JP2009519024A - ドメイン移植抗体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、抗体に関する。具体的には、本発明は、種間の抗体ドメインの新規の組み合わせから構成される抗体(「ドメイン移植抗体」)に関する。本発明はさらに、そのようなドメイン移植抗体を含む組成物、ならびにそのようなドメイン移植抗体を産生するための方法に関する。最後に、本発明は、そのようなドメイン移植抗体のインビボ生物学的効果を評価する方法、ならびにヒト治療用の抗体のインビボ活性の異種間評価のための、そのようなドメイン移植抗体の使用に関する。

Description

本発明は、抗体に関する。具体的には、本発明は、種間の抗体領域、またはドメインの新規の組み合わせを有する抗体(「ドメイン移植抗体」)に関する。本発明はさらに、そのようなドメイン移植抗体を含む組成物、ならびにそのようなドメイン移植抗体を産生するための方法に関する。最後に、本発明は、そのようなドメイン移植抗体のインビボ生物学的効果を評価する方法、ならびにヒト治療用の抗体のインビボ活性の異種間評価のための、そのようなドメイン移植抗体の使用に関する。
癌などの多くのヒト疾患の治療においてモノクローナル抗体が果たす役割は、ますます重要となっている。特に、"Kuby Immunology" Fourth Edition; Richard A. Goldsby, Thomas J. Kindt and Barbara A. Osborne; Published by W.H. Freeman publishers, 2002(非特許文献1)の表4-1に記載されているように、最も多くの場合、そのような治療において使用されるモノクローナル抗体は、IgG1アイソタイプ、すなわち、γ1サブクラスの重鎖を含むモノクローナル抗体である。IgG1抗体の略図が、本出願の図1に示されている。IgG1抗体は、4本のポリペプチド鎖から構成されており、そのうちの2本は抗体重鎖であり、残りの2本は抗体軽鎖である。各重鎖は、N末端からC末端へ:重鎖可変領域(VH)、第一重鎖定常領域(CH1)、ヒンジ領域、第二重鎖定常領域(CH2)、および第三重鎖定常領域(CH3)から構成される。各軽鎖は、N末端からC末端へ:軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。当技術分野において公知であるように、VHおよびVL領域(図1において陰付きとなっている)の組み合わせは、抗体が分子、または抗原を認識して結合することを可能にし、一方、定常領域、特に、ヒンジ、CH2およびCH3領域は、一定のエフェクター機能を誘発するのに関与する。図1において、鎖間ジスルフィド結合が点線として示されており(鎖内ジスルフィド結合は描かれていない)、一方、定常領域内のグリコシル化の位置が小さな六角形として示されている。IgG1タイプの抗体において、これらのグリコシル化部位は、CH2領域に位置する。図1に示されるように、1本の重鎖は1本の軽鎖とジスルフィド結合し、2個の重鎖‐軽鎖ペアは、各ペアにおける重鎖を介して互いにジスルフィド結合している。X線研究によって、抗原に結合した抗体によるエフェクター機能の誘発は、CH2およびヒンジ領域、特にヒンジ領域によって媒介されることが示唆される(Radaev et al. (2001), J. Biol. Chem. 276, 16469-16477(非特許文献2))。両方の重鎖由来のヒンジ、CH2 、およびCH3領域は、いわゆる抗体のFc領域を構成する。
主要なエフェクター機能とは、抗体依存性細胞障害性(「ADCC」)である。ADCCは、IgG1の二機能性の結合活性によって媒介される。抗体は、そのFcドメインを介して、Fc-γ受容体(「Fc-γ-R」)陽性の細胞障害性免疫細胞を、抗体が結合した抗原を保持する抗体修飾細胞に一過的に拘束する。このことが、細胞間の細胞溶解性シナプスの形成、パーフォリンおよびグランザイムなどの細胞障害性タンパク質の免疫細胞による標的送達、および、最終的に、結合した抗原を保持する細胞の溶解の誘導を導く。結合した抗原を保持する細胞は、例えば、腫瘍細胞、または病理学的条件に関与する他の細胞などの内因性細胞であってもよい。内因性細胞はまた、例えば、病原体、例えばウイルスに感染した細胞であってもよい。抗原を保持する細胞はまた、外因性細胞または病原体、例えば、ヒトの体に侵入する細菌であってもよい。ADCCに関与する重要な免疫細胞は、とりわけ、低親和性Fc-γ-R IIIa(CD16)を有するナチュラルキラー(NK)細胞である。ADCCに関与するエフェクター細胞は、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、およびナチュラルキラー細胞を含む。NK細胞は、恐らくADCCにおいて鍵となる細胞である。この概念は、リツキシマブ(rituximab)(抗CD20抗体)の有効性の減少が、抗体リガンドに対する受容体の親和性を減少させるCD16における多型と相関することによって、遺伝学的に支持される(Cartron et al. (2002) Blood 99, 754-8(非特許文献3))。同様の相関が、CD32の多型について同定され(Weng & Levy (2003) J. Clin. Oncol. 21, 3940-7(非特許文献4))、CD32陽性の免疫細胞もまたADCCに貢献することを示唆している。
任意の新たな候補抗体薬物を市販するためには、厳密な試験に通らなければならない。この試験は、大まかに、前臨床および臨床相に細分され得る:臨床試験(一般に公知である臨床第I相、第II相、および第III相にさらに細分される)が、ヒト患者において行われるのに対し、動物において前臨床試験が行われる。一般に、前臨床試験の目的は、抗体薬物候補が本当に効き、かつ安全であること、すなわち、安全域が、効果的な用量と、中毒量、または最大耐用量(maximal tolerated dose(「MTD」))との間に存在することを証明することである。具体的には、これらの動物試験の目的は、危険性評価を行うこと、および、薬物が発癌性、変異原性、または催奇性でないことを証明すること、ならびに、薬物候補の薬物動態を理解することである。薬物候補が、a)治療用量で試験動物に対して毒性でないこと、およびb)試験動物において有効性の兆候を示す(その規模にかかわらず)ことが確立された場合にのみ、この薬物候補はヒトにおける臨床試験について認可されると考えられる。
前臨床試験において、ヒトIgG1治療の有効性は、試験動物としてマウスを使用する異種移植モデルにおいて評価されることが多い。マウスは、短い生活環を有し、頻繁に繁殖し、絶滅の危機に瀕した種でなく、比較的容易に遺伝学的に操作することが可能であり、かつ、維持するのが容易かつ安価である。このように、マウスは前臨床試験に非常に有利な動物である。
前臨床試験において頻繁に使用される動物モデルの一つの種類は、免疫不全ヌードマウス、例えばSCIDマウスである。ヌードマウスにおけるT細胞の極めて低いレベルのために、抗体薬物候補が結合する対応抗原を発現しているヒト細胞株(例えば腫瘍細胞株)は、マウスの免疫系によって拒絶されることなくそのようなマウス中に導入され得る。注射されるヒト細胞株がヒト腫瘍細胞株である事象において、この細胞株はそのようなマウス中で測定可能な腫瘍へと増殖する。T細胞はヌードマウス中でごくわずかな量しか存在しないが、NK細胞および/または顆粒球などの他のエフェクター細胞は、マウスの免疫不全にもかかわらず残存している。これらのエフェクター細胞はADCCを媒介することが可能であり、抗体薬物候補の有効性について有用な前臨床読み出しを提供する。
前臨床試験において使用される他のタイプのマウスモデルは、免疫応答性マウスモデルである。これらのモデルにおいては、ヒト標的抗原がトランスフェクションされた同系腫瘍細胞株が静脈内注射され、肺の毛細血管中に捕捉されて、その後肉眼で見える肺腫瘍コロニーに増殖する。
当技術分野において公知であるように、ヒトへの投与用の抗体薬物候補は、患者において免疫応答を誘発しないことが望ましく、すなわち、この抗体はヒト抗体であるか、または少なくともヒト抗体由来であることが望ましい。治療用のヒト抗体は、例えば国際公開公報第98/46645号(特許文献1)に記載されているように、当技術分野において公知である。
しかしながら、任意の種類のマウスモデルにおいてヒト抗体、特にヒトIgG1抗体の前臨床試験を行う欠点とは、マウスの免疫エフェクター細胞のFc-γ受容体が、ヒト抗体のFcドメインを適切に認識しないことである。結果として、前臨床試験において得られたデータは、ヒト抗体のFcドメインを適切に認識するFc-γ受容体を有するヒト患者へ同じ抗体を投与する際に予想されることの予測とならないことが多い。この結果、前臨床試験の動物より得られた読み取り値、例えばADCCの強度の曲解が起こる。このことは、いくつかの結果を招き得、その各々は、抗体薬物候補の開発に不都合である。
一つの可能性は、前臨床試験においてほとんどまたは全くADCCが測定されないことである。有効性の指標が全く作成できないため、たとえ薬物候補が実際にはヒト患者において効果的である可能性があっても、抗体薬物候補がヒトにおける試験の臨床相について認可される見込みはない。この場合、潜在的に有望な抗体薬物候補は、不必要に断念される可能性がある。
もう一つの可能性は、抗体薬物候補のFc部分の不適切な認識のために、人工的に高いレベルのADCCが測定されることである。ここでの危険性とは、抗体薬物候補が、同様に安全とみなされた場合、さらに臨床相の試験に進み、そこで、ヒトの状況における適切な分子認識の条件の下で、抗体が実際には不十分な効果しか有さないことが確立されると考えられることである。この場合、貴重な金銭および時間が、価値の無い抗体薬物候補の追跡に浪費される可能性がある。
この問題を解決するための一つの公知のアプローチは、前臨床試験のためにヒトと遺伝学的に非常に近い動物種を使用することである。チンパンジーはヒトと99%を超える遺伝学的同一性を有し、そのために、そのような前臨床試験にとって第一選択肢である。しかしながら、チンパンジーにおける試験は非常に高価である。加えて、コストの問題はともかくとして、チンパンジーは絶滅の危機に瀕した生物であり、そのため実験に使用できる動物の数が非常に限定され、従って得られる任意の前臨床データの統計学的有意性を減少させる。そのため、前臨床研究者は、チンパンジーよりも遺伝学的にヒトから離れた他の動物種における試験に頼らなければならない。チンパンジー以外の多くの霊長類種についてさえ、このヒトからの系統発生的な隔たりがしばしば非常に大きいため、ヒト抗体薬物候補を用いて得られた結果的な前臨床データがヒトの設定に適用できない可能性がある。
国際公開公報第98/46645号 "Kuby Immunology" Fourth Edition; Richard A. Goldsby, Thomas J. Kindt and Barbara A. Osborne; Published by W.H. Freeman publishers, 2002 Radaev et al. (2001), J. Biol. Chem. 276, 16469-16477 Cartron et al. (2002) Blood 99, 754-8 Weng & Levy (2003) J. Clin. Oncol. 21, 3940-7
信頼性があり、順応性があり、かつ費用効果が高い様式で、ヒト治療用の抗体について前臨床データを得る方法を提供することが、本発明の目的である。
従って、本発明の一つの局面は、ヒト細胞表面分子に特異的に結合するドメイン移植抗体に関する。ドメイン移植抗体は、ヒト起源の抗体重鎖可変領域(VH);ヒト起源の抗体軽鎖可変領域(VL);非ヒト種由来の第二抗体重鎖定常領域(CH2);および該非ヒト種由来の抗体重鎖ヒンジ領域を含む。ドメイン移植抗体の抗体重鎖可変領域および軽鎖可変領域は共に、該ヒト細胞表面分子に対する結合部位を規定する。
「ドメイン移植抗体」はそのため、最小限、VH、VL、CH2、およびヒンジ領域を含む抗体であり、それらの特性は前段落に記されている。
一般に、認可された試験動物(例えばげっ歯類)を用いて得られた前臨床データの正確性は、試験動物のエフェクター細胞のFc-γ-Rと相互作用するヒト抗体薬物候補の部分を、試験に用いられる特定の動物種と同じ起源となるように修飾することによって、大幅に増大され得る。そのため、前臨床試験のためにこうして得られた本発明のドメイン移植抗体は、実際の抗体薬物候補中に存在する領域に対応する、ヒト起源の抗原結合領域(VHおよびVL)を有し、一方、免疫エフェクター細胞のFc-γ-Rと最も密接に相互作用する領域である、少なくとも重鎖のCH2およびヒンジ領域は、試験動物起源である。この方法で、抗原結合能力において、市販認可される実際の抗体薬物候補に正確にまたは少なくとも非常に密接に対応する、抗体分子が得られる。同時に、ドメイン移植抗体は、前臨床試験動物の免疫系と適合性のままである。こうして得られた安全性および有効性のデータは、抗体Fc部分と免疫系との間の適合性の生物学的に関連性のある状況において予想されることを、より正確に示すと考えられる。試験動物においてこうして得られたドメイン移植抗体とFc受容体との間の適合性は、実際の薬物候補が後にヒト患者に投与される際の本候補のFc部分とヒト免疫系との間の適合性と類似している。そのような本発明のドメイン移植抗体の略図が図2に示され、図中、VHおよびVL(陰付き)はヒト起源であり、CH2およびヒンジ領域は一つの(すなわち同じ)非ヒト種由来である。鎖間ジスルフィド結合が点線で描かれ、グリコシル化部位が小さな六角形で描かれている。
