JP2009259672A - PtRu系触媒の製造方法、該製造方法により製造させた触媒、該触媒を用いた膜電極接合体および燃料電池 - Google Patents

PtRu系触媒の製造方法、該製造方法により製造させた触媒、該触媒を用いた膜電極接合体および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】安価な前駆体から、高活性且つ高耐久性を有するPtRu系触媒を製造する。
【解決手段】燃料電池用の電極触媒として用いられるPtRu系触媒の製造方法であって、Ptの塩又は錯体を溶解した水溶液に少なくとも1種類の錯化剤を添加するステップと、前記水溶液に溶解したPtイオンと前記水溶液に溶解されるRuイオンとの還元電位差が0.3V以下となるような所定時間、前記溶液を撹拌するステップと、前記水溶液にRuの塩又は錯体を溶解するステップと、前記水溶液に担体を分散させるステップと、前記水溶液に少なくとも1種類の還元剤を混合させるステップと、前記水溶液を60℃以上で撹拌するステップと、を備えた。
【選択図】図1

Description

本発明は、PtRu系触媒の製造方法、該製造方法により製造させた触媒、該触媒を用いた膜電極接合体および燃料電池に関する。
従来、電気エネルギーの大部分は、火力発電、水力発電又は原子力発電などにより供給されてきた。しかし、火力発電は石油や石炭などの化石燃料を燃焼させるため大規模な環境汚染をもたらす。また、石油などの資源枯渇が問題視されるようになってきた。また、水力発電は大規模なダム建設を必要とする。そのため、ダム建設による自然破壊が懸念される。また、ダム建設の建設適地も限られている。原子力発電は事故の際の放射能汚染が致命的である。また、寿命を迎えた原子炉の廃棄問題も生じる。そのため、原子力発電施設の建設は、世界的に抑制される方向となっている。
大規模な施設を必要とせず、環境汚染も起こさない発電方法として風力発電や太陽光発電が世界各国で利用されるようになっている。また、我が国でも一部の地域で実際に風力発電や太陽光発電が実用化されている。しかし、風力発電は風が吹かなければ発電できない。また、太陽光発電は日光照射がなければ発電できない。そのため、風力発電や太陽光発電は、自然現象に左右され、安定した電力供給ができないという欠点がある。
そこで、近年、水素エネルギーから電気エネルギーを取り出す発電装置として、水素燃料電池の開発研究が活発になっている。水素燃料電池として、固体高分子型燃料電池(PEFC, Polymer Electrolyte Fuel Cell)が知られている。水素は化石燃料である炭化水素を分解することにより得られ、物質量あたりに含まれる化学エネルギー量が大きい。また、水素は、エネルギー源として利用するときに有害物質や地球温暖化ガスを発生しないという利点を有する。しかし、水素は引火性が非常に強く、その取り扱いに厳重な注意を要する。このため、水素ガス供給スタンドの建設はほとんど進まず、水素燃料電池は未だ実用段階に達していない。
そこで、水素ガスの代わりにメタノールを使用する燃料電池の研究も活発に行われている。液体燃料であるメタノールを使用する燃料電池を直接メタノール型燃料電池(DMFC, Direct Methanol Fuel Cell)と言う。メタノールは燃料として取り扱い易く、安価である。そのため、直接メタノール型燃料電池は、家庭用や産業用の比較的小出力規模の電源として期待されている。メタノール−酸素燃料電池の理論出力電圧は、水素を燃料するものとほぼ同じ1.2V(25℃)であり、原理的には、同様の特性を期待できる。
直接メタノール型燃料電池は、2つの電極触媒層がプロトン導電性有機膜の両側を挟んだ構造を有する。また、2つの電極触媒層とは、燃料極触媒層(以下、燃料極と称する。)と酸素極触媒層(以下、酸素極と称する。)である。各電極触媒層は、白金(Pt)系の触媒をカーボン(C)に担持させた触媒層を有している。そして、電極触媒層間に挟持されるプロトン導電性有機膜はプロトン導電性を有し、電解質層として機能する。
以下、直接メタノール型燃料電池における発電メカニズムについて概略的に説明する。
陽極燃料であるメタノールと水の混合溶液或いはこれを気化したガスが燃料極(メタノール極、陽極ともいう)へ供給されると、白金系触媒により式(1)の反応が起こる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- ・・・・・・(1)
式(1)の反応により得られたプロトンは、燃料極と酸素極の間に挟持されたプロトン導電性有機膜を通じて酸素極側へと流れる。また、式(1)の反応により得られた電子は外部回路を通じて酸素極へ運ばれる。そして、酸素極では式(2)の反応によって水が生成される。
O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O ・・・・・・(2)
従って、燃料電池全体としては式(3)に示されるような反応が進行し、この時に外部回路を流れる電子を電子機器の電源に使用する。
CH3OH + 3/2O2 → CO2 + 2H2O ・・・・・・(3)
しかし、燃料極では式(4)で示すようにメタノール酸化反応の中間物である一酸化炭素(CO)が白金触媒表面に化学吸着し、Pt触媒の触媒機能を失活させる問題がある。この問題はPt触媒のCO被毒と呼ばれている。
Pt+CH3OH → Pt-CO +4H++ 4e- ・・・・・・(4)
この問題を解決するため、現在では燃料極の触媒としては白金-ルテニウム(PtRu)からなる触媒が一般的に使用されている。Ruは親水性が高く、式(5)に示されるように水と反応してRu−OHを生成する。生成したRu−OHは式(6)に従ってPt上に吸着したCOにアタックし、速やかにCOに酸化する。この反応機構をBi-functional mechanismと言う。
Ru + H2O → Ru-OH + H+ + e- ・・・・・・(5)
Pt-CO + Ru-OH → CO2 + H+ + e- + Pt + Ru ・・・・・・(6)
しかし、PtRu触媒の反応機構については未だ不明な点が多く、PtRu触媒を大量に使用しても、メタノールの酸化反応は遅く、高い出力得ることは困難である。また、Ptは極めて高価な貴金属であるため、最小限のPt使用量で最大限の電気出力を得ることが望まれる。
非特許文献1に示すように、我々は、非金属元素であるリン(P)をPtRu触媒に添加した。これはP添加によってPtRu触媒を微細化し、比表面積の増大によってメタノール酸化活性を高めるものである。
H. Daimon and Y. Kurobe, Size Reduction of PtRu Catalyst Particle Deposited on Carbon Support by Addition of Non-Metallic Elements, Catalysis Today, 111, 182 (2006).
