JP2009503697A - 潤滑油処方に適用する予測試験の決定方法および装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、種々の明らかに非関連の試験を、所望の最終試験結果に関連付けるのに必要かつ十分な試験を決定する方法に関する。本発明はまた、高流量環境で用いられることができると示されていて、潤滑油、グリース、または工業流体のための最終使用の品質試験結果を予測することができる試験の決定方法を提供する。当然の結果として、本発明は、明らかに非関連の、しかし予測試験に基づいて、潤滑油処方および成分を選択する方法を提供する。応用例においては、本発明は、処方潤滑油、機能性流体、およびグリースを、中間試験および最終使用試験の間の予め知られない関係を決定することによって製造および評価する装置、並びにその方法に関する。
【選択図】図1

Description

本発明は、種々の明らかに非関連の試験を、所望の最終試験結果に関連付けるのに必要かつ十分な試験を決定する方法に関する。本発明はまた、高流量環境で用いられることができると示されていて、潤滑油、グリース、または工業流体のための最終使用の品質試験結果を予測することができる試験の決定方法を提供する。当然の結果として、本発明は、明らかに非関連の、しかし予測試験に基づいて、潤滑油処方および成分を選択する方法を提供する。応用例においては、本発明は、処方潤滑油、機能性流体、およびグリースを、中間試験および最終使用試験の間の予め知られない関係を決定することによって製造および評価する装置、並びにその方法に関する。
潤滑油、グリース、および工業流体の処方研究は、長く、芸術および科学の組み合わせとして認識されている。処方研究は、各予想可能な適用に対して、殆ど圧倒的な数の変数を示す。所望の適用分野内ですら、広範な種類のベース流体が用いられてもよい。例えば、ベース流体は、要求規格を満足するように製造される。これらの基油は、アメリカ石油協会(API)によって、グループI、グループII、グループIII、グループIV、およびグループVとして分類される。これは、粘度指数、硫黄含有量、非パラフィンの量などに対するパラメトリック境界を規定する。しかし、特定のAPIグループの基準を満足する基油について、実際の化学組成は、実質的に、基油間で異なってもよい。
これらの事象を複合するものは、今日の最新潤滑油において、必要な成分となった膨大な種類の化学添加剤である。例えば、潤滑油には、一般に、腐食抑制、金属不活性化、極圧耐性、粘度修正、清浄性、酸抑制等のための添加剤が含まれる。これらの機能性グループの化学的性質は、高範囲に異なってもよいと、まさに考えられうるが、また、これらの機能性添加剤グループのそれぞれの化学的性質は、実質的に異なってもよいと認められる。一つの基油における一つの添加剤の性質は、比較的周知でありうるが、添加剤を組み合わせることは、予想外の(有利な、または望ましくない)化学相互作用を及ぼしうる。
潤滑油研究は、添加剤および基油の間のこの無数の化学相互作用を解決することに限定されるなら、いくらか単純化されてもよい。しかし現実には、エンジン構成の変更は、独特の流れおよび伝熱特性を示す。これは、標準化された潤滑油をも異なって反応させる。今日では、装置の製造業者は、実エンジンまたは機械の試験が、候補潤滑油処方の適用性を検証することを求める。実際に、潤滑油、グリース、または機能性流体を用いるエンジンまたは他の装置の多くの相手先ブランド製造業者(OEM)は、自身の独特の試験を有して、候補生成物が「適格」とされる。欧州連合の欧州自動車工業会(ACEA)基準、若しくは米国のアメリカ石油協会(API)および国際潤滑油標準化認定委員会(ILSAC)の基準は、数週間にわたって、実際の全規模エンジン条件下で試験される多量の候補流体を必要とする。これらの試験は、時間を要し、かつ費用がかかる。
潤滑油の研究者は、しばしば、多数の最小公分母のベンチ試験を用いて、いかに潤滑油が現実条件に見合うかを予測することを試みる。これらのベンチ試験は、実験室環境で、潤滑油試料の特性または性能特徴の尺度を提供するように設計される。研究者は、ベンチ試験を用いて、実エンジンまたは装置の条件の実験室モデルが作成されることを試みる。通常、ベンチ試験の範囲は、装置の運転環境の一つの特定の局面を再現する試みに限定される。作動する装置について、強度の圧力、熱、摩擦、負荷、および他の条件を、正確に整合させることができずして、研究者は、ベンチ試験を、当該の変数を分離するように設計することを仮定する。残念ながら、一般には、ベンチ試験は、高々、模擬しようとする装置の条件の単一次元を僅かに予測することが認められる。
これらの試験の例は、以下の通りである。即ち、種々の潤滑油またはグリースの規格で特定される多数の他の試験に加えて、ASTM D2266(潤滑グリースの磨耗防止特性のための四球法)、ASTM D2272(回転ボンベによる酸化安定性)、ASTM D2596(潤滑グリースの許容荷重を測定するための四球法)、ASTM D2783(潤滑流体の極圧特性を測定するための四球法)、ASTM D4172(潤滑流体の磨耗防止特性のための四球法)、ASTM D4742(薄膜酸素吸収試験)、ASTM D6138(潤滑グリースの動的湿潤条件における腐食防止特性を決定するためのエムコア(Emcor)試験)、ASTM D6186(潤滑油の酸化誘導時間のための差圧走査熱量測定法)である。
これらの試験はまた、現実の結果に対して不十分な相互作用を示す。これらの試験は、単一次元に沿って研究する傾向があることから、それらは、正または負の化学相互作用を発見する機会を限定する。更に、不可能でないにしても、試験のどの組み合わせが、あるとしても、いかなる特定のOEMの最終使用試験にも二つの合格/不合格の結果を予測するであろうかを決定することは困難である。これらの試験は、恐らくは、どの基油、添加剤、または処方が所与のOEM最終使用試験に十分に合格するかについての段階的な評価を与えないであろう。
本発明は、これらのおよび多くの他の事象に対処する。特に、本発明は、どの実験室規模の試験が、現実の結果、またはOEMの最終使用試験を予測するかを決定する方法を提供する。最良の候補実験室規模試験は、大量のデータを算出するものであろうものと考えられるものの、本発明はまた、現今の既存データベースのデータを用いて、どの試験、または機能的な組み合わせの試験が、OEMの最終使用試験、または現実の性能結果を予測するであろうかが予測される方法を詳述する。
本発明の一つの特徴は、(実験室の設定で有用な)どの試験が、所望の最終使用品質試験の結果を予測するのに十分であろうかを決定する手段を提供することである。本発明の他の特徴は、潤滑油のベンチ試験の結果、または最終使用品質試験の結果を模擬するであろう、膨大な量のデータを生じる試験を予測および選択する方法、並びに装置を示すことである。当然の結果として、本発明は、(高流量環境で用いられることができる)どの試験が、潤滑油およびグリースに対する最終使用品質試験の結果を予測することができるかを決定する方法を提供する。本発明の更に更なる他の特徴は、ベンチ試験の結果の履歴的データを用いて、高流量試験によるか否かにかかわらず、最終使用品質試験の結果をより正確に予測するそれらのベンチ試験の組み合わせが選択されるその能力である。
本発明の一実施形態は、パターン認識ベースのモデル化を用いて、適合された学習システムを導き、相関モデルが、データから学習することによって誘導されることである。本発明による反復学習の使用は、収束された機能性分類、および/または独立および非独立変数の間の相関をもたらす。
本出願を通して、本発明者らによる用語潤滑油(またはその誘導体)の使用はまた潤滑油、グリースおよび種々のタイプの機能性流体(およびそれらの個々の誘導体)をいう。
潤滑油の処方について、現今の最新技術水準は、広範な処方者の経験を必要として、添加剤および基材の最適組み合わせが選択される。可能な組み合わせ空間は、非常に大きく、多くの異なる基油、および「機能性種類」の添加剤(例えば、耐磨耗剤、酸化防止剤、耐起泡剤、粘度調整剤、分散剤、増粘剤、清浄剤等)からなる。各機能性種類は、多数の異なる化学的性質を含んで、所望の機能が達成される。処方の発見プロセスの更なる複雑化は、潤滑油の基油が、高度にナフテン質のAPIグループI基油から高純度のPAOまで(シリコーンなどの非炭化水素ベースの流体までさえ)広範に異なることである。他の複雑化は、添加剤の機能性種類が、異なる基油の組み合わせに対して、異なって反応してもよいことである。実際に、一つの他の周知の問題は、潤滑油処方の化学的性質が、必ずしも常に、線形であるとは限らないこと、即ち二つの十分な潤滑油化学的性質の補間混合が、必ずしも常に、同じ試験に合格することができる生成物を製造しないことである。