図2に図示されるドメイン移植抗体は、いくつかの明瞭な利点を有する。
第一に、ヒト抗体のエフェクターに関連する部分を前臨床試験が行われる動物に適合させる能力により、新たな試験動物種を開発する必要性が回避される。上記で概説された理由のために、少なくとも一つの前臨床試験種としてマウスが最もよく使用される。規制認可が求められるヒト抗体と適合すると考えられるマウス種、例えば免疫エフェクター細胞上にヒトFc-γ受容体を発現するトランスジェニックマウス種の開発には2〜3年を要し、一般に長期に及び、かつ高価である。比較すると、必要とされる組換えDNA技術が十分確立されており、かつ、IgG2a形式の周知のマウス抗体であるOKT3のFcドメインなど、適当なマウスFcドメインが可能性のある抗体アイソタイプそれぞれについて当技術分野において公知であるため、本発明によるドメイン移植抗体の産生は、より迅速かつ安価である。
本発明のドメイン移植抗体の追加的な利点は、規制当局により必要とされる前臨床データの取得における順応性の程度である。欧州および米国両方において、EMEAおよびFDAは通常、少なくとも二つの異なる動物種において得られた前臨床データを要求している。組換えDNA技術により、異なる種の動物由来の任意の数のFc部分をヒト起源の同一のVHおよびVL領域に結合させることが可能であるため、図2に図示されているタイプの種々のドメイン移植抗体が、様々な異なる試験動物種について迅速に作製され得る。
抗体構築におけるこの順応性によって、様々な異なる動物種から得られた前臨床データのより高い統計学的有意性が可能となる。例えば、多数の動物種から得られた前臨床安全性データは、ただ一つの動物種から得られたデータよりも、ヒトにおける安全性を予測する確率がより高いと考えられる。同様に、多数の試験動物モデルにおいてある程度の有効性を示唆する前臨床データは、ただ一つまたは二つの動物モデルから得られた前臨床データよりも高い確率で、ヒトにおける有効性を示すと考えられる。
本明細書において使用される「特異的に結合する」という用語、または、「特異的結合」、「特異的に結合(binding specifically)」、「特異的結合剤」などのような関連した表現は、意図されるヒト細胞表面分子と、該ヒト細胞表面分子とは異なる任意の数の他の潜在的な分子とを、潜在的な結合パートナーとしての多数の異なる抗原のプールから該ヒト細胞表面分子のみが結合するまたは有意に結合するような程度まで識別できる、ドメイン移植抗体の能力を指す。本発明の意義内で、潜在的な結合パートナーとしての多数の同等に接触可能な異なる分子のプールの中から、意図されたヒト細胞表面分子が、このヒト細胞表面分子とは異なる任意の他の分子よりも少なくとも10倍、好ましくは50倍、最も好ましくは100倍またはそれ以上頻繁に(速度論的意味(kinetic sense)において)結合する場合、ヒト細胞表面分子は「有意に」結合する。そのような速度論的測定は、Biacore装置またはスキャッチャード(Scatchard)プロット解析で日常的に行われ得る。
本明細書において使用される「細胞表面分子」という用語は、細胞の表面上に表示される分子を表わす。大抵の場合、本分子は、三次形態(tertiary form)において本分子の少なくとも一部が細胞の外側から接触可能のままであるように、細胞の形質膜の中または上に位置すると考えられる。形質膜中に位置する細胞表面分子の非限定的な例は、三次コンフォメーションにおいて親水性および疎水性の領域を含む膜貫通タンパク質である。ここで、少なくとも一つの疎水性領域は、細胞表面分子が細胞の形質膜の疎水性内部に埋め込まれるかまたは挿入されることを可能にし、一方、親水性領域は、形質膜の片側または両側で、(親水性)細胞質および/または細胞外空間へそれぞれ伸長する。形質膜上に位置する細胞表面分子の非限定的な例は、パルミトイル基を有するようにシステイン残基で修飾されたタンパク質、ファルネシル基を有するようにC末端システイン残基で修飾されたタンパク質、または、グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosyl phosphatidyl inositol(「GPI」))アンカーを有するようにC末端で修飾されたタンパク質である。これらの基によってタンパク質が形質膜の外側表面へ共有結合することが可能になり、ここでこれらは抗体などの細胞外分子による認識に対し接触可能のままである。
上記で述べられたように、本発明のドメイン移植抗体と特異的に結合する「細胞表面分子」は、ヒト細胞表面分子である。このことは、細胞表面分子が、ヒトにおいてインビボで有するのと同じアミノ酸配列およびコンフォメーションを有することを意味する。しかしながら、細胞表面分子が「ヒト由来」である事実は、本分子が生きている人間中に存在していなければいけないことを意味しない。例えば、下記でより詳細に説明されるように、ヒト細胞表面分子は、本分子がヒトにおいて通常発現されるのと同じ形態で非ヒトトランスジェニック動物において発現されてもよく、本発明の意義においてなお「ヒト細胞表面分子」とみなされてもよい。
本発明のドメイン移植抗体は、「ヒト起源の」VHおよびVL領域を含む。本明細書において使用されるように、このことは、ドメイン移植抗体のこれらの部分がヒト由来であるかまたはヒト化されていることを意味する。
「ヒト由来の」VHおよび/またはVL領域は、ヒトの体においてポリペプチドまたはポリヌクレオチドいずれかの形態で見られるようなVHおよび/またはVL領域である。例えば、「ヒト由来の」VHは、ヒトB細胞(このヒトB細胞がインビボまたはインビトロに存在するか否かにかかわらず)の表面上に表示された抗体に含まれるようなVHであってもよいし、または、例えばPCRにより、そのようなヒトB細胞中に存在するmRNAを逆転写することによって得られたcDNAの発現から生じてもよい。別の例として、「ヒト由来の」VHは、生殖系列抗体遺伝子、または体細胞超変異により任意の程度にインプリントされた生殖系列抗体遺伝子の発現によって代替的に得られてもよい(Neuberger & Milstein (1995). Curr. Opin. Immunol. 7, 248-54)。
「ヒト化された」VHおよび/またはVL領域は、少なくとも一つの相補性決定領域(「CDR」)が非ヒト抗体またはその断片由来である、VHおよび/またはVL領域である。ヒト化アプローチは、例えばUS 5,225,539およびEP 0 239 400 B1に記載されている。非限定的な例として、用語は、VHおよびVL各々が別の非ヒト動物、例えばげっ歯類由来の単一のCDR領域を含む場合、ならびに、一つまたは両方の可変領域が、それぞれの第一、第二、および第三CDRの各々で非ヒト動物由来の対応するCDRを含む場合を包含する。
抗体の結合ドメインのCDRが非ヒト抗体における対応同等物によって置換されている事象においては典型的に「CDR移植」と呼ばれ、本用語は「ヒト化」という用語に包含されると理解されるべきである。「ヒト化」という用語またはそれらの文法的に関連する変形物はまた、ドメイン移植抗体のVHおよびVL内の一つまたは複数のCDR領域の置換に加えて、FR内の少なくとも一つの単一アミノ酸残基のさらなる変異(例えば置換)が、その位置のアミノ酸が、置換に使用されたCDR領域が得られた非ヒト動物における同じ位置のアミノ酸と同じであるように実施されている場合を包含する。当技術分野において公知であるように(例えばUS 5859205参照)、ヒト化抗体のその抗原に対する結合親和性をCDRドナーとして使用された非ヒト抗体について観察されるレベルまで回復させるために、CDR移植に続いてFR領域においてそのような変異がしばしば作製される。
本明細書において使用される「結合部位」という用語は、ドメイン移植抗体に含まれるVHおよびVLが共にペアになる際に形成される抗体の各アームの先端の単一の部位を表わす。このペア形成において、VHおよびVL領域の各々由来の超可変領域、すなわちCDR領域が集まって、分子または結合対象の抗原に相補的な三次構造となる。VHおよびVL内のFR領域はまた、CDR領域の三次的位置づけにおいて重要な役割を果たし、そのため、これらのFR領域はまた、本明細書において使用されるような「結合部位」の一部と考えられてもよい。しかしながら、一般に、分子または結合対象の抗原、例えば細胞表面分子と接触するのは、個々のCDR中のアミノ酸である。そのため、分子、または抗原のアミノ酸は、抗体分子のCDRのアミノ酸との相互作用に関与している。抗体の「結合部位」はまた、典型的に「抗体結合部位」と称される。本明細書において使用されるような「結合部位」は、"ImmunoBiology" Fifth Edition; Charles Janeway, Paul Travers, Mark Walport and Mark Shlochik; Published by Garland Publishing, 2001の3-6〜3-9節により詳細に記載されている。
本発明の一つの態様によると、ドメイン移植抗体は、非ヒト種由来の第三抗体重鎖定常領域(CH3)をさらに含む。従って、本発明の本態様により得られたドメイン移植抗体は、N→Cで、VH、抗体ヒンジ領域、第二抗体重鎖定常領域(CH2)、および第三抗体重鎖定常領域(CH3)を含む抗体重鎖;ならびに、VLを含む抗体軽鎖を含む。そのため、本発明の本態様によるドメイン移植抗体は、ペアとなったヒト起源のVHおよびVL、ならびに、同じ非ヒト種が起源である重鎖ヒンジ、CH2、およびCH3領域を含む。本発明の本態様によるドメイン移植抗体へのCH3領域のさらなる組み込みは、重鎖のCH2およびヒンジ領域に加えてCH3領域に結合する可能性のあるFc受容体によるドメイン移植抗体のFc領域の認識をさらに助長する利点を有する。本態様によると、ドメイン移植抗体の重鎖のヒンジ、CH2 、およびCH3領域は、同じ非ヒト種、すなわち、前臨床試験のために使用される非ヒト動物種起源であるため、試験動物種のFc-γ-Rによるドメイン移植抗体のより良好な認識が達成される。これは、市販認可が意図され、かつヒトFc領域を含む抗体がヒトに投与されると考えられるシナリオに、より高い移転可能性を有するより正確な前臨床試験データにつながる。本態様によるドメイン移植抗体の略図が図3に示され、図中、VHおよびVL(陰付き)はヒト起源であり、CH2 、CH3、およびヒンジ領域は非ヒト種由来である。鎖間ジスルフィド結合が点線で描かれ、グリコシル化部位が小さな六角形で描かれている。
本発明のさらなる態様によると、ドメイン移植抗体は、該非ヒト種由来の第一抗体重鎖定常領域(CH1)、および該非ヒト種由来の抗体軽鎖定常領域(CL)をさらに含む。従って、本発明の本態様によるドメイン移植抗体は、N→Cで、VH、第一抗体重鎖定常領域(CH1)、抗体ヒンジ領域、第二抗体重鎖定常領域(CH2)、および第三抗体重鎖定常領域(CH3)を含む抗体重鎖;ならびに、N→Cで、VLおよび抗体軽鎖定常領域(CL)を最小限含んでもよい。そのため、本発明の本態様によるドメイン移植抗体は、VHおよびVLがヒト起源であり、かつ、すべての他の領域が同じ非ヒト種、すなわち、前臨床試験の目的のために使用される非ヒト動物種由来である、完全なイムノグロブリン分子であってもよい。任意の定常領域を割愛していない特に好ましいドメイン移植抗体の略図が図1に示され、図中、VHおよびVL(陰付き)はヒト起源であり、すべての他の領域は非ヒト種由来である。鎖間ジスルフィド結合が点線で描かれ、グリコシル化部位が小さな六角形で描かれている。
または、本発明の本態様によるドメイン移植抗体は、CH3領域を割愛するが、CH1およびCL領域を含んでもよい。実質的に、そのようなドメイン移植抗体は、すべての可変領域がヒト起源であり、かつ、すべての他の領域が同じ非ヒト種、すなわち、前臨床試験の目的のために使用された非ヒト動物種由来である、CH3領域が切断された完全な抗体となる。しかしながら、CH3領域が存在するか否かにかかわらず、抗体のCH1およびCL領域は共にペアとなり、そのため、CH1領域を本発明の本態様によるドメイン移植抗体に組み込む際は、CL領域もまた組み込まれるべきである。逆に、CL領域を本発明の本態様によるドメイン移植抗体に組み込む際は、CH1領域もまた組み込まれるべきである。
