JP2009507482A - 主にman7glcnac2、man8glcnac2グリコフォームを含むイムノグロブリン - Google Patents

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Abstract

本発明は、特定のエフェクター機能を与えるイムノグロブリン糖タンパク質上の主要なN−グリカン構造を有するイムノグロブリン糖タンパク質組成物に関する。さらに、本発明は、特定の富化したN−グリカン構造を有する抗体を含む医薬組成物であって、前記N−グリカン構造がMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される組成物に関する。

Description

本発明は、特異的N−結合型グリコシル化パターンを有する糖タンパク質を製造するための組成物および方法に関する。具体的には、本発明は、特異的N−グリカン構造を有する複数のN−グリカンを含むイムノグロブリン糖タンパク質の組成物に関し、さらに具体的には、その複数の内に、特定のエフェクター機能を調節するか、または促進する、イムノグロブリン上の1種または複数の主要なグリコフォームが存在するイムノグロブリン糖タンパク質を含む組成物に関する。
糖タンパク質は、ヒトおよびその他の哺乳類において、触媒、シグナル伝達、細胞−細胞情報交換および分子認識および結合を含む多くの必須の機能を媒介する。糖タンパク質は、真核生物において非細胞基質タンパク質の大部分を構成している(Lis and Sharon、1993、Eur.J.Biochem.218:1〜27)。多くの糖タンパク質は、治療目的で利用されており、この20年で、天然に生じる糖タンパク質の組換え型が、バイオテクノロジー産業の大部分を占めるようになってきた。治療薬として使用されている組換えグリコシル化タンパク質の例には、エリスロポエチン(EPO)、治療用モノクローナル抗体(mAb)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、インターフェロン−b(IFN−b)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCH)が挙げられる(Cumming他、1991、Glycobiology 1:115〜130)。最近では、潜在的予防薬および治療薬として製造された組換えタンパク質が臨床段階に入ってきているので、組換えによって生成された糖タンパク質のグリコシル化パターンの変動は、科学界において大いに注目の話題となっている。
抗体またはイムノグロブリン(Ig)は、体液性免疫応答において中心的役割を果たす糖タンパク質である。抗体は、体液性と細胞性の防御機構との間の結びつきをもたらすアダプター分子として見なすことができる。抗体による抗原特異的認識は、複数のエフェクター機構を活性化させることができる免疫複合体の形成を引き起こし、複合体の除去および破壊ももたらす。イムノグロブリンG(IgG)分子は、定常領域および可変領域を有するFab(抗原結合断片)およびFc(結晶化断片)ドメインから構成される。Fc領域には、CH2ドメインが含まれ、これはIg分子にN−グリカンを結合するアスパラギン残基、通常Asn−297残基にN−結合型グリコシル化するための単一部位を含有する(Kabat他、Sequences of proteins of immunological interest Fifth Ed.,U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242)。
N−結合型オリゴ糖の構造面および機能面の分析は、3つの主な理由、すなわち(1)CH2ドメインのグリコシル化は進化の間も保存されてきており、オリゴ糖には重要な役割があることが示唆されること、(2)イムノグロブリン分子は、オリゴ糖不均一性を分析するためのモデル系として役立つこと(Rademacher and Dwek、1984、Rademacher他、1982)、および(3)抗体には、2個のオリゴ糖単位を互いに直接接触させる2本の重鎖の2量体結合が含まれ、したがってイムノグロブリン分子は特異的なタンパク質−炭水化物相互作用および炭水化物−炭水化物相互作用の両方が関与していることのために生物学的関心が持たれている。
その他の糖タンパク質におけるグリコシル化の役割と同じように、Igのオリゴ糖側鎖は、この糖タンパク質の機能に影響を与える。例えば、フコシル化N結合型グリカンの低下したイムノグロブリン組成物は、ヒトFcgRIIIに強く結合しており、したがって、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)が強まっていることが示された(Shields他、2002、J.Biol Chem、277:26733〜26740;Shinkawa他、2003、J.Biol.Chem.278:3466〜3473)。Rajuは、CHO細胞で形成されたフコシル化G2(Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2)IgGの均一型は、不均一型抗体よりもCDC活性を大幅に増加させることを示した(Raju、2004、米国特許出願第2004/0136986号)。Clynes他による発見はさらに興味深く、腫瘍に対して最適な抗体は、優先的に結合してFc受容体(FcgRI、FcgRIIa、FcgRIII)を活性化し、最小限に結合してFcgRIIb受容体を阻害するものであろうことを示唆している(Clynes他、2000、Nature、6:443〜446)。
Igの様々なグリコシル化のパターンは、様々な生物学的特性と関連していることが示された(Jefferis and Lund、1997、Antibody Eng.Chem.Immunol、65:111−128;Wright and Morrison、1997、Trends Biotechnol、15:26〜32)。しかし、少数の特定のグリコフォームのみが所望する生物学的機能をもたらすことが知られている。したがって、Ig糖タンパク質上の特定のグリコフォームを富化する能力が強く望まれている。
一般的に、糖タンパク質オリゴ糖のグリコシル化構造は、発現宿主および培養条件に応じて変化する。非ヒト宿主細胞で生成された治療用タンパク質は、ヒトでは免疫原生応答を惹起することができる非ヒトグリコシル化、例えば、酵母における高マンノシル化(Ballou、1990、Methods Enzymol.185:440〜470)、植物におけるa(1,3)−フコースおよびb(1,2)−キシロース、(Cabanes−Macheteau他、1999 Glycobiology、9:365〜372)、チャイニーズハムスター卵巣細胞におけるN−グリコシルノイラミン酸(Noguchi他、1995.J.Biochem.117:5〜62)およびマウスにおける1,3Galグリコシル化(Borrebaeck他、1993、Immun.Today、14:477〜479)を含有すると考えられる。さらに、ガラクトシル化は、細胞の培養条件によって変わることがあり、イムノグロブリン組成物には特異的ガラクトースパターンに応じて免疫原性にさせ得るものがある(Patel他、1992.Biochem J.285:839〜845)。非ヒト哺乳類細胞によって産生される糖タンパク質のオリゴ糖構造は、ヒト糖タンパク質の構造により密接に関連する傾向がある。したがって、ほとんどの市販のイムノグロブリンタンパク質は、哺乳類細胞で産生されている。しかし、哺乳類細胞は、タンパク質産生用の宿主細胞としてはいくつかの重大な欠点を有する。高価であること以外に、哺乳類細胞でタンパク質を産生するプロセスによってグリコフォームの不均一集団が産生され、体積力価が低く、安定な細胞系を作製するにはウイルスの継続的な混入およびの多大な時間を必要とする。
様々なグリコフォームが、薬物動態、薬力学、受容体の相互作用および組織特異的標的化を含む治療薬の特性に大きな影響を及ぼし得ると理解されている(Graddis他、2002.Curr Pharm Biotechnol.3:285〜297)。特に、抗体では、オリゴ糖構造は、プロテアーゼ耐性に関連する特性、FcRn受容体によって媒介される抗体の血清半減期、補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導する補体複合体C1への結合、ならびに抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)経路、食作用および抗体フィードバックの調節に関与するFcgR受容体への結合に影響を及ぼし得る(Nose and Wigzell、1983、Leatherbarrow and Dwek、1983、Leatherbarrow他、1985、Walker他、1989 Carter他、1992、Proc.Natl.Acad.Sci USA、89:4285〜4289)。
様々なグリコフォームが様々な生物学的特性に関連しているので、特定のグリコフォームを豊富にする能力を利用して、特定のグリコフォームと特定の生物学的機能との間の関係を解明することができる。したがって、特定のグリコフォームが豊富な糖タンパク質組成物を生成することが非常に望まれている。
本発明は、各イムノグロブリンがそれらに結合した少なくとも1個のN−グリカンを含む、複数のイムノグロブリンを含む組成物であって、それによって、主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択されている複数のN−グリカンを含む組成物を提供する(図1)。
一実施形態では、前記複数のN−グリカンの50モルパーセント超、好ましくは75モルパーセント超、より好ましくは90モルパーセント以上が、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される。他の実施形態では、前記複数のN−グリカンは、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2の混合物を含む。その他の好ましい実施形態では、前記Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2N−グリカン構造は、前記複数のN−グリカンの中の2番目に主要なN−グリカン構造よりも約5モルパーセントから約50モルパーセント多い量で存在する。
本発明はまた、イムノグロブリン上の特定のグリコフォーム(例えば、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2)を豊富にすることによって、FcgRIIIa受容体に対する結合親和性を増加させる方法、およびFcgIIb受容体に対する結合を低下させる方法を提供する。
好ましい実施形態は、各イムノグロブリンが少なくとも1個のN−グリカンを含み、主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択されている複数のイムノグロブリンを含む組成物の製造方法であって、前記イムノグロブリンまたはその断片を発現するために操作されたか、または選択された宿主細胞、好ましくは下等真核宿主細胞を培養するステップを含む方法を提供する。本発明のさらに他の実施形態では、下等真核宿主細胞は、イムノグロブリンまたはその断片をコードする外来遺伝子を含み、前記宿主細胞は、前記イムノグロブリンまたはその断片を発現するために操作されるか、または選択されており、それによって各イムノグロブリンが少なくとも1種のN−グリカンを含み、主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択されている複数のイムノグロブリンを含む組成物が産生される。
本発明の好ましい実施形態では、各イムノグロブリンが少なくとも1個のN−グリカンを含む、複数のイムノグロブリンを含む組成物であって、それによって主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択されている複数のN−グリカンを含み、前記イムノグロブリンがFcgRIIb受容体に対する結合親和性の低下を示す組成物。本発明のその他の好ましい実施形態では、各イムノグロブリンが少なくとも1個のN−グリカンを含む、複数のイムノグロブリンを含む組成物であって、それによって主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択されている複数のN−グリカンを含み、前記イムノグロブリンがFcgRIIIa受容体およびFcgRIIIb受容体に対する結合親和性の増加を示す組成物。本発明のさらに他の好ましい実施形態では、各イムノグロブリンが少なくとも1個のN−グリカンを含む、複数のイムノグロブリンを含む組成物であって、それによって主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択されている複数のN−グリカンを含み、前記イムノグロブリンが抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増加を示す組成物。
一実施形態では、本発明のイムノグロブリンは、本質的にフコースを含まない。他の実施形態では、本発明のイムノグロブリンは、フコースを含まない。本発明の組成物はまた、医薬組成物および薬学的に許容される担体を含む。本発明の組成物はまた、精製されて診断キットに組み込まれたイムノグロブリンの医薬組成物を含む。
したがって、本発明は所定のグリコシル化構造を有する糖タンパク質の組成物、特に、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択されるN−グリカンを有するイムノグロブリンまたは抗体分子を生成するための材料および方法を提供する。
本明細書において特に定義しなければ、本発明に関連して使用した科学的および技術的な用語および語句は、当業者によって通常理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に必要とされなければ、単数形の用語は、複数形の用語を含み、複数形の用語は単数形の用語を含む。一般的に、本明細書で記載した生化学、酵素学、分子細胞生物学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連した命名法および技術は、当業界で周知のものであり、通常使用されているものである。本発明の方法および技術は一般的に、当業界で周知の従来法にしたがって、および、特に指示しない限り、本明細書全体にわたって引用され考察されている様々な一般的文献およびより特定の文献に記載されているように実施される。例えば、Sambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989);Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992、および2002年までの補遺);Harlow and Lane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990);Taylor and Drickamer、Introduction to Glycobiology、Oxford Univ.Press(2003);Worthington Enzyme Manual、Worthington Biochemical Corp.、Freehold、NJ;Handbook of Biochemistry:Section A Proteins、Vol I、CRC Press(1976);Handbook of Biochemistry:Section A Proteins、Vol II、CRC Press(1976);Essentials of Glycobiology、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999);Immunobiology、Janeway他、第6版、2004、Garland Publishing、New York)を参照のこと。
本明細書に記載された出版物、特許およびその他の参考文献は全て、本明細書に全体を参考として援用される。
以下の用語は、特に指示しない限り、以下の意味を有するものと理解されるべきである。
本明細書では、「N−グリカン」、「グリカン」および「グリコフォーム」という用語は、同義に使用され、N−結合型オリゴ糖、例えば、タンパク質中のアスパラギン残基のアミド窒素に結合したN−アセチルグルコサミン残基によって結合するもの、または結合したもののことである。糖タンパク質に見いだされる主要な糖類は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)およびシアル酸(例えば、N−アセチル−ノイラミン酸(NANA))である。糖類のプロセシングは、ERの内腔で翻訳と同時に起こり、N−結合型糖タンパク質になるためゴルジ体内で継続する。
