JP2009270964A - 検体検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】バックグランドシグナルを低減させ、かつ多様な検体に対応することができる非標識の検体検出方法を提供する。
【解決手段】本発明の検体検出方法は、基板81の表面に基板81の屈折率と等しい屈折率を有する流体83を接触させる工程と、基板81の表面に検体88を接触させる工程と、基板81の表面に入射光84を照射する工程とを有する。さらに、基板81の表面と流体83との界面において生じた反射光86を検出する工程を有する。
【選択図】図8
【解決手段】本発明の検体検出方法は、基板81の表面に基板81の屈折率と等しい屈折率を有する流体83を接触させる工程と、基板81の表面に検体88を接触させる工程と、基板81の表面に入射光84を照射する工程とを有する。さらに、基板81の表面と流体83との界面において生じた反射光86を検出する工程を有する。
【選択図】図8
Description
本発明は、流体内に含まれる検体を検出するための検体検出方法に関する。
化学および生化学反応の経過や結果を確かめるために濃度、成分などの所望の情報を得ることは分析化学の基礎的な事項であり、情報の取得を目的としたさまざまな装置およびセンサが発明されている。それらの装置は半導体製造方法等を利用してより小型化され、所望の情報を得るまでの全ての工程をマイクロデバイス上にて実現するという、マイクロ・トータル・アナリシス・システム(μ−TAS)またはラブオンチップと呼ばれるコンセプトも発展しつつある。これは、採取された未精製検体を、マイクロデバイス中を通過させることにより検体精製や化学反応などの工程を経て、最終的には検体中に含まれる成分の濃度や化学合成物などを得ることを目標とするものである。また、最終工程に到るまでの精製方法や化学反応制御などの方法、および流体の制御方法のためのマイクロバルブ、マイクロポンプおよび表面処理などもμ−TASの研究分野に含まれる。
従来技術のデスクトップサイズの分析機器と比較すると、マイクロデバイスを用いることによってデバイス内に含まれる流体は低容量化されるため、必要試薬量の低減および分析物量の微量化による反応時間の短縮が期待される。このようなマイクロデバイスの利点が認知されるにつれて、μ−TASに関わる技術が注目を集めている。また、デバイスを微細化することにより、比界面積の上昇や拡散による溶液の混合などの現象が生じるため、それらに対する研究も盛んに行われている。特に、マイクロデバイスによって従来型の装置と比較して検出感度が上昇するという報告があるため、検出方法に対する注目は特に集まっている(非特許文献1参照)。
検体の検出方法には、電極を用いて電気化学的に検出する方法、あるいは水晶振動子を用いて検体による質量の変化を計測する方法などが挙げられるが、マイクロデバイスを可視的に観測できる顕微鏡を用いた光学的手法が採用されることが多い。光を用いて検体を検出する方法の代表的な方法として、蛍光検出が一般的に広く用いられているが、特定の範囲の励起波長が必要であり、さらに蛍光標識を検体に結合させるプロセスを必要とする。また、表面プラズモン共鳴を利用して標識を用いずに検体を検出する方法も開示されている(特許文献1参照)。他の非標識の検体検出方法として、回折格子に代表される周期的な形状を有する構造物に光を照射した際にあらわれる回折波を利用した検出が挙げられる。
回折波を利用した検出方法は、回折格子へ向けて光を照射した際の回折光強度を計測し、検体の有無による強度差を求めることによって検体の濃度を検出する(非特許文献2)。また、周期構造物は必ずしも1次元の回折格子である必要はなく、アレイ状の2次元の周期性を有していても回折波を利用した検出が可能である(特許文献2参照)。上記の技術においては、検体の有無に関わらず常に回折波を観測することになり、検体が存在しないときの回折光強度はバックグランドシグナルとなる。これに対し、検体が存在しないときには回折波を生じさせず、検体が存在するときだけ回折波を発生させることによりバックグランドシグナルを低減させた方法が開示されている(特許文献3参照)。
特開2006−071300号公報(第25項、図7)
特開2005−337771号公報(第10項、図3)
特許第3525140号明細書(第5項、図1)