新規または「ステップアウト」潤滑油処方を作成することは、顕著に、各十分な候補潤滑油が合格しなければならない広範な現場のエンジンまたは機械の試験によって限定される。平均して、各個の試験は、費用が$10,000〜$150,000である。新規潤滑油(およびグリース)を開発するための高価な大規模試験だけに頼ると、より頻繁に、追加的な処方の改良をもたらし、かつそれらがより広範な試験を必要とすることから、新規処方における新規な実験的成分を包含することを限定する。全体として、広範な大規模試験だけに頼ると、より頻繁に、実験を、限定された既知の処方性能に限定する。恐らくは、潤滑油、機能性流体、またはグリースに対する処方技術の規格を外れた向上の機会を捕らえられない。
潤滑油処方を研究するのに中間ベンチ試験を導入することは、更に、プロセスを複雑化することができる。潤滑油ベンチ試験は、エンジンの、または産業装置の運転の本質的な部分を模擬するものであり、通常それらは、単一次元(例えば、ある温度における安定性試験での酸価の増加)に限定される。例えば、エンジンは、実質的に、言うまでもなく他のタイプの装置(ギヤボックス、ポンプ、圧縮機、循環システムなど)に比較して、生成物のカテゴリー(商業用、自家用車両、航空機、船舶、または定置産業用エンジン)の範囲内で異なってもよい。いかなる一エンジンに対しても予測するいかなる産業ベンチ試験も、殆ど確実に、他のエンジンまたは機械を予測しない。
更なる複雑化は、装置製造業者の潤滑油品質試験が、類似の装置に対してさえ異なり、しばしば、最新の装置技術を反映するように頻繁に変化されることである。典型的には、潤滑油ベンチ試験は、広い範囲の可能な事象を予測することを求められる。潤滑油ベンチ試験は、より高価な大規模試験に対する予測可能性の安価な尺度を可能にするものであるものの、ベンチ試験、および最終エンジン試験または機械試験の間の相関を理解し、かつ解釈することは、しばしば、困難であると判明している。数年にわたる経験は、処方者の直感と組み合わせて、一連のベンチ試験の成功を、大規模な最終使用試験の成功に結びつけるのを助ける。しかし、21世紀に入った時点でさえ、潤滑油、機能性流体、またはグリースの処方は、芸術および科学のままである。
他の特徴の内、本発明は、高流量技術を潤滑油研究に適用する独特の機会を提供する。研究者らは、伝統的に、一連のベンチ試験を用いて、最終使用試験における処方潤滑油、機能性流体、またはグリースの候補の潜在的な性能が決定されることを図っている。通常用いられるベンチ試験には、磨耗、粘度、熱および酸化安定性、デポジット抑制、エラストマー親和性、ろ過性、摩擦、揮発性、泡および空気放出性、腐食および錆、混和性、溶解性および均質性、並びに外観が含まれる。しかし、これらのベンチ試験は、それらが、しばしば、大きな潤滑油試料容積、長い試験時間、厳しい試験条件、または三つ全ての組み合わせを必要とすることから、多量のデータを、短時間に生じるのにほとんど適用できなかった。これらのベンチ試験が、大量のデータを短時間に生じるのに、容易に適用されることができるとしても、それらが、最終使用品質試験に関して、実際の成功を正確に予測するであろうことを、信じる理由がない。
米国特許第3,682,980号明細書 J.LeonardおよびM.A.Kramer著(Computers and Chemical Engineering、第14巻、第3号、第337〜341頁、1990年) 「高温ジェットエンジン油の開発−実験室および現場評価(Development of a High Temperature Jet Engine Oil−Laboratory and Field Evaluation)」(SAE技術文献(SAE Technical Paper)第851797号) CEC(調整ヨーロッパ委員会(Coordinating European Counsel))文献(Publication)第L78−T−99号
中間試験の要素集合のどの構成要素が、単独または組み合わせで、最終使用試験の結果の要素集合を予測するかを決定する方法であって、前記方法は、
少なくとも第一の構成要素および第二の構成要素を有する試料の要素集合を提供する工程、
最終使用試験の結果の要素集合を、試料の前記要素集合に提供する工程であって、最終使用試験の結果の要素集合は、少なくとも第一および第二の構成要素を有し、そのために最終使用試験の結果の前記要素集合の第一の構成要素は、試料の前記要素集合の前記第一の構成要素に対応し、および最終使用試験の結果の前記要素集合の前記第二の構成要素は、試料の前記要素集合の前記第二の構成要素に対応し、しかも各集合の前記第一の構成要素は、各集合の第二の構成要素と同じでない工程、
複数の構成要素を有する中間試験の要素集合を選択する工程、
中間試験の前記選択された要素集合から、中間試験の結果の集合を得る工程、および
中間試験の結果を、個々にまたは組み合わせで回帰分析に付して、中間試験の要素集合の構成要素のどれが、試料の要素集合に対する最終使用試験の結果の要素集合を予測するかを決定する工程
を含む。
本発明は、中間試験を、潤滑油の最終的な最終使用品質試験に関連付けるのに必要かつ十分な試験を決定する方法に関する。
本発明の他の特徴は、それが、潤滑油のベンチ試験の結果または最終使用品質試験の結果を評価するであろう多数データ生成試験を予測し、選択する方法を示すことである。
当然の結果として、本発明は、高流量環境で用いられることができるどの試験が、潤滑油の最終品質試験の結果を予測することができるかを決定する方法を提供する。
より特定な実施形態においては、本発明は、潤滑油の最終品質試験結果に合格するであろう処方生成物を製造および評価する方法に関する。
他の実施形態においては、本発明は、迅速に、平行してまたは連続して、処方生成物の小試料を、少なくとも一種の次の特性または性能特徴について試験し、次いでそれらの試験(またはそれらの機能的組み合わせ)のどれが、いくつかの他の所望の結果を予測するかを決定する方法に関する。即ち、
1.磨耗
2.摩擦
3.粘度
4.酸化安定性
5.熱安定性
6.スラッジ、ワニス、およびデポジット形成
7.エラストマー親和性
8.揮発性
9.腐食および錆
10.混和性または溶解性
11.外観
12.化学組成(極性)
13.スカッフィング
14.酸性度の増加
15.スート形成
16.貯蔵安定性
17.加水分解安定性
18.色相−光安定性
19.低温流動性
20.抗乳化性
21.乳化性
22.起泡性
23.空気取込
24.急性毒性
である。
他の実施形態においては、本発明は、「ステップアウト」処方または添加剤を、既知の有用な中間試験および最終使用の結果から決定する方法に関する。
本発明は、潤滑油候補を迅速に製造および評価して、ベンチ試験、および最終使用エンジンまたは装置試験において可能な成功が決定されるように開発された技術を提供する。本発明の一特徴は、中間試験のどのタイプが、特定の最終使用品質試験に相関するかを決定する方法である。より詳しくは、本発明は、高流量環境で用いられることができると示されていて、潤滑油の最終使用品質試験の結果を予測することができる試験を決定する方法を提供する。本発明の第二の特徴は、それが、歴史的または新規ベンチ試験のデータを結合し、かつ特定の最終使用潤滑油品質試験を予測するベンチ試験の組み合わせを選択する方法を提供することである。
本発明の第三の特徴は、適切な中間試験が選択されると、数学モデルおよび変数選択アルゴリズムが用いられて、それらの結果が、選択された性能の特徴に相関付けられてもよいことである。この方法の結果、特徴を実験結果から抽出し、最終使用品質試験を満足する処方を使用可能にする情報が得られる。従って、本発明は、処方について、成功裡の最終使品質試験の結果を導くであろう成分を予測することができる。
図面を引用すると、図1は、潤滑油の「中間」試験を、最終的な最終使用品質試験の結果に関係付ける本方法の段階を示す図式である。図式は、三つの要素集合を列記する。即ち、「試料」または「成分」の要素集合、「中間試験」の要素集合、および「最終使用試験の結果」の要素集合である。これらの要素集合のいかなる二つもその構成要素が、規定されると、本発明の方法は、第三の要素集合のより予測的な構成要素を決定することができる。
本発明の目的に対して、図1のボックスのいかなるものにも適合するであろういかなる項目も、その要素集合の構成要素と考えられるであろう。従って、最終使用品質試験のいかなる一つの試験結果も、最終使用試験の結果の要素集合の構成要素であろう。同様に、各試料、または試料の成分は、全ての試料または成分の要素集合の構成要素であろう。例えば、本発明の一実施形態においては、候補試料およびその処方は、「試料」の要素集合を構成するであろう。それらの試料のそれぞれがいかに、最終使用品質試験で性能を発揮するかは、「最終使用の結果」の要素集合を構成するであろう。「最終使用の結果」の要素集合の構成要素には、最終使用品質試験の単純な合格/不合格の決定が含まれるか、またはそれは、試験に合格する品質のより詳細な指標を示してもよい。本発明は、等しく良好に、いずれかの状態に適合する。
これらの既知の入力が、試料の要素集合、および最終使用の結果の要素集合に対して選択されると、中間試験の集合が選ばれて、中間試験の要素集合が形成される。この選定は、無作為に為されることができるものの、当業者はまた、無作為の選択より予測的であってもよいと予想される中間試験の集合を選択してもよい。これらの試験は、古典的なベンチ試験であってもよいが、この実施形態においては、試験が、高流量環境で実行されることができることが好ましい。
