JP2009262140A - 光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液 - Google Patents

光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液 Download PDF

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Abstract

【課題】中間層中の有機防カビ剤の分解を抑制し、かつ防藻、抗カビ性能を補完する有機防カビ剤の溶出も妨げることなく、優れた耐候性および有害ガス分解性、ならびにその他の所望の特性(透明性、膜強度等)を発揮する光触媒塗装体および光触媒コーティング液を提供する。
【解決手段】基材上に、有機防カビ剤を含む中間層と光触媒層とを備えた構造とする。光触媒層は、1質量部超え5質量部未満の光触媒粒子と、85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、銅元素と、銀元素と、シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物とを、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液に関する。
酸化チタンなどの光触媒が、近年建築物の外装材など多くの用途において利用されている。基材表面に光触媒を塗装することにより、光エネルギーを利用してセルフクリーニング機能、NOx、SOx等有害物質の分解機能、カビや藻などの繁殖を抑制する機能を付与することが可能となる。このような光触媒塗装体を得る場合、ベースとなる基材と光触媒の間に、接着および/または光触媒による基材表面の劣化抑制を目的とした中間層を設けることが行われる。この中間層には、光触媒によるカビや藻の繁殖を抑制する機能を補完するため、特に日陰など光触媒機能が発現しにくい部位においても、カビや藻の繁殖を抑制する性能を確保する目的で、有機防カビ剤を添加する例が見られる。このような光触媒を塗装した光触媒塗装体を得る技術としては、以下のものが知られている。
ベースとなる基材と光触媒の間に、接着および/または光触媒による基材表面の劣化抑制を目的としたシリコーン変性樹脂などの中間層を設ける技術が知られている。(例えば、特許文献1(国際公開第97/00134号パンフレット)参照)。
またこのような中間層に、光触媒のカビや藻の繁殖を抑制する機能を補完するため、有機防カビ剤を添加する技術が知られている(特許文献2(特開2001−232215号公報)参照))。
光触媒層に金属銀および金属銅またはそれらのイオンを添加し消臭、抗菌、防カビ機能を付与する技術が知られている(特許文献3(特許第3559892号公報)参照)。
光触媒層に銀、銅、亜鉛、白金などを添加し光触媒活性を高める技術が知られている(特許文献4(特開平11−169726号公報)参照)、(特許文献5(国際公開第00/06300号パンフレット)参照)。
また当該塗装体の耐久性を高める目的で、光触媒層に加水分解性シリコーン等のバインダー成分を添加する技術が知られている。(特許文献3(特開2000−212510号公報)参照),(特許文献4(特開2002−137322号公報)参照)。
国際公開第97/00134号パンフレット 特開2001−232215号公報 特許第3559892号公報 特開平11−169726号公報 特開2000−212510号公報 特開2002−137322号公報
本発明者らは、今般、光触媒粒子と無機酸化物粒子とを特定の質量比率で含み、さらに銅元素および銀元素とを特定の質量比率で含み、なおかつ加水分解性シリコーンを含まないか又は極力少量に抑えた特定の組成の光触媒層と、有機防カビ剤を含む中間層とを構成することにより、中間層中の有機防カビ剤の分解を抑制し、かつ高度の耐候性、親水性、有害ガス分解性、カビや藻の繁殖抑制および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体が得られるとの知見を得た。
したがって、本発明は、防藻性、防カビ性、有害ガス分解性、親水性など光触媒本来の機能と、塗膜の高度な耐候性および塗膜の強度を両立させるとともに、防藻、防カビ性能を補完する有機防カビ剤の溶出も妨げない、光触媒を有する複合材およびそのための光触媒コーティング液を提供することにある。
すなわち、本発明による光触媒塗装体は、基材と、基材上に設けられる有機防カビ剤を含む中間層と光触媒層とを備えた光触媒塗装体であって、前記光触媒層が、
1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、
85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物と
を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含み、さらに銅元素および銀元素を含んでなるものである。
また、本発明による光触媒コーティング液は、上記光触媒塗装体の製造に用いられる光触媒コーティング液であって、溶媒中に、
1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、
85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンと
を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含み、さらに銅元素および銀元素を含んでなるものである。
光触媒塗装体
本発明による光触媒塗装体は、前記基材上に設けられた、前記中間層上に設けられる光触媒層とを備えてなる。光触媒層は、1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、任意成分として、シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物と含み、さらに銅元素および銀元素とを含んでなる。
すなわち、本発明による光触媒層は、光触媒粒子の配合割合が無機酸化物粒子よりもかなり少ないことで、光触媒粒子の中間層との直接的な接触を最小限に抑えることができ、それにより中間層を浸食しにくくなるものと考えられる。また、光触媒自体による紫外線吸収によって中間層および基材に到達する紫外線量を低減して紫外線による中間層および基材の損傷も低減できると考えられる。
