JP2009278870A - ナトリウムチャネル阻害ペプチド - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の特定の配列からなるアミノ酸配列で示される、キタウロコアリ由来のナトリウムチャネル阻害活性を有するSKTXペプチド又はその類似ペプチドもしくはその誘導体からなる。また、当該ペプチドをコードする核酸、それを含むベクター、形質転換体および、当該ペプチドを有効成分とする殺虫剤からなる。
【選択図】なし
Description
このような殺虫剤にまつわる諸問題を克服すべく、ピレスロイド系殺虫剤と同様に効果的でかつ薬剤耐性になりにくいだけでなく、分解しやすく環境にもやさしい殺虫剤の開発が望まれていた。最近、ピレスロイド系殺虫剤と同様にナトリウムチャネルをターゲットとしつつ、薬剤耐性になりにくく、水溶性で分解しやすい殺虫剤の候補として、毒産生生物由来の神経毒ペプチドが注目されてきており、効果的にも優れた神経毒ペプチド系殺虫剤についての報告もなされている。ペプチド系殺虫剤は、一般に水溶性で分解しやすいために残留農薬が問題となる可能性が低く、特に昆虫特異的毒素であれば人体への影響は無視できる。また、当該ペプチドをコードする遺伝子を有するベクターを用いて投与することができるので、昆虫特異的に感染し、毒性を発揮するバキュロウイルス(特許文献1)をベクターとして選べば、さらに効果が高まる。例えば、クモ(Diguetia canities)の神経毒ペプチドでナトリウムチャネルに作用すると思われるDTX9.2を組込んだ組換えバキュロウイルスが、野生型のバキュロウイルスに比べて大幅に害虫駆除効果を発揮したことからも農薬としての期待が大きい(非特許文献2)。
[特許文献1]特表平10−507065号公報
[非特許文献1]
Williamson MS, Denholm I, Bell CA, Devonshire AL. (1993) Knockdown resistance (kdr) to DDT and pyrethroid insecticides maps to a sodium channel gene locus in the housefly (Musca domestica). Mol Gen Genet.
240(1):17-22.
[非特許文献2]
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Enhanced Bioactivity of Recombinant Baculoviruses Expressing Insect-Specific Spider Toxins in Lepidopteran Crop Pests. J Invertebr Pathol. 69(2):112-8.
[非特許文献3]
Craik DJ, Daly NL, Waine C. (2001) The cystine knot motif in toxins and implications for drug design. Toxicon. 39(1): 43-60.
[非特許文献4]
Yoshimura, M., Onoyama, K. (2007) A new sibling species of the genus Strumigenys, with a redefinition of S. lewisi Cameron, pp. 664-690. In Snelling, R. R., B. L. Fisher, and P. S. Ward(eds). Advances in ant systematics (Hymenoptera: Formicidae): homage to E. O. Wilson - 50 years of contributions.
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[非特許文献5]
Bosmans F, Rash L, Zhu S, Diochot S, Lazdunski M, Escoubas P, Tytgat J. (2006)
Four novel tarantula toxins as selective modulators of voltage-gated sodium channel subtypes. Mol Pharmacol. 69(2):419-29.
[非特許文献6]
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Purification and characterization of Hainantoxin-V, a tetrodotoxin-sensitive sodium channel inhibitor from the venom of the spider Selenocosmia hainana. Toxicon. 41(6):643-50.
[非特許文献7]
Peng K, Chen XD, Liang SP. (2001)
The effect of Huwentoxin-I on Ca(2+) channels in differentiated NG108-15 cells, a patch-clamp study. Toxicon. 39(4):491-8.
[非特許文献9]
Conticello SG, Gilad Y, Avidan N, Ben-Asher E, Levy Z, and Fainzilber M. (2001)
Mechanisms for evolving hypervariability: the case of conopeptides. Mol. Biol. Evol. 18 (2):120-131.
