1つの実施態様では、本発明は、栽培品種化(家畜化)された生物(例えば、植物および動物)における商業的にもしくは審美的に重要な形質と関連する、そしてそれゆえにそれらに寄与または原因となることもあり得る、正に選択された遺伝子および特定の遺伝子変化を同定するために、比較ゲノミクスを利用する。
もう1つの態様で、本発明は、栽培品種化(家畜化)された生物の祖先におけるストレス耐性と関連する進化的に中立の遺伝子および遺伝子変化を同定する。
本発明の実施は、別に示さない限りは、当該技術分野の熟練の範囲内にある、分子生物学、遺伝学、および分子進化の慣用技術を使用する。そうした技術は、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,第2版(Sambrookら,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait編、1984);“Current Protocols
in Molecular Biology”(F.M.Ausubelら編,1987);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullisら編,1994);“Molecular Evolution”,(Li,1997):のような文献中に十分に説明されている。
I. 定義
本明細書で使われる場合、「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらの類似体の、任意の長さのヌクレオチドの重合体型を指す。本用語は、前記分子の一次構造を指し、それゆえ、二本鎖および一本鎖DNAならびに二本鎖および一本鎖RNAを含む。それはまた、メチル化および/またはキャップ形成ポリヌクレオチドのような修飾ポリヌクレオチド、修飾塩基、バックボーン修飾、および同種のものを含むポリヌクレオチド、を含む。用語「ポリヌクレオチド」および「ヌクレオチド配列」は互換的に使用される。
本明細書で使われる場合、「遺伝子」は、タンパク質をコードする配列を含む、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの一部を指す。遺伝子はまた、(プロモーター、エンハンサー、リプレッサーおよび他の調節配列のような)5’および3’フランキング配列ならびにイントロンのような、非コード配列も含むことは、当該技術分野では言うまでもない。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸の重合体を指す。これらの用語はまた、グリコシル化、アセチル化、およびリン酸化を含む反応を通じて翻訳後修飾されるタンパク質も含む。
用語「栽培品種化(家畜化)された生物」は、人工選択圧に曝され、そして商業的にもしくは審美的に重要な形質を発達させた、同一の、種、亜種、品種、栽培品種、または株の、個々の生きている生物または集団を指す。いくつかの好ましい態様では、前記栽培品種化(家畜化)された生物は、メイズ、コムギ、コメ、モロコシ、トマト、またはジャガイモより成る群から選択された植物、または、祖先がわかっている、商業的に興味深い、任意の他の栽培品種化植物である。「植物」は、発生の任意の段階の任意の植物、とくに種子植物である。
他の好ましい態様で、前記栽培品種化(家畜化)された生物は、ウシ類(cattle)、ウマ類(horses)、ブタ類(pigs)、ネコ類(cats)、およびイヌ類(dogs)より成る群から選択された動物である。栽培品種化(家畜化)生物およびその祖先は、異なる種、亜種、品種、栽培品種、または株、またはそれらの任意の組合せとして、関係づけられることもあり得る。
用語「野生祖先」または「祖先」は、それから栽培品種化(家畜化)生物の種、亜種、品種、栽培品種、または株が発生した、先駆者または前任者生物の種、亜種、品種、栽培品種、または株を、意味する。栽培品種化(家畜化)された生物は、1つまたは1つより多い祖先をもつことがある。典型的には、栽培化植物は1つまたは複数の祖先をもつことがあるのに対して、家畜化動物は、通常、単一の祖先のみをもつ。
用語「商業的にもしくは審美的に重要な形質」は、当該形質の原因となるポリペプチドを調整することも可能な改良された生物または作用物質の開発、またはそれぞれのポリヌクレオチドに関連する情報(例えば、物理的または生化学的データ)を、それの分析が提供可能な植物または動物のような栽培品種化(家畜化)生物に存在する形質を指すのに、本明細書では使われる。その商業的にもしくは審美的に重要な形質は、当該祖先に比べて、独特で、増強され、または変えられていてもよい。「変えられる」により、その重要な形質が、当該祖先に観察される形質とは定性的にまたは定量的に異なることを意味する。
用語「KA/KS型方法」は、(非同義および同義部位を決定する、より厳密な方法を含め)相同遺伝子における非同義置換および同義置換の数の間の、比率として(常にではないが)しばしば示される差を評価する方法を意味する。これらの方法は、非限定的にKA/KS,dN/dS,DN/DSを含む、いくつかのシステム名称を用いて呼ばれる。
用語「進化的に有意の変化」および「適応的進化変化」は、選択圧の緩和または正の選択圧のいずれかに帰されることがあり得る2つの生物、種、亜種、品種、栽培品種、および/または株間の、1つまたは1つより多いヌクレオチドまたはペプチド配列変化(類)を指す。進化的に有意の変化の存在を決定するための1つの方法は、KA/KS比を測定することのような、KA/KS型分析法を適用することである。典型的には、1.0またはそれより大きいKA/KS比が、進化的に有意の変化と考えられる。
厳密に言うと、正確に1.0のKA/KS比は選択圧の緩和(中立進化)を示し、そして1.0より大きいKA/KS比は正の選択を示す。しかし、GenBank中のESTsおよび他の公開データベース類は、ある程度の配列エラーをもつことはよくあり、そしてたとえ僅かの正しくないヌクレオチドでも、KA/KS比に影響することがあるのは、一般に認められている。このため、0.75のような低いKA/KS比をもつポリヌクレオチドは、慎重に再配列決定し、そして選択圧の緩和(中立の進化的に有意の変化)、正の選択圧(正の進化的に有意の変化)、または負の選択圧(進化的に保守的な変化)について再評価されることもあり得る。
用語「正の進化的に有意の変化」は、他の関係生物と比較した場合に正である適応変化を結果として生じる、特定の生物、種、亜種、品種、栽培品種、または株における進化的に有意の変化を意味する。正の進化的に有意の変化の事例は、作物植物で収穫の増加をもたらした変化である。上述のように、正の選択は1.0より大きいKA/KS比で示される。好ましさの増加に伴い、KA/KS値は、1.25,1.5および2.0より大きい。
用語「中立の進化的に有意の変化」は、その祖先生物に比べて栽培品種化(家畜化)生物に現れ、そして中立の条件下で発達した、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド変化を指す。中立の進化的変化は、約0.75−1.25の間の、好ましくは約0.9および1.1の間の、そして最も好ましくは約1.0に等しい、KA/KS値により証明される。また、中立進化の場合、推定されるような「方向性」はない。当該遺伝子は、制約なしに自由に変化を蓄積するので、祖先版も栽培品種化(家畜化)版も両方とも、相互に関して変化しつつある。
用語「抵抗性の」は、ある生物が、好ましくは非抵抗性生物と比較した場合、疾患状態および/または当該疾患の発生を避ける、あるいはその程度を減らす、能力を示すことを、意味する。
用語「感受性」は、ある生物が、好ましくは抵抗性であることがわかっている生物と比較した場合、疾患状態および/または当該疾患状態の発生を避ける、あるいはその程度を減らす、ことができないことを、意味する。
抵抗性および感受性は個体ごとに変動すること、また本発明の目的のために、これらの用語は種内の個体の群にも適用すること、は言うまでもない、そして抵抗性および感受性の比較は、種内比較に使われることもあるが、一般には種間の相違を全体として指す。野生親類の分類学的分類は相当変わりやすい。したがって、分類学的分類に基づく種差は、分類学的分類が変われば、種内差に変わることもある。
用語「ストレス抵抗性」は、乾燥、疾患、有害生物(昆虫、植食動物、および微生物を非限定的に含む)、高塩濃度、および当該植物の恒常性を乱す傾向があり、修正されなければ、障害、疾患、または死をもたらす恐れもある、内的または外的な、他の不利な刺激に、耐える能力を指す。
用語「相同の」または「相同体」または「オルソログ」は、当該技術分野では知られており、また十分理解されており、そして共通祖先を共有する関係配列を指し、また配列同一性の程度に基づき決定される。これらの用語は、1つの種、亜種、品種、栽培品種、または株に見られる遺伝子と、もう1つの種、亜種、品種、栽培品種、または株の対応または相当する遺伝子との間の関係を表す。本発明の目的のために、相同配列が比較される。「相同配列類」または「相同体類」または「オルソログズ」は、機能的に関係があると、考えられ、信じられ、または知られている。機能的関係は、(a)配列同一性の程度;(b)同一のまたは同様な生物機能、を非限定的に含む多くの仕方の何れか1つで示してもよい。好ましくは(a)および(b)の両方が示される。配列同一性の程度は、変動してもよいが、(当該技術分野で知られる標準配列アラインメントプログラムを用いる場合)好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約85%である。相同性は、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編,1987)補遺30,節7.718,表7.71で論考されているような、当該技術分野で容易に入手できるソフトウエアプログラムを用いて決定可能である。好ましいアラインメントプログラムは、Mac Vector(Oxford Molecular Ltd,オックスフォード、英国)およびALIGN Plus(Scientific and Educational Software,ペンシルバニア)である。もう1つの好ましいアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターを用いるSequencher(Gene Codes,Ann Arbor,ミシガン)である。
用語「ヌクレオチド変化」は、当該技術分野でよく理解されているように、ヌクレオチドの置換、欠失、および/または挿入を指す。
「ハウスキーピング遺伝子」は、当該技術分野ではよく理解されている用語で、成長、分裂、静止、代謝、および/または死を、非限定的に含む、一般的な細胞機能に関連する遺伝子を意味する。「ハウスキーピング」遺伝子は、一般に、1つより多い細胞型で見られる機能を遂行する。それに対して、細胞特異的遺伝子は、一般に、特定の細胞型および/またはクラスで、機能を遂行する。
用語「作用物質」は、本明細書で使われる場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能を調整する、単純または複雑な有機または無機分子のような生物学的または化学的化合物、ペプチド、タンパク質、またはオリゴヌクレオチド、を意味する。膨大な一連の化合物が合成可能であり、例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチドのようなオリゴマー、またさまざまなコア構造に基づく合成有機および無機化合物があり、そしてこれらも、用語「作用物質」に含まれる。加えて、植物または動物抽出物および同類物のような、さまざまな天然源は、スクリーニング用の化合物を提供することも可能である。化合物は、単独で、または相互に組み合わせて、試験してもよい。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの「機能を調整すること」という用語は、作用物質を添加しない場合に比較して、当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能が変更されることを意味する。調整は、機能に影響する任意のレベルで生じてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能は、直接的または間接的であってもよく、そして直接的にまたは間接的に測定してもよい。
「ポリヌクレオチドの機能」は、複製;翻訳;発現パターン(類)を非限定的に含む。ポリヌクレオチド機能はまた、当該ポリヌクレオチド内でコードされるポリペプチドに随伴する機能を含む。例えば、ポリヌクレオチドに作用して、タンパク質発現、立体配座(conformation)、折りたたみ(folding)(または他の物理的特性)、(リガンドのような)他の部分(moieties)への結合、活性(または他の機能特性)、タンパク質の構造または機能の調節および/または他の側面、に影響する作用物質は、ポリヌクレオチド調整機能をもつと考えられる。
「ポリペプチドの機能」は、立体配座、折りたたみ(または他の物理的特性)、(リガンドのような)他の部分への結合、活性(または他の機能特性)、および/またはタンパク質の構造または機能の他の側面、を非限定的に含む。例えば、ポリペプチドに作用して、その立体配座、折りたたみ(または他の物理的特性)、(リガンドのような)他の部分への結合、活性(または他の機能特性)、および/またはタンパク質の構造または機能の他の側面、に影響する作用物質は、ポリペプチド調整機能をもつと考えられる。有効な作用物質がポリペプチドの機能を調整するように働く仕方は、1)立体配座、折りたたみ、または他の物理的特性を変えること;2)その天然リガンドに対する結合強度を変えること、またはリガンドへの結合の特異性を変えること;および3)当該ポリペプチドの活性を変更すること、を非限定的に含む。
用語「標的部位」は、単一のアミノ酸であってもよく、および/または、構造性および/または機能性モチーフ、例えば、結合部位、二量体化ドメイン、または触媒活性部位の一部である、ポリペプチド中の場所を意味する。標的部位は、治療剤のような作用物質との直接的または間接的相互作用に役立つことも可能である。
用語「分子差」は、任意の構造性および/または機能性差異を含む。そうした差異を検出するための方法ならびにそうした差異の事例は、本明細書に記載されている。
「機能性効果」は、当該技術分野では周知の用語で、直接的であれ間接的であれ、活性の任意のレベルで示される任意の効果を意味する。
用語「収穫の容易さ」は、消費または他の商業的処理のために構造体または部分(例えば、果実、葉、根)の手作業のまたは自動の収集を容易にする、植物特性または特徴を指す。
用語「収量」は、食物用、治療用、獣医用または他の市場用にヒトによる使用のために利用可能な植物または動物の組織または材料の量を指す。
用語「増強された経済的生産性」は、所望の特徴を改良するために、商業的にもしくは審美的に重要な形質を調整する能力を指す。収量の増加およびストレス耐性の亢進は、増強された経済的生産性の2つの例である。
II. 当該技術分野で知られる一般的手順
本発明の目的のための、栽培品種化(家畜化)植物または動物またはその祖先からのポリヌクレオチドの来源は、任意の適当な来源、例えば、ゲノム配列またはcDNA配列であってもよい。好ましくは、cDNA配列が比較される。タンパク質コード配列は、本明細書に記載されたもののような利用可能な私的、公開および/または商業データベースから入手可能である。これらのデータベースは、進行中の研究努力により産生された分子配列データの貯蔵所として役立つ。あるいは、タンパク質コード配列は、例えば、当該技術分野で周知の方法に従って、細胞中で発現されたmRNAから逆転写されたcDNAの配列決定から、またはPCR増幅後に、得てもよい。あるいは、ゲノム配列を、配列比較のために使ってもよい。ゲノム配列は、利用可能な公開、私的、および/または商業データベースから、またはゲノムDNAライブラリーの配列決定から、またはPCR後にゲノムDNAから、入手可能である。
いくつかの態様では、当該cDNAは、一定の発生段階における組織、または当該生物をある環境条件にさらした後に得た組織から、得たmRNAから調製される。本発明の配列比較に用いられるcDNAライブラリーは、当該技術分野の文献に十分に説明されている慣用のcDNAライブラリー構築技術を用いて、構築可能である。全mRNAは、cDNA類を逆転写するための鋳型として使われる。転写されたcDNA類は、適切なベクター中へサブクローン化し、cDNAライブラリーを確立する。確立されたcDNAライブラリーは、完全長cDNA含量のために最大化されたものでもよいが、完全長に達しないcDNA類も使用してよい。さらに、配列頻度は、例えば、Bonaldoら(1996)Genome Research 6:791−806に従って、標準化可能である。当該構築cDNAライブラリーからランダムに選択されたcDNAクローンは、標準自動配列決定技術を用いて配列決定可能である。好ましくは、完全長cDNAクローン類を配列決定に使用する。cDNAライブラリーからのcDNAクローン類の全体または大きな部分のいずれかを配列決定してもよいが、単一cDNA、または数cDNAクローンのようにできるだけ少なく配列決定することにより、本発明のいくつかの態様を実行することも可能である。
本発明の1つの好ましい実施態様において、配列決定予定のcDNAクローン類を、それらの発現特異性に従って、前選択可能である。特異的に発現される活性遺伝子に対応するcDNA類を選択するために、当該cDNA類は、同一動物の他の器官、組織または細胞から得られるmRNA類を用いて、差引きハイブリッド形成法(subtraction hybridization)にかけることが可能である。適切な厳格性および濃度をもつ二三のハイブリッド形成条件下で、非組織特異的mRNA類とハイブリッド形成し、したがって「ハウスキーピング」遺伝子を表すらしいそれらのcDNA類は、当該cDNAプールから排除されよう。したがって、配列決定予定の残るcDNA類は、組織特異的機能と関連している可能性が一層高い。差引きハイブリッド形成の目的のための、非組織特異的mRNA類は、1つの器官から、または好ましくは異なる器官および細胞の組合わせから得ることが可能である。非組織特異的mRNA類の量を最大にして、組織特異的cDNA類を飽和させる。
あるいは、オンラインデーターベースからの情報を使って、特定の機能と関連している可能性が一層高いcDNA類に対する優先順位を選択する、または与えることが可能である。例えば、配列決定のための祖先cDNA候補は、候補栽培品種化(家畜化)生物cDNA配列から設計されたプライマーを使ってPCRにより選択可能である。候補栽培品種化(家畜化)生物cDNA配列は、例えば、骨格筋のような特定の組織にのみ見られるもの、あるいは特定の機能に重要であるらしい遺伝子類に対応するものである。そうした組織特異的cDNA配列は、cDNA配列についての発現プロファイルおよび/または生物活性に関する情報が指定されている、オンライン配列データベースを検索することにより、得ることが可能である。
既知栽培品種化(家畜化)生物の遺伝子に対する祖先相同体(類)の配列は、PCR法(例えば、GeneAmp PCR System 9700 thermocyclers(Applied Biosystem,Inc.)を用いて)のような、当該技術分野での標準的方法を用いて得てもよい。例えば、配列決定用の祖先cDNA候補は、候補栽培品種化(家畜化)生物cDNA配列から設計されたプライマーを使ってPCRにより選択可能である。PCRのために、プライマーは、PRIMERR(Whitehead Institute)のような公共的に入手可能なプライマーデザインプログラムを含む、当該技術分野の標準法を用いて、栽培品種化(家畜化)生物の配列から、作ってもよい。増幅された祖先配列は、次に、自動配列決定装置(Applied Biosystems,Inc.)のような当該技術分野の標準的な方法および装置を用いて、配列決定してもよい。同様に、祖先遺伝子模倣物は、栽培品種化(家畜化)生物における対応遺伝子を得るために、使用も可能である。
III. 栽培品種化(家畜化)生物における正に選択されたポリヌクレオチドの同定
好ましい態様で、本明細書に記載された方法は、農業的に重要な栽培品種化植物において興味ある形質を制御する遺伝子を同定するために、適用が可能である。人類は、これらの形質を制御する遺伝子類の知識なしに、数千年間、栽培品種化植物を育ててきた。関与する特定の遺伝的機構の知識は、望ましいまたは増強された形質をもつ植物を作出するのに、分子レベルでの非常に迅速かつ直接的な介入を可能にするであろう。
人類は、人工選択を通じて、作物植物に強い選択圧を与えてきた。この圧は、栽培品種化生物およびそれらの野生祖先の相同遺伝子類の間の進化的に有意の変化に反映されている。僅か数遺伝子、例えば種当り10から15が、栽培品種化作物植物で商業的に興味ある形質を制御していることが、見いだされている。これら少数の遺伝子を、植物分子生物学の標準的方法を通じて同定することは、極めて困難であった。本明細書に記載されたKA/KSおよび関連分析は、興味ある形質を制御する遺伝子を同定できる。
興味ある任意の作物植物について、cDNAライブラリーは、栽培種または亜種およびその野生祖先から、構築可能である。1999年1月29日出願のUSSN09/240,915に記載されているように、それぞれのcDNAライブラリーは、相同ポリヌクレオチドを同定するために、相互に“BLAST化”されている。あるいは、熟練技術者は、cDNAライブラリーを構築せずに、商業的に、および/または公共的に利用可能なゲノムまたはcDNAデータベースにアクセス可能である。
次に、KA/KSまたは関連分析は、選択圧下で急速に進化した、選択された遺伝子を同定するために、実施される。次いで、これらの遺伝子は、商業的または審美的興味のある形質に関与しているかどうかを決定するために、標準的な分子およびトランスジェニック植物方法を用いて、評価される。興味ある遺伝子類は、それから、例えば、ランダムまたは部位特異的変異誘発により操作され、新しい、改良された品種、亜種、株または栽培種を開発する。
本発明の一般的方法は次のとおりである。要するに、ヌクレオチド配列は、栽培品種化生物および野生祖先から得る。当該栽培品種化生物および祖先のヌクレオチド配列を相互に比較し、相同である配列を同定する。当該相同配列を分析して、栽培品種化生物および祖先間で核酸配列差をもつものを同定する。次に、分子進化分析を実施して、当該差の進化的有意性を定量的におよび定性的に評価する。正に選択された遺伝子について、外群(outgroup)分析を行い、栽培品種化生物で(または祖先で)正に選択されたそれらの遺伝子を同定することが可能である。次いで、当該配列は、分子的/遺伝的同一性および生物活性に関して特徴解明をする。最後に、当該情報を使って、当該遺伝子によりコードされたポリペプチドの生物機能を調整できる作用物質の同定が可能である。
本発明の一般的方法は、祖先生物および栽培品種化生物のタンパク質コードヌクレオチド配列を比較することを含む。バイオインフォマティクスを当該比較に適用し、進化的に有意な変化(類)であるヌクレオチド変化または変化類を含む配列を選択する。本発明は、何らかの進化的利点を与えるように進化した遺伝子の同定およびその特定の進化した変化の同定を可能にする。好ましい態様で、栽培品種化生物はOryza sativaであり、そして野生祖先はOryza rufipogonである。本発明の場合、タンパク質コードヌクレオチド配列は、標準的配列決定技術によりO.rufipogonクローンから得た。
栽培品種化生物およびその野生祖先のタンパク質コード配列を比較して、相同配列を同定する。この比較を完結するための任意の適切な機構が、本発明により使用できる。アラインメントは、手作業で、またはソフトウエア(適当なアラインメントプログラムの事例は当該技術分野で知られている)により実施してもよい。好ましくは、祖先からのタンパク質コード配列を、データベース検索、例えばBLAST検索を経由して、栽培化種配列に比較する。高スコア“ヒット”すなわちBLAST分析後に有意の類似性を示す配列を回収し、分析することになる。有意の類似性を示す配列は、少なくとも約60%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%の配列同一性をもつものでもよい。好ましくは、約80%より大きな同一性を示す配列が、さらに分析される。データベース検索を経由して同定された相同配列は、Higginsら(1992)CABIOS 8:189−191による、普通に用いられる単純なアラインメントプログラム、CLUSTAL Vのような、当該技術分野で知られ、そして入手可能な、配列アラインメント方法およびプログラムを用いて、それらの全体を整列してもよい。
本発明は、栽培品種化生物のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を同定するための方法が提供するが、ここで当該ポリペプチドは、当該栽培品種化生物の野生祖先に比較して、当該栽培品種化生物で改良された収量に関連する、または関連すると思われており、前記方法は、a)当該栽培品種化生物のポリペプチドコードヌクレオチド配列を、当該野生祖先のポリペプチドコードヌクレオチド配列に比較すること;そしてb)当該野生祖先の対応する配列に比較して、ヌクレオチド変化を含む、当該栽培品種化生物のポリヌクレオチド配列を選択すること、の工程を含み、ここで当該変化は進化的に有意で、そしてここで当該栽培品種化生物のポリヌクレオチドが同定される。好ましい態様では、収量の改良に関係するポリペプチドは、EG307ポリペプチドである。
この場合、例えば、O.rufipogonから得たヌクレオチド配列を、相同配列を同定するために、GenBankでのO.sativa ESTsの検索で、クエリー配列として用いた。注目すべきは、完全タンパク質コードヌクレオチド配列が必要ないことである。実際、部分cDNA配列を比較してもよい。興味ある配列が、下記の方法により同定されれば、別のクローニングおよび/またはバイオインフォマティクス方法を用いて、興味ある遺伝子またはタンパク質の全コード配列を得ることも可能である。
あるいは、栽培品種化生物とその祖先との間のタンパク質コード配列の配列決定および相同性比較は、新たに開発された配列決定チップ技術を用いることにより、同時に実施してもよい。例えば、Ravaら 米国特許第5,545,531号を参照されたい。
栽培品種化生物および祖先の整列されたタンパク質コード配列は、特定部位におけるヌクレオチド配列差異を同定するために、分析される。ここでも、本分析を達成するために任意の適当な方法が、本発明により使用できる。ヌクレオチド配列差異が全くなければ、当該祖先タンパク質コード配列は、通常それ以上分析されない。検出された配列変化は、普通、そして好ましくは、最初に正確さをチェックされる。好ましくは、最初のチェックは、当該技術分野でいずれもそしてすべてが知られている、1つまたは1つより多くの下記の工程の実施を含む:(a)祖先および栽培品種化生物配列間に変化がある点を見いだすこと;(b)祖先または栽培品種化生物に独特と思われる塩基が、当該コールド(called)塩基に特異的な強い鮮明なシグナルに対応するかどうかを決定するために、当該配列フルオログラム(クロマトグラム)をチェックすること;(c)配列変化に対応する1つ以上の栽培品種化生物配列があるかどうかを見るために、当該栽培品種化生物ヒットをチェックすること。同じ遺伝子について、祖先配列中のヌクレオチドは異なる位置に、同じヌクレオチドをもつ複数の栽培品種化生物配列エントリーが存在すれば、当該栽培品種化生物配列が正確であること、そしてその変化が有意であること、の独立した裏付けとなる。そうした変化は、これらのヌクレオチド配列変化が、そのコード化タンパク質のアミノ酸配列中の変化をもたらすかどうかを決定するために、データベース情報および当該遺伝暗号を用いて、調べられる。「ヌクレオチド変化」の定義が明らかにしているように、本発明は、祖先からの対応配列に比較した場合に、栽培品種化生物のタンパク質コードポリヌクレオチド配列に、置換、欠失、または挿入のいずれか、少なくとも1つのヌクレオチド変化を、包含する。好ましくは、当該変化はヌクレオチド置換である。さらに好ましくは、1つ以上の置換が、その同定された配列中に存在し、そして分子進化分析にかけられる。
数種の異なる分子進化分析すなわちKA/KS型方法のいずれかを採用して、栽培種遺伝子配列と対応する祖先のものとの間の前記同定ヌクレオチド変化の進化的有意性を定量的にそして定性的に評価することが可能である。KreitmanおよびAkashi(1995)Annu.Rev.Ecol.Syst.26:403−422;Li,Molecular Evolution,Sinauer Associates,Sunderland,ミネソタ、1997。例えば、タンパク質への正の選択(すなわち、分子レベル適応進化)は、同義部位当りの同義置換(KS)に対する非同義部位当りの非同義ヌクレオチド置換(KA)の比のペアワイズ比較により、タンパク質コード遺伝子中に検出可能である(Liら,1985;Li,1993)。KAおよびKSの任意の比較を用いてもよいが、これら2つの変数を比として比較するのが、特に便利であり、そして最も有効である。配列は、標準的な統計方法を用いて、KAおよびKS間の統計的に有意な差を示すことにより同定する。
本発明の場合、O.rufipogonおよびO.sativaからの相同配列が、同定された。1つのO.rufipogonクローン、PBI0307H9,配列番号31およびGenBank中のO.sativaの配列の比較は、高いKA/KS比を明らかにした。O.sativaのいくつかの異なる株のさらなるクローニングおよびPCRを行って、EG307と名付けられた全遺伝子を得たが、その結果、当該全遺伝子配列にKA/KS分析を行うことができた。これらの手順は実施例10に詳述されている。O.rufipogonのEG307の完全配列、配列番号28、およびO.sativa cv.Nipponbare 1の完全配列,配列番号25を、図1に示す。対応するタンパク質配列、配列番号30および配列番号27、を図2に示す。KA/KS比のまとめを、実施例11の表1に示す。いくつかの株は、O.rufipogonと栽培株との交雑育種のために、O.rufipogonにより類似していた。いくつかの株の高いKA/KS比は、進化的に有意の変化を示している。
好ましくは、LiらによるKA/KS分析コンピュータープログラムを用いて本発明を実行するが、種間の正に選択された遺伝子を検出できる他の分析プログラムも使用可能である。Liら(1985)Mol.Biol.Evol.2:150−174;Li(1993);J.Mol.Evol.36:96−99;MessierおよびStewart(1997)Nature 385:151−154;Nei(1987)Molecular Evolutionary Genetics(ニューヨーク,Columbia University Press)も参照されたい。比に換算して遺伝子の相同タンパク質コード領域間で同義部位当りの同義置換の割合と非同義部位当りの非同義置換の割合との比較を含むKA/KS法は、進化の際、適応選択により、または中立選択により、駆動されることがあり得る配列置換を同定するのに使われる。同義(「サイレント」)」置換は、遺伝暗号の縮重のため、コードされるアミノ酸配列に変化をもたらさないものであり;非同義置換はアミノ酸交換を生じる。各タイプの変化の程度は、それぞれ非同義部位置当りの非同義置換および同義部位当りの同義置換の数である、KAおよびKSとして推定可能である。KA/KSの計算は、手作業でも、あるいはソフトウエアを用いることによっても、実施可能である。適当なプログラムの例はMEGA(Molecular Genetics Institute,Pennsylvania State University)である。
KAおよびKSを推定する目的のために、完全または部分タンパク質コード配列を使って、非同義および同義部位だけでなく同義および非同義置換の総数も計算する。分析するポリヌクレオチド配列の長さは、任意の適切な長さでよい。好ましくは、何らかのおよびすべての有意な変化を決定するためには、全コード配列を比較する。Li93(Li(1993)J.Mol.Evol.36:96−99)またはINAのような公共的に入手可能なコンピュータープログラムを使って、すべてのペアワイズ比較についてKAおよびKS値を計算することが可能である。本分析は、少数の重要な変化が全体配列によりマスクされないように、「スライディングウインドウ(引違い窓)」方式で配列を調べるためにさらに応用してもよい。「スライディングウインドウ」は、当該遺伝子の連続重複サブセクションの検査を指す(サブセクションは任意の長さでよい)。
例えば、本発明で同定された遺伝子EG307のスライディングウインドウKA/KS分析は、O.rufipogonに比較したとき、O.sativa株の多くでEG307の5’末端に多数の非同義変化があることを示した。当該遺伝子の3’末端は、当該株の全部で低い比をもっていた。これらの手順および結果は、実施例11および表2−7に詳述されている。
非同義および同義置換の割合の比較は、KA/KS比により表される。KA/KSは、検討中の配列に適応進化が働いた程度の反映であることが、示されている。コード配列の完全長または部分セグメントを、KA/KS分析に使用可能である。KA/KS比が高ければ高いほど、配列は適応進化を受けてきたこと、そして当該非同義置換は進化的に有意であることの、可能性が多い。例えば、MessierおよびStewart(1997)を参照されたい。好ましくは、KA/KS比は、少なくとも約0.75、より好ましくは少なくとも約1.0,より好ましくは少なくとも約1.25,より好ましくは少なくとも約1.50,またはより好ましくは少なくとも約2.00である。好ましくは、統計分析は、ステューデントのt検定およびYang(1998)
Mol.Biol Evol.37:441−456により記載された尤度比検定のような、標準法を非限定的に含み、すべての高KA/KS比について実施する。
相同配列のペアワイズ比較について、1より有意に大きいKA/KS比は、偶然だけの結果として予測されるより、また当該比が1より小さい場合に普通観察されるパターンに対比して、正の選択が、より多数のアミノ酸交換を固定したことを、強く示唆している。Nei(1987);HughesおよびHei(1988)Nature 335:167−170;MessierおよびStewart(1994)Current Biol.4:911−913;KreitmanおよびAkashi(1995)Ann.Rev.Eco.Syst.26:403−422;MessierおよびStewart(1997)。1より少ない比は、負の、または精製選択の役割を一般には表している:すなわち、機能的で、有効なタンパク質の一次構造を変えないままにする強い圧力がある。約1の比は、中立条件下の進化を示す。
KA/KS比を計算するすべての方法は、祖先および栽培品種化生物からの相同遺伝子のタンパク質コード領域についての同義部位当りの同義置換の数に対する非同義部位当りの非同義置換の数のペアワイズ比較に基づいている。各方法は、「多重ヒット」(すなわち、同一部位における1つ以上のヌクレオチド置換)を推定するために、異なる補正を履行している。各方法はまた、進化的時間に亘ってどのようにDNA配列が変化するかについて、異なるモデルを用いている。それゆえ、好ましくは、異なるアルゴリズムからの結果の組合わせは、正に選択された遺伝子の検出のための感度のレベルおよび当該結果における信頼度を増加するために、用いられる。
好ましくは、KA/KS比は、パラソロガス遺伝子ペア(すなわち、遺伝子重複の結果である遺伝子ではなく、種分化の結果生じる遺伝子)ではなく、オルソロガス遺伝子ペアについて計算するべきである;MessierおよびStewart(1997)。この区別は、系統樹構築を可能にする、他の祖先との追加比較を実施することにより、行ってもよい。樹構築に使われる場合、オルソロガス遺伝子は、既知「種樹」を生じるはずである、すなわち、既知の生物学的樹を回復する樹を産生するはずである。それに対して、パラソロガス遺伝子は、既知の生物学的樹に違反すると思われる樹を生じるはずである。
本明細書に記載された方法は、タンパク質コード配列に機能的に関係する祖先または栽培品種化生物ポリヌクレオチド配列の同定をもたらすことがあり得るのは、言うまでもない。そうした配列は、非限定的に、非コード配列またはタンパク質をコードしないコード配列を含むこともあり得る。これらの関係配列は、イントロンまたは(プロモーターおよびエンハンサーのような調節エレメントを含む)5’および3’フランキング配列のような、ゲノム中のタンパク質コード配列に、例えば、物理的に隣接する可能性もある。これらの関係配列は、入手可能な公開、私的および/または商業的ゲノムデータベースの検索を経由して、または、別途、プローブとしてタンパク質コード配列で当該生物のゲノムライブラリーをスクリーニングし、配列決定することにより、得てもよい。関係コード配列を用いて非コード配列を得るための方法および技術は、当業者には周知である。
KA/KS分析のような分子進化分析により検出される進化的に有意のヌクレオチド変化は、栽培品種化生物におけるそれらの独特な存在、またはこれらの変化が栽培品種化生物において独特である程度について、さらに検定することも可能である。例えば、栽培品種化遺伝子において同定された変化は、関連の種、亜種、または当該栽培品種化生物と共通の祖先をもつ他の生物の、他の配列中の存否について検定することも可能である。この比較(「外群分析」)は、正に選択された遺伝子が(当該祖先と違って)問題の栽培品種化生物で正に選択されているかどうかの決定を可能にする。
例えば、EG307遺伝子中に同定された変化は、多数のO.sativa株にさまざまな程度で同定された。表2−7を参照されたい。加えて、EG307の相対物は、メイズ、Zea mays mays、その野生祖先テオシンテ、Zea mays parviglumis、およびメイズの野生親類、Z.diploperennisおよびZ.luxuriansにも同定された。実施例13および表9を参照されたい。コメおよびメイズのEG307は、ヌクレオチドレベルで多少違っていたが、タンパク質配列はずっと似ていた。コメおよびコーンはそれらの野生祖先から独立に栽培品種化されたことがわかっているが、一定のパターンが現れている:現代の作物(メイズまたはコメ)におけるアミノ酸交換の大多数は、当該祖先植物(テオシンテまたは祖先コメ)に比較して、電荷/極性の増加、溶解性の増加、および疎水性の減少を生じている。このパターンは、これら2つの独立の栽培化事象で、偶然に生じたとは非常に考えにくい。これは、これらの交換が、ヒトが加えた栽培化に対するのと同じような応答であったことを、示唆している。これは、EG307が、これら2つの穀物のヒト栽培化の結果として選択された、強い証拠である。
栽培化生物およびその祖先との間の少なくとも1つの進化的に有意な変化をもつ配列は、他の祖先タンパク質コード配列のPCR分析のためのプライマーとして使用可能であり、そして結果として生じるポリヌクレオチドを配列分析して、同じ変化が他の祖先に存在するかどうかを見る。これらの比較は、当該適応進化的変化が、他の祖先に比較して、当該栽培化系列に独特であるかどうか、または当該適応変化が、当該栽培化種および他の祖先に比較して、当該祖先に独特であるかどうか、についてのさらなる識別を可能にする。栽培化生物で検出されるが、他の祖先で検出されないヌクレオチド変化は、当該栽培化生物での適応進化的変化を表す可能性がさらに高い。あるいは、祖先で検出され、栽培化生物または他の祖先で検出されないヌクレオチド変化は、祖先の適応進化的変化を表す可能性が高い。比較に使われる他の祖先は、栽培化生物とのそれらの系統発生関係に基づいて選択可能である。そうした比較の統計的有意性は、確立された入手可能なプログラム、例えばMessierおよびStewart(1997)Nature 385:151−154により使われるようなt検定、を用いて決定してもよい。統計的に高いKA/KS比を示すそれらの遺伝子は、適応進化を受けた可能性が非常に高い。
有意な変化をもつ配列は、異なる栽培化集団からのゲノムにおいてプローブとして用いて、当該配列変化が1つ以上の栽培化集団により共有されているかどうかを見ることが可能である。異なる栽培化集団からの遺伝子配列は、データベースから、または、別途、多数の近縁関係のない多様な栽培化集団からのPCR増幅DNAの直接配列決定から、入手してもよい。異なる栽培化集団において同定された変化の存在は、当該変化の進化的有意性をさらに示すはずである。
種間に有意の変化をもつ配列は、当業者に知られた方法および技術を用いて、それらの分子的/遺伝的同一性および生物機能の点で、さらに特徴解明が可能である。例えば、当該配列は、公共的に入手可能なバイオインフォマティクスプログラムを用いて、当該生物のゲノム内で遺伝子的におよび物理的に位置づけが可能である。当該ヌクレオチド配列内に新たに同定された有意な変化は、当該生物の進化における当該遺伝子の有望な役割および独特の、増強した、変更された、機能性能力との有望な関連とを示唆することがあり得る。