しかしながら、Pt前駆体及びRu前駆体として使用したアセチルアセトナイト錯体は極めて高価な試薬であり、触媒コスト低減のためには、安価な前駆体(Pt前駆体、Ru前駆体)を使用した合成方法の開発が望まれる。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、安価な前駆体から、高活性且つ高耐久性を有するPtRu系触媒を製造することを目的とする。
本発明にかかるPtRu系触媒の製造方法は、燃料電池用の電極触媒として用いられるPtRu系触媒の製造方法であって、Ptの塩又は錯体を溶解した水溶液に少なくとも1種類の錯化剤を添加するステップと、前記水溶液に溶解したPtイオンと前記水溶液に溶解されるRuイオンとの還元電位差が0.3V以下となるような所定時間、前記溶液を撹拌するステップと、前記水溶液にRuの塩又は錯体を溶解するステップと、前記水溶液に担体を分散させるステップと、前記水溶液に少なくとも1種類の還元剤を混合させるステップと、前記水溶液を60℃以上で撹拌するステップと、を備える。
また、本発明にかかるPtRu系触媒の他の製造方法は、燃料電池用の電極触媒として用いられるPtRu系触媒の製造方法であって、Ptの塩又は錯体を溶解した水溶液に少なくとも1種類の錯化剤を添加するステップと、前記水溶液に溶解したPtイオンと前記水溶液に溶解されるRuイオンとの還元電位差が0.3V以下となるような所定温度で、前記溶液を撹拌するステップと、前記水溶液にRuの塩又は錯体を溶解するステップと、前記水溶液に担体を分散させるステップと、前記水溶液に少なくとも1種類の還元剤を混合させるステップと、前記水溶液を60℃以上で撹拌するステップと、を備える。
また、前記錯化剤の添加量が、合成系内に存在するPtの合計モル数に対して0.01〜10.0倍であることが好ましい。
また、前記還元電位差が0.3V以下となるような所定時間は、12時間以上である。
また、前記還元電位差が0.3V以下となるような所定温度は、40℃以上95℃以下である。
さらに、前記錯化剤は、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、ニトリロ三酢酸及びこれらの塩から少なくとも1種類選択されることが好ましい。
また、前記還元剤は、次亜リン酸又は次亜リン酸塩であることが好ましい。
本発明にかかる燃料電池用のPtRu系触媒は、上述のいずれかの製造方法により製造される。
本発明にかかる膜電極接合体は、陽極触媒層と、負極触媒層と、前記陽極触媒層と前記負極触媒層との間に間挿された固体高分子電解質膜とからなる膜電極接合体であって、前記陽極触媒層は上述の前記PtRu系触媒を含む。
本発明にかかる燃料電池は、少なくとも、陽極と、負極と、前記陽極と前記負極との間に間挿された固体高分子電解質膜を有する燃料電池であって、前記陽極は上述のPtRu系触媒を含む。
本発明によれば、安価な前駆体から、高活性且つ高耐久性を有するPtRu系触媒を製造することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
はじめに本実施形態にかかる触媒が用いられる燃料電池について説明する。図1に、燃料電池の概略的な構成を示す模式図を示す。なお、通常の燃料電池は、燃料セル100が積層されることによって構成される。
図1に示すように、セル100は、紙面に向かって左から右へ、セパレータ1、集電層2、陽極触媒層3、高分子電解質膜(固体高分子電解質膜、プロトン導電性有機膜)4、負極触媒層5、集電層6およびセパレータ7を有する。燃料極(陽極)は、セパレータ1、集電層2および陽極触媒層3から形成される。酸素極(負極)は、負極触媒層5、集電層6およびセパレータ7から形成される。
通常、陽極触媒層3、高分子電解質膜4および負極触媒層5は熱圧着され、積層体として一体化される。以下、この積層体を膜電極接合体と呼ぶ。
セパレータ1は、導電性の薄層(カーボンシート、金属膜等)であって、膜電極接合体の左面上に形成される。セパレータ1は、複数の孔8を有する。本実施形態では、メタノールと水の混合溶液を燃料として用いる。燃料は、セパレータ1の孔8を介して膜電極接合体に導入される。
集電層2は、導電性の薄層(カーボンペーパー、カーボン布等)であって、陽極触媒層3の左面上に形成される。集電層2は、所定の厚みを有し、陽極触媒層3を支持する。集電層2は、燃料の通過経路を形成する共に、陽極触媒層3で生成する電子の移動経路を形成する。
陽極触媒層3は、PtRuP触媒(PtRu系触媒)を担持したカーボン担体およびプロトン導電性高分子からなる薄層であって、高分子電解質膜4の左面上に形成される。
陽極触媒層3に含まれるカーボン担体はカーボンブラックで、カーボン担体は触媒で生成した電子を集電し、集電層2に電子を渡す。このカーボン担体に担持されたPtRuP触媒の表面では次の式(1)の反応が起こる。また、PtRuP触媒では、次の式(4)のPtの触媒活性の劣化が次の式(5)、(6)のBi-functional mechanismによって抑制される。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- ・・・・・・(1)
Pt+CH3OH → Pt-CO +4H++ 4e- ・・・・・・(4)
Ru + H2O → Ru-OH + H+ + e- ・・・・・・(5)
Pt-CO + Ru-OH → CO2 + H+ + e- + Pt + Ru ・・・・・・(6)
