JP2009132156A - 保持シール材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明では、厚さを厚くしても、周長差に起因した亀裂が生じ難い保持シール材を提供することを目的とする。
【解決手段】第1の無機繊維を含む第1のマットと、第2の無機繊維を含む第2のマットの、少なくとも2つのマットを積層することによって構成された保持シール材であって、前記第1の無機繊維の平均繊維長は、前記第2の無機繊維の平均繊維長よりも長いことを特徴とする保持シール材。
【選択図】図1

Description

本発明は、シート材、そのようなシート材の製造方法、そのようなシート材を保持シール材として備える排気ガス処理装置およびその製造方法に関する。
自動車の台数は、今世紀に入って飛躍的に増加しており、それに伴って、自動車の内燃機関から排出される排気ガスの量も急激な増大の一途を辿っている。特にディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる種々の物質は、汚染を引き起こす原因となるため、現在では、世界環境にとって深刻な影響を与えつつある。
このような事情の下、従来より各種排気ガス処理装置が提案され、実用化されている。一般的な排気ガス処理装置は、エンジンの排気ガスマニホールドに連結された排気管の途上に、例えば金属等で構成されるケーシングを設け、その中にセル壁により区画された多数のセルを有する排気ガス処理体を配置した構造となっている。これらのセルは、ハニカム構造で構成されることが多く、特にこの場合、排気ガス処理体は、ハニカム構造体とも呼ばれている。排気ガス処理体の一例としては、触媒担持体、およびディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等の排気ガスフィルタがある。例えばDPFの場合、上述の構造により、排気ガスが各セルを通って排気ガス処理体を通過する際に、セル壁に微粒子(パティキュレート)がトラップされ、排気ガス中から微粒子を除去することができる。排気ガス処理体の構成材料は、金属や合金の他、セラミック等である。セラミックからなる排気ガス処理体の代表例としては、コーディエライト製のハニカムフィルタが知られている。最近では、耐熱性、機械的強度、化学的安定性等の観点から、多孔質炭化珪素焼結体が排気ガス処理体の材料として用いられている。
このような排気ガス処理体とケーシングの間には、通常保持シール材が設置される。保持シール材は、車両走行中等における排気ガス処理体とケーシング内面の当接による破損を防ぎ、さらにケーシングと排気ガス処理体との隙間から排気ガスが漏洩することを防止するために用いられる。また、保持シール材は、排気ガスの排圧により排気ガス処理体が脱落することを防止する役割を有する。さらに排気ガス処理体は、反応性を維持するため高温に保持する必要があり、保持シール材には断熱性能も要求される。これらの要件を満たす部材としては、アルミナ系繊維等の無機繊維からなる保持シール材がある。
この保持シール材は、排気ガス処理体の開口面を除く外周面の少なくとも一部に巻回され、例えば、両端部の把持合わせ部同士を嵌合させ、さらにテーピング等によって排気ガス処理体と一体固定化され、利用される。その後、この一体品は、ケーシング内に収容されて排気ガス処理装置が構成される。
なお、排気ガスの高温高圧化が進む中で、保持シール材には、以下の理由により、更なる断熱性の向上が求められている。(i)排気ガス処理体からケーシングに伝達する熱により、ケーシングが熱膨張することによって生じる、ケーシングと排気ガス処理体の間隔の増加に起因した、保持シール材の保持力低下の防止、(ii)ケーシング外面に接続された付属品(計装品等)の熱による劣化の防止、(iii)排気ガス処理体としてDPF等を使用している場合に実施される、再生処理(捕獲したパティキュレートを高温燃焼させ、使用済み排気ガス処理体の再利用を可能にする処理)の効率化など。
そこで、これらの対処方法として、保持シール材の断熱性をさらに向上させるため、排気ガス処理体とケーシングの間の間隔をより広くしておき、保持シール材を厚く形成することが考えられる。しかしながら、このような厚い保持シール材を排気ガス処理体に巻回した場合、保持シール材には、従来よりも大きな周長差(外周長と内周長の差)が生じる。このため、保持シール材の外周側の表面(排気ガス処理体と接する側とは反対の表面)において、亀裂が生じやすくなる。このような亀裂は、未処理排気ガスの漏洩につながる可能性がある。
そこで、このような周長差に起因した亀裂を防止するため、保持シール材の排気ガス処理体と接する側(すなわち内周側)の表面に、多数の溝を設けることが提案されている(特許文献1)。この方法では、保持シール材に設置された溝の存在によって、周長差の影響が緩和され、未処理排気ガスの漏洩を抑制することができることが開示されている。
特許第3072281号公報
しかしながら、特許文献1のような保持シール材では、前述の亀裂の発生を防止するためには、溝の位置、形状および/または寸法等を、実際に巻回される排気ガス処理体に合わせて最適化する必要がある。しかしながら、実際の排気ガス処理体には、排気ガス処理装置の用途および設置対象等に合わせて、様々な仕様(形状、寸法等)のものが使用されている。従って、特許文献1の技術では、各種排気ガス処理体毎に、溝の寸法形状等を変えた保持シール材を適宜製造する必要が生じ、生産性が著しく低下してしまう。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、厚さを厚くしても、周長差による亀裂が生じにくく、前述のような生産性低下の問題も生じない保持シール材を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような保持シール材を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明では、第1の無機繊維を含む第1のマットと、第2の無機繊維を含む第2のマットの、少なくとも2つのマットを積層することによって構成された保持シール材であって、
前記第1の無機繊維の平均繊維長は、前記第2の無機繊維の平均繊維長よりも長いことを特徴とする保持シール材が提供される。
ここで、前記第1の無機繊維と前記第2の無機繊維は、同じ材質であっても良い。
また、前記第1の無機繊維の平均繊維長は、20mm〜120mmの範囲であっても良い。
