免疫療法が、I型アレルギーに対する唯一の治癒的アプローチである。しかし、この方法に関連したいくつかの問題が、依然として解決されないでいる。第1に、免疫療法は、バッチごとに異種性であり得る全アレルゲン抽出物を用いて現在使用されている。さらに、これらのアレルゲン混合物は個々の患者のプロファイル用に設計されておらず、不必要な毒性タンパク質を含む場合がある。第2に、高用量で天然のアレルゲンを投与すると、重度のアナフィラキシー反応を引き起こす場合があり、したがって、免疫療法を成功させる、アレルゲンの最適に効率的な高用量に到達することができないことが多い。第1の問題は、アレルゲン抽出物と比べてより良く特徴付けられ、かつ再現性のより良い組換えアレルゲンを用いた代替ワクチン接種を通じて取り組まれている。第2の問題、すなわち、アレルゲン抽出物を繰り返し注射することによって誘導されるアナフィラキシー反応のリスクは、欠失または変異誘発によってIgE反応性が改変された、組換え「低アレルゲン」の使用によって最小限に抑えることができる(Akdis,CAおよびBlaser,K、Regulation of specific immune responses by chemical and structural modifications of allergens、Int.Arch.Allergy Immunol.、2000年、121巻、261〜269頁)。
アレルギーを治療および予防するための製剤が説明されており、これらは、IgEの産生を下方調節し、かつ、Th2型の応答からTh1型の応答に変化させる(IL−4を産生するDer p1特異的T細胞とIFN−γを産生するDer p1特異的T細胞の比率の減少によって、あるいは、IL−5とIFN−γの比率の減少によって測定される)ことによって、アレルゲンに対する細胞性応答を改変するための手段を提供する。これは、例えば、WO 99/25823に記載されているように、酵素活性を低下させたrecDer p1などの組換えアレルゲンの使用によって実現することができる。しかし、これらの組換えアレルゲンの免疫原性は、IgE合成誘導の点で、野生型ProDer p1の免疫原性と同様であると考えられている。
IgE結合活性を低下させた非アナフィラキシー型のアレルゲンが報告されている。アレルゲン操作により、アミノ酸残基の部位特異的変異誘発または特定のアミノ酸配列の欠失によって、アレルゲンタンパク質のIgE結合能力を低下させることが可能になった。同時に、T細胞エピトープは維持されているため、T細胞活性化能力は引き続き保存されている。このことは、結果は様々であるものの、様々なアレルゲンに対するいくつかのアプローチによって示されている。チモシー牧草花粉アレルゲン Phl p 5b(Schramm Gら、1999年、J Immunol.、162巻、2406〜14頁)、主要な室内チリダニアレルゲンDerf2(Takaiら、2000年、Eur.J.Biochem.、267巻、6650〜6656頁)、DerP2(SmithおよびChapman 1996年、Mol.Immunol.33巻、399〜405頁)、およびDerf1(Takahashi Kら、2001年、Int Arch Allergy Immunol.124巻、454〜60頁)に関する例が公開されている。1つの研究では、ジスルフィド架橋に関与するシステイン残基のレベルでの点変異の導入による、Derf1低アレルゲンの作製を報告している(Takahashi K Int Arch Allergy Immunol.2001年、124巻(4号)、454〜60頁、Takai T、Yasuhara T、Yokota T、Okumura Y).しかし、野生型ProDerf1をピー・パストリス(P.pastoris)により分泌されることに成功した場合、一方で、分子内ジスルフィド結合に関するシステイン変異体は分泌されなかった。
Der p1アレルゲン
室内チリダニのデルマトファゴイデス・プテロニッシナスに由来するアレルゲンは、アレルギー性過敏反応に関連する主要な原因因子の1つである。デルマトファゴイデス・プテロニッシナスのグループ1アレルゲンであるDer p1は、主要アレルゲンであり、80〜100%のチリダニアレルギー性血清中のIgEに結合する(Chapman,M.D.ら、(1983年)、J.Allergy Clin.Immunol.、72巻、27〜33頁;Krillis,S.ら、(1984年)、J.Allergy Clin.Immunol.、74巻、132〜41頁)。Der p1は、ダニの中腸で産生され、そこでの役割は、食物の消化に関係している可能性が高い。最大0.2ngのタンパク分解性に活性なDer p1が各糞塊中に組み込まれる。糞塊はそれぞれ直径約10〜40μmであり、したがって、ヒトの気道中に容易に吸い込まれる。このタンパク質は、しばしば、ハウスダスト中に高濃度(ダスト1g当たり100ng〜10000ng)で存在するが(Platts−MillsおよびChapman(1987年)、J.Allergy Clin.Immunol.、80巻、755〜75頁;Wahn,U.ら、(1997年)、J.Allergy Clin.Immunol.、99巻、763〜69頁)、Der p1は、単に糞便物質だけでなく、ある範囲の粒子に結合していると考えられている(DeLucaら(1999年)、J.Allergy Clin.Immunol.、103巻、174〜75頁)。100ngのレベルが過敏化に関連付けられており、また、用量増加に伴ってリスクが増大する。
Der p1をコードするcDNAはクローン化され、かつ配列決定されている(Chua,K.ら、(1988年)、J.Exp.Med.、167巻、175〜82頁;Thomasら、(1988年)、Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.、85巻、127〜29頁;Chua,K.ら、(1993年)、Int.Arch.Allergy Immunol.、101巻、364〜8頁)。Der p1は、成熟タンパク質中にアミノ酸残基222個を含むことが公知であり、また、算出された分子量は25KDaである。Der p1 をコードするcDNA配列から、多くの哺乳動物プロテイナーゼおよび植物プロテイナーゼと同様に、Der p1が、18アミノ酸のシグナルペプチドおよび80アミノ酸のN末端プロ配列を含む320アミノ酸残基からなる前駆体型で合成されることが明らかになっている。ProDer p1の成熟プロセスは公知ではないが、プロ領域のタンパク分解除去によって、または自己触媒的プロセッシングを介して酵素が活性化されると考えられている。精製したDer p1調製物を室温で一晩貯蔵すると、自己タンパク分解による分解が原因で、酵素活性をほぼ完全に喪失する(Machadoら、1996年、Eur.J.Immunol.26巻、2972〜2980頁)。
Der p1配列は、システインプロテイナーゼ原型であるパパインの配列との30%の相同性を示し(Robinson,C.ら、(1997年)、Clin.Exp.Allergy、27巻(1号):10〜21頁)、かつ、酵素的に活性な領域、最も顕著には、Cys34−His170イオン対においてより際立った相同性を有する(Tophamら、前掲)。活性部位のシステイン残基およびヒスチジン残基を含めて、パパインのタンパク質分解活性に関係があるとされている残基の大半が、Der p1において保存されている。Der p1のシステインプロテアーゼ活性が一般に認められているが、研究により、たとえ1つしか活性部位を有していなくても、独自の混合したシステイン/セリンプロテアーゼ活性を示すことが明らかにされた(Hewitt,C.R.A.ら、(1997年)、Clin.Exp.Allergy、27巻、201〜207頁)。好ましい切断部位は、システインプロテアーゼ活性に対してはグルタミン酸であり、セリンプロテアーゼ活性に対してはアルギニンである。
Der p1は、IgE合成の調節に関与しているCD23(FcεR II)、すなわち低親和性IgE受容体を切断し(Hewitt.C.ら、(1995年)、J.Exp.Med.、182巻、1537〜1544頁;Schulz,O.ら、(1997年)、Eur.J.Immunol.、27巻、584〜588頁)、それによって、IgE産生を刺激することが示された。その一方で、これは、CD25、すなわちIL−2受容体のαサブユニットを切断する(Schulz,O.ら、(1998年)、J.Exp.Med.、187巻、271〜275頁)。IL−2は、Th1免疫応答の伝達に関与するサイトカインであるため、その受容体の消化は、Th2応答への偏りをもたらす。Der p1のタンパク質分解活性はまた、ヒトT細胞からのTh2サイトカイン放出を亢進させ(Ghaemmaghami,A.M.ら、(2001年)、Eur.J.Immunol.、31巻、1211〜1216頁)、かつ、バイスタンダーアレルゲンに対するアジュバント活性を与える(Ghough L.ら、(2001年)、Clin.Exp Allergy、31巻、1594〜1598頁)ことも示されている。