CH1およびCL領域を有するがCH3領域を有しないドメイン移植抗体の略図が図4に示され、図中、VHおよびVL(陰付き)はヒト起源であり、CH2、CH1、CLおよびヒンジ領域は同じ非ヒト種、すなわち、前臨床試験の目的のために使用される非ヒト動物種由来である。鎖間ジスルフィド結合が点線で描かれ、グリコシル化部位が小さな六角形で描かれている。
抗体軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖として存在することが当技術分野において公知である。本発明の文脈において、ドメイン移植抗体の抗体軽鎖成分は、κタイプであることが好ましい。
本発明の本態様において、CH3領域、ならびにCH1およびCL領域を追加的に組み込むことが特に好ましい;すなわち、VHおよびVLがヒト起源であり、かつ、すべての他の領域(CH1、CL、CH2、CH3およびヒンジ)が同じ非ヒト種、すなわち、前臨床試験の目的のために使用される非ヒト動物種由来である完全なイムノグロブリン(図1に概略的に示されている)が特に好ましい。このように、すなわち完全な抗体としてドメイン移植抗体を形成させることには、いくつかの特定の利点が存在する。第一に、前記態様の下で既に上記で説明されたように、試験動物種のCH3領域の組み込みにより、試験動物におけるFc-γ-Rによる認識が可能になり、これは、ヒトFc領域を有する抗体をヒトに投与する際に観察される認識に対し実質的により一致する可能性がある。しかしながら、完全なドメイン移植抗体、すなわち市販認可を意図したIg抗体と比較していずれの領域も割愛されていないドメイン移植抗体はまた、市販認可を意図した対応する抗体と非常に類似した分子量を有すると考えられる。抗体の分子量は、一般に、そのような抗体がヒトおよび試験動物の体から同様に排出される速度に関連している;より大きな抗体は、一般に、より小さな抗体よりゆっくり体から除去されると考えられる。このことは、本発明の本態様による完全なドメイン移植抗体を用いて得られた前臨床データが、本明細書の上文で説明されたような安全性および有効性に関してだけでなく、薬物動態に関しても高度に匹敵する情報を潜在的に可能にすることを意味する。
本態様において特に好ましいのは、SEQ ID NO: 2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖、および、SEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を有するドメイン移植抗体である。SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4は、それぞれSEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 3に記載のDNA配列によってコードされてもよいが、当業者は、遺伝コードの縮重のために、SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4のそれぞれのアミノ酸配列をコードする可能性のある多くの潜在的なDNA配列が存在することを理解すると考えられる。そのような任意のポリヌクレオチド配列として、例えば、それぞれSEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4に記載のアミノ酸配列をコードする任意のDNA配列が、本発明の本態様に包含されると考えられるべきである。
それぞれSEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4によって与えられる抗体重鎖および軽鎖が互いに会合する際、広い範囲のヒト上皮癌上に発現する分子であり、かつ、非癌性状態よりも癌性状態においてより接触可能になるヒト細胞表面分子EpCAMに特異的な抗体を形成する。本ドメイン移植抗体は完全な抗体であり、このことは、その重鎖がVH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3領域を含み、一方、その軽鎖がVLおよびCL領域を含むことを意味する。VHおよびVL領域はヒト由来(上記で定義されたような)であり、かつ、公知の抗EpCAM抗体であるAnti-EpCAM(WO 98/46645参照)に含まれ、一方、すべての定常領域およびヒンジ領域はマウス起源であり、具体的には公知の抗CD3抗体であるOKT3(例えばUS 5885573参照)におけるIgG2aアイソタイプである。以下において、SEQ ID NO: 2および4に記載のアミノ酸を有するポリペプチドの組み合わせによって与えられるドメイン移植抗体は、ドメイン移植Anti-EpCAM、またはdgAnti-EpCAMと称される。
本発明のさらなる態様によると、ヒト起源のVHおよびVLは、ヒト由来であるかまたはヒト化されていてもよい。
本態様において、かつ上記で簡単に説明されたように、「ヒト由来」という用語は、ヒトの体においてポリペプチドまたはポリヌクレオチドいずれかの形態で見られるような抗体の一部を表わすと理解されるべきである。例えば、「ヒト由来の」VHは、ヒトB細胞(このヒトB細胞がインビボまたはインビトロに存在するか否かにかかわらず)の表面上に表示された抗体に含まれるようなVHであってもよいし、または、例えば、当技術分野において公知であるように、ヒトB細胞、例えばヒトIgD細胞からPCRを介して得られるVHおよびVL遺伝子の一つのライブラリー、または複数のライブラリーに基づくファージディスプレイ技術を用いて、そのようなヒトB細胞中に存在するmRNAを逆転写することによって得られたcDNAの発現から生じてもよい(Raum, T., et al. (2001) Cancer Immunol. Immunother. 50, 141-50)。または、「ヒト由来の」VHは、生殖系列抗体遺伝子、または体細胞超変異により任意の程度にインプリントされた生殖系列抗体遺伝子の発現によって得られてもよい。ヒト由来のVHまたは/およびVLがこれらの領域をコードするヒト生殖系列配列に順番通り対応する程度が増加するほど、これらの遺伝子の供給源として使用されたヒト細胞は造血発生において多能性造血幹細胞に近くなる。逆に、ヒト由来のVHおよび/またはVL領域を得るために使用されたヒト細胞が造血発生において多能性造血幹細胞から遠ければ遠いほど、得られたVHおよびVL配列が対応するヒト生殖系列配列と異なっていることがより予想されうる。これは、造血が進行し、かつリンパ球系の個々の細胞が成熟するにつれて、それらが体細胞超変異の程度の増加を免れないためである。そのような細胞は、抗原への改善された結合を生じるためにネガティブおよびポジティブ選択に従って再配列された抗体可変領域中へ長期に渡って変異が導入される過程である「体細胞超変異のインプリント」を有すると言われる。この過程は当技術分野において公知であり、"ImmunoBiology" Fifth Edition; Charles Janeway, Paul Travers, Mark Walport and Mark Shlochik; Published by Garland Publishing, 2001の4〜9節、ならびにNeuberger & Milstein (1995) Curr.Opin.Immunol. 7, 248-54に詳細に記載されている。
本発明の本態様において、「ヒト化された(humanized)」、「ヒト化(humanization)」という用語、または文法的に関連するそれらの変形物は、少なくとも一つの相補性決定領域(「CDR」)が非ヒト抗体またはその断片由来であるVHまたはVL領域を称するように、互換的に使用される。とりわけCDR移植による抗体のヒト化について、方法は当技術分野において周知である(例えば、US 5,225,539参照)。CDR移植ヒト化抗体は、非ヒト動物、しばしばマウスなどのげっ歯類、または対応するハイブリドーマ細胞において産生される抗体由来のCDR領域を含む抗体である。これらのCDR領域は、ヒト抗体またはヒト抗体産生細胞が起源であるFR内に配置される。結果として生じる可変領域は、CDRが得られた非ヒト抗体と同じく、抗原に結合する能力を示す。同時に、本可変領域は、ヒトFR領域中に含まれるヒトアミノ酸配列が優勢であるために、非ヒト抗体の対応する可変領域よりもヒトにおける免疫原性がずっと低いと考えられる。当技術分野において公知であるように、さもなければヒトFR領域に存在する特定のアミノ酸を、CDRが得られた非ヒト抗体におけるその/それらの位置のアミノ酸と同じであるように変異させることが時には必要である。そのような変異は、今のヒト化抗体における非ヒトCDRの適当なフォールディング、それに伴って適当な抗原認識を確実にするために必要である可能性がある(例えば、US 6407213およびUS 5859205に記載されているように)。さもなければヒトFRに存在する追加的な変異を伴うおよび伴わない両方のCDR移植VHおよびVL領域が、本発明の本態様の意義内で「ヒト化された」とみなされるべきである。また、本発明の本態様において、FR内の追加的な変異が存在するか否かにかかわらず、一つの非ヒトCDRのみがヒトFR中に置換されたVHおよび/またはVLは、「ヒト化された」と考えられるべきであることが構想される。
本発明の抗体の好ましい態様によると、ヒト起源の抗体重鎖可変領域および軽鎖可変領域は独立してヒト由来であるかまたはヒト化されている。
本発明のさらなる態様によると、非ヒト種は、げっ歯類種、非ヒト霊長類種、ウサギ、ビーグル犬、ブタ、ミニブタ、ヤギ、またはヒツジであってもよい。そのため、CH2、ヒンジ領域、ならびに、場合によっては、CH3、CH1、および/またはCL領域は、これらの種のうちの一つ由来であってもよい。本発明のドメイン移植抗体は、特定の試験動物への投与用であるため、ドメイン移植抗体に含まれるすべての非可変領域の起源が同じ非ヒト種の動物であることが最も道理にかなう。特に好ましいげっ歯類種は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはアレチネズミである。げっ歯類種がマウスである際、ドメイン移植抗体に含まれるすべての定常領域、すなわち、CH2、ヒンジ領域、ならびに、場合によっては、CH3、CH1、およびCL領域は、γアイソタイプであることが特に好ましい。そのため、結果として生じる好ましいドメイン移植抗体はIgGである。マウスにおいて、γサブクラスは、γ1、γ2a、γ2b、およびγ3に細分される。特に好ましいドメイン移植抗体は、サブクラスγ2aに属する定常領域を含む。マウスサブクラスγ2a(すなわちIgG2a)は、その大部分が公知であるヒトIgGのタイプであるヒトサブクラスγ1(すなわちIgG1)に、最も密接に対応する。最も公知の抗体医薬は、IgG1タイプである。そのため、マウスIgG2aタイプのドメイン移植抗体は、市販認可が求められているヒトIgG1治療に対して高い前臨床比較可能性の利点を有する。
本発明のさらなる態様によると、非ヒト霊長類種は、チンパンジー、カニクイザル、アカゲザル、ヒヒ、またはマーモセットであってもよい。上記で記された理由のために、前臨床試験のための試験動物種としてのチンパンジーの使用を回避することが有利であることが多いが、特定の場合には、チンパンジーの使用が指示されうる。ドメイン移植抗体に含まれるすべての定常領域、すなわち、CH2、ヒンジ領域、ならびに、場合によっては、CH3、CH1、およびCL領域は、カニクイザルまたはアカゲザル由来であることが特に有利である。これらの種は、人間への相対的な系統発生的近接のために、前臨床試験における使用について許容された動物である。
本発明のさらなる態様によると、ヒト細胞表面分子は、病理学的状態において排他的にもしくは過剰に発現されており、または、非病理学的状態においてよりも病理学的状態において、特異的抗体による認識のための接触がより容易である。本発明の本態様において使用される「病理学的状態」は、健康な状態と比較して機能不全または疾患の状態として理解されるべきである。疾患または機能不全の状態は、内部または外部要因のいずれかによって引き起こされてもよい。内部要因の非限定的な例は、癌におけるような過剰な細胞増殖および組織増殖であってもよい。外部要因の非限定的な例は、罹患した系にとって外来の生物、例えば、細菌、ウイルス、または寄生生物により引き起こされる感染であってもよい。健康な個体において特定のタイプの細胞上である程度通常に発現しているヒト細胞表面分子が、個体が病理学的状態にある際に、これらの細胞上でずっと高い程度で発現することが多い。本ヒト細胞表面分子を発現する細胞が病理学的状態の存在および発生に寄与していると仮定すると、駆除のためにそのような細胞を標的とする抗体薬剤によってこの高発現が治療的に活用されうる。病理学的状態の他のタイプにおいて、通常接触不可能なままであるまたは接触可能性が限定されているヒト細胞表面分子が、病理学的状態において特異的抗体の結合に対して(より)接触可能になる。そのようなヒト細胞表面分子の例は、細胞‐細胞接着に関与する分子であり、健康な個体においては互いに固い結合のままであるが、癌においては、癌性組織構造の崩壊のために接触可能になる。上記で説明されたように、この(増加した)接触可能性が、駆除のためにそのような細胞を標的とする抗体薬剤によって治療的に活用されてもよい。
