JP2009171880A - アルツハイマー病における次世代遺伝子治療法・免疫治療法の開発 - Google Patents

アルツハイマー病における次世代遺伝子治療法・免疫治療法の開発 Download PDF

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Abstract

【課題】 抗体投与よりも効果が持続し、一本鎖抗体よりも抗体力値が高い、アルツハイマー病の遺伝子治療・免疫治療を可能とすること。
【解決手段】 完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するベクターであって、プロモーター配列、抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列、自己プロセシングペプチドをコードする配列及び抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖をコードする配列を含む前記ベクター。前記ベクターを有効成分として含む、アルツハイマー病の予防及び/又は治療薬。
【選択図】 図6

Description

本発明は、アルツハイマー病の遺伝子治療法・免疫治療法に利用できる抗β−アミロイド抗体遺伝子又はその改変型を導入したベクターに関する。
ヒトアルツハイマー病(AD)の主な病理学的特徴として、老人斑と神経原繊維変化があり、これらが進行すると、神経細胞数の減少や脳の萎縮がみられる。老人斑は、細胞膜上のレセプターであるアミロイド前駆体タンパク質(APP)から切り出されるβ−アミロイド(Aβ)の蓄積によって引き起こされることが知られている。さらに近年,不溶性のAβだけでなく、可溶性のAβ凝集体の神経細胞毒性が確認され、注目を集めている(非特許文献1)。現在、日本で認可を受けたAD治療薬は、コリンエステラーゼ阻害薬のアリセプトのみである。これは、失われた神経伝達を補うもので、症状を抑えることに留まっており、根本的な治療には到っていない。
このため、ADの根本的原因であるAβを減少させることを目的として、自己タンパク質であるAβを抗体によって除去する「Aβワクチン療法」が考案された(非特許文献2)。このワクチン療法は、合成Aβ42ペプチドをアジュバンドと共に筋肉内に投与するものであった。2001年には、このワクチンの臨床試験(phaseII)が開始された。これによって老人斑の消失が確認され、一定の効果が確認された一方で、6%の患者に脳髄膜炎の副作用が起こり、患者1名の死亡も確認された。この副作用の出現によって、臨床試験は中止となった。現在、ワクチンの副作用の原因は2つ考えられている。一つは、投与されたAβに対する抗体がミクログリアを活性化し、脳髄膜炎につながったのではないかという考えである。もう一つは、ワクチンに含まれるアジュバンドに強い免疫活性化作用があるため、T細胞などの細胞性免疫を惹起した結果、一部の患者でAβまたAPP反応性Th1型CD4T細胞が脳に浸潤した事が髄膜炎につながったのではないかと考えられている(非特許文献3)。このため、安全性が高く効果的にAβを減少させることのできるワクチンの開発が望まれている。
Tamuraらは、合成Aβペプチドで免疫したマウスを使用して、Aβの種々のエピトープに対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を作製した(非特許文献4)。このハイブリドーマ細胞より産生された抗体をペプシンで切断し、ミクログリアの活性化に関与するFc領域を除去したF(ab’)2を精製した。この抗AβF(ab’)2抗体をAβ過剰発現ADモデルマウス(Tg2576)の腹腔内へ隔週投与し,AD予防効果と治療効果の検討を行った。抗体投与後に、マウス脳切片の免疫染色により,老人斑の消失を確認した.また,sandwich ELISA法により可溶性・不溶性の脳内Aβの定量を行った結果、抗体による脳内Aβの減少を確認した。以上より、Fcレセプターを介したファゴサイトーシスを介さずにAβの除去に成功した。しかし、受動免疫による治療法では、効果を持続させるために継続的な抗体投与が必要となることがTamuraらの研究の難点であった。
また、抗Aβ一本鎖抗体をコードするアデノ随伴ウイルスをADモデルマウスの脳内に投与したところ、アミロイドの沈着が減り、さらに、投与の1年後にも抗Aβ一本鎖抗体の発現が観察されたことが報告されている(非特許文献5)。しかし、一般に、一本鎖抗体は完全型抗体と比較すると抗体力値が低い。
Rakez Kayed et al,. Science (2003) 300 : 486-489 Dale Schenk et al., Nature (1999) 400 : 173-177 James A. R. Nicoll et al., Nature med (2003) 9 : 448-452 Y. Tamura et al., Neurobiology of Disease 20 (2005) 541-549 K. Fukuchi et al., Neurobiology of Disease 23 (2006) 502-511
本発明は、抗体投与よりも効果が持続し、一本鎖抗体よりも抗体力値が高い、アルツハイマー病の遺伝子治療・免疫治療を可能とすることを目的とする。
そこで、上記の課題を解決するため、本発明者らは、まず、長期間の遺伝子発現を期待できるアデノ随伴ウイルス(AAV)に着目した。AAVは細胞で安定した遺伝子発現が可能であるため、単回投与でも長期的な効果を期待できる。また、AAVは嚢胞性線維症、血友病などの疾患に対して臨床研究が行われており、安全性の高い遺伝子治療ベクターとして広く用いられている。さらに,ウイルスベクターは、アジュバンドを必要としないためTh1型CD4 T細胞の活性化を抑えられるのではないかと期待される。次に、AAVの血清型にも注意を払った。本発明者らの長年にわたるAAVベクターに関する研究実績から、血清型の異なるAAVベクターは細胞への親和性が異なることが明らかとなった。本発明者らは、筋肉細胞において発現量が最も高いAAV 1型ベクターを使用することにした。
