JP2009299561A - 燃料噴射弁内部形状推定方法及び燃料噴射弁内部形状推定装置 - Google Patents

燃料噴射弁内部形状推定方法及び燃料噴射弁内部形状推定装置 Download PDF

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糧 増田
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真 永岡
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Abstract

【課題】燃料噴射弁内部形状推定方法において、燃料噴射弁の内部形状の推定精度を向上させることである。
【解決手段】コンピュータを用いて、燃料噴射弁内部燃料流路と計算格子とを有するノズルモデルと、噴射条件と、実測で得られた実測ノズル流量係数Cd´とを表すデータを取得し(S1)、噴孔入口端縁部の仮曲率半径Raを表すデータを設定または取得し(S2)、ノズルモデルと噴射条件と仮曲率半径Raとを表すデータから、気液混相流数値解析法を用いてノズル弁体フルリフトの定常状態での噴孔内部燃料流動を数値解析し(S3)、算出ノズル流量係数Cdを算出し(S4)、実測ノズル流量係数Cd´と算出ノズル流量係数Cdとの差が設定された所定のずれ許容範囲内にあるか否かを判定し(S5)、判定結果が肯定である場合に仮曲率半径Raを実際の曲率半径として推定する(S6)。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料を噴出する噴孔を有する燃料噴射弁の内部形状を、コンピュータを用いて推定する方法と、燃料噴射弁内部形状推定装置とに関する。
従来から、インジェクタと呼ばれる燃料噴射弁として、先端に噴孔を有するノズルボディと、ノズルボディ内に往復移動可能に設けられたニードル弁体と、ノズルボディが取り付けられる本体と、ニードル弁を駆動する駆動装置とを備える構造が考えられている。駆動装置は、例えば、電磁コイルと可動鉄心等を有するソレノイドである。
このような燃料噴射弁は、燃料タンクから燃料ポンプにより吸い上げられた燃料を噴出させ、エンジンのシリンダ内に噴射させる。エンジンは、噴射された燃料の燃焼により、シリンダ内でピストンを往復運動させる。
燃料噴射弁の噴孔から噴出される燃料の噴霧形状は、点火プラグによる着火性や、燃費、排出ガス規制、エンジン出力等に影響するので、噴霧形状を精度よく予測することが要求されている。これに対して、特許文献1には、コンピュータで作成した三次元ノズルモデルを用いて、燃料の性状及び設定圧力等の計算初期条件から、ノズルの上流流れと、ノズルの出口面の円周分割要素毎の液膜の分布及び流速と、噴霧粒子の粒径及び分布とを計算して燃料の噴霧形状を解析する方法が記載されている。
また、非特許文献1には、噴孔の直径に対する噴孔入口の端縁部の曲率半径を推定し、その推定した曲率半径を使用して、ニードル弁体が移動する際の噴孔内の流れを計算することが記載されている。
特開2007−150658号公報 Ryo Masuda他、「Validation of Diesel Fuel Spray and Mixture Formation from Nozzle Internal Flow Calculation」,SAE Paper,No2005-01-2098,2005
従来から、ノズルボディの製造時にノズルボディ内に研磨剤を混入させた液体を流動させることにより、ノズルボディの内面に流体研磨を施すことが考えられている。この場合、ノズルボディに設けられた噴孔の入口端縁部にも流体研磨が施され、噴孔の入口端縁部に曲率半径を有するR部が形成される。すなわち、入口端縁部に丸みが付けられる。このため、ノズル内部の燃料流れを解析する際には、このようなR部を含む入口端縁部の形状を精度よく再現した計算格子を用いなければ、精度の高いノズル流量係数を得られず、噴射率、噴霧形状、噴霧粒子の粒径等の噴霧特性を精度よく予測することが難しい。ただし、流体研磨で形成される噴孔入口端縁部の曲率半径Raは、設計段階で図面に指示されるものではなく、設計段階で設定することは難しい。これに対して、特許文献1には、噴孔の入口端縁部の曲率半径を考慮することは記載されていない。このため、特許文献1に記載された噴霧形状の解析方法の場合、噴霧形状を精度よく予測する面から改良の余地がある。
[先発明の説明]
また、本発明者は、本発明に先立って次のような燃料噴霧特性の推定方法に関する先発明を発明した。図4から図14は、先発明とその先発明により得られた結果とを説明するための図である。図4は、先発明の推定方法を適用する燃料噴射弁の断面図である。図5は、先発明の推定方法を示すフローチャートである。図6は、図5のステップS1を詳しく説明するためのフローチャートである。図7は、噴孔を有するノズルボディと、ニードル弁体との一部と、計算格子とを示す図である。図8は、流量係数の実測値と、計算例とを比較して示す図である。図9は、ニードル弁体のリフト量が小さい燃料噴射の開始時及び終了時において、ニードル弁体とノズルボディとの一部と、計算格子とを含むノズルモデルを示す図である。図10は、ニードル弁体のフルリフト時である、弁全開時において、ニードル弁体とノズルボディとの一部と、計算格子とを含むノズルモデルを示す図である。図11は、噴孔内の燃料流動の計算に使用する、ニードル弁体の移動量の時間変化を示す図である。図12は、ニードル弁体のフルリフト時である、弁全開時において、噴孔内及び噴孔出口の空隙率分布を示す図である。図13は、燃料噴霧特性の実験結果と計算結果とを、経過時間が異なる3例ずつで示す模式図である。図14は、図13をより精度よく示す図である。
