JP2009509911A - リンパ造血組織を定着させるためのmapcまたはそれらの子孫の使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、被験体のリンパ造血系の組織においてリンパ造血細胞を提供する多能性成人幹細胞(MAPC)およびそれに由来する子孫細胞に関する。リンパ造血系の組織にリンパ造血細胞を提供する方法であって、テロメラーゼに関して陽性であって外胚葉細胞型、内胚葉細胞型および中胚葉細胞型に分化し得る有効量のヒト非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含し、該非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞が該被験体においてリンパ造血を提供する、方法。

Description

(関連出願/特許)
本出願は、PCT/US2005/015740(2005年5月5日提出)の一部継続出願であり、PCT/US2005/015740は、米国出願第10/048,757号(2002年2月1日出願)の一部継続出願であり、米国出願第10/048,757号は、PCT/US00/21387(2000年8月4日)の米国国内段階出願であり、WO01/11011として英語で2001年2月15日に公開されている。PCT/US00/21387は、米国仮出願第60/147,324号(1999年8月5日出願)および米国仮出願第60/164,650号(1999年11月10日出願)からの米国特許法第119(e)項の下での優先権を主張する。
本出願はまた、米国出願第10/467,963号(2003年8月11日出願)の一部継続出願であり、米国出願第10/467,963号は、PCT/US02/04652(2002年2月14日出願)の米国国内段階出願であり、WO02/064748として英語で2002年8月22日に公開された。PCT/US02/04652は、米国仮出願第60/268,786号(2001年2月14日出願);米国仮出願第60/269,062号(2001年2月15日出願);米国仮出願第60/310,625号(2001年8月7日出願);および米国仮出願第60/343,836号(2001年10月25日出願)からの米国特許法第119(e)項の下での優先権を主張する。これらの出願および公報は、本明細書中に参考として援用される。
(政府の権利に関する声明)
本研究は、米国補助金RO1 DK58295号による資金援助を受けた。従って、政府は本発明の特定の権利を有する場合がある。
(発明の分野)
本発明は、非胚性幹細胞の分野に関し、具体的にはリンパ造血を提供し、機能免疫を確立するための多能性成体前駆細胞(MAPC)の使用に関する。
(発明の背景)
(造血)
原腸形成において、中胚葉は予定内胚葉によって誘導され、背腹軸(dv)に沿ってパターン化される。骨形態形成タンパク質(BMP)は、腹側の中胚葉運命に向かう細胞を特定するのに重要である(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。哺乳動物では、腹側中胚葉に由来する細胞が胚体外の卵黄嚢に移動し、そこで一次造血を行う(非特許文献4)。一次造血は一過性のものであり、主に胚型ヘモグロビンを発現する赤血球系細胞からなる。二次造血は大動脈−生殖原基−中腎(AGM)領域で行われ、そこでは造血幹細胞(HSC)が、胎児肝および脾に広がり移動して、全ての系列の造血細胞を生成する。出生後の主要な造血組織は骨髄である。
これまでに、HSCの自己複製による細胞分裂を支える骨髄(BM)の微小環境の役割が研究されてきており、β1インテグリンが媒介するシグナルを伝達がHSCの自己複製および分化を制御することが明らかにされており(非特許文献5;Verfaillie C,1992;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)、また、HSCニッチのオーケストレーターとしてのグリコサミノグリカンの役割が明らかにされている(非特許文献6;非特許文献10;非特許文献11)。
(幹細胞)
胚性幹細胞(ES細胞)は無限に自己複製することができ、あらゆる組織に分化し得る。ES細胞は、着床後胚の胚盤胞または始原生殖細胞の内部細胞塊(胚性生殖幹(EG)細胞)に由来する。これまでESおよびEG細胞はマウスから、そしてより近年になってからは非ヒト霊長類およびヒトから単離されてきた。ES細胞は、胚盤胞に導入されると、全ての組織に分化し得る。ES細胞療法の欠点は、出生後の動物に移植した場合に、ESおよびEG細胞が奇形腫を生成してしまうことである。
ES(およびEG)細胞は、SSEA 1(マウス)およびSSEA 4(ヒト)に対する抗体を使用した陽性染色により同定されてもよい。分子レベルでは、ESおよびEG細胞は、これらの未分化細胞に特異的な転写因子を幾つか発現する。その中にはOct−4およびrex−1が含まれる。Rexの発現はOct−4に依存する。また、(マウスの)LIF−R、並びに転写因子であるsox−2およびrox−1も存在する。Rox−1およびsox−2はまた非ES細胞にも発現する。別のES細胞の目印になるのは、テロメラーゼの存在であり、これによりこれらの細胞はインビトロで無限に自己複製できるようになる。
Oct−4(ヒトではOct−3)は、原腸形成前の胚、早期胚、胚盤胞の内部細胞塊の細胞、および胚性癌(EC)細胞で発現する転写因子であり(非特許文献12)、細胞が分化へと誘導されるとダウンレギュレートされる。Oct−4の発現は、胚形成および分化の早期段階を決定するのに重要な役割を果たす。Oct−4は、Rox−1と組み合わされると、ジンクフィンガータンパク質Rex−1を転写活性化すると共に、ES細胞を未分化状態に維持するのに必要とされる(非特許文献13;非特許文献14)。さらに、ES/EC細胞だけでなく、その他のより分化した細胞でも発現するsox−2は、ES/EC細胞の未分化状態を維持するためにOct−4と共に必要とされる(非特許文献15)。マウスES細胞および始原生殖細胞の維持には、LIFが必要である。
Oct−4遺伝子(ヒトではOct−3)は、ヒトにおいて少なくとも2種類のスプライスバリアントであるOct 3AおよびOct 3Bに転写される。スプライスバリアントOct 3Bは、多くの分化細胞で認められるのに対し、スプライスバリアントOct 3A(先ではOct 3/4とも呼ばれる)は、未分化の胚性幹細胞に特異的であることが報告されている(非特許文献16)。
成体幹細胞は既に殆どの組織で同定されている。造血幹細胞は中胚葉に由来し、細胞表面マーカーおよび機能的特性に基づいて精製されてきた。骨髄、血液、臍帯血、胎児肝および卵黄嚢から単離した造血幹細胞は、造血を再開させ、複数の造血細胞系を生成する前駆細胞である。造血幹細胞は、赤血球系、好中球−マクロファージ、巨核球およびリンパ系の造血細胞プールを再増殖してもよい。
Jiang,et al.,(2002)には、マウスLacZ MAPCが、亜致死線量の放射線照射を行ったNOD−SCIDマウスに移植されると、造血系に分化するが、造血細胞の生着率は低く、Tリンパ球が含まれないことが開示されている。さらに、Jiang,et al.では、ヒトMAPCがインビトロで造血細胞に分化できなかったことも開示されている。
(造血細胞移植)
造血細胞移植は、悪性および非悪性造血系障害の治療に30年以上利用されてきた(非特許文献17)。自家骨髄(BM)または末梢血(PB)移植は、幾つかの悪性腫瘍の治療に利用されてきたが、汚染腫瘍細胞が再発の原因となることが多い。また、同種異系移植では幾つかの悪性腫瘍を処置し得るが、患者の多くに適切なHLA型適合ドナーが見つからず、この療法を受けることができない。また、同種異系移植片は、重症且つ時に致死的な移植片対宿主病(GVHD)を引き起こすことが多い(非特許文献18)。
Hemmati−Brivanlou A and Thomsen,Dev Genet.1995;17:78−89 Bhardwaj G,et al.,Nat Immunol.2001;2:172−180 Leung AYH,et al.,Dev Biol.2004 Yoder M,Proc Natl Acad Sci USA.1997;94:6776 Verfaillie C,et al.,J Exp Med.1991;174:693−703 Lewis ID,et al.,Blood.2001;97:3441−3449 Hurley RW,et al.,J Clin Invest.1995;96:511-521 Jiang Y,et al.,Blood.2000;95:846−854 Jiang Y,et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2000;97:10538−10543 Gupta P,et al.,Blood.1996;87:3229 Gupta P,et al.,Blood.1998;92:4641−4651 Nichols J.,et al.,Cell.1998;95:379−391 Rosfjord and Rizzino A.,Biochem Biophys Res Commun.1997;203:1795−802 Ben−Shushan E,,et al.,Mol Cell Biol.1998;18:1866−1878 Uwanogho D,et al.,Mech Dev 1995;49:23−36 Shimozaki,et al.,Development.2003;130:2505−12 Thomas ED,Semin Hematol.1999;36:95−103 Howe CWS and Radde−Stepanick T.,Hematopoietic Cell Donor Registries.Hematopoietic Cell Transplantation.Vol.2.Malden,MA:Blackwell Sciences;1999:503−512
従って、被験体においてリンパ造血をもたらすための新たな細胞源を評価する必要性が依然として存在する。
(発明の要旨)
非胚性幹細胞、特に多能性成体前駆細胞(MAPC)の集団は、リンパ造血を効率的に提供する。MAPCはインビボで徐々に分化し、そこでリンパ造血幹および前駆細胞を形成し、これらの細胞がさらに成熟したリンパ造血細胞に成熟してもよい。あるいは、エキソビボで形成されたMAPCの分化した子孫細胞を使用してリンパ造血を提供してもよい。これらの細胞を被験体に投与し、希望に応じてそこでさらに分化させてもよければ、エキソビボでMAPCから形成した最終分化細胞を投与してもよい。
MAPCは「多能性成人前駆細胞(multipotent adult progenitor cell)」(非ES細胞、非EG細胞、非生殖細胞)の頭字語であり、複数の胚系譜の細胞に分化する能力を有する。三種類全ての胚葉(外胚葉、内胚葉および中胚葉)の細胞を形成し得る。ES細胞で認められる遺伝子は、MAPCでも認められる(例えば、テロメラーゼ、Oct 3/4、rex−1、rox−1、sox−2)。テロメラーゼまたはOct 3/4は、未分化状態の一次産物の遺伝子として認識されてもよい。テロメラーゼは複製老化せずに自己複製するのに必要である。
一実施形態は、リンパ造血系の組織にリンパ造血細胞を提供する方法であって、有効量のMAPCをそれを必要とする被験体に投与する工程を包含し、MAPCが被験体にリンパ造血を提供する方法を提供する。
一実施形態は、リンパ造血系の組織にリンパ造血細胞を提供する方法であって、MAPCをリンパ造血細胞にエキソビボで分化させることによって生成した有効量のリンパ造血細胞をそれを必要とする被験体に投与する工程を包含し、リンパ造血細胞が被験体にリンパ造血を提供する方法を提供する。
一実施形態においては、ナチュラルキラー細胞に作用する物質の有効量も投与される。一実施形態においては、リンパ造血系を刺激する因子がMAPCまたは分化した子孫細胞と共に投与される。このような因子には、エリスロポイエチン(EPO)等の生物学的因子、または低分子が含まれるが、これらに限定されない。
一実施形態において、被験体は放射線療法または化学療法を受けているか、遺伝的欠損を有している(例えば、遺伝学的異常により身体が必要とする物質が不足する)。別の実施形態において、被験体は先天性のリンパ造血障害または後天性の悪性もしくは非悪性のリンパ造血障害を有する。一実施形態において、障害は、白血病、骨髄異形成症候群、リンパ腫、遺伝性赤血球異常、貧血、遺伝性血小板異常、免疫障害、リンパ増殖性障害、食細胞障害または血液凝固障害を含む。別の実施形態において、障害は慢性骨髄性白血病(CML)を含む。一実施形態において、障害はファンコーニ貧血(FA)を含む。
一実施形態において、MAPCまたはMAPCから分化したリンパ造血細胞の細胞ゲノムは、(a)予め選択した単離DNAの挿入、(b)予め選択した単離DNAによる細胞ゲノムのセグメントの置換、または(c)細胞ゲノムの少なくとも一部の欠失または不活化によって変化している。
一実施形態において、細胞ゲノムのセグメントは、非機能的ファンコーニ貧血遺伝子(例えば、遺伝子/遺伝子産物の通常の機能を果たさないか、遺伝子/遺伝子産物の機能をそれほど果たさないことにより、疾患、障害、または疾患若しくは障害の症状を引き起こす遺伝子/遺伝子産物)をコードし、予め選択した単離DNAは、機能的ファンコーニ貧血遺伝子(例えば、遺伝子/遺伝子産物の機能を果たして、疾患、障害、または疾患若しくは障害の症状を引き起こさないようにする遺伝子/遺伝子産物)をコードし、細胞ゲノムのセグメントは、相同組換えによって予め選択した単離DNAで置換される。一実施形態において、ファンコーニ貧血遺伝子はFA−Cである。
別の実施形態において、被験体は哺乳動物である。別の実施形態において、MAPCまたはその子孫細胞は、自己由来、同種異系、異種またはその組み合わせである。
一実施形態において、MAPCは、リンパ球系譜、骨髄系譜または赤血球系譜の1種類以上の細胞に分化する。
一実施形態において、組織は、被験体の胸腺、脾臓、血液、骨髄またはリンパ節の1つ以上である。
一実施形態は、リンパ造血障害を処置する医薬品を調製するための、MAPCまたはMAPCから分化したリンパ造血細胞の使用を提供する。一実施形態において、障害は、白血病、骨髄異形成症候群、リンパ腫、遺伝性赤血球異常、貧血、遺伝性血小板異常、免疫障害、リンパ増殖性障害、食細胞障害、または血液凝固障害である。
投与されたMAPCまたは子孫細胞は、脾臓、胸腺、リンパ節、血液または骨髄の細胞にインビボで分化することによって、リンパ造血系の組織の生成に寄与する場合がある。あるいは、またはさらに、投与されたMAPCまたは子孫細胞は、内在性のMAPC、または造血幹細胞といったその他の幹細胞、またはその他のより分化した細胞のホーミングおよび動員を助ける細胞因子を分泌することによって、リンパ造血系の組織の生成に寄与する場合がある。あるいは、またはさらに、MAPCまたは子孫細胞は、内在性の幹または前駆細胞に働きかけて分化を起こさせ、それによって機能を促進させる因子を分泌する場合がある。さらに、MAPCまたは子孫細胞は、幹、前駆または分化細胞に働きかけて分裂を起こさせる因子を分泌する場合がある。さらに、MAPCまたは子孫細胞は、血管新生を提供するか、アポトーシスを低減または予防する場合がある。
(発明の詳細な説明)
MAPCは、インビトロおよびインビボにおいて全ての原始胚葉(外胚葉、内胚葉および中胚葉)の層を再生する能力を有する。この文脈において、MAPCは胚性幹細胞と同等であり、同じく骨髄から単離される間葉系幹細胞とは区別される。これらの細胞の生物学的能力は、マウス、ラット等の種々の動物モデルで、およびヒト幹細胞のラットまたはNOD/SCIDマウスにおける異種生着で明らかにされてきた(Reyes,M.and C.M.Verfaillie,2001;Jiang,Y.,et al.,2002)。この細胞集団のクローン能力が明らかにされている。単一の遺伝子標識されたMAPCをマウスの胚盤胞に注射し、胚盤胞を移植し、胚を分娩まで成長させた(Jiang,Y.,et al.,2002)。キメラ動物の出生後解析では、肝を含む全ての組織および器管が再構築されていることが明らかになった。二重染色では、遺伝子標識された幹細胞がこれらの動物における相当量の割合の見かけ上機能的な心筋細胞に寄与したことを示した。これらの動物は、胚の状態でも成体の状態でも、心臓の異常または不整を全く呈さなかった。これらの動物の何れにおいても、異常または器官の機能不全は全く認められなかった。
