JP2009203460A - ポリマーアロイの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた機械特性を有する構造材料や、優れた規則性を有する機能材料を提供するにあたり、加熱溶融時の分散相サイズの粗大化による特性低下を抑制しうるポリマーアロイの製造方法を提供することをその課題とするものである。
【解決手段】少なくとも2成分からなるポリマーアロイを製造する際に、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成した後に、電子線等の放射線を照射することで、重合反応および架橋反応が進行し、その結果、相分離構造が固定化され、再溶融混練時の構造粗大化を抑制することができる。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも2成分からなるポリマーアロイを製造する際に、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成した後に、電子線等の放射線を照射することで、重合反応および架橋反応が進行し、その結果、相分離構造が固定化され、再溶融混練時の構造粗大化を抑制することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、優れた機械特性を活かして構造材料や、優れた規則性を活かして機能材料として有用に用いることができる、ナノメーターオーダーからマイクロメーターオーダーに構造制御可能なポリマーアロイの製造方法に関する。
近年、高分子材料の発展はめざましいものがあり、用途的に見て、日常用品に限らず、自動車、航空機、エレクトロニクスデバイス、メディカルデバイスなどあらゆる産業分野にわたっている。その理由としては、様々な構造の樹脂が開発されてきて、そのニーズに柔軟に対応してきたからと言える。しかしながら、高分子材料に対して要求されるスペックはさらに高いものとなり、既存の単一の樹脂では目標をクリアできなくなってきている。そこで、異なった物性を有する樹脂を組み合わせ、各々の原料となる樹脂の長所を引き出し、短所を補い合うことで、単一の樹脂に比べて優れた特性を発現させる技術、いわゆるポリマーアロイ化技術による新規材料の開発が活発に行われている。
ポリマーアロイの特性は、原料樹脂の物性が大きく影響することは言うまでもないが、それら樹脂の分散相サイズと均一性によっても大きく変化し、分散相サイズを1μm以下に制御することで靭性向上といった力学特性の向上が期待できる(特許文献1)。
一方、高分子材料の特徴として、押出成形や射出成形などの成形方法で所望の形状に成形することが挙げられる。ポリマーアロイも同様に、上記成形方法で所望の形状に成形され製品として供される。上記成形方法では、樹脂をガラス転移点温度以上、分解温度以下の温度まで加熱溶融し、該溶融樹脂を様々な形状の口金あるいは金型を用いて成形することとなる。この際、ポリマーアロイを溶融することで各ポリマー相が拡散、合体あるいは分離し相分離構造サイズが変化することが懸念される。すなわち、成形前の段階で所望の相分離構造サイズにあったポリマーアロイが、成形することにより相分離構造サイズが変化し、ポリマーアロイの物性が低下する危険性がある。
かかる問題に対して、成形での相分離構造サイズ変化を勘案し、原料ポリマーアロイの相分離サイズを設定することが行われているが、成形条件が変更となった場合、原料ポリマーアロイの相分離構造サイズの再調整が必要となったり、他の成形品へと転用が出来ないといった問題があった。
特開2003−286414号公報
本発明は、優れた機械特性を有する構造材料や、優れた規則性を有する機能材料を提供するにあたり、加熱溶融時の分散相サイズの粗大化による特性低下を抑制しうるポリマーアロイの製造方法を提供することをその課題とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
1.少なくとも2種類の樹脂成分で構成される樹脂組成物からなる成形品となるポリマーアロイの製造方法であって、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成しているポリマーアロイからなる成形品に、放射線照射することを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
2.上記成形品となるポリマーアロイが、上記両相連続構造または分散構造を形成後、構造を固定化した後に放射線照射することを特徴とする1に記載のポリマーアロイの製造方法。
3.上記両相連続構造または分散構造がスピノーダル分解による相分離で形成されることを特徴とする1または2のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
4.放射線照射により、樹脂組成物を構成する樹脂成分のいずれかと化学結合を形成しうる放射線架橋助剤共存下で放射線照射することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
5.樹脂組成物を構成する樹脂成分の少なくとも1成分の前駆体を残りの樹脂成分共存下化学反応することで相分離を誘発させることで、両相連続構造、または分散構造を形成することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
6.ポリマーアロイの小角X線散乱スペクトルまたは、電子顕微鏡観察画像をフーリエ変換して得られるスペクトルのピーク半値幅を(a)、ピークの極大波長を(b)とするとき0<(a)/(b)≦1.2であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
7.放射線が電子線および/またはγ線であることを特徴とする1〜6のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
8.放射線照射を不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする1〜7のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
1.少なくとも2種類の樹脂成分で構成される樹脂組成物からなる成形品となるポリマーアロイの製造方法であって、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成しているポリマーアロイからなる成形品に、放射線照射することを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
2.上記成形品となるポリマーアロイが、上記両相連続構造または分散構造を形成後、構造を固定化した後に放射線照射することを特徴とする1に記載のポリマーアロイの製造方法。
3.上記両相連続構造または分散構造がスピノーダル分解による相分離で形成されることを特徴とする1または2のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
4.放射線照射により、樹脂組成物を構成する樹脂成分のいずれかと化学結合を形成しうる放射線架橋助剤共存下で放射線照射することを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
5.樹脂組成物を構成する樹脂成分の少なくとも1成分の前駆体を残りの樹脂成分共存下化学反応することで相分離を誘発させることで、両相連続構造、または分散構造を形成することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
6.ポリマーアロイの小角X線散乱スペクトルまたは、電子顕微鏡観察画像をフーリエ変換して得られるスペクトルのピーク半値幅を(a)、ピークの極大波長を(b)とするとき0<(a)/(b)≦1.2であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