N−グリカンは、Man3GlcNAc2の共通5糖類コア(「Man」はマンノースのことであり、「Glc」はグルコースのことであり、「NAc」はN−アセチルのことであり、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンのことである)を有する。N−グリカンは、「トリマンノースコア」、「五糖類コア」または「少数マンノースコア」とも称されるMan3GlcNAc2(「Man3」)コア構造に付加された末梢糖類(例えば、GlcNAc、ガラクトース、フコースおよびシアル酸)を含む分枝(アンテナ)の数が異なっている。N−グリカンは、その分枝状構成成分によって分類される(例えば、高マンノース、複合またはハイブリッド)。「高マンノース」型N−グリカンは、5個以上のマンノース残基を有する。「複合」型N−グリカンは一般的に、「トリマンノース」コアの1,3マンノースアームに結合した少なくとも1個のGlcNAcおよび1,6マンノースアームに結合した少なくとも1個のGlcNAcを有する。複合型N−グリカンはまた、シアル酸または誘導体(例えば、「NANA」または「NeuAc」、「Neu」はノイラミン酸のことであり、「Ac」はアセチルのことである)によって場合によって修飾されているガラクトース(「Gal」)残基またはN−アセチルガラクトサミン(「GalNAc」)残基を有することができる。複合型N−グリカンはまた、「交差している」GlcNAcおよびコアフコース(「Fuc」)を含む鎖内置換を有することができる。複合型N−グリカンはまた、「トリマンノースコア」上に複数のアンテナを有することができ、しばしば「多アンテナグリカン」と称される。「ハイブリッド」型N−グリカンは、トリマンノースコアの1,3マンノースアームの末端に少なくとも1個のGlcNAcおよびトリマンノースコアの1,6マンノースアームに0個または複数のマンノースを有する。様々なN−グリカンも「グリコフォーム」と称される。
本明細書で使用する略語は、当業界で一般的に用いられているものであり、例えば、糖の略語は前記を参照のこと。その他の一般的な略語には、「PNGアーゼ」または「グリカナーゼ」または「グルコシダーゼ」が含まれ、いずれもペプチドN−グリコシダーゼF(EC3.2.2.18)を意味する。
「単離された」または「実質的に純粋な」核酸またはポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNAまたは混合ポリマー)とは、その天然の宿主細胞において天然のポリヌクレオチドに本来関連するその他の細胞成分、例えば、天然ではそれが関係しているリボソーム、ポリメラーゼおよびゲノム配列から実質的に分離されたものである。この用語は、(1)核酸またはポリヌクレオチドの天然環境から取り出され、(2)「単離されたポリヌクレオチド」が天然に見いだされるポリヌクレオチドの全部または一部と結合しておらず、(3)天然には結合していないポリヌクレオチドに作動可能に結合しているか、または(4)天然には生じない核酸またはポリヌクレオチドを含む。「単離された」または「実質的に純粋な」という用語はまた、組換え体もしくはクローニングされたDNA単離物、化学的に合成されたポリヌクレオチド類似体、または異種系によって生物学的に合成されたポリヌクレオチド類似体に関して使用することができる。
しかし、「単離された」は、記載されたような核酸またはポリヌクレオチドがそれ自体天然の環境から物理的に取り出されていることを必ずしも必要としていない。例えば、異種配列が内在性核酸配列に隣接して配置されていて、したがってこの内在性核酸配列の発現が変化しているならば、本明細書では生物のゲノム中の内在性核酸配列は「単離された」と考えられる。これに関連して、異種配列がそれ自体内在性(同じ宿主細胞またはその後代に由来する)であろうと、外因性(異なる宿主細胞またはその後代に由来する)であろうと、異種配列とは、内在性核酸配列に天然には隣接していない配列のことである。例として、プロモーター配列は、宿主細胞のゲノム内遺伝子の天然のプロモーターと(例えば、相同組換えによって)置換して、したがってこの遺伝子の発現パターンを変化させることができる。天然に隣接する配列の少なくともいくつかから分離されるので、この遺伝子はもう「単離されて」いることになる。
核酸も、ゲノム内の対応する核酸に天然には生じない任意の変更を含有しているならば、「単離された」と見なされる。例えば、内在性コーディング配列は、例えば、人の介入によって、人工的に導入された挿入、欠失または点突然変異を含有するならば、「単離されている」と見なされる。「単離された核酸」には、宿主細胞染色体の非相同部位に組み込まれた核酸およびエピソームとして存在する核酸構築物も含まれる。さらに、「単離された核酸」は、組換え技術によって産生された場合は、その他の細胞物質を実質的に含まないか、または培養培地を実質的に含まないか、あるいは化学合成された場合は、化学的前駆体またはその他の化学物質を実質的に含まないことが可能である。
本明細書では、参照核酸配列の「縮重変種」という語句は、標準的な遺伝子コードにしたがって翻訳されて、参照核酸配列から翻訳されたものと同一のアミノ酸配列を提供することができる核酸配列を包含する。「縮重オリゴヌクレオチド」または「縮重プライマー」という用語は、配列が同一である必要はないが、1個または複数の特定の区域内で互いに相同である標的核酸配列にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを示すために使用される。
核酸配列に関して「パーセント配列同一」または「同一な」という用語は、最大限一致するように配列させたとき、同一である2本の配列の残基を意味する。配列同一性を比較する長さは、少なくとも約9個のヌクレオチド、通常少なくとも約20個のヌクレオチド、より通常には少なくとも約24個のヌクレオチド、一般的には少なくとも約28個のヌクレオチド、より一般的には少なくとも約32個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36個以上のヌクレオチドの範囲にわたってよい。ヌクレオチド配列同一性を測定するための使用することができる、当業界で公知のいくつかの異なるアルゴリズムがある。例えば、ポリヌクレオチド配列は、Wisconsin Package Version 10.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WisconsinのプログラムであるFASTA、GapまたはBestfitを使用して比較することができる。FASTAは、クエリー配列とサーチ配列との間の最も重複した領域のアラインメントおよびパーセント配列同一性を提供する。Pearson、Methods Enzymol.183:63〜98(1990)(本明細書に、参考として全体を援用している)。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、GCG Version6.1に記載されているように、FASTAをその初期設定変数(ワード長6およびスコア決め行列についてNOPAM要素)で使用するか、または本明細書に参考として援用したGapをその初期設定変数で使用して、決定することができる。あるいは、配列は、コンピュータプログラム、BLAST(Altschul他、J.Mol.Biol.215:403〜410(1990);Gish and States、Nature Genet.3:266〜272(1993);Madden他、Meth.Enzymol.266:131−141(1996);Altschul他、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402(1997);Zhang and Madden、Genome Res.7:649〜656(1997))、特に、blastpまたはtblastn(Altschul他、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402(1997))を使用して比較することができる。
「実質的に相同」または「実質的に同一」という用語は、核酸またはその断片に関する場合、適切なヌクレオチド挿入または欠失を用いて他の核酸(もしくはその相補鎖)と最適に整列させたとき、上記のようなFASTA、BLASTまたはGapなどの周知の任意の配列同一性アルゴリズムによって測定すると、ヌクレオチド塩基の少なくとも約50%、より好ましくは60%、通常はヌクレオチド塩基の少なくとも約70%、より通常には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%でヌクレオチド配列が同一になっていることを示す。
あるいは、核酸またはその断片が、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、他の核酸、他の核酸の鎖、またはそれらの相補鎖とハイブリダイズするとき、実質的な相同性または類似性が存在する。核酸のハイブリダイゼーション実験に関して、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントな洗浄条件」は、いくつかの様々な物理学的パラメータに左右される。核酸のハイブリダイゼーションは、当業者によって容易に理解されるように、塩濃度、温度、溶媒、ハイブリダイズする種の塩基組成、相補領域の長さおよびハイブリダイズする核酸の間のヌクレオチド塩基ミスマッチの数などの条件によって影響を受ける。当業者であれば、ハイブリダイゼーションの特定のストリンジェンシーを実現するためのこれらのパラメータの変更する方法を知っている。
一般的に、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」は、具体的な一連の条件下で、特定のDNAハイブリッドの熱融解点(Tm)よりも約25℃低い温度で実施する。「ストリンジェントな洗浄」は、具体的な一連の条件下で、特定のDNAハイブリッドのTmよりも約5℃低い温度で実施する。このTmは、完全に一致したプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。本明細書に参考として援用した、Sambrook他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)、page 9.51を参照のこと。本明細書のために、「ストリンジェントな条件」は、溶液相ハイブリダイゼーションについて、6×SSC(20×SSCはNaCl 3.0Mおよびクエン酸ナトリウム0.3Mを含有する)、1%SDS中において65℃で8〜12時間行われ、次いで0.2×SSC、0.1%SDS中において65℃で20分間2回洗浄を行う水性ハイブリダイゼーション(すなわち、ホルムアミドを含まない)として定義される。65℃でのハイブリダイゼーションは、ハイブリダイズしている配列の長さおよびパーセント同一性を含むいくつかの要素に応じて様々な速度で生じるであろうことは、当業者によって理解されよう。
核酸配列に適用される場合、「変異した」という用語は、核酸配列内のヌクレオチドが参照核酸配列と比較して挿入、欠失、または変化できることを意味する。単一の変異を1遺伝子座に起こすことができ(点突然変異)、あるいは複数のヌクレオチドを単一の遺伝子座に挿入、欠失または変化させることもできる。さらに、1個または複数の変更を、核酸配列内の任意の数の遺伝子座に起こすことができる。核酸配列は、限定はしないが、「エラープローンPCR」」(PCR産物の全長に沿って、点突然変異が高率で得られるように、DNAポリメラーゼのコピー忠実度が低い条件下でPCRを実施する方法、例えば、Leung他、Technique、1:11−15(1989)およびCaldwell and Joyce、PCR Methods Applic.2:28〜33(1992)参照)および「オリゴヌクレオチド指向性変異誘発」(目的の任意のクローニングDNA部分において、部位特異的変異の発生を可能にする方法;例えば、Reidhaar−OlsonおよびSauer、Science 241:53−57(1988)参照)などの変異誘発技術を含む、当業界で公知の任意の方法によって変異させることができる。
本明細書では、「ベクター」という用語は、それが連結した他の核酸を輸送することができる核酸分子を意味するものである。ベクターの1種は、付加的DNA部分を連結することができる環状2本鎖DNAループを意味する「プラスミド」である。その他のベクターには、コスミド、細菌人工染色体(BAC)および酵母人工染色体(YAC)が含まれる。ベクターの他の種類はウイルスベクターで、付加的DNA部分をウイルスゲノムに連結することができる(以下でより詳細に説明する)。ある種のベクターは、導入された宿主細胞において自己複製する能力がある(例えば、宿主細胞において機能する複製開始点を有するベクター)。その他のベクターは、宿主細胞内に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれることができ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種の好ましいベクターは、作動可能に連結した遺伝子の発現を指令する能力がある。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または、単に「発現ベクター」)と称する。
本明細書では、「目的の配列」または「目的の遺伝子」という用語は、宿主細胞では通常産生されない、一般的にはタンパク質をコードする核酸配列を意味する。本明細書で開示した方法は、1個または複数の目的の配列または目的の遺伝子を宿主細胞ゲノムに安定して組み込むことを可能にする。目的の配列の非限定的例には、酵素活性を有する1個または複数のポリペプチド、例えば、マンノシルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、UDP−N−アセチルグルコサミントランスポーター、ガラクトシルトランスフェラーゼ、UDP−N−アセチルガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼおよびフコシルトランスフェラーゼなどの宿主でのN−グリカン合成に影響を与える酵素をコードする配列が含まれる。
「マーカー配列」または「マーカー遺伝子」という用語は、宿主細胞内での配列の有無をポジティブ選択するか、またはネガティブ選択するのを可能にする活性を発現することができる核酸配列を意味する。例えば、P パストリスURA5遺伝子は、この遺伝子を含有する細胞がウラシル非存在下で増殖する能力があるためその存在を選択することができるので、マーカー遺伝子である。その存在はまた、この遺伝子を含有する細胞が5−FOAの存在下で増殖する能力がないことによって逆に選択することができる(米国特許出願第2004/0229306号)。マーカー配列または遺伝子は、ポジティブ選択またはネガティブ選択の両方を表すことを必ずしも必要としない。P.パストリスのマーカー配列または遺伝子の非限定的例には、ADE1、ARG4、HIS4およびURA3が含まれる。抗生物質耐性マーカー遺伝子では、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジェネテシン(すなわちG418)耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子およびハイグロマイシン耐性遺伝子が、これらの抗生物質の存在下での増殖を可能にするために通常使用されている。
「作動可能に連結した」発現制御配列は、発現制御配列が目的の遺伝子を制御するために目的の遺伝子に連続している結合、および目的の遺伝子を制御するためにトランスで、または遠位で作用する発現調節配列を意味する。
本明細書では、「発現制御配列」という用語は、作動可能に連結したコーディング配列の発現に影響を与えるのに必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列は、転写、転写後の事象および核酸配列の翻訳を制御する配列である。発現制御配列には、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列、スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化させる配列、翻訳効率を高める配列(例えば、リボソーム結合部位)、タンパク質の安定性を高める配列、および所望するならば、タンパク質分泌を高める配列が含まれる。このような制御配列の性質は、宿主生物に応じて異なり、原核生物では、このような制御配列には一般的にプロモーター、リボソーム結合部位および転写終止配列が含まれる。「制御配列」という用語は、最小限、その存在が発現に不可欠な全成分を含むものであり、その存在が有利な付加的成分、例えば、リーダー配列および融合相手である配列も含むことができる。
「組換え宿主細胞」(発現宿主細胞」、「発現宿主系」、「発現系」または単に「宿主細胞」)という用語は、本明細書では、組換えベクターを導入した細胞を意味するものとする。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫も意味するものと理解すべきである。ある種の変更は、変異または環境の影響のいずれかによって後世代で生じる可能性があるので、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一ではない可能性があるが、それでも本明細書では「宿主細胞」という用語の範囲に含める。組換え宿主細胞は、培養で増殖して単離された細胞または細胞系であってよく、あるいは生組織または生物に存在する細胞であってもよい。