(定義)
本明細書で使用される以下の用語は、以下の意味によって定義付けられる。
「MAPC」は「multipotent adult progenitor cell」の頭字語であり、複数の胚系譜の細胞を誘発し得る非胚性、非生殖性幹細胞を指す。分化すると3種類全ての胚葉(外胚葉、内胚葉および中胚葉)の細胞系譜を形成し得る。胚性幹細胞と同じく、ヒトMAPCはテロメラーゼ、Oct 3/4(即ち、Oct 3A)、rex−1、rox−1およびsox−2を発現する(Jiang,Y.,et al.,2002)。ヒト、マウス、ラットまたはその他の哺乳動物由来のMAPCは、継代回数の多い細胞でもテロメラーゼを発現することが今日までに知られている、唯一の正常な非悪性体細胞(即ち、非生殖細胞)であると考えられる。テロメラーゼは、MAPCでは長さが連続して減少しない。MAPCは核型が正常である。MAPCはSSEA−4およびnanogを発現する場合がある。MAPCに関する「成体」という用語は、非制限的であり、非胚性体細胞を指す。
哺乳動物に注入されたMAPCは複数の器官に移動し、そこで同化するため、MAPCは自己複製する幹細胞であると言える。このため、これらは自己複製状態または当該器官と適合する分化状態のいずれかにおいて、器官の増殖に有用である。これらの細胞は、損傷した、死亡した、または遺伝性若しくは後天性障害によりその他の方法で機能不全となった細胞種と入れ替わる能力を有する。または、上で考察した通り、これらの細胞は、組織内における健常な細胞の保存または新しい細胞の産生に寄与する場合がある。
MAPCに関する「多能性」とは、複数の胚系譜の細胞種を誘発する能力を指す。MAPCは、分化すると3種類全ての原始胚葉(外胚葉、内胚葉および中胚葉)の細胞系譜を形成し得る。
「増殖」は、分化を経ずに細胞が繁殖することを指す。
「前駆細胞」は、幹細胞の分化中に生成される細胞であり、最終分化子孫細胞の全てではなく幾つかの特徴を有する。定義された前駆細胞(例えば、「造血前駆細胞」)は、系譜には分化するが、特異的または最終分化細胞には分化しない。頭字語「MAPC」で使用される「前駆細胞」という用語は、これらの細胞を特定の系譜に制限するものではない。
「自己複製」とは、その分化の元となった細胞と同一の分化能力を有する複製娘幹細胞を産生する能力を指す。この文脈で使用される同様の用語は、「増殖」である。
「生着させる」または「生着」とは、既存の対象組織への細胞の接触および取り込みのプロセスを指す。一実施形態において、MAPCまたはそれに由来する子孫細胞は、約10%超、約15%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超または約100%、リンパ造血系に生着する。
存続とは、拒絶反応に抵抗し、インビトロにおいて時間を経ても(例えば、日、週、月、年)毎に数が持続するか増加する細胞の能力を指す。このように、存続することによって、MAPCまたは子孫細胞はリンパ造血系の組織を増殖し、あらゆる欠損組織を再構成し得る。
「免疫寛容」とは、レシピエント内における外来(同種異系または異種)組織、臓器または細胞の生存(量および/または期間)を指す。この生存は、外来細胞の取り込みに反応して起こるはずの免疫反応を発揮する移植片レシピエントの能力の阻害によりしばしばもたらされる。免疫寛容は、日、週、月または年毎の持続的な免疫抑制を包含してもよい。免疫寛容の定義に含められるのは、NK介在性免疫寛容である。
「単離された」という用語は、インビボの1つ以上の細胞に伴う1つ以上の細胞または1つ以上の細胞成分を伴わない1つ以上の細胞を指す。
「豊富な集団」とは、インビボまたは一次培養において1種類以上の非MAPC細胞に比べてMAPCの数が相対的に増加したことを意味する。
「サイトカイン」とは、MAPCまたはその他の幹細胞、前駆細胞または分化細胞のホーミング等の細胞の移動を誘導または強化する細胞因子を指す。
「分化因子」は、系譜分化を誘導する細胞因子、好ましくは増殖因子または血管新生因子を指す。
「被験体」とは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物にはヒト、家畜動物、競技用動物および愛玩動物が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「処置する」または「処置」には、損傷若しくは障害に起因する病態、または損傷若しくは障害に起因する病態の症状の処置、予防、改善または阻害が含まれる。
「有効量」とは一般的に、性能の向上といった所望の局所性または全身性作用を提供する量を意味する。例えば、有効用量とは、有益なまたは所望の臨床転帰を発揮するのに十分な量である。この用量は1回以上の投与で投与されてもよく、任意の予め選択された細胞量を含んでもよい。有効用量と見なされる用量を正確に決定するにあたっては、体格、年齢、処置される損傷または障害、および損傷が起きるまたは障害が発症するまでの期間をはじめとする、各被験体に固有の因子に左右される場合がある。当業者、特に医師であれば、有効用量を構成する細胞の数を決定できると考えられる。
「併用投与」には、2つ以上の物質の同時および/または連続投与が含まれてもよい。
投与されたMAPCまたは子孫細胞は、インビボで種々の細胞に分化することによってリンパ造血組織の生成に寄与する場合がある。これらの細胞はリンパ造血を提供する場合もあれば、生着し、種々のリンパ造血組織を再増殖、増殖または再構成する場合もある。あるいは、またはさらに、投与された細胞は、内在性のMAPC若しくはその他の幹細胞、またはその他のより分化した細胞のホーミングおよび動員を助ける細胞因子を分泌することによって、リンパ造血系の組織の生成に寄与する場合がある。あるいは、またはさらに、MAPCまたは子孫細胞は、内在性の幹または前駆細胞に働きかけて分化を起こさせる因子を分泌する場合がある。さらに、MAPCまたは子孫細胞は、幹、前駆または分化細胞に働きかけて分裂を起こさせる因子を分泌する場合がある。このように、MAPCまたは子孫細胞は、栄養面での影響を介して利益を提供する場合がある。栄養面での影響には、細胞生存の改善および所望の部位への細胞のホーミングが含まれるが、これらに限定されない。治療ベネフィットは上記の経路の組み合わせによって達成される場合がある。
「リンパ造血」とは、血液、骨髄、脾臓、リンパ節および胸腺の細胞の提供を指す。これらの細胞には、図1に示す細胞が含まれる。この作用は細胞の増殖を伴ってもよい。また、既存の細胞を動員して、リンパ造血系の1つ以上の組織を増殖させることを伴ってもよい。また、この作用には、リンパ造血系の1つ以上の組織におけるアポトーシス細胞の速度または数の低減が含まれてもよい。リンパ造血細胞には、造血幹細胞、およびリンパ系譜、骨髄系譜、赤血球系統由来の細胞(例えば、B細胞、T細胞)、単球マクロファージ系譜の細胞、赤血球細胞、並びに造血幹細胞由来のその他の細胞が含まれる(例えば図1を参照)。
被験体にリンパ造血を提供するには、幾つかの経路が可能である。一実施形態においては、MAPCを投与して、インビボでリンパ造血を提供させてもよい。これは、本明細書に記載の通り、MAPCそれ自体を分化させるか、内在性細胞の動員といったその他の手段によって生じさせてもよい。あるいは、MAPCからエキソビボで分化させたより成熟した細胞を投与してもよい。このような細胞には、全ての成熟した造血細胞を誘発し得る造血幹細胞、これらの種類の何れも形成することのできない分化した前駆細胞、完全に成熟したリンパ造血細胞を含むことができるさらに分化した細胞をはじめとする、あらゆる分化段階の子孫細胞が含まれる。
「含む」、「からなる」等の用語は、米国特許法に記載の意味を有してもよく、「含まれる」、「はじめとする」等を意味してもよい。本明細書で使用される「はじめとする」または「含まれる」等は制限なく含むことを意味する。
(MAPC)
ヒトMAPCに関しては、米国特許出願番号第10/048,757号(PCT/US00/21387(WO 01/11011として発表))および第10/467,963号(PCT/US02/04652(WO 02/064748として発表))に記載があり、それらの内容は、MAPCに関する説明のために参考として本明細書に組み入れられている。MAPCはその他の哺乳動物で同定されている。例えば、マウスMAPCに関しては、PCT/US00/21387(WO 01/11011として発表)およびPCT/US02/04652(WO 02/064748として発表)に記載がある。ラットMAPCに関してもWO 02/064748に記載がある。
MSCとは生物学的にも抗原的にも区別されるMAPCは、MSCよりも原始的な前駆細胞集団であり、上皮系譜、内皮系譜、神経系譜、筋系譜、造血系譜、造骨系譜、肝系譜、軟骨系譜および脂質系譜を包含する分化能力を示す(Verfaillie,C.M.,2002;Jahagirdar,B.N.,et al.,2001)。MAPCは分化能力を喪失することなく広範に培養することができ、NOD−SCIDマウスにおいて複数の系譜にわたり有効かつ長期に生着および分化し、奇形腫の形成は確認されない(Reyes,M.and C.M.Verfaillie,2001)。
骨組織由来の付着細胞は、本明細書に記載の通り、培地中に豊富であり、高密度の倍増状態に増殖する。培養の早期段階では、この細胞集団でより高い不均一性が認められる。その後、多くの間質の付着細胞は、30細胞数倍増付近で複製老化を来し、より均一な細胞集団が拡大して長いテロメアを維持する。
(単離および増殖)
ヒトおよびマウスのMAPC単離方法は、当該技術分野に記載がある。また、PCT/US00/21387(WO 01/11011として発表)およびラットについてはPCT/US02/04652(WO 02/064748として発表)にも記載があり、これらの方法は、本明細書に開示されるMAPCの特徴付けと共に、参考として本明細書に組み入れられている。
MAPCは当初骨髄から単離されていたが、その後、脳および筋をはじめとするその他の組織から単離する方法も確立された(Jiang,Y.,et al.,2002)。このように、MAPCは、骨髄、胎盤、臍帯および臍帯血、筋、脳、肝、脊髄、血液または皮膚をはじめとする複数の器官から単離してもよい。例えば、MAPCは、当業者に利用可能な標準的手段によって得ることのできる骨髄穿刺液から得てもよい(例えば、Muschler,G.F.,et al.,1997;Batinic,D.,et al.,1990を参照)。このため、当業者は骨髄穿刺液、脳または肝生検、およびその他の器官を得て、当業者に利用可能な陽性または陰性選択技法を使用して、これらの細胞に発現されている(または発現されていない)遺伝子を頼りに、細胞を単離し得る(例えば、参考として本明細書に組み入れられている、上で引用された出願に開示されているもの等の、機能的または形態学的検定による)。
(米国第10/048,757号に記載のヒト骨髄由来のMAPC)
当業者に利用可能な標準的手段によって得られた骨髄穿刺液から骨髄単核細胞を取り出した(例えば、Muschler,G.F.,et al.,1997;Batinic,D.,et al.,1990を参照)。成体多能性幹細胞は骨髄(または肝臓や脳等のその他の器官)内に存在するが、通常の白血球抗原CD45または赤芽球に特異的なグリコフォリンA(Gly−A)は発現しない。細胞の混合集団をFicoll Hypaque分離に付した。その後、抗CD45抗体および抗Gly−A抗体を使用してこれらの細胞を陰性選択に付し、CD45およびGly−Aの細胞集団を除去し、残った約0.1%の骨髄単核細胞を回収した。また、フィブロネクチンをコーティングしたウェルに細胞を入れ、以下に記載の通り2〜4週間培養して、CD45およびGly−A細胞集団を除去してもよい。
あるいは、陽性選択を使用して、細胞特異的マーカーの組み合わせを介して細胞を単離してもよい。陽性および陰性選択の技法は何れも、当業者に利用可能であり、陰性選択に好適なモノクローナルおよびポリクローナル抗体も当該技術分野で数多く利用可能であり(例えば、Leukocyte Typing V,Schlossman,et al.,Eds.(1995) Oxford University Pressを参照)、幾つかの供給元から購入が可能である。
混合した細胞集団から哺乳動物細胞を分離する技法については、Schwartz,et al.,米国特許第5,759,793号(磁性分離)、Basch,et al.,1983(免疫親和性クロマトグラフィー)、Wysocki and Sato,1978(蛍光活性化細胞選別法)に記載がある。
回収したCD45/GlyA細胞を、約5〜115ng/mL(約7〜10ng/mLを使用可能)の血清フィブロネクチンまたはその他の適切な基質コーティングでコーティングした培養皿に入れた。血小板由来の増殖因子−BB(PDGF−BB)約1〜50ng/mL(約5〜15ng/mLが使用可能)、上皮増殖因子(EGF)約1〜50ng/mL(約5〜15ng/mLが使用可能)、インスリン様増殖因子(IGF)約1〜50ng/mL(約5〜15ng/mLが使用可能)またはLIF約100〜10,000IU(約1,000IUが使用可能)、約10−10〜約10−8Mのデキサメタゾンまたはその他の適切なステロイド、約2〜10μg/mLのリノール酸、および約0.05〜0.15μMのアスコルビン酸を添加したダルベッコ最小基礎培地(DMEM)またはその他の適切な細胞培養培地で細胞を維持した。その他の適切な培地としては、例えば、MCDB、MEM、IMDMおよびRPMIが含まれる。細胞は、血清なし、または約1〜2%のウシ胎児血清、または例えば約1〜2%ヒトAB血清若しくは自家血清の存在下のいずれかで維持されてもよい。
約2×10細胞/cmになった時点で約3日毎に再播種した場合、40回を超える細胞倍増が定期的に得られ、幾つかの細胞集団は70回を超える細胞倍増を受けた。細胞倍増時間は、最初の20〜30回の細胞倍増で約36〜48時間であったが、その後、細胞倍増時間は60〜72時間まで延びた。
5例のドナー(年齢は約2〜55歳)由来の、約2×10細胞/cmの再播種密度で培養して約23〜26回の細胞倍増を得たMAPCのテロメア長は、約11〜13KBであった。これは、同じドナーから得たリンパ球のテロメア長よりも約3〜5KB長かった。約23回および約25回それぞれの細胞倍増の後、そしてさらに約35回の細胞倍増後に評価を受けたドナー2例由来の細胞のテロメア長は変わらなかった。これらのMAPCの核型は正常であった。
(米国第10/048,757号に記載の条件下におけるヒトMAPCの表現型)
約22〜25回の細胞倍増後に得たヒトMAPCのFACSによる免疫表現型解析では、細胞がCD31、CD34、CD36、CD38、CD45、CD50、CD62E、および−P、HLA−DR、Muc18、STRO−1、cKit、Tie/Tekを発現せず、低レベルのCD44、HLAクラスIおよびβ2マイクログロブリンを発現し、且つCD10、CD13、CD49b、CD49e、CDw90、Flk1を発現することが明らかになった(N>10)。
約2×10/cmで再播種した培地で40回を超える細胞倍増を経た細胞では、表現型がより均一となり、HLAクラスIまたはCD44を発現した細胞はなかった(n=6)。より高い集密状態で増殖させた場合、細胞は高レベルのMuc18、CD44、HLAクラスIおよびβ2マイクログロブリンを発現し、このことはMSCに関して記載された表現型と類似している(N=8)(Pittenger,1999)。
免疫組織化学試験では、約2×10/cmの播種密度で増殖させたヒトMAPCがEGF−R、TGF−R1および−2、BMP−R1A、PDGF−R1aおよび−Bを発現し、MAPCの小集団(約1〜約10%)が抗SSEA 4抗体で染色されることが明らかになった(Kannagi,R,1983)。
Clontech社のcDNAアレイを使用して、約2×10細胞/cmの播種密度で培養して約22および約26回の細胞倍増を経たヒトMAPCの発現遺伝子プロファイルを以下の通り測定した:
A.MAPCは、CD31、CD36、CD62E、CD62P、CD44−H、cKit、Tie;IL1、IL3、IL6、IL11、G CSF、GM−CSF、Epo、Flt3−L若しくはCNTFの受容体を発現せず、低レベルのHLAクラスI、CD44−EおよびMuc−18mRNAを発現した。