本発明の好ましい態様において、病理学的状態は増殖性疾患、好ましくは腫瘍性疾患である。本発明の本態様において、「腫瘍性疾患」は、増加した細胞増殖および組織の異常な増殖を含む疾患として理解されるべきであり;この増殖は、良性または悪性の性質であってもよい。この増殖が悪性の性質である、すなわち、腫瘍性疾患が癌性疾患であることが、特に好ましい。そのような疾患は、異常な組織増殖だけでなく、健康な組織の破壊を伴う、この異常な増殖の周囲または遠く離れた健康な組織への浸潤(後者の場合は転移を介した)によって特徴付けられる。
本発明のさらに好ましい態様によると、癌性疾患におけるヒト細胞表面分子は、ヒトEpCAMまたはヒトCD25である。
本発明のさらなる態様によると、病理学的状態は病原体関連疾患である。上記で説明されたように、「病原体関連疾患」は、本発明の本態様において、罹患した個体にとって外来の生物によって引き起こされるまたは悪化される疾患として理解されるべきである。例えば、そのような外来の生物は、ウイルス、細菌または寄生生物であってもよく、後者は単細胞(例えば、マラリア原虫タイプの感染におけるような)、または多細胞(例えば、線虫の感染におけるような)であってもよい。好ましい病原体関連疾患は、ウイルス疾患またはレトロウイルス疾患である。好ましいウイルス疾患は、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはエプスタイン‐バーウイルス(EBV)によって引き起こされる。好ましいレトロウイルス疾患は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)またはヒトT細胞白血病ウイルス2(HTLV-2)によって引き起こされる。
本発明のまた好ましい態様によると、病理学的状態は炎症性疾患である。本発明の本態様において、「炎症性疾患」は、刺激、創傷、または感染の結果として体の領域において産生される腫脹、赤み、熱、および/または痛みによって特徴付けられる、または引き起こされる条件として理解されるべきである。本発明の本態様において、ヒト細胞表面分子は、ヒト膜結合型IgE分子であってもよい。炎症性疾患に関する本発明の本態様において、ヒト細胞表面分子の好ましい種類は、ケモカイン受容体、サイトカイン受容体、またはC型レクチン受容体に属するものである。特に好ましくは、サイトカイン受容体は、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体、またはヒトCCR5である。特に好ましいC型レクチン受容体は、ヒトNKG2Dである。
本発明のさらなる態様によると、病理学的状態は自己免疫疾患である。本発明の本態様において、「自己免疫疾患」は、体の免疫系が、体の組織を外来であると考えて誤って攻撃し、かつ破壊する条件として理解されるべきである。本発明の本態様において、ヒト細胞表面分子は、ヒトICOS、ヒトCTLA4、ヒトPD1、ヒトCCR8、またはヒトCCR3であってもよい。
本発明のさらなる局面は、本明細書の上文で説明されたようなドメイン移植抗体を含む薬学的組成物である。本発明の本局面に従うと、「薬学的組成物」という用語は、哺乳動物患者、好ましくはヒト患者への投与のための組成物に関する。好ましい態様において、薬学的組成物は、非経口注射または注入のための組成物を含む。そのような非経口注射または注入は、例えば、皮内、皮下、筋肉内、および/または腹腔内注射または注入の形態において、再吸収過程を利用してもよい。または、そのような非経口注射または注入は、再吸収過程を回避してもよく、例えば、心臓内、動脈内、静脈内、腰椎内、および/または髄腔内注射または注入の形態であってもよい。別の好ましい態様において、薬学的組成物は、皮膚を介した投与のための組成物を含む。皮膚を介した投与の一つの例は、薬学的組成物が、例えば、皮膚への溶液、懸濁液、乳液、泡、軟膏(unguent)、軟膏(ointment)、ペースト、および/または貼付剤として適用される皮膚上投与である。または、薬学的組成物の投与は、一つまたは複数の粘膜を介して実施されてもよい。例えば、投与は、頬側、舌側、または舌下、すなわち、口および/または舌の粘膜を介してもよく、例えば、錠剤、舐剤、糖衣錠(すなわちドラジェ)として、および/または、うがいのための溶液として適用されてもよい。または、投与は経腸的、すなわち、胃および/または腸管の粘膜を介してもよく、例えば、錠剤、糖衣錠(すなわちドラジェ)、カプセル、溶液、懸濁液、および/または乳液として適用されてもよい。または、投与は直腸内であってもよく、例えば、坐薬、直腸カプセル、および/または軟膏(ointmentまたはunguent)として適用されてもよい。または、投与は鼻腔内であってもよく、例えば、滴剤、軟膏(ointmentまたはunguent)、および/またはスプレーとして適用されてもよい。または、投与は肺性、すなわち、気管支および/または肺胞の粘膜を介してもよく、例えば、エアロゾル、および/または吸入剤として適用されてもよい。または、投与は結膜性であってもよく、例えば、点眼薬、眼軟膏、および/または眼洗浄剤(eye rinse)として適用されてもよい。または、投与は、尿生殖路の粘膜を介して実施されてもよく、例えば、膣内または尿道内であってもよく、例えば、坐薬、軟膏、および/または杆剤(stylus)として適用されてもよい。上記の投与代替案は、相互に排他的ではなく、かつ、それらの任意の数の組み合わせが、有効な治療レジメンを構成してもよいことが、理解されるべきである。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、または賦形剤をさらに含んでもよい。適当な薬学的担体の例は、当技術分野において周知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水の乳液などの乳液、種々のタイプの湿潤剤、および無菌溶液を含む。そのような担体を含む組成物は、周知の通常の方法によって製剤化され得る。これらの薬学的組成物は、適当な用量で対象に投与され得る。投与レジメンは、主治医および臨床学的因子によって決定されると考えられる。当医学技術分野において周知であるように、任意の一人の患者のための投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、全身の健康、および同時に投与される他の薬物を含む、多くの因子に依存する。例えば、非経口投与のための調製物は、無菌の水性または非水性溶液、懸濁液、乳液、およびリポソームを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、および、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体は、水、アルコール性/水性溶液、乳液、または懸濁液を含み、食塩水および緩衝媒質を含む。一般的な非経口投与に適した賦形剤は、塩化ナトリウム溶液、リンガーブドウ糖(Ringer's dextrose)、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液(lactated Ringer's)、または固定油を含む。静脈内または動脈内投与に適した賦形剤は、流体および栄養補給剤、電解質補給剤(リンガーブドウ糖に基づくものなど)などを含む。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどなどの、保存料および他の添加物もまた存在してもよい。加えて、本発明の薬学的組成物は、例えば、好ましくはヒト起源の血清アルブミンまたはイムノグロブリンなどの、タンパク質性担体を含んでもよい。本発明の薬学的組成物は、薬学的組成物の意図された使用に依存して、ドメイン移植抗体(本発明において説明されるような)に加えて、さらなる生物学的な活性剤を含んでもよいことが構想される。そのような薬剤は、胃腸系に作用する薬物、細胞増殖抑制剤として作用する薬物、高尿酸血症を防ぐ薬物、免疫反応を阻害する薬物(例えば、コルチコステロイド)、炎症応答を調節する薬物、循環器系に作用する薬物、および/または、当技術分野において公知であるサイトカインなどの薬剤であってもよい。
本発明のさらなる局面は、本発明のドメイン移植抗体の少なくとも重鎖もしくは軽鎖、または両方をコードする発現ベクターに関する。そのような発現ベクターは、
・(a)ヒト起源の重鎖可変領域、(b)非ヒト種由来の第二抗体重鎖定常領域(CH2)、および(c)該非ヒト種由来の抗体重鎖ヒンジ領域、ならびに任意で、(d)該非ヒト種由来の第三抗体重鎖定常領域(CH3)、および/もしくは(e)該非ヒト種由来の第一抗体重鎖定常領域(CH1)
をコードする第一のコード配列;ならびに/または
・ヒト起源の所望の抗体軽鎖可変領域(VL)、および任意で、該非ヒト種由来の抗体軽鎖定常領域(CL)
をコードする第二のコード配列
を含み、抗体重鎖可変領域および軽鎖可変領域は共にヒト細胞表面分子に対する結合部位を規定する。
本発明の本態様における「コード配列」という用語は、対応するアミノ酸配列に翻訳された際に、ドメイン移植抗体に含まれる可変および定常領域の組み合わせをもたらすポリヌクレオチド配列を意味するとして理解されるべきである。本発明の本局面による「コード配列」は、DNAまたはRNAの形態にあってもよい。DNAは、イントロンを含むか、または除外していてもよく、cDNA(イントロンを除外している)はコード配列の特に好ましい形態である。
具体的には、第一のコード配列は、最小限、ヒト起源のVH、非ヒト種由来のCH2領域、および同じ非ヒト種由来の抗体ヒンジ領域をコードするポリヌクレオチドを含む。任意で、本第一のコード配列は、CH3およびCH1領域の一つまたは両方をコードするポリヌクレオチドを追加的に含んでもよい。従って、第一のコード配列は、IgGの抗体重鎖の一部として通常存在する、本発明のドメイン移植抗体に存在する任意の抗体領域をコードするポリヌクレオチドを含む。
第二のコード配列は、最小限、ヒト起源のVLをコードするポリヌクレオチドを含む。任意で、本第二のコード配列は、第一のコード種において任意の抗体定常領域をコードするポリヌクレオチドと同じ非ヒト種由来のCL領域をコードするポリヌクレオチドを追加的に含んでもよい。従って、第二のコード配列は、IgGの抗体軽鎖の一部として通常存在する、本発明のドメイン移植抗体に存在する任意の抗体領域をコードするポリヌクレオチドを含む。
ドメイン移植抗体自体の文脈において上記で説明されたように、第二のコード配列中に抗体CL領域をコードするポリヌクレオチドを含む際には、第一のコード配列中にCH1配列をコードするポリヌクレオチドを同様に含むことが必要であり、逆もまた同様である。そのため、結果として生じるドメイン移植抗体は、CH1およびCL領域を含むと考えられる。
一般に、第一のコード配列は、ドメイン移植抗体のすべての重鎖由来領域をコードすると考えられ、一方、第二のコード配列は、ドメイン移植抗体のすべての軽鎖由来領域をコードすると考えられる。その後、第一および第二のコード配列は、少なくとも一つの発現ベクター中に組み込まれる。しかしながら、第一および第二のコード配列の二つの発現ベクター中への別々の組み込みが、それを行うことによって、結果的に生じるドメイン移植抗体の重鎖および軽鎖由来成分の発現の別々の制御が可能になるために、一般に最も有利であると考えられる。
本発明の本局面内で、発現ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスベクターであってもよい。レトロウイルスベクターは、複製可能または複製欠損であってもよい。後者の場合、ウイルス増殖は、一般に、補完的な(complementing)宿主/細胞においてのみ起きると考えられる。
本発明の発現ベクターは、宿主における増殖のための選択可能なマーカーを含んでもよい。一般に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿もしくは塩化ルビジウム沈殿などの沈殿、または荷電脂質との複合体、またはフラーレンなどの炭素ベースのクラスターにおいて導入される。ベクターがウイルスである場合には、宿主細胞への適用に先立って、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでパッケージされてもよい。