この方法によって作成される特定の試験について、数種の有用な例は、本出願において、後に提供されるものの、試験のいかなる集合も適用されてもよい。試験の好ましい集合は、高品質のデータを、広範囲にわたってもたらすであろう試験であろう。例えば、FTIR試験、UV試験、および質量分光法試験が、各試料に対して大量の情報を、容易に提供するという点で、特に有用と考えられてもよい。当業者は、容易に、高流量環境で使用可能な他の試験を識別することができるであろう。これはまた、中間試験の結果の要素集合について、多数の構成要素をもたらすであろう。
本発明は、中間試験の選択された集合のどれが、より成功裡に、定義された要素集合の一つを、他の定義された要素集合に関係付けるかを決定する。本方法は、各要素集合が少なくとも二つの構成要素を有する限り、機能するものの、各要素集合の構成要素が多いほど、方法の予測結果がより良好になる。
中間試験の要素集合が選択されると、それらの中間試験が、各試料について行われる。これらの結果は、次いで、いかなる種類のモデル化技術をも用いて分析される。モデル化技術のいくつかの単純な限定しない例には、一般化線形回帰が含まれる。多重線形回帰、基準成分、リッジ回帰などである。そのいずれも、本発明に包含される。より複雑なデータ集合については、ニューラルネットワークなどの非線形回帰技術が、用いられてもよい。当業者には、十分に、本発明と共に容易に用いられることができる他のモデル化技術は既知である。
本発明者らは、合格/不合格の基準を評価することを目的とする殆どの回帰モデルが、完全に、この発見に包含されることに注目する。例えば、ニューラルネットワーク、基準成分回帰、および他の線形または非線形回帰モデルは、次の一般式で書き表されることができるであろう。即ち、
=F(x ,x ,x ,...,x )+∈
または
=F(X)+∈、但しX=(x ,x ,x ,...,x
である。
予測性能=F(X)=F(x 、x 、x ,...,x
∈:誤差項(e、X 、およびFの適合欠如における誤差からなる)
合格基準が、例えばe<Fの場合には、
に基づく合格基準の予測は、F(x ,x ,x ,...,x )<Fである。
式中、「F」は「n」変数の連続性能−予測関数であり、「A」は試料の要素集合の一つの構成要素であり、x は試料「A」について実行された第一の中間試験の結果であり、「e」は試料「A」に対応する最終使用試験の要素集合の構成要素であり、Fは合格/不合格の閾値である。これらのモデルについては、部分空間または領域が、(x,x,x,...,x)「空間」(中間試験の結果の空間)(関数Fにより、合格基準に対してマッピングする)に存在する。これは、Fの異なる値を選定し、それにより異なる境界を、中間試験の空間(潤滑油性能の異なるレベルの限界を定める)にもたらすことによって、多数の基準に拡張されることができる。
より多くの基準レベルが加えられる場合には、限界内で、全ての既知の回帰モデルは、この一般化境界ベースの分類手法の部分集合である。限定しない例として、基準成分回帰、多重線形回帰、およびニューラルネット回帰は、このモデルに適合する。本発明の一実施形態は、逆伝播ニューラルネットを用いる。逆伝播(または「バックプロップ(backprop)」)ニューラルネットは、相互連結模擬ニューロンからなる。ニューロンは、信号を受送信することができる実体であり、コンピューターのソフトウェアアルゴリズムによって模擬される。各模擬ニューロンは、(i)信号を、他のニューロンから受取り、(ii)これらの信号を組み合わせ、(iii)この信号を変換し、(iv)結果を、更に他のニューロンへ送る。典型的には、伝達された信号を修飾する重み付けが、各ニューロンの間の各結合と関連する。
これらの概念は、より完全には、図2によって説明されてもよい。これは、一層を示す概略ニューラルネットを表す。この図面は、同じ初期規則を用いる。ここで、Xは、特定の試料について、n番目の中間試験の結果を表す。ニューラルネットは、その試料に対する最終使用の結果をマッピングするであろう各係数(a、b、c、d等)の値を見出すことを試みる。通常、線形回帰(第一のレベルで示される)が考えられるものの、各レベルは、関数(例えば、シグモイド)を、各係数に当てはめて、係数の新規集合(w、w、w、w等)がもたらされる。これは、必要に応じて多くの層に対して生じてもよい。
係数(a、b、c、d)が、決定され、そのために中間試験の結果が、所望の誤差程度に、その特定の試料に対する最終的な最終使用試験の結果にマッピングされると、ニューラルネットは、その際、これらの係数を、次の試料に対する中間試験の結果に適用する。係数が、許容可能な誤差レベルに、第二の試料に対する最終使用試験にマッピングしない場合には、重み付けが各係数に適用され、プロセスは、両試料に対する許容可能な誤差を得る係数が決定されるまで繰返される。このプロセスは、全ての中間試験、およびそのそれぞれの最終使用試験の結果の間の許容可能な誤差レベルを得るマッピング関数が決定されるまで継続される。
ネットの「情報量」は、全てのこれらの重み付けの集合に組込まれる。これは、ネット構造と共に、ネットによって生成されるモデルを構成する。バックプロップネットは、予測モードでは順方向で流れる情報を有し、学習モードでは逆伝播誤差補正を有する。これらのネットは、ニューロンの層に組織化される。結合は、隣接する層のニューロンの間で為される。即ち、ニューロンは、信号が各ニューロンから、直前の層で受取られ、かつ信号が各ニューロンへ、直後の層へ伝達されるように結合される。
最小の3層が用いられる。入力層は、その名前が示すように、入力を受取る。1以上の中間層(外部露出から隠されることから、隠れ層とも呼ばれる)は、入力層、および出力層(結果を、外部に伝達する)の間にある。加えて、不変量の出力を供給する「バイアス」ニューロンは、隠れおよび出力層で、各ニューロンに接続される。隠れ層で用いられるニューロンの数は、入力および出力ニューロンの数、および利用可能な学習データパターンの数による。あまりに少ない隠れニューロンは、学習プロセスを妨げ、あまりに多い隠れニューロンは、ネットの一般化能力を低下する。
所望の入力条件からの結果は、次の方式で生成される。信号は、単に、順方向で入力から、隠れを経て出力層へ流れる。入力値の所望の集合は、入力層のニューロンに組みつけられる。これらのニューロンは、入力信号を変換し、得られた値を隠れ層のニューロンへ伝達する。隠れ層の各ニューロンは、信号(対応する接続の重み付けによって修飾される)を、入力層の各ニューロンから受取る。隠れ層のニューロンは、個々に、信号(バイアスニューロンからの重み付け信号と共に受取る)を合計し、この合計を変換し、次いで結果を、次の層の各ニューロンへ伝達する。
最終的に、出力層のニューロンは、重み付け信号を、終わりから二番目の層およびバイアスのニューロンから受け取り、信号を合計し、変換された合計をネットからの出力として放出する。ネットは、誤差を最小にするために、重み付けを調節することによって調整される。学習(または調節)モードにおいては、ネットは、入力変数の値および対応する目標の結果からなるデータの集合を供給される。各結合の重み付けは、初期には、不作為化される。学習プロセス中には、誤差(ネットからの実際の出力、および所望の目標の結果の間の差である)は、ネットを通して逆方向で伝播(従って、即ち「逆伝播」)され、結合の重み付けを最新化するのに用いられる。この操作の繰返し反復は、重み付けの収束集合、並びに入力データの集合、および対応する目標の結果の集合の間のパターン(存在する場合)を同定および学習するように調整されたネットをもたらす。ニューラルネットの作成および使用に関するより多くの情報は、非特許文献1に見出されてもよい。
ニューラルネットは、データに関して調整された後、独立パラメーターの集合と共に、入力として示される場合に、定量的な結果を予測する補正モデルをもたらす。この定量的な結果は、性能(即ち、モデルの結果)を最大化する望ましい入力変数の集合を決定することを可能にする。これは、適切な最適化技術(即ち、遺伝的アルゴリズム)を展開することによって達成される。
許容可能なマッピングが、上記の関数Fを推定するニューラルネットワークによって達成されると、分類スキームが選択されて、マッピング関数(および従って、x空間の選択された領域の外形)が限定される。例えば、本発明の使用は、ニューラルネットワークモデルを開発する。これは、Xベクトル(ここで、各Xベクトルは、単一の試料に関する選択された中間試験の結果を表す。これは、しばしば「較正集合」または「調整集合」として知られる)の種類を、対応するエンジン試験結果に関連付ける。次いで、将来のエンジン試験のスクリーナー結果のベクトルX(ここで、Xは、前の未知試料の中間試験の結果であり、Xは、しばしば「予測集合」として知られる)は、ニューラルネットワーク関数Fを用いて、F閾値に対して試験されることができる。いくつかは、ニューラルネットワークモデルに「合格」し、いくつかは「不合格」となるであろう。