銅元素および銀元素は、金属および/または金属化合物として存在する。銅元素に対する銀元素の割合は、各々AgO、およびCuOに換算して、AgO/CuOとして質量比で0/100<[AgO/CuO]≦60/40が好ましく、より好ましくは10/90以上60/40以下であり、さらに好ましくは10/90以上55/45以下である。また、銅元素および銀元素は、AgOおよびCuOに換算した合計量が光触媒粒子に対して0.5〜5質量%添加されたものが好ましい。銅元素に対する銀元素の割合がこのような範囲であると、銅元素や銀元素をそれぞれ単独で添加した光触媒層に比べて、紫外線などの光触媒を励起可能な光の照射下で、抗カビ性や防藻性が極めて良好な光触媒層を得ることができる。
光触媒と銅化合物と銀化合物が共存した状況で適当量の紫外線が照射された場合、抗カビ性に直接作用するのは光触媒と銅化合物であると考えられる。銀化合物は光触媒によって発生した電子によって還元され、電荷分離効率の向上に寄与すると考えられる。したがって、光触媒層中のAgO/CuO比率は、比率が小さすぎる場合、銀化合物の共存による特異的な効果も小さくなり、逆に大きすぎる場合は、光触媒層中の銅化合物の相対的な濃度が小さくなり、抗カビ性が小さくなること、さらには、銀による着色をよく抑える観点から決定されて良い。
同時に、この構成により、有害ガス分解性、カビや藻の繁殖抑制および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体を得ることが可能となる。これらの幾つもの優れた効果が同時に実現される理由は定かではないが、以下のようなものではないかと考えられる。ただし、以下の説明はあくまで仮説にすぎず、本発明は何ら以下の仮説によって限定されるものではない。まず、光触媒層は、光触媒粒子および無機酸化物粒子の二種類の粒子から基本的に構成されるため、粒子間の隙間が豊富に存在する。光触媒層のバインダーとして広く用いられる加水分解性シリコーンを多量に使用した場合にはそのような粒子間の隙間を緻密に埋めてしまうため、ガスの拡散を妨げるものと考えられる。しかし、本発明の光触媒層は加水分解性シリコーンを含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して10質量部未満としているため、粒子間の隙間を十分に確保することができ、そのような隙間によってNOxやSOx等の有害ガスが光触媒層中に拡散しやすい構造が実現され、その結果、有害ガスが光触媒粒子と効率良く接触して光触媒活性により分解されるのではないかと考えられる。さらに光触媒粒子を非常に少なくしても、無機酸化物粒子と共存させることで、実用上十分な光触媒活性と膜強度、耐候性とが両立できることを見出した。
上記したような種々の現象が同時に起こることで、中間層中の有機防カビ剤の分解を抑制し、かつ防藻、防カビ性能を補完する有機防カビ剤の溶出も妨げることなく、耐候性、親水性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体が実現されるものと考えられる。また、本発明の光触媒層には銅元素および銀元素が共存することから、紫外線が当たっている場合には抗カビ性、防カビ性が極めて良好になる。したがって、本発明による光触媒層は、特に低緯度の熱帯、亜熱帯地方などの紫外線量が多く、かつ高温・多湿の気象条件下においても適用可能である。
基材
本発明に用いる基材は、その上に中間層が形成可能な材料であれば無機材料、有機材料を問わず種々の材料であってよく、その形状も限定されない。材料の観点からみた基材の好ましい例としては、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、木、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に少なくとも一層の被膜を有するものが挙げられる。用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、建物外装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレ−ルの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、台及び上記物品表面に貼着させるためのフィルム、シート、シール等といった外装材全般が挙げられる。
中間層およびそのための中間層コーティング液
中間層に用いられる樹脂は、有機防カビ剤の相溶性が良好で、基材との接着性、光触媒との接着性を有し、光触媒による中間層表面の劣化を抑制できるものであれば特に限定されず、樹脂中にポリシロキサンを含むシリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性ポリエステル等のシリコーン変性樹脂が好適である。外装用建材に適用する場合には、シリコーン変性アクリル樹脂が耐候性の点からより好適である。シリコーン変性アクリル樹脂において、カルボキシル基を有するシリコーン変性アクリル樹脂とエポキシ基を有するシリコーン樹脂の二液を混合して使用することが、塗膜の強度を向上させる点からさらに好適である。
シリコーン変性樹脂は、ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して0.2質量%以上16.5質量%未満が好ましく、より好ましくは6.5質量%以上16.5質量%未満である。シリコーン変性樹脂に含有されるケイ素原子含有量が0.2質量%以上とすることで、中間層の耐候性が向上し、光触媒による浸食を抑えることができ、好ましい。またシリコーン変性樹脂に含有されるケイ素原子含有量が16.5質量%未満とすることで、耐候性と可撓性を確保でき、中間層にクラックが発生するのを防止することができ、好ましい。
前記シリコーン変性樹脂中のケイ素原子含有量は、X線光電子分光分析装置(XPS)による化学分析によって測定することができる。測定機器および条件は当業者によって適宜選択できる。
