JP2009138174A - 高分子化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 精製酵素や高価なATPを使用することなく、アセチルCoAを連続的に生成・再生して、高収率かつ迅速かつ容易に、所望の組成を有する高分子化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】 アセチルチオエステルとCoAとからアセチルCoAを生成する化学的チオエステル交換反応と、少なくとも1つのモノマー前駆体と前記アセチルCoAとからモノマー前駆体−CoA誘導体に変換するモノマー生成反応と、記モノマー前駆体−CoA誘導体を重合して前記モノマーユニットからなる前記高分子化合物を生成する重合反応と
を有している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高分子化合物の製造方法に関し、特に精製酵素と高価なATPとを使用することなく安価な酢酸を出発物質としてアセチルCoA(アセチルコエンザイムA)を生成し、モノマー生成を経て、生分解性を有する高分子化合物を工業的に利用可能に製造する高分子化合物の製造方法に関するものである。
様々な高分子化合物の中で、石油等の化石燃料由来の化学合成プラスチックは、自然環境中で分解されないため、環境中に半永久的に蓄積してしまい、様々な環境問題を引き起こしている。このような背景から、自然界に存在する微生物によって分解される高分子化合物である生分解性プラスチック(グリーンプラ)は、環境に負荷を与えない高分子材料として注目され、実用化に向けての開発が行われている。また、生体機能材料(バイオマテリアル)として、生物・医学領域への新たな展開も期待されている。
生分解性ポリエステルは、現在までに数多くの微生物において、糖や植物油等の再生可能な生物有機資源(バイオマス)を原料として生成され、菌体内に蓄積されることが知られている。その中でも、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は化学合成プラスチックと同様に熱可塑性を示し、優れた生分解性と生体適合性を有することから注目を集めているポリエステルであり、ポリマー中において90種類以上のモノマー構造が確認されている(非特許文献1)。
PHAの製造方法には、微生物発酵生産を利用して微生物体内で生成するin vivo合成法と、精製PHAシンターゼ(PHA合成酵素)とPHAのモノマーとを用いて微生物体外で合成するin vitro合成法がある。現在、PHAは、一般にin vivo合成法によって製造されるが、微生物発酵生産では微生物体内にPHAを蓄積するためにその生産量は限られ、また微生物を粉砕してPHAを抽出して精製するのに高いコストがかかってしまう等の問題点が多い。さらにin vivo合成法は、複雑な微生物代謝経路を経るため、必ずしも所望の性質を有するPHAを生産できるということではなく、そのバリエーションも限定されてしまう。また、発酵生産の制御によっては、PHAが所望のホモポリマーとならずにコポリマーとなることもあり、また逆にコポリマーの生産を目的とする場合においても、必ずしも所望のモル比で均質なコポリマーを生産できるということではない(非特許文献2)。
このような問題を解決するため、PHAシンターゼの発現を増強することによって生産性の向上を図るという試みや、あるいはPHAシンターゼ基質特異性を変換することによってPHAの共重合組成を制御するという試み等がなされている(特許文献1〜3)。
一方、in vitro合成法は、遺伝子組換え技術によってPHAシンターゼの大量調製が可能となったことから開発されたものであり(非特許文献3)、前述の通り、精製PHAシンターゼと基質となるモノマーとを用いてPHAを製造する方法である。これにより、モノマーを化学的に調製してPHAのモノマー構造を拡張し、生産量の調整を高い精度で行うことが可能となり、前述のようなin vivo合成法による問題点を回避することができるようになった。in vitro合成法を用いることにより、これまでin vivo合成法では得ることのできなかった様々な物性や機能性を有するPHAを製造することが期待されている。
しかしながら、in vitro合成法を用いてPHAを製造する場合、基質となるモノマーとしてヒドロキシアシルCoA(HA−CoA)を使用するため、この化合物を連続的に供給する必要があるが、HA−CoAは極めて高価で、その合成方法も非常に複雑である上、その合成にも高価なCoAを用いなければならない。
これらの問題に対して、PHAの重合と共に反応系内に遊離したCoAをリサイクルし、HA−CoAを連続的に供給するという試みがなされている。例えば、非特許文献4では、酢酸とアセチルCoAシンセターゼとATPとを共存させることで遊離するCoAがアセチルCoAに変換され、続いてプロピオニルCoAトランスフェラーゼを共存させることで3−ヒドロキシブチルCoAが得られ、さらに、これが重合されてポリ3−ヒドロキシブチレートが合成されるという、CoAをリサイクルする方法が示されている(非特許文献4)。
また、特許文献4では、出発物質であるチオエステルからPHAを製造する一連の反応過程において、CoAをリサイクリングしながらHA−CoAを連続的に供給する方法が開示されている。すなわち、出発物質であるチオエステルはチオエステル交換反応によりCoAと反応してHA−CoAに変換され、続いて、PHAシンターゼにより重合されてPHAが合成される。この重合反応時にCoAが遊離されるため、この遊離されたCoAがエステル交換反応に再利用されて、HA−CoAが連続的に生成・再生される方法である(特許文献4)。
特開平7―265065号公報 特開平10−108682号公報 特表2001―516574号公報 再表2004−065609号公報 FEMS Microbiol. Lett.,1995,128,219−228 FEMS Microbiol. Rev.,1992,103,207―214 Proc.Natl.Acad.sci.,1995,92,6279−6283 FEMS Microbiology Letters,1998,168,319−324
しかしながら、非特許文献4に記載された製造方法では、精製の困難な3種類の酵素を使用しなければならず、さらに極めて高価なATPも必須であるため、工業的な生産に用いることは極めて難しい。
一方、特許文献4の発明では、原料であるヒドロキシアルカノエート(HA)をチオフェニルエステル化して出発物質であるチオフェニルエステルを生成しなければならないが、このチオフェニルエステル化反応では、HAの水酸基を一度保護し、反応後に脱保護するという手順を要するため手間を要してしまい、やはり工業化が困難であるという問題がある。
さらに、特許文献4の発明では、チオエステル交換反応によってチオフェニルエステルからアシルCoAに変換される際にチオフェノールが遊離する。このチオフェノールは物質毒性が非常に強く、重合反応が行われる水相溶液中に数パーセントが溶解してしまい、PHAシンターゼの活性を阻害してしまうといった問題がある。
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、精製酵素と高価なATPとを使用することなく、アセチルCoAを連続的に生成・再生し、モノマー生成を経て高分子化合物を製造することにより生産効率や生産性が向上し、その結果、所望の組成を有する高分子化合物を製造することができ、かつ工業的に利用することができる高分子化合物の製造方法の提供を目的としている。
本発明に係る高分子化合物の製造方法は、アセチルチオエステルとCoAとからアセチルCoAを生成する化学的チオエステル交換反応と、少なくとも一のモノマー前駆体と前記アセチルCoAとからモノマー前駆体−CoA誘導体に変換するモノマー生成反応と、前記モノマー前駆体−CoA誘導体を重合して前記モノマーのユニットからなる前記高分子化合物を生成する重合反応とを有する。
本発明において、前記モノマー前駆体がヒドロキシ酸であり、かつヒドロキシ酸のユニットからなる高分子化合物を生成する態様であってもよい。
