本発明の骨子は、1つの主局から送信される同期信号が他の主局または他の主局から送信された同期信号を受信可能な従局において受信されるように複数の主局を配置し、それぞれの主局から送信される同期信号の送信時刻および受信時刻から、すべての基地局によって独立に計時される時刻を同一の基準時刻に補正する補正係数を求めることである。以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る測位システムの概略構成を示す図である。同図に示す測位システムは、移動端末装置100、基地局装置200−1〜200−7、および測位装置300を有している。なお、図1において、基地局装置200−3および200−6は主局であるため、太線で示している。また、図1では省略したが、基地局装置200−1、200−6、および200−7も他の基地局装置と同様に測位装置300に有線接続されている。
移動端末装置100は、測位対象の端末であり、基地局装置200−1〜200−7と通信可能な範囲を移動しながら、端末信号としてパルス波を送信する。移動端末装置100は、例えば所定周期で端末信号を送信しても良いし、ユーザが希望するタイミングで端末信号を送信しても良い。
基地局装置200−1〜200−7は、移動端末装置100から送信された端末信号を受信し、端末信号の受信時刻を測位装置300へ通知する。また、基地局装置200−1〜200−7は、測位装置300からの指示に従って主局または従局に分類される。そして、主局(図1では、基地局装置200−3および200−6)は同期信号としてパルス波を送信し、同期信号の送信時刻を測位装置300へ通知する。また、基地局装置200−1〜200−7は、主局から送信された同期信号を受信し、同期信号の受信時刻を測位装置300へ通知する。
具体的には、図1において、基地局装置200−3および200−6は、それぞれ同期信号の送信時刻を測位装置300へ通知する。また、基地局装置200−1、200−2、および200−4は、基地局装置200−3から送信された同期信号の受信時刻を測位装置300へ通知する。同様に、基地局装置200−4、200−5、および200−7は、基地局装置200−6から送信された同期信号の受信時刻を測位装置300へ通知する。このとき、基地局装置200−4は、2つの主局から送信された同期信号を受信可能であるため、双方の主局から送信された同期信号の受信時刻を測位装置300へ通知する。換言すれば、基地局装置200−3および200−6は、共通の基地局装置200−4と通信可能である。
測位装置300は、各基地局装置200−1〜200−7から通知される同期信号の送信時刻および受信時刻から、各基地局装置において計時される時刻を1つの基地局装置において計時される時刻に補正する補正係数を算出する。具体的には、測位装置300は、すべての基地局装置200−1〜200−7における時刻を例えば基地局装置200−3における時刻に補正する補正係数を算出する。そして、測位装置300は、いずれかの基地局装置から端末信号の受信時刻が通知されると、補正係数を用いて端末信号の受信時刻を補正し、補正後の受信時刻の時間差から移動端末装置100の位置を求める。
また、測位装置300は、基地局装置200−1〜200−7を主局と従局に分類し、主局に対して同期信号の送信を指示する。このとき、測位装置300は、任意の2つの主局の組み合わせについて、直接通信可能か、または少なくとも1つの共通の基地局装置と通信可能となるように主局を選択する。すなわち、測位装置300は、例えば基地局装置200−4と通信可能な位置に配置された2つの基地局装置200−3および200−6を主局として選択する。そして、測位装置300は、すべての主局に同期信号の送信タイミングを指示し、周期的に同期信号を送信させる。このとき、各主局からの同期信号が互いに干渉しないように、測位装置300は、各主局における同期信号の送信タイミングを調整する。
図2は、本実施の形態に係る移動端末装置100の要部構成を示すブロック図である。同図に示す移動端末装置100は、制御部110、PPM(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)変調部120、インパルス生成部130、および無線送信部140を有している。
制御部110は、移動端末装置100全体の処理を制御するとともに、測位時に、基地局装置へ送信する送信データをPPM変調部120へ出力する。具体的には、制御部110は、例えば移動端末装置100に固有の識別情報を送信データとしてPPM変調部120へ出力する。制御部110が送信データを出力するタイミングは、所定の周期ごとでも良いし、ユーザが測位を希望するタイミングでも良い。
