JP2009147557A - 車載用地上デジタルテレビの受信システム及び指向性可変アンテナの指向性ピーク方向の設計方法 - Google Patents

車載用地上デジタルテレビの受信システム及び指向性可変アンテナの指向性ピーク方向の設計方法 Download PDF

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Abstract

【課題】良好な受信性能を実現する指向性可変アンテナの指向性ピーク方向を決定する。
【解決手段】地上デジタルテレビ信号受信用として、車両の前後方向に取り付ける第1アンテナと第2アンテナとの2つの指向性可変アンテナ30を備え、第1、第2アンテナは、対向する2方向に指向性を有すると共に指向性ピーク方向を選択的に設定できるものとしており、第1、第2アンテナの前記指向性ピーク方向は、車両の前後長さ方向の軸線に対して10度以上35度以下の角度範囲内で、かつ前記軸線を中心として第1アンテナと第2アンテナとをプラス側とマイナス側とに逆方向に傾斜させて選択している。
【選択図】図3

Description

本発明は、車載用地上デジタルテレビの受信システム及び該受信システムにおける指向性可変アンテナの指向性ピーク方向の設計方法に関し、詳しくは、指向性可変アンテナの指向性ピーク方向を、複数到来するテレビ信号のうちの主波の方向に拘らず受信性能が良好となる方向に決定するものである。
自動車の走行時に車載用地上デジタルテレビ放送を受信する場合、電波が建物・樹木等の障害物や反射物の影響を受けて反射や散乱を起こし、互いに干渉して電波の強さが大きく変化するフェージングと呼ばれる現象が起こるという問題がある。
この問題に対して、従来、ダイバーシティ機能を有したテレビ受信機が多数提案されている。ダイバーシティ機能とは、テレビ受信機が複数のアンテナを備え、アンテナ毎に設けた受信回路の出力信号を合成することで、フェージングの影響を抑制し受信感度の改善を図る機能である。
図11はダイバーシティ機能を有したテレビ受信機1の例であり、該テレビ受信機は無指向性の複数のアンテナ2を備え、図11(A)はアンテナを4個、図11(B)はアンテナを2個としている。また、該テレビ受信機はアンテナ毎にコード3で接続された受信回路4と、受信回路からの出力信号を合成する合成回路5を備えている。
自動車の走行時には、建物等の影響を受けアンテナの受信状況は常に変化する。しかし、複数のアンテナを車体の各所に取付けることで、あるアンテナの受信状況が悪化しても、取付位置が異なる他のアンテナが良好に信号を受信することができる。さらに、アンテナ毎に設けた受信回路の出力信号強度に応じて、信号強度が大きいアンテナからの出力を重視するように出力信号を合成することで、フェージングの影響を抑制しテレビ受信機の受信感度の改善を図ることができる。
前記ダイバーシティ機能を有するテレビ受信機1では、アンテナ数が多いほど良好に信号を受信できるため、図11(B)のアンテナ2個よりも図11(A)の4個の方がテレビ受信機の受信性能は良い。しかし、多くのアンテナ及び受信回路を車両に搭載する必要があるため、コストが高くなるという問題がある。
このため、複数方向に指向性ピークを有する指向性可変アンテナをテレビ受信機に用い、アンテナの数を削減することが行われている。例えば、特開2006−352206号公報(特許文献1)には、2方向に指向性ピークを有する指向性可変アンテナが開示されている。このような指向性可変アンテナを2本用いると、テレビ受信機は4方向の指向性ピークを備えることとなり、テレビ信号の到来方向に応じて指向性可変アンテナの指向性ピークの方向を切り替えることで、アンテナの数及び、アンテナに接続される受信回路の数を削減できる。
しかし、前記指向性可変アンテナは、指向性ピークの方向の設定によっては、図11(A)の指向性が非可変のアンテナを4本とした従来方式よりも受信性能が低下するという問題がある。