まず、図4に示すように、先発明の燃料噴霧特性の推定方法を適用する燃料噴射弁であるインジェクタ10は、例えば、ディーゼルエンジンのシリンダ12内へ直接燃料を噴射するものであり、ノズルボディ14と、ノズルボディ14内で往復移動するニードル弁体16とを備える。ノズルボディ14の下部内周に設けられた弁座部にニードル弁体16を当接可能としている。ノズルボディ14の下端部の周方向複数個所、例えば6個所位置に噴孔18を、ノズルボディ14の軸方向(図4の上下方向)に対し傾斜する方向に形成している。ニードル弁体16の往復移動により、ノズルボディ14内に供給された燃料が噴孔18を通じて、ノズルボディ14の外側、すなわちシリンダ12内に噴出されるようにしている。
また、図5に示すように、先発明の燃料の噴霧特性の推定方法は、大きく分けて3工程を備える。なお、図4に示した要素と同一の要素には同一符号を用いて説明する。まず、ステップS1で、インジェクタ10の全開、すなわち、ニードル弁体16のフルリフトでの定常状態でのノズル流量係数を計算し、実測ノズル流量係数と比較する工程を行う。そして、この比較から噴孔18入口の端部のR部を含む噴孔入口形状を推定する。ここで、ノズル流量係数は、次の(1)式のCdで表されるものである。
Q=Cd・A・(2Pdif/ρ)1/2 (1)
ここで、Qは噴孔18出口の燃料の流量(m3/s)であり、Aは噴孔18の出口部の面積(m2)であり、Pdifは、インジェクタ10の噴出前後の圧力差、ρは、燃料密度(kg/m3)である。また、Pdifは、インジェクタ10に加える圧力である燃料噴射圧P1と、筒内圧P2との差圧である(Pdif=P1−P2)。また、ノズル流量係数は、例えば、Cd=1であれば、噴孔18で生じる損失がないことを意味する。実際には、例えば、Cdは約0.6〜0.9である。また、Aは設計値から一義的に定められる既知の値である。
図6において、上記の図5に示したステップS1の工程をより詳しく説明する。まず、図6のステップS1で噴孔18入口端縁部の曲率半径Raを、作業者が任意に仮定して設定する。例えば、噴孔18の長さ方向中間部の直径をDとした場合に、噴孔18入口端縁部の曲率半径Raは、Ra=0.10Dを満たすと仮定する。Dは設計値から一義的に定められる既知の値である。そして図6のステップS2で、このように仮定したRaを用いて、コンピュータで、作業者が、ニードル弁体16とノズルボディ14との間、噴孔18等を含むインジェクタ内部燃料流路と計算格子とを有するノズルモデルを作成する。例えば、図7は、ニードル弁体16とノズルボディ14との間、噴孔18を含むノズルモデルの1例を示す図である。噴孔の直径Dと、噴孔入口端縁部の曲率半径Raとは、図7に示すように設定される。なお、図7の符号は、説明の便宜上記載したもので、実際のノズルモデルには記載されない(後述する図9、図10も同様である)。
次いで、図6のステップS3で、インジェクタ10の全開、すなわちニードル弁体16のフルリフトの定常状態で、燃料を液相のみの単相流として、噴孔18内流れをコンピュータで解析し、燃料流量Qを求め、ステップS4で、上記の(1)式からノズル流量係数Cdを計算し、コンピュータのディスプレイ上に表示させる。この場合の計算に使用する入力条件は、例えば、ノズルモデルと、ディーゼル燃料等の燃料種、噴射圧力等の噴射条件とである。
次いで、ステップS5で、計算で得られたノズル流量係数Cdと、予め計算と同条件で行われた実測で得られている実測ノズル流量係数Cd´とを、作業者が比較する。そして、ステップS6でCdとCd´とが一致または、ほぼ一致していると作業者が判断した場合に、ステップS7に移行し、ステップS1で仮定した噴孔入口端縁部の曲率半径Raを実際の曲率半径Raであると推測して、Raを確定し、Raを含む噴孔入口形状の推定を終了する。これに対して、ステップS6において、CdとCd´とが一致していない、または、CdとCd´とのずれが許容範囲以上に大きいと作業者が判断した場合には、再びステップS1に戻り、噴孔入口端縁部の曲率半径Raを現在設定されている値とは別の値に仮定、すなわち設定し直し、再び、ステップS2からS6を繰り返す。このような方法によれば、計算したノズル流量係数が実際の値と一致する、またはほぼ一致する場合の、曲率半径Raを実際の曲率半径として推定できる。
例えば、図8は、ノズル流量係数の実測値、すなわち実測ノズル流量係数Cd´と、噴孔入口端縁部の曲率半径Raを異ならせて、ノズル流量係数を計算した3例(計算例1,2,3)、すなわち計算されたノズル流量係数Cdとを比較している。計算例1は、曲率半径Raを0%、すなわち噴孔入口端縁部に丸みが全くない場合を、計算例2は、曲率半径Raを噴孔18の直径D(図7)の10%、すなわちRa=0.10Dとした場合を、計算例3は、曲率半径Raを噴孔18の直径Dの20%、すなわちRa=0.20Dとした場合を、それぞれ示している。図8の比較結果から明らかなように、図8の検討例の場合には、計算例2のノズル流量係数が実測値とほぼ一致したため、計算例2で仮定した曲率半径Ra、すなわち、噴孔18の直径Dの10%を、実際の曲率半径として推定できる。また、上記で説明したように、図6のフローチャートでは、ステップS1のRaの仮定、ステップS2のノズルモデルの作成、ステップS5、S6の比較、判定は、それぞれ作業者が行うことが考えられている。
次に、図5に戻り、ステップS2で、このように推定した噴孔入口形状を含む条件を用いて、ニードル弁体16を往復移動させる、インジェクタ10の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔18内の燃料流動特性及び噴孔18出口の燃料噴射特性を、作業者がコンピュータで計算し、コンピュータのディスプレイ上にこれらの特性に基づく画像を出力、すなわち表示させる工程を行う。このために、図6のステップS7で推定したRaによりノズルモデルを修正したものを用いて、上記の非定常状態で、燃料流動特性及び燃料噴射特性を計算する。このような非定常状態の計算は、燃料が気液混相流であるとして、気液混相流数値解析法を用いて行う。例えば、ノズルモデルは、図9に示すように、ニードル弁体16のリフト量最小時の燃料噴射の開始時及び終了時のものと、図10に示すように、ニードル弁体16のフルリフト時のものとを含んで作成する。