本発明の技術を用いて、EG307と名付けられた、これまで知られなかった進化的に有意の遺伝子がコメで、実施例10に詳述されるように、発見されている。O.rufipogonおよび二三のO.sativa株の間で実施例11に記載のように行われたKA/KS分析は、表1に示すように進化的に有意の変化を示した。当該遺伝子は正に選択されていた。実施例12に記載されているように、いくつかの異なるコメ地図を用いて、EG307は、3番染色体上に存在する、1000粒重についてのQTLと関連するマーカーである、マーカーRZ672の約10cM以内にあることがわかった。(1000粒重は、1000個のランダムに選ばれた完全に充満した米粒の3つの異なる試料の重量(質量)である。)これは、米粒間に生じる重量の個々の変動を配慮した、収量の高感度尺度である。したがって、RZ672マーカーが、単一世代に乗換えのためにEG307から分離するのは、約10%のチャンスしかなく、EG307は収量増加の制御に重要な役割を果すことを強く示唆している。
やはり本発明の技術を用いて、EG1117と名付けられた、これまで知られなかった進化的に有意の遺伝子がコメで、実施例14に詳述されるように、発見されている。O.rufipogonおよび二三のO.sativa株の間で実施例14に記載のように行われたKA/KS分析は、表10に示すように進化的に有意の変化を示した。当該遺伝子は正に選択されていた。実施例13および14に記載されているように、いくつかの異なるコメ地図を用いて、EG1117は、3番染色体上に存在する、1000粒重についてのQTLと関連するマーカーである、マーカーRZ672と同じBAC上にあることがわかった。EG1117は、EG307から約2−3cMにある。
進化的に有意のKA/KS値およびマッピングデータの組合せから、当業者は、EG307およびEG1117は収量関連遺伝子であると、当然、結論できる。EG307のそしてEG1117の収量増加機能は、変異体またはトランスジェニック植物を作り、そして育てることにより、容易に確認可能である。別の方法は、コメ由来のEG307のおよびEG117配列を用いる関連分析(association analysis)および系統分析(pedigree analysis)を含み、メイズおよびその野生祖先からのEG307のおよびEG117遺伝子は、実施例13に詳述されるように、得られた。
当該同定配列をもつ推定遺伝子は、例えば、相同体検索により、さらに特徴解明してもよい。当該推定遺伝子と既知遺伝子との共通の相同性は、同じような生物的役割または機能を示す可能性がある。推定遺伝子配列を特徴解明するもう1つの模範的方法は、既知配列モチーフに基づくものである。ある種の配列パターンは、シグナル配列、DNA結合ドメイン、または膜貫通ドメインのような、特定の生物学的特性をもつタンパク質の領域をコードすることが知られている。
有意な変化をもつ同定配列はまた、当該遺伝子が組織または細胞型特異性によってどこで発現されるかを見ることによって、さらに評価が可能である。例えば、当該同定コード配列をプローブとして用い、当該配列の発現パターンを明らかにするはずのin situ mRNAハイブリッド形成を実施可能である。ある組織で発現される遺伝子は、その組織、例えば発生中の内胚乳組織に関連する重要な機能に関連するものなので、より優れた候補になる可能性がある。種メンバーの発生の各段階における当該遺伝子発現のタイミングも決定可能である。
配列特徴解明のもう1つの模範的方法として、有意な変化をもつ同定ヌクレオチド配列の機能的役割は、形質導入された(transfected)栽培化生物で、例えば、トランスジェニック植物または動物で、同定された遺伝子の異なる対立遺伝子について機能検定を実行することにより、査定可能である。植物機能検定の最近の例は、マイクロアレイ(microarrays)およびメタボライトプロファイリング(metabolite profiling)の使用を含むが、それぞれ、Sekiら、“完全長cDNAマイクロアレイを用いる乾燥および寒冷ストレス下の1300個のシロイヌナズナ(Arabidopsis)遺伝子の発現パターンのモニタリング”、Plant Cell 13:61−72(2001)を参照,およびRoessnerら、“メタボライトプロファイリングは、遺伝的にまたは環境的に修飾された植物系の網羅的なフェノタイピング(phenotyping)を可能にする”、Plant Cell 13:11−29(2001)を参照されたい。
配列特徴解明のもう1つの模範的方法として、コンピュータープログラムの使用は、栽培化生物および祖先からの相同タンパク質の三次元構造のモデリングおよび視覚化を可能にする。祖先タンパク質(類)においてどのアミノ酸が交換されているかの特定の正確な知識は、機能的な相違と関連することがあり得る構造変化の検出を可能にする。このように、モデリング技術の利用は、前項で論考した機能的役割の同定と密接に関連している。これらの技術の個別のまたは組合わせたものの使用は、本発明の一部を構成する。
前記方法により同定された栽培化生物の遺伝子は、共通の祖先を共有する他種における相同遺伝子を同定するために、使用可能である。例えば、メイズ、コメ、コムギ、アワ、モロコシ、および他の穀類は、共通の祖先を共有しており、コメで同定された遺伝子類は、これらの他のイネ科植物における相同遺伝子類を直接もたらすことも可能である。同様に、トマトとジャガイモは共通の祖先を共有しており、前記の方法によりトマトで同定された遺伝子類は、ジャガイモに相同体があることが予想され、そして逆の場合も同じである。
本発明はまた、植物細胞中の収量増加遺伝子を検出する方法も提供するが、それは:a)EG307遺伝子または長さ12ヌクレオチド、好ましくは30ヌクレオチドより大きい、その遺伝子の部分を、配列番号1、配列番号91、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号59、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号84、および配列番号85より成る群から選択される核酸分子と約50%またはそれより大きい配列同一性をもつ核酸分子配列の検出を提供するハイブリッド形成条件下で、当該植物細胞からのゲノムDNAの調製物と接触させること;そしてb)ハイブリッド形成を検出し、それによって収量増加遺伝子を同定することを含む。
本発明はまた、組み換え植物細胞ライブラリーから収量関連遺伝子を単離する方法も提供するが、それは:a)植物細胞DNAまたは組み換え植物細胞ライブラリーの調製物を提供すること;b)当該調製物または植物細胞ライブラリーを、50%またはそれより大きい配列同一性をもつ遺伝子の検出を提供するハイブリッド形成条件下で、検出可能標識化EG307保存性オリゴヌクレオチドと、接触させること;そしてc)当該検出可能標識との会合により収量関連遺伝子を単離することを含む。
本発明はまた、植物細胞DNAから収量関連遺伝子を単離する方法も提供するが、それは:a)植物細胞DNAの試料を提供すること;b)EG307遺伝子の保存領域に配列相同性をもつオリゴヌクレオチドのペアを提供すること;c)当該オリゴヌクレオチドのペアを、ポリメラーゼ連鎖反応仲介のDNA増幅に適した条件下で、植物細胞DNA試料に結合させること;そしてd)当該増幅収量関連遺伝子またはその断片を単離すること、を含む。
本明細書に記載の方法により同定された配列は、栽培化生物に独特の、増強された、または変更された機能性能力を調整すること、および/または、これらの配列を用いてこれらの能力における欠陥を補正すること、に役立つ作用物質を同定するために、使用可能である。これらの方法は、例えば、in vitro系、細胞ベースの発現系、およびトランスジェニック動物および植物系のような、当該技術分野で知られるスクリーニング技術を採用する。本発明により提供されるアプローチは、急速に進化した遺伝子を同定するだけなく、それらがもう1つの種に存在するので、あまりに毒性が強くないと思われるタンパク質にするようにできる調整も示す。
本発明はまた、EG307ポリペプチドを産生する方法も提供するが、それは:a)当該細胞中に発現のために位置づけされるEG307ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質導入された細胞を提供すること;b)当該ポリヌクレオチドを発現するための条件下で、当該形質導入細胞を培養すること;そしてc)当該EG307ポリペプチドを単離すること、を含む。
本発明はまた、植物細胞中の収量増加遺伝子を検出する方法も提供するが、それは:a)EG307 OR EG1117遺伝子または長さ12ヌクレオチドより大きい、好ましくは30ヌクレオチドより大きい、その遺伝子の部分を、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号109、配列番号110、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号116、配列番号117、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号145、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号154、配列番号155、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号166、配列番号167、および配列番号168より成る群から選択される核酸分子に約50%またはそれより大きい配列同一性をもつ、核酸分子配列の検出を提供するハイブリッド形成条件下で、当該植物細胞からのゲノムDNAの調製物と接触させること;そしてb)ハイブリッド形成を検出し、それによって収量増加遺伝子を同定することを含む。
本発明はまた、組み換え植物細胞ライブラリーから収量関連遺伝子を単離する方法も提供するが、それは:a)植物細胞DNAまたは組み換え植物細胞ライブラリーの調製物を提供すること;b)当該調製物または植物細胞ライブラリーを、50%またはそれより大きい配列同一性をもつ遺伝子の検出を提供するハイブリッド形成条件下で、検出可能に標識されたEG307 OR EG1117保存性オリゴヌクレオチドと接触させること;そしてc)当該検出可能標識との会合により収量関連遺伝子を単離することを含む。
本発明はまた、植物細胞DNAから収量関連遺伝子を単離する方法も提供するが、それは:a)植物細胞DNAの試料を提供すること;b)EG307またはEG1117遺伝子の保存領域に配列相同性をもつオリゴヌクレオチドのペアを提供すること;c)当該オリゴヌクレオチドのペアを、ポリメラーゼ連鎖反応仲介のDNA増幅に適した条件下で、植物細胞DNA試料に結合させること;そしてd)当該増幅収量関連遺伝子またはその断片を単離すること、を含む。
本明細書に記載の方法により同定された配列は、栽培化生物に独特の、増強された、または変更された機能能力を調整すること、および/または、これらの配列を用いてこれらの能力における欠陥を補正すること、に役立つ作用物質を同定するために、使用可能である。これらの方法は、例えば、in vitro系、細胞ベースの発現系、およびトランスジェニック動物および植物のような、当該技術分野で知られるスクリーニング技術を採用する。本発明により提供されるアプローチは、急速に進化した遺伝子を同定するだけなく、それらがもう1つの種に存在するので、あまりに毒性が強くないと思われるタンパク質にするようにできる調整も示す。
本発明はまた、EG307またはEG1117ポリペプチドを産生する方法も提供するが、それは:a)当該細胞中に発現のために配置されたEG307またはEG1117ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質導入された細胞を提供すること;b)当該ポリヌクレオチドを発現するための条件下で、当該形質導入細胞を培養すること;そしてc)当該EG307またはEG1117ポリペプチドを単離すること、を含む。
A. EG307ポリペプチド
本発明の1つの態様は、単離された植物EG307ポリペプチドである。本明細書で使われる場合、EG307ポリペプチドは、1つの態様で、約447アミノ酸の、そして図2に表された配列(配列番号6)をもつ、O.sativaポリペプチドに関係する(すなわち、構造類似性をもつ)ポリペプチドである。そうしたポリペプチドの最初の同定は、実施例に詳述されている。好ましいEG307ポリペプチドは、下記の遺伝子の少なくとも1つに、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドによりコードされる:すなわち、(a)O.sativa EG307ポリペプチドをコードする1つの遺伝子(すなわち、1つのO.sativa遺伝子);(b)O.rufipogon EG307ポリペプチドをコードする1つの遺伝子(すなわち、1つのO.rufipogon遺伝子);(c)Zea mays mays EG307遺伝子をコードする1つの遺伝子;(d)Zea mays parviglumis EG307ポリペプチドをコードする1つの遺伝子(すなわち、1つのZea mays parviglumis遺伝子);(e)Zea diploperennis EG307ポリペプチドをコードする1つの遺伝子(すなわち、1つのZ.diploperennis遺伝子);および(f)Zea luxurians EG307ポリペプチドをコードする1つの遺伝子(すなわち、1つのZ.luxurians)である。用語「1つの(a or an)」実体は、その実体の1つまたは1つより多く(one or more)を指す;例えば、1つの遺伝子は、1つまたは1つより多くの遺伝子、または少なくとも1つの(at least one)遺伝子を指すことを、指摘できる。それ自体、用語「1つの(a or an)」、「1つまたは1つより多くの」および「少なくとも1つの」は、本明細書では互換的に使用可能である。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「もつ(having)」は、互換的に使用可能であることも、指摘できる。
本明細書で使われる場合、厳格なハイブリッド形成条件は、オリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチドが、同じような核酸配列をもつ分子を同定するために使われる、標準的ハイブリッド形成条件を指す。そのような標準的条件は、例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Labs Press,1989に開示されている。そうした条件の例は、本出願の実施例部分に提示されている。
本明細書で使われる場合、O.sativa EG307遺伝子は、当該遺伝子によりコードされるO.sativa EG307ポリペプチドの産生を制御する、(非限定的に、転写、翻訳、または翻訳後制御領域のような)調節領域、ならびにコード領域そのもののような、天然のO.sativa EG307遺伝子に関係するすべての核酸配列を含む。1つの態様で、O.sativa EG307遺伝子は、核酸配列:配列番号4を含む。核酸配列:配列番号4は、その産生が実施例に開示されているcDNA(相補的DNA)ポリヌクレオチドの推定配列を表す。核酸配列決定技術は、全くエラー無しではないので、配列番号4(ならびに本明細書に提示された他の配列)は、せいぜい、本発明のO.sativa EG307ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの見掛けの核酸配列を表すことに、注意すべきである。
もう1つの態様で、O.sativa EG307遺伝子は、配列番号4に同様ではあるが、同一ではない配列を含む、対立遺伝子変異体であってもよい。配列番号1を含むO.sativa EG307遺伝子の対立遺伝子変異体は、その活性が、同じ生化学的または発生的過程に関するゲノム中の1つの遺伝子座(または複数の遺伝子座)、および/または、配列番号4を含む遺伝子と本質的に同じ遺伝子座に生じるが、例えば突然変異または組み換えにより起因する自然変異のために、同様ではあるが、同一ではない配列をもつ、遺伝子である。ゲノムは再構成を受けることがあるので、対立遺伝子の物理的配列は必ずしも常に同じとは限らない。対立遺伝子変異体は、典型的には、それらが比較されている遺伝子によりコードされるポリペプチドのものと同様な活性をもつ、ポリペプチドをコードする。対立遺伝子変異体はまた、当該遺伝子の5’または3’非翻訳領域に(例えば、調節制御領域に)変更を含むことがある。対立遺伝子変異体は、当業者には周知であり、当該ゲノムは、複相で、および/または2つまたはそれより多いコメ栽培品種または株を含む集団中にあるので、与えられたコメ栽培品種または株内に見られることが予想されるはずである。例えば、以下により詳しく記載予定の、配列番号18により表される核酸配列をもつO.sativaポリヌクレオチドは、O.sativaのKasalath株の対立遺伝子変異体を表すと、考えられている。
同様に、Zea mays mays EG307遺伝子は、当該遺伝子によりコードされるZ.mays mays EG307ポリペプチドの産生を制御する調節領域、ならびにコード領域そのもののような、天然のZ.mays mays EG307遺伝子に関係するすべての核酸配列を含む。1つの態様で、Zea mays mays EG307遺伝子は、核酸配列:配列番号66を含む。核酸配列:配列番号66は、その産生が実施例に開示されているcDNAポリヌクレオチドの推定配列を表す。もう1つの態様で、Zea mays mays EG307遺伝子は、配列番号66に同様ではあるが、同一ではない配列を含む、対立遺伝子変異体であってもよい。
本発明によれば、単離された、または生物学的に純粋な、ポリペプチドは、その自然環境から取り出されたポリペプチドである。したがって、「単離された」および「生物学的に純粋な」は、当該ポリペプチドが精製された程度を必ずしも反映するものではない。本発明の単離されたEG307ポリペプチドは、その天然源から得てもよく、組み換えDNA技術を用いて産生されてもよく、または化学合成により産生されてもよい。本発明のEG307ポリペプチドは、機能検定において天然EG307の機能を遂行するその能力により同定することも可能である。「天然EG307ポリペプチド」とは、O.sativa、O.rufipogon、Z.mays mays、および/またはZ. mays parviglumisの完全長EG307ポリペプチドを意味する。「機能検定において天然EG307の機能を遂行できる」という言葉は、当該ポリペプチドが機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約10%をもつことを、意味する。他の好ましい態様では、当該EG307ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約20%をもつ。他の好ましい態様では、当該EG307ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約30%をもつ。他の好ましい態様では、当該EG307ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約40%をもつ。他の好ましい態様では、当該EG307ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約50%をもつ。他の好ましい態様では、当該ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約60%をもつ。より好ましい態様では、当該ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約70%をもつ。より好ましい態様では、当該ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約80%をもつ。より好ましい態様では、当該ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約90%をもつ。機能検定の例は、本明細書のほかのところで詳述するように、抗体結合検定、または収量増加検定を含む。
本明細書で使われる場合、単離された植物EG307ポリペプチドは、完全長ポリペプチドまたはそうしたポリペプチドの任意の相同体であってもよい。EG307相同体の例は、当該相同体が天然のEG307活性をもつように、アミノ酸が、欠失され(例えば、ペプチドのように、当該ポリペプチドの断端版)、挿入され、逆向きにされ、置換され、および/または誘導体化され(例えば、糖付加、リン酸化、アセチル化、ミリスチル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化、および/またはグリセロホスファチジルイノシトールの付加による)ている、EG307ポリペプチドを含む。
1つの態様で、当業者に知られている技術を用いて、前記相同体が免疫原として動物に投与された場合、当該動物は、天然EG307ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープに対して、体液性および/または細胞性免疫応答を起すはずである。EG307相同体はまた、機能検定においてEG307の機能を遂行するそれらの能力により、選択されることも可能である。
植物EG307ポリペプチド相同体は、自然対立遺伝子変異または自然突然変異の結果のこともある。本発明のEG307ポリペプチド相同体はまた、当該ポリペプチドへの直接修飾、または、ランダムあるいは標的突然変異誘導を行うために、例えば古典的なまたは組み換えDNA技術を用いて、当該ポリペプチドをコードしている遺伝子への修飾を、非限定的に含む、当該技術分野では知られている技術を用いて、産生することも可能である。
本発明に従って、ミメトープ(mimetope)は、機能検定において本発明のEG307ポリペプチドの機能を遂行するように、本発明の単離植物EG307ポリペプチドの能力をまねることができる任意の化合物を指す。ミメトープの例は、本発明の単離ポリペプチドの1つまたは1つより多いエピトープをまねる少なくとも1つの結合部位を含む、抗イディオタイプ抗体またはそれらの断片;単離ポリペプチドの非ポリペプチド性免疫原部分(例えば、炭水化物構造体);および本発明の単離ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープに類似の構造をもつ、核酸を含む、合成または天然有機分子を、非限定的に含む。その種のミメトープは、本発明のポリペプチドのコンピューター作出構造を用いて、設計することも可能である。ミメトープはまた、オリゴヌクレオチド、ペプチド、または他の有機分子のような、分子のランダム試料を作製すること、そして対応する結合パートナーを用いるアフィニティークロマトグラフィー技術によりそうした試料をスクリーニングすることにより、得ることも可能である。
本発明のEG307ポリペプチド相同体の最小サイズは、対応する天然ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの相補的配列と安定なハイブリッドを形成できるポリヌクレオチドによりコードされるのに十分なサイズである。それゆえ、そうしたポリペプチド相同体をコードしているポリヌクレオチドのサイズは、核酸組成および当該ポリヌクレオチドと相補的配列との間の相同性パーセントに、ならびに、ハイブリッド形成条件それ自体(例えば、温度、塩濃度、およびホルムアミド濃度)に、依存する。安定なハイブリッドを形成するのに必要な相同性の程度は、当該相同配列が当該ポリヌクレオチド中に分散しているか、または当該ポリヌクレオチドの別個の領域に固まっている(すなわち、局在する)かどうかによって、変わることがある、ことも注意するべきである。そうしたポリヌクレオチドの最小サイズは、典型的には、当該ポリヌクレオチドがGCリッチであれば、長さは少なくとも約12ないし約15ヌクレオチド、そしてそれらがATリッチであれば、長さは少なくとも約15ないし約17塩基である。好ましくは、当該ポリヌクレオチドは長さが少なくとも12塩基である。
それゆえ、本発明のEG307ポリペプチド相同体をコードするのに使われるポリヌクレオチドの最小サイズは、長さが約12から約18ヌクレオチドまでである。そうしたポリヌクレオチドの最大サイズに関しては、実用上の制限以外に制限はなく、当該ポリヌクレオチドは、遺伝子の一部、全遺伝子、または複数の遺伝子、またはそれらの部分を含むことも可能である。同様に、本発明のEG307ポリペプチド相同体の最小サイズは、長さが約4から約6アミノ酸までで、好ましいサイズは、そうしたポリペプチドの完全長体、融合体、多価体、または機能の部分が所望されるかどうかによる。好ましくは、当該ポリペプチドは、長さが少なくとも30アミノ酸である。
任意の植物EG307ポリペプチドが、本発明の適したポリペプチドである。EG307ポリペプチドを単離する(天然ポリペプチドの単離または組み換えまたは合成技術による当該ポリペプチドの産生を含む)のに適した植物は、メイズ(トウモロコシ、maize),コムギ(小麦、wheat),オオムギ(大麦、barley),ライムギ(ライ麦、rye),アワ(粟、millet),エジプトマメ(ひよこ豆、chickpea),ヒラマメ(レンズ豆、lentil),アマ(亜麻、flax),オリーブ(olive),イチジクアーモンド(fig almond),ピスタチオ(pistachio)、クルミ(胡桃、walnut),ビート(beet),パースニップ(parsnip);オレンジ(orange),レモン(lemon),ライム(lime),グレイプフルーツ(grapefruit),タンジェリン(tangerine),ミンネオラ(minneola),およびタンジェロー(tangelo)を非限定的に含む、柑橘類(citrus fruits);サツマイモ(甘藷、sweet potato),マメ(豆、bean),エンドウ(えんどう豆、pea),チコリ(chicory),レタス(lettuce),キャベツ(cabbage),カリフラワー(cauliflower),ブロッコリ(broccoli),カブ(蕪、turnip),ラディッシュ(大根、radish),ホウレンソウ(spinach),アスパラガス(asparagus),タマネギ(onion),ニンニク(garlic),コショウ(pepper),セロリ(celery),カボチャ(squash),アメリカカボチャ(pumpkin),アサ(麻、hemp),ズッキーニ(西洋カボチャ、zucchini),リンゴ(apple),ナシ(pear),マルメロ(quince),メロン(meron),プラム(西洋すもも、plum),サクランボ(cherry),モモ(peach),ネクタリン(nectarine),アンズ(apricot),イチゴ(strawberry),ブドウ(grape),ラズベリー(rasberry),クロイチゴ(blackberry),パイナップル(pineapple),アボカド(avocado),パパイア(papaya),マンゴー(mango),バナナ(banana),ダイズ(大豆、soybean),トマト(tomato),モロコシ(sorghum),サトウキビ(sugarcane),テンサイ(砂糖大根、sugarbeet),ヒマワリ(sunflower),ナタネ(菜種、rapeseed),クローバー(clover),タバコ(tabacco),ニンジン(carrot),ワタ(綿、cotton),アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ、alfalfa),コメ(イネ、rice),ジャガイモ(馬鈴薯、potato),ナス(eggplant),キュウリ(cucumber),シロイヌナズナ(Arabidopsis);および針葉(coniferou)および落葉樹( deciduous trees)のような木本植物( woody plant)、を含み、コメおよびメイズが好ましい。EG307ポリペプチドを単離するための、好ましいコメ植物は、O.sativaのNipponbare 1および2,Lemont,IR64,Teqing,Azucena,Kasalath 1,2,3および4株である。
本発明の好ましい植物EG307ポリペプチドは、植物で発現または調整された場合、当該植物の収量を増加させることができる化合物である。
本発明の1つの態様は、融合セグメントに付着したEG307ポリペプチド含有ドメインを含む融合ポリペプチドである。本発明のEG307ポリペプチドの一部としての融合セグメントの包含は、生産、貯蔵、および/または使用中の当該ポリペプチドの安定性を増強することも可能である。当該セグメントの特性によって、融合セグメントはまた、そうした融合セグメントを含むEG307ポリペプチドで免疫された動物により始動される免疫応答を亢進するために、免疫賦活剤として働くこともある。さらに、融合セグメントは、結果として生じた融合ポリペプチドの、アフィニティークロマトグラフィー用いる精製を可能にするような、EG307ポリペプチドの精製を簡易化するための手段として、機能することも可能である。適当な融合セグメントは、所望の機能(例えば、安定性の増加を与える、ポリペプチドへの免疫原性の増加を与える、および/またはポリペプチドの精製を簡素化する)をもつ任意のサイズのドメインでよい。1つまたは1つより多い融合セグメントを使用することは、本発明の範疇に入る。融合セグメントは、当該ポリペプチドのEG307含有ドメインのアミノおよび/またはカルボキシル末端に、結合させてもよい。そうしたポリペプチドのEG307含有ドメインの簡単な回収を可能にするために、融合セグメントと融合ポリペプチドのEG307含有ドメインとの間の結合は、切断し易くしてもよい。融合ポリペプチドは、EG307含有ドメインのカルボキシルおよび/またはアミノ末端のいずれかに付着した融合セグメントを含むポリペプチドをコードする、融合ポリペプチドで形質転換された組み換え体細胞を培養することにより、好ましくは産生される。
本発明における使用のための好ましい融合セグメントは、グルタチオン結合ドメイン;二価金属イオンに結合できるポリヒスチジンセグメントのような、金属結合ドメイン;ポリペプチドA,ポリペプチドG,T細胞、B細胞、Fc受容体または補体ポリペプチド抗体結合ドメインのような、免疫グロブリン結合ドメイン;マルトース結合ポリペプチドからのマルトース結合ドメインのような、糖結合ドメイン;および/または「標識(tag)」ドメイン(例えば、β−ガラクトシダーゼの少なくとも一部、ストレプ(strep)標識ペプチド、モノクローナル抗体のような、当該ドメインに結合する化合物を用いて精製できる他のドメイン)、を含む。より好ましい融合セグメントは、ポリヒスチジンセグメントのような、金属結合ドメイン;マルトース結合ドメイン;ストレプ標識ペプチド、を含む。
本発明の好ましい植物EG307ポリペプチドは、コメEG307ポリペプチドおよびメイズEG307ポリペプチドである。より好ましいEG307ポリペプチドは、O.sativa、O.rufipogon、Z.mays mays、Zea mays parviglumis、Z.diploperennisおよびZ.luzurians EG307ポリペプチドである。O.sativa株は、Nipponbare,Azucena,Kasalath 1,2,3および4、Teqing,Lemont,およびIR64,を含む。Z.mays parviglumis株は、Benz,BK4,IA19,およびWilkesを含む。Z.mays mays株は、BS7,HuoBai,Makki,Min13,Pira,Sari,Smena,およびW22を含む。
本発明の1つの好ましいO.sativa EG307ポリペプチドは、配列番号1、配列番号91、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、および/または配列番号18により表されるポリヌクレオチドの成分と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、O.sativaポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。そうしたEG307ポリペプチドは、核酸配列:配列番号1、配列番号91、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、および/または配列番号18をもつポリヌクレオチドの成分と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされる。
EG307ゲノム核酸配列を調べると、当該遺伝子類が、第1エキソン領域、第1イントロン領域、第2エキソン領域、第2イントロン領域、および第3エキソン領域を含む、いくつかの領域を含むことを、示す。
ポリヌクレオチド配列番号4および配列番号91は、O.sativa(Nipponbare栽培種)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号4および配列番号91は、多数のヌクレオチドにより連結されているが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため不明であるが、約6と考えられている。配列番号4および配列番号91の翻訳は、当該O.sativaEG307ポリヌクレオチドが、オープンリーディングフレームを含むことを示唆する。当該リーディングフレームは、約447アミノ酸のO.sativaEG307ポリペプチドをコードしており、その推定アミノ酸配列は配列番号6と本明細書では表されるが、それは、配列番号4の約ヌクレオチド37から約ヌクレオチド39にわたる開始(スタート)コドンおよび、配列番号4の約ヌクレオチド2278から約ヌクレオチド2280にわたる終結(ストップ)コドンをもち、それとともに配列番号4のヌクレオチド1−126にわたる第1エキソン、配列番号91のヌクレオチド9−822にわたる第1イントロン、配列番号91のヌクレオチド823−1141にわたる第2エキソン、配列番号91のヌクレオチド1142−1222にわたる第2イントロン、および配列番号91のヌクレオチド1223−2157にわたる第3エキソンをもつと、仮定している。配
列番号4のヌクレオチド37から約ヌクレオチド2280のオープンリーディングフレームは、本明細書の配列番号5に示される。
同様に、O.sativa(Azucena株)ポリヌクレオチド配列番号1の翻訳は、配列番号1の約ヌクレオチド3から約ヌクレオチド2410までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号1のヌクレオチド1−92にわたる第1エキソン、配列番号1のヌクレオチド93−1075にわたる第1イントロン、配列番号1のヌクレオチド1076−1394にわたる第2エキソン、配列番号1のヌクレオチド1395−1475にわたる第2イントロン、および配列番号1のヌクレオチド1476−2441にわたる第3エキソンをもつことを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号2として本明細書では表され、そして配列番号3として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、O.sativa(Teqing株)ポリヌクレオチド配列番号7の翻訳は、約ヌクレオチド21から約ヌクレオチド2421までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号7のヌクレオチド1−110にわたる第1エキソン、配列番号7のヌクレオチド111−1089にわたる第1イントロン、配列番号7のヌクレオチド1090−1405にわたる第2エキソン、配列番号7のヌクレオチド1406−1486にわたる第2イントロン、および配列番号7のヌクレオチド1487−2461にわたる第3エキソンをもつことを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号8として本明細書では表され、そして配列番号9として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号10および配列番号11は、O.sativa(Lemont株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号10および配列番号11は、数不明のヌクレオチドにより連結されている。当該ゲノム配列中には、当該遺伝子の非コード部分に挿入/欠失があるかもしれないので、したがってヌクレオチドの実際の数は不明であるが、約10と考えられている。O.sativa(Lemont株)ポリヌクレオチド配列番号10および配列番号11の翻訳は、配列番号10の約ヌクレオチド166から配列番号11の約ヌクレオチド1547までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号10のヌクレオチド1−255にわたる第1エキソン、配列番号10のヌクレオチド255−451および配列番号11のヌクレオチド1−212にわたる第1イントロン、配列番号11のヌクレオチド213−531にわたる第2エキソン、配列番号11のヌクレオチド532−612にわたる第2イントロン、および配列番号11のヌクレオチド613−1616にわたる第3エキソンを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号12として本明細書では表され、そして配列番号13として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、O.sativa(IR64株)ポリヌクレオチド配列番号14の翻訳は、約ヌクレオチド1から約ヌクレオチド2400までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号14のヌクレオチド1−90にわたる第1エキソン、配列番号14のヌクレオチド91−1068にわたる第1イントロン、配列番号14のヌクレオチド1069−1384にわたる第2エキソン、配列番号14のヌクレオチド1385−1465にわたる第2イントロン、および配列番号11のヌクレオチド1466−2459にわたる第3エキソンを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号14として本明細書では表され、そして配列番号15として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、O.sativa(Kasalath株)ポリヌクレオチド配列番号17の翻訳は、約ヌクレオチド2から約ヌクレオチド2402までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号17のヌクレオチド1−91にわたる第1エキソン、配列番号17のヌクレオチド92−1070にわたる第1イントロン、配列番号17のヌクレオチド1071−1386にわたる第2エキソン、配列番号17のヌクレオチド1387−1467にわたる第2イントロン、および配列番号17のヌクレオチド1468−2432にわたる第3エキソンを、示唆する。
当該オープンリーディングフレームは、配列番号18として表され、そして配列番号19として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。配列番号18で、Kasalath 1株については、889位の「N」は「G」であり、そして971位の「N」は「A」であるので、配列番号19中のアミノ酸残基297をバリンに、そしてアミノ酸残基324をグルタミンにしている。配列番号18で、Kasalath 2株については、889位の「N」は「G」であり、そして971位の「N」は「T」であるので、配列番号19中のアミノ酸残基297をバリンに、そしてアミノ酸残基324をロイシンにしている。配列番号18で、Kasalath 3株については、889位の「N」は「C」であり、そして971位の「N」は「A」であるので、配列番号19中のアミノ酸残基297をロイシンに、そしてアミノ酸残基324をグルタミンにしている。配列番号18で、Kasalath 4株については、889位の「N」は「C」であり、そして971位の「N」は「T」であるので、配列番号19中のアミノ酸残基297をロイシンに、そしてアミノ酸残基324をロイシンにしている。
本発明の好ましいO.sativa EG307ポリペプチドは、配列番号1、配列番号91、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、および/または配列番号18により表されるポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドによりコードされる、ポリペプチドである。