中間層には、有機防カビ剤が添加される。本発明においては、中間層と相溶性が良好であればどのような有機防カビ剤でも使用することができる。例として、有機窒素硫黄系化合物、ピリチオン系化合物、有機ヨウ素系化合物、トリアジン系化合物、イソチアゾリン系化合物、イミダゾール系化合物、ピリジン系化合物、ニトリル系化合物、チオカーバメート系化合物、チアゾール系化合物、有機よう素化合物、ジスルフィド系化合物が挙げられ、単独もしくは混合物として用いられる。防カビ剤は一般に藻を防ぐ効果も合わせ持つものが多いことから、防カビ剤を添加することによって、カビと藻の両方を抑制することも期待できる。
また防藻効果と防カビ効果を兼ねた有機防藻防カビ剤を中間層に添加しても同様な効果が得られる。
有機防カビ剤の添加重量部は、有機防カビ剤メーカーが定める最適量あるいは、模擬的な防カビ試験を実施し、適宜決めてよい。
中間層には、その他に有機溶剤、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の塗料用添加剤、塗料に通常含まれるその他成分を含有することができる。また、艶消し剤としてシリカ微粒子を含んでもよい。
上記着色顔料としては特に限定されず、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の無機系顔料、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アゾ系、アンスラキノン系、キノフタロン系、アンスラピリジニン系、キナクリドン系、トルイジン系、ピラスロン系、ペリレン系等の有機系顔料を用いることができる。
本発明の中間層コーティング液は、前記したシリコーン変性樹脂、有機防カビ剤を溶媒中に分散させることにより得ることができる。溶媒としては、上記構成成分を適切に分散可能なあらゆる溶媒が使用可能であり、水および/または有機溶媒であってよい。また、本発明の中間層塗装用液剤の固形分濃度は特に限定されないが、10〜20質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、中間層コーティング液中の構成成分の分析は、樹脂成分に関しては、赤外分光分析で、有機防カビ剤成分については希釈後あるいは硬化させた後に、適切な溶媒で抽出し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて分析、スペクトルを解析することによって評価することができる。
中間層製造方法
本発明の中間層塗装体は、本発明の中間層コーティング液を、前記基材上に塗布することにより簡単に製造することができる。中間層の塗装方法は、前記液剤を刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷、電着、蒸着等、一般に広く行われている方法を利用できる。コーティング液の基材への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよい。
中間層の乾燥膜厚は特に限定されるものでは無いが、好ましくは1μm〜50μm、より好ましくは1μm〜10μmである。この範囲とすることにより、光触媒による中間層および基材の劣化を抑制でき、中間層の種類によっては、乾燥後に微細なクラックが発生するのを防ぐことができるので、好ましい。
光触媒層およびそのための光触媒コーティング液
本発明の光触媒層は、1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、銅元素、銀元素と、シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物とを、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなる。そして、この光触媒層は光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンが上記質量比率で溶媒中に分散されてなる光触媒コーティング液を基材上に塗布することによって形成されることができる。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒層は0.5μm以上3.0μm以下の膜厚を有するのが好ましく、より好ましくは1.0μm以上2.0μm以下である。このような範囲内であると、光触媒層と中間層の界面に到達する紫外線が充分に減衰されるので耐候性が向上する。また、無機酸化物粒子よりも含有比率が低い光触媒粒子を膜厚方向に増加させることができるので、有害ガス分解性も向上する。さらには、透明性、膜強度においても優れた特性が得られる。
本発明に用いる光触媒粒子は、光触媒活性を有する粒子であれば特に限定されず、あらゆる種類の光触媒の粒子が使用可能である。光触媒粒子の例としては、酸化チタン(TiO)、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feのような金属酸化物の粒子が挙げられ、好ましくは酸化チタン粒子、より好ましくはアナターゼ型酸化チタン粒子である。酸化チタンは、無害で、化学的にも安定で、かつ、安価に入手可能である。また、酸化チタンはバンドギャップエネルギーが高く、従って、光励起には紫外線を必要とし、光励起の過程で可視光を吸収しないので、補色成分による発色が起こらない。酸化チタンは、粉末状、ゾル状、溶液状など様々な形態で入手可能であるが、光触媒活性を示すものであれば、いずれの形態でも使用可能である。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子が10nm以上100nm以下の平均粒径を有するのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)が効率良く発揮される。
本発明の光触媒層およびコーティング液における光触媒粒子の含有量は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、1質量部を超え5質量部未満、好ましくは2質量部以上5質量部未満であり、より好ましくは2質量部以上4.5質量部以下である。このように光触媒粒子の配合割合を少なくすることで、光触媒粒子の中間層との直接的な接触を最小限に抑えることができ、それにより中間層に対する浸食を防止することができ、耐候性も向上すると考えられる。それにもかかわらず、有害ガス分解性といった光触媒活性に起因する機能も十分に発揮させることができる。また、2質量部以上とすることで高い親水性も十分付与できると考えられる。
