JP2009189295A - 核酸配列の分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】標的領域を有する核酸以外にも、類似する核酸が狭雑する検体において、類似する核酸に対して標的領域を有する核酸1分子が有する配列の特徴の程度を検出する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明では、核酸増幅反応を行う複数の反応場において、各反応場に平均して1つ以下の核酸検体の標的領域を存在させる濃度条件下で同一の核酸増幅反応を行い、増幅産物の融解曲線分析を行ことで標的領域を有する核酸単独の1分子に由来する配列の特徴を検出できる。
【選択図】図1
【解決手段】本発明では、核酸増幅反応を行う複数の反応場において、各反応場に平均して1つ以下の核酸検体の標的領域を存在させる濃度条件下で同一の核酸増幅反応を行い、増幅産物の融解曲線分析を行ことで標的領域を有する核酸単独の1分子に由来する配列の特徴を検出できる。
【選択図】図1
Description
本発明は、核酸検体の中に多量に存在する標的領域を有する核酸分子の特徴を個別検出する方法に関する。より詳細には、標的領域を有する核酸一分子に由来するメチル化の程度をPCRと融解曲線分析によって検出する方法に関する。
がんは遺伝子病と呼ぶことができ、がん関連遺伝子の異常が蓄積することにより発症するとされている。この異常は、遺伝子の突然変異のようなジェネティックな異常だけでなく、シトシンのメチル化の異常といったエピジェネティックな異常によっても引き起こされることが明らかになっている。特に、がん抑制遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランドの高メチル化による遺伝子の不活性化は、がんの発生と進展に重要とされている。従って、がん関連遺伝子のプロモーターのメチル化を検出することが、がんの早期発見に有効であるという可能性があり、早期発見によって有効な治療がほどこせることが期待されている。例えば、特許文献1では、エストロゲン受容体、MDGI、GST−pi、カルシトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、TIMP−2、06−MGMTおよびhMLH1遺伝子のプロモーター領域が、正常組織と比べてがん組織で高メチル化状態にあることを検出している。メチル化を検出する手法としては、メチル化感受性の制限酵素とPCRを組み合わせて検出する方法などが知られているが、メチル化特異的PCR(MSP)が検出感度と簡便さにおいて優れている。MSPでは、先ずPCR反応前にテンプレートとなる核酸を重亜硫酸塩で処理し、すべての非メチル化シトシンをウラシルに変換する。その後、メチル化と非メチル化シトシンを区別するプライマーを用いてPCRを行うことで、プライマーを設定した領域のメチル化を検出する。しかしこのMSPは検出したいCpGの位置毎にプライマーを個別に設計する必要がある。従って多数の検体について広範囲のCpGのメチル化を調べることは、反応数が膨大となり作業上困難である。またCpGが密に集まっている場所では、プライマーを複数のCpGにまたがるようにしか設計できないため、少ないプライマーセットでCpGアイランドの全般のメチル化状態を把握することは困難である。CpGアイランドのメチル化状態を広範囲に調べる方法としては、重亜硫酸塩処理した後にCpGを含まない領域のプライマーセットでPCR増幅して、シーケンシングを行うバイサルファイトシーケンス法があるが、これは増幅だけでなく標識も必要であり、またシーケンシングには時間と労力がかかるという問題がある。
CpGアイランドのメチル化の分析で、遺伝子が不活化したかどうかを判断するには1ヵ所のCpGのメチル化の情報だけを用いて判定することは通常困難であり、広範囲にメチル化の程度を分析してCpGアイランドのメチル化が低度であるのか、高度であるのかを調べる必要がある。
一方、がんの早期発見においては、検査対象とする検体は非浸襲であるか、または浸襲性の低い検体を使用することが望まれている。具体的には非浸襲検体とは、血液、喀痰、尿、糞便などである。がん患者のこれらの検体中には、早期であってもがん細胞が遊離・循環しているとされており、非特許文献1では、これを用いてがんの早期診断を行う試みがなされている。またこれらの検体中には、がん細胞だけでなく、がん細胞に由来する核酸も遊離・循環しているとされている。さらに、がん患者においては、がん細胞に由来する血液中のDNA量が増加しているという報告が非特許文献2にある。そこで、非特許文献3では血清中に遊離するDNAについて、遺伝子のメチル化のパターンを検出して肺がんの早期診断を行うことが紹介されている。しかし、血清中および血漿中から核酸を回収しようとする場合、正常な血球細胞由来の核酸を完全に除去することはできず、また正常な血液中にも正常細胞由来のDNAが遊離しているため、実際に評価する核酸はがん細胞に由来するもののみではない。従って、CpGアイランドのメチル化の程度を広範囲に調べようとする際に、CpGの位置ごとに個別にMSPでメチル化の有無を特定する場合には、各CpGのメチル化の程度は正常細胞とがん細胞由来のものが混在したものの結果となる。また、この場合にはメチル化の程度が高いとする結果が得られても、ある一つの核酸分子に由来するCpGアイランドが高メチル化されているのか、それともまばらにメチル化されているものが複数存在しているのかということを切り分けることは困難である。
従って、非浸襲または低浸襲性の検体から、CpGアイランドのメチル化の程度を広範囲に調べるといった手法で、がんの早期診断を行うことは、正常細胞とがん細胞由来の核酸を区別できないという理由で困難であるという課題があった。