本発明の好ましいO.rufipogon EG307ポリペプチドは、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、および/または配列番号31により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、O.rufipogonポリヌクレオチドによりコードされる、ポリペプチドである。そうしたEG307ポリペプチドは、核酸配列:配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、および/または配列番号31をもつポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされる。
ポリヌクレオチド配列番号27および配列番号28は、O.rufipogon(5953株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号27および配列番号28は、多数のヌクレオチドにより連結されているが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約23と考えられている。配列番号27および配列番号28の翻訳は、O.rufipogon EG307ポリヌクレオチドが、オープンリーディングフレームを含むことを示唆する。当該リーディングフレームは、約446アミノ酸のO.rufipogon EG307ポリペプチドをコードしており、その推定アミノ酸配列は配列番号30と本明細書では表されるが、それは、配列番号27の約ヌクレオチド18から約ヌクレオチド20にわたる開始(スタート)コドンおよび、配列番号28の約ヌクレオチド1330から約ヌクレオチド1332にわたる終結(ストップ)コドンをもつオープンリーディングフレームとともに、配列番号27のヌクレオチド1−107にわたる第1エキソン、第1イントロンなし、配列番号28のヌクレオチド1−316にわたる第2エキソン、配列番号28のヌクレオチド317−397にわたる第2イントロン、および配列番号28のヌクレオチド398−1332にわたる第3エキソンをもつと、仮定している。配列番号27のヌクレオチド18から配列番号28の約ヌクレオチド1332までのオープンリーディングフレームは、配列番号29として本明細書では表される。
同様に、O.rufipogon(5948株)ポリヌクレオチド配列番号20の翻訳は、ヌクレオチド1の約15ヌクレオチド5’から約ヌクレオチド2385までのオープンリーディングフレーム、表されていない第1エキソン、配列番号20のヌクレオチド1−1053にわたる第1イントロン、配列番号20のヌクレオチド1054−1369にわたる第2エキソン、配列番号20のヌクレオチド1370−1450にわたる第2イントロン、および配列番号20のヌクレオチド1451−2447にわたる第3エキソン、を示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号21として本明細書では表され、そして配列番号22として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号23および配列番号24は、O.rufipogon(5949株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号23および配列番号24は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約13と考えられている。配列番号23および配列番号24の翻訳は、配列番号23の約ヌクレオチド57から配列番号24の約ヌクレオチド1562までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号23のヌクレオチド1−146にわたる第1エキソン、配列番号24のヌクレオチド1−230にわたる第1イントロン、配列番号24のヌクレオチド231−546にわたる第2エキソン、配列番号24のヌクレオチド547−627にわたる第2イントロン、および配列番号24のヌクレオチド628−1615にわたる第3エキソン、を示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号25として表され、そして配列番号26として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、O.rufipogon(IRCG105491株)ポリヌクレオチド配列番号90の翻訳は、約ヌクレオチド1から約ヌクレオチド1341までのオープンリーディングフレームを示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号31として本明細書では表され、配列番号32として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
本発明の好ましいO.rufipogon EG307ポリペプチドは、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、および/または配列番号31により表されるポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
本発明の1つの好ましいZea mays parviglumis EG307ポリペプチドは、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号59、および/または配列番号78により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、Zea mays parviglumisポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。そうしたEG307ポリペプチドは、核酸配列:配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号59、および/または配列番号78をもつポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされる。
配列番号66の翻訳は、Zea mays parviglumis EG307ポリヌクレオチド(Benz株)が、オープンリーディングフレームを含むことを示唆する。当該リーディングフレームは、約448アミノ酸のZea mays parviglumis EG307ポリペプチドをコードしており、その推定アミノ酸配列は配列番号68として本明細書では表されるが、それは、配列番号66の約ヌクレオチド1から約ヌクレオチド3にわたる開始(スタート)コドン、および配列番号66の約ヌクレオチド2569から約ヌクレオチド2571にわたる終結(ストップ)コドンをもつオープンリーディングフレームとともに、配列番号66のヌクレオチド1−81にわたる第1エキソン、配列番号66のヌクレオチド82−1204にわたる第1イントロン、配列番号66のヌクレオチド1205−1517にわたる第2エキソン、配列番号66のヌクレオチド1518−1618にわたる第2イントロン、および配列番号66のヌクレオチド1619−2644にわたる第3エキソン、を仮定している。配列番号66のヌクレオチド3から約ヌクレオチド2571までのオープンリーディングフレームは、配列番号67として本明細書では表される。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号69および配列番号70は、Z. mays parviglumis(BK4株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号69および配列番号70は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約10と考えられている。Z. mays parviglumis(BK4株)ポリヌクレオチド配列番号69および配列番号70の翻訳は、配列番号69の約ヌクレオチド10から配列番号70の約ヌクレオチド1728までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号69のヌクレオチド1−90にわたる第1エキソン、配列番号69のヌクレオチド91−586および配列番号70のヌクレオチド1−361にわたる第1イントロン、配列番号70のヌクレオチド362−674にわたる第2エキソン、配列番号70のヌクレオチド675−775にわたる第2イントロン、および配列番号11のヌクレオチド776−1775にわたる第3エキソン、を示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号71として表され、そして配列番号72として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号73および配列番号74は、Z. mays parviglumis(IA19株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号73および配列番号74は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約12と考えられている。Z. mays parviglumis(IA19株)ポリヌクレオチド配列番号73および配列番号74の翻訳は、配列番号73の約ヌクレオチド69から配列番号74の約ヌクレオチド1280までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号73のヌクレオチド1−149にわたる第1エキソン、配列番号73のヌクレオチド150−305にわたる第1イントロン、配列番号74のヌクレオチド1−226にわたる第2エキソン、配列番号74のヌクレオチド227−327にわたる第2イントロン、および配列番号74のヌクレオチド328−1309にわたる第3エキソン、を示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号75として本明細書では表され、そして配列番号76として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号77および配列番号59は、Z. mays parviglumis(Wilkes株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号77および配列番号59は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約14と考えられている。Z. mays parviglumis(Wilkes株)ポリヌクレオチド配列番号77および配列番号59の翻訳は、配列番号77の約ヌクレオチド36から配列番号59の約ヌクレオチド1598までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号77のヌクレオチド1−86にわたる第1エキソン、配列番号59のヌクレオチド1−231にわたる第1イントロン、配列番号59のヌクレオチド232−544にわたる第2エキソン、配列番号59のヌクレオチド545−645にわたる第2イントロン、および配列番号59のヌクレオチド656−1640にわたる第3エキソン、を示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号78として本明細書では表され、そして配列番号79として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
本発明の好ましいEG307ポリペプチドは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号63、および/または配列番号64により表されるポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
本発明の1つの好ましいZea mays mays EG307ポリペプチドは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号49、配列番号50、配列番号51,配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号63、および/または配列番号64により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、Zea mays maysポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。そうしたEG307ポリペプチドは、核酸配列:配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号49、配列番号50、配列番号51,配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号62、配列番号63、および/または配列番号64をもつポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされる。
ポリヌクレオチド配列番号33および配列番号34は、Z.mays mays(BS7株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号33および配列番号34は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約21と考えられている。配列番号33および配列番号34の翻訳は、Zea mays mays EG307ポリヌクレオチドが、オープンリーディングフレームを含むことを示唆する。当該リーディングフレームは、約448アミノ酸のZea mays mays EG307ポリペプチドをコードしており、その推定アミノ酸配列は配列番号36として本明細書では表されるが、それは、配列番号33の約ヌクレオチド3から約ヌクレオチド5にわたる開始(スタート)コドン、および配列番号34の約ヌクレオチド1396から約ヌクレオチド1398にわたる終結(ストップ)コドンをもつオープンリーディングフレームとともに、配列番号33のヌクレオチド1−83にわたる第1エキソン、配列番号33のヌクレオチド84−180および配列番号34のヌクレオチド1−31にわたる第1イントロン、配列番号34のヌクレオチド32−344にわたる第2エキソン、配列番号34のヌクレオチド345−445にわたる第2イントロン、および配列番号34のヌクレオチド446−1447にわたる第3エキソン、を仮定している。配列番号33のヌクレオチド3から配列番号34の約ヌクレオチド1398までのオープンリーディングフレームは、配列番号35として本明細書では表される。
同様に、Z.mays mays(HuoBai株)ポリヌクレオチド配列番号37の翻訳は、約ヌクレオチド28から約ヌクレオチド2599までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号37のヌクレオチド1−108にわたる第1エキソン、配列番号37のヌクレオチド109−1232にわたる第1イントロン、配列番号37のヌクレオチド1233−1545にわたる第2エキソン、配列番号37のヌクレオチド1546−1646にわたる第2イントロン、および配列番号37のヌクレオチド1647−2646にわたる第3エキソンを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号38として本明細書では表され、そして配列番号39として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号40および配列番号41は、Z.mays mays(Makki株)中のEG307遺伝子の5’末端から3’末端を表す。配列番号40および配列番号41は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約20と考えられている。Z.mays mays(Makki株)ポリヌクレオチド配列番号40および配列番号41の翻訳は、配列番号40の約ヌクレオチド61から配列番号41の約ヌクレオチド2263までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号40のヌクレオチド1−141にわたる第1エキソン、配列番号40のヌクレオチド142−262および配列番号41のヌクレオチド1−896にわたる第1イントロン、配列番号41のヌクレオチド897−1209にわたる第2エキソン、配列番号41のヌクレオチド1210−1310にわたる第2イントロン、および配列番号41のヌクレオチド1311−2311にわたる第3エキソンを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号42として表され、配列番号43として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号44、配列番号45および配列番号46は、Z.mays mays(Min13株)中のEG307遺伝子の、5’末端から3’末端への、3部分を表す。配列番号44、配列番号45および配列番号46は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、配列番号44と配列番号45との間では19、そして配列番号45と配列番号46との間では17と考えられている。Z.mays mays(Min13株)ポリヌクレオチド、配列番号44、配列番号45および配列番号46の翻訳は、配列番号44の約ヌクレオチド45から配列番号46の約ヌクレオチド1741までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号44のヌクレオチド1−125にわたる第1エキソン、配列番号45のヌクレオチド1−198および配列番号46のヌクレオチド1−374にわたる第1イントロン、配列番号46のヌクレオチド375−687にわたる第2エキソン、配列番号46のヌクレオチド688−788にわたる第2イントロン、および配列番号46のヌクレオチド789−1787にわたる第3エキソンを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号47として本明細書では表され、そして配列番号48として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号49および配列番号50は、Z.mays mays(Pira株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号49および配列番号50は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明である。Z.mays mays(Pira株)ポリヌクレオチド配列番号49および配列番号50の翻訳は、配列番号49の約ヌクレオチド31から配列番号50の約ヌクレオチド1722までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号49のヌクレオチド1−111にわたる第1エキソン、配列番号49のヌクレオチド112−495および配列番号50のヌクレオチド1−355にわたる第1イントロン、配列番号50のヌクレオチド356−668にわたる第2エキソン、配列番号50のヌクレオチド669−769にわたる第2イントロン、および配列番号50のヌクレオチド770−1768にわたる第3エキソンを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号51として本明細書では表され、配列番号52として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号53および配列番号54は、Z.mays mays(Sari株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号53および配列番号54は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約22と考えられている。Z.mays mays(Pira株)ポリヌクレオチド配列番号53および配列番号54の翻訳は、配列番号53の約ヌクレオチド19から配列番号54の約ヌクレオチド1756までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号53のヌクレオチド1−99にわたる第1エキソン、配列番号53のヌクレオチド100−212および配列番号54のヌクレオチド1−389にわたる第1イントロン、配列番号54のヌクレオチド390−702にわたる第2エキソン、配列番号54のヌクレオチド703−803にわたる第2イントロン、および配列番号54のヌクレオチド804−1803にわたる第3エキソンを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号55として本明細書では表され、そして配列番号56として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号57および配列番号58は、Z.mays mays(Smena株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号57および配列番号58は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、14と考えられている。Z.mays mays(Smena株)ポリヌクレオチド配列番号57および配列番号58の翻訳は、配列番号57の約ヌクレオチド68から配列番号58の約ヌクレオチド2199までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号57のヌクレオチド1−148にわたる第1エキソン、配列番号57のヌクレオチド149−305および配列番号58のヌクレオチド1−834にわたる第1イントロン、配列番号58のヌクレオチド835−1147にわたる第2エキソン、配列番号58のヌクレオチド1148−1248にわたる第2イントロン、および配列番号58のヌクレオチド1249−2208にわたる第3エキソンを、示唆する。加えて、配列:配列番号59は、配列番号59のヌクレオチド738後の開始点で欠失を含む。当該オープンリーディングフレームは、配列番号60として本明細書では表され、そして配列番号61として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
同様に、ポリヌクレオチド配列番号62および配列番号63は、Z.mays mays(W22株)中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号62および配列番号63は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約22と考えられている。Z.mays mays(W22株)ポリヌクレオチド配列番号62および配列番号63の翻訳は、配列番号62の約ヌクレオチド1から配列番号63の約ヌクレオチド1367までのオープンリーディングフレームとともに、配列番号62のヌクレオチド1−81にわたる第1エキソン、配列番号62のヌクレオチド82−893にわたる第1イントロン、配列番号63のヌクレオチド1−313にわたる第2エキソン、配列番号63のヌクレオチド314−414にわたる第2イントロン、および配列番号63のヌクレオチド415−1411にわたる第3エキソンを、示唆する。当該オープンリーディングフレームは、配列番号64として本明細書では表され、そして配列番号65として本明細書では表されるポリペプチドをコードする。
本発明の好ましいZ.mays mays EG307ポリペプチドは、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号63、および/または配列番号64により表されるポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
本発明の好ましいO.rufipogon EG307ポリペプチドは、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、および/または配列番号31により表されるポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
本発明の1つの好ましいZea diploperennis EG307ポリペプチドは、配列番号80、配列番号81、および/または配列番号82により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、Zea mays parviglumisポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。そうしたEG307ポリペプチドは、核酸配列:配列番号80、配列番号81、および/または配列番号82をもつポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされる。
ポリヌクレオチド配列番号80および配列番号81は、Z.diploperennis中のEG307遺伝子の5’および3’末端を表す。配列番号80および配列番号81は、多数のヌクレオチドにより連結されるが、その正確な数は、当該遺伝子の非コード部分の挿入/欠失の可能性のため、不明であるが、約24と考えられている。本発明の1つの好ましいZea diploperennis EG307ポリペプチドは、配列番号80および配列番号81により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、Zea diploperennisポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。そうしたEG307ポリペプチドは、核酸配列:配列番号80および配列番号81をもつポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされる。
配列番号80および配列番号81の翻訳は、Zea mays diploperennis EG307ポリヌクレオチドが、オープンリーディングフレームを含むことを示唆する。当該リーディングフレームは、約448アミノ酸のZea diploperennis EG307ポリペプチドをコードしており、その推定アミノ酸配列は配列番号83として本明細書では表されるが、それは、配列番号80の約ヌクレオチド21から約ヌクレオチド23にわたる開始(スタート)コドン、および配列番号81の約ヌクレオチド1656から約ヌクレオチド1658にわたる終結(ストップ)コドンをもつオープンリーディングフレームとともに、配列番号80のヌクレオチドの1−101にわたる第1エキソン、配列番号80のヌクレオチドの102−225および配列番号81のヌクレオチド1−291にわたる第1イントロン、配列番号81のヌクレオチド292−313にわたる第2エキソン、配列番号81のヌクレオチド314−705にわたる第2イントロン、および配列番号81のヌクレオチド706−1672にわたる第3エキソン、を仮定している。配列番号80のヌクレオチド21から配列番号81の約ヌクレオチド1658へのオープンリーディングフレームは、配列番号82として本明細書では表される。
本発明の好ましいZ.diploperennis EG307ポリペプチドは、配列番号80、配列番号81、および/または配列番号82により表されるポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
本発明の1つの好ましいZea luxurians EG307ポリペプチドは、配列番号84および/または配列番号85により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、Zea luxuriansポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。そうしたEG307ポリペプチドは、核酸配列:配列番号84および/または配列番号85をもつポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされる。
配列番号84の翻訳は、Zea luxurians EG307ポリヌクレオチドが、オープンリーディングフレームを含むことを示唆する。当該リーディングフレームは、約448アミノ酸のZea luxurians EG307ポリペプチドをコードしており、その推定アミノ酸配列は配列番号86として本明細書では表されるが、それは、配列番号84の約ヌクレオチド5から約ヌクレオチド7にわたる開始(スタート)コドン、および配列番号84の約ヌクレオチド2365から約ヌクレオチド2367にわたる終結(ストップ)コドンをもつオープンリーディングフレームとともに、配列番号84のヌクレオチドの1−85にわたる第1エキソン、配列番号84のヌクレオチドの86−998にわたる第1イントロン、配列番号84のヌクレオチド999−1311にわたる第2エキソン、配列番号84のヌクレオチド1312−1414にわたる第2イントロン、および配列番号84のヌクレオチド1415−2423にわたる第3エキソン、を仮定している。配列番号84のヌクレオチド5から約ヌクレオチド2367へのオープンリーディングフレームは、配列番号85として本明細書では表される。
本発明の好ましいZ.luxurians EG307ポリペプチドは、配列番号84、および/または配列番号85により表されるポリヌクレオチドと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
さまざまなO.sativa、O.rufipogon、Z.mays mays、Z.mays parviglumis、Z.diploperennis、およびZ.luxurians EG307核酸配列およびアミノ酸配列の比較は、植物のこれらの種が、類似のEG307遺伝子およびポリペプチドをもつことを示す。O.sativaおよびO.rufipogonのさまざまな株からのEG307のコード領域のヌクレオチド配列は、相互に比較したとき、99.0%配列同一性をもち、そのことは、それらが相同であることを明白にしている。すべてのコメ配列は、祖先および現代いずれも、同じ停止コドン(TAG)をもち、そして(これまでわれわれが収集した5’UTR配列について)、それらの5’UTR配列は98.4%配列同一性をもつ。O.sativaおよびO.rufipogonのさまざまな株のタンパク質配列は、98.2%配列同一性をもち、やはり、これらが相同配列であることを証明している。コメからのEG307のタンパク質配列は、メイズからのEG307のタンパク質配列に約94%同一であり、やはりそれらの相同性を証明している。メイズEG307およびテオシンテEG307のタンパク質配列は、99.8%配列同一性をもつ。
O.sativa、O.rufipogon、Z.mays mays、Z.mays parviglumis、Z.diploperennis、およびZ.luxurians EG307核酸配列およびアミノ酸配列の間にこの程度の同一性が見られることは、本明細書に開示されたポリペプチドおよび核酸配列が与えられれば、任意の植物EG307ポリペプチドおよびポリヌクレオチドを得るための能力を裏付けている。これらの植物EG307ポリペプチド、およびそれらをコードするポリヌクレオチドは、植物における収量増加に有用な新規化合物を表す。
本発明の好ましい植物EG307ポリペプチドは、本発明のO.sativa、O.rufipogon、Z.mays mays、Z.mays parviglumis、Z.diploperennis、およびZ.luxurians EG307ポリペプチドについて本明細書で開示されたアミノ酸配列の1つまたは1つより多いものに、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、同一である、アミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。本発明のより好ましい植物EG307ポリペプチドは:配列番号1および/または配列番号2の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号3の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号4、配列番号81および/または配列番号5の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号6の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号7および/または配列番号8の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号9の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号10、配列番号11および/または配列番号12の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号13の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号14および/または配列番号15の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号16の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号17および/または配列番号18の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号19の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号20および/または配列番号21の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号22の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号23、配列番号24および/または配列番号25の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号26の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号27、配列番号28および/または配列番号29の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号30の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号90および/または配列番号31の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号32の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号33、配列番号34および/または配列番号35の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号36の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号37および/または配列番号38の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号39の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号40、配列番号41および/または配列番号42の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号43の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号44、配列番号45、配列番号46および/または配列番号47の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号48の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号49、配列番号50および/または配列番号51の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号52の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号53、配列番号54および/または配列番号55の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号56の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号57、配列番号58および/または配列番号60の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号61の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号62、配列番号63および/または配列番号64の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号65の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号66および/または配列番号67の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号68の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号69、配列番号70および/または配列番号71の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号72の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号73、配列番号74および/または配列番号75の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号76の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号77、配列番号59および/または配列番号78の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号79の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号80、配列番号81および/または配列番号82の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号83の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;および配列番号84および/または配列番号85の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号86の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;を含む。本明細書で使われる場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの「少なくとも一部」は、上記のようなその種の配列の最小サイズ特性をもつ部分、または、それより大きい完全長分子までの任意の断片を意味する。例えば、ポリヌクレオチドの一部は、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、というように、完全長ポリヌクレオチドまでの長さのものであってもよい。同様に、ポリペプチドの一部は、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、というように、完全長ポリペプチドまでのものであってもよい。使われる予定の前記一部の長さは、特定の使用目的次第である。上述のように、ハイブリッド形成プローブとして有用なポリヌクレオチドの一部は、12ヌクレオチドのように短くてもよい。エピトープとして有用なポリペプチドの一部は、4アミノ酸のように短くてもよい。完全長ポリペプチドの機能を遂行するポリヌクレオチドの一部は、一般には、4アミノ酸より長い。
本発明のとくに好ましい植物EG307ポリペプチドは、(コードされたポリペプチド、完全長ポリペプチド、プロセスされたポリペプチド、融合ポリペプチド、およびそれらの多価ポリペプチドを、非限定的に含む)配列番号3、配列番号6、配列番号9、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号26、配列番号30、配列番号32、配列番号36、配列番号39、配列番号43、配列番号48、配列番号52、配列番号56、配列番号61、配列番号65、配列番号68、配列番号72、配列番号76、配列番号79、配列番号83、および/または配列番号86、ならびに上記の配列番号類の少なくとも一部を含む、ポリペプチドの断端型相同体であるポリペプチド、を含むポリペプチドである。そうしたポリペプチドを産生するための方法の例は、実施例の節のものを含め、本明細書に開示されている。