〔1〕 ナトリウムチャネル阻害活性を有するペプチドであって、以下(a)〜(e)のいずれかのアミノ酸配列を含む単離されたペプチド;
(a)配列番号1〜3に示されたいずれかのアミノ酸配列、
(b)(a)のアミノ酸配列において、当該配列中の6箇所のシステイン残基以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失・置換・付加されたアミノ酸配列、
(c)(a)のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有し、かつ当該配列中の6箇所のシステイン残基が保存されたアミノ酸配列、
(d)下記式(I)に記載されたアミノ酸配列、
式(I)
DX1CX2GWX3X4GCDPSX5X6GX7CCX8GYX9CSYKYPWCRYX10LF
(式中、X1〜X10は、それぞれ任意のアミノ酸を表す。ただし、X1は欠失していてもよい。)
(e)配列番号4〜6に示されたいずれかの塩基配列、又はその相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされたアミノ酸配列。
〔2〕 前記(d)のアミノ酸配列において、式(I)中のX1が欠失しているかTであり、X2がT,L又はGであり、X3がM又はFであり、X4がG又はSであり、X5がK又はQであり、X6がT又はKであり、X7がE又はQであり、X8がS又はEであり、X9がV又はTであり、X10がD,E又はKである、前記〔1〕に記載の単離されたペプチド。
〔3〕 ナトリウムチャネル阻害活性を有し、かつ6つのシステイン残基を有するペプチドを組換えペプチドとして発現し得る核酸であって、以下の(a)〜(g)の何れかの塩基配列を含む核酸;
(a)配列番号4〜6に示されたいずれかの塩基配列、
(b)(a)の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、
(c)(a)と70%以上の相同性を有する塩基配列、
(d)配列番号1〜3に示されたいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(e)(d)のアミノ酸配列において、当該配列中の6箇所のシステイン残基以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失・置換・付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(f)(d)のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有し、かつ当該配列中の6箇所のシステイン残基が保存されたアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(g)下記式(I)に記載されたアミノ酸配列をコードする塩基配列、
式(I)
DX1CX2GWX3X4GCDPSX5X6GX7CCX8GYX9CSYKYPWCRYX10LF
(式中、X1〜X10は、それぞれ任意のアミノ酸を表す。ただし、X1は欠失していてもよい。)。
〔4〕 前記〔3〕に記載の核酸を含む発現ベクター。
〔5〕 前記〔4〕に記載の発現ベクターを導入した形質転換宿主。
〔6〕 前記〔5〕に記載の形質転換宿主を用いることを特徴とする、ナトリウムチャネル阻害活性を有する組換えペプチドの製造方法。
〔7〕 前記〔1〕又は〔2〕に記載のペプチドを有効成分として含有するナトリウムチャネル阻害剤。
〔8〕 前記〔1〕又は〔2〕に記載のペプチドを有効成分として含有する殺虫剤。
〔9〕 配列番号13、15又は17に示された塩基配列もしくはその相補配列、又はそれらの配列中の連続して15塩基以上の塩基配列を含む部分配列からなる核酸。
〔10〕 前記〔9〕に記載の核酸からなる、ナトリウムチャネル阻害活性を有するペプチドをコードする核酸を取得するためのプローブ又はプライマー。
本発明のナトリウムチャネル阻害活性を有するSKTXペプチドは、キタウロコアリの毒腺から得られたナトリウムチャネル阻害活性を有する殺昆虫効果の高いペプチドである。
本発明のキタウロコアリ(Strumigenys kumadori)は、フタフシアリ亜科ウロコアリ属のアリで、毒液をトビムシ、ジムカデ等の土壌昆虫に注入してこれらの昆虫を狩るアリである。これまで近縁種のウロコアリと同種として分類されてきたが、形態上の特徴が明らかに異なるため、2007年に新種のアリとして九州大学熱帯農学研究センターの吉村正志らによって記載された(非特許文献4)。
一方、本発明のSKTXペプチドなど神経毒ペプチド類は、一般にナトリウムチャネルに結合するものの、ピレスロイド系殺虫剤等と異なり、ナトリウムチャネルが常に閉じた状態にし、ナトリウムイオンの流入を阻害する結果、神経伝達がおこらなくなり致死作用を示すタイプのナトリウムチャネル阻害剤であり、通常は水溶性であるため、残留農薬は問題とならない。
具体的には、以下のナトリウムチャネル阻害活性を有するペプチドであって、以下(a)〜(d)などのアミノ酸配列を含む単離されたペプチドとして表現することができる。ただし、いずれのペプチドにおいても、SKTX成熟ペプチドのアミノ酸配列中の6箇所のシステイン残基は変更されていないアミノ酸配列を含むものである。