合格/不合格の領域のマップを、回帰技術を用いることによって作成することは可能である。例えば、これを実施する一つの方法は、多数の模擬X(即ち、試料または成分の集合の母集団)ベクトルを「運転」し、次いでX空間における対応する「合格」および「不合格」領域を作成することである。それらの分類モデルは、ニューラルネットワークの回帰モデルと同じ予測結果をもたらすであろう。Fが利用可能であると、それは、スクリーナー空間を横切って適用されることができて、種々の合格/不合格基準で、異なる合格または不合格の結果を予測する外形が作成される。
潤滑油処方で用いられることができる膨大な数の変数(中間試験)の理由で、本発明者らは、それが、関連の変数選択のための方法を用いて性能を発揮することが見出された。これは、エンジン試験の性能を最良に予測することを探索し、一方試験スクリーナーの結果について、設計、数、特質、および/またはコストを最適化するであろう。過去には、処方者の経験を用いて、より予測的な変数が決定されることは有用であったものの、更にこの選択を為すのに、多くの数学的な技術がある。
限定数の測定(例えば、<100)を含むデータ集合については、「変数の全ての可能な組み合わせ(APC)」の提案(例えば、回帰または分類)が、典型的なデスクトップ型コンピューター出力を用いて為されてもよい。これらの提案は、典型的には、固定数の変数、例えばnを見出し、元の利用可能な測定変数の全ての可能な組み合わせで、回帰または分類を行うことを試みる。例えば、10個のスクリーナー試験の結果が利用可能であり、かつ丁度5個の変数を有するモデルが望まれる場合には、合計30240個の回帰に対して、組み合わせ[1 2 3 4 5],[1 2 3 4 6],[1 2 3 4 7],...[1 2 3 4 10],...[6 7 8 9 10]までを試みることが可能である。典型的な3.2GHzのペンティアム(登録商標)4装置では、その計算は、丁度30秒で完了されることができる。
より大きなデータ集合については、APCアルゴリズムを、いくらか最適化することが可能であるものの、予測変数の理想的な組み合わせを同定するのに多数の方式がある。例えば、順方向の段階法は、逐次に、その増分分類または予測値に従って、一度に一つずつ変数を選択する。例えば、10個の利用可能な中間試験(試料当たり)がある場合には、この方法は、先ず、10個の最良の予測を同定するであろう。次に、方法は、残る9個の中間試験に注目し、次の最も予測的な試験を選択する。これは、元の選択された最も予測的な中間試験と組合された場合に、中間試験の予測変数について最良の対を得る。手順は、所望数の変数nが選択されるまで繰返される。変数の数はまた、試験データの集合、または実証手順を用いて推定されてもよく、用いるのに最良の数の変数を確立する。
予測変数の理想的な組み合わせを同定するための方法の他の例は、一般に、遺伝的アルゴリズムとして知られる。このタイプのアルゴリズムにおいては、変数について、多数の無作為組み合わせが選択され、それらの予測能力に対して試験される。優れた予測性能を示すそれらの集合が、次いで選択され、相互と、および他の無作為集合との両方で、無作為に組み合わされる。この手順は、予測の更なる向上が、もはや達成されなくなるまで繰返される。
遺伝的アルゴリズム(GA)は、非単調の、非連続でさえある目的関数を取り扱い、かつ大域的最適化を見出すことができるロバスト最適化系である。GAを、データ駆動モデル、即ちニューラルネット(NN)と結合するという本発明の提案は、潤滑油組成/特性の空間の探索を可能にして、更なる実験が価値のある発見を得てもよい潜在的に高度な実行領域が同定される。GAは、ニューラルネットモデルへの入力パラメーター(または中間パラメーター)を示唆する。これは、次には、これらの示唆の性能を予測する。GAへのこれらの予測の反復フィードバックは、所望の目標範囲における予測性能に対応するパラメーター集合の「進化」をもたらす。
これは、より完全に、次の予測的な例によって説明される。多数の試料について、100,000個の中間試験を有し、それぞれ、各試料についてそれ自身の結果を有することを想像する。既に述べたように、X が試料Aについてのn番目の中間試験の結果を表すという取決めが用いられるであろう。GA(NNと組合される)は、中間試験の対(若しくは三対、または四対...)を選択し、それらについていくつかの操作を行って、新規変数が作成される。これは、yn+m と呼ばれ、あるf(x 、x )に等しいであろう。ここで、nは、あるn番目の中間試験の結果を表し、mはあるm番目の中間試験の結果を表す。GAが、対の可能な組み合わせの全てを用いる場合には、その際には、1010個のy変数があるであろう。当然ながら、より少ない数のy変数の無作為な選択はまた、用いられるであろう。
y変数のこの新規な集合は、次いで、上記されるように、ニューラルネットに送られて、最終使用試験を所望程度の精度で予測する係数(既に述べたように、a、b、c、d...n+m)が決定される。各係数の値は、どのy変数が最も予測的であるかを決定する。GAは、最も予測的であるものを取り、やはり、残るy変数について、ある無作為選択を選択する。GAは、次いで、これらのy変数を新規対(三対、四対、等)の組み合わせで「結婚」させ、あるf(y ,y )に等しいzn+m などの子孫をもたらす。GAは、次いで、これらのz変数を、ニューラルネットへ送り、このプロセス全体を、中間試験の組合わせの最も予測的な集合が選択されるまで繰返す。
本発明が、ニューラルネットワークモデルだけに限定されないが、いかなる他の回帰モデルにも適用されてもよいことは明らかである。更に、本方法は、結果の一つの(または小数の)誤分類が、顕著には、好ましい領域の決定を損なわないであろうことから、多くの回帰法よりロバストであるとの潜在性を有する。更に、本発明者らは、この方法が、回帰の方法より節約的なモデルを可能にする。何故なら、それは、予想される関数形態を、スクリーナー試験並びにエンジンおよびリグ試験の間の結果に強要しないからである。
分類モデルの提案は、実質的に、数種のレベルの性能をモデルから得る能力を限定しない。本方法は、成功の濃淡、同様に単純な合格/不合格モデルを認知する。単一のベンチ試験の結果についてX−空間の外形が、性能の各所望レベルに対して展開されるか、または単純な連続回帰モデルが、外形を決定するのに用いられてもよい。
更に、本発明は、線形モデル化空間に限定されない。実際に、潤滑油処方には、非線形応答の例が多くあり、従って本発明の方法は、特に、潤滑油処方に適している。例えば、単純な磨耗速度分析でさえ、潤滑油の非線形応答を示す。磨耗速度のシナリオにおいては、所望の性能が到達される前に必要とされる添加剤の閾値レベルがある。そのレベル未満では、応答が全くないか、または殆どないであろうし、それを超えると、所望の性能レベルが到達される。しかし、他の因子の理由から、不合格が、非常に高い添加剤レベルが処方内にある場合には、生じることができる。
図3に示される磨耗速度の例においては、低い磨耗速度が望ましい。極圧(EP)添加剤の非常に低い濃度では、実質的な許容できない磨耗がある。高濃度では、磨耗速度は、化学磨耗のために、許容不可である。従って、非線形モデルは、添加剤の添加を適切に理解して、最小の磨耗速度が達成されるのに必要であろう。
潤滑油を処方するに際して、目標は、最適な性能を達成することである。絶対最小値を、図3に示される試験結果で決定するために、理想的には、多数の混合物が1×10−4〜5×10−4モル分率に作成され、それらが多数の磨耗試験で試験されるであろう。これは、従来の混合および試験を用いては、実行可能でない。しかし、少量の多数の試料を作成および試験する方法を用いることによって、混合物の数、および用いられる評価試験が、顕著に増大されることができ、従って所望の最適性能レベルを達成することができる。この最適化は、既存の処方データベースのデータマイニングによって行われてもよいものの、本発明の特に効果的な一実施形態は、高流量法を適用して、潤滑油の処方試料が、作成および/または試験される。これらの方法の潤滑油研究への導入は、単に、本発明の方法によって実施可能にされる。
一実施形態においては、本発明は、従って、潤滑油の最終使用試験の結果を予測するであろう中間試験の要素集合の少なくとも一つの構成要素を決定する方法である。これは、
a.少なくとも二つの構成要素を有する試料または成分の要素集合の構成要素を規定する工程、
b.少なくとも二つの構成要素を有する最終使用試験の結果の要素集合の構成要素を規定し、
そのために最終使用試験の結果の前記要素集合の第一の構成要素は、試料の前記要素集合の第一の構成要素に対応し、かつ
そのために最終使用試験の結果の前記要素集合の第二の構成要素は、試料の前記要素集合の第二の構成要素に対応し、
しかも各集合の前記第一の構成要素は、各集合の前記第二の構成要素と同じでない
工程、
c.中間試験の前記要素集合の適切な構成要素を含んでもよい中間試験の母集団を選択する工程、
d.試料の前記要素集合の少なくとも二つの構成要素に関して、一つ以上の前記中間試験を実行する工程、
e.中間試験の前記要素集合の前記予測構成要素を、予測モデルを用いることによって決定する工程、および
