JP2009504062A - アンテナ構造、トランスポンダおよびアンテナ構造の製造方法 - Google Patents
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Abstract
第1端部および第2端部を有する第1導電性素子(102)と、第1端部および第2端部を有する第2導電性素子(103)と、前記第1端部と第2端部との間における位置で前記導電性素子(102,103)を電気的に接続することにより、前記第1導電性素子(102)を前記第2導電性素子(103)に短絡する結合部(104)とを備えたアンテナ構造(106)において、前記第1導電性素子(102)の第1端部と前記第2導電性素子(103)の第1端部との間に集積回路(105)を接続可能にしたことを特徴とするアンテナ構造(106)を提供する。
Description
本発明は、アンテナ構造に関する。さらに、本発明はトランスポンダに関する。最後に、本発明はアンテナ構造の製造方法に関する。
自動識別システムの重要性が、特にサービス部門、物流分野、商業分野、工業生産分野において増大している。このため、これらおよびその他の分野において自動識別システムの導入がますます進み、将来おそらくバーコードシステムに取って代わるであろう。識別システムのさらなる応用として、人間および動物の識別に関するものがある。
特に、例えばトランスポンダシステムのような非接触型識別システムは、データの高速な、かつ面倒なケーブル接続が不要なワイヤレス送信に適している。このようなシステムは、特に高周波帯域における電磁波の放出および吸収を利用している。約800MHzより低い動作周波数を有するシステムは、しばしば、キャパシタにより共振状態をもたらすコイルの誘導結合に基づくものであり、したがって1メートルまでの短距離間通信にのみ適する。
物理的境界条件のため、800MHz以上の動作周波数を有するトランスポンダシステムは、とくに数メートルの距離間のデータ伝送に適する。これらのシステムがいわゆる長距離RFIDシステム(radio frequency identification)である。2タイプのRFIDシステムに区分され、アクティブRFIDシステム(バッテリなど自己の電力供給装置を内蔵する)とパッシブRFIDシステム(電力供給はアンテナにより吸収する電磁波を基に行い、アンテナに生じた交流電流をRFIDシステムに含まれる整流サブ回路により整流して直流電流を生成する)とがある。さらに、セミアクティブ(セミパッシブ)システムも使用可能であり、これは、パッシブ方式で作動するが、必要に応じて(例えば、データ送信のため)バッテリを用いるものである。
トランスポンダまたはRFIDタグは、データのプログラムおよび書き換えが可能な半導体チップ(集積回路を有する)と、使用する動作周波数帯域(例えば、米国では902MHz〜928MHzの周波数帯域、ヨーロッパでは863MHz〜868MHzの周波数帯域、またはその他、例えば2.4GHz〜2.83GHzのISMバンド(industrial scientific medical/産業・科学・医療)にマッチした高周波アンテナとを備える。RFIDシステムは、RFIDタグ以外にも、読み取り装置と、RFIDタグと該読み取り装置との間における双方向無線データ通信を可能にするシステムアンテナとを備える。加えて、入出力装置(例えばコンピュータ)を用いて読み取り装置を制御することもできる。
半導体チップ(IC、集積回路)は、SMD(surface mounted device/表面実装型デバイス)の装置(例えば、TSSOPケース、“thin shrink small outline package”、薄型シュリンクスモールアウトラインパッケージ)として高周波アンテナに直接結合し(例えば、ワイヤボンディング、フリップチップパッケージングにより)、または実装する。この半導体チップと高周波アンテナとはプラスチック材料で形成することができるキャリア基板上に設ける。また、このシステムはプリント基板(PCB)上に製造することもできる。
このようなトランスポンダの効率向上のためには、高効率のアンテナを用いる必要がある。さらに、アンテナと半導体チップとの間におけるエネルギー反射をできる限り小さくする必要がある。これは、半導体チップの電磁的特性とアンテナの電磁的特性とをマッチさせることにより達成することができる。半導体チップのインピーダンス値Zchipがアンテナのインピーダンス値Z ant の複素共役になるとき、最大量の出力を送信することができる。すなわち、
式(2)においてRchipは半導体チップのオーム抵抗を示し、jは虚数、Xchipは半導体チップの(誘導または容量)リアクタンスである。Rant はアンテナのオーム抵抗を示し、Xant はアンテナの(誘導または容量)リアクタンスである。
式(1)および(2)からわかるように、適切なインピーダンスマッチングのためには、半導体チップおよびアンテナにおける複素インピーダンスの実部の絶対値が等しくすべきあり、かつ、複素インピーダンスの虚部の絶対値が一致させるべきあり、ここで半導体チップのリアクタンスはアンテナのリアクタンスの複素共役にすべきである。
半導体チップの製造プロセスによれば、半導体チップのインピーダンスは容量性の寄与分に支配される。すなわち、虚部Xchipは通常負である。この結果、高効率トランスポンダアンテナを設計するためには、アンテナのリアクタンスは誘導性の寄与分により支配されなければならない。すなわち、リアクタンスXantは正でなければならず、その絶対値は半導体チップインピーダンスの虚部と等しくなければならない。この場合において、2つの実部RchipとRant とが等しいという条件が満たされた場合に効率的な出力マッチングが実現され、半導体チップとアンテナとの間で高エネルギー伝送を得ることができる。このように、高効率アンテナ設計のためには、アンテナのインピーダンスの実部と虚部とが、与えられた半導体チップのインピーダンスとマッチしなければならない。
本発明の目的は、広帯域における動作を可能にするアンテナ構造を得るにある。
この目的を達成するため、独立請求項に記載のアンテナ構造、トランスポンダ、およびアンテナ構造の製造方法を提供する。