例えば、図12に示すように、一方の指向性可変アンテナの指向性ピークの方向を車両の前後方向とし、他方の指向性可変アンテナの指向性ピークの方向を車両の左右方向とする場合、テレビ信号の到来方向に対する指向性可変アンテナの受信性能は、図13の実線に示すようになる。即ち、主波到来方向は、主波の他に反射等により生じた遅延波が2波ある場合における主波の到来方向を示し、受信所要C/N比は受信性能を示し、受信性能は数値が小さいほど受信性能が良好であるため、主波到来方向が車両の前後方向である0度、180度付近で、図13の破線で示した指向性が非可変のアンテナ4本を用いる従来方式よりも指向性可変アンテナを用いた場合に受信性能が低下する。
特開2006−352206号公報
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、指向性可変アンテナの指向性ピーク方向を、主波の到来方向に拘らずに良好な受信性能となる方向に決定することを課題としている。
前記課題を解決するため、本発明は、地上デジタルテレビ信号受信用として、車両の前後方向に取り付ける第1アンテナと第2アンテナとの2つの指向性可変アンテナを備え、
前記第1、第2アンテナは、対向する2方向に指向性を有すると共に指向性ピーク方向を選択的に設定できるものとしており、
これら第1、第2アンテナの前記指向性ピーク方向は、車両の前後長さ方向の軸線に対して10度以上35度以下の角度範囲内で、かつ前記軸線を中心として第1アンテナと第2アンテナとはプラス側とマイナス側とに逆方向に傾斜させて選択していることを特徴とする車載用地上デジタルテレビの受信システムを提供している。
前記第1アンテナと第2アンテナの傾斜角度は、前記軸線に対して同一角度とすることが好ましいが、前記角度範囲内であれば、1〜5度程度相違してもよい。
本発明者らは、車両に取り付ける2つの指向性可変アンテナの指向性ピークの方向を、車両の前後長さ方向の軸線に対して10度以上35度以下の角度範囲内で、軸線を中心としてプラス側とマイナス側とに逆方向に傾斜させることにより、多数の指向性が非可変のアンテナを用いた従来技術と比較して、複数の方向から到来するテレビ信号波のうちの主波の車両に対する到来方向がどの方向であっても、受信性能が向上することを知見した。
指向性可変アンテナの指向性ピークの方向の角度範囲を10度未満とすると、2つの指向性可変アンテナの指向性ピークの方向は車両の前後長さ方向に近くなり、テレビ信号の主波が車両の左右方向から到来する場合において、従来技術と比較して受信性能が低下する。また、指向性可変アンテナの指向性ピークの方向の角度範囲を35度より大とすると、テレビ信号の主波が車両の前後方向から到来する場合において従来技術と比較して受信性能が低下する。
指向性可変アンテナの指向性ピークの方向の角度範囲は、20度以上30度以下であることがより好ましい。
前記第1、第2アンテナからなる各指向性可変アンテナは、車両の異なる位置に取り付けられる基板からなり、該基板は複数の無給電素子と給電素子を備え、該無給電素子に可変容量素子を設けている一方、
前記第1、第2アンテナの基板をコードを介して車載用の地上デジタルテレビ用の受信機内の指向性制御手段に接続し、該向性制御手段は電圧発生手段を備え、前記基板の可変容量素子に印加する電圧を調整して、前記各指向性可変アンテナに前記選択した方向に指向性ピークを生じさせている。
指向性制御手段は、各指向性可変アンテナの指向性ピークを発生させる方向を選択している。該選択は、各指向性可変アンテナについて2方向の指向性ピークを順次切り替えて受信電力を計測し、受信電力がより高い指向性ピークの方向を、指向性可変アンテナの指向性ピークの方向としている。さらに、選択した指向性ピークの方向に応じた所定の直流電圧を、電圧発生手段である直流電源により可変容量素子に印加させている。
可変容量素子は具体的には可変容量ダイオード(バラクタダイオード)を用いており、可変容量ダイオードは印加される電圧が変化することにより静電容量が変化するものである。指向性可変アンテナの無給電素子に該可変容量ダイオードを接続しており、各可変容量ダイオードの静電容量を調整することで、指向性可変アンテナの指向性ピークを設定している。