(a)配列番号1〜3に示されたSKTX1〜3の成熟ペプチドに対応するアミノ酸配列。
(b)上記(a)のアミノ酸配列のうち、6箇所のシステイン残基以外のアミノ酸残基が1もしくは数個、すなわち1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個欠失・置換されたアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列中に、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個のアミノ酸残基が挿入された、又は当該アミノ酸配列に1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜5個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列。
(c)配列番号1〜3のいずれかに示されたアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列。なお、ここで相同性とは、Clastal W法(解析ソフトDNASTAR Version 5.0 (Lasergene))による相同性の算出法(図3)で算出される「同一性」をいう。
(d)ここで、配列番号1〜3で示されるSKTX1〜3ペプチドのアミノ酸配列は、6箇所のシステイン残基以外にも共通配列が多く、72%の相同性を有している。
したがって、本発明における典型的なSKTXペプチドは、下記式(I)のような1文字表記のアミノ酸配列として表すことができる。
式(I)
DX1CX2GWX3X4GCDPSX5X6GX7CCX8GYX9CSYKYPWCRYX10LF
式(I)中で、X1〜X10は、それぞれ任意のアミノ酸であってよく、そのうちのX1を含む1〜3個は欠失してもよい。好ましくは、式(I)中のX1が欠失しているかTであり、X2がT,L又はGであり、X3がM又はFであり、X4がG又はSであり、X5がK又はQであり、X6がT又はKであり、X7がE又はQであり、X8がS又はEであり、X9がV又はTであり、X10がD,E又はKである。(配列番号7,8)
(e)配列番号4〜6に示された塩基配列によりコードされたアミノ酸配列(配列番号1〜3)を含むアミノ酸配列と共に、配列番号4〜6に示された塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされたアミノ酸配列。ここで、ストリンジェントな条件としては、6M 尿素、0.4%SDS、0.5 x SSCの条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を例示できる。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M 尿素、0.4%SDS、0.1 x SSCの条件を用いれば、より相同性の高いDNAの単離を期待することができる。
(a)配列番号4〜6に示される塩基配列を含む核酸、配列番号13,15、17中のSKTXペプチド前駆体をコードする核酸(配列番号13の70〜246位、配列番号15の82〜267位、配列番号17の2〜178位に対応する。)、又は配列番号13,15、17に示される塩基配列に含まれる核酸であって、配列番号4〜6と読み枠をそろえた核酸。
(b)(a)の塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、
(c)(a)の塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列。なお、ここで相同性とは、Clastal W法(解析ソフトDNASTAR Version 5.0 (Lasergene))による相同性の算出法で算出される「同一性」をいう。
(d)配列番号1〜3に示されたSKTX成熟体ペプチドのアミノ酸配列をコードする塩基配列、又は配列番号14,16,18に示されたSKTX前駆体ペプチドをコードする塩基配列。
(e)配列番号1〜3に示されたアミノ酸配列において、当該配列中の6箇所のシステイン残基以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失・置換・付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列。ここで、1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失・置換・付加されたアミノ酸配列とは、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個欠失・置換・挿入された配列をいう。または、配列番号1〜3に示されたアミノ酸配列に1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜5個のアミノ酸残基が付加されたアミノ酸配列をいう。
(f)配列番号1〜3に示されたアミノ酸配列と70%以上の相同性を有し、かつ当該配列中の6箇所のシステイン残基が保存されたアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(g)下記式(I)に記載されたアミノ酸配列をコードする塩基配列、