本発明の例示的な実施態様によれば、第1端部および第2端部を有する第1導電性素子と、第1端部および第2端部を有する第2導電性素子と、前記第1および第2の端部間の位置で前記第1および第2の導電性素子相互を電気的に接続することにより、前記第1導電性素子と前記第2導電性素子とを短絡する結合構造と、を備えた該アンテナ構造において、前記第1導電性素子の第1端部と前記第2導電性素子の第1端部との間に集積回路を接続可能な構造としたことを特徴とするアンテナ構造を提供する。
本発明の他の例示的な実施態様によれば、基板と、上記の特徴を有し、かつ前記基板上および/または前記基板内に配したアンテナ構造と、前記第1導電性素子の第1端部と前記第2導電性素子の第1端部との間に接続した集積回路と、を備えるトランスポンダを提供する。
本発明のさらに他の例示的な実施態様によれば、第1端部および第2端部を有する第1導電性素子を設けるステップと、第1端部および第2端部を有する第2導電性素子を設けるステップと、前記第1および第2の端部間の位置で前記第1および第2の導電性素子を電気的に接続することにより、前記第1導電性素子と前記第2導電性素子とを短絡させるステップと、前記第1および第2の導電性素子を、前記第1導電性素子の第1端部と前記第2導電性素子の第1端部との間に集積回路を接続可能に構成するステップとを有するアンテナ構造の製造方法を提供する。
本発明に係る特徴的形態には、とくに、アンテナ構造を広帯域の動作周波数で柔軟に動作させることができるため、RFIDトランスポンダ(“radio frequency identification tag”)での使用にとくに適したアンテナ構造を提供できる利点がある。この利点は、とくに、アンテナ構造の2個の導電性素子を短絡する結合構造を設けた結果である。このような短絡回路の位置および/または幾何学的特性および/またはその導電性素子特性との関係を柔軟に選択することにより、広帯域における機能性を得ることができる。
本発明の1つの例示的実施形態としては、とくに800MHzより高い周波数域におけるRFIDへの応用に適したアンテナ構造に関する。このタグまたはアンテナの設計は、所定のトランスポンダチップにマッチする広帯域のインピーダンスを示す。したがって、本発明の例示的実施形態によるこのタグ/アンテナ構造は、トランスポンダの近接場における境界条件の変化に対して堅牢性を有する。
アンテナの入力インピーダンスは、とりわけ、アンテナ自体の近接領域における直接結合に依存する。換言すれば、アンテナに直接近接する領域を変更すると(例えば、この領域に存在する他の物体によって)、アンテナの入力インピーダンスにフィードバックが生じてアンテナの共振周波数がシフトする結果、そのようなアンテナを備えるトランスポンダの全体的な性能に影響を及ぼす。とくに、狭帯域のアンテナまたはトランスポンダ形態には、広帯域の手法と比較すると相当劣る。
上述した点を考慮して、本発明の1つの例示的な実施形態は、アンテナの直接近接領域における環境特性の変化に対して比較的堅牢性を有するトランスポンダまたはアンテナの設計に関する。与えられたチップインピーダンスに対する広帯域調整により、アンテナの共振周波数シフトがアンテナの機能性に悪影響を及ぼすことがない。
そこで、本発明の1つの実施形態は、RFIDタグ用のアンテナ、とくに広帯域RFIDトランスポンダに関する。この目的のため、本発明の例示的実施形態によれば、2個の導体(長さが異なることが望ましい)を有する折り返しダイポールアンテナを設け、これら2個の導体をアンテナの接続点から所定距離で短絡する。
このダイポールアンテナの望ましい特性の1つとして、前に説明したRFIDタグの集積回路との適切なマッチングがある。このため、これら2個の導体を、アンテナの接続点から所定距離で短絡する。加えて、これら2個の導体を異なる長さとすることができる。さらに2個の導体は互いに平行にすることができるが、導体の幾何学的パラメータの変更により広範な周波数域にわたってインピーダンスをマッチさせることができ、その結果、RFIDタグに環境変化に対する高い耐性を与えることができる。
2個の導電性素子の短絡は、DC短絡(すなわち直接の電気接続)とすることができ、またAC短絡(すなわち容量結合ないし電気的分離(ディスコネクション)による)として実現することもできる。
さらなる調整パラメータとして、導電性素子環境内の誘電体材料の選択がある。導電性素子近傍における誘電率を調整することにより、アンテナ構造のインピーダンスに影響を与えることができ、例えばアンテナインピーダンスをチップインピーダンスにマッチさせることができる。この目的のため、基板の材料を適宜選択することができる。例えば、導電性素子を設置する基板内または基板上の異なる部分を、異なる誘電性材料で構成することができる。
アンテナ構造の材料および/または幾何学的パラメータをインピーダンスマッチングの目的で調整するためには、有限要素解析またはその他任意の数値解析を行うことができる。
独立請求項を参照して、本発明のさらなる例示的実施形態を説明する。これらは、トランスポンダおよびアンテナ構造の製造方法にも適用される。
本発明の例示的実施形態によるアンテナ設計においては、第1導電性素子の第2端部と第2の導電性素子の第2端部とは断絶することができる。換言すれば、第1端部相互を集積回路(IC)によりブリッジまたはブリッジ可能とし、他方の端部は何らの電気的結合もないフリーな状態にすることができる。
第1導電性素子および第2導電性素子は、互いにほぼ平行に配置したほぼストライプ状の素子として構成することができる。こうして、アンテナ機構を2個の平行に並んだ配線ストライプとすることができ、その一方の端部をICにより接続し、他方の端部を電気的に絶縁することができる。
第1導電性素子および第2導電性素子は、ほぼストライプ状の長さの異なる素子として構成することができる。換言すれば、2個のストライプ状導電性素子における一方の長さを他方より大きくすることができる。このような非対称構成と、適切に選択した結合構造の構成を組み合わせることで、正しいインピーダンスマッチングを支援できる。
アンテナ構造の結合構造は、第1導電性素子と第2導電性素子とをオーム的に結合するよう構成することができる。換言すれば、結合構造を2個の導電性素子間の電気的接続とし、これを直流電流(DC)に対して短絡するものとすることができる。すなわち、直流電流に対して、この実施形態の結合構造は短絡回路として作用する。