また、本発明において、前記ヒドロキシ酸がヒドロキシアルカノエートおよびセリンの少なくともいずれかであってもよい。
また、本発明において、前記ヒドロキシアルカノエートが、乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、および4−ヒドロキシブチレートからなる群から少なくとも一つ選ばれるものであってもよい。
さらに、本発明において、前記乳酸がD−乳酸であってもよい。
そして、本発明において、前記化学的チオエステル交換反応が、前記重合反応においてモノマー前駆体−CoA誘導体から遊離するCoAと前記アセチルチオエステルとからアセチルCoAを生成する反応であってもよい。
また、本発明において、前記アセチルチオエステルがチオール化合物と酢酸とを用いたチオエステル化反応によって生成する態様であってもよい。
そして、本発明において、前記酢酸が、前記モノマー生成反応において遊離する酢酸であってもよい。
また、本発明において、前記チオール化合物がエチルチオグリコレート(ETG)であってもよい。
そして、本発明において、前記モノマー生成反応に用いられる酵素がアセチルCoAを基質とする酵素であってもよい。
また、本発明において、前記化学的チオエステル交換反応と前記モノマー生成反応と前記重合反応とが一の反応系内にあってもよい。
そして、本発明において、前記一の反応系が、前記アセチルチオエステルを含有する有機溶媒相と、前記CoAと前記モノマー前駆体と前記モノマー生成反応を触媒する酵素と前記重合反応を触媒する酵素とを含有する水相とからなってもよい。
また、本発明において、前記アセチルチオエステルと前記モノマー前駆体とのモル濃度の比が、1対1ないし10対1であってもよい。
さらに、本発明において、前記高分子化合物の分子量分布が1ないし3であってもよい。
本発明によれば、精製酵素と高価なATPとを使用することなく、アセチルCoAを連続的に生成・再生して、高収率かつ迅速かつ容易に高分子化合物を製造することができるため、所望の組成を有する高分子化合物を製造することができ、かつ工業化に好適な高分子化合物を製造することができる。また、選択できるモノマー成分の幅が広がるため、所望の組成を有する高分子化合物を製造することができる。
以下、本発明に係る高分子化合物の製造方法について図1から図3を参照しつつ説明する。図1に示すように、本発明に係る高分子化合物の製造方法は、化学的チオエステル交換反応、モノマー生成反応、および重合反応の各反応段階からなる。
化学的チオエステル交換反応は、アセチル基供与体であるアセチルチオエステルをCoAと反応させてアセチルCoAを生成する化学反応であり、同時にチオール化合物が遊離する。また、モノマー生成反応は、化学的チオエステル交換反応において生成されたアセチルCoAを少なくとも一のモノマー前駆体と反応させ、モノマー前駆体の水酸基をCoAに置換してモノマー前駆体−CoA誘導体に変換する反応であり、同時に酢酸が遊離する。さらに、重合反応は、モノマー生成反応によって得られたモノマー前駆体−CoA誘導体を重合させて高分子化合物を生成する反応であり、同時にCoAが遊離する。
前記モノマー生成反応におけるモノマー前駆体としてカルボン酸を挙げることができ、好ましいカルボン酸としてはヒドロキシ酸または不飽和脂肪酸を挙げることができる。ヒドロキシ酸または不飽和脂肪酸はモノマー生成反応によってモノマー前駆体−CoA誘導体を生成後、重合反応によって高分子化合物を製造することができれば特に限定されないが、例えば、タルトレート、グリセレート、アクリレート、クロトネート、アミノクロトネート、ヒドロキシクロトネート、ペンテネート、ヘキサノエート、オクタノエート、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、セリン(Ser)、HA等の脂肪族ヒドロキシ酸、サリチル酸、ヒドロキシメチル安息香酸、バニリン酸、シリング酸、ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸ゲンチジン酸、オルセリン酸、没食子酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、メリトロ酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルシラ酸シナピン酸等の芳香族ヒドロキシ酸を挙げることができるが、SerまたはHAが好ましい。
次に、本発明におけるHAとしては、乳酸(2−ヒドロキシプロピオネート;LA)、グリコール酸、3−ヒドロキシプロピオネート(3HP)、3−ヒドロキシブチレート(3HB)、3−ヒドロキシバレレート(3HV)、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシウンデカノエート、3−ヒドロキシドデカノエート、3−ヒドロキシドデセノエート、3−ヒドロキシテトラデカノエート、3−ヒドロキシヘキサデカノエート、3−ヒドロキシオクタデカノエート、4−ヒドロキシブチレート(4HB)、4−ヒドロキシバレレート、5−ヒドロキシバレレート、6−ヒドロキシヘキサノエート、ヒドロキシラウリレート等を挙げることができるが、好ましいHAとしては、LA、3HP、3HB、4HBを挙げることができる。
また、LAには二つのエナンチオマー、すなわちD体とL体とが存在する。本発明においては、D体、L体のいずれもモノマー前駆体として用いることができるが、本実施形態においてはD体(D−乳酸)を好適なLAとして用いている。
また、本発明に係る高分子化合物の製造方法により製造することができる高分子化合物にはポリエステルが含まれる。本発明におけるポリエステルとしては、前記HAのホモポリマー、前記HAから選択されてなるコポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマーであるPHAを挙げることができるが、好ましいPHAとしては、ポリLA(PLA)、ポリ3−ヒドロキシプロピオネート{P(3HP)}、ポリ3−ヒドロキシブチレート{P(3HB)}、ポリ4−ヒドロキシブチレート{P(4HB)}、LAと3HPとからなるポリマー{P(LA−co−3HP)}、LAと3HBとからなるポリマー{P(LA−co−3HB)}、LAと4HBとからなるポリマー{P(LA−co−4HB)}、3HPと3HBとからなるポリマー{P(3HP−co−3HB)}、3HPと4HBとからなるポリマー{P(3HP−co−4HB)}、3HBと4HBとからなるポリマー{P(3HB−co−4HB)等を挙げることができる。さらに、前記ポリエステルにはセリンまたはHAから選択されるユニットからなるものが含まれ、好ましいHAのユニットとしてはSerのホモポリマー(PS)、3HP、3HB、4HB、のいずれかのHAとSerとからなるコポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマー、または他のユニットとともに構成するコポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマーを挙げることができる。なお、本発明における高分子化合物は生分解性を有するものが好適である。
また、本発明に係る高分子化合物の製造方法においては、重合反応において遊離したCoAをさらに、化学的チオエステル交換反応にてアセチルチオエステルと反応させてアセチルCoAを生成することができる。すなわち、化学的チオエステル交換反応においてアセチルCoAの生成に用いるCoAとして、重合反応でモノマー前駆体−CoA誘導体から遊離したCoAを再利用することができる。なお、再利用せずにCoAを別途添加することにより、化学的チオエステル交換反応においてアセチルCoAを生成することもできる。
また、化学的チオエステル交換反応の出発物質であるアセチルチオエステルの生成方法は、安価な化合物等を用いて生成することができれば特に限定されないが、高価な化合物等を用いることなく一段階で簡便に生成することができるという点から、図3に示すように、原料物質である酢酸とチオール化合物とを反応させるチオエステル化反応により生成することが好ましい。