式(I)
DX1CX2GWX3X4GCDPSX5X6GX7CCX8GYX9CSYKYPWCRYX10LF
(式中、X1〜X10は、それぞれ任意のアミノ酸を表す。ただし、X1は欠失していてもよい。)
これらの核酸を含む発現ベクターを用い、形質転換宿主でSKTX1〜3ペプチド又はその類似ペプチドを単独又は融合組換え蛋白として発現させることができるが、その際に選択した宿主に応じて、成熟ペプチドに対応する塩基配列も、シグナル配列を含む前駆体ペプチドに対応する塩基配列も利用可能である。
そして、これら塩基配列もしくはその相補配列、又はそれらの配列中の連続して15塩基以上、好ましくは17以上、より好ましくは20以上の塩基配列を含む部分配列からなる核酸は、SKTX1〜3ペプチドと類似のナトリウムチャネル阻害活性を有するペプチドをコードする核酸を取得するためのプローブ又はプライマーとして用いることができる。特に、プライマーとしては5’側、3’側のノンコーディング領域に対応する塩基配列も有用に用いられる。
また、有害昆虫に対して、本発明のペプチドを適用する際には、本発明のペプチドをコードする核酸を組み込んだバキュロウイルス由来ベクターをそのまま用いることで、昆虫体内で本発明のペプチドを発現させて殺虫効果を発揮することが期待できる。その場合、対象害虫により致死量に見合う量を適宜発現させる。例えば、昆虫の場合、通常200〜20000PIBs/g (Polyhedrin Inclusion Bodies/g)の量を用いる。その他の方法として、本発明のペプチドをコードする核酸を含むベクターを植物体に遺伝子導入し、植物体でペプチドを発現させて、これを有害昆虫が摂食することで殺虫効果を発揮することも期待できる。
本発明の殺虫剤は、昆虫、ダニ、ナメクジ等が対象となる。
また、特に記載のない限りにおいて、遺伝子工学的手法の詳細は、Molecular Cloning 2nd edition. Cold Spring Harvor Laboratory Press, Cold Spring Harvor, NY. (1989)に記載の方法に従った。
(1−1)キタウロコアリ由来、生理活性ペプチドに共通する合成プライマーの製造
公知のトビキバハリアリ(Myrmecia pilosula)由来の生理活性ペプチドPilosulin及びコモリグモの一種(Oxyopes kitabensis)由来の生理活性ペプチドOxyopininsのアミノ酸配列を比較した。この配列の中で相同性の高く、シグナルペプチドの作用部位に近いアミノ酸配列に対応する塩基配列をプライマーPilosulin/Oxyopinin (5’-ACYTTNGGIAGIACYTT-3’)(配列番号9)として合成した。
キタウロコアリ(Strumigenys kumadori)よりTRIZOL LS溶液(GIBCO BRL)を用いて、その使用方法に従いtotal RNAを抽出した。このtotal RNAから、Oligotex-dT30 (Super)(タカラバイオ株式会社)を用い、その使用方法に従って、poly A+ RNAを精製した。
こうして得られたpoly A+ RNAを鋳型としてcDNA合成キット(Stratagene)を用いて、2本鎖化したcDNAの混合物を得た。これにEcoR Iアダプター(タカラバイオ株式会社)を付加してポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化し、Xho Iで制限酵素処理後、0.8〜2kbのDNA断片を抽出した。こうして得られたDNA断片を、pSD64TRベクター(Nucleic Acids Res., 12: 7057 (1984) 及びArch. Biochem. Biophys., 428(2): 170-178 (2004))のEcoR I, Xho Iサイトに挿入した。これをcDNAライブラリーとして以降、使用した。
前記(1−1)で得たcDNAライブラリーを鋳型としたPCR反応によって、プライマー
Pilosulin/Oxyopininとプライマー SDA(5’-TTATGTAGCTTAGAGACT-3’)(配列番号10)を用いてDNAフラグメントを増幅した。増幅したDNAフラグメントを、クローニングベクターpCR2.1 (invitrogen)を用い、サブクローニングした。部分長cDNAの塩基配列を決定し、公知のcDNAの塩基配列と比較した後、新規のペプチドをコードしているものを選択した。新規ペプチドの全長cDNAを単離するために、新規ペプチドの部分長cDNAの塩基配列の一部からプライマーconoR (5’-TTAAAACAGGTCATAGCG-3’)(配列番号11)を設計し、当該プライマーとベクタープライマー SP6 (5’-TATTTAGGTGACACTATAG-3’)(配列番号12)を用いて再度同じcDNAライブラリーを鋳型としたPCRを行った。全長cDNAを取得後、全塩基配列を決定し、このクローンをSKTX1、SKTX2、SKTX3と命名した。
DNAの塩基配列は、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit (Applied Biosystems)とSP6プライマーを用いて反応し、蛍光自動シークエンサーABI Sequencer377(Applied Biosystems)で解析した。
