上記本発明の超音波流量計においては、超音波送受信素子の発振周波数を生成する発振回路として、NOTやNORのような反転論理の論理ゲートを奇数個有して構成されたリングオシレータ回路を用いている。そして、その発振周波数の制御を、リングオシレータ回路を構成する各反転論理回路(例えばインバータ回路等)は、各々に供給される電源電圧の大きさが大きいほど遅延時間が短くなる点に着目して行うようにした。即ち、リングオシレータ回路を構成する遅延要素をなす各反転論理回路が、入力される電源電圧が大きいほど遅延時間が短くなるので、反転論理回路に入力される電源電圧を、出力周波数を大きくしたいときには大きく、出力周波数を小さくしたい時には小さくするように制御されるように構成した。発振回路をリングオシレータ回路とすることにより、低消費電力で、かつ低コストの超音波計測回路を構成することができる。また、超音波計測回路の低消費電力化、低コスト化を実現するためには、超音波計測回路を高集積化し、1チップ化されたICとすることが望ましく、さらに、回路の作り易さを考えるならば、アナログ回路ではなくオールディジタル回路で構成され、かつ同一の製造プロセスを経て製造されることが望ましい。上記本発明のように、発振回路をリングオシレータ回路とすることにより、これらを実現することが可能となる。
また、本発明の超音波流量計は、1度の流量計測に際して予め定められた流量計測期間が設定され、当該流量計測期間内において各超音波送受信素子に対し計測用超音波を繰り返し送出させる出力タイミング制御手段を備えて構成することができる。このとき、周波数制御手段は、対応する超音波送受信素子により送信された計測用超音波を他方の超音波送受信素子が受信する毎に、当該計測用超音波の送信から受信までに要した伝播時間と、当該計測用超音波の発信周波数にて予め決められたロック波数の出力が完了するまでに要するロック時間とを比較してそれら双方の時間が一致するように、次回に送出される計測用超音波の発信周波数の制御を実行し、流量算出手段は、流量計測期間内においてそれぞれの周波数制御手段により周波数制御された発信周波数に基づいて、被計測流体の流量を算出するものとして構成できる。
上記構成によると、計測用超音波の伝播時間が、当該計測用超音波の発信周波数にて特定のロック波数が出力されるまでに要するロック時間に一致させる周波数制御、言い換えれば、超音波送受信素子間の伝播長を特定のロック波数Nで固定する周波数制御が実行されており、その周波数制御を流量計測期間Tの間行って、その間の発振周波数に基づいて流量を演算する計測方式を採用している。この場合、例えば、流量演算するための流量計測期間Tを1秒間(1s)程度とすれば、超音波送受信素子間の伝播時間T0は、主にはおおよそ300μsと約1/3300s程度で、1回の計測に必要とされる精度はN±1であり、仮にロック数N=50とすると、300μs/50=6μsとなり、±6μsもの誤差が許容される。このように、上記計測方式が採用されていることで、ジッターが大きいリングオシレータ回路であっても十分な計測精度を実現することができる。
流量算出手段は、対をなす超音波送受信素子のそれぞれに対応して設けられるとともに対応するリングオシレータ回路から出力される計測用クロック信号のクロック数をカウントするカウント手段を備え、流量計測期間内においてカウントされた、対をなす超音波送受信素子のそれぞれに対応するクロック数の総カウント値に基づいて、被計測流体の流量を算出するように構成できる。この構成によると、超音波送受信素子の発信周波数fj,fgが流量計測期間内におけるクロックの総カウント値に反映されるので、対をなす双方の超音波送受信素子に対応する総カウント値を利用したシンプルな演算で流量算出ができる。
上記カウント手段は、対をなす超音波送受信素子のそれぞれに対応するクロック数をカウントするカウンタを有して構成され、流量算出手段は、流量計測期間の計測開始に際して双方のカウント値をリセットする一方で、流量計測期間の計測終了に伴い双方のカウント値を同時に記憶保持し、記憶保持された双方のカウント値に基づいて、被計測流体の流量を算出するように構成できる。流量計測期間の計測終了に伴い双方のカウント値が同時に記憶保持されるので、対をなす双方の超音波送受信素子において流量計測期間にばらつきが生じず、より高い精度の流量算出が可能となる。
なお、流量計測期間は、1秒の整数倍の時間、より望ましくは1秒にて定めることができる。流量計測期間が1秒であれば、カウンタ値がそのまま発信周波数fj,fgとして得ることができるし、その整数倍であれば、その整数値でカウンタ値を割るだけで、発信周波数fj,fgを得ることができ、流量算出の演算が簡易な処理で可能となる。
ところで、本発明における周波数制御手段は、リングオシレータ回路にて生成される計測用クロック信号を予め定められた割合で周波数補正して出力するよう、該リングオシレータ回路の出力側に接続される周波数補正用受動素子を備えて構成することができる。反転論理回路のみでリングオシレータ回路を構成する場合、各々の伝播遅延時間が数十ns程度で、仮に伝播遅延時間が20nsとすると、9段のリングオシレータ回路を構成しても20ns×9=180nsとなり、周波数にすると約5.6MHzと周波数が少し高い。そのため、例えば抵抗器やコンデンサ等の受動素子をリングオシレータ回路内に挿入しておくことで、周波数を低くし、リングオシレータの出力周波数をさらに下げ、低消費化を実現することができる。