一つの態様において、第一および第二のコード配列は、原核細胞または真核細胞における発現を可能にする発現制御配列と機能的に連結される。上記で説明されたように、該第一および第二のコード配列の発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの、これらの配列の転写の可能性を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を確実にする制御要素が、当業者に周知である。それらは通常、転写の開始を確実にする制御配列、ならびに任意で、転写の終結および転写物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。追加的な制御要素は、転写ならびに翻訳のエンハンサーを含んでもよい。原核生物宿主細胞における発現を許容する可能な制御要素は、例えば、大腸菌(E. coli)におけるlac、trp、またはtacプロモーターを含み、真核生物宿主細胞における発現を許容する制御要素の例は、酵母におけるAOX1もしくはGAL1プロモーター、または、哺乳動物および他の動物細胞におけるCMV-、SV40-、RSV(ラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus))-プロモーター、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサー、もしくはグロビンイントロンである。そのような制御要素はまた、転写の開始を担当する要素のほかに、ポリヌクレオチドの下流にある、SV40-ポリA部位またはtk-ポリA部位などの転写終結シグナルを含んでもよい。本文脈において、岡山‐バーグcDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pSPORT1(GIBCO BRL)などの適当な発現ベクターが、当技術分野において公知である。当業者に周知である方法が、組換えウイルスベクターを構築するために使用され得る;例えば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y. およびAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)に記載されている技術を参照されたい。
さらなる態様によると、第一および第二のコード配列は、同じまたは別々のベクター上に存在する。これらの同じまたは別々のベクターは、宿主細胞、例えば、原核生物宿主細胞(大腸菌細胞など)、または、好ましくは、真核生物宿主細胞(哺乳動物、酵母、または昆虫細胞など)中に組み込まれてもよい。哺乳動物細胞、例えばCHO細胞において発現が実行されるのが特に好ましい。本宿主細胞は、好ましくは無血清条件の下で、dgAnti-EpCAMなどのドメイン移植抗体を分泌するように培養されてもよい。培養の後、分泌されたドメイン移植抗体は単離されて、患者への投与に適した薬学的組成物へと製剤化されてもよい。
本発明の本局面の特に好ましい態様によると、第一のコード配列は、SEQ ID NO: 1に記載のヌクレオチド配列を含み、第二のコード配列は、SEQ ID NO: 3に記載のヌクレオチド配列を含む。ここで、SEQ ID NO: 1を含む第一のコード配列が第一のベクター上に存在し、一方、SEQ ID NO: 3を含む第二のコード配列が、別の第二のベクター上に存在することが特に好ましい。好ましくは、これらの第一および第二のベクターは、好ましくは無血清条件の下で、CHO宿主細胞系のような哺乳動物宿主細胞系における発現に適した発現ベクターである。
本発明の代替的な態様は、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。さらに、本発明は、本発明のドメイン移植抗体を産生する方法を提供する。該方法は、該宿主細胞の増殖に適した条件の下で本発明の宿主細胞を培養する段階を含む。本宿主細胞は、哺乳動物細胞、より好ましくはCHO細胞であることが好ましい。培養の段階が無血清培地中で行われることが、本方法にとって好ましい。該ドメイン移植抗体を単離する段階をさらに含むことがまた好ましい。より好ましくは、本方法は、該ドメイン移植抗体の精製をさらに含む。本方法の好ましい態様によると、該ドメイン移植抗体は、追加的な段階において薬学的組成物へと製剤化される。
さらなる代替的な態様において、本発明は、本発明のドメイン移植抗体または本発明の本方法によって産生可能なドメイン移植抗体を含む、薬学的組成物に関する。
本発明のさらなる局面は、本明細書の上文で説明されたような、または本明細書の上文で説明されたように取得可能な薬学的組成物またはドメイン移植抗体のインビボ活性を測定する方法に関し、ここで該方法は、ヒト細胞表面分子を発現する非ヒト動物へ組成物または該ドメイン移植抗体を投与する段階、および該組成物または該ドメイン移植抗体のインビボ活性を測定する段階を含み、該ドメイン移植抗体の少なくとも第二抗体重鎖定常領域(CH2)および抗体重鎖ヒンジ領域が、該ドメイン移植抗体または組成物が投与される非ヒト動物と同じ種の非ヒト動物由来である。
本発明の本局面は、市販認可を意図した抗体がヒト患者に投与される際に予想される安全性および有効性を反映すると考えられるドメイン移植抗体についての前臨床試験データの取得において、特に有利である。これらの前臨床データのヒトの症例に対する適用性が高いことの理由は、本明細書の上文に記されている。
本発明の本局面の一つの態様によると、非ヒト動物は、トランスジェニック非ヒト動物であることが有利である。本態様における「トランスジェニック」は、本非ヒト動物が、少なくとも一つの細胞の亜集団上に、抗体薬物候補、よって本発明のドメイン移植抗体が特異的に結合するヒト細胞表面分子を発現するように遺伝学的に改変されていることを意味する。トランスジェニック動物は、産生が時に高コストでありかつ時間がかかるが(上記参照)、該ヒト細胞表面分子を発現する外来の細胞株を事前に注射することなく、前臨床試験において使用できるという利点を有する。そのようなトランスジェニック動物は、本発明のドメイン移植抗体が特異的に結合するヒト細胞表面分子を発現する能力に関してのみ改変されているため、そのようなトランスジェニック動物の免疫系は、通常完全に有能のままである。これは、トランスジェニック動物が、T細胞、B細胞、およびNK細胞、ならびに、免疫系の抗体媒介活性に関与する他のエフェクター細胞の完全な集団を有することを意味する。結論として、そのようなトランスジェニック動物は、産生が時に幾分高コストではあるが、市販認可を意図した対応する抗体薬物候補がヒト患者に投与される際の予測となるであろう前臨床安全性および有効性データを全般的に産生すると考えられる。
本発明の本局面の特に好ましいさらなる態様によると、非ヒト動物は、トランスジェニックでない免疫応答性非ヒト動物であることが有利である。免疫応答性非ヒト動物は、トランスジェニック非ヒト動物と同様に、T細胞、B細胞、およびNK細胞、ならびに、免疫系の抗体媒介活性に関与する他のエフェクター細胞の完全な集団を有する。しかしながら、トランスジェニック非ヒト動物とは異なり、免疫応答性非ヒト動物は、本発明のドメイン移植抗体が結合するヒト細胞表面分子を内因的に発現していない。そのため、前臨床試験を行うためには、本ヒト細胞表面分子を免疫応答性非ヒト動物中に導入することが最初に必要である。最も頻繁には、ヒト細胞表面分子を発現する少なくとも一種類の細胞または細胞株を、該免疫応答性非ヒト動物中に注射することによって、これが達成される。その後、動物が免疫応答性であるためにしばしば起こることであるが、試験動物が注射された細胞を外来細胞として拒絶する前に、前臨床試験測定が迅速に行われる。
本発明の本局面の一つの態様において、非ヒト動物は、げっ歯類種、非ヒト霊長類種、ウサギ、ビーグル犬、ブタ、ミニブタ、ヤギ、またはヒツジである。非ヒト動物がげっ歯類種である際、げっ歯類種の動物は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはアレチネズミであることが特に好ましい。げっ歯類種の動物がマウスである際、しばしばそうであると考えられるように、本マウスは、トランスジェニックマウス(本明細書の上文で説明されたような)、免疫応答性マウス(本明細書の上文で説明されたような)、またはヌードマウス、例えば、重症複合免疫不全(severe combined immunodeficient(「SCID」))マウスであってもよい。そのようなマウスは、前臨床試験の目的のための共通のモデルであり(Schultz et al. (1995) J. Immunol. 154, 180-91)、B細胞およびT細胞のレベルは完全に、または実質的に減少しているが、NK細胞および他のエフェクター細胞は存在するままである、重度に欠陥がある免疫系を有する。トランスジェニックマウスと同様、SCIDマウスは、本発明のドメイン移植抗体が特異的に結合するヒト細胞表面分子を発現する少なくとも一つの細胞集団を注射される必要がある。しかしながら、トランスジェニックマウスとは異なり、SCIDマウスに機能する免疫系が実質上存在しないことが、そのような注射された細胞が外来物として拒絶されるのを妨げる。これにより、有意義な前臨床試験データが回収され得る時間が延長される。SCIDラットもまた先行技術において公知であり、本発明の本態様において非ヒトげっ歯類として使用されてもよい(Dekel et al. (1997) Transplant Proc. 29, 2255-6)。
本発明の本局面のさらなる態様によると、非ヒト霊長類種の動物は、チンパンジー、カニクイザル、アカゲザル、ヒヒ、またはマーモセットであり、カニクイザルが特に好ましい。
本方法のさらなる態様によると、測定されるインビボ活性は、インビボ細胞障害性である。例えば、インビボ細胞障害性は、本発明のドメイン移植抗体により媒介されるADCC(説明については上記参照)の形態を取ってもよい。
本発明のさらなる局面は、ヒト起源の抗体の機能的インビボ生物活性を評価するための、本明細書の上文で説明されたようなドメイン移植抗体、または本明細書の上文で説明されたような組成物の使用に関し、ここでドメイン移植抗体およびヒト起源の抗体は、(a)同一のVHおよびVL領域を有し、かつ(b)同じヒト細胞表面分子に結合する。本発明の本局面において使用される「ヒト起源の抗体」は、ヒト患者への投与のために市販認可が意図され、そのために、特に、かつドメイン移植抗体とは対照的に、定常領域においてヒト起源の配列を含む抗体薬物候補として理解されるべきである(「ヒト起源の」という用語は、VHおよびVL領域の文脈において上記で説明されている。本明細書の上文の「ヒト起源の」という定義は、本発明の本局面内で説明されたような市販認可を意図した抗体薬物候補に同様にあてはまる)。従って、「ヒト起源の抗体」とは、本発明のドメイン移植抗体が使用される前臨床試験から恩恵を受けるべき抗体である。最も広い意味において、ドメイン移植抗体は、前臨床動物試験において代替抗体として使用されるべきであり、その結果は、対応する非代替抗体(「ヒト起源の抗体」)がヒト患者に投与された際の本非代替抗体の特性を高度に予測する。
本使用のさらなる態様によると、測定されるインビボ生物活性は、インビボ細胞障害性である。
本発明は、次に、添付の図面および以下の非限定的な実施例によって例証される。
実施例
全般
以下の実施例は、本発明の種々の局面を例証するように意図されたものであり、決して本発明の範囲を限定するものではない。全般に、本実施例は、ヒトEpCAM分子に結合する完全なヒトIgG1抗体から開始する、本発明の一つの態様によるドメイン移植抗体の構築および評価を説明する。この完全なヒトIgG1抗体は「Anti-EpCAM」と称され、以前に記載されている(Raum et al. (2001) Cancer Immunol. Immunother. 50, 141-50)。Anti-EpCAMに対応するドメイン移植抗体は、以下本明細書において「dgAnti-EpCAM」と称される。dgAnti-EpCAMは、VH、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、VL、およびCL領域、すなわち、Anti-EpCAMも存在するすべての領域を含む。dgAnti-EpCAMは、VHおよびVL領域のみがヒト起源であり(Anti-EpCAMにおけるのと同じであり)、一方、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCL領域はすべて公知のマウスIgG2a抗体OKT3由来である点で、Anti-EpCAMと異なっている。dgAnti-EpCAMの重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 2に記載され、dgAnti-EpCAMの軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 4に記載されている。
実施例1:dgAnti-EpCAMの構築
細胞株