代案として、結合構造を、第1導電性素子と第2導電性素子とを容量結合するものとすることができる。この構成によれば、結合構造は、とくにアンテナ構造に流れる電流の高周波成分に対して短絡回路として作用し、これにより交流電流(AC)に対する短絡回路となる。
上記の実施形態についてなお述べると、結合構造は、キャパシタを使用して、すなわち個別電子素子であるキャパシタを2個の導電性素子間に接続することにより構成することができる。このようなキャパシタは、例えば、表面実装型デバイス(SMD)とすることができる。
結合構造を容量結合素子により構成する実施形態についてさらに述べると、結合構造を、(誘電性基板に対して)水平方向および/または垂直方向に距離を置いて配置した複数の金属化(メタライゼーション)構造とすることができる。特に、結合構造に2個の部分を設け、それらを互いにオーバーラップさせ、これらオーバーラップ部分が容量特性を形成するようにすることができる。この実施形態によれば、垂直方向に積層させた層を、オーバーラップ部分の基板内および/または基板上に配置し、ここで、オーバーラップ部分の間の中間層は、十分に高い値の比誘電率εrを有する材料で形成することができる。これにより、容量値の向上をもたらすことができる。中間層を十分小さな厚さに形成することにより、容量値のさらなる向上を実現することができる。
上述の実施形態の代案として、金属化構造と誘電性材料とを、アンテナ構造を形成した基板の主平面に平行な平面内でオーバーラップさせることができる。基板の主平面は、アンテナ構造を設ける基板上または基板内の面として定義することができる。特に、断絶部は直線形状、またはミアンダ、渦巻き状、その他の非直線形状とすることができる。断絶部の幾何学的形状はその他任意のものが可能である。断絶部の長さが長いほど、得られるキャパシタは一層高いものとなり、容量結合は強いものとなる。
ミアンダ形状の構造は、金属化構造を相互に嵌まり合う構造、例えば交互に組み合わされた指状の構造を有するものとして実現することができる。渦巻き形状の接続領域は、金属化構造の端部構成を渦巻き形状とし、こうして形成した2個の渦巻きが互いに噛み合うものとすることにより実現することができる。
本発明の他の例示的実施形態によれば、アンテナ構造における複数の金属化構造相互間に誘電体材料を設けることができる。この方法を採ることにより、装置の容量結合を向上させることができる。誘電体材料は、高k材料(例えば酸化アルミニウム、Al2O3)、すなわち高い誘電率値を有する材料とすることができる。誘電体材料は、強誘電体材料または半導体材料、すなわち金属の導電性より小さな導電性を有する材料とすることもできる。
導電性素子の材料および/または寸法は、アンテナ構造のインピーダンス値が、集積回路のインピーダンスの複素共役にほぼ等しくなるように設定することができる。このようなインピーダンスマッチングにより、集積回路とアンテナとの間における電力伝送を最適化できるようになる。本発明の実施形態によれば、このインピーダンスマッチングは、単純にアンテナ構造の寸法を調整することにより行うことができる。これにより、集積回路の設計に十分な自由度を与え、インピーダンスマッチングを最適化するためのパラメータ調整を、付加的な素子なしで行うことができる。
とくに、アンテナ構造を折り返しダイポールアンテナとして構成することができる。このような折り返しダイポールアンテナは、実質的に、集積回路を介して一種のU字型に接続された、長さの異なる2個の平行に並んだストライプ形状を有する。
以下に、トランスポンダの例示的実施形態を説明する。しかし、これらの実施形態はアンテナ構造およびアンテナ構造の製造方法にも適用される。
トランスポンダは、無線ICタグ(RFID)またはスマートカードとすることができる。
RFIDタグには、データのプログラムおよび書き換えが可能な半導体チップ(集積回路を有する)と、使用する動作周波数帯域(例えば、13.56MHz、または米国では902MHz〜928MHzの周波数帯域、ヨーロッパでは863MHz〜868MHzの周波数帯域、またはその他、例えば2.4GHz〜2.83GHzのISMバンド(industrial scientific medical/産業・科学・医療)にマッチした高周波アンテナとを設けることができる。RFIDシステムには、RFIDタグ以外に、読み取り/書き込み装置と、RFIDタグと読み取り/書き込み装置との間における双方向の無線データ通信を可能にするシステムアンテナとを設けることができる。加えて、入出力装置(例えばコンピュータ)を読み取り/書き込み装置の制御のために用いることができる。異なるタイプのRFIDシステムに区分され、アクティブRFIDシステム(バッテリなど自己の電力供給装置を内蔵する)とパッシブRFIDシステム(電力供給はアンテナにより吸収する電磁波を基に行い、アンテナに生じた交流電流をRFIDシステムに含まれる整流サブ回路により整流して直流電流を生成する)とがある。さらに、セミアクティブ(セミパッシブ)システムも使用可能であり、これは、パッシブ方式で作動するが、必要に応じて(例えば、データ送信のため)バッテリを用いるものである。
スマートカードまたはチップカードは、クレジットカードサイズのカードやGSMカードなどのさらに小さなカード内に埋め込まれた安全な暗号化プロセッサとすることができる。スマートカードは通常バッテリを内蔵しないが、カードリーダ/ライタにより電力供給を行う。すなわち、データをスマートカードから読み取り、またはスマートカード内にデータを書き込むことによりスマートカードの機能制御を行う読み取りおよび/または書き込み装置が電力の供給を行う。スマートカード装置は、フィナンス、セキュリティアクセスおよび運送の分野で広く使用されている。スマートカードには、カード保有者データ(例えば、氏名、アカウント番号、集めたロイヤルティポイント数)などのデータの安全な格納手段として機能する高セキュリティプロセッサを内蔵することができる。これらデータへのアクセスは、カードを読み取り/書き込み端末に挿入したときにのみ可能になる。