また、本発明における周波数制御手段は、リングオシレータ回路から出力される計測用クロック信号の周波数を周波数補正して出力するとともに、その周波数補正レベルが可変可能となるように、リングオシレータ回路の出力側に接続された周波数補正用受動素子と、周波数補正レベルを可変するための周波数補正レベル可変手段と、を備えて構成することができる。これにより、使用用途に応じて可変定数を変更することが可能となる。具体的には、周波数補正用受動素子に定められる定数を可変とし、周波数補正レベル可変手段が、その定数を可変することで周波数補正レベルを可変するように構成できる。
また、例えば、被計測流体が空気の場合、温度が大きくなるに従い被計測流体内での音速Cは大きくなる。その結果、伝播時間T0がより短くなり、計測用超音波の発振周波数をより高周波にすることが必要となる。このような場合は、周波数制御手段により制御された発振周波数に基づいて被計測流体の温度を算出する温度算出手段を設けるとともに、周波数制御手段の上記周波数補正レベル可変手段が、算出される温度に基づいて周波数補正レベルを変更するように構成すればよい。
また、本発明において周波数制御手段を構成するリングオシレータ回路のうち、対をなす超音波送受信素子の一方に対応する回路と、他方に対応する回路との双方が形成された回路パターンのレイアウトが、該レイアウトの全体において、双方のリングオシレータ回路の各要素及び各配線に偏りが生じないような、対称性を有したレイアウトとすることができる。これにより、対をなす双方の超音波送受信素子にそれぞれリングオシレータ回路において、互いの相対誤差を低減でき、製造ばらつき等が極めて小さい超音波流量計を実現できる。
以下、本発明の超音波流量計の一実施形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の超音波流量計の一実施形態であり、一般住宅用ガスメータ等として用いられる超音波流量計の基本構成を示すブロック図である。この超音波流量計1は、図1に示すように、被計測流体GFの流路を形成する流路形成部3と、流路形成部3に対し被計測流体GFの流通方向Oにおいて互いに異なる位置に設けられ、一方が被計測流体GFへの計測用超音波の送出側となり、他方が該計測用超音波の受信側となるように機能するとともに、各々計測用超音波として、予め定められた向きへの指向性を有する超音波ビーム(計測用超音波)を送出可能な対をなす超音波送受信素子2a,2bとを備えている。流路形成部3と超音波送受信素子2a,2bとが流量計本体10を構成し、該流量計本体10と、制御回路部20とにより超音波流量計1の全体が構成されている。そして、このように構成された超音波流量計1は、被計測流体GFが流通する流路形成部3内に設けられた一対の超音波送受信素子2a,2b間で超音波が予め決められたロック波数になるように計測用超音波ビームの発振周波数を制御し、該周波数を基に流速、流量、積算流量等のうち少なくともいずれかを算出可能なものである。なお、本実施形態における制御回路部20は、全てデジタル回路として構成されている。
流路形成部3は例えば金属製である。計測対象がガスの場合、流路形成部3の軸断面形状は壁部3Jにより閉鎖された空間を形成するものであればよく、例えば、円形状、楕円形状、正方形状、矩形状等のいずれを採用してもよい。本実施形態では、流路形成部3は矩形状の流路断面を有するものとして形成され、上壁部3Jaの上流側に上流側超音波送受信素子2aが、また、上壁部3Jaの下流側に下流側超音波送受信素子2bが取り付けられており、さらにいえば、上流側超音波送受信素子2a及び下流側超音波送受信素子2bから発振された超音波は下壁3jbによって角度θで反射し、相手側の超音波素子に到達する構造になっている。具体的には、対をなす超音波送受信素子2a,2bの取り付け角が、図1に示すように、いずれもθ(本実施形態においてはθ=45°)となるように取り付けられている。なお、対をなす超音波送受信素子2a,2bが、流路を挟む形で振り分けて配置される、即ち、上壁部3Jaに上流側超音波送受信素子2aが、下壁部3Jbに下流側超音波送受信素子2bが配置され、超音波を反射させないで送受信する構造であってもよい。
超音波送受信素子2a,2bは、一方が被計測流体への計測用超音波の送出側となり、他方が該計測用超音波の受信側となるように機能するとともに、各々計測用超音波を送出可能に構成されている。本実施形態においては、周知の超音波トランスデューサ2a,2bとして構成されており、いずれも、駆動電圧の印加により計測用の超音波ビームを送出する超音波送出機能と、超音波ビームの受信により電気信号(受信信号)を出力する超音波受信機能とを複合して備える。いずれも全く同一の構造を有するので、その一方で代表させて説明する(以下、符号「2」により代表させる)。
制御回路部20は、図1に示すように、制御部21と、送信部22及び切替部24を有する超音波駆動機構と、受信部23、切替部24、2値化部25を有する受信超音波処理部と、対をなす超音波送受信素子2a,2bに対応して設けられた周波数制御部30A,30Bと、カウンタ36A,36Bとを有して構成されている。