本発明の光触媒層およびコーティング液は、高い光触媒能を発現するために、銅元素および銀元素を含んでなる。これらは、金属および/またはその金属からなる金属化合物を光触媒層および光触媒コーティング液に添加することができる。この添加は、前記金属または金属化合物を光触媒コーティング液に混合する方法、光触媒粒子または光触媒層に金属化合物を担持する方法のいずれの方法によっても行うことができる。
本発明に用いる無機酸化物粒子は、光触媒粒子と共に層を形成可能な無機酸化物の粒子であれば特に限定されず、あらゆる種類の無機酸化物の粒子が使用可能である。そのような無機酸化物粒子の例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、無定型チタニア、ハフニア等の単一酸化物の粒子;およびチタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物の粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子である。これら無機酸化物粒子は、水を分散媒とした水性コロイド;またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、もしくはエチレングリコールなどの親水性溶媒にコロイド状に分散させたオルガノゾルの形態であるのが好ましく、特に好ましくはコロイダルシリカである。
本発明の好ましい態様によれば、無機酸化物粒子の平均粒径は、5nmを超え20nm以下が好ましく、10nm以上20nm以下が、より好ましい。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)が効率良く発揮され、とりわけ透明で密着性が良好な光触媒層を得ることができるだけではなく、摺動磨耗に対して強固な膜を得ることができる。
本発明の光触媒層およびコーティング液における無機酸化物粒子の含有量は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、85質量部を超え99質量部未満、好ましくは85質量部を超え98質量部以下、より好ましくは85.5質量部を超え98質量部以下である。
本発明の光触媒層は加水分解性シリコーンの乾燥物を実質的に含まないのが好ましく、より好ましくは全く含まない。加水分解性シリコーンとは、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンおよび/またはその部分加水分解縮合物の総称である。しかしながら、本発明の有害ガス分解性を確保できる程度であれば加水分解性シリコーンを任意成分として含有することは許容される。したがって、加水分解性シリコーンの含有量は、シリカ換算で、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満であり、好ましくは5質量部以下、最も好ましくは0質量部である。加水分解性シリコーンとしては、4官能シリコーン化合物がよく使用され、例えば、エチルシリケート40(オリゴマー、Rがエチル基)、エチルシリケート48(オリゴマー、Rがエチル基)メチルシリケート51(オリゴマー、Rがメチル基)(いずれもコルコート社製)の形で市販されている。これらの加水分解性シリコーンは、光触媒コーティング液を塗布後、乾燥に伴い縮合が進んで硬化し、乾燥物となる。
光触媒コーティング液には任意成分として界面活性剤を含んでよい。本発明に用いる界面活性剤は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満光触媒層に含有されていてもよく、好ましくは0質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは0以上6質量部以下である。界面活性剤の効果の1つとして基材へのレベリング性があり、コーティング液と基材との組合せによって界面活性剤の量を先述の範囲内で適宜決めれば良く、その際の下限値は0.1質量部とされてよい。この界面活性剤は光触媒コーティング液の濡れ性を改善するために有効な成分であるが、塗布後に形成される光触媒層にあってはもはや本発明の光触媒塗装体の効果には寄与しない不可避不純物に相当する。したがって、光触媒コーティング液に要求される濡れ性に応じて、上記含有量範囲内において使用されてよく、濡れ性を問題にしないのであれば界面活性剤は実質的にあるいは一切含まなくてよい。使用すべき界面活性剤は、光触媒や無機酸化物粒子の分散安定性、中間層上に塗布した際の濡れ性を勘案し適宜選択されることができるが、非イオン性界面活性剤が好ましく、より好ましくは、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコール非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコン系非イオン性界面活性剤が挙げられる。
本発明の光触媒コーティング液は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および所望により加水分解性シリコーンおよび界面活性剤を上記特定の配合比率で溶媒中に分散させることにより得ることができる。溶媒としては、上記構成成分を適切に分散可能なあらゆる溶媒が使用可能であり、水および/または有機溶媒であってよい。また、本発明の光触媒コーティング液の固形分濃度は特に限定されないが、1〜10質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、光触媒コーティング組成物中の構成成分の分析は、コーティング液を限外ろ過によって粒子成分と濾液に分離し、それぞれを赤外分光分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、蛍光X線分光分析などで分析し、スペクトルを解析することによって評価することができる。
光触媒層製造方法
本発明の光触媒塗装体は、本発明の光触媒コーティング液を、中間層を有する基材上に塗布することにより簡単に製造することができる。光触媒層の塗装方法は、前記液剤を刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷等、一般に広く行われている方法を利用できる。コーティング液の基材への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよい。