一方、モノマー生成反応において遊離した酢酸は、チオエステル化反応にてチオール化合物と反応させてアセチルチオエステルを生成することができる。すなわち、チオエステル化反応においてアセチルチオエステルの生成に用いる酢酸は、モノマー生成反応で遊離した酢酸を再利用することができる。なお、再利用せずに酢酸を別途添加することにより、チオエステル化反応においてアセチルチオエステルを生成することもできる。
ここで、本発明におけるチオール化合物は、チオール基を有し、かつアセチル基をCoAに供与することによってアセチルCoAを生成することができる化合物であれば特に限定されないが、好ましいチオールとしては、脂肪族チオールや芳香族チオールが挙げられ、具体的には、エタンチオール、プロパンチオール、ベンジルメルカプタン、2−メルカプトエチルエーテル、およびシクロヘキシルチオール等のC1〜C18のアルキルチオールないしシクロアルキルチオール、メルカプトエタノールおよびp−メルカプトフェノール等の水酸基を含有するチオール、メルカプト酢酸メチルおよびメルカプトプロピオン酸エチル等のカルボン酸エステルを含有するチオール、チオフェノール(TP)、トルエンチオール、およびナフタレンチオールなどの芳香族チオール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、メルカプトピリジン、メルカプトチアゾリン、メルカプトベンズチアゾリン、メルカプトベンズオキサゾール、およびメルカプトピリミジン等の含窒素芳香族チオール、メチルチオグリコレート、エチルチオグリコレート(ETG)、プロピルチオグリコレート、イソプロピルチオグリコレート、ブチルチオグリコレート、n−アミルチオグリコレート、イソアミルチオグリコレート、ヘキシルチオグリコレート、オクチルチオグリコレート、n−デシルチオグリコレート、ラウリルチオグリコレート、トリデシルチオグリコレート、ステアリルチオグリコレート、チオナリド、フルフリルメルカプタン、シクロヘキシルチオグリコレート、およびヒドロキシエチルチオグリコレート等のチオグリコレートを挙げることができるが、TP、チオグリコレートが好ましく、特にチオグリコレートがより好ましい。なお、本実施形態においては、酢酸からアセチルチオエステルを安定して生成することができること、物質毒性が低くシンターゼの活性を阻害しないこと、および高分子化合物の生成速度ならびに生成収率が大きくなることから、ETGを好適なチオール化合物として用いている。
一方、前記モノマー生成反応で用いる酵素は、前記モノマー生成反応がアセチルCoAと前記ヒドロキシ酸とを基質としてモノマー前駆体−CoA誘導体に変換する反応であることから、アセチルCoAを基質とする酵素であることが好ましい。アセチルCoAを基質とする酵素としては、例えば、CoAトランスフェラーゼを挙げることができる。CoAランスフェラーゼとしては、例えば、アセトアセチルCoAトランスフェラーゼ、カフェオイルCoAトランスフェラーゼ、クマロイルCoAトランスフェラーゼ、グルタリルCoAトランスフェラーゼ、クロトニルCoAトランスフェラーゼ、シナポイルCoAトランスフェラーゼ、シンナモイルCoAトランスフェラーゼ、スクシニルCoAトランスフェラーゼ、3−ヒドロキシブタノイルCoAトランスフェラーゼ、ヒドロキシメチルグルタリルCoAトランスフェラーゼ、フェルロイルCoAトランスフェラーゼ、プロピオニルCoAトランスフェラーゼ(PCT)、マロニルCoAトランスフェラーゼ等を挙げることができ、さらに、基質であるヒドロキシ酸に応じて好適なCoAトランスフェラーゼを選択することができる。例えば、ヒドロキシ酸が3HB、3HP、4HB、LA、セリンである場合はPCTを用いることができる。
前記CoAトランスフェラーゼの由来微生物としては、アセチルCoAからCoA基をモノマー前駆体に転移することができる酵素を有するものであれば特に限定されないが、例えばプロピオニルCoAトランスフェラーゼを用いる場合は、Clostridium属、Megasphaera属、Alkaliphilus属、Thermosinus属、Pelotomaculum属、Listeria属、Ralstonia属、Syntrophobacter属、Fusobacterium属、Syntrophus属、Mycobacterium属、Dechloromonas属、Bacillus属、Rhodoferax属、Bradyrhizobium属、Polynucleobacter属、Eubacterium属、Rhizobium属、Oceanospirillum属、Vibrio属、Burkholderia属、Pseudomonas属、Shewanella属、大腸菌、等を挙げることができ、詳細にはClostridium propionicum、Clostridium kluyveri、Megasphaera elsdenii、Clostridium propionicum、Clostridium novyi、Clostridium tetani、Clostridium perfringens、Clostridium beijerinckii、Clostridium beijerinckii、Clostridium tetani、Alkaliphilus metalliredigens、Alkaliphilus oremlandii、Thermosinus carboxydivorans、Pelotomaculum thermopropionicum、Listeria monocytogenes、Listeria welshimeri、Ralstonia eutropha、Syntrophobacter fumaroxidans、Fusobacterium nucleatum、Syntrophus aciditrophicus、Mycobacterium smegmatis、Dechloromonas aromatica、Bacillus halodurans、Rhodoferax ferrireducens、Bradyrhizobium japonicum、Polynucleobacter sp.、Eubacterium dolichum、Rhizobium leguminosarum、Oceanospirillum sp.、Vibrio shilonii、Burkholderia phytofirmans、Pseudomonas mendocina、Shewanella sediminis、Escherichia coli等を挙げることができる。
次に、本発明に係る高分子化合物の製造方法は、前記化学的チオエステル交換反応、モノマー生成反応、および重合反応の各反応段階を包含していれば、他の反応段階を有してもよく、例えば、ヒドラターゼによる水和反応等の反応段階を有する場合を挙げることができる。また、前記化学的チオエステル交換反応、モノマー生成反応、および重合反応は各々分離して行うことも、または図2に示すように一の反応系内で同時に行うこともでき、前記一の反応系は前記チオエステル化反応を包含することができる。さらに、前記一の反応系は有機溶媒相と水相とを包含することができる。
そして、有機溶媒相と水相とを包含する一の反応系内において高分子化合物を製造する場合には、前記有機溶媒相はアセチルチオエステルを含み、かつ前記水相はCoA、モノマー前駆体、CoAトランスフェラーゼ、およびシンターゼを、各々含んでいることが好ましい。すなわち、図2に示すように、有機溶媒相と水相との界面において有機溶媒相に存在するアセチルチオエステルと水相に存在するCoAとが化学的チオエステル交換反応をしてチオール化合物とアセチルCoAとを生成し、水相においてアセチルCoAとモノマー前駆体とがアセチルCoAを基質とする酵素の触媒作用によりモノマー生成反応して酢酸とモノマー前駆体−CoA誘導体とを生成し、続いて水相においてモノマー前駆体−CoA誘導体が重合反応に係る酵素の触媒作用により重合反応して高分子化合物を生成する。
