JP2009193551A - 建造物内における火災及び有毒物質拡散のシミュレーション技術 - Google Patents
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Abstract
【課題】 火災や有毒物質の発生に対する建物の安全性評価や安全設備の作動方法の検討において、コンピュータによるシミュレーションが有用な手段となってきている。近年の大規模な建造物においては、単純な矩形居室の他に複雑な形状の広い空間が混在し、火災による煙や有毒物質、熱が発生すると拡散による濃度分布の評価が容易ではない。すなわち、従来の3次元流体解析技術では計算量が膨大となり、逆に実用的なマクロモデル流体解析技術では複雑な形状に対応できない。
【解決手段】 建造物の形状を考慮して詳細にシミュレーションする必要のある部分は3次元解析技術を適用し、詳細なシミュレーションが不要な部分はマクロモデル流体解析技術を適用することで効率的に計算する。火災や有毒物質発生時の防災設備の解析モデルによって、その効果をシミュレーションに反映し、対策をした場合・しなかった場合の他、対策のタイミングなどの効果を定量的に検討することができるようにする。
【選択図】図3
【解決手段】 建造物の形状を考慮して詳細にシミュレーションする必要のある部分は3次元解析技術を適用し、詳細なシミュレーションが不要な部分はマクロモデル流体解析技術を適用することで効率的に計算する。火災や有毒物質発生時の防災設備の解析モデルによって、その効果をシミュレーションに反映し、対策をした場合・しなかった場合の他、対策のタイミングなどの効果を定量的に検討することができるようにする。
【選択図】図3
Description
本発明は、建造物の火災や有毒物質の発生に対する防災対策の検討支援を目的としたシミュレーション技術を対象とする。ここで述べる方法は、大規模な建造物において、建造物の形状を考慮して詳細にシミュレーションする必要のある部分は3次元流体解析技術を適用し、詳細なシミュレーションが不要な部分はマクロモデル流体解析技術を適用することで効率的に計算し、防災設備の解析モデルによってその効果をシミュレーションする方法である。
火災や有毒物質の発生に対する建造物の安全性評価や安全設備の作動方法の検討において、コンピュータによる数値シミュレーションが有用な手段となってきている。建造物内の空間を対象とした気流と燃焼および物質拡散のシミュレーション技術には、高精度な3次元流体解析技術と簡易的なマクロモデル流体解析技術がある。
3次元流体解析技術とは、3次元形状を解析モデルとしてとりこむ流体解析の技術であり、対象空間を計算格子に細分割し、物理法則に則った圧力等に関する連立方程式を立てて、多次元連立方程式を数値的に解く方法が確立されている。計算格子の分割数が多いほど空間分布表現の精度は向上するが、計算時間が増加する。建造物内の火災や有毒物質の発生に伴う、煙や有毒物質の拡散をシミュレーションする場合、このような3次元流体解析技術に、火災や有毒物質発生、スプリンクラー等の消火設備及び排気ダクトなどの防災設備を、計算格子に合わせてモデル化した解析モデルを付加することで、現象や諸設備の効果を模擬する。
マクロモデル流体解析技術とは、区画領域が接続するような建造物内を対象とした流体解析の技術である。この技術は、建造物内部を表す区画領域を物理量の定義点として区画間の連結と共にモデル化して圧力等に関する連立方程式を立てて解くもので、区画内部の空間的な分布は考慮しないものの、短い処理時間でシミュレーションができる。建造物内の火災や有毒物質の発生に伴う、煙や有毒物質の拡散をシミュレーションする場合は、火災や有毒物質発生、スプリンクラー等の消火設備及び排気ダクトなどの防災設備を、マクロモデルに合わせてモデル化した解析モデルを付加することで、現象や諸設備の効果を模擬する。なお、マクロモデル流体解析技術の応用として、火災解析で煙の有無による物理量の不連続性を表現するために各区画を上下2層に分割する2層ゾーンモデルが用いられている。
火災の発生や有毒物質の発生の後の煙や有毒物質の拡散、スプリンクラー等の消火設備及び排気ダクトなどの防災設備の起動による変化をシミュレートするため、3次元流体解析技術・マクロモデル流体解析技術共に計算用の時間刻みを設定して各時点で連立方程式を解いては次の時点に計算を進ませて、設定した終了時間までの計算を行っている。