PPM変調部120は、例えばリードソロモン符号など、各移動端末装置に共通のPN(Pseudo Noise:擬似雑音)系列を発生させ、PN系列によって送信データをパルス位置変調する。具体的には、PPM変調部120は、送信データをPN系列によってタイムホッピングさせた後にパルス位置変調し、得られるパルス波をインパルス生成部130へ出力する。すなわち、例えばPN系列が(5,7,6,3,4,2,1)で送信データの1シンボルが(0,1,1,0,0,0,0)である場合、対応する成分を加算して変調系列(5,8,7,3,4,2,1)が得られ、PPM変調部120は、所定のパルス区間内において、変調系列の各成分に対応するタイミングでパルス波を発生させる。
インパルス生成部130は、例えばステップリカバリダイオードを備えており、PPM変調部120から出力されるパルス波のタイミングでごく短時間のインパルスを生成する。そして、インパルス生成部130は、生成したインパルスを無線送信部140へ出力する。
無線送信部140は、例えばバンドパスフィルタやパワーアンプを備えており、インパルス生成部130から出力されたインパルスに対して、不要周波数成分(例えば3.4GHz以下の成分および4.8GHz以上の成分)の除去および増幅などの所定の処理を施した上で端末信号としてアンテナから送信する。
ここで、無線送信部140から送信される端末信号のフレーム構成について、図3を参照しながら説明する。本実施の形態における端末信号のフレームは、プリアンブル部とデータ部から成っている。プリアンブル部は、上述したPN系列そのものを含み、データ部は、PN系列を用いてパルス位置変調された送信データを含む。フレーム中の1シンボルは、図3に示すようにPN系列の成分と同数のパルス区間から構成されており、各パルス区間は、さらに10等分されている。そして、これらの等分点は、パルス波発生タイミングとなる。
すなわち、図3に示すように、例えばプリアンブル部の最初のパルス区間においては、PN系列の最初の成分「5」に対応する5番目の等分点にパルス波が発生している。また、例えばデータ部の2番目のパルス区間においては、変調系列の2番目の成分がPN系列の2番目の成分「7」に送信データの2番目の成分「1」が加算された「8」であるため、8番目の等分点にパルス波が発生している。各パルス区間は、例えば1μs(マイクロ秒)に相当し、したがって、各等分点の間隔は100nsとなり、1シンボルは7μsに相当する。つまり、1フレームは、およそ数十から数百μs程度となる。このようなフレーム構成は、移動端末装置100から送信される端末信号のみではなく、主局から送信される同期信号にも共通している。
図4は、本実施の形態に係る基地局装置200の要部構成を示すブロック図である。図1に示した基地局装置200−1〜200−7は、すべて図4に示す基地局装置200と同様の構成を有している。図4に示す基地局装置200は、制御部210、送信処理部220、無線送信部230、タイマ部240、無線受信部250、同期用受信処理部260、および端末用受信処理部270を有している。
制御部210は、基地局装置200全体の処理を制御するとともに、測位装置300からの指示に従い、基地局装置200が主局に分類された場合には、従局へ送信する送信データを送信処理部220へ出力する。具体的には、制御部210は、例えば基地局装置200に固有の識別情報を送信データとして送信処理部220へ出力する。制御部210が送信データを出力するタイミングは、測位装置300からの指示に基づいてタイマ部240によってカウントされる。
また、制御部210は、基地局装置200が主局に分類された場合に、同期信号の送信時刻を送信処理部220から取得し、測位装置300へ通知する。同様に、制御部210は、同期信号または端末信号が受信された場合に、それぞれの受信時刻を同期用受信処理部260または端末用受信処理部270から取得し、測位装置300へ通知する。さらに、制御部210は、測位装置300から時刻の調整を指示された場合には、タイマ部240を調整する。
送信処理部220は、基地局装置200が主局に分類された場合に、同期信号を生成し、同期信号の送信時刻を保持する。具体的には、送信処理部220は、PPM変調部221、インパルス生成部222、および送信時刻保持部223を有している。