ここで、前記重合反応に係る酵素としてPHAシンターゼを挙げることができるが、本発明におけるPHAシンターゼは、HAを重合してPHAを生成する酵素のみならず、LAを重合してPLAを生成する酵素や、HAとLAとを重合してコポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマーを生成する酵素が含まれる。また、基質であるモノマー前駆体−CoA誘導体に応じて好適なPHAシンターゼを選択することができ、例えば、モノマー前駆体−CoA誘導体が3HB−CoA、3HP−CoA、4HB−CoA、LA−CoAから選択されるいずれかのモノマー前駆体−CoA誘導体を含む場合は、Ralstonia属由来PHA合成酵素、Pseudomonas属由来PHA合成酵素、またはこれらPHA合成酵素のアミノ酸の一部を他のアミノ酸に置換したPHA合成酵素等を用いることができる。
前記PHAシンターゼの由来微生物としては、HA−CoAを基質としてPHAを合成することができる酵素を有するものであれば特に限定されないが、例えばRalstonia属、Burkholderia属、Methylibium属、Pseudomonas属、Cupriavidus属、Polaromonas属、Alcaligenes属、Azohydromonas属、Rhodoferax属、Acidovorax属、Verminephrobacter属、Verminephrobacter属、Polynucleobacter属、Bordetella属、Zoogloea属、Bordetella属、Herminiimonas属、Limnobacter属、Dechloromonas属、Azoarcus属、Bradyrhizobium属、Azotobacter属、Oceanospirillum属、Chromobacterium属、Nitrococcus属、Alkalilimnicola属、Magnetospirillum属、Halorhodospira属、Rhodospirillum属、Magnetospirillum属、Rubrobacter属、Dechloromonas属、Parvibaculum属、Acidiphilium属、Azoarcus属、Sphingomonas属、Saccharophagus属、Photobacterium属、Chromohalobacter属、Azorhizobium属、Methylobacterium属、Vibrio属、Rhodopseudomonas属、Bacillus属、Rubrobacter属、Roseiflexus属、Syntrophomonas属、Chloroflexus属、Myxococcus属、Novosphingobium属、Haloarcula属、Halorhodospira属、Cenarchaeum属、Synechococcus属、Synechocystis属、Synechocystis属、Allochromatium属、Microscilla属、Chlorogloeopsis属、Ectothiorhodospira属、Xanthomonas属、Nitrococcus mobilis属、Marinobacter属、Alcanivorax属、Hahella属、Limnobacter属、Acinetobacter属、Aeromonas属、Limnobacter属、Parvularcula属、等を挙げることができ、詳細にはRalstonia eutropha、Ralstonia metallidurans、Ralstonia solanacearum、Ralstonia pickettii、Ralstonia metallidurans、Burkholderia multivorans、Burkholderia pseudomallei、Burkholderia dolosa、Burkholderia mallei、Burkholderia ambifaria、Burkholderia cenocepacia、Burkholderia thailandensis、Burkholderia phymatum、Burkholderia xenovorans、Burkholderia vietnamiensis、Methylibium petroleiphilum、Pseudomonas putida、Pseudomonas oleovorans、Cupriavidus necator、Polaromonas naphthalenivorans、Alcaligenes sp.、Azohydromonas lata、Rhodoferax ferrireducens、Acidovorax avenae、Verminephrobacter eiseniae、Polynucleobacter sp.、Bordetella pertussis、Zoogloea ramigera、Bordetella bronchiseptica、Bordetella parapertussis、Bordetella avium、Herminiimonas arsenicoxydans、Limnobacter sp.、Dechloromonas aromatica、Azoarcus sp.、Bradyrhizobium japonicum、Azotobacter vinelandii、Oceanospirillum sp.、Chromobacterium violaceum、Nitrococcus mobilis、Alkalilimnicola ehrlichei、Magnetospirillum magneticum、Halorhodospira halophila、Rhodospirillum rubrum、Magnetospirillum gryphiswaldense、Rubrobacter xylanophilus、Dechloromonas aromatica、Parvibaculum lavamentivorans、Acidiphilium cryptum、Azoarcus sp.、Sphingomonas sp.、Saccharophagus degradans、Photobacterium profundum、Chromohalobacter salexigens、Azorhizobium caulinodans、Methylobacterium sp.、Vibrio alginolyticus、Rhodopseudomonas palustris、Bacillus anthracis、Bacillus cereus、Bacillus thuringiensis、Bacillus weihenstephanensis、Bacillus megaterium、Rubrobacter xylanophilus、Roseiflexus castenholzii、Syntrophomonas wolfei、Chloroflexus aggregans、Myxococcus xanthus、Novosphingobium aromaticivorans、Haloarcula marismortui、Haloarcula hispanica、Halorhodospira halophila、Cenarchaeum symbiosum、Synechococcus sp.Synechocystis sp.、Allochromatium vinosum、Microscilla marina、Chlorogloeopsis fritschii、Ectothiorhodospira shaposhnikovii、Xanthomonas campestris、Nitrococcus mobilis、Marinobacter aquaeolei、Alcanivorax borkumensis、Hahella chejuensis、Acinetobacter baumannii、Aeromonas salmonicida、Parvularcula bermudensis等が挙げられる。