Walter Jones他著、「CFAST Technical Reference Guide」、NIST(米国標準技術研究所)Special Publication 1030、2004年 Kevin McGrattan他著、「Fire Dynamics Simulator(Version 5)Technical Reference Guide」、NIST(米国標準技術研究所)Special Publication 1018−5、2008年
Walter Jones他著、「CFAST Technical Reference Guide」、NIST(米国標準技術研究所)Special Publication 1030、2004年 Kevin McGrattan他著、「Fire Dynamics Simulator(Version 5)Technical Reference Guide」、NIST(米国標準技術研究所)Special Publication 1018−5、2008年
火災や有毒物質の発生に対する建造物の安全性評価や安全設備の作動方法の検討のために、コンピュータによる数値シミュレーションを行う場合を想定する。その場合、近年の大規模な建造物においては、単純な矩形居室の他に複雑な形状の広い空間が混在し、火災による煙や有毒物質、熱が発生すると拡散による濃度分布の評価が困難である。すなわち、従来の3次元流体解析技術では計算量が膨大となり、逆に計算量の少ないマクロモデル流体解析技術では複雑な形状に対応できない。
空間に関する表現精度を高めることができる3次元流体解析技術と、計算量が少ないマクロモデル流体解析技術の両方の長所を活かすため、両者を時間刻みごとに連携させて用いる。すなわち、3次元流体解析モデルとマクロモデルの間で、時間刻みごとに境界面を通じてデータを相互参照する。
3次元流体解析モデルは境界面に複数の計算格子が面しているため、計算格子ごとに計算される物理量を平均化してマクロモデルに受け渡す。
マクロモデルで2層ゾーンモデルを適用する場合は、煙高さによっては境界面に2層が面する場合があるため、3次元流体解析モデルの境界面でも層境界を設定して物理量を受け渡す。
大規模な建造物において、建造物の形状を考慮して詳細にシミュレーションする必要のある部分は3次元流体解析技術を適用し、詳細なシミュレーションが不要な部分はマクロモデル流体解析技術を適用することで、必要な精度を保ちつつ効率的に計算できるようになる。これにより、既存の防災設備の解析モデルを活かして諸設備の効果をシミュレーションすることができる。
3次元流体解析技術のシミュレーションプログラムとマクロモデル流体解析技術のシミュレーションプログラムにデータ送受信のサブルーチンプログラムを組み込む。これにより、3次元流体解析技術のシミュレーションプログラムを起動するとマクロモデル流体解析技術のシミュレーションプログラムを連動するようになり、両プログラムが時間刻み単位で連携して計算が進むようになる。
以下に、3次元流体解析技術のシミュレーションプログラムとマクロモデル流体解析技術のシミュレーションプログラムに組み込むプログラム処理の内容を、図1〜3にそって説明する。
3次元モデルとマクロモデルの間では境界面を通じてデータを相互参照するが、その接続面付近の模式図を図1に示す。図1において1が接続面、2が3次元モデルの計算格子、3がマクロモデルの計算区画を表す。各モデルの中で境界条件は、それぞれの圧力境界として設定し、3次元モデル領域からマクロモデル領域へ流れが生じる場合は3次元モデルで計算した温度・濃度といった物理量をマクロモデルで参照し、マクロモデル領域から3次元モデル領域へ流れが生じる場合はマクロモデルで計算した温度・濃度といった物理量を3次元モデルで参照する。
マクロモデルで2層ゾーンモデルを適用する場合は、時間で変化する層境界高さを想定してその上下で計算物理量が異なるため、これに接続する3次元モデルの境界面でも層境界を設定する必要がある。層境界面は、煙濃度の不連続面を表現するものであり、煙に対応するガス(CO2、CO)の濃度の絶対値で判定する。
図2に接続面に面する3次元モデルの計算格子の例を示す。計算格子ごとに計算されるガス濃度Cを判定しきい値(Ccrit)と比較し、計算格子を高濃度(図中の「C高」)と低濃度(図中の「C低」)に分類すると、流れの乱れもあって、一般的には高濃度と低濃度は混ざって分布する。図2において、4は「C低」の最高位置、5は「C高」の最低位置を示す。この間の計算格子の濃度に基づいて、次式により煙高さを計算する。