第2の発明として、地上デジタルテレビ信号受信用として、車両の前後方向に取り付ける第1アンテナと第2アンテナとの2つの指向性可変アンテナを備え、
前記第1、第2アンテナは、対向する2方向に指向性を有すると共に指向性ピーク方向を選択的に設定できるものとしており、
前記指向性ピーク方向の設計は、地上デジタルテレビ信号の主波の到来方向の角度毎に、地上デジタルテレビ信号の主波の大きさを変化させて、擬似エラーフリーとなる確率が90%以上となるキャリア/ノイズ比を演算して求め、
前記キャリア/ノイズ比が、前記主波の到来方向に拘らず基準値以下となるように指向性ピーク方向を設計していることを特徴とする車載用地上デジタルテレビの受信システムにおける指向性可変アンテナの指向性ピーク方向の設計方法を提供している。
本設計方法では、車両の前後長さ方向の軸線に対して各指向性可変アンテナの前記指向性ピーク方向の角度を一時的に設定し、該角度での受信性能を求めている。さらに、該受信性能を基準値と比較して、設定した角度を指向性可変アンテナの指向性ピーク方向として採用してもよいか否かを決定している。
詳細には、まず、各指向性可変アンテナの前記指向性ピーク方向の車両の前後長さ方向の軸線に対する角度を設定する。
次に、地上デジタルテレビ信号の主波の到来方向の角度毎に、地上デジタルテレビ信号の主波の大きさを変化させて、擬似エラーフリーとなる確率が90%以上となるキャリア/ノイズ比を演算する。
次に、前記キャリア/ノイズ比を地上デジタルテレビ信号の主波の到来方向の角度毎に演算し、主波の到来方向の角度に対するキャリア/ノイズ比をプロットする。
さらに、基準値と該キャリア/ノイズ比を比較し、主波の到来方向に拘らず受信キャリア/ノイズ比が基準値と比較して良好である場合は、設定した指向性可変アンテナの前記指向性ピーク方向の角度を、指向性可変アンテナの指向性ピーク方向として採用すると判断する。
基準値として、指向性が非可変のアンテナを4本用いた従来技術におけるキャリア/ノイズ比を演算して用いることが好ましい。また、予め所望のキャリア/ノイズ比を定めてもよい。
上記採用判断方法を繰り返し、再び各指向性可変アンテナの前記指向性ピーク方向の角度を変化させて一時的に設定し、該角度での受信性能から、設定した角度を指向性可変アンテナの指向性ピーク方向として採用してもよいか否かを決定している。このように指向性可変アンテナの指向性ピーク方向の角度を変化させ、最適な指向性ピーク方向の角度を定めることができる。
このように、上記指向性可変アンテナの指向性ピーク方向の設計を予めシミュレーションを用いて行い、指向性可変アンテナの前記指向性ピーク方向の車両の前後長さ方向の軸線に対する最適角度範囲を求めて車両に指向性可変アンテナを取り付けることで、多数の指向性が非可変のアンテナを備えた従来技術と比べて受信性能を向上させることができる。
前述したように、第1の発明である車載用地上デジタルテレビの受信システムによれば、車両に取り付ける2つの指向性可変アンテナの指向性ピークの方向を、車両の前後長さ方向の軸線に対して10度以上35度以下の角度範囲内で、軸線を中心としてプラス側とマイナス側とに逆方向に傾斜させることにより、多数の指向性が非可変のアンテナを用いた従来技術と比較して、複数到来するテレビ信号波のうちの主波の車両に対する到来方向がどの方向であっても、受信性能を向上させることができる。
また、第2の発明である車載用地上デジタルテレビの受信システムにおける指向性可変アンテナの指向性ピーク方向の設計方法を用いて、指向性可変アンテナの前記指向性ピーク方向の車両の前後長さ方向の軸線に対する角度範囲を予め求めて車両に指向性可変アンテナを取り付けることで、多数の指向性が非可変のアンテナを備えた従来技術と比べて受信性能を向上させることができる。
図1乃至図10に本発明の第1実施形態を示す。
本発明の車載用地上デジタルテレビの受信システム10(以下、受信システム10と称す)は、自動車11に搭載された指向性可変アンテナ30からの地上デジタルテレビ信号S(以下テレビ信号Sと称す)を受信するものである。