グループIアレルゲンの組換え発現
グループIアレルゲンには、Der p1および室内チリダニのデルマトファゴイデス・ファリナエ(Dermatophagoides farinae)に由来する主要アレルゲンであるDer f 1の両方が含まれる。Der f 1は、Der p1に著しく類似した配列を有し、同様にシステインプロテアーゼファミリーに属する。組換えDer f 1は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)において成功裡に作製された(Takahashi K.ら、(2000年)、Int.Arch.Allergy Immunol.、122巻、108〜114頁)。イー・コリ(E.coli)において作製された生成物は天然のDer f 1と同じアミノ酸配列を有し、さらに、天然のDer f 1と同一の酵素特性および抗原特性を示した。
一方、ピンポイント発現ベクター(Promega)を用いて、β−ガラクトシダーゼとの融合タンパク質としてイー・コリにおいて成熟Der p1を発現させると、触媒的に不活性なタンパク質が得られた(Scobie G.ら、(1994年)、Biochem.Soc.Trans.22巻、448頁)。この生成物は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体のパネルに対していくらかの免疫反応性を示したが、触媒活性の証拠はまったく示さなかった。活性な酵素を得るために、パパインでの使用に成功していた可溶化、変性、および復元のプロトコル(Taylor M.A.J.ら、(1992年)、Prot.Eng.5巻、455〜459頁)を採用したが、これはDer p1では成功しなかった。したがって、著者らは、このタンパク質をイー・コリにおいて適切にフォールディングさせるためにプロ配列を組み入れること、および酵素的に活性なDer p1を得ることが重要であると結論付けている。
WO2004/076481(GlaxoSmithKline Biologicals s.a.)では、変異型であるか否かを問わず、Der p1/ProDer p1/PreProDer p1がマルトース結合タンパク質(MBP)融合タンパク質として発現された場合に、タンパク質発現の実質的な改善がイー・コリにおいて達成されたことを開示している。野生型MBP−ProDer p1融合タンパク質は、システイン残基変異を有するProDer p1組換え誘導体と比較して、顕著なIgE結合活性を示した。
一実施形態では、本発明は、天然のアレルゲンのアレルゲン活性と比べてアレルゲン活性が有意に低いデルマトファゴイデス・プテロニッシナスProDer p1組換え誘導体を作製するための方法であって、原核宿主細胞におけるProDer p1をコードする配列の発現を含む方法に関する。
他の実施形態では、本発明は、原核細胞においてProDer p1組換えタンパク質をコードするDNA配列を発現することができる発現ベクターで形質転換された原核宿主細胞を、前記タンパク質の発現を可能にする条件下で培養する工程と、前記タンパク質を回収する工程とを含む方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、原核細胞においてProDer p1組換えタンパク質をコードするDNA配列を発現することができる発現ベクターで形質転換された原核宿主細胞を、前記タンパク質の発現を可能にする条件下で培養する工程と、前記タンパク質を回収する工程と、ProDer p1タンパク質の精製とを含む方法を提供する。
他の実施形態では、本発明は、原核細胞においてProDer p1組換えタンパク質をコードするDNA配列を発現することができる発現ベクターで形質転換された原核宿主細胞を、前記タンパク質の発現を可能にする条件下で培養する工程と、前記タンパク質を回収する工程と、ProDer p1タンパク質の精製と、ProDer p1タンパク質を変性させ、かつ復元する工程、および/またはProDer p1タンパク質の熱処理とを含む方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、原核宿主細胞がイー・コリである、本明細書において説明する方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、発現ベクターが毒素/解毒薬プラスミドである方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、ProDer p1配列が野生型配列(配列番号3)に対応する方法に関する。
さらに別の実施形態では、本発明は、ProDer p1配列が以下の変異(Der p1ナンバリング:
所望によりアルギニンまたはリシンに変わる、システイン31残基の変異、
所望によりアラニンに変わる、システイン34残基の変異、
所望によりアルギニンまたはリシンに変わる、システイン65残基の変異、
所望によりアルギニンまたはリシンに変わる、システイン71残基の変異、
所望によりアルギニンまたはリシンに変わる、システイン103残基の変異、
所望によりアルギニンまたはリシンに変わる、システイン117残基の変異、
ヒスチジン170残基の変異、および
プロペプチドと成熟分子の間の切断部位の変異、所望により残基NAETの欠失
のうち1つまたは複数を含む方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、ProDer p1配列が以下の3つの変異(Der p1ナンバリング)、すなわち、システイン71残基の変異、システイン103残基の変異、およびシステイン117残基の変異を含む、前述の方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、ProDer p1配列が、アミノ酸残基147〜160(Der p1ナンバリング)または残基227〜240(ProDer p1ナンバリング)の欠失をさらに含む、前述の方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、ProDer p1配列が、野生型配列のC末端および/またはN末端に1個〜10個の付加的なアミノ酸を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、ProDer p1タンパク質が配列番号1の配列を有する、前述の方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、ProDer p1が融合タンパク質として発現されない、前述の方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、ProDer p1をコードする配列が、真核生物発現のために最適化されたコドン使用パターンを有する、前述の方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、本明細書において説明する方法のいずれか1つに記載のプロセスによって得ることができる、天然のアレルゲンのアレルゲン活性と比べてアレルゲン活性が有意に低いデルマトファゴイデス・プテロニッシナスProDer p1組換え誘導体に関する。
別の実施形態では、本発明は、ProDer p1組換えタンパク質および所望によりアジュバントを含む免疫原性組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、アジュバントがTh1型免疫応答の優先的な刺激因子である免疫原性組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、アジュバントが、3D−MPL、QS21、CpGオリゴヌクレオチド、ポリエチレンのエーテルもしくはエステルのうち1種もしくは複数種、またはこれらのアジュバントのうち2種以上の組合せを含む免疫原性組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、アレルゲンが水中油型エマルジョンビヒクルまたは油中水型エマルジョンビヒクル中で提供される免疫原性組成物に関する。