そこで複数の狭雑する核酸の中から特定の核酸1分子に由来する特徴を調べる手法として、非特許文献4に、デジタルPCRという技術が提案されている。これはPCRが1分子からでも増幅可能であるという特性を利用したもので、テンプレートとなる核酸を限界希釈してPCR反応液を調製して、1分子由来のPCRを行うという手法である。具体的には、希釈系列を作成し、それぞれの系列毎に96ウェルのPCRプレート等を用いて複数のPCRを行い、蛍光インターカレータ等で蛍光検出を行っている。これにより96ウェルすべてのウェルで増幅が確認されたウェルプレートから、一つも増幅が確認されなくなるプレートの間の希釈系列にある、数個から数十個のウェルで増幅が確認される希釈系列のプレートでのPCR増幅は1分子由来であると判断するものである。しかしこの手法は、PCRに用いたプライマーで増幅する領域の有無を判定しているにすぎない。仮にタックマン法等のプローブを使用する場合でも、増幅対象となる領域中の一つの変異を調べることができるが、1ウェルで1分子中の複数の変異等を調べることは困難である。通常、複数位置の変異等をPCRで調べる際は、検体が複数の同一分子を含むという仮定のもと、検体を分割して複数のウェルで異なるプローブを用いて検出を行う。しかし、デジタルPCRの場合には1ウェル中にある1分子を分割して分析する手法を行うことはできない。従って、1分子に由来するCpGアイランドのメチル化の程度を、複数ヶ所について広範囲に調べるといったことは、通常のデジタルPCRを行うだけでは不十分であった。
特許第3612080号
Clinical Cancer Research Vol. 10, 8152-8162, December 15, 2004
Cancer Metastasis Rev. 1999;18(1):65-73.
CANCER RESEARCH 59, 67-70, January 1, 1999
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 9236-9241, 1999
従って、従来、非浸襲または低浸襲性の検体から、CpGアイランドのメチル化の程度を広範囲に調べるといった手法で、がんの早期診断を行うことは、正常細胞とがん細胞由来の核酸を区別できないという理由で困難であるという課題があった。
従って本発明は、増幅の対象となる標的領域の中のバリエーションが異なる核酸が多数狭雑する核酸検体においても、類似する核酸と区別して、標的領域を有する核酸1分子の配列の特徴の程度を検出する方法を提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、上記問題点を解決する方法として、以下の方法を見いだすに至った。
すなわち、本発明の第一の核酸配列の分析方法は、核酸増幅反応を行う複数の反応場において、各反応場に平均して1つ以下の核酸検体の標的領域を存在させる濃度条件下で、前記各反応場の核酸検体に対して同一の核酸増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程とを有することを特徴とする核酸配列の分析方法である。
前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程とを有することを特徴とする核酸配列の分析方法である。
本発明の第二の核酸配列の分析方法は、核酸増幅反応を行う複数の反応場において、少なくとも一つ以上の反応場で増幅が行われない核酸検体の濃度条件下で、前記各反応場の核酸検体に対して同一の核酸増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程とを有することを特徴とする核酸配列の分析方法である。
前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程とを有することを特徴とする核酸配列の分析方法である。
さらに本発明の第三の核酸の分析方法は、核酸検体について希釈系列を調製し、夫々の希釈度の前記核酸検体ごとに複数の反応場において同一の核酸増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応により前記複数の反応場の少なくとも一つ以上で増幅が行われない希釈度の前記核酸検体について、前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程と、
を有することを特徴とする核酸配列の分析方法である。
前記増幅反応により前記複数の反応場の少なくとも一つ以上で増幅が行われない希釈度の前記核酸検体について、前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程と、
を有することを特徴とする核酸配列の分析方法である。
本発明によれば、増幅の対象となる標的領域の中のバリエーションが異なる核酸が多数狭雑する核酸検体においても、類似する核酸と区別して、標的領域を有する核酸の1分子が有する配列の特徴の程度を検出する方法を提供することができる。特には、核酸検体中に存在する標的領域を有する核酸の1分子が有するCpGアイランドのメチル化の程度を検出することが可能となり、非浸襲または低浸襲性の検体から、CpGアイランドのメチル化の程度を広範囲に調べるといった手法で、がん細胞に由来すると考えられるCpGアイランドが高メチル化した核酸の有無を検出することが可能となる。