B. EG1117ポリペプチド
本発明の1つの態様は、単離された植物EG1117ポリペプチドである。本明細書で使われる場合、EG307ポリペプチドは、1つの態様で、約552アミノ酸のO.rufipogonポリペプチドに関係する(すなわち、構造類似性をもつ)、そして図7に表された配列(配列番号95)をもつ、ポリペプチドである。そうしたポリペプチドの最初の同定は、実施例に詳述されている。好ましいEG1117ポリペプチドは、下記の遺伝子の少なくとも1つに、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドによりコードされる:すなわち、(a)O.sativa EG1117ポリペプチドをコードする1つの遺伝子(すなわち、1つのO.sativa遺伝子);(b)O.rufipogon EG1117ポリペプチドをコードする1つの遺伝子(すなわち、1つのO.rufipogon遺伝子);(c)Zea mays mays EG1117遺伝子をコードする1つの遺伝子;(d)Zea mays parviglumis EG1117ポリペプチドをコードする1つの遺伝子(すなわち、1つのZ.mays parviglumis遺伝子)である。
本明細書で使われる場合、O.sativa EG1117遺伝子は、当該遺伝子によりコードされるO.sativa EG1117ポリペプチドの産生を制御する、(非限定的に、転写、翻訳、または翻訳後制御領域のような)調節領域、ならびにコード領域そのもののような、天然のO.sativa EG307遺伝子に関係するすべての核酸配列を含む。1つの態様で、O.sativa EG1117遺伝子は、核酸配列:配列番号4を含む。核酸配列:配列番号4は、その産生が実施例に開示されているcDNA(相補的DNA)ポリヌクレオチドの推定配列を表す。核酸配列決定技術は、全くエラー無しではないので、配列番号4(ならびに本明細書に提示された他の配列)は、厳密には、本発明のO.sativa EG307ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの見掛けの核酸配列を表すことに、注意すべきである。
もう1つの態様で、O.sativa EG1117遺伝子は、配列番号92および/または配列番号93に同様ではあるが、同一ではない配列を含む、対立遺伝子変異体であってもよい。
本発明のEG1117ポリペプチドは、機能検定において天然EG1117の機能を遂行するその能力により同定することも可能である。「天然EG1117ポリペプチド」の語は、O.sativa、O.rufipogon、Z.mays mays、および/またはZ.mays parviglumisの完全長EG1117ポリペプチドを意味する。「機能検定において天然EG1117の機能を遂行できる」という言葉は、当該ポリペプチドが機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約10%をもつことを、意味する。他の好ましい態様では、当該EG1117ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約20%をもつ。他の好ましい態様では、当該EG1117ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約30%をもつ。他の好ましい態様では、当該EG1117ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約40%をもつ。他の好ましい態様では、当該EG1117ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約50%をもつ。他の好ましい態様では、当該ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約60%をもつ。より好ましい態様では、当該ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約70%をもつ。より好ましい態様では、当該ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約80%をもつ。より好ましい態様では、当該ポリペプチドは、機能検定において天然ポリペプチドの活性の少なくとも約90%をもつ。機能検定の例は、本明細書のほかのところで詳述するように、抗体結合検定、または収量増加検定を含む。
本明細書で使われる場合、単離された植物EG1117ポリペプチドは、完全長ポリペプチドまたはそうしたポリペプチドの任意の相同体であってもよい。1つの態様で、当業者に知られている技術を用いて、前記相同体が免疫原として動物に投与された場合、当該動物は、天然EG1117ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープに対して、体液性および/または細胞性免疫応答を起すはずである。EG1117相同体はまた、機能検定においてEG1117の機能を遂行するそれらの能力により、選択されることも可能である。
植物EG117ポリペプチド相同体は、自然対立遺伝子変異または自然突然変異の結果のこともある。本発明のEG1117ポリペプチド相同体はまた、当該ポリペプチドへの直接修飾、または、ランダムあるいは標的突然変異誘導を行うために、例えば古典的なまたは組み換え体DNA技術を用いて、当該ポリペプチドをコードしている遺伝子への修飾を、非限定的に含む、当該技術分野では知られている技術を用いて、産生することも可能である。
本発明に従って、ミメトープ(mimetope)は、機能検定において本発明のEG307ポリペプチドの機能を遂行するように、本発明の単離植物EG307ポリペプチドの能力をまねることができる任意の化合物を指す。ミメトープの例は、本発明の単離ポリペプチドの1つまたは1つより多いエピトープをまねる少なくとも1つの結合部位を含む、抗イディオタイプ抗体またはそれらの断片;単離ポリペプチドの非ポリペプチド性免疫原部分(例えば、炭水化物構造体);および本発明の単離ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープに類似の構造をもつ、核酸を含む、合成または天然有機分子を、非限定的に含む。その種のミメトープは、本発明のポリペプチドのコンピューター作出構造を用いて、設計することも可能である。ミメトープはまた、オリゴヌクレオチド、ペプチド、または他の有機分子のような、分子のランダム試料を作製すること、そして対応する結合パートナーを用いるアフィニティークロマトグラフィー技術によりそうした試料をスクリーニングすることにより、得ることも可能である。
本発明のEG307ポリペプチド相同体の最小サイズは、対応する天然ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの相補的配列と安定なハイブリッドを形成できるポリヌクレオチドによりコードされるのに十分なサイズである。最小サイズ特性は、本明細書に開示されている。
任意の植物EG1117ポリペプチドが、本発明の適したポリペプチドである。(天然ポリペプチドの単離または組み換え体または合成技術による当該ポリペプチドの産生を含む方法で)EG1117ポリペプチドを単離するのに適した植物は、「EG307ポリペプチド」というタイトルの節に記載されているものを含む。
本発明の好ましい植物EG1117ポリペプチドは、植物で発現または調整された場合、当該植物の収量を増加させることができる化合物である。
本発明の1つの態様は、融合セグメントに付着したEG1117ポリペプチド含有ドメインを含む融合ポリペプチドである。
本発明の好ましい植物EG1117ポリペプチドは、コメEG1117ポリペプチドおよびメイズEG1117ポリペプチドである。より好ましいEG1117ポリペプチドは、O.sativa、O.rufipogon、Z.mays mays、およびZ.mays parviglumis EG1117ポリペプチドである。O.sativa株は、Nipponbare,Azucena,Kasalath 1,2,3および4,Teqing,Lemont,およびIR64を含む。Z.mays parviglumis株は、Benz,BK4,IA19,およびWilkesを含む。Z.mays mays株は、BS7,HuoBai,Makki,Min13,Pira,Sari,Smena,およびW22を含む。
本発明の1つの好ましいO.rufipogon EG1117ポリペプチドは、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号97および/または配列番号98により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、O.rufipogonポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
本発明の1つの好ましいO.sativa EG1117ポリペプチドは、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号109、配列番号110、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号116、配列番号117により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、O.sativaポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
本発明の1つの好ましいZ.mays mays EG1117ポリペプチドは、配列番号119、配列番号120、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号133、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号145、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号154、配列番号155、により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、mays maysポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
本発明の1つの好ましいZ.mays parviglumis EG1117ポリペプチドは、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号166、配列番号167、および/または配列番号168により表されるポリヌクレオチドの相補物と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、Z.mays parviglumisポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドである。
コメについてのEG1117ゲノム核酸配列の点検は、当該遺伝子類が、第1エキソン領域、第1イントロン領域、第2エキソン領域、第2イントロン領域、第3エキソン領域、第3イントロン領域、および第4エキソン領域を含む、いくつかの領域を含むことを、示す。EG1117コメおよびコメ祖先ゲノム核酸配列のそれぞれにおけるこれらの領域の場所は、下表に要約されている:
ゲノム配列の翻訳は、O.rufipogonおよびO.sativa EG1117ポリヌクレオチドがオープンリーディングフレームを含むこと、を示唆する。O.sativa Nipponbare株の推定タンパク質配列を用いて、BLAST検索を実施した。シロイヌナズナ(Arabidopsis)PTR2−B(ヒスチジン輸送タンパク質、NP 178313)への非常に強いタンパク質BLASTヒットは、コード配列(CDS)の約30コドンのみが、コメ配列から消失していることを示唆する(図8)。
最後に、当該推定コード配列およびタンパク質配列は、次のように表される:
EG1117の部分配列も、メイズおよびテオシンテで決定されている。この情報は、下の表に要約される:
ゲノム配列の翻訳は、Z.mays maysおよびZ.mays parviglumis EG1117ポリヌクレオチドがオープンリーディングフレームを含むこと、を示唆する。当該オープンリーディングフレーム情報の要約は、下表にでている:
本発明の好ましい植物EG1117ポリペプチドは、本発明のO.sativa、O.rufipogon、Z.mays mays、およびZ.mays parviglumis、EG1117ポリペプチドについて本明細書で開示されたアミノ酸配列の1つまたは1つより多いものに、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、そしてより好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%、同一である、アミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。本発明のより好ましい植物EG1117ポリペプチドは:配列番号92、配列番号93、および/または配列番号94の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号95の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号96、配列番号97および/または配列番号98の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号99の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号100および/または配列番号101の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号102の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号103、および/または配列番号104の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号105の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号106および/または配列番号107の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号108の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号09および/または配列番号110の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号111の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号112、配列番号113、および/または配列番号114の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号115の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号116および/または配列番号117の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号118の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号119および/または配列番号120の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号121の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号122、配列番号123、配列番号124および/または配列番号125の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号126の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号127、配列番号128、配列番号129および/または配列番号130の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号131の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号132および/または配列番号133の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号134の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号135、配列番号136、配列番号137、および/または配列番号138の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号139の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号140、配列番号141、および/または配列番号142の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号143の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号144、配列番号145、配列番号146および/または配列番号147の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号148の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号149、配列番号150、配列番号151、および/または配列番号152の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号153の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号154および/または配列番号155の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号156の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号157および/または配列番号158の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号159の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号160、配列番号161、配列番号162、および/または配列番号163の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号164の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;配列番号165、配列番号166、配列番号167、および/または配列番号168の少なくとも一部によりコードされ、そしてそれは、配列番号169の少なくとも一部を含むアミノ酸配列をもつポリペプチド;を含む。本明細書で使われる場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの「少なくとも一部」は、上記のようなそうした配列の最小サイズ特性をもつ部分、または、完全長分子までの任意のより大きな断片を意味する。例えば、ポリヌクレオチドの一部は、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、というように、完全長ポリヌクレオチドまでの長さでもよい。同様に、ポリペプチドの一部は、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、というように、完全長ポリペプチドまでの長さでもよい。使われる予定の前記一部の長さは、特定の用途次第であろう。上述のように、ハイブリッド形成プローブとして有用なポリヌクレオチドの一部は、12ヌクレオチドのように短くてもよい。エピトープとして有用なポリペプチドの一部は、4アミノ酸のように短くてもよい。完全長ポリペプチドの機能を遂行するポリペプチドの部分は、一般に、4アミノ酸より長い。
本発明のとくに好ましい植物EG1117ポリペプチドは、(コードされたポリペプチド、完全長ポリペプチド、プロセスされたポリペプチド、融合ポリペプチド、およびそれらの多価ポリペプチドを、非限定的に含む)配列番号95、配列番99、配列番号102、配列番号105、配列番号108、配列番号111、配列番号115、配列番号118、配列番号121、配列番号126、配列番号131、配列番号134、配列番号139、配列番号143、配列番号148、配列番号153、配列番号156、配列番号159、配列番号164、配列番号169、および/または配列番号170、を含むポリペプチド、ならびに上記の配列番号類の少なくとも一部を含む、ポリペプチドの断端型相同体であるポリペプチドである。そうしたポリペプチドを産生するための方法の例は、実施例の節のものを含め、本明細書に開示されている。
C. EG307ポリヌクレオチド
本発明の1つの態様は、下記の遺伝子の少なくとも1つと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、単離された植物ポリヌクレオチドである:すなわち、O.sativa EG307遺伝子、O.rufipogon EG307遺伝子、Z.mays mays EG307遺伝子、Z.mays parviglumis EG307遺伝子、Z.diploperennis EG307遺伝子、およびZ.luxurians遺伝子である。そうした遺伝子類の明らかな特性は、これまでに記載されている。本発明のポリヌクレオチドは、単離された天然植物EG307遺伝子またはその相同体を含むことが可能で、後者について以下により詳細に記載される。本発明のポリヌクレオチドは、1つまたは1つより多い調節領域、完全長または部分コード領域またはそれらの組合せを含むことが可能である。本発明のポリヌクレオチドの最小サイズは、厳格なハイブリッド形成条件下で、前述の遺伝子類の1つと安定なハイブリッドを形成できる最小サイズである。適切かつ好ましい植物は、上に開示されている。
本発明に従って、単離されたポリヌクレオチドは、その自然環境から外された(すなわち、ヒトの操作に曝された)ポリヌクレオチドである。したがって、「単離された」は、当該ポリヌクレオチドが精製されている程度を反映する用語ではない。単離されたポリヌクレオチドは、DNA,RNA、またはDNAおよびRNAいずれかの誘導体を含むことが可能である。
本発明の単離された植物EG307ポリヌクレオチドは、全(すなわち、完全)遺伝子か、当該遺伝子と安定なハイブリッドを形成できるその一部のいずれかとして、その天然源から得ることも可能である。単離された植物EG307ポリヌクレオチドはまた、組み換え体DNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)または化学合成を用いて、産生も可能である。単離された植物EG307ポリヌクレオチドは、そうした修飾が、本発明のEG307ポリペプチドをコードするための、または天然遺伝子分離体と厳格な条件下で安定なハイブリッドを形成するための、当該ポリヌクレオチドの能力を本質的に妨害しないような仕方で、その中のヌクレオチド類が、挿入され、欠失され、置換され、および/または逆向きにされた、天然対立遺伝子変異体および修飾ポリヌクレオチドを非限定的に含む、天然ポリヌクレオチドおよびそれらの相同体を含む。
植物EG307ポリヌクレオチド相同体は、当業者に知られている多くの方法(例えば、Sambrookら、同書を参照)を用いて、産生することも可能である。例えば、ポリヌクレオチドは、部位特異的突然変異誘発のような古典的変異誘発技術および組み換え体DNA技術、突然変異を誘導するためのポリヌクレオチドの化学的処理、核酸断片の制限酵素切断、核酸断片のライゲーション、核酸配列の選択された領域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅および/または突然変異誘発、オリゴヌクレオチド混合物の合成、およびポリヌクレオチドの混合物およびそれらの組合せを「構築する」ための混合物群のライゲーション、を非限定的に含むさまざまな技術を用いて、修飾可能である。ポリヌクレオチド相同体は、当該核酸によりコードされるポリペプチドの機能(例えば、EG307ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープに対する免疫応答を引き起す能力、EG307遺伝子を含むトランスジェニック植物における収量を増加させる能力)をスクリーニングすることにより、および/またはO.sativa EG307遺伝子との、O.rufipogon EG307遺伝子との、Z.mays mays EG307遺伝子との、Z.mays parviglumis EG307遺伝子、Z.diploperennisEG307遺伝子および/またはZ.luxuriansEG307遺伝子とのハイブリッド形成により、修飾核酸の混合物から選択も可能である。
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、本発明の少なくとも1つの植物EG307ポリペプチドをコードする核酸配列を含むことが可能で、そうしたポリペプチドの例は本明細書に開示されている。「ポリヌクレオチド」という言葉は物理的ポリヌクレオチドを主に指し、そして「核酸配列」という言葉は当該ポリヌクレオチド上のヌクレオチドの配列を主に指すが、それら2つの言葉は互換的に使用可能で、とくに、EG307ポリペプチドをコードできるポリヌクレオチドまたは核酸配列に関してはそうである。これまでに開示されているように、本発明の植物EG307ポリペプチドは、完全長植物EG307コード領域をもつポリペプチド、部分的植物EG307コード領域をもつポリペプチド、融合ポリペプチド、多価保護ポリペプチド、およびそれらの組合せを、非限定的に含む。
本発明の少なくともいくつかのポリヌクレオチドは、それから当該ポリヌクレオチドが単離された、EG307ポリペプチドで免疫されている動物に由来する、免疫血清に選択的に結合するポリペプチドをコードする。
本発明の好ましいポリヌクレオチドは、適切な植物中で発現された場合、当該植物の収量を増加できる。以下にさらに詳しく開示されるように、そうしたポリヌクレオチドは、アンチセンスRNA、三重らせんを形成しうる分子、リボザイム、または核酸ベースの化合物であるか、またはそれらをコードすることが可能である。
本発明の1つの態様は、本発明のEG307ポリヌクレオチドに、またはそうしたEG307ポリヌクレオチドの相同体に、またはそうしたポリヌクレオチドの相補物に、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する植物EG307ポリヌクレオチドである。本発明の任意の核酸配列のポリヌクレオチド相補物は、当該配列が言及されている鎖に相補的である(すなわち、それと完全二重らせんを形成できる)ポリヌクレオチドの核酸配列を指す。核酸配列が1つの鎖について決定されている、すなわち配列番号により表されている、本発明の二本鎖核酸分子は、その配列番号の相補物である配列をもつ相補鎖も含むことを留意するべきである。したがって、二本鎖または一本鎖のいずれであってもよい、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に示されている与えられた配列番号と、および/または、それら配列番号の相補物(本明細書に示されている
ものも、いないものも含む)のいずれかと、厳格なハイブリッド形成条件下で安定なハイブリッドを形成する、それらのポリヌクレオチドを含む。相補的配列を推定する方法は、当業者には知られている。EG307ポリペプチドの少なくとも一部をコードする核酸配列の対応領域(類)と、少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約75%、さらに好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約90%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも約95%の相同性をもつ核酸配列を含む、EG307ポリヌクレオチドが好ましい。植物中に自然に存在する、EG307ポリペプチドの少なくとも一部をコードできるEG307ポリヌクレオチドがとくに好ましい。
本発明のとくに好ましいEG307ポリヌクレオチドは、次のポリヌクレオチドの少なくとも1つと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する:すなわち、配列番号1、配列番号91、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号90、配列番号31、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号59、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号84、および/または配列番号85、またはそうしたポリヌクレオチドの相同体または相補物に対してである。
本発明の好ましいポリヌクレオチドは、本発明のO.sativa EG307遺伝子に、O.rufipogon EG307遺伝子に、Z.mays mays EG307遺伝子に、Z.mays parviglumis EG307遺伝子に、Z.diploperennis EG307遺伝子に、および/またはZ.luxurians EG307遺伝子に、ならびにそれらのポリヌクレオチドのいずれかの対立遺伝子変異体であるポリヌクレオチドに、ハイブリッド形成できる(すなわち、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する)核酸配列:配列番号1、配列番号91、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号59、および/または配列番号78、の少なくとも一部を含む。そうした好ましいポリヌクレオチドは、前記配列番号に含まれるものに加えて、非限定的に、完全長遺伝子、完全長コード領域、融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または多価保護化合物をコードするポリヌクレオチド、のようなヌクレオチドを含むことも可能である。
本発明はまた、そうしたポリヌクレオチドが発現されるはずの細胞の、コドン使用性質に適応するように修飾されているポリヌクレオチドを含め、配列番号3の少なくとも一部を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号6の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号9の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号13の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号16の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号19の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号22の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号26の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号30の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号36の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号39の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号43の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号48の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号52の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号56の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号61の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号65の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号68の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号72の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号76の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号79の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号83の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または配列番号86の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を含む。
とくに、実施例の節に詳細に記載されているように、本発明のO.sativa EG307ポリヌクレオチドの知識が、本発明のO.rufipogon、Z.mays mays、Z.mays parviglumis、Z.diploperennis、およびZ.luxurians EG307ポリヌクレオチド類の単離を可能にしたので、本発明のいくつかの植物EG307ポリヌクレオチドの核酸配列を知ることは、例えば、(a)それらのポリヌクレオチドのコピーを作る、(b)そうしたポリヌクレオチドの少なくとも一部を含むポリヌクレオチド(例えば、完全長遺伝子、完全長コード領域、調節制御配列、断端型コード領域を含むポリヌクレオチド)を得る、および(c)他の植物についてのEG307ポリヌクレオチドを得る、ことを当業者に可能にする。そうしたポリヌクレオチドは、本発明の抗体で適切な発現ライブラリーをスクリーンすること;適切なライブラリーまたはDNAをスクリーンするために、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを用いる伝統的なクローニング技術;および本発明のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる、適切なライブラリーまたはDNAのPCR増幅;を含むさまざまな仕方で得ることも可能である。スクリーンするための、またはそこからポリヌクレオチドを増幅するための、好ましいライブラリーは、茎、生殖構造体/組織、葉、根、および、ひこばえ、を非限定的に含む、単離された植物組織から調製された、ゲノムDNAライブラリー,BACライブラリー,YACライブラリー,cDNAライブラリーのようなライブラリー;および上にリストされた組織のいずれか、または全部からのプールされたcDNA類から構築されたライブラリー、を含む。コメの場合には、Clemson Universityから入手可能な、BACライブラリーが好ましい。同様に、スクリーンするための、またはそこからポリヌクレオチドを増幅するための、好ましいDNA源は、植物ゲノムDNAを含む。遺伝子をクローン化し、そして増幅するための技術は、例えば、Sambrookら,同誌に、およびGalunおよびBreiman,Transgenic Plants,Imperial College Press,1997に開示されている。
本発明はまた、植物EG307遺伝子または他の植物EG307ポリヌクレオチドを含むもののような、本発明の他の、好ましくはより長い、ポリヌクレオチドの相補的領域と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成できるオリゴヌクレオチドであるポリヌクレオチドを、含む。本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA,DNA,またはいずれかの誘導体であってもよい。そうしたオリゴヌクレオチドの最小サイズは、与えられたオリゴヌクレオチドと、本発明のもう1つのポリヌクレオチド上の相補的配列との間で、安定なハイブリッドを形成するのに必要なサイズである。最小サイズ特性は本明細書に開示されている。前記オリゴヌクレオチドのサイズはまた、本発明に従うオリゴヌクレオチドの使用のために十分でなければならない。本発明のオリゴヌクレオチドは、非限定的に、別のポリヌクレオチドを同定するためのプローブとして、ポリヌクレオチドを増幅または伸長するためのプライマーとして、発現分析のための標的として、標的突然変異誘発および/または回収のための候補として、を含むさまざまな応用に、またはEG307ポリペプチドの産生または活性を変更するための農業的応用に、使用が可能である。そうした農業的応用は、例えば、アンチセンスベースの、三重らせん形成ベースの、リボザイムベースの、および/またはRNA薬剤ベースの、技術におけるそうしたオリゴヌクレオチドの使用を含む。それゆえ本発明は、1つまたは1つより多いそうした技術の使用により、植物における経済的生産性を高めるための、そうしたオリゴヌクレオチドおよび方法を含む。
D. EG1117ポリヌクレオチド
本発明の1つの態様は、下記の遺伝子の少なくとも1つと、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、単離された植物ポリヌクレオチドである:すなわち、O.sativa EG1117遺伝子、O.rufipogon EG1117遺伝子、Z.mays mays EG1117遺伝子、およびZ.mays parviglumis EG1117遺伝子である。そうした遺伝子類の明らかな特性は、これまでに記載されている。本発明のポリヌクレオチドは、単離された天然植物EG1117遺伝子またはその相同体を含むことが可能である。本発明のポリヌクレオチドは、1つまたは1つより多い調節領域、完全長または部分的コード領域、またはそれらの組合せを含むことが可能である。本発明のポリヌクレオチドの最小サイズは、厳格なハイブリッド形成条件下で、前述の遺伝子類の1つと安定なハイブリッドを形成できる最小サイズである。適切かつ好ましい植物は、上に開示されている。単離されたEG1117遺伝子およびそれらの相同体の特性は、「EG307ポリヌクレオチド」というタイトルの節で上記されている。
本発明の1つの態様は、本発明のEG1117ポリヌクレオチドに、またはそうしたEG1117ポリヌクレオチドの相同体に、またはそうしたポリヌクレオチドの相補物に、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する、植物EG1117ポリヌクレオチドである。EG1117ポリペプチドの少なくとも一部をコードする核酸配列の対応領域(類)と、少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約75%、さらに好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約90%、そしてなおさらに好ましくは少なくとも約95%の相同性をもつ核酸配列を含む、EG1117ポリヌクレオチドが好ましい。植物中に自然に存在する、EG1117ポリペプチドの少なくとも一部をコードできるEG1117ポリヌクレオチドがとくに好ましい。
本発明のとくに好ましいEG1117ポリヌクレオチドは、次のポリヌクレオチドの少なくとも1つと:、またはそうしたポリヌクレオチドの相同体または相補物に対して、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する。
本発明の好ましいポリヌクレオチドは、本発明のO.sativa EG1117遺伝子に、O.rufipogon EG1117遺伝子に、Z.mays mays EG1117遺伝子に、および/またはZ.mays parviglumis EG1117遺伝子に、ならびにそれらのポリヌクレオチドのいずれかの対立遺伝子変異体であるポリヌクレオチドに、ハイブリッド形成できる(すなわち、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する)核酸配列:配列番号92の少なくとも一部を含む。そうした好ましいポリヌクレオチドは、前記配列番号に含まれるものに加えて、非限定的に、完全長遺伝子、完全長コード領域、融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または多価保護化合物をコードするポリヌクレオチド、のようなヌクレオチドを含むことも可能である。