別の実施形態では、本発明は、アレルギー応答に苦しむ患者を治療する、またはアレルギー応答に感受性のある患者を予防する方法であって、ProDer p1組換えタンパク質またはProDer p1組換えタンパク質を含む免疫原性組成物を前記個体に投与する工程を含む方法に関する。
さらに別の実施形態では、本発明は、配列番号1の配列を有するProDer p1組換え誘導体、配列番号1の配列をコードする単離核酸分子、および、配列番号2の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる単離核酸分子に関する。
さらに別の実施形態では、本発明は、ProDer p1核酸配列を含む発現ベクターに関する。
さらに別の実施形態では、本発明は、ProDer p1核酸配列で、またはProDer p1核酸配列を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞に関する。
前述の要約した説明および以下の詳細な説明の両方とも、例示的かつ説明的であり、また、特許請求の範囲の本発明のさらなる説明を提供すると意図されることを理解されたい。
添付図は、本発明のさらなる理解を実現するために含まれ、また、本明細書に組み入れられ、かつ本明細書の一部分を構成し、本発明のいくつかの実施形態を例示し、また、その説明と一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。
本発明者らは、以下に、原核細胞において発現させた組換えProDer p1のIgE反応性が、哺乳動物細胞において発現されたDer p1およびProDer p1と比べて大幅に低下していることを見い出した。特異的なモノクローナル抗体に基づいたDer p1 ELISAにより、細菌によって産生されたアレルゲン変種に立体配置的エピトープが存在しないことが裏付けられた。しかし、単離されたProDer p1は、Der p1に特異的なT細胞反応性を維持していた。さらに、融合タンパク質を使用せずに、イー・コリにおいてProDer p1の高い発現レベルを得ることが可能であった。
したがって、本発明の一実施形態は、天然のアレルゲンのアレルゲン活性と比べてアレルゲン活性が有意に低いProDer p1組換え誘導体を作製するための方法であって、原核細胞におけるProDer p1配列の発現を含む方法を提供する。「天然の」という用語は、本明細書において、室内チリダニによって産生される形態のアレルゲンを意味するために使用される。
本発明の方法は、Maniatisら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor、1982年〜1989年において説明されているような従来の組換え技術によって実施することができる。具体的には、この方法は、
(a)原核細胞においてProDer p1組換えタンパク質をコードするDNA配列を発現することができる発現ベクターで形質転換された原核宿主細胞を、前記タンパク質の発現を可能にする条件下で培養する工程と、
(b)前記タンパク質を回収する工程と
を含んでもよい。
「形質転換する」という用語は、本明細書において、例えば、Genetic Engineering、S.M.KingsmanおよびA.J.Kingsman編、Blackwell Scientific Publications、オックスフォード、英国、1988年に記載されているような従来の技術を用いて、適切なプラスミドベクターまたはウイルスベクターによる形質転換、トランスフェクション、または感染によって宿主細胞中に外来DNAを導入することを意味するために使用される。「形質転換された」または「形質転換体」という用語は、本明細書において、対象の外来遺伝子を含み、かつ発現する、結果として生じる宿主細胞に適用される。
発現ベクターは、組込み型発現ベクターでも複製可能な発現ベクターでもよい。発現ベクターは、原核宿主細胞と適合性のあるベクターを切断して、無傷のレプリコンを有する直線状DNAセグメントを提供し、かつ、前記直線状セグメントを、前記直線状セグメントと一緒になって、ProDer p1タンパク質をコードするDNAポリマーなど所望の生成物をコードする1つまたは複数のDNA分子とライゲーション条件下で組み合わせることによって調製することができる。したがって、DNAポリマーは、所望に応じて、前もって形成されても、ベクターの構築中に形成されてもよい。
任意の適切な原核(細菌)宿主細胞が、タンパク質発現のために使用され得る。一実施形態では、本方法において使用される原核宿主細胞はイー・コリである。
選択された原核宿主細胞において使用するのに適した任意のベクターが、本発明の方法において使用され得る。適切なベクターとしては、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド、および組換えウイルスが挙げられる。一実施形態によれば、プラスミド毒素−解毒薬系、例えばpStaby1発現ベクター(Delphi Genetics)が使用され得る。典型的には、プラスミド毒素−解毒薬系は、通常は構成的プロモーターの制御下で、プラスミドDNA中の解毒薬遺伝子を使用する。典型的には、毒性産物(または毒物)をコードする遺伝子が、プラスミドが導入される予定の細菌の染色体中に導入される。毒遺伝子の発現は一般に、プラスミドが細菌中に存在する場合に毒素が発現されることができないように、解毒薬タンパク質によって抑制されているプロモーターの制御下にある。しかし、プラスミドが細菌から失われた場合には、解毒薬が分解される可能性があり、また、毒素の産生が誘導されて、細胞死を引き起こす可能性がある。この系は、プラスミドが失われた様式を問わず、プラスミドを持たない細胞すべてを集団から排除し、それによって、プラスミド維持を確実にすることを狙いとしている。
複製可能な発現ベクターの調製は、例えば前述のManiatisらの著書で説明されている手順により、DNAの制限、重合、およびライゲーションのための適切な酵素を用いて慣例的に実施することができる。組換え宿主細胞は、形質転換条件下で、ProDer p1をコードする複製可能な発現ベクターで原核宿主細胞を形質転換させることによって調製することができる。適切な形質転換条件は慣例的であり、例えば、前述のManiatisらの著書または「DNA Cloning」、第2巻、D.M.Glover編、IRL Press Ltd、1985年に記載されている。
形質転換条件の選択は、宿主細胞に基づいて決定される。したがって、イー・コリなどの細菌宿主は、CaCl溶液(Cohenら、Proc.Nat.Acad.Sci.、1973年、69巻、2110頁)またはRbCl、MnCl、酢酸カリウム、およびグリセロールの混合物を含む溶液で処理され、次いで、3−[N−モルホリノ]−プロパン−スルホン酸、RbCl、およびグリセロールで処理されてよい。
DNAポリマーの発現を可能にする条件下での形質転換された宿主細胞の培養は、例えば前述のManiatisらの著書および「DNA Cloning」で説明されているようにして、慣例的に実施する。すなわち、典型的には、細胞に栄養物を与え、45℃より低い温度で培養する。
産生物は従来の方法によって回収されてよい。例えば、宿主細胞を物理的、化学的、または酵素的に溶解し、かつ、結果として生じる溶解物からタンパク質産生物を単離してよい。従来のタンパク質単離および精製技術としては、選択的沈殿、吸着クロマトグラフィー、および、例えばモノクローナル抗体アフイニティーカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーが挙げられる。
本発明の一実施形態によれば、ProDer p1は、封入体内の不溶性タンパク質として産生され得る。封入体は、典型的には、ProDer p1の抽出のために、例えば遠心分離によって単離される。抽出プロセスは、タンパク質を可溶化する工程を含んでよい。封入体からのタンパク質の抽出は、尿素の存在下、例えば、4〜8Mの範囲の尿素、例えば約6Mの尿素の存在下で実施してよい。所望により、抽出媒体は、塩化ナトリウム、例えば200〜400mM NaCl、例えば約300mM NaClをさらに含んでよい。典型的には、抽出はpH7〜8、例えばpH約7.5で実施される。抽出されたタンパク質は、所望により変性条件下で、Ni2+カラムを用いて精製してよい。次いで、ProDer p1タンパク質は、例えば尿素を除去するために透析をすることによって、復元することができる。