以上のようにして単離、配列決定したSKTX1 cDNAの塩基配列及び塩基配列から推測されるアミノ酸配列を図1に示す。(SKTX1は、配列番号13,14及び1,4に対応。SKTX2は、配列番号15,16及び2,5に対応。SKTX3は、配列番号17,18及び3,6に対応。)
SKTX1〜3がコードする成熟体ペプチド(図2)は、Clastal W法(解析ソフトDNASTAR Version 5.0)による相同性の算出法で、クモの神経毒CcoTX(非特許文献5),HNTX(非特許文献6),HWTX(非特許文献7),TLTX(非特許文献8),イモ貝のコノトキシン(非特許文献9)と相同性を示したが、その相同性はシステイン残基に限られており、成熟体ペプチドのアミノ酸配列レベルで30%〜50%という低い相同性しか示さない新しいタイプの神経毒ペプチドであることが判明した(図3)。
配列番号1〜3で示したアミノ酸配列からなるSKTX1〜3ペプチドを、大腸菌のコールド・ショックシステム(タカラバイオ株式会社)を用いる手法、及びグルタチオンSトランスフェラーゼとの融合タンパク質(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社)とする手法の2種類の方法を用いて大腸菌Rossetta Gami2(メルク)で発現させた。いずれの場合も、融合タンパク質を精製したのち、プロテアーゼPreScissionTM (GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社)を用いて処理し、SepPakC18により0.1%トリフルオロ酢酸を含む40%のアセトニトリルで溶出し組換えSKTX1ペプチドを精製した。これを凍結乾燥後、蒸留水に溶解させた。
SKTX1〜3 cDNAの成熟体ペプチドをコードする塩基配列(配列番号4〜6)をpCOLD II(タカラバイオ株式会社)ヒスチジンヘキサマーの配列とPreScissionTMの認識配列とともに、BamHIサイトに接続し、pCOLD-SKTX1〜3 を作成した。これを大腸菌、BL21に大腸菌のシャペロニン配列をもつpGro7(タカラバイオ株式会社)とともに共形質転換した。この形質転換した大腸菌をLB (0.02%アラビノースを含む)培地中で37度、3時間培養した後、15度に温度を低下させて1 μMになるようIPTGを添加し、オーバーナイトで大腸菌を培養した。この培養液から大腸菌を回収しNi-NTA(Qiagen)とSepPakC18(Waters)を用いて組み換えペプチドを精製した。このペプチドはN末端側にヒスチジンヘキサマーの配列とPreScissionTMの認識配列を持っていたので、プロテアーゼPreScissionTM を用いて4度、オーバーナイトで反応させて余分な配列のないSKTX1ペプチドを取得した。プロテアーゼ処理はTagzyme (Qiagen)を用いて37度で1時間の反応を行っても同じ余分な配列のないSKTX1ペプチドを取得することができた。
SKTX1〜3 cDNAの成熟体ペプチドをコードする塩基配列(配列番号4〜6)をPreScissionTMの認識配列とともに、pGEX-2T(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社)のBamH IサイトとEcoR Iサイトの間に接続し、pGEX-SKTX1を作成した。これを大腸菌Rossetta Gami2に形質転換した。この形質転換した大腸菌をLB培地中で37度、3時間培養した後、20度に温度を低下させて1 μMになるようIPTGを添加し、オーバーナイトで大腸菌を培養した。この培養液から大腸菌を回収しグルタチオンセファロース(GEヘルスケア バイオサイエンス株式会社)とSepPakC18(Waters)を用いて組み換えペプチドを精製した。このペプチドはN末端側にグルタチオンSトランスフェラーゼとPreScissionTMの認識配列を持っていたので、プロテアーゼPreScissionTMを用いて4度、オーバーナイトで反応させて余分な配列のないSKTX1〜3ペプチドを取得した。
従来のアフリカツメガエル卵母細胞を用いた二本差し膜電位固定法は、例えば「Ion Channels. Edited by: Bernardo Rudy, Methods in Enzymology Volume 207, Pages 3-917 (1992)」等に詳述されている。
その代表的な手法は、以下の方法に従い、イオンチャネルの活性を電気生理学的解析にするという方法である(図4)。
(1)イオンチャネルcRNAを合成し、
(2)そのcRNAを卵母細胞へ注入しチャネル分子を細胞膜表面に発現させて、
(3)2日〜4日後に、2本の微小電極を卵母細胞に差し込み、膜内外で電圧を変化させることによって誘起されるイオンの流出もしくは流入を、電流量の変化に置き換えて測定する。
本実施例では、上記方法の(1)の段階でのイオンチャネルcRNAとしてショウジョウバエ・ナトリウムチャネルαサブユニットPara及びβサブユニットTipEを使用した。また、(3)の段階で、前記(実施例2)で取得したSKTX1〜3ペプチドを添加し、5分後にイオンチャネルの活性を測定した。