PPM変調部221は、例えばリードソロモン符号など、各基地局装置に共通のPN系列を発生させ、PN系列によって送信データをパルス位置変調する。PPM変調部221によるパルス位置変調は、移動端末装置100のPPM変調部120によるパルス位置変調と同様にして行われる。
インパルス生成部222は、例えばステップリカバリダイオードを備えており、PPM変調部221から出力されるパルス波のタイミングでごく短時間のインパルスを生成する。そして、インパルス生成部222は、生成したインパルスを無線送信部230へ出力する。
送信時刻保持部223は、インパルス生成部222からインパルスが出力され、同期信号として送信される送信時刻を保持する。具体的には、送信時刻保持部223は、同期信号のデータ部の最初のパルス波が送信される際に、タイマ部240から現在時刻を取得し、同期信号の送信時刻として保持する。そして、送信時刻保持部223は、保持した送信時刻を制御部210へ通知する。
無線送信部230は、例えばバンドパスフィルタやパワーアンプを備えており、インパルス生成部222から出力されたインパルスに対して、不要周波数成分の除去および増幅などの所定の処理を施した上で同期信号としてアンテナから送信する。上述したように、基地局装置200から送信される同期信号は、端末信号と同様のフレーム構成(図3参照)を有している。ただし、同期信号の周波数帯域は、端末信号の周波数帯域と異なるようにしても良い。
タイマ部240は、基地局装置200に固有の時刻を計時する。そして、タイマ部240は、送信処理部220、同期用受信処理部260、および端末用受信処理部270からの要求に応じて、現在時刻を提供する。すなわち、タイマ部240は、同期信号の送信時刻、同期信号および端末信号の受信時刻を提供する。また、タイマ部240は、制御部210へ送信データの出力タイミングを通知する一方、制御部210の制御により計時する時刻を調整する。
無線受信部250は、例えば低雑音アンプやバンドパスフィルタを備えており、アンテナを介した受信信号に対して、雑音除去および不要周波数成分の除去などの所定の処理を施す。また、無線受信部250は、例えばダイオードを用いた包絡線検波回路やコンパレータなどによって受信信号のパルス波を検出し、同期用受信処理部260および端末用受信処理部270へ出力する。
同期用受信処理部260は、同期信号が受信された場合に、同期信号の受信時刻を保持し、同期信号から受信データを得る。具体的には、同期用受信処理部260は、PN系列発生部261、相関演算部262、受信時刻保持部263、およびPPM復調部264を有している。
PN系列発生部261は、各基地局装置に共通のPN系列を発生させる。
相関演算部262は、例えばデジタルマッチドフィルタを備えており、PN系列発生部261において発生するPN系列と受信信号との相関演算を行い、受信信号が同期信号である場合には、規定の相関値を得ることによりプリアンブル部を検出し、データ受信を開始する。
受信時刻保持部263は、相関演算部262によってデータ受信が開始され、同期信号が受信された受信時刻を保持する。具体的には、受信時刻保持部263は、同期信号のデータ部の最初のパルス波が受信された際に、タイマ部240から現在時刻を取得し、同期信号の受信時刻として保持する。そして、受信時刻保持部263は、保持した受信時刻を制御部210へ通知する。
PPM復調部264は、同期信号のデータ受信に用いられたPN系列によって同期信号をパルス位置復調する。そして、PPM復調部264は、同期信号のパルス位置復調により得られた受信データを制御部210へ出力する。この受信データは、例えば同期信号を送信した主局に固有の識別情報などを含んでいる。
端末用受信処理部270は、端末信号が受信された場合に、端末信号の受信時刻を保持し、端末信号から受信データを得る。端末用受信処理部270の内部構成は、同期用受信処理部260の内部構成と同様であるため、その説明を省略する。ただし、端末用受信処理部270は、基地局装置の代わりに各移動端末装置に共通のPN系列を発生させ、このPN系列と端末信号の相関演算を行い、移動端末装置100に固有の識別情報などを含む受信データを得る。また、図4においては、基地局装置200が端末用受信処理部270を1つだけ有するものとしたが、基地局装置200は、複数の端末用受信処理部を有していても良い。この場合には、複数の移動端末装置をグループ化し、それぞれの端末用受信処理部がグループ内では共通かつグループごとに異なるPN系列を発生させ、それぞれ別の移動端末装置から送信された端末信号に対する受信処理を行う。