以下に、より具体的な構成例について記載するが、本発明は下記方法に限定されるものではない。本発明は、核酸増幅反応を行う複数の反応場において、各反応場に平均して1つ以下の核酸検体の標的領域を存在させる濃度条件下で、前記各反応場の核酸検体に対して同一の核酸増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程とを有することを特徴とする核酸配列の分析方法である。核酸検体とは、分析の対象となる核酸であり、標的領域中の配列について分析がなされる。核酸配列の分析には、核酸の塩基配列自体の分析だけでなく、核酸配列のメチル化等の修飾の有無の分析も含まれる。また核酸配列の変化には、塩基配列自体の変化だけでなく、検体に含まれる時点での標的領域配列上の化学修飾の有無も含まれる。本発明の分析方法は、核酸検体に標的領域を有する核酸分子が複数含まれている場合であっても、標的領域の個別の分析を可能とする。また、例えば、核酸配列のメチル化の頻度を分析する場合、メチル化部位ごとに検出せずに複数のメチル化部位が存在する領域を広範囲に分析することができるため、メチル化の程度が高い標的領域を好適に検出することができる。メチル化の検出においても、標的領域と同一配列であってメチル化されていない核酸を複数含む検体であっても、標的領域のメチル化を個別に検出することができる。メチル化を検出する場合、標的領域として、CpG領域を含んでいるものを好適に用いることができる。
前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程とを有することを特徴とする核酸配列の分析方法である。核酸検体とは、分析の対象となる核酸であり、標的領域中の配列について分析がなされる。核酸配列の分析には、核酸の塩基配列自体の分析だけでなく、核酸配列のメチル化等の修飾の有無の分析も含まれる。また核酸配列の変化には、塩基配列自体の変化だけでなく、検体に含まれる時点での標的領域配列上の化学修飾の有無も含まれる。本発明の分析方法は、核酸検体に標的領域を有する核酸分子が複数含まれている場合であっても、標的領域の個別の分析を可能とする。また、例えば、核酸配列のメチル化の頻度を分析する場合、メチル化部位ごとに検出せずに複数のメチル化部位が存在する領域を広範囲に分析することができるため、メチル化の程度が高い標的領域を好適に検出することができる。メチル化の検出においても、標的領域と同一配列であってメチル化されていない核酸を複数含む検体であっても、標的領域のメチル化を個別に検出することができる。メチル化を検出する場合、標的領域として、CpG領域を含んでいるものを好適に用いることができる。
(核酸増幅反応)
核酸増幅反応とは、PCR法に代表される酵素反応を用いた分子生物学的手法であり、サーマルサイクルを与えるPCR法やLCR法の他にも、一定温度下で行うSDA法や、ICAN法、LAMP法などが挙げられ、いずれも好ましく使用することができる。この核酸増幅反応は、初めに増幅を開始するところから、増幅終了後に、融解曲線分析を終えるまでを、一つの反応場で行う。この反応場とは、ある容量をもつ反応液中に存在する分子が拡散せずに制限された容積中に留まっている空間を指す。従って、複数の反応場とは、96穴ウェルプレートや384穴ウェルプレートに代表されるような、物理的に区切られた、複数の空間であってもよい。また、物理的には区切られていないが、分子の拡散が大きく制限されているために、反応液毎での拡散が起きない連続した一つの空間内に複数の反応場を設定してもよい。具体的にこの連続した一つの空間としては、キャピラリーや、平板で挟まれた薄層のチャンバー、またはマイクロ流体デバイス上に加工された流路を好ましく用いることができる。ここでのマイクロ流体デバイスとは、ガラスやシリコン、プラスチック等の基材に10〜500μm程度の微細な流路を形成し、そのなかで様々な化学・生化学プロセスを行うための混合・分離・検出等を行うことのできる要素を備えているデバイスを意味する。この連続した一つの空間内に複数の反応場を設定するには、各反応場は、緩衝液等の溶液で隙間のないように満たされていてもよく、また空気や窒素またはアルゴン等の気体で満たされていてもよい。またはシリコンオイルやミネラルオイルといった非水溶性の溶剤で満たすこともできる。さらにこの反応場は、物理的に区切られておらず、また分子の拡散が大きく制限されていない、分子拡散が起こり得るチャンバーを用いることもできる。ただし、この場合は、NATURE METHODS VOL.3 NO.7 JULY 2006 545-550に示されているような、非水溶性の溶媒中で、界面活性剤の存在下においてPCR反応液で構成されるエマルジョンを複数作成することで、それぞれのエマルジョンを反応場とすることができる。
核酸増幅反応とは、PCR法に代表される酵素反応を用いた分子生物学的手法であり、サーマルサイクルを与えるPCR法やLCR法の他にも、一定温度下で行うSDA法や、ICAN法、LAMP法などが挙げられ、いずれも好ましく使用することができる。この核酸増幅反応は、初めに増幅を開始するところから、増幅終了後に、融解曲線分析を終えるまでを、一つの反応場で行う。この反応場とは、ある容量をもつ反応液中に存在する分子が拡散せずに制限された容積中に留まっている空間を指す。従って、複数の反応場とは、96穴ウェルプレートや384穴ウェルプレートに代表されるような、物理的に区切られた、複数の空間であってもよい。また、物理的には区切られていないが、分子の拡散が大きく制限されているために、反応液毎での拡散が起きない連続した一つの空間内に複数の反応場を設定してもよい。具体的にこの連続した一つの空間としては、キャピラリーや、平板で挟まれた薄層のチャンバー、またはマイクロ流体デバイス上に加工された流路を好ましく用いることができる。ここでのマイクロ流体デバイスとは、ガラスやシリコン、プラスチック等の基材に10〜500μm程度の微細な流路を形成し、そのなかで様々な化学・生化学プロセスを行うための混合・分離・検出等を行うことのできる要素を備えているデバイスを意味する。この連続した一つの空間内に複数の反応場を設定するには、各反応場は、緩衝液等の溶液で隙間のないように満たされていてもよく、また空気や窒素またはアルゴン等の気体で満たされていてもよい。またはシリコンオイルやミネラルオイルといった非水溶性の溶剤で満たすこともできる。さらにこの反応場は、物理的に区切られておらず、また分子の拡散が大きく制限されていない、分子拡散が起こり得るチャンバーを用いることもできる。ただし、この場合は、NATURE METHODS VOL.3 NO.7 JULY 2006 545-550に示されているような、非水溶性の溶媒中で、界面活性剤の存在下においてPCR反応液で構成されるエマルジョンを複数作成することで、それぞれのエマルジョンを反応場とすることができる。