切替部24は、超音波送受信素子2a,2bの送信側と受信側を切り替えるスイッチである。具体的にいえば、超音波送受信素子2aが送出側、超音波送受信素子2bが受信側となる第一駆動モードと、その逆で、超音波送受信素子2bが送出側、超音波送受信素子2aが受信側となる第二駆動モードとの間で駆動モードを切り替える駆動モード切替手段として機能するものである。送信部22は、超音波送受信素子2a,2bに対して駆動信号を入力するための回路である。具体的にいえば、超音波送受信素子2a,2bに計測用の超音波ビームを送出するための駆動パルス(パルス状の駆動電圧)を発生する駆動電圧回路等から構成されている。受信部6は、超音波送受信素子2a,2bから出力される受信信号を所定の増幅率で増幅し、2値化部25に入力する。
2値化部25は、ゼロクロス点検出手段として機能しており、図5に示すように、入力された受信信号の波形から、予め定められた閾レベル(振幅閾値)を超える半波によるゼロクロス点に対応したパルス波形を出力するゼロクロスコンパレータ部を有して構成されている。具体的にいえば、入力された受信信号の波形から、上記閾レベルを上回る最初の振幅を検出して、検出された振幅の次に到来するゼロクロス点を出力する。また、本実施形態においては、2値化部25からゼロクロス点がパルス出力され、その出力パルス信号SIGinが周波数制御部30A,30Bに入力される。
周波数制御部30A,30Bは、対をなす超音波送受信素子2a,2bのそれぞれに対応して設けられている。これら周波数制御部30A,30Bは、各々が対応する超音波送受信素子2a,2bにより送信された計測用の超音波ビームを他方の超音波送受信素子2b,2aが受信する毎に、当該超音波ビームの送信から受信までに要した伝播時間T0と、当該計測用超音波の発信周波数にて予め決められたロック波数Nの出力が完了するまでに要するロック時間Taとを比較してそれら双方の時間が一致するように、次回に送出される計測用の超音波ビームの発信周波数を制御する。
なお、本実施形態においては、周波数制御部30Aが超音波送受信素子2aに対応し,周波数制御部30Bが超音波送受信素子2bに対応している。いずれも全く同一の構造を有するので、その一方を代表させて共通の説明する場合は、その符号を「30」に代表させる。なお、以下で説明する周波数制御部30A,30Bに対応する各手段(31A,31B)、(32A,32B)、(33A,33B)、(34A,34B)、(35A,35B)、(36A,36B)、(37A,37B)も、その一方を代表させて共通の説明する場合は、それらの符号からそれぞれ「A」及び「B」を除いた「31」,「32」,「33」,「34」,「35」,「36」,「37」にて代表させる。
周波数制御部30は、周波数制御手段として機能するものであり、周知のPLL(Phase-Locked Loop)回路として構成されており、位相比較部をなすPD(Phase Detector)32と、ループフィルタをなすLF(本実施形態においてはLPF:low Pass Filter)33と、電圧制御発振部(VCO:Voltage Controlled Oscillator)をなすリングオシレータ回路34と、分周部をなすDivider(N)35と、を有した位相同期回路として構成されている。
リングオシレータ回路34は、対応する超音波送受信素子2から送出される計測用超音波ビームの送信周波数(発信周波数)のクロックVCOoutを出力する発振回路であり、対応する超音波送受信素子2による計測用超音波ビームの送信から受信までに要した伝播時間T0と、該計測用超音波ビームの発信周波数にて予め決められたロック波数が出力されるまでに要するロック時間Taとが一致するように、当該計測用超音波ビームの発振周波数を制御するとともに、制御された周波数の計測用クロック信号VCOoutをDivider(N)35及びカウンタ36に継続して出力するように接続されている。そして、周波数制御された発信周波数のクロック信号VCOoutに基づいて、計測用の超音波ビームが、対応する超音波送受信素子2a,2bから送出されるよう構成されている。つまり、リングオシレータ回路34は、少なくとも計測単位期間の間、波数カウント用の信号として、対応する超音波送受信素子の発信周波数のクロック信号VCOoutを継続出力するクロック信号出力手段として機能するものである。
本実施形態におけるリングオシレータ回路34は、図6に示すように、反転論理回路341,342の出力に当該反転論理回路341,342とは異なる反転論理回路341,342の入力を接続する形で、遅延要素をなす奇数個の反転論理回路341,342が鎖状に結合するとともに、最終段の反転論理回路341の出力が初段の反転論理回路342に入力されるよう回路構成されている。具体的にいえば、本実施形態においては、9段の反転論理回路341,342を有して構成されており、初段がNANDゲート342あり、初段を除く反転論理回路341がNOTゲート341とされている。初段のNANDゲート342の2つの入力のうち一方には、最終段のNOTゲート341の出力が接続され、他方には、制御部21からの信号入力がなされるように構成されている。これにより、制御部21から発振周波数の位相制御や回路のオン/オフが可能となっている。
Divider(N)35は、入力された周波数をN分割(Nはロック波数であり、整数)して出力する分周器であり、リングオシレータ回路34からクロックパルスVCOoutの入力を受け、Nパルスに対し1パルスの出力パルス信号COMPinがPD32の一方の入力端子に入力されるよう接続されている。