f.任意に、中間試験の前記要素集合の前記予測構成要素を、変数選択アルゴリズムを用いて更に正確にする工程、
を含む。
他の実施形態においては、本発明は、潤滑油の最終使用試験の結果を正確に予測するであろう既存のベンチ試験データの間の新規関係を決定する方法である。これは、
a.試料の要素集合の構成要素を規定し、そのために試料の要素集合の各構成要素は、中間試験の要素集合における少なくとも二つの結合された構成要素、および最終使用試験の要素集合における少なくとも一つの結合された構成要素を有する工程、
b.中間試験の要素集合のための新規構成要素を、中間試験の要素集合における少なくとも二つの結合された構成要素(試料の前記要素集合の特定の構成要素に対応する)の組み合わせ(または関数組み合わせ)を選択することによって作成する工程、
c.中間試験の要素集合の前記新規に作成された構成要素の少なくとも二つについて、予測モデルを用いて、中間試験の要素集合の最も良好な予測構成要素を決定する工程、および
d.任意に、中間試験の要素集合の構成要素(または構成要素の関係)を、変数選択アルゴリズムを用いて更に正確にする工程、
を含む。
本発明のこの実施形態を、以下の実施例によって説明する。
実施例1
種々のベンチ試験(モービル薄膜酸化試験(「tfo」)として知られる)を、種々の潤滑油試料について行った。試験は、制御された酸化およびデポジット形成の研究を、高温の短接触時間条件下で可能にするように開発された。試験油を、回転アルミニウム円板の上を流れる動的薄膜として、薄膜酸化条件に付した。これは、高温の試験温度で維持され、一方空気が、油膜の表面上を流される。
試験油は、連続的に、ギヤポンプによって、貯蔵槽から排出管を通って円錐表面の円板の中心へ循環される。排出管内の電気加熱素子が、一般に用いられて、試験油の温度が300℃へ昇温され、円板表面の温度が正確に制御される。円板は、その裏側に取付けられたセラミックヒーターによって加熱される。熱電対が、円板の表面直下に埋設されて、読出しおよび入力の信号が、温度制御装置へ提供される。典型的には、円板の温度は、約315〜360℃に設定される。円板は、2500RPMで回転される。これは、油の薄膜を、円板の表面全体に生成する。油が円板から振り放された際に、それは、水冷収集器によって捕獲される。これは、酸化反応を急冷する。油は、次いで、貯蔵槽へ戻される。過剰の空気が、ラインおよび空気ポンプを通して、油膜の表面へ供給される。給気は、反応域に入る前に、一連の吸着剤によって精製される。試験の更なる説明は、非特許文献2に記載される。
等級付けのために、円板は、放射状に、六個の等しい部位に分割され、次いで各部位は、目視で、評点を付される。従って、tfo1試験は、最も内側の部位に対する評点であり、tfo2は、次の外側の帯域部に対するものである等々である。各帯域は、目視評点0〜100を規定され、100は最も清浄である。目視評点0は、真黒のデポジットを示すであろう。評点25は、中濃度の不透明な茶色または黒色デポジットを示す領域に与えられるであろう。評点50は、半透明の茶色デポジットを示すのに与えられるであろう。評点75は、透明な黄茶色デポジット示す。評点100は、清浄な光沢のある表面を示す。評点は、必要に応じて補間されて、評価領域の正確な目視図が取得される。評価領域が、一つ超の評点を示す場合には、加重平均が、各評点で%表面積に対応してとられるであろう。
この実施例については、フォルクスワーゲンGTI最終使用試験(「VWTDi2エンジン試験」)がまた、各潤滑油試料について行われた。フォルクスワーゲンGTI最終使用試験は、非特許文献3に記載される。この開示に記載されるには、あまりにも冗長であるものの、当業者には、本発明は、この特定の最終使用試験によるばかりでなく、モデル化が望まれるいかなる最終使用試験にもよることが理解される。
図4〜9のグラフからわかるように、これらの六個のベンチ試験のどれも、VWTDi2エンジン試験の結果を予測するいかなる能力も示さなかった。本発明の上記実施形態を用いて、本発明者らは、ベンチ試験の一連の二次元対を作成することによって、中間試験の母集団を作成した。従って、30個の三次元プロットが開発された。これは、X軸上の第一のベンチ試験の結果、Y軸上の第二のベンチ試験の結果、およびZ軸上のVWTDi2エンジン試験の結果からなる。例えば、中間試験の第一の集合については、tfo1試験の結果は、tfo2試験およびVWTDi2エンジン試験の結果に対してプロットされた。同様に、中間試験の第二の集合については、tfo1試験の結果は、tfo3試験およびVWTDi2エンジン試験の結果に対してプロットされた。これは、全ての可能な二空間組み合わせが作成されるまで続けられた。
本発明者らは、次いで、中間試験の各集合(およびそれらの組み合わせ)を、線形識別分析クラスター法を用いてモデル化して、どの試験または試験の組み合わせが、最終使用品質試験に対して最良の予測能力を示すかが決定された。本発明者らには、二つの中間試験(tfo1およびtfo5)の組み合わせ(それぞれ、それ自体では予測性がない)が、その組み合わせでは予測性があったことを見出したことは、全く意外であった。
図10は、このケースを示す。このグラフは、tfo1試験(x軸に対してプロットされる):tfo5試験(y軸にプロットされる)の三つの代表例を示す。各データ点は、VWTdi2が合格であるか、または不合格であるかを示す。各個々のグラフは、線形および非線形予測モデルを用いる予測相関を示すオーバーレイを有する。第一のグラフの楕円によって容易にわかるように、モデルは、tfo1およびtfo5ベンチ試験の二次元空間を予測している。これは、VWTDi2エンジン試験に合格することを予測する。従って、ベンチ試験のどれも、個々には、予測的でないものの、単純な二次元組み合わせでは、これらのベンチ試験は、予測的である。更に、この図のグラフ2および3は、線形および非線形予測技術を示し、組み合わせtfo1およびtfo5予測モデルの精度を更に高める。
当業者には、中間試験の要素集合について、構成要素の母集団を形成するこれらの組み合わせは、一対一、または実際には線形でさえないことを必要とすると解される。また、これらの組み合わせは、単純な三次元空間に限定されてはならず、しかしn+m−l次元空間に包含されることができることが明らかである。その際、nは元のベンチ試験の数を表し、mは最終試験品質試験の元の数を表す。従って、この場合には、六個のもとの中間試験(tfo1〜tfo6)があり、一個の元の最終使用品質試験(VWTDi2エンジン試験)は、モデル化のためには、最大六次元空間(5ベンチ試験およびVWTDi2エンジン試験)を斟酌する。
実施例2
本発明のこの方法(段落[0056]に記載される)は、以下の実施例によって説明される。本発明者らは、記載される本発明の方法を用いて、同じVWTDi2エンジン試験の結果に対する処方成分の感応性が決定された。これは、前の実施例に記載される。VWTDi2エンジン試験からの結果は、最終使用の結果の要素集合として選ばれた。何故なら、本発明者らは、相当数の試験結果を有するデータベースにアクセスしたからである。
適切な試料の要素集合および中間試験の要素集合を決定するために、本発明者らは、スラッジの抑制、ワニスおよびデポジットの形成が、VWTDi2試験に合格する際の手段と考えられたという知見から出発した。この関係のために、本発明者らは、二つの異なる試料の要素集合を決定した。即ち、新規油の集合、および経時接触酸化試験油の集合(新規油の集合に対応する。しかし特許文献1(参照により本明細書に援用される)に記載される接触酸化試験によって酸化されている)である。これらの試料の要素集合はいずれも、同じ最終使用の結果の要素集合を指すであろう。従って、中間試験の独特の集合が、試料の要素集合のそれぞれに対して展開されることができる。
接触酸化試験の経時油試料の集合に対する中間試験の可能な母集団を決定するために、本発明者らは、二つの方法を用いた。第一には、本発明者らは、潤滑油試料におけるスラッジ、ワニス、およびデポジットの形成、並びに添加剤、およびスラッジ、ワニス、およびデポジットの形成を促進する基材に関する知見によった。第二には、本発明者らは、入力試料の集合、およびエンジン試験の性能の間の関係を検討した。
スラッジ、ワニス、およびデポジットは、酸化の外延にあり、粘度および揮発性の変化と共に、分子量の変化の帰結であるとみなされることができる。これは、それが、熱、酸素、燃焼、および一般のエンジン環境に付された際に、潤滑油内に生じる。本発明者らは、文献から、スラッジ、ワニス、およびデポジットの形成が生じると予期される分子量変化の可能なメカニズムを考慮した。文献を検討して、本発明者らは、スラッジ、ワニス、およびデポジットの形成に対する提案メカニズムモデルを開発した。図11に、このメカニズムモデルを表す。このモデルを用いて、本発明者らは、揮発性、粘度増加、並びにスラッジ、ワニス、およびデポジットの形成の指標として必要とされる分子レベルの測定が、酸化の外延であり、かつ粘度および揮発性の変化と共に、それが熱、酸素、燃焼、および一般のエンジン環境に付された際に潤滑油内に生じる分子変化の帰結であると同定した。