後述の説明から明らかなように、本実施形態にかかるPtRuP触媒ではPt原子とRu原子が十分に混合され、かつその粒子サイズが小さい。従って、本実施形態にかかるPtRuP触媒は既存のPtRu系触媒と比べて高活性で耐久性が高い。触媒の活性を高めることにより電池特性を向上させることができ、触媒の耐久性向上により、陽極触媒層3の寿命を長くすることができる。従って、膜電極接合体の寿命を長くすることができる。本実施形態にかかる触媒の製造方法については後述する。
高分子電解質膜4はフッ素樹脂系のプロトン交換膜である。高分子電解質膜4は水素イオン(プロトン)の透過性に優れている。上記の式(1)で生成した水素イオンは、陽極触媒層3から負極触媒層5に高分子電解質膜4を介して移動する。なお、高分子電解質膜4は陽極触媒層3で生成される電子を反対側へ透過させない。また、高分子電解質膜4は、上述の燃料を透過させない。
高分子電解質膜4としては、一般的にデュポン(E.I. DuPont de Namours and Company)社製のナフィオン(Nafion)(登録商標)膜が用いられる。ナフィオン膜はパーフルオロスルホン酸である。スルホン酸の水素原子はフッ素の高い電気陰性度により、プロトン(H)として容易にスルホン酸から解離する。従って、ナフィオン膜は高いプロトン導電性を有する。プロトン導電性が高いことは、同時にナフィオン膜が高い酸性を示すことを意味する。
負極触媒層5は、Pt触媒を担持したカーボン担体およびプロトン導電性高分子からなる薄膜であって、高分子電解質膜4の右面上に形成される。カーボン担体はいわゆるカーボンブラックである。
陽極触媒層3で生成した水素イオンは、高分子電解質膜4を介して負極触媒層5に供給される。陽極触媒層3で生成した電子は、集電層2、セパレータ1、負荷(図示省略)、セパレータ7、集電層6を介して負極触媒層5に供給される。負極触媒層5に含まれるPt触媒の表面では式(2)の反応が起こる。このように燃料側電極の陽極触媒層3で生成した電子は酸素側電極の負極触媒層5で消費される。
O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O ・・・・・・(2)
集電層6は、導電性の薄層(カーボンペーパー、カーボン布等)であって、負極触媒層5の右面上に形成される。集電層6は、所定の厚みを有し、負極触媒層5を支持する。セパレータ7から供給される電子は、集電層6を介して負極触媒層5に供給される。集電層6は、酸素の通過経路を形成すると共に、負極触媒層5で消費される電子の移動経路を形成する。
セパレータ7は、導電性の薄層(カーボンシート、金属膜等)であって、膜電極接合体の右面上に形成される。セパレータ7は、複数の孔9を有する。本実施形態では、酸素ガスを酸素源として用いる。酸素ガスはセパレータ7の孔9を介して膜電極接合体に導入される。また、セパレータ7は負荷を介してセパレータ1に接続される。従って、セパレータ7には負荷を介してセパレータ1にて生成された電子が供給される。
セル100は、全体として式(3)の酸化還元反応が起こり、セパレータ1とセパレータ7間には負荷が接続され、セル100はその電源として機能する。
CH3OH + 3/2O2 → CO2 + 2H2O ・・・・・・(3)
より具体的には、メタノール燃料はセパレータ1、集電層2を介して陽極触媒層3に導入される。陽極触媒層3に含まれるPtRuP触媒の表面では、上記した式(1)の反応が進行し、水素イオンと電子が生成する。水素イオンは高分子電解質膜4を介して陽極触媒層3から負極触媒層5に移動する。電子は集電層2およびセパレータ1を介して負荷(不図示)に供給される。
負極触媒層5には陽極触媒層3から高分子電解質膜4を介して水素イオンが供給される。また、負極触媒層5には陽極触媒層3で生成した電子が集電層2、セパレータ1、負荷(不図示)、セパレータ7および集電層6を介して供給される。負極触媒層5に含まれるPt触媒の表面では、上記した式(2)の反応が生じて水が生成される。このように、セル100は酸化還元反応から電気エネルギーを発生させる。
以下、上述の陽極触媒層3で使用するPtRuP触媒(PtRu系触媒)の製造方法について具体的に説明する。
PtRu系触媒は、上述したように、Pt触媒のCO被毒を抑制する。従来の水系におけるPtRu系触媒の合成は、Pt前駆体とRu前駆体を含む水溶液に還元剤性を有する物質を作用させ、水溶液中に存在するPtイオンとRuイオンを還元させて行われる。しかし、従来の水系の合手法では、Ptイオンの還元電位がRuイオンの還元電位よりも大きいため、PtRu系触媒を合成するとPtイオンがRuイオンよりも優先的に還元され、その結果、Ptコア/Ruシェル構造の触媒粒子が生成しやすい。
そして、Bi-functional mechanism(Ruの添加によりPt触媒の劣化を抑制する機構)を十分機能させるためには、触媒粒子表面でPtとRu原子が十分混合隣接した原子配列で配列する必要がある。しかし、前述したように、従来の水系合成法で得られ易いPtコア/Ruシェル構造では、触媒粒子表面でPtとRu原子が十分混在隣接した原子配置は実現されない。このため、Bi-functional mechanismが十分機能せず、PtRu系触媒の活性を十分高めることができない。
そこで、本実施形態にかかるPtRuP触媒の製造方法では、まず、Pt前駆体(Ptの塩又は錯体)を溶解した水溶液に少なくとも1種類の錯化剤を添加し、所定温度で所定時間撹拌する。これにより、当該水溶液に溶解しているPtイオンに添加した錯化剤を配位させる。具体的には、Pt前駆体を溶解した水溶液中では、Ptイオンに当該前駆体由来のイオンが配位している。そこで、当該水溶液に錯化剤を添加して、Ptイオンに配位している前駆体由来のイオンと錯化剤由来のイオン(配位子)とを置換させる。