図5は、本実施の形態に係る測位装置300の要部構成を示すブロック図である。同図に示す測位装置300は、基地局装置200−1〜200−7において計時される時刻を補正する時刻補正装置を備えている。具体的には、測位装置300は、基地局インタフェース部(以下「基地局I/F部」と略記する)310、主局選択部320、同期時刻取得部330、補正係数算出部340、端末時刻取得部350、測位演算部360、主局タイマ比較部370、および主局タイマ調整部380を有している。
基地局I/F部310は、基地局装置200−1〜200−7と有線接続され、これらの基地局装置200−1〜200−7との間で情報を送受信する。具体的には、基地局I/F部310は、基地局装置200−1〜200−7から同期信号の送信時刻および受信時刻と端末信号の受信信号とを受信する。また、基地局I/F部310は、基地局装置200−1〜200−7のうち、主局に選択された基地局装置に対して主局として動作するように指示する。さらに、基地局I/F部310は、主局となった基地局装置のうち、同期信号の送信時刻が大きくずれている基地局装置に対してタイマを調整するように指示する。
主局選択部320は、基地局装置200−1〜200−7それぞれの間の接続状況に基づいて、基地局装置200−1〜200−7から主局を選択する。具体的には、主局選択部320は、例えば初期設定時に、基地局I/F部310を介して基地局装置200−1〜200−7それぞれの間において通信可能であるか否かを示す接続状況を取得する。そして、主局選択部320は、任意の2つの主局の組み合わせについて、直接通信可能か、または少なくとも1つの共通の基地局装置と通信可能となるように主局を選択し、主局と直接通信可能な基地局装置を従局に分類する。このとき、主局選択部320は、異なる基地局装置からの同期信号の送信を可能な限り少なくするため、主局の数が最も少なくなるように主局と従局の分類を行う。
すなわち、図1に示したように基地局装置200−1〜200−7が配置された場合には、主局選択部320は、例えば基地局装置200−4と通信可能な位置に配置された2つの基地局装置200−3および200−6を主局として選択する。ここで、例えば基地局装置200−4は、主局である基地局装置200−3と直接通信可能であるため、基地局装置200−6の代わりに基地局装置200−4を主局とすることも可能である。しかし、基地局装置200−4を主局とした場合には、基地局装置200−4と基地局装置200−7が直接通信可能ではないため、基地局装置200−7が主局にも従局にも分類されないことになる。このため、基地局装置200−6および200−7の少なくともいずれか一方が主局として選択される。つまり、基地局装置200−4を主局とすると、図1において3つの主局が選択されることになり、基地局装置200−6を主局とする場合に比べて、主局の数が多くなってしまう。したがって、図1に示した配置の場合、主局選択部320は、基地局装置200−3および200−6を主局に選択する。
そして、主局選択部320は、基地局I/F部310を介して主局に同期信号の送信を指示する。このとき、主局選択部320は、それぞれの主局から送信される同期信号が互いに干渉しないように、各主局がタイミングをずらして同期信号を送信するように指示する。すなわち、主局選択部320は、例えば基地局装置200−3が同期信号を送信するタイミングとは、20ms(ミリ秒)の間隔を空けたタイミングで同期信号を送信するように基地局装置200−6へ指示する。
同期時刻取得部330は、基地局I/F部310を介して、主局から同期信号が送信された同期信号の送信時刻および従局において同期信号が受信された同期信号の受信時刻(以下これらをまとめて「同期時刻」という)を取得する。具体的には、同期時刻取得部330は、主局から同期信号が送信されると、主局となった基地局装置200の送信時刻保持部223に保持された送信時刻を基地局装置200の識別情報とともに取得する。また、同期時刻取得部330は、従局において同期信号が受信されると、従局となった基地局装置200の受信時刻保持部263に保持された受信時刻を受信データに含まれる主局の識別情報とともに取得する。このようにして、同期時刻取得部330は、すべての基地局装置200−1〜200−7から同期信号の送信時刻または受信時刻(同期時刻)を取得する。なお、2つの主局が直接通信可能な場合には、同期時刻取得部330は、これらの主局から同期信号の送信時刻および受信時刻の双方を取得することになる。