Petra S. Dittrich, Kaoru Tachikawa, and Andreas Manz, "Micro Total Analysis Systems Latest Advancements and Trends", Analytical Chemistry, 2006, Vol.78, No.12, pp3887-3908
Thomas M. Butler, Eishi Igata, Steve J. Sheard, and Neil Blackie, "Integrated Optical Bragg-Grating-Based Chemical Sensor on a Curved Input Edge Waveguide Structure", Optics Letters, 1999, Vol.24, No.8, pp525-527(第526項、図3)
検体を吸収する材質と吸収しない材質とを交互に周期的に配置した回折構造を提供することにより、検体が存在するときの吸収強度差により周期性があらわれ、検体が存在しないときには周期性があらわれないように設定することは可能である。しかしながら、検体の回折格子への吸収により周期性があらわれるため、検体は回折格子の材質に吸収される物質に限られる。そのため、多様な検体に対応することが困難であるという課題が生じる。
本発明は、前述の背景技術に鑑みてなされたものであり、バックグランドシグナルを低減させ、かつ多様な検体に対応することができる非標識の検体検出方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の検体検出方法は、基板の表面に、該基板の屈折率と等しい屈折率を有する流体を接触させる工程と、前記基板の表面に検体を接触させる工程と、前記基板の表面に光を照射する工程と、前記基板の表面と前記流体との界面において生じた反射光又は散乱光を検出する工程と、を有する。
また、本発明の他の検体検出方法は、基板の上に形成された周期構造の表面に、前記基板の屈折率と等しい屈折率を有する流体を接触させる工程と、前記周期構造の表面に検体を接触させる工程と、前記周期構造に光を照射する工程と、前記周期構造によって生じた回折光を検出する工程と、を有する。
本発明によれば、バックグランドシグナルを低減させ、かつ多様な検体に対応することができる非標識の検体検出方法を提供することができる。
次に、本発明の実施形態について説明する。
本発明の検体検出方法は、基板の表面に、基板の屈折率と等しい屈折率を有する流体を接触させる工程と、基板の表面に検体を接触させる工程と、基板の表面に光を照射する工程とを有する。さらに、基板の表面と流体との界面において生じた反射光又は散乱光を検出する工程を有する。
また、本発明の他の検体検出方法は、基板の上に形成された周期構造の表面に、基板の屈折率と等しい屈折率を有する流体を接触させる工程と、周期構造の表面に検体を接触させる工程と、周期構造に光を照射する工程とを有する。さらに、周期構造によって生じた回折光を検出する工程を有する。
検体は化学物質、分子、細胞、粒子またはそれらの混合であることが好ましく、分子は核酸およびタンパク質などの生体分子であってもよい。
光の波長を調節することによって、基板の屈折率と流体の屈折率とを一致させる工程を有していてもよい。
また、基板及び流体に熱を付与することによって、基板の屈折率と流体の屈折率とを一致させる工程を有していてもよい。
あるいは、流体に流体の屈折率と異なる屈折率を有する物質を添加することによって、基板の屈折率と流体の屈折率とを一致させる工程を有していてもよい。
周期構造は、およそ光の波長程度の溝が基板に周期性を有しながら刻まれている構造物であることが好ましい。また、周期構造は基板上で2次元的な配列構造を有していてもよい。
照射する光はおよそ紫外光から赤外光の範囲の波長であり、本発明の検体検出方法に用いられる波長は基板および流体によって吸収されにくい波長であることが好ましい。また、照射光はレーザ光のようなコヒーレントな光が好ましいが、検出方法によって適宜選択されればよい。
なお、以下において説明する「光学的に透明である」とは、ある波長において媒質による光の吸収が少なく、かつ複数の媒質における屈折率の差が実質的に無いということを意味している。