なお、Pt前駆体及び錯化剤を溶解する水溶液の緩衝材として、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムなどを使用する。これらの緩衝材は単独で使用されてもよい。また、2種以上の緩衝材が併用されてもよい。
ここで、本実施形態に用いられる錯化剤は、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、ニトリロ三酢酸及びこれらの塩から少なくとも1種類選択される。また、2種類以上の錯化剤が併用されてもよい。これらの錯化剤は、2個以上の酸素原子を含有する多座配位子である。そのため、これらの錯化剤はキレート錯体を形成する。そして、これらの錯化剤は、複数の配位座を持っているため、配位しているイオンから離れにくい。従って、これらの錯化剤が配位することにより形成されたキレート錯体は安定である。そのため、これらの錯化剤に配位されたPtイオンの還元電位が見かけ上減少する。
同様に、Ruイオンもこれらの錯化剤により配位され、キレート錯体を形成する。しかし、これらの錯化剤に配位されることによるPtイオンの還元電位の減少量は、これらの錯化剤に配位されることによるRuイオンの還元電位の減少量に比べて大きい。そのため、これらの錯化剤によってPtイオン及びRuイオンが配位されることにより、Ptイオンの還元電位とRuイオンの還元電位との差(以下、還元電位差と称する。)が小さくなる。これにより、PtイオンとRuイオンとが同時に還元されて析出するようになる。そのため、Pt原子とRu原子とが十分混合隣接したPtRuP触媒を製造することができる。
錯化剤の濃度は、合成系に存在するPtの合計モル数に対して、0.01〜10.0倍であることが好ましい。錯化剤の濃度が合成系に存在するPtの合計モル数に対して0.01倍以下だと、安定なPtのキレート錯体及びRuのキレート錯体を形成することができない。また、錯化剤の濃度が合成系に存在するptの合計モル数に対して10.0倍を超えると、錯体の安定定数が高まりすぎてしまう。そのため、PtイオンとRuイオンの還元効率が低下してしまう。
さらに、本実施形態にかかるPtRuP触媒の製造方法では、Pt前駆体を溶解した水溶液に錯化剤を添加した後、所定温度で所定時間撹拌する。これにより、前駆体由来のイオンと錯化剤由来の配位子との置換反応が遅い場合であっても、Ptイオンに錯化剤を確実に配位させることができる。
具体的には、Ptイオンに錯化剤が配位することによりPtイオンとRuイオンとの還元電位差が0.3V以下となるような所定温度及び所定時間で撹拌を行う。
より具体的には、40℃以上95℃以下で撹拌を行うことが好ましい。また、室温で撹拌を行う場合には、12時間以上撹拌を行うことが好ましい。なお、ここで室温とは約30℃である。また、錯化剤添加後の撹拌時間の上限は特に限定されないが、触媒合成のプロセスを考慮すると72時間である。
また、Ptイオンに錯化剤が配位することによりPtイオンとRuイオンとの還元電位差が0.1V以下となるような所定温度及び所定時間で撹拌を行うことがより好ましい。
具体的には、室温で撹拌を行う場合には、約48時間撹拌することが好ましい。また、50℃で撹拌を行う場合には、約3時間撹拌することが好ましい。
Pt前駆体としては、水溶性の前駆体を用いる。具体的には、Pt前駆体として、六塩化白金酸(HPtCl)、六塩化白金酸塩(KPtCl)、四塩化白金酸(HPtCl)および四塩化白金酸塩(KPtCl)等を用いるとよい。これらの白金塩は、アセチルアセトナト錯体に比べ安価である。また、これらの白金塩は、単独で使用されても良い。また、2種類以上の白金塩が併用されてもよい。
次に、Ru前駆体(Ruの塩又は錯体)を溶解させる。
Ru前駆体としては、水溶性の前駆体を用いる。具体的には、Ru前駆体として、塩化ルテニウム(RuCl)、硝酸ルテニウム(Ru(NO)等を用いるとよい。これらのルテニウム塩は、アセチルアセトナイト錯体に比べ安価である。また、これらのルテニウム塩は単独で使用されてもよい。また、2種類以上のルテニウム塩が併用されてもよい。
Ruイオン(Ru3+)と水酸イオン(OH)との溶解度積は、25℃において1×10−38([mol/l])であり、極めて小さい。そのため、合成系のpHがアルカリ側である場合、Ru(OH)の沈殿が生成する。そのため、合成系のpHを適切な値に調整することが好ましい。具体的には、Ruの水酸化物の沈殿が発生しないpHに調整することが好ましい。
次に、担体を当該水溶液に分散させる。
担体には、比表面積20m/g〜1000m/g程度のカーボンが適する。具体的には、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブなどが好適である。また、担体であるカーボンの酸化による触媒劣化を抑制するため、一部分がグラファイト化されSP2成分の多いカーボン担体を使用してもよい。なお、触媒粒子を担持する担体はカーボンに限定されるものではない。
次に、当該水溶液に少なくとも1種類の還元剤を混合させる。
還元剤としては、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、水酸化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミノボラン、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどを使用する。特に、次亜リン酸、次亜リン酸塩は、P共析によって、PtRuP触媒粒子を微粒子化するため、好ましい。これらの還元剤は単独で使用されてもよい。また、2種以上の還元剤が併用されてもよい。