そして、図9に示す状態と、図10に示す状態との間で、ニードル弁体16を一定の時間ずつの動きとして徐々に移動させて、ノズルボディ14とニードル弁体16との間部分22に形成される計算格子の間隔を、ニードル弁体16の動きに応じて伸び縮みさせ、それぞれの状態で計算を行う。また、例えば、図11に示すように、ニードル弁体16のリフト量は、燃料噴射開始時から時間に比例して上昇させ、最大リフト量を一定時間保持し、その後、時間に比例して低下させる。
このようにして行った計算の結果は、例えば、図12に示すように、ディスプレイ上に噴孔18内の燃料流動特性と噴孔18出口の燃料噴射特性として表示させる。図12では、ニードル弁体16(図4等参照)のフルリフト時において、噴孔18内及び噴孔18出口の空隙率分布、すなわち気泡含有率分布を示しており、噴孔18内の白地で示す部分は空隙率が最も高いことを表しており、梨地で示す部分、斜格子で示す部分、黒地で示す部分の順に空隙率が徐々に低くなることを表している。このような計算に使用する入力条件は、例えば、インジェクタ10の内部形状の計算格子と、図11に1例を示す様なニードル弁体16のリフト量のタイムチャートとである。また、この計算で得られる出力は、例えば、ノズル流量係数と、噴孔18出口の瞬時流量である噴射率と、噴孔18出口面のキャビテーション、流速、及び乱れの分布と、噴孔18内の空隙率分布とである。
そして、図5のステップS3で、ステップS1で求められた噴孔18出口の、すなわち、噴孔18出口面のキャビテーション、流速、及び乱れの分布を境界条件、すなわち計算の入力条件として、噴孔18出口から噴出する燃料噴霧特性を作業者がコンピュータで計算し、ディスプレイ上に表示させる工程を行う。噴霧特性の出力は、例えば、燃料噴霧長さであるペネトレーションと、燃料液滴の平均粒径である。
図13、図14の(b1)(b2)(b3)は、噴霧特性の計算結果の1例であり、1つの噴孔からの噴霧形状をディスプレイに表示させたものである。図13、図14において、tは噴霧開始からの経過時間を表している。また、図13、図14の(a1)(a2)(a3)は、それぞれ(b1)(b2)(b3)の時間経過に対応するノズルボディ下側から撮影した実験結果を示す図である。図13、図14の(a1)(a2)(a3)と(b1)(b2)(b3)とを比較すれば明らかなように、先発明の方法では計算結果と実験結果とがかなり近いことを確認できた。
上記のような先発明の方法では、噴孔18入口の流体研磨により形成される入口端縁部の曲率半径も考慮して、噴孔18出口の噴射特性、及び、噴霧特性を計算することができる。また、噴孔18出口の噴射特性を計算する際に、気液混相流数値解析法を用いている。噴孔18内部の実際の燃料流れは、気液混相流であることが分かっているため、先発明の方法により、噴射特性及び噴霧特性を求めることにより、噴射特性及び噴霧特性の推定精度をある程度高くできる。
ただし、上記の図6で説明したように、噴孔入口形状を推定する際には、噴孔18内の流れを液相のみの単相流として解析し、ノズル流量係数が計算値と実測値とが一致またはほぼ一致する場合の、噴孔18入口の曲率半径Raを推定している。これに対して、実際の噴孔18内ではキャビテーションが発生し、上記のように噴孔18内の流れは気液混相流であることが分かっている。また、噴孔18内のキャビテーション数{=(噴射圧−雰囲気圧)/(雰囲気圧−燃料の飽和蒸気圧)}を実験で求めることによっても、噴孔18内にはキャビテーションが発生していることが分かっている。このようなキャビテーションが発生する場合には、噴孔18から吐出される燃料の流量低下が無視できないほどに大きくなる可能性がある。このため、上記の先発明の方法の場合には、噴孔18入口の曲率半径Raを含むインジェクタ10の内部形状を高精度で推定する面からはまだ改良の余地がある。このため、噴孔18内の燃料流動特性と噴孔18出口の噴射特性と、燃料噴霧特性とを高精度で推定する面からもまだ改良の余地がある。
本発明の目的は、燃料噴射弁内部形状推定方法及び燃料噴射弁内部形状推定装置において、燃料噴射弁の内部形状の推定精度を向上させることを目的とする。
本発明に係る燃料噴射弁内部形状推定方法は、燃料を噴出する噴孔を有する燃料噴射弁の内部形状を、コンピュータを用いて推定する方法であって、燃料噴射弁内部燃料流路と計算格子とを有するノズルモデルと、燃料噴射弁に加える燃料噴射圧を含む噴射条件と、実測で得られた実測ノズル流量係数Cd´とを表すデータを取得する工程と、噴孔入口端縁部の仮曲率半径Raを表すデータを設定または取得する工程と、ノズルモデルと噴射条件と仮曲率半径Raとを表すデータから、気液混相流数値解析法を用いて燃料噴射弁全開の定常状態での噴孔内部燃料流動を数値解析し、算出ノズル流量係数Cdを算出する工程と、実測ノズル流量係数Cd´と算出ノズル流量係数Cdとの差が、設定された所定のずれ許容範囲内にあるか否かを判定し、判定結果が肯定である場合に仮曲率半径Raを実際の曲率半径として推定し、判定結果が否定である場合に算出ノズル流量係数Cdの算出に使用する仮曲率半径Raを変更する工程と、を備えることを特徴とする燃料噴射弁内部形状推定方法である。
また、本発明に係る燃料噴射弁内部形状推定方法において、好ましくは、推定された噴孔入口端縁部の曲率半径Raを含む条件を用いて、燃料噴射弁の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔出口の噴射特性を推定する工程と、推定された噴射特性を用いて、燃料噴霧特性を推定する工程と、を備える。