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)dhfr-細胞は、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSMZ, Braunschweig, Germany)から取得し、KATO IIIヒト胃癌細胞株は、European Collection of Cell Cultures(ECACC, Salisbury, UK)から取得した。CHO dhfr-細胞は、採取前に、37℃でローラーボトルにおいて、HyClone培養培地(HyClone, Logan, UT, USA)を用いて7日間増殖させた。KATO III細胞は、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum(FBS))(Invitrogen, Karlsruhe, Germany)を添加したRPMI 1640培地(Invitrogen, Karlsruhe, Germany)中で、37℃で、5% CO2インキュベーターにおいて培養した。EpCAMがトランスフェクションされた細胞株B16F10/EpCAM(クローン3E3)は、Micrometが生成した。簡潔には、親細胞株B16F10にpEF-ADA-EpCAMをトランスフェクションし、AAU(アデノシン/アラノシン/ウリジン)およびdcF(デスオキシコホルマイシン(desoxicoformycine))の量を増加して選択した。EpCAM強陽性クローン(クローン3E3)を、限界希釈法によって選択した。
dgAnti-EpCAMの構築および確認
Anti-EpCAMの生成および産生は、以前に記載されている(Raum et al. (2001) Cancer Immunol. Immunother. 50, 141-50)。dgAnti-EpCAMの生成のために、ヒトCD3εに対するマウスIgG2a抗体を発現するOKT3ハイブリドーマ細胞より単離したRNAから、逆転写PCRによって定常領域をクローニングした。cH1-cH3ドメインの増幅のために、マウスIgG2aの5'末端にハイブリダイズするプライマー(SEQ ID NO: 5)を設計した。このプライマーは、HD69 vHの3'末端に相補的な連続した20ヌクレオチドを内部に有していた。第二のプライマー(SEQ ID NO: 6)は、終止コドンおよびXba I制限エンドヌクレアーゼ(restriction endonuclease(RE))部位を含み、マウスIgG2a配列の3'末端に結合した。マウスcκ配列の増幅のためには、マウスcκ配列の5'末端に結合し、Anti-EpCAM vLの3'領域にハイブリダイズする20ヌクレオチドの突出部を内部に有するプライマー(SEQ ID NO: 7)を使用した。アンチセンスプライマー(SEQ ID NO: 8)は、終止コドンおよびXho I RE部位をコードして、マウスcκの3'末端にハイブリダイズした。Anti-EpCAMのvHは、5' IgGシグナルペプチドにハイブリダイズし、かつEcoR I RE部位を内部に有するプライマーSEQ ID NO: 9、および、vH HD69の3'末端に結合し、かつ5'マウスIgG2a cH1配列に相補的な20ヌクレオチド配列の突出部を有するプライマーSEQ ID NO: 10を用いて、発現ベクターpEF-DHFR HC HD69から増幅した。Anti-EpCAM vLは、それに応じて、プライマーSEQ ID NO: 9、および、HD69 vLの3'末端にハイブリダイズし、かつマウスcκの5'末端に結合する突出部を含むプライマーSEQ ID NO: 11を用いて増幅した。最後に、オーバーラッピングPCRによって対応するPCR断片をアセンブルすることにより、重鎖および軽鎖配列を生成した。重鎖および軽鎖について、それぞれ、SEQ ID NO: 9/ SEQ ID NO: 6およびSEQ ID NO: 9/ SEQ ID NO: 8のプライマーの組み合わせを用いた。その後、dgAnti-EpCAM HCの完全配列をベクターpPCR-Script-Cam中にサブクローニングし、dgAnti-EpCAM LC配列をpPCR-Script-Amp中にサブクローニングした。正しい配列を自動配列決定によって確認した。最終的に、HD69キメラ重鎖を、EcoRIおよびXbaIで消化した発現ベクターpEF-DHFR中にクローニングした。EcoRIおよびXhoIで消化した軽鎖を、EcoRI/SalIで切断したpEF-ADA中に挿入した。dgAnti-EpCAMを、発現ベクターpEF-DHFR-HD69 HCおよびpEF-ADA-HD69 LCをトランスフェクションしたCHO dhfr-細胞において産生し、Protein GカラムおよびAkta FPLC System(Amersham Biosciences, Little Chalfont, UK)を用いて一段階過程で、細胞培養上清からdgAnti-EpCAMを精製した。dgAnti-EpCAMの構築において上記で使用したプライマーを表1に示す。
(表1)dgAnti-EpCAMの構築において使用したプライマーの一覧
Figure 2009519024
*プライマー突出部はイタリック体である。
分泌されたdgAnti-EpCAMを、Protein Gアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。SDS/PAGEおよびウエスタンブロット解析は、dgAnti-EpCAMについて95%より高い純度を示した。dgAnti-EpCAMの産生率は、培養上清1リットルあたりおよそ11 mgであった。
実施例2:Anti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMの結合の比較
Anti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMを用いた速度論的結合実験を、BIAcore(商標)2000(BIAcore AB, Uppsala, Sweden)上の表面プラズモン共鳴を用いて、5μL/分の流速でHBS-EP(0.01 M HEPES, pH 7.4, 0.15 M NaCl, 3 mM EDTA, 0.005% surfactant P20)をランニング緩衝液として25℃で行った。EpCAM抗原の細胞外ドメイン(17〜265残基)を、CM5センサーチップ上、フローセル2〜4上へ固定化した。80μLの0.1 M ナトリウム-ヒドロキシスクシンイミド、0.4 M N-エチル-N'(3-ジメチルアミンプロピル)-カルボジイミド(NHS/EDC)をインジェクションして、チップ表面を活性化した。0.01 M酢酸ナトリウム、pH 4.7中の60μg/mL EpCAMのマニュアルインジェクションによって、抗原を結合させた。異なる密度の抗原を、マニュアルインジェクション時間の量を調節してフローセル2〜4上に固定化した。フローセル1は空のままとし、一方、フローセル2は最も高い密度のEpCAM(4100 RU)でコーティングした。フローセル3は、フローセル2上に固定化された抗原の半分の量(974 RU)でコーティングし、フローセル4は最も低い密度のEpCAM抗原(265 RU)でコーティングした。センサーチップの活性化された表面を、85μLの1 Mエタノールアミンをインジェクションしてブロックし、5μL/分のHBS-EPの一定流量でチップを一晩平衡化したままにした。抗体の結合速度論は、2μM〜0.07μMの範囲の濃度の10μLのタンパク質溶液をインジェクションし、100秒間解離をモニタリングして測定した。タンパク質はHBS-EP中で緩衝した。解離および会合の速度論についての速度定数を1:1ラングミュア(Langmuir)結合方程式(1,2)で決定するBIAevalution(商標)ソフトウェアを用いてデータを適合させた。Aはインジェクションした被分析物の濃度であり、Bは(遊離状態の)結合部位の濃度である。ゼロ時点では、B[0]は最大応答Rmaxと等しく、ゼロ時点ではすべての結合部位が遊離状態であることを意味する。
(1)dB / dt=−(ka*[A]*[B]−kd*[AB])
(2)dAB / dt=ka*[A]*[B]−kd*[AB]
競合結合実験については、単一濃度の一抗体(リガンド)の結合を、種々の濃度の競合抗体の存在下で測定した。平衡結合に到達するために、Kato III細胞(50,000/ウェル)を、それぞれのリガンドおよび競合抗体を含む50μlのFACS緩衝液(PBS, 1% FCS, 0.05% NaN3)中で、16時間、室温でインキュベーションした。リガンド抗体の結合の検出のために、ヒトまたはマウス抗体に特異的なFITC標識検出抗体を使用した(抗ヒトIgG-FITC, ICN 67217;抗マウスIgG-FITC, Sigma F-6257)。アッセイデータをPrismソフトウェア(GraphPad Software Inc.)を用いて解析した。
競合結合曲線の非線形回帰の後、並行飽和結合実験よりKD値を知ることによって、競合物についてのKi値を計算し得る。
上述されたプラズモン共鳴分光法および結合競合解析は、dgAnti-EpCAMが、親のヒトIgG1抗体Anti-EpCAMに匹敵する結合親和性および特異性を保持していることを示した。EpCAM結合についての平衡解離定数(KD)は、Anti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMについて、それぞれ66.6±33.6 nMおよび90.9±36.4 nMであると測定された。KD値における差は統計学的に関連性がなく、EpCAMに対する親和性がdgAnti-EpCAMにおいて完全に維持されたことを示す。
dgAnti-EpCAMがAnti-EpCAMのエピトープ特異性を保持しているか否かを判定するために、EpCAM発現Kato III胃癌細胞を、非飽和濃度の蛍光標識dgAnti-EpCAM(4μg/ml)とインキュベーションした。競合結合解析において、Anti-EpCAM、または異なる抗原特異性のヒトIgG1アイソタイプ対照抗体の濃度を増加させて、結合抗体の置換について試験した。このフローサイトメトリー試験の結果を図5に示すが、図中、抗体の濃度がX軸上に示され、平均蛍光強度(mean fluorescence intensity(「MFI」))がY軸上に示されている。ここで、MFIの減少は、EpCAMを有するKato III細胞の表面から標識dgAnti-EpCAMがAnti-EpCAMによって競合的に置換されている兆候とみなされうる。そのため、そのような減少は、Anti-EpCAMおよび dgAnti-EpCAMが同じ抗原の同じエピトープに結合したことを意味するとみなされうる。図5からはっきりとわかるように、Anti-EpCAM(黒四角)の濃度の増加は、MFIの減衰の増加、従ってEpCAM抗原からのdgAnti-EpCAMの置換の増加を導いた。対照的に、同じアイソタイプであるが別の抗原結合特異性である別の抗体(白四角、「アイソタイプ対照」)は、抗原からdgAnti-EpCAMを置換しなかった。そのため、Kato III細胞への結合についてAnti-EpCAMは有効にdgAnti-EpCAMと競合し、一方、アイソタイプ対照抗体は効果を有さず、このことは、Anti-EpCAMの dgAnti-EpCAMへの変換において抗原結合特異性が保持されたことを意味する。
実施例3:Anti-EpCAMおよび dgAnti-EpCAMの生物活性の比較
Anti-EpCAMの dgAnti-EpCAMへの変換において結合親和性および結合特異性両方が保持されたとの判定に続いて、その後、生物活性もまた保持されているか否かを確認することが望まれた。これを判定するためにADCCアッセイを行った。簡潔には、ADCCアッセイにおいて、次の2種類の細胞を使用する:試験対象の抗体が特異的に結合するヒト細胞表面分子を発現する細胞(これらは「標的細胞」である)、および、抗体で修飾されるようになった標的細胞を殺すことが可能である細胞(これらの殺細胞は「エフェクター細胞」である)。標的細胞がADCCを介してエフェクター細胞によって溶解されると考えられるため、ADCCの程度は標的細胞溶解の量を測定することによって定量化され得る。一般に、この定量化を、最大半量の細胞溶解をもたらすのに必要な抗体濃度を称するEC50値として表わす。従って、より低いEC50値は、より高い有効性を示す。
