JP2009178410A - 吸収性物品の湿潤状態の評価方法 - Google Patents

吸収性物品の湿潤状態の評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】測定対象物における表面から深い位置までの領域の状態が反映された情報が得ることで、体感と相関の高い評価結果を得る可能な吸収性物品の湿潤状態の評価方法を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収性物品の湿潤状態の評価方法では、BT−Box(Bottom Temperature Box)を、吸収性物品の肌対向面に載置し、その状態下にBT−Boxから該吸収性物品へ移動する熱の量を経時的に測定し、測定された熱の移動量の最大値の大小に基づき、該吸収性物品の湿潤状態の程度を評価する。
【選択図】図6

Description

本発明は、吸収性物品の湿潤状態の評価方法に関する。本発明の評価方法は、液を吸収してもさらっと感の高い吸収性物品の開発支援に有用である。
布の熱吸収測定を行うことで、布の冷温感を評価する方法が、繊維・被服の技術分野で確立されている(非特許文献1参照)。この方法においては、一定の熱量をもつ銅板の片面を布地に接触させ、その直後の短時間内に生じる銅板から布地への熱移動を測定し、そのときの熱流量のピーク値q−maxを求める。測定されたq−maxの値が大きいほど、測定対象物を冷たく感じると評価する。
上述の評価方法の応用として、さらっと感の良好な吸収性物品のトップシートを選択、評価する方法が知られている(特許文献1参照)。この方法では、カトーテック社製の精密迅速熱物性測定装置であるTHERMO LABO II(KES−F7)に備えられているT−Box(Temperature Detecting Box)を用いている。T−Boxは、q−maxの測定専用のセンサである。特許文献1ではこのT−Boxを用い、最大熱伝達量(q−max値)を測定したウエット時の接触冷温感が、トップシートの着用者の肌に接する側で1.1kw/m2以下であり、かつ、吸収体に接触する側のq−max値が着用者の肌に接する側のq−max値より大きく、差が0.5kw/m2以上であることを基準として、さらっと感の良好な吸収性物品のトップシートを選択、評価している。
また、非特許文献2においては、使い捨ておむつのq−maxを、乾燥状態と生理食塩水を吸収させた状態で測定し、吸水によってq−maxが増加することが報告されている。そして、q−maxの増加は、おむつが肌に触れたときの冷たい感触を増加させると結論されている。
川端季雄、繊維機械学会誌、Vol.37、No.8(1984)、T130−T141 與倉弘子及び丹羽雅子、繊維機械学会誌、Vol.57、No.9(2004)、T89−T94 特開2004−57254号公報
しかし、本発明者らが詳細に検討したところ、q−maxの測定から得られる冷温感の情報は、測定対象物の表面からごく浅い領域の状態しか反映していないことが判明した。したがって、例えば吸液からある程度の時間が経過して、表面シートは乾燥しているが、吸収体は湿潤している吸収性物品においては、体感としては湿潤感があるにもかかわらず、上述のq−maxの測定による評価ではさらっと感があると判断され、評価結果が体感と乖離することがある。
本発明の目的は、前述した従来技術よりも精度が更に向上した吸収性物品の湿潤状態の評価方法を提供することにある。
本発明は、BT−Box(Bottom Temperature Box)を、吸収性物品の肌対向面に載置し、その状態下にBT−Boxから該吸収性物品へ移動する熱の量を経時的に測定し、測定された熱の移動量の最大値の大小に基づき、該吸収性物品の湿潤状態の程度を評価する、吸収性物品の湿潤状態の評価方法を提供するものである。
