JP2009236605A - 温度センサ、温度センサの製造方法、電気泳動装置、および電子機器 - Google Patents

温度センサ、温度センサの製造方法、電気泳動装置、および電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】実装面積が比較的少ない回路構成で正確に温度を検出可能な温度センサ、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】発振回路(10)、発振回路に所定の電源電圧を供給する電源供給回路(11)、発振回路の発振周波数に基づいて温度を特定する温度特定回路(20、30)を備え、発振回路(10)は、温度の上昇に対応して発振周波数が減少するように構成され、電源供給回路(11)は、発振回路に所定の基準温度において所定の基準周波数で発振させるための電源電圧を供給するように構成され、温度特定回路(20、30)は、発振回路の発振周波数と温度との関係情報に基づいて温度を特定するよう構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、温度センサに係り、特に、腕時計等に組み込む電気泳動装置に適する簡易な構成であって、かつ、低コストで製造可能な温度センサおよびその製造方法に関する。
電気泳動装置は、電極間に印加する電圧を制御して、荷電粒子の移動を制御することによって外観上の色調を変化させ、もって画像を表示する装置である。この電気泳動装置における荷電粒子の移動は溶媒の粘度に影響を受け、溶媒の粘度は温度依存性が高いため、温度に応じて最適な駆動電圧および駆動波形で駆動することが必要とされる。例えば、特表2005−527001号公報には、温度探索機(温度センサ)により媒体温度を測定し、測定温度に従って電気泳動素子の電極間の電位差を制御する発明が記載されている(特許文献1参照)。
近年では、腕時計など、小型・携帯型装置に電気泳動装置を組み込む応用例が研究・開発されている。
特表2005−527001号公報
温度を測定するためには、発振周波数を規定する基準抵抗や温度を検出するサーミスタ等の外付け部品を集積回路化された温度センサの発振回路に接続することを要する。しかしながら、外付け部品を要するとすれば、集積回路を含めた温度センサのための実装面積が大きくなり、また、コストを削減することが困難になる。
特に腕時計のような比較的小型の機器に温度センサを組み込む場合にはチップ抵抗一つでも削減すべきという厳しい要請があり、温度測定のためだけに外付け抵抗は用いたくない。
そこで本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、実装面積が比較的少ない回路構成で正確に温度を検出可能な温度センサ、およびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の温度センサは、発振回路と、発振回路に所定の電源電圧を供給する電源供給回路と、発振回路の発振周波数に基づいて温度を特定する温度特定回路と、を備える。そして、発振回路は、温度の上昇に対応して発振周波数が減少するように構成されている。また、電源供給回路は、発振回路に所定の基準温度において所定の基準周波数で発振させるための電源電圧を供給するように構成されている。そして温度特定回路は、発振回路の発振周波数と温度との関係情報に基づいて温度を特定するよう構成されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、発振回路は、温度が上昇するに連れて発振周波数が減少するという負の温度特性を有しており、電源供給回路は発振回路が負の温度特性を持つような電源電圧を発振回路に供給するように調整されている。そして、温度特定回路は発振周波数と温度との関係情報を参照するので、温度変化に伴って発振周波数が変動するとその発振周波数に対応する温度を特定することができる。
ここで、製造過程において発振回路を構成する素子にバラツキを生じたとしても、総ての発振回路は基準温度において基準周波数で発振するように調整されているので、測定対象温度範囲に応じた最大測定誤差を予め把握可能となる。また、測定対象温度範囲と最大測定誤差との対応関係が明確になっているので、許容される誤差範囲に基づいて測定対象温度範囲を逆設定することも可能である。
ここで上記電源供給回路は、発振回路に印加する電源電圧を、温度の上昇と共に発振周波数が減少する温度特性を発振回路が示す範囲に設定することが好ましい。
発振回路では、発振回路を構成する素子における移動度の温度特性の影響が相対的に大きいと、発振周波数には温度の上昇とともに周波数が減少するという負の温度特性が現れる。一方、発振回路を構成する素子におけるしきい値の温度特性の影響が相対的に大きいと、発振周波数には温度の上昇とともに周波数が上昇するという正の温度特性が現れる。いずれの温度特性が大きく影響するかにより、発振回路全体の発振周波数の温度特性が決定される。電源電圧が高いほど移動度の温度特性の影響が大きく、電源電圧が低いほどしきい値の温度特性の影響が大きくなる傾向にある。よって、発振回路に加える電源電圧を調整することにより、発振回路の発振周波数の温度特性を調整することが可能なのである。かかる構成によれば、発振回路に印加される電源電圧は、発振周波数が負の温度特性を示すような範囲に制御されるので、発振回路の発振周波数に基づいて温度を測定することが可能となる。
ここで「発振回路」は、温度の上昇とともに発振周波数が減少するような負の温度特性を有する回路であればよく、その構成に限定はない。例えば、トランジスタの移動度の変化が発振周波数に影響するような回路構成であれば、本発明に適用可能である。例えば、半導体の特性がスイッチング速度に影響するヒステリシス特性を利用した矩形波発振回路、非安定マルチバイブレータ等が含まれる。
例えば、発振回路は、インバータを含んで構成されるリングオッシレータである。この場合、インバータは、電源電圧と接地電位との間に第1の極性を有する第1トランジスタと第1の極性とは対極の第2の極性を有する第2トランジスタとを直列接続して構成されている。
かかる構成によれば、このインバータを奇数個直列接続して出力を帰還させれば、トランジスタのオン抵抗と設定容量または寄生容量とで定まる周波数で発振する。トランジスタのしきい値または移動度の温度特性に影響を受けて、リングオッシレータの発振周波数も温度特性を有する。トランジスタの移動度の温度特性が相対的に大きく影響を与える電源電圧を設定すれば、発振周波数が負の温度特性を有する発振回路となる。
ここで、電源供給回路は、トランジスタを構成する半導体の極性に応じて定まる仕事関数の差を利用して電源電圧を調整可能に構成されており、出力される電源電圧が温度の上昇と共に減少する温度特性を備えることが好ましい。
トランジスタを構成する半導体は、その極性(例えばp型かn型か)に応じて仕事関数が定まるが、かかる構成によれば、半導体が極性に応じて有する仕事関数の差が利用されるので、製造上のしきい値等のバラツキは相殺され、正確に調整された電源電圧を出力可能である。
例えばこのような電源供給回路は、第1の電流路と第2の電流路とに略等しい電流を流すカレントミラー回路と、第1の電流路と接地電位との間に直列接続された、抵抗値R1を有する第1抵抗および抵抗値R2を有する第2抵抗、第1の電流路にドレインが接続され、ゲートが接地された、第1のしきい値Vth1を有する第1のトランジスタと、第2の電流路にドレインが接続され、ゲートが第1抵抗R1と第2抵抗R2との接続点に接続された、第2のしきい値Vth2を有する第2のトランジスタと、第1のトランジスタのソースと第2のトランジスタのソースとに接続する定電流源と、を備える。そして第1のトランジスタにおける第1のしきい値Vth1と第2のトランジスタにおける第2のしきい値Vth2との差分(ΔVth=Vth2−Vth1)と、前記抵抗値R1および前記抵抗値R2に基づく抵抗比(1+R1/R2)とを乗じた値が発振回路に供給する電源電圧Vdcとなるように、第1抵抗および第2抵抗の抵抗値R1およびR2が定められている。そして、第1の電流路の電位が電源電圧Vdcとして供給される。
かかる構成によれば、第1の電流路と第2の電流路とに流れる電流は等しく、第2抵抗の両端に生じる電位差は第1のトランジスタの第1のしきい値Vth1と第2のトランジスタの第2のしきい値Vth2との差分Δthに等しいため、電源電圧が供給される第1抵抗の電位は、しきい値の差分Δthに前記抵抗値R1および前記抵抗値R2に基づく抵抗比(=(R1+R2)/R2=1+R1/R2)を乗じた値となる。よって、この比率を変更することによって、所望の電源電圧を出力することが可能である。ここでしきい値の差分を演算すると、ゲートの仕事関数の差のみに影響するためトランジスタ製造過程において生じるバラツキの影響を受けず、正確な電源電圧を出力可能である。また、仕事関数の差に基づいてこの電源供給回路から出力される電源電圧は温度の上昇に伴い減少する温度特性を示すので、発振回路が有する負の温度特性の傾きを強める方向に作用する。そのため、負の温度特性を示す発振回路と組合せることにより、より検出誤差を少なくすることが可能となる。