補正係数算出部340は、同期時刻取得部330によって取得された同期時刻と既知である各基地局装置200−1〜200−7それぞれの間の距離とを用いて、すべての基地局装置200−1〜200−7において計時される時刻をいずれか1つの基地局装置において計時される時刻に補正する補正係数を算出する。すなわち、補正係数算出部340は、基地局装置200−1〜200−7における時刻を例えば基地局装置200−3における時刻に補正する補正係数を算出する。
ここで、補正係数算出部340による補正係数の算出について説明しておく。以下では、基地局装置200−1〜200−7において計時される時刻をそれぞれT1〜T7とし、基地局装置200−iの時刻に対する基地局装置200−jの時刻のスケールをAij、オフセットをBijとする。したがって、例えば基地局装置200−4の時刻T4は、基地局装置200−3の時刻T3を用いて、以下の式(1)のように表される。
T4=A34・T3+B34 ・・・(1)
同様に、基地局装置200−4は、基地局装置200−6から送信された同期信号を受信するため、基地局装置200−6の時刻T6を用いて、以下の式(2)のように表すこともできる。
T4=A64・T6+B64 ・・・(2)
これらの式(1)、(2)からT4を消去すると、基地局装置200−3の時刻と基地局装置200−6の時刻との関係が以下の式(3)として得られる。
T6=(A34・T3+B34−B64)/A64 ・・・(3)
以上のような式(1)〜(3)は、すべての主局と従局の組み合わせについて立てることができる。そして、本実施の形態においては、すべての2つの主局の組み合わせが直接通信可能か、または少なくとも1つの共通の基地局装置と通信可能であるため、式の変形により、すべての基地局装置200−1〜200−7の時刻T1〜T7と例えば基地局装置200−3の時刻T3との関係式を得ることができる。したがって、各基地局装置間のスケールAijとオフセットBijとを求めれば、すべての基地局装置200−1〜200−7における時刻をいずれか1つの基地局装置における時刻に統一することが可能となる。
そこで、補正係数算出部340は、補正係数として各基地局装置間のスケールAijおよびオフセットBijを求める。ここで、例えば基地局装置200−3による同期信号の送信時刻をT3t、この同期信号の基地局装置200−4における受信時刻をT4r、受信時刻T4rに対応する基地局装置200−3の時刻をT3r、基地局装置200−3から基地局装置200−4における同期信号の伝搬遅延をD34とすると、同期信号は、送信時刻T3tから伝搬遅延D34後に基地局装置200−4によって受信されるため、以下の式(4)が成立する。
T3t+D34=T3r ・・・(4)
また、受信時刻T4rと基地局装置200−3の時刻T3rとの間には上式(1)の関係が成立することから、式(1)と式(4)を用いると、送信時刻T3tと受信時刻T4rの間には以下の式(5)の関係が成立することがわかる。
T4r=A34・T3r+B34
=A34・(T3t+D34)+B34 ・・・(5)
この式(5)において、伝搬遅延D34は、基地局装置200−3および200−4の距離から既知であるため、同期時刻取得部330によって取得される送信時刻T3tと受信時刻T4rの組を2組用いることにより、スケールA34およびオフセットB34を算出することが可能となる。すなわち、同期時刻の組を(T3t(1),T4r(1))と(T3t(2),T4r(2))とすれば、以下の式(6)をA34およびB34について解けば良い。
したがって、スケールA34およびオフセットB34は、以下のようになる。
A34=(T4r(2)−T4r(1))/(T3t(2)−T3t(1))
B34={D34・(T4r(1)−T4r(2))+T4r(1)・T3t(2)−T4r(2)・T3t(1)}/(T3t(2)−T3t(1))
補正係数算出部340は、上記のような計算をすべての主局と従局の組み合わせについて実行し、それぞれの組み合わせにおけるスケールとオフセットを算出する。これにより、各基地局装置200−1〜200−7において独立して計時される時刻をいずれか1つの基地局装置において計時される時刻に補正することが可能となる。