本発明の方法によって作製されたProDer p1タンパク質は、さらに熱処理することができる。例えば、温度約100℃で、数分間、例えば約5分間、タンパク質を熱処理してよい。タンパク質は、所望により、β−メルカプトエタノールまたはDTTなどの還元剤の存在下で熱処理される。このタイプの処理は、典型的には、タンパク質の立体配置的なIgE結合エピトープの安定性に対して不利益な作用を有し、したがって、結果として生じるタンパク質のIgE反応性をさらに低下させる可能性がある。したがって、熱処理は、タンパク質を変性させるために使用することができる。
本発明に従って発現されたProDer p1配列は、野生型配列に対応してもよく、または、本明細書において説明する変異配列であってもよい。一実施形態によれば、ProDer p1タンパク質は、融合タンパク質(例えば、ProDer p1とマルトース結合タンパク質(MBP)またはβ−ガラクトシダーゼとの融合物)として発現されない。言い換えると、原核細胞によって発現されるタンパク質は、単にProDer p1タンパク質の配列からなる。しかし、ProDer p1タンパク質の配列は、本明細書において論じるように、野生型配列と比べて、いくつかの付加的なアミノ酸をN末端またはC末端のいずれかに含んでよく、これは融合タンパク質とはみなされない。
低アレルギー性変異体を組換えによって作製する前に、野生型配列に変異を導入してもよい。例えば、産生されるProDer p1誘導体のアレルゲン活性をさらに低下させるために、配列を変異させてよい。このような変異は、野生型配列に対する置換、欠失、もしくは付加、または、タンパク質の三次元立体配置が失われるようなタンパク質の三次元構造の改変を含んでよい。これは、例えば、ジスルフィド架橋形成に関与するシステイン残基を欠失させることによって、または、タンパク質の三次構造が実質的に改変されるように残基を欠失させるか、もしくは付加することによって、実現することができる。
2つのシステイン残基の間の相互作用を改変する作用を有する変異を生じさせてよい。典型的には、成熟Der p1の4位、31位、34位、65位、71位、103位、および117位の1つの変異(それぞれ、ProDer p1の84位、111位、114位、145位、151位、183位、および197位に対応する)である。このような変異タンパク質は、2つまたはそれ以上の(3つ、4つ、5つ、または6つすべての)システイン変異、例えば、4位および31位、4位および65位、4位および71位、4位および103位、31位および65位、もしくは4位および31位および65位の変異、または、71位および103位、71位および117位、103位および117位、31位および117位、65位および117位、もしくは71位および103位および117位の変異を含み、それによって、様々なジスルフィド架橋に影響を及ぼし得る。誘導体は、上記の位置のいずれかに1つの単一変異を含んでよい。一実施形態では、変異は、Cys4(あるいは、またはさらに、Cys4のジスルフィド結合相手であると考えられているCys117)を伴う。Cys変異は、欠失でも、他の19種の天然アミノ酸のいずれかへの置換でもよい。例えば、システインからアルギニンまたはリシンへの置換などの置換により、正電荷を持つアミノ酸残基を導入して、結果として生じるタンパク質の三次元構造をさらに不安定化させてもよい。変異は、ヒスチジン170残基の変異でもよい。
本発明の一実施形態では、誘導体は、システイン残基71、103、および117すべてが、所望によりアラニンに変異されている三重変異を含む。別の態様では、ProDer p1配列のアミノ酸227〜240が欠失している。これらのアミノ酸は、Der p1配列の147〜160に対応する。さらに別の態様では、Der p1タンパク質の配列のCys4位のシステイン残基がアルギニン残基に置換されている。別の態様では、システイン残基は、(成熟Der p1における配列を参照することにより算出した)以下の位置のうちいずれかでアルギニン残基に置換されている。すなわち、Der p1タンパク質の配列のCys31、Cys65、Cys71、Cys103、またはCys117である。
本発明の一実施形態では、コード性cDNAを、野生型ProDer p1アミノ酸配列と比べて、C末端、N末端、またはC末端とN末端の両方で付加的なアミノ酸残基をコードするように変異させる。したがって、組換えProDer p1 アミノ酸配列は、野生型配列のC末端および/またはN末端に1〜10個の付加的なアミノ酸残基、例えば、一方の末端または両方の末端に2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個までの付加的なアミノ酸残基を含んでよい。このような付加的なアミノ酸は、融合タンパク質の範囲に入らない。これらの余分なアミノ酸は、連続した6個のヒスチジン(ヒスチジンタグ)など一続きのヒスチジン残基を含んでもよく、またはそれらに加えて存在してもよい。このような一続きのヒスチジン残基は、組換えタンパク質の精製を助けるために含まれてよい。
本発明の別の実施形態によれば、組換えアミノ酸配列は、天然の配列のN末端に3個の付加的なアミノ酸残基を含む。例えば、組換えタンパク質の配列は、天然の配列、または1つもしくは複数の保存的置換を含むこの配列の変種のN末端に付加的なアミノ酸配列MASを含んでよい。
本発明の別の実施形態によれば、組換えアミノ酸配列は、天然の配列のC末端に5個の付加的なアミノ酸残基を含む。例えば、組換えタンパク質の配列は、天然の配列、または1つもしくは複数の保存的置換を含むこの配列の変種のC末端に付加的なアミノ酸配列RRRELを含んでよい。さらに別の態様では、組換えタンパク質は、本明細書において説明するもののように、N末端の3個の付加的なアミノ酸残基配列およびC末端の5個の付加的なアミノ酸残基配列の両方を含む。
したがって、本発明は、配列番号1で説明した配列からなるProDer p1誘導体を提供する。この配列は、N末端およびC末端の両方に付加的な配列を含む。別の実施形態では、誘導体配列は、6ヒスチジンタグをさらに含んでよい。
ProDer p1の変異型は、G.Winterら、Nature 1982年、299巻、756〜758頁もしくはZollerおよびSmith 1982年、Nucl.Acids Res.、10巻、6487〜6500頁によって説明されているものなど従来の方法により、ProDer p1タンパク質をコードするcDNAを部位特異的に変異誘発することによって、またはChanおよびSmith、Nucl.Acids Res.、1984年、12巻、2407〜2419頁、もしくはG.Winterら、Biochem.Soc.Trans.、1984年、12巻、224〜225頁によって説明されているような欠失変異誘発によって調製することができる。
本発明の別の実施形態は、本明細書において開示する配列番号1をコードする単離核酸、例えば配列番号2の配列を有する単離核酸を提供する。ヌクレオチド配列は、典型的にはDNA配列であり、標準的なDNA合成技術によって、例えば、D.M.Robertsら、Biochemistry 1985年、24巻、5090〜5098頁によって説明されている酵素的ライゲーションにより、化学合成により、in vitroの酵素重合により、またはこれらの技術の組合せにより、合成することができる。核酸配列は、意図された発現宿主、すなわち原核宿主細胞において使用されるコドン使用パターンを再現するように最適化したコドン使用パターンを有してよい。
DNAの酵素重合は、一般に50ml以下の容量において、10℃〜37℃の温度で、ヌクレオシド3リン酸dATP、dCTP、dGTP、およびdTTPを必要に応じて含む適切な緩衝液中、DNAポリメラーゼI(クレノウ断片)などのDNAポリメラーゼを用いてin vitroで実施することができる。DNA断片の酵素的ライゲーションは、一般に50ml以下の容量において、4℃〜周囲温度の温度で、0.05M Tris(pH7.4)、0.01M MgCl、0.01Mジチオトレイトール、1mMスペルミジン、1mM ATP、および0.1mg/mlウシ血清アルブミンなど適切な緩衝液中、T4 DNAリガーゼなどのDNAリガーゼを用いて実施することができる。DNAポリマーまたは断片の化学合成は、「Chemical and Enzymatic Synthesis of Gene Fragments − A Laboratory Manual」(H.G.GassenおよびA.Lang編)、Verlag Chemie、Weinheim(1982年)、または他の科学論文、例えば、M.J.Gait、H.W.D.Matthes、M.Singh、B.S.Sproat、およびR.C.Titmas、Nucleic Acids Research、1982年、10巻、6243頁、B.S.SproatおよびW.Bannwarth、Tetrahedron Letters、1983年、24巻、5771頁、M.D.MatteucciおよびM.H Caruthers、Tetrahedron Letters、1980年、21巻、719頁、M.D.MatteucciおよびM.H.Caruthers、Journal of the American Chemical Society、1981年、103巻、3185頁、S.P.Adamsら、Journal of the American Chemical Society、1983年、105巻、661頁、N.D.Sinha、J.Biernat、J.McMannus、およびH.Koester、Nucleic Acids Research、1984年、12巻、4539頁、ならびに H.W.D.Matthesら、EMBO Journal、1984年、3巻、801頁において説明されているものなどの固相技術を用いて、従来のホスホトリエステル、ホスファイト、またはホスホルアミダイト化学反応によって実施することができる。