好ましくは、電源供給回路には、トランジスタの移動度を種々にばらつかせた発振回路のサンプルの各々について、基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧が各々記憶されている。さらに発振回路がいずれのサンプルに属するかを設定する選択部が設けられている。そして電源供給回路は、抵抗値R1および抵抗値R2に基づく抵抗比(=1+R1/R2)が任意に変更可能に構成されており、選択部の設定の対応するサンプルについて記憶された電源電圧を発振回路に供給する。
かかる構成によれば、基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧が複数種類のサンプルの各々に対応させて記憶されている。よって、製造ロットまたは単体ごとに、搭載した発振回路に対応するサンプルのための電源電圧を選択部により選択すれば、製造後の製品において、基準温度において基準周波数で発振するように発振回路を調整可能となる。よって、この発明の構成は、サンプルに対するキャリブレーション処理による電源電圧の特定と、近似するサンプルを選択することによる製造品の各々に対する電源電圧の設定と、を別々に行う場合(後述する第2のキャリブレーション方法)に適する。
例えば、温度特定回路は、カウンタと、カウンタの計数値を温度情報に変換する計数値温度変換回路と、を備える。そしてカウンタは、発振回路の発振周波数より高い周波数を有する基準信号が入力されており、発振回路からの発振信号の一定周期当たりに入る基準信号の周期数を計数値として出力する。
かかる構成によれば、発振信号の一周期に基準信号が何周期入るかに基づいて、発振信号の発振周波数を特定することができ、特定された発振周波数に対応する温度を検出することができる。
また、例えば、カウンタは、発振回路の発振周波数より低い周波数を有する基準信号が入力されており、基準信号の一定周期当たりに入る発振回路からの発振信号の周期数を計数値として出力するように構成してもよい。
かかる構成によれば、基準信号の一周期に発振信号が何周期入るかに基づいて、発振信号の発振周波数を特定することができ、特定された発振周波数に対応する温度を検出することができる。
本発明に係る電気泳動装置は、電気泳動素子と、本発明の温度センサにより特定された温度に基づいて駆動波形を変更する駆動波形制御回路と、この駆動波形で電気泳動素子を駆動する駆動回路と、を備える。
かかる構成によれば、実装面積の小さな温度センサを用いて電気泳動素子の駆動を制御できるので、腕時計等の小型の機器に搭載する電気泳動装置に好適である。
また本発明は、上記温度センサを備えた電子機器でもある。
かかる構成によれば、温度センサの実装面積を相対的に小さく、製造コストを相対的に低くできるので、小型・携帯型の電子機器に用いる温度センサとして最適である。なお「電子機器」としては、例えば電気泳動装置を表示デバイスとして備える装置であり、腕時計、電子ブック、電子ペーパー、その他が含まれる。
本発明の温度センサの製造方法は、発振回路を備えた温度センサの製造方法であって、
発振回路は、温度が上昇するに連れて発振周波数が減少するものであり、
1)トランジスタの移動度を種々にばらつかせた発振回路の複数のサンプルのうちいずれか一つを基準サンプルとして特定するステップと、
2)当該基準サンプルについて基準電圧を特定するステップと、
3)所定の基準温度において、基準サンプルに基準電圧を印加した場合の発振周波数を基準周波数として特定するステップと、
4)調整対象となる発振回路について、該基準温度において該基準周波数で発振させるための電源電圧を設定するステップと、
を備えたことを特徴とする。
かかる方法によれば、ステップ1)により、製造されうる発振回路の移動度のバラツキを代表するサンプルが特定され、ステップ2)により、基準サンプルについての電源電圧が特定され、ステップ3)において、基準サンプルが所定の基準温度で発信する場合の発振周波数が基準周波数として定められ、ステップ4)において、調整対象となる発振回路について、基準温度において基準周波数で発振するように電源電圧が設定される。本発明によれば、バラツキを代表する基準サンプルに基づいて、基準温度における基準周波数が決定され、それら発振回路の各々に対し、基準温度において基準周波数で発振するような電源電圧が設定される。よって、製造された発振回路にバラツキを生じたとしても、測定対象温度範囲に応じた最大測定誤差を予め把握可能となる。また、測定対象温度範囲と最大測定誤差との対応関係が明確になっているため、許容される誤差範囲に基づいて測定対象温度範囲を逆設定することも可能である
上記基準サンプルを特定するステップ(ステップ1)は、所定の電圧において複数のサンプルが示した発振周波数の中で最も低い周波数で発振したサンプルを基準サンプルとして特定することが好ましい。
基準サンプル以外のサンプルは、基準サンプルより低い電圧で同じ周波数を発振することができるため、電源電圧の上限を基準サンプルによって決定することが可能だからである。
上記調整対象となる発振回路に対する電源電圧の設定(ステップ4)には2つのキャリブレーション方法が考えられる。
本発明の第1のキャリブレーション方法としては、上記4)電源電圧を設定するステップにおいて、
4−1)調整対象となる発振回路について基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧を特定するステップと、
4−2)特定された調整対象となる発振回路のための電源電圧を当該発振回路の電源電圧として設定するステップと、
を備える。
かかる第1のキャリブレーション方法によれば、サンプルを用いて基準温度における基準周波数が定められ、調整対象となる発振回路、すなわち個別具体的な製造品の各々について、基準温度において基準周波数で発振するような電源電圧が調整され設定される。よって、個別の発振回路ごとに基準温度において正確に基準周波数で発振させることができ、最大誤差範囲を正確に予測可能な温度センサを製造可能となる。
本発明の第2のキャリブレーション方法としては、上記4)電源電圧を設定するステップにおいて、
4−1)基準サンプル以外のサンプルについて、基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧を特定するステップと、
4−2)調整対象となる発振回路に対応する移動度を有するサンプルを選択するステップと、
4−3)選択されたサンプルのために特定されている電源電圧を調整対象となる発振回路のための電源電圧として設定するステップと、
を備える。
かかる第2のキャリブレーション方法によれば、サンプルを用いて基準温度における基準周波数が定められ、さらに複数のサンプルの各々について、基準温度において基準周波数で発振するような電源電圧が調整され特定される。調整対象となる発振回路、すなわち個別具体的な製造品の各々については、発振回路に相当するサンプルが選択され、その選択されたサンプルについて調整されている電源電圧が、その発振回路のための電源電圧として設定される。かかる方法によれば、製造品のバラツキを代表するサンプルに基づいて予め電源電圧が求められており、個別の発振回路に対しては、そのサンプルとの対応を見極めて電源電圧を設定すればよいだけなので、比較的短時間にキャリブレーション処理を完遂させることが可能であり、最大誤差範囲を正確に予測可能な温度センサを製造可能とである。
ここで、サンプルの数に限定はないが、製造品における移動度のバラツキの範囲をカバーするように移動度特性が分散したサンプルを用いることが好ましい。またサンプルの数は多ければ多い程、製造品に一致する、または、より近似する移動度特性を有するサンプルを選択できる可能性が高まる。最低限、製造品における移動度のバラツキの最大範囲を代表する限界サンプルについて、キャリブレーション処理をすることが好ましい。
ここで上記2)の基準周波数を特定するステップは、複数の基準サンプルが示した発振周波数の中で最も低い周波数を基準周波数として特定することは好ましい。
基準サンプル以外の発振回路は、電源電圧を上昇させるほど発振周波数を上げることが可能である一方、電源電圧を下げるほど移動度の影響が少なくなって発振周波数−温度特性の傾きが小さくなる。かかる工程によれば、基準サンプル中で最も低い発振周波数を基準周波数として設定するので、他の発振回路総てについて、一定以上の精度を保証しうる発振周波数−温度特性の傾きを維持することが可能である。
以下に、本発明の好適な実施の形態について図面を参照ながら説明する。
前述したように、本発明に係るキャリブレーション方法には2つの態様がある。
発振回路の基準サンプルに基づいて基準温度における基準周波数を特定するまでは2つの態様とも共通している。
第1のキャリブレーション方法は、調整対象となる発振回路に対する電源電圧の調整および設定を、製造された発振回路の各々について個別に実施する方法である。
第2のキャリブレーション方法は、基準サンプル以外のサンプルについて、基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧を特定しておき、製造工程において、調整対象となる発振回路に対応する移動度を有するサンプルを選択し、選択されたサンプルのために特定されている電源電圧を調整対象となる発振回路のための電源電圧として設定するという方法である。