PD32は、ロック時間Taと伝播時間T0との時間差を反映した時間差反映信号を出力する時間差反映信号出力手段として機能するものである。具体的にいえば、2つの入力信号の位相を比較して、その位相差に比例した位相比較出力信号を上記時間差反映信号として出力する位相比較器であり、一方の入力端子がDivider(N)35の出力端子に接続される一方で、他方の入力端子がスイッチ(SW)31の一方の接点端子またはDivider(N)35の出力端子のいずれかに接続され、出力端子がLF33に入力されている。
スイッチSW31は、対応するPD32の双方の入力端子を、Divider(N)35の出力に接続した第一接続状態(PD32が2値化部25と非接続の状態)と、対応するPD32の一方の入力端子をDivider(N)35の出力に接続し、他方の入力端子を2値化部25の出力に接続した第二接続状態(PD32が2値化部25と接続した状態)との間で切り替えるものである。具体的にいえば、制御部21により、2値化部25から出力されるゼロクロス点に対応したパルス波形の入力に先立って第一接続状態から第二接続状態に切り替えられる。そして、PD32では、このゼロクロス点に対応したパルス波形と、このパルス波形の入力の前後に到来するDivider(N)35からのパルス波形の入力とで位相比較が行われる。そして、位相比較後には、第二接続状態から第一接続状態への切り替えがなされる。
なお、本実施形態においては制御部21によりスイッチSW31が切り替えられるように構成されており、第一接続状態から第二接続状態への切替タイミングは、2値化部25にてゼロクロス点を検出する前の、対応する超音波送受信素子2a,2bから発信された超音波ビームが他方の超音波送受信素子2b,2aに受信されたことを示す信号の検出タイミングとされている。具体的にいえば、受信部23が、予め定められた電圧レベル以上の受信信号(受信波)を検出するに伴い受信検出信号を出力し、制御部21が、当該受信信号の入力を受けるに伴い、対応する側のスイッチSW31に対し、スイッチ切替信号を出力する形で行う。逆に、第二接続状態から第一接続状態への切替タイミングは、制御部21が、2値化部25から出力されるゼロクロス点に対応した出力パルス信号SIGinの立下りを検出するに伴い、対応する側のスイッチSW31に対し、スイッチ切替信号を出力する形で行う。
ただし、スイッチSW31は、対応する超音波送受信素子2bにより受信した受信信号のゼロクロス点に対応したパルス波形(ゼロクロス出力)のみをPD32に入力するように切り替えられる。スイッチSW31Aの場合は、超音波送受信素子2bにより受信した受信信号のゼロクロス点に対応したパルス波形(ゼロクロス出力)のみをPD32Aに入力するようスイッチ切り替えを行い(第一接続状態→第二接続状態)、他方の超音波送受信素子2aにより受信した受信信号のゼロクロス点に対応したパルス波形(ゼロクロス出力)についてはPD32Aへの入力がされないようにスイッチ切り替えを行わない(第一接続状態を保持)。スイッチSW31Bの場合は、超音波送受信素子2bにより受信した受信信号のゼロクロス点に対応したパルス波形(ゼロクロス出力)のみをPD32Aに入力するようスイッチ切り替えを行い(第一接続状態→第二接続状態)、他方の超音波送受信素子2aにより受信した受信信号のゼロクロス点に対応したパルス波形(ゼロクロス出力)はPD32Aに入力されないようスイッチ切り替えがなされない(第一接続状態を保持)。
LF33は、上記位相比較出力信号(時間差反映信号)を入力し、該位相比較出力信号を平均化して出力するループフィルタであって、予め定められた時定数が設定されており、入力側にPD32の出力側が、出力側にバッファ37の入力側が接続されている。本実施形態においては、図10に示すように、ラグリードフィルタである。
また、LF(ラグリードフィルタ)33を介して出力されるPD32側からの時間差反映信号PDoutは、図10に示すように、バッファ37を介してVCO(リングオシレータ回路)34の電源入力端子345に入力される。
上述のPD32が出力する時間差反映信号PDoutは、リングオシレータ回路34の各反転論理回路341,342を駆動する駆動電圧(電源電圧)として、LF33及びバッファ37を介し、それら各反転論理回路341,342に入力される。つまり、時間差反映信号PDoutの電圧レベルを反映した信号電圧が、VCO34を構成する各論理回路の駆動電源電圧となっている。
PD32から出力される時間差反映信号PDoutは、ロック時間T0から伝播時間を引いた時間差分値が正の方向に大きいほど電圧が大となり、当該時間差分値が負の方向に大きいほど電圧が小となって出力される。つまり、リングオシレータ回路34を構成する各反転論理回路341,342は、入力される電源電圧が大きいほど遅延時間が短くなり、リングオシレータ回路34の出力周波数が大きくなり、逆に、入力される電源電圧が小さいほど遅延時間が長くなり、リングオシレータ回路34の出力周波数が小さくなるので、PD32では、各反転論理回路341,342に供給される電源電圧を、リングオシレータ回路34の出力周波数を大きくしたいときには大きく、出力周波数を小さくしたい時には小さくする電圧制御を実行している。
なお、本実施形態においては、これらPD32、LF33、及びバッファ37からの出力電圧は、各反転論理回路341,342の電源電圧として供給され、その供給電圧により発振周波数が変化する。つまり、各反転論理回路は、供給された電圧により発振周波数を可変するVCO(電圧制御発信器)として機能している。