本発明の方法によれば、測定対象物における表面から深い位置までの領域の状態が反映された情報が得られるので、吸収された液の分布が物品の厚み方向に偏っている場合でも、体感と相関の高い評価結果を得ることができる。また、液が吸収されてある程度の時間が経過した後の定常状態のみならず、液の移動が生じている間での評価や、測定荷重を変えた評価などを精度良く行うことができ、評価のバリエーションが広い。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明においては、BT−Boxを用いて吸収性物品への熱の移動量を測定する。BT−Boxは当該技術分野において良く知られたセンサである。BT−Boxは、測定対象物へ接触する部位である熱板を備えている。またBT−Boxは、熱板を設定温度に常に保つことができるように、該熱板へ熱を供給するための手段、例えばヒータを備えているとともに、熱板の温度を検知するセンサを備えている。本発明においては、BT−Boxとして、カトーテック社製の精密迅速熱物性測定装置であるTHERMO LABO II(KES−F7)に備えられているものを用いている。BT−Boxは、q−maxの測定のためのセンサではなく、定常熱伝導度測定のためのセンサである。
図1には、前記のKES−F7におけるBT−Boxの構造が模式的に示されている。BT−Box10は、アルミニウム等の金属からなる熱板11を備えている。熱板11の表面は外部へ露出している。熱板11は、その裏面側が、断熱材12によって保持固定されている。熱板11の裏面と断熱材12との間には、温度センサ13が配置されている。温度センサ13は熱板11の温度の測定手段である。更に断熱材12内には、主ヒータ14が埋め込まれている。主ヒータ14は、熱板11を設定温度に保つための加熱手段である。熱板11を含む断熱材12は、熱ガード板15に包囲されている。熱ガード板15は、断熱材12を通しての熱の漏れを防止するための部材である。熱板11及び断熱材12を含む熱ガード15は、その全体が第2の断熱材16によって保持されている。第2の断熱材16には、副ヒータ17及び第2の温度センサ18が埋め込まれている。副ヒータ17は、先に述べた主ヒータ14による加熱を補助するために用いられる。第2の温度センサ18は、副ヒータ17の温度を測定するためのものである。主ヒータ14及び副ヒータ17並びに温度センサ13及び第2の温度センサ18はそれぞれ、制御装置(図示せず)に電気的に接続されている。
図示しない制御装置においては、BT−Box10の熱板11の温度設定がなされる。そして、温度センサ13によって測定された熱板11の温度が設定温度を下回った場合には、主ヒータ14及び副ヒータ17を加熱する指令を出して、熱板11の温度を設定温度に常に保つようにしている。制御装置においては、熱板11を設定温度に保つために要した熱量が時間で微分される。この微分操作によって、熱板11を設定温度に保つために要した熱量(W)が時間の関数として得られる。この熱量の経時変化における最大値が、本発明において着目する熱量である。なお、測定結果を規格化する目的で、前記の熱量を熱板11の面積(25cm2)で除した値(W/m2)をもって、熱量と表現してもよい。
上述の構成を有するBT−Boxを用いた本発明の方法を実施するための具体的な手順について説明すると、まず測定対象物である吸収性物品を、その肌対向面が上方を向くように測定台の上に載置する。測定台としては、例えば発泡スチロールのような断熱材を用いることができる。あるいは気体や液体を熱媒として用いた恒温装置を用いることができる。恒温装置を用いる場合には、その温度を、測定環境の温度と同一に保つことが好適である。
好ましい測定環境は、温度20〜25℃、相対湿度45〜65%であり、更に好ましくは温度23℃、相対湿度50%である。この範囲外において測定を行う場合には、測定環境下においてBT−Boxを設定温度に保つために必要な熱量、すなわちBT−Boxと測定対象物とが接触する前の熱量を考慮する必要がある。また、測定環境によっては、測定対象物の熱伝導性や湿潤状態等が変わることがあるので、測定値を比較するとき、及び測定値と官能評価の結果とを相関づけるときには、同一の環境下で測定した結果を用いなければならない。