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の例において中間層コーティング液は、以下に示したいずれかのシリコーン変性アクリル樹脂材と水と造膜助剤を適宜混合して作製した。詳細を表1に示した。
・ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して10質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
・ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して0.2質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
・ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して16.5質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
・市販の窒素硫黄系化合物とトリアジン系化合物からなる有機防カビ剤
Figure 2009262140
以下の例において光触媒層コーティング液は、以下に示した光触媒粒子と、いずれかの無機酸化物と水を適宜混合して作製した。詳細を表2に示した。
光触媒粒子
・Ag・Cu含有チタニア水分散体:銀化合物および銅化合物を、AgOおよびCuOに換算した合計量がチタニアに対して下記質量%で添加された光触媒性チタニア水分散体(平均粒径:48nm、塩基性、)
・チタニア水分散体(平均粒径:42nm、塩基性)
無機酸化物粒子
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:14nm、塩基性)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:26nm、塩基性)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:5nm、塩基性)
加水分解性シリコーン
・テトラメトキシシランの重縮合物(SiO換算濃度:51質量%、溶媒:アルコール・水)
界面活性剤
・ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
Figure 2009262140
例1〜3:耐候性の評価(屋外暴露)
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例1〜3のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2のT−1〜T−3に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例1〜3のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、宮古島にてJIS K 5600−7−6に規定される暴露架台を用い南面に向けて水平より20°の角度で屋外暴露を行った。三ヶ月毎に外観を目視で確認した。
得られた結果は表3に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんど変化しなかったことを、NGはわずかに白華が生じたことを示す。表3に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を5質量部未満とすることで、宮古島において有機基材上に光触媒層を塗装しても充分な耐候性を有することが分かった。
Figure 2009262140
例4〜6:紫外線暴露親水性評価
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例4〜6のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2のT−1、T−5およびT−6に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例4〜6のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた光触媒塗装体について、以下の通り親水性の評価を行った。光触媒塗装体を暗所にて1日間養生した後に、1mW/cmに調整したBLB光下に光触媒塗装面を上にして7日間放置後、光触媒塗装面の接触角を接触角計(協和界面科学製 CA−X150型)にて測定した。なお、接触角の測定は親水性の代用とした。
得られた結果は表4に示される通りであった。ここで、紫外線曝露親水性の評価基準は以下の通りとした。
<親水性>
A:接触角が10°未満
B:接触角が10°以上、20°未満
C:接触角が20°以上
表4に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を2質量部以上とすることによって、高い親水性を確保することが分かった。
Figure 2009262140
例7、8:耐摺動磨耗性評価
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例7および8のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2のT−1およびT−7に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例7および8のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた光触媒塗装体について、以下の通り耐洗浄性試験を行った。試験方法はJIS A6909に準じて行った。光触媒塗装体を洗浄試験機(東洋精機製作所製 No.458 ウオッシャビリティテスタ)の試験台に光触媒塗装面を上向きにして水平に固定した。乾燥したブラシの質量が450gの豚毛ブラシの毛先を0.5%溶液の石鹸水に浸した後に光触媒塗装面に載せ、500往復させ、その後取り外して水で洗浄し乾燥させた。
十分乾燥させた光触媒塗装体に3mW/cmに調整したBLB光を24時間照射した後、光触媒塗装面の接触角を接触角計(協和界面科学製 CA−X150型)にて測定した。なお、接触角の測定は親水性の代用とした。
得られた結果は表5に示される通りであった。ここで、耐摺動磨耗性の評価基準は以下の通りとした。
<耐摺動磨耗性>
A:接触角が10°未満
B:接触角が10°以上