また、各超音波送受信素子2a,2bの発信周波数レベルは、超音波流量計1自身に定められる計測可能最小流量を計測した際に一方の超音波送受信素子2a,2bの発信周波数と他方の超音波送受信素子の発信周波数との差が、少なくとも1Hz程度の差として表れるように定められている。より具体的にいえば、各超音波送受信素子2a,2bの発信周波数が、それら各超音波送受信素子2a,2b自身の共振周波数よりも高い周波数となるように設定されている。
このように構成された周波数制御部30では、上記第一接続状態においては、PD32の双方の入力端子がDivider(N)35から同じ信号COMPinを受けるため位相差Δfは検出されず、このためリングオシレータ回路34から出力される信号の発信周波数に変更はない。具体的にいえば、PD32において位相差Δfが検出されていないため、バッファ37から、リングオシレータ回路34を構成する各反転論理回路341,342に供給される電源電圧が一定に保持され、その結果、リングオシレータ回路34の出力周波数も一定に保持されている。他方、上記第二接続状態においては、図4に示すように、一方の入力端子が2値化部25から出力される信号SIGinを受け、他方の入力端子がDivider(N)35から出力される信号COMPinを受けて、双方の信号の位相を比較して、その位相差Δfに比例した位相比較出力信号が出力されるので、リングオシレータ回路34は、その位相差に応じて発信周波数を可変する周波数制御を実行する。つまり、リングオシレータ回路34は、PD32に入力される信号SIGinと信号COMPinの位相差がゼロとなるように、即ち、対をなす超音波送受信素子2a,2b間の波数が予め決められたロック波数Nとなるように位相調整を行う。具体的にいえば、PD32において位相差Δfが検出された場合には、バッファ37から、リングオシレータ回路34を構成する各反転論理回路341,342に供給される電源電圧が位相差Δfに応じて変動し、その結果、リングオシレータ回路34の出力周波数も供給された電圧レベルに応じて変化する。なお、図4は、本実施形態に係る超音波流量計1における各種信号のタイミングチャートである。
カウンタ36は、対をなす超音波送受信素子2a,2bのそれぞれに対応して設けられ、それぞれが対応するリングオシレータ回路34から出力されるクロックVCOout(計測用クロック信号)をカウントするように構成されている。つまり、カウンタ36は、対応するリングオシレータ回路34から継続出力される波数カウント用信号の出力波数をカウントするカウント手段として機能するものである。
制御部21は、CPU,ROM,RAM等を備える周知のマイコンであり、上記リングオシレータ回路34から出力される発振周波数とは異なる独自のクロックにより駆動するよう構成されている。この制御部21は、図2に示すように、自身のクロックに基づいて、所定の流量計測期間T内において各超音波送受信素子2a,2bに対し計測用の超音波ビームを予め定められた送信時間間隔にて繰り返し送出させる出力タイミング制御手段として機能するものである。具体的にいえば、制御部21は、自身の記憶部に、1度の流量計測に際して予め定められた流量計測期間Tを記憶するとともに、当該流量計測期間T内において各超音波送受信素子2a,2bに対し計測用の超音波ビームを予め定められた送信時間間隔にて送出させるためのタイミングテーブルを、各超音波送受信素子2a,2b毎に記憶している。そして、制御部21は、双方のリングオシレータ回路34A,34Bにて周波数制御された発信周波数の超音波ビームを送出するための送出指令信号を、上記送信時間間隔で送信部22に出力する。
一方で、制御部21は、上記流量計測期間T内においてそれぞれの周波数制御部30A,30Bにより周波数制御された発信周波数に基づいて、被計測流体GFの流量を算出する流量算出手段として機能するように構成されている。具体的にいえば、対をなす超音波送受信素子2a,2bのそれぞれに対応するカウンタ36a,36bの流量計測期間T内における総カウント値が、上記流量計測期間T内における各超音波送受信素子2a,2bの発信周波数fj、fgを反映した値であるから、流量計測期間T内におけるカウンタ36a,36bの総カウント値を取得して、それら双方の総カウント値に基づいて、被計測流体GFの流量を算出する。
以下、被計測流体GFの流量を算出方法について説明する。
制御部21は、流量計測期間Tの開始前にカウンタ36a,36bがそれぞれ記憶しているカウント値をゼロリセットする。そして、このゼロリセットの完了に伴い流量計測期間Tが開始される。具体的にいえば、このゼロリセットの完了に伴い制御部21が、自身のクロックに基づいて、流量計測期間T(ここでは1秒間)の時間カウントを開始する。
流量計測期間Tが開始されると、リングオシレータ回路34がリング発振を開始するとともに、対をなす双方の超音波送受信素子2a,2bから予め定められた送信時間間隔(送信タイミング:図3の計測点)にて、計測用の超音波ビームを送出するための送出指令信号が、リングオシレータ回路34のクロックと同期する形で制御部21から出力される。具体的にいえば、リングオシレータ回路34の発振クロックの立上りないし立下りに同期して(ここでは立ち上がりに同期させる)、計測用超音波ビームの送信を開始するようにする。これを受けた送信部22が、対応する超音波送受信素子2a,2bに対し駆動信号を入力する。