「真核生物の」という用語は、有核細胞または生物を意味しており、昆虫細胞、植物細胞、哺乳類細胞、動物細胞および下等真核細胞が含まれる。
「下等真核細胞」という用語には、酵母、菌類、襟鞭毛虫、微胞子虫、アルベオラータ(例えば、渦鞭毛藻)、ストラメノパイル(例えば、褐藻類、原生動物)、紅藻類(例えば、紅藻類)、植物(例えば、緑藻類、植物細胞、コケ類)およびその他の原生生物が含まれる。酵母および菌類には、限定はしないが、ピキア種、例えば、ピキア パストリス、ピキア フィンランディカ、ピキア トレハロフィリア、ピキア コクラマエ(koclamae)、ピキア メンブラナファシエンス、ピキア ミヌタ(オガタエア ミヌタ、ピキア リンドネリ)、ピキア オプンチアエ、ピキア サーモトレランス、ピキア サリクタリア、ピキア ゲルカム、ピキア ピペリ、ピキア スティピティスおよびピキア メタノリカ、サッカロマイセス種、例えば、サッカロマイセス セレビシエ、ハンゼヌラ ポリモルファ、クリベロマイセス種、例えば、クリベロマイセス ラクティス、カンジダ アルビカンス、アスペルギルス ニデゥランス、アスペルギルス ニガー、アスペルギルス オリゼ、トリコデルマ リーゼイ、クリソスポリウム ラクノウェンス(lucknowense)、フザリウム種、例えば、フザリウム グラミネウム、フザリウム ベネナツム、ニセツリガネゴケおよびアカパンカビが含まれる。
本明細書では、「ペプチド」という用語は、短いポリペプチド、例えば、通常アミノ酸長約50個未満のもの、より通常にはアミノ酸長約30個未満のものを意味する。本明細書で使用したこの用語は、構造的に模倣した、したがって生物学的機能を模倣する類似体および模倣体を包含する。
「ポリペプチド」という用語は、天然に生じるタンパク質および天然には生じないタンパク質、ならびにそれらの断片、変異体、誘導体および類似体を包含する。ポリペプチドは、単量体または重合体であってよい。さらに、ポリペプチドは、それぞれが1個または複数の異なった活性を有するいくつかの異なるドメインを含んでいてよい。
「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」という用語は、その起源または由来原料のために、(1)天然の状態で一緒になった天然の会合成分に結合していないか、(2)この場合、その他の細胞物質の存在に関して純度を判断することができる場合(例えば、同種由来のその他のタンパク質を含まない)、天然には見いだされない純度で存在するか、(3)異なる種の細胞によって発現されるか、または(4)天然には生じない(例えば、それは天然に見いだされるポリペプチドの断片であるか、または天然には見いだされないアミノ酸類似体もしくは誘導体または標準的ペプチド結合以外の結合を含む)タンパク質またはポリペプチドである。したがって、化学的に合成されるか、または天然に生じる細胞とは異なる細胞系において合成されるポリペプチドは、それが天然に会合する成分からは「単離されている」。ポリペプチドまたはタンパク質はまた、当業界で周知のタンパク質精製技術を使用して、単離によって天然に会合する成分を実質的に含まないようにすることができる。このように定義されたように、「単離された」は、そのように記載されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはオリゴペプチドがその天然の環境から物理的に取り出さていることを必ずしも必要としていない。
本明細書では、「ポリペプチド断片」という用語は、完全長ポリペプチドと比較して、欠失、例えば、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するポリペプチドを意味する。好ましい実施形態では、ポリペプチド断片は、断片のアミノ酸配列が天然に生じる配列の対応する位置と同一である隣接配列である。断片は通常、アミノ酸長が少なくとも5、6、7、8、9または10個であり、好ましくはアミノ酸長が少なくとも12、14、16または18個であり、より好ましくはアミノ酸長が少なくとも20個であり、より好ましくはアミノ酸が少なくとも25、30、35、40または45個であり、さらにより好ましくはアミノ酸長が少なくとも50個または60個であり、さらにより好ましくはアミノ酸長が少なくとも70個である。
「修飾誘導体」とは、一次構造配列が実質的に相同であるが、in vivoまたはin vitroにおける化学的および生化学的修飾を含むか、または天然ポリペプチドには見いだされないアミノ酸を組み込んだポリペプチドまたはその断片を意味する。このような修飾には、当業者によって容易に理解されるように、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、例えば放射性核物質による標識、および様々な酵素的修飾が含まれる。ポリペプチドの様々な標識方法およびこのような目的に有用な様々な置換基または標識は当業界では周知であり、125I、32P、35Sおよび3Hなどの放射活性同位体、標識された抗リガンド(例えば、抗体)に結合するリガンド、フルオロフォア、化学ルミネセンス剤、酵素および標識リガンドに対する特異的結合対メンバーとして使用され得る抗リガンドが含まれる。標識の選択は、必要とされる感度、プライマーとの結合の容易さ、安定性条件および使用可能な器具に左右される。ポリペプチドの標識方法は当業界では周知である。例えば、Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992、および2002年までの補遺)(本明細書に参考として援用)を参照のこと。
「融合タンパク質」という用語は、異種アミノ酸配列と結合したポリペプチドまたは断片を含むポリペプチドを意味する。融合タンパク質は、2種以上の異なるタンパク質に由来する2種以上の所望する機能的要素を含有するように構築することができるので、有用である。融合タンパク質は、関心のあるポリペプチドの10個の近接したアミノ酸、より好ましくは少なくとも20個または30個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも40、50または60個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも75、100または125個のアミノ酸を含む。本発明のタンパク質全体を含む融合物は、特に有用である。本発明の融合タンパク質内に含まれる異種ポリペプチドは、アミノ酸長が少なくとも6個、場合によってはアミノ酸長が少なくとも8個、実用的にはアミノ酸長が少なくとも15、20および25個である。融合物には、大きなポリペプチド、例えば、イムノグロブリンFc断片、またはイムノグロブリンFab断片または完全なタンパク質、例えば、緑色蛍光蛋白質(「GFP」)、発色団含有タンパク質もしくは特定の有用性を有する完全長イムノグロブリンが含まれる。融合タンパク質は、ポリペプチドまたはその断片をコードする核酸配列を、異なるタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列とインフレームで構築し、その後この融合タンパク質を発現することによって、組換えによって生成することができる。あるいは、融合タンパク質は、ポリペプチドまたはその断片を他のタンパク質に架橋結合することによって化学的に生成することができる。
本明細書では、「抗体」、「イムノグロブリン」、「Ig」および「Ig分子」という用語は同義に使用される。抗体分子はそれぞれ、その特異的抗原に結合できるよう特有の構造を有するが、抗体/イムノグロブリンは全て、本明細書で記載したような同一の全体的構造を有する。基本的な抗体構造単位は、サブユニットの4量体を含むことが知られている。各4量体は、2対の同一のポリペプチド鎖を有し、各対は1個の「軽」鎖(約25kDa)および1個の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分には、主に抗原認識に関与するアミノ酸約100個から110個の可変領域が含まれる。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を定めている。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンに分類され、抗体アイソタイプをそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEと定義する。軽鎖および重鎖は、可変領域および定常領域にさらに分割される(一般的に、Fundamental Immunology(Paul,W.編、第2版、Raven Press、N.Y.、1989)、第7章(全目的のために全体を参考として援用した)参照。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。したがって、完全な抗体は、2個の結合部位を有する。二重機能性または二重特異性抗体を除いて、この2個の結合部位は同一である。これらの鎖は全て、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3個の超可変領域が連結した比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同一の一般構造を表す。各対の2本の鎖のCDRはフレームワーク領域によって整列されており、特異的エピトープに結合することができる。これらの用語には、天然に生じる形態、ならびに断片および誘導体が含まれる。これらの用語の範囲内には、Igの種類、すなわちIgG、IgA、IgE、IgMおよびIgDが含まれる。これらの用語の範囲にはまた、IgGのサブタイプ、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4が含まれる。この用語は最も広範な意味で使用され、単一のモノクローナル抗体(アゴニスト抗体およびアンタゴニスト抗体を含む)ならびに複数のエピトープまたは抗原に結合する抗体組成物が含まれる。これらの用語は具体的に、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および、CH2ドメインのN−結合型グリコシル化部位を含む重鎖イムノグロブリン定常領域のCH2ドメインの少なくとも一部を含有するか含有するように変更されている場合の抗体断片またはそれらの変種を含む。これらの用語の範囲内には、Fc領域を含む分子、例えば、イムノアドヘシン(米国特許出願第2004/0136986号)、Fc融合物および抗体様分子が含まれる。あるいは、これらの用語は、少なくともN−結合型グリコシル化部位を含有する少なくともFab領域の抗体断片を意味することができる。
用語「Fc」断片は、CH2およびCH3ドメインを含有する抗体のC末端領域の「結晶化可能断片」を意味する(図1)。用語「Fab」断片は、VH、CH1、VLおよびCLドメインを含有する抗体の「抗原結合性断片」領域を意味する(図1)。
本明細書では、「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、実質的に均一な抗体集団から得られた1抗体を意味し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、微量で存在する可能性がある天然に生じ得る突然変異以外は同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位を対象とする。さらに、一般的に、様々な決定基(エピトープ)を対象とする様々な抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各mAbは、抗原上の単一の決定基を対象とする。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、ハイブリドーマ培養によって合成することができ、その他のイムノグロブリンが混入しないという利点がある。「モノクローナル」という用語は、実質的に均一な抗体集団から得られるような抗体の特性を示しており、いずれかの特定の方法による抗体産生を必要とするものではない。例えば、本発明によって使用されるモノクローナル抗体は、Kohler他、(1975)Nature、256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができるか、または組換えDNA法によって作製することができる(例えば、Cabilly他の米国特許第4,816,567号参照)。
本明細書のモノクローナル抗体には、元の種またはイムノグロブリン型またはサブクラスの指定とは無関係に、抗体の可変(超可変を含む)ドメインと定常ドメイン(例えば、「ヒト化」抗体)と、または軽鎖と重鎖と、またはある種由来の鎖と別の種由来の鎖と、または融合物と異種タンパク質とを継ぎ合わせて作製されたハイブリッド抗体および組換え抗体が含まれる(例えば、Cabilly他の米国特許第4,816,567号、Mage and Lamoyi、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、pp.79〜97(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987)参照)。本明細書では、モノクローナル抗体には、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が、第1の種に由来する抗体の対応配列と同一もしくは相同であるか、または、特定の抗体型またはサブクラスに属しており、一方で、鎖の残部が、異なる種に由来する抗体の対応配列と同一もしくは相同であるか、または、異なる抗体型またはサブクラスに属している「キメラ」抗体(イムノグロブリン)、および少なくとも1個のCH2を含有するか、含有するように改変されている場合のそのような抗体の断片も含まれる。非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型抗体は、ヒトイムノグロブリンに由来する配列を含む、特異的なキメライムノグロブリン、イムノグロブリン鎖、またはそれらの断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または、抗体のその他の抗原結合配列)である。抗体のFv断片は、分子全体の結合特性および特異性を保持する、抗体の最小単位である。Fv断片は、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインが非共有結合しているヘテロ2量体である。F(ab’)2断片は、ジスルフィド架橋によって連結したFab断片の両アームを含む断片である。
ヒト化抗体の最も一般的な形態は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、またはウサギなどのCDR由来の残基によって置換されているヒトイムノグロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの実例において、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト型残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも導入されたCDRまたはフレームワークの配列にも見いだされない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の能力をさらに改良して最大化するように行われるものである。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1個、一般的には2個の可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDR領域のすべて、または実質的にすべてが非ヒト型イムノグロブリンのものに対応しており、また、CDR領域のすべて、または実質的にすべてがヒトイムノグロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、最適には、イムノグロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、一般的にはヒトイムノグロブリンのものを含む。さらに詳細には、Jones他、1986、Nature 321:522 524、Reichmann他、1988、Nature 332:323〜327およびPresta、1992、Curr.Op.Struct.Biol.2:593〜596を参照のこと。
抗体またはイムノグロブリンという用語の範囲に含まれる「断片」には、その断片に標的分子に特異的に結合する能力が残されている限り、様々なプロテアーゼによる分解によって生成されたもの、化学的切断および/または化学的分離によって生成されたもの、および組換えによって生成されたものが含まれる。このような断片には、Fc、Fab、Fab’、Fv、F(ab’)2および単鎖Fv(scFv)断片がある。
