JP2009279605A - マグネシウム合金と鋼との異種金属接合方法及び接合構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】Fe−Mg系合金状態図が二相分離型を示し、冶金的な接合が直接的には困難なマグネシウム合金材と鋼材との組合せにも拘わらず、強固な接合が可能なマグネシウム合金と鋼との異種金属接合方法と、このような方法による異種金属接合構造を提供する。
【解決手段】マグネシウム合金材1と鋼材2を接合するに際して、接合界面にAlを介在させた状態、例えばマグネシウム合金にAlを添加したり、鋼材にAl含有亜鉛めっきを施したりした状態で両材料1,2を重ね合わせ、高エネルギービームBを鋼材2の表面に照射しつつ両材料を加圧して、鋼材側からの伝熱によりマグネシウム合金材1を加熱し、接合界面にAlMgとFeAlとが混在する複合組織を有する化合物層Lを介して両材料1,2を接合する。
【選択図】図1

Description

本発明は、性質の異なる異種金属として、特にマグネシウム合金と鋼との接合方法と、このような方法によって接合されたマグネシウム合金と鋼との接合構造に関するものである。
互いに物性が相違する異種の金属であるマグネシウム合金材と鋼材とを接合する場合、マグネシウム合金材の表面に酸化皮膜が存在すると共に、接合時の加熱過程で鋼表面の酸化皮膜が成長するために、大気中での接合が困難となる。
また、Fe−Mg二元状態図からわかるように、マグネシウムと鉄は二相分離型の挙動を示し、互いの固溶限も極めて小さいことから、このような特性の材料同士を直接接合することは、冶金的に極めて困難である。
したがって、従来、このようなマグネシウム系材料と鋼との異種金属材料を組み合わせて使用する場合には、ボルトやリベット等による機械的締結によっていた(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−272541号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法においては、接合に用いる部品点数が増加することから、接合部材のは重量やコストが増加する点に問題があった。
本発明は、このような異種金属材料同士の接合における上記課題に鑑みてなされたものであり、冶金的な接合が直接的には困難なマグネシウム合金と鋼との組合せであっても、強固に接合することができる異種金属の接合方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、両材料の間にAlを介在させてMg及びFeとAlとの金属間化合物をそれぞれ生成させ、これらの金属間化合物を含む複合層を接合界面に介在させることによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の異種金属接合方法においては、マグネシウム合金材と鋼材とを重ね合わせた状態で、高エネルギービームを鋼材の表面に照射しつつ両材料を相対加圧し、鋼材側からの伝熱により上記マグネシウム合金材と鋼材を接合するようにしている。そして、この接合に際して、両材料の接合界面にAlを介在させておき、両材料に含まれるMg及びFeとAlとの金属間化合物を接合界面にそれぞれ形成させ、少なくともAlMgとFeAlとが混在した複合組織から成る化合物層を介して両材料を接合することを特徴としている。
また、本発明の異種金属接合構造は、マグネシウム合金材と鋼材の新生面同士が少なくともAlMgとFeAlとが混在した複合組織から成る化合物層を介して接合されていることを特徴とする。
本発明によれば、高エネルギービームを鋼材表面に照射し、加熱された鋼材側からの伝熱によりマグネシウム合金材と鋼材を接合するに際して、接合界面にAlを介在させておき、両材料の主成分金属であるMg及びFeのそれぞれとAlとの金属間化合物が混在する複合組織を備えた化合物層を介して両材料を接合するようにしている。したがって、冶金的に直接接合が困難な材料の組合せにおいても相互拡散が可能となり、強固な接合が達成できることになる。
以下に、本発明のマグネシウム合金と鋼との異種金属接合方法と、これによって得られる異種金属の接合構造について、さらに詳細、かつ具体的に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り、質量百分率を表すものとする。
本発明の異種金属接合方法においては、上記したように、マグネシウム合金材と鋼材とを接合するに際して、予め両材料の接合界面に、両材料の主成分金属であるMgとFeのそれぞれと金属間化合物を形成する金属であるAlを介在させた状態で両材料を重ね合わせる。そして、重ね合わせた両材料の鋼材の側に高エネルギービーム、例えばレーザビームや電子ビームを照射し、照射によって加熱された鋼材とマグネシウム合金材を相対的に加圧する。