次に、アンテナ構造の製造方法の例示的実施形態を説明する。しかしながら、これらの実施形態は、アンテナ構造およびトランスポンダにも適用される。
本発明方法の例示的実施形態によれば、導電性素子の材料および/または寸法は、アンテナ構造のインピーダンス値が集積回路のインピーダンスの複素共役にほぼ等しくなるように設定することができる。用語「インピーダンスマッチング」は、特に集積回路のインピーダンスと折り返しダイポールアンテナとのマッチングにより、集積回路と折り返しダイポールアンテナとの間におけるエネルギー伝送を最適化することを指す。
さらに詳細には、結合構造により導電性素子間を接続する位置を調整することにより、アンテナ構造のインピーダンス値を集積回路のインピーダンスの複素共役にほぼ等しくすることができる。2個の導電性素子間の短絡位置はアンテナ構造のインピーダンンスに重大な影響を及ぼしうるため、システムのインピーダンスを調整するための高感度のパラメータとして機能しうる。
とくに、第1導電性素子および第2導電性素子を、互いにほぼ並行に配置したほぼストライプ形状の素子として構成することができ、また導電性素子および結合構造のうち少なくとも1個の幅、導電性素子のうち少なくとも1個の長さ、ならびに導電性素子間の距離から成るグループのうち少なくとも1個のパラメータを調節することにより、アンテナ構造のインピーダンス値を集積回路のインピーダンスの複素共役とほぼ等しくすることができる。これらの幾何学的パラメータは回路設計者により容易に変更することができ、またアンテナ構造のインピーダンスに重大な影響を与えうるため、アンテナ構造のインピーダンスを集積回路のインピーダンスに適合させるための適切なパラメータとなる。
本発明の上に規定した態様およびさらなる態様は、以下に説明する実施形態の例から明らかとなる。これらの態様を実施形態の例を参照しながら説明する。
以下、本発明を実施形態の例を参照しながらより詳細に説明するが、これらの実施形態の例は本発明を限定するものではない。図面における説明図は概略的なものである。異なる図面において、類似または同一の要素には同一の参照符号を付して示す。
以下、図1を参照して、本発明の第1の例示的実施形態によるRFIDタグ100を説明する。RFIDタグ100は、プラスチック基板101と、このプラスチック基板101上に配置したアンテナ構造106と、集積回路(IC)105とを有する。
アンテナ構造106は、第1端部および第2端部を有する第1導電性素子102を備える。さらに、第1端部および第2端部を有する第2導電性素子103を設ける。IC105をアンテナ構造106の第1導電性素子102の第1端部と第2導電性素子103の第1端部の間に接続する。オーム性短絡素子104、すなわち他の電気接続素子を設け、第1導電性素子102を第2導電性素子103に対して回路形成し、導電性素子102,103を第1端部と第2端部との間における調整可能な位置で接続する。
集積回路105は、シリコンチップ、すなわちシリコンウエハで形成した電子チップとすることができ、このチップは内部に集積させた電気回路を有する。集積回路105は、RFIDタグの集積回路としての標準的な特徴、例えば命令の受信および処理、ならびに応答生成の能力を有するものとすることができる。さらに、集積回路105により整流機能などの機能を設けることができる。
図1から明らかなように、第1導電性素子102の第2端部と第2導電性素子103の第2端部とはそれぞれ断絶させる。さらに、第1導電性素子102と第2導電性素子103とはほぼストライプ形状のストライプ状素子として構成し、互いにほぼ平行に配置する。2個の導電性素子102および103は異なる長さを有する。第1導電性素子102が長さl0+l1を有するのに対し、第2の導電性素子103は長さをl0+l2を有する。集積回路105との接続点から距離l0を置いて、オーム性短絡素子104を導電性素子102、103の延長方向に対して直交する方向に設け、導電性素子102,103に回路を形成する。ストライプ形状の第1導電性素子102の幅をw1 とし、第2導電性素子103の幅をw2 とする。オーム性短絡素子104の幅をw0 とする。2個のストライプ状素子102,103間の距離をd0 とする。
導電性素子102,103の材料および寸法、ならびにプラスチック基板101の材料は、アンテナ構造106のインピーダンス値が集積回路105のインピーダンスの複素共役にほぼ等しくなるよう設定し、これにより適正なインピーダンスマッチングを実現する。
アンテナ構造106は、導電性の金属化(メタライゼーション)素子(例えば、銅、金、銀、アルミニウム等、これらに対応する合金または超伝導材料で構成した素子)により形成する。この金属化素子はプラスチック基板101上に設け、この基板がキャリア材料として機能する。代案として、基板101を任意のセラミック、セラミック粒子を埋め込んだプラスチック等、とくに誘電率εr≧1および/または透磁率μr≧1を有するものにより形成することができる。金属化は基板101上に堆積(デポジット)する、または適切なマルチレイヤ技術を用いて基板101内に埋め込むことができる。金属化はエッチング加工、ミリング(フライス削り)加工、スクリーン処理、スクリーン印刷、エンボス加工、または接着技術など通常の方法により行うことができ、基板101上に堆積またはパターン形成することができる。
トランスポンダ100は、上述のアンテナ構造106の第1端部をRFIDトランスポンダ半導体105に接続することにより形成することができる。これは通常の方法および技術(SMD、ボンディング、フリップチップなど)により実現することができる。
図1はアンテナの原理および物理的構成を示す。金属化アンテナ構造102,103を、キャリア材料101上、または代案としてプリント回路基板等に堆積させる。半導体チップ105を対応するアンテナ接続部において接触させる。
以下に図2を参照して、本発明の第2の例示的実施形態によるRFIDタグ200を説明する。RFIDタグ200とRFIDタグ100の主な違いは、オーム性短絡素子104をキャパシタ202に置き換えたことである。キャパシタ202は短絡素子201により導電性素子102,103を接続し、これによりアンテナ構造203を形成する。図1のオーム性結合の場合と対照的に、図2の構成は2個の導電性素子102,103の容量結合を実現する。換言すれば、短絡素子104はDC電流用の短絡回路構成として見ることができるのに対し、図2に示す構造201、202は、とくに十分高い周波数域のAC電流用の短絡回路構成として見ることができる。