また、前記第2の無機繊維の平均繊維長は、0.5mm〜10mmの範囲であっても良い。
また、前記第1のマットおよび/または第2のマットは、さらに結合材を有しても良い。
また、当該保持シール材は、前記第1のマットと第2のマットの界面に、界面層を有しても良い。
また、前記界面層の厚さは、約0.05mm〜2mmの範囲であっても良い。
また、当該保持シール材の厚さは、6mm〜20mmの範囲にあっても良い。
また、本発明は、少なくとも2つのマットが積層された保持シール材の製造方法であって、
第1の無機繊維を含む第1のマットを提供する第1のステップと、
前記第1の無機繊維を含む第1のマットの上に、第2の無機繊維を含む第2のマットを積層する第2のステップと、
を有し、
前記第1の無機繊維の平均繊維長は、前記第2の無機繊維の平均繊維長よりも長いことを特徴とする保持シール材の製造方法が提供される。
ここで、前記第2のステップは、前記第1のマットの上に、前記第2のマットを直接製作するステップを有しても良い。
また、前記第2のステップは、前記第2のマットを単独で製作してから、前記第1のマットと前記第2のマットを積層させるステップを有しても良い。
さらに、前記第2のステップは、前記第1のマットと前記第2のマットの界面を、接着剤および/または縫いつけにより接合させるステップを有しても良い。
また、前記第1のマットは、ニードリング法で製作されても良い。
また、前記第2のマットは、抄造法で製作されても良い。
本発明のシート材を排気ガス処理装置の保持シール材として使用することにより、周長差に起因して保持シール材の外周面に生じる亀裂を抑制することができる。また、この効果は、排気ガス処理体の形状寸法や、排気ガス処理装置の仕様とは無関係に、等しく発現するため、各種排気ガス処理装置の仕様に合わせて、シート材を適宜製造する必要はなく、製造時の生産性を損なうことがないという効果が得られる。
本発明によるシート材の形状の一例である。 本発明によるシート材を排気ガス処理体とともに、ケーシング内に組み付けるときの状態を示す概念図である。 無機繊維の繊維長を測定するために撮影したSEM写真の一例である。 本発明の排気ガス処理装置の一構成例を示す図である。 本発明によるシート材を製造するためのフロー図である。 「直接積層法」によって製作された、本発明のシート材の断面を概略的に示す図である。 本発明による排気ガス処理装置を製造するためのフロー図である。 圧入方式により、被覆排ガス処理体をケーシング内に設置する方法を模式的に示した図である。 クラムシェル方式により、被覆排ガス処理体をケーシング内に設置する方法を模式的に示した図である。 巻き締め方式により、被覆排ガス処理体をケーシング内に設置する方法を模式的に示した図である。 サイジング方式により、被覆排ガス処理体をケーシング内に設置する方法を模式的に示した図である。 実施例1に係るシート材の巻き付け試験後の写真である。 比較例1に係るシート材の巻き付け試験後の写真である。
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
図1には、本発明によるシート材の形態の一例を示す。ただし本発明のシート材は、図1の形状に限られるものではない。また図2には、本発明に係るシート材を保持シール材として使用した排気ガス処理装置の分解構成図を示す。
本発明によるシート材30を、触媒担持体等の排気ガス処理体20に巻回し、排気ガス処理装置の保持シール材24として使用する場合、図1に示すように、シート材30の巻回方向(X方向)と垂直な両端面70、71には、1組の嵌合凸部50と嵌合凹部60が設けられる。このシート材30が排気ガス処理体20に巻き付けられた際には、図2に示すように、嵌合凸部50と嵌合凹部60が嵌合され、シート材30が、排気ガス処理体20に固定される。その後、シート材30が巻回された排気ガス処理体20は、例えば圧入方式により、金属等で構成された筒状のケーシング12内に圧入され、排気ガス処理装置10が構成される。
本発明によるシート材30は、無機繊維を主体に構成されているが、後述のように、さらに結合材を含んでも良い。
ここで、本発明のシート材30は、少なくとも2種類のマットを積層して構成され、それぞれのマットは、平均繊維長が異なる無機繊維を含むことを特徴とする。例えば、図1においては、本発明のシート材30は、第1のマット82と第2のマット84の、2つのマットを積層して構成されており、第1のマット82に含まれている無機繊維の平均繊維長は、第2のマット84に含まれている無機繊維の平均繊維長よりも長くなっている。なお、以降、第1のマット82を「長繊維マット」82と呼び、第2のマット84を「短繊維マット」84と呼ぶことにする。
次に、このように構成された本発明によるシート材30によって得られる特徴的効果を説明する。
通常、シート材(保持シール材)を排気ガス処理体に巻回した場合、シート材の外周(LO)と内周(LI)の周長差(L(=LO−LI))によって、シート材の外周側には、引張応力が生じる。また特に、この周長差の影響は、シート材の厚さが厚くなるほど顕著になる。従って、厚いシート材では、シート材を排気ガス処理体に巻回す際に、外周部に亀裂が生じる可能性が高くなる。また、シート材にこのような亀裂が生じると、排気ガスが排気ガス処理体に導入されず、この亀裂を通って未処理のまま、排気ガス処理装置から漏洩してしまうおそれがある。この問題を解消するため、巻回時にシート材の内周側となる表面(内表面側)に、巻回方向に対して垂直な複数の溝を予め形成しておき、これらの溝により、周長差の影響を緩和する方法がある。しかしながら、この方法では、前述の効果を発揮させるためには、シート材に設けられる溝の寸法形状等を、使用される排気ガス処理体の仕様に合わせて、その都度最適化させる必要があり(例えば、通常は、溝の幅とそのピッチは、シート材の内表面側に形成される各溝の幅の総和が、前述の周長差Lに等しくなるように設計される。また、溝の深さは、シート材の厚さに合わせて調整する必要があるなど)、普遍的な効果が得られにくい上、製造時のシート材の生産性が著しく低下してしまうという問題がある。
これに対して、本発明によるシート材は、長繊維マット82と短繊維マット84の、2つのマットを積層して構成されている。一般に、平均繊維長の大きな無機繊維を含むマットは、平均繊維長の小さな無機繊維を含むマットに比べて、引張強度が高い。従って、シート材30の長繊維マット82の面を外周側として、排気ガス処理体20にシート材30を巻回すことにより、周長差の影響による亀裂の発生を簡単に抑制することが可能になる。また、本発明によるシート材30では、長繊維マット82の面を外周側として、排気ガス処理体20にシート材30を巻回すことにより、常時そのような効果が発揮されるため、前述のような、一品製作的な方法でシート材に最適仕様の溝を形成する方法とは異なり、製造時にシート材の生産性の低下を招くこともない。