図1に示すように、2個の指向性可変アンテナ30のうち、一方の指向性可変アンテナ30Aを自動車11のフロントガラス14の上部左側に取り付け、他方の指向性可変アンテナ30Bをリアガラス13の上部右側に取り付けている。各指向性可変アンテナ30には夫々コード12を接続し、コード12はルーフ、ピラーを経由して、自動車11の運転席付近に設置された車載用地上デジタルテレビ受信機21(以下テレビ受信機21と称す)に接続している。
各指向性可変アンテナ30は対向する2方向のいずれか、即ち、図3に示す選択状態1と選択状態2のいずれかに指向性ピークを生じさせることができるものである。
指向性可変アンテナ30A、30Bは、図3(A)、(B)に示すように、車両の前後長さ方向の軸線に対してα度傾斜させ、かつ、軸線を中心としてプラス側とマイナス側とに逆方向に傾斜させてるように取り付けている。指向性可変アンテナ30A、30Bの傾斜角度は、軸線に対して同一角度としている
テレビ受信機21は、図2に示すように、各指向性可変アンテナ30A、30Bとコード12を介して接続する受信回路22A、22Bと、該受信回路22A、22Bと接続して両受信回路22からの信号を合成する合成処理回路23と、指向性可変アンテナ30と接続する指向性制御手段24を備えている。
指向性制御手段24は、電圧発生回路25と、電圧発生回路25と接続した指向性選択回路26を備えている。電圧発生回路25はコード12である制御線により指向性可変アンテナ30と接続して、後述する指向性可変アンテナ30に設けたバラクタダイオード34に電圧を印加し、指向性可変アンテナ30の指向性ピークの方向を設定している。
指向性選択回路26は、受信回路22A、22Bと接続しており、指向性可変アンテナ30A、30Bにおいて受信電力で優位となる指向性ピークの方向を選択している。
指向性ピークの方向の選択は、以下の手順で行っている。
まず、指向性選択回路26は、電圧発生回路25に指令を出して、指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向を、例えば、選択状態1に切り替えさせる。このとき、指向性選択回路26は、受信回路22A、22Bの出力である電波の大きさを取得し、記憶する。
次に、電圧発生回路25に指令を出して、指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向を、選択状態2に切り替えさせる。指向性選択回路26は、受信回路22A、22Bの電波の大きさを取得し、記憶する。
指向性選択回路26は、指向性可変アンテナ30Aの指向性ピークの方向が選択状態1にある場合と選択状態2にある場合において電波の大きさを比較する。電波の大きさが大きいほうがキャリア/ノイズ比で優位となるため、電波の大きさが大きい指向性ピークの方向を選択する。指向性可変アンテナ30Bについても同様に指向性ピークの方向を選択する。
指向性選択回路26はこのような指向性ピークの方向の選択を、所定の周期毎に行っている。
次に、指向性可変アンテナ30A、30Bの構成について説明する。
なお、指向性可変アンテナ30A、30Bとも同一形状であるため、指向性可変アンテナ30A、30Bの区別が不要である場合には指向性可変アンテナ30と称す。
図4に示すように、指向性可変アンテナ30は、プリント基板31上に、給電素子32と、無給電素子33と、可変容量素子を構成するバラクタダイオード34と、給電部35を備えている。
対向する2方向に延在させた給電素子32及び2本の無給電素子33A、33Bはプリント基板31に略平行に配置すると共に、2つの無給電素子33A、33Bは給電素子32を挟んで等間隔に配置している。
給電素子32は長さ方向の中央部に給電部35を設けており、該給電部35は同軸ケーブルからなるコード12で受信回路22と接続している。
各無給電素子33A、33Bは直線状に配置された3本の導体36からなり、各導体36はバラクタダイオード34を介して接続している。即ち、無給電素子33Aにはバラクタダイオード34A−1、34A−2、を設け、無給電素子33Bにはバラクタダイオード34B−1、34B−2を設けている。各バラクタダイオード34は指向性制御手段24の電圧発生回路25と制御線からなるコード12で接続している。