第1のキャリブレーション方法では、総ての製造品についてキャリブレーションにより電源電圧を調整・設定するので、総ての発振回路について、基準電圧において正確に基準周波数で発振させ、理論上予定される最大誤差範囲で発振させることができる。これに対し、第2のキャリブレーション方法では、限られた数のサンプルについてのみキャリブレーション処理することにより電源電圧を調整・設定するので、一定の精度の下で製造に係る工数を比較的少なくすることができる。
以下、第1のキャリブレーション方法については実施形態1で例示し、第2のキャリブレーション方法については実施形態2で例示する。
(実施形態1)
本発明の実施形態1は、上記第1のキャリブレーション方法に基づき、発振回路であるリングオッシレータのサンプルに基づいて基準温度における基準周波数を求め、製造品のリングオッシレータの各々に対して基準温度において基準周波数で発振するための電源電圧を供給するよう調整された温度センサに関する。
図1に本実施形態1に係る温度センサ1のブロック図を示す。
図1に示すように、温度センサ1は、リングオッシレータ10、電源供給回路11、カウンタ20、基準信号発振器21、計数値温度変換回路30、および計数値温度関係情報記憶部31を備える。リングオッシレータ10は本発明の発振回路に相当し、カウンタ20および計数値温度変換回路30は本発明の温度特定回路に相当する。
リングオッシレータ10は、温度の上昇に対応して発振周波数が減少するような、負の温度特性を有する発振回路の例である。負の温度特性を有する発振回路としては、リングオッシレータの他に、ヒステリシスを利用した矩形波発振回路や非安定マルチバイブレータ等が利用可能である。
電源供給回路11は、リングオッシレータ10を負の温度特性にて動作させるための電源電圧Vdcを生成して供給するよう構成されており、その構成は図4において、その電源電圧の調整方法については図8〜図12において、詳述する。
カウンタ20は、基準信号発振器21が生成する基準信号Srefを参照してリングオッシレータ10からの発振信号の発振周波数を計数する。発振周波数の計数方法には2通りがあり、図5において説明する。
計数値温度変換回路30は、演算されたリングオッシレータ10の発振周波数focsに基づいて温度を特定するブロックである。計数値温度変換回路30は、計数値温度関係情報記憶部31に記憶されている計数値温度関係情報を参照して発振周波数focsに対応する温度を演算し、ディスプレイ40に出力するようになっている。計数値温度変換回路30の機能については、図5および図6にて詳述する。
(リングオッシレータ10)
図2にリングオッシレータ10のブロック図を示す。
図2に示すように、リングオッシレータ10は、複数のインバータINVを直列接続して構成されている。最終段のインバータINVの出力が初段のインバータINVの入力端子に接続されている。発振器として動作させるためには正帰還をさせる必要があるため、インバータの直列段数は通常奇数である。
図2の下段に示すように、各インバータINVは、P型(第1の極性)の第1トランジスタTr1とN型(第2の極性)の第2トランジスタTr2とを電源電圧Vdcと接地電位との間に直列接続して構成されている。第1トランジスタTr1のゲートと第2トランジスタTr2のゲートとが直接接続されてインバータの入力端子Vinを構成し、第1トランジスタTr1のソース/ドレインの一方と第2トランジスタTr2のソース/ドレインの一方とが接続されて出力端子Voutを構成している。出力端子Voutには所定の容量(例えば10pF)のキャパシタCが接続されている。
上記のような構成によれば、入力端子Vinに接続された極性と反対の極性の信号が出力端子Voutに出力される。第1トランジスタTr1がオン状態(第2トランジスタTr2がオフ状態)となる時、第1トランジスタTr1のオン抵抗とキャパシタCとで定まる時定数でキャパシタCに電荷が充電され、出力端子Voutの出力電圧が変化する。第2トランジスタTr2がオン態(第1トランジスタTr1がオフ状態)となる時、第2トランジスタTr2のオン抵抗とキャパシタCとで定まる時定数でキャパシタCの電荷が放電され、出力端子Voutの出力電圧が変化する。すなわち、入力端子Vinに対するパルス信号の変化に遅延して出力端子Voutの出力電圧が変化する。このようなインバータINVを奇数個直列接続し、出力を入力側に帰還させることにより、時定数に対応した発振周波数で発振することになる。
図3に、リングオッシレータに印加する電源電圧に応じた、温度と発振周波数との関係(発振周波数−温度特性:温度特性)を示す。図3(a)はトランジスタのしきい値の温度特性が相対的に大きく影響している場合であり、図3(b)はトランジスタのしきい値の温度特性と移動度の温度特性とが均衡して影響している場合であり、図3(c)はトランジスタの移動度の温度特性が相対的に大きく影響している場合である。
リングオッシレータ10の発振周波数fは、インバータINVを構成するトランジスタのしきい値電圧Vthの温度特性とトランジスタの移動度の温度特性との双方に影響を受けることが知られている。例えば、インバータに印加する電源電圧がトランジスタのしきい値電圧Vthに近い領域では、トランジスタのしきい値がリングオッシレータの発振周波数に与える影響が相対的に大きくなる。一方、インバータに印加する電源電圧がトランジスタのしきい値電圧Vthよりある程度以上高いと、相対的にトランジスタの移動度がリングオッシレータの発振周波数に与える影響が相対的に大きくなる。
しきい値電圧は温度の上昇とともに低下する傾向にある。しきい値が下がるとトランジスタのスイッチングタイミングが早くなり、スイッチングの繰り返しにより定まる発振周波数の周期が短くなる。よって発振周波数が温度の上昇とともに高くなると考えられる。一方、移動度は、P型シリコンの場合に絶対温度の約−2.2乗、N型シリコンの場合に絶対温度の約−2.42乗に比例し、温度の上昇とともに小さくなる。移動度の大きさは半導体中のキャリア速度であり、トランジスタの状態遷移の速度に対応する。よって、温度が上昇すると発振周波数が低下することになる。そして、インバータに印加する電源電圧が相対的に低くなればしきい値の影響が強くなり、相対的に高くなれば移動度の影響が強くなるのである。
そのため、図3(a)に示すように、インバータに印加される電源電圧がトランジスタのしきい値電圧Vthに比較的近く、トランジスタのしきい値電圧Vthの温度特性が支配的な領域では、リングオッシレータの発振周波数fは、温度tの上昇に対応して上昇する傾向を示す。
一方、図3(c)に示すように、インバータに印加される電源電圧がトランジスタのしきい値電圧Vthより大分高く、トランジスタの移動度の温度特性が支配的な領域では、リングオッシレータの発振周波数fは、温度tの上昇に対応して下降する傾向を示す。
また、図3(b)に示すように、トランジスタのしきい値電圧の温度特性と移動度の温度特性とが同等な影響を与えるように電源電圧を印加すると、双方の影響が均衡して、オッシレータの発振周波数に対する温度の影響が少なくすることも可能である。
本実施形態の温度センサは、図3(c)に示すようにオッシレータの発振周波数が負の温度特性を示す領域において温度の上昇に対応して発振周波数が減少していく傾向を積極的に利用して温度を検出するよう構成されている。
図1に示す電源供給回路11は、リングオッシレータ10を負の温度特性にて動作させるための電源電圧Vdcを生成して供給するよう構成されており、図4において詳述する。
(電源供給回路11)
図4に本実施形態における電源供給回路11の回路構成例を示す。
図4に示すように、本実施形態における電源供給回路11は、トランジスタTr11〜Tr15、第1の電流路L1、第2の電流路L2、定電流源IC、抵抗R1、およびR2を備えて構成されている。
トランジスタTr13およびTr14は互いに等しい規格を有しており、第1の電流路L1および第2の電流路L2にそれぞれ直列に介挿されている。トランジスタTr13およびTr14の各ドレインは電源電圧Vddに接続され、各ソースは第1のトランジスタTr11および第2のトランジスタTr12を介して定電流源ICに接続点P0にて共通に接続されている。トランジスタTr13およびTr14の互いのゲートが一方の電流路に共通して接続されることにより、トランジスタTr13、Tr14、および定電流源ICにより、カレントミラー回路が構成されている。このカレントミラー回路により、第1の電流路L1および第2の電流路L2には互いに等しい電流I1およびI2が流される。
第1の電流路L1には、第1のトランジスタTr11が直列接続され、第2の電流路L2には、第2のトランジスタTr12が直列接続されている。第1のトランジスタTr11は、ドレインがトランジスタTr13のソースに接続され、そのゲートが接地されている。第2のトランジスタTr12は、ドレインがトランジスタTr14のソースに接続されている。第1のトランジスタTr11および第2のトランジスタTr12のソースは共に定電流源ICに接続点P0にて接続されている。第1のトランジスタTr11は、第1のしきい値Vth1を有し、第2のトランジスタTr12は、第2のしきい値Vth2を有する。接続点P0の電位をVP0とする。