上述の測定環境下において、測定対象物である吸収性物品を馴化させるとともに、BT−Box10の熱板11を設定温度に加熱し、その温度で安定化させる。設定温度に特に制限はないが、測定環境の温度プラス10度に設定することが、再現性のよい結果を得られる点から好適である。
吸収性物品は、それに要求される機能を実現する目的で、弾性部材を含んだ伸縮性のギャザーを有する場合が多い。ギャザーの形成に起因して吸収性物品には皺が生じやすい。皺の存在は、BT−Box10を用いた本発明の評価方法において、精度を下げる原因となることがある。そのような場合には、BT−Box10の熱板11の全面が、測定対象物と接触するようにするために、BT−Box10の熱板11よりもやや大きな寸法を有する平坦な台座の上に測定対象物を載置し、該測定対象物に生じている皺を該台座上で伸ばした状態で測定を行うことが好ましい。このような方法を採用することで、測定の精度が向上する。
次に、吸収性物品の肌対向面上に、熱板11が該肌対向面と当接するようにBT−Box10を載置する。この際、BT−Box10にあらかじめ所定のおもりを加えておくことにより、測定時に吸収性物品にかかる荷重を調節することができる。熱板11は、吸収性物品よりも10度高い温度に設定・維持されているので、両者の当接によってBT−Box10から吸収性物品へ熱が移動し、熱板11の温度は低下する。BT−Box10に接続されている制御装置は、低下した熱板11の温度を設定温度に戻すために、BT−Box10中のヒータを加熱する指令を出す。ヒータの加熱によって熱板11に与えられた熱量は、熱板11から吸収性物品へ移動した熱量に等しい。したがって、ヒータの加熱によって熱板11に与えられた熱量をモニタし、該熱量を時間で微分することで、熱板11から吸収性物品へ移動した熱量の経時変化、すなわち熱流量の経時変化を知ることができる。このようにして得られた熱流量と時間との関係の一例を図2に示す。
図2に示すように、BT−Box10を用いて得られた熱流量と時間との関係は、測定の初期にピークを有するものとなる。ピークに達した後は、熱流量は次第に減少していく。このピーク時の熱流量を、本発明ではBT−最大熱流量と定義する。測定対象として吸収性物品を採用する本発明においては、測定開始からBT−最大熱流量に達するまでの時間は概ね10秒以内である。
背景技術の項で述べたq−maxの値が、測定対象物の冷温感の尺度となるのと同様に、上述の方法で測定されたBT−最大熱流量の値も、測定対象物の冷温感の尺度となることが本発明者によって確認された。図3(a)及び(b)は、このことを例証する測定結果である。
モデル測定対象物として、吸収性物品の表面シートとしてしばしば用いられるエアスルー不織布を採用し、該エアスルー不織布に様々な量の水を吸収させたときのq−maxの値及びBT−最大熱流量の値を測定した。測定台としては発泡スチロールを用いた。モデル測定対象物であるエアスルー不織布は、坪量が25g/m2であり、PET/PE(2.0dtex)及びPP/PE(5.6dtex)の2種類の芯鞘型複合繊維からなるものである。PET/PEとPP/PEの重量比は、2:3である。これらの繊維は親水油剤処理が施されたものである。q−maxに関しては、図3(a)に示すとおりであり、不織布に吸収させた水の量が増えるほどq−maxが増加した。この結果は、先に述べた非特許文献1や特許文献1の記載に符合している。BT−最大熱流量に関しては、図3(b)に示すとおりであり、q−maxと同様に、不織布に吸収させた水の量が増えるほどBT−最大熱流量が増加した。これらの結果から、BT−最大熱流量の値は、q−maxの値と同様に、測定対象物の冷温感の尺度となるものであることが判る。