ADCCアッセイのために、BD Biosciences(San Jose, CA, USA)のマウスNK細胞単離キットを製造業者により説明されたように使用して、C57BL/6脾細胞のネガティブ選択によって、マウスNK細胞(エフェクター細胞)を調製した。単離したNK細胞を、7〜14日間、1700 U/mlのProleukin(Chiron GmbH, Munich, Germany)を添加したRPMI 1640/10% FCS中で、約1×106細胞/mlの密度で培養した。2〜3日ごとに細胞を計数して、新鮮な培地を添加した。培養の7〜14日後に、NK細胞の純度は約90〜100%であった。刺激したマウスNK細胞を1.6×107細胞/mlの濃度でRPMI 1640/10% FCSに再懸濁し、ADCCアッセイにおいてエフェクター細胞として使用した。ヒトエフェクター細胞の調製のためには、末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells(「PBMC」))をFicoll-Hypaque勾配遠心分離(Naundorf et al)によって濃縮し、洗浄して1.2×107/mlで再懸濁した。
EpCAM陽性Kato III細胞を標的細胞として使用し、FACS解析においてエフェクター細胞から標的を識別するために、製造業者のプロトコールに従って蛍光膜色素PKH-26(Sigma, Taufkirchen, Germany)で標識した。PKH-26標識標的細胞を、マウスおよびヒトのエフェクター細胞を用いたアッセイのために、それぞれ4×105細胞/mlおよび6×105細胞/mlの密度に調整した。等容積の標的およびエフェクター細胞懸濁液を混合して、結果的にマウスおよびヒトのエフェクター細胞についてそれぞれ約50:1および20:1のエフェクター対標的(E:T)比とし、96ウェルU底マイクロタイタープレート(Greiner, Solingen, Germany)のウェル当たり50μlを添加した。4倍連続希釈のAnti-EpCAMおよび10倍連続希釈のdgAnti-EpCAMを調製し、ウェル当たり50μlを添加して、結果的にAnti-EpCAMについて50,000〜0.05 ng/ml、dgAnti-EpCAM について50,000〜0.2 ng/mlの濃度範囲とした。ADCC反応は、マウスおよびヒトのエフェクター細胞を用いたアッセイについて、それぞれ10および4時間、37℃でインキュベーションした。ヨウ化プロピジウム(PI)を最終濃度1μg/mlになるように添加し、5x104細胞をFACSCalibur(Becton Dickinson, Heidelberg, Germany)を用いてフローサイトメトリーによって解析した。用量反応曲線を、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)で提供された4パラメータ適合モデル(four-parameter-fit-model)を用いた非線形回帰解析によって算出した。すべての実験は三連で行った。細胞障害性の定量化は、各試験試料における標的細胞の総数に対する死んだ標的細胞の数に基づいた。特異的細胞障害性は、次の式によって計算した:[死んだ標的細胞(試料)/全体の標的細胞(試料)]×100。
この実験の結果は図6に示されている。図6Aにおいて見られるように、無刺激のヒトPBMCをエフェクター細胞として使用したとき、Anti-EpCAMはdgAnti-EpCAMよりずっと高いADCC活性を示した。これは、Anti-EpCAMについて測定されたEC50値がdgAnti-EpCAMよりも低いために明らかである。EC50は、Anti-EpCAMについては169.6 ng/ml、対してdgAnti-EpCAMについては2,110 ng/mlの濃度で見られ、結果的に12.4倍の有効性の差があった。ヒトPBMCは前刺激無しで(すなわち無刺激状態において)ADCCエフェクター機能が可能であるが、一方、マウスNK細胞などのマウスエフェクター細胞は、ADCCを誘発するために、例えばIL-2による前刺激を必要とすることが公知である(Niwa et al. (2004) Cancer Research 64, 2127-33)。これに一致して、無刺激のマウス脾細胞またはそこから単離したNK細胞を用いたアッセイにおいて試験した際、Anti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMのどちらもADCC活性を誘発しなかった(データは示していない)。Anti-EpCAMは、IL-2で前刺激したマウスエフェクター(NK)細胞を50:1のE:T比で使用して用量依存的ADCC活性を誘発したが、dgAnti-EpCAMはこの場合により効果的であることが明らかとなった(図6B)。具体的には、dgAnti-EpCAMは38.1 ng/mlの濃度で、Anti-EpCAMは1,664 ng/mlで最大半量の標的細胞溶解を誘導し、結果的に、前刺激マウスNK細胞をエフェクター細胞として使用した際にはdgAnti-EpCAMの43.7倍高い有効性をもたらした。ヒトIgG1およびマウスIgG2aアイソタイプ対照抗体は、どちらの実験条件においても、すなわち、ヒトまたはマウスエフェクター細胞を用いてもADCC活性を誘発せず、Anti-EpCAM およびdgAnti-EpCAMの標的特異性を強調した。
総合すると、抗体がADCCを誘発する能力は、この抗体のFc部分が、ADCCが誘発される生物と同じ種由来である際に最も完全に実現されると考えられるという概念を、図6Aおよび6Bは支持する。見方を変えると、ADCCを誘発する抗体の性質の最も正確な兆候は、Fc部分の起源がADCCを試験するために使用される種と関連する抗体を用いて得られる可能性がある。
実施例4:マウスにおけるAnti-EpCAM およびdgAnti-EpCAMの薬物動態の比較
動物実験
インビボ実験は、Institute of Immunology(Munich, Germany)で繁殖したメスの6〜10週齢の免疫応答性C57BL/6マウスにおいて行った。マウスは、無菌の標準化された環境条件(室温20±1℃、相対湿度50±10%、明暗リズム12時間)の下で維持し、オートクレーブした食物および床敷(bedding)(ssniff, Soest, Germany)、ならびに酸性化(pH 4.0)飲料水を随意に与えた。すべての実験は、German Animal Protection Lawに従って、管轄の地方自治体からの許可を得て行った。媒体対照群に対する対応する処置群の肺腫瘍コロニーの平均数の統計学的解析は、スチューデントt検定を用いて行った。
薬物動態解析
その後、Anti-EpCAMおよび dgAnti-EpCAMの薬物動態プロファイルを生成することが望まれた。この目的のために、20匹の雌性C57BL/6マウスに300μgのそれぞれの抗体を静脈内注射した。動物を、マウス各5匹からなる異なる4群に配分した。注射後異なる時点で(投与前、0.5、1、2、4、および10時間、1、2、4、7、9、11、14、18、21、24、および28日)、異なる群から交互に採血した。血清濃度を特異的ELISAによって定量化した。ELISAプレート(NUNC, Wiesbaden, Germany)を100μl(5μg/mL)のラット抗Anti-EpCAM抗体(Micromet AG, Munich, Germany)でコーティングした。プレートを一晩4℃でインキュベーションし、PBS/1%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin(BSA))で60分間、25℃でブロッキングした。試験試料をPBS/10%マウス血漿プールで希釈し、ウェル当たり100μlを添加して、60分間、25℃でインキュベーションした。Anti-EpCAMの定量化については、プレートを100μl(0.15μg/mL)のビオチン結合ニワトリ抗Anti-EpCAM抗体(Micromet, Munich, Germany)と最終濃度2μg/mlで60分間、25℃でインキュベーションし、続いて、100μlのアルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジン(Dako, Hamburg, Germany)と最終濃度0.5μg/mlで60分間、25℃でインキュベーションした。dgAnti-EpCAMの定量化については、プレートを100μlのアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウス抗体(Sigma, Taufkirchen, Germany)と60分間、25℃でインキュベーションした。最後に、プレートを100μlの基質(0.2 Mトリス緩衝液に溶解した1 mg/mlのp-NPP;Sigma, Taufkirchen, Germany)と20分間、25℃でインキュベーションし、吸光度(405 nm)をPower WaveX select(Bio-Tek instruments, USA)で測定した。2倍連続希釈の各試験試料を二連で解析し、標準曲線の直線範囲内にあるOD値をAnti-EpCAMおよび dgAnti-EpCAMの濃度を計算するのに使用した。Anti-EpCAM およびdgAnti-EpCAMの薬物動態計算は、薬物動態ソフトウェアパッケージWinNonlin Professional 4.1(Pharsight Corporation, Mountain View, CA; 2003)によって行った。パラメータは、非コンパートメント解析(non-compartmental analysis(NCA))によって決定した。非コンパートメント解析は、モデル201(静脈内ボーラス注射)に基づいた。
300μgのAnti-EpCAMおよび dgAnti-EpCAMの単回投与は、C57BL/6マウスへの静脈内ボーラス注射の30分後に、それぞれ119.2μg/mlおよび204μg/mlの最大血清濃度(Cmax)をもたらした。抗体の血清濃度は、図7に示されるように、28日の実験期間の終わりまで十分に検出可能であった。Anti-EpCAM およびdgAnti-EpCAM両方についての血清濃度対時間のプロファイルは、0〜10時間の間の初期の分布相、および末期の排出相を有する双指数関数(bi-exponential)曲線進行を示した。両方の抗体について同様に見られる曲線進行にもかかわらず、dgAnti-EpCAM用量はAnti-EpCAMと比較して常により高い血清濃度をもたらし、Anti-EpCAMについて335.9日*μg/mlに対して、dgAnti-EpCAMについて519.8日*μg/mlの、より高い曝露(AUClast)値によっても反映された。分布(Vz)およびクリアランス(CL)の容積は、dgAnti-EpCAMについて5.28 mlおよび0.56 ml/時間、Anti-EpCAMについて7.78 mlおよび0.86 ml/時間であると計算された。分布およびクリアランスの容積は両方とも、dgAnti-EpCAMと比較してAnti-EpCAMについてより高かった。排出速度定数は、Anti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMについて、それぞれ0.27および0.31日の類似した分布半減期(T1/2-α)、および6.21および6.57日の末期排出半減期(T1/2-β)をもたらした。
図7に示される結果は、Anti-EpCAMがdgAnti-EpCAMより迅速にマウス試験動物から除去されることを示す。この薬物動態格差を補正するために、マウスにおいて両方の抗体についての血清ピークおよびトラフレベルができるだけ同一のままであり、そのためにできるだけ結果が比較可能であると考えられるように、dgAnti-EpCAMよりも高いレベルのAnti-EpCAMを投与することによって、試験マウスにおけるさらなる実験を行った。
実施例5:動物腫瘍モデル
最後に、実際の動物においてAnti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMを試験することが望まれた。この目的のために、Anti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMを免疫応答性C57BL/6マウスにおいて並べて比較した。1×105個のB16/EpCAM細胞(肺において腫瘍細胞コロニーを形成する)を、C57BL/6マウスの静脈内に注射し、B16/EpCAM接種の1時間後から、指示された用量レベルのAnti-EpCAM、dgAnti-EpCAM、またはヒトIgG対照抗体で週に3回、動物を処置した。B16F10細胞をEpCAM特異的抗体での免疫療法に適したものとするために、ヒトEpCAMをコードする発現ベクターを細胞にトランスフェクションした。ヒトEpCAMを安定的に発現するサブクローンB16/EpCAM 3E3を選択し、飽和結合によってEpCAM発現を測定した。約2.0×106のEpCAM結合部位が測定された。この数は、KATO III細胞上に発現している1.3×106EpCAM部位に匹敵する。B16/EpCAM細胞上の高レベルのEpCAM発現は、細胞培養において、選択圧の非存在下でさえも少なくとも6週間安定であることが判明し(データは示していない)、マウスにおける有効性試験の間の腫瘍細胞上の安定なEpCAM発現を保証した。