また、本発明に係る燃料噴射弁内部形状推定装置は、燃料を噴出する噴孔を有する燃料噴射弁の内部形状を推定する装置であって、燃料噴射弁内部燃料流路と計算格子とを有するノズルモデルと、燃料噴射弁に加える燃料噴射圧を含む噴射条件と、実測で得られた実測ノズル流量係数Cd´とを表すデータを取得する手段と、噴孔入口端縁部の仮曲率半径Raを表すデータを設定または取得する手段と、ノズルモデルと噴射条件と仮曲率半径Raとを表すデータから、気液混相流数値解析法を用いて燃料噴射弁全開の定常状態での噴孔内部燃料流動を数値解析し、算出ノズル流量係数Cdを算出する手段と、実測ノズル流量係数Cd´と算出ノズル流量係数Cdとの差が、設定された所定のずれ許容範囲内にあるか否かを判定し、判定結果が肯定である場合に仮曲率半径Raを実際の曲率半径として推定し、判定結果が否定である場合に算出ノズル流量係数Cdの算出に使用する仮曲率半径Raを変更する手段と、を備えることを特徴とする燃料噴射弁内部形状推定装置である。
また、本発明に係る燃料噴射弁内部形状推定装置において、好ましくは、推定された噴孔入口端縁部の曲率半径Raを含む条件を用いて、燃料噴射弁の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔出口の噴射特性を推定する手段と、推定された噴射特性を用いて、燃料噴霧特性を推定する手段と、を備える。
本発明に係る燃料噴射弁内部形状推定方法及び燃料噴射弁内部形状推定装置によれば、気液混相流数値解析法を用いて燃料噴射弁全開の定常状態での噴孔内部燃料流動を数値解析し、算出ノズル流量係数Cdを算出し、実測ノズル流量係数Cd´と算出ノズル流量係数Cdとの差が、設定された所定のずれ許容範囲内にある場合に噴孔入口端縁部の仮曲率半径Raを実際の曲率半径として推定できる。また、実際の噴孔内の流れは気液混相流となることが分かっている。このため、噴孔入口端縁部の曲率半径を高精度で推定でき、燃料噴射弁の内部形状の推定精度を高くできる。しかも、両流量係数Cd、Cd´に関する判定を自動で行えるため、推定結果を容易に取得することができる。
また、本発明に係る燃料噴射弁内部形状推定方法において、推定された噴孔入口端縁部の曲率半径Raを含む条件を用いて、燃料噴射弁の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔出口の噴射特性を推定する工程と、推定された噴射特性を用いて、燃料噴霧特性を推定する工程と、を備える構成、または、本発明に係る燃料噴射弁内部形状推定装置において、推定された噴孔入口端縁部の曲率半径Raを含む条件を用いて、燃料噴射弁の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔出口の噴射特性を推定する手段と、推定された噴射特性を用いて、燃料噴霧特性を推定する手段と、を備える構成によれば、燃料噴霧特性を高精度で推定できる。
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図3は、本発明の実施の形態の1例を示している。図1は、本実施の形態の燃料噴射弁内部形状推定装置である、燃料噴霧特性推定装置を示す基本構成図である。図2は、図1の噴孔入口曲率半径推定手段を詳しく示す構成図である。図3は、本実施の形態の燃料噴射弁内部形状推定方法である、燃料噴霧特性推定方法において、図5のステップS1に対応する構成を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施の形態の燃料噴霧特性推定装置24は、コンピュータであり、処理部26と、入力部28と、出力部であるディスプレイ30と、記憶部32とを備える。処理部26は、CPU、メモリ等から構成され、データ取得手段34と、噴孔入口曲率半径推定手段36と、噴孔出口噴射特性推定手段38と、燃料噴霧特性推定手段40と、三次元CADシステム42と、図示しないディスプレイ表示画像生成手段とを備える。入力部28は、キーボード、マウス等である。なお、本実施の形態は、上記の先発明の場合と同様に、上記の図4で示した燃料噴射装置である、インジェクタ10の噴孔18から噴射される燃料の噴霧特性を推定、例えばシミュレーションする。インジェクタ10の構成は、上記の図4で説明したものと同様であり、燃料を噴出する噴孔18を有する。以下の説明において、図4で示した要素と同等部分には同一の符号を付して説明する。なお、インジェクタ10の噴孔18は、図4で説明したように、ノズルボディ14の軸方向(図4の上下方向)に対し傾斜した方向に形成されるものに限定されるものではなく、例えば軸線上に形成されるものにも、本実施の形態の燃料噴霧特性推定装置24を適用できる。また、インジェクタ10を有するエンジンは、ディーゼルエンジンに限定するものではなく、シリンダ12内に直接燃料を噴射する直噴ガソリンエンジンとすることもできる。
三次元CADシステム42は、作業者により入力部28からのデータの入力を受け付け、受け付けたデータに基づいて、対象物であるインジェクタ10の内部形状を含む、インジェクタ10の形状をモデル化し計算格子を含むノズルモデルの作成と、ディスプレイ30における三次元または二次元上の形状の画面表示とを可能とする。ノズルモデルは、例えば、上記の図9、図10で示したように、ニードル弁体16とノズルボディ14との間、噴孔18等を含むインジェクタ内部燃料流路と計算格子とを有する。