また、次亜リン酸及び次亜リン酸塩は、Ptイオン及びRuイオンを還元する際、自らは酸化されて、亜リン酸イオンを生成する。亜リン酸イオンは、Ruイオン(Ru3+)と反応して、不溶性の亜リン酸ルテニウム塩を形成する。しかし、本実施形態にかかるPtRuP触媒の製造方法では、錯化剤を添加しているため、不溶性の亜リン酸ルテニウム塩の形成を抑制することができる。これにより、安定した合成系を構築できる。
次に、還元剤の還元作用を高めるため、水溶液の温度を60℃以上に設定する。水溶液の温度の上限は、水系の合成系であるため、100℃である。
上述の手順により、本発明の実施の形態にかかるPtRuP触媒が合成される。
以下、実施例により上述の実施形態における説明を具体的に例証する。
[実施例1]
六塩化白金酸六水和物1.69mmolに錯化剤として酒石酸1.13mmol添加した。次いで、イオン交換水を加えて300mlに調整した後、室温で48時間撹拌した。その後、塩化ルテニウム(III)水和物1.69mmolを添加した。次に、カーボン担体であるケッチェンブラックEC粉末を0.5g加えて混合分散した。その後、還元剤である次亜リン酸を3.4mmol加え、2規定の水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液のpHを2に調整した。次に、浴温度90℃で当該水溶液を撹拌し、PtRuP触媒をカーボン担体上に還元析出させた。反応終了後、触媒を濾過洗浄し、80℃のオーブンで乾燥した。
[実施例2]
六塩化白金酸六水和物1.69mmolに錯化剤として酒石酸1.13mmol添加した。次いで、イオン交換水を加えて300mlに調整した後、浴温度50℃で3時間撹拌した。その後、塩化ルテニウム(III)水和物1.69mmolを添加した。次に、カーボン担体であるケッチェンブラックEC粉末を0.5g加えて混合分散した。その後、還元剤である次亜リン酸を3.4mmol加え、2規定の水酸化ナトリウム水溶液を滴下して溶液のpHを2に調整した。次に、浴温度90℃で当該水溶液を撹拌し、PtRuP触媒をカーボン担体上に還元析出させた。反応終了後、触媒を濾過洗浄し、80℃のオーブンで乾燥した。
[比較例1]
比較例1では、六塩化白金酸六水和物1.69mmolに錯化剤として酒石酸1.13mmol添加した。次いで、イオン交換水を加えて300mlに調整した後、室温で1時間撹拌した。後の工程は、実施例1と同様であるため、その説明を省略する。
[比較例2]
比較例2では、六塩化白金酸六水和物1.69mmolに錯化剤として酒石酸1.13mmol添加した。次いで、イオン交換水を加えて300mlに調整した後、室温で3時間撹拌した。後の工程は、実施例1と同様であるため、その説明を省略する。
X線回折による結晶構造解析を用いて、実施例1、2及び比較例1、2で得られたPtRuP触媒の結晶構造を解析した。X線回折による結晶構造解析の結果を図2に示す。図2において、縦軸が強度(Intensity)、横軸が回折角度(2θ(deg.))を示す。また、白抜き四角印が実施例1を示し、白抜き丸印が実施例2を示し、白抜き三角印が比較例1を示し、横棒印が比較例2を示す。また、Ptの面心立方格子を有する(111)面からの回折角度(Pt(111))を実線で示す。Ptの面心立方格子を有する(111)面からの回折角度(Pt(111))は、39.8°である。なお、強度が極大となる回折角度が、面心立方格子を有する(111)面からの回折角度である。以下、面心立方格子を有する(111)面からの回折角度を、単に、(111)面からの回折角度と称する。
図2に示すように、実施例1及び2において製造されたPtRuP触媒の(111)面からの回折角度は、Ptの(111)面からの回折角度より、高角側にシフトしている。一方、比較例1及び比較例2において製造されたPtRuP触媒の(111)面からの回折角度は、Ptの(111)面からの回折角度とほぼ同じである。
Ptに金属結合半径は0.139nm、Ruの金属結合半径は0.133nmである。Pt原子とRu原子との合金において、Pt原子とRu原子の混合度合いが大きいと、金属結合半径の小さいRu原子の影響により、PtRu合金の格子間隔dがPtの格子間隔dよりも小さくなる。Braggの回折条件(2d×sinθ=λ、d:格子間隔、λ:X線波長)から、格子間隔dの減少は、回折角θの増加(回折角度の高角側へのシフト)を引き起こす。従って、比較例1及び比較例2において製造されたPtRuP触媒では、Pt原子とRu原子との混合度合いが小さいことを示す。一方、実施例1及び実施例2において製造されたPtRuP触媒では、Pt原子とRu原子との混合度合いが大きいことが分かる。そして、(111)面からの回折角度のずれから見積もると、実施例1及び実施例2にかかるPtRuP触媒におけるPt原子及びRu原子の混合度合いは、約97%程度である。
次に、Pt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位、及びRu錯体水溶液におけるRuイオンの還元電位を測定した。測定方法を以下に述べる。0.2mmolの六塩化白金酸六水和物を100mlのイオン交換水に溶解して、Pt錯体水溶液を作成した。次に、Pt錯体水溶液に錯化剤として酒石酸0.13mmolを添加した後、pHを2に調整して、所定温度で所定時間撹拌した。