これによって、マグネシウム合金材が鋼材側からの伝熱により急熱され、合金材表面の酸化皮膜が熱衝撃によって破壊され、さらなる加圧により、局部的に溶融された合金材の表層部と共に接合部の周囲に排出され、両材料の新生面同士が高温下で直接接触する。
このとき、接合界面においては、接合界面に介在するAlが合金材中のMg及び鋼材中のFeとそれぞれ反応してAlMgとFeAl を生成し、これらが混在した複合組織を含む化合物層を介して両材料が接合されるため、相互拡散が生じて接合強度が向上することになる。
ここで、両材料の接合界面にAlを介在させるための具体的手段としては、Alを含有する材料、例えばZn−Al合金やMg−Al合金などの薄板や箔を両材料間に挟持させたり、少なくとも一方の材料にめっきや溶射、蒸着、コーティングなどの被覆手段によって付着させたりすることができる。
また、マグネシウム合金材として、Alを含有するマグネシウム合金、例えばASTM(アメリカ材料試験協会)に規定されるAZ31(3%Al)、AZ61(6%Al)、AZ80(8%Al)、AZ91(9%Al)を用いることも可能である。
さらに、鋼材のめっき層中にAlを添加することもできる。この場合、JIS G 3317に規定される溶融亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板を用いることが望ましい。
このような一般的な市販鋼材を使用することによって、新たにめっきを施したり、特別な準備を要したりすることもなく、極めて簡便かつ安価に、マグネシウム合金との強固な接合を行なうことができる。また、Alを含有しないマグネシウム合金材(例えば、ZK51A、ZK60A、ZE33Aなど)や純マグネシウム材との接合が可能となり、接合相手として、種々のマグネシウム系材料を自由に選択できるようになる。
なお、純マグネシウム材は、工業的にはほとんど用いられないことから、本発明においては、被接合材の一方を「マグネシウム合金材」としている。しかし、上記したように、本発明によれば純マグネシウム材と鋼材の接合も可能であるからして、本発明に言う「マグネシウム合金材」には、「合金」が除外されることにはならず、実質的に純マグネシウムも含まれることになる。
上記Alの添加量としては、接合界面に介在するAl量の総和(例えば、裸鋼板とAZ31合金材の接合の場合には3%、亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板とAZ31合金材の接合の場合には8%、裸鋼板とAl無添加マグネシウム材の間にザマック合金(Zn−4%Al−0.05%Mg)の薄板を挟持して接合する場合には4%)で、3%以上10%未満とすることが望ましい。
すなわち、接合界面に介在するAl量が3%に満たない場合は、Alとの金属間化合物が生成され難くなって、AlMgとFeAl が混在した複合型の化合物層が形成されなくなることがある。一方、Al量が10%以上になると、接合界面に厚いFe−Al反応層と薄いMg−Al反応層の二重構造の反応層が生成し、接合強度が低下するという不都合が生じ易くなる傾向がある。
本発明の異種金属接合方法を実施工に適用するに際しては、高エネルギービームの照射ヘッドと、加圧ローラを備えた加圧装置とを一体的に備えた加工ヘッドを重ね合わせた鋼板とマグネシウム合金材に対して相対移動させながら、高エネルギービームを鋼材表面に連続的又は断続的に照射すると共に、照射直後位置を加圧ローラによって両材料を連続的に加圧することが望ましい。
図1は、上記した異種金属接合に用いる装置の一例を示すものである。
図に示す接合装置は、接合の熱源となる高エネルギービームとしてYAGレーザを照射する照射ヘッド11と、この照射ヘッド11の進行方向後方側に配置され、エアシリンダによって加圧ローラ12を上下方向に駆動する加圧装置13を備えている。ここで、当該ローラ12が被接合材料、すなわちマグネシウム合金材1と、その上に重ねられた鋼板2に加える加圧力は、上記エアシリンダに送給するエア圧力を調整することによってコントロールすることができる。
加圧ローラ12は、上記のように照射ヘッド11と一体的に取り付けられ、レーザビームBに追随して移動し、上側に位置する鋼板2がレーザビームBによって加熱された直後に、当該鋼板2をマグネシウム合金材1に押し付け、接合部を加圧することができる。
したがって、ワークが平面の場合はもとより、車体のような3次元形状の場合にもレーザ照射位置に追従することができ、当該接合装置が図中の矢印方向に相対移動することによって、両材料1,2を連続的あるいは断続的な線状に接合することができるようになっている。
なお、当該接合装置においては、図示以外にも各種の制御手段や調整装置を備えており、レーサビームBの照射角度や照射位置、フォーカス位置、照射位置と加圧位置の距離調整などができるようにしてある。
図2(A)〜図3(E)は、本発明による異種金属の接合プロセスとして、マグネシウム合金材と鋼板との接合過程を示す概略工程図である。
まず、図2(A)に示すように、被接合材料として、マグネシウム合金材1と鋼板2が準備され、マグネシウム合金材1の上に鋼板2が重ねられる。