以下、図3を参照して、図1に示したRFIDタグ100の広帯域における機能性を示すグラフ300を説明する。グラフ300の横軸301に沿って周波数をメガヘルツ(MHz)単位でプロットしている。縦軸302に沿って、デシベル(dB)単位の散乱パラメータs11(第1曲線303参照)、ならびに(最適化した)広帯域RFIDアンテナ106の入力インピーダンスZ ant =Rant+j・Xantの虚部Xant(第2曲線304参照)および実部Rant (第3曲線305参照)をプロットしている。散乱パラメータs11はソース(ここではアンテナ106)がドレイン(ここではチップ105)にどれだけ適正に適合しているかを示す指標である。数学的には[数2]のように定義される。すなわち、
ここで、Z ant *はZ antの複素共役であり、「abs」は絶対値である。上の式は電力に関するが、次式[数3]、すなわち、
は電圧および電流に関する。
ところで、図3は広帯域RFIDトランスポンダの典型的な入力パラメータを示す。アンテナ106は、915MHzの周波数において約(15−j*270)Ωである所定チップ105のインピーダンスとマッチするような寸法設定をする。
915MHzの「中間周波数」は、上述したように米国のUHF域(902MHz〜928MHz)の中央または中間部分に対応する。入力インピーダンスマッチングの広帯域特性(sパラメータによって影響を受ける)は、互いに近接した2個の個別共振により生じる。このことはアンテナの(中間周波数に関して)非対称形の共振曲線に見ることができ、これはさらに920メガヘルツから960メガヘルツまでの領域でアンテナインピーダンスの虚部の増加率がわずかに変化する結果である。個別共振の強度が異なるのはマッチングが異なることに由来する。すなわち、低い側の共振の方が強いのはマッチングがより良くなされているためである。高い側の共振はそれほど顕著ではない。
以下、図4を参照して、未最適化アンテナの広帯域における機能性を示すグラフ400を説明する。グラフ400の横軸401に沿って周波数をMHz単位でプロットしている。縦軸402に沿って、dB単位の散乱パラメータs11(第1曲線403参照)、ならびに最適化されないアンテナの入力インピーダンスZ ant =Rant+j・Xantの虚部Xant (第2曲線404参照)および実部Rant (第3曲線405参照)をプロットしている。
以下、本発明の例示的実施形態による広帯域RFIDトランスポンダ100の例示的な最適化パラメータについて説明する。
本発明の例示的実施形態によるアンテナ106の幾何学的形態は、アンテナ106の挙動を変更しおよび/またはアンテナ106の挙動を所与の条件に適合させるための複数のパラメータを提供する。最適化しうる重要な態様としては以下のものがある。
− アンテナ106の入力インピーダンスZ ant をトランスポンダ半導体の出力インピーダンスZ chipに適合させ、これら2部材間の反射を減少または最小化する。
− アンテナ106の放射効率を最大化する。
− アンテナ106をIC105に対してインピーダンスマッチングさせ、このインピーダンスマッチングはできる限り広帯域でマッチングさせる。
− アンテナ106の入力インピーダンスZ ant をトランスポンダ半導体の出力インピーダンスZ chipに適合させ、これら2部材間の反射を減少または最小化する。
− アンテナ106の放射効率を最大化する。
− アンテナ106をIC105に対してインピーダンスマッチングさせ、このインピーダンスマッチングはできる限り広帯域でマッチングさせる。
以下、アンテナ設計の種々のパラメータについて論ずる。また、アンテナの適合を高速に行うため、これらのパラメータ変化が入力挙動(s11,Rant,Xant)に及ぼす影響について説明する。
上述したように、アンテナインピーダンスは2つの近接した個別共振より成り、これら共振は実質的に導電性素子102,103の2部分により生じる。第1共振はチップ105と短絡素子104)の間の部分(ほぼ2l0+d0の長さを有するにより生じる。第2共振は、第2の導電性素子103の自由端と短絡素子104の間の部分(長さl2 を有する)により生じる。
アンテナインピーダンスZ ant とトランスポンダチップZ chipのマッチングは、アンテナ106の寸法を変化させることにより実現することができる。以下のパラメータ変更については図1を参照する。換言すれば、パラメータl0,w0,d0,l1,w1,l2およびw2を変更する。もちろん、これらのパラメータとは別に、複数のさらなるアンテナの変更を行うこともでき、これによってアンテナ特性に影響を与えることもできる。また、特定のパラメータの組み合わせを同時に変更することもでき、これによりアンテナ特性に影響を与えることもできる。したがって、下記の説明は、例示的なパラメータ変更を抜粋して言及したにすぎない。議論は主にいくつかの特定の特性パラメータに関するもので、これらのパラメータによりアンテナインピーダンスZ ant の異なる要素(実部Rant および虚部Xant )を同時または個別的に変更して、所望のチップインピーダンスとなる適合化を行うことができる。
さらに、パラメータ変更を上に述べた個別共振に関する2個の部分的様相に限定することができる。この文脈において、第1の共振を引き起こす構造は特殊形状の折り返しダイポールと見なすこともでき、第2共振を引き起こす構造は特別な形状のモノポールアンテナと見なすことができる。これら2個のアンテナ構造の組み合わせが機構l1により形成される結合機構と組み合わさることにより、RFIDアンテナ106の特有の広帯域共振スペクトルを生じることができる。
以下に、RFIDタグ100の種々のパラメータに対して、どのようにアンテナ構造106を変更してアンテナインピーダンスZ antを集積回路105のインピーダンスZ chipにマッチングさせるかの方法を説明する。