一方、0.2mmolの塩化ルテニウム(III)水和物を100mlのイオン交換水に溶解し、Ru錯体水溶液を作成した。そして、当該Ru錯体水溶液を所定温度で所定時間撹拌した。
その後、大気中、参照電極にAg/AgCl、対極にAu線を用いて、浴温度90℃、10mV/sの電位走査速度で分極測定を行った。測定結果を図3に示す。図3において、縦軸に還元電位(V)を示し、横軸に撹拌時間(Hr)を示す。また、図3において、四角印は、Pt錯体水溶液を室温で撹拌した例を示し、丸印は、Pt錯体水溶液を浴温度50℃で3時間撹拌した例を示し、ひし形印は、Ru錯体水溶液を示し、バツ印は、Pt錯体水溶液を室温で3時間撹拌した例を示す。従って、撹拌時間48時間に相当する四角印が実施例1におけるPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位を示し、丸印が実施例2におけるPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位を示し、バツ印が比較例2におけるPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位を示す。
図3に示すように、Pt錯体水溶液に錯化剤を添加した後、撹拌時間が増加するにつれて、PtイオンとRuイオンの還元電位差は、減少する。具体的には、錯化剤を添加した直後のPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位と、Ru錯体水溶液におけるRuイオンの還元電位との差は、0.4Vを超えている。これに対し、錯化剤を添加した後、室温で3時間撹拌したPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位(比較例2におけるPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位)と、Ru錯体水溶液におけるRuイオンの還元電位との差は、0.38Vとなっている。さらに、錯化剤を添加した後、室温で48時間撹拌したPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位(実施例1におけるPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位)と、Ru錯体水溶液におけるRuイオンの還元電位の差は、0.1Vとなっている。なお、錯化剤を添加した後、室温で1時間撹拌したPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位(比較例1におけるPtイオン錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位)と、Ru錯体水溶液におけるRuイオンの還元電位との差は、約0.4Vであった。
そして、図3より、錯化剤を添加した後、室温で12時間以上撹拌した場合、PtイオンとRuイオンとの還元電位差が0.3V以下となると考えられる。従って、錯化剤添加後、室温で12時間以上撹拌することにより、PtイオンとRuイオンとの還元電位差を0.3V以下とすることができ、Pt原子とRu原子とが隣接混合したPtRuP触媒を合成することができる。
さらに、錯化剤を添加した後、浴温度50℃で3時間撹拌したPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位(実施例2におけるPt錯体水溶液におけるPtイオンの還元電位)と、Ru錯体巣溶液におけるRuイオンの還元電位との差は、0.1Vとなっている。これは、錯体添加後の撹拌温度を室温から50℃に高めることにより、Ptイオンの配位子置換の速度が高まったことを示す。このことから、錯体添加後の撹拌温度を室温より高くすることにより、Ptイオンの配位子置換速度を速めることができる。換言すれば、錯体添加後の撹拌温度を40℃以上95℃以下において、Ptイオンの配位子置換速度を速めることができる。
従って、錯化剤を添加した後、所定時間撹拌することにより、Ptイオンと錯化剤由来の配位子との安定なキレート錯体を形成することができる。これにより、PtイオンとRuイオンの見かけ上の還元電位差を小さくすることができる。そのため、Pt原子とRu原子とがよく混合隣接したPtRuP触媒を合成することができる。
また、錯化剤添加後の撹拌温度を室温より高くすることにより、Pt前駆体由来の配位子と、錯化剤由来の配位子との配位子置換速度を速めることができる。これにより、錯化剤添加後の撹拌時間を短縮することができる。
なお、PtイオンとRuイオンの還元電位差を0.3V以下とするために必要な撹拌時間及び撹拌温度は、用いられる錯化剤の種類によっても変動すると考えられる。従って、用いる錯化剤の種類に応じて適宜、最適な撹拌時間及び撹拌温度を選択する必要がある。
次に、UV-Visスペクトル測定により、Ptの配位子置換反応の計時変化を評価した。評価結果を図4に示す。図4において、縦軸が吸光度(Absorbance)を示し、横軸が波長(Wavelength)を示す。室温で撹拌を1時間行った場合(比較例1)と、室温で撹拌を3時間行った場合(比較例2)では、吸収スペクトルに変化がない。これに対し、実施例1及び実施例2の吸収スペクトルでは、吸収極大が低波長側にシフトしている。Ptイオンに配位している配位子が、塩化イオンから錯化剤由来の配位子へと置換することにより、Pt錯体の安定度が増したため、吸収極大が低波長側にシフトしたと考えられる。従って、錯化剤を添加した後、所定時間撹拌することにより、Ptイオンと錯化剤由来の配位子との安定なキレート錯体を形成することができると考えられる。