これらの複数の反応場で、例えば核酸増幅反応としてPCRを行う際には、各反応場では、同一のプライマーを用いて、同一の領域を増幅することが好ましい。また、特にCpGアイランドのメチル化の程度を調べる用途においては、プライマーはCpGを含まないように設計されたものを用いることが好ましい。これは例えば、がんの診断を想定する場合、がん細胞に由来するCpGアイランドが高メチル化したテンプレート核酸と、正常細胞に由来する低メチル化のテンプレート核酸におけるメチル化の程度が常に一定ではなく、また中間のものも存在するためである。つまり、1つの反応場において1つのプライマーで増幅を行う際には、プライマー自身に特異性がある場合は、増幅の有無を確認するだけではCpGアイランドに含まれる複数のCpGのメチル化の程度を調べることはできない。従って、本発明では、調べるべき配列変化が起こる領域を挟んで、調べるべき配列変化が起こらないと想定される領域にプライマーを設計することが好ましい。
このように、調べるべき配列変化の程度によらずに核酸増幅反応を行った後に、この増幅産物の融解曲線分析を行うことで、配列変化の程度を調べることができる。
(融解曲線分析)
本発明では、核酸増幅反応により得られる増幅産物について融解曲線分析を行う。融解曲線分析としては、一般的によく用いられる蛍光インターカレータを用いた熱融解曲線分析を行うことができる。蛍光インターカレータとしては、通常融解曲線分析を行う際に用いることができるエチジウムブロマイドやSYBRR Green I(Molecular Probes Inc.社製)、LC Green(Idaho Technology社製)などを好ましく使用することができる。融解曲線分析によって、各反応場で増幅した増幅産物の融解温度と増幅産物に特徴的な融解曲線を得ることができる。増幅が行われない反応場では、通常、融解曲線は得られない。また仮に複数のピークが生じるような、非特異な産物が含まれている場合であっても、融解温度の分析から標的とする増幅産物であるかどうかを確認することは可能である。特にCpGアイランドのメチル化の程度を調べる用途において、重亜硫酸塩処理を行って、メチル化シトシンを変換せず、非メチル化シトシンをウラシルに変換する反応を用いる場合に融解曲線分析は有効性が高い。これは、例えば500塩基の長さを増幅すると仮定した場合に、CpGが50ヶ所存在するとしたとき、すべてのCpGがメチル化されているテンプレート核酸からの増幅産物と、すべてのCpGがメチル化されていないテンプレート核酸からの増幅産物では、GC%が10%異なることを意味する。GC%の差は融解温度と融解曲線の変化となって検出することが可能である。つまりCpGアイランドが高メチル化していた場合は高い融解温度を示し、低メチル化である場合は低い融解温度を段階的に示すということである。また重亜硫酸塩での処理は、US5786146等に記載の方法にて行うことができる。
本発明では、核酸増幅反応により得られる増幅産物について融解曲線分析を行う。融解曲線分析としては、一般的によく用いられる蛍光インターカレータを用いた熱融解曲線分析を行うことができる。蛍光インターカレータとしては、通常融解曲線分析を行う際に用いることができるエチジウムブロマイドやSYBRR Green I(Molecular Probes Inc.社製)、LC Green(Idaho Technology社製)などを好ましく使用することができる。融解曲線分析によって、各反応場で増幅した増幅産物の融解温度と増幅産物に特徴的な融解曲線を得ることができる。増幅が行われない反応場では、通常、融解曲線は得られない。また仮に複数のピークが生じるような、非特異な産物が含まれている場合であっても、融解温度の分析から標的とする増幅産物であるかどうかを確認することは可能である。特にCpGアイランドのメチル化の程度を調べる用途において、重亜硫酸塩処理を行って、メチル化シトシンを変換せず、非メチル化シトシンをウラシルに変換する反応を用いる場合に融解曲線分析は有効性が高い。これは、例えば500塩基の長さを増幅すると仮定した場合に、CpGが50ヶ所存在するとしたとき、すべてのCpGがメチル化されているテンプレート核酸からの増幅産物と、すべてのCpGがメチル化されていないテンプレート核酸からの増幅産物では、GC%が10%異なることを意味する。GC%の差は融解温度と融解曲線の変化となって検出することが可能である。つまりCpGアイランドが高メチル化していた場合は高い融解温度を示し、低メチル化である場合は低い融解温度を段階的に示すということである。また重亜硫酸塩での処理は、US5786146等に記載の方法にて行うことができる。
熱融解曲線は、ウェルプレートのような物理的に区切られた空間を反応場とする場合は、一般的に利用されている蛍光励起装置と蛍光検出装置を備えている定量PCR装置等を使用して分析することができる。また、マイクロ流体デバイスのように連続した一つの空間内に複数の反応場を設ける場合は、熱融解を行う位置に蛍光励起装置と蛍光検出装置を備えることで熱融解分析を行うことができる。この場合、熱融解を行う位置は、一点ではなく、ある程度の範囲にまたがるため、蛍光励起装置および蛍光検出装置はその範囲にまたがり複数を備えることが好ましい。蛍光励起装置においては、複数を備える代わりに、その範囲を一括して蛍光励起できる装置を用いてもよい。また、蛍光検出装置としてCCDやCMOSといったエリアセンサーを用いて、その範囲を一括して検出してもよい。蛍光励起装置および蛍光検出装置は、使用する蛍光インターカレータの特性に応じて、光学フィルターを用いて波長を調製されることがより好ましい。