このとき、マグネシウム合金材1には、例えば6%程度のAlが添加されていると共に、その表面には酸化皮膜1fが生成されている。
次に、図2(B)に示すように、レーザビームBを高融点材料である鋼板2の表面に照射して加熱し、ローラ12により加圧し、鋼板2をマグネシウム合金材1に接触させる。 このように、鋼板2は高温、マグネシウム合金材1は冷たい状態で互いに接触すると、鋼板2と接触したマグネシウム合金材1の最表面のみが瞬間的に溶融し、さらに急加熱による熱衝撃、膨張差、加圧ローラ12からの加圧力により、図3(C)に示すように、マグネシウム合金材表面の酸化皮膜1fが部分的に破壊される。さらに加圧することにより、溶融した表層のマグネシウム合金1mと、酸化皮膜1fが周囲に排出物Wとなって排出される。
これにより、図3(D)に示すように、鋼材2とマグネシウム合金材1の新生面が直接接触し、当該接触部は高温下で加圧されているので、材料の拡散が生じ、両材料1,2が接合される。
このとき、接合界面では、マグネシウム合金材1に添加されたAl原子が鋼材2の主成分であるFe、及びマグネシウム合金材1の主成分であるMgと反応し、Al−Mg系金属間化合物と、Al−Fe系金属間化合物を形成し、図3(E)に示すように、これらが混在した複合型の化合物層Lを形成する。
このように、複合型の上記化合物層Lを介してマグネシウム合金材1と鋼材2の強固な接合が完成する。
本発明方法によれば、接合後の接合界面には酸化皮膜1f層は残存せず、鋼材2として亜鉛めっき鋼板を使用した場合にも、亜鉛めっき層は、マグネシウム合金材の表層溶融部1mと共に排出されるために接合界面に残存せず、これが強固な接合が可能になる要因のひとつでもある。
本発明の異種金属接合方法においては、マグネシウム合金材1を直接加熱することなく、レーザビームBのような高エネルギービームを鋼板側にのみ照射し、マグネシウム合金材1を鋼板側からの伝熱のみによって加熱するようにしている。したがって、マグネシウム合金材1は、ごく表層部のみの局部的な溶融となるため、低融点のマグネシウム材を溶損させることなく、高融点の鋼材との重ね接合が可能となる。
図4は、上記方法によって得られたマグネシウム合金材1と鋼材2との接合部の断面構造を示すものであって、表面に酸化皮膜1fが生成さたマグネシウム合金材1の上に、鋼材2が重ねられている。そして、接合界面には、前述のようにAl−Mg系及びAl−Fe系の金属間化合物が生成しており、少なくともAlMgとFeAl が混在した複合型の化合物層Lが形成され、この化合物層Lを介して両材料1,2が接合されている。
さらに、この接合部の周囲を囲むように、局部溶融したマグネシウム合金と共に酸化皮膜1fや接合界面の不純物など(亜鉛めっき鋼板を用いた場合には、亜鉛めっき層も)を含む排出物Wが排出されている。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
マグネシウム合金材と鋼材との異種金属接合を行うに際して、マグネシウム合金材としては、Alを含有しない純マグネシウム材と、Al含有量が異なる4種のマグネシウム合金、AZ31(3%Al)、AZ61(6%Al)、AZ81(7.5%Al)及びAZ−91(9%Al)を用いた。
一方、鋼材としては、裸鋼板(CR)と、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)と、亜鉛めっき中にアルミニウムが添加された55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板)と亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板を用いた。これら鋼材とマグネシウム材とを後述のように組み合わせ、種々の条件で接合し、せん断引張り試験を行うと共に、接合界面における化合物層の組成や厚さをオージェ分析、走査型電子顕微鏡により測定し、得られた界面構造と強度の関係を調査した。
すなわち、図1に示した接合装置を用い、マグネシウム合金材1、鋼材2共に、85mm×250mmに切断し、マグネシウム合金材1の長辺(250mm)の上に、鋼材の長辺を5mmだけラップさせた状態に重ね、ラップ部中央にレーザビームBを照射した。
加工ヘッドを移動させながら、レーザビームBを鋼材2の表面に照射して、鋼材2を加熱した後、レーザ照射位置の後方20mmの位置を加圧装置13先端の加圧ローラ12により加圧し、鋼材2をマグネシウム合金材1に押し付けることにより接合を行った。
このとき、レーザビームBは、鋼材表面において4mm×5.5mmの楕円となるようにデフォーカスさせ、レーザ出力を1.5〜2.7kW、接合速度を0.8及び0.9m/min、加圧装置13による加圧力を120MPaとした。
接合後、継手強度を測定するため、接合長さが20mmとなるように溶接した材料を20mm幅で切断し、せん断引張り試験を実施した。