以上のように、本発明によるシート材30では、排気ガス処理体20に巻回した際の、周長差に起因する外周側の亀裂発生を抑制することが可能となる。従って、本発明によるシート材を、保持シール材として使用した排気ガス処理装置では、保持シール材側からの未処理排気ガスの漏洩を有効に抑制することが可能となる。
なお、本願において、短繊維マット84および長繊維マット82に含まれる繊維の平均繊維長は、それぞれ以下のように測定した。短繊維マット84の場合は、まず、各マット(10cm×10cmサイズ)の10箇所の領域を無作為に選択し、各箇所から繊維をサンプリングした後、これをSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて50倍で撮影し、それぞれの領域において少なくとも50本の繊維の長さを測定する。次に、得られた全ての領域の測定結果を平均して、そのマットの平均繊維長を求めた。図3には、短繊維マット84の平均繊維長を求めるために撮影した、SEM写真の一例を示す。一方、長繊維マット82の場合は、まず、各マット(10cm×10cmサイズ)の10箇所の領域を無作為に選択し、各箇所から繊維をサンプリングした後、これを光学顕微鏡を用いて10倍で撮影し、それぞれの領域において少なくとも50本の繊維の長さを測定する。次に、得られた全ての領域の測定結果を平均して、そのマットの平均繊維長を求めた。
本発明のシート材において、長繊維マット82に含まれる無機繊維の平均繊維長は、20mm〜120mmの範囲であることが好ましく、30mm〜70mmの範囲であることがより好ましく、40mm〜60mmの範囲であることがさらに好ましい。一方、短繊維マット84に含まれる無機繊維の平均繊維長は、0.5mm〜10mmの範囲であることが好ましく、1mm〜5mmの範囲であることがより好ましく、2mm〜4mmの範囲であることがさらに好ましい。また、長繊維マット82に含まれる無機繊維の平均繊維長は、短繊維マット84に含まれる無機繊維の平均繊維長の約6倍以上であることが好ましく、約10倍以上であることがより好ましい。
本発明のシート材において、シート材の全体としての厚さには、特に制約はないが、例えば、6mm〜20mmの厚さのものが使用できる。ただし、シート材の全体の厚さが薄い場合(例えば、6mm以下などの場合)には、長繊維マットのみで構成された単層シート材を使用することにより、前述の亀裂の問題は生じにくくなるため、本発明によるシート材を使用する必要性は低下する。また、シート材全体としての密度および坪量には、特に制約はないが、密度としては、例えば、0.15g/cm〜0.30g/cmのものが、また坪量としては、例えば、500g/m〜3000g/mのものが使用されても良い。なお坪量とは、シート材の単位面積当たりに含まれる繊維の総重量をいうが、シート材に結合材が含まれている場合は、単位面積当たりに含まれる結合材と繊維の総重量をいう。
また、本発明のシート材において、長繊維マットおよび短繊維マットのそれぞれの厚さ、密度、坪量には、特に制約はなく、様々な厚さ、密度、坪量のものが使用される。さらに、本発明のシート材において、長繊維マットと短繊維マットの厚さの比は、特に制約はなく、例えば、長繊維マットの厚さ:短繊維マットの厚さの比が、約2.8〜約5:5の範囲で構成されたシート材を使用することができる。
なお、本発明によるシート材30は、長繊維マット82と短繊維マット84の、少なくとも2つのマットを積層して構成される。そこで、長繊維マット82と短繊維マット84の間の接合力を高めるため、両者の界面に、「界面層」が設けられても良い。なお、本願において、「界面層」という用語は、隣接する層の界面に存在する、これらの層とは組成の異なる、いかなる層も含む。従って、「界面層」には、隣接する層同士を接合するため、いずれかまたは両方の層の表面に、意図的に設置される接着剤等の接合層が含まれる他、シート材の製造工程において、結合材等が濃縮されることによって、隣接する層同士の界面に自然発生的に形成された第3の層86も含まれる(後述の図6参照)。
このような本発明によるシート材30は、前述のように、長繊維マット82の側が外周側(すなわちケーシング12側)となるように、排気ガス処理体20の外周に巻回され、端部を嵌合、固定して使用される。このシート材30が巻回された排気ガス処理体20は、その後、圧入方式、クラムシェル方式、巻き締め方式またはサイジング方式のいずれかの装着方式によって、ケーシング12内に設置され、排気ガス処理装置10が構成される。なお、これらの各装着方式については、後述する。
このようにして構成される排気ガス処理装置10の一構成例を図4に示す。この図の例では、排気ガス処理体20は、ガス流と平行な方向に多数の貫通孔を有する触媒担持体である。触媒担持体は、例えばハニカム構造状の多孔質炭化珪素等で構成される。なお、本発明の排気ガス処理装置10は、このような構成に限られるものではない。例えば、排気ガス処理体20を貫通孔の端部が市松模様状に目封じされたDPFとすることも可能である。このような排気ガス処理装置では、上述のようなシート材の効果により、シート材を排気ガス処理体に巻回す際に、外周側に亀裂が生じることが抑制される。従って、装置内に導入された排気ガスが、シート材の亀裂を通って、未処理のまま排出されることを回避することができる。
以下、本発明のシート材の製造方法の一例を説明する。図5には、本発明のシート材の製造方法のフロー図を示す。
図5に示すように、本発明のシート材は、第1の無機繊維を含む第1のマットを提供するステップ(ステップS110)と、この第1のマットの上に、第2の無機繊維を含む第2のマットを積層するステップ(ステップS120)と、によって製作することができる。
以下の説明では、ステップS110において、長繊維マットを製作し、ステップS120において、この長繊維マットの上に、短繊維マットを積層する場合を例に、本発明によるシート材の製造方法を示す。ただし、本発明のシート材は、逆に、ステップS110において、短繊維マットを製作し、ステップS120において、この短繊維マットの上に、長繊維マットを積層して製造しても良いことに留意する必要がある。