本発明の抗体にとって目的の標的には、増殖因子受容体(例えば、FGFR、PDGFR、EGFR、NGFRおよびVEGF)およびそれらのリガンドが含まれる。その他の標的は、Gタンパク質受容体であり、サブスタンスK受容体、アンジオテンシン受容体、α−およびβ−アドレナリン受容体、セロトニン受容体、ならびにPAF受容体が含まれる。例えば、Gilman、Ann.Rev.Biochem.56:625〜649(1987)参照。その他の標的には、イオンチャンネル(例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウムチャンネル)、ムスカリン受容体、アセチルコリン受容体、GABA受容体、グルタミン酸受容体、およびドーパミン受容体が含まれる(Harpold、米国特許第5401629号および米国特許第5436128号参照)。その他の標的は、接着性タンパク質、例えばインテグリン、セレクチン、およびイムノグロブリンのスーパーファミリーのメンバーである(例えば、Springer、Nature 346:425〜433(1990)。Osborn、Cell 62:3(1990)、Hynes、Cell 69:11(1992)参照)。その他の標的は、サイトカイン、例えばインターロイキンIL−1からIL−13、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、βおよびγ、腫瘍増殖因子ベータ(TGF−β)、コロニー刺激因子(CSF)ならびに顆粒球単球コロニー刺激因子(GMCSF)である。Human Cytokines:Handbook for Basic&Clinical Research(Aggrawal他著、Blackwell Scientific、Boston、MA 1991)参照。その他の標的は、ホルモン、酵素、ならびに細胞内および細胞間のメッセンジャー、例えばアデニルシクラーゼ、グアニルシクラーゼ、およびホスホリパーゼCである。その他の目的の標的は、白血球抗原、例えばCD20およびCD33である。薬剤も目的の標的となり得る。標的分子は、ヒト、哺乳類または細菌のものであってよい。その他の標的は、ウイルス性および細菌性の微生物病原体、および腫瘍由来の抗原、例えばタンパク質、糖タンパク質および炭水化物である。さらに他の標的については、米国特許第4366241号に記載されている。
本明細書において検討した免疫Fc受容体には、FcgRI、FcgRIIa、FcgRIIb、FcgRIIIa、FcgRIIIbおよびFcRn(新生児受容体)を含めることができる。FcgRIという用語は、特に指定しない限り、任意のFcgRIサブタイプを意味することができる。FcgRIIという用語は、特に指定しない限り、任意のFcgRII受容体を意味することができる。FcgRIIIという用語は、特に指定しない限り、任意のFcgRIIIサブタイプを意味する。
「誘導体」という用語の範囲には、配列は改変されているが、標的分子に特異的に結合する能力を維持している抗体(または、その断片)が含まれ、種間キメラ抗体およびヒト化抗体、抗体融合物、4量体型抗体複合体および抗体融合物、例えばダイアボディー(二重特異性抗体)、単鎖ダイアボディー、およびイントラボディーが含まれる(例えば、Intracellular Antibodies:Research and Disease Applications、(Marasco編、Springer−Verlag New York,Inc.、1998年参照)。
「非ペプチド類似体」という用語は、参照ポリペプチドの特性に類似した特性を有する化合物を意味する。非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体」または「ペプチド様物質」と呼ばれることもある。例えば、本明細書に参考として援用されているJones、Amino Acid and Peptide Synthesis、Oxford University Press(1992);Jung、Combinatorial Peptide and Nonpeptide Libraries:A Handbook、John Wiley(1997);Bodanszky他、Peptide Chemistry−A Practical Textbook、Springer Verlag(1993);Synthetic Peptides:A Users Guide、(Grant編、W.H.Freeman and Co.、1992);Evans他、J.Med.Chem.30:1229(1987);Fauchere、J.Adv.Drug Res.15:29(1986);Veber and Freidinger、Trends Neurosci.、8:392 396(1985)および上記のそれぞれで引用されている文献を参照のこと。このような化合物は、コンピュータ化分子モデリングによってしばしば開発される。本発明の有用なペプチドに構造的に類似したペプチド模倣体は、同等の効果を得るために使用することができ、したがって、本発明の一部として想定されている。
アミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させるもの、(2)酸化に対する感受性を低下させるもの、(3)タンパク質複合体を形成する結合親和性を改変するもの、(4)結合親和性または酵素活性を改変するもの、および(5)このような類似体のその他の生理化学的または機能的な特性を付与するか、または変更するものを含むことができる。
本明細書では、20個の通常のアミノ酸およびその略記法は通常の用法に従う。本明細書に参考として援用したImmunology−A Synthesis(Golub and Gren編、Sinauer Associates、Sunderland、Mass.、2版 1991)を参照のこと。20個の通常型アミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、非天然型アミノ酸、例えば、α−、α−2置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、およびその他の非通常型アミノ酸も、本発明のポリペプチドにとって適切な成分であり得る。非通常型アミノ酸の例には、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、N−メチルアルギニン、およびその他の類似のアミノ酸ならびにイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が含まれる。本明細書において使用するポリペプチド表示法では、標準的な用法および慣例にしたがって、左側の末端はアミノ末端に対応し、右側の末端はカルボキシ末端に対応している。
タンパク質をコードする核酸配列が第2のタンパク質をコードする核酸配列と類似の配列を有するならば、そのタンパク質は第2のタンパク質と「相同性」を有するか、「相同」である。あるいは、2種のタンパク質が「類似」のアミノ酸配列を有していれば、そのタンパク質は第2のタンパク質と相同性を有する。(このように、「相同タンパク質」という用語は、2種のタンパク質が「類似」したアミノ酸配列を有することを意味するものと定義されている。)好ましい実施形態において、相同タンパク質は、野生型タンパク質に対して少なくとも65%の配列相同性を示すものであり、より好ましいのは、少なくとも70%の配列相同性を示すものである。さらにより好ましいのは、野生型タンパク質に対して少なくとも75%、80%、85%または90%の配列相同性を示す相同タンパク質である。さらにより好ましい実施形態において、相同タンパク質は、少なくとも95%、98%、99%または99.9%の配列同一性を表す。本明細書で使用するとき、アミノ酸配列の2つの領域間の相同性は(特に、予測される構造上の類似性に関して)、機能の類似性を含むものと解釈される。
タンパク質またはペプチドに関して「相同」が用いられる場合、同一でない残基部位はしばしば保存的アミノ酸置換によって異なっていると認識されている。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の化学特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されているものである。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変えるものではない。2種以上のアミノ酸配列が、保存的アミノ酸置換によって互いに異なる場合、パーセント配列同一性または相同性の程度を上方に調節して、置換の保存的性質を補正することができる。この調節を行う手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson、1994、Methods Mol.Biol.24:307〜31および25:365〜89(本明細書に参考として援用した)を参照のこと。
以下の6つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する。1)セリン(S)、トレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
ポリペプチドの配列同一性は、パーセント配列同一性とも呼ばれるが、一般的には配列解析ソフトウエアを用いて測定する。例えば、Sequence Analysis Software Package(Genetics Computer Group(GCG)、University of Wisconsin Biotechnology Center、910 University Avenue、Madison、Wisconsin 53705)を参照のこと。タンパク質解析ソフトウエアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失、および、その他の変更に割り当てられた相同性の尺度を用いて、類似配列を一致させる。例えば、GCGは、初期パラメータで使用して、密接に関連したポリペプチドの間、例えば、様々な生物種由来の相同ポリペプチドの間、または野性型タンパク質とそのムテインとの間の配列相同性または配列同一性を決定することができるプログラム、例えば「Gap」および「Bestfit」を含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。
特定のポリペプチド配列を、様々な生物に由来する多数の配列を含むデータベースと比較するときに好ましいアルゴリズムは、コンピュータプログラム、BLAST(Altschul他、J.Mol.Biol.215:403〜410(1990)、Gish and States、Nature Genet.3:266〜272(1993);Madden他、Meth.Enzymol.266:131−141(1996)、Altschul他、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402(1997)、Zhang and Madden、Genome Res.7:649〜656(1997))、特にblastpまたはtblastn(Altschul他、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402(1997))である。
BLASTpにとって好ましいパラメータは、期待値:10(初期値)、フィルター:seg(初期値);ギャップを開くコスト:11(初期値)、ギャップを広げるコスト:1(初期値)、マックスアラインメント:100(初期値)、ワードサイズ:11(初期値)、記述数:100(初期値)、ペナルティーマトリックス:BLOWSUM62である。
相同性を比較するポリペプチド配列の長さは、一般的に少なくとも約16アミノ酸残基、通常は少なくとも約20残基、より通常は少なくとも約24残基、一般的には少なくとも約28残基であり、好ましくは約35残基よりも長い。多数の異なる生物に由来する配列を含むデータベースを検索するとき、アミノ酸配列を比較することが好ましい。アミノ酸配列を用いたデータベース検索は、当業界において公知のblastp以外のアルゴリズムで測定することができる。例えば、GCGバージョン6.1のプログラムであるFASTAを用いて、ポリペプチド配列を比較することができる。FASTAは、クエリー配列とサーチ配列の間で最適に重複する領域のアラインメントおよびパーセント配列同一性とを提供する。Pearson、Methods Enzymol.183:63〜98(1990)(本明細書に参考として援用)。例えば、アミノ酸配列間のパーセント配列同一性は、本明細書に参考として援用したGCGバージョン6.1で提供されているように、FASTAをその初期パラメータ(ワードサイズ2およびPAM250スコアマトリクス)で用いて決定することができる。
「特異的結合」とは、2種の分子が環境内のその他の分子に結合するよりも、互いに結合する能力を意味する。一般的には、「特異的結合」は、ある反応における偶発的な結合の少なくとも2倍、より一般的には少なくとも10倍、しばしば少なくとも100倍上回って区別する。一般的には、特異的結合反応の親和性または能力は、解離定数によって定量して、約10−7M以上の強さ(例えば、約10−8M、10−9M、またはそれ以上)である。
本明細書では「領域」という用語は、生体分子の一次構造の物理的に近接した部分を意味する。タンパク質の場合には、領域は、そのタンパク質のアミノ酸配列の近接した部分によって限定される。
本明細書では「ドメイン」という用語は、生体分子の公知の機能、または推測される機能に寄与する生体分子の構造を意味する。ドメインは、その領域または一部と同一の範囲を有することができ、ドメインは、生体分子の明確に区別できる、近接していない領域を含むこともできる。
本明細書では「分子」という用語は、任意の化合物を意味し、限定はしないが、低分子、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、糖、ヌクレオチド、核酸、脂質などが含まれ、このような化合物は天然であってよく、合成されたものであってもよい。
本明細書では「含む(comprise)」という用語またはその変形である、例えば、「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」は、規定された整数または整数群を含むことを意味するが、その他の整数または整数群を除くことを意味するものではないと理解される。
本明細書では「から本質的になる」という用語は、規定された整数または整数群を含むが、規定された整数に本質的に影響を与えるか、または改変するような変更またはその他の整数を除く意味であると理解される。N−グリカンの種に関して、規定されたN−グリカン「から本質的になる」という用語は、糖タンパク質のアスパラギン残基に直接連結したN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)において、N−グリカンがフコシル化しているか否かにかかわらず、N−グリカンを含むと理解される。
本明細書では、「主に」という用語、またはその変種、例えば「主要な」または「主要である」は、糖タンパク質がPNGアーゼで処理され、グリカンを放出した後の、質量分析法、例えばMALDI−TOF MSによって解析された、全N−グリカンのモルパーセント(%)が最も高いグリカン種を意味すると理解される。言い換えると、「主に」という語句は、個々の実体、例えば特定のグリコフォームが、他の個々の実体よりも大きいモルパーセントで存在していることと定義される。例えば、ある組成物が、40%モルパーセントの分子種A、35%モルパーセントの分子種B、および25%モルパーセントの分子種Cからなっている場合、この組成物は主に分子種Aを含み、分子種Bは2番目に最も主要な分子種である。
本明細書では、特定の糖残基、例えばフコースなど「を本質的に含まない」という用語は、その糖タンパク質組成物が、このような残基を含有するN−グリカンを実質的に欠いていることを示すために使用される。純度に関して表現される場合、本質的に含まないとは、このような糖残基を含有するN−グリカン構造の量が、重量パーセントまたはモルパーセントで、10%を超えず、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満であることを意味する。したがって、本発明による糖タンパク質組成物中のN−グリカン構造の実質的に全てが、フコースを含まないか、ガラクトースを含まないか、または両者を含まない。
本明細書では、いずれの時点でもN−グリカン構造上に特定の糖残基、例えばフコースが検出可能な量で存在しない場合に、糖タンパク質組成物は、このような糖残基を「欠く」または「欠いている」。例えば、本発明の好ましい実施形態において、糖タンパク質組成物は、上記したような酵母菌(例えば、ピキア種、サッカロマイセス種、クルイベロマイセス種、アスペルギルス種)が挙げられる下等真核生物によって生成されるが、これらの生物の細胞はフコシル化N−グリカン構造体を生成するのに必要な酵素を持たないため、「フコースを欠く」。したがって、「フコースを本質的に含まない」という用語は「フコースを欠く」と言う用語を包含する。しかし、ある組成物が、一時フコシル化N−グリカン構造体を含んでいたか、上記したように、限定的ではあるが検出可能な量のフコシル化N−グリカン構造体を含んでいても、その組成物は「フコースを本質的に含まない」ことがあり得る。