本発明の好ましいポリヌクレオチドは、本発明のO.sativa EG1117遺伝子に、O.rufipogon EG1117遺伝子に、Z.mays mays EG1117遺伝子に、および/またはZ.mays parviglumis EG1117遺伝子に、ならびにそれらのポリヌクレオチドのいずれかの対立遺伝子変異体であるポリヌクレオチドに、ハイブリッド形成できる(すなわち、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する)核酸配列:配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号109、配列番号110、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号116、配列番号117、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号145、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号154、配列番号155、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号166、配列番号167、および/または配列番号168の少なくとも一部を含む。そうした好ましいポリヌクレオチドは、前記配列番号に含まれるものに加えて、非限定的に、完全長遺伝子、完全長コード領域、融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および/または多価保護化合物をコードするポリヌクレオチド、のようなヌクレオチドを含むことも可能である。
本発明はまた、そうしたポリヌクレオチドが発現されるはずの細胞の、コドン使用性質に適応するように修飾されているポリヌクレオチドを含め、配列番号95の少なくとも一部を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号99の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号102の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号105の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号108の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号111の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号115の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号118の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号121の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号126の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号131の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号134の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号139の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号143の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号148の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号153の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号156の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号159の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号164の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号169の少なくとも一部をもつポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、を含む。
とくに、実施例の節に詳細に記載されているように、本発明のO.rufipogon EG1117ポリヌクレオチドの知識が、本発明のO.sativa、Z.mays mays、およびZ.mays parviglumis EG1117ポリヌクレオチド類の単離を可能にしたので、本発明のいくつかの植物EG1117ポリヌクレオチドの核酸配列を知ることは、例えば、(a)それらのポリヌクレオチドのコピーを作る、(b)そうしたポリヌクレオチドの少なくとも一部を含むポリヌクレオチド(例えば、完全長遺伝子、完全長コード領域、調節制御配列、断端型コード領域を含むポリヌクレオチド)を得る、および(c)他の植物についてのEG117ポリヌクレオチドを得る、ことを当業者に可能にする。そうしたポリヌクレオチドは、本発明の抗体で適切な発現ライブラリーをスクリーンすること;適切なライブラリーまたはDNAをスクリーンするために、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを用いる伝統的なクローニング技術;および本発明のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる、適切なライブラリーまたはDNAのPCR増幅;を含むさまざまな仕方で得ることも可能である。好ましいライブラリーは、「EG307ポリヌクレオチド」というタイトルの節で上記されている。
本発明はまた、植物EG1117遺伝子または他の植物EG1117ポリヌクレオチドを含むもののような、本発明の他の、好ましくはより長い、ポリヌクレオチドの相補的領域と、厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成できるオリゴヌクレオチドであるポリヌクレオチドを、含む。本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA,DNA,またはいずれかの誘導体であってもよい。そうしたオリゴヌクレオチドの最小サイズは、与えられたオリゴヌクレオチドと、本発明のもう1つのポリヌクレオチド上の相補的配列との間で、安定なハイブリッドを形成するのに必要なサイズである。最小サイズ特性は本明細書に開示されている。前記オリゴヌクレオチドのサイズはまた、本発明に従うオリゴヌクレオチドの使用のために十分でなければならない。その種の応用は、「EG307ポリヌクレオチド」というタイトルの節で上記されている。
E. 組み換え体分子
本発明はまた、宿主細胞中に前記ポリヌクレオチドを配達できる任意のベクター中へ挿入された、本発明の少なくとも1つの植物EG307またはEG1117ポリヌクレオチドを含む、組み換え体ベクターを含む。そうしたベクターは、本発明のポリヌクレオチドに隣接して天然には見られない核酸配列であり、当該ポリヌクレオチド(類)が由来する種以外の種から誘導される、異種核酸配列を含む。本明細書で使われる場合、誘導されたポリヌクレオチドは、あるポリヌクレオチドまたはあるポリヌクレオチドの部分に配列が、同一か、類似しているが、修飾塩基、バックボーン修飾、ヌクレオチド変化、および同類のもの、のような修飾を含むことがある、ものである。前記ベクターは、RNAまたはDNAのいずれでも、原核生物性または真核生物性のいずれでもよく、そして典型的には、ウイルスまたはプラスミドである。組み換え体ベクターは、本発明の植物EG307またはEG1117ポリヌクレオチドのクローニング、配列決定、および/または、ほかの操作に使用可能である。本明細書で組み換え体分子と呼ばれ、そして以下により詳細に記載される組み換え体ベクターの1つのタイプは、本発明のポリヌクレオチドの発現で使用可能である。好ましい組み換え体ベクターは、形質転換細胞中で複製可能である。
本発明の組み換え体ベクター中に含まれるような適当かつ好ましいポリヌクレオチドは、適当かつ好ましい植物EG307またはEG1117ポリヌクレオチドそれ自体のために、本明細書で開示されているようなものである。本発明の組み換え体ベクター中に、およびとくに組み換え体分子中に、含まれるようなとくに好ましいポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号91、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号59、および/または配列番号78、を含む。本発明の組み換え体ベクター中に、およびとくに組み換え体分子中に、含まれるような別の好ましいポリヌクレオチドは、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号109、配列番号110、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号116、配列番号117、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号145、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号154、配列番号155、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号166、配列番号167、および/または配列番号168、を含む。
本発明の単離された植物EG307またはEG1117ポリペプチドは、天然ポリペプチドの産生および回収、組み換え体ポリペプチドの産生および回収、および当該ポリペプチドの化学合成を含む、さまざまな仕方で産生可能である。1つの態様で、本発明の単離されたポリペプチドは、当該ポリペプチドの産生に有効な条件下で、当該ポリペプチドを発現し、そして当該ポリペプチドを回収できる細胞を培養することによって、産生される。培養に好ましい細胞は、当該ポリペプチドを発現できる組み換え体細胞で、その組み換え体細胞は、本発明の1つまたは1つより多いポリヌクレオチドで宿主細胞を形質転換することにより、産生される。細胞中へのポリヌクレオチドの形質転換は、ポリヌクレオチドを当該細胞中へ挿入可能な任意の方法により、達成可能である。形質転換技術は、非限定的に、形質移入(transfection)、電気穿孔(electroporation)、顕微注射(microinjection)、リポフェクション(lipofection)、吸着(adsorption)、およびプロトプラスト融合(protoplast fusion)を含む。組み換え体細胞は、単細胞性のままでも、あるいは組織、器官、または多細胞生物へ成長してもよい。本発明の形質転換ポリヌクレオチドは、染色体外に留まってもよく、あるいは発現されるそれらの能力が保持されるような仕方で、当該形質転換(すなわち、組み換え体)細胞の染色体内の1つまたは1つより多い部位へ組込まれてもよい。それで細胞を形質転換する、適切かつ好ましいポリヌクレオチドは、適切かつ好ましい植物EG307またはEG1117ポリヌクレオチドそれ自身について、本明細書に開示されているようなものである。本発明の組み換え体細胞中に含まれるとくに好ましいポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号91、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号57、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号77、配列番号59、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号84、および/または配列番号85、を含む。本発明の組み換え体細胞中に含まれる別の好ましいポリヌクレオチドは、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号104、配列番号106、配列番号107、配列番号109、配列番号110、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号116、配列番号117、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号144、配列番号145、配列番号146、配列番号147、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号154、配列番号155、配列番号157、配列番号158、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号165、配列番号166、配列番号167、および/または配列番号168、を含む。
形質転換に適した宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドで形質転換できる任意の細胞を含む。宿主細胞は、非形質転換細胞でも、すくなくとも1つのポリヌクレオチドで既に形質転換されている細胞のいずれでもよい。本発明の宿主細胞は、内因的に(すなわち、自然に)本発明の植物EG307またはEG1117ポリペプチドを産生できるか、または本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドで形質転換された後で、そうしたポリペプチドを産生できるかのいずれでもよい。本発明の宿主細胞は、本発明の少なくとも1つのポリペプチドを産生できる任意の細胞で、そして細菌、真菌(酵母およびイネいもち病菌のMagnaporthe griseaを含む)、寄生虫(線虫類、とくにXiphinema,Helicotylenchus,およびTylenchlohynchus属のものを含む)、昆虫、他の動物および植物の細胞を含んでもよい。
形質転換に適した宿主ウイルスは、非限定的に、イネの縞葉枯病ウイルス(rice stripe virus)およびヒエのホジャブランカウイルス(echinochloa hoja blanca virus)を含む、本発明のポリヌクレオチドで形質転換可能な任意のウイルスを含む。
好ましい態様では、植物組織内で生存し、複製できる、いわゆるエンドファイト(植物組織内生菌、endophytes)である非病原性共生細菌、または葉圏(phyllosphere)または根圏(rhizosphere)に定着できる、いわゆるエピファイト(植物表面寄生菌、epiphyte)である非病原性共生細菌、が使われる。そうした細菌は、Agrobacterium,Alcalgenes,Azospirillum,Azotobacter,Bacillus,Clavibacter,Enterobacter,Erwinia,Flavobacter,Klebsiella,Pseudomonas,Rhizobium,Serratia,StreptomycesおよびXanthomonas属の細菌を含む。TrichodermaおよびGliocladiumのような共生真菌も、同じ目的のための本発明ヌクレオチド配列の発現のために可能な宿主である。
組み換え体細胞は、1つまたは1つより多い転写制御配列を含む発現ベクターに機能可能に連結された、本発明の1つまたは1つより多いポリヌクレオチドをそれぞれが含む、1つまたは1つより多い組み換え体分子で宿主細胞を形質転換することにより、好ましくは産生される。「機能可能に連結された」という言葉は、宿主細胞中へ形質転換されたとき、当該分子が正しいリーディングフレーム中に発現されることができるような仕方での、発現ベクター中へのポリヌクレオチドの挿入を指す。本明細書で使われる場合、発現ベクターは、宿主細胞を形質転換でき、そして特定のポリヌクレオチドの発現を果すことができる、DNAまたはRNAベクターである。好ましくは、当該発現ベクターはまた、当該宿主細胞内で複製することもできる。発現ベクターは、原核性または真核性のいずれかでよく、そして典型的には、ウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターは、細菌、真菌、寄生虫、昆虫、他の動物および植物の細胞を含む、本発明の組み換え体細胞中で機能する(すなわち、遺伝子発現を指令する)任意のベクターを含む。本発明の好ましい発現ベクターは、細菌、酵母、真菌、昆虫、および哺乳動物の細胞中で、そしてより好ましくはこれまでに開示された細胞タイプ中で、遺伝子発現を指令可能である。
本発明の組み換え体分子はまた、(a)本発明の発現されたEG307またはEG1117ポリペプチドを、当該ポリペプチドを産生する細胞から分泌されることを可能にするための、分泌シグナル(すなわち、シグナルセグメント核酸配列)を含んでもよく、および/または(b)融合ポリペプチドとして、本発明のポリヌクレオチドの発現をもたらす融合配列を含んでもよい。適切なシグナルセグメント、および融合セグメント核酸によりコードされる融合セグメントの事例は、本明細書に開示されている。真核性組み換え体分子は、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列の周りに、および/または、内部に、介在性の、および/または、非翻訳性の配列を含んでもよい。適切なシグナルセグメントは、本発明のポリペプチドの分泌を指図できる、天然のシグナルセグメントまたは任意の異種シグナルセグメントを含む。器官およびオルガネラ特異的発現を高めるために用いられる、好ましいシグナルおよび融合配列は、非限定的に、アルセリンー5(arcelin−5)、Goossens,A.ら、「Phaseolus vulgarisのアルセリンー5遺伝子はトランスジェニックPhaseolus acutifoliusおよびArabidopsis植物における高速特異的発現を指図する」Plant Physiology(1999)120:1095−1104を参照、ファセオリン(phaseolin)、Sengupta−Gopalan,C.ら、「タバコ種子におけるマメのベータファセオリン遺伝子の発生的に調節された発現」PNAS(1985)82:3320−3324を参照、高ヒドロキシプロリン糖タンパク質、セルピン(serpin)、Yan,X.ら、「修飾ベータグルクロニダーゼ遺伝子とのシグナル配列の遺伝子融合は分泌経路/形質膜にベータグルクロニダーゼタンパク質の貯留をもたらす」Plant Physiology(1997)115:915−924を参照、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ 1、Essl,D.ら、「タバコのN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ 1からのN−末端77アミノ酸はNicotiana benthamiana細胞のゴルジ装置中にリポータータンパク質を貯留するのに十分である」Febs Letters(1999)453(1−2):169−73を参照、アルブミン、Vandekerckhove,J.ら、「修飾2S種子貯蔵タンパク質を用いてトランスジェニック植物中に産生されたエンケファリン類」BioTechnology 7:929−932(1989)を参照、およびPR1,Pen,J.ら、「植物中の活性工業酵素の能率的生産」Industrial Crops and Prod.(1993)1:241−250を参照、を含む。
本発明のポリヌクレオチドは、前記組み換え体細胞に適合し、そして本発明のポリヌクレオチドの発現を制御する、転写制御配列、翻訳制御配列、複製起点、および他の調節配列のような、調節配列を含む発現ベクターに機能可能に連結が可能である。とくに、本発明の組み換え体分子は、転写制御配列を含む。転写制御配列は、転写の開始、伸長、および終結を制御する配列である。プロモーター依存性遺伝子発現を、細胞型特異的に、組織特異的に、制御可能にする、または外部シグナルまたは作用物質により誘導可能にする、のに十分な、それらの転写制御配列が含まれる;そうした要素(エレメント、elements)は、当該天然(native)遺伝子の5’または3’領域に位置してもよい。とくに重要な転写制御配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレイター、およびリプレッサー配列のような、転写開始を制御するものである。適切な転写制御配列は、本発明の組み換え体細胞の少なくとも1つで機能できる、任意の転写制御配列を含む。さまざまなその種の転写制御配列が、当業者には知られている。好ましい転写制御配列は、非限定的に、tac,lac,trp,trc,oxy−pro,omp/lpp,rrnB,(λPLおよびλPR、およびその種のプロモーター類を含む融合類のような)バクテリオファージ ラムダ(λ),バクテリオファージT7,T7lac,バクテリオファージT3,バクテリオファージSP6,バクテリオファージSP01,メタロチオネイン、α−接合因子(mating factor),Pichia アルコールオキシダーゼ,(シンドビスウイルス サブゲノムプロモーター類のような)アルファウイルス サブゲノムプロモーター類、抗生物質耐性遺伝子、バキュロウイルス、Heliothis zea昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、中間初期プロモーター(intermediate early promoters)のようなサイトメガロウイルス、シミアンウイルス40,レトロウイルス、アクチン、レトロウイルス長末端反復(retroviral long terminal repeat),ラウス肉腫ウイルス、熱ショック(heat shock),リン酸および硝酸転写制御配列(phosphate and nitrate transcription control sequences),のように細菌、酵母、真菌、昆虫、および哺乳動物の細胞で機能するもの、ならびに原核生物細胞または真核生物細胞における遺伝子発現を制御できる他の配列、を含む。
とくに好ましい転写制御配列は植物転写制御配列である。転写制御配列の選択は、発現のための時間的および空間的必要条件次第で、および標的種次第でも変わる。したがって、任意の植物器官(葉、根、実生(seedlings)、未熟または成熟生殖構造体など)において、または植物発生の任意の段階で、本発明のヌクレオチド配列の発現が、好ましい。双子葉植物からの多くの転写制御配列が単子葉植物で効力があり、逆の場合も同じであることが、明らかにされているが、理想的には、双子葉植物転写制御配列が双子葉植物での発現に選択され、そして単子葉植物プロモーターが単子葉植物での発現に選択される。しかし、選択される転写制御配列の出所に制限はない;所望の細胞中で当該ヌクレオチド配列の発現の駆動に、それらが効力を発揮すれば十分である。 構成的に発現される好ましい転写制御配列は、非限定的に、アクチンまたはユビキチンをコードする遺伝子からのプロモーター、およびCaMV35Sおよび19Sのプロモーター、を含む。本発明のヌクレオチド配列はまた、化学的に調節されているプロモーターの調節下に発現されることも可能である。このことは、当該作物植物が誘導性化学物質で処理された場合にのみ、EG307またはEG1117ポリペプチドが合成されることを可能にする。遺伝子発現の化学誘導についての好ましい技術は、公開出願EP0332104(Ciba−Geigyに対する)および米国特許第5614395号に詳述されている。化学誘導の好ましいプロモーターは、タバコPR−1aプロモーターである。
好ましいカテゴリーのプロモーターは、当該植物の生理状態により誘導されもの(すなわち、創傷誘導性、水分ストレス誘導性、塩ストレス誘導性、疾病誘導性、および同種のもの)である。創傷部位に、およびまた植物病原体感染の部位に、発現される多数のプロモーターが記載されている。理想的には、そうしたプロモーターは感染の部位で局所的にのみ活性であるべきで、そしてこのような仕方で、EG307またはEG1117ポリペプチドは、蓄積が望ましい細胞にのみ蓄積する。この種の好ましいプロモーターは、Stanfordら、Mol.Gen.Genet.215:200−208(1989),Xuら、Plant Molec.Biol.22:573−588(1993),Logemannら、Plant Cell 1:151−158(1989),RohrmeirおよびLehle,Plant Molec.Biol.22;783−792(1993),Firekら、Plant Molec.Biol.22:129−142(1993),およびWarnerら、Plant J.3:191−201(1993)により記載されたものを含む。
好ましい組織特異的発現パターンは、非限定的に、緑色組織特異的、根特異的、茎特異的、および花特異的、を含む。緑色組織での発現に適したプロモーターは、光合成に関与する遺伝子を調節する多くのもの、および単子葉植物および双子葉植物の両方からクローン化されているものの多くを含む。好ましいプロモーターは、ホスホエノールカルボキシラーゼ遺伝子からのメイズPEPCプロモーターである(HudspethおよびGrula,Plant Molec.Biol.12:579−589(1989))。根特異的発現のための好ましいプロモーターは、de Framond(FEBS 290:103−106(1991);Ciba−Geigyに対するEP0452269)により記載されたものである。好ましい茎特異的プロモーターは、米国特許第5625136号(Ciba−Geigyに対する)に記載されているもので、そしてメイズtrpA遺伝子の発現を駆動するものである。
本発明の組み換え体分子は、その事例が本明細書に開示されているが、形質転換される細胞中で当該ポリヌクレオチド(類)の発現を効果的に調節できる、任意の転写制御配列の少なくとも1つに機能可能に連結され、これまでに記載された任意のポリヌクレオチドの少なくとも1つを含むことが可能な分子である。
本発明の組み換え体細胞は、本発明の任意のポリヌクレオチドの少なくとも1つで形質転換された任意の細胞を含む。それで細胞を転換する、適切かつ好ましいポリヌクレオチドならびに適切かつ好ましい組み換え体分子は、本明細書に開示されている。
本発明の組み換え体分子はまた、本発明の1つまたは1つより多いポリペプチドおよび植物で発現された場合有用な1つまたは1つより多い他のポリペプチドをコードする、植物EG307またはEG1117ポリヌクレオチドを含む1つまたは1つより多い組み換え体分子で共形質転換も可能である。
組み換え体DNA技術の使用は、例えば、宿主細胞内の当該ポリヌクレオチドのコピーの数、それらのポリヌクレオチドが転写される効率、生じた転写産物が翻訳される効率、および翻訳後修飾の効率、を操作することにより、形質転換されたポリヌクレオチドの発現を改善可能なことは、当業者には理解されているだろう。本発明のポリヌクレオチドの発現を増加させるのに有用な組み換え体技術は、非限定的に、高コピー数プラスミドに機能可能に連結されたポリヌクレオチド、1つまたは1つより多い宿主細胞染色体中への当該ポリヌクレオチドの組込み、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペラーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合部位、シャイン・ダルガルノ配列)の置換または修飾、宿主細胞のコドン使用に相当するような本発明のポリヌクレオチドの修飾、転写産物を脱安定化する配列の削除、および発酵中に組み換え体酵素産生から組み換え体細胞増殖を時間的に分離する制御シグナルの使用、を含む。本発明の発現された組み換え体ポリペプチドの活性は、そうしたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを断片化、修飾、または誘導化することにより、改良が可能である。
本発明の組み換え体細胞は、そうしたポリペプチドを産生するのに有効な条件下でそうした細胞を培養すること、そして当該ポリペプチドを回収することにより、本発明の1つまたは1つより多いポリペプチドを産生するのに使用も可能である。ポリペプチドを産生するのに有効な条件は、非限定的に、ポリペプチド産生を可能にする、適切な培地、バイオリアクター、温度、pH,および酸素条件を、含む。適切なまたは有効な培地は、その中で本発明の細胞が、培養されたとき、本発明のEG307またはEG1117ポリペプチドを産生できる、任意の培地を指す。そうした培地は、典型的には水性培地で、同化できる炭素、窒素、およびリン酸源、ならびに適切な塩類、ミネラル、金属、およびビタミンのような他の栄養素を含む。当該培地は、複雑な栄養素を含んでもよく、または特定最小培地でもよい。本発明の細胞は、非限定的に、バッチ式、フェッド・バッチ(fed−batch)式、細胞リサイクル式、および連続式発酵槽を含む、慣用の発酵バイオリアクター中で、培養可能である。培養はまた、震盪フラスコ、試験管、ミクロタイター皿、およびペトリ皿中で行うことも可能である。培養は、当該組み換え体細胞について適切な、温度、pH,および酸素含量で、行われる。そうした培養条件は、いずれの通常の当業者の専門技術の十分範囲内にある。
産生に使われるベクターと宿主系によって、本発明の生じたポリペプチドは、当該組み換え体細胞内に留まる;発酵培地中に分泌される:大腸菌(E.coli)のペリプラスム間隙のような2つの細胞性膜の間のスペース中へ分泌される;または細胞またはウイルスの膜の外表面上に保持される;のいずれかでよい。
「当該ポリペプチドを回収すること」という言葉は、当該ポリペプチドを含む発酵培地全体を集めることを単に指し、そして分離または精製の余分の工程を意味する必要はない。本発明のポリペプチドは、非限定的に、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、および分別可溶化(differential solubilization)のような、さまざまな標準的ポリペプチド精製技術を用いて、精製可能である。本発明のポリペプチドは、好ましくは、「本質的に純粋な」形で回収される。本明細書で使われる場合、「本質的に純粋な」は、診断薬または試験化合物としての当該ポリペプチドの有効な使用を可能にする純度を指し、そして好ましさの増加に伴って、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または98%均質な、を意味する。
F. トランスフェクトされた植物細胞およびトランスジェニック植物
EG307およびEG1117に関して、とくに好ましい組み換え体細胞は植物細胞である。「植物細胞」により、半透性膜に囲まれ、そしてプラスミドを含む任意の自己増殖性細胞を意味する。そうした細胞はまた、さらなる増殖が望まれるならば、細胞壁を必要とする。植物細胞は、本明細書で使われる場合、限定なしに、藻類、シアノバクテリア、種子、懸濁培養、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、苗条(shoots),配偶体(gametophytes)、胞子体(sporophytes)、花粉、および小胞子(microspores),を含む。
とくに好ましい態様で、本発明の、EG307またはEG1117ポリペプチドの少なくとも1つ(または両方)またはそれらの対立遺伝子または変異体型が、高等生物、例えば植物、で発現される。この場合、有効量の当該ポリペプチドを発現するトランスジェニック植物は、改善された経済的生産性を示す。本発明のヌクレオチド配列は、発現カセットへ挿入され、それは次いで、前記植物のゲノムへ好ましくは安定的に組込まれる。もう1つの好ましい態様では、当該ヌクレオチド配列は、非病原性自己複製ウイルスに含まれる。本発明に従って形質転換される植物は、単子葉植物または双子葉植物でよく、そして非限定的に、メイズ(トウモロコシ、maize),コムギ(小麦、wheat),オオムギ(大麦、barley),ライムギ(ライ麦、rye),アワ(粟、millet),エジプトマメ(ひよこ豆、chickpea),ヒラマメ(レンズ豆、lentil),アマ(亜麻、flax),オリーブ(olive),イチジクアーモンド(fig almond),ピスタチオ(pistachio),クルミ(胡桃、walnut),ビート(beet),パースニップ(parsnip);オレンジ(orange),レモン(lemon),ライム(lime),グレイプフルーツ(grapefruit),タンジェリン(tangerine),ミンネオラ(minneola),およびタンジェロー(tangelo)を非限定的に含む、柑橘類(citrus fruits);サツマイモ(甘藷、sweet potato),マメ(豆、bean),エンドウ(えんどう豆、pea),チコリ(chicory),レタス(lettuce),キャベツ(cabbage),カリフラワー(cauliflower),ブロッコリ(broccoli),カブ(蕪、turnip),ラディッシュ(大根、radish),ホウレンソウ(spinach),アスパラガス(asparagus),タマネギ(onion),ニンニク(garlic),コショウ(pepper),セロリ(celery),カボチャ(squash),アメリカカボチャ(pumpkin),アサ(麻、hemp),ズッキーニ(西洋カボチャ、zucchini),リンゴ(apple),ナシ(pear),マルメロ(quince),メロン(meron),プラム(西洋すもも、plum),サクランボ(cherry),モモ(peach),ネクタリン(nectarine),アンズ(apricot),イチゴ(strawberry),ブドウ(grape),ラズベリー(rasberry),クロイチゴ(blackberry),パイナップル(pineapple),アボカド(avocado),パパイア(papaya),マンゴー(mango),バナナ(banana),ダイズ(大豆、soybean),トマト(tomato),モロコシ(sorghum),サトウキビ(sugarcane),テンサイ(砂糖大根、sugarbeet),ヒマワリ(sunflower),ナタネ(菜種、rapeseed),クローバー(clover),タバコ(tabacco),ニンジン(carrot),ワタ(綿、cotton),アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ、alfalfa),コメ(イネ、rice),ジャガイモ(馬鈴薯、potato),ナス(eggplant),キュウリ(cucumber),シロイヌナズナ(Arabidopsis);および針葉(coniferou)および落葉樹( deciduous trees)のような木本植物( woody plant)、を含む。
一旦、所望のヌクレオチド配列が特定の植物種中へ形質転換されたならば、伝統的な育種技術を用いて、その種中で増殖させるか、または、とくに商業品種を含む、同種の他の品種中へ移してもよい。
したがって、本発明は、トランスフェクトされた植物細胞またはトランスジェニック植物を産生するための方法を提供するが、それは、a)タンパク質をコードし、そして当該細胞に先天的でないEG307および/またはEG1117ポリヌクレオチド(当該ポリヌクレオチドは実際には先天的であってもよいが、当該発現パターンは発生的に変えることも可能で、それでなお、好ましい効果をもたらす)に由来する、異種DNAセグメントを含むように、植物細胞をトランスフェクトすることで;ここで当該ポリヌクレオチドは、トランスジェニックタンパク質の発現のために有効に使用可能なプロモーターへ、機能可能に連結される;b)そこからトランスジェニック植物が再生されるような条件下で、前記細胞を最適に増殖させ、そして維持すること;c)前記DNAが発現され、前記植物中のEG307および/またはEG1117ポリペプチドの総量が変えられるような条件下で、前記トランスジェニック植物を最適に生育させること;の工程を含む。好ましい態様で、当該方法はさらに、前記異種DNAセグメントが発現される、前記異種DNAセグメントを含む、前記トランスジェニック植物の子孫のさらなる世代を得て、そして生育させることの工程を含む。本明細書で使われる場合、「異種DNA」、または、ある場合には、「トランスジーン(transgene)」は、特定の仕方で植物の形質を変えるために、(多分、異なるプロモーターにより駆動される)、外来遺伝子またはポリヌクレオチド、または、先天性または内因性遺伝子またはポリヌクレオチドの付加あるいは修飾版、を指す。
本発明はまた、EG307および/またはEG1117ポリペプチドをコードする異種DNAを含む、植物細胞も提供する。好ましい態様では、当該トランスジェニック植物細胞は、トランスジェニック植物の増殖材料である。本発明はまた、進化的に有意のEG307および/またはEG1117ポリヌクレオチドからのプロモーター、エンハンサー、またはイントロンポリヌクレオチド、およびリポータータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、構築体でトランスフェクトされた宿主細胞を含む、トランスフェクトされた宿主細胞も提供する。
本発明はまた、植物における改善された経済的生産性提供をする方法を提供するが、それは、a)それによって前記植物細胞におけるEG307および/またはEG1117発現が変えられる、EG307および/またはEG1117ポリペプチドをコードするトランスジーンをもつトランスフェクトされた植物細胞を産生すること;b)そこで当該EG307および/またはEG1117トランスジーンが当該トランスジェニック植物中で発現される、トランスフェクトされた植物細胞からトランスジェニック植物を生育させること;を含む。前記トランスジーンの発現は、EG307および/またはEG1117発現の増加を含む。いくつかの態様で、前記トランスジーンの発現は、先天性のEG307および/またはEG1117遺伝子を干渉することも可能なRNAを産生し、その結果、当該先天性遺伝子の発現が除去されるか、低減されて、有用な結果をもたらす。
本発明はまた、当該植物中に導入されたベクター中での発現を含む、植物細胞において発現されるEG307および/またはEG1117ポリペプチドをコードする、異種DNAを含むトランスジェニック植物、を提供する。
本発明はまた、植物組織中でEG307および/またはEG1117遺伝子をコードするポリヌクレオチドに、機能可能に連結された転写制御エレメントを含む単離されたポリヌクレオチド、を提供する。好ましい態様で、前記転写制御エレメントは、EG307および/またはEG1117遺伝子に先天的なプロモーターである。
本発明はまた、トランスフェクトされた細胞を作る方法を提供するが、それは、a)栽培化植物中に進化的に有意なEG307および/またはEG1117ポリヌクレオチドを同定すること;b)転写または翻訳調節エレメント、エンハンサー、イントロン、または他の5’または3’フランキング配列でもよい非ポリペプチドコード配列を同定するために、前記EG307および/またはEG1117ポリヌクレオチドを使用すること;c)前記非ポリペプチドコード配列およびリポータータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む構築体を組立てること;そしてd)前記構築体を宿主細胞中へトランスフェクトすること;を含む。本発明はまた、本方法に従って産生されたトランスフェクト細胞も提供する。1つの態様で、当該宿主細胞は植物細胞であり、そして当該方法はさらに、トランスジェニック植物を再生するのに適した条件下で、当該細胞を増殖および維持する工程を含む。また、当該方法により産生されたトランスジェニック植物も提供される。
本発明の核酸配列は、好ましくはトランスジェニック植物で発現され、それにより、当該トランスジェニック植物中に対応するEG307および/またはEG1117ポリペプチドの生合成を起す。このようにして、改善された経済的生産性に関係する特性をもつトランスジェニック植物が作製される。トランスジェニック植物におけるそれらの発現のために、本発明のヌクレオチド配列は、修飾および最適化を必要とするかも知れない。好ましい遺伝子配列は、単子葉および双子葉植物種の両方で適当に発現されてもよいが、配列は、単子葉植物または双子葉植物の特定のコドン優位性およびGC含量優位性を説明するように、修飾してもよいが、これらの優位性は相違することが明らかにされているからである(Murrayら,Nucl.Acids Res.17,477−498(1989))。上記のもののような、前記ヌクレオチド配列内でつくられるのに必要なすべての変化は、公開された特許出願、(Monsantoに対する)EP0385962,(Lubrizolに対する)EP0359472、および(Ciba−Geigyに対する)WO93/07278に記載された方法を用いる、部位特異的変異誘発、PCR、および合成遺伝子構築の周知技術を用いて、つくられる。