本発明は、検体の有無による入射光の透過、反射または回折を利用して検体を検出するものである。入射光をある基板に向けて照射したとき、基板の表面における入射光の屈折はスネルの法則により説明される。n1の屈折率を有する流体中を伝播している入射光が基板表面に垂直な面に対してθ1の角度をもって入射し、n2の屈折率を有する基板内を基板表面に垂直な面に対してθ2の角度をもって伝播すると、基板表面において、
という関係が成り立つ。流体の屈折率n1と基板の屈折率n2は、例えば空気とガラス板のように異なることが多いので、この場合の入射光は基板表面で屈折現象を生じ、角度θ2をもって透過し、反射の法則から同時に角度θ1をもって反射する。しかし、屈折率n1と屈折率n2が等しいときには、
となる。入射角と出射角が等しいとき、入射光は、流体と基板によって形成される界面で屈折を生じることなく透過する。またこの際には屈折率の相異による反射が生じなくなる。つまり、屈折率n1と屈折率n2が等しいとは光学的に透明であり、両物質間における界面が光学的には存在しないことを意味する。
また、基板上に形成されたおよそ波長サイズの周期構造物に入射光を照射すると、ブラッグの法則である、
に従った特定の角度θ方向へ回折光が出現する。ここで、dは周期構造物の周期、λは注射光の波長、mは整数である。また、回折光の回折効率ηは、
で算出される。ここで、Δnは屈折率のモジュレーション、hは回折格子の高さ、λは入射光の波長、θはブラッグ角をあらわす。Δnにおける屈折率のモジュレーションとは、周期構造を形成することによって生じる屈折率の摂動である。いま、表面に周期構造を有する基板の屈折率と等しい流体を周期構造に接触させたとすると、周期構造におけるモジュレーションΔnは0となり、回折効率η=0となる。つまり、周期構造とその周囲に存在する流体の屈折率が等しいときには、回折が生じることはないことを意味する。
上記の原理を応用して検体を検出することは、以下のような条件を構築することによって可能になる。まず流体と基板によって形成される界面において、検体が流体に含まれていなければ入射光は界面を検知せずに透過光のみを発生させる。次に、検体が流体に含まれているときのみ界面で反射光または回折光が生じる、という条件である。
さらに、上記の条件を成立させるためには、検体が流体に含まれない状態において、流体と基板の屈折率が一致している必要がある。ところが、流体と基板の屈折率が調整することなく一致している可能性は少なく、現実的には流体と基板の屈折率を一致するよう調整する必要がある。屈折率を一致させる方法の一つとして、入射光の波長を調整する方法が挙げられる。流体や固体物質の屈折率は波長ごとに異なり、さらに波長の関数としたときの屈折率をグラフに表すことができる。このとき、図1において模式的に表すように、一般にグラフは物質固有のカーブを描く。図1において、符号11は第1の物質に関する入射光の波長と屈折率との関係を示し、符号12は第2の物質に関する入射光の波長と屈折率との関係を示している。
第1の物質は波長による屈折率の変化が第2の物質の変化よりも大きく、ある波長で2つの物質が等しい屈折率を有する波長が存在し、図1における一致点13にて表されている。但し、第1及び第2の物質2が、例えば可視光領域のような一定範囲で一致点13を有する必要がある。一例として、市販されている合成石英基板の屈折率に近い値を有する屈折率整合性オイルであれば、流体と基板の屈折率を一致させる波長を見つけることが可能である。
また、屈折率を一致させる他の方法として、基板と流体の温度変化による屈折率の変化の相異を利用する方法が挙げられる。一般に有機溶媒の温度による屈折率変化は−0.0004/℃程度であり、基板の温度による屈折率変化、例えば合成石英であれば約−0.0001/℃である。そのため、流体の屈折率が基板の屈折率よりもわずかに低いあるいは高ければ、基板をそれぞれ加熱または冷却することにより流体と基板の屈折率を一致させることができる。このような熱を利用した屈折率の調整方法は、吸収帯などの検体固有の吸収波長を用いるために波長による調整が実施しにくい検出を行う際に有用な方法である。
流体の屈折率を変化させる方法は、上記以外にも流体に他の物質を基板の屈折率と等しくなるまで混合する方法などが挙げられるが、本発明における屈折率を一致させる方法は上記の方法に限定されるものではない。