長繊維マットは、例えば、ニードリング法を用いて製作することができる。ニードリング法の一詳細例については、後述するが、本願では、ニードリング法という用語は、ニードルのような繊維交絡手段をマットに抜き差しする工程を含む、マットの製造方法を意味する。また、短繊維マットは、例えば、抄造法を用いて製作することができる。抄造法の一詳細例については、後述するが、本願では、抄造法という用語は、繊維の開繊、スラリー化、成型および圧縮乾燥の各工程を含む、マットの製造方法を意味する。
次に、長繊維マットの上に、短繊維マットを積層する方法としては、大きく分けて、2つの方法がある。
一つは、長繊維マットと短繊維マットを、それぞれ独立に製造してから、これらのマットを積層界面で接合して、両者が積層されたシート材を得る方法(以下、「間接積層法」という)である。また、「間接積層法」において、長繊維マットと短繊維マットを界面で接合する方法としては、接着剤等を介して接着させる方法、両マットを縫い合わせて接合させる方法、両マットを重ね合わせた状態で、密閉容器に入れ、容器内を減圧化することにより、両者を真空圧着させる方法がある。接着剤等を介して接着させる方法では、接着剤として、アクリル系接着剤、アクリレート系ラテックス等が使用できる。接着剤の厚さは、特に限られないが、例えば0.05mm〜2mmである。なお、前述のように、この接着剤の層は、界面層とも呼ばれることに留意する必要がある。
他方は、長繊維マット上に、短繊維マットを直接製作して、両者が積層されたシート材を形成する方法(以下、「直接積層法」という)である。ただし、前述のように、逆に短繊維マット上に、長繊維マットを直接形成しても良い。この方法は、それぞれのマットを独立に準備する必要がなく、製造工程が簡略化できる点で優れている。
以下、本発明のシート材を製作する方法の一例を、具体的に説明する。
(長繊維マットの作製)
前述のように、長繊維マットは、ニードリング法を用いて製作することができる。なお以下の説明では、無機繊維としてアルミナとシリカの混合物を含む長繊維マットを例に説明するが、長繊維マットの繊維材料は、これに限られるものではなく、例えばアルミナまたはシリカの一方のみで構成されても良い。あるいは、他の無機繊維を使用しても良い。
アルミニウム含有量70g/l、Al/Cl=1.8(原子比)の塩基性塩化アルミニウム水溶液に、例えばアルミナ−シリカ組成比が60〜80:40〜20となるようにシリカゾルを添加し、無機繊維の前駆体を調製する。特にアルミナ−シリカ組成比は、70〜74:30〜26程度であることがより好ましい。アルミナ組成比が60%以下では、アルミナとシリカから生成されるムライトの組成比率が低くなるため、完成後の長繊維マットの熱伝導度が高くなり、断熱性が低下する傾向にあるからである。
次に、このアルミナ系繊維の前駆体に、ポリビニルアルコール等の有機重合体を加える。その後、この液体を濃縮し、紡糸液を調製する。さらにこの紡糸液を使用して、ブローイング法により紡糸する。
ブローイング法とは、エアーノズルから吹き出される空気流と紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液流とによって、紡糸を行う方法である。エアーノズルからのスリットあたりのガス流速は、通常40〜200m/sである。また紡糸ノズルの直径は通常0.1〜0.5mmであり、紡糸液供給ノズル1本あたりの液量は、通常1〜120ml/h程度であるが、3〜50ml/h程度であることが好ましい。このような条件では、紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液は、スプレー状(霧状)となることなく十分に延伸され、繊維相互で溶着されにくいので、紡糸条件を最適化することにより、繊維径分布の狭い均一なアルミナ繊維前駆体を得ることができる。

ここで、無機繊維の平均直径は、特に限られないが、例えば、3μm〜10μm程度のものが使用できる。
なお繊維の平均直径は、以下の方法により測定した。まず、上述の方法で得られたアルミナ系繊維をシリンダーに入れ、20.6MPaで加圧粉砕する。次にこの試料をふるい網に載せ、ふるいを通過した試料を電子顕微鏡観察用試験体とする。この試験体の表面に金等を蒸着させた後、倍率約1500倍程度の電子顕微鏡写真を撮影する。得られた写真から少なくとも40本の繊維の径を測定する。この操作を5試料について繰り返し、測定値の平均を繊維の平均直径とした。
紡糸が完了した前駆体を積層して、原料シートを製作する。さらに原料シートに対してニードリング処理を行う。ニードリング処理には、通常ニードリング装置が用いられる。
通常、ニードリング装置は、突き刺し方向(通常は上下方向)に往復移動可能なニードルボードと、原料シートの表面および裏面の両面側に設置された一対の支持板とで構成される。ニードルボードには、原料シートに突き刺すための多数のニードルが、例えば約25〜5000個/100cmの密度で取り付けられている。また各支持板には、ニードル用の多数の貫通孔が設けられている。従って、一対の支持板によって原料シートを両面から押さえつけた状態で、ニードルボードを原料シートの方に近づけたり遠ざけたりすることにより、ニードルが原料シートに抜き差しされ、繊維の交絡された多数の交絡点が形成される。ここで、ニードリング装置には、さらに原料シートを一定の送り速度(例えば、約20mm/秒)で一定の方向(原料シートの表裏面と略平行な方向)に搬送する搬送手段が設けられても良い。この場合、原料シートを一定速度で移動させた状態で、ニードリング処理を行うことが可能となるため、ニードルボードを1回圧接する度に、原料シートを移動させる操作が不要となる。
また、別の構成として、ニードリング装置は、2組のニードルボードを備えても良い。各ニードルボードは、それぞれの支持板を有する。2組のニードルボードを、それぞれ、原料シートの表面および裏面に配設して、各支持板で原料シートを両面から固定する。ここで、一方のニードルボードには、ニードリング処理時に他方のニードルボードのニードル群と位置が重ならないように、ニードルが配置されている。また、それぞれの支持板には、両方のニードルボードのニードル配置を考慮して、原料シートの両面側からのニードリング処理時に、ニードルが支持板に当接しないように、多数の貫通孔が設けられている。このような装置を用いて、2組の支持板で原料シートを両面側から挟み、2組のニードリングボードで原料シートの両側からニードリング処理が行われても良い。このような方法でニードリング処理を行うことにより、処理時間が短縮される。また、ニードルボードに設置することができるニードル数には限度があるが、この方法では、1台のニードルボードに設置するニードル数を削減することができるため有意である。