ただし、送出指令信号の出力と同時に、当該超音波ビームを送出すべき超音波送受信素子2a,2bから当該超音波ビームが出力されるよう、切替部24に対し駆動モード切替信号を出力して、上述した駆動モードの切り替えを行う。
なお、以降では、今回の計測用の超音波ビームを送出が超音波送受信素子2aからなされ、これを超音波送受信素子2bが受信する駆動モードであるものとして説明を行う。
また、流量計測期間Tが開始すると、両リングオシレータ回路34A,34Bのそれぞれの反転論理回路342に設けられた一方の端子(スタート端子)340に対し、当該開始を示す計測開始信号が入力される。この入力により両リングオシレータ回路34はリング発振を開始し、出力端子349からのクロック出力が開始される。この時、発振周波数は、電源入力端子345に入力される電源電圧レベル、即ち各反転論理回路341,342に入力される駆動電圧の大きさにより決定される。通常、インバータ等の論理回路は、駆動電圧が高いと伝播遅延時間が速くなり、逆に駆動電圧が低いと、ゲート遅延時間が遅くなる。
また、ここで、対応する周波数制御部30Aにおいて、今回送出される計測用超音波ビームの送信から受信までに要する伝播時間T0と、当該超音波ビームの発信周波数にてロック波数の出力が完了するまでに要するロック時間とが比較可能となるようなタイミングで、Divider(N)35Aから出力される出力パルス信号COMPinがPD32Aに入力するための設定を行う。本実施形態においては、上記送出指令信号の出力と同時に、制御部21が対応するDivider(N)35Aの位相リセットを行う。この位相リセットにより、対応するDivider(N)35Aからは、その後、対応するリングオシレータ回路34からロック波数Nのクロックが出力されるに伴い出力パルス信号COMPinが出力され、これがPD32Aに入力する。なお、Divider(N)35Aのリセットを上記のように行わず、常時分周させておく構成もありうる。
さて、送信部22からの駆動信号の入力に伴い超音波送受信素子2aは、流路形成部3内に計測用の超音波ビームを送出する。この送出は、該超音波送受信素子2aに対応するリングオシレータ回路34Aの出力クロックと同期する形でなされる。つまり、該超音波送受信素子2aからは、対応するリングオシレータ回路34Aのそのときの発振周波数fa0にて超音波発振がなされる。なお、発振周波数fa0は、対応するリングオシレータ回路34Aが前回の流量計測期間Tにおいて発振した最後の発振周波数をそのまま利用して発振させている。即ち、各反転論理回路341,342に供給される駆動電圧の電圧レベルが前回のまま保持されており、保持された電圧レベルに基づいた周波数のクロックがリングオシレータ回路34から出力されている。今回の流量計測期間Tにおける初回の超音波発振ではその発振周波数をそのまま利用して超音波ビームを送出する。
超音波送受信素子2aから流路形成部3内に計測用の超音波ビームを送出すると、送出された超音波ビームが伝搬し、超音波送受信素子2bにてこれが受信される。そして、この受信波を受信部23にて増幅した超音波受信出力(受信信号)が2値化部25に入力されて、特定の振幅以上となった次のゼロクロス点の出力(出力パルス信号SIGin)がなされる(図4参照)。このとき、受信部23が超音波送受信素子2bから受信信号を受信するに伴い、制御部21が、対応するスイッチ31Aを第一接続状態から第二接続状態に切り替えられる。ただし、切り替えられて第二接続状態となったスイッチ31Aは、2値化部25から出力されるゼロクロス点の出力パルスの立下りを制御部21が検出するに伴い第一接続状態に戻る。
2値化部25から出力されたゼロクロス点出力SIGinは、対応する周波数制御部30Aを構成するPD32Aの一方の入力端子から入力される。PD32Aの他方の入力端子からは、この第二接続状態においては、Divider(N)35Aの出力COMPinが入力される。PD32Aでは、双方の入力端子から入力される双方の信号SIGin、COMPinとで位相比較を行う。具体的には、図4に示すように、双方の入力パルスの信号エッジを比較する形で行う。その結果、このPD32Aの出力にはSIGinとCOMPinの位相差(時間差)Δfが反映される。このとき、この位相差Δfが反映された電圧信号は、対応するバッファ37Aを介してリングオシレータ回路34Aの駆動電圧として各反転論理回路341,342に供給される。そして、対応するリングオシレータ回路34Aの発振周波数を、この位相差Δfがゼロとなるように可変する周波数制御を実行する。
具体的にいえば、周波数制御部30Aでは、図4に示すように、計測用超音波ビームの送信から受信のゼロクロス点までの時間(伝播時間)T0を、リングオシレータ回路34Aの発振周波数fa0でN個の周波数でロックする時間(ロック時間)N/fa0と比較する。例えば、超音波伝搬時間T0に対して、発振周波数が、(N−1)/fa0≦T1≦(N+1)/fa0を満足するような周波数であれば、リングオシレータ回路34の発振周波数を可変する必要はなく、上記条件を満足していない場合に、位相差Δfがゼロとなるよう発振周波数fa0からfa1へと周波数を変更する。さらにいえば、上記条件を満たしていない場合において、伝播時間T0が、発振周波数fa0でN個カウントした時間Taより小さい、即ち伝播時間T0がN/fa0よりも小さい場合は、変更後の発振周波数fa1を発振時の発振周波数fa0よりも高い周波数とし、他方、発振周波数fa0でN個カウントした時間Taよりも大きい場合、即ち伝播時間T1がN/fa0よりも大きい場合は、変更後の発振周波数fa1は、発振時の発振周波数fa0より低い周波数とする制御がなされる。