本明細書では、「結合活性の増加」という語句は、「結合親和性の増加」と同義に使用され、IgG分子と受容体、またはそれ以外に記された分子との結合の増加を意味する。
本明細書では、「結合活性の低下」という語句は、「結合親和性の低下」と同義に使用され、IgG分子と受容体、またはそれ以外に記された分子との結合の低下を意味する。
本明細書で使用される「ファゴサイトーシス」という語句は、免疫複合体を除去することと定義される。ファゴサイトーシスは、マクロファージおよび好中球が挙げられる(しかしこれらに限定されない)免疫細胞の免疫学的活性である。
抗体および抗体抗原複合体と免疫系細胞との相互作用ならびに様々な応答(抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)、免疫複合体の除去(ファゴサイトーシス)、B細胞による抗体産生、ならびにIgG血清半減期が挙げられる)はそれぞれ、以下に定義されている。Daeron他、1997、Annu.Rev.Immunol.15:203〜234、Ward and Ghetie、1995、Therapeutic Immunol.2:77〜94、Cox and Greenberg、2001、Semin.Immunol.13:339〜345、Heyman、2003、Immunol.Lett.88:157〜161、およびRavetch、1997、Curr.Opin.Immunol.9:121 125。
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者によって通常理解されている意味と同一の意味を有する。例示的な方法および材料を以下で説明するが、本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料も、本発明を実施するときに使用することができ、当業者には明白である。本明細書に記載されている出版物およびその他の参考文献は全て、全体が参考として本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合には、定義を含めて本明細書が支配する。材料、方法、および実施例は単に例示のためのものであり、限定するものではない。
組換えMan7GlcNAc2/Man8GlcNAc2−Ig分子
本発明は、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される主要なN結合型グリコフォームを有するグリコシル化Igの集団を含む組成物を提供する。本発明はまた、抗体のエフェクター機能、例えば受容体結合を媒介する、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される主要なN結合型グリコフォームを有するIgおよびIg組成物を提供する。好ましくは、本発明のIgとFcgRIII受容体との相互作用は、直接結合活性の増加をもたらす。そして、好ましくは、本発明のIgとFcgRIIb受容体との相互作用は、直接結合活性の低下(または欠如)をもたらす。他の実施形態において、本発明のIgまたはIg組成物は、グリコフォーム構造の増加/優勢によって付与される結合活性の増加を表す。本発明の顕著な特徴は、抗体のエフェクター機能、例えばADCC活性の増加、またはB細胞による抗体産生の増加を媒介する主要な特定のグリコフォームを有するIgおよびIg組成物を提供することである。他の実施形態において、本発明のIgおよびIg組成物は、あるグリコフォームまたは特定のグリコフォームの増加/優勢によって付与される、ADCC活性の増加、またはB細胞による抗体産生の増加を表す。さらに、主要なグリコフォームまたは主要なグリコフォーム類を有するIgまたはIg組成物を作製する1利点は、望ましくないグリコフォームを有するIgの生成、および/または、望ましくない効果を誘発し、かつ/もしくはより効果的なグリコフォームの希釈する可能性がある不均質なIg混合物の生成を避けることであることは、当業者には容易に理解されるであろう。したがって、主にMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2グリコフォームを有するIgを含む医薬組成物は、FcgRIIbへの結合低下、およびFcgRIIIへの結合増加が挙げられるがこれらに限定されない有益な特性を備え、したがって、おそらくより低用量で効果を有することができ、より高い効能/力価を有し得る。
一実施形態において、本発明のIg分子は、抗体エフェクター機能を媒介するFc領域上にあるCH2ドメインに少なくとも1個のMan7GlcNAc2またはMan8GlcNAc2のグリカン構造を含む。好ましくは、Man7GlcNAc2またはMan8GlcNAc2のグリカン構造は、2量体化したIg分子の各Asn−297部位上にある(図1)。他の実施形態において、本発明は、Asn−297のMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択されるN−グリカン構造によって主にグリコシル化されているIgを含む組成物を提供する(図1)。あるいは、Ig分子上に見いだされる1個または複数の炭水化物部分を欠失したり、および/またはその分子に付加したりすることができ、それによって、Ig上のグリコシル化部位の数を追加したり削除したりすることができる。さらに、Ig分子のCH2領域内にあるN結合型グリコシル化部位の位置は、分子内の様々な位置にアスパラギン(Asn)またはN−グリコシル化部位を導入することによって変えることができる。Asn−297は、一般的にマウスおよびヒトのIgG分子に見いだされるN−グリコシル化部位である(Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest、1991)が、この部位が、想定できる唯一の部位ではなく、また、この部位が、機能のために必ずしも維持されなければならないわけでもない。公知の変異誘発法を用いて、当業者は、Asn−297のグリコシル化部位が欠失するように本発明のIgをコードするDNA分子を改変でき、そしてIg分子内のその他の位置に1個または複数のN−グリコシル化部位を形成するようにDNA分子をさらに改変することができる。Ig分子のCH2領域内にN−グリコシル化部位を形成することが好ましい。しかし、IgのFab領域のグリコシル化は血清抗体の30%で、一般的にはAsn−75で見られると記載されている(Rademacher他、1986、Biochem.Soc.Symp.、51:131 148)。Fab領域におけるグリコシル化は、Fc領域におけるN−グリコシル化と相まって、または単独で起こり得る追加的な部位である。
一実施形態において、本発明は、主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造を有する組換えIg組成物であって、前記Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2構造がその組換えIg組成物の2番目に主要なグリカン構造よりも少なくとも約5モルパーセント多い量で存在する組成物を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造を有する組換えIg組成物であって、前記Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造が、その組換えIg組成物の2番目に主要なグリカン構造よりも少なくとも約10モルパーセントから約25モルパーセント多い量で存在する組成物を提供する。さらに好ましい実施形態において、本発明は、主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造を有する組換えIg組成物であって、前記Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造が、その組換えIg組成物の2番目に主要なグリカン構造よりも少なくとも約25モルパーセントから約50モルパーセント多い量で存在する組成物を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2Nグリカン構造を有する組換えIg組成物であって、前記Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造がその組換えIg組成物の2番目に主要なグリカン構造よりも約50モルパーセント多い量で存在する組成物を提供する。他の好ましい実施形態において、本発明は、主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2Nグリカン構造を有する組換えIg組成物であって、前記Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造がその組換えIg組成物の2番目に主要なグリカン構造よりも約75モルパーセント多い量で存在する組成物を提供する。さらに他の実施形態において、本発明は、主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2Nグリカン構造を有する組換えIg組成物であって、前記Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造がその組換えIg組成物の2番目に主要なグリカン構造よりも約90モルパーセント多い量で存在する組成物を提供する。主にMan7GlcNAc2(33%)およびMan8GlcNAc2(55%)を有するDX−IgGのN−グリカン構造のMALDI−TOF分析を図3に示す。
IgのFcgRIII受容体への結合増加
FcgRIIIaに結合するイムノグロブリンのエフェクター機能、例えば、ADCCの活性化は、Ig分子のFc領域によって媒介される。様々な機能が、この領域の様々なドメインによって媒介される。したがって、本発明は、Ig分子上のFc領域が、エフェクター機能を実行することができる主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを有するIg分子および組成物を提供する。一実施形態において、主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを有するFc領域は、FcgRIIIa受容体への結合の増加をもたらす(図4、5)。他の実施形態において、Fcは主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを有する。Fc領域を含む分子、例えばイムノアドヘシン(Chamow and Ashkenazi、1996、Trends Biotechnol.14:52〜60、Ashkenazi and Chamow、1997 Curr Opin.Immunol.9:195〜200)、Fc融合物および抗体様分子も本発明に包含されることは、当業者にとって容易に理解されよう。
Ig分子のFc受容体に対する結合活性(親和性)は、測定法によって測定することができる。IgGによるFcgRIII結合測定法の1例を実施例6に開示する。当業者は、この開示された測定法がいかなるイムノグロブリン分子に関係している必要条件にも簡単に適合させることができることを認識している。
主にMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを含む本発明のDX−IgGは、図4および図5それぞれに示したように、Rituximab(登録商標)と比較して、FcgRIIIa−LFおよびFcgRIIIa−LVそれぞれへの結合活性が約3.5倍から6倍高い。最も興味深いことに、FcRIIIa遺伝子の2形性は、2種類のアロタイプ、FcgRIIIa−158VおよびFcgRIIIa−158Fを生じる(Dall’Ozzo他、2004、Cancer Res.64:4664〜4669)。FcgRIIIa−158Vについての同型接合遺伝子型は、Rituximab(登録商標)に対する高い臨床応答と関連している(Cartron他、2002、Blood、99 754〜758)。しかし、ヒトで見いだされる最も一般的な多形変種は、FcgIIIa−158Fであり、Rituximab(登録商標)が、ほとんどの集団に対してFcgRIIIa結合によってADCCを誘導する効果を低下させている。しかし、フコシルトランスフェラーゼ活性を欠如した宿主細胞で発現されると、Rituximab(登録商標)は、FcgRIIIa−158FおよびFcgRIIIa−158Vの両方によるADCCの増強について同等に有効である(Niwa他、2004、Clin.Canc Res.10:6248〜6255)。本発明の抗体は、P.パストリス、すなわち、フコースを本来含まない酵母宿主で発現される(実施例1、2)。したがって、フコースを含まず、FcgRIIIa−LFに対する結合が増強している本発明の抗体は、Rituximab(登録商標)に対する臨床応答の低下を示している多くの患者を治療するのに特に有用であり得る。
IgのFcgRIIb受容体への結合低下
FcgRIIbに結合するイムノグロブリンのエフェクター機能、例えば、B細胞による抗体産生の増加、およびADCC活性の増加は、Ig分子のFc領域によって媒介される。様々な機能が、この領域の様々なドメインによって媒介される。したがって、本発明は、Ig分子上のFc領域が、エフェクター機能を実行することができる主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを有するIg分子および組成物を提供する。一実施形態において、主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを有するIgのFc領域は、FcgRIIb受容体に対する結合の低下をもたらす。Fc領域を含む分子、例えばイムノアドヘシン(Chamow and Ashkenazi、1996、Trends Biotechnol.14:52〜60;Ashkenazi and Chamow 1997 Curr Opin.Immunol.9 195〜200)、Fc融合物および抗体様分子も本発明に包含されることは、当業者に容易に理解されよう。
Ig分子のFc受容体に対する結合活性(親和性)は、測定法によって測定することができる。IgG1によるFcgRIIb結合測定法の1例を実施例5に開示する。当業者は、この開示された測定法がいかなるイムノグロブリン分子に関係している必要条件に簡単に適合させることができることを認識している。
主にMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを含む本発明のDX−IgGは、図6に示したように、Rituximab(登録商標)と比較して、FcgRIIbへの結合活性がそれぞれ約4倍高い。
抗体依存性細胞媒介細胞傷害の増加
さらに他の実施形態において、Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを主要なN−グリカンとして有するIg分子または組成物のFcgRIIIa−LFおよびFcgRIIIa−LVへの結合の増加は、FcgRIIIa媒介性ADCCの増加をもたらし得る。Fc□RIII(CD16)受容体がADCC活性に関与することは十分に確認されている(Daeron他、1997、Annu.Rev.Immunol.15:203〜234)。
他の実施形態において、Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2を主要なN−グリカンとして有するIg分子または組成物のFcgRIIb結合の低下は、FcgRIIb媒介性ADCCの増加をもたらし得る(Clynes他、2000)。本発明のIg分子または組成物は、主要なMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAcグリカンの存在によって、ADCCの増加を表すことができる。
B細胞枯渇を測定するインビトロ測定法およびクロム放出ADCC測定法の1例を実施例7に開示する。当業者は、これらの開示された測定法を、任意のイムノグロブリン分子に関連した必要条件に容易に適合させることができることを認識している。さらに、動物モデルにおけるインビボADCC測定法を、Borchmann他、2003、Blood、102:3737〜3742、Niwa他、2004、Cancer Research、64:2127〜2133および実施例7から、任意の特異的Igに対して適合させることができる。
B細胞による抗体産生の増加
制御FcgR経路を介した腫瘍に対する抗体の結合が示された(Clynes他、2000、Nature、6:443〜446)。具体的に、FcgRIIbが、免疫受容体チロシンをベースにした活性化モチーフ(ITAM)を含有する受容体、例えば、B細胞受容体(BCR)、FcgRI、FcgRIII、およびFcεRIと共架橋すると、ITAM媒介シグナルを阻害することが知られている(Vivier and Daeron、1997、Immunol.Today、18:286〜291)。例えば、FcgRII特異的抗体を添加すると、FcgRIIbに対するFc結合が阻害され、増強されたB細胞増殖がもたらされる(Wagle他、1999、J of Immunol.162:2732〜2740)。したがって、一実施形態において、本発明のIg分子は、FcgRIIb受容体結合の低下を媒介して、B細胞の活性化をもたらし、次に、形質細胞による抗体産生を促進させる(catalyze)ことができる(Parker,D.C.1993、Annu.Rev.Immunol.11:331〜360)。IgG1を用いて、B細胞による抗体産生を測定する測定法の1例を実施例6に開示する。当業者は、この開示された測定法を、任意のイムノグロブリン分子の測定法とともに使用するために容易に適合させ得ることを認識している。