翻訳の効率的な開始には、開始メチオニンに隣接する配列が修飾を必要とすることもある。例えば、それらは、植物で有効なことが知られている配列の封入により修飾されることも可能である。Joshiは植物用に適切なコンセンサスを示唆しており(NAR 15:6643−6653(1987))、そしてClontechは別のコンセンサス翻訳イニシエーターを示唆している(1993/1994カタログ,210ページ)。これらのコンセンサスは、本発明のヌクレオチド配列との使用に適している。当該配列は、(第2アミノ酸非修飾のままで)ATGまでそしてそれを含む、または別に(当該トランスジーンの第2アミノ酸を修飾する可能性がある)ATGに続くGTCまでそしてそれを含む、ヌクレオチド配列を含む構築体へ取込まれる。
トランスジェニック植物における当該ヌクレオチド配列の発現は、植物で機能性であることが示されている転写制御エレメントにより駆動される。これらの調節エレメントの制御下でのポリヌクレオチドによる植物の形質転換は、当該形質転換植物中での制御された発現を提供する。そうした転写制御エレメントは、上に記載されている。転写の適当なイニシエーターの選択に加えて、植物におけるEG307および/またはEG1117ポリペプチドの発現のための構築は、異種ヌクレオチド配列の下流に付着される適当な転写ターミネーターを必要とする。いくつかのそうしたターミネーターは、当該技術分野で入手でき、そして知られている(例えば、CaMVからのtm1、rbcSからのE9)。植物中で機能することが知られている任意の入手可能なターミネーターが、本発明の関係で使用可能である。
多くの他の配列が、本発明で記載されている発現カセット中へ取込み可能である。これらは、イントロン配列(例えば、Adhlおよびbronzelからの)およびウイルスリーダー配列(例えば、TMV,MCMV,およびAMVからの)のような発現を高めることが明らかにされている配列、を含む。
本発明はまた、植物における収量を増加させる方法を提供するが、それは、a)EG307および/またはEG1117ポリペプチドをコードするトランスジーンをもち、そして当該トランスジーンが当該遺伝子(類)の制御された発現に適した調節配列の制御下にある、トランスジェニック植物細胞を産生すること;そしてb)そこで当該EG307および/またはEG1117トランスジーンが当該トランスジェニック植物中で発現される、トランスジェニック植物細胞からトランスジェニック植物を生育させること;を含む。
本発明はまた、植物における収量を増加させる方法を提供するが、それは、a)EG307および/またはEG1117遺伝子を含むトランスジーンをもつトランスフェクト植物細胞を、EG307および/またはEG1117遺伝子の構成的発現を提供するプロモーターの制御下で、産生すること;そしてb)そこで当該EG307および/またはEG1117トランスジーンが当該トランスジェニック植物中で構成的に発現される、トランスジェニック植物細胞からトランスジェニック植物を生育させること;を含む。
本発明はまた、トランスジェニック植物において制御可能な収量を提供する方法を提供するが、それは、a)EG307および/またはEG1117遺伝子を含むトランスジーンをもつトランスフェクト植物細胞を、EG307および/またはEG1117遺伝子の制御可能な発現を提供するプロモーターの制御下で、産生すること;そしてb)そこで当該EG307および/またはEG1117トランスジーンが当該トランスジェニック植物中で制御可能的に発現される、トランスジェニック植物細胞からトランスジェニック植物を生育させること;を含む。1つの態様で、EG307および/またはEG1117遺伝子は、組織特異的または細胞型特異的プロモーターを用いて、または化学シグナルまたは作用物質のような外部のシグナルまたは作用物質の導入により活性化されるプロモーターにより、発現される。
本発明のヌクレオチド配列の発現を、植物中の異なる細胞局在に標的すること、が好ましい。ある場合には、シトゾル中の局在化が好ましく、また他の場合には、ある細胞下オルガネラ中の局在化が好まれこともあろう。異種DNAコードポリペプチドの細胞下局在化は、当該技術分野で周知の技術を用いて行われる。典型的には、既知のオルガネラ標的化遺伝子産物からの標的ペプチドをコードするDNAは、当該ヌクレオチド配列の上流に操作され、そして融合される。多くのその種の標的配列が葉緑体について知られており、そして異種構築体中におけるそれらの働きが明らかにされている。本発明のヌクレオチド配列の発現はまた、宿主細胞の小胞体に、あるいは空胞に標的される。これを達成するための技術は、当該技術分野で周知である。
植物形質転換に適するベクターは、本明細書の別のこところに記載されている。アグロバクテリア(Agrobacterium)仲介形質転換には、バイナリーベクターまたは少なくとも1つのT−DNA境界配列をもつベクターが適しており、一方、直接遺伝子移入には、任意のベクターが適しており、そして興味のある構築体のみを含む線形DNAが好まれよう。直接遺伝子移入の場合、単一DNA種による形質転換または共形質転換が使用可能である(Schocherら,Biotechnology 4:1093−1096(1986))。直接遺伝子移入およびアグロバクテリア仲介移入のいずれについても、形質転換は、通常(しかし必ずしも常にではなく)、抗生物質(カナマイシン、ハイグロマイシンまたはメトトレキセート)または除草剤(バスタ(basta))に抵抗性を与える選択マーカーとともに、行われる。しかし、選択マーカーの選択は、本発明に決定的なものではない。
もう1つの好ましい態様で、本発明のヌクレオチド配列は、色素体(プラスチド、plastid)ゲノム中へ直接形質転換される。色素体形質転換の主な利点は、色素体が、単一プロモターの制御下で複数のオープンリーディングフレームを発現できることである。色素体形質転換技術は、米国特許第5451513号、第5545817号および第5545818号に、PCT出願第WO95/16783号に、そしてMcBrideら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,7301−7305に、詳しく記載されている。葉緑体形質転換の基本技術は、例えば、微粒子銃(biolistics)またはプロトプラスト形質転換(例えば、塩化カルシウムまたはPEG仲介形質転換)を用いて、適当な標的組織中へ興味ある遺伝子とともに、選択マーカーを隣接するクローン化色素体DNAの領域を導入することを含む。ターゲッティング配列と呼ばれる、1から1.5kbフランキング領域は、色素体ゲノムとの相同組み換えを容易にし、それによって当該プラストーム(plastome)の特定領域の交換または修飾を可能にする。当初、スペクチノマイシンおよび/またはストレプトマイシンに抵抗性を付与する葉緑体16S rRNAおよびrps12遺伝子中の点変異が、形質転換用の選択マーカーとして利用されている(Svab,Z.,Hajdukiewicz,P.およびMaliga,P.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,8526−8530;Staub,J.M.およびMaliga,P.(1992)Plant Cell 4,39−45)。これは、標的葉の100回爆撃当り約1回の頻度で、安定なホモプラスミックな(homoplasmic)形質転換体を生じた。これらのマーカー間のクローニング部位の存在は、外来遺伝子の導入のための色素体標的ベクターの創出を可能にした(Staub,J.M.およびMaliga,P.(1993)EMBO J.12,601−606)。形質転換頻度の実質的増加が、劣性rRNAまたはr−ポリペプチド抗生物質耐性遺伝子の、優性選択マーカーであるスペクチノマイシン解毒酵素アミノグリコシド−3’−アデニルトランスフェラーゼをコードする細菌性aadA遺伝子との、交換により得られる(Svab,Z.およびMaliga,P.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,913−917)。以前、このマーカーは、緑藻Chlamydomonas reihardtiiの色素体ゲノムの高頻度形質転換に用いられて成功している(Goldschmidt−Clermont,M.(1991)Nucl.Acids Res.19:4083−4089)。色素体形質転換に有用な他の選択マーカーは、技術分野では知られており、そして本発明の範疇に含まれる。典型的には、ホモプラスチド状態に達するには、形質転換後に約15−20細胞分裂周期が必要である。各植物細胞に存在する環状色素体ゲノムの数千コピーのすべてに、相同組み換えにより遺伝子が挿入される色素体発現は、全可溶性植物ポリペプチドの10%を容易に超える発現レベルを可能にするのに、核発現遺伝子に対して膨大なコピー数の利点を利用している。好ましい態様で、本発明のヌクレオチド配列は、色素体ターゲティングベクター中へ挿入され、所望の植物宿主の色素体ゲノム中へ形質転換される。本発明のヌクレオチド配列を含む色素体ゲノムについてホモプラスティックな植物が得られ、そして好ましくは当該ヌクレオチド配列の高発現が可能である。
本発明はまた、植物収量関係遺伝子を同定する方法も提供するが、それは、a)植物組織試料を提供すること;b)当該植物組織試料中に候補植物収量関係遺伝子を導入すること;c)当該植物組織試料内で当該候補植物収量関係遺伝子を発現させること;およびd)当該植物組織試料が収量応答に変化を示すかどうかを決定することで、ここで応答の変化が植物収量関係遺伝子を同定すること、を含む。本発明はまた、当該方法に従って単離された植物収量関係遺伝子も提供する。
収量応答は、本明細書で使われる場合、当業者に周知の技術により測定される。穀物の場合、収量応答は、例えば、次の計量値、すなわち、粒重、粒長、粒重/1000粒、穂のサイズ、穂の数、および粒の数/穂、の1つまたは1つより多くにより決定される。
G. EG307またはEG1117抗体
本発明はまた、本発明のEG307またはEG1117ポリペプチドに、またはそのミメトープに、選択的に結合できる単離された抗体を含む。その種の抗体は、本明細書では抗EG307または抗EG1117抗体とも呼ばれる。本態様のとくに好ましい抗体は、抗O.sativa EG307抗体、抗O.rufipogon EG307抗体、抗Z.mays EG307抗体、抗O.sativa EG1117抗体、抗O.rufipogon EG1117抗体、抗Z.mays EG1117抗体、を含む。
単離された抗体は、それらの自然環境から取出された抗体である。用語「単離された」は、そうした抗体の純度の状態を指すのではない。そうしたものとして、単離された抗体は、そうした抗体を含む抗血清、またはさまざまな程度に精製された抗体を含むこともある。
本明細書で使われる場合、用語「に選択的に結合する」は、本発明の特定のポリペプチドおよびそのミメトープに優先的に結合するための、本発明の抗体の能力を指す。結合は、免疫ブロット検定、免疫沈澱検定、放射線免疫検定、酵素免疫検定(例えば、ELISA)、免疫蛍光抗体検定、および免疫電子顕微鏡法を含む、当業者に知られたさまざまな方法を用いて、測定可能である;例えば、Sambrookら,同誌、およびHarlowおよびLane,1990,同誌を参照されたい。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。本発明の抗体は、当該抗体を得るために使用したポリペプチドまたはミメトープのエピトープの少なくとも1つに選択的に結合できる、一本鎖抗体を含む、抗体断片および遺伝的に工作された抗体のような、機能的同等物を含む。本発明の抗体はまた、1つ以上のエピトープに結合できるキメラ抗体も含む。好ましい抗体は、本発明のポリヌクレオチドにより、少なくとも一部は、コードされるポリペプチドまたはそのミメトープに応答して、つくられる。
本発明の抗体を産生する好ましい方法は、(a)当該抗体を産生するために、本発明のポリペプチドまたはそのミメトープの有効量を動物に投与すること、そして(b)当該抗体を回収すること、を含む。もう1つの方法で、本発明の抗体は、本発明のEG307またはEG1117ポリペプチドを産生するのに、これまで開示されたような技術を用いて、組み換え的に産生される。
本発明の抗体は、本発明の範疇内にあるさまざまな潜在的用途をもっている。例えば、そうした抗体は、(a)植物によるEG307またはEG1117の発現を検出するための検定での試薬として、および/または(b)発現ライブラリーをスクリーンするための、および/またはポリペプチドおよび他の夾雑物の混合物から本発明の所望のポリペプチドを回収するための、手段として、使うことも可能である。さらに、本発明の抗体は、そうした植物を直接殺すために、細胞毒性物質を植物に標的(ターゲット)するために使うことも可能である。ターゲティングは、当業者に知られている技術を用いて、前記細胞毒性物質にそうした抗体を共役させる(すなわち、安定に結合させる)ことにより、達成可能である。適切な細胞毒性物質は当業者に知られている。適切な細胞毒性物質は、非限定的に、ジフテリア(diphtheria)毒素、リシン(ricin)毒素、シードモナス外毒素(Pseudomonas exotoxin)、モデシン(modeccin)毒素、アブリン(abrin)毒素、およびシガ(shiga)毒素のような、二本鎖ポリペプチド(すなわち、AおよびB鎖をもつ毒素);アメリカヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスポリペプチド、α−アマニチン(α−amanitin)、およびリボソーム阻害性ポリペプチドのような、単鎖毒素;およびメルファラン(melphalan)、メトトレキセート(methotrexate)、ナイトロジェンマスタード(nitrogen mustard)、ドキソルビシン(doxorubicin)、およびダウノマイシン(daunomycin)のような、化学毒素、を含む。好ましい二本鎖毒素は、当該毒素の毒性ドメインおよびトランスロケーションドメインを含むが、当該毒素の固有の細胞結合性ドメインを欠くように、修飾される。
H. 成長促進組成物の処方
本発明はまた、本発明のEG307またはEG1117ポリペプチドの少なくとも1つまたは両方を含む組成物を含む。成長を効率的に制御するために、そうした組成物は、好ましくは十分量のポリペプチドを含む。そうした量は、標的作物次第で、および湿度、温度、または土壌のタイプのような、環境条件次第で、変わる。好ましい態様では、EG307および/またはEG1117ポリペプチドを含む組成物は、当該ポリペプチドを発現する宿主細胞を、余分の精製を加えずに、含む。もう1つの好ましい態様では、EG307および/またはEG1117ポリペプチドを発現する細胞は、成長促進剤としてのそれらの使用前に、凍結乾燥される。もう1つの態様で、EG307またはEG1117ポリペプチドは、宿主細胞から分泌されるように、操作される。それらが発現される宿主細胞から当該ポリペプチドの精製が望ましい場合、EG307またはEG1117ポリペプチドのさまざまな程度の精製が行われる。
本発明はさらに、本明細書に記載の1つまたは1つより多い化合物または化合物の群と均一に混合される、本発明の少なくとも1つのEG307またはEG1117ポリペプチドを含む、組成物の調製を含む。本発明はまた、EG307またはEG1117ポリペプチド、またはEG307またはEG1117ポリペプチドを含む組成物の、植物への適用を含む、植物を取扱う方法に関する。EG307またはEG1117ポリペプチドは、別の化合物とともに、同時にまたは連続して、組成物の形で作物面積に、または処理される植物に、適用することも可能である。これらの化合物は、肥料または微量栄養素供与体の両方でも、または植物の成長に影響する他の調製物でもよい。それらはまた、選択的な除草剤、殺虫剤、殺かび剤、殺菌剤、殺線虫剤、殺軟体動物剤、または、処方技術分野で習慣的に用いられる、さらなる担体、界面活性剤、適用促進補助剤との共用が望まれるのであれば、これらの調製物のいくつかの混合物でもよい。適当な担体および補助剤は、固体または液体でよく、そして処方技術で通常用いられる物質、例えば、天然または再生のミネラル物質、溶剤、分散剤、展着剤(wetting agent),粘着付与剤(tackifers)、結合剤、または肥料、に相当する。
本発明のEG307またはEG1117ポリペプチドを適用する好ましい方法は、土壌、水、または植物の茎葉(foliage)を散布することによる。適用の回数および適用の割合は、植物のタイプおよび期待する収量の増加次第である。EG307またはEG1117ポリペプチドはまた、液体組成物で当該植物の場所を充満させることにより、土壌を経由して根を通じ(全身作用)、または固体の形で土壌に当該化合物を適用することにより、例えば顆粒型で(土壌施用)、当該植物に浸透させることも可能である。EG307またはEG1117ポリペプチドはまた、EG307またはEG1117ポリペプチドを含む液体処方物で種子を含浸させるか、または固体処方物でそれらを被覆するか、のいずれかにより、種子に適用してもよい(コーティング)。特殊な場合には、別のタイプの適用も可能で、例えば、当該植物の茎や芽の選択的処理である。 EG307またはEG1117ポリペプチドは、非修飾型で、または好ましくは、処方の技術分野で慣用的に用いられている補助剤とともに、使用され、そしてそれゆえ、既知の仕方で、乳化可能な濃縮物、被覆可能なペースト、直接散布可能なまたは希釈可能な溶液、希釈乳剤、水和剤(wettable powders)、可溶性粉末、粉剤(dust)、顆粒、およびまた、例えば、ポリマー物質中のカプセル剤、に処方される。当該組成物の性質と同様に、噴霧、霧化、散粉、散布、または注入のような、適用の方法が、意図する対象物およびその場の状況に従って、選ばれる。
EG307またはEG1117ポリペプチドを含む処方物、組成物、または調製物および、適切な場合には、固体または液体の補助剤が、既知の仕方で、例えば、配合剤、例えば、溶剤、固体担体、および適切な場合には、表面活性化合物(界面活性剤)とともに、EG307またはEG1117ポリペプチドを均一に混合および/または粉砕することにより、調製される。
適当な溶剤は、芳香族炭化水素、好ましくは8から12の炭素原子をもつ画分、例えば、キシレン混合物または置換ナフタレン類、ジブチルフタレートまたはジオクチルフタレートのようなフタレート類、シクロヘキサンまたはパラフィン類のような脂肪族炭化水素、エタノール、エチレングリコール、モノメチルまたはモノエチルエーテルのようなアルコール類およびグリコール類およびそれらのエーテル類およびエステル類、シクロヘキサノンのようなケトン類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキサイドまたはジメチルホルムアミドのような強極性溶剤、ならびにエポキシ化ココナッツ油のようなエポキシ化植物油または大豆油または水、を含む。
例えば、粉剤および分散性粉末用に使われる固形担体は、方解石、滑石、カオリン、モンモリロン石(montmorillonite)、またはアタプルギット(attapulgite)のような、普通は、天然の鉱物充填剤である。物理的性質を改善するために、高度に分散性のケイ酸または高度に分散性の吸収性ポリマーを添加することも可能である。適当な顆粒化吸着性担体は、多孔タイプで、例えば、軽石、砕煉瓦、シーピアライト(sepiolite)またはベントナイト(bentonite)であり;そして適当な非吸着性担体は、方解石または砂のような材料である。加えて、無機または有機性質の非常に多くの顆粒化前の材料を使用することも可能で、例えば、とくに白雲石(dolomite)または粉砕された植物残留物である。
適当な表面活性化合物は、良好な乳化性、分散性、および湿潤性の性質をもつ、非イオン性、陽イオン性および/または陰イオン性界面活性剤である。用語「界面活性剤」は、界面活性剤の混合物を含むとも理解されよう。適当な陰イオン性界面活性剤は、水溶性石鹸および水溶性合成表面活性化合物の両方であってもよい。
適当な石鹸は、アルカリ金属塩、アルカリ性土金属塩、または高級脂肪酸(10から22炭素原子の鎖)の非置換または置換アンモニウム塩、例えば、オレイン酸またはステアリン酸の、または例えば、ココナッツ油または獣脂から得ることができる天然脂肪酸混合物の、ナトリウムまたはカリウム塩である。脂肪酸メチルタウリン塩も、使うことが可能である。
しかし、さらに頻繁に、いわゆる合成界面活性剤、とくに脂肪スルフォン酸塩、脂肪硫酸塩、スルフォン酸化ベンジイミダゾール誘導体、またはアルキルアリールスルフォン酸、が使われる。
前記脂肪スルフォン酸塩または硫酸塩は、普通、アルカリ金属塩、アルカリ性土金属塩、または非置換または置換アンモニウム塩で、そしてアルキルラジカル類のアルキル部分(moiety)も含む、8から22炭素アルキルラジカルをもち,例えば、リグノンスルフォン酸の、ドデシル硫酸の、または天然脂肪酸から得られた脂肪アルコール硫酸の混合物の、ナトリウムまたはカルシウム塩である。これらの化合物はまた、脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物の硫酸エステルおよびスルフォン酸の塩も含む。前記スルフォン酸化ベンジイミダゾール誘導体は好ましくは、2スルフォン酸基、および8から22炭素原子を含む1脂肪酸ラジカルを含む。アルキルアリールスルフォン酸の例は、ドデシルベンゼンスルフォン酸、ジブチルナフタレンスルフォン酸の、またはナフタレンスルフォン酸/ホルムアルデヒド縮合産物の、ナトリウム、カルシウム、またはトリエタノールアミン塩である。対応するリン酸塩、例えば、4から14モルのエチレンオキシドとのp−ノニルフェノールの付加物のリン酸エステルの塩も適している。
非イオン性界面活性剤は好ましくは、脂肪族またはシクロ脂肪族アルコール、または飽和または不飽和脂肪酸およびアルキルフェノールのポリグリコールエーテル誘導体で、当該誘導体は、(脂肪族)炭化水素部分に3から30グリコールエーテル基および8から20炭素原子、およびアルキルフェノールのアルキル部分に6から18炭素原子を含む。
別の適当な非イオン性界面活性剤は、ポリプロピレングリコール、エチレンジアミンプロピレングリコール、およびアルキル鎖に1から10炭素原子を含むアルキルポリプロピレングリコールと、ポリエチレンオキシドとの水溶性付加物であり、それらの付加物は20から250のエチレングリコールエーテル基と10から100のプロピレングリコールエーテル基を含む。これらの化合物は、通常、プロピレングリコール単位当り1から5のエチレングリコール単位を含む。
非イオン性界面活性剤の代表例は、ノニルフェノールポリエトキシエタノール類、ひまし油ポリグリコールエーテル類、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコール、およびオクチルフェノキシエトキシエタノールである。ポリオキシエチレンソルビタンおよびポリオキシエチレンソルビタントリオレエートの脂肪酸エステルも適当な非イオン性界面活性剤である。
陽イオン性界面活性剤は好ましくは、N−置換基として少なくとも1つのC8−C22アルキルラジカル、および別の置換基として低級の非置換性またはハロゲン化された、アルキル、ベンジルまたは低級のヒドロキシアルキルラジカルをもつ、4級アンモニウム塩である。それらの塩は好ましくは、ハロゲン化物、メチル硫酸類、またはエチル硫酸類、の形で、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムまたは臭化ベンジルジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウムである。処方の技術分野で慣習的に用いられる界面活性剤は、例えば、“McCutcheon‘s Detergents and Emulsifiers Annual”,MC Publishing Corp.Ringwood,ニュージャージー、1979,およびSiselyおよびWood,“Encyclopedia of Surface Active Agents”,Chemical Publishing Co.,Inc.,ニューヨーク、1980に記載されている。
IV. 中立条件下で進化した遺伝子の同定
本明細書に詳細に記載されているように、KA/KS分析は、正に選択されたタンパク質コード遺伝子の同定を可能にする;しかしこのタイプの分析はまた、中立条件下で進化している遺伝子のような、もう1つのセットの進化的に有意の遺伝子を同定するのに、使用することも可能である。
KA/KS比>1は、正の選択の役割を意味するのに対して、逆にKA/KS比<1は、タンパク質コード遺伝子が負に選択された(すなわち、保存されている)ことを示唆する。本明細書の別のところに記されているように、大部分の遺伝子(事実、圧倒的に多数)は保存されている。非常に少数の遺伝子が正に選択されるので、稀な遺伝子だけがKA/KS比>1を示す。本明細書に記載されているように、穀類(ならびに他の作物)の栽培品種化の間に正に選択された遺伝子は、有意の商業的価値をもつ;しかし栽培品種化植物のゲノム中に含まれるもう1つのセットの遺伝子は、(当該栽培品種化子孫で所望の増強された形質をつくるようには)正に選択されてもおらず、負に選択され(保存され)てもいない。上記のように、このサブセットの植物遺伝子もまた、有意の商業的価値をもち、そしてこのセットの遺伝子は、本明細書に記載されている、KA/KS分析を用いることにより、同定が可能である。
これらの遺伝子は、乾燥、疾病、(非限定的に、昆虫、植食動物、および微生物を含む)有害生物、高塩濃度、および他のストレスに対して当該植物を抵抗性にするものを、含む。有害生物による攻撃、および乾燥または高塩濃度、などによる障害は、農家、種子会社、および大農業会社にとって、数十億ドルもの年間損失の原因である。これらのストレスに対して野生植物を抵抗性にする遺伝子の同定は、したがって、社会的にも(飢えた世界に対して)、そして経済的にも、大きな価値がある。
これらの遺伝子を検出するための方法は、次のようである。まず植物が栽培化された後(そして引続き、その子孫がさらに栽培化されるにつれて)、例えば、ヒトは当該植物の要求に合うように十分量の水を供給する、という意味で、それらの植物は「甘やかされた」ことになる。それゆえ、その植物は、「自分自身で」乾燥ストレスを処理する必要がない。同様に、ヒトは、(物理的にか、殺虫剤の使用かのいずれかにより)害虫を除き、そして栽培化植物を植食動物から隔離するので、当該栽培化植物はこれらの有害生物に対処する必要に常時直面することはない。実際、栽培化穀物は、それらの野生親類/祖先より、例えば、乾燥、高塩濃度、有害生物、および他のストレスに、普通はずっと傷つきやすい。これは、生物が、生存に必要ない能力を一般には維持しないからである。ヒトがこれらの役割を引受けるので、栽培化植物は、ストレス関係形質のためにコードする遺伝子を維持する高い代謝コスト(「代謝浪費」)を節約できる。
抵抗性のこの消失は、当該祖先とその甘やかされた栽培化子孫との間の遺伝的相違(すなわち、変化)に当然由来するはずである。結果として機能の消失を生じるこれらの遺伝的変化は、3つの異なる機構によって起る可能性がある。これらの形質をコードする遺伝子が、当該子孫作物のゲノムから実際には消失していることもあり得る。遺伝子消失は、実証されており、そしてよく知られた現象である。同様に、子孫作物で「不要な」形質をコードする遺伝子が、当該ゲノム中にまだ存続しているが、例えば、プロモーター変化の結果として、もはや発現されないこともあり得る。あるいは、これらの不要な形質をコードする遺伝子が、まだ当該ゲノムの一部であって、そしてまだ発現されるが、当該遺伝子が、そのタンパク質産物を、その祖先相同体に比べて、機能しなくするか、完全には機能しないようにするヌクレオチド置換を蓄積しているのかも知れない。これらの遺伝子は、このように、中立的に進化している。
中立アミノ酸交換は、(正または負のいずれかの)選択圧のない、遺伝子のタンパク質産物中に蓄積する。関心のある遺伝子についての機能性タンパク質産物を維持する必要がなくなった栽培化植物については、分子的中立の状態が存在する。これは、有害生物、疾病、乾燥、塩など、の抵抗性のような形質をコードする遺伝子を含む。そうした完全に拘束されない、中立的に進化する遺伝子は、KA/KS分析による検出の申し分のない候補であるが、それは、祖先および子孫植物からの相同体を比較した場合、中立的に進化する遺伝子は、KA/KS比=1を理想的に示すであろう。
それゆえ、本明細書で発明され、そして記載されている方法は、祖先植物についてのcDNAライブラリーの高性能配列決定すること、その結果得られたESTsを現代子孫からのESTsのデータベースに対してBLASTINGすること、そして相同ペアについてKA/KS分析を行うこと、を含む。この方法の詳細は、正に選択された遺伝子の場合について、本明細書の別のところで説明される。KA/KS比=1をもつ遺伝子は、重要なストレス抵抗形質を制御する、そしてこれらの遺伝子は遺伝子類のセットであり、この比を用いて効果的にそして迅速に同定が可能である。この商業的に価値のある遺伝子のセットは、有害生物、疾病、乾燥、高塩濃度など、に対する抵抗性のような望ましい形質をコードするものを含む。これらの遺伝子を最もよく同定するために、現代栽培化種および祖先種の両方からのEST配列決定は、非常に慎重に、高水準の精度で実施するべきである。GenBankで入手可能な穀類ESTデータベースが利用可能であるが、本目的のために特別に調製されたcDNAライブラリーからのESTsを再配列決定してもよい。配列決定の精度は重要で、これは、1に等しいKA/KS比をもつ、祖先および現代相同体間の遺伝子ペア比較の非常に狭い分布を生じるであろう。これは、擬陽性の数を最少まで減らし、そうして当該処理をはかどらせるだろう。
当該スクリーニング処理の精度が厳格に制御されないか、わからない場合、配列決定エラーが1.0のKA/KS比を曖昧にするであろう、そしてこのために、約0.75−1.25の間のKA/KS値は、中立進化の証拠について注意深く検討される。
中立条件下で進化したポリヌクレオチドは、次いで、既知の量的形質遺伝子座(Quantitative trait loci)、すなわちQTLの1つの上にマッピングすることが可能で、それにより、当該ポリヌクレオチドにより制御される特定のストレス抵抗性形質を迅速にそして明確に同定することが可能である。
V. 作用物質の同定のためのスクリーニング法
本発明はまた、上記の方法を用いて同定され、そして特徴解明されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドを用いるスクリーニング法も、提供する。これらのスクリーニング法は、栽培化または祖先生物における特性を増強または減弱するのに役立つと思われる仕方で、当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能(類)を調整することも可能な作用物質を同定するのに有用である。一般に、当該方法は、試験される予定の少なくとも1つの作用物質を、栽培化生物、祖先生物、または上記の方法により同定されたポリヌクレオチド配列でトランスフェクトしてあるトランスジェニック生物または細胞、あるいはそうしたポリヌクレオチド配列によりコードされたポリペプチドの調製物、と接触させることを設定するが、そこでの作用物質は、当該ポリヌクレオチド配列または当該ポリペプチドのいずれかの機能を調整する能力により同定される。例えば、作用物質は、同定された遺伝子の所望の時期における発現を誘導するために、栽培品種化(家畜化)植物または動物に適用または接触される化合物であってもよい。具体的に植物に関して、作用物質は、適切な時期に開花を誘導するために、使用されてもよい。
本明細書で使われる場合、用語「作用物質」は、単純または複雑な有機または無機分子のような生物学的または化学的化合物、ペプチド、タンパク質、またはオリゴヌクレオチドを意味する。膨大な一連の化合物、例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチドのようなオリゴマー、およびさまざまなコア構造に基づく合成有機および無機化合物は合成が可能であり、そしてこれらも、用語「作用物質」に含まれる。加えて、さまざまな天然源は、植物または動物抽出物および同類物のような、スクリーニング用の化合物を提供することも可能である。化合物は、単独で、または相互に組合わせて、試験してもよい。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの「機能を調整する」ことは、作用物質を添加しないことに比較した場合に、当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能が変更されることを意味する。調整は、機能に影響する任意のレベルで生じてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能は、直接的または間接的であってもよく、そして直接的にまたは間接的に測定してもよい。ポリヌクレオチドの「機能」は、複製、翻訳、および発現パターン(類)を非限定的に含む。ポリヌクレオチド機能はまた、当該ポリヌクレオチド内でコードされるポリペプチドに随伴する機能を含む。例えば、ポリヌクレオチドに作用して、タンパク質発現、立体配座、折りたたみ(または他の物理的特性)、(リガンドのような)他の部分への結合、活性(または他の機能特性)、タンパク質の構造または機能の調節および/または他の側面、に影響する作用物質は、ポリヌクレオチド機能を調整したと考えられる。有効な作用物質がポリヌクレオチドの発現を調整するように働く仕方は、非限定的に、1)当該ポリヌクレオチド中の転写因子応答エレメントに対する転写因子の結合を修飾すること;2)当該ポリヌクレオチドの発現に必要な2つの転写因子間の相互作用を修飾すること;3)当該ポリヌクレオチドの発現に必要な転写因子が核に入るための能力を変更すること;4)当該ポリヌクレオチドの転写に関与する転写因子の活性化を阻害すること;5)普通はリガンドと相互作用し、そして当該リガンドのその結合が当該ポリヌクレオチドの発現をもたらす、細胞表面受容体を修飾すること;6)当該ポリヌクレオチドの発現をもたらすシグナル伝達カスケードの成分の不活性化を阻害すること;そして7)当該ポリヌクレオチドの転写に関与する転写因子の活性化を増強すること、を含む。
ポリペプチドの「機能」は、非限定的に、立体配座、折りたたみ(または他の物理的特性)、(リガンドのような)他の部分への結合、活性(または他の機能特性)、および/またはタンパク質の構造または機能の他の側面、を含む。例えば、ポリペプチドに作用して、その立体配座、折りたたみ(または他の物理的特性)、(リガンドのような)他の部分への結合、活性(または他の機能特性)、および/またはタンパク質の構造または機能の他の側面、に影響する作用物質は、ポリペプチド機能を調整したと考えられる。有効な作用物質がポリペプチドの機能を調整するように働く仕方は、1)立体配座、折りたたみ、または他の物理的特性を変えること;2)その天然リガンドに対する結合強度を変えること、またはリガンドに対する結合の特異性を変えること;および3)当該ポリペプチドの活性を変更すること、を非限定的に含む。
一般に、スクリーンされる作用物質の選択は、特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的、その認知された機能、その三次元構造(もしわかっているか、推測されるなら)、および合理的化合物設計の他の側面のような、いくつかのパラメーターにより支配される。候補物質の多数順列を作製するために、コンビナトリアルケミストリーの技術を利用することも可能である。当業者は試験用の適当な作用物質を工夫および/または入手することができる。
本明細書に記載のin vivoスクリーニング検定法は、慣用の薬剤スクリーニング検定法よりいくつかの利点をもつと思われる:1)作用物質が、所望の治療効果を達成するために、細胞内に入らなければならない場合、in vivo検定は、当該作用物質が細胞に入れるかどうかに関して表示を与えることができる;2)in vivoスクリーニング検定法は、作用物質が当該検定系へ添加された状態では、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド機能の調整に関連する、少なくとも1つの特性を発揮する効果がないが、それらが有効な作用物質になるような仕方で、一旦細胞内部では、細胞成分により修飾される、前記作用物質を同定できる;3)最も大切なことだが、in vivo検定系は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド機能に関連する特性を最終的には生じる経路の任意の成分に影響する作用物質の同定を可能にする。
一般に、スクリーニングは、本発明の方法を用いて同定されたポリヌクレオチドでトランスフェクトしておいた適切な細胞の試料に作用物質を添加し、そしてその作用、すなわち当該ポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチド内でコードされたポリペプチドの機能の調整をモニターすることにより、実施可能である。当該実験は、好ましくは、候補作用物質を加えない対照試料を含む。当該処理および無処理細胞を、次いで、顕微鏡分析、生死判別試験、複製する能力、組織学的試験、当該細胞に随伴する特定のRNAまたはポリペプチドのレベル、当該細胞または細胞可溶化物により発現される酵素活性のレベル、感染性媒介物に曝された場合の当該細胞の相互作用、および他の細胞または化合物と相互作用する当該細胞の能力、を非限定的に含む、任意の適当な表現型基準により比較する。処理および無処理細胞間の差異は、当該候補作用物質に起因する作用を示す。最適には、当該作用物質は、対照細胞に対するより、実験細胞に対してより大きな作用をもつ。適切な宿主細胞は、非限定的に、真核生物細胞、好ましくは植物または動物細胞を含む。細胞の選択は、意図される検定の性質に少なくとも一部は依存するはずである。
あるポリヌクレオチドの発現を上方制御する作用物質を試験するために、当該ポリヌクレオチドが発現される(本明細書で使われる場合、発現は転写および/または翻訳を含む)ように、興味あるポリヌクレオチドでトランスフェクトされた適当な宿主細胞は、試験される作用物質と接触させられる。作用物質は、mRNAおよび/またはポリペプチドの発現増加をもたらすその能力について試験されることになろう。ベクターの作製およびトランスフェクションの方法は、当該技術分野で周知である。「トランスフェクション(=形質移入、transfection)」は、例えば、リポフェクション(lipofection)、形質導入(transduction)、感染(infection)、またはエレクトロポレーション(electroporation)を含む、外因性配列を導入する任意の方法を包含する。外因性ポリヌクレオチドは、(プラスミドのような)非組込みベクターとして維持してもよく、または宿主ゲノム中へ組込まれてもよい。
転写を特異的に活性化する作用物質を同定するために、転写調節領域をリポーター遺伝子に連結し、そして当該構築体を適切な宿主細胞に添加することも可能である。本明細書で使われる場合、用語「リポーター遺伝子」は、同定可能な遺伝子産物(すなわち、リポータータンパク質)をコードする遺伝子を意味する。リポーター遺伝子は、アルカリホスファターゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、および緑色蛍光タンパク質(GFP)、を非限定的に含む。リポーター遺伝子の産物に対する同定方法は、酵素検定法および蛍光測定検定法、を非限定的に含む。リポーター遺伝子、およびそれらの産物を検出するための検定法は、当該技術分野では周知で、そして例えば、Ausubelら(1987)および最新の定期刊行物に記載されている。リポーター遺伝子類、リポーター遺伝子検定法、および試薬キットも商業源から、容易に入手可能である。適切な細胞の事例は、植物、真菌、酵母、哺乳動物、および他の真核生物細胞、を非限定的に含む。通常技術の熟練者は、ウイルスベクターのような適当なベクターの調製を含む真核生物細胞をトランスフェクトすること;エレクトロポレーションによるような、ベクターを細胞中へ搬入すること;そしてリポーターまたは薬剤感受性エレメントを用いることによるような、形質転換されている細胞を選択すること、のための技術に十分習熟しているであろう。これらの構築体中の調節領域からの転写への作用物質の作用は、当該リポーター遺伝子産物の活性を通じて評価されるはずである。
上述の通常は抑制されている条件下での発現の増加に加えて、それが正常に発現される場合には、発現が減少されることもあり得る。転写速度の減少を介して作用物質がこれを達成することがあり得るし、また上記のリポーター遺伝子系は、このための検定をする手段になろう。その種の作用物質を評価するための宿主細胞は、発現が許容状態にある必要があろう。