これらの結果を材料や接合条件の組合せと併せて、表1に示す。
Figure 2009279605
表1において、実施No.1〜5は、鋼材としてめっきが施されていない裸鋼板を用いており、実施No.6〜10は、亜鉛めっき鋼板を用いた実施例である。これらのうち、発明例2〜5及び7〜10の結果から明らかなように、亜鉛めっき層の有無に拘わらず、Alを含有するマグネシウム合金材を適用することによって、接合界面にAlMgとFeAl が混在した複合型の化合物層が形成され、強固な接合が可能であることが確認された。
また、マグネシウム合金材のAl含有量が9%までの範囲では、Al含有量の増加と共に接合強度が増す傾向と共に、亜鉛めっき鋼板を用いた方が強度が僅かに高くなる傾向が認められた。
これに対し、比較例1及び6は、裸鋼板及び亜鉛めっき鋼板にそれぞれ純マグネシウム材を接合した例であるが、接合界面にAlが存在していないために、化合物層が形成されず、引張りせん断強度は1〜1.2kNと低い結果となった。
発明例2及び7は、裸鋼板及び亜鉛めっき鋼板と、3%Alを含有するマグネシウム合金材(AZ31)の接合例である。
裸鋼板、亜鉛めっき鋼板、いずれの場合も、接合強度は、2.7kN前後であって、それぞれ純マグネシウム材を用いた比較例1及び6と比較して飛躍的に向上していることが確認された。そして、接合界面には、AlMgとFeAl の金属間化合物が混在する複合組織を含む化合物層の形成が確認されている。
発明例3及び8は、マグネシウム合金材として6%Alを含有するAZ61合金材を用いた接合例であって、接合強度は、裸鋼板、亜鉛めっき鋼板いずれを用いた場合も、3%のAlを含有するAZ31合金材を用いた場合と比べて、さらに0.5kN程度向上している。また、接合界面には、同様の複合組織を備えた化合物層が形成されている。
強度が向上した要因としては、マグネシウム合金材中に添加されたAl量が増加したため、Fe−Al系及びAl−Mg系金属間化合物を含む複合型化合物層がより強固に形成されたことによるものと考えられる。
さらに、発明例4,5及び9,10は、鋼材として裸鋼板及び亜鉛めっき鋼板を用い、マグネシウム合金材として7.5%及び9%のAlを含有するAZ81合金材及びAZ91合金材を使用した場合のそれぞれ接合例である。
いずれの場合も、6%のAlを含有するAZ61材を用いた場合と比べて、上記と同様の理由により、接合強度がさらに向上していることが確認された。接合界面には、同様の複合組織を備えた化合物層が形成されていることが確認された。
一方、実施No.11〜14は、鋼材として、Alを含有する亜鉛合金をめっきした鋼板を用いたものである。
このうち、発明例14は、鋼材として亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板を用い、マグネシウム材として、Alを含有しない純Mgを用いた接合例であって、接合界面近傍に含有されるAl量の総和が5%となる。この場合には、通常の亜鉛めっき鋼板と6%Alを含有するAZ61合金材の接合例である上記発明例8の場合と同様の化合物層が形成され、上記発明例と同等の接合強度が得られることが確認された。
発明例11は、鋼材として亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板を用い、マグネシウム合金材として3%のAlを含有するAZ31合金材を用いた接合例であって、接合界面近傍に含有されるAl量の総和が8%となる。この場合には、通常の亜鉛めっき鋼板と9%Alを含有するAZ91合金材の接合例である上記発明例10の場合と同様の化合物層が接合界面に形成され、上記発明例と同等の接合強度が得られることが確認された。
これに対して、比較例12は、亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板と6%のAlを含有するAZ61合金材の接合例であり、この場合には、接合界面近傍に含有されるAl量の総和が11%となる。
この組合せの場合、引張りせん断強度は2.4kNであって、上記した発明例2〜5、6〜11と比較して、接合強度が低下する結果となった。また、接合界面には、金属間化合物の混合組織は形成されず、厚いFe−Al系金属間化合物層と薄いAl−Mg系金属間化合物層から成る二層分離構造の化合物層が生成しており、これら化合物層の界面、又はAl−Mg系金属間化合物層とマグネシウム母材の界面から破断していた。
また、接合界面近傍に含有されるAl量の総和が58%となる55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板と3%のAlを含有するAZ31合金材の接合例である比較例13の場合、接合強度は1.8kNとなり、上記各発明例と較べてかなり低い結果となった。
そして、接合界面には、上記比較例12と同様に、厚いFe−Al系金属間化合物層と薄いAl−Mg系金属間化合物層から成る二層分離構造の化合物層が形成されていることが確認された。