一方、電源電圧Vddと接地電位との間には、バッファトランジスタTr15、第1抵抗R1(抵抗値=R1)、および第2抵抗R2(抵抗値=R2)が直列に接続されている。バッファトランジスタTr15は、ゲートが第1の電流路L1の接続点P1に接続され、ドレインが電源電圧Vddに接続され、ソースが第1抵抗R1の一端に接続点P2にて接続されている。バッファトランジスタTr15は、接続点P1の電位をリングオッシレータ10のための局所的な電源電圧Vdcとして出力するためのバッファリングを行っている。
バッファトランジスタTr15のソースと第1抵抗R1との接続点P2(電位VP2)は出力すべき電源電圧Vdcの出力端子となっている。第1抵抗R1の他端と第2抵抗の一端との接続点P3には、第2トランジスタTr12のゲートが接続されている。第1抵抗R1と第2抵抗R2とは、抵抗値p(=(R1+R2)/R2=1+R1/R2)を任意に変更可能に、一方または双方が可変抵抗器として構成されている。接続点P3の電位をVP3とする。
次に上記電源供給回路11の構成における作用を説明する。
カレントミラー回路の作用により第1の電流路L1に流れる電流I1と第2の電流路L2に流れる電流I2との和は、定電流源ICによって流れる定電流I0に等しくなるよう制御され、トランジスタTr13とTr14との規格が同じであるため、電流I1と電流I2とは等しくなるよう制御される。
ここで、飽和領域で動作するN型トランジスタのソース−ドレイン間電流IDSは、式(1)で近似できることが知られている。
DS=1/2×μox(VGS−Vth) …(1)
但し、式(1)において、μはN型半導体の移動度であり、Coxは単位面積当たりのゲート容量であり、VGSはトランジスタのゲート−ソース間電圧であり、Vthはトランジスタのしきい値である。
第1のトランジスタTr11および第2のトランジスタTr12は、飽和領域にて動作するN型トランジスタであり、図4の回路における電流I1は第1のトランジスタTr11のソースードレイン間電流であり、電流I2は第2のトランジスタTr12におけるソースードレイン間電流であるため、式(2)(3)が成り立つ。
I1=1/2×μox((0−VP0)−Vth1) …(2)
I2=1/2×μox((VP3−VP0)−Vth2) …(3)
電流I1と電流I2とが等しいという条件(I1=I2)を満たすためには、結局式(4)という関係が必要なことが判る。
−Vth1=VP3−Vth2、
P3−=Vth2−Vth1=ΔVth …(4)
接続点P3の電圧VP3が定まると、接続点P2の電圧VP2、すなわち出力すべき発振回路のための電源電圧Vdcが第1抵抗R1と第2抵抗R2との抵抗比により、式(5)のように定まる。
R1+R2:R2=ΔVth:Vdc、
Vdc=ΔVth・(R1+R2)/R2=(1+R1/R2)ΔVth …(5)
従って、第1のトランジスタTr11および第2のトランジスタTr12のしきい値の差ΔVthが定まれば、第1抵抗R1と第2抵抗との抵抗値p(=1+R1/R2)を任意に調整することで、所望の電源電圧Vdcを出力することが可能となる。
ここで、しきい値の差は半導体におけるどのような物理定数の影響を受けるかを考える。一般に、MOSトランジスタにおけるしきい値Vthは、式(6)によって定まることが知られている。
Vth=ΦMS+2Φ+Qdep/Cox …(6)
但し、ΦMSはゲートとシリコン基板との間の仕事関数の差であり、Φ=(kT/q)ln(Nsub/n)(qは電子の電荷量、は基板の不純物濃度)であり、Qdepは空乏層の電荷量であり、Qdep=√(4qεsi|Φ|Nsub)で、εsiはシリコンの誘電率である。
式(4)のように同じシリコン基板上に形成された一対のトランジスタのしきい値の差分を計算すると、第2項、第3項は共通していることになるため、結局、しきい値の差ΔVthは、第1項にのみ影響を受けることになる。第1のトランジスタTr11と第2のトランジスタTr12とではシリコン基板を共通にしている。よって、ゲートにドーピングする不純物濃度によってしきい値を調整する場合、2つのトランジスタ間で異なる種類および/または異なる濃度でドーピングされたゲート同士の仕事関数の差に相当することになる。製造過程におけるバラツキは、式(6)における第2項および第3項に影響を与えるが、しきい値の差については第1項のみに影響を受けるので、式(4)により得られるしきい値の差ΔVthは製造バラツキの影響を受けにくい。よって、式(5)によって得られる電源電圧Vdcも製造バラツキの影響を受けにくいという特徴を有する。
なお、しきい値の差ΔVthは、2つのトランジスタ間におけるゲートの仕事関数の差であるが、この仕事関数の差は温度の上昇とともに仕事関数の差が小さくなる特性を有するため、出力される電源電圧Vdcは温度の上昇とともに減少するという温度特性を示す。本発明の発振回路であるリングオッシレータ10は電源電圧の上昇とともに発振周波数が高くなる傾向にあるため、この電源供給回路11の温度特性は、リングオッシレータ10の負の温度特性を強める方向に作用する。
上記のように構成される電源供給回路11は、どのような特性のトランジスタで構成されていても、リングオッシレータ10が所定の基準温度trefにおいて所定の基準周波数frefで発振するように調整された電源電圧Vdcを供給するように構成されている。この電源電圧Vdcの調整方法については後述する。
(カウンタ20)
上述したように、カウンタ20は、基準信号発振器21が生成する基準信号Srefを参照してリングオッシレータ10からの発振信号の発振周波数を計数するが、発振周波数の計数方法には以下の2通りがある。
図5(a)は第1の計数方法を示している。第1の計数方法は、基準信号発振器21が生成する基準信号Soscがリングオッシレータ10の発振周波数foscより高い周波数を有するように設定する場合に適用される。カウンタ20は、リングオッシレータ10からの発振信号Soscの一定周期Tosc当たりに入る基準信号Srefの周期Trefの数を計数値として出力する。
また、図5(b)は第2の計数方法を示している。第2の計数方法は、基準信号発振器21が生成する基準信号Srefがリングオッシレータ10の発振周波数foscより低い周波数を有するように設定する場合に適用される。カウンタ20は、基準信号Srefの基準信号Srefの一定周期Tref当たりに入るリングオッシレータ10からの発振信号Soscの周期Toscの数を計数値として出力する。
いずれの計数方法を採用する場合でも、基準信号Srefの周波数Frefおよび/または周期Trefは既知であるため、カウンタ20の計数値に応じて容易に発振信号Soscの周波数を演算することが可能である。第1の計数方法(図5(a))では、基準信号Srefの周波数Frefを計数値nで除することにより発振信号Socsの周波数fosc(=Fref/n)を演算できる。第2の計数方法(図5(b))では、基準信号Srefの周波数Frefに計数値nを乗じることにより発振信号Socsの周波数fosc(=Fref*n)を演算できる。
(計数値温度変換回路30)
上述したように、計数値温度変換回路30は、演算されたリングオッシレータ10の発振周波数focsに基づいて温度を特定するが、そのとき、計数値温度関係情報記憶部31に記憶されている計数値温度関係情報を参照する。
図6に発振周波数(計数値)−温度特性(関係情報)を例示する。
計数値温度関係情報は、例えば図6の特性f1〜f3に示すような特性を規定するような情報である。各々の特性f1〜f3の傾きが異なるのは、リングオッシレータ10を構成するトランジスタのバラツキに起因するものである。計数値温度関係情報記憶部31には、図6に示すような発振周波数focsとそれに対応した温度tとの関係が、関係式または関係テーブルの形式で保存されている。
特に本発明では、計数値温度関係情報記憶部31に記憶される計数値温度関係情報が、特性f1〜f3で表されるようないずれの特性であっても、所定の基準温度trefにおいて基準周波数frefが対応しているような関係情報である点に特徴がある。逆に言えば、トランジスタの特性がどのようにばらついても、基準温度trefでは必ず発振周波数foscが基準周波数frefとなるように調整された電源電圧Vdcをリングオッシレータ10に供給するよう、電源供給回路11が構成されている。この本発明の調整(「キャリブレーション」ともいう。)の意義は、このような調整をしていない場合と比べれば明らかとなる。
図7に本発明のキャリブレーションがされていない場合の発振周波数−温度特性を示す。
トランジスタの移動度μは製造過程である程度バラツキが生じてしまう。トランジスタの移動度がばらつけば、その移動度に応じて定まるリングオッシレータの発振周波数−温度特性も当然にばらつく。
ここで発振周波数−温度特性の傾きは、トランジスタの移動度のバラツキに基づくのに対し、各特性の温度軸(X軸)または発振周波数軸(Y軸)における切片は電源電圧Vdcによって変動する。もしもトランジスタのしきい値電圧に応じて電源電圧Vdcが調整されていなかったとすれば、図7のf1〜f3に示すように発振周波数−温度特性はばらつくものと考えられる。これでは、特定の移動度を有するトランジスタで構成されたリングオッシレータのための発振周波数−温度特性は、他の移動度を有するトランジスタで構成されたリングオッシレータに用いるには誤差が大きすぎて使えないものとなる。