図2を参照して本発明における基板について説明する。なお、図2は本発明の説明をするための図であって、実際に用いられる大きさで記載されていない。基板21の表面に回折格子22が形成されており、図2(a)におけるA−A’断面を図2(b)に図示する。回折格子22は基板21におけるおよそ波長程度の大きさを有する周期的な溝である。図2中の回折格子22は各溝が平行に形成されているが、加えて回折格子22の溝と同じ平面で直行する方向に溝が形成されている、すなわち回折格子は2次元的な配列構造を有するものでもよい。また、回折格子22の形状は図2に示されるような方形だけに限定されているわけではなく、正弦波型やリトロー型などの回折格子でもよい。
また、図2では回折格子22が基板21の表面に形成されているが、回折格子が形成されていない、平坦な表面を有する基板であってもよい。このときは、回折光は検体の有無に関わらず出現しないが、代わりに反射波を用いて検体を検出することが可能になる。
図3は、本発明の検体検出方法に用いられる装置の一構成例を示す図である。
図3に示す装置によれば、光源37より発射されたTEモードまたはTMモードに偏光された入射光34は、入射光34の波長において屈折率が基板31と一致している流体33を通して回折格子32へ照射される。検体が存在しないときは、入射光34は回折されることなく基板31を透過し、透過光35となる。検体が回折格子22近傍に存在するときには、ブラッグ回折により入射光34の回折光36が生じ、検出器38によってその回折光36の強度が検出される。光源37は、特定の波長を抽出するための分光器やフィルタを有していてもよい。また、検出器38においても、検出対象ではない波長の光をカットするフィルタが装備されていてもよい。さらに、基板31と流体33の屈折率を温度調整によって一致させる場合には、基板31にヒータなどの温度調節機構が備えられていてもよい。ただし、そのような温度調節機構は、透過光35、回折光36および入射光34の進路を妨げない位置に配置されていなければならない。
以下、図2の基板や図3の装置構成を利用した本発明の検体検出方法を、実施例を用いてさらに詳しく説明する。なお、以下の図4〜7においては図2(b)に示されるような基板表面に形成された回折格子の断面図を用いて説明する。また、図における煩雑さを抑えるため、生じ得る全ての回折光は表示されてなく、代表的な回折光のみを明示している。さらに、図示された各構成は実際のスケールとは異なる。
[実施例1]
図4を参照して実施例1を説明する。
図4を参照して実施例1を説明する。
図4(a)は、検体が存在しない基板に入射光を照射した状態を示す図である。基板41の表面には回折格子42が形成されており、その上に基板41と屈折率が一致している流体43が接触している。このとき、流体43と回折格子42との境界は実質的に光学的に透明であることから、入射光44は回折格子42で回折されることなく基板41を透過して透過光45を形成する。
図4(b)は、図4(a)に示した基板の回折格子に検体を付与し、その基板に入射光を照射した状態を示す図である。基板41上の流体43内を浮遊する検体47は、回折格子42に吸着または堆積し、流体43と回折格子42との界面において屈折率の差を形成する。このとき、入射光44の一部は形成された屈折率差に応じて回折を生じ、回折光46を生じる。また、回折光46の発生に伴って透過光45の強度も減少する。つまり、回折光46は、検体47が回折格子42に存在しないときには発生せず、検体47が回折格子42に存在するときのみ生じる。そのため、回折光46の強度を計測することにより、シグナル/ノイズ比(S/N比)を高く保ったまま検体47を検出することが可能である。
流体43は検体47の検出を行う際に基板41上に存在していればよく、検体47を回折格子42の表面に吸着または堆積させる工程においては流体43は必ずしも必須ではない。一例として、生体分子であるDNAを検出する場合を考える。基板41の材質を石英とし、表面に回折格子42をドライエッチングやウェットエッチングにより形成する。PCR(polymerase chain reaction)工程などにより増幅されているDNAを、増幅試薬と共に回折格子42付近に付与する。DNAはガラス表面に吸着する性質があるため、回折格子42の表面にDNAが吸着する。その後、基板41をバッファなどで洗浄してDNAポリメラーゼなどのタンパク質を除去してから、流体43を回折格子42付近に付与する。流体43は市販されている屈折率整合オイルで、石英に近い値の屈折率を有するものを選択すればよい。最後に、入射光44を照射して回折光46の強度を計測することによりDNAを検出できる。
[実施例2]