B.MAPCは、サイトカインBMP1、BMP5、VEGF、HGF、KGF、MCP1のmRNA;サイトカイン受容体Flk1、EGF−R、PDGF−R1α、gp130、LIF−R、activin−R1および−R2、TGFR−2、BMP−R1A;結合受容体CD49c、CD49d、CD29およびCD10を発現した。
C.MAPCは、hTRTおよびTRF1のmRNA、POUドメイン転写因子oct−4、sox−2(oct−4と共に未分化状態のES/ECの維持に必要;Uwanogho D.,1995)、sox 11(神経発達)、sox 9(軟骨形成)(Lefebvre V.,1998);ホメオドメイン転写因子Hoxa4およびHoxa5(頸部および胸部骨格への特化;気道の器官形成)(Packer,A.I.,2000)、Hox−a9(骨髄造血)(Lawrence,H.,1997)、D1x4(前脳および頭部の末梢構造への特化)(Akimenko,M.A.,1994)、MSX1(中胚葉、成体心臓および筋肉、軟骨および骨形成)(Foerst−Potts,L.,1997)、PDX1(膵臓)(Offield,M.F.,1996)を発現した。
D.Oct−4、LIF−RおよびhTRTのmRNAの存在が、RT−PCRによって確認された。
E.さらに、RT−PCRでは、Rex−1のmRNAおよびRox−1のmRNAがMAPCで発現したことが明らかになった。
Oct−4、Rex−1およびRox−1は、ヒトおよびマウス骨髄並びにマウス肝臓および脳由来のMAPCで発現した。ヒトMAPCはLIF−Rを発現し、SSEA−4で陽性染色された。最後に、Oct−4、LIF−R、Rex−1およびRox−1のmRNAレベルは、30回を超える細胞倍増を経た培養ヒトMAPCで上昇し、その結果表現型としてより均一な細胞が生じた。これに対し、高密度で培養されたMAPCは、これらのマーカーを発現しなかった。これは、約40回の細胞倍増の前に老化すること、並びに軟骨芽細胞、骨芽細胞および脂肪細胞以外の細胞への分化が行われないことに起因するものであった。
(米国第10/048,757号に記載のMAPCの培養)
本明細書に記載の通り単離したMAPCは、本明細書、およびこれらの方法の参考として組み入れられている米国第10/048,757号に開示されている方法を使用して培養してもよい。
要約すると、MAPCの培養においては、細胞を未分化状態に維持するのに低血清または無血清の培地での培養が好ましかった。本明細書に記載の通り、細胞を培養するのに使用する無血清培地に、表1に記載の通り添加を行った。ヒトMAPCにLIFは必要ない。
Figure 2009509911
ヒトMAPCに約10ng/mLのLIFを添加しても、短期の細胞増殖に影響は認められなかった(25回の細胞倍増まで細胞倍増時間は同じであり、Oct4(Oct 3/4)の発現レベルも同じ)。ヒト細胞で認められるのとは対照的に、第0日にCD45細胞を除去した新鮮なマウス骨髄単核細胞をMAPCの培地に添加したところ、増殖は全く認められなかった。マウス骨髄単核細胞をプレーティングし、14日後にCD45細胞を除去して培養したところ、ヒトMAPCと形態的にも表現型も類似する細胞が発現した。これは、マウスMAPCの初期増殖を助けるのに、造血細胞から分泌される因子が必要であることを示唆していた。PDGF−BBおよびEFG単独と共に培養した場合、細胞倍増は緩徐(6日超)であり、約10回の細胞倍増を超えると培地を維持することができなかった。約10ng/mLのLIFを添加すると、細胞増殖が有意に促進された。
培養が行われたら、約40%のFCSおよび約10%のDMSOを入れたDMEMを使用して、細胞を冷凍品として冷凍保存してもよい。培養細胞の冷凍品を調製するその他の方法も、当業者に利用可能である。
従って、MAPCは、当該技術分野で利用可能な培地中で維持し増殖させることができた。このような培地としては、ダルベッコ変法イーグル培地(登録商標)(DMEM)、DMEM F12培地(登録商標)、イスコヴ改変ダルベッコ培地(登録商標)、RPMI−1640培地(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。ピルビン酸ナトリウムの有無に関係なく、低グルコースの処方の多くの培地も利用可能である。
また、細胞培地に哺乳動物の血清を添加することも予想される。血清は生存および増殖に必要な細胞因子および成分を含有することが多い。血清の例としては、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清(BS)、仔ウシ血清(CS)、ウシ胎児血清(FCS)新生仔ウシ血清(NCS)、ヤギ血清(GS)、ウマ血清(HS)、ヒト結成、ニワトリ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、血清代替物およびウシ胚抽出液が含まれる。補体活性化経路の成分を不活化させる必要があると考えられる場合は、約55〜65℃の熱で血清を不活化させてもよいことが理解される。
さらに添加剤を有利に活用して、至適に成長および増殖するための微量元素を細胞に供給してもよい。このような添加剤には、インスリン、トランスフェリン、ナトリウムセレンおよびそれらの組み合わせが含まれる。これらの成分は、Hanks’ Balanced Salt Solution(登録商標)(HBSS)、Earle’s Salt Solution(登録商標)、抗酸化添加剤、MCDB−201(登録商標)添加剤、リン酸緩衝生食水(PBS)、アスコルビン酸およびアスコルビン酸−2−リン酸塩並びに追加のアミノ酸等の塩溶液中に含まれてもよい。多くの細胞培地は既にアミノ酸を含んでいるが、細胞を培養する前に添加が必要な培地も幾つかある。このようなアミノ酸には、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、L−システイン、L−シスチン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−チロシンおよびL−バリンが含まれるが、これらに限定されない。当該技術分野ではこれらの添加剤の適切な濃度を決定するのは容易である。
抗生物質も通常、細菌、マイコプラズマおよび真菌による感染を軽減するために、細胞培地に使用される。通常使用される抗生物質または抗真菌化合物は、ペニシリン/ストレプトマイシンの混合物であるが、これには、アンフォテリシン(Fungizone(登録商標))、アンピシリン、ゲンタマイシン、ブレオマイシン、ヒグロマイシン、カナマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ナリジキシン酸、ネオマイシン、ニスタチン、パロモマイシン、ポリミクシン、プロマイシン、リファンピシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、チロシンおよびゼオシンが含まれてもよいが、これらに限定されない。抗生物質および抗真菌物質の添加物は、それが発揮する作用の種類によって、若干の懸念を生じる可能性がある。一つの生じ得る状況とは、抗生物質を含有する培地の中でも細菌が依然として存在するが、抗生物質の作用が殺菌作用ではなく静菌作用をとるという状況である。また、抗生物質が幾つかの細胞型の代謝に干渉する可能性もある。
ホルモンも細胞培養に有利に活用されてもよく、例としては、D−アルドステロン、ジエチルスチルベストロール(DES)、デキサメタゾン、βエストラジオール、ヒドロコルチゾン、インスリン、プロラクチン、プロゲステロン、ソマトスタチン/ヒト成長ホルモン(HGH)、甲状腺刺激ホルモン、チロキシンおよびL−サイロニンが含まれるが、これらに限定されない。
脂質および脂質担体もまた、細胞の型および分化細胞の運命によっては、細胞培地に添加してもよい。このような脂質および担体には、シクロデキストリン(α、β、γ)、コレステロール、アルブミンと結合したリノール酸、アルブミンと結合したリノール酸およびオレイン酸、非結合リノール酸、アルブミンと結合したリノール−オレイン−アラキドン酸、アルブミンと結合したおよび結合しないオレイン酸等が含まれるが、これらに限定されない。
また、フィーダー細胞層の使用も予想される。フィーダー細胞は、幹細胞をはじめとする選好性の培養細胞の成長を助けるのに使用される。フィーダー細胞は、γ線照射で不活化された正常な細胞である。培養では、フィーダー細胞層が他の細胞の基底層の役割を果たし、自らはそれ以上成長も分裂もせずに細胞因子を供給する(Lim,J.W.and Bodnar,A.,2002)。フィーダー層細胞の典型的な例には、ヒト二倍体肺細胞、マウス胚性線維芽細胞、スイスマウス胚性線維芽細胞があるが、幹細胞の至適な成長、生存および増殖に有益な細胞成分および因子を供給できれば、如何なる分裂終了細胞でもよい。多くの場合、白血病抑制因子(LIF)が分化抑制作用を有することから、フィーダー細胞層はES細胞を未分化状態、増殖状態に維持する必要はない。このため、LIFの添加を利用して、幾つかの種のMAPCを未分化状態に維持することも可能であると思われる。
培養中の細胞は懸濁状態に維持されてもよければ、細胞外マトリクス成分および合成ポリマーまたはバイオポリマーといった固体担体に結合した状態で維持されてもよい。幹細胞は、I型、II型およびIV型コラーゲン、コンカナバリンA、硫酸コンドロイチン、フィブロネクチン、「スーパーフィブロネクチン」およびフィブロネクチン様ポリマー、ゼラチン、ラミニン、ポリ−Dおよびポリ−Lリジン、トロンボスポンジンおよびビトロネクチンといった、固体担体への結合を促進する因子をさらに必要とすることが多い。
幹細胞の維持条件には、MAPC等の幹細胞を未分化状態にとどめておく細胞因子が含まれてもよい。細胞を自己複製の未分化状態にとどめておかなければならない条件下では、培地に上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、白血病抑制因子(LIF;選択された種において)およびそれらの組み合わせが含まれるのが有利である。細胞が自己複製できても分化できないようにする添加剤は、分化前に培地から除去しなければならないことは、当業者に明らかである。
幹細胞系およびその他の細胞は、別の細胞型と共培養することで利益を得る。このような共培養の方法は、幹細胞が特異的な系譜または細胞型に分化できるようにする未特定の細胞因子を特定の細胞が供給する可能性があるという所見から生み出されたものである。これらの細胞因子は細胞表面受容体の発現も誘導する可能性があり、そのうちの幾つかはモノクローナル抗体によって容易に同定し得る。一般的に共培養の細胞は、当業者が誘導したい系譜の型に基づいて選択されるが、共培養に適切な細胞を選択することは当業者の能力の範囲内である。
MAPC、およびMAPCから分化したリンパ造血細胞は、特異的なリンパ造血系の細胞の源として有用である。MAPCの成熟、増殖および分化は、エリスロポイエチン(EPO)、コロニー刺激因子(例えば、GM−CSF、G−CSF若しくはM−CSF、SCF)、インターロイキン(例えば、IL−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−13等)を含むがこれらに限定されない適切な因子と、または幹細胞の再生、運命および分化を担う因子を分泌する間質細胞若しくはその他の細胞と、MAPCを培養することによって作用する場合がある。
一実施形態において、ヒトおよびマウスのMAPCは、以下の実施例2に記載の通り、インビトロで造血幹または前駆細胞等の造血細胞に分化させることができる。インビトロでヒトをはじめとするMAPCを造血細胞に分化させる方法については、米国第10/048,757号(2000年8月4日出願の第PCT/US00/21386号)および米国第10/467,963号(2002年2月14日出願の第PCT/US02/04652号)に記載されており、これらの特許はこれらの方法の参考として本明細書に組み入れられている。
分化細胞を同定し、その後これらの細胞を未分化細胞から分離する方法は、当該技術分野で周知の方法により実行し得る。分化のために誘導された細胞は、分化細胞の数が未分化細胞を上回るという条件下で選択的に細胞を培養することによって同定し得る。同様に、分化細胞は、形態学的変化、並びに未分化状態では見られない特徴、例えば、細胞の大きさ、細胞プロセスの数(即ち、樹状突起または枝の形成)および細胞内小器官の分布の複雑性によって同定し得る。また、細胞受容体および膜貫通タンパク質といった特異的な細胞表面マーカーの発現により分化細胞を同定する方法も予想される。これらの細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体を使用することで、分化細胞を同定し得る。これらの細胞の検出は、蛍光活性化細胞選別(FACS)および酵素免疫測定法(ELISA)によって達成し得る。特異的な遺伝子の転写による上方調節の観点からすと、分化細胞は未分化細胞と異なる遺伝子発現レベルを示すことが多い。また、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用することで、分化に応じた遺伝子発現の変化を監視することもできる。さらに、マイクロアレイ技術を使用した全ゲノム解析を使用することで、分化細胞を同定することもできる。
従って、分化細胞は一度同定されると、必要に応じて未分化細胞から分離し得る。上に詳述した同定方法はまた、FACS、選好的細胞培養法、ELISA、磁性ビーズおよびそれらの組み合わせ等の分離方法も提供する。本発明の望ましい実施形態は、FACSを使用して細胞表面抗原の発現に基づき細胞を同定および分離することを想定する。
(さらなる培養方法)
さらなる実験では、MAPCを培養する際の密度が、約100細胞/cmまたは約150細胞/cm〜約10,000細胞/cm、例えば、約200細胞/cm〜約1,500細胞/cm〜約2,000細胞/cmまで異なる可能性があることが明らかにされている。この密度は細胞種によって異なる可能性がある。さらに、至適な密度は培養条件および細胞の源によっても異なる可能性がある。特定の培養条件および細胞に至適な密度を決定することは、当業者の能力の範囲内である。
また、約10%未満、例えば約3〜5%等の有効大気酸素濃度は、培養物中におけるMAPCの単離、増殖および分化の如何なる時点でも使用し得る。
(リンパ造血系におけるMAPCおよびその子孫細胞の使用)
MAPCは、先天性または後天性のリンパ造血障害を処置するための、あるいはMAPCに由来する療法に適用可能な障害の処置に同じ細胞またはその分化した子孫細胞を使用する前にキメラ現象を確立するための、代替となるHSCの源となる場合がある。MAPCはインビボでもインビトロでもリンパ造血細胞に分化する能力を有する。以下の実施例で考察する通り、マウスのMAPCをE11.5胎児肝フィーダー細胞EL08−1D2と共に、サイトカインの存在下で約2週間共培養した後、コロニー形成細胞(CFC)試験で培養したところ、赤芽球バースト形成単位(BFU−E)および混合コロニー形成単位(CFU−Mix)のコロニーが検出された。マウスのGFPトランスジェニックMAPCを、約275cGyで照射したNOD−SCIDマウスに移植し、抗NK抗体で処置したところ、約20週目の時点で最高約90%のGFPCD45細胞が骨髄(BM)に検出され、骨髄細胞、Bリンパ球およびTリンパ球に分化していた。同様に、ヒトのMAPCをNOD−SCIDマウスに移植したところ、リンパ造血細胞の生着が認められた。このように、HSCは、インビボでもインビトロでも、マウスだけでなくヒトのMAPCからも生成し得る。このプロセスを使用することで、リンパ造血系の細胞集団を長期にわたり放射線から保護し、提供し得る。
このため、MAPCは、先天性および後天性の悪性および非悪性リンパ造血障害を含むがこれらに限定されないリンパ造血障害の処置に有力な幹細胞の源である。本発明の組成物および方法は、種々のリンパ造血組織にリンパ造血細胞を提供するためのMAPCおよびその子孫細胞の形成および使用を対象とする。一実施形態において、MAPCまたはその子孫細胞は、リンパ造血障害の処置に使用される。「リンパ造血障害」とは、リンパ造血系の任意の疾患または障害を指す。この系には、脾臓、胸腺、リンパ節、血液(例えば、末梢血;PB)および骨髄(BM)が含まれる。
一実施形態において、リンパ造血障害には、以下が含まれるが、これらに限定されない:
− 急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性多形質白血病、急性未分化白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若年型慢性骨髄性白血病(JCML)、若年型骨髄単球性白血病(JMML)を含むがこれらに限定されない白血病(白血病は免疫系の癌であり、その細胞は白血球と呼ばれる);