核酸増幅反応および融解曲線分析の際に温度制御やサーマルサイクルが必要となる場合において、ウェルプレートのような物理的に区切られた空間を反応場とする場合では、一般的に利用されているペルチェヒーター等を備えている定量PCR装置等を使用して実施することができる。また、マイクロ流体デバイスのように連続した一つの空間を反応場とする場合は、デバイスに接触するようにヒーターおよびペルチェヒーターを設けることで、温度調整またはサーマルサイクルを与えることができる。核酸増幅反応は、1分子からの増幅を行うことを想定しているため、例えば核酸増幅反応としてPCRを行う場合は、20〜70サイクル、より好ましくは30〜60サイクルを実施することが好ましい。また、マイクロ流体デバイスのように連続した一つの空間内に複数の反応場を設ける場合は、Science 280, 1046 (1998)で示されているようにPCR反応液が流れる流路の形状によって、ペルチェヒーターを用いなくともサーマルサイクルを与えることができる。
このように融解曲線分析を行った後、検体核酸の標的領域の核酸配列を分析するために、融解曲線分析の結果を反応場間で比較する工程を有してもよい。あるいは、核酸検体とともに、あらかじめ核酸配列の変化を判断する指標となる基準試料についての融解曲線分析の分析結果と比較する工程を有してもよい。基準試料としては、例えば、標的領域中のメチル化の程度が既知の核酸を用いることができる。具体的には0%〜100%まで数段階でメチル化の程度が異なる核酸を別途に調製し、事前に融解曲線を測定し、新たに分析した核酸の融解曲線と比較することでメチル化の程度が分かるということである。
(核酸検体の調製)
核酸増幅反応とそれに続く融解曲線分析を行う際には、1つの反応場に含まれる検体中の核酸濃度は、1つの標的領域が主として含まれるように調製されていることが好ましい。つまり、1つ以下の核酸検体の標的領域を存在させることであり、言い換えると、核酸検体に由来する1つの標的領域を含む1つの核酸を存在させることである。1つの反応場に2つ以上の標的領域が含まれる場合に得られるデータは1分子由来のものではなくなる。一方、ほとんどの反応場で増幅が確認されないような状況では、多くの反応場が標的領域を含んでいないということでありより多数の検体を処理する場合に、作業が煩雑になってしまう。そこで、検体の種類が既知で、核酸検体の濃度がわかっている場合は、あらかじめ検体の濃度調製を行うことが好ましい。例えば血清検体から、CpGアイランドのメチル化の程度を広範囲に調べる場合、核酸抽出法を同一の手法で行う場合はAnnals of the New York Academy of Sciences Volume 1075 Circulating Nucleic Acids in Plasma and Serum IV Page 185 - September 2006に示されているように核酸濃度はある範囲に収束するとされている。ここで、核酸検体とは、血清などの検体から抽出した核酸の集団を指し、核酸増幅の鋳型として用いることができる核酸の集団である。また、核酸検体の標的領域とは、1組2対のプライマー等で挟まれて規定される、PCR増幅対象となるターゲット領域のことを指す。また、核酸検体は、標的領域と類似の配列の特徴を有する核酸を含んでいてもよい。類似の核酸の特徴とは、塩基配列自体が類似している場合だけでなく、配列が同一でありながら標的領域上のメチル化等の化学修飾の有無での区別を含む。よって、がん細胞と正常細胞とが混在する検体から調製される核酸検体などを用いることができる。
核酸増幅反応とそれに続く融解曲線分析を行う際には、1つの反応場に含まれる検体中の核酸濃度は、1つの標的領域が主として含まれるように調製されていることが好ましい。つまり、1つ以下の核酸検体の標的領域を存在させることであり、言い換えると、核酸検体に由来する1つの標的領域を含む1つの核酸を存在させることである。1つの反応場に2つ以上の標的領域が含まれる場合に得られるデータは1分子由来のものではなくなる。一方、ほとんどの反応場で増幅が確認されないような状況では、多くの反応場が標的領域を含んでいないということでありより多数の検体を処理する場合に、作業が煩雑になってしまう。そこで、検体の種類が既知で、核酸検体の濃度がわかっている場合は、あらかじめ検体の濃度調製を行うことが好ましい。例えば血清検体から、CpGアイランドのメチル化の程度を広範囲に調べる場合、核酸抽出法を同一の手法で行う場合はAnnals of the New York Academy of Sciences Volume 1075 Circulating Nucleic Acids in Plasma and Serum IV Page 185 - September 2006に示されているように核酸濃度はある範囲に収束するとされている。ここで、核酸検体とは、血清などの検体から抽出した核酸の集団を指し、核酸増幅の鋳型として用いることができる核酸の集団である。また、核酸検体の標的領域とは、1組2対のプライマー等で挟まれて規定される、PCR増幅対象となるターゲット領域のことを指す。また、核酸検体は、標的領域と類似の配列の特徴を有する核酸を含んでいてもよい。類似の核酸の特徴とは、塩基配列自体が類似している場合だけでなく、配列が同一でありながら標的領域上のメチル化等の化学修飾の有無での区別を含む。よって、がん細胞と正常細胞とが混在する検体から調製される核酸検体などを用いることができる。
従って、この場合は検体中の標的領域の濃度を想定することが可能であるため、少なくとも1つのウェルに1つ以下の標的領域が含まれるような濃度、また1つのウェルに複数個の標的領域が入る確立をさらに下げるためには100ウェル当たりに10〜50程度になるように検体濃度を調製して用いることが好ましい。一方、濃度が未知である場合には、初めは最も標的領域の濃度が高くなるように設定しておき、順に段階希釈していく方法をとることができる。この際、マイクロ流体デバイスを反応場として用いる場合は、ウェル当たりの増幅率のモニターを行い、デバイスに解析結果をフィードバックして、リアルタイムで検体濃度を調製することができる。