次に、本発明者らは、q−max及びBT−最大熱流量が、測定対象物の深さ方向の状態をどの程度反映するかを調べた。その結果を図4(a)及び(b)に示す。これらの結果は、厚さ2mmのステンレス板上に上述のエアスルー不織布を重ね、q−max及びBT−最大熱流量を測定した結果である。エアスルー不織布を重ねる枚数を変化させて厚みを変えたときに、q−max及びBT−最大熱流量の値がどのように変化するかを調べることで、q−max及びBT−最大熱流量が、測定対象物の深さ方向の状態をどの程度反映するかを知ることができる。なお不織布の厚みはレーザ厚み計で測定した。
q−maxに関しては、図4(a)に示すとおりであり、不織布の厚みにかかわらず、q−maxの値はほぼ一定している。このことは、q−maxは測定対象物の表面からごく浅い領域までの状態しか反映しないことを意味している。一方、BT−最大熱流量に関しては、図4(b)に示すとおりであり、不織布の厚みを大きくしないとBT−最大熱流量の値が一定にならない。このことは、不織布の厚みが小さい場合には、不織布のみならず、その下に位置するステンレス板の状態までもがBT−最大熱流量に反映されていることを意味している。換言すれば、BT−最大熱流量は測定対象物の表面から深い領域までの状態を反映することができる。この点において、BT−最大熱流量はq−maxに比べて極めて有用である。
図4(b)に示す結果が、体感と相関することを確認するために、本発明者らは次の実験を行った。フラッフパルプ50重量%及び高吸収性ポリマー50重量%を含む混合物からなる坪量500g/m2の吸収コアを、坪量16g/m2の薄葉紙で包み吸収体を得た。裏面シートとして、坪量20g/m2のPE製シートを用いた。この上に、上述のエアスルー不織布を重ね、モデル吸収性物品を作製した。このモデル吸収性物品について、液を吸収させる前の状態でのq−max及びBT−最大熱流量を測定した。なお、測定時に対象物にかかる荷重は、後述する官能評価にて、パネラーがおむつを触るときの圧力にほぼ等しい、1.0kPaとした。その結果を図5(a)及び(b)に示す。次に、モデル吸収性物品からエアスルー不織布を分離し、吸収体に直接人工尿を40g注入した。人工尿を注入してから1分経過後にエアスルー不織布を吸収体上に重ね、モデル吸収性物品の状態に戻した。このモデル吸収性物品についてq−max及びBT−最大熱流量を測定した。その結果を図5(a)及び(b)に示す。人工尿は、測定環境と同一の温度である23℃のものを用いた。人工尿は、5g/秒の速度にて一括で注入した。人工尿の組成は、尿素1.94重量%、塩化ナトリウム0.795重量%、硫酸マグネシウム0.11重量%、塩化カルシウム0.062重量%、硫酸カリウム0.197重量%、赤色2号(染料)0.010重量%、水96.88重量%及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(約0.07、%)であり、表面張力を53±1dyne/cm(23℃)に調整したものである。
図5(a)及び(b)に示す結果から明らかなように、q−maxの測定では、モデル吸収性物品の湿潤の有無にかかわらず、q−maxの値はほぼ同じであることが判る。一方、BT−最大熱流量の測定では、乾燥状態よりも湿潤状態の方がBT−最大熱流量の値が大きくなることが判る。
図5(a)及び(b)に示す測定とは別に、乾燥状態及び吸収体に直接40gの人工尿を吸収させた湿潤状態でのモデル吸収性物品について、5人のパネラーに、該モデル吸収性物品におけるエアスルー不織布を触らせて、その湿潤状態の程度を官能評価させた。評価基準は、濡れている、やや濡れている、湿っている、やや湿っている、さらっとしている、の5段階とした。その結果を図5(c)に示す。この結果から明らかなように、人は、表面がドライであっても、吸収体が湿潤していれば、吸収性物品全体として僅かな湿り感を覚えることが判る。