あるいは、コード配列は、公知の技術(例えば、相補的なcDNA鎖を作製するためのmRNAの逆転写)および市販のcDNA キットを用いて、ProDer p1mRNAから誘導することができる。
DNAコードは4種の文字(A、T、C、およびG)を有し、これらを用いて、生物の遺伝子においてコードされるタンパク質のアミノ酸を表す3文字「コドン」を書く。DNA分子に沿ったコドンの直鎖状配列は、これらの遺伝子にコードされたタンパク質中のアミノ酸の直鎖状配列に翻訳される。コードは著しく縮重しており、61種のコドンが20種の天然アミノ酸をコードし、また、3種のコドンは「停止」シグナルを表している。したがって、大半のアミノ酸は、複数のコドンによってコードされており、実際、いくつかのアミノ酸は4種以上の異なるコドンにコードされている。
所与のアミノ酸をコードするのに複数のコドンが利用可能である場合、生物のコドン使用パターンは高度に非ランダムであることが観察されている。異なる種は、コドン選択において異なるバイアスを示し、さらに、コドン利用は、高レベルで発現される遺伝子と低レベルで発現される遺伝子とでは、単一の種でも著しく異なっている場合がある。このバイアスは、ウイルス、植物、細菌、昆虫細胞、および哺乳動物細胞において様々であり、いくつかの種は、他の種よりも強い、ランダムコドン選択から離れたバイアスを示す。例えば、ヒトおよび他の哺乳動物は、ある種の細菌またはウイルスよりもバイアスの強さが低い。これらの理由から、イー・コリにおいて発現される哺乳動物遺伝子または哺乳動物細胞において発現されるウイルス遺伝子が、効率的な発現には不適切なコドン分布を有している確率がかなり高い。しかし、イー・コリ発現に適したコドン使用パターンを有する遺伝子も、ヒトにおいて効率的に発現される場合がある。発現が起こる予定の宿主中でめったに観察されないコドンクラスターが異種DNA配列中に存在する場合、その宿主において異種発現レベルが低いことが予測されると考えられている。
宿主中で稀なコドンから宿主に好まれるものへのコドン変更(「コドン最適化」)により、異種発現レベルを増大させたいくつかの例がある。例えば、BPV(ウシ乳頭腫ウイルス)後期遺伝子L1およびL2は、哺乳動物コドン使用パターン用にコドン最適化されており、これは、哺乳動物(Cos−1)細胞培養において野生型HPV配列よりも増大した発現レベルを与えることが示されている(Zhouら、J.Virol 1999年、73巻、4972〜4982頁)。この研究において、哺乳動物よりもBPVにおいて2倍を超える頻度で存在する(使用比率>2)全BPVコドンおよび使用比率が1.5より大きい大半のコドンは、優先的に使用される哺乳動物コドンによって保存的に置換された。WO97/31115、WO97/48370、およびWO98/34640(Merck&Co.、Inc.)では、HIV遺伝子またはそのセグメントのコドン最適化が、タンパク質発現の増大をもたらし、かつ、最適化によって適応させた対象の宿主哺乳動物においてDNAワクチンとしてコドン最適化配列を使用した場合に免疫原性を改善することが示された。したがって、本発明の一実施形態では、ProDer p1をコードする核酸配列は、真核生物での発現、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞での発現など哺乳動物での発現用に最適化されたコドン使用パターンを有する。
別の実施形態によれば、本発明は、本明細書の方法によって得ることができる、天然のアレルゲンのアレルゲン活性と比べてアレルゲン活性が有意に低いProDer p1組換え誘導体に関する。本発明の方法によって作製したProDer p1組換え誘導体のアレルゲン活性、および結果としてのアレルゲン活性の低下は、例えば、実施例のセクションで詳述する方法により、ヒスタミン放出活性またはIgE結合反応性に基づいて、天然のタンパク質と比較することができる。
「実質的に低下したアレルゲン活性」とは、残存するIgE結合活性によって測定されるアレルゲン活性が、天然のタンパク質の活性の最大50%まで、例えば、最大20%まで、最大10%まで、最大5%まで、または5%未満まで低下することを意味する。あるいは、「実質的に低下したアレルゲン活性」は、変異体のヒスタミン放出活性を測定することによって評価することもできる。活性の実質的な低下は、天然のタンパク質と比べて少なくとも100倍、例えば1000倍、例えば10000倍の低下が認められる場合である。
組換え誘導体の免疫原性は、様々な免疫学的アッセイにより、天然のアレルゲンの免疫原性と比較することができる。誘導体アレルゲンおよび天然のアレルゲンの交差反応性は、誘導体アレルゲンまたは天然のアレルゲンのいずれかでワクチン接種した後にin vitroのT細胞アッセイを行うことによって分析することができる。例えば、ワクチン接種された動物から単離した脾臓T細胞を、組換え誘導体アレルゲンまたは天然のアレルゲンのいずれかでin vitroで再刺激し、続いて、市販のELISAアッセイを用いてサイトカイン産生を測定してよく、または、トリチウム標識チミジンを組み込むことによって、アレルゲン特異的T細胞の増殖を経時的に分析してもよい。免疫原性は、ELISAアッセイによって決定してもよい。ELISAアッセイの詳細は、当業者が容易に決定することができる。
少なくとも2つのタイプのELISAアッセイが想定される。第1に、野生型Der p1で免疫化したマウスの血清によるProDer p1 誘導体の認識を評価するもの、第2に、HDMアレルギー性患者の血清による野生型Der p1アレルゲンの認識によるもの。典型的には、4℃で一晩、精製した野生型Der p1または変異Der p1約500ngで各ウェルをコーティングする。ブロッキング溶液(例えば、1%BSAを含むTBS−Tween 0.1%)と共にインキュベートした後、血清の連続希釈物を約37℃で約1時間、インキュベートしてよい。典型的には少なくとも5回、これらのウェルを洗浄し、かつ、アルカリホスファターゼと結合させた抗IgG抗体と共にインキュベートすることによって、IgG総量を明らかにすることができる。
本発明の方法によって得ることができる組換え型のProDer p1は、予防用ワクチンまたは治療用ワクチンとして使用することができる。前記アレルゲン誘導体は、未改変の野生型アレルゲンと比べて以下の利点を有する場合がある:1)野生型アレルゲンによって刺激される免疫応答と比べて、Th1型の局面の免疫応答を増大させて(例えば、より高レベルのIgG2a)、それによって、ワクチン接種された宿主のアレルギー性潜在能力を抑制する、2)引き続きT細胞反応性を保持しつつ、低いアレルゲン性を有し、したがって、高用量の免疫原の全身投与により適している、3)天然のDer p1の結合に際してIgEと競合する、Der p1特異的IgGを誘導すると考えられる、4)エアロゾル化したアレルゲン抽出物に曝露した後でさえ、気道好酸球増加症にならないよう効率的に保護する。このような誘導体は、医薬品中で使用するのに、より具体的には、アレルギー反応の治療または予防に適している、治療的および予防的ワクチン製剤中で使用するのに適している。
本発明の方法に従って作製された低アレルギー性ProDer p1誘導体を含む医薬組成物、免疫原性組成物、およびワクチン組成物もまた、提供される。
本発明の医薬組成物は、アジュバント化合物、またはタンパク質によって誘導される免疫応答を増大させるのに役立ち得る他の物質を含んでよい。