また、本発明に係る高分子化合物の製造方法は、前記化学的チオエステル交換反応とモノマー生成反応と重合反応とを前記一の反応系内で同時に行う場合には、生成速度および生成収率の観点から、有機溶媒相における前記アセチルチオエステルと水相における前記モノマー前駆体とのモル濃度(mmol/L)の比が1対1ないし10対1であることが好ましい。
また、本発明に係る高分子化合物の製造方法により製造することができる高分子化合物の分子量分布は、上述した製造方法により製造されるものであれば特に限定されないが、高分子化合物の品質および製造の再現性の点から分子量分布が1ないし3が好ましい。
以上のように、本実施形態における、酢酸からアセチルチオエステルを生成するアセチルCoAの生成方法は、ATP等の高価な材料や、精製に手間を要し、あるいは扱いに注意を必要とする酵素等を利用することなく、酢酸のように安価な物質を原料としており、工業的にも有用である。また、前記モノマー生成反応では、遊離のモノマー前駆体をそのまま使用することができる。例えば、生成が簡易で安価である乳酸発酵で得られたLA等を用いることができる。すなわち、本発明に係る高分子化合物の製造方法により所望のモノマーを選択して所望の組成を有する高分子化合物を簡便に製造することが可能となる。
次に、本発明に係る高分子化合物の製造方法の一実施形態について説明する。本実施形態においては、酢酸とETGとからチオエステル化反応によってアセチルETGを生成し、ヘキサンからなる有機溶媒相にアセチルETGを加え、さらに、水相にCoA、HA、CoAトランスフェラーゼ、およびPHAシンターゼを加えることにより、前記化学的チオエステル交換反応とモノマー生成反応と重合反応とが段階的に進み、高分子化合物が製造される。
具体的には、まず、ヘキサン相と水相との界面でアセチルETGとCoAとが化学的チオエステル交換反応し、ヘキサン相中にETGが遊離するとともに水相にアセチルCoAが生成する。続いて、水相において、アセチルCoAとHAとがCoAトランスフェラーゼによってモノマー生成反応し、水相中に酢酸が遊離するとともにHAにCoAが付加してHA−CoA誘導体が生成する。最後に、水相において、HA−CoAがPHAシンターゼによって重合反応し、CoAが水相中に遊離するとともに高分子化合物が製造される。
重合反応時に水相中に遊離したCoAは再び化学的チオエステル交換反応において再利用するため、CoAのリサイクリングが生じて連続的にアセチルCoAを供給する。また、モノマー生成反応時に水相中に遊離した酢酸を抽出して、アセチルETGの原料物質として再利用することもできる。
次に、本実施形態において、酢酸とETGとを用いてアセチルCoAを生成し、3HB−CoA誘導体の生成を経てP(3HB)を製造する場合について図4、図6(2)、および図7(2)を参照しつつ説明する。
まず、酢酸からチオエステル化反応によって、一段階でアセチルETGを生成する方法について説明する。図6(2)に示すように、この反応段階では、酢酸をジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)が存在するジクロロメタン(CHCl)中でETGと反応させることにより、一段階でアセチルETGを生成する。
次に、本実施形態において、アセチルETGおよび3HBからP(3HB)を同一反応系内において製造する製造方法について説明する。つまり、これは、図4に示すように、化学的チオエステル交換反応と、モノマー成分である3HBを3HB−CoA誘導体に変換するモノマー生成反応と、重合反応によりP(3HB)を生成する重合反応とを組み合わせて、同一反応系内において同時に行う製造方法である。
この製造方法では、ヘキサンを用いた有機溶媒相にアセチルETGを溶解し、水相であるリン酸水素ナトリウム水溶液にCoAと、3HBと、PCTと、PHAシンターゼ(PhaC)とを加えて、有機溶媒相と水相との界面で化学的チオエステル交換反応をさせ、かつ水相でモノマー生成反応および重合反応をさせることにより、P(3HB)を製造する。この時の反応経路を図7(2)に示す。
続いて、本実施形態において、酢酸とETGとを用いてアセチルCoAを生成し、3HB−CoA誘導体とLA−CoA誘導体との生成を経てP(3HB−co−LA)を製造する場合について図5、図6(2)、および図14を参照しつつ説明する。
まず、酢酸からチオエステル化反応によって、一段階でアセチルETGを生成する方法について説明する。図6(2)に示すように、この反応段階では、酢酸をジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)が存在するジクロロメタン(CHCl)中でETGと反応させることにより、一段階でアセチルETGを生成する。
次に、本実施形態において、アセチルETG、3HB、およびLAからP(3HB−co−LA)を同一反応系内において製造する製造方法について説明する。つまり、これは、図5に示すように、化学的チオエステル交換反応と、モノマー成分である3HBとLAとを各々3HB−CoA誘導体とLA−CoA誘導体に変換するモノマー生成反応と、重合反応によりP(3HB−co−LA)を生成する重合反応とを組み合わせて、同一反応系内において同時に行う製造方法である。
この製造方法では、ヘキサンを用いた有機溶媒相にアセチルETGを溶解し、水相であるリン酸水素ナトリウム水溶液にCoAと、3HBと、LAと、PCTと、PhaCとを加えて、有機溶媒相と水相との界面で化学的チオエステル交換反応をさせ、水相でモノマー生成反応および重合反応をさせることにより、P(3HB−co−LA)を製造する。このときの反応経路を図14に示す。
なお、本実施形態において、有機溶媒相と水相との用量の比率は、有機溶媒相中のアセチルETGから目的産物であるP(3HB)、P(3HB−co−3HP)、またはP(3HB−co−LA)を製造できれば特に限定されないが、より迅速かつ高生産できるという点から、有機溶媒相に存在する前記アセチルETGと水相に存在するモノマー成分とが濃度(mmol/mL)比1対1ないし10対1であることが好ましい。
また、本実施形態において、PCTは、アセチルCoAからCoA基を3HP、3HB、またはLAに転移することができる酵素を有する微生物由来であれば特に限定されないが、本実施形態では、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)、特にクロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)JCM1430を用いている。
本実施形態において、PHAシンターゼは、3HB−CoA誘導体、3HP−CoA誘導体、またはLA−CoA誘導体のいずれかを重合してP(3HB)、P(3HB−co−3HP)、またはP(3HB−co−LA)を合成することのできる酵素を有する微生物由来であれば特に限定されないが、例えば、ラルストニア(Ralstonia)属に属する微生物由来やPseudomonas属由来のPHA合成酵素を挙げることができ、詳細には、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来やPseudomonas sp.61−3由来のPHA合成酵素を挙げることができる。なお、本実施形態においては、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)ATCC17699由来のPHA合成酵素、および配列番号2で示されるPHA合成酵素を好適な酵素として用いている。
次に、本実施形態における高分子化合物の製造方法について具体的な実施例を説明する。
実施例1では、酢酸を出発原料としてアセチルチオエステルを生成し、P(3HB)を製造する方法を示す。
(1)アセチルチオエステルの生成
まず、酢酸を原料として、アセチルTPとアセチルETGの2種類のアセチルチオエステルを生成した(Yuan, W; Jia, Y.; Tian, J.; Snell, K. D.; Muh, U.; Sinskey, A. J.; Lambalot, R. H.; Walsh, C. T.; Stubbe, J. Arch. Biochem, Biophys. 2001, 394, 87-98.)。アセチルTPの生成過程を図6(1)に、アセチルETGの生成過程を図6(2)に示す。