本発明者らは,抗Aβ抗体産生ハイブリドーマ細胞からmRNAを抽出・逆転写することによって、抗Aβ抗体cDNAを得た(図1)。ミクログリアの活性を抑えるため、全長の抗体遺伝子よりCH3領域を削除した、CH3欠損型抗Aβ抗体遺伝子を作製した。また、末梢で発現した抗体の、脳内への移行性を確認するため、抗体遺伝子のC末端にヒスチジンタグを付加したものを作製した(図2)。これらの抗体遺伝子をシャトルベクターにクローニングし、培養細胞に遺伝子導入し、抗Aβ抗体の発現や機能をウェスタンブロット法・ELISA法によって確認した。作成した抗Aβ抗体遺伝子をAAVゲノムに導入し、抗Aβ抗体搭載AAVベクターを作製した(図1)。このAAVベクターをマウスの筋肉に投与し、発現した血中抗Aβ抗体がAβペプチドと結合できることをELISA法によって確認した。本発明は、これらの知見により完成されたものである。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するベクターであって、プロモーター配列、抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列、自己プロセシングペプチドをコードする配列及び抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖をコードする配列を含む前記ベクター。
(2)さらに、ポリA配列を含む(1)記載のベクター。
(3)さらに、ITR配列を含む(1)又は(2)記載のベクター。
(4)自己プロセシングペプチドをコードする配列の5’末端側にプロセシングプロテアーゼ切断部位が連結している(1)〜(3)のいずれかに記載のベクター。
(5)プロセシングプロテアーゼがフューリンである(4)記載のベクター。
(6)自己プロセシングペプチドが2Aである(1)〜(5)のいずれかに記載のベクター。
(7)抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列及び抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖をコードする配列が、それぞれ、分泌シグナル配列を含む(1)〜(6)のいずれかに記載のベクター。
(8)抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖の断片が可変領域を含むが、定常領域の一部又は全部を含まない(1)〜(7)のいずれかに記載のベクター。
(9)抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖からCH3領域を除いた断片をコードする配列を含み、CH3欠損型抗体を発現する(8)記載のベクター。
(10)ベクターがアデノ随伴ウイルスベクターである(1)〜(9)のいずれかに記載のベクター。
(11)アデノ随伴ウイルスベクターが1型である(10)記載のベクター。
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載のベクターを有効成分として含む、アルツハイマー病の予防及び/又は治療薬。
本発明により、組換えAAVベクターを用いたADの治療及び/又は予防ワクチンが開発された。このワクチンは、モデル動物での有効性の確認が出来た。また、体内において高力価の抗体の持続発現が可能であった。
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
本発明は、完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するベクターであって、プロモーター配列、抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列、自己プロセシングペプチドをコードする配列及び抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖をコードする配列を含む前記ベクターを提供する。
本発明のベクターに挿入するプロモーター配列は、完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片の発現を可能とする限り、いかなるプロモーター配列であってもよく、例えば、哺乳類用のプロモーターであれば良い。多く用いられているものにCMVプロモーターやCAGプロモーターなどが挙げられる。また、細胞特異的なプロモーターでも良い。
本発明のベクターに挿入する抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列は、抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域における抗体結合部位を含む領域をコードする配列であればよく、免疫グロブリン重鎖の全長、Fab領域、全長からCH3領域を除いた領域、1本鎖抗体などをコードする配列を例示することができる。ミクログリアの活性化による脳髄膜炎を回避するためには、ミクログリアの活性化に関与するFc領域(全部又は一部)を除去した免疫グロブリン重鎖の断片をコードする配列であることが好ましい。マウスの抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖の全長をコードする配列の一例を配列番号1に示す。そのアミノ酸配列を配列番号2に示す。また、マウスの抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖の全長からCH3領域(注:免疫グロブリン重鎖のCH領域はCH1〜CH3の3つに分けられる。CH3領域は重鎖のC末端側に位置する。)を除去した断片をコードする配列の一例を配列番号3に示す。そのアミノ酸配列を配列番号4に示す。本発明のベクターに、抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖の全長からCH3領域を除去した断片をコードする配列を挿入することにより、CH3欠損型の抗β-アミロイド抗体を発現させることができる。