− 不応性貧血(RA)、鉄芽球性不応性貧血(RARS)、芽球増加型不応性貧血(RAEB)、移行期の芽球増加型不応性貧血(RAEB−T)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)を含むがこれらに限定されない骨髄異形成症候群(骨髄異形成は前白血病と呼ばれることもある);
− ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫を含むがこれらに限定されないリンパ腫(リンパ腫は血管およびリンパ管を循環する白血球の癌である);
− 重症型ベータサラセミア(クーリー貧血としても知られる)、ダイアモンド・ブラックファン貧血、赤芽球癆、鎌状赤血球貧血を含むがこれらに限定されない赤血球の遺伝性異常(赤血球はヘモグロビンを含み、酸素を身体に運搬する);
− 重度の再生不良性貧血、先天性赤血球異形成貧血およびファンコーニ貧血を含むがこれらに限定されない貧血(貧血は赤血球の不全または形成異常である)、不慮の放射線照射により惹起される、または腫瘍科における骨髄移植のための放射線療法または化学療法により惹起される貧血からの回復、発作性ヘモグロビン尿症(PNH)を含むがこれらに限定されないその他の血球増殖の障害;
− 無巨核球症/先天性血小板減少症、グランツマン血小板無力症、骨髄増殖性障害、急性骨髄線維症、原発性骨髄線維症(骨髄線維症)、真性赤血球増加症、本態性血小板血症を含むがこれらに限定されない血小板の遺伝性異常(血小板は血栓形成に必要な小さな血球である);
− アデノシンデアミナーゼ欠乏症を伴うSCID(ADA−SCID)、X連鎖のSCID、T細胞およびB細胞が存在しないSCID、T細胞、正常B細胞が存在しないSCIDを含むがこれらに限定されない重症複合型免疫不全症(SCID);オーメン症候群;コストマン症候群、myelokathexis[骨髄中の顆粒球系細胞過形成を伴う好中球減少]を含むがこれに限定されない好中球減少症;毛細血管拡張性運動失調、ベアリンパ球症候群、分類不能型免疫不全症、デイジョージ症候群、白血球粘着不全症を含むがこれらに限定されない遺伝性免疫系障害;
− X連鎖リンパ増殖性障害(エプスタインバーウイルス易感染性としても知られる)、ウィスコット−アルドリッチ症候群を含むがこれらに限定されないリンパ増殖性障害(LPD);
− チェディアック・ヒガシ症候群、慢性肉芽腫症、好中球アクチン機能異常症、網膜異形成症を含むがこれらに限定されない食細胞障害(食細胞は外来生物を飲み込み、殺傷することのできる免疫系細胞である);および
− 多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症を含むがこれらに限定されない骨髄の癌(形質細胞障害)。
この他、MAPCまたはそれに由来する子孫細胞を使用して処置し得るリンパ造血障害の例としては、移植片対宿主病(GVHD)、自己免疫性障害、血友病等の血液凝固障害/凝固因子欠損症、サラセミア、慢性肉芽腫症およびゴーシェ病等のライソソーム蓄積症/酵素欠損症が含まれるが、これらに限定されない。MAPCはまた、ドナーの器官または組織移植片、例えば膵島移植、心臓移植または腎移植の宿主受容を可能にするキメラ免疫系の産生に使用される場合もある。MAPCはまた、鎌状赤血球貧血といった遺伝性欠損の修復を可能にするドナーまたはキメラ免疫系の産生にも使用されている。さらに、MAPCは、狼瘡、重症筋無力症、多発性硬化症、リウマチ性関節炎または糖尿病等の自己免疫性障害の処置のための、宿主の免疫系の置換にも使用される場合もある。
例えば、MAPC療法を使用して、HSC状態になるかなり前からリンパ造血を部分的または完全に回復させることができる。このため、新たに学習したT細胞は自己免疫性ではないと考えられることから、MAPCの使用は、現在自己免疫性障害に使用されているCD34の移植よりも、処置転帰が優れていると考えられる。従って、CD34細胞状態の形成前にMAPCを使用することで、新たに形成されるT細胞を産生できると考えられる。
MAPCまたはそれが分化した子孫細胞は遺伝子療法に使用されている。発現ベクターが自家、同種異系または異種のMAPCまたはそれが分化した子孫細胞に導入され、発現される場合もあれば、あるいは当該技術分野で既知の方法による相同または非相同組換えによって細胞のゲノムが改変される場合もある。この方法で、ある個体における遺伝的欠損を修正する場合がある。例えば、ベータサラセミア、鎌状赤血球貧血、アデノシンデアミナーゼ欠乏症またはリコンビナーゼ欠乏症を含むがこれらに限定されない障害が処置される場合がある。
さらに、MAPCまたはその分化した子孫細胞に、特定の遺伝子産物の発現または活動を阻害するリボザイム、アンチセンスRNAまたはタンパク質を発現させる場合がある。また、多剤耐性(MDR)遺伝子を含むがこれに限定されない薬物耐性遺伝子をMAPCまたはその分化した子孫細胞に導入して、薬物療法を受けても生存できるようにする場合もある。HIVまたはHTLV−IおよびHTLV−IIといったリンパ造血向性病原体においては、MAPCまたはその分化した子孫細胞を遺伝子改変して、MAPCまたはその分化した子孫細胞内で病原体の増殖を予防するとされるアンチセンスRNA、リボザイムまたはタンパク質を産生してもよい。また、非相同若しくは相同組換えによる直接的な、またはアンチセンス配列による間接的なDNAの置換、欠失または添加を含むがこれらに限定されない当該技術分野で既知の方法により、特定の遺伝配列の発現を停止させる場合もあれば、調節する場合もある。
MAPCまたはその分化した子孫細胞は、骨髄移植の移植片として使用され、悪性腫瘍、骨髄不全状態、先天性の代謝性、免疫性またはリンパ血液性障害を処置する場合がある。例えば、骨髄標本を被験体から入手し、MAPCを単離し得る。その後、MAPCをインビトロで増殖し、自家骨髄移植の移植片として使用し得る。あるいは、移植前にMAPCをエキソビボでリンパ造血細胞に分化させることもできる。MAPCおよびその分化した子孫細胞は、移植前に遺伝子操作することもできる。このような細胞は一般的に、被験体が治癒を目的とした化学−放射線療法を受けた後に注入される。
増殖した細胞は妊娠初期でのin utero移植に使用することもできる。代謝性障害またはリンパ血液性障害を来した胎児は出生前に診断し得る。骨髄は健常な個体からを得る場合があり、MAPCをインビトロにて得て、増殖させてもよい。このMAPCを例えば子宮内注入により胎児に投与し得る。あるいは、移植前にMAPCをリンパ造血細胞に分化させることもできる。MAPCおよびその分化した子孫細胞は、移植前に遺伝子操作することもできる。このように、キメラが形成され、それにより臨床上の異常が完全または部分的に緩和される。
リンパ造血は当該技術分野で利用可能ないずれかの手段によって検出し得る。血液の機能を測定/試験するためには多くの試験が当業者に利用可能である。例えば、CBC(全血球計算)は血液内のおよそ3種類の細胞(赤血球、白血球および血小板)に関する詳細な情報を提供する通常の血液検査である。さらには、蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用する場合もある。FACS解析は、造血細胞(T細胞、B細胞、顆粒球、マクロファージ、TまたはB細胞の未成熟な集団、赤血球等)の任意の集団を検出するために実施し得る。CFU−S検定が使用される場合もある。また、ヘモグロビン濃度、赤血球数または赤血球半減期を測定する試験等、赤血球またはそのパラメータを測定する場合もある。処置される被験体のリンパ造血は、対照となるリンパ造血の値と比較し得る。一実施形態において、対照値は健常者(処置の必要のない者)から得る。別の実施形態において、対照値は処置前または処置後の幾つかの時点の被験体から得る。
MAPCは、1)ヒトリンパ造血細胞を制御する物質(生物学的物質または低分子等)のスクリーニング、2)ヒトワクチン産生の候補となる抗原の検査のためのスクリーニング、3)液性免疫または感染症の処置のためのヒト抗体の産生(動物の抗原刺激による)または4)細胞毒性、ヘルパーまたは制御作用を有する抗原特異的T細胞の産生を含むがこれらに限定されない、動物(免疫欠損マウス等)におけるにおけるヒト免疫系の確立にも利用される。
(MAPCの投与)
MAPCまたはその分化した子孫細胞は、局所注射、カテーテル投与、全身注射、腹腔内注射、非経口投与、経口投与、頭蓋内注射、動脈内注射、静脈内注射、脳室内注射、胎盤内注射、子宮内注射、外科的心筋内注射、経心内膜注射、経血管注射、冠動脈内注射、経血管注射、筋肉内注射、目標組織への外科的注射または組織表面への直接塗布(手術中または創傷上等)を含むがこれらに限定されない当該技術分野で利用可能な種々の方法で被験体に投与し得る。
MAPCは循環系を介して末梢的または局所的に投与し得る。幹細胞の「ホーミング」にあたっては、成長および機能に適当な環境内に移植細胞が凝集する。サイトカインで前処置を行いホーミングを促進することは、本発明の方法における別の検討事項である。特定のサイトカイン(MAPCまたはその他の幹細胞、前駆細胞または分化細胞のホーミング等といった細胞の移動を誘導または促進する細胞因子等)はMAPCの移動を促進し得る。サイトカインには、間質細胞由来因子(SDF−1)、幹細胞因子(SCF)、アンジオポイエチン−1、胎盤由来増殖因子(PIGF)および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)が含まれるが、これらに限定されない。また、サイトカインは、ホーミングプロセスを容易にするICAM、VCAM等の内皮結合分子の発現を促進する任意の物質も含まれる。
目標の組織の表現型特徴へのMAPCの分化は、例えばリンパ造血細胞の形成を促進する因子といった、分化因子を使用すると促進し得る。
新たに形成する組織の生存能力は、血管新生によって強化し得る。血管新生を促進する因子には、VEGF、aFGF、アンジオゲニン、アンジオテンシン−1および−2、ベータセルリン、bFGF、因子XおよびXa、HB−EGF、PDGF、アンジオモジュリン、アンジオトロピン、アンジオポエチン−1、プロスタグランジンE1およびE2、ステロイド、ヘパリン、1−ブチリル−グリセロールおよびニコチンアミドが含まれるが、これらに限定されない。
アポトーシスを低減する因子も、リンパ造血組織等の新しい組織の形成を促進し得る。アポトーシスを低減する因子には、β遮断剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)、AKT、HIF、カルベジロール、アンジオテンシンII型1受容体拮抗剤、カスパーゼ阻害剤、カリポリドおよびエニポリドが含まれるが、これらに限定されない。
一実施形態において、EPOをはじめとする生物学的物質または低分子等の、リンパ造血を促進する1つ以上の因子を、MAPCまたはその分化した子孫細胞の前、後または同時に投与する。
外因性因子(サイトカイン、分化因子(系統分化を誘導する増殖因子または血管新生因子等の細胞因子等)、血管新生因子および抗アポトーシス因子等)はMAPCまたはその分化した子孫細胞の前、後または同時に投与し得る。例えば、同時投与のある形態では、投与前に対象となる因子をMAPC懸濁培地で混合する。投与方法は様々で、最初の投与の後に次の投与を行うことも含まれる。
細胞の生存率を上昇させることのできる方法には、MAPCまたは子孫細胞をバイオポリマーまたは合成ポリマーに組み込む方法がある。患者の状態によっては、注射部位が瘢痕またはその他の障害のため、細胞播種および増殖に適さないことが明らかになることがある。バイオポリマーの例には、フィブロネクチン、フィブリン、フィブリノーゲン、トロンビン、コラーゲンおよびプロテオグリカンが含まれるが、これらに限定されない。バイオポリマーはサイトカイン、分化因子、血管新生因子または抗アポトーシス因子の有無にかかわらず構築し得る。さらに、これらは懸濁液でも行うことができる。代替となる別の方法には、細胞とバイオポリマーの混合物の間隙に封鎖された細胞を有する3次元ゲルがある。ここでも、サイトカイン、分化因子、血管新生因子、抗アポトーシス因子またはそれらの組み合わせがゲル内に含まれてもよいと考えられる。これらは、本明細書に記載の種々の経路を介して注入によって展開できると考えられる。
現在のヒトを対象とした自己骨髄由来単核球の試験では、約1〜4×10細胞の経験的用量が使用されてきた。しかし、種々のシナリオでは、投与する細胞量の至適化が必要となる場合がある。このため、投与する細胞量は処置対象の被験体によって幅があると考えられる。望ましい実施形態において、約10〜10、より好ましくは約10〜10、最も好ましくは約3×10の幹細胞および任意には約50〜500μg/kg/日のサイトカインをヒトの被験体に投与し得る。しかし、どれほどの用量が有効用量と考えられるかの正確な判定は、体格、年齢、障害または損傷、損傷の程度、損傷が生じてからの経過時間、送達様式に伴う因子(直接注射では低用量、静脈内注射では高用量)をはじめとする各患者の個々の要因に基づいて行われる場合がある。この開示内容および業界での知見により、当業者は容易に用量を突きとめることができる。
幹細胞の使用に関する課題は、単離した幹細胞集団の純度である。例えば骨髄細胞は細胞集団の混合であり、望ましい作用を発揮するのに十分な程度まで純化し得る。当業者は、蛍光活性化細胞選別(FACS)といった種々の既知の方法を使用して、細胞集団中のMAPCの比率を容易に決定し得る。MAPCまたはその分化した子孫細胞を含む集団の望ましい純度は、約50〜55%、約55〜60%および約65〜70%である。より好ましくは、純度は約70〜75%、約75〜80%、約80〜85%であり、最も好ましくは純度は約85〜90%、約90〜95%および約95〜100%である。しかし、約25〜30%、約30〜35%、約35〜40%、約40〜45%および約45〜50%といった純度の低い集団も有用になることができる。MAPCの純度は、集団内での遺伝子発現プロファイルに従って決定し得る。用量は当業者によって容易に調節し得る(低純度の場合は用量の増量が必要であること等)。
当業者は、本発明の方法で投与する組成物中の細胞および任意の添加剤、賦形剤または担体の量を容易に決定し得る。通常、添加剤は(活性を有する幹細胞またはサイトカインに加えて)リン酸緩衝生食水中に0.001〜50wt%溶液の量で存在し、活性成分はマイクログラムからミリグラムの単位で、例えば約0.0001〜約5wt%、好ましくは約0.0001〜約1wt%、最も好ましくは約0.0001〜約0.05wt%または約0.001〜約20wt%、好ましくは約0.01〜約10wt%、最も好ましくは約0.05〜約5wt%で存在する。無論、動物またはヒトに投与する組成物が何であれ、如何なる特殊な投与方法についても、マウス等のげっ歯類等の好適な動物モデルにおいて致死用量(LD)およびLD50を測定すること等によって毒性を決定し、好適な反応を引き出す組成物の用量、その成分の濃度、組成物の投与時期を決定するのが望ましい。このような測定は、当業者の知見、本開示内容および本明細書で言及した資料からみて過度な実験を必要としない。また、連続的投与の時期も過度な実験をせずに確定し得る。
本発明の治療的組成物を投与する場合、一般的には注射可能な単位用量に処方される(溶液、懸濁液、エマルジョン)。注射に好適な製剤学的調製物には、滅菌水溶液および分散液が含まれる。担体は、例えば水、生食水、リン酸緩衝生食水、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)およびその好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であってもよい。
また、抗菌保存剤、抗酸化物質、キレート化剤および緩衝剤をはじめとする、組成物の安定性、滅菌性および等張性を促進する種々の添加剤を添加し得る。細菌の活動を予防するには、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の種々の抗菌剤および抗真菌剤を使用するとよい。多くの場合、例えば糖、塩化ナトリウム等の等張化剤を含めることが望ましい。製剤学的注射液を長期にわたって吸収させるには、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといった吸収を遅延させる物質を使用するとよい。但し、本発明によれば、使用する賦形剤、希釈剤または添加剤は何れも、細胞に適合できなければならないと考えられる。