図11に示されるメカニズムは、いかにある種の官能性(酸素、窒素、および不飽和分)が、潤滑油の分子に加えられて、その分子量の変化をもたらすかを示す。同時に、潤滑油中の抗酸化剤は、消耗されつつある。これらの二つの要因の組み合わせは、潤滑油の極性、パティキュレート含有量、溶解性、表面活性、および化学的性質の変化をもたらす。メカニズムは、基本的に、最終使用試験の結果を予測する中間試験の集合を同定するのに役立つ。これは、表1に列記される。
これらの試験を、21個の試料について行い、結果を表2に示す。ニューラルネットモデルを、非特許文献1によって詳述される方法を用いて開発した。これは、次の交差妥当化法と組み合わされる。エンジン性能データが利用可能である22個の試料があることから、22個の異なるモデル(同一の構造で構成される)を、二つのケース(即ち、使用および新規油の特性)のそれぞれに対して、21個のデータ点(一つの試料は、各運転に含まれなかった)を用いて開発し、各モデルが操作され、各モデルが、残りのデータを用いて妥当化された。これらのモデルのそれぞれに対する操作プロセスを、妥当化データの予測誤差が最小化された際に終了した。最終モデルを、次いで、全22個のデータに関して操作して、操作プロセスが、収束が平均妥当化誤差によって表されるレベルを超える点を越えて伸びなかったことが確認される。この最終プロセスは、データの過剰適合を防止する。
これらのニューラルネットを用いて、VWTDi2試験に対する予測値を、試料の集合の各構成要素に対して開発した。当業者に既知であるように、実際のニューラルネットは、ここに容易に再現されることができないコード指示の顕著に複雑な集合である。しかし、表2に補記されるデータに対する上記段落の技術を用いて、同じニューラルネットが開発されてもよい。
これらのニューラルネットから、これらの発明者らは、元の試料要素集合の二つの異なる組分けが、VWTDi2最終使用試験の結果を予測することができるであろうことを認める。即ち、新規油の組および接触酸化試験劣化油の組である。新規油の組においては、ニューラルネットは、カルシウムおよびマグネシウム清浄剤、1600cm−1におけるIRスペクトルで測定されたDPA(アルキル化ジフェニルアミン)酸化防止剤、および1230cm−1におけるIRスペクトルで測定された清浄剤の量の指標を、予測値として同定した。接触酸化試験劣化油の組においては、ニューラルネットは、接触酸化試験劣化油の全酸価(TAN)、飽和分、芳香族含有量、および極性分含有量の変化の指標を同定した。
各試料に対する実際のVWTDi2試験の結果を集めて、これを表3として示す。これらの実試験の結果を、新規油および接触酸化試験劣化油の両組に対する予測値に比較した。図12は、両ニューラルネットモデル(新規および接触酸化試験劣化油の集合に対する予測値)が、正確に、実際のVWTDi2エンジン試験の結果の合格/不合格の指標を予測することを示す。特に、この数字は、新規油モデルに対しては、ニューラルネット式が、正しく、合格または不合格(それぞれ、60超か、または60未満の値)を予測したことを示す。この図はまた、接触酸化試験劣化油のニューラルネットモデルが、殆ど良好であり、時間の補正予測75%を為すことを示す。この実施例からわかるように、中間試験の要素集合が、確立され、かつ最終使用品質試験の結果に相関されると、本発明は、正確に未知試料を試験して、最終使用品質試験に合格するそれらの能力が決定されることを可能にする。
本発明の他の実施形態においては、最終使用品質データの構成要素の部分集合は、中間試験の要素集合の構成要素を確立するのに用いられてもよい。それらの構成要素が、所望レベルの信頼性に対して確立されると、最終使用品質試験の結果の部分集合の残りは、試料の要素集合の構成要素の成分を予測するのに用いられることができる。成分の予測は、中間試験の要素集合の異なる部分が、最終使用の構成要素の間で微分することによって重要となるであろうことからなされることができる。この方法は、次を含む。
1.中間試験の要素集合の構成要素を、最終使用試験の結果の要素集合の構成要素の部分集合を用いて、段落[0046]の方法により規定すること。
2.最終使用試験の結果の要素集合の部分集合について、中間試験の要素集合の構成要素を確立するのに用いられなかった構成要素を規定すること。
3.中間試験の要素集合の少なくとも二つの構成要素、および最終使用の結果の要素集合の未使用の部分集合の少なくとも二つの構成要素について、予測モデルを用いて、中間試験の要素集合のより予測的な構成要素が決定されること。
4.任意に、中間試験の要素集合の構成要素を、変数選定アルゴリズムを用いて更に正確にすること。
実施例3
最終使用試験の結果の要素集合の構成要素を、少なくとも二つの部分集合に分割する。第一の部分集合には、最終使用品質試験を、かろうじて合格した全ての構成要素が含まれるであろう。第二の部分集合には、最終使用品質試験を、強く合格した全ての構成要素が含まれるであろう。中間の部分集合は、所望により、作成されることができるであろう。上記の方法に記載される中間試験の要素集合の構成要素を用いて、どの試料(またはどの試料のどの成分)が、各部分集合と結合されるであろうかを決定する。成分または成分の混合物(遺伝的アルゴリズムによって選択される)は、試料の成分間の関係を確立するであろう。これは、最終使用品質試験に合格することを可能にする。
実施例4
実施例2で作成されたデータを用いて、この実施例においては、本発明者らは、IRスペクトルを分析して、反復する鋭いスパイク、若しくは試験に合格するか、または不合格となるかのいずれかを予測する範囲が見出される。本発明者らは、次いで、どの他の成分が、同じスパイクまたは範囲をそれらの中間試験に示すであろうかを見出すように探索するであろう。新規潤滑油の処方は、次いで、それらの同定された成分を用いて調製され、かつ中間試験で試験されて、最終使用試験の結果を予測する際の効率が検証される。最終的に、本発明者らは、最終使用試験を行って、処方へ加えられる新規の「ボックス外の」成分の効率が検証される。
本発明の他の実施形態は、潤滑油試料に対して、中間試験の集合および最終使用試験の集合の間の関係を決定するための方法であって、前記方法は、
1.各試料について、以下のi〜xviからなる群から選択される少なくとも二つの試験からの結果を得るための手段
i.耐磨耗性
ii.摩擦低減
iii.熱安定性
iv.酸化安定性
v.エラストマー親和性
vi.粘度
vii.揮発性
viii.耐腐食性
ix.金属不活性化性
x.混和性
xi.外観
xii.化学組成
xiii.酸性度
xiv.全塩基価(TBN)
xv.全酸価(TAN)
xvi.デポジット形成傾向
2.前記試料のそれぞれに対応する少なくとも一種の最終使用試験の結果
3.予測モデルを用い、その際前記予測モデルは、前記中間試験および前記最終使用試験の間の前記関係を決定する分析装置
4.任意に、更なる処方試料の組成または成分を決定するアルゴリズムの集合(最も予測的な中間試験の結果に対応する未知の試料または成分を最新化することによって決定される)
である。
図13は、この実施形態について、可能な限定しない一形態を詳述する。成分(1)は、混合場所(3)で組合されて、試料の要素集合が作成される。本発明は、かなり多数の候補試料(二種以上)が作成されることを可能にするものの、図13は、60試料の二次元配列を表す。試料のサイズは、所望により、行われる試験に適切なものとして異なってもよい。図面に示されるように、二種以上の配列が作成されてもよい。各配列は、次いで、中間試験の要素集合(5)からの少なくとも一種の試験に付される。これは、各試料に対応する結果(7)をもたらす。これらの試験は、同時に(平行して)、または連続して生じてもよい。現実施形態は、試料を試験間で移動する機械的な手段の望ましさを予想するものの、いかなる手段(手動を含む)も、用いられてもよい。この実施形態について、中間試験の要素集合に標準的かつ限定しない構成要素には、例えば、酸化試験、官能基(カルボニル)の形成、残存耐酸化性および安定性試験、分子量、化学画分分析(GPC)試験、NOACK揮発性(質量分光法(MS)、熱重量分析(TGA)、およびパージトラップガスクロマトグラフィー(P&T GC)によって測定される)、イアトロスキャン(Iatroscan)(分子の極性画分を決定する)、粘度試験、並びにUV−VIS試験(芳香族濃度、色相、および濁り度を決定する)が含まれてもよい。他の試験にはまた、TAN、TBN、シール膨潤試験、金属および銅腐食試験、錆防止性、耐磨耗性、および元素分析試験が含まれる。
結果(7)を、データベースまたはデータ蓄積装置(9)に入れる。これは、最終使用試験の要素集合の結果(11)を含むか、またはそれを含むであろうかのいずれかである。この実施形態においては、データベース(9)はまた、中間試験の要素集合(5)の各試験の予測効率を、フィードバックプロセス(13)を通して決定する予測モデルを含む。用いられる予測モデルは、本明細書に記載されるもののいかなるものでもあってよいか、または当業者に知られるいかなるものであってもよい。しかし、当業者には、容易に、予測モデルを実行するソフトウェアは、データベースから分離されてもよいか、または実際に各モデルは、次のものと異なる別個の方式で実行されてもよいことが既知でありうる。