本発明のベクターに挿入する抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖をコードする配列は、抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖の全長をコードするものであるとよい。マウスの抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖の全長をコードする配列の一例を配列番号5に示す。そのアミノ酸配列を配列番号6に示す。
抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列及び抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖をコードする配列は、それぞれ、分泌シグナル配列を含むことが好ましい。マウスの抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖の分泌シグナル配列の一例を配列番号7に示す。そのアミノ酸配列を配列番号8に示す。また、マウスの抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖の分泌シグナル配列の一例を配列番号9に示す。そのアミノ酸配列を配列番号10に示す。
抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列及び軽鎖をコードする配列は、以下のような手順で調製することができる。まず、抗β-アミロイド抗体産生ハイブリドーマを作製し、このハイブリドーマからtotal RNAを抽出する。市販のキット(SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit (Clontech.Mountain View.USA)で全長の抗体遺伝子を含んだcDNAライブラリーを作製し、mRNA3'に付加されているpolyAに相補的なprimerであるオリゴdTとmRNA5'に相補的なprimerを利用してPCRによって抗体の遺伝子断片増幅を行う(RACE法)。このようにして、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の全長をコードする配列が得られる。また、免疫グロブリン重鎖の断片をコードする配列を得るには、所望の領域の5’末端に相補的なプライマー及び3’末端に相補的なプライマーを利用してPCRによって抗体の遺伝子断片増幅を行えばよい。上記の方法で得られる免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列及び免疫グロブリン軽鎖をコードする配列は通常分泌シグナル配列も含む。分泌シグナルはシグナル 配列の予測ソフト(http://bp.nuap.nagoya-u.ac.jp/sosui/)で検索することができる。
抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片は、IgG、IgM、IgD、IgE又はIgAのいずれのクラスのものであってもよいが、IgGが好ましい。また、本発明のベクターにより発現される抗体又はその断片は、ヒト、マウス、ラビット、ゴートなどのいかなる動物に由来するものであってもよく、また、ヒトとヒト以外の動物のキメラ抗体、ヒト化抗体であってもよい。キメラ抗体及びヒト化抗体の製造方法は公知である。
本発明のベクターに挿入する自己プロセシングペプチドをコードする配列は、完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片の発現を可能とする限り、いかなる自己プロセシングペプチドをコードするものでもよく、例えば、2Aをコードする配列を例示することができる。2Aは、通常、2つの遺伝子を同時に発現させるためにはinternal ribosomal entry site (IRES)を採用されることが多い。しかし、IRESを利用した遺伝子発現では、IRES下流にある遺伝子は、上流にある遺伝子より発現量が低くなる。
IgG抗体は生体内では重鎖・軽鎖2本ずつの完全型で存在しているため、抗体遺伝子を発現させる際には、細胞内でH鎖とL鎖を等量発現させる必要がある。さらに、2A配列の前後にH鎖とL鎖を配置することで、同時に等量の抗体遺伝子を発現させることが可能である(Jianmin Fang et al., nature biotechnology (2005) 23 : 584-589)。2Aとは、the foot and mouth virus (FMDV)由来の自己プロセシングペプチドである。ウイルス内ではP1とP2タンパク質の間に存在しており、成熟型のP1・P2の産生に関与している。P1・P2は、同時に1つのORFとして発現した後に、2AのC末端側で自己プロセシングが起こることが知られている。(詳細は不明である)。種々の2A配列及び2A様配列が知られており、口蹄疫ウイルス(foot and mouth disease virus)の2A配列を配列番号11に示す。そのアミノ酸配列を配列番号12に示す。
自己プロセシングペプチドをコードする配列に隣接してプロセシングプロテアーゼ切断部位をつなげるとよい。プロセシングプロテアーゼ切断部位は、自己プロセシングペプチドをコードする配列の5’末端側につなげることが好ましい。プロセシングプロテアーゼ切断部位は、完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片の発現を可能とする限り、いかなるプロセシングプロテアーゼ切断部位をコードするものでもよく、例えば、フューリン切断部位を例示することができる。フューリン(Furin)は、塩基性アミノ酸を認識して切断するプロテアーゼファミリーの一員であり、ゴルジ体に局在している。フューリン切断部位のDNA配列を配列番号13に示す。
本発明のベクターには、さらにポリA配列を挿入するとよい。ポリA配列を挿入することにより、転写されたmRNAを安定化することができる。
本発明のベクターは、プロモーターなどの調節エレメントの制御下に完全型抗β−アミロイド抗体又はその断片の発現を可能にする様式で、ベクター中に抗β−アミロイド抗体遺伝子が挿入されているものである。