図7において、測定対象温度範囲TRが図示されたような範囲であったとすれば、トランジスタのバラツキには、測定される温度の最大誤差は、Δtxで示されるような大きなものとなる。発振周波数−温度特性のばらつきを調整していない状態では、検出された温度にどの程度の誤差が含まれているのは判断することができない。これでは、最大誤差が許容範囲か否かに基づいて測定結果を利用することができなくなってしまう。
そこで、本実施形態1では、上記第1のキャリブレーション方法に基づき、リングオッシレータ(発振回路)の限界サンプルに基づいて基準温度における基準周波数を特定し、製造工程において、調整対象となるリングオッシレータ(製造品)について、基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧を特定し個別に設定する。すなわち、トランジスタの移動度特性がどのようにばらついていたとしても、リングオッシレータの発振周波数−温度特性が所定の基準点を必ず通るように、リングオッシレータの電源電圧Vdcを個別具体的に調整することを特徴としている。
図6は、本発明に従ってキャリブレーションされた場合の発振周波数−温度特性を示している。
図6に示すように、各発振周波数−温度特性f1〜f3の傾きは、製造上避けられないトランジスタの移動度のバラツキである。しかしながら、いずれの発振周波数−温度特性f1−f3であっても必ず基準点Prefを通過するように、すなわち所定の温度(基準温度tref)において所定の周波数(基準周波数fref)で発振するように調整されている。このため、基準温度trefにおける周波数の検出誤差はゼロ、基準温度trefから遠ざかるに連れてその偏差で定まる最大誤差範囲が線形的に求められることになる。特性f1とf3とが移動度の最大のバラツキに対応しているとすれば、図6では、測定対象温度範囲TRにおける最大誤差範囲は、Δtであると求めることができる。基準温度trefと測定対象温度範囲TRとを適宜選択することで、明らかな最大誤差の範囲内での温度測定が可能となるのである。この調整は、リングオッシレータ10の電源電圧Vdcを調整すること、すなわち、発振周波数−温度特性f1−f3を平行移動することで実現する。
具体的には、本実施形態では、トランジスタの移動度のバラツキを、製造上、特性が変動する最大範囲を規定する限界サンプル(マージナルサンプル:水準)にグループ分けする。そして任意に選んだ限界サンプルを基準限界サンプルとして基準温度trefにおける基準周波数frefを決定する。特に、本実施形態1で説明する第1のキャリブレーション方法では、実際の製造品について、基準温度trefにおいて基準周波数frefで発振するように電源電夏Vdcを個別に設定する。
(本実施形態の製造方法)
次に図8のフローチャートに基づいて、本実施形態のキャリブレーション方法について説明する。上述したように、本実施形態は、第1のキャリブレーション方法に対応している。以下のステップS100およびS101は、第1のキャリブレーション方法および第2のキャリブレーション方法の双方に共通のステップであり、ステップS102およびS103が当該第1のキャリブレーション方法に特化したステップである。
(ステップS100)
まず、限界サンプルのうちの一つを基準限界サンプルとして特定する。そして、その特定した限界サンプルについて基準電圧を特定する。
図9に、リングオッシレータに含まれるインバータを構成する第1(P型)トランジスタTr1および第2(N型)トランジスタTr2について、製造工程で生じうる移動度のバラツキの最大範囲を斜線で示してある。第1トランジスタTr1についての移動度μが最も高い方に振れているサンプルを「PH」で表し、最も低い方に振れているサンプルと「PL」で表す。第2トランジスタTr1についての移動度μが最も高い方に振れているサンプルを「NH」で表し、最も低い方に振れているサンプルと「NL」で表す。
限界サンプルとは、製造上のバラツキの最大範囲を代表するサンプルをいう。図9では、移動度のバラツキの最大範囲の頂点をなすP1〜P4の4点に中心点P0を加えた5つの点に対応するサンプルを限界サンプルとして利用する。限界サンプルPH−NHは、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2の移動度がともに最も高い方に振れているP1点に相当するサンプルである。限界サンプルPH−NLは、第1トランジスタTr1の移動度が最も高い方に、第2トランジスタTr2の移動度が最も低い方に振れているP2点に相当するサンプルである。限界サンプルPL−NHは、第1トランジスタTr1の移動度が最も低い方に、第2トランジスタTr2の移動度が最も高い方に振れているP3点に相当するサンプルである。限界サンプルPL−NLは、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2の移動度がともに最も低い方に振れているP4点に相当するサンプルである。限界サンプルPT−NTは、第1トランジスタTr1および第2トランジスタTr2の移動度がともに平均値であるP0点に相当するサンプルである。
これらの5点の限界サンプルから基準限界サンプルを特定する。電源電圧が比較的高い場合には、発振が停止することは考えられないため、所定の電源電圧において最も低い発振周波数を示した限界サンプルを基準限界サンプルとして選択することが好ましい。所定の電源電圧とはシステム内で主に使われる電源電圧であり、例えば1.8Vや3.3Vのようなシステム動作電圧である。この基準限界サンプルは他の限界サンプルと比較して、同じ周波数を発振するのに必要な電源電圧が最も高いため、このサンプルにより電源電圧の上限を決定することができる。
次いでその基準限界サンプルについて、基準電圧を定める。
基準電圧は、リングオッシレータ10を負の温度特性の領域で動作させることが判っているような任意の電源電圧である。
図10に、所定の周波数を発振させるために、各限界サンプルの各々について温度を変更しながら調整した電源電圧を示す。図10において、トランジスタサイズは同じしきい値電圧を有する限界サンプルにおいてトランジスタのサイズ、すなわちチャネル長やチャネル幅を種々に変化させた通し番号である。
図10に示すように、環境温度によって、限界サンプルによって、また同じ限界サンプルでもトランジスタサイズによって、同じ周波数(例えば60kHz)で発振させるための電源電圧が変化する。いくつかの条件に基づいて基準電圧を定める。その条件とは例えば次のようなものである。但し、多少基準電圧が変動しても、合わせ込み調整が可能なので厳格に設定する必要はない。
1)温度の上昇とともに発振周波数が減少するような負の温度特性を示す範囲で電源電圧Vdcを変化させる。ただし電源電圧の上限は基準限界サンプルによって決められるため、基準限界サンプルを使用して、システム上、実現困難なほど高い電圧は避けるべきである。
2)測定対象温度範囲の総てで発振するように電源電圧Vdcを変化させる。
3)消費電力を抑えるため、余り発振周波数が高くなりすぎない範囲で電源電圧Vdcを変化させる。
4)測定誤差を少なくするために、余りに発振周波数−温度特性の傾きが緩くならない範囲で電源電圧Vdcを変化させる。
5)変化させた電源電圧Vdcの範囲の中程から上限の間の電圧を基準電圧として特定する。
図10では、特定した基準限界サンプルP1(PH−NH)における電源電圧がトランジスタのサイズに応じて1.95V〜2.03Vの範囲で変動している。よって、1.990Vを基準電圧として選択する。
(ステップS101)
次のステップとして、特定された基準限界サンプルについて基準温度において、特定した基準電圧を印加した場合の発振周波数を基準周波数として特定する。ここで、通常の小型携帯機器に使用されるリングオッシレータを想定する場合、使用する温度範囲の中心温度は室温程度が普通であるため、ここでは所定の基準温度として25℃を想定する。
特に、複数の基準限界サンプルが示した発振周波数の中で最も低い周波数を基準周波数として特定する。最も低い発振周波数を基準周波数とするのは、ステップS100の基準限界サンプルを特定する場合と同じ理由によるものである。
図11は、基準限界サンプルP1(PH−NH)の限界サンプルの複数のチップについて、ステップS100で設定した基準電圧1.990Vを印加し基準温度下に配置した場合の発振周波数を示している。図11において、最も低い発振周波数はチップ番号2の58.408kHzである。よってこの周波数にマージンを見込んだ周波数58.390kHzを基準周波数として特定する。
以上の工程により、基準温度における適切な基準周波数が決定されるので、第1のキャリブレーション方法に特化した以下の工程により、製造された個々のリングオッシレータに対して、基準温度において基準周波数で発振するよう、電源電圧を調整していく。
(ステップS102)
次のステップとして、実際に製造されたリングオッシレータについて、基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧を特定する。この処理がキャリブレーションの中心的な処理となる。
実際に製造されたリングオッシレータの各々について、基準温度下で電源電圧を変化させながら発振周波数を測定し、発振周波数が基準周波数(=58.390kHz)となる場合の電源電圧Vdcを特定していくのである。