よって、本発明は、標的領域を含む核酸検体について希釈系列を調製し、夫々の希釈度の核酸検体ごとに複数の反応場において同一の核酸増幅反応を行う工程と、核酸増幅反応により複数の反応場の少なくとも一つ以上で増幅が行われない希釈度の核酸検体について、核酸増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程と、を有する核酸配列の分析方法を包含する。
以下、検体中に存在する標的領域を有する核酸の1分子が有するCpGアイランドのメチル化の程度を検出する実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
(実施例1)
[1.PCRプライマーの準備]
CpGアイランドのメチル化の程度を検出する対象遺伝子として、hMLH1を選択した。GenBank Accession# U83845の配列を参考として、メチル化非特異的な位置にCpGを複数含む領域を増幅産物中に含むようにプライマー設計を行った。表1にプライマーの配列を示す。すなわち、プライマーは、メチル化されている標的領域と、メチル化されていない狭雑している核酸のいずれについても結合できる領域に設計されている。
[1.PCRプライマーの準備]
CpGアイランドのメチル化の程度を検出する対象遺伝子として、hMLH1を選択した。GenBank Accession# U83845の配列を参考として、メチル化非特異的な位置にCpGを複数含む領域を増幅産物中に含むようにプライマー設計を行った。表1にプライマーの配列を示す。すなわち、プライマーは、メチル化されている標的領域と、メチル化されていない狭雑している核酸のいずれについても結合できる領域に設計されている。
上記表1中に示したプライマーは、合成後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製し、F01プライマーとR01プライマーをそれぞれ混合し、それぞれのプライマー濃度が、最終濃度10pmol/μlとなるようにTE緩衝液に溶解してプライマーミックス1を調製した。またF02プライマーとR02プライマーをそれぞれ混合し、それぞれのプライマー濃度が、最終濃度10pmol/μlとなるようにTE緩衝液に溶解してプライマーミックス2を調製した。
[2.検体の準備]
検体中に存在する標的領域を含む核酸のバリエーションとして、すべてのCpG部位がメチル化されている核酸と、すべてのメチル化部位がメチル化されていない核酸の調製を行った。初めに、K-562細胞由来のヒトゲノム(CCL-243D:ATCCより取得)をテンプレートとして、上記のプライマー溶液を用いて市販のサーマルサイクラーでPCRを行った。反応液組成および反応条件を表2に示す。
検体中に存在する標的領域を含む核酸のバリエーションとして、すべてのCpG部位がメチル化されている核酸と、すべてのメチル化部位がメチル化されていない核酸の調製を行った。初めに、K-562細胞由来のヒトゲノム(CCL-243D:ATCCより取得)をテンプレートとして、上記のプライマー溶液を用いて市販のサーマルサイクラーでPCRを行った。反応液組成および反応条件を表2に示す。
これを、反応終了後、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いてPrimerを除去してhMLH1の175塩基の増幅産物を得て、これをCpG部位がすべてメチル化されていない核酸とした。PCR増幅された産物は、すべてメチル化されていないものとすることができる。
次に、この核酸を分割し、この領域に含まれるCpGが全てメチル化されている核酸の調製を行った。上記で調製した175塩基の増幅産物の一部を分割して、これを標的としてDNAメチラーゼ(CpG Methylase, M. Sss I :第一化学薬品工業株式会社製)を用いて常法に従い核酸のメチル化を行った。
これを、反応終了後、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いてPrimerを除去してCpGがすべてメチル化されたhMLH1の175塩基の増幅産物を得て、これをCpG部位がすべてメチル化された核酸とした。これらの核酸は、いずれも吸光度測定を行い濃度を50ng/μLとなるようにTE緩衝液で希釈を行った。
このCpG部位がすべてメチル化された核酸10μLに対して、CpG部位がすべてメチル化されていない核酸90μLを混合して、多数の非メチル化標的領域を含む核酸中に、僅かなメチル化核酸が含まれているモデルとなる核酸検体の調製を行った。
[3.重亜硫酸塩処理]
次に上記核酸に対して、非メチル化シトシンをウラシルに変換する重亜硫酸塩処理を行った。重亜硫酸塩処理は、MethylampTM One-Step DNA Modification Kit(EPIGENTEK社製)を使用して、常法に従って実施した。最終的に溶出した溶液について吸光度測定を行い、これらの核酸が重亜硫酸塩処理されたものが合計として1000000コピー/μLになるようにTE緩衝液で希釈を行い処理核酸を調製した。
次に上記核酸に対して、非メチル化シトシンをウラシルに変換する重亜硫酸塩処理を行った。重亜硫酸塩処理は、MethylampTM One-Step DNA Modification Kit(EPIGENTEK社製)を使用して、常法に従って実施した。最終的に溶出した溶液について吸光度測定を行い、これらの核酸が重亜硫酸塩処理されたものが合計として1000000コピー/μLになるようにTE緩衝液で希釈を行い処理核酸を調製した。
[4.核酸増幅および、融解曲線分析]