指向性選択回路26は、前述したように各指向性可変アンテナ30の指向性ピークの方向を選択すると、電圧発生回路25に指令信号を出している。
電圧発生回路25は該指令信号により各バラクタダイオード34に制御電圧を印加している。バラクタダイオード34は電圧発生回路25から印加される制御電圧に応じて静電容量が変化し、指向性可変アンテナ30の指向性を設定している。
詳細には、制御電圧は0Vまたは20Vの直流電圧からなり、電圧発生回路25が無給電素子33Aのバラクタダイオード34A−1、34A−2に20Vの逆バイアスを印加すると、バラクタダイオード34A−1、34A−2の静電容量が小さくなる。同時に、無給電素子33Bのバラクタダイオード34B−1、34B−2に0Vを印加すると、バラクタダイオード34B−1、34B−2の静電容量が大きくなる。すると、無給電素子33Aは導波器として機能し、無給電素子33Bは反射器として機能するので、図5に示すように、指向性可変アンテナ30は給電素子32及び無給電素子33の延在方向に対して垂直方向の領域D1に指向性が設定される。
同様に、無給電素子33Aのバラクタダイオード34A−1、34A−2に0Vを印加し、無給電素子33Bのバラクタダイオード34B−1、34B−2に20Vの逆バイアスを印加すると、図5の領域D2に指向性が設定される。
上記のように電圧発生回路25からの制御電圧により指向性可変アンテナ30を指向性選択回路26で選択された指向性ピークの方向に設定した後、電圧発生回路25は次に指向性選択回路26から指令信号を受けるまで該制御電圧のバラクタダイオード34への印加を維持している。
本実施形態では、上述した指向性可変アンテナ30を2個設けており、指向性可変アンテナ30Aの給電素子32及び無給電素子33の延在方向を自動車11の左右方向に対して、左前―右後方向にα度傾けるように取り付けている。すると、指向性可変アンテナ30の指向性ピークの方向は、図3(A)に示すように、車両の前後方向に対して右前―左後方向にα度傾斜した方向となる。
また、指向性可変アンテナ30Bは、給電素子32及び無給電素子33の延在方向を自動車11の左右方向に対して、右前―左後方向にα度傾けるように取り付けている。すると、指向性可変アンテナ30Bの指向性ピークの方向は、図3(B)に示すように、車両の前後方向に対して左前―右後方向にα度傾斜した方向となる。
次に、指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向を車両の前後長さ方向の軸線に対して傾斜させる角度αを、シミュレーションにより求める方法について説明する。
まず、シミュレーションモデルについて説明する。
指向性可変アンテナ30は、自動車の左前と右後に取り付けた状態を想定し、図6(A)に示すように、左前の指向性可変アンテナ30Aの取り付け位置の座標を(x、y)=(0、0)とすると、右後の指向性可変アンテナ30Bの取り付け位置の座標は(1.2、−2)としている。取り付け位置の座標の単位はm(メートル)である。
指向性可変アンテナ30Aの指向性ピークの方向は、車両の前後方向に対して右前―左後方向にα度傾いた方向とし、指向性可変アンテナ30Bの指向性ピークの方向は、車両の前後方向に対して左前―右後方向にα度傾いた方向となるように、指向性可変アンテナ30A、30Bを取り付けている。
指向性可変アンテナ30が受信するテレビ信号Sの到来波は、波数を3とし、主波、遅延波1、遅延波2からなる。
遅延波1、遅延波2は主波に対して遅延時間を設けており、遅延波1は1〜1.003μs、遅延波2は2〜2.003μsの時間幅内で演算毎にランダムに生じさせている。
到来波の到来方向は、主波は車両の前方向を0度とし、右方向を90度、後方向を180度、左方向を270度として、10度ずつ0度〜350度まで変化させている。遅延波1及び遅延波2は独立の乱数によってランダムに方向を定めている。
また、遅延波1及び遅延波2の主波に対する相対的な大きさ(レベル)は、遅延波1は−4〜−3dB、遅延波2は−10〜−6dBの間で演算毎にランダムに定めている。