その他の免疫学的活性
好中球上でのエフェクター細胞分子の改変された表面発現が、細菌感染に対する感受性を増加させることが示された(Ohsaka他、1997、Br.J.Haematol.98:108〜113)。IgGのFcgRIIIaエフェクター細胞受容体への結合が、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−a□)の発現を制御することがさらに示された(Blom他、2004、Arthritis Rheum.、48:1002〜1014)。さらには、FcgR誘導性TNF−aも、好中球がIgGコートされた赤血球に結合し、ファゴサイトーシスする能力を高める(Capsoni他、1991、J.Clin.Lab Immunol.34:115〜124)。したがって、FcgRIIIへの結合の増加を示す本発明のIg分子および組成物は、TNF−aの発現増加をもたらすことができると考えられる。
FcgRIII受容体活性が増加すると、リソソームベータ−グルクロニダーゼ、およびその他のリソソーム酵素の分泌が増加することが示されている(Kavai他、1982、Adv.Exp Med.Biol.141:575〜582;Ward and Ghetie、1995、Therapeutic Immunol.、2:77〜94)。さらに、免疫受容体にそれらのリガンドが結合した後の重要な段階は、リガントを内部移行してリソソームまで運搬することである(Bonnerot他、1998、EMBO J.、17:4906〜4916)。したがって、Fc□R IIIaへの結合の増加を示す本発明のIg分子および組成物は、リソソーム酵素の分泌の増加をもたらすことができると考えられる。
本発明は、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAcからなる群から選択されるN−グリカンを含むイムノグロブリン分子を提供し、イムノグロブリンおよびそれに結合した複数のN−グリカンを含む組成物であって、前記複数のN−グリカン内の主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAcからなる群から選択されている組成物を提供する。イムノグロブリンにおける前記Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAcN−グリカンの優勢は、本明細書に示すようなFcgRIIIa−LFおよびFcgRIIIa−LVへの結合の改善、およびFcgRIIbへの結合の低下に加えて、所望の治療エフェクター活性を付与することが好ましい。
イムノグロブリンのサブクラス
IgGのサブクラスは、Fc受容体に対する様々な結合親和性を有することが示されている(Huizinga他、1989、J.of Immunol、142:2359〜2364)。IgGのサブクラスはそれぞれ、本発明の様々な態様において特定の利点を提供することができる。すなわち、一態様において、本発明は、主要なN−グリカンとしてMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAcを含むIgG1組成物を提供する。他の態様において、本発明は、主要なN−グリカンとしてMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAcを含むIgG2組成物を提供する。さらに他の態様において、本発明は、主要なN−グリカンとしてMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAcを含むIgG3分子を提供する。他の態様において、本発明は、主要なN−グリカンとしてMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAcを含むIgG4分子を含む。
あるいは、本発明は、5種類の主なイムノグロブリン、IgA、IgD、IgE、IgM、およびIgGのすべてに適用することができる。本発明の好ましいイムノグロブリンは、ヒトIgGであり、好ましくはIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のサブタイプの1つに由来する。より好ましくは、本発明のイムノグロブリンはIgG1分子である。
抗体のエフェクター機能および活性を媒介する組換えイムノグロブリン(Ig)分子の作製
一態様において、本発明は、CH2ドメインのAsn−297にMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される主要なN−グリカンを有する組換えIg分子あって、抗体のエフェクター機能および活性を媒介するIg分子を作製する方法、および、同様に、イムノグロブリンに結合した主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択されるイムノグロブリン組成物を作製する方法を提供する。一実施形態において、Igの重鎖および軽鎖を、重複オリゴヌクレオチドを用いて合成し、宿主細胞中で発現させるために発現ベクターに別々にクローニングする(実施例1)。好ましい実施形態において、組換えIgの重鎖および軽鎖を、主にMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2N−グリカンの付加を促進させる宿主株で発現させる。一実施形態において、このグリコフォーム構造は、より具体的に、Ig糖タンパク質のFc領域のアミノ酸Asn−297の窒素と、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2N−グルカン上のN−アセチル−β−D−グルコサミンのヒドロキシル基との間に形成される結合で、Man7GlcNAc2を表す{[(Manα1,6−Manα1,6Manαl,3)][(Manα1,3)−(Manα1,6)−Manα1,6)]−Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAc]およびMan8GlcNAc2を表す{[(Manα1,6−Manα1,6−Manα1,6−Manα1,3)][(Manα1,3)−(Manα1,6)−Manα1,6]−Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAc}を表す。さらに別の実施形態において、この(これらの)主要なグリカンの付加を、Asn−297以外のIg分子内の様々な部位のアスパラギンに、または、Fab領域のN−グリコシル化部位と組み合わせて付加することができる。
主にMan7GlcNAc2/Man8GlcNAc2を有するIgの下等真核生物における生成
本発明の一態様は、Man7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリコフォームを産生しない哺乳動物細胞で発現された糖タンパク質の組成物と比較して優れている前記グリコフォームを主に有するイムノグロブリンまたは抗体分子を生成するために使用することができる組換え下等真核宿主細胞を提供する。
糖タンパク質の組成物が、容易に再現可能な所定のグリコシル化パターンで提供されることが、本発明のもう1つの利点である。このような組成物の特性を評価し、所望の特性となるよう最適化する一方で、副作用を最小化するか完全に回避することができる。
本発明はまた、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2N−グリカン構造からなる群から選択されるN−グリカンを含むIg分子を生成するために1種または複数種の核酸を発現するように操作または選択された組換え宿主細胞を作製する方法を提供する。本発明のある好ましい実施形態では、組換え宿主細胞、好ましくは組換え下等真核宿主細胞を使用して、主にMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2N−グリカンを有する前記Ig分子および組成物を生成する。
その他の好ましい実施形態では、本発明は、組換え宿主細胞から、または本発明の方法によって得ることができる糖タンパク質を含む。
本発明の宿主細胞は、所望のIg領域をコードするベクターで、および、本明細書で記載した1種または複数のグリコシル化関連酵素をコードするベクターで形質転換することができ、その後、主にMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを有する組換えIg分子または組成物の発現について選択することができる。本発明の組換え宿主細胞は、真核生物または原核生物の宿主細胞、例えば、主にMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを有するIg組成物を産生するように操作された動物、植物、昆虫、細菌細胞などであってよい。
一実施形態において、IgG1をコードするベクター、例えば、DX−IgGを含有するAOX1/pPICZAベクターを、野生型酵母P.パストリスNRRL Y11430株に導入する(実施例1、2)。このNRRL Y11430から発現し、精製したDX−IgGをa−1,2マンノシダーゼで処理すると(実施例3)、主にMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2N−グリカンを有するDX−IgGが生じる(図3)。
あるいは、本発明の抗体は、当業界で公知のいくつかの方法を使用して発現させることができる(Monoclonal Antibody Production Techiniques and Applications、pp.79〜97(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987))。
下等真核生物におけるグリコシルトランスフェラーゼの発現および安定した遺伝子組み込み
下等真核宿主株(例えばP.パストリス)において、選択マーカー、例えば、URA3、URA5、HIS4、SUC2、G418、BLA、またはSH BLAを用いて異種遺伝子を導入し、組み込みを確認する方法が記載されている。このような方法は、発現系が下等真核生物で生成される場合には、本発明のIgを生成するために適合させることができる。さらに、所望しないマンノシルトランスフェラーゼ活性を除去するためにURA3マーカーの反復使用を可能にする方法が記載されている。Alani他、1987、Genetics、116:541 545および米国特許第6051419号には、P.パストリスのURA3遺伝子の破壊に基づく選択系が記載されている。好ましくは、PpURA3−またはPpURA5−ブラスターカセットを使用して、URA3、URA5、またはウラシル生合成経路の任意の遺伝子を破壊して、ウラシルに対する栄養要求性および5−フルオロオロチン酸(5FOA)に対する耐性に基づいたポジティブ選択およびネガティブ選択の両方が可能になる(米国特許出願第2004/0229306号、Boeke他、1984、Mol.Gen.Genet、197:345〜346)。したがって、当業者は、このような系によって、選択および逆選択による複数の異種遺伝子の挿入が可能になることを認識している。
さらなる酵素修飾
さらなる酵素欠失は下等真核生物において、ヒトで異常な免疫原活性を付与する可能性のあるマンノシルホスホリレーションまたはβ−マンノシル化を含まないIgを単離するために有益であるか、または必要であり得る。既述したように、WO05/065019号は、マンノシルホスホリレーションを除去する方法を開示しており、米国特許出願第11/118008号は、β−マンノシル化を除去する方法を開示している。植物宿主細胞からIgを単離するために、酵素欠失、例えば、これらの宿主細胞におけるキシロースおよび/またはフコースの生成の欠失または破壊は有益であるか、または必要であり得る。哺乳類宿主細胞からIgを単離するために、酵素欠失、例えば、これらの宿主細胞におけるフコースおよび/またはフコシルトランスフェラーゼの生成の欠失または破壊は有益であるか、または必要であり得る。
主にMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造を有するIgタンパク質または組成物のその他のタンパク質発現系における生成
主要なグリカン構造を有するIgを発現させるために操作を必要としてよいか、または必要としなくてよい、異種タンパク質の発現のための発現宿主系(生物)を選択することは、当業者には理解されている。本明細書に記載されている実施例は単に、Asn−297または別のN−グリコシル化部位、またはその両方に特定のグリカンを有するIgの発現を実施する一方法の例である。当業者は、本発明および実施例のこれらの記載を、任意のタンパク質発現宿主系(生物)に容易に適合させることができる。
動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、細菌細胞などを含むその他のタンパク質発現宿主系を使用して、本発明によるIg分子および組成物を産生することができる。このようなタンパク質発現宿主系を操作して、主要なグリコフォームを発現させることができ、あるいは、主要なグリカン構造を有する糖タンパク質を天然に産生させることができる。主要なグリコフォームを有する糖タンパク質を産生する操作されたタンパク質発現宿主系の例には、遺伝子ノックアウト/変異(Shields他、2002、JBC、277:26733〜26740)、(Umana他、1999、Nature Biotech.、17:176〜180)における遺伝子操作、または両者の組み合わせが含まれる。あるいは、ある種の細胞、例えば、ニワトリ、ヒト、およびウシは、主要なグリコフォームを天然に発現する(Raju他、2000、Glycobiology、10:477〜486)。したがって、本発明による特定の1つのグリカン構造を主に有するIg糖タンパク質または組成物の発現は、多くの発現宿主系の少なくとも1つを選択することによって、当業者により得ることができる。さらに、当業界で見いだされた糖タンパク質を産生させるための発現宿主系には、CHO細胞;Raju WO9922764A1およびPresta WO03/035835A1、ハイブリドーマ細胞;Trebak他、1999、J.Immunol.Methods、230:59〜70、昆虫細胞;Hsu他、1997 JBC、272:9062〜970、および植物細胞:米国特許第6040498号、が含まれる。
IgGの精製
抗体を精製および単離する方法は公知であり、当業界において開示されている。例えば、Kohler&Milstein、(1975)Nature 256:495、Brodeur他、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、pp.51〜63、Marcel Dekker,Inc.、New York、1987)、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、pp.59〜104(Academic Press、1986)、およびJakobovits他、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551−255およびJakobovits他、(1993)Nature 362:255〜258参照。他の実施形態では、抗体または抗体断片は、McCafferty他(1990)Nature、348:552−554(1990)に記載されている技術を使用して作製した抗体ファージライブラリーから、適切な抗体または抗体断片を選択するために目的の抗原を使用して単離することができる。
本発明の方法にしたがって生成された組換えIg分子を、実施例3、4に概略した方法にしたがって精製することができる。図2は、NRRLY−11430から精製されたDX−IgGのSDS−PAGEクーマシーブルー染色ゲルを示している。他の実施形態において、精製されたIg抗体は、主要なN−グリカンとしてMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2を有する。グリカンの分析および任意のIg分子上での分布を、限定はしないが、HPLC、NMR、LCMS、およびMALDI−TOF MSを含む当業者に公知のいくつかの質量分析法によって測定することができる。好ましい実施形態では、グリカン分布は、実施例5に開示したようなMALDI−TOF MS分析法によって測定する。図3は、NRRLY−11430から精製され、a−1,2マンノシダーゼで処理されたDX−IgGのMALDI−TOFスペクトルを示す(実施例3)。このMALDI−TOFは、全N−グリカンの約33モル%がMan7GlcNAc2であり、約55モル%がMan8GlcNAc2であることを示している。
医薬組成物