次に、LSV(Linear sweep voltammetry)により、合成されたPtRuP触媒のメタノール酸化活性を評価した。評価条件を以下に述べる。1.5mol/lの硫酸水溶液中に20vol.%のメタノールを添加し、Ag/AgClを参照電極、Au線を対極に用い、35℃、窒素雰囲気中、5mV/sの電位走査速度でLSV測定を行った。評価結果を図5に示す。図5において、縦軸が活性を示し、横軸が電位(Potential)を示す。
図5に示すように、実施例1及び実施例2において合成したPtRuP触媒は、比較例1及び比較例2において合成したPtRuP触媒よりも高いメタノール酸化活性を有していることが分かる。
次に、サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry:CV)を用いて、PtRuP触媒の耐久性を評価した。評価条件を以下に述べる。1.5mol/lの硫酸水溶液中にPtRuP触媒を浸漬し、Ag/AgClを参照電極、Au線を対極に用い、35℃、窒素雰囲気中、50mV/sの電位走査速度で、電位を0.2〜1.1V(vs.NHE)の範囲でサイクリックに印加した。一定サイクルごとに上述したLSVによりメタノール酸化活性を評価することにより、PtRuP触媒の耐久性を評価した。評価結果を図6に示す。図6において、縦軸が電位0.5V(vs.NHE)でのメタノール酸化電流を示し、横軸がサイクル数を示す。図6において、太い実線が実施例1にかかるPtRuP触媒の活性を示し、太い破線が実施例2にかかるPtRuP触媒の活性を示し、細い実線が比較例1にかかるPtRuP触媒の活性を示し、細い破線が比較例2にかかるPtRuP触媒の活性を示す。
図6に示すように、比較例1及び比較例2において合成されたPtRuP触媒よりも、実施例1及び実施例2において合成されたPtRuP触媒の方が、CVサイクル数の増加に伴うメタノール酸化電流の減少が緩やかである。従って、実施例1及び実施例2において合成されたPtRuP触媒の耐久性は、比較例1及び比較例2において合成されたPtRuP触媒に比べて向上している。これは、実施例1及び実施例2において合成されたPtRuP触媒では、Pt原子とRu原子が触媒粒子の内部においてもよく隣接混合しているため、CVサイクル数の増加によって触媒粒子が侵食されても、メタノール酸化活性を維持することができるためと考えられる。
以上に説明した、本実施形態にかかるPtRuP触媒の製造方法によれば、Ptの塩又は錯体を溶解した水溶液に少なくとも1種類の錯化剤を添加した後、当該水溶液に溶解したPtイオンと当該水溶液に溶解されるRuイオンとの還元電位差が0.3V以下となるような所定時間、当該溶液を撹拌する。具体的には、錯化剤添加後、当該溶液を室温で12時間以上撹拌する。これにより、Ptイオンの配位子置換を十分に行うことができ、PtイオンとRuイオンの還元電位差を見かけ上小さくすることができる。そのため、Pt原子とRu原子とがよく隣接混合したPtRuP触媒を合成することができる。従って、高活性を有するPtRuP触媒を製造することができる。
また、本実施形態にかかるPtRuP触媒の製造方法によれば、触媒粒子の内部においてもPt原子とRu原子とがよく隣接混合したPtRuP触媒を合成することができる。燃料電池に使用される触媒は強酸性の環境で使用され、さらに触媒は分極されるため通常環境で化学的に安定なPtでさえ溶解する。本発明の製造方法によれば、触媒粒子の内部においてもPtとRu原子とが十分に混合されるため、長期間の使用によって触媒粒子が溶解しても触媒の活性を高水準に維持し、触媒の耐久性を高めることができる。
さらに、Pt前駆体として安価な六塩化白金酸(HPtCl)、六塩化白金酸塩(KPtCl)、四塩化白金酸(HPtCl)および四塩化白金酸塩(KPtCl)等を用いることができる。そのため、PtRuPの製造コストを低減することができる。
また、本実施形態にかかるPtRuP触媒の製造方法によれば、Ptの塩又は錯体を溶解した水溶液に少なくとも1種類の錯化剤を添加した後、当該水溶液に溶解したPtイオンと当該水溶液に溶解されるRuイオンとの還元電位差が0.3V以下となるような所定温度で、当該溶液を撹拌する。具体的には、錯化剤添加後、40℃以上95℃以下で、当該溶液を撹拌する。これにより、Ptイオンの配位子置換反応速度を速めることができ、撹拌時間を短縮することができる。そして、触媒粒子の表面から内部にわたって、Pt原子とRu原子とがよく隣接混合したPtRuP触媒を合成することができる。従って、高活性且つ高耐久性を有するPtRuP触媒を合成することができる。また、上述の通り、安価なPt前駆体を用いることができ、製造コストを低減できる。
また、錯化剤の添加量は、合成系に存在するPtの合計モル数に対して、0.01〜10.0倍であることが好ましい。錯化剤の濃度が合成系に存在するPtの合計モル数に対して0.01倍以下だと、安定なPtのキレート錯体及びRuのキレート錯体を形成することができない。また、錯化剤の濃度が合成系に存在するPtの合計モル数に対して10.0倍を超えると、錯体の安定定数が高まりすぎてしまう。そのため、PtイオンとRuイオンの還元効率が低下してしまう。