次に、長さl0 、すなわち第1導電性素子102の第1端部と、この導電性素子102におけるオーム性短絡素子104を設ける位置との間における距離を変更することによる影響を説明する。長さl0 は、第2導電性素子103の第1端部とこの導電性素子103におけるオーム性短絡素子104を接続した位置との間における距離と定義することもできる。
他のパラメータがすべて一定と仮定して、アンテナインピーダンンスZ ant の挙動と中間周波数のシフト量Δfを図5のグラフ500に示す。グラフの横軸501に沿って長さl0 をミリメートル単位でプロットしている。縦軸502に沿って、中間周波数シフト量Δfに関わる長さl0 の変更の影響、ならびにインピーダンンスZ ant の実部Rant および虚部Xant の変更に対する依存性をプロットしている。第1曲線503は実部Rant の変化をプロットし、第2曲線504は虚部Xant の変化を示し、第3曲線505は中間周波数のシフト量Δfを示す。
図5から分かるように、アンテナインピーダンスZ ant の実部Rant および虚部Xant は、ほぼ長さl0 の変更に対し比例的に依存する。実部Rant は虚部Xant と比較してわずかに強い依存性を示す。
アンテナ構造106を変更するためのさらなるパラメータとして距離d0、すなわちストライプ状導体102,103間の距離がある。このパラメータは、アンテナ構造106の金属化部分間の容量結合に強い影響を及ぼす。そこで、この結合を使用して、アンテナインピーダンスZ ant を変更し、またこのアンテナインピーダンスZ ant をチップインピーダンスZ chipにマッチさせることができる。距離d0を減少させるとき、アンテナ106の第1および第2の金属化構造102,103間の容量結合が増大する。この結果、アンテナの複素インピーダンスZ ant の虚部Xant が誘導特性ではなく容量特性により支配されうることになり、実部Rant は小さくなる。Xant の変化の結果、中間周波数もd0 の関数としてシフトする。アンテナインピーダンスZ ant の虚部Xant および実部Rant の相対変化を比較すると、実部Rant は、距離の変化に対し、虚部Xant と比較して顕著に敏感である(例えば2倍)ことがわかる。
上述の挙動を図6のグラフ600に示す。横軸601に沿って距離d0をmm単位でプロットし、アンテナインピーダンスZ ant の実部Rant および虚部Xant 、ならびに中間周波数のシフト量Δfをグラフ600の縦軸602に沿ってプロットしている。第1曲線603はインピーダンスZ ant の実部Rant に関し、第2曲線604はインピーダンスZ ant の虚部Xant に関し、第3曲線605は中間周波数のシフト量Δfに関する。
長さl0の変更と比較して、結合距離d0の変更によれば、アンテナインピーダンスZ ant の実部Rant により強く影響を与えることができるという利点がある。
部分長l0およびl1で定義される対向する金属化構造102,103の全長にわたって一定である結合距離d0 の上述の適合化とは別に、結合距離を延長l0およびl1に沿って変化させ、したがって距離dx を長さl0+l1に沿って異ならせることも好適である。例えば、長さl0 に沿う結合距離d1 を長さl1 に沿う結合距離d2 と異ならせることができる。
1個のアンテナ特性にのみ大きな影響を与えるが、他のアンテナ特性には影響を与えないようなパラメータを持つことが望ましい。そのようなパラメータとしては短絡構造104の幅w0 があり、これを以下に説明する。
この構造の幅w0 を変更すると、アンテナインピーダンスZ ant の実部Rant に強い影響が加わる。しかし、アンテナインピーダンスZ ant の虚部Xant はそのような変更を行ってもほとんど一定のままである。
このことに対応するグラフ表示を図7に示す。図7にプロットしたグラフ700は、横軸701に沿ってオーム性短絡素子104の幅w0 をパラメータとして示す。縦軸702に沿って、アンテナインピーダンスZ ant の実部Rant および虚部Xant 、ならびに中間周波数のシフト量Δfをプロットしている。とくに、第1曲線703はアンテナインピーダンスZ ant の実部Rant に対する強い影響を示しており、他方、アンテナインピーダンスZ ant の虚部Xant を示す第2曲線704、および中間周波数のシフト量Δfを示す第3曲線705は、w0 による影響および依存度が相対的に小さいことを示している。
このように、オーム性短絡素子104の幅w0 はアンテナインピーダンスZ ant の実部Rant のみを選択的に調整する機会を与える。換言すれば、設計上の最適化が可能なのは、アンテナインピーダンスZ ant の虚部Xant の、長さl0 および/または結合距離d0 の変更による適合化である。さらなるステップにおいて、Z ant の実部Rant を、幅w0 の変更によりチップインピーダンスZ chipの実部Rchipに適合させることができる。
以下に、モノポールのパラメータ変更について説明する。アンテナの中間周波数を位置決めするための適切なパラメータは、長さl0とは別として、長さl2 である。長さl2 の変更がアンテナの入力パラメータに及ぼす影響を長さl2 の関数として図8に示す。
図8はグラフ800を示すものであり、横軸801に沿ってmm単位の長さl2 を付してプロットしている。グラフ800の縦軸802に沿って、アンテナインピーダンスZ ant の実部Rant および虚部Xant 、ならびに中間周波数のシフト量Δfをプロットしている。第1曲線803はインピーダンスZ ant の実部Rant を示し、第2曲線804はインピーダンスZ ant の虚部Xant を示し、第3曲線805は中間周波数のシフト量Δfを示す。
適合化するパラメータl2 の変更には、幅w0と同様、アンテナインピーダンスZ ant の実部Rant のみを選択的に変更することができるという利点がある。図からわかるように、虚部Xant はほぼ一定のままである(長さl0≒145mmまで)。上に述べた挙動(w0 の変更)と比較して実部Rant の絶対変化(130mm≦l2≦150mmの領域)は実質的に小さく、ほぼ2分の1である。このことを用いて、幅w0 を調整することにより実部Rant を大まかに調整することができる。さらなるステップとして、細かなチューニングを長さl2 の調整により行うことができる。