得られた各物質を薄層クロマトグラフィー{TLC、メルク(Silica Gel F254)}を用いてエステル化されていることを確認した。また、全体構造に関しては、核磁気共鳴法(NMR)を用いた1H−NMRスペクトルによって確認した。NMR測定は、Bruker社製のMSL400分光器を用い、周波数400MHzにて行った。
(2)PHAシンターゼ(PhaC)
次に、PhaCの過剰発現系を構築して精製し、精製PhaCを得た(Satoh, Y.; Tajima, K.; Tannai, H.; Munekata, M. J. Biosci. Bioeng. 2003, 95, 335-341.)。
まず、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)ATCC17699のゲノムDNAを制限酵素EcoRIとSmaI(いずれもTAKARA)によって処理し、pUC18(TAKARA)を用いてPhaC遺伝子を含む約5kbpの遺伝子断片をクローニングし、プラスミドpTI305を取得した。
次に、pTI305における約1.6kbpのNotI/StuI断片と、pTI305をテンプレートして下記条件にてPCRにより増幅した140bpのBamHIサイトとSmaIサイトを有する断片と、BamHIとSmaIで処理したベクターpQE30(キアゲン)との3つを混合してライゲーションした。この反応液を用いて大腸菌JM109を形質転換し、形質転換体からPhaC遺伝子を有するプラスミドpQERECを得た。このプラスミドを大腸菌BL21に導入し、PhaC調製用の大腸菌を作製した。
前記PCRは、プライマーとして、
センスプライマーaaggatccatggcgaccggcaaaggcgcgg(配列番号3)
アンチセンスプライマーtgcagcggaccggtggcctcggcc(配列番号4)
を用いて、94℃で45秒、58℃で30秒、72℃で60秒の反応を1サイクルとして30サイクル行った。
得られたPhaC調製用の大腸菌を、アンピシリンを含む1000mLのLB培地中において、30℃で16時間培養し、菌体内にPhaCを蓄積させ、超音波破砕によって菌体を破壊した後、菌体内の可溶性タンパク質を回収した。この回収したタンパク質をNi−NTAアガロースゲルカラム(キアゲン)に供し、(6×His)−PhaCをワンステップで精製した。
(3)PCT
次に、プラスミドpCCPPを大腸菌BL21に導入して得られた形質転換体を用いて、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)由来のPCTを生産し、PhaCと同様な手法により精製PCTを得た。
精製PCTの活性測定を、モノマー生成反応とP(3HB)重合反応とを組み合わせて行った。つまり、100mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)、2mMのアセチルCoA、200mMの3HB、PhaC、PCTを含む溶液0.5mLを調製し、P(3HB)の生成に伴うCoA濃度の上昇を観測することで、PCTの活性を確認した。
(4)P(3HB)の製造
そして、前記にて得られたアセチルTPまたはアセチルETGのいずれかと、PhaCと、PCTとを用いて、P(3HB)を製造した。アセチルTPを用いた場合の反応過程を図7(1)に、アセチルETGを用いた場合の反応過程を図7(2)に示す。
まず、水相反応溶液として、100mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)と、2.0mMのCoAと、10mMの(R)−3HBと、25U(1mg)のPCTとを含む溶液5mLを調製した。次に、有機溶媒相反応溶液として、10mMのアセチルTPまたは10mMのアセチルETGを含むヘキサン溶液5mLを調製した。そして、スクリューキャップ付き試験管に水相反応溶液を注ぎ込んだ後、有機溶媒相反応溶液を重相し、最後に5.4U(0.2mg)のPhaCを水相に添加して30℃で48時間反応させた。反応終了後に有機溶媒相を除去し、5mLのクロロホルムを加え、70℃で3時間生成物の抽出を行った。抽出液をフィルター(アドバンテック東洋;0.2μmPTFEメンブラン)にてろ過し、50mLのメタノールを加えて4℃で一晩放置した後、生成した沈殿物をフィルター(同前)にてろ過して回収した。真空乾燥後収量を測定し、アセチルTPにおいて0.2mg、およびアセチルETGにおいて2.9mgの生成物を得た。
得られた各生成物の構造確認をNMR(同前)によって行い、生成物がP(3HB)であることを確認した。アセチルETGを用いた場合の1H−NMRスペクトルを図8に示す。
次に、有機溶媒相反応溶液500μL中のアセチルETG濃度を1M、水相反応溶液5mL中の(R)−3HB濃度を100mMとして前記同様に実験を行い、6.6mgの生成物を得た。得られた生成物の構造確認をNMR測定によって行い、生成物がP(3HB)であることを確認した。その1H−NMRスペクトルを図9に示す。
また、得られた化合物の分子量をゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC測定方法は、tandem TSKgel SuperHZM−Hカラム(東ソー;6.0nmI.D.×150mm)を用い、移動相はクロロホルムを用いて流速0.3mL/分にて測定し、純正のポリスチレンを用いて検量線を作成した。算出された重量平均分子量(Mw)は8.5×10、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
本実施例において、最終的に得られたP(3HB)が6.6mgであったのに対し、特許文献4(再表2004−065609号公報)においては、最終的に得られるP(3HB)が1.8mgであることから、本実施例では、特許文献4に比べて収率が約4倍であることが分かった。
この結果から、酢酸からアセチルチオエステルを生成する段階と、アセチルチオエステルと遊離のヒドロキシ酸からP(3HB)を合成する段階との、わずか2つの反応工程によって最終目的物質であるP(3HB)を高収率で得ることができることが明らかとなった。
また、酢酸からアセチルCoAを生成するまでの過程において、TPにより生成したアセチルTPを用いることも可能ではあるが、TPは毒性が高いため、ETGにより生成したアセチルETGを用いてアセチルCoAを生成することが好適であるといえる。さらに、精製酵素や高価なATPを用いることなく、安価な酢酸からアセチルCoAを生成することができる点においても、工業化に優れているといえる。
実施例2では、アセチルチオエステルの種類によるP(3HB)の重合反応速度および製造量の検討を行った。
アセチルチオエステルは、アセチルTPとアセチルETGとを用いて行った。ここで、P(3HB)の製造過程では、P(3HB)の重合反応により反応溶液が白濁して沈殿が生じ、重合反応終了時には反応溶液が透明になり白沈が残る。このため、肉眼および反応溶液の濁度測定によって、P(3HB)の製造進度を知ることができる。そこで、P(3HB)の製造進度を、吸光光度計にて反応溶液の濁度を測定することにより行った。
具体的には、100mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)と、10mMの(R)−3HBと、2.0mMのCoAと、7.5U(0.3mg)のPCTとを含む水相反応溶液1.5mLを調製し、これに10mMのアセチルTPまたはアセチルETGを含むヘキサン溶液である有機溶媒相反応溶液1.5mLを重相した。最後に1.6U(0.06mg)のPhaCを水相反応溶液に添加して30℃で反応させて、波長600nmで吸光光度計(日立ハイテクノロジーズ)にて反応溶液の濁度を測定した。その結果を図10に示す。