また、錯化剤は、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、ニトリロ三酢酸及びこれらの塩から少なくとも1種類選択される。また、2種類以上の錯化剤が併用されてもよい。これらの錯化剤は、2個以上の酸素原子を含有する多座配位子である。そのため、これらの錯化剤はキレート錯体を形成する。そして、これらの錯化剤は、複数の配位座を持っているため、配位しているイオンから離れにくい。従って、これらの錯化剤が配位することにより形成されたキレート錯体は安定である。そのため、これらの錯化剤に配位されたPtイオンの還元電位が見かけ上減少する。よって、これらの錯化剤を用いることにより、PtイオンとRuイオンの還元電位差を見かけ上小さくすることができる。
また、還元剤は、次亜リン酸又は次亜リン酸塩であることが好ましい。次亜リン酸、次亜リン酸塩は、P共析によって、PtRuP触媒粒子を微粒子化する。触媒粒子が微粒子化されることにより、触媒面積が増加し、触媒活性を高めることができる。
また、燃料電池用のPtRu系触媒が上述の製造方法により製造されることが好ましい。これにより、燃料電池用のPtRu系触媒の活性を高めるとともに、耐久性を向上することができる。
また、膜電極接合体の陽極触媒層は、上述の製造方法により製造されたPtRuP触媒を含むことが好ましい。これにより、膜電極接合体の活性を高めるとともに、耐久性を向上することができる。
また、燃料電池の陽極は、上述の製造方法により製造されたPtRuP触媒を含むことが好ましい。これにより、燃料電池の陽極の活性を高めるとともに、耐久性を向上することができる。
本発明の技術的な範囲は、上述の実施形態、実施例に限定されない。PtRu系触媒に、他の元素を混合させることも可能である。また、PtRu系触媒の製造方法は、上述の方法に限定されるべきものではない。
燃料電池の構成を示す概略的な模式図である。 実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2において合成されたPtRuP触媒のX線回折による結晶構造解析結果を示すグラフである。 Pt錯体溶液におけるPtイオンの還元電位及びRu錯体溶液におけるRuイオンの還元電位を示すグラフである。 Ptの配位子置換反応の計時変化を示すグラフである。 実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2において合成されたPtRuP触媒のLSVによるメタノール酸化活性評価結果を示すグラフである。 実施例1、実施例2及び比較例1、比較例2において合成されたPtRuP触媒の耐久性を示すグラフである。
符号の説明
1 セパレータ
2 集電層
3 触媒層
4 高分子電解質膜
5 触媒層
6 集電層
7 セパレータ
8 孔
9 孔
100 セル

Claims (10)

  1. 燃料電池用の電極触媒として用いられるPtRu系触媒の製造方法であって、
    Ptの塩又は錯体を溶解した水溶液に少なくとも1種類の錯化剤を添加するステップと、
    前記水溶液に溶解したPtイオンと前記水溶液に溶解されるRuイオンとの還元電位差が0.3V以下となるような所定時間、前記溶液を撹拌するステップと、
    前記水溶液にRuの塩又は錯体を溶解するステップと、
    前記水溶液に担体を分散させるステップと、
    前記水溶液に少なくとも1種類の還元剤を混合させるステップと、
    前記水溶液を60℃以上で撹拌するステップと、
    を備えるPtRu系触媒の製造方法。
  2. 燃料電池用の電極触媒として用いられるPtRu系触媒の製造方法であって、
    Ptの塩又は錯体を溶解した水溶液に少なくとも1種類の錯化剤を添加するステップと、
    前記水溶液に溶解したPtイオンと前記水溶液に溶解されるRuイオンとの還元電位差が0.3V以下となるような所定温度で、前記溶液を撹拌するステップと、
    前記水溶液にRuの塩又は錯体を溶解するステップと、
    前記水溶液に担体を分散させるステップと、
    前記水溶液に少なくとも1種類の還元剤を混合させるステップと、
    前記水溶液を60℃以上で撹拌するステップと、
    を備えるPtRu系触媒の製造方法。
  3. 前記錯化剤の添加量が、合成系内に存在するPtの合計モル数に対して0.01〜10.0倍である請求項1又は2に記載のPtRu系触媒の製造方法。
  4. 前記還元電位差が0.3V以下となるような所定時間は、12時間以上である請求項1又は3に記載のPtRu系触媒の製造方法。
  5. 前記還元電位差が0.3V以下となるような所定温度は、40℃以上95℃以下である請求項2又は3に記載のPtRu系触媒の製造方法。
  6. 前記錯化剤は、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、ニトリロ三酢酸及びこれらの塩から少なくとも1種類選択される請求項1乃至5の何れか一項に記載のPtRu系触媒の製造方法。
  7. 前記還元剤は、次亜リン酸又は次亜リン酸塩である請求項1乃至6の何れか一項に記載のPtRu系触媒の製造方法。
  8. 請求項1乃至7の何れか一項に記載の製造方法により製造された燃料電池用のPtRu系触媒。
  9. 陽極触媒層と、負極触媒層と、前記陽極触媒層と前記負極触媒層との間に間挿された固体高分子電解質膜とからなる膜電極接合体であって、前記陽極触媒層は請求項8に記載の前記PtRu系触媒を含む膜電極接合体。
  10. 少なくとも、陽極と、負極と、前記陽極と前記負極との間に間挿された固体高分子電解質膜を有する燃料電池であって、前記陽極は請求項8に記載の前記PtRu系触媒を含む燃料電池。
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