次に、シミュレーションの手順について説明する。
(1)まず、車両に取り付けられ地上デジタルテレビ信号Sを受信する2個の指向性可変アンテナ30の指向性ピークの方向を、車両の前後方向の軸線に対して傾斜する角度(α度)を設定する。
(2)次に、地上デジタルテレビ信号Sの主波の到来方向の角度毎に、地上デジタルテレビ信号Sの主波の大きさ(レベル)を徐々に変化させて、符号化率7/8の場合に擬似エラーフリーである誤り訂正なしでのビットエラーレート(BER)が0.007以下となる確率が90%以上となる主波の大きさを演算し、前記演算した大きさの主波を利得0dBiのアンテナで受信した場合のキャリア/ノイズ比(C/N)に換算する。なお、以上の演算においては、アンテナから受信機までのケーブルのロスは便宜的に0dBとし、また、受信機の雑音指数(NF)も便宜的に0dBとする。
図7に、横軸にC/N、即ち、換算した主波の大きさ、縦軸に擬似エラーフリーとなる受信率をプロットした例を示す。主波の大きさが大きいほど受信率が高くなり、主波の大きさは受信率と相関関係がある。
主波到来方向が0度から350度において10度毎に図7のようにC/Nに対する受信率をプロットする。
(3)図7により、主波の受信率が90%以上となるC/Nを、テレビ信号Sの主波の到来方向の角度毎に読み取る。
(4)図8に示すように、横軸を主波の到来方向の角度、縦軸を読み取ったC/N(受信所要C/N)としてプロットする。受信所要C/Nが、前記主波の到来方向の大部分の角度において基準値以下である場合には(1)で設定した指向性可変アンテナ30の指向性ピークの方向を傾ける角度で車両に取り付けてもよいと判断する。
本実施形態では、基準値を、後述する比較例である指向性が非可変のアンテナを車両の前後左右に4箇所取り付けた場合の受信所要C/Nとし、受信所要C/Nが比較例と比較して良好である場合には、(1)で設定した角度で車両に取り付けると判断する。
(5)(1)で設定した、指向性可変アンテナ30の指向性ピークの方向を、車両の前後方向に対して傾ける角度(α度)を少しずつ変えて(2)〜(4)の演算を行い、指向性可変アンテナ30の指向性ピークの方向を傾けることのできる角度の範囲を求める。
即ち、受信性能の評価は、主波の到来方向の角度に対する受信所要C/N(C/N:キャリア/ノイズ比)により行っており、受信所要C/Nは、ビットエラーレート(BER)が0.007となる受信率が90%となる場合に必要な大きさの主波を利得0dBiのアンテナで受信した場合のC/Nと定義している。
以下、上記シミュレーション方法を用いたシミュレーションの実施例について説明する。
(実施例1)
前記シュミレーションモデルにより、指向性可変アンテナ30Aの指向性ピークの方向は、車両の前後方向に対して右前―左後方向に10度傾いた方向とし、指向性可変アンテナ30Bの指向性ピークの方向は、車両の前後方向に対して左前―右後方向に10度傾いた方向となるように、指向性可変アンテナ30A、30Bを取り付けた。
なお、主波の到来方向の角度毎および主波の大きさ毎に、遅延波1、遅延波2の遅延時間やレベルをランダムに変えて100回ずつビットエラーレートを計算し、この100個のビットエラーレートのうち、その値が0.007以下となる確率(受信率)を求め、受信率が90%となる主波の大きさを求め、その大きさの主波を利得0dBiのアンテナで受信した場合のC/Nを受信所要C/Nとした。
(実施例2)
指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向が車両の前後方向に対して傾く角度を15度とした。他は実施例1と同様とした。
(実施例3)
指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向が車両の前後方向に対して傾く角度を20度とした。他は実施例1と同様とした。
(実施例4)
指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向が車両の前後方向に対して傾く角度を25度とした。他は実施例1と同様とした。
(実施例5)