7.放射線が電子線および/またはγ線であることを特徴とする1〜6のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
8.放射線照射を不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする1〜7のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
本発明によれば、少なくとも2成分からなるポリマーアロイを製造する際に、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成した後、放射線照射することで加熱溶融時の分散相サイズの粗大化を抑制し、ポリマーアロイの特性低下を防止することができる。
ポリマーアロイは、各々の原料となるポリマーの長所を引き出し、短所を補い合うことで、単一の樹脂に比べて優れた特性を発現する。このとき重要となるのが、ポリマーアロイの両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズ、いわゆる相分離構造のサイズと均一性である。相分離構造サイズが大きすぎる場合や小さすぎる場合は、各々の原料の物性が発現するのみで、短所を補い合うことが困難となるため好ましくない。したがって、相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズは、0.001〜1μmが好ましく、0.001〜0.5μmがより好ましく、0.001〜0.3μmがさらに好ましい。
またこれらの両相連続構造、もしくは分散構造を確認するためには、規則的な周期構造が確認されることが重要である。これは例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認に加えて、小角X線散乱装置または光散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることの確認が必要である。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λmは、両相連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θmを用いて次式
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
により計算することができる。また、相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズが上記の範囲にあっても、一部構造的に粗大な部分などがあると、例えば衝撃を受けた際そこを起点として破壊が進行するなど、本来のポリマーアロイの特性が得られないことがある。したがって、ポリマーアロイの相分離構造サイズの均一性が重要となる。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
により計算することができる。また、相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズが上記の範囲にあっても、一部構造的に粗大な部分などがあると、例えば衝撃を受けた際そこを起点として破壊が進行するなど、本来のポリマーアロイの特性が得られないことがある。したがって、ポリマーアロイの相分離構造サイズの均一性が重要となる。
この均一性は、構造周期または粒子間距離が0.001μm以上0.1μm未満のポリマーアロイの場合は小角X線散乱測定により、構造周期または粒子間距離が0.1μm以上1μm以下のポリマーアロイの場合は光散乱測定により評価することが可能である。小角X線散乱と光散乱は、分析可能な相分離構造サイズが異なるので、分析するポリマーアロイの相分離構造サイズに応じて適宜使い分けする必要がある。小角X線散乱測定および光散乱測定は両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズに加え、その分布に関する情報が得られる。具体的には、それら測定で得られるスペクトルにおける散乱極大のピーク位置、すなわち散乱角θmが両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズに対応し、そのピークの拡がり型が、構造の均一性に対応する。本発明では、均一性の指標として、小角X線散乱測定または光散乱測定において、散乱光の波数に対して散乱強度をプロットしたスペクトルの散乱極大ピーク半値幅に着目した。ただし、ピークの半値幅はピーク極大波数の増加に伴い増大する傾向にあるので、ピークの半値幅(a)、ピーク極大波数(b)とから計算される(a)/(b)の値を構造均一性の指標とした。優れた機械特性などの物理特性を発現するためには、構造均一性が高い方が好ましく、前記(a)/(b)の値においては1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。また、ポリマーアロイの構造は均一である程良いので、(a)/(b)の下限値は特に限定されない。
光散乱測定、小角X線回折測定において、サンプルは薄膜状とする必要がある。薄膜化はミクロトーム等による切片切り出しや、加熱プレスにより可能である。光散乱装置の場合は、厚さ0.1mm程度のカバーガラスにポリマーアロイを挟み込み、加熱プレスすることで簡便に薄膜状試料を得ることが可能である。小角X線回折の場合、カバーガラスによるX線吸収があるため注意が必要である。加熱プレスの場合、熱を加え過ぎたり、プレス時間が長いと、サンプルによっては構造が粗大化する場合があるので、プレス条件の決定は慎重に行う必要がある。また、結晶性樹脂の場合、結晶化によりアロイ構造が変化する可能性があるため加熱プレス後は速やかに急冷し、構造を固定化する必要がある。
薄膜状に調製したサンプルは、中心部分を測定する。サンプルが測定装置の試料ホルダーサイズに対して大きすぎる場合は、サンプルを中心部分から切り出し測定する。サンプルの厚さは、可能な限り大きなシグナル強度が得られるように複数のサンプルを重ねて最適な厚さに調節する。シグナル強度はサンプル厚さに比例して増加するが、測定光の吸収もLambert-Beerの法則に従い試料厚さ対して指数関数的に増加し、その分シグナル強度が減少するので、両者のバランスに応じて試料厚さを決定する必要がある。
また、屈折率差が小さいポリマーの組み合わせからなるポリマーアロイは、シグナル強度が小さいため測定が困難である。そのような場合、必要に応じてヨウ素、RuO4、OsO4等の染色試薬で処理することも有効である。ポリマー組成が等比ではない場合など、各ポリマー成分の構造周期または粒子間距離といった構造サイズが異なることがあり、各々のポリマー成分の構造サイズに応じたピークが複数観測されることがある。その際は、散乱光の散乱体内での波長λの常用対数に対して散乱強度Iをプロットし、各々のピークにおける近似二次曲線からピークの半値幅を導出する。このように複数のピークが存在する場合、そのうち少なくとも一つのピークにおいて、前記(a)/(b)の値においては1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。本発明におけるピークの半値幅とはピークの頂点(点A)からグラフ縦軸に平行な直線を引き、該直線とスペクトルのベースラインとの交点(点B)としたとき、(点A)と(点B)を結ぶ線分の中点(点C)におけるピークの幅である。なお、ここで言うピークの幅とは、ベースラインに平行で、かつ(点C)を通る直線上の幅のことである。
続いて、成形時における相分離構造サイズの変化について説明する。高分子材料の特徴として、押出成形や射出成形などの成形方法で所望の形状に成形することが挙げられる。ポリマーアロイも同様に、上記成形方法で所望の形状に成形され製品として供される。上記成形方法では、樹脂をガラス転移点温度以上、分解温度以下の温度まで加熱溶融し、該溶融樹脂を様々な形状の口金あるいは金型を用いて成形することとなる。この際、ポリマーアロイを溶融することで各ポリマー相が拡散、合体あるいは分離し相分離構造サイズが変化することが懸念される。すなわち、成形前の段階で所望の相分離構造サイズにあったポリマーアロイが、成形することにより相分離構造サイズが変化し、ポリマーアロイの物性が低下する危険性がある。