この処理は、図7のように限界サンプル毎に傾きがばらついている各特性f1〜3を、図6のように必ず基準点Prefを通るように調整する処理であり、具体的には製造品毎の電源電圧Vdcを正しく特定し、記録していく処理となる製造品毎に特定された電源電圧Vdcは製造される温度センサの電源供給回路11に設定できるように記録しておく。
(ステップS103)
最後のステップとして、上記キャリブレーション処理がされた製造品のための電源電圧を電源供給回路11に設定する。すなわち、調整対象となったリングオッシレータを備える温度センサにおいて、リングオッシレータごとに特定され記録された電源電圧Vdcを電源供給回路11に各々設定する。
図12は、移動度特性が最もばらつく製造品の代表として、限界サンプルを例に採り、上記キャリブレーションが終了した後の各限界サンプルについて、温度を変化させた場合の発振周波数の変化を測定したものである。図12に示すように、基準温度trefである25℃においていずれの限界サンプル(製造品)でも基準周波数fref=58.390kHzの近傍で発振するように調整されている。各々の限界サンプル毎に上記測定に基づいて特定される傾きが異なっている。
この傾きと通過点Pref(基準温度trefで基準周波数fref)とが定まれば、各限界サンプル(製造品)についての発振周波数−温度特性を特定できる。そこで、計数値温度関係情報記憶部31には、図12の測定の結果として特定された、リングオッシレータ10に搭載されている限界サンプルの種別に応じた発振周波数−温度特性(図6参照)を関係式または関係テーブルの形式で記憶する。
以上のキャリブレーションを経て製造された温度センサは、リングオッシレータ10が基準点Pref(基準温度trefで基準周波数fref)を通る発振周波数−温度特性が設定される。よって、当該温度センサによって計測される温度は、図6から明らかなように測定対象温度範囲TRに応じて一義的に最大誤差範囲Δtが明確なものとなる。
なお、上記ステップS100〜103の工程は、コンピュータ装置により自動化することが好ましいが、一部人手を介してもよい。
以上、本実施形態1によれば、以下のような利点を有する。
1)実施形態1の温度センサ1によれば、電源供給回路11は、リングオッシレータ10に印加する電源電圧を温度の上昇と共に発振周波数が減少する負の温度特性を持つような電源電圧を発振回路に供給するよう調整されている。そして、計数値温度変換回路30は、リングオッシレータ10のトランジスタの移動度に対応した発振周波数−温度特性を参照するので、温度変化に伴って発振周波数が変動した場合でもその発振周波数に対応する温度を正確に測定可能である。特に、リングオッシレータ10には、基準温度trefにおいて基準周波数frefで発振するようにキャリブレーションされた電源電圧Vdcが供給されているので、トランジスタの移動度にバラツキを生じていたとしても、測定対象温度範囲TRに応じた最大測定誤差Δtを予め把握可能となる。また、測定対象温度範囲TRと最大測定誤差Δtとの対応関係が明確になっているため、許容される誤差範囲に基づいて測定対象温度範囲TRを逆設定することも可能である。
2)上記実施形態1の電源供給回路11によれば、リングオッシレータ10が負の温度特性を示す範囲で電源電圧Vdcを調整するので、リングオッシレータ10の発振周波数に基づいて温度を測定することが可能となる。
3)上記実施形態1のリングオッシレータ10は、インバータINVを含み、インバータINVは、P型の第1トランジスタTr1とN型の第2トランジスタTr2とを直列接続して構成されているので、トランジスタのオン抵抗と設定容量または寄生容量とで定まる時定数に対応した周波数で発振させることが可能である。
4)上記実施形態1の電源供給回路11によれば、出力電圧である電源電圧Vdcが一対のトランジスタのゲートの仕事関数の差のみに影響するためトランジスタ製造過程において生じるバラツキの影響を受けず、正確な電源電圧を出力可能である。
5)上記実施形態1の電源供給回路11によれば、出力される電源電圧Vdcは温度の上昇に伴い減少する温度特性を示すので、リングオッシレータ10が有する負の温度特性の傾きを強める方向に作用する。そのため、負の温度特性を示す発振回路と組合せることにより、より検出誤差を少なくすることが可能となる。
6)上記実施形態1の製造方法によれば(ステップS100)、任意の限界サンプルを基準限界サンプルとして特定し、比較的緩やかな条件で基準電圧を設定することが可能なので、キャリブレーション処理が容易である。
7)上記実施形態1の製造方法(ステップS101)によれば、基準限界サンプル中で最も低い発振周波数を基準周波数として設定するので、他の限界サンプル総てについて、一定以上の精度を保証しうる発振周波数−温度特性の傾きを維持することが可能となる。
8)上記実施形態1の製造方法によれば(ステップS102・S103)、第1のキャリブレーション方法に基づき、基準電圧において基準周波数で発振するように総ての製造品の電源電圧がキャリブレーションされるので、予測される最大誤差から乖離することのない温度センサを提供可能である。また、測定対象温度範囲TRと最大誤差量とを正確に対応付けることが可能となる。
(第2実施形態)
上記実施形態1では温度センサ毎にキャリブレーションされた電源電圧Vdcを出力するように電源供給回路11が調整されていたが、本発明の実施形態2は、上記第2のキャリブレーション方法に基づき、基準サンプル以外のサンプルについて、基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧を予め特定しておく。そして、製造工程において、調整対象となる発振回路に対応する移動度を有するサンプルを選択し、選択されたサンプルのために特定されている電源電圧を調整対象となる発振回路のための電源電圧として個別に設定する。
図13に本実施形態2に係る温度センサ1のブロック図を示す。
図13に示すように、温度センサ1bは、リングオッシレータ10、カウンタ20、基準信号発振器21、計数値温度変換回路30、および計数値温度関係情報記憶部31を備える点は、上記実施形態1と同じである。
本実施形態2は、選択部12および電源電圧記憶部13を備え、電源供給回路11bは選択部12の設定値に応じた電源電圧Vdcを出力可能に構成されている点で、上記実施形態1と異なる。
選択部12は、複数の設定値を設定可能に構成されており、例えば、DIPスイッチのようなスイッチで構成される。例えば、図9に示すように5点の限界サンプルについて設定可能に構成するなら、設定値は「5」となるため、少なくとも3ビット(=8)の設定が可能なスイッチを設けることになる。選択部12に対する設定値と限界サンプルとの関係は例えば表1のようなものになる。
電源電圧記憶部13には、それぞれの限界サンプルに対して、上記実施形態1の製造方法で特定した電源電圧Vdcが記憶されている。すなわち、以下のステップS104で特定した、基準限界サンプルおよびそれ以外の限界サンプルについて、基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧Vdcが、限界サンプルに対応させて記憶されている。
電源供給回路11bは、選択部12の設定値に基づき対応する限界サンプルについての電源電圧Vdcを電源電圧記憶部13から読み取り、その電源電圧Vdcをリングオッシレータ10に供給するよう構成されている。電源供給回路11bは、出力する電源電圧を連続的に変更可能に構成されていることが好ましい。少なくとも設定対象となる限界サンプルの数だけ電源電圧を変更して出力可能に構成しておく必要がある。
例えば、図4に示した電源供給回路の回路構成において、第1抵抗R1をデジタル制御可能な可変抵抗器で構成しておき、設定値に応じて、式(5)で定まる抵抗比pを与えられるように制御することが考えられる。また抵抗値R1をタップ付きの抵抗器として構成しておき、設定値に応じてタップを切り換えて所望の抵抗比pを与えられるように構成してもよい。いずれにしても、少なくとも設定対象となる限界サンプルの数だけ電源電圧を変更して出力可能に構成しておく必要がある。
(本実施形態2の製造方法)
次に図14のフローチャートに基づいて、本実施形態2のキャリブレーション方法について説明する。
上述したように、本実施形態は、本発明の第2のキャリブレーション方法に対応している。以下のステップS100・S101については、上記実施形態1で説明した第1のキャリブレーション方法と共通しているので、その説明を省略する。ステップS104〜S106が当該第2のキャリブレーション方法に特化したステップである。
上記共通するステップS100・S101により、基準温度における適切な基準周波数が特定される。
(ステップS104)
次のステップとして、基準限界サンプル以外の限界サンプルについて、基準温度において基準周波数で発振させるための電源電圧を特定する。上記実施形態1では製造品のオッシレータ毎に行っていたキャリブレーションを、本実施形態2では限界サンプルについて行うのである。
このため、基準限界サンプル以外のサンプルの各々について、基準温度下で電源電圧を変化させながら発振周波数を測定し、発振周波数が基準周波数(=58.390kHz)となる場合の電源電圧Vdcを特定していく。この処理により、図7のように限界サンプル毎に傾きがばらついている各特性f1〜3が、図6のように必ず基準点Prefを通るように調整される。限界サンプル毎に特定された電源電圧Vdcは、製造される温度センサの電源供給回路11bに設定可能なように、限界サンプルと対応付けて電源電圧記憶部13に記録される。