三次元CADシステム42で作成した、計算格子を含むノズルモデルのデータは、記憶部32、処理部26内のメモリ等で記憶する。記憶部32は、外部記憶装置としてのハードディスク、または、CD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク等の記録媒体とする。また、記憶部32は、回線により接続された遠隔場所にあるデータベース等としてもよい。記憶部32には、インターフェースを介して別のコンピュータから入力された、計算格子を含むノズルモデルのデータを記憶させることもできる。また、記憶部32に、燃料噴霧特性の推定を処理部26に実行させるためのソフトウェアであるプログラムを記憶させることもできる。ディスプレイ30は、ディスプレイ表示画像生成手段により、処理部26で推定された噴孔入口曲率半径、噴孔出口噴射特性及び燃料噴霧特性に基づいて生成される画像等を表示可能とする。
また、本実施の形態の燃料噴霧特性推定装置24は、インジェクタ10の内部形状を推定する装置でもある。処理部26が備えるデータ取得手段34は、ノズルモデルと、ディーゼル燃料等の燃料種、インジェクタ10に図示しない燃料ポンプから加えられる燃料の噴射圧力、すなわち、燃料ポンプの吐出圧等の噴射条件、予め実測で得られた実測ノズル流量係数Cd´をそれぞれ表すデータを取得する。これらのデータは、入力部28、記憶部32等から取得する。記憶部32からデータを取得する場合には、作業者の入力部28による操作に基づいてデータを処理部26に取得可能とする。
また、データ取得手段34は、後述する流量係数比較判定手段44(図2)で使用する噴孔入口曲率半径増加ステップs、及び、流量係数差許容度K(%)を表すデータを、作業者の入力部28による操作に基づいて取得可能とする。また、データ取得手段34は、噴孔出口噴射特性推定手段38(図1)で使用する、ニードル弁体16のリフト量のタイムチャートを表すデータを取得可能とする。タイムチャートは、例えば、上記の先発明の説明で図11に1例として説明した、ニードル弁体16のリフト量と時間との関係を表すものである。
また、図2に示すように、噴孔入口曲率半径推定手段36は、噴孔入口仮曲率半径設定手段46と、流量係数算出手段48と、流量係数比較判定手段44とを備える。噴孔入口仮曲率半径設定手段46は、予め記憶部32または処理部26のメモリに記憶された噴孔入口仮曲率半径Raを読み出して、算出に使用する噴孔入口仮曲率半径Raを設定する。例えば、Ra=0と設定する。
また、流量係数算出手段48は、データ取得手段34で取得されたノズルモデルと、噴孔入口仮曲率半径設定手段46で設定された噴孔入口仮曲率半径Raとから、噴孔入口仮曲率半径Raに対応してノズルモデルを修正し、修正したノズルモデルと、データ取得手段34で取得された噴射条件を表すデータとから、気液混相流数値解析法を用いてインジェクタ10全開、すなわち、ニードル弁体16のフルリフトの定常状態での噴孔内部燃料流動を数値解析し、算出ノズル流量係数Cdを算出する。
また、流量係数比較判定手段44は、データ取得手段34で取得された実測ノズル流量係数Cd´と、算出ノズル流量係数Cdとを比較し、両流量係数Cd´、Cdの間の差が、設定された所定のずれ許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、流量係数比較判定手段44は、判定結果が肯定である場合に仮曲率半径Raを実際の曲率半径として推定し、判定結果が否定である場合に算出ノズル流量係数Cdの再度の算出に使用する仮曲率半径Raを変更する。
図1に戻り、噴孔出口噴射特性推定手段38は、噴孔入口曲率半径推定手段36で推定された噴孔18入口端縁部の曲率半径Raを含む入力条件を用いて、インジェクタ10の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔18内の燃料流動特性、及び、噴孔18出口の噴射特性を算出し、推定する。この算出の入力条件は、推定された曲率半径Ra、推定された曲率半径Raにより修正したノズルモデル、データ取得手段34で取得されたニードル弁体16のリフト量のタイムチャート等である。噴孔出口噴射特性推定手段38は、これらの入力条件を用いて、インジェクタ10の開閉動作、すなわち、ニードル弁体16の往復移動に伴う非定常状態で、噴孔18内の燃料流動特性と、噴孔18出口の噴射特性とを、噴孔18内の燃料流れを気液混相流として、気液混相流数値解析法を用いて算出し、推定する。算出される燃料流動特性及び噴射特性、すなわち算出結果の出力は、例えば、ノズル流量係数Cdと、噴孔18からの瞬時流量である噴射率と、噴孔18出口面のキャビテーション、流速、及び乱れの分布と、噴孔18内の空隙率分布とである。噴孔出口噴射特性推定手段38は、噴孔18出口の噴射特性のみを算出し、推定することもできる。
また、図1に示す燃料噴霧特性推定手段40は、上記の算出結果の出力のうち、推定された噴孔18出口面のキャビテーション、流速、及び乱れの分布を用いて、燃料噴霧特性を推定する。燃料噴霧特性は、燃料の噴霧長さであるペネトレーションと、燃料液滴の平均粒径等である。
また、処理部26が有するディスプレイ表示画像生成手段は、噴孔入口曲率半径推定手段36で推定された噴孔18入口の曲率半径Raと、噴孔出口噴射特性推定手段38で推定された噴孔出口噴射特性と、燃料噴霧特性推定手段で推定された燃料噴霧特性とに基づいて生成される画像、例えば、上記の図12で示したものに対応する、噴孔18内及び噴孔18出口の空隙率分布や、上記の図13、図14で示したものに対応する、噴霧形状を、ディスプレイ30に表示させる。
次に、燃料噴霧特性の推定方法を含む、燃料噴射弁の内部形状の推定方法を、図3のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の説明において、図1、図2に示した要素と同一の要素には同一符号を付して説明する。燃料噴射弁であるインジェクタ10の内部形状を推定する場合、図3のステップS1において、データ取得手段34により、推定のための入力条件である、インジェクタ内部燃料流路と計算格子とを有するノズルモデルを表すノズルモデルデータ、噴射条件を表す噴射条件データ、実測流量係数Cd´、噴孔入口曲率半径増加ステップs、及び流量係数差許容度K(%)を表すデータを、記憶部32、メモリ等で取得する工程を行う。ここで、ノズルモデルは、ニードル弁体16のノズルボディ14に対する当接部である弁座部よりも上流側の燃料通路から、下流側となる噴孔18出口までの範囲を計算領域とした計算格子を含んでいる。また、噴射条件は、燃料種と、噴射圧及び雰囲気圧とを含んでいる。