かかる問題に対して、成形での相分離構造サイズ変化を勘案し、原料ポリマーアロイの相分離サイズを設定することが行われているが、成形条件が変更となった場合、原料ポリマーアロイの相分離構造サイズの再調整が必要となったり、他の成形品へと転用が出来ないといった問題がある。
そこで、ポリマーアロイ製造時に相分離構造が所望のサイズに達したポリマーアロイまたは該ポリマーアロイからなる成形品に、放射線を照射し、分子間架橋することで、溶融時の分子のモビリティーを低下させ、成形工程などで溶融した際の相分離構造サイズが変化することを抑制することを特徴とする。
また、溶融状態にあれば、放射線照射中においても相分離構造の粗大化が進行する可能性がある。そこで、ポリマーアロイ作製時に相分離構造が所望のサイズに達した時点で、一旦ポリマーアロイをガラス転移点温度以下に急冷することで構造固定化し、その後に放射線照射することも可能である。
ポリマーアロイを構成する分子を架橋可能であれば、放射線の種類は特に限定されないが、比較的高エネルギーである電子線やγ線が好ましく用いることができる。特に電子線は、オンラインで照射が可能であり、かつ線量コントロールも比較的容易であることから好ましい。ただし、ポリマーアロイが肉厚な場合、電子線は透過力が小さいので、放射線の吸収線量に分布が発生する可能性があり、注意が必要である。このような場合、被照射体の両側から照射することも可能である。また電子線に比べて透過力が高いγ線を用いることで均一に照射することも可能である。
放射線を照射するポリマーアロイの形状は、ガット状、ペレット状、フィルム状、シート状、リボン状、繊維状などいずれの形状であってもよい。
放射線を照射するポリマーアロイの形状は、ガット状、ペレット状、フィルム状、シート状、リボン状、繊維状などいずれの形状であってもよい。
ポリマーの種類によっては、放射線照射することで分子鎖の架橋反応より切断反応が優先的に進行することがあるので、注意が必要である。一般的に切断反応が優先的に進行する高分子の例としては、ポリイソブチレン、ポリ(α−スチレン)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリオキシメチレン、エポキシ樹脂、セルロース類などが挙げられる。一方、架橋反応が優先して進行する高分子の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、脂肪族系ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリ(エーテルエーテルケトン)等が挙げられる。本発明はこれらのポリマーを少なくとも1種以上含む組成物に適用できる。
放射線の線量は、ポリマーアロイを構成するポリマーの種類によって各々異なるので一概にいえないが、種々の線量での予備実験により条件を設定することが可能である。線量が低すぎると架橋反応が十分に進行しないおそれが、逆に線量が高すぎると照射コストが高くなるばかりでなく、照射時間が長くなり生産性が著しく低下するおそれがあり、さらには架橋反応が過剰に進行してしまい溶融できなくなる危険性がある。一般的には吸収線量として10kGy以上5000kGy以下が好ましく、25kGy以上3000kGy以下がより好ましく、50kGy以上1000kGy以下が特に好ましい。放射線量の測定は、一般的な線量計をサンプルと同時に照射することにより簡便に計測することが可能である。
放射線照射による反応は、主にラジカルを活性種とした反応である。したがって、反応系内にラジカルと反応しうる物質が共存することで、結果が大きく異なる可能性があり、注意が必要である。例えば、酸素雰囲気下で放射線照射すると、放射線酸化反応が進行し、先述の架橋反応が優先的に進行する高分子であっても主鎖の切断反応が進行する危険性がある。このような場合は、アルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気下で放射線照射したり、酸素吸収剤を併用することで防ぐことができる。逆にラジカルと反応する物質を積極的に利用することも可能である。例えば、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、一級アルコール、二級アルコールなどのラジカル捕捉剤を系内加えると、これら化合物が優先的にラジカルと反応するため、ポリマーの切断反応を制御することも可能である。
放射線照射の場合、低線量で短時間処理することがコスト削減となる。また、放射線による高分子の劣化を抑制するためにも線量を低く抑えることが重要である。そのような場合、多官能性モノマーなどの放射線架橋助剤を併用し、架橋反応の効率を向上させることも可能である。放射線架橋助剤としては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリメトキシエトキシシラン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラジメチロールメタンテトラメタクリレートなどが挙げられる。本発明におけるポリマーアロイとは少なくとも2種類の樹脂成分からなる高分子多成分系のことを指し、具体的には溶融ブレンド、溶融キャストブレンド、ラテックスブレンド等の物理的ポリマーブレンド、溶液グラフト、溶融高分子反応物等の化学的ポリマーブレンドにより得ることができる。
例えば、2種類の樹脂成分からなるポリマーアロイの場合、それぞれの成分の割合は、1/99〜99/1(質量比)が好ましく、2種類の樹脂成分のそれぞれの特徴をもつポリマーアロイとするためには、5/95〜95/5(質量比)が好ましく、10/90〜90/10がさらに好ましい。
一般に、2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、これらの組成に対して、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶する相溶系や、逆に全領域で非相溶となる非相溶系や、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態となる、部分相溶系があり、さらにこの部分相溶系には、その相分離状態の条件によってスピノーダル分解によって相分離するものと、核生成と成長によって相分離するものがある。
スピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図においてスピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指し、また核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶した場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂2 ΔGmix/∂φ2)が0となる曲線のことであり、またスピノーダル曲線の内側では、∂2ΔGmix/∂φ2<0の不安定状態であり、外側では∂2ΔGmix/∂φ2 >0である。
またかかるバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶する領域と相分離する領域の境界の曲線のことである。