B16/EpCAM注射の26日後にマウスを屠殺し、解剖した。肺をtissue teck(Vogel GmbH, Giessen, Germany)で満たし、腫瘍コロニーの数を肉眼で解析した。それぞれの抗体への曝露をモニターするために、3、6、9、11回目の注入の前および30分後、ならびに試験の最後に、群当たり3匹の動物を交互に採血した。
確立相において、注射するべき細胞の数および読み出しの時間を規定した。同系のB16/EpCAM細胞をC57BL/6マウスの静脈内に注射し、肺組織における腫瘍コロニーの数を接種後の異なる時点で計数した。1×105個の注射したB16/EpCAM細胞が、注射後21〜28日の間に平均して80〜100個の腫瘍コロニーをもたらす条件を、有効性試験のために選択した。
Anti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMの単一用量薬物動態プロファイルが、二つの進行中の第II相臨床試験におけるAnti-EpCAMの標的トラフレベルである、30μg/mlまたはそれ以上の血清トラフレベルをもたらすと考えられる投与レジメンをモデリングするために使用された。モデリングに基づき、600μg/マウスの負荷用量に続いて週に3回の250μg/マウスの維持用量を、Anti-EpCAMおよびヒトIgG対照抗体について選択した。dgAnti-EpCAMについては、300μg/マウスの負荷用量および週に3回の125μg/マウスの維持用量を投与した。1×105個のB16/EpCAMの静脈内接種に続いて、一群当たり10匹の動物を抗体で処置し、Anti-EpCAM(図8A)およびdgAnti-EpCAM(図8B)の血清レベルを3、6、9、および11回目の投与後に測定した。Anti-EpCAMの注射は、136〜41μg/mlの平均ピーク〜トラフ血漿濃度をもたらし、試験の過程の間に予想された血漿濃度である150〜30μg/mlに近接していた。dgAnti-EpCAMの平均ピーク〜トラフ濃度は、172〜82μg/mlと測定された。dgAnti-EpCAMの血漿濃度がAnti-EpCAMよりわずかに高かったが、両方の抗体との全体的な曝露は、有効であり、かつ匹敵する範囲にあると考えられた。
マウス肺の肉眼観察は、ヒトおよびマウス化抗EpCAM抗体の両方が、アイソタイプ対照と比較して腫瘍増殖の強い減少をもたらすことを示した(図9)。dgAnti-EpCAMで処置したマウス由来の肺は、検出可能な腫瘍をほとんど有さなかった(下のパネル)が、ヒトAnti-EpCAMで処置したマウス由来の肺上では、小さな腫瘍がまだ認識可能であった(中央のパネル)。腫瘍コロニーのサイズは、ヒトIgG1アイソタイプで処置された動物の肺におけるサイズよりも小さかったが、コロニーの数はAnti-EpCAM処置後にわずかに減少したのみであった。対照的に、dgAnti-EpCAMでの処置は、肺腫瘍コロニーの数において85%より多い、高度に有意な減少を誘導し(p<0.0001)、かつ、少数の残存する腫瘍コロニーは、非常に小さいサイズであった。
図9に示された写真の結果が、図10においてグラフ形式で示されている。ここで、dgAnti-EpCAMで処置したマウスの肺に残存する肺腫瘍コロニーの数がより少ないことから、マウスにおけるdgAnti-EpCAMの細胞障害活性がAnti-EpCAMよりも明らかに高いことが明白である。
IgG分子の略図(VH、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、VL、およびCL領域を含む)。 本発明のドメイン移植抗体の略図(VH、ヒンジ、CH2、およびVL領域を含む)。 本発明の別の態様によるドメイン移植抗体の略図(VH、ヒンジ、CH2、CH3、およびVL領域を含む)。 本発明の一つの態様によるドメイン移植抗体の略図(VH、CH1、ヒンジ、CH2、VL、およびCL領域を含む)。 ドメイン移植Anti-EpCAM(「dgAnti-EpCAM」)がAnti-EpCAMと同じ結合特異性を有することを示す、非標識Anti-EpCAMによるヒトEpCAM発現Kato-III細胞からの蛍光標識dgAnti-EpCAMの置換。 無刺激のヒトPBMCを用いた、Anti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMのインビトロ生物活性の比較。 IL-2で前刺激したマウス脾細胞のNK細胞を用いた、Anti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMのインビトロ生物活性の比較。 マウスモデルにおいてAnti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMについて測定された、時間に対する血清血漿レベル。 Anti-EpCAM(図8A)およびdgAnti-EpCAM(図8B)の、マウスモデルにおける時間に対する血清ピークおよびトラフレベル。 マウスモデルにおける胚腫瘍進行へのAnti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMの効果の写真。 マウスモデルにおける胚腫瘍進行へのAnti-EpCAMおよびdgAnti-EpCAMの効果のグラフ。

Claims (38)

  1. ・ヒト起源の抗体重鎖可変領域;
    ・ヒト起源の抗体軽鎖可変領域;
    ・非ヒト種由来の第二抗体重鎖定常領域(CH2);および
    ・該非ヒト種由来の抗体重鎖ヒンジ領域
    を含む、ヒト細胞表面分子に特異的に結合するドメイン移植抗体であって、抗体重鎖可変領域および軽鎖可変領域が共に該ヒト細胞表面分子に対する結合部位を規定する、ドメイン移植抗体。
  2. 非ヒト種由来の第三抗体重鎖定常領域(CH3)をさらに含む、請求項1記載のドメイン移植抗体。
  3. 非ヒト種由来の第一抗体重鎖定常領域(CH1)および該非ヒト種由来の抗体軽鎖定常領域(C)をさらに含む、請求項1または2記載のドメイン移植抗体。
  4. 抗体軽鎖定常領域(C)がκ抗体軽鎖定常領域である、前記請求項のいずれか一項記載のドメイン移植抗体。
  5. ヒト起源の抗体重鎖可変領域および軽鎖可変領域が独立してヒト由来であるかヒト化されている、前記請求項のいずれか一項記載のドメイン移植抗体。
  6. 非ヒト種が、げっ歯類種、非ヒト霊長類種、ウサギ、ビーグル犬、ブタ、ミニブタ、ヤギ、またはヒツジである、前記請求項のいずれか一項記載のドメイン移植抗体。
  7. 非ヒト霊長類種が、チンパンジー、カニクイザル、アカゲザル、ヒヒ、またはマーモセットである、請求項6記載のドメイン移植抗体。
  8. げっ歯類種が、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはアレチネズミである、請求項6記載のドメイン移植抗体。
  9. げっ歯類種がマウスであり、かつ、抗体第一重鎖定常領域、第二抗体重鎖定常領域、第三抗体重鎖定常領域、および抗体重鎖ヒンジ領域がγアイソタイプである、請求項8記載のドメイン移植抗体。
  10. γアイソタイプのサブクラスが、γ1、γ2a、γ2bおよびγ3からなる群より選択され、サブクラスγ2aが好ましい、請求項9記載のドメイン移植抗体。
  11. ヒト細胞表面分子が、病理学的状態において排他的に発現されているもしくは過剰発現されているか、または、非病理学的状態においてよりも病理学的状態においてより容易に抗体結合に対して接触可能である、前記請求項のいずれか一項記載のドメイン移植抗体。
  12. 病理学的状態においてヒト細胞表面分子が存在し、かつ、該病理学的状態が増殖性疾患、特に腫瘍性疾患である、請求項11記載のドメイン移植抗体。
  13. ヒト細胞表面分子が腫瘍性疾患に存在し、かつ、該腫瘍性疾患が癌性、すなわち悪性疾患である、請求項12記載のドメイン移植抗体。
  14. ヒト細胞表面分子がヒトEpCAMである、請求項13記載のドメイン移植抗体。
  15. ヒト細胞表面分子が病理学的状態において存在し、かつ、該病理学的状態が病原体関連疾患である、請求項11記載のドメイン移植抗体。
  16. 病原体関連疾患が、ウイルス疾患またはレトロウイルス疾患である、請求項15記載のドメイン移植抗体。
  17. ウイルス疾患が、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはエプスタイン‐バーウイルス(EBV)によって引き起こされる、請求項16記載のドメイン移植抗体。
  18. レトロウイルス疾患が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる、請求項16記載のドメイン移植抗体。
  19. ヒト細胞表面分子が病理学的状態において存在し、かつ、該病理学的状態が炎症性疾患である、請求項11記載のドメイン移植抗体。
  20. ヒト細胞表面分子がヒト膜結合型IgEである、請求項19記載のドメイン移植抗体。
  21. ヒト細胞表面分子が、ヒトケモカイン受容体、ヒトサイトカイン受容体、またはヒトC型レクチン受容体である、請求項19記載のドメイン移植抗体。
  22. ヒトサイトカイン受容体が、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)受容体、またはヒトCCR5である、請求項21記載のドメイン移植抗体。
  23. ヒトC型レクチン受容体がヒトNKG2Dである、請求項21記載のドメイン移植抗体。
  24. ・(a)ヒト起源の重鎖可変領域、(b)非ヒト種由来の第二抗体重鎖定常領域(CH2)、および(c)該非ヒト種由来の抗体重鎖ヒンジ領域、ならびに任意で、(d)該非ヒト種由来の第三抗体重鎖定常領域(CH3)、および/もしくは(e)該非ヒト種由来の第一抗体重鎖定常領域(CH1)
    をコードする第一のコード配列;ならびに/または
    ・ヒト起源の所望の抗体軽鎖可変領域(VL)、および任意で、該非ヒト種由来の抗体軽鎖定常領域(CL)
    をコードする第二のコード配列
    を含む発現ベクターであって、抗体重鎖可変領域および軽鎖可変領域が共にヒト細胞表面分子に対する結合部位を規定する、発現ベクター。
  25. 請求項24記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
  26. 請求項1〜23のいずれか一項記載のドメイン移植抗体を産生する方法であって、請求項25記載の宿主細胞を、該宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞、好ましくはCHO細胞の増殖に適した条件の下で培養する段階を含む、方法。
  27. 培養段階が無血清培地において行われる、請求項26記載の方法。
  28. ドメイン移植抗体を単離する段階をさらに含む、請求項26または27記載の方法。
  29. ドメイン移植抗体を精製する段階をさらに含む、請求項28記載の方法。
  30. ドメイン移植抗体を薬学的組成物へと製剤化する段階をさらに含む、請求項29記載の方法。
  31. 請求項1〜23のいずれか一項記載のドメイン移植抗体、または請求項26〜30のいずれか一項により産生可能なドメイン移植抗体を含む、薬学的組成物。
  32. ヒト細胞表面分子を発現する非ヒト動物へ請求項31記載の薬学的組成物または請求項1〜23のいずれか一項記載のドメイン移植抗体を投与する段階、および該組成物または該ドメイン移植抗体の該インビボ活性を測定する段階を含む、該組成物、または該ドメイン移植抗体のインビボ活性を測定する方法であって、該ドメイン移植抗体の少なくとも第二抗体重鎖定常領域(CH2)および抗体重鎖ヒンジ領域が、該ドメイン移植抗体または組成物が投与される非ヒト動物と同じ種の非ヒト動物由来である、方法。
  33. 非ヒト動物がトランスジェニック非ヒト動物である、請求項32記載の方法。
  34. 非ヒト動物が、げっ歯類種、非ヒト霊長類種、ウサギ、ビーグル犬、ブタ、ミニブタ、ヤギ、またはヒツジである、請求項32または33記載の方法。
  35. げっ歯類種の動物が、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、またはアレチネズミである、請求項31記載の方法。
  36. 非ヒト霊長類種の動物が、チンパンジー、カニクイザル、アカゲザル、ヒヒ、またはマーモセットである、請求項34記載の方法。
  37. ヒト起源の抗体の機能的インビボ活性を評価するための、請求項1〜23のいずれか一項記載のドメイン移植抗体、または請求項31記載の薬学的組成物の使用であって、ドメイン移植抗体およびヒト起源の抗体が、(a)同一の抗体重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有し、かつ、(b)同じヒト細胞表面分子に結合する、使用。
  38. インビボ活性がインビボ細胞障害性である、請求項32〜37のいずれか一項記載の方法および使用。
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