図10に示すように、アセチルETG(図10中の●)を用いた場合は反応溶液の吸光度が上昇し、320分で0.78に達した後、低下していくことが示された。肉眼では、60分後には白濁し始めて、120分後には白沈殿が観察された。一方、アセチルTP(図10中の○)を用いた場合は、500分経過した後でもピークに達することなく、反応溶液の吸光度は0.2以下であった。よって、アセチルTPに比べてアセチルETGは、反応が速く進み、生成産物の収量が高いことが明らかとなった。
TPはPhaCの活性阻害を有する等、毒性の高いことが知られている。アセチルETGはアセチルTPと異なり、TPを使用することなく生成されるだけでなく、P(3HB)を迅速かつ高収率に合成することができ、工業化に好適であることが本実施例により明らかとなった。
実施例3では、有機溶媒相中のアセチルETGと水相中の(R)−3HBとの濃度比率を変化させてP(3HB)の合成反応速度の検討を行った。
まず、有機溶媒相反応溶液として、0.5mモルのアセチルETGを含むヘキサン溶液を調製し、水相反応溶液として、0.5mモルの(R)−3HBと、100mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)と、2.0mMのCoAと、7.5U(0.3mg)のPCTとを含む溶液1.5mLを調製した。この有機溶媒相反応溶液中のアセチルETG量と、水相反応溶中の(R)−3HB量とを一定にしたまま、有機溶媒相反応溶液の溶量を変化させ、有機溶媒と水相の反応溶液を容量比率0.1対1(図11の□)、0.5対1(図11の▲)、1対1(図11の●)で重相した系を作製した。そして、1.6U(0.06mg)のPhaCを水相に添加して30℃で反応させた。各系の反応溶液の濁度を波長600nmで吸光光度計にて測定した。
その結果、図11に示すように、吸光度がピークに到達する時間とピークの吸光度は、有機溶媒相の容量比率が高くなるにつれて、長くまたは低くなることが示された。そして、有機溶媒相と水相の比率が0.1対1(図11の□)の系では、反応開始10分後には白濁し始めて60分後には吸光度がピークに到達しており、他の系に比べて吸光度がピークに到達する時間が最も短く、吸光度も最も高い値が示された。
この結果から、有機溶媒相と水相との容量比率が1対1ないし0.1対1である場合、つまり、アセチルETGと(R)−3HBとの濃度(mmol/L)比が1対1ないし10対1である場合において、P(3HB)を迅速かつ高収率に合成することができ、工業化に非常に優れていることが示され、特にモル濃度比が10対1である場合がもっとも好適であることが明らかとなった。
実施例4では、実施例1の(1)〜(3)で得られたアセチルETGと、PhaCと、PCTとを用いて、P(3HB−co−3HP)を製造した。この反応過程を図12に示す。
まず、水相反応溶液として、100mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)と、2.0mMのCoAと、50mMの3HPまたは50mMの(R)−3HBと、4.3U(2.5mg)のPCTとを含む溶液5mLを調製した。次に、有機溶媒相反応溶液として、1.0MのアセチルETGを含むヘキサン溶液500μLを調製した。そして、スクリューキャップ付き試験管に水相反応溶液を注ぎ込んだ後、有機溶媒相反応溶液を重相し、最後に5U(2.5mg)のPhaCを水相に添加して、30℃で24時間反応させた。反応終了後に有機溶媒相を除去し、5mLのクロロホルムを加え、70℃で3時間生成物の抽出を行った。抽出液をフィルター(アドバンテック東洋;0.2μmPTFEメンブラン)にてろ過し、50mLのメタノールを加えて4℃で一晩放置した後、生成した沈殿物をフィルター(同前)にてろ過して回収した。真空乾燥の収量を測定し、生成物3.2mgを得た。
得られた各生成物の構造確認をNMRによって行い、P(3HB−co−3HP)であることを確認した。その1H−NMRスペクトルを図13に示す。
この結果から、本実施形態に係る製造方法は、P(3HB)のみならずP(3HB−co−3HP)の製造が可能であることが明らかとなった。
実施例5では、実施例1の(1)、(3)で得られたアセチルETGとPCT、および以下の方法で調製したPhaCとを用いて、P(3HB−co−LA)を製造した。この反応過程を図14に示す。
(1)PhaC
PhaCの過剰発現系を構築して精製し、精製PhaCを得た(Satoh, Y.; Tajima, K.; Tannai, H.; Munekata, M. J. Biosci. Bioeng. 2003, 95, 335-341.)。
まず、特許文献WO2003−100055号公報に開示されているシュードモナスsp.(Pseudomonas sp.)61−3由来のPhaCを示す配列番号2のアミノ酸配列について、これをコードするDNA断片(配列番号1)を化学的に合成した。このDNA断片を、制限酵素SacI(TAKARA)を用いて処理したpUC19(TAKARA)に挿入し、プラスミドpUC1dmを取得した。
次に、pUC1dmをテンプレートとし、下記条件にてPCRにより増幅した1.6kbpのBamHIサイトとHindIIIサイトとを有する断片を、BamHIとHindIIIで処理したベクターpQE30(キアゲン)にライゲーションした。この反応液を用いて大腸菌JM109を形質転換し、形質転換体から前記PhaC遺伝子を有するプラスミドpQC1dmを得た。このプラスミドを大腸菌BL21に導入し、PhaC調製用の大腸菌を作製した。
前記PCRは、プライマーとして、
センスプライマーccggatccagtaacaagaatagcgatgacttga(配列番号5)
アンチセンスプライマーtttaagcttaacgttcatgcacatacgtg(配列番号6)
を用いて、94℃で60秒、55℃で30秒、72℃で100秒の各反応を1サイクルとして30サイクル行った。
得られたPhaC調製用の大腸菌を、アンピシリンを含む1000mLのLB培地中において30℃で3時間培養後、IPTG(イソプロピル−β−D−チオ-ガラクトピレノシド)を終濃度0.25mMになるように添加し、さらに30℃で16時間培養した。菌体内にPhaCを蓄積させ、超音波破砕によって菌体を破壊した後、菌体内の可溶性タンパク質を回収した。この回収したタンパク質をNi−NTAアガロースゲルカラム(キアゲン)に供し、(6×His)−PhaCをワンステップで精製した。
(2)P(3HB−co−LA)の製造
まず、水相反応溶液として、100mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)と、1.0mMのCoAと、50mMのLA(D−乳酸)と、50mMの(R)−3HBと、50U(2.5mg)のPCTとを含む溶液5mLを調製した。次に、有機溶媒相反応溶液として、100mMのアセチルETGを含むヘキサン溶液5mLを調製した。そして、スクリューキャップ付き試験管に水相反応溶液を注ぎ込んだ後、有機溶媒相反応溶液を重相し、0.05U(2.5mg)のPhaCを水相に添加して、30℃で72時間反応させた。反応終了後に有機溶媒相を除去し、5mLのクロロホルムを加え、70℃で3時間生成物の抽出を行った。抽出液をフィルター(アドバンテック東洋;0.2μmPTFEメンブラン)にてろ過し、50mLのメタノールを加えて4℃で一晩放置した後、生成した沈殿物をフィルター(同前)にてろ過して回収した。真空乾燥の収量を測定し、生成物0.1mgを得た。
得られた各生成物の構造確認をNMRによって行い、P(3HB−co−LA)であることを確認した。その1H−NMRスペクトルを図15に示す。
この結果から、本実施形態に係る製造方法は、P(3HB)およびP(3HB−co−3HP)のみならずP(3HB−co−LA)の製造が可能であることが明らかとなった。
実施例6では、前記実施例1〜4で実施されている、水相−有機溶媒相である二相系を用いた高分子化合物の製造方法が、(R)−3HBや3HP以外のヒドロキシ酸または不飽和脂肪酸についても適応可能であることをさらに調べるために、PCTの基質特異性の検討を行った。PCTは実施例1(3)で得られたクロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)由来のものを使用した。