図5(c)に示す結果と、図5(a)及び(b)に示す結果とを対比すると、q−maxの測定結果は官能評価と相関していないことが判る。これに対して、BT−最大熱流量の測定結果と官能評価とは相関関係が高いことが判る。以上の結果から、q−maxを用いた評価では、吸収性物品の表面シートがドライであれば、たとえ吸収体が湿潤していたとしても、吸収性物品全体としてドライであると判断されてしまうことが判る。これに対して、BT−最大熱流量を用いた評価では、表面シートがドライであっても、吸収体が湿潤していれば、吸収性物品全体として湿潤していると判断される。したがって、吸収性物品の湿潤状態を、BT−最大熱流量を用いて判断することで、人が感じる微妙な湿り具合を正確に評価することができる。この点において、本発明の評価方法は、q−maxを用いた従来の評価方法に比べて極めて優れていることが判る。
次に、BT−最大熱流量を用いた本発明の評価方法と、官能評価との相関関係の程度を調べた。測定対象である吸収性物品は、上述した図5(a)ないし(c)に示す測定を行ったときに用いたものと同様とした。この吸収性物品に人工尿を40〜120g注入し、1分〜10分放置することにより、湿潤状態の異なる数種類の評価サンプルを得た。注入する液量や、注入してからの経過時間による湿潤状態の変化については、後に実験例を示す。このように得られた吸収性物品の表面シート側から1.0kPaの荷重がかかるように調整したBT−Boxを用いて、BT−最大熱流量を測定した。この測定とは別に、4人のパネラーにおむつの表面シートを触らせて、その湿潤状態の程度を官能評価させた。評価基準は、上述した図5(c)に示す測定を行ったときと同様とした。この結果を図6に示す。
図6に示す結果から明らかなように、本発明に従い測定されたBT−最大熱流量の値と官能評価とは極めてよく相関していることが判る。したがって本発明の方法は、吸収性物品の湿潤状態を極めて精度よく評価できるものであると言える。
以上のとおり、本発明の評価方法によれば、官能評価によらずとも、吸収性物品の湿潤状態の程度を精度良く評価することができる。したがって本発明の評価方法は、液を吸収してもさらっと感の高い吸収性物品の構造の設計や、該吸収性物品の構成材料の選択を始めとする新規な吸収性物品の開発支援に有用である。
以上、本発明のBT−最大熱流量は、吸収性物品の湿潤状態について、手で触ったときに感じる官能評価と極めてよく相関することを説明したが、実際に着用している状態、例えば赤ちゃんがおむつを着用している状態では、着用者の姿勢によって、吸収性物品に加わる圧力はさまざまである。本発明のBT−最大熱流量は、測定時にかかる荷重を変えた評価も精度よく行うことができ、吸収性物品の着用者の姿勢に応じた湿潤感の違いを容易に知ることができる。図7(a)及び(b)は、このことを例証する測定結果である。
測定対象である吸収性物品は、上述した図5(a)ないし(c)に示す測定を行ったときに用いたものと同様とした。この吸収性物品について、液を吸収させる前の状態でのq−max及びBT−最大熱流量を、吸収性物品にかかる荷重が1.0kPa、3.5kPa、5.0kPaの条件にて、それぞれ測定した。次に、この吸収性物品に、人工尿80gを注入し、10分放置した後、上述と同様の条件にて、q−max及びBT−最大熱流量を測定した。ここで採用した荷重条件に相当する一例として、1.0kPaは、赤ちゃんが立っている場合や歩行している場合、3.5kPaは、赤ちゃんが座っている場合、5.0kPaは、赤ちゃんが母親におむつ部分を抱きかかえられている場合があげられる。このように評価した結果を図7(a)及び(b)に示す。この結果から、液を吸収させる前の状態では、q−max及びBT−最大熱流量とも、測定荷重の増加に伴い測定値も増加していることがわかる。これは、測定荷重が増加することにより、表面シート押しつぶされ、測定に用いる熱板との接触面積が増加すること、また繊維間の空気層が少なくなることによって、不織布の熱通過率が増大するためである。一方で、液を吸収させた後の状態では、測定荷重が増加することによる測定値の増加量は、q−maxは液を吸収させる前の状態での増加量とほぼ同じであるのに対し、BT−最大熱流量は、液を吸収させる前の状態よりも明らかに増加量が多いことがわかる。このことは、q−maxは測定対象物の表面の状態しか反映しないのに対し、BT−最大熱流量は、荷重の増加に伴い、表面シートの厚みが小さくなることで、表面シートの下側の吸収層の状態をより強く反映することを示している。