ここで本発明における相溶する場合とは、分子レベルで均一に混合している状態のことであり、具体的には異なる2成分の樹脂を主成分とする相がいずれも0.001μm以上の相構造を形成していない場合を指し、また、非相溶の場合とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分の樹脂を主成分とする相が互いに0.001μm以上の相構造を形成している状態のことを指す。相溶するか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers, Munich Vienna New York,P64, 1990年に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、急速に不安定領域の温度にした場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成するため、上述の微細かつ均一な構造を有するポリマーアロイの作製において好適である。一方、上述の準安定領域での相分離である核生成と成長では、その初期から海島構造である分散構造が形成されてしまい、それが成長するため、スピノーダル分解と比較して、微細で均一な構造形成に適しているとは言えない。
この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]-1/2
(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
ここで本発明でいうところの両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ 基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人、1993年)に記載されている。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]-1/2
(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
ここで本発明でいうところの両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ 基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人、1993年)に記載されている。
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行するが、本発明においては、最終的に巨視的な2相に分離する前の所望の構造周期に到達した段階で放射線照射すればよい。また中期過程から後期過程にかける波長の増大過程において、組成や界面張力の影響によっては、片方の相の連続性が途切れ、上述の両相連続構造から分散構造に変化する場合もある。この場合には所望の粒子間距離に到達した段階で放射線照射すればよい。
ここで本発明にいうところの分散構造とは、片方の樹脂成分が主成分であるマトリックスの中に、もう片方の樹脂成分が主成分である粒子が点在している、いわゆる海島構造のことをさす。
スピノーダル分解を実現させるためには、2成分以上からなる樹脂を相溶状態とした後、スピノーダル曲線の内側の不安定状態とすることが必要である。
まずこの2成分以上からなる樹脂で相溶状態を実現する方法としては、共通溶媒に溶解後、この溶液から噴霧乾燥、凍結乾燥、非溶媒物質中の凝固、溶媒蒸発によるフィルム生成等の方法により得られる溶媒キャスト法や、部分相溶系を、相溶条件下で溶融混練することによる溶融混練法が挙げられる。中でも溶媒を用いないドライプロセスである溶融混練による相溶化が、実用上好ましく用いられる。
スピノーダル分解を実現させるためには、2成分以上からなる樹脂を相溶状態とした後、スピノーダル曲線の内側の不安定状態とすることが必要である。
まずこの2成分以上からなる樹脂で相溶状態を実現する方法としては、共通溶媒に溶解後、この溶液から噴霧乾燥、凍結乾燥、非溶媒物質中の凝固、溶媒蒸発によるフィルム生成等の方法により得られる溶媒キャスト法や、部分相溶系を、相溶条件下で溶融混練することによる溶融混練法が挙げられる。中でも溶媒を用いないドライプロセスである溶融混練による相溶化が、実用上好ましく用いられる。
溶融混練により相溶化させるには、通常の押出機が用いられるが、2軸押出機を用いることが好ましい。また、樹脂の組み合わせによっては射出成形機の可塑化工程で相溶化できる場合もある。相溶化のための温度は、部分相溶系の樹脂が相溶する条件である必要がある。
次に溶融混練により相溶状態としたポリマーアロイをスピノーダル曲線の内側の不安定状態として、スピノーダル分解せしめるに際し、不安定状態とするための温度、その他の条件は樹脂の組み合わせによっても異なり、一概にはいえないが、相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより設定することができる。本発明においては前記の如く、初期過程の構造周期を特定の範囲に制御した後、中期過程以降でさらに構造発展させて本発明で規定する特定の両相連続構造もしくは、分散構造とすることが好ましい。
この初期過程で本発明で規定する特定の構造周期に制御する方法に関しては、特に制限はないが、ポリマーアロイを構成する個々の樹脂成分のガラス転移温度のうち最も低い温度以上で、かつ上述の熱力学的に規定される構造周期を小さくなるような温度で熱処理することが好ましい。ここでガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)にて、室温から20℃/分の昇温速度で昇温時に生じる変曲点から求めることができる。
また、均一性に優れた熱可塑性ポリマーアロイを得る方法として、樹脂成分の前駆体(A)を残りの樹脂成分(B1)および/または樹脂成分の前駆体(B2)の共存下で化学反応させることでスピノーダル分解を誘発する、すなわち反応誘発型相分解を利用することも可能である。本方法では、従来の一般的なポリマーアロイの製造法である溶融混練と比較して、剪断や圧力が小さいことが特徴であり、その結果、分子量低下のリスクが低いという特徴、剪断力や圧力の分布に起因する相分離構造の均一性低下のリスクが低いという特徴がある。特に化学反応が重合など分子量の増加を伴う場合、すなわちポリマーアロイを構成する樹脂成分の原料、オリゴマー或いは低分子量物など(樹脂成分の前駆体)が残りの樹脂成分と相溶系であって、上記モノマー、オリゴマー或いは低分子量物を高重合度化し、アロイ化すべき樹脂とした場合に他の樹脂成分と相分離を生じるような場合、スピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)が小さくなるため、ポリマーアロイの構造周期をより微細化可能であるため好ましい。一方、従来の溶融混練によるポリマーアロイ化の場合、ポリマーを溶融しつつ剪断や圧力を付与し、ポリマー間の自由体積を圧縮することで、ポリマー同士を相溶化し、アロイ化するため、剪断や圧力付与による分子量低下以外に剪断や圧力に分布が生じると構造周期または分散構造における粒子間距離の均一性が低下する危険性があり、注意が必要である。またこの場合、重合や架橋による分子量変化に伴い、ガラス転移温度や、結晶性樹脂の場合における結晶融解温度が変化し、さらに分子量変化による相溶解から相分解への変化は系によって各々異なるため、相溶化のための温度、初期過程を形成させるための熱処理温度、および初期過程から構造発展させる熱処理温度や、その他の条件は、一概にはいえないが、種々の分子量との組み合わせでの相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより条件を設定することができる。
本アロイ化方法は、かかる均一な構造を有するポリマーアロイの作製に有効である他に、従来アロイ化が困難とされていた組み合わせのポリマーでもアロイ化が可能となるといった特徴もある。以下にこの点について説明する。
異なる分子が相溶するためには混合自由エネルギー変化(ΔGM)が負になる必要がある。混合自由エネルギーは、混合エンタルピー変化(ΔHM)、混合エントロピー変化(ΔSM)、温度(T)から次式
ΔGM=ΔHM―TΔSM
により計算される。したがって、混合自由エネルギー変化が負となるためには混合エントロピー変化が大きい方が有利である。混合自由エントロピーはFlory−Huggins理論により、重合度の逆数に比例する。すなわち、重合度1000のポリマーとモノマーとでは混合自由エントロピー変化が1000倍もの違いが生ずる。