次に、図3のステップS2で、噴孔入口仮曲率半径設定手段46により、噴孔入口仮曲率半径Ra、例えばRa=0を表すデータを記憶部32、メモリから読み出し、設定する工程を行う。この場合、Raの初期値はRa=10%などとすることも可能である。
次に、ステップS3で、流量係数算出手段48により、インジェクタ10の全開の定常状態で、燃料流れを気液混相流として、噴孔18内流れを解析する工程を行い、ステップS4で、算出ノズル流量係数Cdを算出する工程を行う。この算出工程では、ステップS1で取得した、ノズルモデルの噴孔入口曲率半径を、設定された噴孔入口仮曲率半径Raで修正したものと、噴射条件とを入力条件とし、この入力条件を用いて算出ノズル流量係数Cdを算出する。
また、この場合、噴孔18内流れの解析に、気液混相流数値解析法を用いる。気液混相流数値解析法は、例えばオイラー多流体モデルとすることもでき、燃料相、燃料蒸気相、空気相の三流体モデルにキャビテーションモデルを組み合わせることもできる。より具体的には、ノズルモデル内の流れ状態では、加圧された燃料が噴孔18に流れ込む際に入口部で流れが剥離して、噴孔18内の流路の有効断面積が実際の噴孔18断面積よりも縮小したり、摩擦損失等の影響により流量係数が低下すると考えられている。また、噴孔18入口部での流速増加により、流体力学的な減圧が生じ、局所の圧力が燃料の飽和蒸気圧以下となる場所では燃料が蒸発して燃料蒸気となるキャビテーションが発生すると考えられている。キャビテーションの発生によっても、噴孔18内の流路の有効断面積が縮小するため、流量係数はこれによっても低下する。このため、本実施の形態のように、キャビテーションを考慮した気液混相流数値解析法を用いることで、流量係数について、インジェクタ10内部形状とキャビテーションとの両方の影響を評価することが可能となる。
気液混相流数値解析法により算出する算出ノズル流量係数は、上記の先発明の場合のノズル流量係数と同様に、上記の(1)式でのCdで表されるものである。また、気液混相流数値解析法は、アンサンブル平均化処理を使用する。また、質量保存式と、運動量保存式と、乱流運動エネルギ方程式(TKE)と、乱流エネルギ散逸方程式(TED)とを、液相と蒸気相とのそれぞれの相で解く。ここで、k相についての支配方程式は、体積率αkと、2個の相の間の相互作用を考慮した付加的な中間相の交換成分とにより特徴づけられる。
k相についての質量保存式は、次の(2)式となる。
Figure 2009299561
ここで、Γklは、キャビテーションモデルが成立する場合において、k相とl相との間での質量交換成分である。また、質量交換成分は、単純化されたレイリーの式により蒸発と凝縮とによる全蒸気気泡質量についての交換の割合から計算される。また、ρは密度であり、vは速度である。また、∇は微分演算子である。
また、次の(3)式が成立する。
Figure 2009299561
ここで、添え字1と2とは、それぞれ液相と蒸気相とを表す。また、cRは、凝縮減少係数である。また、Rは気泡の半径であり、Δpは流体圧と蒸気圧との間の圧力差であり、蒸気圧は、アントワンのn−ドデカンの式(Antoine's equation of n-dodecane)によって計算される。また、
Figure 2009299561
であり、
Figure 2009299561
である。ここで、psatは、飽和蒸気圧であり、pは流体圧、pEは乱流圧力の変化量である。また、CEは、乱流圧力の変化についての補正係数であり、k1は、液相の乱流運動エネルギである。また、
Figure 2009299561
は、気泡数密度である。
さらに、k相についての運動量の方程式は、次の(4)式となる。
Figure 2009299561
ここで、τはせん断応力であり、Tはレイノルズ応力である。
また、運動量交換成分Mは、次の(5)式のように、抗力と乱流拡散力とにより影響される。
Figure 2009299561
ここで、CDは抗力係数であり、
Figure 2009299561
は、気泡断面積密度で、CTDは乱流拡散係数である。抗力は、単一の球の抗力の法則に基づいて求められる。乱流拡散力は、乱流混合プロセスによる気泡拡散について求められる。
上記の図3のステップS3、S4で使用する気液混相流数値解析法は、上記の保存式である、(2)式、(4)式を含む、質量保存式と、運動量保存式と、乱流運動エネルギ方程式(TKE)と、乱流エネルギ散逸方程式(TED)とを、液相と蒸気相とのそれぞれの相で、上記の入力条件の下で数値計算により解くもので、上記の気液混相流数値解析法を用いて上記の算出ノズル流量係数Cdを算出する。
次に、図3のステップS5において、流量係数比較判定手段44により、データ取得手段34で取得された実測ノズル流量係数Cd´と、ステップS3、S4で算出された算出ノズル流量係数Cdとを比較し、両流量係数Cd´、Cdの間の差が、設定された所定のずれ許容範囲内にあるか否かを判定する工程を行う。すなわち、ステップS1で取得された流量係数差許容度Kと、実測ノズル流量係数Cd´と、算出ノズル流量係数Cdとを用いて、両流量係数Cd´、Cdの関係が次の(6)式のようになるか否かを、流量係数比較判定手段44により判定する工程を行う。
(1−0.01K)Cd´≦Cd≦(1+0.01K)Cd´ (6)