表5に示されるように、例7の光触媒塗装体は摺動に対して、より強固な膜を形成することが分かった。
Figure 2009262140
例9、10:ヘイズの測定
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用いた。一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2のT−1およびT−8に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液を先述の基材上に1000rpmで10秒間スピンコートし、120℃で乾燥し光触媒層を得た。こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体のヘイズをヘイズ計(Gardner製 haze−gard plus)を用いて測定した。
得られた結果は表6に示される通りであった。表6に示されるように、例9の光触媒塗装体はヘイズ値が1%未満に抑えられ、透明性が確保でき、好ましいことが分かった。
Figure 2009262140
例11〜14:有害ガス分解性の評価
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例11〜14のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2のT−1、T−2およびT−5に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、表7に示される値であった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通りガス分解性試験を行った。光触媒塗装体に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]
得られた結果は表7に示される通りであった。表7に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を5質量部未満としても充分にNOx分解活性を得られることが分かった。
Figure 2009262140
例15〜17:加水分解性シリコーンの影響(参考)
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例15〜17のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と加水分解性シリコーンとしてのテトラメトキシシランの重縮合物と、界面活性剤とを表2のT−9〜T−11に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、例15の光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例15〜17のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通りガス分解性試験を行った。光触媒塗装体に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]
得られた結果は表8に示される通りであった。ここで、加水分解性シリコーンを全く含まない例15を100として、それに対して50以上をG、50未満をNGを表す。表8に示されるように、光触媒層を光触媒粒子と無機酸化物から構成し、実質的に加水分解性シリコーンを含まないことにより、良好なNOx分解性を示した。一方、加水分解性シリコーンが10質量部入ったものはNOx分解性が喪失していることが分かった。
Figure 2009262140
例18、19:防藻性の評価
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−1およびM−2に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1およびM−2液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例18および19のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2のT−9に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例18および19のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×50mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り防藻性試験を行った。藻の代用としてクロレラ(NIES−642)を用いた。試験中のクロレラの栄養源として無機塩培地を使用した。シャーレ内に、光触媒塗装体をおき一定量のクロレラと無機塩培地を含む水を投入し、蓋をして温度25℃±2℃の条件下で、照度4000lxの蛍光灯下で培養した。なおシャーレと蛍光灯の間に透明なアクリル板を挟み、紫外線を完全に遮断した。クロレラの繁殖は目視にて比較、判定した。
得られた結果は表9に示される通りであった。ここで、表中の○は目視で藻の発生が認められなかったもの、×は目視で藻の発生が認められたものを表す。
Figure 2009262140
例20〜23:直線透過率の測定
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用意した。一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2のT−1およびT−5に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。したがって、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記フロート板ガラス上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。操作型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、表10に示される値であった。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り直線(550nm)透過率の測定を紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所製 UV−3150)を用いて行った。