図13の実施形態にはまた、更なる遺伝的アルゴリズムを表す任意のフィードバックループ(15)が含まれる。これは、実施例4に記載される試料要素集合の異常な、または未知の構成要素を予測するのに用いられることができるであろう。
中間試験の要素集合の構成要素として有用であると知られる試験は、以下に記載されるが、中間試験の要素集合の構成要素として有用な可能な試験の集合を決して限定しない。
耐酸化性および酸化安定性
潤滑油は、良好な耐酸化特性を示さなければならない。潤滑油がエンジン、産業装置、およびベンチ試験装置内で経過するにつれて、反応性種が生成される。遊離基、ヒドロペルオキシド、および有機硝酸塩などである。反応性種は、潤滑油を、時間にわたって、酸化させ(酸化生成物を形成し)、かつ性能を劣化させる。酸化に耐性がある潤滑油の能力は、耐酸化性または酸化安定性と呼ばれる。遊離基を含む反応は、制御するのが最も困難である。
遊離基化学を制御するための潤滑油の能力は、耐酸化性または酸化安定性のタイプである。これは、高圧示差走査熱量試験(HPDSC)によって測定される。この試験は、実質的には、自由遊離基の蓄積を制御し、従って酸化を遅延するための油の耐酸化性または酸化安定性の量を測定する。ヒドロペルオキシドおよび有機硝酸塩はまた、酸化を引起こすが、それらは、遊離基より潤滑油と様々に反応する。ヒドロペルオキシドおよび有機硝酸塩の化学的性質を制御する潤滑油の能力は、耐酸化性または酸化安定性の第二のタイプであり、遊離基を制御する潤滑油の能力とは異なる。遊離基、ヒドロペルオキシド、および有機硝酸塩を制御する耐酸化剤は、全て、その化学的性質が異なる。
従来の潤滑油ベンチ試験においては、耐酸化性は、ASTM試験によって測定される。D943、D2272、D2070、D2893、D4636、D5846、およびD6514などである。これらの試験は、遊離基の制御、またはヒドロペルオキシドおよび有機硝酸塩の制御の間で区別しない。これらの試験はまた、塩基性酸化生成物の発生ももたらさない。従って、所望の化学的性質のタイプが知られない場合には、潤滑油の化学的性質の調整を行って、耐酸化性または酸化安定性の欠如が補償されることは困難である。
本発明者らは、潤滑油の耐酸化性または酸化安定性が、FTIR、PDSC、およびTGAなどの方法を用いて、高流量環境で決定されてもよいことを見出した。これらの方法を含めて、本発明の範囲内には、処方者が、HTE技術を用いて、多数の処方が迅速に評価される技術が提供される。
酸化安定性または残存耐酸化性は、通常、ASTM試験D943、D2272、D2070、D2893、D4636、D5846、およびD6514などの試験によって測定される。本発明者らは、酸化安定性が、高流量環境で、GC/MSを用いて測定されて、クメン超酸化物(「CHP」)および硝酸エチルヘキシル(「EHN」)の分解速度が測定されてもよいことを見出した。これらの分解速度は、直接に、潤滑油の酸化安定性に相関する。この方法を含めて、本発明においては、処方者が、HTE技術を用いて、多数の処方が迅速に評価される一実施形態が提供される。
化学画分分析(GPC)
基油潤滑油の化学組成は、その潤滑油の機能にとって重大である。この理由で、数種の方法が、潤滑油の基油中のナフテン(C)、芳香族(C)、および飽和分(C)の画分を決定するのに用いられてきた。これらの画分は、潤滑油中に存在する種々の分子タイプの極性画分(極性)を測定することによって決定されてもよい。極性はまた、それが、潤滑油の酸化安定性の他の尺度を提供することから重要である。処方者は、現今では、極性を、ASTM試験法D3328およびD3524などの試験を用いて、測定する。これらの試験はまた、揮発生成分を分離するように設計される。従って、より高分子量の非揮発性画分には、敏感に反応しない。ASTM D4124試験は、より高分子量の非揮発性画分を分離することができるが、試験は、特に、アスファルトを、四つの化学的に別個の画分に分離するように設計された。また、HPLCなどの小型化された技術は、依然として、それらが実行するのに時間を要することから、HTEには不都合である。
本発明者らは、潤滑油の極性画分を、イアトロスキャン(Iatroscan)薄層クロマトグラフを用いることによって決定する方法を見出した。潤滑油のイアトロスキャンは、特に、それが数分で完成されることができることから、HTE適用に採用された。この方法を含めて、本発明においては、処方者が、HTEを用いて、多数の処方が迅速に評価される一方法が提供され、かつ極性を測定するために前に議論された他の方法に勝る利点が提供される。
摩擦低減性および耐磨耗性
摩擦を低減し、磨耗に耐性がある能力は、潤滑油の主要な機能である。処方者は、今日、耐磨耗性および摩擦低減性を、ASTM試験方法D2670、D2783、D3702、D4172、D4304、D5183、D5302、D5707、D5968、D6425、およびD5620などの試験を用いて測定する。本発明者らは、耐磨耗性および摩擦低減性の両方が、HTE環境で、ナノおよびマイクロ圧子技術を用いて測定されることができることを見出した。これらの方法を含めて、本発明においては、処方者が、HTE技術を用いて、多数の処方が迅速に評価される一実施形態が提供される。
更なる潤滑油特性
処方者はまた、スラッジ、ワニス、およびデポジットの形成、不溶分、セジメント、TAN、TBN、化学分析、シール膨潤、並びに金属腐食性の高流量測定に関心がある。処方者は、今日、スラッジ、ワニス、およびデポジットの形成を、D5302およびD4859などのASTM試験を用いて測定する。親和性、不溶分、およびセジメントの測定は、D893、D6560、およびD2273などのASTM測定を用いて為される。TANおよびTBNは、D94、D664、D5770、およびD5984などのASTM試験を用いて測定される。化学分析測定は、ASTM試験D5291、D2622、D5185などの試験を用いて為される。シール膨潤は、ASTM試験D4289などの試験を用いて測定される。同様に、重大金属、並びに銅腐食および錆防止性の試験は、ASTM D2649、D4636、D5968、D5969、D6547、D6557、およびD6594などの試験に従って行われる。
NOACK揮発性
当業者は、潤滑油のNOACK揮発性が、期待されるエンジン性能の重要な測定になっていることを解する。処方者は、今日、NOACK揮発性および一般の揮発性を、D2715、D5291、およびD5800などのASTM試験を用いることによって測定する。しかし、本発明者らは、NOACK揮発性を、パージおよびトラップガスクロマトグラフィー(P&T GC)、熱重量分析(TGA)、および質量分光法(MS)を用いて決定する方法を発見した。この方法を含めて、本発明においては、処方者が、HTE技術を用いて、多数の処方が迅速に評価される一実施形態が提供される。
色相および濁り度
潤滑油にストレスを加えた後には、潤滑油の色相および濁り度は、最終的な潤滑油性能の重要な予測量である。色相は、ASTM試験D1500によって決定される。これらの方法を含めて、本発明には、処方者が、HTE技術を用いて、多数の処方が迅速に評価される一実施形態が提供される。
他の特性
いくつかの特性(粘度など)は、前に、成功裡に小型化され、かつ高流量を為している。粘度を測定するのに用いられる典型的なASTM試験は、D2270、D445、D2422、D2532、D2983、D5133、D5763、D6022、およびD6821である。
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潤滑油の「中間」試験を、最終的な最終使用品質試験の結果に関連付ける本方法の要素集合を示す流れ図である。 単純なニューラルネットワークの演算を示す流れ図である。 一タイプの処方に見出される磨耗速度:極圧剤の量を示すグラフである。 フォルクスワーゲンTDi2(VWTDi2)試験の結果に対してプロットされたモービル薄膜酸化(tfo)試験(No.1)を示すグラフである。これは、tfo試験の予測能力を全く示さない。 フォルクスワーゲンTDi2(VWTDi2)試験の結果に対してプロットされたモービル薄膜酸化(tfo)試験(No.2)を示すグラフである。これは、tfo試験の予測能力を全く示さない。 フォルクスワーゲンTDi2(VWTDi2)試験の結果に対してプロットされたモービル薄膜酸化(tfo)試験(No.3)を示すグラフである。これは、tfo試験の予測能力を全く示さない。 フォルクスワーゲンTDi2(VWTDi2)試験の結果に対してプロットされたモービル薄膜酸化(tfo)試験(No.4)をグラフである。これは、tfo試験の予測能力を全く示さない。 フォルクスワーゲンTDi2(VWTDi2)試験の結果に対してプロットされたモービル薄膜酸化(tfo)試験(No.5)を示すグラフである。これは、tfo試験の予測能力を全く示さない。 フォルクスワーゲンTDi2(VWTDi2)試験の結果に対してプロットされたモービル薄膜酸化(tfo)試験(No.6)を示すグラフである。これは、tfo試験の予測能力を全く示さない。 tfo1:tfo5試験:VWTDi2試験(z軸)を示すグラフである。各個のグラフは、予測モデルを示すオーバーレイを有する。これは、線形または非線形相関関数のいずれかによって示される。 潤滑油におけるスラッジ形成、ワニスおよびデポジット形成に対するメカニズムモデルを示す。 新規油および接触酸化試験劣化油のモデルについて、VWTDi2最終使用試験の予測能力をグラフで表す。 単一装置における、多くの誘導中間試験の相互連結を示す成分図である。