ベクターは、目的とする異種DNAを宿主に運搬する核酸分子であり、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミド、ウイルス、YAC、BACなどの媒体がベクターとして利用されている。ベクターは、ライブラリーの作製、クローニングの実施、挿入したDNAの産物を宿主細胞内で発現させるためなどに利用される。挿入するDNAの大きさや挿入の目的によって、適切な媒体を選択するとよい。完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するためには、プラスミド(宿主細胞での発現用)及びウイルス(遺伝子治療用)が好ましい。
発現用プラスミドベクターとしては、哺乳類用プロモーター、マルチクローニングサイト、polyA、ITRを有しているものであれば良く、pW1などを例示することができる。
ベクターを遺伝子治療に利用する場合には、ウイルスベクターが好ましい。ウイルスベクターとしては、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどを例示することができる。
AAVは嚢胞性線維症、血友病などの疾患に対して臨床研究が行われており、安全性の高い遺伝子治療ベクターとして広く用いられている。さらに,ウイルスベクターは、アジュバンドを必要としないためTh1型CD4 T細胞の活性化を抑えられるのではないかと期待される。AAVは病原性が認められていないウイルスで、自立性の増殖能を欠き、複製はアデノウイルスやヘルペスウイルスなどのヘルパー機能に依存する。アデノウイルスのヘルパー機能には、E1A、E1B、E2A、E4、VA遺伝子が必要であることが知られている。ヒトに感染しうるAAVには、1〜9型の血清型が知られている。2、3、5及び9型がヒト由来であり、2型がよく研究され、ベクターとしてもよく利用されている。本発明者らは、血清型の異なるAAVベクターは細胞への親和性が異なることを明らかにしている(Xin, K-Q. et al., J. Virol. 80:11899-910, 2006)。後述の実施例では、筋肉細胞において発現量が最も高いAAV1型ベクターを使用した。AAVのゲノムは約5 kbの一本鎖DNAで、約半数のウイルス粒子は(+)鎖DNAをゲノムとして持ち、残りは(-)鎖DNAを持つ。5’末端側の約半分はrepと呼ばれる領域で、ウイルスの複製や転写に関与するRepタンパク質をコードしている。repは、p5プロモーターから転写、翻訳されるLarge Rep(Rep78とRep68)とp19プロモーターから転写、翻訳されるSmall Rep(Rep52とRep40)の4つのタンパク質をコードしている。3’末端側の約半分がcapと呼ばれる領域で、構造タンパク質であるVP1、VP2及びVP3という3つのカプシドタンパク質をコードしている。カプシドタンパク質のmRNAはp40プロモーターにより転写される。AAVのゲノムの両末端には145ヌクレオチドのITR(inverted terminal repeat)と呼ばれるヘアピン構造が存在し、このITR領域は宿主細胞染色体への組み込みに際して重要であると考えられている。
組換えAAVベクターを作製するには、リン酸カルシウム法によりHEK293細胞(アデノウイルスのE1AE1Bでトランスフォームしたヒト胎児腎組織由来細胞)へトランスフェクションを行えばよい。例えば、1)野生型AAVの両端のITRを残し、その間に目的の異種DNA(本発明においては、プロモーター配列、抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列、プロセシングプロテアーゼ切断部位、自己プロセシングペプチドをコードする配列及び抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖をコードする配列)を挿入したプラスミド(AAVベクタープラスミド)、2)ウイルス複製やウイルス粒子形成に必要とされるウイルスタンパク質(Rep、 Cap)をコードする配列を持つプラスミド(AAVヘルパープラスミド)、3)AAVの増殖に必要とされるアデノウイルスのヘルパー作用を担う遺伝子領域(E1A、E1B、E2A、VA、E4orf6)のうち、HEK293細胞が持っているE1AとE1B以外のものを保持するプラスミド(アデノウイルスヘルパープラスミド)を用意し、これらの3つのプラスミドをHEK293細胞にトランスフェクションにより導入すると、組換えAAVベクターが産生されるようになる。このような組換えAAVベクターの作製は、市販のキット(例えば、STRATAGENE社のAAV helper-free system)を用いて行うことができる。
本発明のベクターは、ADの予防及び/治療ワクチンとして有用である。従って、本発明は、完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するベクターを有効成分として含む、アルツハイマー病(AD)の予防及び/又は治療薬も提供する。
完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するベクターは、例えば、PBSなどの緩衝液、生理食塩水、滅菌水などに溶解し、必要に応じてフィルターなどで濾過滅菌した後、注射により被験者に投与されるとよい。また、この溶液には、添加剤(例えば、不活化剤、保存剤、アジュバント、乳化剤など)などを添加してもよい。但し、完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するベクターが組換えウイルスベクターである場合には、アジュバントを添加しなくともよい。完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するベクターは、静脈、筋肉、腹腔、皮下、皮内などに投与することができ、また、経鼻、経口投与してもよい。
完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するベクターの投与量、投与の回数及び頻度は、被験者の症状、年齢、体重、投与方法、投与形態などにより異なるが、例えば、組換えAAVベクターの場合、通常、成人一人当たり1013-15vgの投与量で少なくとも1回、所望の効果が持続する頻度で投与するとよい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