得られた結果は表10に示される通りであった。ここで、直線透過率の評価基準は以下の通りとした。
<直線透過率>
A:直線(550nm)透過率が95%以上
B:直線(550nm)透過率が90%以上95%未満
表10の光触媒塗装体は高い透明性を示した。
Figure 2009262140
例24〜26:塗膜の耐候性評価−1
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−3に記載の中間層コーティング液に着色顔料を混合したものをスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−3液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例24〜26のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表2のT−1、T−4およびT−5に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例24〜26のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をJIS B7753に規定されるサンシャインウエザオメーター(スガ試験機製、S−300C)に投入した。300hr経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて、促進試験前後で色差を測定し、そのΔb値を比較することで変色の度合いを評価した。
得られた結果は表11に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんど変色しなかったことを、NGはΔb値がプラス側(黄変側)に推移したことを表す。表11に示されるように、例24、25の光触媒塗装体は、ケイ素原子含有量が小さい中間層に光触媒層を塗装しても充分な耐候性を有することが分かった。
Figure 2009262140

例27、28:塗膜の耐候性評価−2
有機防カビ剤を含む中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として亜鉛メッキ鋼板に汎用のエポキシ樹脂系の下塗り剤を塗装し、乾燥したものを用意した。表1のM−1およびM−4に記載の中間層コーティング液をそれぞれスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−1およびM−4液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、M−1を用いた例27、M−4を用いた例28のいずれにおいても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2のT−1に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例27、28のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をメタリングウェザオメーター(スガ試験機製 M6T)に投入した。150hr経過後に試験片の外観を確認した。
ケイ素原子含有量が10質量%のアクリル変性シリコーン樹脂を用いた例27では、クラックが入らず耐候性が良好であった。一方ケイ素原子含有量が16.5%のアクリル変性シリコーン樹脂を用いた例28では、わずかではあるが、部分的にクラックの発生がみられた。
例29〜34:銀化合物および銅化合物による抗カビ性の評価−1
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表1のM−2に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−2液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例29〜34のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表2のT−1、T−9およびT−12〜T−15に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。なお、例29〜34においては、銀化合物と銅化合物の配合比を調整したAg・Cu含有チタニア水分散体を使用し(ただし、例32は全て銅化合物、例33は全て銀化合物)、例34においては銀化合物および銅化合物を含まないチタニア水分散体を使用した。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、例29〜34のいずれの例においても約0.5μmであった。これら光触媒塗装体の前処理として1mW/cmのBLB光を24時間照射したのち、下記した抗カビ性試験を行った。
こうして得られた50×50mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り抗カビ性の評価を行った。試験菌としてポテトデキストロース寒天培地で、25℃で7〜14日前培養したAspergillus niger(NBRC6341)を用い、これを0.005重量%のスルホコハク酸ジオクチルナトリウムを含む生理食塩水中に分散させ胞子懸濁液を作成した。
上記方法にて得られた光触媒塗装体に、前記胞子懸濁液を、試験片1枚あたり4〜6×105個/mLになるよう滴下し、抗カビ試験片とした。この試験片に、JIS R1702(2006)に記載のフィルム密着法に準じ、密着フィルムをかぶせ、保湿可能なシャーレ内に設置し、保湿ガラスを載せて試験に用いた。
前記試験片をシャーレごとBLB光照射下に設置し、光触媒塗装体面で0.4mW/cmになるようBLB光を24時間照射した。
24時間照射後、胞子懸濁液を回収し、ポテトデキストロース寒天培地で培養し、生残菌数を計測した。抗カビ性は、例29〜34によって得られた生残菌数の対数値と光触媒未加工の試験体の生残菌数の対数値の差を求めることによって得た。
試験結果を表12に示した。ここで、表中の抗カビ活性値とは例29〜34によって得られた生残菌数の対数値と光触媒未加工の試験体の生残菌数の対数値との差の値であり、数値が大きいほど抗カビ性が高いことを示している。抗カビ活性値が、Ag・Cu含有チタニア水分散体を用いて作製した例において、銀化合物のみや銅化合物のみを添加した例に比べて高い値となっており、銀化合物と銅化合物とを混合することで高い抗カビ性能を得ることが確認できた。