Claims (22)

  1. 中間試験の要素集合のどの構成要素が、単独または組み合わせで、最終使用試験の結果の要素集合を予測するかを決定する方法であって、
    少なくとも第一および第二の構成要素を有する試料の要素集合を提供する工程;
    前記試料の要素集合に関し、最終使用試験の結果の要素集合を提供する工程であって、
    前記最終使用試験の結果の要素集合は、少なくとも第一および第二の構成要素を有し、前記最終使用試験の結果の要素集合の前記第一の構成要素は、前記試料の要素集合の前記第一の構成要素に対応し、かつ前記最終使用試験の結果の要素集合の前記第二の構成要素は、前記試料の要素集合の前記第二の構成要素に対応し、
    前記各要素集合の前記第一の構成要素は、前記各要素集合の前記第二の構成要素と同じでない工程;
    複数の構成要素を有する中間試験の要素集合を選択する工程;
    選択された前記中間試験の要素集合から、中間試験の結果の集合を得る工程;および
    前記中間試験の結果を、個々にまたは組み合わせで回帰分析に付して、前記中間試験の要素集合の構成要素のどれが、前記試料の要素集合に関する前記最終使用試験の結果の要素集合を予測するかを決定する工程
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記中間試験の要素集合は、大量のデータを広範囲にわたってもたらすことができる試験から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記回帰分析は、一般化線形回帰分析および非線形回帰分析よりなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記回帰分析は、ニューラルネット回帰分析であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  5. 前記中間試験の結果は、高流量実験によって得られることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  6. 候補試料が最終使用試験の結果の要素集合を満足するか否かを予測する方法であって、
    (a)請求項1〜5のいずれかに記載の方法を用いて、中間試験の要素集合のどの構成要素が、個々にまたは組み合わせで、最終使用試験の結果の要素集合を予測するかを決定する工程;
    (b)前記試料の要素集合の構成要素のそれぞれについて、前記工程(a)で決定されるそれぞれの前記試験を行い、中間試験結果を得る工程;および
    (c)前記工程(b)の中間試験の結果を、前記最終使用試験の結果の要素集合と比較する工程であって、前記比較により、一致が、最終使用試験の結果の要素集合を満足する候補試料を予測するものとなる工程
    を含むことを特徴とする方法。
  7. 候補潤滑油試料が、潤滑油に対して選択された最終使用試験に合格するか否かを予測する方法であって、
    (a)複数の中間試験のどの個々または組み合わせが、潤滑油に対して選択された最終使用試験の合格/不合格基準と相関する試験結果を提供するかを決定する工程;
    (b)候補潤滑油試料を、前記工程(a)で決定された試験の個々または組み合わせに付す工程;および
    (c)前記候補潤滑油の試験結果を前記合格/不合格基準と比較して、前記候補が前記選択された最終使用試験に合格するか否かを決定する工程
    を含むことを特徴とする方法。
  8. 前記中間試験は、実験室環境で、前記潤滑油試料の特性または性能特徴の尺度を提供するように設計された試験からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 前記特性または性能特徴は、磨耗、摩擦、粘度、酸化安定性、熱安定性、スラッジ、ワニス形成、デポジット形成、エラストマー親和性、揮発性、腐食、錆、混和性または溶解性、外観、化学組成、スカッフィング、酸性度増加、スート形成、貯蔵安定性、加水分解安定性、色相−光安定性、低温流動性、抗乳化性、乳化性、起泡性、空気取込および急性毒性からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 前記中間試験は、ASTM試験、SAE試験およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  11. 中間試験の要素集合の構成要素のどの組み合わせが、最終使用試験の結果の要素集合との高い相関を有するかを決定する方法であって、
    複数の試料それぞれに関し、前記中間試験の要素集合から中間試験の結果の集合を得る工程;
    前記複数の試料それぞれに関し、最終使用試験の結果の要素集合を得る工程;および
    前記複数の試料それぞれに関し、前記中間試験の要素集合から、最終使用試験の結果の前記要素集合と、組み合わせで最も密接に相関する二種以上の構成要素を選択する工程
    を含むことを特徴する方法。
  12. 前記中間試験の要素集合の前記組み合わせは、前記中間試験の要素集合の二種以上の構成要素を無作為に組み合わせ、その組み合わせが前記最終使用試験の結果の要素集合とどの程度密接に相関するかを決定し、この手順を他の無作為の組み合わせについて繰返して、どの組み合わせがより密接に対応するかを決定することによって選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
  13. 前記組み合わせは、変数選択アルゴリズムを用いて選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 前記アルゴリズムは、全ての可能な組み合わせアルゴリズムであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 前記アルゴリズムは、遺伝的アルゴリズムであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 前記最終使用試験の結果の要素集合は、前記試料を、高流量実験を用いて、前記中間試験に付すことによって得られることを特徴とする請求項15に記載の方法。
  17. 潤滑油、機能性流体またはグリースの成分量を選択する方法であって、
    成分レベルの異なる潤滑油、機能性流体またはグリースの複数の混合物に関し、中間試験の集合から複数の中間試験の結果を、また最終使用試験から少なくとも一種の最終使用試験の結果を得る工程;
    前記各混合物に関し、二種以上の前記中間試験のどの組み合わせが、前記最終使用試験の合格結果と相関するかを決定する工程;
    前記各混合物に関し、前記最終使用試験の結果に対応する成分レベルを同定する工程;および
    成分または成分の混合物およびレベルに選択アルゴリズムを適用して、前記最終試験に合格する新規混合物を予測する工程
    を含むことを特徴とする方法。
  18. 前記中間試験は、実験室環境で、前記潤滑油試料の特性または性能特徴の尺度を提供するように設計された試験からなる群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
  19. 前記特性または性能特徴は、磨耗、摩擦、粘度、酸化安定性、熱安定性、スラッジ、ワニス形成、デポジット形成、エラストマー親和性、揮発性、腐食、錆、混和性または溶解性、外観、化学組成、スカッフィング、酸性度増加、スート形成、貯蔵安定性、加水分解安定性、色相−光安定性、低温流動性、抗乳化性、乳化性、起泡性、空気取込、および急性毒性からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
  20. 予測混合物を処方する工程;および
    前記混合物を、前記最終使用試験に対する合格結果に応じて、中間試験の前記組み合わせを用いて試験する工程
    を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
  21. 前記選択、処方および試験の工程を、合格結果が得られるまで繰返す工程を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
  22. 前記混合物を前記最終使用試験に付して、実際の相関を決定する工程を更に含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
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