本発明のワクチン組成物は、免疫保護的な量の本発明の方法によって作製された組換え型ProDer p1を含んでよい。「免疫保護的な」という用語は、アレルギー疾患が回避または緩和されるように、後続の抗原投与に対する免疫応答を誘発するのに必要な量を意味する。本発明のワクチンでは、タンパク質の水溶液を直接使用することができる。あるいは、事前に凍結乾燥したタンパク質または事前に凍結乾燥していないタンパク質を、様々な公知のアジュバントのいずれかと混合するか、吸着させるか、または共有結合させてよい。
適切なアジュバントが市販されており、例えば、フロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories、デトロイト、ミシガン州)、Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc.、ローウェー、ニュージャージー州)、AS−2(SmithKline Beecham、フィラデルフィア、ペンシルベニア州)、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)やリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、カルシウム、鉄、または亜鉛の塩、アシル化チロシンの不溶性懸濁液、アシル化糖、陽イオン性または陰イオン性に誘導体化した多糖、ポリホスファゼン、生分解性マイクロスフェア、モノホスホリルリピドAおよびクイル(quil)Aである。GM−CSFまたはインターロイキン−2、インターロイキン−7、もしくはインターロイキン?12などのサイトカインおよびケモカインもまた、アジュバントとして使用され得る。
本発明の製剤において、アジュバント組成物が、主にTh1型の免疫応答を誘導することが望ましい。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN−γ、TNFα、IL−2、およびIL−12)は、投与された抗原に対する細胞性免疫応答の誘導を促進する傾向がある。応答が主にTh1型である一実施形態によれば、Th1型サイトカインのレベルは、Th2型サイトカインのレベルより大規模に上昇する。これらのサイトカインのレベルは、標準的なアッセイを用いて容易に評価することができる。サイトカインのファミリーの総説については、MosmannおよびCoffman、Ann.Rev.Immunol.7巻、145〜173頁、1989年を参照されたい。
したがって、主にTh1型の応答を誘発するために使用され得る適切なアジュバントとしては、例えば、モノホスホリルリピドAの組合せ物、例えば、アルミニウム塩と一緒にされた3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)が挙げられる。3D−MPL、またはWO9850399、WO0134617、およびWO03065806において開示されているアミノアルキルグルコサミニドホスファートなど他のToll様受容体4(TLR4)リガンドもまた、単独で使用して主にTh1型の応答を生じさせることができる。Th1型免疫応答を優先的に誘導し得る他の公知のアジュバントとしては、CpGを含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。これらのオリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドがメチル化されていないことを特徴とする。このようなオリゴヌクレオチドは周知であり、例えばWO 96/02555に記載されている。他の適切なアジュバントは、EP1322656およびUS 2004/0097719に記載されているようなCpRを含むオリゴヌクレオチドなど他のTLR9リガンドである。免疫賦活性DNA配列は、例えばSatoら、Science 273巻、352頁、1996年によっても説明されている。CpGを含むオリゴヌクレオチドもまた、単独で、または他のアジュバントと組み合わせて使用することができる。例えば、増強された系は、CpGを含むオリゴヌクレオチドとサポニン誘導体の組合せ、特に、WO 00/09159およびWO 00/62800において開示されているCpGおよびQS21の組合せを含む。製剤は、水中油型エマルジョンおよび/またはトコフェロールをさらに含んでよい。
使用され得る別のアジュバントはサポニン、例えばQS21(Aquila Biopharmaceuticals Inc.、フレーミングハム、マサチューセッツ州)であり、これは、単独または他のアジュバントと組み合わせて使用され得る。例えば、1つのアジュバント系は、WO 94/00153で説明されているようなQS21と3D−MPLの組合せなど、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体の組合せ、またはWO 96/33739で説明されているような、QS21がコレステロールで抑制されている反応性のより低い組成物を使用する。他の適切な製剤は、水中油型エマルジョンおよびトコフェロールを含んでよい。特に強力なアジュバント製剤は、WO 95/17210で説明されているように、水中油型エマルジョン中にQS21、3D−MPL、およびトコフェロールを含んでよい。別の実施形態では、アジュバントは、リポソーム組成物中に配合されてよい。
他の適切なアジュバントとしては、Montanide ISA 720(Seppic、フランス)、SAF(Chiron、カリフォルニア、米国)、ISCOMS(CSL)、MF−59(Chiron)、Detox(Ribi、ハミルトン、マサチューセッツ州)、RC−529(Corixa、ハミルトン、マサチューセッツ州)、および他のアミノアルキルグルコサミニド4−ホスファート(AGP)が挙げられる。
したがって、本明細書において開示するProDer p1低アレルギー性誘導体およびアジュバントを含む免疫原性組成物であって、アジュバントが、3D−MPL、QS21、CpGオリゴヌクレオチド、ポリエチレンのエーテルもしくはエステルのうち1種もしくは複数種、またはこれらのアジュバントのうち2種以上の組合せを含む、免疫原性組成物が提供される。免疫原性組成物内のProDer p1低アレルギー性誘導体は、水中油型エマルジョンビヒクルまたは油中水型エマルジョンビヒクル中で提供され得る。
ワクチン製剤は、Vaccine Design(「The subunit and adjuvant approach」(Powell M.F.およびNewman M.J編)(1995年)Plenum Press New York)に一般に説明されている。リポソーム内への封入は、Fullertonの米国特許第4235877号によって説明されている。高分子へのタンパク質の結合は、例えば、Likhiteの米国特許第4372945号およびArmorらの米国特許第4474757号によって開示されている。
典型的には、各ワクチン用量中に存在する本発明のタンパク質の量は、典型的なワクチンにおける顕著な有害副作用を伴わずに、免疫保護的応答を誘導する量として選択される。このような量は、どの特異的免疫原が使用されるか、およびワクチンにアジュバントが加えられるか否かに応じて変動すると考えられる。一般に、各用量はタンパク質1〜1000μg、好ましくは1〜200μgを含むと予想される。個々のワクチンに対して最適な量は、対象における抗体力価および他の応答を観察する標準的研究によって確定することができる。本発明のワクチンは、成人または幼児に投与することができる。しかし、実質的なTh2型記憶応答が確立される前の誕生直後に個体にワクチン接種することが好ましい。初回ワクチン接種後、対象は約4週間後に追加免疫を受けてよく、続いて、アレルギー応答のリスクが存在する間は、約6カ月毎に繰り返し追加免疫を受けてよい。
ワクチンおよび医薬組成物は、密閉されたアンプルやバイアルなど単位投与または多回投与用の容器に入れて提供され得る。典型的には、このような容器は、使用するまで製剤の無菌性を維持するために、気密密閉される。一般に、製剤は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、または乳剤として保存され得る。あるいは、ワクチンまたは医薬組成物は、使用する直前に無菌液状担体の添加のみを必要とする凍結乾燥させた状態で保存してもよい。
本発明はまた、本発明の方法に従ってProDer p1組換え誘導体を作製する工程と、そのタンパク質を精製する工程と、結果として生じるタンパク質を適切なアジュバント、希釈剤、または他の製薬上許容される賦形剤と混合する工程とを含む、ワクチンを製造するための方法も提供する。
本発明はまた、本発明の方法によって作製したタンパク質を製薬上許容される賦形剤と混合する工程を含む、ワクチン製剤を製造するための方法も提供する。