図5を参照して実施例2を説明する。
図5を参照して実施例2を説明する。
本実施例は、本発明の検体検出方法によってマイクロ流路内の検体を検出する例を示す。マイクロ流路とは、少なくとも1つの断面寸法が0.1〜500μm程度の大きさの流路である。
図5(a)は、検体が存在しないマイクロ流路に入射光54を照射したときの様子を示している。マイクロ流路57の底面を構成する基板51の表面に回折格子52が形成されている。なお、回折格子52は基板51と同じ材質で構成された流路天井59に形成されていてもよい。回折格子52が形成された基板51と流路天井59とによって挟まれたマイクロ流路57に、基板51および流路天井59と等しい屈折率を有する流体53を注入する。このとき、流路天井59および回折格子52と流体53との界面は実質的に光学的に透明なので、入射光54は反射および回折を生じることなく流路天井59及び基板51を透過して透過光55を形成する。
図5(b)は、図5(a)に示したマイクロ流路57の回折格子52に検体を付与し、そのマイクロ流路57に流路天井59側から入射光54を照射した状態を示す図である。流体53内を浮遊する検体58は、回折格子52に吸着または堆積し、流体53と回折格子52および流路天井59との界面において屈折率の差を形成する。なお、検体58の流路天井59への吸着または堆積は図の煩雑さを抑えるため図示されていない。このとき、入射光54の一部は形成された屈折率差に応じて回折を生じ、回折光56を生じる。また、回折光56の発生に伴って透過光55の強度も減少する。つまり、回折光56は検体58が存在しないときには発生せず、検体58が存在するときのみ生じるので、回折光56の強度を計測することにより、シグナル−ノイズ比(S/N比)を高く保ったまま検体58を検出することが可能である。
マイクロ流路57においては、流体53に対する比界面積が上昇するため、検体58の流路壁や回折格子52への吸着効率の上昇が期待できる。この原理を用いて、マイクロ流路57において実施される検体検出の一例として、核酸の抽出工程が挙げられる。細胞を酵素で分解、または物理的に破砕すると、細胞壁片、各種タンパク質などとともに核酸が浮遊する溶液が得られる。流路基板51、流路天井59、流路57および回折格子52をホウ珪酸ガラスや石英で形成する。また、流体53は市販されている屈折率整合オイルでそれぞれホウ珪酸ガラスや石英に近い値の屈折率を有するものを選択する。破砕溶液を流路57に注入し、回折格子52付近に核酸を吸着させる。なお、回折格子52以外の流路内壁はできる限り核酸の吸着を阻止するため、表面処理を施すなどの工程を行っておくことが好ましい。核酸は回折格子52の表面に吸着し、核酸以外の細胞壁片やタンパク質は回折格子52に吸着することなく流路57を流れる。核酸を吸着させる工程の後、屈折率を基板51や流路天井59と一致させた流体53を注入し、回折光56の有無により核酸の抽出が行われたかどうかを判定することができる。従来では、抽出後に行われる核酸増幅工程を経てからターゲット核酸の有無を判定することが多いが、増幅しない場合は増幅後による判定においては、抽出による不成功か増幅による不成功かの判定は困難であった。本実施例では、抽出直後の判定を行うことにより、抽出工程の成功/不成功の判定とともに、増幅工程に進むか否かの判断を行うことができる。
[実施例3]
図6を参照して実施例3を説明する。
図6を参照して実施例3を説明する。
図6は、基板61と流路天井69との間に形成されたマイクロ流路67の回折格子62に検体を付与し、そのマイクロ流路67に基板61側から入射光64を照射した状態を示す図である。
本実施例では、回折格子62に対する入射光64の照射角度は、臨界角より大きな値を有する角度とする。マイクロ流路67を構成する流路の底面に回折格子62が形成されている。なお、回折格子は流路基板61と同じ材質で構成された流路天井69に形成されていてもよい。回折格子62が形成された基板61と流路天井69によって挟まれた流路67に、基板61および流路天井69と等しい屈折率を有する流体63を注入する。このとき、検体68が流体63内に存在しなければ、入射光64は、流路天井69および回折格子62と流体63の界面は実質的に光学的に透明なので、反射および回折を生じることなく透過する。