材料と方法
実験プロセスを図1に示す。
(1)抗Aβ抗体産生Hybridomaの作製
ヒトAβペプチド(DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGA IIGLMVGGVVIA)(配列番号14)をautomated Model430A peptide synthesizer(Applied Biosystems,CA,USA)を用いて合成した。このペプチドをcomplete Freund’s adjuvantで乳化し、Balb/cマウス1匹当たり100ugを皮下投与により免疫した。投与2週後には、incomplete Freund’s adjuvantと共にAβペプチドを等量追加免疫した。さらに、投与3週後にはペプチド単独で100ugを投与した。このマウスより脾細胞を摘出し、従来の方法でHybridomaを作製した。
(2)抗体遺伝子の単離
Aβに対する抗体のH鎖・L鎖の遺伝子を得るためmRNAの単離を行った。抗Aβ抗体産生hybridomaIIA2よりTRIzol Reagent (GIBCO BRL. N.Y. USA ) を用いtotalRNAを抽出した。BD SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit (Clontech.Mountain View.USA)を用いて、H鎖・L鎖の5’・3’末端をそれぞれRACEしcDNAを作製した。手順はUser Manualに従い行った。5’-RACEのantisenseの一部をコードしているGSP1としてH鎖(5’ CCC AAG CTT TTT ACC AGG AGA GTG GGA GA 3’)(配列番号15) (RIKAKEN.Nagoya.Japan)、L鎖 (5’ ATA AGA ATG CGG CCG CA G TCG ACG CTA ACA CTC ATT CCT GTT GA 3’) (配列番号16)(RIKAKEN)、 3’-RACEのsenseの一部をコードしているGSP1としてH鎖 (5 CGG GGT ACC ATG GGC AGG CTT ACT TCT TC 3’) (配列番号17) (RIKAKEN)、 L鎖 (5’ CCG GAA TTC ATG GAG ACA GAC ACA CTC CT 3’) (配列番号18) (RIKAKEN) を用いて、H鎖・L鎖の5’・3’断片を得た。下線部は制限酵素認識配列である。
1)H鎖
H鎖のORFを増幅するため、制限酵素siteを含みH鎖に相補的なprimer [sense (5’ CGG GGT ACC ATG GGC AGG CTT ACT TCT TC 3’)(配列番号19)anti sense (5’ CCC AAG CTT TTT ACC AGG AGA GTG GGA GA 3’)](配列番号20)(RIKAKEN)を作製した。anti senseのprimerはH鎖3’末端の終止コドンを除いて設計した。これらのprimerを使用し、RACE法により作製したH鎖断片をtemplateとしてPolymerase Chain Reaction (PCR)によりH鎖の増幅を行った。
2)L鎖
L鎖のORFを増幅するため、制限酵素siteを含みL鎖の5’・3’末端に相補的なprimer {sense (5’ CCG GAA TTC ATG GAG ACA GAC ACA CTC CT 3’)(配列番号21)anti sense (5’ ATA AGA ATG CGG CCG CA G TCG ACG CTA ACA CTC ATT CCT GTT GA 3’)}(配列番号22)(RIKAKEN) を作製し、RACE法により作製したL鎖断片をtemplateとして1)と同様に増幅した。
(3)Furin 2A 遺伝子の作製
Furinとthe foot and mouth disease virusのself processing peptideである2AのDNA配列がつながったオリゴDNA(5’ CGC GCC AAG CGC GCC CCC CGT GAA GCA GAC CCT GAA CTT CGA CCT GCT GAA GCT GGC CGG CGA CGT GGA GTC CAA CCC CGG CCC C 3’) (配列番号23)を作製した。制限酵素siteを含みF2Aに相補的なprimer[sense (5’ CTA GCT AGC CGC GCC AAG CGC GCC CCC GT 3’) (配列番号24) antisense (5’ CCG CTC GAG GGG GCC GGG GTT GGA CTC CA3’) (配列番号25)](RIKAKEN)を作製した。オリゴDNAをtemplateとし、これらのprimerを使用してPCRによりF2Aの増幅を行った。5’、3’末端に相補的なprimer {sense (5’ CCC AAG CTT CGC GCC AAG CGC GCC CCC GT3’) (配列番号26)anti sense (5’ CCG GAA TTC GGG GCC GGG GTT GGA CTC CA3’) (配列番号27)} (RIKAKEN) を作成し,H鎖・L鎖と同様にFurin 2Aを増幅した。
(4)Plasmidの作成
(2)で作製したFurin 2A DNA断片をHindIIIとEcoRIで制限酵素処理し、同様にpBluescript II KS(-) phagemidのHindIIIとEcoRI siteへ導入した。このplasmidをpBlue F2Aとした。さらに、(2)で作製したH鎖断片をKpnI,HindIIIで制限酵素処理し、pBlue F2AのF2A遺伝子上流にあるKpnI,HindIII siteへ導入した。このplasmidをpBlue HF2Aとした。そして、(2)で作製したL鎖断片をEcoRI,NotIで制限酵素処理し、pBlue HF2AのF2A遺伝子下流のEcoRI,NotI siteへ導入した。そして、このplasmidをpBlue HF2ALとした。
(5)塩基配列の確認