本発明の別の実施形態は、アレルギーに感受性のある、またはアレルギーに苦しんでいる患者を免疫治療的に治療するためのワクチンを製造するための、本発明の方法によって作製したタンパク質の使用である。本明細書において開示する免疫原性組成物の薬学的に有効な量を前記患者に投与する工程を含む、アレルギーに感受性のある、またはアレルギーに苦しんでいる患者を治療する方法もまた、本発明によって企図される。
本発明の別の実施形態は、ヒトのアレルギー疾患(特に、室内チリダニアレルギー)を予防または緩和する方法であって、本発明の方法によって作製したアレルゲン、または本発明によるワクチンの免疫原的に有効な量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供する。
以下の実施例は、本発明をさらに例示する。本実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明のさらなる理解を実現する。
実施例
本発明は、本発明を明瞭にすることを意図する以下の実施例によってさらに例示される。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとして意図されず、解釈もされない。本発明の多数の修正および変形は、本明細書の教示に鑑みて可能であり、したがって、本発明の範囲内である。以下の実施例は、標準的な技術を用いて実施され、そのような標準的技術は、詳細に記述した場合を除き、当業者に周知であり、常用的である。
イー・コリ発現ベクターにおけるProDer p1のクローニング
pNIV4846プラスミドに由来する、ProDer p1をコードするカセットを、以下のプライマーを用いたPCRによって増幅した:5’GGGGCTAGCCGGCCGAGCTCCATTAAGACC3’(配列番号4)(フォワードプライマー、太字の下線部はNhe I制限部位)および5’GGGGCGGCCGCCAGGATCACCACGTACGGG3’(配列番号5)(リバースプライマー、太字の下線部はNot I制限部位)。増幅した断片をNheI−NotIで消化して920bp断片を作製し、かつ、NheI−NotIで制限されたpStaby1発現ベクター(Delphi Genetics)中に導入した。結果として生じるプラスミドは、(His)6配列タグの上流にProDer p1 カセットを含む。
CYS21イー・コリ細胞(Dephi Genetics)中にエレクトロポレーションすることによって、このDNA構築物を形質転換した。ProDer p1 cDNAの存在および同一性をDNA配列決定によって確認した。最後に、CYS21クローンから精製した組換えプラスミドを、マニュアルの指示に従ってSE1イー・コリ細胞(Delphi Genetics)中に形質転換した。
イー・コリからのProDer p1の発現および精製
pStaby1−ProDer p1プラスミドを含む組換えSE1細菌を一晩前培養することによって、100μg/mlアンピシリンを含むLBを入れた500mLフラスコ2個に播種し、かつ、光学濃度(OD600nm)が0.5に達するまで、振盪しながら37℃で培養物を増殖させた。細胞培養物を1mMイソプロピル−チオガラクトシド(IPTG、Duchefa)に調整することによってタンパク質産生を誘導し、また、さらに2時間、37℃で細胞を振盪した。これらの細胞を遠心分離(9500gで15分間)によって回収し、アプロチニン(Aprotinin)1mM(Sigma)およびAEBSF 1mM(ICN)を補った冷Tris緩衝液(50mM、pH7.5)40ml中に再懸濁し、かつ、1800バールで細胞破砕機(Cell D)に2回通過させることによって溶解した。
細胞溶解物を3000rpmで20分間遠心分離して封入体を単離した。沈殿物をトリス緩衝液(50mM pH7.5)、Triton X−100 1%で洗浄し、続いて、3回の洗浄工程を経て界面活性剤を除去した。続いて、4℃で一晩、50mMトリス緩衝液、300mM NaCl、6M尿素(pH7.5)40mlでProDer p1を抽出した。超遠心分離(149000g、45分)後、抽出緩衝液で平衡化したNi2+キレート高速カラム(2.6×6cm、GE Healthtech Amersham)に3ml/分で抽出物の上清を添加した。このカラムを出発緩衝液で洗浄した。タンパク質溶出は段階的に進行して、緩衝液中のイミダゾール(imidazol)濃度が上昇した(0mMから400mM)。精製されたProDer p1(200mMイミダゾールで溶出)を含む画分を集めた。2工程の透析によって尿素を除去することによって(6M尿素から2M尿素、2M尿素からPBS)、ProDer p1を復元した。限外ろ過(Amicon−Millipore製の再生セルロース限外ろ過膜、NMWL 10kDa)によって組換えアレルゲンを濃縮し、−20℃で保存した。
Der p1 ELISA
Der p1に特異的なモノクローナル抗体5H8および4C1(Indoor Biotechnologies、シャーロッツビル、バージニア州、米国)を用いるELISAキットによって、組換えProDer p1を検出した。このアッセイで使用した標準Der p1(UVA 93/03)は、濃度2.5μg/mLであった。
IgE結合活性
4℃で一晩、天然Der p1または組換えProDer p1(500ng/ウェル)でイムノプレートをコーティングした。次いで、ウェル当たり100μLのTBS−Tでプレートを5回洗浄し、かつ、37℃で1時間、1%BSAを添加した同じ緩衝液150μLに浸した。次いで、ディー・プテロニッシナスに対してアレルギー性の患者から得た、8分の1に希釈した血清を37℃で1時間インキュベートした。血清の特異的な抗ディー・プテロニッシナスIgE値(RASTアッセイ)は、上限カットオフ値の100kU/Lを上回っていた。TBS−T緩衝液でプレートを5回洗浄し、かつ、マウス抗ヒトIgE抗体(TBS−T緩衝液中で1/2000に希釈、Southern Biotechnology Associates、バーミンガム、アラバマ州、米国)およびアルカリホスファターゼに結合させたヤギ抗マウスIgG抗体(TBS−T緩衝液中で1/7500に希釈、Promega)と共にインキュベーションした後、アレルゲン−IgE複合体を検出した。ジエタノールアミン緩衝液(pH9.8)中に溶解したp−ニトロフェニルホスファート基質(Sigma)を用いて、酵素活性を測定した。Biorad Novapath ELISAリーダーでOD410nmを測定した。
T細胞の反応性
Derp 1で免疫化したマウスの脾臓細胞を、ピー・パストリスまたはコリで産生させたProDer p1の段階希釈物で、刺激した。72時間後、1μCi/ウェルの[H]−チミジンで細胞を16時間パルス標識した。細胞を回収し、シンチレーション計数によってH−チミジン取込みを測定した。
結果
CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)中で産生させたProDer p1と比べて、この発現系によって産生させたProDer p1は、N末端およびC末端にそれぞれ3個および11個の余分なアミノ酸残基を有する(太字の下線部で示す)。
Figure 2009533035
pStaby1を用いてイー・コリで発現されるコドン最適化ProDerP1の核酸配列を以下に示す(余分な配列を太字の下線部で示す)。
配列番号2
Figure 2009533035
図1A、BおよびCに示されるように、組換えイー・コリProDerP1のIgE反応性は、哺乳動物細胞にて産生されるDerp1およびProDerP1と比べて大幅に減少した。図2はDerp1のエライザの結果を示しており、細菌中で産生されるアレルゲン変種にて立体配置的エピトープの存在しないことを確認する。しかしながら、図3に示されるように、封入体より単離されたProDer p1はDerp1特異的T細胞反応性を維持した。
配列
配列番号1
Figure 2009533035
配列番号2
Figure 2009533035
配列番号3(ヌクレオチド配列):
配列番号7(アミノ酸配列):
Figure 2009533035
Figure 2009533035
この優先権を主張する特許出願はすべて出典明示によりその内容を本明細書の一部とする。本願発明は本願明細書に記載の特定の実施形態により特定される範囲に限定されるものではない。実際、本願明細書に記載の発明に加えて、種々の修飾が上述した記載から当業者に明らかになるであろう。かかる修飾は特許請求の範囲内にあることを意図とする。本願明細書に引用されている特許、特許出願および公開公報の開示をその出典を明示することで本願明細書の一部とする。