検体68が流体63内に存在し、検体68が回折格子62の表面に吸着することにより、流体63と回折格子62とに界面が形成されるため、入射光64の回折光66が生じる。このとき、入射光64の回折格子62に対する入射角は臨界角より大きいため、流体63内ではエバネッセント波が形成され、回折格子62の表面へ吸着した検体68を実施例1,2の検出方法に比べてより高感度に検出できる。ただし、検体68が有する屈折率が基板61、流路天井69および流体63より高い必要がある。
エバネッセント波を利用した検体検出方法には表面プラズマ共鳴を用いた方法があるが、回折格子を用いた本実施例の方法では、金属を用いる必要がないため、基板61を廃棄する際に環境に対する負荷を軽減できるという利点を有する。また、エバネッセント波を利用したグレーティングセンサは表面プラズマ共鳴を用いた検出器と同等な感度を有し、10-5〜10-7程度の屈折率変化を検出することができることが理論的に知られている。本実施例においても、10-5程度よりも大きな屈折率の変化を検出することが可能である。
[実施例4]
図7を参照して実施例4を説明する。
図7を参照して実施例4を説明する。
実施例4は、本発明の検体検出方法を化学測定に応用した例である。
図7(a)に示すように、基板71の表面に回折格子72が形成され、基板71と流路天井79とにより流路77が形成されている。流体73は基板71、流路天井79および回折格子72と等しい屈折率を有する。検体78は液相または気相であり、流体73とは異なる屈折率を有し、流体73に挟まれて存在し、好ましくは流体73と混ざりにくい性質を有する流体である。検体78が回折格子72の位置へ達していないときは、回折格子72と流体73との界面は光学的に透明であるため、入射光74は透過光75として流路天井79、流体73及び基板71を透過する。
図7(b)は、検体78が回折格子72付近に達して、回折格子72と接触している様子を示している。このとき、入射光74は回折格子72により回折を生じるため、回折光76の強度を検出器(不図示)で検出することにより、検体78の有無を判定することができる。
実施例4における基板71の材質はガラスでもよいが例えば、環状ポリオレフィン(COC)、ポリジメシルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネ−ト(PC)、アクリル樹脂などのポリマーを用いてもよい。この場合、回折格子72は射出成型やナノインプリントなどの方法でフォトリソグラフィーを用いた方法に比べて安価に作成することが可能である。流体73として、市販されている屈折率整合オイルのそれぞれのポリマーの屈折率に近い値を選択し、屈折率を一致させる工程を経ることにより基板71、流路天井79および回折格子72と等しい屈折率を有することができる。検体78は水溶性のバッファなどが考えられるが、流体73と異なる屈折率を有し、流体73に拡散しにくい性質を有していれば特に限定はない。また、検体78が例えば環状ポリオレフィンに近い屈折率を有していれば、環状ポリオレフィンとは屈折率が異なるアクリル樹脂により流路を構成することにより検体78の検出が可能になる。
以上の実施例1〜4では回折格子を用いる検体検出方法を示した。回折格子の周期は好ましくは入射光の波長とおよそ等しい大きさであるが、入射光の波長の整数倍であれば、同様な検出を実施することは可能である。その場合には高次の回折光が発生するが、特定の次元の回折光を検出してもよいし、全ての次元の回折光を検出してもよい。
さらに、実施例2〜4において、流路内に流体や検体を注入する流れは、例えばシリンジポンプによる圧力フロー、電極を用いた電気浸透流、櫛歯電極を用いた誘電泳動によって発生させることができる。ただし、そのような流れを発生させる手段はこれらに限定されるものではない。
[実施例5]
図8を参照して実施例5を説明する。
図8を参照して実施例5を説明する。
本実施例は、周期構造が形成されていない基板の表面に検体を付与してこれを検出する方法の一例を示す。
図8(a)は、検体が存在しない基板に入射光を照射した状態を示す図である。基板81の表面には回折格子等の周期構造は形成されておらず、その上に基板81と屈折率が一致している流体83が接触している。このとき、基板81と流体83との境界は実質的に光学的に透明であることから、入射光84はその界面で反射・屈折することなく基板81を透過して透過光85を形成する。