このようなニードリング処理によって生じた交絡点では、複雑に絡み合った繊維が積層方向に配向されており、原料シートの積層方向の強化を図ることができる。
次に、このようにニードリング処理の施された原料シートを常温から加熱し、最高温度1250℃程度で、0.5〜2時間程度、連続焼成することで、長繊維マットが得られる。
なお、必要に応じて、長繊維マットには、有機樹脂のような結合材を含浸するため、結合材含浸処理を行っても良い。これにより、長繊維マットの嵩高さを抑制することができる。また、長繊維マットからの繊維の離脱をより一層抑制することが可能となる。ただし、結合材含浸処理は、必ずしもこの段階で実施する必要はない。例えば、前述の「間接積層法」では、長繊維マットと短繊維マットの接合後に、いずれかのマットの側から、結合材含浸処理を行っても良い。また、前述の「直接積層法」の場合には、後述のように、短繊維マットを製作する際に、長繊維マットに結合材を含浸させることができるため、以降の結合材含浸処理を省略することが可能である。あるいは、「直接積層法」の場合も、積層状シート材が得られた後に、いずれかのマットの側から、結合材を含浸させても良い。
含浸処理において、結合材の含浸量は、1.0〜10.0重量%の範囲であることが好ましい。1.0重量%未満では、無機繊維の離脱防止効果が低下する。また10.0重量%よりも多くなると、排気ガス処理装置の使用時に排出される有機成分の量が増加する。
なお結合材としては、有機系の結合材、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂などが使用できる。例えばアクリル系(ACM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)樹脂等を用いることができる。
このような結合材と水とで調製した水分散液を用いて、スプレー塗布により、長繊維マットに結合材を含浸させる。なお、この処理により、長繊維マット中に添加された余分な添着固形分および水分は、以下のように除去される。
余分な固形分の除去は、例えば真空ポンプ等の吸引装置を用いた吸引法で行われる。また、余分な水分の除去は、長繊維マットを90〜160℃程度の温度で加熱し、および/または40kPa〜100kPaの圧力で圧縮させることにより実施しても良い。
このような工程を経て、無機繊維の平均繊維長が20mm〜120mm程度の長繊維マットを得ることができる。
(短繊維マットの作製)
前述のように、短繊維マットは、抄造法を用いて製作することができる。なお以下の説明では、無機繊維としてアルミナとシリカの混合物を含む短繊維マットを例に説明するが、短繊維マットの繊維材料は、これに限られるものではなく、例えばアルミナまたはシリカの一方のみで構成されても良い。あるいは、他の無機繊維を使用しても良い。
まず、無機繊維の開繊処理を行う。
開繊処理は、乾式開繊処理のみの単独で、または乾式開繊処理および湿式開繊処理の2段階処理で実施される。乾式開繊処理では、フェザーミル等の装置が使用され、前述のニードリングシート材が開繊される。一方、湿式開繊処理では、前述の乾式開繊処理によって得られた綿状の乾式開繊繊維が湿式開繊装置に投入され、さらに開繊が行われる。湿式開繊処理には、パルパーまたはミキサー等の湿式開繊装置が使用される。このような開繊処理を経て、開繊された原料繊維を得ることができる。
次に、この原料繊維750gと、水75000gを、攪拌機に投入し、例えば1〜5分程度撹拌する。次に、この液体に、有機結合材を4wt%〜8wt%程度添加し、1〜5分程度撹拌する。またこの液体に、無機結合材を0.5wt%〜1.0wt%程度添加し、1〜5分程度撹拌する。さらに、この液体に、凝集剤を0.5wt%程度添加し、最大約2分間程度撹拌を行い、原料スラリーを調製する。
無機結合材としては、例えば、アルミナゾルおよび/またはシリカゾル等が使用される。また有機結合材としては、例えば、ゴム系材料、水溶性有機高分子化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が使用され、凝集剤としては、例えばパコール292(シバスペシャリティ(Ciba Specialty Chemicals)社)等が使用される。
次に、得られた原料スラリーを所望の形状の成型器に添加し、短繊維マット原料を成形し、さらに脱水を行う。通常の場合、成型器の底部には、ろ過用メッシュ(メッシュ寸法:30メッシュ)が設けられており、成形器内に添加された原料液中の水分は、このろ過用メッシュを通り排出される。従って、このような成型器を使用することにより、短繊維マット原料の成形と脱水を同時に行うことができる。また必要であれば、サクションポンプ、真空ポンプ等を使用して、成型器の下側から、ろ過用メッシュを介して、水分の強制吸引を行っても良い。
次に、得られた短繊維マット原料を成型器から取り出し、これをプレス器等を用いて、厚さが0.3〜0.5倍程度となるように圧縮すると同時に、例えば90〜150℃の温度で、5分〜1時間、加熱、乾燥させることにより、短繊維マットを得ることができる。
なお、得られた短繊維マットを用いて、さらに、前述のような結合材含浸処理を行っても良い。ただし、前述のように、「間接積層法」の場合、このような結合材含浸処理は、短繊維マットと長繊維マットの接合後に実施しても良い。
このような工程を経て、通常、無機繊維の平均繊維長が約0.5mm〜10mmの範囲の短繊維マットを得ることができる。
(短繊維マットと長繊維マットの一体化)
このようにして製作された短繊維マットおよび長繊維マットを積層、一体化させることにより、本発明によるシート材を得ることができる。
両マットの一体化には、前述の「間接積層法」または「直接積層法」が利用できる。特に、「直接積層法」の場合には、前述の短繊維マットの製作工程において、成型器の底部に長繊維マットを予め設置しておき、この上に短繊維マットを形成させることにより、両者が積層一体化されたシート材を、短繊維マットの製作工程内で得ることができる。この場合、長繊維マットと短繊維マットをそれぞれ独立に製作して、その後一体化させる場合に比べて、シート材の処理工程を簡略化することができる。