Figure 2009262140
例35、36:銀化合物および銅化合物による抗カビ性の評価−2
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表1のM−2に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−2液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例35および例36のいずれにおいても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表2のT−16およびT−17に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液を、例29〜34と同様の方法で製膜し、例35および例36の光触媒体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例35および例36のいずれの例においても約1μmであった。この光触媒体について、例29〜34と同様の方法にて抗カビ性の評価を行った。
試験結果を表13に示した。また例30の抗カビ活性値も表13に示した。酸化チタン粒子に対して[AgO+CuO]量が0.5質量%、3質量%および5質量%のいずれにおいても、高い抗カビ性能を得ることが確認できた。
Figure 2009262140
例37、38:銀化合物および銅化合物による抗カビ性の評価−3
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表1のM−1およびM−2に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−1またはM−2液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例37および例38のいずれにおいても約10μmであった。
一方、光触媒としてのAg・Cu含有チタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表2のT−18に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液を、例29〜34と同様の方法で製膜し、例37および例38の光触媒体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例37および例38のいずれにおいても約1μmであった。この光触媒体について、例29〜34と同様の方法にて抗カビ性の評価を行った。
試験結果を表14に示した。中間層に有機防カビ剤が含まれている例38においては、防カビ剤による効果が相乗され、抗カビ活性値がさらに大きくなった。
Figure 2009262140

Claims (11)

  1. 基材と、基材上に設けられる有機防カビ剤を含む中間層と、光触媒層とを備えた光触媒塗装体であって、前記光触媒層が、
    1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、
    85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
    シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物と
    を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含み、さらに銅元素および銀元素を含んでなる、光触媒塗装体。
  2. 前記光触媒粒子が酸化チタン粒子である、請求項1に記載の光触媒塗装体。
  3. 前記無機酸化物粒子が、シリカ粒子である、請求項1または2に記載の光触媒塗装体。
  4. 前記無機酸化物が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nmを超え20nm以下の個数平均粒径を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  5. 前記中間層がシリコーン変性樹脂を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  6. 外装材として用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光触媒塗装体の製造に用いられる光触媒コーティング液であって、溶媒中に、
    1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、
    85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
    シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンと
    を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含み、さらに銅元素および銀元素を含んでなる、光触媒コーティング液。
  8. 前記無機酸化物が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nmを超え20nm以下の個数平均粒径を有する、請求項7に記載の光触媒コーティング液。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載された光触媒塗装体の製造に用いられる中間層を形成するためのコーティング液であって、溶媒と、シリコーン変性樹脂と、有機防カビ剤とを含んでなる、コーティング液。
  10. 請求項1〜6のいずれか一項に記載された光触媒塗装体の製造に用いられるコーティング液の組み合わせであって、請求項7または8に記載の光触媒コーティング液と、請求項9に記載の中間層を形成するためのコーティング液との組み合わせ。
  11. 外装材用のコーティングのための、請求項10に記載の光触媒コーティング液の組み合わせ。
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