図8(b)は、図8(a)に示した基板の上に検体を付与し、その基板に入射光を照射した状態を示す図である。検体88は、基板81の上に吸着または堆積することにより、流体83と基板81との界面において屈折率を変化させる働きを有する。このとき、界面において屈折率が変化したことにより入射光84の一部が基板81の表面で反射し、反射光86を生じる。つまり、検体88の有無により反射光86が発生したり消滅したりすることを利用し、その反射光86の強度を検出器(不図示)で検出することにより、検体88の検出を行うことができる。また、このような反射光を用いた検出は、図4〜図7に示した構成における流路の内壁で反射した反射光を検出することによって行うことも可能である。
反射光86の代わりに、検体88による散乱光を検出器(不図示)で検出してもよい。検体88が流体83中に存在しないときは、流体83と基板81との屈折率が等しいために、流体83と基板81との界面における光の散乱は生じない。そのため、検体88が流体83中に存在するときのみ生じる微弱な散乱光を検出して検体88を検出する方法も可能になる。このように流体83と基板81との屈折率を等しくしてそれらの界面で生じる散乱光を低減することは、検体による吸光度を測定する際にも利用することができる。
さらには、本実施例の構成においても図6の構成と同様にエバネッセント波を用いた検体の検出を行うことが可能である。ただし、検体88が有する屈折率が基板81より高い必要がある。
以上の実施例1〜5において、それぞれの入射光の入射角は、エバネッセント波を利用する場合には臨界角より大きな角度が必要であるが、その他の場合には任意である。図3〜図8の構成では基板又は流路天井の平面に対して斜め方向から入射光を入射させているが、それらの平面に対して垂直な方向から入射光を入射させてもよい。ただしその場合には、反射光を検出する際にはミラーを用いるなどの工夫が必要である。
本発明の検体検出方法は、流体内の検体を標識を用いずに高いS/N比で検出することが可能なので、環境分析、臨床検体分析を実施するための装置に利用することができる。
21,31,41,51,61,71,81 基板
33,43,53,63,73,83 流体
34,44,54,64,74,84 入射光
36,46,56,66,76 回折光
47,58,68,78,88 検体
86 反射光
33,43,53,63,73,83 流体
34,44,54,64,74,84 入射光
36,46,56,66,76 回折光
47,58,68,78,88 検体
86 反射光
Claims (5)
- 基板の表面に、該基板の屈折率と等しい屈折率を有する流体を接触させる工程と、
前記基板の表面に検体を接触させる工程と、
前記基板の表面に光を照射する工程と、
前記基板の表面と前記流体との界面において生じた反射光又は散乱光を検出する工程と、
を有する検体検出方法。 - 基板の上に形成された周期構造の表面に、前記基板の屈折率と等しい屈折率を有する流体を接触させる工程と、
前記周期構造の表面に検体を接触させる工程と、
前記周期構造に光を照射する工程と、
前記周期構造によって生じた回折光を検出する工程と、
を有する検体検出方法。 - 前記光の波長を調節することによって、前記基板の屈折率と前記流体の屈折率とを一致させる工程を有する、請求項1または2に記載の検体検出方法。
- 前記基板及び前記流体に熱を付与することによって、前記基板の屈折率と前記流体の屈折率とを一致させる工程を有する、請求項1または2に記載の検体検出方法。
- 前記流体に前記流体の屈折率と異なる屈折率を有する物質を添加することによって、前記基板の屈折率と前記流体の屈折率とを一致させる工程を有する、請求項1または2に記載の検体検出方法。
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JP2015500462A (ja) * | 2011-12-01 | 2015-01-05 | バイオサーフィット、 ソシエダッド アノニマ | 光度測定装置および光度測定方法 |
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US9594016B2 (en) | 2011-12-01 | 2017-03-14 | Biosurfit, S.A. | Photometric device and method |
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