ただし、このような「直接積層法」では、製作されたシート材において、長繊維マットと短繊維マットの界面での結合性が低下することが危惧される。しかしながら、前述のような、長繊維マット上に短繊維マットを直接積層する方法によって得られたシート材の、長繊維マットと短繊維マットの界面密着性は、「間接積層法」(接着時による接合法)によって製作したシート材の界面密着性と同様、良好であった。また、このシート材の断面観察の結果では、図6に概略を示すように、両マットの界面に、第3の層86(すなわち、前述の界面層)が形成されていることがわかった。この界面層86は、短繊維マットを製作する際に、原料スラリーに添加した結合材が、長繊維との界面で凝縮したものであると予想される。また、この層が接着層としての役割を果たすことにより、長繊維マットと短繊維マットの界面での結合力が高まるものと考えられる。なお、この界面層86の厚さは、シート材の製造条件にもよるが、約0.05mm〜2mm程度の厚さであった。
図7には、本発明のシート材を使用して、排気ガス処理装置を製造する方法のフロー図を示す。まず、ステップS210では、前述の方法により、長繊維マットと短繊維マットが積層されて構成されたシート材が提供される。次に、ステップS220では、排気ガス処理体に、このシート材が巻回される。このとき、シート材は、長繊維マットの側が外周側となるようにして、排気ガス処理体に巻回される。次に、ステップS230では、シート材が巻回された排気ガス処理体が、圧入方式、クラムシェル方式、巻き締め方式およびサイジング方式のいずれかの装着方式により、ケーシング内に収容され、排気ガス処理装置が構成される。
以下、各装着方式について図面を用いて説明する。図8、図9、図10および図11は、それぞれ、圧入方式、クラムシェル方式、巻き締め方式およびサイジング方式により、保持シール材24が巻回された排気ガス処理体20(以下、「被覆排気ガス処理体」210という)をケーシング内に装着する方法を模式的に示したものである。
圧入方式は、被覆排気ガス処理体210を、ケーシング121の開口面の一方から押し込むことにより、被覆排気ガス処理体210を所定の位置に装着して、排気ガス処理装置10を構成する方法である。被覆排気ガス処理体210のケーシング121への挿入を容易にするため、図8に示すように、内孔径が一方から他方に向かって小さくなるように定形され、最小内孔径が、ケーシング121の内径とほぼ同等の寸法になるように調整された圧入冶具230が使用される場合もある。この場合、被覆排気ガス処理体210は、前記圧入冶具230の広内孔径側から挿入され、最小内孔径側を通ってケーシング121内に装着される。
また、クラムシェル方式では、図9に示すように、相互に向かい合わせた際に、一対のケーシングが完成されるように分割された(例えば、図の例では2分割された)ケーシング部材(122A、122B)が使用される。これらのケーシング部材の一つに被覆排気ガス処理体210を設置してから、残りのケーシング部材を組み合わせ、さらにこれらの部材同士を、例えば、フランジ部220(220A、220B)で溶接してケーシング122を構成することにより、被覆排気ガス処理体210が所定の位置に装着された排気ガス処理装置10を得ることができる。
また、巻き締め方式は、図10に示すように、被覆排気ガス処理体210の周囲に、ケーシング部材となる金属板123を巻き付けた後、この金属板123をワイヤロープ等を用いて締め付けて、金属板123を被覆排気ガス処理体210の周囲に所定の面圧で当接させる方式である。最後に金属板123の一方の端部を、他方の端部または下側の金属板123の表面と溶接することにより、被覆排気ガス処理体210がケーシング123内部に装着された排気ガス処理装置10が得られる。
さらに、サイジング方式は、図11に示すように、被覆排気ガス処理体210を、その外径よりも大きな内径の金属シェル124の中に挿入した後、プレス機等により、金属シェル124を外周側から均一に圧縮(サイジング(JIS―z2500―4002))する方式である。サイジング処理により、金属シェル124の内径が所望の寸法に正確に調整されるとともに、被覆排気ガス処理体210を所定の位置に設置することができる。
なお、これらの装着方式において使用されるケーシングの材質としては、通常、耐熱合金等の金属が使用される。
以上のように、本発明では、無機繊維の平均繊維長がより大きい、すなわちより高強度の第1のマットが、シート材の外周側となるように巻回されるため、厚いシート材を使用しても、周長差の影響を受けにくく、シート材の外周側に亀裂が生じにくくなるという効果が得られる。また、このような効果は、シート材が、長繊維マットの側が外周側となるように、排気ガス処理体に巻回される限り、有効に発揮されるため、シート材に一品製作的な溝を設ける場合とは異なり、シートの製造時の生産性低下を回避することができる。
なお、以上の説明では、本発明によるシート材が、長繊維マットと短繊維マットの2層で構成される場合を例に説明した。しかしながら、本発明では、3層以上のマットを積層して、シート材を構成しても良いことは明らかである。すなわち、本発明において、重要なことは、シート材を排気ガス処理体に巻回した際に、最外周側に、平均繊維長の最も長い繊維を含むマットが設けられるように、積層シート材を構成することである。従って、このような態様でシート材が使用された、いかなる排気ガス処理装置も、本発明の範囲に属することに留意する必要がある。
以下、本発明の効果を実施例により説明する。
本発明の効果を検証するため、本発明によるシート材を作製し、各種試験を行った。シート材は、以下の手順により製作した。
まず最初に、以下の手順により、長繊維マットを作製した。
アルミニウム含有量70g/l、Al/Cl=1.8(原子比)の塩基性塩化アルミニウム水溶液に、アルミナ系繊維の組成がAl:SiO=72:28となるように、シリカゾルを配合し、アルミナ系繊維の前駆体を形成した。次に、アルミナ系繊維の前駆体に、ポリビニルアルコール等の有機重合体を添加した。さらに、この液を濃縮して紡糸液とし、この紡糸液を用いてブローイング法にて紡糸した。その後アルミナ系繊維の前駆体を折りたたんだものを積層して、アルミナ系繊維の原料シートを製作した。次に、この原料シートに対して、ニードリング処理を行った。ニードリング処理は、それぞれ50個/100cmのニードルが設置された2組のニードルボードを原料シートの表裏それぞれの面側に配設し、原料シートの両側から行った。これにより、約1個/cm程度の交絡点密度を有する原料シートが得られた。