なお、上式(6)においては、スケールA34およびオフセットB34を求めるために2組の同期時刻を用いるものとしたが、3組以上の同期時刻を用いて複数の解を算出し、例えば最小二乗法により1通りのスケールA34およびオフセットB34を求めても良い。また、周期的に同期信号が送信される場合、新たな同期時刻が取得されるたびに、最新の2組以上の同期時刻を用いてスケールA34およびオフセットB34を求めても良い。これらを実行することにより、さらに正確な補正係数を算出することが可能となる。また、ここでは、基地局装置の時刻を1次式(例えば式(1)および式(2))によって他の基地局装置の時刻に補正できるものとして説明したが、基地局装置の時刻の補正が2次式やそれ以上の高次式によって補正できる場合にも、上記と同様の考え方によって補正係数を求めることができる。
図5に戻って、端末時刻取得部350は、基地局I/F部310を介して、基地局装置200−1〜200−7から端末信号の受信時刻(以下「端末時刻」という)を取得する。具体的には、端末時刻取得部350は、基地局装置200の端末用受信処理部270に保持された受信時刻を、基地局装置200の識別情報および受信データに含まれる移動端末装置100の識別情報とともに取得する。
測位演算部360は、複数の基地局装置から取得された端末時刻を補正した上で、補正後の端末時刻の時間差を求めてTDOA方式により移動端末装置100の位置を求める。具体的には、測位演算部360は、補正係数算出部340によって算出された補正係数を用いて、複数の基地局装置から取得された端末時刻をいずれか1つの基地局装置における時刻に補正する。そして、測位演算部360は、補正後の端末時刻の時間差を算出し、時間差から移動端末装置100の位置を算出する。
ここで、測位演算部360による移動端末装置100の測位について説明しておく。移動端末装置100の未知の座標を(X,Y)、端末信号を受信したn個の基地局装置200の既知の座標をそれぞれ(X1,Y1)、・・・、(Xn,Yn)、i番目の基地局装置とj番目の基地局装置における端末時刻の差分をTij、光速をCとすると、以下の式(7)が成立する。
したがって、移動端末装置100の位置を特定するためには上式(7)をX、Yについて解けば良い。このとき、測位演算部360は、一般には、最小二乗法を用いたニュートン法による繰り返し計算によって上式(7)を解く。すなわち、移動端末装置100の位置の初期値を(X0,Y0)とすると、残差行列△Rは、以下の式(8)のようになる。
このため、初期値の補正項は、以下の式(9)となり、補正項△X、△Yが所定値以下になるまで、初期値X0、Y0に補正項△X、△Yが加算されて式(8)および式(9)の演算が繰り返される。
主局タイマ比較部370は、補正係数算出部340によって算出される補正係数に基づいて主局において計時される時刻を比較し、主局間の時刻のずれが所定の閾値以上となっているか否かを判定する。すなわち、主局タイマ比較部370は、複数の主局における時刻の関係式(例えば式(3))を参照して、この関係式があらかじめ主局に対して指示された同期信号の送信タイミングと矛盾するか否かを判定する。上述したように、主局からの同期信号の送信タイミングは、主局選択部320によって指示されており、異なる主局の送信タイミングには所定の間隔が設けられている。一方で、同期時刻取得部330には各主局による同期信号の送信時刻が取得され、この送信時刻から補正係数が求められている。そこで、主局タイマ比較部370は、各主局による同期信号の送信タイミングにあらかじめ指示された間隔が設けられているか否かを判定する。
主局タイマ調整部380は、主局間の時刻のずれが所定の閾値以上となっている場合に、主局において計時される時刻を調整する。具体的には、主局タイマ調整部380は、主局となっている基地局装置200のタイマ部240によって計時される時刻の調整を指示する。このとき、主局タイマ調整部380は、すべての主局による同期信号の送信タイミングがあらかじめ指示されたタイミングとなるようにタイマ部240の調整を指示する。
次いで、上記のように構成された測位装置300の動作について、図6に示すフロー図を参照しながら説明する。
本実施の形態においては、初期設定時や所定の周期ごとに主局選択部320によって主局と従局の分類が行われる(ステップS101)。すなわち、主局選択部320によって、基地局装置200−1〜200−7の接続状況が調査され、その結果に基づいて同期信号を送信する主局が選択され、それぞれの主局に対して同期信号の送信タイミングが指示される。なお、主局の選択については、後に詳述する。