なお、リングオシレータ回路34は、PD32により検出される位相差に基づく発振周波数のクロックを少なくとも流量計測期間Tの間継続して出力するものであるから、上記周波数制御以降においても、変更後の発振周波数fa1のクロックを継続して出力し、次回の超音波送受信素子2aからの計測用超音波ビームの送出は、この発振周波数fa1のクロックと同期する形でなされる。
超音波送受信素子2aからの計測用超音波ビームの出力及び該出力後の周波数制御部30Aによる周波数制御までの処理は、上記のような流れで実行される。これらの処理は、流量計測期間Tが経過するまで、予め定められた送信時間間隔おきに繰り返し実行される。具体的にいえば、図3に示すように、一定時間間隔おきに計測用超音波ビームが送出される形で繰り返し実行される。このとき、カウンタ36Aには、その流量計測期間Tにおいてリングオシレータ回路34Aから出力された全てのクロックがカウントされている。つまり、超音波受信毎に周波数制御されたクロックが一定期間Tの間カウントされ続けている。
他方、超音波送受信素子2bからの計測用超音波ビームの出力及び該出力後の周波数制御部30Bによる周波数制御までの処理も、上記した、超音波送受信素子2aからの計測用超音波ビームの出力及び該出力後の周波数制御部30Aによる周波数制御までの処理と同様であり、流量計測期間Tが経過するまで、予め定められた送信時間間隔おきに繰り返し実行される。そして、カウンタ36Bには、カウンタ36Aと同様、その流量計測期間Tにおいてリングオシレータ回路34Bから出力された全てのクロックがカウントされている。
これらカウンタ36A,36Bは、流量計測期間Tの計測終了に伴い制御部21により双方のカウント値が同時に記憶保持される。具体的には、制御部21に設けられた記憶部の所定の記憶領域に各カウンタ36A,36Bの、計測終了時におけるカウント値を同時に記憶する。なお、制御部21に対し各カウンタ36A,36Bを、ラッチ回路を介して接続するように構成し、計測終了に伴い制御部21から制御信号を出力し、その制御信号に基づいて、双方のカウンタ36A,36Bのカウンタ値を同時に記憶保持して、保持された値を制御部21が読み出すようにしてもよい。
その後、制御部21は、記憶保持された各カウンタ値を読み出すとともに、これら双方のカウント値に基づいて、被計測流体GFの流量Qを算出する。なお、流量計測期間Tは、1秒の整数倍の時間にて定めることができる。流量計測期間が1秒であれば、流量計測期間Tにおけるカウント総数をそのまま発信周波数fj,fgとして得ることができる、即ち、本実施形態においては記憶保持されたカウンタ値をそのまま発信周波数fj,fgとして得ることができるし、その整数倍であれば、その整数値で上記カウント総数を割る演算だけで、発信周波数fj,fgを得ることができ、流量算出の演算が簡易な処理で可能となる。本実施形態の流量計測期間Tは1秒にて定められている。
つまり、流速Vは、発信周波数fj,fgに基づく以下の(式1)を制御部21において演算することで得られる。なお、超音波送受信素子2a,2bの取り付け角度を図1のようにθと定め、さらに、ロック波数をN、超音波送受信素子2aに対応する発振周波数(順方向送信周波数)をfj、超音波送受信素子2bに対応する発振周波数(逆方向送信周波数)をfg、超音波送受信素子2a,2b間の超音波伝播距離(伝搬長)をLと定めている。
V=(L/2・N・cosθ)×(fj−fg) ・・・(式1)
そして、流量Qは、流路3の断面積S及び補正係数Hを用い、以下の(式2)を制御部21において演算することで得られる。
Q=V・S・H ・・・(式2)
また、積算流量ΣQ1は、前回までの積算流量ΣQ0を用い、以下の(式3)を制御部21において演算することで得られる。
ΣQ1=ΣQ0+Q ・・・(式3)
このように、上記した実施形態は、流体GFが流通する流路3内の上流側と下流側に一対の超音波送受信素子2a,2bを設けられるとともに、所定の流量計測期間Tにおいて計測用超音波の送出を繰り返し、その計測用超音波を受信する毎に、次回送出される計測用超音波がそれら一対の超音波送受信素子2a,2b間で予め決められたロック波数になるようその発振周波数を制御して、流量計測期間T内に制御されたその発振周波数を基に流量算出可能な超音波流量計1であって、超音波発信用の発振回路がリングオシレータ回路34からなり、該リングオシレータ回路34を構成する各遅延要素341,342に供給される電源電圧を可変することにより、該リングオシレータ回路34の発振周波数を制御する構成となっている。
この構成では、発振回路がリングオシレータ回路とされているので、低消費電力で、かつ低コストの超音波計測回路を構成することができる。また、流量計測方式が上記のような方式であることで、一般的にジッターが大きいとされるリングオシレータ回路であっても十分な流量計測精度が確保される。例えば、流量演算するための流量計測期間Tが上記のように1秒間程度であるとすれば、超音波送受信素子2a,2b間の伝播時間T0は、主にはおおよそ300μsと約1/3300s程度で、1回の計測に必要とされる精度はN±1であり、仮にロック数N=50とすると、300μs/50=6μsとなり、±6μsもの誤差が許容されるから、リングオシレータ回路であっても十分な流量計測精度が実現されている。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。以下では、上記実施形態を第一実施形態とし、それとは異なる実施形態について説明を行う。なお、共通の構成については同符号を付することにより説明を略する。