ΔGM=ΔHM―TΔSM
により計算される。したがって、混合自由エネルギー変化が負となるためには混合エントロピー変化が大きい方が有利である。混合自由エントロピーはFlory−Huggins理論により、重合度の逆数に比例する。すなわち、重合度1000のポリマーとモノマーとでは混合自由エントロピー変化が1000倍もの違いが生ずる。
したがって、本発明におるモノマーやオリゴマーを用いるアロイ化では、混合エントロピーが大きく、その結果混合自由エネルギー変化が負となる傾向が大きく、ポリマーとの相溶化において有利である。その結果、ポリマー同士の溶融混練時の剪断付与や温度変化では相溶しえなかった組み合わせのポリマーアロイを得ることが可能となる。特にモノマーやオリゴマー同士の場合は、低分子同士のため相溶性がさらに増加し、より多くの組み合わせのポリマーアロイを得ることが可能となる。
上記反応誘発型相分解する樹脂の組み合わせは、化学反応前には前記前駆体(A)と残りの樹脂成分(B1)および/または残りの樹脂成分の前駆体(B2)が一旦相溶状態となり、かかる前駆体(A)および残りの樹脂成分の前駆体(B2)、または前駆体(A)を化学反応により樹脂とすることによりスピノーダル分解が誘発されるような樹脂の組み合わせであり、またこの化学反応としては、分子量増加をもたらすものが好ましく、重縮合や、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、イオン共重合等の付加重合や、重付加、付加縮合、開環重合等の重合反応の他に、架橋反応やカップリング反応が好ましい例として挙げることができる。このうち、環状オリゴエステル、環状オリゴアミド、環状オリゴアリーレンスルフィド、ラクトン、ラクタムなどの環状オリゴマーまたは環状モノマーを前駆体とする開環重合は副生成物が無く、かつ比較的反応速度が早く、短時間で高分子量化するため、過冷却度(│Ts−T│)が大きくなり、その結果、前述の関係式におけるスピノーダル分解の初期過程における構造周期が小さくなり、最終的なポリマーアロイの構造周期を微細化することが容易となるため特に好ましい。
反応誘発型相分解の具体例を次に挙げる、樹脂成分の前駆体(A)を、残りの樹脂成分(B1)共存下で化学反応させるケースとして、ポリエステル樹脂の前駆体であるビス(2―ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHT)などのジエステルや環状オリゴエステル、またはエポキシモノマーやエポキシオリゴマーを前駆体(A)として用い、この前駆体(A)にポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアルキレンオキサイド類、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース類から選ばれる1種以上の樹脂成分(B1)を相溶化し、前駆体(A)を重合させて相分解させる方法や、ポリアリーレンスルフィド樹脂の前駆体である環状オリゴアリーレンスルフィドを前駆体(A)として用い、この前駆体(A)にポリアルキレンオキサイド類、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブチルメタクリレート、ポリαメチルスチレン、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース類から選ばれる1種以上の樹脂成分(B1)を相溶化し、前駆体(A)を重合させて相分解させる方法が挙げられる。
本発明におけるポリアルキレンオキサイド類とは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンオキサイドやポリアルキレンオキサイドの一部又は全部の末端水酸基をアルキルエーテル基、アルキル基、ラウリル基、オレイル基、 ステアリル基、アリーレン基、カルボキシル基、アルデヒド基、エステル基、アミノ基、アミド基、アクリレート基、ビニル基、メタクリレート基から選ばれる少なくとも一種の官能基で置換した化合物、およびそれらを含む共重合体のことを指す。
ここで、ポリアルキレンオキサイドの末端水酸基が前駆体(A)と反応する場合、上記に示した末端水酸基をアルキルエーテル基等で置換したり、分子量10万以上の高分子量のポリアルキレングリコールを使用することで、末端水酸基の反応を抑制することも可能である。
また、樹脂成分の前駆体(A)を、残りの樹脂成分の前駆体(B2)共存下で化学反応させるケースとして、ポリエステル樹脂の前駆体であるビス(2―ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHT)などのジエステルや環状オリゴエステル、またはエポキシモノマーやエポキシオリゴマーを前駆体(A)として用い、この前駆体(A)にポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリルおよび(A)とは異なるエポキシモノマーやエポキシオリゴマーから選ばれる1種以上の樹脂成分の前駆体(B2)を相溶化し、前駆体(A)と前駆体(B2)を重合させて相分解させる方法が挙げられる。
また、樹脂成分の前駆体(A)を、残りの樹脂成分の前駆体(B2)共存下で化学反応させるケースとして、ポリエステル樹脂の前駆体であるビス(2―ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHT)などのジエステルや環状オリゴエステル、またはエポキシモノマーやエポキシオリゴマーを前駆体(A)として用い、この前駆体(A)にポリエステル、ポリアミド、ポリアリーレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリルおよび(A)とは異なるエポキシモノマーやエポキシオリゴマーから選ばれる1種以上の樹脂成分の前駆体(B2)を相溶化し、前駆体(A)と前駆体(B2)を重合させて相分解させる方法が挙げられる。
前駆体(A)および/または前駆体(B2)を重合させる際に、必要に応じて重合触媒を添加する。重合触媒は、金属触媒や酸塩基触媒など、その重合反応に応じて適宜選択することが可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレートの前駆体であるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを重合させる場合は、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ゲルマニウムや、亜鉛、コバルト、ニッケル等の遷移金属の酢酸塩等が好ましく用いられる。この場合、添加量はビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートに対して、0.001モル%以上0.1モル%以下が好ましい。前駆体(A)の分子量は大きすぎるとアロイ化する残りの樹脂に対する溶解性が低くなるため、1500以下が好ましく1200以下がより好ましく1000以下がさらに好ましい。分子量が小さいほど樹脂に対する溶解性が高くなるので、分子量の下限値は特に限定されないが100以上のものが使用できる。
本発明では、このような方法で、少なくとも2種類の樹脂成分で構成される、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成しているポリマーアロイからなる成形品を得たあと、放射線を照射することが重要である。ここで、放射線を照射する該成形品の構造周期または粒子間距離は、光学顕微鏡や透過型電子顕微鏡により測定する。
ポリマーアロイの衝撃強度を改良し、かつ湿熱時の耐加水分解性を改良するため、少なくとも1種以上のゴム質重合体を添加することも可能である。
ポリマーアロイの衝撃強度を改良し、かつ湿熱時の耐加水分解性を改良するため、少なくとも1種以上のゴム質重合体を添加することも可能である。