流量係数比較判定手段44により、ステップS5の判定結果が肯定であると判定された場合、すなわち、(6)式が成立すると判定された場合に、ステップS6に移行し、噴孔18の入口端縁部の仮曲率半径Raを実際の曲率半径として推定し、推定を終了する。例えば、流量係数差許容度を1%とする(K=1とする)と、所定のずれ許容範囲は、0.99Cd´以上1.01Cd´以下の範囲となる。なお、K=0として、算出ノズル流量係数Cdと、実測ノズル流量係数Cd´とが完全に一致するか否かを判定することもできる。
これに対して、流量係数比較判定手段44により、ステップS5の判定結果が否定であると判定された場合には、ステップS7に移行し、仮曲率半径Raに、ステップS1で取得された噴孔入口曲率半径増加ステップsと、噴孔18断面の直径Dとを用いて、算出ノズル流量係数Cdの再度の算出に使用する、噴孔18入口端縁部の仮曲率半径Raを変更する。すなわち、現在の仮曲率半径Raに、噴孔入口曲率半径増加ステップsと、噴孔18断面の直径Dとの積を加算して得た(Ra+sD)を新たな仮曲率半径Raに代入して、再びステップS3に戻り、ステップS5の判定結果が肯定となるまで、ステップS3からS5の工程を繰り返し、肯定と判定された場合には、ステップS7に移行する。例えば、噴孔入口曲率半径増加ステップsは、0.1とする。Raの修正方法としては、最適化手法(例えば、二分木法、勾配法など)を用いてもよい。
このようにして、噴孔18入口端縁部の曲率半径Raが推定されたならば、噴孔出口噴射特性推定手段38により、推定された噴孔18入口端縁部の曲率半径Ra、推定された曲率半径Raにより修正した噴孔18等を含むノズルモデル、データ取得手段34で取得されたニードル弁体16のリフト量のタイムチャートを含む入力条件を用いて、インジェクタ10の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔18内の燃料流動特性、及び、噴孔18出口の噴射特性を算出し、推定する工程を行う。これらの燃料流動特性及び噴射特性を推定する工程は、上記の図5を用いて説明した先発明の図5のステップS2の工程と同様である。この場合の噴射特性の算出は、噴孔18内の燃料流れを気液混相流として、上記の(2)式から(5)式を用いて説明した気液混相流数値解析法を用いて行う。算出される特性、すなわち算出結果の出力は、ノズル流量係数Cdと、瞬時流量である噴射率と、噴孔18出口面のキャビテーション、流速、及び乱れの分布と、噴孔18内の空隙率分布とである。この場合、上記の保存式である、(2)式、(4)式を含む、質量保存式と、運動量保存式と、乱流運動エネルギ方程式(TKE)と、乱流エネルギ散逸方程式(TED)とを、液相と蒸気相とのそれぞれの相で、上記の入力条件の下で数値計算により解く。例えば、上記の保存式を、時間及び空間において離散化して表した、例えば差分方程式を用いて、噴孔18を含む燃料流路内の流れ場を計算し、この計算を予め設定される所定の時間刻みごとに繰り返すことで、所定の時間刻みごとの噴射特性を推定する。また、WAVEモデルに代えて、KH−RTモデルまたはTABモデル等を利用することもできる。
次いで、上記の図5を用いて説明した図5のステップS3の工程と同様に、燃料噴霧特性推定手段40により、上記の算出結果の出力のうち、推定された噴孔18出口面のキャビテーション、流速、及び乱れの分布を境界条件として用いて、シリンダ12(図4参照)内での燃料噴霧特性を推定する工程を行う。燃料噴霧特性は、燃料の噴霧長さであるペネトレーションと、燃料液滴の平均粒径等である。燃料噴霧特性の算出には、例えばシリンダ12内での液柱の分裂挙動を、1次分裂モデルを用いて計算し、具体的には、燃料液滴の初期粒径、位置、及び速度を計算する。噴孔18出口での液柱は円錐形状と仮定され、この円錐面上から燃料液滴がシリンダ12内に入射される。その後、燃料液滴の挙動は、例えばDDMと呼ばれる、離散液滴モデルを用いて計算し、その後、燃料液滴の2次分裂モデルは、例えばWAVEモデルを用いて計算し、燃料噴霧特性として、予め設定される所定の時間刻みごとの噴射特性を推定する。
そして、上記の工程により推定された、噴孔入口曲率半径Raと、噴孔18内燃料流動特性、噴孔18出口の噴射特性及び燃料噴霧特性に基づいて生成される画像とのうち、少なくともいずれか1を、ディスプレイ表示画像生成手段により、ディスプレイに表示させる工程を行う。
このような本実施の形態の燃料噴射弁内部形状推定方法及び燃料噴射弁内部形状推定装置によれば、上記の先発明の場合と異なり、気液混相流数値解析法を用いてインジェクタ10全開の定常状態での噴孔18内部燃料流動を数値解析し、算出ノズル流量係数Cdを算出し、実測ノズル流量係数Cd´と算出ノズル流量係数Cdとの差が、設定された所定のずれ許容範囲内にある場合に噴孔18入口端縁部の仮曲率半径Raを実際の曲率半径として推定できる。また、実際の噴孔18内の流れは気液混相流となることが分かっている。このため、噴孔18入口端縁部の曲率半径を高精度で推定でき、インジェクタ10の内部形状の推定精度を高くできる。しかも、両流量係数Cd、Cd´に関する判定を自動で行えるため、推定結果を容易に取得することができる。
また、本実施の形態では、推定された噴孔18入口端縁部の曲率半径Raを含む条件を用いて、インジェクタ10の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔18出口の噴射特性を推定する工程と、推定された噴射特性を用いて、燃料噴霧特性を推定する工程と、を備える。また、本実施の形態では、推定された噴孔18入口端縁部の曲率半径Raを含む条件を用いて、インジェクタ10の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔18出口の噴射特性を推定する噴孔出口噴射特性推定手段38と、推定された噴射特性を用いて、燃料噴霧特性を推定する燃料噴霧特性推定手段40とを備える。このため、燃料噴霧特性を高精度で推定できる。