主局選択部320によって主局が選択されると、主局に選択された基地局装置は、指示された送信タイミングで同期信号を送信する。同期信号の送信時刻は、主局となった基地局装置200の送信時刻保持部223によって保持され、測位装置300の同期時刻取得部330によって取得される(ステップS102)。また、主局から送信された同期信号は、この主局と直接通信可能な主局および従局によって受信され、これらの主局および従局の受信時刻保持部263によって同期信号の受信時刻が保持される。同期信号の受信時刻は、測位装置300の同期時刻取得部330によって取得される(ステップS103)。ここで、同期時刻取得部330によって取得された同期時刻(すなわち送信時刻および受信時刻)は、それぞれの基地局装置200のタイマ部240によって独立して計時された時刻に基づいている。したがって、この時点の同期時刻は、統一された基準に基づく時刻とはなっていない。
同期時刻取得部330によって同期時刻が取得されると、補正係数算出部340によって、同期時刻を用いて基地局装置間の時刻のずれを補正する補正係数が算出される(ステップS104)。すなわち、同期信号を送信した主局における時刻とこの同期信号を受信した主局または従局における時刻との関係式が補正係数算出部340によって求められる。そして、補正係数算出部340によって、すべての基地局装置200−1〜200−7の間に関する補正係数が算出されたか否かが判断され(ステップS105)、未算出の補正係数がある場合には(ステップS105No)、同期時刻取得部330による同期時刻の取得と補正係数算出部340による補正係数の算出とが繰り返される。
そして、すべての基地局装置200−1〜200−7の間に関する補正係数が算出されると(ステップS105Yes)、各基地局装置において計時される時刻の関係式が得られたことになり、すべての基地局装置200−1〜200−7における時刻をいずれか1つの基地局装置における時刻に補正することが可能となる。これは、本実施の形態において、すべての2つの主局の組み合わせが直接通信可能か、または少なくとも1つの共通の基地局装置と通信可能となるように主局が選択されているため、すべての基地局装置200−1〜200−7における時刻を同期信号の送信時刻および受信時刻によって直接的または間接的に関係付けることができることによっている。
こうして各基地局装置200−1〜200−7における時刻を統一して補正することが可能になった後、移動端末装置100が端末信号を送信すると、この端末信号は、移動端末装置100の通信可能範囲内にある基地局装置200によって受信される。そして、端末信号の受信時刻は、基地局装置200の端末用受信処理部270によって保持され、測位装置300の端末時刻取得部350によって取得される(ステップS106)。取得された端末時刻は、端末信号を受信した基地局装置200のタイマ部240によって独立して計時された時刻に基づいているため、異なる基地局装置200から取得された端末時刻をそのまま用いて時間差を求めることはできない。
そこで、測位演算部360によって、補正係数算出部340によって算出された補正係数が用いられることにより、各基地局装置200から取得された端末時刻がいずれか1つの基地局装置において計時される時刻に補正される(ステップS107)。これにより、すべての端末時刻が同一の基準に基づく時刻となり、互いに比較することが可能となる。そして、測位演算部360によって、補正後の端末時刻の時間差が算出され(ステップS108)、TDOA方式により移動端末装置100の位置が特定される(ステップS109)。
なお、ここでは、各基地局装置200−1〜200−7の補正係数の算出と移動端末装置100の位置特定とが順次行われるものとして説明したが、これらの処理が非同期にそれぞれ繰り返し行われるようにしても良い。その場合には、移動端末装置100から端末時刻が取得された際に保持されている最新の補正係数を用いて測位演算を行えば良い。
次に、本実施の形態に係る主局選択処理について、具体的に例を挙げながら図7に示すフロー図を参照して説明する。なお、以下に説明する主局選択処理は、主に測位装置300の主局選択部320によって実行される。
主局選択部320は、初期設定時や所定の周期ごとに、全基地局装置の接続状況を調査する(ステップS201)。ここでは、例えば基地局装置B1〜B14が図8に示すように互いに等間隔に配置されているものとする。そして、各基地局装置は、紙面向かって上下左右方向には2つ先の基地局装置と通信可能であり、紙面向かって上下左右方向と45度の角度を成す方向には1つ先の基地局装置と通信可能であるものとする。ただし、これらの条件を満たす2つの基地局装置であっても、間に障害物が存在する場合には、通信不能であるものとする。したがって、主局選択部320による接続状況調査によって、例えば基地局装置B1については、基地局装置B2、B3、B4、およびB6の4つと通信可能であるとの結果が得られる。