上記ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−メタクリレート、エチレン−ブチルアクリレートなどのエチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、例えばブチルアクリレート−ブタジエン共重合体などのアクリルゴム、エチレン−酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体などのエチレン−プロピレン非共役ジエン3元共重合体、ブチレン−イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレンなどがあげられる。これらのゴム質重合体を添加する場合は、ポリマーアロイ100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。またゴム質重合体は、任意の段階で添加することが可能であるが、放射線照射によるゴム質重合体の物性変化等が懸念される場合は放射線照射後に添加することが好ましい。
また、2成分の樹脂からなるポリマーアロイに、さらにポリマーアロイを構成する成分を含むブロックコポリマーやグラフトコポリマーやランダムコポリマーなどのコポリマーである第3成分を添加することは、相分解した相間における界面の自由エネルギーを低下させ、両相連続構造における構造周期や、分散構造における分散粒子間距離の制御を容易にするため好ましく用いられる。この場合通常、かかるコポリマーなどの第3成分は、それを除く2成分の樹脂からなるポリマーアロイの各相に分配されるため、2成分の樹脂からなるポリマーアロイ同様に取り扱うことができる。
なお、本発明のポリマーアロイには、本発明の目的を損なわない範囲でさらに他の各種の添加剤を含有せしめることもできる。これら他の添加剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、炭酸カルシウム、ケイ砂、ワラステナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、酸化チタンなどの強化材、非板状充填材、あるいは酸化防止剤(リン系、硫黄系など)、紫外線吸収剤、熱安定剤(ヒンダードフェノール系など)、滑剤、離型剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料および顔料を含む着色剤、難燃剤(ハロゲン系、リン系など)、難燃助剤(三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンなど)、発泡剤、カップリング剤(エポキシ基、アミノ基メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基を一種以上含むシランカップリング剤やチタンカップリング剤)、抗菌剤等が挙げられる。
これらの添加剤は任意の段階で配合することが可能であり、例えば、少なくとも2成分の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。なお、放射線照射による添加剤の変性等が懸念される場合は、放射線照射後に添加することも可能である。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(環状PETオリゴマーの準備)
50Lの反応容器にポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.650dl/g)粉末10kg、クロロホルム15L投入し、攪拌しながら8時間加熱還流した。室温に冷却後、濾過により固形分を除去した。その後シリカゲル(MERK社製「Silicagel 60」Code : 1.07734.5000)を100gを加え、5分間撹拌した後、濾過によりシリカゲルを除去し、エバポレーターでクロロホルムを除去し、白色粉末を得た。本白色粉末を1H−NMR分析およびGPC分析したところ3量体を主成分とする環状PETオリゴマーであった。本環状PETオリゴマーを実施例に用いた。
50Lの反応容器にポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.650dl/g)粉末10kg、クロロホルム15L投入し、攪拌しながら8時間加熱還流した。室温に冷却後、濾過により固形分を除去した。その後シリカゲル(MERK社製「Silicagel 60」Code : 1.07734.5000)を100gを加え、5分間撹拌した後、濾過によりシリカゲルを除去し、エバポレーターでクロロホルムを除去し、白色粉末を得た。本白色粉末を1H−NMR分析およびGPC分析したところ3量体を主成分とする環状PETオリゴマーであった。本環状PETオリゴマーを実施例に用いた。
(実施例1〜3)
表1記載の組成からなる材料を、350℃に設定した卓上混練機(HAAKE社製 MiniLab II Micro Compounder)で、表1に示す時間(表1中「混練時間A」)混練することで、環状PETオリゴマーを開環重合させた。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットA)。
ガットAに加速電圧10MeVの電子線を200kGy照射した(ガットA’)。ガットA’を再び上記卓上混練機で350℃10分間混練した。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットB)。ガットA、Bをヨウ素、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウムにより染色処理した後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行い、得られた画像をフーリエ変換して構造周期を求めた。構造周期はフーリエ変換後のスペクトルのピークトップから算出した。
ガットBを300℃10分間加熱プレスし、シート(厚み0.2mm)を作製し、小角X線散乱スペクトルを測定した。該スペクトルにおける、ピーク半値幅(a)、ピーク極大波長(b)としたときの(a)/(b)の値を表1に記載した。さらに、該シートから、長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.2mmのサンプルを切り出し、チャック間距離20mm、引張速度10mm/分で測定した引張強度測定結果を表1に記載した。
表1に示したとおり、電子線照射により環状PETオリゴマーの重合反応および架橋反応が進行した結果、相分離構造が固定化され、再溶融混練による構造粗大化を抑制できることがわかる。
表1記載の組成からなる材料を、350℃に設定した卓上混練機(HAAKE社製 MiniLab II Micro Compounder)で、表1に示す時間(表1中「混練時間A」)混練することで、環状PETオリゴマーを開環重合させた。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットA)。
ガットAに加速電圧10MeVの電子線を200kGy照射した(ガットA’)。ガットA’を再び上記卓上混練機で350℃10分間混練した。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットB)。ガットA、Bをヨウ素、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウムにより染色処理した後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行い、得られた画像をフーリエ変換して構造周期を求めた。構造周期はフーリエ変換後のスペクトルのピークトップから算出した。