この結果とSKTX1〜3ペプチド無添加の状態のイオンチャネルの活性とを比較した。その結果、SKTX1〜3ペプチドは0.1〜10μMの範囲で濃度依存的に効果を示し、10μM以上でショウジョウバエのナトリウムチャネルの活性をほぼ完全に阻害した(図4A,5A,6A)。また、この時ナトリウムチャネルの電位依存性を変化させることはなかった(図4B, 5B,6B)。
従来のフタフシコオロギを用いた殺虫活性は、「Scorpion toxins affecting insects: Loret. E.P., Methods in Neuroscience Volume 8, Pages 381-395 (1992)」等に詳述されている。
その代表的な手法は、
(1)フタフシコオロギ(平均 0.2g)の中肢と後肢の間に、10 μl用のハミルトンシリンジを用いて、5 μlのPBSに溶解させた80μMペプチド溶液を注入し、
(2)昆虫の変化を5,15,60分, 18時間後に観察する
という方法である。
実施例では、この方法に従い本発明のペプチドの殺虫活性を評価した結果、SKTX1では50%のコオロギで麻痺作用が起き、その麻痺が30分間以上にわたって持続した。SKTX2では、60%のコオロギで麻痺作用が起き、その麻痺が18時間以上にわたって持続した。
したがって、本発明のペプチドの殺虫活性が実証された。
Claims (10)
- ナトリウムチャネル阻害活性を有するペプチドであって、以下(a)〜(e)のいずれかのアミノ酸配列を含む単離されたペプチド;
(a)配列番号1〜3に示されたいずれかのアミノ酸配列、
(b)(a)のアミノ酸配列において、当該配列中の6箇所のシステイン残基以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失・置換・付加されたアミノ酸配列、
(c)(a)のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有し、かつ当該配列中の6箇所のシステイン残基が保存されたアミノ酸配列、
(d)下記式(I)に記載されたアミノ酸配列、
式(I)
DX1CX2GWX3X4GCDPSX5X6GX7CCX8GYX9CSYKYPWCRYX10LF
(式中、X1〜X10は、それぞれ任意のアミノ酸を表す。ただし、X1は欠失していてもよい。)
(e)配列番号4〜6に示されたいずれかの塩基配列、又はその相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされたアミノ酸配列。 - 前記(d)のアミノ酸配列において、式(I)中のX1が欠失しているかTであり、X2がT,L又はGであり、X3がM又はFであり、X4がG又はSであり、X5がK又はQであり、X6がT又はKであり、X7がE又はQであり、X8がS又はEであり、X9がV又はTであり、X10がD,E又はKである、請求項1に記載の単離されたペプチド。
- ナトリウムチャネル阻害活性を有し、かつ6つのシステイン残基を有するペプチドを組換えペプチドとして発現し得る核酸であって、以下の(a)〜(g)の何れかの塩基配列を含む核酸;
(a)配列番号4〜6に示されたいずれかの塩基配列、
(b)(a)の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列、
(c)(a)と70%以上の相同性を有する塩基配列、
(d)配列番号1〜3に示されたいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(e)(d)のアミノ酸配列において、当該配列中の6箇所のシステイン残基以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸残基が欠失・置換・付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(f)(d)のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有し、かつ当該配列中の6箇所のシステイン残基が保存されたアミノ酸配列をコードする塩基配列、
(g)下記式(I)に記載されたアミノ酸配列をコードする塩基配列、
式(I)
DX1CX2GWX3X4GCDPSX5X6GX7CCX8GYX9CSYKYPWCRYX10LF
(式中、X1〜X10は、それぞれ任意のアミノ酸を表す。ただし、X1は欠失していてもよい。) - 請求項3に記載の核酸を含む発現ベクター。
- 請求項4に記載の発現ベクターを導入した形質転換宿主。
- 請求項5に記載の形質転換宿主を用いることを特徴とする、ナトリウムチャネル阻害活性を有する組換えペプチドの製造方法。
- 請求項1又は2に記載のペプチドを有効成分として含有するナトリウムチャネル阻害剤。
- 請求項1又は2に記載のペプチドを有効成分として含有する殺虫剤。
- 配列番号13、15又は17に示された塩基配列もしくはその相補配列、又はそれらの配列中の連続して15塩基以上の塩基配列を含む部分配列からなる核酸。
- 請求項9に記載の核酸からなる、ナトリウムチャネル阻害活性を有するペプチドをコードする核酸を取得するためのプローブ又はプライマー。
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