本発明の抗体は、活性治療因子としての抗体、およびその他の様々な薬学的に許容される成分を含む医薬組成物に組み入れることができる。Remington’s Pharmaceutical Science(15版、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、1980)参照。好ましい形態は、企図する投与様式および治療用途に応じて変わる。組成物はまた、所望の処方に応じて、動物またはヒトに投与するための医薬組成物を処方するために一般的に使用されるビヒクルとして定義されている、薬学的に許容される非毒性の担体または希釈剤を含むことができる。希釈剤は、組み合わせたものの生物学的活性に影響を与えないよう選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。さらに、医薬組成物または製剤は、その他の担体、補助剤、または非毒性非治療性非免疫原性の安定剤などを含むこともできる。
非経口投与用の医薬組成物は、滅菌され、実質的に等張で、発熱物質を含まず、FDAまたは同様の組織のGMPにしたがって調製される。抗体は、生理学的に許容される希釈剤に、滅菌液、例えば水、油、生理食塩水、グリセロールまたはエタノールであることができる医薬担体とともに、物質の溶液または懸濁液の注射用投薬剤として投与することができる。さらに、補助剤、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などを組成物に存在させることもできる。医薬組成物のその他の成分は、石油、動物、植物、または合成に由来するもので、例えば、ピーナッツ油、大豆油および鉱油である。一般的には、グリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが好ましい液体担体であり、特に、注射溶液として好ましい。抗体は、活性成分の徐放を可能にするための様式で製剤にすることができる蓄積注射またはインプラント調製物の形態で投与することができる。一般的には、組成物は、溶液または懸濁液である注射液として調製されるが、注射の前に液体ビヒクルで溶液とするか、または懸濁液とするのに適した固形物形態を調製することもできる。前述したように、調製剤は、リポソームもしくは微粒子、例えば高いアジュバント効果を生じさせるポリラクチド、ポリグリコリドもしくはコポリマーに乳化または封入することもできる(Langer、Science 249、1527(1990)およびHanes、Advanced Drug Delivery Reviews 28、97〜119(1997)参照。
診断用製品
本発明の抗体はまた、様々な診断用キット、およびその他の診断用製品、例えばアレイに組み込むことができる。抗体はしばしば、固相、例えばマイクロタイターディッシュのウェルに予め結合させて提供される。キットはしばしば、抗体結合を検出するための試薬、およびそのキットを使用するための指示を記載した標識するための試薬も含む。免疫測定法またはサンドイッチ測定法が、診断キットに好ましい様式である(米国特許第4376110号、第4486530号、第5914241号および第5965375号参照)。抗体アレイは、例えば米国特許第5922615号、第5458852号、第6019944号および第6143576号に記載されている。
治療的適用
本発明は、糖タンパク質上に主に特定のグリコフォームを含む糖タンパク質組成物を提供する。ヒトを含む哺乳類に投与されると、新規の糖タンパク質組成物を含む医薬組成物は、好ましい実施形態において、同様の一次構造を有するその他の糖タンパク質組成物と比べて優れたin vivo特性を有利に示すことが、本発明の特徴である。したがって、本発明の新規な組成物は、糖タンパク質の医薬剤が使用されていればいつでも利用することができ、優れた特性ならびに製品ロット間、および製品ロット全体にわたる高い均一性を有利に提供することができる。本発明の調製物は、特定の薬剤または医薬品およびその標的領域に応じて、溶液、単位投与形態(例えば、経口投与用の錠剤およびカプセル剤)ならびに懸濁液、軟膏などに組み込むことができる。
特定の態様において、本発明は、糖タンパク質医薬剤、薬剤、または医薬品のための新規組成物であって、その糖タンパク質がイムノグロブリン分子を含み、その組成物が主に糖タンパク質剤の特定のグリコフォームを含む新規組成物を提供する。本発明の特定の態様では、本明細書に記載されているようなMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2グリカン構造のN−結合型オリゴ糖を主に有するイムノグロブリン糖タンパク質を含む組成物を提供する。好ましい態様では、糖タンパク質は抗体であり、特にモノクローナル抗体であることが可能である。本発明はさらに、本発明の組成物を製造するための方法および手段を提供する。
本発明はさらに、本発明のグリコフォーム調製物を含む医薬組成物を包含する。この組成物は滅菌されていることが好ましい。組成物が水溶液である場合には、好ましくは、糖タンパク質は可溶性である。組成物が凍結乾燥粉末の場合には、好ましくは、この粉末を適切な溶媒で再構成することができる。
その他の態様において、本発明は、治療上有効な用量の本発明の医薬組成物を、それらを必要とする哺乳類に投与することを含む疾患状態を治療する方法を含む。グリコフォーム調製剤を、疾患または障害を治療する目的で使用することができる製品またはキットの物品で提供することが本発明のさらなる目的である。
主にMan7GlcNAc2および/またはMan8GlcNAc2 N−グリカンを有する本発明のIg分子は、適応症、例えば癌、炎症性疾患、感染症、免疫疾患、自己免疫疾患、例えば特発性血小板減少性紫斑病、関節炎、全身性エリテマトーデス、および自己免疫性溶血性貧血に、多くの治療的適用を有する。
以下は、Ig糖タンパク質組成物の製造に関して、本発明の組成物および方法を例示する実施例である。これらの実施例を制限的に解釈してはならず、例示目的のためだけに含まれている。当業者は、最適化を含む本開示の数多くの変更および拡張が可能であることを認識する。このような変更および拡張は、本発明の一部と見なされる。
P.パストリスで発現させるためのDX−IgG1のクローニング
DX−IgG1(抗CD−20 IgGl)の軽(L)鎖および重(H)鎖は、マウスの可変領域とヒトの定常領域とからなっている。軽鎖は配列番号1として、重鎖は配列番号2として開示されている。重鎖および軽鎖の配列は、Integrated DNA Technologies(IDT)から購入した重複オリゴヌクレオチドを使用して合成した。軽鎖可変領域については、15種の重複オリゴヌクレオチド(配列番号5〜19)を購入し、Extaq(Takada)を使用してPCR反応でアニールさせて、5’MlyI部位を備えた軽鎖可変領域断片を作製した。次に、この軽鎖可変断片を、オーバーラップPCRにより、5’MlyIプライマーCD20L/up(配列番号20)、3’可変/5’定常プライマーL融合RTVAAPS/up(配列番号21)、3’定常領域プライマーL融合RTVAAPS/lp(配列番号22)、および3’CD20L/lp(配列番号23)を用いて、軽鎖定常領域(配列番号3)(Gene Art、Toronto、Canada)に結合させた。次に、最終的なMlyI−軽鎖断片(5’AG塩基対を含む)をpCR2.1トポベクター(Invitrogen)に挿入してpDX343を得た。重鎖については、マウス重鎖可変領域に対応する17種の重複オリゴヌクレオチド(配列番号24〜40)をIDTから購入し、Extaqを用いてアニールさせた。次に、この重鎖可変領域断片を、オーバーラップPCRにより、5’MlyIプライマーCD20H/up(配列番号41)、5’可変/定常プライマーH鎖ASTKGPS/up(配列番号42)、3’可変/定常プライマーH鎖ASTKGPS/lp(配列番号43)、および3’定常領域プライマーHFckpn1/lp(配列番号44)を使用して、重鎖定常領域(配列番号4)(Gene Art)に結合させた。最終的なMlyI−重鎖断片(5’AG塩基対を含む)をpCR2.1トポベクター(Invitrogen)に挿入してpDX360を得た。完全長の軽鎖および完全長の重鎖を、それぞれのトポベクターからMlyI断片およびNotI断片として単離した。次に、これらの軽鎖断片および重鎖断片を、Kar2(Bip)シグナル配列(配列番号45)に、4種の重複オリゴヌクレオチド、P.BiPss/UP1−EcoRI、P.BiPss/LP1、P.BiPss/UP2およびP.BiP/LP2(それぞれ配列番号46〜49)を使用して連結させ、次いで、pPICZAのEcoRI−NotI部位に連結させて、Kar2−軽鎖を備えたpDX344、およびKar2−重鎖を備えたpDX468を得た。その後、pDX344のBglII−BamHI断片を、染色体へ組み込むためのAOX2プロモーター遺伝子を含有するpBK85の中にサブクローニングして、pDX458を得た。次に、重鎖を備えたpDX468のBglII−BamHI断片をpDX458にサブクローニングして、AOX1プロモーターの下にCD20の重鎖および軽鎖を含有するpDX478を得た。次に、このプラスミドをSpeIで直鎖化した後、AOX2遺伝子座に組み込むためYAS309に形質転換し、Zeocin耐性を用いて形質転換体を選択した(実施例2参照)。
Rituximab(登録商標)/Rituxan(登録商標)は、Biogen−IDEC/Genentech、San Francisco、CAから購入した抗CD20マウス/ヒトキメラIgG1である。
PCR増幅。PCR反応は全て、エッペンドルフマスターサイクラーを使用した。PCR反応液は、鋳型DNA、dNTP 125μM、各フォワードプライマーおよびリバースプライマー0.2μM、Ex Taqポリメラーゼ緩衝液(Takara Bio Inc.)、およびEx TaqポリメラーゼまたはpFUターボポリメラーゼ緩衝液(Stratagene)およびpFUターボポリメラーゼを含有していた。DNA断片を、最初に97℃で2分間の変性工程を行い、97℃で15秒間、55℃で15秒間、および72℃で90秒間を30回繰り返し、最後に72℃で7分間の伸長工程を行って増幅した。
PCR試料をアガロースゲル電気泳動によって分離し、DNAバンドを、Qiagen製ゲル抽出キットを用いて抽出精製した。全DNA精製物を、10mMトリス、pH8.0で溶出したが、最終PCR(3つの断片すべての重複)は、脱イオンH2Oで溶出した。
IgG(pDX478)ベクターのP パストリス菌株NRLL Y−11430への形質転換
酢酸ナトリウムを最終濃度が0.3Mになるように添加することによって、pDX478のベクターDNAを調製した。次に、100%の氷冷エタノールを最終濃度が70%となるようDNA試料に加えた。遠心分離(12000g×10分)によってDNAをペレット化し、70%氷冷エタノールで2回洗浄した。このDNAを乾燥させ、10mMトリス、pH8.0、50μlに再懸濁した。形質転換させるべきNRRL Y−11430(American Type Culture Collection、ATCC)の酵母培養物は、少量の培養物をBMGY(緩衝化最小グリセロール:100mMリン酸カリウム、pH6.0、1.34%酵母窒素ベース、4×10−5%ビオチン、1%グリセロール)中でO.D.が約2〜6になるまで増大させることによって調製した。次に、これらの酵母細胞を、ソルビトール1Mで3回洗浄しソルビトール1M、約1〜2mlに再懸濁してエレクトロコンピテントにした。ベクターDNA(1−2μg)をコンピンテントな酵母100μlと混合して、氷上で10分間インキュベートした。次に、以下の変数、1.5kV、129オーム、および25μFを使用して、BTX Electrocell Manipulator600で酵母細胞をエレクトロポレーションした。YPDS(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%デキストロース、ソルビトール1M)1ミリリットルをエレクトロポレーションされた細胞に添加した。その後、形質転換された酵母を、Zeocinを含有する選択アガープレート上に蒔いた。
P.パストリスにおけるIgG1産生の培養条件。
pDX478で形質転換されたNRLLY−11430のシングルコロニーを、50mlのFalcon遠心分離管に入れたBMGY培地(1%酵母抽出物、2%ペプトン、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)、1.34%酵母窒素ベース、4×10 5%ビオチン、および1%グリセロールからなる)10mlに接種した。この培養液を、培養液が飽和するまで24℃/170〜190rpmで振盪しながら48時間インキュベートした。その後、BMGY100mlを500mlのバッフル付きフラスコに添加した。次に、種培養を、BMGY培地100mlを含有するバッフル付きフラスコに移した。この培養液を、24℃/170〜190rpmで振盪しながら24時間インキュベートした。フラスコの内容物を2個の50mlのFalcon遠心分離管に傾瀉して、3000rpmで10分間遠心分離した。細胞ペレットを、グリセロールを含まないBMGY20mlで1回洗浄した後、BMMY(1%グリセロールの代わりに1%MeOHを含むBMGY)20mlにゆっくり再懸濁した。懸濁細胞を250mlのバッフル付きフラスコに移した。培養液を、24℃/170〜190rpmで振盪しながら24時間インキュベートした。次に、フラスコの内容物を2個の50mlのFalcon遠心分離管に傾瀉して、3000rpmで10分間遠心分離した。培養上清をELISAで解析して、タンパク質を単離する前におよその抗体力価を測定した。
培養上清中の抗体の定量は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって行った。すなわち、高結合マイクロタイタープレート(Costar)を、PBS、pH7.4 10mlに溶かしたヤギ抗ヒトFab(Biocarta,Inc、San Diego、CA)24μgでコーティングして、4℃で一晩インキュベートした。緩衝液を除去し、ブロッキング緩衝液(PBSに溶かした3%BSA)を添加し、次いで室温で1時間インキュベートした。ブロッキング緩衝液を除去し、プレートをPBSで3回洗浄した。最後の洗浄を行った後、抗体培養上清の量を増加させながら(0.4、0.8、1.5、3.2、6.25、12.5、25、および50μl)添加して、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを、PBS+0.05%Tween20で洗浄した。最後の洗浄を行った後、抗ヒトFc−HRPをPBS溶液に1:2000で添加した後、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをPBS−Tween20で4回洗浄した。TMB基質キットを、製造者(Pierce Biotechnology)の指示に従って使用して、プレートを分析した。
IgG1の精製
モノクローナル抗体は、StreamlineプロテインAカラムを使用して、培養上清から捕捉した。抗体をトリス−グリシンpH3.5で溶出し、1M トリス、pH8.0を用いて中和した。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いて、さらに精製を行った。HICカラムの具体的な型は、抗体に応じて左右される。JC−IgGおよびDX−IgGには、フェニルセファロースカラム(オクチルセファロースも使用できる)を、20mMトリス(7.0)、(NH4)2SO4 1M緩衝液とともに使用して、(NH4)2SO4 1Mから0Mの直線的濃度勾配緩衝液によって溶出させた。フェニルセファロースカラムからの抗体画分を収集し、カチオン交換(SPセファロースファーストフロー(GE Healthcare)カラムによって最終精製を行うために50mM NaOAc/トリスpH5.2の緩衝液に交換した。50mMトリス、NaCl 1M(pH7.0)を使用した直線的濃度勾配によって抗体を溶出した。
a−1,2マンノシダーゼによるIg−高マンノースの処理
a−1,2マンノシダーゼ処理のために、精製IgG−高マンノース(DX−IgG)5mgを、50mM NH4Ac、pH5.0に緩衝液交換する。シリコン処理した試験管内で、a−1,2マンノシダーゼ(EMD Biosciences、La Jolla、CA)0.03Uを、50mM NH4Ac、pH5.0に溶かした精製IgGに添加し、37℃で16〜24時間インキュベートした。この試料を乾燥するまで留去し、水に再懸濁して、MALDI−TOFによって解析した。その後、前述のようなフェニルセファロース精製後、抗体をa□1,2マンノシダーゼから精製した。
精製Igの検出
精製DX−IgGを適切な量の試料添加緩衝液と混合し、製造者の指示にしたがって既製ゲル(NuPAGEビス−トリス電気泳動装置、Invitrogen Corporation、Carlsbad、Calif.)によるドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行った。ゲルのタンパク質をクーマシーブリリアントブルー染色法(Bio−Rad、Hercules、CA)によって染色した。図2参照。
抗体濃度