重亜硫酸塩処理を行い、濃度調製を行った上記処理核酸をさらに、0.1コピー/μLとなるようにTE緩衝液で希釈を行いTemplate Genome DNA1を作成した。表3に示すとおり、反応液中には、メチル化核酸と非メチル化核酸が1:9の比で含まれる0.1コピー/μLのTemplate Genome DNA1が1μl含まれるので、この反応液を用いると、複数の反応場には平均して1つ以下の標的領域が含まれることになる。これについて、重亜流酸処理後のメチル化非特異的プライマーである、プライマーセット2とSYBRR Green Iを含むSYBRR Premix Ex TaqTM (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)を用いて核酸増幅につづいて融解曲線分析を行った。ここでは、96穴のウェルプレートを、独立した反応場として用いて、市販の定量PCR装置(ABI 7500 Real-Time PCR System:アプライドバイオシステムズ社製)を用いて核酸増幅および融解曲線分析を行った。反応液組成および反応条件を表3に示す。
重亜硫酸塩処理を行い、濃度調製を行った上記処理核酸をさらに、0.1コピー/μLとなるようにTE緩衝液で希釈を行いTemplate Genome DNA1を作成した。表3に示すとおり、反応液中には、メチル化核酸と非メチル化核酸が1:9の比で含まれる0.1コピー/μLのTemplate Genome DNA1が1μl含まれるので、この反応液を用いると、複数の反応場には平均して1つ以下の標的領域が含まれることになる。これについて、重亜流酸処理後のメチル化非特異的プライマーである、プライマーセット2とSYBRR Green Iを含むSYBRR Premix Ex TaqTM (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)を用いて核酸増幅につづいて融解曲線分析を行った。ここでは、96穴のウェルプレートを、独立した反応場として用いて、市販の定量PCR装置(ABI 7500 Real-Time PCR System:アプライドバイオシステムズ社製)を用いて核酸増幅および融解曲線分析を行った。反応液組成および反応条件を表3に示す。
表4に、96ウェルの融解温度の結果を示す。
これより、融解温度が93〜94℃にあるものは、GC%が高くCpGがすべてメチル化されていた核酸に由来した増幅産物であると考えることできる。また、融解温度が83〜84℃にあるものは、GC%が低くCpGすべてがメチル化されていない核酸に由来した増幅産物であると考えることができる。従って検体中に僅かに含まれるメチル化核酸を非メチル化核酸と分離して、CpGアイランドのメチル化の程度を融解温度として検出できた。またその存在比はおよそ2:9であることが分かった。
(実施例2)
[1.PCRプライマーの準備]から[3.重亜硫酸塩処理]までは(実施例1)と同様にして処理核酸を調製し、さらに1コピー/nLとなるようにTE緩衝液で希釈を行いTemplate Genome DNA2を作成した。
[1.PCRプライマーの準備]から[3.重亜硫酸塩処理]までは(実施例1)と同様にして処理核酸を調製し、さらに1コピー/nLとなるようにTE緩衝液で希釈を行いTemplate Genome DNA2を作成した。
[4.核酸増幅および、融解曲線分析]
次に、図1に核酸増幅および融解曲線分析を行う、マイクロ流体デバイスの一例を示す。これは石英基板(1)に直径100μmの流路(2)がパターニングされているものに流路がパターニングされていない石英基板で蓋をして構成される。オイル注入口(3)、希釈液注入口(5)、PCR溶液注入口(6)および排出口(4)の上部には貫通穴があけられており、シリンジポンプ等の微量吐出ポンプによって溶液を、注入および排出できる。オイル注入口(3)からミネラルオイルを流路内に、パルスで注入することで、流路内の流れるPCR反応液はミネラルオイルに挟まれて1nL毎の反応場に区切られる。ここでは、変性ヒーター(8)を95℃、伸長ヒーター(9)を50℃に固定して、石英基盤(1)の裏面に接触して配置することで、流路(2)内を流れるPCR反応液は、蛇行する流路(2)の形状に依存して、流路(2)を流れきるまでには、実質的に40サイクルの2ステップのサーマルサイクルがかけられることになる。PCR反応液はPCR溶液注入口(6)から常時流される。このPCR反応液組成を表5に示す。
次に、図1に核酸増幅および融解曲線分析を行う、マイクロ流体デバイスの一例を示す。これは石英基板(1)に直径100μmの流路(2)がパターニングされているものに流路がパターニングされていない石英基板で蓋をして構成される。オイル注入口(3)、希釈液注入口(5)、PCR溶液注入口(6)および排出口(4)の上部には貫通穴があけられており、シリンジポンプ等の微量吐出ポンプによって溶液を、注入および排出できる。オイル注入口(3)からミネラルオイルを流路内に、パルスで注入することで、流路内の流れるPCR反応液はミネラルオイルに挟まれて1nL毎の反応場に区切られる。ここでは、変性ヒーター(8)を95℃、伸長ヒーター(9)を50℃に固定して、石英基盤(1)の裏面に接触して配置することで、流路(2)内を流れるPCR反応液は、蛇行する流路(2)の形状に依存して、流路(2)を流れきるまでには、実質的に40サイクルの2ステップのサーマルサイクルがかけられることになる。PCR反応液はPCR溶液注入口(6)から常時流される。このPCR反応液組成を表5に示す。
流路(2)を流れ終わった反応場は、次にヒーターアレイ(10)を備えている分析エリア(7)を流れる。ヒーターアレイ(10)はここでは95℃から65℃のまで3℃ごとに計10個のヒーターアレイ(10)が基板(2)の下面に接触して備えられている。また、この分析エリアには、10個のヒーターアレイ(10)の直上に、蛍光励起装置としてトランスイルミネーターとファイバー式の蛍光検出装置(USB 2000:Ocean Optics, Inc社製)がそなえられており、トランスイルミネーターで一括して蛍光励起を行って、各ヒーターアレイ直上の蛍光が測定される。