上記の結果、AlMgとFeAl の金属間化合物が混在する複合組織を含む化合物層が接合界面に形成されていることによって、2.5kN以上の高い引張りせん断強度が得られ、それには接合界面近傍に含有されるAl量の総和を3%以上10%未満とすることが望ましいことになる。
また、このときの接合界面における上記化合物層の厚さは、0.5μm以上3μm未満であることが判った。
図5(A)〜(C)は、上記実施例により得られた接合部の断面組織を走査型電子顕微鏡によって観察した結果を示す代表例である。
すなわち、図5(A)は、裸鋼板とAZ31合金(3%Al)の接合例である発明例3の接合構造を示すものであって、接合界面には、Fe−Al系及びAl−Mg系の金属間化合物を含む複合型の化合物層が形成され、その平均厚さは0.7μmであった。
また、図5(B)は、亜鉛めっき鋼板とAZ91合金(9%Al)の接合例である発明例9の接合構造を示すものであって、接合界面には、同様の複合型化合物層が均一に形成され、その平均厚さは1.5μmであり、最も高強度が得られた実施例である。
これらに対し、図5(C)は、亜鉛−55%アルミニウム合金めっき鋼板とAZ31合金(3%Al)の接合例に係わる比較例13(Al総和量:58%)の接合構造を示すものである。
この場合には、接合界面にFe−Al系とAl−Mg系の金属間化合物から成る2層構造の反応層が形成されているが、これら金属間化合物が互いに混合することなく、Fe−Al系金属間化合物層が3〜4μmの厚さに形成されているため、強度低下が生じている例である。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上記した実施例のみに限定されることはなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、種々の変形、さらなる改良が可能である。
例えば、鋼材として亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板を使用すれば、上記実施例で使用したAl含有マグネシウム合金以外の一般的なマグネシウム合金に適用することができる。また、上記実施例では、接合のための加熱手段として、レーザを用いたが、特にこれに限定されるものではなく、鋼材側を加熱することができる限り、電子ビーム等の他の手段を用いることも可能である。
本発明の異種金属接合に用いる接合装置の一例を示す概略図である。 (A)〜(B)は本発明の異種金属接合方法における接合プロセスを示す工程図である。 (C)〜(E)は図2(A)及び(B)に続く接合プロセスを示す工程図である。 本発明の異種金属接合による重ね継手の接合構造を示す概略断面図である。 (A)〜(C)は本発明の実施例によって得られた接合構造の代表例を示す電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1 マグネシウム合金材
2 鋼板
12 加圧ローラ
B レーザビーム(高エネルギービーム)

Claims (6)

  1. マグネシウム合金材と鋼材とを重ね合わせた状態で、高エネルギービームを鋼材の表面に照射しつつ両材料を相対加圧し、鋼材側からの伝熱により上記マグネシウム合金材と鋼材を接合するに際して、
    上記両材料の接合界面にAlを介在させ、当該Alと上記両材料に含まれるMg及びFeとの金属間化合物を接合界面に形成させ、少なくともAlMgとFeAlとが混在した複合組織から成る化合物層を介して両材料を接合することを特徴とするマグネシウム合金と鋼との異種金属接合方法。
  2. 上記Alがマグネシウム合金材に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の異種金属接合方法。
  3. 上記Alが鋼材表面に形成されためっき層に含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の異種金属接合方法。
  4. 接合界面に介在するAl量の総和が質量比で3%以上10%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の異種金属接合方法。
  5. 高エネルギービームを両材料に対して相対移動させながら連続的又は断続的に照射すると共に、上記高エネルギービームの照射位置の進行方向後方に配置した加圧ローラによって両材料を連続的に加圧することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の異種金属接合方法。
  6. マグネシウム合金材と鋼材の新生面同士が少なくともAlMgとFeAlとが混在した複合組織から成る化合物層を介して接合されていることを特徴とするマグネシウム合金と鋼との異種金属接合構造。
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