(4)で作成したplasmid をpBluescript のHF2AL遺伝子挿入部の5’側であるT3領域に特異的なprimer(5’ AAT TAA CCC TCA CTA AAG GG3’)(配列番号28)、H鎖350bp付近の配列に特異的なprimer(5’ TCG ACT TGG TAG GAG GTA TG 3’)(配列番号29)、1100bp付近の配列に特異的なprimer(5’ GGT GGA ATG GTG TAC ACC TG 3’) (配列番号30)を用いてH鎖、F2Aの塩基配列を確認した。また、L鎖側では、pBluescript のHF2AL遺伝子挿入部の3’側であるT7領域に特異的なprimer(5’ TAA TAC GAC TCA CTA TAG GG 3’) (配列番号31)、M13-20領域に特異的なprimer(5’ GTA AAA CGA CGG CCA 3’) (配列番号32)、L鎖340bp付近の配列に特異的なprimer(5’ CAG CAC AGT TGG GAG ATT CC 3’) (配列番号33)、400bp付近の配列に特異的なprimer(5’ CCG TTT GAT TTC CAG TTT GG 3’) (配列番号34)を用いてL鎖、F2Aの塩基配列を確認した。plasmid DNAをABI PRISMTM 310 (ABI) で測定し、H鎖・L鎖の塩基配列を確認した。
(6)抗体遺伝子のsubcloning
抗体遺伝子の培養細胞内での発現を確認するために、(4)で作製したpBlue HF2ALから抗体遺伝子を発現ベクターであるpW1へ組換えた。H鎖5’末端に相補的なprimer{H.sense (5’ ATA AGA ATG CGG CCG CA G TCG ACA ATG GGC AGG CTT ACT TC3’) (配列番号35)を作製した。このprimerとL鎖3’末端に相補的なprimerを用いてH鎖・Furin 2A・L鎖一連のORF DNA断片増幅を行った。このDNA断片をNotIで制限酵素処理し、同様にpWIのNotI siteへ導入しpW1 HF2ALとした。
(7)抗体遺伝子の改変
末梢で発現した抗体の脳への移行性を確認するために、抗体をヒスチジンタグで標識した。3’末端にヒスチジン遺伝子を付加したL鎖相補的なprimerを作製した。このprimerとH鎖5’末端に相補的なprimerを用いてH鎖・Furin・ 2A・L鎖・ヒスチジンタグ一連のORF DNA断片増幅を行った。このDNA断片をNotIで制限酵素処理し、同様にpWIのNotI siteへ導入し、pW1 HF2AL Hisとした。
Fcレセプターを介したファゴサイトーシスを起こさずに脳内Aβの減少させる事を目的とした。ミクログリアの活性を抑えるため、全長の抗体遺伝子よりCH3領域を削除したCH3欠損型抗体の遺伝子を作製した。H鎖CH2領域の3'末端に相補的なprimer[anti sense (5’ CCC AAG CTT GCC TTT GGT TTT GGA GAT GG 3’) (配列番号36)](RIKAKEN)を作製し、このprimerとH鎖5’末端に相補的なprimerを用いてH鎖のORF DNA断片増幅を行った。このDNA断片をSalI・HindIIIで制限酵素処理し、pWI HFLの全長H鎖と入れ替えた。このプラスミドをpW1 HF2AL deleted CH3とした。
なお、抗体のCH2・CH3領域の予測は以下のようにして行った。H鎖のDNA塩基配列をアミノ酸配列へ変換した。アミノ酸配列データベースのSwiss-Protにある相同性検索BLAST(http://au.expasy.org/tools/blast/)を使用して作製したH鎖アミノ酸配列と相同性のある配列を検索した。そこで、作製した抗体と同じマウスIgG1の配列で相同性の高いもの(アクセッションNo:P01868)を選択した。データベース上の配列にはタンパク質の機能、ドメイン構造などの高水準のアノテーションがついているため、P01868の情報より作製した抗体のCH2・CH3領域などを予測した。
(8)Western blot
(6)(7)で作成したpW1 HF2AL、pW1 HF2AL Hisとnegative controlとしてpW1をLipofectamineTM2000 (Invitrogen ) を用いて293T 細胞にtransfectionした。24時間後に細胞をPBS(-)で1回洗浄した後、培地を無血清へと交換した。その後、48時間で細胞を回収し、遠心分離を行った。この上清を細胞上清サンプルとし、ペレットへNP-40 lysis bufferを加え氷上で20min静置することで細胞を可溶化した。静置後のサンプルを再び遠心分離し、この上清を細胞溶解液とした。細胞上清・細胞溶解液それぞれに2×SDSを加え、10分間熱処理し、western sampleとした。このsampleを12% Bis-Tris polyacrylamide gelを用いて泳動し,ImmobilonTM Transfer Membranesに転写した。このMembraneをBlocking Buffer[5% skim milk、PBS(-)]で4℃、12hrで振とうし、Blockingした。その後、MembraneをPBST[PBS(-)、0.1% Tween 20]で洗浄した。H鎖・L鎖を検出するために、それぞれ1次抗体としてAnti mouse IgG1 conjugated horseradish peroxidase (Southern Biotechnology Asociates, Alabama,USA)、 HRP conjugated anti mouse kappa light chain antibody (BETHYL laboratories.Montgmery.USA) を反応させ、PBSTで4回洗浄した。そして、MembraneにImmobilonTM Western chemiluminescent HRP Substrate (MILLIPORE, MA,USA) を反応させ、HyperfilmTM (Amersham. Buckinghamshire.UK) に感光した。結果を図3に示す。
pW1 LacZの作製