滅菌注射液は、本発明を実践するのに使用する細胞を、適切な溶媒と必要に応じて種々の量の他の成分との必要な量に組み込むことによって調製し得る。
一実施形態において、MAPCまたはそこから分化した子孫細胞を最初に投与し、その後MAPCまたはそこから分化した子孫細胞をさらに投与することによって維持し得る。例えば、MAPCはある注射法によって投与し、その後さらに、異なるまたは同じ方法で投与する。
ヒトの被験体は一般的にイヌまたは他の実験動物よりも長期にわたり処置され、処置が障害プロセスの長さおよび有効性に比例する期間となるとされている。用量は単回投与である場合もあれば、数日間にわたる反復投与である場合もある。このため、当業者は、ラット、マウス、イヌ等による動物実験からヒトへのスケールアップを、本明細書で言及する開示内容および文献並びに当該技術分野の知識を基にした技法により、過度の実験なしに行うことができる。処置は一般的に、障害プロセスの長さ、薬物の有効性および処置する被験体に比例した期間で行われる。
MAPCまたはそこから分化した子孫細胞を含む組成物の例には、懸濁液をはじめとする投与用の液体製剤および滅菌懸濁液またはエマルジョン等の直接または静脈内投与(注射投与)用の製剤が含まれる。このような組成物は、好適な担体、希釈剤または滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース等の調剤と混合されている場合がある。組成物は凍結乾燥させることもできる。組成物は投与経路および目的の製剤に応じて、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化剤または粘度促進添加剤、保存剤、風味剤、着色剤等の副次的な物質を含むことができる。参考として本明細書に組み込まれている”REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE” 17th edition,1985等の標準的な文献を参照して、過度の実験を行うことなく好適な製剤を調製する場合がある。
本発明の組成物は、選択したpHに緩衝した等張性水溶液、懸濁液、エマルジョンまたは粘性組成物等の液体製剤として利便的に供給される。液体製剤は通常、ゲル、他の粘性組成物および固形組成物よりも調製しやすい。さらに、液体組成物は、特に注射により投与が若干簡便になる。他方、粘性組成物は、しかるべき粘度で処方して特定の器官とより長時間接触できるようにし得る。
好適な担体および他の添加剤の選択は、正確な投与経路および特定の剤型、例えば液体剤型(組成物を溶液、懸濁液、ゲルまたは徐放性剤型または液体充填剤型といった別の液体剤型に処方しなければならない場合)の種類によって異なる。
溶液、懸濁液およびゲルは通常、細胞に加えて大量の水分を含む(好ましくは精製滅菌水)。pH調節剤(NaOH等の塩基)、乳化剤または分散剤、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、ゲル化剤(メチルセルロース等)等の少量の他の成分が存在する場合もある。組成物は等張性であってもよい。即ち、血液および涙液と同じ浸透圧であってもよい。
本発明の組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウムまたはデキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールまたは他の無機または有機溶質といったその他の薬学的に許容される物質を使用して達成し得る。ナトリウムイオンを含有する緩衝剤には塩化ナトリウムが特に望ましい。
希望に応じて、組成物の粘度は、薬学的に許容される増粘剤を使用して、選択したレベルに維持し得る。容易かつコスト的に入手し易く、取り扱いが簡単であることから、メチルセルロースが望ましい。その他の好適な増粘剤には、例えばキサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー等が含まれる。望ましい増粘剤の濃度は、選択した増粘剤および所望の粘度によって異なる。粘性組成物は通常、このような増粘剤を溶液に添加することによって調製される。
薬学的に許容される保存剤または細胞安定剤を使用して、組成物の寿命を延ばすことができる。好ましくは、保存剤が必要な場合、本発明に記載のMAPCまたは子孫細胞の生存能力または有効性を損なわない組成物を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
当業者は、組成物の成分が化学的に不活であるように選択する必要があることを認識するものと考えられる。化学および製剤学の原則に長けた当業者にとってこれは問題ではなく、本開示内容および本明細書で言及した資料から標準的なテキストまたは簡単な実験(過度の実験を含まない)を参照にして問題を容易に避けることができる。
特定の患者の年齢、性別、体重および病態および投与に使用する組成物(個体や液体)といった要素を考慮して、医学および獣医学に長けた当業者に利用可能な剤型および技法で、組成物を投与し得る。ヒトまたは他の動物のための剤型は、本開示内容、本明細書で言及する文献および当該技術分野の知識により、過度の実験を行わず当業者が決定し得る。
初回投与および更なる用量または連続投与における好適な投与法も様々で、初回投与後に次の投与を行うことを含む場合もあるが、それでも尚、当業者は本開示内容、本明細書で言及する文献および当該技術分野の知識によって確認し得る。
(免疫拒絶を予防するための移植アプローチ)
幾つかの実施形態において、宿主の移植細胞に対する免疫反応を刺激するリスクを低減するため、移植/投与前にMAPC(または分化した子孫細胞)を処置するかまたは別の方法で改変させるのが望ましい場合がある。宿主の免疫反応を刺激するリスクを低減する当該技術分野で既知のいずれかの方法が使用される場合がある。以下はその幾つかの例である。
(1.万能ドナー細胞:)
MAPCを操作して万能ドナー細胞として使用し得る。未分化MAPCはMHC−IまたはII抗原を発現しないが、幾つかの分化した子孫細胞はこれらの抗原の一つまたは両方を発現する場合がある。MAPCを改変して、MHC−IまたはMHC−II抗原を除去し、場合によっては予定レシピエント由来のMHC抗原を導入し、細胞がNKを介した死滅のターゲットに容易にならないようにし、無制限のウイルス複製または悪性化に影響を受けにくくすることによって、万能ドナー細胞として使用し得る。MHC抗原の除去は、相同組換えまたはプロモーター領域への点変異の導入または、抗原の最初のエクソンに点変異を導入してchimeroplast等と共に終止コドンを導入することによって達成し得る。宿主のMHC抗原の運搬は、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルスまたは他のウイルスによる形質導入またはMHC抗原cDNAによる標的細胞の感染によって達成し得る。
(2.免疫認識を回避するための子宮内移植:)
MAPCは、遺伝異常を処置するため、または免疫系が発現する前に宿主に寛容される細胞を導入するために、子宮内移植に使用し得る。これは、大量のヒト細胞を動物内で作製する方法であってもよければ、タンパク質または酵素を処置する細胞を移植することによってヒト胚の遺伝的欠損を処置するための方法として使用してもよい。
(3.免疫認識および寛容)
(A.免疫認識)
免疫反応は、T細胞上の受容体(T細胞受容体またはTCR)と体組織(ClassIおよびIIのMHC)との間に起こる分子認識の事象によって制御される。このTCR/MHCの相互作用は免疫反応の抗原特異的な成分であり、自己および外来抗原の識別を可能にする。免疫反応は、T細胞が外来または非自己抗原を認識した後にしか起こらないが、不慮の免疫反応または自己免疫反応を予防するには、この他のシグナル伝達事象が必要であり機能する(Buckley,2003)。
免疫認識は2つの相、感作および二次反応に分けることができる。感作は、樹状細胞と呼ばれる免疫細胞の専門集団と、T細胞、Tヘルパー細胞のサブセットが相互作用することによって達成される。これらの樹状細胞または抗原提示細胞(APC)にクラスII MHC複合体が提示した抗原のTヘルパー細胞による認識は、抗体および細胞障害性T細胞の両方の反応を開始させるのに重要である。クラスII MHC受容体を発現する細胞は僅かであり、これらの「プロフェッショナルな」APCは、非自己抗原でTヘルパー細胞を感作させるだけでなく、T細胞の増幅を調節し、細胞障害性免疫反応に対して液性免疫反応を制御するサイトカインカスケードを発現することを特徴とする。B細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞およびその他の樹状細胞はAPCコンパートメントを作成する。このため、専門的な細胞のみが同種異系の反応性をはじめとする免疫反応性の信号を送ることができる。
2つのクラスのMHCレセプター、クラスIおよびクラスIIは、細胞内で発現する全ての遺伝子に由来する短いペプチドと細胞内で結合するような構造モチーフをしている。この細胞表面上のMHC受容体に結合したペプチドの複合体は、TCRによって認識される分子複合体であり、従って、T細胞による抗原認識の特異性(鍵と鍵穴の機序と類似)を生じさせる。免疫系は一度感作されその働きを開始すると、免疫系細胞は抗原が除去されるまで増幅し、休息または記憶状態で留まって抗原が再度侵入してきた場合に反応する。
免疫反応性の制御はカスケードで達成される。Tヘルパー細胞とAPCとの間での非自己ペプチドの一次認識に加えて、第二段階は病原体に起因する刺激によるAPCの必要な刺激である。病原体に起因する刺激とは、例えば、LPS等のような細菌細胞壁成分、B細胞上の表面Igと架橋結合するウイルス粒子、ウイルス感染に伴う二本鎖RNA、肉体的な創傷および血管構造への損傷によって産生される炎症性サイトカイン等である。これらは全て、免疫反応が必要な非抗原特異的な確認を提供する。これらの最初の信号の性質も、種々のサイトカインカスケードを刺激することにより、液性反応と細胞反応とを調節するAPCのトリガーとなる。
(B.寛容)
免疫系を調節する第二のカスケードは、自己反応性T細胞を除去することによって、自己抗原への反応を制限することである。B細胞免疫およびT細胞免疫の両方で、これは、Tヘルパー細胞集団の能力の範囲を調節することによって達成される。この細胞集団が感作反応における反応性を決定するためである。T細胞は骨髄内で産生され、自己抗原と非自己抗原を区別する「学習」をするために胸腺へと循環する。自己組織を認識するT細胞は、胸腺の個体発生中に枯渇し、循環血液中に存続する自己抗原に反応するT細胞とT細胞受容体の複合体(TCR)が全く残らないようになる。これが中枢性寛容と呼ばれ、これが破壊されると自己免疫性障害となる。
末梢性寛容と呼ばれる第二の寛容を誘導し得る。これは、胸腺を通過してきたT細胞が非自己抗原と出会うが、ヘルパー機能または細胞障害性機能のいずれかのトリガーをひくのに必要なAPCからの二次的または共刺激的信号は受け取らないことによって達成される。これは、APCがクラスII MHC受容体を介して抗原を発現しているが、感染症または病原体の脅威の結果としての副次的な信号を受け取らず、従ってAPCが反応に必要なサイトカインカスケードを発現しないという場合に起こる可能性がある。このように部分的に刺激されるT細胞はアネルギーまたはアポトーシスとなる。これにより、液性反応または細胞障害性反応に必要なTヘルパー細胞集団が枯渇する。
第二の形態の末梢性寛容は、細胞障害性T細胞が、体細胞の大半でクラスI MHC複合体における非自己抗原を発現した細胞に出会った場合に生成される。これらのT細胞のTCRが、共刺激受容体の活性化(CD28/CD86の相互作用等)が不在であってクラスI MHCと結合する場合、T細胞はアネルギーまたはアポトーシスとなる。この二次的信号を供給するのに必要で、且つ供給し得る二次的共刺激受容体の相互作用のパネルがあり、従って細胞の表面表現型によって免疫刺激またはアネルギーを強力に予測し得る。
多くの腫瘍細胞は、クラスI MHCの発現を下方調節することによって、細胞障害性の認識から逃れる経路を発達させ、それによって免疫系のT細胞から自身を見えなくする。多くのウイルスは、MHC受容体の細胞表面の発現を干渉する特異的な機序を発達させ、免疫反応を逃れている。このMHCの発現が低下するという特性と共に、腫瘍細胞やウイルス感染細胞を除去するために免疫系の新たな武器が発達してきた。ナチュラルキラーまたはNK細胞と呼ばれる細胞集団は、クラスI MHC陰性細胞に対して細胞障害性作用を発揮し得る。この作用は負の制御を受ける。NK細胞は、キラー細胞抑制受容体(KIR)と呼ばれる受容体との相互作用を介して標的細胞と結合し、クラスI MHCとの相互作用によって活性を失わない限りその細胞を死滅させる。
(C.造血キメラおよび免疫寛容誘導)
骨髄移植は、化学療法薬および/または放射線療法が宿主の免疫系の骨髄を破壊した場合の癌治療において必要とされる。患者は、骨髄移植片に存在する造血幹細胞から免疫機能を再構築するため、骨髄ドナーから免疫系の細胞成分および分子成分を獲得する。ドナーの免疫系の再構築には、個体発生で認められる自己および非自己抗原の学習の反復が付随し、それによって宿主組織のドナー免疫系に対する免疫寛容が成立する。ドナー免疫系の再構築の二次的観点は、宿主がいまや当初のドナーから臓器または組織片を拒絶反応なしに受け入れることができるということである。
骨髄移植にそれほど重度でない骨髄破壊状態が使用される場合、宿主の免疫系は完全に枯渇しているわけではなく、適切な免疫抑制治療を行えば、ドナーと宿主の両方の免疫細胞からなるキメラ免疫系が再構築される。この場合、ドナーと宿主の両方の細胞成分および分子成分に対する宿主の免疫寛容が成立し、ドナーから臓器または組織片を拒絶反応なしに受け入れることができる。ドナーの骨髄の宿主による拒絶反応およびドナーの骨髄からの移植片対宿主反応の臨床的管理は、この治療法が奏功するかどうかの鍵である。移植片対宿主反応の臨床的リスクは、著明かつ依然として完全に解決されていない、この移植法を標準化するにあたってのリスクである。これらの臨床プロトコールは近年多大な注目を集めている(Waldmann,2004)。
免疫系を再構築することができ、移植片対宿主反応のリスクがない幹細胞の使用からは著明な利益が生まれる。移植片対宿主反応は骨髄移植片に存在する汚染T細胞が原因である。骨髄からの造血幹細胞の精製が通常通りであっても、それが患者に成功裏に生着するには副次的なT細胞の付随が必要である。このため、T細胞の有益な生着価値と移植片対宿主反応の有害な作用との間には決定的なバランスがとられていなければならない。
MAPCおよびES細胞は、T細胞をはじめとする造血細胞なしに増殖し得るため、移植片対宿主反応のリスクなしに送達し得る幹細胞集団である。これは臨床リスクを大幅に低減する。細胞送達の急性期に一時的にNK細胞の活性を除去すれば、原始幹細胞の生着および造血系再構築の頻度が、長期の免疫抑制のリスクなしに臨床的に有用な閾値にまで上昇する。
MAPCまたはES細胞が生着し、造血系へと分化するため、新しく形成されたT細胞は、胸腺および末梢で宿主のT細胞と同じ自己対非自己の学習を受ける。ドナーおよび宿主由来の新しく作製されたナイーブT細胞への共同曝露は、反応性細胞の互いの枯渇を招くため、MAPCまたはES細胞ドナー由来のT細胞を発現する同種異系抗原への免疫寛容は成立する。このため、患者はMAPCまたはES細胞ドナーの免疫系の細胞成分および分子成分に対する免疫寛容を成立させ、拒絶反応なしに細胞、組織または臓器移植片を受け入れる。
(D.MAPCおよびその他の幹細胞)
上記の寛容誘導の機序は、骨髄系の再構築が可能な細胞に独特のものである。同じく骨髄に由来する間葉系幹細胞は免疫原性が低く、同種異系移植でも存続し得るが、ドナーの免疫成分に対する免疫寛容は成立しない。他の系統分化幹細胞で、造血系の再構築の可能性を示すものはない。これには、神経幹細胞、脂肪由来幹細胞、肝幹細胞等が含まれる。
ES細胞を使用したその後の移植片への寛容を誘導する能力は、Fandrich (2002)で実証されている。この場合、無侵襲の処置でマウスES細胞の送達を行うと、動物は心臓の同種異系移植片を拒絶反応なしに受け入れることができた。このため、造血系の再構築をはじめとする、ES細胞およびMAPCに共通する系統再生特性により、移植寛容が成立する。MAPCは移植寛容のためのES細胞の臨床使用の代替となるものである。