その後、得られた原料シートを常温から最高温度1250℃で、1時間、連続焼成し、坪量950g/m、厚さ4mmの長繊維マットを得た。アルミナ系繊維の平均繊維長は、約50mmであった。また、アルミナ系繊維の平均直径は6.2μmであり、最小直径は3.2μmであった。
次に、以下の手順により、この長繊維マットの上に、直接短繊維マットを作製して、シート材を得た。
まず、無機繊維が開繊された原料繊維を準備する。本例では、アルミナ:シリカ=72:28の混合比のアルミナ繊維で構成された、原料繊維(以下、「原綿バルク」という)を使用した。
水79000gに、この原綿バルクを790g加え、攪拌機を用いて、5分間撹拌した。次に、この液体に、有機バインダ(ラテックス)を39.5g加えて、5分間撹拌し、その後、無機バインダ(アルミナゾル)を7.9g加えて、さらに5分間撹拌した。さらに、この溶液に凝集剤(パコール292)を3.95g加え、1分間撹拌し、原料スラリーを調製した。
次に、底部にろ過用メッシュ(30メッシュ)を備える縦930×横515×深さ400mmの成型器の底に、前述の長繊維マットを設置した。長繊維マットの寸法は、縦930×横515mm×厚さ4mmである。この長繊維マットの上方から、前述の原料スラリーを注入し、その後、脱水処理を行うことにより、長繊維マット上に、短繊維マットを形成させた。脱水処理は、サクションポンプを用いて、成型器の底部側から、ろ過用メッシュを介して原料スラリーの水分を強制吸引することにより実施した。次に、この長繊維マットと一体化された短繊維マットを成型器から取り出し、これを120℃、70kPaで30分間、圧縮乾燥させた。このような工程により、長繊維マット上に、坪量1750g/m、厚さ9mmの短繊維マットが形成された。短繊維マットに含まれる繊維の平均繊維長は、約3mmであった。
このような工程を経て、最終的に、全体の厚さ13mm、全体の密度0.21g/cmのシート材を得た。これを実施例1とする。
実施例1と同様の方法により、長繊維マットを作製した。ただしこの例では、積層するアルミナ系繊維の前駆体量を変えており、得られる長繊維マットの坪量は、1350g/mで、厚さは6mmであった。アルミナ系繊維の平均繊維長は、約50mmであった。また、アルミナ系繊維の平均直径は6.2μmであり、最小直径は3.2μmであった。
水61000gに、アルミナ:シリカ=72:28の混合比のアルミナ繊維の原綿バルクを610g加え、攪拌機を用いて、5分間撹拌した。次に、この液体に、有機バインダ(ラテックス)を30.5g加えて、5分間撹拌し、その後、無機バインダ(アルミナゾル)を6.1g加えて、さらに5分間撹拌した。さらに、この溶液に凝集剤(パコール292)を3.05g加え、1分間撹拌し、原料スラリーを調製した。
次に、底部にろ過用メッシュ(30メッシュ)を備える縦930×横515×深さ400mmの成型器の底に、前述の(坪量1350g/mの)長繊維マットを設置した。長繊維マットの寸法は、縦930×横515mm×厚さ6mmである。この長繊維マットの上方から、前述の原料スラリーを注入し、その後、脱水処理を行うことにより、長繊維マット上に、短繊維マットを形成させた。脱水処理は、サクションポンプを用いて、成型器の底部側から、ろ過用メッシュを介して原料スラリー中の水分を強制吸引することにより実施した。次に、この長繊維マットと一体化された短繊維マットを成型器から取り出し、これを120℃、70kPaで30分間、圧縮乾燥させた。このような工程により、長繊維マット上に、坪量1350g/m、厚さ7mmの短繊維マットが形成された。短繊維マットに含まれる繊維の平均繊維長は、約3mmであった。
このような工程を経て、最終的に、全体の厚さ13mm、全体の密度0.21g/cmのシート材を得た。これを実施例2とする。
実施例1と同様の方法により、長繊維マットを作製した。ただしこの例では、積層するアルミナ系繊維の前駆体量を変えており、得られる長繊維マットの坪量は、950g/mで、厚さは4mmであった。アルミナ系繊維の平均繊維長は、約50mmであった。また、アルミナ系繊維の平均直径は6.2μmであり、最小直径は3.2μmであった。
水43000gに、アルミナ:シリカ=72:28の混合比のアルミナ繊維の原綿バルクを430g加え、攪拌機を用いて、5分間撹拌した。次に、この液体に、有機バインダ(ラテックス)を21.5g加えて、5分間撹拌し、その後、無機バインダ(アルミナゾル)を4.3g加えて、さらに5分間撹拌した。さらに、この溶液に凝集剤(パコール292)を2.15g加え、1分間撹拌し、原料スラリーを調製した。
次に、底部にろ過用メッシュ(30メッシュ)を備える縦930×横515×深さ400mmの成型器の底に、前述の(坪量950g/mの)長繊維マットを設置した。長繊維マットの寸法は、縦930×横515mm×厚さ4mmである。この長繊維マットの上方から、前述の原料スラリーを注入し、その後、脱水処理を行うことにより、長繊維マット上に、短繊維マットを形成させた。脱水処理は、サクションポンプを用いて、成型器の底部側から、ろ過用メッシュを介して原料スラリー中の水分を強制吸引することにより実施した。次に、この長繊維マットと一体化された短繊維マットを成型器から取り出し、これを120℃、70kPaで30分間、圧縮乾燥させた。このような工程により、長繊維マット上に、坪量950g/m、厚さ5mmの短繊維マットが形成された。短繊維マットに含まれる繊維の平均繊維長は、約3mmであった。
このような工程を経て、最終的に、全体の厚さ9mm、全体の密度0.21g/cmのシート材を得た。これを実施例3とする。
比較例1
水122000gに、アルミナ:シリカ=72:28の混合比のアルミナ繊維の原綿バルクを1220g加え、攪拌機を用いて、5分間撹拌した。次に、この液体に、有機バインダ(ラテックス)を61g加えて、5分間撹拌し、その後、無機バインダ(アルミナゾル)を12.2g加えて、さらに5分間撹拌した。さらに、この溶液に凝集剤(パコール292)を6.1g加え、1分間撹拌し、原料スラリーを調製した。
次に、底部にろ過用メッシュ(30メッシュ)を備える縦930×横515×深さ400mmの成型器に、上方から、前述の原料スラリーを注入し、その後、脱水処理を行うことにより、短繊維マットを形成させた。脱水処理は、サクションポンプを用いて、成型器の底部側から、ろ過用メッシュを介して原料スラリー中の水分を強制吸引することにより実施した。次に、この短繊維マットを成型器から取り出し、これを120℃、70kPaで30分間、圧縮乾燥させた。このような工程により、短繊維マットのみからなる、坪量2700g/m、厚さ13mm、全体の密度0.21g/cmの単層シート材を得た。単層シート材に含まれる繊維の平均繊維長は、約3mmであった。これを比較例1とする。