(興味のあるポリヌクレオチドから)mRNAを転写する細胞は、mRNAの半減期および/またはmRNAの翻訳を特異的に調整する作用物質を同定するのに使用できよう。そうした細胞はまた、当該ポリペプチドのプロセシングおよび/または翻訳後修飾への作用物質の作用を評価するのにも使えるはずである。作用物質が、当該ポリペプチドの代謝回転を修飾する(すなわち、その半減期を増やすか、減らす)ことにより、細胞中のポリペプチドの量を調整することもあり得る。mRNAおよびポリペプチドに関する当該作用物質の特異性は、当該作用物質の不在下で当該産物を調べることにより、および無関係なmRNAおよびポリペプチドの産物を調べることにより、決定されるはずである。mRNA半減期、タンパク質プロセシング、およびタンパク質代謝回転を調べる方法は、当業者には周知である。
in vivoスクリーニング法はまた、ポリペプチドとの相互作用を通じてポリペプチド機能を直接調整する作用物質の同定にも有用なことがあり得る。そうした作用物質は、正常なポリペプチド・リガンド相互作用を、もしあれば、遮断できるであろうし、あるいはそうした相互作用を増強または安定化できるであろう。そうした作用物質はまた、当該ポリペプチドの立体配座も変更できるであろう。当該作用物質の影響は、免疫沈澱反応を用いて決定可能であろう。適切な抗体は、当該ポリペプチドおよびそれと堅く会合した任意のタンパク質を沈澱させるのに使われるはずである。処理細胞からと無処理細胞から免疫沈澱されたポリペプチドを比較することによって、ポリペプチド・リガンド相互作用を、もしあれば、増大または阻害すると思われる作用物質を同定可能であろう。ポリペプチド・リガンド相互作用はまた、ポリペプチド間の緊密ではあるが非共有結合相互作用を共有結合相互作用へ変換する、架橋形成試薬を用いて評価可能である。タンパク質・タンパク質相互作用を調べる技術は、当業者に周知である。タンパク質立体配座を評価する技術も、当業者に周知である。
スクリーニング方法が、無細胞転写または翻訳系のようなin vitro方法を含むことがあり得ることも、言うまでもない。それらの系では、転写または翻訳が生じるようにし、作用物質が機能を調整するその能力について試験される。ある作用物質がmRNAの翻訳またはポリヌクレオチドを調整するかどうかを決定する検定のために、in vitro転写/翻訳系を用いてもよい。これらの系は商業的に入手可能で、関心のあるポリヌクレオチド配列に対応するmRNAを産生するin vitro手段を提供する。mRNAが作られたら、それをin vitroで翻訳し、そしてその翻訳産物を比較することも可能である。如何なる作用物質も含まないin vitro発現系(負の対照)と、作用物質を含むin vitro発現系との間の翻訳産物の比較は、当該作用物質が翻訳に影響するかどうかを示す。対照および試験ポリヌクレオチド間の翻訳産物の比較は、当該作用物質が、もしこのレベルで作用しているなら、(一般的な非選択的または非特異的な仕方で、翻訳に影響するのと異なり)、選択的に翻訳に影響するかどうかを示す。ポリペプチド機能の調整は、上記のin vivoおよびinvitro検定を、非限定的に含む多くの仕方で、ならびにタンパク質調製物を用いるin vitro検定で、達成可能である。ポリペプチド類は、天然源または組み換え源から抽出および/または精製して、タンパク質調製物を作出可能である。作用物質をタンパク質調製物の試料に加え、そしてその影響をモニター可能である;すなわち、当該作用物質が、ポリペプチドに働くかどうか、そしてどのように働くか、およびその立体配座、折りたたみ(または他の物理的特性)、(リガンドのような)他の部分への結合、活性(または他の機能特性)、および/またはタンパク質の構造または機能の他の側面、に影響するかどうか、そしてどのように影響するかは、ポリペプチド機能を調整したと考えられる。
本明細書に記載された方法によって同定されたポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドに結合する作用物質についての検定のための事例では、ポリペプチドはまず、原核生物または真核生物発現系で、未変性タンパク質として、または(上に記載されたように同定されたポリヌクレオチドによりコードされた)ポリペプチドが十分特徴が解明されたエピトープまたはタンパク質と共役された融合タンパク質として、組み換え的に発現される。次に、組み換えポリペプチドは、例えば、適切な抗体または抗エピトープ抗体を用いる免疫沈澱により、または当該抱合体の固定化リガンドへの結合により、精製される。次いでポリペプチドまたは融合タンパク質から作られたアフィニティーカラムを用いて、適切に標識された化合物の混合体を選別する。適当な標識は、蛍光色素、放射性同位体、酵素、および化学発光化合物を、非限定的に含む。非結合および結合化合物は、当業者により日常的に使われるさまざまな条件(例えば、高塩、界面活性剤)を用いる洗浄によって分離可能である。当該アフィニティーカラムへの非特異的結合は、単に当該抱合体またはエピトープだけを含むアフィニティーカラムを用いて、当該化合物混合体を前洗浄することにより、最小限にすることも可能である。同様な方法は、ポリペプチドに対する結合に競合する作用物質(類)についてのスクリーニングに使用可能である。アフィニティークロマトグラフィーに加えて、溶融温度の変化、または別の分子に結合すると変化するタンパク質の蛍光異方性を測定するような他の技術がある。例えば、ポリペプチドに共役的に結合するセンサーチップ(Pharmacia Biosensorにより供給される,Stittら(1995)Cell 80:661−670)を用いるBIAコア検定法は、異なる作用物質の結合活性を決定するのに実施してもよい。
本発明のin vitroスクリーニング法は、ポリペプチドのアミノ酸配列、三次元原子構造、または他の性質(または複数の性質)が、ポリペプチドに結合すると予想される作用物質を設計するための基礎を提供する、構造的な、または合理的な薬剤設計を含むことも、また言うまでもない。一般に、このような関係における作用物質の設計および/または選択は、栽培化生物のおよび相同祖先のポリペプチドの構造の並行比較、当該ポリペプチド標的の認知された機能、その三次元構造(もしわかっているか、推測されるなら)、および合理的薬剤設計の他の側面ような、いくつかのパラメーターにより支配される。候補作用物質の多数順列を作製するために、コンビナトリアルケミストリーの技術を利用することも可能である。
また本発明のスクリーニング法では、当該技術分野で知られるトランスジェニック動物および植物系も思量される。
上記のスクリーニング法は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能を調整する活性を示すことがあり得る任意の作用物質を検出するために設計された、一次選別を表す。当業者は、作用物質をさらに評価するためには、二次試験が必要らしいことを、認識するだろう。例えば、二次試験は、当該技術分野で知られるマウスおよび他の動物モデル(ラットのような)を用いる検定で、または栽培化(家畜化)植物または動物そのもので、当該作用物質(類)を試験することを含んでもよい。加えて、細胞毒性検定は、一次選別で陽性と試験された作用物質が生きている生物での使用に適するであろうことの、さらなる確証として実施されはずである。例えば、MTT検定法(Promega)を含む、細胞毒性のための任意の検定法が、本目的に適するはずである。
本明細書に早期に詳述されたスクリーニング法は、具体的にEG307またはEG1117に適用してもよい。したがって、本発明は、EG307またはEG1117ポリヌクレオチドの非ポリペプチドコード領域の機能を調整する作用物質を同定する方法を提供するが、それは、リポーター遺伝子コード領域に機能可能に連結された非ポリペプチドコード領域を含む構築体でトランスフェクトされた宿主細胞を、少なくとも1つの候補作用物質と、接触させることを含むが、ここで当該作用物質は、前記リポーターポリヌクレオチドの転写または翻訳を調整するその能力により同定される。本発明はまた、当該方法により同定された作用物質を提供する。
本発明はまた、進化的に有意のEG307またはEG1117ポリヌクレオチドの非ポリペプチドコード領域の機能を調整する作用物質を同定する方法を提供するが、それは、EG307またはEG1117ポリヌクレオチドを含む植物またはトランスジェニック植物を、少なくとも1つの候補作用物質と、接触させることを含むが、ここで当該作用物質は、前記リポーターポリヌクレオチドの転写または翻訳を調整するその能力により同定される。本発明はまた、当該方法により同定された作用物質を提供する。
本発明はまた、収量を調整することが可能な作用物質を同定する方法を提供するが、その方法は、少なくとも1つの候補作用物質を、EG307またはEG1117遺伝子を含む植物または細胞と、接触させることを含むが、ここで当該作用物質は、収量を調整するその能力により同定される。1つの態様で、当該植物または細胞は、EG307またはEG1117遺伝子をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされる。本発明はまた、当該方法により同定された作用物質を提供する。1つの態様で、その同定された作用物質は、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの機能を調整することにより、収量を調整する。もう1つの態様で、その同定された作用物質は、当該ポリペプチドの機能を調整することにより、収量を調整する。
本発明はまた、本明細書に記載されたスクリーニング法により同定された作用物質も含む。
次の実施例は、当業者をさらに助けるために、提供される。そうした実施例は、例証的であるように意図されおり、それゆえに、本発明を制限すると見なすべきではない。多数の典型的な修飾および変形が、本出願に記載されており、そして他のものは、当業者には明らかになるだろう。そうした変形は、本明細書に記載され、そして請求されているように、本発明の範疇に入ると考えられる。
(実施例1):cDNAライブラリー構築
栽培品種化(家畜化)植物または動物cDNAライブラリーは、当該植物または動物からの適切な組織を用いて構築される。当業者は、興味ある形質に従って分析するための適切な組織または複数の組織を知っているはずである。あるいは、生物体全体を用いてもよい。例えば、1日齢植物実生は、当該植物の遺伝子の大部分を発現することがわかっている。
全RNAを当該組織から抽出する(RNeasy kit,Quiagen;RNAse−free Rapid Total RNA kit,5Prime−3Prime,Inc.、または任意の適当な同等製品)、そして当該RNAの完全性および純度を慣用の分子クローニング方法に従って決定する。ポリA+RNAを単離し(Mini−Oligo(dT)Cellulose Spin Columns,5Prime−3Prime,Inc.、または任意の同様で適当な製品)、そしてcDNAの逆転写用の鋳型として、プライマーとしてのオリゴ(dT)とともに、使用する。合成されたcDNAは、商業的に入手可能なキットを用いて、クローニング用に処理し、修飾する。次に、組み換え体をパッケージし、宿主細胞系中で増殖させる。当該パッケージングミックスの一部を増幅し、そして残りは増幅前に保存する。当該ライブラリーは標準化可能であり、そして当該ライブラリー中の独立組み換え体の数を決定する。
(実施例2):配列比較
当該cDNAライブラリーからダンダムに選択された祖先cDNAクローンは、ABI377またはMegaBACE1000または任意の同様で適当な製品のような自動シークエンサーを用いて配列決定する。当該配列決定を行うには、M13 UniversalおよびReverseプライマー類のようなクローニングベクター上に普通に使われるプライマー類が使用される。末端シークエンシングにより完全には配列決定されない挿入断片については、色素標識ターミネーターまたはカスタムプライマーを用いて、残りのギャップに充填することが可能である。
検出された配列差異は正確さについて最初にチェックするが、それは例えば、栽培化配列と祖先配列との間に差異がある点を見いだすこと;栽培化生物に独特と思われる塩基が、当該コールド塩基に特異的な強い鮮明なシグナルに対応するかどうかを決定するために、当該配列フルオログラム(クロマトグラム)をチェックすること;配列変化に対応する1つ以上の配列があるかどうかを見るために、当該栽培化生物のヒットをチェックすること;および必要なら、当該技術分野で知られる他の方法、による。同じ遺伝子について祖先ではヌクレオチドが異なっている位置に同じヌクレオチドをもつ複数の栽培化生物配列が見つかったなら、それは当該栽培化配列が正確であること、そしてその栽培化/祖先差異が本物であることの独立した裏付けを提供する。そうした変化は、これらのDNA配列変化が、そのコードタンパク質のアミノ酸配列中の変化をもたらすかどうかを決定するために、公共または商業データベース情報および当該遺伝コードを用いて調べられる。当該配列はまた、当該コードタンパク質の直接配列決定によっても調べることができる。
(実施例3):分子進化分析
比較されている栽培化(家畜化)植物または動物配列はKA/KS分析に付す。本分析では、Li93およびINAのような、公共的にまたは商業的に入手可能なコンピュータープログラムを使って、上記のように検討中の各配列について、部位当りの同義変化の数(KS)により部位当りの非同義変化の数(KA)を割って決定する。完全長コード領域またはコード領域の部分セグメントを使用可能である。KA/KS比が高ければ高いほど、配列は適応進化を受けてきた可能性が多い。KA/KS値の統計有意性は、t検定のような確立された統計的方法および入手可能なプログラムを用いて決定する。
高KA/KS比の有意性に対する支持をさらに与えるために、検討中の栽培化配列を、他の進化的に近縁種に比較してもよい。これらの比較は、当該適応進化的変化が、他の近縁種に比較して、栽培化(家畜化)植物または動物種系列に独特であるかどうかについての、さらなる識別を可能にする。当該配列はまた、栽培化(家畜化)植物または動物に当該配列がどの程度保存されているかを評価するために、いくつかの多様な栽培化集団の代表者からの関心ある遺伝子を直接配列決定することによって、調べることも可能である。
(実施例4):cDNAライブラリー構築
テオシンテcDNAライブラリーは、全テオシンテ1日齢実生または他の適切な植物組織を用いて構築される。全RNAは当該実生組織から抽出され、そして当該RNAの完全性および純度は慣用の分子クローニング方法に従って決定される。ポリA+RNAが選択され、そしてプライマーとしてオリゴ(dT)とともに、cDNAの逆転写用の鋳型として使用される。合成されたcDNAは、商業的に入手可能なキットを用いて、クローニング用に処理し、修飾される。次に、組み換え体をパッケージし、宿主細胞系中で増殖させる。当該パッケージングミックスの一部を増幅し、そして残りは増幅前に保存する。組み換え体DNAは、確立された方法を用いて、大腸菌(E.coli)宿主細胞にトランスフェクトするのに使われる。当該ライブラリーは標準化可能であり、そして当該ライブラリー中の独立組み換え体の数を決定する。
(実施例5):配列比較
当該cDNAライブラリーからランダムに選択されたテオシンテ実生cDNAクローンは、ABI377のような自動シークエンサーを用いて配列決定する。当該配列決定を行うには、M13 UniversalおよびReverseプライマー類のようなクローニングベクター上に普通に使われるプライマー類が使用される。末端シークエンシングにより完全には配列決定されない挿入断片については、色素標識ターミネーターを用いて、残りのギャップに充填するために使われる。
その結果得られたテオシンテ配列は、データベース検索を経由して、栽培化メイズ配列に比較される。ゲノムデータベースは、メイズを含む多数の種について公共的にまたは商業的に入手可能である。メイズデータベースの1つの例は、ミゾウリ大学のウェブサイトthe MaizeDB websiteで見いだすことも可能である。MaizeDBは、メイズゲノムおよびその発現に関する最近の知識への公共インターネットゲートウェイである。他の適切なメイズEST(発現配列タグ)データベースは、私的に所有され、そして維持されている。高いスコアリング“ヒット”、すなわち、ホモロジー分析後に有意の(例えば、>80%)類似性を示す配列が、検索され、そして分析される。次に2つの相同配列が、Higginsらにより開発されたアラインメントプログラムCLUSTAL Vを用いて、整列される。ヌクレオチド置換、挿入、および欠失を含む、いかなる配列差異をも、当該アラインメントにより検出そして記録することが可能である。
検出された配列差異は正確さについて最初にチェックされるが、それは、テオシンテとメイズの配列に差異がある点を見いだすこと;メイズに独特と思われる塩基が、当該コールド塩基に特異的な強い鮮明なシグナルに対応するかどうかを決定するために、当該配列フルオログラム(クロマトグラム)をチェックすること;配列変化に対応する1つ以上のメイズ配列があるかどうかを見るために、メイズヒットをチェックすること;および必要なら、当該技術分野で知られる他の方法、による。同じ遺伝子についてテオシンテではヌクレオチドが異なる位置に、同じヌクレオチドをもつの複数のメイズ配列が見つかれば、それは当該メイズ配列が正確であること、そしてそのテオシンテ/メイズ差異が本物であることの独立した裏付けを提供する。そうした変化は、これらのDNA配列変化が、そのコードタンパク質のアミノ酸配列中の変化をもたらすかどうかを決定するために、公共/商業データベース情報および当該遺伝コードを用いて、調べられる。当該配列はまた、当該コードタンパク質の直接配列決定によっても調べることができる。
(実施例6):分子進化分析
比較されているテオシンテおよびメイズ配列は、KA/KS分析に付す。本分析では、Li93およびINAのような、公共的にまたは商業的に入手可能なコンピュータープログラムを使って、上記のように検討中の各配列について、部位当りの同義変化の数(KS)により部位当りの非同義変化の数(KA)を割って決定する。この比、KA/KSは、検討中の配列で、適応進化、すなわち、正の選択が作用してきた程度の反映であることが、示されている。典型的には、これらの比較分析では、完全長コード領域が使われてきた。しかし、コード領域の部分セグメントも有効に使用可能である。KA/KS比が高ければ高いほど、配列は適応進化を受けてきたことの可能性が多い。KA/KS値の統計有意性は、t検定のような確立された統計的方法および入手可能
なプログラムを用いて決定される。テオシンテとメイズとの遺伝子の間で統計的に高いKA/KS比を示すそれらの遺伝子は、適応進化を受けた可能性が非常に高い。
高KA/KS比の有意性に対する支持をさらに与えるために、検討中の当該配列を、他の祖先メイズ種に比較してもよい。これらの比較は、当該適応進化的変化が、他の祖先に比較して、栽培化メイズ系列に独特であるかどうかについての、さらなる識別を可能にする。当該配列はまた、メイズ種に当該配列がどの程度保存されているかを評価するために、いくつかの多様なメイズ集団の代表者からの関心ある遺伝子の直接配列決定によって、調べることも可能である。
(実施例7):データベースから得られたメイズおよびテオシンテ相同配列へのKA/KS法の適用
Genbank上で入手可能な栽培化メイズおよびテオシンテ配列(the Entrez Nucleotides database at the National Center for BiotechnologyInformation web siteを通じてアクセス可能)の比較は、少なくとも4つの相同遺伝子:waxy,A1*,A1およびglobulinを明らかにし、それらについての配列はメイズおよびテオシンテの両方から入手可能であった。メイズおよびテオシンテの両方についてのこれらの遺伝子についてのすべての入手可能な配列を比較した。当該KA/KS比は、Li93および/またはINAを用いて決定した:
メイズに観察された多型性(複数の対立遺伝子コピー)および/または倍数性(細胞当り2セット以上の染色体)は、KA/KS分析を複雑または困難にするかも知れないと予想されたが、そうではないことがわかった。
上記のKA/KS値は、これらの遺伝子が正に選択されないことを示しているが、本例は、KA/KS法がデータベースから得られたメイズおよびそのテオシンテ配列に適用可能なことを例証している。
(実施例8):トランスジェニック植物を用いるタンパク機能の研究
実施例4−7の方法に従って得られた正に選択されたメイズ遺伝子の機能的役割は、トランスジェニックメイズ植物中で当該遺伝子の各対立遺伝子の評価を実施することにより、評価可能である。トランスジェニック植物は、Pengら(1999)Nature 400:256−261に記載の方法の応用を用いて、作出が可能である。当該トランスジェニック植物またはそのタンパク抽出物の生理学的、形態学的および/または生化学的検討は、特定の表現型と各対立遺伝子との関連づけを可能にするはずである。
(実施例9):QTLsへの正に選択された遺伝子のマッピング
QTL(量的形質遺伝子座)分析は、植物の高さおよび油含量を含む、メイズにおける興味あるいくつかの表現型的形質を制御する遺伝子を含む染色体領域を決定した。本法により同定された正に選択された各遺伝子を既知QTLsの1つの上に物理的にマッピングすることにより、正に選択された各遺伝子により制御される特定の形質を、迅速かつ確実に同定可能である。
(実施例10):新遺伝子EG307の発見
規準化されたcDNAライブラリーを、現代イネの祖先であることがわかっている種、Oryza rufipogonの(葉、円錐花序、および茎を含む)プールした組織から構築した。PBI0307H9と呼ぶクローンをまず、MegaBACE 1000シークエンサー(AP Biotech)上で高性能配列決定プロジェクトの一部として、配列決定した(配列番号89)。このクローンの配列を、GenBankデータベースのBLAST検索で、クエリー配列として使用した。4つの無名コメESTs(アクセス番号AU093345,C29145,ISAJ0161,AU056792)がヒットとして検索された。さらなる配列決定は、PBI307H9が部分cDNAクローンであることを明らかにした。PBI307H9は、GenBank中の栽培化イネ(Oryza sativa)ESTsに比較すると、高いKA/KS比をもっていた。cDNA増幅および配列決定は次のように行った:全RNAは、O.rufipogon(NSGC5953株)およびO.sativa栽培品種Nipponbare(Quiagen RNeasy Plant Mini Kit:cat#74903)から単離した。第1鎖cDNAは、dTプライマー(AP Biotech Ready−to−Go T−Primed First−Strand Kit:cat#27−9263−01)を用いて合成し、そして次にPCR分析(Qiagen HotStar Taq Master Mix Kit:cat#203445)に使用した。
命名を簡単にするために、クローンPBI0307H9に含まれる遺伝子は、本実施例および明細書を通して、EG307と名付ける。当初、最終的配列確認前は、現代イネ(O.sativa)および祖先イネ(O.rufipogon)EG307由来のEG307についてのKA/KS比は1.7であった。
これらの部分配列がO.rufipogonおよびO.sativaの両方で確認された後、この遺伝子の5’末端を得るために遺伝子特異的プライマーを用いて、5’RACE(Clontech SMART RACE cDNA Amplification Kit:cat#K1811−1)を行った。EG307と呼ぶ当該完全遺伝子は、長さ1344bp(塩基対)のコード領域をもつ。O.sativaおよびO.rufipogon中の完全EG307 CDS(1344bp)の最終確認は、O.rufipogonおよびO.sativaの多数の株のペアワイズ比較を可能にした。これらの比較の多くは、1より大きいKA/KS比をもたらし、いくつかは統計的に有意であった。これは、EG307遺伝子への正の選択の役割についての、説得力のある証拠である。祖先イネに課された選択圧はヒトによって課されたので、これは、EG307が、イネのヒトによる栽培品種化の間に選択された遺伝子であるという、説得力のある証拠である。EG307に対する相同体は、GenBankの非重複部門へのBLAST検索によっては、全く同定されず、そして上述のように、僅か4つのイネ遺伝子が、GenBankのEST部門でのBLASTにより同定された(AU093345,AU056792、C29145,およびISA0161)。これら4ESTsいずれも、本質的には特徴解明はされなかった。
(実施例11):EG307の別のKA/KS分析
EG307遺伝子についてO.sativa中に存在する遺伝的多様性の程度を確かめるため、Qiagenのプロトコル(DNaesy Plant Mini Kit:cat#69103)を用いて、O.sativaのいくつかの異なる株(the National Small Grains Collection,U.S.D.A.Aberdeen,アイダホから入手)から、ゲノムDNAを単離した。次に、6つの異なるO.sativa株:Nipponbare,Lemont,IR64,Teqing,Azucena,およびKasalathからのゲノムDNA中で、EG307を配列決定した。これらの株のそれぞれのKA/KS比は、O.rufipogonに比較すると、変化していた。表1は、コード領域の全1344塩基についての結果を示す。
表1 O.rufipogon(IRGC105491株)対調べた全O.sativa株についての全CDS KA/KS比
O.rufipogonとこれらの全O.sativa株との間には非翻訳(UTR)領域に相違があった。その広い範囲のKA/KS比は、それらのO.sativa株間の交雑育種の異なる程度のためと考えられた。それらの栽培化株とO.rufipogonとの間の交雑育種のために、いくつかのものは、他のものより、O.rufipogonに似ていた。スライディングウインドウ分析(すべり窓分析、sliding window analysis)を、O.rufipogonEG307のタンパク質コード領域と、われわれが配列決定したO.sativa株のそれぞれのタンパク質コード領域との間で、すべてのペアワイズ比較について実施した。これは、栽培化の間に選択された当該タンパク質の特定領野の同定を可能にした。そうした正確な位置決めは、祖先タンパク質と栽培化子孫作物植物の当該タンパク質との間で重要である変化の特徴解明への標的アプローチを可能にするだろう。これは、収量増加を目的として、前記タンパク質のこれらの肝要なドメインを標的にする作用物質を開発することを可能にすると思われる。
前記「ウインドウ」の長さは、大部分の場合、150bpで、隣のウインドウと50bpの重複があった。(したがって、例として、もしCDSの5’末端から読取ると、第1ウインドウは長さ150bpで、その3’側への隣接第2ウインドウも同じ長さであった。第2ウインドウも150で、第2ウインドウの5’末端で50bpだけ第1ウインドウに重複し、そして第3ウインドウも長さ150bpで、第3ウインドウの5’末端で50bpだけ第2ウインドウに重複していた。このように、第2ウインドウは、各50bpづつその両隣接ウインドウと重複していた)。加えて、CDSをほぼ半分に分割して、第2のウインドウ分析も行った。これにより、ヌクレオイドのより大きな試料サイズが可能になり、その結果、正確な統計的サンプリングの実施が可能である。また、留意すべきは、KA/KSは慣用的には比率として表示されるが、実際には、「KA値は、統計的に有意な量だけKS値を超えているのか?」を尋ねる仕方であることである。したがって、(栽培化は約7000−8000年に過ぎないので)祖先イネ対現代イネの比較ではよくあるように、KS=0の場合、当該分数の分母がゼロに等しくなるので、比は計算できない。しかしそうした比較でもなお、もし(KA−KS)差が統計的に有意であれば、正の選択の作用を検出することも可能である。したがって、以下の表に示すいくつかの比較について、その比較が統計的に有意であれば、正の選択が検出可能である。KA/KS比が有意であるそれらの比較と同様に、これらは太字で示してある。
ヌクレオチド置換過程の確率的な性質の結果として、現代イネ株に対する必ずしもすべての比較が正の選択の証拠を明らかにするとは思われず、とくにO.rufipogonと現代O.sativaとの間にいくつかのの交雑育種が起ったことがわかっているだけに、そうであることも注目しなければならない。
表2 O.rufipogon(NSGS5948株)対O.sativa“Nipponnbare”株についてのスライディングウインドウKA/KS比。すべての統計的に有意の比較は太字で示してあるのに、注目されたい。
第1大ウインドウを用いた場合、O.rufipogonとNipponbareとの間の比較で示される正の選択について統計的支持があることに、ここで注目することが大切である。これは、祖先O.rufipogon、および栽培化O.sativa(Nipponbare株)EG307相同体間に(ヒト栽培化の結果として)正の選択が生じたことの、よい証拠である。上述のように、ヌクレオチド置換過程の確率的な性質の結果として、現代イネ株に対する必ずしもすべての比較が正の選択の証拠を明らかにするとは思われない。さらに、上述のように、O.rufipogonといくつかの栽培化株との間に交雑育種が起ったことが、選択のシグナルを一層曖昧にしている。しかし、本分析が明らかにしているのは、正の選択がEG307遺伝子に生じたことである。
表3 O.rufipogon NSGS5948株、対O.sativa(“Lemont”株)についてのスライディングウインドウKA/KS比。すべての統計的に有意の比較は太字で示してあるのに、注目されたい。
第1大ウインドウを用いた場合、O.rufipogonとLemontとの間の比較で示される正の選択について統計的支持があることに、ここで注目することが大切である。これは、祖先O.rufipogon、および栽培化O.sativa(Lemont株)EG307相同体間に(ヒト栽培化の結果として)正の選択が生じたことの、よい証拠である。上述のように、ヌクレオチド置換過程の確率的な性質の結果として、現代イネ株に対する必ずしもすべての比較が正の選択の証拠を明らかにするとは思われない。さらに、上述のように、O.rufipogonといくつかの栽培化株との間に交雑育種が起ったことが、選択のシグナルを一層曖昧にしている。しかし、本分析が明らかにしているのは、正の選択がEG307遺伝子に生じたことである。
表4 O.rufipogon NSGS5948株、対O.sativa(“IR64”株)についてのスライディングウインドウKA/KS比。すべての統計的に有意の比較は太字で示してあるのに、注目されたい。
O.rufipogonからの、およびO.sativa IR64株からの、EG307のタンパク質コード領域は同一であり、それゆえKA/KS値はゼロに等しいことに注目されたい。IR64は低収量現代株(私信、Shannon Pinson,遺伝学研究員、USDA−ARS Rice Research Unit,Beaumont,テキサス)で、野生O.rufipogonとの大量の交雑が疑われている。
表5 O.rufipogon NSGS5948株、対O.sativa(“Teqing”株)についてのスライディングウインドウKA/KS比。すべての統計的に有意の比較は太字で示してあるのに、注目されたい。
O.rufipogonおよびO.sativa Teqing株からのEG307配列間の比較は、1より大きいKA/KS比を示さないことに注目されたい。しかし上述のように、ヌクレオチド置換過程の確率的な性質の結果として、現代イネ株に対する必ずしもすべての比較が正の選択の証拠を明らかにするとは思われない。さらに上述のように、O.rufipogonといくつかの栽培化株との間に交雑育種が起ったことが、選択のシグナルを一層曖昧にしている。
表6 O.rufipogon NSGS5948株、対O.sativa(“Azucena”株)についてのスライディングウインドウKA/KS比。すべての統計的に有意の比較は太字で示してあるのに、注目されたい。
第1大ウインドウを用いた場合、O.rufipogonとAzucenaとの間の比較で示される正の選択について統計的支持があることに、ここで注目することが大切である。これもまた、祖先O.rufipogon、および栽培化O.sativa(Azucena株)EG307相同体間に(ヒト栽培化の結果として)正の選択が生じたことの、よい証拠である。上述のように、ヌクレオチド置換過程の確率的な性質の結果として、現代イネ株に対する必ずしもすべての比較が正の選択の証拠を明らかにするとは思われない。さらに、上述のように、O.rufipogonといくつかの栽培化株との間に交雑育種が起ったことが、選択のシグナルを一層曖昧にしている。しかし、本分析がもう一度明らかにしているのは、正の選択がEG307遺伝子に生じたことである。
表7 O.rufipogon NSGS5948株、対O.sativa(“Kasalath 4”株)についてのスライディングウインドウKA/KS比。すべての統計的に有意の比較は太字で示してあるのに、注目されたい。
スライディングウインドウはKasalath 4についてのみ示されているのに、注目されたい。本配列には4つの対立遺伝子差があり(Kasalath 1、2、3、および4と呼ぶ)、そしてそれらは単一ヌクレオチドだけの違いなので、簡明のために、1つだけを示すように選んだ。しかし、全CDS配列のそれぞれについてKA/KS比を示してある。O.rufipogonおよびO.sativa Kasalath株からのEG307配列間の比較は、1より大きいKA/KS比を示さないことに注目されたい。しかし上述のように、ヌクレオチド置換過程の確率的な性質の結果として、現代イネ株に対する必ずしもすべての比較が正の選択の証拠を明らかにするとは思われない。さらに、上述のように、O.rufipogonといくつかの栽培化株との間に交雑育種が起ったことが、選択のシグナルを一層曖昧にしている。
O.rufipogonのNSGC5953株におけるEG307の配列決定が完了したので、その完成配列を用いて増幅プライマーを設計した。次いでこれらのプライマーはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に用いて、NSGC5948,NSGC5949,およびIRGC105491を含む、いくつかの他のO.rufipogon株からのEG307遺伝子を増幅した。増幅されたEG307遺伝子は、次いで、これらの株のそれぞれについて配列決定した。
(実施例12):EG307のマッピング
EG307は次に物理的にイネ中にマッピングされた。クレムソン大学は、イネNipponbare細菌性人工染色体(BAC)ライブラリーを開発した;Budiman,M.A.1999,「2つのモデル作物、トマトおよびイネについての深度網羅BACライブラリーの構築と特性解明、およびトマト中のjointless−2への染色体歩行の開始」、博士論文、Texas A&M University,College Station,テキサス、を参照されたい。ライブラリークローンはハイブリダイゼーションフィルターの形でクレムソンから入手可能である。
スクリーニングに用いた2つの異なるイネBACライブラリーは、クレムソン大学ゲノミクス研究所(CUGI)から購入した。OSJNBaライブラリーは、ジャポニカイネ株(Nipponbare品種)のゲノムDNAからCUGIで構築され、そして11ゲノム相当をカバーする、130kbの平均インサートサイズをもつ。これは、国際イネゲノム配列決定プロジェクト用の最も広く使われているライブラリーの1つである。それは、pBeloBAC11のHindIIIサイト中に構築され、そして36864クローンを含む。OSJNBbライブラリーもまた、ジャポニカイネ株(Nipponbare品種)のゲノムDNAからCUGIで構築され、そして15ゲノム相当をカバーする、120kbの平均インサートサイズをもつ。これは、国際イネゲノム配列決定プロジェクト用の最も広く使われているライブラリーのもう1つである。それは、pIndigoBac536のEcoR1サイト中に構築され、そして55296クローンを含む。
DIGプロトコル(BMB−Roche PCR DIG Probe Synthesis Kit cat#1636090)は、ユニークなEG307 494bp PCR産物(プライマー:5’−GAGTTCACAGGACAGCAGCA−3’(配列番号87)および5’−CAATTCTCTGAGATGCCTTGG−3’)(配列番号88)の標識に成功し、イネBACフィルターに対してスクリーンするために使用された。当該ブロットは、DIGプロトコル(BMB−Roche DIG Luminescent Detection Kit cat#1636090)当りとして、化学ルミネッセンスを用いて容易に検出された。2つの異なるO.sativaライブラリー、OSJNBaおよびOSJNBbは、OSJNBbライブラリーをカバーする3つ、そしてOSJNBaライブラリーをカバーする2つの、合計5つの異なるフィルターについてスクリーンされた。表8は、全3スクリーンにより同定された個々のBACsを示す:
表8 EG307 494bp PCR産物によるBACライブラリーの全スクリーンで同定された個々のBACs。
特定のコンティグ(整列群、contig)または染色体へのある遺伝子の物理的マッピングを可能にする基準データは、当業者には知られており、そしてフィルターセットまたはCUGIからのライブラリーの購入者にはウェブページ上で知らされ利用できる。やはり3番染色体上にあるコンティグ113にも、いくつかの微かな、有意ではないハイブリッド形成があった。
イネコンティグ80は、3番染色体上にあり、そして66BACsと7マーカーを含んでいた。コンティグ80内のすべてのこれらのBACsの重複により判断すると、EG307は、3番染色体の短腕上のマーカーCDO1387の上流、約200kbにあった。
USDA−ARSにより開発され、そして展示された、公共的にアクセス可能なゲノムデータベースで、以前RiceGenes中にあったデータは、現在はGramene中に組込まれている。最近、Grameneは、USDA IFAFSプログラムにより資金提供され、イネ科植物における比較ゲノム分析のための、展示された公開源のWebアクセス可能なデータ資源を作製した。それは、コーネル大学、日本イネゲノム研究プログラム(JRGP)、および韓国イネゲノム研究プログラム(KRGRP)からのイネ遺伝子地図のコレクション、ならびに他のイネ科植物(メイズ、オートムギ、およびコムギ)からの地図との比較、を提供する。CDO1387マーカーは、RiceGenesウェブサイトを用いていくつかの異なるイネ地図にマッピングされた。
いくつかのQTLsもこの領域にマッピングされたが、それらの多くはかなり広い範囲を占め、当該染色体のほとんど全体をカバーしていた。1000粒重量について十分実証された1つのQTLは、3番染色体のこの領域にマッピングされ、そしてマーカーRZ672と付随していた(S.R.McCouchら,Genetics 150:899−909、98年10月)。1つの地図(R3)上で、CDO1387は30.4cMにマッピングされ、RZ672は39cMにマッピングされ、そしてこれらのマーカーは両方とも、4つの他のイネ地図(Rice−CU−3,3RC94,3RC00,および3RW99)において同じような範囲でマッピングされた(図5)。したがって、EG307はこのQTLマーカーの〜10cM以内にあった。R3地図はまた、21.45cM−21.95cMにマッピングされたBAC,OSJNBa0091P11ももっていた。EG307は、イネBACライブラリーのスクリーニングで、このBACおよび同じコンティグ中の他のいずれについてもネガティブであった。当該イネの粒重量QTL領域はまた、イネとメイズとの間のいくつかの遺伝子相同性研究にも含まれていて(W.A.Wilsonら,Genetics 153(1):453−473、99年9月)、その研究ではイネ染色体3Sとメイズ染色体1Sおよび9Lとの間の遺伝子相同性(synteny)が示された。
(実施例13):メイズおよびテオシンテ中のEG307の同定
(イネEG307配列を用いた)BLASTによるGenBank中のメイズゲノムの検索は、2つのメイズESTs,アクセス番号BE511288およびBG320985、を同定したが、それらは相同のようであった。メイズ(Zea mays)およびテオシンテ(Zea mays parviglumis)EG307相同体(配列番号35により表される提案オープンリーディングフレームをもつ、配列番号33および配列番号34、および配列番号67により表される提案オープンリーディングフレームをもつ、配列番号66)の増幅成功を可能にしたプライマーを設計した。(メイズおよびテオシンテについてのタンパク質配列が推定された;そして配列番号36および配列番号68で表される)。表9は、メイズとテオシンテとの間の比較についてのKA/KS推定値を示す。
表9 テオシンテ(Zea mays parviglumis)対現代メイズ(Zea mays)についてのKA/KS比。