複素アンテナインピーダンスZ antの両成分(Rant,Xant)を変更するため、モノポール金属化幅w2 を調整することができる。このパラメータを変更する際には、変更を対称的に行わないことを考慮する必要がある。換言すれば、幅w2 を変化させるとき、距離d0 は一定に維持する。このことは、幅w2 の変更により、導電性素子102,103間の結合ならびに長さl1 は有意に変更されないことを意味する。
図9のグラフ900は、幅w2 の変更がアンテナ特性に与える影響を示す。横軸901に沿って幅w2をmm単位で、また縦軸902に沿ってアンテナインピーダンスZ ant の実部Rant および虚部Xant 、ならびに中間周波数のシフト量Δfを示している。第1曲線903はインピーダンスZ ant の実部Rant を示し、第2曲線904はインピーダンスZ ant の虚部Xant を示し、第3曲線905は中間周波数のシフト量Δfを示す。
実部と虚部とは逆の挙動を示す。幅w2 が増加するとアンテナインピーダンスZ ant の実部Rant が増大するのに対し、虚部Xant は減少する。そこで、この挙動を(すでに述べた変更とは別に)所望のアンテナインピーダンスZ ant を得るために用いることができる。
次に、結合構造104のパラメータ変更を説明する。上述したように、アンテナにおける金属化構造の部分間の容量結合を用いて、アンテナインピーダンスZ ant を必要とされるチッピインピーダンスZ chip にマッチさせることができる。モノポールの結合は、とくに、モノポールに平行な金属化により変更することができる。この文脈において長さl1 と幅w1 が特に重要である。
第1に、長さl1 がアンテナインピーダンスに及ぼす影響を説明する。図10のグラフ1000は対応する依存関係を示す。
グラフ1000の横軸1001に沿って長さl1 をmm単位で、また縦軸1002に沿ってアンテナインピーダンスZ ant の実部Rant および虚部Xant 、ならびに中間周波数のシフト量Δfを示している。グラフ1000からわかるように、虚部Xant がほぼ一定のままであるのに対し、実部Rant は結合の長さl1 に強く依存する。図10は独特の特徴を示す。すなわち、長さl1 を増加させると実部Rant は最大値まで増加するが、l1 をさらに増大させると再び減少する。比較的広帯域のマッチングを得るために、この長さを調整して、動作状態が図10の曲線1003の最大値近くになるようにする。
第2に、金属化構造における幅w1 がアンテナ特性に及ぼす影響を説明する。このパラメータを変更する場合、変更を対称的に行わないことに注意しなければならない。換言すれば、幅w2 を変化させる際、距離d0 は一定に保つ。このことは、幅w1 の変更がそれぞれ長さl1 の導電性素子102,103間の結合に有意な変更を与えないことを意味する。
図11のグラフ1100は、このことに対応する挙動を示す。横軸1101に沿って幅w1をmm単位で、また縦軸1102に沿ってアンテナインピーダンスZ ant の実部Rant および虚部Xant 、ならびに中間周波数のシフト量Δfをプロットしている。
第1曲線1103はアンテナインピーダンスZ ant の実部Rant の挙動を示し、第2曲線1104は虚部Xant の挙動を示す。第3曲線1105は中間周波数のシフト量Δfの幅w1 に対する依存度を示す。
図11からわかるように、実部Rant と虚部Xant は幅が小さい場合に異なる挙動を示す。相対変更は逆である。すなわち、実部Rant が増えると虚部Xant は減少する。これは約2mmまでの幅w1 で生じる。幅w1 がさらに増加すると2つの曲線は同じ依存性を示し、対応する値は減少する。
以下では、アンテナ設計のさらなる例示的実施形態を説明する。例えば、システムを、オーム性短絡素子104を設けることができない半導体の使用に適合させることができる。トランスポンダ半導体の内部構造(設計)上、いくつかのICは電気的(DC)短絡部(例えば折り返しダイポールまたはループアンテナ)を有するアンテナ構造に接続できないことがある。これは、このような電気回路が半導体の直流電圧供給に悪影響を与え、トランスポンダが作動しなくなるという事実に起因する。この問題を回避するため、図1のアンテナ設計のオーム性短絡素子104を、図2に示すような容量結合に置き換えることができる。これにより、高周波数の信号を効率的に「短絡」することができ(つまり結合はできる限り大きくする必要がある)、ただし、直流電流成分はこのような容量結合を通ることができない(すなわちロスが最小限で絶縁が非常に高い)。これは異なる技術を用いて実現することができる。可能な技術の1つは、電気的オーム性短絡素子104をキャパシタ202、例えばSMD部材(surface mounted device/表面実装型デバイス)で置き換えることである。代案として、電気的またはオーム性短絡素子104を、容量結合構造、例えば互いに距離を置いて垂直方向または水平方向に配置した金属化構造で置き換えることができる。
さらに、結合を特定の材料を用いて変更することができる。すでに示したように、アンテナにおける金属構造部分間の電気的または容量結合を変化させることにより、アンテナインピーダンスZ ant を変更し、このアンテナインピーダンスをICの所定のチップインピーダンスZ chipにマッチさせることができる。このことは、とりわけ、金属化構造間の距離を変化させることにより行うことができる。付加的に、または代案として、金属結合構造間の間隙を、εr>1の値の相対誘電率を有する材料で満たすことにより、容量結合を向上させることができる。さらに、結合構造の部分をキャリア材料に埋め込むことにより、εrの「実効」値を増やすことができる。これは、この場合、導体材料を、誘電体特性を有するキャリア材料に埋め込むためである。
以下では、図12〜図14を参照して、互いに距離を置いて配置し、容量結合構造を形成するようにした金属化構造の幾何学的構成の実施例を説明する。