実施例1(3)の方法において、(R)−3HBに代えて種々のヒドロキシ酸または不飽和脂肪酸を添加し、PhaCを添加しない状態で24時間反応を行った。得られた化合物をHPLC(島津製作所)によって確認した。HPLC測定方法は、Mightysil RP−18 GP Aquaカラム(関東化学;4.6nmI.D.×150mm)を用い、移動相は、A液:10wt%メタノール含有50mM NaHPO溶液、B液:40wt%メタノール含有50mM NaHPO溶液とし、B液の割合を、0%(0〜5分)、0→20%(5〜10分)、20→100%(15〜17.5分)、100%(17.5〜22.5分)、100→0%(22.5〜25分)、0%(25〜30分)とした。流速は0.7mL/分で、検出器は紫外可視分光光度計を使用した。
その結果、PCTの基質、つまりモノマー成分となるヒドロキシ酸または不飽和脂肪酸として、LA、3HP、3HB、4HB、クロトネート、ペンテネート、セリン、グリコレート、アクリレートが適応可能であることが示された。
なお、本実施例においてはクロストリジウム・プロピオニカム由来のPCTを使用したが、他菌種由来のPCTを使用した場合には、本実施例以外のヒドロキシ酸も適応可能となると考えられる。つまり、ヒドロキシ酸、PCTの由来菌種、およびPHAシンターゼの由来菌種を適宜選択することにより、所望のモノマー組成を有する高分子化合物を製造することが可能である。
以上のように、本実施形態によれば、
1.従来の合成法に比べて、迅速かつ高収率で高分子化合物を製造することができる、
2.酢酸からアセチルチオエステルを生成する段階と、アセチルチオエステルと遊離のヒドロキシ酸とから高分子化合物を合成する段階との、わずか2つの簡便な反応工程によって高分子化合物を得ることができる、
3.安価な酢酸から精製酵素や高価なATP、毒性の高いチオフェノールを使用することなくアセチルCoAを生成するとともに、高分子化合物を迅速かつ高収率に合成することができる、
4.選択できるモノマー成分の幅が広く、所望の組成を有する高分子化合物を製造することができる
等、工業化に非常に優れた製造方法で生分解性を有する高分子化合物を製造することができる。
なお、本発明に係る高分子化合物の製造方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
アセチルチオエステルからアセチルCoAを生成し、モノマー前駆体−CoA誘導体の生成を経て高分子化合物を製造する反応経路を示す図である。 アセチルチオエステルからアセチルCoAを生成し、モノマー前駆体−CoA誘導体の生成を経て高分子化合物を同一系内で製造する反応経路を示す図である。 酢酸からアセチルチオエステルを生成するチオエステル反応を示す図である。 アセチルETGからアセチルCoAを生成し、モノマー前駆体−CoA誘導体の生成を経てP(3HB)を同一系内で製造する反応経路を示す図である。 アセチルETGからアセチルCoAを生成し、モノマー前駆体−CoA誘導体の生成を経てP(3HB−co−LA)を同一系内で製造する反応経路を示す図である。 実施例1において、(1)酢酸からアセチルTPを生成する反応と、(2)酢酸からアセチルETGを生成する反応とを示す図である。 実施例1において、(1)アセチルTPからアセチルCoAを生成し(R)−3HB−CoAの生成を経てP(3HB)を製造する反応経路と、(2)アセチルETGからアセチルCoAを生成し(R)−3HB−CoAの生成を経てP(3HB)を製造する反応経路とを示す図である。図中のnは、1以上の整数である。 実施例1において、モノマー前駆体と等濃度のアセチルETGを用いることによって得られた化合物のNMR測定結果を示す図である。 実施例1において、モノマー前駆体の10倍濃度のアセチルETGを用いることによって得られた化合物のNMR測定結果を示す図である。 実施例2における、アセチルチオエステルの種類によるP(3HB)の合成反応速度および合成量の測定結果を示す図である。 実施例3において、アセチルETGを含む有機溶媒相と(R)−3HBを含む水相との容量比率の違いによるP(3HB)の製造反応速度および製造量の測定結果である。 実施例4において、アセチルETGからアセチルCoAを生成し(R)−3HB−CoAまたは3HP−CoAの生成を経てP(3HB−co−3HP)を製造する反応経路を示す図である。図中のxおよびyは、1以上の整数である。 実施例4において得られた化合物のNMR測定結果を示す図である。 実施例5において、アセチルETGからアセチルCoAを生成し(R)−3HB−CoAまたはLA−CoAの生成を経てP(3HB−co−3LA)を製造する反応経路を示す図である。図中のxおよびyは、1以上の整数である。 実施例5において得られた化合物のNMR測定結果を示す図である。

Claims (14)

  1. 高分子化合物を製造する方法であって、
    アセチルチオエステルとCoAとからアセチルCoAを生成する化学的チオエステル交換反応と、
    少なくとも一のモノマー前駆体と前記アセチルCoAとからモノマー前駆体−CoA誘導体に変換するモノマー生成反応と、
    前記モノマー前駆体−CoA誘導体を重合して前記モノマーユニットからなる前記高分子化合物を生成する重合反応と
    を有する高分子化合物の製造方法。
  2. 請求項1において、前記モノマー前駆体がヒドロキシ酸であり、かつヒドロキシ酸のユニットからなる高分子化合物を生成する高分子化合物の製造方法。
  3. 請求項2において、前記ヒドロキシ酸がヒドロキシアルカノエートおよびセリンの少なくともいずれかである高分子化合物の製造方法。
  4. 請求項3において、前記ヒドロキシアルカノエートが、乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、および4−ヒドロキシブチレートからなる群から少なくとも一つ選ばれる高分子化合物の製造方法。
  5. 請求項3または請求項4において、前記乳酸がD−乳酸である高分子化合物の製造方法。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかにおいて、前記化学的チオエステル交換反応が、前記重合反応においてモノマー前駆体−CoA誘導体から遊離するCoAと前記アセチルチオエステルとからアセチルCoAを生成する反応である高分子化合物の製造方法。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかにおいて、前記アセチルチオエステルがチオール化合物と酢酸とを用いたチオエステル化反応によって生成する高分子化合物の製造方法。
  8. 請求項7において、前記酢酸が、前記モノマー生成反応において遊離する酢酸である高分子化合物の製造方法。
  9. 請求項7または請求項8において、前記チオール化合物がエチルチオグリコレート(ETG)である高分子化合物の製造方法。
  10. 請求項1から請求項9のいずれかにおいて、前記モノマー生成反応に用いられる酵素がアセチルCoAを基質とする酵素であることを特徴とする高分子化合物の製造方法。
  11. 請求項1から請求項10のいずれかにおいて、前記化学的チオエステル交換反応と前記モノマー生成反応と前記重合反応とが一の反応系内にある高分子化合物の製造方法。
  12. 請求項11において、前記一の反応系が、前記アセチルチオエステルを含有する有機溶媒相と、前記CoAと前記モノマー前駆体と前記モノマー生成反応を触媒する酵素と前記重合反応を触媒する酵素とを含有する水相とからなる高分子化合物の製造方法。
  13. 請求項12において、前記アセチルチオエステルと前記モノマー前駆体とのモル濃度の比が、1対1ないし10対1である高分子化合物の製造方法。
  14. 請求項1から請求項13のいずれかにおいて、前記高分子化合物の分子量分布が1ないし3である高分子化合物の製造方法。
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