比較例2
水86000gに、アルミナ:シリカ=72:28の混合比のアルミナ繊維の原綿バルクを860g加え、攪拌機を用いて、5分間撹拌した。次に、この液体に、有機バインダ(ラテックス)を43g加えて、5分間撹拌し、その後、無機バインダ(アルミナゾル)を8.6g加えて、さらに5分間撹拌した。さらに、この溶液に凝集剤(パコール292)を4.3g加え、1分間撹拌し、原料スラリーを調製した。
次に、底部にろ過用メッシュ(30メッシュ)を備える縦930×横515×深さ400mmの成型器に、上方から、前述の原料スラリーを注入し、その後、脱水処理を行うことにより、短繊維マットを形成させた。脱水処理は、サクションポンプを用いて、成型器の底部側から、ろ過用メッシュを介して原料スラリー中の水分を強制吸引することにより実施した。次に、この短繊維マットを成型器から取り出し、これを120℃、70kPaで30分間、圧縮乾燥させた。このような工程により、短繊維マットのみからなる、坪量1900g/m、厚さ9mm、全体の密度0.21g/cmの単層シート材を得た。単層シート材に含まれる繊維の平均繊維長は、約3mmであった。これを比較例2とする。
実施例1乃至3に係る積層状シート材ならびに比較例1および2に係る単層シート材の坪量、厚さ、密度を表1に示す。なおこの表には、各シート材に含まれる、長繊維マットと短繊維マットのそれぞれの坪量、厚さ、密度も示されている。
[評価試験]
次に、前述の方法で製作した各シート材を用いて、巻付試験を行った。巻付試験では、各シート材を外径が5インチの円柱に巻き付けて、前述のように、端部同士を嵌合し固定した際に、シート材に亀裂が生じるかどうかを目視で評価した。なお、実施例1乃至3に係るシート材では、長繊維マットの側が外周側となるようにして、円柱に巻き付けた。
[試験結果]
各シート材に対して得られた巻付試験の結果をまとめて表1に示す。また、図12および13には、それぞれ、試験後の実施例1および比較例1に係るシート材の状況を撮影した写真を示す。巻付試験の結果、実施例1〜3のシート材では、巻付試験後のシート材に、亀裂は生じなかった。一方、比較例1および2に係る単層シート材では、巻付試験後に、外周側に亀裂が生じた。このように、本発明による長繊維マットと短繊維マットを積層させたシート材は、厚さが厚くなっても、十分な強度を有することが確認された。
本発明のシート材は、車両用排気ガス処理装置等に利用することができる。
2 導入管
4 排気管
10 排気ガス処理装置
12 ケーシング
20 排気ガス処理体
24 保持シール材
30 シート材
50 嵌合凸部
60 嵌合凹部
82 第1のマット(長繊維マット)
84 第2のマット(短繊維マット)
86 第3の層(界面層)
121、122、123、124 ケーシング
210 被覆排気ガス処理体。

Claims (14)

  1. 第1の無機繊維を含む第1のマットと、第2の無機繊維を含む第2のマットの、少なくとも2つのマットを積層することによって構成された保持シール材であって、
    前記第1の無機繊維の平均繊維長は、前記第2の無機繊維の平均繊維長よりも長いことを特徴とする保持シール材。
  2. 前記第1の無機繊維と前記第2の無機繊維は、同じ材質であることを特徴とする請求項1に記載の保持シール材。
  3. 前記第1の無機繊維の平均繊維長は、20mm〜120mmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の保持シール材。
  4. 前記第2の無機繊維の平均繊維長は、0.5mm〜10mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の保持シール材。
  5. 前記第1のマットおよび/または第2のマットは、さらに結合材を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の保持シール材。
  6. 前記第1のマットと第2のマットの界面に、界面層を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の保持シール材。
  7. 前記界面層の厚さは、約0.05mm〜2mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の保持シール材。
  8. 当該保持シール材の厚さは、6mm〜20mmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の保持シール材。
  9. 少なくとも2つのマットが積層された保持シール材の製造方法であって、
    第1の無機繊維を含む第1のマットを提供する第1のステップと、
    前記第1の無機繊維を含む第1のマットの上に、第2の無機繊維を含む第2のマットを積層する第2のステップと、
    を有し、
    前記第1の無機繊維の平均繊維長は、前記第2の無機繊維の平均繊維長よりも長いことを特徴とする保持シール材の製造方法。
  10. 前記第2のステップは、前記第1のマットの上に、前記第2のマットを直接製作するステップを有することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記第2のステップは、前記第2のマットを単独で製作してから、前記第1のマットと前記第2のマットを積層させるステップを有することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
  12. さらに、前記第2のステップは、前記第1のマットと前記第2のマットの界面を、接着剤および/または縫いつけにより接合させるステップを有することを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
  13. 前記第1のマットは、ニードリング法で製作されることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか一つに記載の製造方法。
  14. 前記第2のマットは、抄造法で製作されることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか一つに記載の製造方法。
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