このように、BT−最大熱流量は、様々な測定荷重での評価を精度よく行うことができ、吸収性物品の着用者の姿勢に応じた湿潤感の違いを容易に知ることができるという点から意義のあるものである。
次に、吸収性物品に注入する液量及び、液を注入してから経過した時間と吸収性物品の湿潤状態との関係について、q−max及びBT−最大熱流量を測定した実験例を示す。
吸収性物品に注入する液量を変化させた場合の、q−max及びBT−最大熱流量の測定を行った。測定対象である吸収性物品は、上述した図5(a)ないし(c)に示す測定を行ったときに用いたものと同様とした。この吸収性物品に、人工尿20g、40g、80gを注入し、それぞれを10分放置した後に、3.5kPaの測定荷重にて、q−max及びBT−最大熱流量を測定した。その結果を図8(a)及び(b)に示す。この結果から、q−maxは、注入した液量によらずほぼ一定の値となるのに対し、BT−最大熱流量は、注入した液量の増加に伴い、測定値も増加していることがわかる。このことは、q−maxは吸収性物品の表面状態しか反映していないのに対し、BT−最大熱流量は、表面の液量のみならず、その下に存在する吸収体中に存在する液量をも反映することを示しBT−最大熱流量は、吸収性物品全体が肌に与える湿潤感を評価しているといえる。
次に、排尿後の湿潤感の経時的な変化についてq−max及びBT−最大熱流量を用いて評価した。測定対象である吸収性物品は、上述した図5(a)ないし(c)に示す測定を行ったときに用いたものと同様とした。この吸収性物品に、人工尿80gを注入し、3.5kPaの測定荷重にて、q−max及びBT−最大熱流量を測定した。液を注入してから、測定するまでの時間を30秒、1分、3分、5分、10分とした場合について、それぞれ測定した。この際、一度測定したサンプルは、繰り返し次の測定には用いずに、その都度別のサンプルを用いることで、測定時に生じる状態変化の影響は受けないようにした。このように測定した結果を図9(a)及び(b)に示す。この結果から、q−maxは、液を注入してから測定までの時間によらず、ほぼ一定の値を示したのに対し、BT−最大熱流量は、注入後の時間が経過するに伴い、BT−最大熱流量が減少することがわかる。特に、注入後からおよそ3分後までの減少が大きく、その後は緩やかに減少し、10分後にはほぼ定常状態に達する。注入した液が表面シートを通過して、吸収層へ吸収されていく過程において、液が完全に吸収される前の状態で、測定を行うと、測定時にかかる荷重により、吸収されていない液の一部は表面上に押し戻されてくる。q−maxは、接触した瞬間に生じる熱流量の最大値を測定しているため、押し戻されてくる液量までは反映されない。一方、BT−最大熱流量を用いる評価方法は、接触してから最大熱量に達するまでに概ね2〜10秒程度の時間がかかるために、押し戻されてきた液量をも反映される。このように、BT−最大熱流量は、液が吸収されて、ある程度時間が経過した後の定常状態のみならず、液の移動が生じている間での評価を行うことができ、換言すれば、吸収性物品の液吸収挙動を評価することができるといえる。このような評価ができることは、排尿後の湿潤感が時間とともにどのように変化するのかを把握することができるという点から極めて有用である。例えば、異なる種類のおむつについて、排尿後の湿潤感が軽減されるまでにかかる時間を比較することができる。したがって本発明の評価方法は、液を吸収してもすぐにさらっとする吸収性物品の構造の設計や、該吸収性物品の構成材料の選択を始めとする新規な吸収性物品の開発支援に有用である。