指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向が車両の前後方向に対して傾く角度を30度とした。他は実施例1と同様とした。
(実施例6)
指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向が車両の前後方向に対して傾く角度を35度とした。他は実施例1と同様とした。
(実施例7)
指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向が車両の前後方向に対して傾く角度を40度とした。他は実施例1と同様とした。
(比較例)
また、比較例として、指向性が非可変のアンテナ2A〜2Dを車両の前後左右に4箇所取り付けた場合についても、実施例1と同様のシミュレーションを行った。アンテナの取り付け位置の座標は、図6(B)に示すように、左前のアンテナ2Aを(0、0)、右前のアンテナ2Bを(1.2、0)、左後のアンテナ2Cを(0、−2)、右後のアンテナ2Dを(1.2、−2)とした。指向性が非可変のアンテナ2A〜2Dはパナソニック製フィルムアンテナTY−CA230DTFである。
図8乃至図10にシミュレーション結果を示す。
図8(A)は実施例1と比較例を示しており、受信所要C/Nが低いほど受信性能が良いことを示している。指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向を車両の前後方向に対して10度傾けた場合、指向性可変アンテナ30A、30Bの受信性能は主波到来方向が約80度付近、280度付近において比較例よりも受信性能が劣ることが分かった。
図8(B)は実施例2と比較例を示しており、指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向を車両の前後方向に対して15度傾けた場合には、指向性可変アンテナ30A、30Bの受信性能は主波到来方向が約80度付近でわずかに比較例よりも劣るが、他の主波到来方向においては、受信性能は比較例よりも良好であった。
図9(A)〜(C)は実施例3〜5と比較例を示しており、指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向を車両の前後方向に対して20度、25度、30度傾けた場合には、主波到来方向がいずれの方向から到来しても、受信性能は比較例よりも良好であった。
図10(A)は、指向性可変アンテナ30A、アンテナ30Bの指向性ピークの方向を車両の前後方向に対して35度傾けた場合であるが、指向性可変アンテナ30A、30Bの受信性能は主波到来方向が約180度付近でわずかに比較例よりも劣るが、他の主波到来方向においては、受信性能は比較例よりも良好であった。
図10(B)に示すように、指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向を車両の前後方向に対して40度傾けた場合には、指向性可変アンテナ30A、30Bの受信性能は主波到来方向が160度から200度付近において比較例よりも受信性能が劣ることがわかった。
このようなシミュレーション結果より、指向性可変アンテナ30A、30Bの指向性ピークの方向を車両の前後方向に対して10度以上から35度以下傾けて取り付けると、テレビ信号Sの主波の到来方向がごく一部の場合を除き比較例に比べて受信性能が向上し、特に、20度以上から30度以下とすることで、テレビ信号Sがどの方向から到来しても、受信感度が向上することが分かった。