図12は、本発明の実施形態によるアンテナ構造の容量結合構造1200の断面図を示し、ここで結合構造の第1金属化構造1202をキャリア材料1201上に堆積させた金属化層として設ける。第1金属化構造1202を比較的高い誘電率値εrを有する誘電体層1204により被覆してこの第1金属化構造用の保護層を形成し、同時に後で形成するキャパシタの誘電体を提供する。誘電体層1204の一部に、第1金属化構造1202の一部にオーバーラップするよう、導電性材料の層を堆積させることにより第2金属化構造1203を形成し、これにより一連の層1202〜1204のオーバーラップ部分に生ずるキャパシタが完成する。図12の実施形態によれば、第1金属化構造1202、誘電体層1204および第2金属化構造1203は垂直方向にオーバーラップする。
次に、図13を参照して、本発明の他の実施形態によるアンテナ構造の容量結合構造1300を説明する。
図13には、本発明の別の実施形態によるアンテナ構造における容量結合構造1300の平面図を示す。容量結合構造1300は、第2金属化構造1302に隣接する第1金属化構造1301によって構成する。この隣接部において、第1金属化構造1301は複数の第1フィンガ構造1301aを有し、第2金属化構造1302は複数の第2フィンガ構造1302aを有する。第1フィンガ機構1301aおよび第2フィンガ機構1302aは互いに嵌まり合う構造を形成するよう配置し、ジグザグ状容量結合部1303を得る。ジグザグ状容量結合構造の代案として、第1および第2金属化構造1301、1302のフィンガ機構を図13の垂直方向に並べて互いに嵌まり合う構造を形成することもできる。この代案によるジグザグ状構造によれば、第1および第2金属化構造はほぼ図13の水平方向に沿って整列することになる。
図14を参照して、本発明のさらに他の実施形態による折り返しダイポールアンテナの容量結合機構1400を説明する。図14の平面図に示すように、容量結合構造1400は、第1金属化構造1401と第2金属化構造1402とを有する。第1金属化構造1401と第2金属化構造1402とは未結合の折り返しダイポールアンテナ機構を形成する。第1金属化構造1401の端部に第1渦巻き構造1401aを示す。さらに、第2金属化機構1402の端部に第2渦巻き構造1402aを示す。第1渦巻き機構1401aと第2渦巻き機構1402aとを、渦巻き状容量結合部1403を形成して第1金属化構造1401と第2金属化構造1402とを容量的に結合するよう容量結合する。
最後に、用語「備える(comprising)」は他の要素またはステップを排除するものではなく、冠詞「a」「an」は複数を排除するものではない。加えて、異なる実施形態に関連して説明した要素を組み合わせてもよい。また、請求項中の参照記号は、請求項の範囲を限定するものと解釈してはならないことに注意されたい。
Claims (12)
- アンテナ構造であって、
第1端部および第2端部を有する第1導電性素子と、
第1端部および第2端部を有する第2導電性素子と、
前記第1および第2の端部間の位置で前記第1および第2の導電性素子相互を電気的に接続することにより、前記第1導電性素子と前記第2導電性素子とを短絡する結合構造と、
を備えた該アンテナ機構において、
前記第1導電性素子の第1端部と前記第2導電性素子の第1端部との間に集積回路を接続可能な構成としたことを特徴とするアンテナ構造。 - 請求項1に記載のアンテナ機構において、前記第1導電性素子の第2端部および前記第2導電性素子の第2端部を断絶状態にしたことを特徴とするアンテナ構造。
- 請求項1に記載のアンテナ構造において、前記第1導電性素子および前記第2導電性素子を、互いにほぼ平行に配置した、ほぼストライプ状の素子として構成したことを特徴とするアンテナ構造。
- 請求項1に記載のアンテナ構造において、前記第1導電性素子および前記第2導電性素子を、互いに異なる長さを有するほぼストライプ状の素子として構成したことを特徴とするアンテナ構造。
- 請求項1に記載のアンテナ構造において、前記結合構造は、前記第1導電性素子と前記第2導電性素子とをオーム的に結合するよう構成したことを特徴とするアンテナ構造。
- 請求項1に記載のアンテナ構造において、前記結合構造が、前記第1導電性素子と前記第2導電性素子とを容量結合するよう構成したことを特徴とするアンテナ構造。
- 請求項1に記載のアンテナ構造において、前記導電性素子の材料および/または寸法を、前記アンテナ構造のアンテナインピーダンス値Z ant が、前記集積回路のチップインピーダンスZ chipの複素共役とほぼ等しくなるよう設定したことを特徴とするアンテナ構造。
- 請求項7に記載のアンテナ構造において、前記結合構造により前記第1および第2の導電性素子を接続する位置を、前記アンテナ構造におけるアンテナインピーダンスZ ant の値が、前記集積回路のチップインピーダンスZ chipの複素共役とほぼ等しくなるよう設定したことを特徴とするアンテナ構造。
- 請求項3または7に記載のアンテナ構造において、前記第1および第2の導電性素子ならびに前記結合構造のうち少なくとも1個における幅、前記第1および第2の導電性素子のうち少なくとも1個における長さ、ならびに前記第1および第2の導電性素子間の距離から成るグループのパラメータのうち少なくとも1個を、前記アンテナ構造におけるアンテナインピーダンスZ ant の値が前記集積回路のチップインピーダンスZ chipの複素共役とほぼ等しくなるよう設定したことを特徴とするアンテナ構造。
- 折り返しダイポールとして実現した、請求項1に記載のアンテナ構造。
- トランスポンダにおいて、
基板と、
この基板上および/または基板内に配置した請求項1に記載のアンテナ構造と、
前記第1導電性素子の第1端部と前記第2導電性素子の第1端部との間に接続した集積回路と、
を備えたことを特徴とするトランスポンダ。 - アンテナ構造の製造方法において、
第1端部および第2端部を有する第1導電性素子を設けるステップと、
第1端部および第2端部を有する第2導電性素子を設けるステップと、
前記第1および第2の端部間の位置で前記第1および第2の導電性素子を電気的に接続することにより、前記第1導電性素子と前記第2導電性素子とを短絡させるステップと、
前記第1および第2の導電性素子を、前記第1導電性素子の第1端部と前記第2導電性素子の第1端部との間に集積回路を接続可能に構成するステップと、
を有するアンテナ構造の製造方法。
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