上記第一実施形態においては、VCO34として、図6に示すように、反転論理回路341,342のみからなるリングオシレータ回路が採用されているが、反転論理回路のみでリングオシレータ回路34を構成する場合、各々の伝播遅延時間が数十ns程度で、仮に伝播遅延時間が20nsとすると、9段のリングオシレータ回路を構成しても20ns×9=180nsとなり、周波数にすると約5.6MHzと周波数が少し高い。そのため、例えば抵抗器やコンデンサ等の受動素子をリングオシレータ回路内に挿入しておくことで、周波数を低くし、リングオシレータの出力周波数をさらに下げ、低消費化を実現することができる。
例えば、リングオシレータ回路34内に周波数補正用の受動素子を接続して、リングオシレータ回路34にて生成されるクロック信号を予め定められた割合で周波数補正して出力するように構成してもよい。例えば、図7はその一例であり、リングオシレータ回路34の出力側に、抵抗器R0及びコンデンサC0が設けられており、これにより、リングオシレータ回路34の出力周波数を減じて出力している。
また、リングオシレータ回路34内に周波数補正用受動素子を接続する構成としては、上記のように、リングオシレータ回路34にて生成されるクロック信号を一定の割合で周波数補正するものの他に、周波数を周波数補正して出力するとともにその周波数補正レベルが可変可能とするように構成することもできる。そして、周波数補正レベルを可変するための周波数補正レベル可変手段を設けることができる。例えば、周波数補正用受動素子に定められる定数を可変とし、周波数補正レベル可変手段が、その定数を可変することで周波数補正レベルを可変するように構成できる。具体的にいえば、図7の抵抗R0を可変抵抗として、超音波流量計本体に、その抵抗レベルを調整する操作部を設けるような構成としても良いし、並列接続された定数の異なる複数の受動素子をスイッチにより切り替え可能とし、超音波流量計本体にそのスイッチを切り替える操作部を設けるような構成としても良い。図8はその一例であり、抵抗R1,R2(R1>R2)がスイッチ343により切り替え可能とされている。これにより、用途に応じて適切な発振周波数が選択できる。
また、例えば、被計測流体が空気の場合、図9に示すように、温度が大きくなるに従い被計測流体内での音速Cは大きくなる。その結果、伝播時間T0がより短くなり、計測用超音波の発振周波数をより高周波にすることが必要となる。このような場合は、周波数制御手段により制御された発振周波数に基づいて音速を算出する音速算出手段を設けるとともに、周波数制御手段の上記周波数補正レベル可変手段が、算出される音速に基づいて周波数補正レベルを変更するように構成することができる。具体的にいえば、制御部21が、各流量計測期間T毎に、流量Q等だけでなく、以下の(式4)及び(式5)から温度τを求めるようにする。
C=(L/2・N・cosθ)×(fj+fg) ・・・(式4)
C=331.68+0.61τ ・・・(式5)
そして、算出された温度τに基づいて、各VCO34A,34Bの発振周波数を変更するようにする。
例えば、図8のようにリングオシレータ回路34を構成した場合には、制御部21が出力するスイッチ切替信号によりスイッチ343を切り替えるように構成し、算出した温度τが予め定められた閾温度レベルを上回った場合には、スイッチ343をR1からR2(R1>R2)に切り替え、該閾温度レベルを上回っていない場合にはR1に切り替えて接続するように構成することができる。
リングオシレータ回路34のうち、対をなす超音波送受信素子2a,2bの一方に対応する回路34Aと、他方に対応する回路34Bとの双方は、デジタル回路で構成され、IC化が前提とされている。それら双方が形成された回路パターンのレイアウトは、そのレイアウトの全体において、双方のリングオシレータ回路34A、34Bの各要素341,342及び各配線に偏りが生じないような、対称性を有したレイアウトとすることができる。例えば図11のようなレイアウトである。これにより、対をなす双方の超音波送受信素子にそれぞれリングオシレータ回路において、互いの相対誤差を低減でき、製造ばらつき等が極めて小さい超音波流量計を実現できる。図11は、双方のリングオシレータ回路34A、34BがIC化された場合の内部レイアウトを簡略的に表現したものであり、ここでは、リングオシレータ回路34Aの各要素341A(341),342A(342)と、リングオシレータ回路34Bの各要素341B(341),342B(342)とが互い違いに配置・配線されている。なお、同図の符号345Aはリングオシレータ回路34Aの電源入力端子345であり、符号349Aはリングオシレータ回路34Aの出力端子349であり、符号340Aは計測開始信号が入力されるスタート端子340である。同様に、同図の符号345Bは、リングオシレータ回路34Bの電源入力端子345であり、符号349Bは、リングオシレータ回路34Bの出力端子349であり、符号340Bは計測開始信号が入力されるスタート端子340である。
また、上記した実施形態・実施例において、各々の構成・特徴を組み合わせた構成とすることも可能である。