なお、本発明の燃料噴射弁内部形状推定方法及び燃料噴射弁内部形状推定装置は、噴孔18出口噴射特性を推定する工程と、燃料噴霧特性を推定する工程、及び、噴孔出口噴射特性推定手段38と、燃料噴霧特性推定手段40を、それぞれ備えるものに限定するものではなく、噴孔18入口曲率半径Raのみを推定するものでも、噴孔入口曲率半径Raと噴孔18出口噴射特性とのみを推定し、それぞれで推定した推定値または推定した特性に基づく画像をディスプレイ等に出力するものとすることもできる。
また、燃料噴射弁内部形状推定方法及び燃料噴射弁内部形状推定装置において、データ取得工程またはデータ取得手段34で、噴孔18入口端縁部の仮曲率半径Raを、作業者の入力部28による操作に基づいて、記憶部32、メモリ等で取得するものとすることもできる。この場合には、図2に示した噴孔入口曲率半径推定手段36から噴孔入口仮曲率半径設定手段46を省略し、流量係数算出手段48は、データ取得手段34で取得された仮曲率半径Raを用いて、ノズル流量係数を算出することもできる。
本発明の実施の形態の1例の燃料噴射弁内部形状推定装置である、燃料噴霧特性推定装置を示す基本構成図である。 図1の噴孔入口曲率半径推定手段を詳しく示す構成図である。 本発明の実施の形態の1例の燃料噴射弁内部形状推定方法である、燃料噴霧特性推定方法において、図5のステップS1に対応する構成を示すフローチャートである。 先発明の推定方法を適用する燃料噴射弁の断面図である。 先発明の推定方法を示すフローチャートである。 図5のステップS1を詳しく説明するためのフローチャートである。 噴孔を含むノズルボディと、ニードル弁体との一部と、計算格子とを示す図である。 流量係数の実測値と、計算例とを比較して示す図である。 ニードル弁体のリフト量が小さい燃料噴射の開始時及び終了時において、ニードル弁体とノズルボディとの一部と、計算格子と含むノズルモデルを示す図である。 ニードル弁体のフルリフト時である、弁全開時において、ニードル弁体とノズルボディとの一部と、計算格子とを含むノズルモデルを示す図である。 噴孔内の燃料流動の計算に使用する、ニードル弁体の移動量の時間変化を示す図である。 ニードル弁体のフルリフト時である、弁全開時において、噴孔内及び噴孔出口の空隙率分布を示す図である。 燃料噴霧特性の実験結果と計算結果とを、経過時間が異なる3例ずつで示す模式図である。 図13をより精度よく示す図である。
符号の説明
10 インジェクタ、12 シリンダ、14 ノズルボディ、16 ニードル弁体、18 噴孔、20 噴孔入口端縁部、22 間部分、24 燃料噴霧特性推定装置、26 処理部、28 入力部、30 ディスプレイ、32 記憶部、34 データ取得手段、36 噴孔入口曲率半径推定手段、38 噴孔出口噴射特性推定手段、40 燃料噴霧特性推定手段、42 三次元CADシステム、44 流量係数比較判定手段、46 噴孔入口仮曲率半径設定手段、48 流量係数算出手段。

Claims (4)

  1. 燃料を噴出する噴孔を有する燃料噴射弁の内部形状を、コンピュータを用いて推定する方法であって、
    燃料噴射弁内部燃料流路と計算格子とを有するノズルモデルと、燃料噴射弁に加える燃料噴射圧を含む噴射条件と、実測で得られた実測ノズル流量係数Cd´とを表すデータを取得する工程と、
    噴孔入口端縁部の仮曲率半径Raを表すデータを設定または取得する工程と、
    ノズルモデルと噴射条件と仮曲率半径Raとを表すデータから、気液混相流数値解析法を用いて燃料噴射弁全開の定常状態での噴孔内部燃料流動を数値解析し、算出ノズル流量係数Cdを算出する工程と、
    実測ノズル流量係数Cd´と算出ノズル流量係数Cdとの差が、設定された所定のずれ許容範囲内にあるか否かを判定し、判定結果が肯定である場合に仮曲率半径Raを実際の曲率半径として推定し、判定結果が否定である場合に算出ノズル流量係数Cdの算出に使用する仮曲率半径Raを変更する工程と、を備えることを特徴とする燃料噴射弁内部形状推定方法。
  2. 請求項1に記載の燃料噴射弁内部形状推定方法において、
    推定された噴孔入口端縁部の曲率半径Raを含む条件を用いて、燃料噴射弁の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔出口の噴射特性を推定する工程と、
    推定された噴射特性を用いて、燃料噴霧特性を推定する工程と、を備えることを特徴とする燃料噴射弁内部形状推定方法。
  3. 燃料を噴出する噴孔を有する燃料噴射弁の内部形状を推定する装置であって、
    燃料噴射弁内部燃料流路と計算格子とを有するノズルモデルと、燃料噴射弁に加える燃料噴射圧を含む噴射条件と、実測で得られた実測ノズル流量係数Cd´とを表すデータを取得する手段と、
    噴孔入口端縁部の仮曲率半径Raを表すデータを設定または取得する手段と、
    ノズルモデルと噴射条件と仮曲率半径Raとを表すデータから、気液混相流数値解析法を用いて燃料噴射弁全開の定常状態での噴孔内部燃料流動を数値解析し、算出ノズル流量係数Cdを算出する手段と、
    実測ノズル流量係数Cd´と算出ノズル流量係数Cdとの差が、設定された所定のずれ許容範囲内にあるか否かを判定し、判定結果が肯定である場合に仮曲率半径Raを実際の曲率半径として推定し、判定結果が否定である場合に算出ノズル流量係数Cdの算出に使用する仮曲率半径Raを変更する手段と、を備えることを特徴とする燃料噴射弁内部形状推定装置。
  4. 請求項3に記載の燃料噴射弁内部形状推定装置において、
    推定された噴孔入口端縁部の曲率半径Raを含む条件を用いて、燃料噴射弁の開閉動作に伴う非定常状態で、噴孔出口の噴射特性を推定する手段と、
    推定された噴射特性を用いて、燃料噴霧特性を推定する手段と、を備えることを特徴とする燃料噴射弁内部形状推定装置。
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