(ステップS105)
次のステップからは、実際に製造されたリングオッシレータ各々に対する処理である。
まず、製造されたリングオッシレータ毎に、または、製造ロット毎に、製造品の移動度特性が、限界サンプルのいずれの移動度特性に近いかを判定する。そして最も移動度特性が近い限界サンプルを選択する。移動度特性が近いということは、同じ基準周波数を発振するために必要とされる電源電圧も近似しているということである。
(ステップS106)
そこで次のステップとして、選択された限界サンプルに対応する設定値となるよう選択部12を操作する。すなわち、製造工程において、当該温度センサ1bに搭載されたリングオッシレータ10のトランジスタの移動度特性が表1に示すいずれの限界サンプルに近似しているかに応じて選択部12に設定値が設定される。
電源供給回路11bは、選択部12が示している設定値を読み取り、表1のような対応関係に基づき、いずれの限界サンプルに対応しているかを判定する。そして対応する限界サンプルについて調整された電源電圧Vdcの値を電源電圧記憶部13から読み取り、その電源電圧Vdcをリングオッシレータ10に出力する。すなわち、電源供給回路11bにおいて、図4に示すような第1抵抗R1と第2抵抗R2との抵抗値pが変更され、電源電圧Vdcが調整対象となるリングオッシレータに出力される。選択部12に対する設定値が正しければ、リングオッシレータ10の発振周波数の温度特性は、基準点Pref(図6:基準温度trefにおいて基準周波数fref)を必ず通るようになるはずである。
なお、上記ステップS104〜106の工程は、コンピュータ装置により自動化することが好ましいが、一部人手を介してもよい。
また、上記実施形態2において、選択部12および電源電圧記憶部13は必須の構成ではない。調整対象となる製造品と移動度特性が近似している限界サンプルの電源電圧Vdcを直接的に電源供給回路11bに設定するように構成してもよい。
以上、実施形態2によれば、総ての限界サンプルに対して、基準点Prefを通るような発振周波数−温度特性に調整する電源電圧Vdcが設定可能である。よって、製造品において最も移動度特性が近似している限界サンプルについて調整された電源電圧Vdcを個別の製造品に設定することにより、基準温度において基準周波数で発振するよう温度センサを調整可能となる。
(実施形態3)
本発明の実施形態3では、上記実施形態で説明した温度センサを搭載するデバイスとして電気泳動装置を例示する。
図15に、本実施形態の電気泳動装置のブロック図を示す。
図15に示すように、電気泳動装置は、素子基板100、コントローラ300、温度センサ1(1b)、および駆動波形制御回路50を備えて構成される。
素子基板100は、表示パネルA、走査線駆動回路130、データ線駆動回路140、および対向電極変調回路150を備えている。表示パネルAは複数の画素105から構成されており、これらの画素105は、スイッチング素子であるTFT110、保持容量Cs、およびTFT110により電圧が供給される電気泳動素子120を含んで構成されている。表示パネルAには、図示のX方向に沿って平行に複数本の走査線101が形成され、Y方向に沿って平行に複数本のデータ線102が形成されている。そして、各画素は走査線101とデータ線102との交差に対応してマトリクス状に配列されている。
コントローラ300は、図示しないが、画像信号処理回路およびタイミングジェネレータを含んでいる。画像信号処理回路は、画像データ及び対向電極制御信号を生成し、それぞれ及びデータ線駆動回路140及び対向電極変調回路150に入力する。対向電極変調回路150は画素の共通電極及び保持容量の対向電極にそれぞれバイアス信号及び電源電圧を供給する。例えば、正又は負の高レベルのバイアス信号(リセット信号)によって画像のリセットが設定される。リセット信号は、データ駆動回路140が画像データを出力する前の所定期間に出力される。リセット動作は、電気泳動素子120において分散媒中を泳動している電気泳動粒子を画素電極又は共通電極に引き寄せ、空間的な状態を初期化するために用いられる。また、タイミングジェネレータは、リセット設定や画像データが画像信号処理回路から出力されるときに、走査線駆動回路130やデータ線駆動回路140を制御するための各種タイミング信号を生成する。
温度センサ1(1b)は、上記実施形態で説明したとおり、リングオッシレータ10の発振周波数に対応した環境温度情報を出力する。駆動波形制御回路50は、この環境温度情報に基づいて適切な駆動波形を特定可能に構成されている。
以下、例として駆動波形の一要素である駆動電圧を制御する場合について説明する。
図16に電気泳動素子における温度と適正な駆動電圧との関係を示す。
図16に示すように、電気泳動素子における粒子の移動速度は、荷電粒子を分散させる溶媒の粘度に強い相関関係を有しており、一般に温度が高い程溶媒の粘度は低くなる傾向にある。粘度が低いということは粒子が動き易いことを意味し、粒子の移動速度が高くなることを意味している。
荷電粒子の移動速度が大きい程、表示色の切り替わりが早い点では好ましいが、荷電粒子の移動速度が大き過ぎると、今度は対向電極に到達した荷電粒子が跳ね返るという好ましくない現象が生じる。そのため、荷電粒子の移動速度は適正な範囲に制御されるべきである。図16に示されている電圧は、環境温度に応じて定まる適正な駆動電圧である。
駆動波形制御回路50は、図16に示すような環境温度と適正な駆動電圧との関係情報を関係テーブルまたは関係式の形式で記憶しており、温度センサ1(1b)の出力した環境温度に適合した駆動電圧に対応した振幅となるように基準となる駆動波形を変形(増幅等)して変形後の駆動波形を走査線駆動回路130、データ線駆動回路140、および対向電極変調回路150に供給するようになっている。
以上のような構成において、表示パネルAにおいて、リセットタイミングで全走査線信号がアクティブになると、全データ信号が白あるいは黒のレベルに設定され、共通電極に対向電極変調回路150からリセット信号が印加されて、全電気泳動素子120が白又は黒表示に設定される(2値表示の場合)。その後、走査線101が順次に選択されて画像105への書込みが行われる。特定の画素105のTFT110がオン状態になると、走査線選択に同期してデータ線駆動回路140からデータ信号(画像信号)が電気泳動素子120の画素電極に書き込まれる。このとき、データ信号の電圧レベルで保持容量Csも充電され、TFT110の遮断後も画素(画素電極と共通電極)105の電荷保持を図り、電気泳動粒子120による画像の維持を図る。各画素105がデータ信号の電圧レベルに応じた表示を行うことによって画像が表示される。
以上、本実施形態3によれば、実装面積の小さな温度センサ1(1b)を用いて電気泳動素子120に適正な駆動波形を供給することが可能なので、腕時計等の小型の携帯機器に搭載する電気泳動装置として好適である。
(実施形態4)
本発明の実施形態4は、本発明の温度センサを適用した電子機器の応用例を示すものである。
図17は、上記実施形態3で説明した電気泳動装置を適用した電子機器の具体例を説明する斜視図である。
図17(A)は、電子機器の一例である電子ブックを示す斜視図である。
この電子ブック1000は、ブック形状のフレーム1001と、このフレーム1001に対して回動自在に設けられた(開閉可能な)カバー1002と、操作部1003と、本発明に係る電気泳動装置によって構成された表示部1004と、を備えている。
図17(B)は、電子機器の一例である腕時計を示す斜視図である。
この腕時計1100は、本発明に係る電気泳動装置によって構成された表示部1101を備えている。
図17(C)は、電子機器の一例である電子ペーパーを示す斜視図である。
この電子ペーパー1200は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体部1201と、本実施形態に係る電気泳動装置によって構成された表示部1202と、を備えている。
なお、電気泳動装置を適用可能な電子機器の範囲はこれに限定されず、帯電粒子の移動に伴う視覚上の色調の変化を利用した装置を広く含むものである。例えば、上記のような装置の他、電気泳動フィルムが貼り合わせられた壁面等の不動産に属するもの、車両、飛行体、船舶等の移動体に属するものも該当する。
また電子機器は、必ずしも電気泳動装置を備える必要はなく、温度センサにより検出された温度に基づき何からの制御や表示を行うあらゆる機器が想定される。
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々に変形して適用することが可能である。
例えば、上記実施形態では、発振回路として、リングオッシレータを例示していたがこれに限定されない。温度の上昇とともに発振周波数が減少するような発振回路であれば、本発明を適用する異が可能である。例えば集積回路のヒステリシス特性を利用する発振回路、非安定マルチバイブレータ等が利用可能である。