これらのKA/KS値は、1より大きい比を示していないが、なお正の選択の証拠がある。祖先イネとその現代栽培化子孫との間のすべてのアミノ酸交換が特性解明され、そして同じ分析がテオシンテとその子孫である現代メイズについて行われた。栽培化の両(独立した)ケースで、一定のパターンが観察される:すなわち、祖先植物(テオシンテまたは祖先イネ)に比較して、現代作物(メイズまたはイネのいずれか)におけるほとんどすべてのアミノ酸交換は、荷電/極性の増加、溶解性の増加、および疎水性の減少をもたらしている。これら2つの独立の栽培化事象で、このパターンが偶然に生じたとは極めて考えにくい。これは、これらの交換が、ヒトによる栽培化に対する同様な応答であったこと、を示唆している。これは、EG307が、これら2つの穀類のヒト栽培化の結果として選択されたことの、強力な証拠である。
テオシンテの1株中のEG307の配列決定が完成した段階で、その完成した配列を使って、増幅プライマーを設計した。これらのプライマーを次に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に用いて、いくつかの他のテオシンテ株、ならびに現代メイズのいくつかの株からEG307遺伝子を増幅した。増幅されたEG307遺伝子は次に、これらの株のそれぞれについて配列決定した。
前述の発明は、明瞭さと理解の目的のために、イラストおよび実施例によって詳しく記載したが、ある種の変更および修飾が実施可能なことは、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲は前記の説明および実施例によって限定されず、特許請求の範囲の記載により定まると解釈すべきである。
(実施例14):新遺伝子EG1117の発見およびKAKS分析
クローンIWF1117H5(以下EG1117と呼称)は、MegaBACE1000シークエンサー(AP Biotech)で行われた、EGの高性能配列決定プロジェクトの際に、まず、配列決定された。本クローンは、祖先イネOryza rufipogonからの材料から構築された、基準cDNAライブラリー(Incyte Genomics)から配列決定された。GenBank BLASTの結果、3つの無名のイネESTs(AU055884,AU055885,BI808367)、2つの無名のトウモロコシESTs(AI783000,AW000223)、および2つの無名のコムギESTs(BE444456,BE443845)をヒットした。さらなる配列決定は、IWF1117H5が部分cDNAクローンであることを明らかにした。それは、GenBankで栽培化イネOryza sativa ESTsに比較した場合、ゼロにより割られるKA/KS比をもっていた。
ゲノムDNAは、Qiagenのプロトコル(DNeasy Plant Mini Kit:cat#69103)に従い、0.sativaのいくつかの異なる栽培品種から単離した。全RNAは、O.rufipogonおよび0.sativa Nipponbare栽培種から単離した(Qiagen RNeasy Plant Mini Kit:cat#74903)。第1鎖cDNAはdTプライマー(AP Biotech Ready−To−Go T−Primed First Strand Kit:cat#27−9263−01)を用いて合成し、そしてそれから、PCR分析(Qiagen HotStar Taq Master Mix Kit:cat#203445)に使用した。これらのプロトコルはまた、Zea mays(メイズ)、Zea mays parviglumis(テオシンテ)に、およびTriticum aestivum(現代コムギ)にも行った。
これらの部分配列がO.rufipogonおよび0.sativaの両者で確認されたので、本遺伝子の5’末端を得ようと試みて、逆PCRを遺伝子特異的プライマーで行った。これまでのところ、O.rufipogonおよび0.sativa中のCDSの1659bp(図6および7)が同定されている。この部分配列は、終止コドンを含む。
次にEG1117は、6つの異なる0.sativa株:Nipponbare,Lemont,IR64、Teqing,Azucena,およびKasalathからのゲノムDNA中で部分的に配列決定した。これらの株のそれぞれについてのKA/KS比は、O.rufipogon 5948株に比較すると、異なっていた。コード領域の1656塩基についてのKA/KS比は、次のとおりである:
表10 O.rufipogon NSGC5948株対0.sativaの各種株についてのKA/KS比。
この広範囲のKA/KS比は、0.sativa株間の交雑育種の量によると考えられる。あるものはO.rufipogonに類似するが、それはO.rufipogonと栽培化株との交雑育種のためである。
0.sativa Nipponbare株の推定タンパク質配列を使って、BLAST検索を実施した。Arabidopsis thaliana PTR2−B(ヒスチジン輸送タンパク質、NP 178313)(配列番号170)に対する非常に強いタンパク質BLASTヒットは、CDSの僅か約30コドンのみがイネ配列から消失していることを、示唆する(図8)。
ホモロジー検索結果は、EG1117遺伝子が、真菌、植物、昆虫、および哺乳動物を含む、広範囲の種に見られるペプチド輸送タンパク質のファミリーに非常に似たタンパク質をコードすること、を示唆している。(Kohら,(2002)Arabidopsis.Plant Physiol.128:21−29;Hauserら,(2001)Mol.Membr.Biol.18:105−12;Hauserら,(2000)J.Biol.Chem.275:3037−42;Lubkowitzら,(1997)Microbiology 143−387−96;Steinerら,(1995)Mol.Microbiol.16:825−34を参照)。EG1117は、12の推定膜貫通ドメイン領域をもつらしい、577アミノ酸のタンパク質をコードする。EG1117のKA/KS分析は、EG1117遺伝子の少なくとも一部が、コメの栽培化の際に強く選択されたこと、を示唆する。
この特定のタンパク質は、たとえそれが、非常に多くのよく特徴解明されたペプチド輸送タンパク質に明瞭な構造相同性を示すとしても、ユニークなことは明らかである(Steinerら(1995))。当該配列は、本ファミリーのタンパク質に特徴的な推定12回膜貫通ドメインをコードしているらしい。EG1117タンパク質は、明らかに、ペプチド輸送タンパク質だけでなく、オリゴペプチド輸送タンパク質、および硝酸輸送タンパク質にも、相同性をもつ(Lubkowitzら,(1997);Linら,(2000)Plant Physiol.122:379−88;Westら,(1998)Plant J.15:221229)。他のタイプの輸送タンパク質に対する相同性はない。
ペプチド輸送タンパク質は内在性膜タンパク質で、ジ/トリペプチド輸送体の場合には、典型的に12回膜貫通ドメインを含み、そしてオリゴペプチド輸送体の場合には、12から14回の膜貫通ドメインを含むらしい。ペプチド輸送タンパク質ファミリー(PTRファミリー)は、酵母および植物で広範囲に調べられている。典型的には、これらのタンパク質は、プロトン依存的な仕方で、細胞膜を横切るジ/トリペプチドまたはオリゴペプチドの輸送を助ける。これらの輸送者は、細胞膜を横切るペプチドの動きを、内側に向けられた電気化学的プロトン勾配の下へ、プロトンの動きに共役させ、ペプチドの輸送が基質勾配に逆らって起ることを可能にする(Nakazonoら,(1996)Curr.Genet.29:412−16;Matsukuraら,(2000)Plant Physiol.124:85−93;Toyofukuら,(2000)Plant Cell Physiol.41:940−47;Hiroseら,(1997)Plant Cell Physiol.38:1389−1396;Horieら,(2000)Plant J.27:129−38)。ペプチド輸送体は、典型的には、すべてのありえるジおよびトリペプチドを配列非依存的に輸送する。すべてが、D−エナンチオマーを含むペプチドより、結合に高い親和性をもつアミノ酸のL−エナンチオマーを含むペプチドに、立体選択性を示す。今のところ、さまざまな輸送体の構造を、それらの基質特異性またはそれらの基質親和性に、関連させることはできない。
多くの異なるペプチド輸送タンパク質が、さまざまな種で同定されてきた。これらのタンパク質のグローバルアラインメント(global alignments)は、このファミリーのすべてのメンバーに典型的に見られる、一次アミノ酸配列中のモチーフを、研究者が同定することを可能にした。ペプチド輸送体ファミリーのPTR−2メンバー中に、第5膜貫通ドメイン(TMD5)の保存性F−Y−x−x−I−N−x−G−S−L残基について名付けられた“FYING”モチーフ、および膜貫通ドメイン10(TMD10)のW−Q−I−P−Q−YモチーフまたはE−x−C−E−R−F−x−Y−Y−Gモチーフのいずれかが、同定されている(Becketら,(2000)「ペプチド:未来の波」中、 M.LeblおよびR.A.Houghten編,American Peptide Society,957−58)。興味深いことに、パン酵母(S.cerevisiae)におけるFYINGモチーフの部位特異的変異誘発は、ジペプチドでの増殖の減弱、毒性ジペプチドに対する感受性の減少、および放射線標識ジロイシンの排除を起す。これらのデータは、FYINGモチーフが、基質認識および/または転位に重要な役割を果すことを、示唆した。
植物の場合、ペプチド輸送体はペプチドおよび硝酸の栄養的取込みに大切であるだけでなく、これらの輸送体はオーキシン類、病原性毒素に対する応答、および他の発生過程にも影響するという証拠が、文献に掲載されている。シロイヌナズナのペプチド輸送体AtPTR2の場合、根の成長が、この特定の輸送タンパク質により輸送されると考えられている有毒エチオニン含有ペプチドにより、影響されることが証明された(Steinerら,(1994)Plant Cell 6:1289−99)。その後の研究で、AtPTR2−B遺伝子のセンスまたはアンチセンス構築体の組み換え体発現による、AtPTR2−Bタンパク質の過剰発現または阻害のいずれかは、トランスジェニックシロイヌナズナ植物において開花の遅れおよび種子発生の停止を起すことが、示された(Songら,(1977)Plant Physiol.114:927−935)。これは、ペプチド輸送体が、植物の成長および発生の両方に極めて重大な影響を及ぼすことがあることを、示唆している。
推定EG1117ペプチド輸送体のさらなる分析は、他の代表的植物PTR−2型タンパク質に比較して、FYINGモチーフが、実際に、EG1117のTMD5に存在することを、証明している。加えて、EG1117は、他の代表的植物PTR−2型タンパク質と同じく、TMD10にWQVPQYモチーフをもつ。DIALIGNローカルアラインメントプログラム(Morgenstern(1999)Bioinformatics 15:211−218,により作製された多重配列アラインメントは、多様なPTR−2型植物タンパク質配列にほぼ95%アラインメントがあり、イネEG1117タンパク質とアミノ酸レベルで約70%相同性をもつことを証明している。O.sativaおよびO.rufipogonタンパク質では、僅か3つの非同義アミノ酸交換がある。これらの交換は、前記推定ペプチド輸送タンパク質の機能または特異性を劇的に変えることもある、構造的に有意の交換である。1つの場合では、グルタミン(極性、非荷電)からヒスチジン(塩基性)アミノ酸への変化である。他の2つの位置では、酸性のアスパラギン酸から非荷電のグリシンへの変化、および酸性のグルタミン酸から非荷電のグリシンへの変化が、見られる。全体として、3つの変化はすべて、より塩基性電荷プロフィールへのシフトである。
(実施例15):EG1117のマッピング
EG1117は次に物理的にイネ中でマッピングされた。DIGプロトコル(BMB−Roche PCR DIG Probe Synthesis Kit cat#1636090)は、ユニークなEG1117 657bp PCR産物(プライマー:5’−TCCTGCATCCCTCTCAACTT−3’および5’−GCATTGGATTCGATGAATGT−3’)の標識に成功し、クレムソン大学からのイネBACフィルターに対してスクリーンするために使用された。当該ブロットは、DIGプロトコル(BMB−Roche DIG Luminescent Detection Kit cat#1636090)どおり化学ルミネッセンスを用いて明確に検出された。2つの異なるO.sativaライブラリー(OSJNBaおよびOSJNBb)は、合計2つの異なるフィルターについてスクリーンされた。下に、両スクリーンにより同定された個々のBACsを示す:
表11 EG1117 PCR産物によるBACライブラリーの全スクリーンで同定された個々のBACs。
イネコンティグ58は、3番染色体上にあり、そして181個のBACsと15個のマーカーを含んでいる。EG1117は、マーカーCDO1387,C236,C875,R2778およびR2015と同じBACsにマッピングされる。これらはすべて、地図3RJ98上の35.8cMにマッピングされる。このマーカーは、RiceGenesまたはGrameneウェブサイトによりアクセスすると、いくつかの異なるイネ地図にマッピングされる。また、この領域にマッピングされるいくつかのQTLsもある。1000粒重量について十分実証された1つのQTLは、3番染色体のこの領域にあり、そしてマーカーRZ672に付随している(McCouch,S.R.ら、Genetics 150:899−909)。1つの地図上で、CDO1387は30.4cMにマッピングされ、そしてRZ672は39cMにマッピングされ、そしてこれらのマーカーは両方とも、同じような範囲で、4つの他のイネ地図にマッピングされる。イネのこの領域はまた、イネとメイズとの間のいくつかの遺伝子相同性研究にも含まれていて(Wilson,W.A.ら、Genetics 153(1):453−473)、その研究でイネ染色体3Sとメイズ染色体1Sおよび9Lとの間の遺伝子相同性が示された。
(実施例16):EG307とEG1117の関係
EG1117および既述の遺伝子EG307は、同じClemson BACコンティグ58にマッピングされる。EG1117は、EG307の約3cM上流のp腕の末端側に存在する。EG1117はコンティグ58上のマーカーの多くと同じBACsにマッピングされ、そしてEG307は同じコンティグにマッピングされるが、そのポジティブBACsに直接マッピングされるマーカーをもたない。
Rice Genome Project(RGP),the National Institute of Agrobiological Sciences(NIAS)およびthe Institute of the Society for Techno−innovation of Agriculture,Forestry and Fisheries(STAFF)の合同プロジェクト、およびJapanese Ministry of Agricultue,Forestry and Fisheries(MAFF)Genome Research Programからのイネについての公開YAC地図からのデータを用いて、別の分析を行った。 RGPデータベースは、これら2つの遺伝子(EG1117およびEG307)を3番染色体上で2cM離して置いている。本YAC地図はPlant Cell誌に掲載が受理されている(Wu,J.ら、2002 Plant Cell,掲載前コピー)。BLAST検索(上記参照)上で、EG1117はAU055884およびAU055885をヒットしている。これらのGenBank EST エントリーは両方とも、YACs Y2533およびY5488にマッピングするクローンS20126から来ている。これらのYACsは、33.5cMで3番染色体にマッピングされるS10968とつながっている。
これら2つの遺伝子の予想外の近接は、機能的関連の可能性を示唆する。EG307とEG1117とは共同で、収量を増加するのかも知れない。EG307はEG1117のための転写因子として植物オペロンを作出していることも、考えられる。すべての徴候は、EG307およびEG1117は両方とも、1)イネ栽培化および祖先種に対するKA/KS分析、2)粒重量QTLへの連鎖、および3)祖先および栽培化種の間のアミノ酸交換の進化的パターン:に基づく農業的に重要な形質へ影響を及ぼすはずの遺伝子の論理的候補である、ということである。EG1117も、イネにおけるKA/KS分析に基づき、栽培化中の強い正の選択の証拠を示す。EG1117は、ペプチド輸送体のファミリーに相同のタンパク質をコードする。本ファミリーの他のメンバーは、成長、開花、および種子発生に影響することが、植物で示されている。EG1117はまた、粒重量のQTLに関連づけられている。これが偶然とは、とてもありえない。これらは、農業的に意義のあるものとしてそれらの遺伝子をいずれも実証するために、本提案の目的で使用するための、理想的な遺伝子である。
(実施例17):収量候補の実証:関連分析と系統分析
穀類において収量を制御するEG307およびEG1117の役割は、本特許の別のところに記載されているように、トランスジェニック植物の作製により実証が可能であるが;別の実証支持は、関連分析と系統分析から得られる。
関連分析は、当該遺伝子が既知形質と関連するかどうか知るために、非常に多くの十分特徴解明された、イネ株中の各候補遺伝子の配列決定を含む。EG307は、13の十分特徴解明された現代イネ株で配列決定され、そして、9つの最高収量株に、正に選択された派生対立遺伝子が存在し、一方、4つの最低収量株に祖先対立遺伝子が存在することが決定された。表12の調査により観察されたパターンは、実に目覚ましいものである。これは、EG307が確かに収量に影響すること、すなわち、いわゆる「収量」遺伝子であろうことの証拠を、加えている。
表12 高収量イネ株への正に選択されたEG307対立遺伝子の関与
系統分析は、2つの重要なセットのデータを利用する。利用可能な粒重量データに加えて、多くのイネ株の由来(すなわち、系統における)はよく知られている。これは、収量関連候補遺伝子を既知のイネ株系統上にプロットすることによる、実証計画を可能にする。各株について、EG307およびEG1117の既知の1000粒重量および対立遺伝子のタイプ(すなわち、「派生した」、適応した、現代の、対立遺伝子)を記録する。適応対立遺伝子の伝達のパターンは、これらのデータから推定が可能である。
(実施例18):メイズおよびテオシンテ中のEG1117の同定
実施例13に記載の当業者には周知の方法を用いて、EG1117を、多数のメイズ株(Zea mays mays)、配列番号119、122、123、124、127、128、129、132、135、136、137、140、141、144、145、146、149、150、151、154)および多数のテオシンテ株(Zea mays parviglumis)(配列番号157、160、161、162、165、166、167)から増幅した。
(実施例19):遺伝子候補EG307の機能の決定
EG307タンパク質の機能を解明するため、それが相互作用するイネタンパク質が決定される。この「交際により有罪(guilt−by−association)」アプローチは、未知タンパク質と関連する可能性がある経路または機能を同定したいと思う状況では、有用である(編集部(2001)Nature 410)。相互作用タンパク質を決定する2つの方法は、酵母ツーハイブリッドアプローチ(the yeast two−hybrid approach)のような全体的スクリーニングアプローチ、ならびに、当該未知タンパク質の組み換え的に発現された型を用いて、相互作用の親和性に基づいて相互作用タンパク質を単離することによる直接的アプローチを含む。実験方法および設計の概要を、両方法について示す。
A. 酵母ツーハイブリッド(YTH)スクリーン。 相互作用タンパクについてのYTHスクリーニング法は、関心のあるタンパク質と転写活性化因子タンパク質結合ドメインの半分との組み換え体融合物(おとり)の作製、および転写活性化因子活性化ドメインの他の半分と融合された標的である可能性のあるタンパク質のコード領域のcDNAライブラリー(標的タンパク質)の使用、に頼っている。もし当該おとりが標的タンパク質と相互作用するならば、当該転写因子の2つの半分(結合ドメインおよび活性化ドメイン)はまとめられ、そしてリポーター遺伝子の転写の開始が起る。典型的に用いられるYTH系の2つの基本的タイプがある;すなわち、標準YTHについてのGAL4に基づくシステム(Fieldsら,(1989)Nature 340:2445−246)およびLexAに基づく「相互作用トラップ(Interaction−Trap)」(IT)法(Golemisら,(1997)Current Protocols in Molecular Biology中、 F.M.Asubelら編,John Wiley & Sons,ニューヨーク;Golemisら,(1997)Cells:A Laboratory Manual中、 D.L.SpSeptor,R.Goldman,およびL.Leinwand編,Cold Spring Harbor Laboratory Press)である。
2つのイネYTH cDNAライブラリー(L cv Mil−Yang)は、Eugentech,Inc.(Yusong Taejon,韓国)から商業的に入手可能である。これらのライブラリーは、長さ<2cmまたは>2cmのいずれかの発生中のイネ穂から単離されたmRNAを用いて作製されたcDNAからStratagene HybriZAPR(GAL4に基づくシステム)中に作製されている。これらのライブラリーは、早期および後期の両胚発生で大切なタンパク質をコードするはずである。重要なことに、当該EG307タンパク質はこれらの組織に存在するはずであることが、EG307発現のわれわれのRT−PCR分析からわかっている。したがって、これらのライブラリーは、EG307タンパク質と相互作用するタンパク質を発現すると思われる。
実験的詳細。 HybriZAP YTHシステムに特異的な標準試薬、酵母株、ベクター、およびDNA単離/配列決定法は、Stratageneから入手される。EG307のコード領域は、O.sativa苗条mRNAのRT−PCR増幅を用いてクローン化される。そのPCR増幅インサートは、線形のpBD−GAL4 Cam ファージミド(phagemid)ベクター中へクローン化され、そしてインサートをもつ形質転換体は、クロラムフェニコールプレート上で選択されて、「おとり」プラスミドを作製する。クローニングの連結およびEG307のコード領域はEGでの標準配列決定技術を用いて配列決定され、適正なリーディングフレームの使用、およびEG307の増幅中に突然変異が導入されていないことを確かめる。
Eugentechからの両商業ライブラリーは、一次ライブラリーから単回増幅されていることが当該会社により報じられており、そして2x108pfuで提供される。ライブラリーI(<2cm穂)は、1x106pfuの初期複雑度および3.6x108pfu/mlの増幅ライブラリータイターをもつ。ライブラリーIのインサートサイズは、0.5から3.0kbの範囲である。ライブラリーII(>2cm穂)は、5x105pfuの初期複雑度および4x106pfu/mlの増幅ライブラリータイターをもつ。ライブラリーIIのインサートサイズは、0.5から1.6kbの範囲である。これらの既製ライブラリーは、極めて相応な価格で商業的に入手可能なので、この特定のシステムを用いて最初のYTHハントを行うのが賢明である。
おとりプラスミドと標的プラスミドライブラリーの両方は、Stratagene’s YRG−2 Yeastコンピテント細胞ライブラリーキットを用いて、酵母YRG−2株中へコトランスフェクトされる。両プラスミドをもつ酵母は、YRG−2栄養要求性突然変異(auxotrophic mutations)の補完性により選択される。この場合、おとりおよび標的プラスミドは、YRG−2株のトリプトファンおよびロイシン両栄養要求を補完するはずである。本コトランスフェクションから増殖するコロニーを使って、酵母ライブラリーを作製し、それは次に、ヒスチジンを欠き、X−galを含むプレート上でのさらなる選択により、相互作用する標的タンパク質についてスクリーンする。YRG−2株は2つの別のリポータープラスミドをもっている。一方は、HIS遺伝子の上流にGAL4結合配列をもち、YRG−2ヒスチジン栄養要求性突然変異を補完するのに使われる。他方のプラスミドは、LacZリポーター遺伝子の上流にGAL4結合配列をもつ。これは、当該酵母をX−gal含有プレート上に置いた場合、リポーター遺伝子発現について青色/白色スクリーニングを可能にする。当該相互作用スクリーニングフェーズの際、相互作用のおとり;標的組合せを含む酵母だけが、ヒスチジン栄養要求性を補完し、そしてまた、LacZの発現およびX−gal基質の青色産物への変換を起す。相互作用についてのこの二重スクリーンは、同定される擬陽性コロニーの数を制限するのに役立つ。加えて、ある程度、青色基質産生の強度は、おとりと標的タンパク質との間の相互作用の強度の、ある指標である。
相互作用コロニーを拾い出し、当該DNAを単離し、そして数百コロニーからの標的プラスミドインサートの配列を決定する。配列は翻訳され、そしてタンパク質配列を、完全長コード領域および可能性のあるオープンリーディングフレームの双方に対して、ESTsから検索する。複数の同一配列が標的として同定された場合、当該タンパク質は優先的に選択された相互作用タンパク質である可能性を表す。ある配列が一度または少数回のみ表示されるならば、それは、非特異的相互作用タンパク質であるか、cDNAライブラリー中で限られた回数表示される転写産物か、のいずれかである。
複数クラスの相互作用タンパク質が、このようにして同定されるはずである。理想的には、既知機能のタンパク質は高度に表示され、そして理論的な機能を有するまたは経路に関係するタンパク質も容易に同定される。たとえ相互作用タンパク質(類)が未知であっても、既知タンパク質に相同であれば、公開ドメイン中の既知情報に基づいて、当該相互作用の関連を確かめるための、実験をデザインすることが、なお可能である。
タンパク質・タンパク質相互作用があると思われるときは、追加のin vitroおよびin vivo研究により立証されよう。時間が許せば、相互作用を確認するためにより簡単な検定をフェイズIの際に行う。アフィニティプルダウン(affinity pull−downs)およびファーウェスタン(far−westerns)のような検定は、抗体および組み替え体タンパク質のような追加の試薬がつくられたときに、行われよう。おとりタンパク質(EG307)ならびに推定相互作用タンパク質の両方についての組み替え体タンパク質の作製は、エピトープタグ融合タンパク質(GST,myc,V5,ビオチン標識)と同じく、必要に応じて行われる。in vivo相互作用をはっきりと証明し、そしてまた、その相互作用に影響する可能性がある因子を測定するためには、関連in vivo相互作用(例えば、2つの適切に構築された緑色蛍光タンパク質融合体間の蛍光エネルギー転移)についての別の証拠も必要かも知れない。しかし、そうした実験は、明らかに、フェーズIの範囲を超えている。
YTHハントが、おとりタンパク質自身がGAL4転写活性化配列に結合し、そして当該リポーターシステムの活性化を起こすことを同定することは可能である。これが起るならば、当該EG307タンパク質の2つの半分を独立に発現する2つのおとり構築体が構築される。これらの構築体は、YRG−2中のGAL4リポーター類の直接活性化についてテストされることになろう。もし直接活性化が陰性であれば、cDNA標的ライブラリーは、おとり:標的の相互作用について再スクリーンされることになる。
もし相互作用タンパク質が商業的既製YTHライブラリーから何も同定されないならば、これらのライブラリーは低品質であるか、または実際に相互作用しているタンパク質を同定するのに、そのGAL4 YTHシステムが十分鋭敏でない可能性がある。いずれの場合にも、相互作用トラップシステム(LexA)中に構築された代わりのライブラリーを使ってみることが考えられる。これらのライブラリーは、次に、何らかの他の未知候補タンパク質のさらなる特徴解明の基盤として役立つはずである。
(実施例20):物理的方法を用いる相互作用タンパク質の直接単離および同定。
植物組織から相互作用タンパク質を直接単離するため、さまざまな可溶化植物組織中に存在するタンパク質のアフィニティー単離が行われる。単離された相互作用タンパク質は限定タンパク質分解を受け、そして生じるペプチド断片は、既知または予測されたタンパク質を示すペプチド断片パターンが生じるかどうかを同定するために、質量分析により分析される。
EG307タンパク質は細菌の発現系中へクローン化され、PharmaciaのpGEX−5X−1(Amersham Pharmacia)を用いてGST−EG307融合タンパク質を作製する。IPTGにより発現が誘導された培養物の細菌ライゼート(可溶化液、lysates)を用い、グルタチオンセファロースビーズ上で当該融合タンパク質を精製する。当該可溶性タンパク質は、当該カラム上に遊離グルタチオンを通過させると、固相への結合のための競合によって、当該ビーズから溶出される。当該組み替え体GST−EG307は、次に、新しいグルタチオンセファロースビーズに再結合されたとき、アフィニティーリガンドとして、使用可能である。あるいは、遊離のEG307タンパク質は、Xa因子との融合タンパク質の処理による、GSTドメインの除去によって得ることも可能である。推定EG307タンパク質中に、Xa因子プロテアーゼサイトはない。
大量の0.sativa実生(200−300グラム)から単離された植物細胞ライゼートは、標準的な分別組織破壊と純化技術により作出される。細胞質ゾルのタンパク質を単離するために、当該細胞は、プロテアーゼインヒビターカクテルの存在下で当該組織ライゼートを冷却しながら、ポリトロン組織ホモジェナイザーおよび超音波処理器を用いて、機械的剪断により、破壊される。当該可溶性細胞質ゾル細胞ライゼートは、残骸を除くために低速で分画遠心分離により純化し、次いで不溶性の凝集タンパク質を除去するために高速遠心分離により純化される。当該不溶性画分中のタンパク質を単離するために、NP−40,BrijR35、およびデオキシコレートのようなさまざまな界面活性剤が、これらの不溶性膜画分から単離された膜結合タンパク質を可溶化するのに使われる。不溶性物質は遠心分離により除かれる。
当該植物細胞ライゼートは、前記グルタチオン・セファロース:GST EG307ビーズ上を個別に通過させる。ビーズは、さまざまなイオン強度の緩衝液で洗浄し、弱く結合されたタンパク質を除去する。結合タンパク質は、次いで、低pH,高塩濃度、または変性界面活性剤のいずれかで、溶出される。純粋タンパク質類は、SDS−PAGEゲル上を移動させ、そして当該バンドを、質量分析に適合する銀染色試薬またはコマジーブルーで染色される。興味あるバンドはゲルから切り出され、そして後の分析のために凍結される。これらのタンパク質は、タンパク質分解酵素ペプチドシグネチュアおよび当該相互作用タンパク質の正体を決定するために、限定タンパク質分解に続く質量分析を行う質量分析施設に送られる。
本技術は、当該相互作用の親和性が、EG307タンパク質と可能性のある相互作用タンパク質との間で緊密な結合を確保するのに十分に特異的で、強力である限り、当該相互作用タンパク質の同定を可能にするはずである。これらのデータは、次いで、そのタンパク質が他のタンパク質に相同であれば、当該相互作用タンパク質の同定を可能にするだろう。EG307タンパク質に対する親和性の欠如のために、本法により同定されるタンパク質がないことが、あり得るのは明らかである。あるいは、上に概説した方法により作製されたライゼート中に相互作用タンパク質がないことも、あり得る。
もしあまりにも多くのタンパク質が、グルタチオン・セファロース:GST EG307ビーズに結合するようであれば、それらのタンパク質は、セファロース、グルタチオン、グルタチオンシンテターゼに、またはEG307とN末端GST融合をつくることにより作製された人工エピトープのいずれかに、非特異的に結合していることも、あり得る。これらの非特異的相互作用の一部を排除するために、ライゼートは、セファロースビーズ単独、グルタチオンセファロース、ならびにグルタチオンビーズに共役した無関係なGST融合タンパク質で、前浄化する。その前浄化工程後にも非特異的バンドが残るならば、高塩濃度、低塩濃度、高または低pH、Twenn−20のような非イオン性界面活性剤、のような一層厳しい洗浄および結合条件を採用して、本おとりタンパク質に結合するタンパク質を制限する。
(実施例21):ペプチド輸送機能をもつと推定された新規タンパク質をコードする遺伝子候補EG1117の機能を決定する。
EG1117タンパク質は、それが、タンパク質のPTR−2ファミリーのメンバーであることを示唆するシリコホモロジー(コンピューター相同性)データに基づき、一種のペプチド輸送タンパク質をコードするらしいので、この特定の機能を直接評価する実験を行う。2つの補完的だが、独立のアプローチを用いる。第1に、酵母における異種ペプチド輸送タンパク質機能を調べる方法を用いて、酵母のPTR−2欠損変異体における細胞膜を横切りペプチドを輸送し、そして栄養要求性アミノ酸要求を補完するための、EG1117の栽培化型および祖先型の両方の能力を調べる。第2に、有毒エチオニン含有ペプチドの存在下で、イネ実生の栽培化種および祖先種の両方の成長特性を用いて、イネの栽培化種および祖先種間の測定可能な表現型差を、潜在的ペプチド輸送タンパク質変異に相関させる。
栄養要求性酵母における異種ペプチド輸送機能の補完分析。 これらの研究に、ジ/トリペプチドを輸送する能力にも突然変異をもつ、特別にデザインされた栄養要求性変異酵母株を用いて、シロイヌナズナの新規ペプチド輸送タンパク質を同定するために使用された既述の方法を利用する(Steinerら,1994)。本異種系は、植物ペプチド輸送タンパク質が酵母細胞中にクローン化でき、そしてその組み替え的に発現されたタンパク質機能が、当該酵母株の栄養要求性アミノ酸要求の補完により測定できることを、証明した。これは、EG1117の両型の機能に関する情報を迅速に生じる、単純だが、有力な検定法である。
酵母親株BY4742[Matα,his3−,leu2−,lys2−,ura2−]、およびATCCから入手可能な「完全酵母欠損アレイコレクション」からのYKR093W ORF欠損変異体で、それにはPTR−2遺伝子が欠損しており、BY4742−ptr2と命名されている。両株ともATCCから入手可能である。EG1117の栽培化型および祖先型は、pYES2.1−TOPO−TAベクター(Invitrogen,Inc.)中へクローン化されるが、それは、酵母のBY4742−ptr2栄養要求株中に、推定PTR−2タンパク質の組み替え体発現を可能にする。トランスフェクタントの選択は、ウラシルを欠くプレート上で行う。当該トランスフェクタントからプラスミドDNAを再分離し、そしてEG1117特異的プライマーにより分析し、当該株が適切なプラスミドをもつことを確認する。タンパク質発現は、当該培地中のガラクトースの存在により制御する。トランスフェクタントはガラクトースを含む培地中で増殖させ、そしてEG1117タンパク質発現は、前記ベクターにより付与されたC末端V5エピトープタグのウェスタンブロット分析によりモニターされる。下に補完および根成長検定に使われたペプチドを示す:
Eth=エチオニンは、メチオニンの有毒誘導体である。栄養要求性表現型についての全選択は、ロイシンを欠くプレート上で行う。
EG1117がペプチド輸送タンパク質をコードするかどうかをテストするため、上にリストされたペプチドは、商業的に合成され、そして精製される。各ペプチドはロイシンをもつので、当該ペプチドが、機能性のペプチド輸送タンパク質でトランスフェクトされそしてガラクトースの存在下で増殖されたロイシン栄養要求性BY4742−ptr2株中へ輸送されるならば、その株は増殖できるはずである。
実施される第2の検定は阻害検定である。この場合、BY4742−ptr2 EG307トランスフェクタントならびに、対照としての、BY4742親株およびBY4742−ptr2欠損変異株を、YPG(酵母エキス、ペプトン、ガラクトース)プレート上にローンとしてプレートし、そして有毒エチオニンペプチド誘導体を、メンブランディスク上にスポットし、当該酵母ローン上に置く(Steinerら,1994)。次いで、当該ディスクの周りに透明のゾーンができたら、当該酵母は、前記有毒ペプチドを細胞中に輸送し、当該細胞を殺すことを当該酵母に可能にする、機能性輸送タンパク質を発現したことを、示す。
EG1117タンパク質の栽培化型および祖先型の両方が、アミノ酸栄養要求性変異を補完し、それらが両方とも機能性輸送タンパク質であることを示唆するならば、次の実験を行う。pHまたは陽イオン依存性を評価するために、プレーティング培地のpHまたはイオン強度を変化させ、そして補完性ペプチドの存在下で増殖するか、または有毒ペプチドの存在下で死ぬかにつき、EG1117タンパク質をもつ当該トランスフェクタントの能力を決定する。同様に、ペプチドに対する親和性の潜在的差異を評価するために、酵母形質転換体の増殖への特定ペプチドまたはそのペプチドの有毒変異体の用量応答作用を評価する。
EG1117タンパク質がペプチド輸送タンパク質を実際にコードすることを見いだす可能性は、非常に高い。当該タンパク質の前記2つの型がこの機能に測定可能な差異を示す可能性も高く、おそらく、特異性/選択性、至適pH、または親和性に変化が明らかになるだろう。酸性から一層塩基性の特性へのアミノ酸配列中の非同義変化は存在するが、これらの変更は当該タンパク質の重要でない領域にあるのかも知れない。あるいは、これらの変化は、その機能を変えるほど、当該タンパク質の3次元構造を十分には変えない可能性もある。
これらのタンパク質がペプチドを輸送しないとは考えられないが、EG1117タンパク質が何か別の基質の輸送タンパク質であることはあり得る。この場合、EG1117がペプチドを輸送するという何らの証拠も得られなければ、これらの他の機能のいくつかを選別するために、同様の系または少なくとも当該トランスフェクト酵母を使うことは可能である。例えば、単糖類または多糖類輸送能力の試験は、適切な栄養要求性株で可能であろう。あるいは、標的輸送機能のための他の酵母欠損変異体を、現存のトランスフェクタントと交配させることも可能である。この場合、選択プレート上の交配酵母の増殖は、その特定の欠損変異の補完を示すことになる。本戦術を用いて、公共的に入手可能な非常に多くの異なる酵母欠損変異体を走査することも、可能であろう(Brachmanら,(1998)Yeast 14:115−132)。
(実施例22):エチオニン含有有毒ペプチドに対する祖先および栽培化イネ実生の異なる感受性。
これらの研究は、EG1117タンパク質が、イネの栽培化株と祖先株とでは、違って機能することを、in vivoで直接証明するための試みを表している。有毒ペプチドを輸送する能力は、当該有毒ペプチドを取り込む細胞の死をもたらす。機能の欠如は、当該実生根の成長持続への有毒ペプチドの作用に対する抵抗性として、表現されよう。表現型差の欠如は、EG1117が発現されなかったか、または他の輸送タンパク質が、選択されたEG1117タンパク質の変更された機能を補償するか、のいずれかを示唆している。
イロイヌナズナに使われた方法の修飾版が、これらの研究では使用される(Steinerら,1994)。O.sativaおよびO.rufipogenからのイネ種子は芽を出させ、そしてその実生は暗所の湿った容器中のイネ培地上での成長を持続可能にした。当該実生は、エチオニン含有有毒ペプチドまたは対照として非毒性ペプチドで含浸させたディスクにさらす。当初の実験は、有毒ペプチドに対する感受性に劇的な差が存在するかどうかを、決めることに焦点をしぼる。劇的な差が観察されないならば、有毒ペプチドの用量範囲を用いる一層大規模な別の実験に用いて、有毒ペプチド用量に対する感受性の差が存在するかどうかを決める。これは、イネの前記2株に存在するペプチド輸送体の機能活性における差を示唆することになろう。
本セットの研究からの結果は、EG1117コードタンパク質における仮定された差を補償する別のペプチド輸送機構があるかどうかに、かかっている。EG1117が、イネによって使われる主要なペプチド輸送タンパク質である限り、またはイネ植物の成長に決定的である、独特の機能をもつ限り、栽培化型と祖先型との間のEG1117の機能におけるどのような差も、前記有毒ペプチドに対する感受性の差により明らかにされるはずである。シロイヌナズナでの同様な実験は、単一のPTR−2タンパク質が単一ペプチド輸送系の一部であることの証明に成功した(Steinerら,1994)。すなわち、単一ペプチド輸送体の変異体が、成長阻害に劇的な結果を与えた。とくに、これらの研究は、初期胚におけるPTR−2発現の発生遮断によるPTR−2タンパク質の欠損またはPTR−2タンパク質発現の欠如が、周囲の環境中の有毒ペプチドの存在に対して当該植物に抵抗性をもたらした。イネ実生の成長も同様であり、そしてEG1117の機能のどのような差でもイネ実生の成長の変化により容易に明らになると、思われる。