タンパク質クロマトグラフィー画分の濃度は、アルブミン(Pierce、Rockford、IL を標準として用いたブラッドフォード測定法(Bradford,M.1976、Anal.Biochem.(1976)72、248〜254)を用いて測定した。
IgG1の炭水化物分析
マトリクス支援レーザー脱離イオン化時間飛行型質量分析法(MALDI−TOF MS)。アスパラギン結合オリゴ糖のMALDI−TOF分析:Papac他、Glycobiology 8、445〜454(1998)の改変方法を使用して、DX−IgGからN結合型グリカンを遊離させた。抗体の試料を還元しカルボキシメチル化し、膜をブロックし、ウェルを水で3回洗浄した。IgGタンパク質を、N−グリカナーゼ(EMD Biosciences、La Jolla、CA)1mUを含有する10mM Nh4HCO3(pH8.3)30μlを添加することによって、脱グリコシル化した。37℃で16時間経った後、グリカンを含有するこの溶液を遠心分離で取り出し、乾燥するまで留去した。各ウェルから乾燥させたグリカンを水15μlに溶解させて、0.5μlをステンレス鋼製の試料プレートにスポットし、S−DHBマトリクス(1:1の1水/アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸に溶かしたジヒドロキシ安息香酸9mg/ml、5−メトキシサリチル酸1mg/ml)と混合した後、乾燥させた。パルス窒素レーザー(337nm)を4−nsのパルス時間で照射してイオンを発生させた。この機器は、125−ns遅延および20kVの加速電圧の遅延引き出し方法で操作した。格子電圧は93.00%、ガイドワイアー電圧は0.1%、内部圧力は<5×10 7トル(1トル=133Pa)、および低質量ゲートは875Daであった。スペクトルを、全部で100〜200レーザーパルスから発生させ、500MHzのデジタイザーで取得した。(Man)5(GlcNAc)2オリゴ糖を外部分子量標準として使用した。スペクトルは全て、装置を陽イオンモードにして発生させた。
抗体結合ELISA測定法
高結合マイクロタイタープレート(Costar)を、PBS、pH7.4に溶かした抗原(CD20)10μgでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。緩衝液を除去し、ブロッキング緩衝液(PBSに溶かした3%BSA)を添加して、その後室温で1時間インキュベートした。ブロッキング緩衝液を除去して、プレートをPBSで3回洗浄した。最後に洗浄した後、精製抗体の量を0.2ngから100ngまで増加させながら添加して、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをPBS+0.05%Tween20で洗浄した。最後に洗浄した後、抗ヒトFc−HRPを1:2000の割合でPBS溶液に添加してから、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをPBS−Tween20で4回洗浄した。TMB基質キットを製造者(Pierce Biotechnology)の指示にしたがって使用して、プレートを分析した。
Fc受容体結合測定
既に記載されている方法(Shields他、2001、J.Biol.Chem、276:6591〜6604)にしたがって、FcgRIIbおよびFcgRIIIaについてFcレセプター結合測定を行った。FcgRIIIa−LVおよびFgRIIbの結合については(図5、6)、融合タンパク質はPBS、pH7.4中1μg/mlであり、FcgRIIIa−LF結合については、(図4)融合タンパク質は0.8μg/mであり、これらをELISAプレート(Nalge−Nunc、Naperville、IL)上に4℃で48時間コーティングした。プレートを、PBSに溶かした3%のウシ血清アルブミン(BSA)によって25℃で1時間ブロックした。DX−IgGの2量体複合体は、DX−IgGおよびHRP結合F(Ab’)2抗F(Ab’)2と2:1モル量で25℃で1時間混合することによって、PBSに溶かした1%BSA中で調製した。次に、2量体複合体を1%のBSA/PBSで1:2で系列希釈して、25℃で1時間、プレート上にコーティングした。使用した基質は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)(Vector Laboratories)である。450nmにおける吸光度を、製造者(Vector Laboratories)の指示にしたがって読み取った。
B細胞における抗体フィードバックのELISPOT測定
この測定法は、Westman他、1997、Scand.J.Immunol.46:10〜15に記載されている通りに行う。BSA(ウシ血清アルブミン)を、まず、IgG抗体に結合させて、BSA−IgG複合体を得る。ELISPOT測定法を用いて、BSA特異的IgGを分泌するB細胞の数を測定する。注射されたマウスから脾臓を取り出し、0.5%正常マウス血清を含むDMEM(Gibco、New York)で細胞懸濁液を調製する。100マイクロリットルの細胞懸濁液を、BSAでコーティングしたマイクロタイタープレートに適用し(上記ELISA方法参照)、37℃、5%CO2で3.5時間インキュベートする。プレートを洗浄し、PBS−Tweenで1/100に希釈したアルカリホスファターゼ結合ヒツジ抗マウスIgG50μlと4℃で一晩インキュベートする。スポットを、5ブロモ−4−クロロ−3−インドイルリン酸(Sigma−Aldrich)50μl中、室温で1時間発色させて、立体顕微鏡下で計測した。
Vugmeyster and Howell、2004、Int.Immunopharm.4:1117〜1124に記載された血液マトリクス研究法(例えば、B細胞枯渇)を使用して測定されたADCCについて。血漿および赤血球(RBC)を除去した全血を染色用緩衝液(1%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むハンクス平衡塩溶液(HBSS))中で再構成して、染色用緩衝液による白血球懸濁液を生じさせる。次に、全血試料を1000gで5分間回転させ、上清(血漿)を廃棄し、ペレットを塩化アンモニウム溶解(ACL)試薬で処理し、洗浄し、等量の染色用緩衝液に再懸濁する。B細胞枯渇測定法については、抗体溶液100μg/mlまたは染色用緩衝液10μlをSBマトリクス90μlに添加し、37℃で1時間インキュベートする。試料をすぐに抗CD19−FITCおよび抗CD45−PEで25℃で30分間染色する。次に、試料を1%ホルムアミドで固定し、3連で実施する。B細胞枯渇の定量化はフローサイトメトリーによって得られる。B細胞枯渇のフローサイトメトリー分析:全試料の取得および分析のために、自動FACS LoaderおよびCell Questソフトウエアを装備したFACS Calibur(BD Biosciences)装置を使用する。血球計数器QCおよび設定には、装置の機能と検出装置の直線性を確認するために、CaliBriteビーズおよびSpheroTechレインボービーズ(BD Biosciences)を実施することを含む。アイソタイプ対照および代償対照を各測定法で測定して、装置の設定を確認する。全白血球のB細胞の割合は、以下のゲーティング法によって得られる。白血球集団を、前方散乱/側方散乱散布図上に印付けして領域1(R1)を画定する。R1における現象を使用して、CD19およびCD45のマーカーについての蛍光強度ドットプロットを表示する。蛍光標識されたアイソタイプ対照を使用して、CD19陽性およびCD45陽性についてそれぞれのカットオフ点を決定する。%Bは、CellQuestを使用して、CD19陽性およびCD45陽性の表現型を有するR1領域内の細胞画分として測定する。各処理群について試料を3連で処理する。B細胞枯渇の割合を、平均値の計算式[100*(1−対照抗体で処理された%B]/平均値[SBで処理された%B])を用いて計算する。
蛍光色素放出ADCC測定法:PBMC単離法:
健常な個体または血液ドナー(10〜20)の末梢静脈血をヘパリン処理したバキュテナー採血管(Becton Dickinson Vacutainer Systems、Rutherford、NJ、USA)に収集する。2匹のマウスに移植するのに約5mlの血液が必要である。末梢血単核細胞(PBMC)を、OptiPrepを製造者の指示にしたがって使用して遠心分離することによって分離する。PBMCを、RPMI1640、L−グルタミン2mM、ペニシリン100IU/ml、ストレプトマイシン(Gibco/BRL)100g/mlからなり、20%ウシ胎仔血清を補給した完全培養培地(CM)で1回洗浄してから、濃度1×106/mlのCMで再懸濁し、単球を枯渇させるために250mlの培養フラスコ(Falcon、NJ、USA)に移す。37℃および5%CO2で1時間インキュベートした後、非接着細胞を回収し、培養培地で1回洗浄し、末梢血リンパ球(PBL)を2.5×107mlのCMの濃度に調整する。蛍光色素放出ADCC ADCC測定法の背景にある前提とは、CD20抗原提示標的細胞に結合する抗体(抗CD20IgについてはRaji細胞株)が、標的細胞がエフェクター細胞上でFcγ受容体に結合するのを促進することである。これは、次に、抗原を提示する標的細胞の溶解を促進して、定量可能な内部蛍光色素を放出させる。標的細胞を51Cr標識する代わりに、アラマーブルー蛍光を使用する。CD20提示Raji細胞懸濁液(1×104細胞)50μlを、50μl量の抗DX−IgG(様々な濃度)、および上記した通りに単離した50μl量のPBMCエフェクター細胞と、96ウェル組織培養プレート内で一緒にして(エフェクター細胞対標的細胞の比率は100:1、50:1、25:1、および12.5:1とし得る)、37温度および5%CO2で4時間インキュベートして、Raji細胞またはBCL1−3B3細胞の溶解を促進する。アラマーブルー50μlを添加し、さらに5時間インキュベートを続けて、色素を取り込ませ、蛍光状態に代謝させる。プレートを振盪器上で室温まで冷却し、蛍光を530nmでの励起、590nmでの放射を蛍光光度計で読み取る。mAb濃度および試料濃度に対してプロットした相対蛍光ユニット(RFU)を、対照抗体、例えば、Rituximab(登録商標)を用いて標準曲線からコンピュータ計算する。重症複合免疫不全(SCID)マウスを使用したIn vivoADCC(Niwa他、2004、Cancer Research、64:2127〜2133)。in vivoでのADCC活性は、ヘテロ接合遺伝子型(FcgRIIIa−LF/FcgRIIIa−LV)およびホモ接合遺伝子型(FcgRIIIa−LV/FcgRIIIa−LVおよびFcgRIIIa−LF/FcgRIIIa−LF)を含む健常ドナー由来のヒト末梢血単核細胞(PMBC)を移植されたマウスモデルを使用して測定することができる。このモデル系を用いて、主要なN−グリカンを有するIgのADCC活性が、Rituximab(登録商標)またはその他の対照抗体と比較して促進されていることを測定する。このin vivoADCC測定についての詳細かつ十分な方法は、Niwa他、2004年、前述に記載されている。
図1は、Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2グリカン構造を有するIgGの概略図である。 図2は、野生型NRRLY−11430で発現され、培養培地からプロテインAカラムによって精製されたDX−IgGのクーマシーブルー染色SDS−PAGEゲルを示し、2.0μgタンパク質/列である。 図3は、野生型NRRLY−11430で発現され、a−1,2マンノシダーゼで処理されたDX−IgGのMALDI−TOFスペクトルを示し、主にMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2N−グリカンを示している。 図4は、FcgRIIIa−LFとDXIgGおよびRituximab(登録商標)とのELISA結合測定の結果を示した図である。 図5は、FcgRIIIa−LVとDXIgGおよびRituximab(登録商標)とのELISA結合測定の結果を示した図である。 図6は、FcgRIIbとDX−IgGおよびRituximab(登録商標)とのELISA結合測定の結果を示した図である。

Claims (23)

  1. 各イムノグロブリンがそれらに結合した少なくとも1個のN−グリカンを含む、複数のイムノグロブリンを含む組成物であって、それによって、主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される複数のN−グリカンを含む組成物。
    前記宿主細胞が下等真核宿主細胞である、請求項22に記載の方法。
  2. 前記複数のN−グリカンの50モルパーセント超がMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記複数のN−グリカンの75モルパーセント超がMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記複数のN−グリカンの90モルパーセント超がMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  5. Man7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される前記N−グリカンが、2番目に最も主要なN−グリカン構造よりも約5モルパーセントから約50モルパーセント高い濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記イムノグロブリンは、FcgRIIb受容体に対して低下した結合親和性を示す、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記イムノグロブリンが、FcgRIII受容体に対して増加した結合親和性を示す、請求項1に記載の組成物。
  8. 前記FcgRIII受容体がFcgRIIIa受容体である、請求項7に記載の組成物。
  9. 前記イムノグロブリンが、増加した抗体依存性細胞傷害性(ADCC)活性を示す、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記イムノグロブリンが、本質的にフコースを含まない、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記イムノグロブリンが、フコースを含まない、請求項1に記載の組成物。
  12. 前記イムノグロブリンが、増殖因子、FGFR、EGFR、VEGF、白血球抗原、CD20、CD33、サイトカイン、TNF−aおよびTNF−bからなる群から選択される抗原に結合する、請求項1に記載の組成物。
  13. 前記イムノグロブリンが、IgG1領域、IgG2領域、IgG3領域およびIgG4領域からなる群から選択されるFc領域を含む、請求項1に記載の組成物。
  14. 請求項1に記載の組成物および薬学的に許容された担体を含む医薬組成物。
  15. 前記イムノグロブリンが、本質的にフコースを含まない、請求項14に記載の医薬組成物。
  16. 前記イムノグロブリンがフコースを含まない、請求項14に記載の組成物。
  17. 前記イムノグロブリンが、増殖因子、FGFR、EGFR、VEGF、白血球抗原、CD20、CD33、サイトカイン、TNF−aおよびTNF−bからなる群から選択される抗原に結合する抗体を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
  18. 前記イムノグロブリンが、増殖因子、FGFR、EGFR、VEGF、白血球抗原、CD20、CD33、サイトカイン、TNF−aおよびTNF−bからなる群から選択される抗原に結合する抗体を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
  19. 前記イムノグロブリンが、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4領域からなる群から選択されるFc領域を含む、請求項14に記載の医薬組成物。
  20. 請求項1の組成物を含むキット。
  21. イムノグロブリンまたはその断片をコードする外来遺伝子を含む真核宿主細胞であって、前記イムノグロブリンまたはその断片を発現して、それによって各イムノグロブリンがそれらに結合した少なくとも1個のN−グリカンを含む複数のイムノグロブリンを含み、それによって主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される複数のイムノグロブリンを含む組成物を生成するように、操作または選択された真核宿主細胞。
  22. 下等真核宿主細胞である、請求項20に記載の宿主細胞。
  23. 各イムノグロブリンが少なくとも1個のN−グリカンを含む、複数のイムノグロブリンを含む組成物であって、それによって、主要なN−グリカンがMan7GlcNAc2およびMan8GlcNAc2からなる群から選択される、複数のN−グリカンを含む組成物を真核宿主において生成する方法。
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