24種の血清を用いて実施したイー・コリ組換えProDer p1のIgE反応性を示すグラフである。 IgE阻害アッセイを示すグラフである。プレートを天然Der p1でコーティングした(500ng/ウェル)。ダニアレルギーを有する患者(RAST値>100kU/L)に由来する20種のヒト血清のプールを、阻害物質としてのCHOまたはイー・コリにおいて産生させた様々な濃度(0〜200μg/ml)のDer p1またはProDer p1と共に、48℃で一晩プレインキュベートした。次いで、血清をELISAプレートに添加し、前述したようにしてIgE結合活性を測定した。 ラット好塩基球性白血病細胞メディエーター放出アッセイを示すグラフである。ヒトFcεRIを発現するラット好塩基球性白血病細胞RBL SX−38(Kinet教授、Beth Israel Deaconess Medical Center(ボストン、米国)から受領)を、ディー・プテロニッシナスに対してアレルギー性の患者に由来する4種の血清の段階希釈物(RAST値>100kU/L、2倍希釈で1/3〜1/96)で17時間感作した。イー・コリにおいて産生された天然Der p1またはProDer p1の精製物10ngの脱顆粒培地(フェノールレッドを含まず、1mg/ml BSAを含むRPMI 1640)溶液を37℃で30分間添加することによって、RBL細胞の誘発を誘導した。対照として、アレルゲンの不在下で細胞を同様にインキュベートして、自発的放出を測定した。0.5% Triton X−100を培地に添加することによって、総放出を得た。β−ヘキソサミニダーゼ放出活性を決定するために、上清50μlおよびp−ニトロフェニル−N−アセチル−β−D−グルコサミニド(0.2Mクエン酸緩衝液(pH4.5)中2mM)50μlを、別々の96ウェルプレート中で、37℃で3時間、混合した。1M Tris−HCl(pH9)150μlを添加することによって反応を終結させ、かつ405nmでの吸光度を測定した。総放出から自発的放出を引いた量に対するパーセンテージとして結果を表した。 Der p1 ELISAの結果を示すグラフであり、細菌において産生されたアレルゲン変種に立体配置的エピトープが存在しないことを裏付ける。 封入体から単離されたProDer p1がどのようにDer p1に特異的なT細胞反応性を維持するかを示すグラフである。

Claims (42)

  1. 天然のアレルゲンの活性と比べてアレルゲン活性が低いデルマトファゴイデス・プテロニッシナスProDer p1組換え誘導体を作製するための方法であって、原核宿主細胞にてProDer p1をコードする配列を発現させることを含む方法。
  2. (a)原核細胞においてProDer p1タンパク質をコードするDNA配列の発現能を有する発現ベクターで形質転換された原核宿主細胞を、前記ProDer p1タンパク質の発現を可能にする条件下で培養する工程と、
    (b)前記ProDer p1タンパク質を回収する工程と
    を含む、請求項1記載の方法。
  3. ProDer p1タンパク質の精製を含む、請求項2記載の方法。
  4. ProDer p1タンパク質を変性させ、かつ復元する工程を含む、請求項2記載の方法。
  5. ProDer p1タンパク質の熱処理を含む、請求項2記載の方法。
  6. 原核宿主細胞がイー・コリである、請求項1記載の方法。
  7. 発現ベクターが毒素/解毒薬プラスミドである、請求項2記載の方法。
  8. ProDer p1をコードする配列が野生型配列(配列番号3)に対応する、請求項1記載の方法。
  9. ProDer p1をコードする配列が、以下の変異(Der p1ナンバリング):
    (a)システイン31残基の変異;
    (b)システイン34残基の変異;
    (c)システイン65残基の変異;
    (d)システイン71残基の変異;
    (e)システイン103残基の変異;
    (f)システイン117残基の変異;
    (g)ヒスチジン170残基の変異;および
    (h)プロペプチドと成熟分子の間の切断部位の変異
    のうち少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法。
  10. ProDer p1配列が以下の3つの変異、すなわちシステイン71残基の変異、システイン103残基の変異、およびシステイン117残基の変異を含む、請求項9記載の方法。
  11. ProDer p1配列が、アミノ酸残基147〜160(Der p1ナンバリング)または残基227〜240(ProDer p1ナンバリング)の欠失をさらに含む、請求項9または10記載の方法。
  12. ProDer p1をコードする配列が、野生型ProDer p1配列のC末端およびN末端の一方または両方に1個〜10個の付加的なアミノ酸を含む、請求項1記載の方法。
  13. ProDer p1が配列番号1のタンパク質の配列を有する、請求項12記載の方法。
  14. ProDer p1をコードする配列が、真核生物発現のために最適化されたコドン使用パターンを有する、請求項1記載の方法。
  15. 請求項2に記載の方法によって得ることができる、天然のアレルゲンのアレルゲン活性と比べてアレルゲン活性が低いデルマトファゴイデス・プテロニッシナスProDer p1組換え誘導体。
  16. 請求項15に記載の組換えタンパク質を含む免疫原性組成物。
  17. 請求項15に記載の組換えタンパク質およびアジュバントを含む免疫原性組成物。
  18. アジュバントがTh1型免疫応答の優先的な刺激因子である、請求項17記載の免疫原性組成物。
  19. アジュバントが、3D−MPL、QS21、CpGオリゴヌクレオチド、ポリエチレンエーテル、およびポリエチレンエステルの群から選択される少なくとも1種を含む、請求項17記載の免疫原性組成物。
  20. 組換えタンパク質が水中油型エマルジョンビヒクルまたは油中水型エマルジョンビヒクル中で提供される、請求項16記載の免疫原性組成物。
  21. アレルギー応答に苦しむ患者を治療する方法であって、請求項15に記載の組換えタンパク質を前記個体に投与する工程を含む方法。
  22. アレルギー応答に苦しむ患者を治療する方法であって、請求項16に記載の免疫原性組成物を前記個体に投与する工程を含む方法。
  23. アレルギー応答に感受性のある患者を予防する方法であって、請求項15に記載の組換えタンパク質を前記個体に投与する工程を含む方法。
  24. アレルギー応答に感受性のある患者を予防する方法であって、請求項16に記載の免疫原性組成物を前記個体に投与する工程を含む方法。
  25. 配列番号1の配列を含むProDer p1組換え誘導体。
  26. 配列番号1の配列をコードする単離核酸分子。
  27. 配列番号2の配列を含む単離核酸分子。
  28. 請求項26に記載の核酸を含む発現ベクター。
  29. 請求項26に記載の核酸配列で形質転換された宿主細胞。
  30. 請求項28に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
  31. システイン31残基の変異がシステインからアルギニンへの変異である、請求項9記載の方法。
  32. システイン31残基の変異がシステインからリシンへの変異である、請求項9記載の方法。
  33. システイン34残基の変異がシステインからアラニンへの変異である、請求項9記載の方法。
  34. システイン65残基の変異がシステインからアルギニンへの変異である、請求項9記載の方法。
  35. システイン65残基の変異がシステインからリシンへの変異である、請求項9記載の方法。
  36. システイン71残基の変異がシステインからアルギニンへの変異である、請求項9記載の方法。
  37. システイン71残基の変異がシステインからリシンへの変異である、請求項9記載の方法。
  38. システイン103残基の変異がシステインからアルギニンへの変異である、請求項9記載の方法。
  39. システイン103残基の変異がシステインからリシンへの変異である、請求項9記載の方法。
  40. システイン117残基の変異がシステインからアルギニンへの変異である、請求項9記載の方法。
  41. システイン117残基の変異がシステインからリシンへの変異である、請求項9記載の方法。
  42. プロペプチドと成熟分子の間の切断部位の変異が、残基NAETの欠失である、請求項9記載方法。
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