このため、MAPCまたはES細胞の投与および種々の血球へのその分化は、MAPCまたはES細胞と組織適合性の上で適合する二次的臓器または組織移植に対して、レシピエントを条件付けるか準備させることができる。例えば、糖尿病被験体は、例えば幹細胞バンクから入手した細胞で処置し得る。続いて寛容化が起こり、その後その糖尿病被験体にはその幹細胞と同じ源から入手または派生した同種異系の膵島細胞を提供すれば、成熟した膵島に対するレシピエントの拒絶反応は起こらない。このプロセスは、心臓、肝、肺、腎および/または膵を含むがこれらに限定されないいずれかの二次移植(臓器、組織および/または細胞移植等)で利用可能である。
(4.ナチュラルキラー(NK)細胞の機能)
細胞集団からNK細胞を枯渇させることを含め、NK細胞の機能を阻害する、物質等のいずれかの手段を投与することで、免疫拒絶反応を予防する、生着を促進する、または免疫寛容を促進する場合がある。このような物質には、抗NK細胞抗体、照射、またはNK細胞の機能を阻害し得るその他いずれかの方法が含まれる。NK機能の阻害については、2005年5月5日出願のPCT出願番号第PCT/US2005/015740号に詳述されており、この出願は、インビボにおける幹細胞の存続を助けるためにNK細胞を阻害する方法を教示するために、参考として本明細書に組み入れられている。
このように、本明細書では、MAPCへの被験体の免疫寛容を増大させる方法であって、MAPCおよびナチュラルキラー細胞の機能を阻害する有効量の物質を被験体に投与することによって、抑制剤を投与しない方法よりもMAPCへの免疫寛容を増大させる工程を包含する、方法も提供される。
(5.遺伝子療法)
MAPCは身体から抽出および単離することができ、未分化状態で培養にて増殖するか、培養にて分化へと誘導させ、特にウイルスによる形質導入をはじめとする種々の手法を使用して遺伝子変化させることができる。遺伝材料の取り込みおよび発現は明示でき、外来DNAの発現は発達中にわたって安定している。外来DNAを幹細胞に挿入するためのレトロウイルスおよびその他のベクターは当業者には利用可能である(Mochizuki,H.,et al.,1998;Robbins,P.,et al.,1997;Bierhuizen,M.,et al.,1997;Douglas,J.,et al.,1999;Zhang,G.,et al.,1996)。レトロウイルスベクターを使用して一度形質導入すると、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)の発現は単離MAPCに由来する最終分化した筋細胞、内皮細胞およびc−Kit陽性細胞で存続し、MAPCに導入されたレトロウイルスベクターの発現が分化の全プロセスにわたって存続していることを示す。最終分化は、以前にレトロウイルスベクターで形質導入された約10eGFP細胞に始め、初期のMAPC培養期間を数週間とした培養から誘導された。
(MAPC投与後の被験体のモニタリング)
移植後、投与されたMAPCの増殖若しくは分化、またはMAPC若しくは子孫細胞の治療的効果が監視される場合がある。
投与後、被験体のMAPCまたは子孫細胞に対する免疫寛容は、被験体のMAPCに対する免疫寛容を評価するための当該技術分野で既知の種々の方法で試験される場合がある。被験体のMAPCの寛容が期待したほどでない(例えば、被験体の免疫系が外来MAPCを拒絶する)場合は、当該技術分野で既知の、被験体の治療補助的な免疫抑制処置が実施される場合がある。
(遺伝子改変されたMAPC)
MAPCまたはそこから分化した子孫細胞は、エキソビボで遺伝子変化させることができることから、遺伝子療法を阻む最も重要な障壁の一つが除去される。例えば、被験体の骨髄穿刺液を入手し、その穿刺液からMAPCを単離する。その後MAPCに遺伝子改変を加えて、1つ以上の所望の遺伝子産物を発現させる。その後、MAPCをエキソビボで選別するか、選択して、成功裏に改変された細胞を同定し、局所投与または全身投与のいずれかで、それらの細胞を被験体に導入するか、分化させてから被験体に導入し得る。あるいは、MAPCを分化させ、その後その分化細胞を投与前に遺伝子改変し得る。何れの場合も、これらの細胞は、所望の遺伝子産物を発現することのできる細胞の安定してトランスフェクションされた源を提供する。特に、患者自身の骨髄等の組織がMAPCの源である場合、この方法は移植用の細胞を作成する免疫学的に安全な方法を提供する。
(MAPCを遺伝子改変する方法)
本明細書に記載の方法で単離した細胞またはその分化した子孫細胞は、当業者に利用可能な種々の方法によってDNAまたはRNAを細胞内に導入することにより、遺伝子改変し得る。これらの方法は一般的に以下の4つに大きく分けることができる:(1)例えばレンチウイルス(Mochizuki,H.,et al.,1998;Martin,F.,,et al.,1999;Robbins,,et al.,1997;Salmons,B.and Gunzburg,W.H.,1993;Sutton,R.,et al.,1998;Kafri,T.,et al.,1999;Dull,T.,et al.,1998)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、Davidson,B.L.,et al.,1993;Wagner,E.,et al.,1992;Wold,W.,Adenovirus Methods and Protocols,Humana Methods in Molecular Medicine (1998),Blackwell Science,Ltd.;Molin,M.,et al.,1998;Douglas,J.,et al.,1999;Hofmann,C.,et al.,1999;Schwarzenberger,P.,et al.,1997を参照)をはじめとするレトロウイルス;シンドビスウイルス(米国特許番号第5,843,723号;Xiong,C.,et al.,1989;Bredenbeek,P.J.,et al.,1993;Frolov,I.,,et al.,1996)、ヘルペスウイルス(Laquerre,S.,et al.,1998)およびウシパピローマウイルスをはじめとするアルファウイルス等のDNAまたはRNAのウイルスベクターの使用を含むウイルスによる導入;(2)リン酸カルシウムによるトランスフェクションおよびDEAEデキストランによるトランスフェクション方法をはじめとする化学的導入;(3)例えば、リポソーム(Loeffler,J.and Behr,J.,1993)、赤血球ゴーストおよびプロトプラスト等のDNAを増量した膜小胞を使用した膜融合による導入;並びに(4)マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイル(J.Wolff,”Gene Therapeutics” (1994) page 195;Johnston,S.A.,et al.,1993;Williams,R.S.,et al.,1991;Yang,N.S.,et al.,1990)、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションまたは直接的な「裸の」DNA導入。
細胞は、予め選択した単離DNAの挿入、細胞ゲノムのセグメントの予め選択した単離DNAでの置換または細胞の細胞ゲノムの少なくとも一部の欠失または不活化によって、遺伝子改変し得る。細胞ゲノムの少なくとも一部の欠失または不活化は、例えば遺伝子組換え、アンチセンス技術(ペプチド核酸(PNA)の使用を含む)またはリボザイム技術を含むがこれらに限定されない種々の方法によって達成し得る。1つ以上の予め選択したDNA配列の挿入は、相同組換えまたは宿主細胞ゲノムへのウイルスによる組み込みによって達成し得る。非相同組換えの方法もまた、例えば米国特許番号第6,623,958号、第6,602,686号、第6,541,221号、第6,524,824号、第6,524,818号、第6,410,266号、第6,361,972号に記載の通り既知であり、これらの特許の内容は、非相同組換えの方法に関する全体の開示内容の参考として特別に組み入れられている。
所望の遺伝子配列も細胞、特にその核に、プラスミド発現ベクターおよび核局在配列を使用して組み込むこともできる。ポリヌクレオチドを核に向かわせる方法は当該技術分野で既に解説されている。例えば、Sebestyen,et al.,(1998)に記載の通り、シグナルペプチドをプラスミドDNAに結合させてDNAを核に向かわせてより効率的な発現を可能にし得る。
特定の化学物質/薬物を使用して対象となる遺伝子を正または負に誘導し、任意の薬物/化学物質の投与後に除去することのできるプロモーターを使用して、遺伝材料を導入し得るか、特異的な細胞コンパートメント(細胞膜を含むがこれに限定されない)において化学物質(タモキシフェン反応性突然変異エストロゲン受容体を含むがこれに限定されない)による誘導を可能にするように標識をつけることができる。
標的細胞のトランスフェクションまたは形質導入の成功は、当業者に既知の技法において、遺伝子マーカーを使用して示すことができる。例えば、オワンクラゲ(Aequorea victoria)の緑色蛍光タンパク質は、遺伝子改変した造血細胞を同定および追跡するのに有効なマーカーであることが明らかにされている(Persons,D.,et al.,1998)。代替となる選択マーカーには、β−Gal遺伝子、短縮された神経成長因子受容体、薬物選択マーカー(NEO、MTX、ヒグロマイシンを含むがこれらに限定されない)が含まれる。
トランスフェクションまたは形質導入法のいずれかを応用することで、転写制御配列をMAPCまたは子孫細胞に導入し、所望の内在性遺伝子を活性化し得る。これは相同組換え(米国特許第5,641,670号等)または非相同組換え(米国特許第6,602,686号等)の療法で行うことができる。これらの特許は、内在性遺伝子の活性化の方法を教示するために参考として組み入れられている。
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態および態様を実証して、詳細に説明するために提供されるものであって、本発明の適用範囲を制限することを目的としたものではない。
(実施例1:MAPCはリンパ造血系を再構築するHSCを生じさせる)
2002年、マウスLacZ+ MAPCを亜致死線量の放射線照射を行ったNOD−SCIDマウスに移植すると造血系に分化するが、造血細胞の生着率は低いことが発表された(骨髄およびBリンパ球が2〜8%、Tリンパ球なし)(Jiang Y,et al.,2002)。本明細書に示す通り、NOD−SCIDマウスに依然として存在する内在性のNK細胞を除去する場合、MAPCは95%までのGFP血球を生じさせることができる。また、単離され低酸素(5%)で培養されたMAPCは、ES転写因子、Oct4のmRNAおよびタンパク質レベルが高く、分化能の高いMAPCとなる。このため、NK活性を低下させるため1日目、11日目および22日目に275cGyを照射し、抗asialo−GM1抗体で処理したNOD−SCIDマウスの低酸素におけるMAPCの生着を試験した。
Jiang,Y.,et al.,2002に記載の通り、マウスMAPC細胞系は、eGFPトランスジェニックC57B1/6 Thy1.1マウス骨髄細胞から確立された。MAPCを60%DMEM−LG(Gibco BRL)、40%MCDB−201中で、1×SITE、0.2×LA−BSA、0.2g/L BSA、0.1mMアスコルビン酸2−リン酸塩、0.1mMβメルカプトエタノール(Sigma)、100Uのペニシリン、1000Uのストレプトマイシン(Gibco)、1000U/mLのLIF(Chemicon)、10ng/mLのmEGF(Sigma)、10ng/mLのhPDGF−BB(R&D systems)、2%ウシ胎児血清(FCS)(Hyclone Laboratories)と共に、ヒト10ng/cmフィブロネクチン(Sigma)でコーティングした皿(Nunc)において、約5%の二酸化炭素および約5%の酸素で培養した。プレートした細胞密度は約100細胞/cmであり、細胞は2日毎に分割した。
5%のOで培養した約0.3〜1×10のeGFP C57B1/6 MAPCを、275cGyの放射線照射を受けた6〜8週齢のNOD−SCIDマウス(n=11)に尾静脈から注射して移植した。抗asialo−GM1抗体(Wako)(ストック溶液20μLをPBS1×380μLで希釈)の腹腔内注射を1日前、10日目および20日目に行って、NK活性を低減した(表2)。
Figure 2009509911
動物1〜3に移植されたMAPCはOct4のレベルが低かったが(mESCの0.1%未満)、その他の全てのMAPCはOct4のmRNAレベルはmESCの30%を超えていた。
移植後(4〜10週間)、周期的に末梢血(PB)でリンパ造血系の再構築を評価した。動物4および5は障害を来たしているようであったため、移植後5および7週間後に屠殺した。動物1、2、6、10および11は、12〜20週後に屠殺した。動物7〜9は依然として生存しており、PBのみGFP陽性細胞について検査した。屠殺した全ての動物で、血液、BMおよび脾臓について、eGFPリンパ造血細胞が存在しているかどうかを評価した。また、組織を収集して、MAPC由来細胞の非リンパ造血系統への分化を測定した。
表2に示す通り、11例中3例の動物(Oct4が低レベルの動物1〜3)は、MAPCに由来するリンパ造血の徴候を呈さなかった。残る8例では、eGFP陽性のリンパ造血のレベルが上昇し(データは非表示)、20週目には95%までに達した。動物を10週間前に評価した場合、生着レベルは低く、MAPCからHSC(より成熟した造血細胞を生じさせる)への変換はHSCの移植に比して長引いているようであった。この可能性と合致するのは、致死線量(9Gy)を照射したFANC−Cマウスに、不全BM細胞(BMマイナス幹細胞;早期の造血の回復を支援するが、長期の生着は支援しない)を併用投与せずにMAPCを移植する場合、レシピエント動物は14〜21日後に死亡するという事実である(本明細書で下に記載)。しかし、不全BMも投与したところ、動物は生存し、場合によってはGFP MAPC由来のリンパ造血を発現する。これらの所見に基づき、このMAPCの用量は、急性の致死線量を照射された動物を救うことはできないが、LTR(長期再増殖)−HSCを生じさせることはできる。このようなLTR−HSCはcKitおよびSca1を発現し、二次レシピエントに機能的リンパ造血を生じさせる。さらに、MAPCに由来するHSCは、機能的TおよびB細胞を生成する場合があり、それにより胸腺、脾臓およびリンパ節をはじめとする二次的なリンパ器官が増殖し、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)への免疫反応を備える場合がある。
マウス6のリンパ造血組織の解析により、複数系統の生着が明らかになった(図2A)。最初にMAPCを移植したNOD−SCIDマウスには、正常なサイズの脾臓、胸腺およびリンパ節が認められた。また、図2には、これらの臓器にeGFP細胞が集合していることを示す。
PB、BM、脾臓および胸腺の単一細胞の懸濁液についてFACS解析を行った。マウス6の結果を図2B−Cに示す。BM、PB、脾臓および胸腺においてeGFPCD45.2(BD Biosciences Pharmingen)細胞は明らかに識別可能である(導入後13週間で70%までのGFP/CD45.2細胞がPB、BMおよび脾臓に存在した)。PBでは、eGFP細胞はB220、CD19、CD3、CD4、CD8、NK1.1、Mac1およびGR1(BD Biosciences Pharmingen)と共に発現した。BMの解析により、68%のeGFP細胞が、CD34PE、CD45.2APC、Thy1.1PE、Sca−1PE、c−Kit APC(Biosciences Pharmingen)をはじめとする成熟した造血マーカーを共に発現していたことが明らかになった。T細胞の頻度は低かった。マウス痕跡胸腺においてMAPCによる緩徐な免疫再構築の観点からは、T細胞の産生は段階的に増加するものと考えられ、胸腺の回復はT細胞の末梢化に先立って起こることから、これは予期できなかったことではない。また、1%までのGFP細胞はSca1/cKitまたはThy1/cKit(BD Biosciences Pharmingen)を共に発現した。これは、MAPCからのHSCの世代を示唆しており、GFPCFU−Mix、BFU−Eおよび顆粒球−単球−コロニー形成単位(CFU−GM)が存在したという所見とも矛盾しない。