ここで、
z1:「C高」の最低位置=Min(zi),(Ci>Ccrit)
である。
ここで、
z1:「C高」の最低位置=Min(zi),(Ci>Ccrit)
である。
3次元解析モデルからマクロモデルへの境界面データ送信においては、3次元モデルの計算格子を煙高さに基づいて上層または下層に分類し、各層別に計算格子の境界面積で重みづけ平均してから送る。すなわち、上層に属する計算格子に関して、境界面積の重みづけにより平均して上層値とし、下層に属する計算格子に関して、境界面積の重みづけにより平均して下層値とする。上層に属する計算格子がない場合は下層の値、下層に属する計算格子がない場合は上層の値を送る。
マクロモデルから3次元モデルへの境界面データ送信においては、3次元モデルの計算格子を上層または下層に分類して送り先とする。上層または下層への分類は、各計算格子の中心高さが煙高さより高いか低いかによって分類する。
3次元解析モデルとマクロモデルを連携する処理の流れを図3に示す。それぞれが時間刻みの中の計算をしては情報を他方に送り、受け取った側が計算を進めることで、交互に時間刻みを進めていく。
火災や有毒物質発生、スプリンクラー等の消火設備、排気ダクトなどの防災設備をモデル化した解析モデルは、3次元流体解析技術とマクロモデル流体解析技術でそれぞれ固有のものであるが、両者を連携するさいにはそれぞれの解析モデルを各解析技術プログラムに組み込んだまま活用することで、対象現象や諸設備の効果をシミュレーションに反映する。
1 接続面
2 3次元モデルの計算格子
3 マクロモデルの計算区画
4 「C低」の最高位置
5 「C高」の最低位置
2 3次元モデルの計算格子
3 マクロモデルの計算区画
4 「C低」の最高位置
5 「C高」の最低位置
Claims (3)
- 建造物の火災や有毒物質の発生に対する防災対策の検討において、建造物の形状を考慮して詳細にシミュレーションする必要のある部分は3次元解析技術を適用し、詳細なシミュレーションが不要な部分はマクロモデル流体解析技術を適用することで効率的に計算し、防災設備の解析モデルによってその効果をシミュレーションするプログラム。
- 建造物の火災や有毒物質の発生に対する防災対策の検討において、建造物の形状を考慮して詳細にシミュレーションする必要のある部分は3次元解析技術を適用し、詳細なシミュレーションが不要な部分はマクロモデル流体解析技術を適用することで効率的に計算し、防災設備の解析モデルによってその効果をシミュレーションするプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
- 建造物の火災や有毒物質の発生に対する防災対策の検討において、建造物の形状を考慮して詳細にシミュレーションする必要のある部分は3次元解析技術を適用し、詳細なシミュレーションが不要な部分はマクロモデル流体解析技術を適用することで効率的に計算し、防災設備の解析モデルによってその効果をシミュレーションするプログラムを実行するための装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008063317A JP2009193551A (ja) | 2008-02-15 | 2008-02-15 | 建造物内における火災及び有毒物質拡散のシミュレーション技術 |
Applications Claiming Priority (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013208408A (ja) * | 2012-03-30 | 2013-10-10 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 高天井施設の排煙システム |
KR101569271B1 (ko) | 2014-02-17 | 2015-11-13 | 인천대학교 산학협력단 | 파티클을 이용한 유체 시뮬레이션 제공 방법 및 장치 |
CN115601520A (zh) * | 2022-11-30 | 2023-01-13 | 北京科技大学(Cn) | 一种基于二维预估和多尺度网格的火灾模拟方法及装置 |
-
2008
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