ここでは、10箇所の蛍光検出を経時的に行うことで、流れてくる反応場ごとに10個のヒーターアレイのどの位置で蛍光が確認および消失されるかを検出し、融解温度として出力される。この際ROX Reference Dye IIに由来する蛍光波長とSYBRR Green Iの波長を分離して検出することで、反応場毎に融解温度が測定される。
ここでは、10箇所の蛍光検出を経時的に行うことで、流れてくる反応場ごとに10個のヒーターアレイのどの位置で蛍光が確認および消失されるかを検出し、融解温度として出力される。この際ROX Reference Dye IIに由来する蛍光波長とSYBRR Green Iの波長を分離して検出することで、反応場毎に融解温度が測定される。
ここでは、連続した100反応場を測定した後に、希釈液注入口(5)から表6に示される組成の希釈液が初めのPCR反応液の送液量に対して10倍の量の送液量で送液されるように同期している。さらに次の100反応場を測定した後には、希釈液がPCR反応液の送液量に対して、再度、直前の希釈液の送液量の10倍の量の送液量で送液されるように繰返し同期している。
ここでは100反応場において50個以上で融解温度が測定されない状態になるときの、融解温度データを用いて、検出結果とした。表7に、50個以上で融解温度が測定されなかった2ラウンド目の検出結果を示す。
これより、融解温度が93〜94℃にあるものは、GC%が高くCpGがすべてメチル化されていた核酸に由来した増幅産物であると考えることできる。また、融解温度が83〜84℃にあるものは、GC%が低くCpGすべてがメチル化されていない核酸に由来した増幅産物であると考えることができる。従って検体中に僅かに含まれるメチル化核酸を類似する非メチル化核酸と分離して、CpGアイランドのメチル化の程度を融解温度として検出できた。またその存在比はおよそ3:28であることが分かった。
1:石英基板
2:流路
3:オイル注入口
4:排出口
5:希釈液注入口
6:PCR溶液注入口
7:分析エリア
8:変性ヒーター
9:伸長ヒーター
10:ヒーターアレイ
2:流路
3:オイル注入口
4:排出口
5:希釈液注入口
6:PCR溶液注入口
7:分析エリア
8:変性ヒーター
9:伸長ヒーター
10:ヒーターアレイ
Claims (10)
- 核酸増幅反応を行う複数の反応場において、各反応場に平均して1つ以下の核酸検体の標的領域を存在させる濃度条件下で、前記各反応場の核酸検体に対して同一の核酸増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程とを有することを特徴とする核酸配列の分析方法。 - 核酸増幅反応を行う複数の反応場において、少なくとも一つ以上の反応場で増幅が行われない核酸検体の濃度条件下で、前記各反応場の核酸検体に対して同一の核酸増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程とを有することを特徴とする核酸配列の分析方法。 - 核酸検体について希釈系列を調製し、夫々の希釈度の前記核酸検体ごとに複数の反応場において同一の核酸増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応により前記複数の反応場の少なくとも一つ以上で増幅が行われない希釈度の前記核酸検体について、前記増幅反応により得られる各反応場の増幅産物の融解曲線分析を行う工程と、
を有することを特徴とする核酸配列の分析方法。 - 前記各反応場における融解曲線分析の結果を基準試料の分析結果に対して比較する工程を更に有する請求項1乃至3の何れか記載の核酸配列の分析方法。
- 前記融解曲線分析の結果を前記反応場間で比較する工程を更に有する請求項1乃至4の何れか記載の核酸配列の分析方法。
- 前記反応場が物理的に区切られている請求項1乃至5の何れか記載の核酸配列の分析方法。
- 前記核酸検体が、重亜硫酸塩で処理がなされている請求項1乃至6の何れか記載の核酸配列の分析方法。
- 前記核酸増幅が、PCR反応である請求項1乃至7の何れか記載の核酸配列の分析方法。
- 前記核酸検体が、CpG領域を含んでいる請求項1乃至8の何れか記載の核酸配列の分析方法。
- マイクロ流体デバイスで前記融解曲線分析を行う請求項1乃至9の何れか記載の核酸配列の分析方法。
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JP2008033009A JP2009189295A (ja) | 2008-02-14 | 2008-02-14 | 核酸配列の分析方法 |
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WO2013027393A1 (ja) * | 2011-08-22 | 2013-02-28 | パナソニック株式会社 | マイクロ流体デバイス |
JPWO2018084017A1 (ja) * | 2016-11-01 | 2019-06-24 | 日本板硝子株式会社 | 反応処理容器、反応処理装置および反応処理方法 |
-
2008
- 2008-02-14 JP JP2008033009A patent/JP2009189295A/ja active Pending
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JP2019180422A (ja) * | 2016-11-01 | 2019-10-24 | 日本板硝子株式会社 | 反応処理容器および反応処理装置 |
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