以上、図7〜9に示した結果を用いて、q−maxとBT−最大熱流量との違いについて、説明してきたが、さらに、図7〜9に示した測定結果のいずれについても、BT−最大熱流量に比べて、q−maxの方が測定値にバラツキが大きいことがわかる。q−maxは、測定対象物との接触状態に強く依存するために、吸収性物品の表面に存在するわずかな皺の影響を受けやすいことが、その要因のひとつであると考えられる。このような皺は、前述した台座を用いて測定対象物を伸ばしても、完全に取り除くことは困難であり、BT−最大熱流量は、これらの影響を受けにくいことからも、吸収性物品の湿潤状態の評価に有効であるといえる。
液を吸収してもさらっと感の高い吸収性物品とするためには、本発明に従い測定されるBT−最大熱流量の値を小さくすればよい。そのための設計手法としては、例えば以下の(イ)〜(チ)等が挙げられる。
(イ)表面シートと中間層との間に、毛管力の勾配を設ける。
(ロ)表面シートの下又は中間層の下に吸水性の高い素材を配置する。
(ハ)表面シートと中間層との間に、疎水性−親水性の勾配を設ける。
(ニ)表面シートの表面を凹凸にする。
(ホ)吸収体中に含有させる高吸収性ポリマーを不均一に分布させる。
(ヘ)表面シートを低坪量にするか、エンボス加工を施すか、又は開孔を形成する。
(ト)表面シートの全面又は一部を撥水性にする。
(チ)中間層を嵩高にするか、又は構成繊維として太いものを用いて該中間層を粗にする。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば上述の説明は、吸収性物品の一例としての使い捨ておむつに関してのものであったが、本発明の評価方法を適用できる吸収性物品としては、使い捨ておむつ以外に生理用ナプキン、補助パッド、パンティライナー等の様々なものが挙げられる。
図1は、BT−Boxの構造を示す模式図である。 図2は、熱流量の経時変化を示すグラフである。 図3(a)は、q−maxと水分量との関係を示すグラフであり、図3(b)は、BT−最大熱流量と水分量との関係を示すグラフである。 図4(a)は、q−maxと測定対象物の厚みとの関係を示すグラフであり、図4(b)は、BT−最大熱流量と測定対象物の厚みとの関係を示すグラフである。 図5(a)は、乾燥及び湿潤状態のおむつにおけるq−maxの値を示すグラフであり、図5(a)は、乾燥及び湿潤状態のおむつにおけるBT−最大熱流量の値を示すグラフであり、図5(c)は、乾燥及び湿潤状態のおむつにおける湿潤に対する官能評価の結果を示すグラフである。 図6は、湿潤させた種々のおむつにおけるBT−最大熱流量と官能評価との相関関係を示すグラフである。 図7(a)は、乾燥及び湿潤状態のおむつにおけるq−maxと測定荷重との関係を示すグラフであり、図7(b)は、乾燥及び湿潤状態のおむつにおけるBT−最大熱流量と測定荷重との関係を示すグラフである。 図8(a)は、湿潤状態のおむつにおけるq−maxと注入液量との関係を示すグラフであり、図8(b)は、湿潤状態のおむつにおけるBT−最大熱流量と注入液量との関係を示すグラフである。 図9(a)は、湿潤状態のおむつにおけるq−maxと液注入後からq−max測定までの時間との関係を示すグラフであり、図9(b)は、湿潤状態のおむつにおけるBT−最大熱流量と液注入後からBT−最大熱流量測定までの時間との関係を示すグラフである。

Claims (3)

  1. BT−Box(Bottom Temperature Box)を、吸収性物品の肌対向面に載置し、その状態下にBT−Boxから該吸収性物品へ移動する熱の量を経時的に測定し、測定された熱の移動量の最大値の大小に基づき、該吸収性物品の湿潤状態の程度を評価する、吸収性物品の湿潤状態の評価方法。
  2. BT−Boxに備えられている熱板の寸法よりも大きな寸法を有する平坦な台座の上に吸収性物品を載置し、該吸収性物品に生じている皺を伸ばした状態で、該吸収性物品上にBT−Boxを載置する請求項1記載の評価方法。
  3. 温度20〜25℃、相対湿度45〜65%の環境下に測定を行う請求項1又は2記載の評価方法。
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