ガットBを300℃10分間加熱プレスし、シート(厚み0.2mm)を作製し、小角X線散乱スペクトルを測定した。該スペクトルにおける、ピーク半値幅(a)、ピーク極大波長(b)としたときの(a)/(b)の値を表1に記載した。さらに、該シートから、長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.2mmのサンプルを切り出し、チャック間距離20mm、引張速度10mm/分で測定した引張強度測定結果を表1に記載した。
表1に示したとおり、電子線照射により環状PETオリゴマーの重合反応および架橋反応が進行した結果、相分離構造が固定化され、再溶融混練による構造粗大化を抑制できることがわかる。
(比較例1〜3)
実施例1〜3のガットAを再び上記卓上混練機で350℃10分間混練した。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットB)。ガットA、Bをヨウ素、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウムにより染色処理した後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行い、得られた画像をフーリエ変換して構造周期を求めた。構造周期はフーリエ変換後のスペクトルのピークトップから算出した。
実施例1〜3のガットAを再び上記卓上混練機で350℃10分間混練した。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットB)。ガットA、Bをヨウ素、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウムにより染色処理した後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行い、得られた画像をフーリエ変換して構造周期を求めた。構造周期はフーリエ変換後のスペクトルのピークトップから算出した。
ガットBを300℃10分間加熱プレスし、シート(厚み0.2mm)を作製し、長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.2mmのサンプルを切り出し、チャック間距離20mm、引張速度10mm/分で測定した引張強度測定結果を表1に記載した。
表1に示したとおり、電子線照射により環状PETオリゴマーの重合反応および架橋反応が進行した結果、相分離構造が固定化され、再溶融混練による構造粗大化を抑制できることがわかる。
表1に示したとおり、電子線照射により環状PETオリゴマーの重合反応および架橋反応が進行した結果、相分離構造が固定化され、再溶融混練による構造粗大化を抑制できることがわかる。
表1に示したとおり、電子線照射により環状PETオリゴマーの重合反応および架橋反応が進行した結果、相分離構造が固定化され、再溶融混練による構造粗大化を抑制できることがわかる。
表1に示したとおり、電子線照射により環状PETオリゴマーの重合反応および架橋反応が進行した結果、相分離構造が固定化され、再溶融混練による構造粗大化を抑制できることがわかる。
(血液適合性試験)
血液に対する適合性をヒト血小板付着試験により行った。通常血液はポリマーのような人工物と接触すると異物と判断し、凝固関連タンパク質の付着と血小板の付着が進行し、血栓が生成する。カテーテルや血液透析器などでこのような血栓が生成すると、血管が閉塞するため好ましくない。したがって、血液に接触する用途には血液適合性材料が使用される。ここで言うところの血液適合性材料とは、血液と接触したときに血液凝固系の活性化が小さい材料のことを指す。また、その評価は下記の血小板付着試験で評価するものとする。血小板の付着数が少ないほど、血液適合性が高い材料と言える。
血液に対する適合性をヒト血小板付着試験により行った。通常血液はポリマーのような人工物と接触すると異物と判断し、凝固関連タンパク質の付着と血小板の付着が進行し、血栓が生成する。カテーテルや血液透析器などでこのような血栓が生成すると、血管が閉塞するため好ましくない。したがって、血液に接触する用途には血液適合性材料が使用される。ここで言うところの血液適合性材料とは、血液と接触したときに血液凝固系の活性化が小さい材料のことを指す。また、その評価は下記の血小板付着試験で評価するものとする。血小板の付着数が少ないほど、血液適合性が高い材料と言える。
18mmφの円形カバーガラスに両面テープを貼り付け、そこに3mm角に切り出した試料を固定した。筒状に切ったFalcon(登録商標)円筒チューブ(18mmφ、No.2051)に該円形カバーガラスを、試料を貼り付けた面が円筒チューブ内部に入るように取り付け、パラフィルムで取り付け部分の隙間を埋めた。この円筒管内を生理食塩水で洗浄後、生理食塩水で満たした。成人健常者の静脈血を採血後、直ちにヘパリンを50U/mlになるように添加した。前記円筒管内の生理食塩水を廃棄後、前記血液を、採血後10分以内に、円筒管内に1.0ml入れて37℃にて1時間振盪させた。その後、試料を10mlの生理食塩水で洗浄し、2.5体積%のグルタルアルデヒドを含有した生理食塩水で血液成分の固定を行い、20mlの蒸留水にて洗浄した。洗浄した試料を常温・0.5Torrにて10時間減圧乾燥した。この円形カバーガラスを走査型電子顕微鏡の試料台に両面テープで貼り付けた。その後、スパッタリングにより、白金/パラジウムの薄膜を試料表面に形成させて、電顕観察サンプルとした。この試料表面をフィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(日立社製S800)にて、倍率1500倍で観察し、1視野中(4.3×103μm2)の付着血小板数を数えた。試料中央付近で、異なる10視野での付着血小板数の平均値を血小板付着数(個/4.3×103μm2)とした。試料端の部分は、血液溜まりができやすいため中央付近を観察対象とした。)。
(実施例4)
PET前駆体であるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(シグマアルドリッチジャパン(株)、Code:465151−500G、以下BHTと略)を前駆体(A)として用い、熱可塑性樹脂成分(B1)としてポリエチレングリコール(和光純薬工業製 ポリエチレングリコール3,500,000 Code:163-22161、以下PEGと略)を用い、三酸化アンチモン(和光純薬工業社製、Code:018−04402)を重合触媒として用い、これらを表2に示す仕込で混合し、反応容器の500mlガラス試験管に投入した。反応容器を窒素置換した後、加熱撹拌により重合を開始した。加熱開始から30分で290℃に到達し、その後290℃を保持し減圧を開始した。生成するエチレングリコールは反応系外へ留去し、重合をさらに進行させた。30分後反応容器内圧力は0.2kPaに達した。その後、290℃、0.2kPaで60分間加熱撹拌した。加熱終了後、速やかに反応物を水中に吐出急冷し、構造を固定化しガット状のサンプルを得た(ガットC)。
PET前駆体であるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(シグマアルドリッチジャパン(株)、Code:465151−500G、以下BHTと略)を前駆体(A)として用い、熱可塑性樹脂成分(B1)としてポリエチレングリコール(和光純薬工業製 ポリエチレングリコール3,500,000 Code:163-22161、以下PEGと略)を用い、三酸化アンチモン(和光純薬工業社製、Code:018−04402)を重合触媒として用い、これらを表2に示す仕込で混合し、反応容器の500mlガラス試験管に投入した。反応容器を窒素置換した後、加熱撹拌により重合を開始した。加熱開始から30分で290℃に到達し、その後290℃を保持し減圧を開始した。生成するエチレングリコールは反応系外へ留去し、重合をさらに進行させた。30分後反応容器内圧力は0.2kPaに達した。その後、290℃、0.2kPaで60分間加熱撹拌した。加熱終了後、速やかに反応物を水中に吐出急冷し、構造を固定化しガット状のサンプルを得た(ガットC)。