実施形態1における温度センサのブロック図 実施形態1における発振回路の例としてリングオッシレータの構成図 発振回路に供給する電源電圧の変化に対応して変化する発振周波数−温度特性 実施形態1における電源供給回路の具体的な回路構成図 カウンタの計測方法の説明図。(a)は第1の計測方法、(b)は第2の計測方法。 本実施形態に係る製造方法によりキャリブレーション処理がされた発振回路の発振周波数−温度特性例 キャリブレーション処理がされない場合の発振回路の発振周波数−温度特性例 実施形態1に係る温度センサの製造方法(第1のキャリブレーション方法)を示すフローチャート トランジスタのしきい値電圧のバラツキと限界サンプルとの説明図 実施形態1のステップS100における限界サンプルに応じた電源電圧の測定結果例 実施形態1のステップS101における基準周波数の測定結果例 実施形態1のステップS102の限界サンプルについての電源電圧の測定結果例 実施形態2における温度センサのブロック図 実施形態2に係る温度センサの製造方法(第2のキャリブレーション方法)を示すフローチャート 実施形態3における電気泳動装置のブロック図 電気泳動素子における温度と適正駆動電圧との関係図 実施形態4における電子機器の斜視図であり、(A)は電子ブック、(B)は腕時計、(C)は電子ペーパー。
符号の説明
1、1b…温度センサ、10…リングオッシレータ、11、11b…電源供給回路、12…選択部、13…電源電圧記憶部、20…カウンタ、21…基準信号発振器、30…計数値温度変換回路、31…計数値温度関係情報記憶部、40…ディスプレイ、50…駆動波形制御回路、100…素子基板、101…走査線、102…データ線、105…画素、120…電気泳動素子、130…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路、140…データ線駆動回路、150…対向電極変調回路、300…コントローラ、1000…電子ブック、1001…フレーム、1002…カバー、1003…操作部、1004…表示部、1100…腕時計、1101…表示部、1200…電子ペーパー、1201…本体部、1202…表示部、A…表示パネル、C…キャパシタ、Cs…保持容量、Vdc…電源電圧、focs…発振周波数、fref…基準周波数、INV…インバータ、Pref…基準点、Socs…発振信号、Sref…基準信号、TR…測定対象温度範囲、Tr1…第1トランジスタ、Tr2…第2トランジスタ、tref…基準温度、Δt…最大測定誤差、Tr11〜Tr15…トランジスタ、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、IC…定電流源

Claims (15)

  1. 発振回路と、
    該発振回路に所定の電源電圧を供給する電源供給回路と、
    該発振回路の発振周波数に基づいて温度を特定する温度特定回路と、を備え、
    該発振回路は、温度の上昇に対応して発振周波数が減少するように構成されており、
    該電源供給回路は、該発振回路に所定の基準温度において所定の基準周波数で発振させるための電源電圧を供給するように構成されており、
    該温度特定回路は、該発振回路の発振周波数と温度との関係情報に基づいて温度を特定するように構成されていること、
    を特徴とする温度センサ。
  2. 前記電源供給回路は、
    前記発振回路に印加する前記電源電圧を、温度の上昇と共に発振周波数が減少する温度特性を前記発振回路が示す範囲に設定する、
    請求項1に記載の温度センサ。
  3. 前記発振回路は、インバータを含んで構成されるリングオッシレータであり、
    該インバータは、前記電源電圧と接地電位との間に第1の極性を有する第1トランジスタと該第1の極性とは対極の第2の極性を有する第2トランジスタとを直列接続して構成されている、
    請求項2に記載の温度センサ。
  4. 前記電源供給回路は、
    トランジスタを構成する半導体の極性に応じて定まる仕事関数の差を利用して電源電圧を調整可能に構成されており、出力される前記電源電圧が温度の上昇と共に減少する温度特性を備える、
    請求項2に記載の温度センサ。
  5. 前記電源供給回路は、
    第1の電流路と第2の電流路とに略等しい電流を流すカレントミラー回路と、
    該第1の電流路と接地電位との間に直列接続された、抵抗値R1を有する第1抵抗および抵抗値R2を有する第2抵抗と、
    該第1の電流路にドレインが接続され、ゲートが接地された、第1のしきい値を有する第1のトランジスタと、
    該第2の電流路にドレインが接続され、ゲートが該第1抵抗と該第2抵抗との接続点に接続された、第2のしきい値を有する第2のトランジスタと、
    該第1のトランジスタのソースと該第2のトランジスタのソースとに接続する定電流源と、を備え、
    前記第1のトランジスタにおける第1のしきい値と前記第2のトランジスタにおける第2のしきい値との差分ΔVthと、前記抵抗値R1および前記抵抗値R2に基づく抵抗比(1+R1/R2)とを乗じた値が前記発振回路に供給する電源電圧となるように、前記第1抵抗および前記第2抵抗の抵抗値R1およびR2が定められ、
    該第1の電流路の電位が前記電源電圧として供給される、
    請求項4に記載の温度センサ。
  6. 前記電源供給回路には、トランジスタの移動度を種々にばらつかせた前記発振回路のサンプルの各々について、前記基準温度において前記基準周波数で発振させるための電源電圧が各々記憶されており、
    さらに前記発振回路がいずれのサンプルに属するかを設定する選択部が設けられており、
    前記電源供給回路は、前記抵抗値R1および前記抵抗値R2に基づく抵抗比が任意に変更可能に構成されており、前記選択部の設定の対応するサンプルについて記憶された前記電源電圧となるよう前記比率を変更する、
    請求項5に記載の温度センサ。
  7. 前記温度特定回路は、カウンタと、該カウンタの計数値を温度情報に変換する計数値温度変換回路と、を備え、
    該カウンタは、前記発振回路の発振周波数より高い周波数を有する基準信号が入力されており、前記発振回路からの発振信号の一定周期当たりに入る該基準信号の周期数を前記計数値として出力する、
    請求項1に記載の温度センサ。
  8. 前記温度特定回路は、カウンタと、該カウンタの計数値を温度情報に変換する計数値温度変換回路と、を備え、
    該カウンタは、前記発振回路の発振周波数より低い周波数を有する基準信号が入力されており、
    該基準信号の一定周期当たりに入る前記発振回路からの発振信号の周期数を前記計数値として出力する、
    請求項1に記載の温度センサ。
  9. 電気泳動素子と、前記温度センサにより特定された前記温度に基づいて駆動波形を変更する駆動波形制御回路と、該駆動波形で該電気泳動素子を駆動する駆動回路と、を備える、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の温度センサを備える電気泳動装置。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の温度センサを備えた、電子機器。
  11. 発振回路を備えた温度センサの製造方法であって、
    該発振回路は、温度が上昇するに連れて発振周波数が減少するものであり、
    トランジスタの移動度を種々にばらつかせた発振回路の複数のサンプルのうちいずれか一つを基準サンプルとして特定するステップと、
    特定された該基準サンプルについて基準電圧を特定するステップと、
    所定の基準温度において、該基準サンプルに該基準電圧を印加した場合の発振周波数を基準周波数として特定するステップと、
    調整対象となる発振回路について、該基準温度において該基準周波数で発振させるための電源電圧を設定するステップと、
    を備えたことを特徴とする温度センサの製造方法。
  12. 前記基準サンプルを特定するステップは、
    所定の電圧において複数のサンプルが示した発振周波数の中で最も低い周波数で発振したサンプルを基準サンプルとして特定する、請求項11に記載の温度センサの製造方法。
  13. 前記電源電圧を設定するステップは、
    前記調整対象となる発振回路について前記該基準温度において前記基準周波数で発振させるための電源電圧を特定するステップと、
    特定された前記調整対象となる発振回路のための電源電圧を当該発振回路の電源電圧として設定するステップと、を備える、
    請求項11に記載の温度センサの製造方法。
  14. 前記電源電圧を設定するステップは、
    該基準サンプル以外のサンプルについて、該基準温度において該基準周波数で発振させるための電源電圧を特定するステップと、
    前記調整対象となる発振回路に対応する移動度を有するサンプルを選択するステップと、
    選択された前記サンプルのために特定されている前記電源電圧を前記調整対象となる発振回路のための電源電圧として設定するステップと、を備える、
    請求項11に記載の温度センサの製造方法。
  15. 前記基準周波数を特定するステップは、複数の基準サンプルが示した発振周波数の中で最も低い周波数を前記基準周波数として特定する、
    請求項11に記載の温度センサの製造方法。
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