LacZのORFを増幅するため、制限酵素siteを含みLacZの5’・3’末端に相補的なprimer {sense (5’ACG CGT CGA CAC TAT CCC GAA CTT ACT 3’) anti sense (5’CGC GGA TCC ATG CGG CTG ATG TTG AAC TG 3’)} (RIKAKEN) を作製し、pSV-β-Galatsidase control vector(promega, Wisconsin, USA)をtemplateとしてPCRにより増幅した。
LacZ DNA断片をSalIとBamHIで制限酵素処理し、pW1のSalIとBamHIsiteへ導入し、pW1 LacZとした。
(9) 組換えAAVベクターの作製
(6)(7)で作製したpW1 HF2AL、pW1 HF2AL His、pW1 HF2AL deleted CH3、pW1 lacZ、ウイルス複製や粒子の形成に必要なウイルス蛋白質の遺伝子を保持したAAVヘルパープラスミド、AAVの増殖に必要なアデノウイルスの遺伝子であるE2A・VA・E4orf6を保持したアデノウイルスヘルパープラスミドを同時にCalcium phosphate transfection kit(invitrogent)を用いてリン酸カルシウム法によりHEK293へ遺伝子導入した。その後、72時間細胞を静置した。この細胞を、ドライアイスと37℃に設定したインキュベーターで凍結融解を繰り返す事によって細胞内の組換えウイルスを回収した。さらに、このウイルス溶液をCsCl超遠心法でウイルス(AAV HF2AL、AAV HF2AL deleted CH3、AAV HF2AL His、AAV LacZ)を精製した。作製した組換えAAVベクターの構成(construction)を図4に示す。図4は、上から順に、AAV HF2AL、AAV HF2AL deleted CH3、AAV HF2AL Hisの構成を示す。
(10)BALB/c mouseへの投与
2ヶ月齢のBALB/c male miceを用いて(9)の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を投与した。AAV HF2AL を1匹あたり3.0×1011vg, 3.0×1010vg,3.0×109vgずつ筋肉内へ投与、各群5匹とした(図5)。negative controlとしてAAV LacZを1匹あたり1.0×1011vg、5匹に投与した。筋肉内投与はケタラール(三共エール薬品.Tokyo.Japan)にセラクタール(バイエルメディカル.Tokyo.Japan) が0.4%になるように加えた溶液を背側に皮下投与し、麻酔下で行った。
(11)enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)
投与後、1週・2週・3週・4週、以後4週ごとにへパリンで処理されたキャピラリー(Drummond.Broomall.USA) を用いて眼窩採血した。採血した血液を4℃、16hr静置した後、遠心分離し上清を回収して血清サンプルを調整した。この血清を用いてELISAを行った。96well microtiter plate (Nunc. N.Y. USA) にcarbonate buffer (0.1M NaHCO3) に溶かしたAβ1-13ペプチドコーティングし、4℃、16hr静置した。その後、Blocking Buffer{1% bovine serum albumin (BSA) (SIGMA)、0.05% Tween 20、PBS(-)}を加え、37℃、2hrでblockingした。Blocking後、PBSTで3回洗浄し、血清をblocking bufferで希釈しplateに添加した。このplateを37℃、2hr静置した。静置後、PBSTで3回洗浄し,blocking bufferで希釈したAnti mouse IgG1 conjugated horseradish peroxidase (Southern Biotechnology Asociates) を加え,37℃、2hr静置した。静置後、PBSTで3回洗浄し,発色液[1Tab/10mL o-phenylen dehydrochiolide (OPD) (Wako)、0.1M citric acid、1μL/mL H2O2]を加え発色させた。R.T.、30min静置後、1N H2SO4を加えて発色を停止させた。停止後、Benchmark Plus (BIO-RAD.California.USA)によってO.D.405nmを測定した。結果を図6に示す。
(12)脳サンプルの準備
13ヶ月齢のTg2576の脳摘出を麻酔下において行った。摘出した脳をFormalin solution, neutral buffered, 10%(Sigma,MO,USA)へ浸し、48時間静置することで組織を固定した。
(13)Tg2576 mouseの脳切片を用いて免疫組織化学
Tg2576のパラフィン切片をキシレン・エタノールにて脱パラフィンした。100%ギ酸(Wako,Osaka,Japan)添加、オーブンで加熱することで、抗原を賦活化した。さらに、0.3%H2O2により内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害し、10%Normal Goat Searum(Vector Laboratories,CA,USA)で抗体の非特異的な結合を防止した。1次抗体としてrabbit anti Aβ1-40 polyclonal antibody、rabbit anti Aβ1-42 polyclonal antibodyまたはIIA2,AAV HF2AL 感染HEK293の上清を使用した。2次抗体envisionDual Link System Peroxidase(Dako,,Denmark)を加え、Dako Envisionキット/HRP(DAB) (Dako,,Denmark)により発色し、ヘマトキシリンにより核染色を行った。結果を図7に示す。
本発明のベクターは、アルツハイマー病の予防及び/又は治療ワクチンとして利用できる。
実施例の実験のプロセスを示す。
実施例で作製した組換えAAVにより発現される抗体の構造を示す。