ガットAに加速電圧10MeVの電子線を200kGy照射した(ガットC’)。ガットC’を卓上混練機(HAAKE社製 MiniLab II Micro Compounder)で290℃60分間混練した。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットD)。
上記ガットCおよびガットDから小片を切り出し、カバーガラスに挟み込み270℃に加熱し、直後氷水浴で急冷した。該サンプルを光学顕微鏡で観察した結果、本PET/PEGアロイは共連続構造を形成していることを確認した。そこで、上記光学顕微鏡サンプルを光散乱装置で光散乱スペクトルを測定した。該スペクトルにおける、ピーク半値幅(a)、ピーク極大波長(b)、(a)/(b)および構造周期の値を表2に記載した。BHT重縮合による分子量増加によりスピノーダル分解を誘発し、ポリマーアロイ化を行った結果、ピーク半値幅(a)、ピーク極大波長(b)から計算される(a)/(b)の数値が1.2以下であり、構造の均一性が高いポリマーアロイが得られた。
ガットDの血液適合性試験を実施した結果を表2に示す。比較例4の粗大分散構造や比較例5のPET単体の場合と比較して、血小板付着数は減少し、本ポリマーアロイが比較例8と比較して、優れた親水性、血液適合性を有することがわかる。本PET/PEGアロイはポリエステル繊維の吸湿性付与や、生体適合性材料などに好ましく使用することができる。
(比較例4)
実施例4のガットCを卓上混練機(HAAKE社製 MiniLab II Micro Compounder)で290℃60分間混練した。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットE)。
実施例4のガットCを卓上混練機(HAAKE社製 MiniLab II Micro Compounder)で290℃60分間混練した。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットE)。
上記ガットEから小片を切り出し、カバーガラスに挟み込み270℃に加熱し、直後氷水浴で急冷した。該サンプルを光学顕微鏡で観察した結果、PETにPEGが1μm以上の様々なサイズが混在した粗大分散構造を形成していることを確認した。放射線照射によるPET分子鎖の部分的な架橋による構造固定化を行わなかった結果、相分離構造が粗大化したものと考えられる。続いて、上記光学顕微鏡サンプルを光散乱装置で光散乱スペクトルを測定した結果、ピークは観察されなかった。様々なサイズが混在した粗大分散構造のため、ピークが観察されなかったものと推察される。
ガットEの血液適合性試験を実施した結果を表2に示す。比較例5のPET単体の場合と比較して、血小板付着数は減少するものの、実施例4と比較して血小板付着数が増加した。粗大な分散構造により、疎水性成分であるPETの広大なドメインが生成し、そこに血小板が集中的に付着した結果と考えられる。
(比較例5)
PET前駆体であるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(シグマアルドリッチジャパン(株)、Code:465151−500G、以下BHTと略)を用い、三酸化アンチモン(和光純薬工業社製、Code:018−04402)を重合触媒として用い、これらを表2に示す割合で混合し、反応容器の500mlガラス試験管に投入した。反応容器を窒素置換した後、加熱撹拌により重合を開始した。加熱開始から30分で290℃に到達し、その後290℃を保持し減圧を開始した。生成するエチレングリコールは反応系外へ留去し、重合をさらに進行させた。30分後反応容器内圧力は0.2kPaに達した。その後、290℃、0.2kPaで60分間加熱撹拌した。加熱終了後、速やかに反応物を水中に吐出急冷し、構造を固定化しガット状のサンプルを得た(ガットF)。
PET前駆体であるビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(シグマアルドリッチジャパン(株)、Code:465151−500G、以下BHTと略)を用い、三酸化アンチモン(和光純薬工業社製、Code:018−04402)を重合触媒として用い、これらを表2に示す割合で混合し、反応容器の500mlガラス試験管に投入した。反応容器を窒素置換した後、加熱撹拌により重合を開始した。加熱開始から30分で290℃に到達し、その後290℃を保持し減圧を開始した。生成するエチレングリコールは反応系外へ留去し、重合をさらに進行させた。30分後反応容器内圧力は0.2kPaに達した。その後、290℃、0.2kPaで60分間加熱撹拌した。加熱終了後、速やかに反応物を水中に吐出急冷し、構造を固定化しガット状のサンプルを得た(ガットF)。
ガットFに加速電圧10MeVの電子線を200kGy照射した(ガットF’)。ガットF’を卓上混練機(HAAKE社製 MiniLab II Micro Compounder)で290℃60分間混練した。サンプル吐出口から得られるガット状のサンプルを速やかに氷水浴中にて急冷し、構造を固定した(ガットG)。
ガットGの血液適合性試験を実施した結果を表2に示す。実施例4と比較して、親水性成分であるPEGを含まないため、多くの血小板が付着し、血液適合性が低いことがわかった。
本発明のポリマーアロイおよびその製造方法は、ポリマーアロイ原料を射出成形など、加熱溶融した場合におけるポリマーアロイ相分離構造の粗大化による、力学物性などの特性低下を抑制することが可能なる。本製造方法により得られたポリマーアロイは、軽量化や高機能化を目的として、自動車部品や電機部品などにおいて金属材料の代替に好適に用いることが出来る。
Claims (8)
- 少なくとも2種類の樹脂成分で構成される樹脂組成物からなる成形品となるポリマーアロイの製造方法であって、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成しているポリマーアロイからなる成形品に、放射線照射することを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
- 上記成形品となるポリマーアロイが、上記両相連続構造または分散構造を形成後、構造を固定化した後に放射線照射することを特徴とする請求項1に記載のポリマーアロイの製造方法。
- 上記両相連続構造または分散構造がスピノーダル分解による相分離で形成されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
- 放射線照射により、樹脂組成物を構成する樹脂成分のいずれかと化学結合を形成しうる放射線架橋助剤共存下で放射線照射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
- 樹脂組成物を構成する樹脂成分の少なくとも1成分の前駆体(A)と、残りの樹脂成分(B1)および/または樹脂成分の前駆体(B2)を相溶後、化学反応することで相分離を誘発させることにより、両相連続構造、または分散構造を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
- 構造周期または粒子間距離が0.001μm以上0.1μm未満の場合は小角X線散乱測定において、構造周期または粒子間距離が0.1μm以上1μm以下の場合は光散乱測定において、散乱光の波数に対して散乱強度をプロットしたスペクトルにおけるピーク半値幅(a)、該ピークの極大波数(b)とするとき0<(a)/(b)≦1.2であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
- 放射線が電子線および/またはγ線であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
- 放射線照射を不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
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