脾臓、BMおよび末梢血の細胞をFACS解析したところ、複数系統の生着が存在し、骨髄(Mac−1/Gr−1)、B−(B220/CD19/IgM)およびT−(CD4/CD8/TCRαβ)リンパ球に分化していることが明らかになった。例えば、脾臓では(図2C)、Bリンパ球(CD19PE、B220APC、IgMAPC(BD Biosciences Pharmingen)およびTリンパ球(CD4APCおよびCD8APC(BD Biosciences Pharmingen)の表現型を有する細胞への分化が検出された。eGFPで選別した脾臓T細胞は、Balb/C由来の細胞と混合リンパ球反応培地で反応し、抗CD3+抗CD28 mAbs(Dr.Carl June提供の抗体;Brice,et al.,1998)で刺激されることができた。CD4、CD8およびTCRβ(BD Biosciences Pharmingen)を発現した胸腺のeGFP細胞も検出された。腸の大まかな検査でも、eGFPを含有するパイアー斑が認められた。
(実施例2:MAPCはインビトロでHSC/HPCに分化し得る)
造血細胞は、OP935等のフィーダー細胞を使用するか、ES細胞に胚様体(EB)を形成させるかのいずれかによって、マウスESCから生成することができ(Choi K,et al.,1998)、その後中胚葉と血管芽細胞との中間期で作用することが知られているサイトカインを使用して、その後は後期に作用する造血細胞サイトカインを使用して、造血細胞を誘導する(Faloon P,et al.,2000;Schuh AC,et al.,1999)。ESCは、Flk1、SCLおよびLMO2をはじめとする血管芽細胞マーカーを連続的に発現し、その後は造血細胞マーカーを発現する。原始的、次いで決定的な造血の連続的な活性化が認められる。発達中、AGM領域に生じる決定的なHSCは、c−KitおよびAA4.1陽性である。注目すべきは、汎造血細胞マーカーであるCD45が発達中にCD41を獲得してから発現し、CD45ではなくCD41の発現がLTR−HSCの運命への分化を示すと考えられる点である(Mikkola HK,et al.,2003;Bertrand JY,et al.,2005)。
mESCからインビトロで精製した造血細胞を出生後の動物に移植すると、生着は全くまたはごく僅かしか認められない(Potocnik AJ,et al.,1997)。Kyba,et al.(2002;2003)には、HoxB4またはStat5Aが短期間mESC由来の造血細胞で発現すると、リンパ系の再構築がそれほど頑健でなくても、インビボでの生着が可能になることが近年開示されている。hESCからの同様のインビトロでの分化も達成されている(Kaufman DS,et al.,2001;Tian X,et al.,2004;Vodyanik MA,et al.,2005;Wang L,et al.,2004;Cerdan C,et al.,2004)。幾つかの試験では、hESC由来の造血細胞が、たとえ生着レベルが低くても、放射線照射を受けた免疫不全動物に生着することが示唆されている。
細胞が血管芽細胞およびHSCにインビトロで特化および分化するのを支配する段階を支持するため、幾つかの間質細胞系が成体BM、胎児肝およびAGMをはじめとする造血微小環境から作成されてきており、そのうちの幾つかは原始的な前駆細胞を支持する。これらの細胞系の2つであるEL08−1D2およびUG26−1B6(Oostendorp RA,et al.,2002;Buckley S,et al.,2004)が、長期培養(LTC)においてヒトおよびマウスの両造血前駆細胞(HPC)を支持し、何れのフィーダー細胞もマウス再増殖HSCを支持し(Kusadasi N,et al.,2002;Oostendorp RA,et al.,2002;Harvey K,et al.,2004;Oostendorp RA,et al.,2002)、本明細書で以下に記載する通り、EL08−1D2細胞系がMAPCをインビトロでリンパ増殖の運命に定めることができる。さらに、幾つかのサイトカインおよび因子が早期の造血組織の特定化および分化の原因となることが確認されてきた。これらには、中胚葉とHSCとの中間期で作用する因子およびHSCレベルでの活動が知られている、例えばTGFβ/BMPファミリーのメンバー(Leung AYH,et al.,2004)またはWnt(Reya T.,2003)ファミリー、IHH(Dyer MA,et al.,2001)、VEGF(Choi K,1998)またはbFGF(Faloon P,et al.,2000)並びにSCF、Flt3LおよびTpoといった早期に作用する造血細胞サイトカイン因子等がある。
(A.mMAPCはEL08−1D2細胞との共培養の後、リンパ造血細胞に分化する)
Jiang,Y,et al.(2002)に記載の通り、約5%のO下で、eGFPトランスフェニックマウス骨髄細胞からマウスMAPC細胞系を樹立した。10のeGFP mMAPCを、E11.5マウス胎児肝フィーダー(EFL)EL08−1D2細胞(集密状態まで増殖させ、セシウム2500cGyを照射;Dr.E.Dzierzak,Rotterdamから入手;Oostendorp RA,et al.,2000)と共に、20ng/mLのmSCF(R&D Systems)、10ng/mLのmTpo(R&D Systems)、10ng/mLのmIL3(R&D Systems)、10ng/mLのmIL6(R&D Systems)を入れた10%FCS含有培地(Myelocult M5300(Stem Cell Technologies))で15日間培養し、20ng/mLのmSCF(R&D Systems)、10ng/mLのmIL−3(R&D Systems)、10ng/mLのmIL−6(R&D Systems)および3U/mLのhEpoを含有するMethocult培地(MethoCultTMメチルセルロースを主成分とする培地(Stem Cell Technologies))を使用して14〜16日間CFC培養を行った。細胞は1×βメルカプトエタノール(Gibco)の存在下において、5%のCOで37℃にて培養した。
未分化MAPCおよび14日目のMAPCの造血細胞、内皮細胞および内胚葉細胞マーカーについてQ−RT−PCRで評価した。14日目〜16日目のMethocult培養物は、CFCの存在をスコア化した。未分化MAPCのQ−RT−PCR解析では、LMO2、SCL、GATA1またはPU.1 mRNAは検出されず、GATA2 mRNAは極めて低レベルであり、FACS解析では、未分化mMAPCはcKit陽性であったが、Sca1陰性、CD34陰性、CD41陰性、CD45陰性、Thy1陰性およびLin陰性であった(抗体はBD Pharmingenから購入)。Lineage CocktailはGr−1、Mac−1、Terr−119、CD4、CD8およびビオチン化したB220を含有する。
造血細胞転写因子(GATA2、GATA1、LMO2、SCL、PU.1)の転写産物は14日目までに発現し、28日目までさらに増加した(図3A)。より成熟した造血細胞のマーカー(CD45、MPO、HbγおよびHbβ)は14日目には発現しなかったが、28日目には大量に発現した。興味深いことに、HbγおよびHbβが同定され、造血が胚性ではなく決定的であることを示唆した。内皮細胞の転写産物(Flk1、VE−cadherin、vWF)も14日目までに有意に発現することが明らかになったが、そのレベルは28日目までに低下し、分化の最初の段階は、mESCについて記載されているのと同様に(Choi K.,1998;Choi K,et al.,1998)、血管芽細胞の中間産物を介して起こる場合があることを示唆した。CFU−Mixコロニーも生成された(図3B)。
(B.ヒト(h)MAPCもリンパ造血細胞に分化する)
ヒトMAPC細胞系を樹立し、本明細書に記載の通り培養した。GLyA、CD45およびCD34陰性であるeGFP導入MAPC(n=20)を、マウス卵黄嚢中胚葉細胞系であるYSM5と共に培養したところ、10ng/mLのbFGFおよびVEGFを添加した無血清培地において6日間で懸濁細胞が凝集した。6日後、eGFP細胞(即ちMAPC子孫細胞)のみが残り、YSM5細胞は死滅していた。
残った細胞を、10ng/mLの骨形成タンパク質(BMP)4、VEGF、bFGF、幹細胞因子(SCF)、Flt3L、ハイパーIL6、トロンボポイエチン(TPO)およびエリスロポイエチン(EPO)を添加した、10%ウシ胎児血清(FCS)を含有するメチルセルロース培地に移して2週間培養した。これらの培養では、結合eGFP細胞および小さく丸い非結合細胞の両方が、結合細胞に結合した多くのコロニーを形成している様子が検出された。非結合画分および結合画分を別々に収集し、10ng/mLのVEGFおよびbFGFを添加した10%FCS含有培地で7日間培養した。結合細胞はvWFで陽性染色され、ECMにプレートすると血管を形成し、a−LDLを取り込むことができ、それらが内皮細胞の性質を有することを示した。非結合細胞の5〜50%がフローサイトメトリーによりヒト特異的GlyAおよびHLA−クラスIで陽性染色された。Gly−A+/HLA−クラスI+細胞をFACSで選択した。Wright−Giemsa法で、これらの細胞は特徴的な形態を呈し、原始的な赤芽球の染色パターンを呈した。免疫ペルオキシダーゼ法では細胞はベンジジン陽性およびヒトHb陽性であった。RT=PCRにより、これらの細胞はヒト特異的Hb−eを発現したが、Hb−aは発現しなかった。
20%FCSおよびEPOを使用したメチルセルロース検定に再プレーティングしたところ、小さな赤血球コロニーが10日後に確認され、これらのコロニーの100%がヒト特異的GlyAおよびHbで陽性染色された。MAPCの選択は、BM中のCD45およびGlyA+細胞の枯渇に依存し、培養MAPCはFACSおよびcDNAアレイ解析の何れでも常にCD45−およびGlyA−であるため、MAPCが造血細胞に汚染されていることは考えにくい。
(実施例3:FANCC−/−マウスにおけるMAPCの血液への分化:FANCC−/−MAPCの遺伝子修復)
ファンコーニ貧血(FA)は常染色体劣性遺伝によって遺伝する重度の骨髄(BM)不全症候群である。少なくとも11のFA遺伝子が存在する(A、B、C、D1(BRCA2)、D2、E、F、G、I、JおよびL)。これらの11種類は殆ど全ての症例においてファンコーニ貧血の原因となる。FA−A、FA−CおよびFA−Gにおける突然変異が最も多く、世界中のFA患者の約85%の原因となっている。FA−D1、FA−D2、FA−E、FA−FおよびFA−Lは10%を占める。FA−B、FA−IおよびFA−JはFA患者の5%未満である。ファンコーニ貧血遺伝子の大半はクローン化されている。
FAは性別を問わず等しく発症する。また、民族も問わず認められる。FAの臨床徴候は、段階的な骨髄不全によって定義されており、症例の大半で何らかの先天性奇形が認められる(Liu JM.,2000)。さらに、FA患者は、年齢を重ねると共に骨髄異形成、急性骨髄性白血病(AML)および固形腫瘍を発症するリスクが高い(Alter BP.,1992)。例えば、FA患者は、頭頚部、婦人科器官および消化器の扁平上皮細胞癌を発症する確率が高い。
この障害の血液学的徴候の長期にわたる治癒的処置の第一の方法は、同種異系ドナーを使用した骨髄(BM)または末梢血幹細胞(PBSC)移植である(Gluckman E.,1993;Kohli−Kumar M.,et al.,1994;Guardiola P,et al.,2000)。しかし、これらの処置は血液学的な欠損のみに取り組んだものであり、付随する表皮細胞の欠損に取り組んだものではない。さらに、移植には同種異系ドナーの細胞が関与するため、レシピエントによるドナー細胞の拒絶反応のリスクがある。エキソビボで遺伝子修正を受けている自家骨髄細胞を使用する試みも、遺伝子導入の不足並びに骨髄幹細胞がインビトロで培養されにくい等の種々の問題により成功には程遠い。
多能性成体前駆細胞(MAPC)は、インビボでリンパ造血細胞に分化するだけでなく、例えば肝細胞、消化器細胞、肺上皮細胞および内皮細胞にも生着する、成人の骨髄内の幹細胞集団である。また、MAPCは分化能を失うことなく長期間にわたって増殖/培養することができ、遺伝子操作(遺伝子治療で使用)が行いやすい。このように、MAPCはFAの処置に理想的な源である。
(材料および方法)
(FANCC+/+マウスの骨髄由来のMAPCの単離および強化)
exon9が破壊されたFANCCマウス相同遺伝子を有するFANCC−/−マウスおよびその同系の健常対照FANCC+/+マウスをDr.Markus Grompeより受領した。マウスの大腿骨から骨髄を採取した。Jiang,et al.(2002)に若干の改変を加えてMAPCを培養した。要約すれば、Ficoll−Plaque密度勾配遠心法によって骨髄単核細胞を得た(Sigma Chemicals Co.[米国ミズーリ州セントルイス])。単核細胞をプレートし、微小磁性ビーズ(Miltenyi Biotec[米国カリフォルニア州サニーベール])を使用して枯渇させた。5000個のCD45GlyA細胞を、10mg/mLのフィブロネクチン(FN)でコーティングした96ウェルプレートに、1×インスリン−トランスフェリン−セレン(ITS)、1×リノール酸−ウシ血清アルブミン(LA−BSA)、10−8Mデキサメタゾン、10−4Mアスコルビン酸2−リン酸塩(AA)、100Uのペニシリンおよび1000Uのストレプトマイシンを添加した、DMEM−LG(58%;Gibco−BRL[米国ニューヨーク州グランドアイランド])、MCDB−201(40%;Sigma Chemical Co.[米国ミズーリ州セントルイス])、2%FCS(Hyclone Laboratories[米国ユタ州ローガン])からなる1mLのMAPC増殖培地にプレートした。培地に10ng/mLのEGFおよび10ng/mLのPDGF−BB(R&D Systems[米国ミネソタ州ミネアポリス])および10ng/mLの白血病抑制因子を添加した。50%の集密状態に達したら、細胞をトリプシン/EDTA(Sigma)から分離し、より大きな培養器に2倍に希釈して再プレートし、細胞濃度を0.8〜2×10細胞/cmに保った。この細胞を1×βメルカプトエタノール(Gibco)および5%のOの存在下でも培養した。
(MAPCの解析)
形態:樹立したFANCC+/+MAPCは、MAPCに特徴的な小さく紡錘状の細胞となる(Jiang,et al.,2002)。単離細胞の表現型を、表面マーカーの発現に基づいてFACSを使用して解析し、Q−RT−PCRでOct4およびnanog等の幹細胞マーカーの存在を評価した(Jiang,et al.,2002)。
(MAPCの分化)
単離したMAPCの複数系統への分化能を、以前に記載されている通り(Jiang,et al.,2002)、内皮細胞、神経外胚葉細胞および肝細胞様細胞への分化能を試験することによって評価した。
(正常な同系の(FANCC+/+)MAPCのFANCC−/−マウスへの移植)
レンチウイルスによるFANCC+/+MAPCの標識:移植前にMAPCにレンチ−GFPを導入した。但し、トランスジェニックGFP MAPCも使用し得る。Jiang,et al.(2002)の記載に従って、GFP MAPCを尾静脈からFANCC−/−マウスに注入した。要約すれば、1×10の未分化MAPCを、200,000個の不全骨髄細胞(Sca−1枯渇細胞)と共に、約7.5Gy〜約9.0Gyを照射した6〜9週齢のFANCC−/−マウスに尾静脈を介して注射した。不全骨髄細胞のみを移植したFANCC−/−マウスを対照として使用した。末梢血のFACS解析を移植から4〜6週間、定期的に実施した。移植から8〜10週間後、動物を屠殺して、末梢血および骨髄等の造血器官へのMAPCの分化をFACSで解析した。例えば、移植マウスの末梢血および骨髄を移植から8〜10週間後に単離した。試料から赤血球を枯渇させ、血液マーカーCD45で標識し、FACSで解析した。GFPおよびCD45陽性の細胞は、GFP MAPCに由来する血球である。
GFP MAPCの非造血組織への寄与を、GFPについて免疫組織化学的に評価し、GFPについてゲノムDNAのQ−PCR解析を行った。
(結果)