抗体遺伝子を導入した293Tより抗Aβ抗体を検出した。精製したIIA2のH鎖単量体が約50KDa、L鎖単量体は約30KDa付近に見られた。細胞溶解液と細胞上清共にH鎖、L鎖の発現を確認し、pW1 HF2AL deleted CH3では、H鎖のバンドは45KDa付近にあり、コントロールと比較して分子量が小さくなっていた。従って、CH3領域を排除した遺伝子からも抗体が発現する事がわかった。細胞溶解液中では上清中に見られない、80KDa付近にもバンドが確認された。これは、H鎖 Furin2A L鎖が繋がった状態で発現しており、細胞外へ分泌される間に自己プロセシングを受け、2量体を形成した後に細胞外へと分泌される事が予測される。
実施例で作製した組換えAAVの構成を示す。
組換えAAVのBalb/Cマウスへの投与及びマウスの採血の計画を示す。
AAV HF2ALを投与したBalb/cの血清から、Aβ特異的IgG1抗体の検出を行った。ウイルスベクター投与量に依存的して、血中抗Aβ抗体濃度が上昇していた。AAV HF2ALを3.0×1011vg感染した群では、投与4週後まで徐々に血中の抗Aβ抗体量は上昇し、最高値の939μg/mLとなった。その後、抗体濃度は緩やかに低下したが、投与後24週でも432μg/mLを維持していた。また、HF2ALを3.0×1010vg感染した群では、8週後に最も高く222μg/mL、24週では157μg/mLとなった。HF2ALを3.0×109vg感染した群では、24週後に最も高く28μg/mLとなった。
抗Aβ抗体を用いた老人斑の検出(結果)13ヶ月齢のTg2576の脳切片を用いた免疫染色において、rabbit anti Aβ1-40 polyclonal antibody、rabbit anti Aβ1-42 polyclonal antibodyまたはIIA2を用いた免疫染色によって海馬・大脳皮質付近に老人斑が検出された。さらに、AAV HF2AL 感染HEK293の上清を用いた免疫染色によって同様の部位に老人斑が検出された。従って、AAVを介して発現された抗体はhybridoma由来の抗体と同等の抗原特異性を持つと考えられる。
<配列番号1>
配列番号1は、マウスの免疫グロブリン重鎖の全長のDNA配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、マウスの免疫グロブリン重鎖の全長のアミノ酸配列を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、マウスの免疫グロブリン重鎖の全長からCH3領域を除去したもののDNA配列を示す。
<配列番号4>
配列番号4は、マウスの免疫グロブリン重鎖の全長からCH3領域を除去したもののアミノ酸配列を示す。
<配列番号5>
配列番号5は、マウスの免疫グロブリン軽鎖の全長のDNA配列を示す。
<配列番号6>
配列番号6は、マウスの免疫グロブリン軽鎖の全長のアミノ酸配列を示す。
<配列番号7>
配列番号7は、マウスの免疫グロブリン重鎖の分泌シグナルのDNA配列を示す。
<配列番号8>
配列番号8は、マウスの免疫グロブリン重鎖の分泌シグナルのアミノ酸配列を示す。
<配列番号9>
配列番号9は、マウスの免疫グロブリン軽鎖の分泌シグナルのDNA配列を示す。
<配列番号10>
配列番号10は、マウスの免疫グロブリン軽鎖の分泌シグナルのアミノ酸配列を示す。
<配列番号11>
配列番号11は、foot and mouth disease virus 由来の2AをコードするDNA配列を示す。
<配列番号12>
配列番号12は、foot and mouth disease virus 由来の2Aのアミノ酸配列を示す。
<配列番号13>
配列番号13は、フューリン切断部位のDNA配列を示す。
フューリン切断部位のアミノ酸配列を示す。RAKR
<配列番号14>
配列番号14は、ヒトAβのアミノ酸配列を示す。
<配列番号15〜36>
配列番号15〜36は、実施例で用いたプライマーのDNA配列を示す。

Claims (12)

  1. 完全型抗β-アミロイド抗体又はその断片を発現するベクターであって、プロモーター配列、抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列、自己プロセシングペプチドをコードする配列及び抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖をコードする配列を含む前記ベクター。
  2. さらに、ポリA配列を含む請求項1記載のベクター。
  3. さらに、ITR配列を含む請求項1又は2記載のベクター。
  4. 自己プロセシングペプチドをコードする配列の5’末端側にプロセシングプロテアーゼ切断部位が連結している請求項1〜3のいずれかに記載のベクター。
  5. プロセシングプロテアーゼがフューリンである請求項4記載のベクター。
  6. 自己プロセシングペプチドが2Aである請求項1〜5のいずれかに記載のベクター。
  7. 抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖又はその断片をコードする配列及び抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン軽鎖をコードする配列が、それぞれ、分泌シグナル配列を含む請求項1〜6のいずれかに記載のベクター。
  8. 抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖の断片が可変領域を含むが、定常領域の一部又は全部を含まない請求項1〜7のいずれかに記載のベクター。
  9. 抗β-アミロイド抗体の免疫グロブリン重鎖からCH3領域を除いた断片をコードする配列を含み、CH3欠損型抗体を発現する請求項8記載のベクター。
  10. ベクターがアデノ随伴ウイルスベクターである請求項1〜9のいずれかに記載のベクター。
  11. アデノ随伴ウイルスベクターが1型である請求項10記載のベクター。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載のベクターを有効成分として含む、アルツハイマー病の予防及び/又は治療薬。
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