本発明である車載用地上デジタルテレビの受信システムの第1実施形態を示す自動車11への取付図である。 車載用地上デジタルテレビの受信システムの構成図である。 2つの指向性可変アンテナの指向性の説明図であり、(A)は指向性可変アンテナAの指向性ピークの方向の説明図、(B)は指向性可変アンテナBの指向性ピークの方向の説明図である。 指向性可変アンテナの構成図である。 指向性可変アンテナの指向性ピークの方向の説明図である。 シミュレーションを行う際のアンテナの取り付け箇所座標の説明図であり、(A)は指向性可変アンテナ2本を使用する場合、(B)は比較例として指向性が非可変のアンテナ4本を使用する場合である。 ビットエラーレートが擬似エラーフリーである0.007以下となる受信率と主波の大きさを利得0dBiのアンテナで受信した場合のC/Nに換算した値としてのキャリア/ノイズ比の関係を示す図である。 主波の到来方向に対する受信所要C/Nを示す図であり、(A)は指向性可変アンテナの指向性ピークの方向の傾斜角度が10度、(B)は15度の場合である。 主波の到来方向に対する受信所要C/Nを示す図であり、(A)は指向性可変アンテナの指向性ピークの方向の傾斜角度が20度、(B)は25度、(C)は30度の場合である。 主波の到来方向に対する受信所要C/Nを示す図であり、(A)は指向性可変アンテナの指向性ピークの方向の傾斜角度が35度、(B)は40度の場合である。 指向性が非可変のアンテナを用いる場合の従来例を示す図であり、(A)はアンテナが4本、(B)は2本の場合である。 指向性可変アンテナを用いる場合の本発明ではない場合の指向性ピークの設定方向の一例を示す図である。 主波の到来方向に対する受信所要C/Nを示しており、実線は図12の一例の場合であり、破線は図11(A)の場合に指向性が非可変のアンテナとしてパナソニック製TY−CA230DTFを使用した場合である。
符号の説明
10 車載用地上デジタルテレビの受信システム
11 自動車
12 コード
21 車載用地上デジタルテレビ受信機
22 受信回路
23 合成処理回路
24 指向性制御手段
25 電圧発生回路
26 指向性選択回路
30(30A、30B) 指向性可変アンテナ
31 プリント基板
32 給電素子
33 無給電素子
34 バラクタダイオード
S 地上デジタルテレビ信号

Claims (4)

  1. 地上デジタルテレビ信号受信用として、車両の前後方向に取り付ける第1アンテナと第2アンテナとの2つの指向性可変アンテナを備え、
    前記第1、第2アンテナは、対向する2方向に指向性を有すると共に指向性ピーク方向を選択的に設定できるものとしており、
    これら第1、第2アンテナの前記指向性ピーク方向は、車両の前後長さ方向の軸線に対して10度以上35度以下の角度範囲内で、かつ、前記軸線を中心として第1アンテナと第2アンテナとはプラス側とマイナス側とに逆方向に傾斜させて選択していることを特徴とする車載用地上デジタルテレビの受信システム。
  2. 前記第1アンテナと第2アンテナの傾斜角度は、前記軸線に対して同一角度としている請求項1に記載の車載用地上デジタルテレビの受信システム。
  3. 前記第1、第2アンテナからなる各指向性可変アンテナは、車両の異なる位置に取り付けられる基板からなり、該基板は複数の無給電素子と給電素子を備え、該無給電素子に可変容量素子を設けている一方、
    前記第1、第2アンテナの基板をコードを介して車載用の地上デジタルテレビ用の受信機内の指向性制御手段に接続し、該向性制御手段は電圧発生手段を備え、前記基板の可変容量素子に印加する電圧を調整して、前記各指向性可変アンテナに前記選択した方向に指向性ピークを生じさせている請求項1または請求項2に記載の車載用地上デジタルテレビの受信システム。
  4. 地上デジタルテレビ信号受信用として、車両の前後方向に取り付ける第1アンテナと第2アンテナとの2つの指向性可変アンテナを備え、
    前記第1、第2アンテナは、対向する2方向に指向性を有すると共に指向性ピーク方向を選択的に設定できるものとしており、
    前記指向性ピーク方向の設計は、地上デジタルテレビ信号の主波の到来方向の角度毎に、地上デジタルテレビ信号の主波の大きさを変化させて、擬似エラーフリーとなる確率が90%となるキャリア/ノイズ比を演算して求め、
    前記キャリア/ノイズ比が、前記主波の到来方向に拘らず基準値以下となるように指向性ピーク方向を設計していることを特徴とする車載用地上デジタルテレビの受信システムにおける指向性可変アンテナの指向性ピーク方向の設計方法。
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