レンチウイルスにより緑色蛍光タンパク質(GFP)を導入した正常なMAPCは、亜致死線量の放射線を照射したFANCC−/−マウス(ファンコーニ貧血C群ノックアウトマウスモデル)に注射されると、宿主の造血系に分化した。移植から8〜10週間後、これらのマウスの骨髄中のCD45細胞の2〜5%がドナー由来のGFP細胞であった。GFP陽性細胞は、末梢血(PB)にも、移植動物から採取した肝、肺および筋といった種々の組織にも検出された。
本明細書で実証されている通り、Oct4を有意に発現するMAPCを、NK細胞が枯渇したNOD−SCIDマウスに使用すると、少なくとも80%の造血細胞の再増殖が起こる。同じ条件をFANCC−/−マウスに使用して、より高レベルの生着を達成した。FANCC−/−骨髄中に生着した細胞をさらに選択的に再増殖させるため、宿主の骨髄細胞(FANCC−/−細胞)には毒性用量となるが、正常なMAPC由来の造血細胞には毒性用量とならない(約40mg/kg)シクロホスファミド(シクロホスファミドはアルキル化剤として知られる薬物の一種で、癌細胞の増殖を緩徐にするか停止させる)を動物に投与した。
このように、FAを来した被験体から宿主MAPCを単離し、培養し、エキソビボでの遺伝子欠損の修正を行うことができた。細胞は、被験体のFA処置のための細胞の自家資源として使用し得る(エキソビボで遺伝子修正を行ったFA MAPCのFA被験体における長期の再構築)。
(実施例4:慢性骨髄性白血病(CML)を処置するための自家MAPCの使用)
慢性骨髄性白血病(CML)は、フィラデルフィア染色体(Ph)およびBCR/ABL融合遺伝子を特徴とする、HSCのクローン性骨髄増殖性障害である(Rowley J,1990)。ここ20年、CMLの治療の中心はHSC移植およびIFN−α療法であった。より最近になると、特異的p210BCR/ABL TK阻害剤であるイミチナブ(GleevecTM;Novartis Pharmaceuticals Corporation[米国ニュージャージー州イーストハノーバー])がCML患者に対する第一選択薬となっている。しかし、イマチニブを投与された患者の中には、細胞遺伝学的寛解(CR)が得られないものもおり、分子学的寛解を得た患者は再発する場合があることが確認されている(Kantarjian,et al.,2003;Gambacorti−Passerini CB,et al.,2003)。このような患者のため、その他の治療法を評価する必要がある。
一つの可能性は、細胞学的寛解の時点で採取した自家HSCを使用することである。しかし、患者がイマチニブ投与の後にCRに達していても、悪性HSCは存続することが明らかにされている(Bhatia R,et al.,2003)。CMLに対する自家移植はCRをもたらすことが明らかにされているが、長期にわたってそれを持続できるものは殆どいない(Barnett MJ,et al.,1994;Verfaillie C,et al.,1998;Carella AM,et al.,1997)。一卵性双生児での移植が少なくとも5倍長期の寛解をもたらすため(Thomas E,et al.,1986)、これらの所見は、再注入された移植片の大半が悪性細胞で汚染されているという事実と矛盾しない(Deisseroth AB,et al.,1994)。
しかし、CML患者のBM培養物(間質細胞)中の非造血細胞はPh−であることから(Bhatia R,et al.,1995)、CML患者のBMから生成したMAPCには、Ph染色体またはBCR/ABL遺伝子配列が存在しない場合がある。このため、MAPCは、CML患者に自家移植を行うのに使用できる幹細胞の集団を構成する場合がある。
このため、CML患者のhMAPCは、PH−BCR/ABLである場合があり、長期にわたって良性の再増殖する(LTR)HSCおよび成熟したインビボでの造血子孫細胞を生じさせる場合がある。BMを10例の新たに診断されたCML患者(例えば、まだ化学療法も放射線療法も受けていない患者)から採取し、MAPCを単離する。標準的な方法を使用して、MAPC集団にPh染色体およびBCR/ABL遺伝子が存在するかどうかを試験する。細胞遺伝学的安定性が、テロメラーゼ活性およびテロメア長と共に持続する。間葉性細胞、内皮細胞、肝細胞様細胞および神経外胚葉細胞への分化能を、以前に記載されているように(Reyes M,et al.,2001;Schwartz RE,et al.,2002;Reyes M,et al.,2002)試験する。本明細書で非白血病(NL)のBM由来のMAPCについて記載した通り、MAPC系が確立されたら、リンパ造血細胞をインビトロおよびインビボで生成する能力を試験する。
10個ほどのcKitLinSca1(KLS)マウス細胞が、生着後に頑健な造血を生じさせ、骨髄細胞、Bリンパ球およびTリンパ球を回収し得る(Spangrude G,et al.,1988)。ヒトUCB CD34LinCD38細胞をNOD−SCIDマウスに移植すると、1%を超えるヒト造血細胞を検出するのに少なくとも500細胞が必要であり、異種間の移植の有効性はかなり低いことが示されている。さらに、NOD−SCIDマウスにおけるヒト造血は、大量のB細胞および若干の骨髄細胞をもたらすが(Hogan CJ,et al.,1997;Bhatia M,et al.,1998)、T細胞はもたらさない。しかし、ヒトCD34細胞をBNX(Dao MA and Nolta JA.,1998)、NOD−SCID−IL2γcR(Yahata T,et al.,2002)またはIL2γc/Rag2(Traggiai E,et al.,2004)マウスに移植すると、機能的なヒト免疫反応を生成するTリンパ球も検出される。ヒトCD34細胞と同じく、ヒトMAPCの生着レベルはマウスMAPCに比して低いため、使用する細胞量は、破壊線量に近い放射線(700cGy)の照射を受けた動物において約10細胞/マウスになるように調節する。
ヒトMAPC(約10〜10細胞/動物)を、放射線照射を受けた6〜8週齢のIL2Rγc/Rag2マウスに移植する。4〜16週間後にヒトリンパ造血の徴候があるかどうかについてPBを評価する。16週間後に動物を屠殺し、PB、BM、脾臓、胸腺およびリンパ節のhuCD45細胞をFACSで評価した。インビボで細胞を追跡するためのもう一つのマーカーとして、レンチウイルスベクターを含有するeGFPを導入したhuMAPCを使用する。HSCの世代をインビボで評価するため、全骨髄の二次移植を実施し、奏功すれば選択したhuCD34Lin細胞を移植する。
hESCを造血細胞に分化させる方法は、一般的にmESCを造血細胞に分化させる方法と同じであるため(Nakano T,et al.,1994;Vodyanik MA,et al.,2005)、インビトロにおけるhMAPCからのリンパ造血系の特性確認および分化運命を、mMAPCをリンパ造血系統に分化させる方法(上述)を使用して評価した。本明細書で上述の通り、hMAPCは、VEGF、BMP4、bFGFおよび造血サイトカインの存在下で、OP9フィーダー細胞と共培養することによって、リンパ造血系統に分化させることができる。
上で得られたhMAPC子孫細胞を放射線照射したIL2Rγc/Rag2マウスに移植する。初期の試験では、バルク培養したMAPC−子孫細胞を移植する。これらの細胞が生着したら、CD34、CD41a、CD43、CD45、Thy1、cKitおよび/またはCD133の発現に基づいて細胞を選択することによって、生着した細胞の表現型を同定し、最初にインビトロにおいてコロニー形成細胞(CFC)を生成する能力を試験し、次にインビボでの移植を試験する。長期にわたり再増殖する細胞が生成したことを明らかにするため、幾つかの二次移植を実施する予定である。
このように、非悪性非胚性幹細胞は、CMLをはじめとする造血器の悪性腫瘍および場合によっては再生不良性貧血またはリンパ造血系の遺伝性障害といったその他のリンパ造血障害の自家移植に利用可能である。
(参考文献)
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全ての刊行物、特許および特許出願は参考として本明細書に組み入れられている。前述の明細書において、本発明はその特定の望ましい実施形態と関連付けて説明されており、多くの詳細が例示の目的のために示されているが、本発明はその他の実施形態にも対応しており、本明細書に記載の詳細の幾つかは、本発明の基本原則から逸脱することなく、大きく変化する場合があることは、当業者に明らかとなるであろう。
図1は、造血幹細胞および造血コンパートメントの構造を示す。 図2Aは、MAPCのリンパ造血組織への生着を示す。放射線275cGyおよび抗NK抗体(抗asialo−GM1)で処置したNOD−SCIDマウス(#6)に10個のGFPMAPCを移植した。13週間後、マウスを屠殺し、二次リンパ器官(脾臓、腸間膜リンパ節、胸腺および末梢リンパ節、並びに腸および肝臓)を、生体内顕微鏡(MZFLIII蛍光立体顕微鏡に装着したRetigaカメラを使用;画像はQ Imaginソフトウェアで取り込んだ)で評価した。 図2Bは骨髄(BM)のMAPCに由来する造血細胞を示す。骨髄(BM)由来の細胞をFACSで評価した。BMのcKit、Thy1およびSca1のデータは、GFP陽性細胞のみに対するゲーティングである。造血前駆細胞(cKit、Sca1、Thy1)が生成されるという考え方に沿えば、BMのMethocult培養ではGFPCFU−EおよびCFU−Mixが示された。 図2Bは骨髄(BM)のMAPCに由来する造血細胞を示す。骨髄(BM)由来の細胞をFACSで評価した。BMのcKit、Thy1およびSca1のデータは、GFP陽性細胞のみに対するゲーティングである。造血前駆細胞(cKit、Sca1、Thy1)が生成されるという考え方に沿えば、BMのMethocult培養ではGFPCFU−EおよびCFU−Mixが示された。 図2Cは胸腺、脾臓および末梢血(PB)のFACS解析を示す。胸腺、PBおよび脾臓由来の細胞をFACSで評価した。胸腺の上パネルを除き、このデータは、GFP陽性細胞のみに対するゲーティングである。 図3Aは、MAPCによるインビトロでの造血を示す。mMAPCをEL08−1D2細胞と共にSCF、Tpo、IL3、IL6で2週間培養した後、Methocult培地中にてSCF、IL3、IL6およびEpoで培養した。第0日、第14日、第29日にQ−RT−PCRを実施し、造血(データ表示なし)および内皮細胞マーカーを確認した(A)。 図3Bは、MAPCによるインビトロでの造血を示す。図3Bは第15日のMethocult培地中のBFU−EおよびCFU−Mixを示す。 図4Aは、マウス骨髄におけるMAPC生着率のFACS解析を示す。 図4B−1は、マウス骨髄におけるMAPC生着率のFACS解析を示す。 図4B−2は、マウス骨髄におけるMAPC生着率のFACS解析を示す。 図5Aは、マウス脾臓におけるMAPC生着率のFACS解析を示す。 図5Bは、マウス脾臓におけるMAPC生着率のFACS解析を示す。 図6は、マウス末梢血におけるMAPC生着率のFACS解析を示す。 図7Aは、二次レシピエントマウスにおける生着率のFACS解析を示す(二次移植から4週間後;二次レシピエントには以前にMAPCを注射したマウス由来の全骨髄(BM)を注射した)。 図7Bは、二次レシピエントマウスにおける生着率のFACS解析を示す(二次移植から4週間後;二次レシピエントには以前にMAPCを注射したマウス由来の全骨髄(BM)を注射した)。

Claims (19)

  1. リンパ造血系の組織にリンパ造血細胞を提供する方法であって、テロメラーゼに関して陽性であって外胚葉細胞型、内胚葉細胞型および中胚葉細胞型に分化し得る有効量のヒト非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含し、該非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞が該被験体においてリンパ造血を提供する、方法。
  2. リンパ造血系の組織にリンパ造血細胞を提供する方法であって、テロメラーゼに関して陽性であって外胚葉細胞型、内胚葉細胞型および中胚葉細胞型に分化し得る非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞をエキソビボでリンパ造血細胞に分化させることによって産生される有効量のリンパ造血細胞を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含し、該リンパ造血細胞が該被験体において造血を提供する、方法。
  3. さらに、ナチュラルキラー細胞の機能を阻害する物質の有効量を投与する工程を包含する、請求項1または2に記載の方法。
  4. さらに、リンパ造血系を刺激する物質を投与する工程を包含する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記物質が低分子または生物学的物質である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記被験体が放射線、化学療法を受けているか、または遺伝的欠損を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記被験体が、先天性のリンパ造血障害または後天性の悪性もしくは非悪性のリンパ造血障害を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記障害が、白血病、骨髄異形成症候群、リンパ腫、遺伝性赤血球異常、貧血、遺伝性血小板異常、免疫障害、リンパ増殖性障害、食細胞障害または血液凝固障害を含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記障害が慢性骨髄性白血病(CML)を含む、請求項7に記載の方法。
  10. 前記障害がファンコーニ貧血を含む、請求項7に記載の方法。
  11. 前記非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞、または前記非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞から分化したリンパ造血細胞の細胞ゲノムが、(a)予め選択した単離DNAの挿入、(b)予め選択した単離DNAによる該細胞ゲノムのセグメントの置換、または(c)該細胞の該細胞ゲノムの少なくとも一部の欠失もしくは不活化によって改変されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記細胞ゲノムの前記セグメントが非機能的ファンコーニ貧血遺伝子をコードし、前記予め選択した単離DNAが機能的ファンコーニ貧血遺伝子をコードし、該細胞ゲノムの該セグメントが、相同組換えにより、該予め選択した単離DNAによって置換される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記ファンコーニ貧血遺伝子がFA−Cである、請求項12に記載の方法。
  14. 前記被験体が哺乳動物である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞が自家または同種異系である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞が、リンパ球系統、骨髄系統または赤血球系統のうちの1種以上の細胞に分化する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記組織が、前記被験体の胸腺、脾臓、血液、骨髄またはリンパ節のうちの1つ以上である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
  18. リンパ造血障害を処置する薬物を調製するための、テロメラーゼに関して陽性であってかつ外胚葉細胞型、内胚葉細胞型および中胚葉細胞型に分化し得る、非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞、または該非ESで非生殖性でかつ非胚性の生殖細胞から分化したリンパ造血細胞の使用。
  19. 前記障害が、白血病、骨髄異形成症候群、リンパ腫、遺伝性赤血球異常、貧血、遺伝性血小板異常、免疫障害、リンパ増殖性障害、食細胞障害または血液凝固障害である、請求項18に記載の使用。
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