図9は、接続状況調査によって判明した、各基地局装置が通信可能な基地局装置(接続局)の数を示す図である。図9を参照すると、例えば基地局装置B1の接続局は上述したように4つであり、基地局装置B2の接続局は、基地局装置B1、B3、B4、およびB7の4つである。基地局装置B2と基地局装置B5の間には障害物が存在するため、基地局装置B5は、基地局装置B2の接続局とはならない。このような各基地局装置の接続数が判明すると、主局選択部320は、接続数が最も少ない最少接続局のいずれか1つを選択する(ステップS202)。すなわち、図9においては、接続数が4つである基地局装置B1、B2、B10、およびB14が最少接続局であるため、ここでは、基地局装置B1が選択されたものとする。
そして、最少接続局B1の接続局のうち、接続数が最も多い基地局装置が最初に主局として選択される(ステップS203)。すなわち、基地局装置B1が選択された最少接続局である場合には、基地局装置B1の接続局である基地局装置B2、B3、B4、およびB6のうち、接続数が8つで最も多い基地局装置B4が主局となる。同時に、基地局装置B4の接続局は、すべて従局に分類される。ここでは、基地局装置B1、B2、B3、B5、B6、B7、B8、およびB11の8つが従局となる。この時点で、未分類の基地局装置はB9、B10、B12、B13、およびB14の5つである。
そして、これらの未分類の基地局装置のうち、既に分類された基地局装置の接続局については、主局または従局に分類された基地局装置を除外した接続数が新たに求められる(ステップS204)。すなわち、未分類の基地局装置のうち、基地局装置B9、B10、B12、およびB13について、改めて未分類の基地局装置のみに着目した接続数が求められる。この接続数を図10に示す。なお、図10においては、黒丸が主局を示しており、白丸が従局を示している。また、基地局装置B14は、いずれの主局および従局にとっても接続局となっていないため、接続数の更新対象とはなっていない。
未分類の基地局装置の接続数が更新されると、接続数が更新された基地局装置のうち、接続数が最も多い基地局装置のいずれか1つが主局として選択される(ステップS205)。すなわち、更新後の接続数が4である基地局装置B9またはB13が主局となる。ここでは、例えば基地局装置B9が主局となるものとすると、図11に示すように、黒丸で示す基地局装置B4およびB9が主局となり、白丸で示すその他のすべての基地局装置が従局となる。そして、基地局装置B4およびB9は、いずれも基地局装置B8と通信可能であり、2つの主局の組み合わせについて、直接通信可能か、または少なくとも1つの共通の基地局装置と通信可能となるという条件が満たされていることがわかる。
このようにして新たに主局が選択されると、すべての基地局装置が主局または従局に分類されたか否かが判断され(ステップS206)、未分類の基地局装置がある場合には(ステップS206No)、再び接続数が更新されて新たに主局が選択される。また、すべての基地局装置が主局または従局に分類されると(ステップS206Yes)、最初に選択された最少接続局(ここでは基地局装置B1)以外にも、まだ選択されていない最少接続局があるか否かが判断される(ステップS207)。この判断が実行されるのは、最初に選択された最少接続局が異なれば、選択される主局の組み合わせも異なる可能性があり、より主局の数を少なくすることができる可能性があるという理由によっている。
そして、未選択の最少接続局がある場合には(ステップS207No)、未選択の最少接続局のうちいずれか1つが選択され、上記と同様に主局の組み合わせが決定される。最終的に、すべての最少接続局が最初に選択されて、それぞれの最少接続局に関する主局の組み合わせが決定されると(ステップS207Yes)、主局の数が最少となる組み合わせが実際の主局および従局の配置となる(ステップS208)。すなわち、主局選択部320は、主局の数が最少となる組み合わせにおける主局に対して、同期信号の送信タイミングを指示する。
このように主局選択部320が主局を選択することにより、すべての2つの主局の組み合わせが直接通信可能か、または少なくとも1つの共通の基地局装置と通信可能となる。また、接続数に応じて主局と従局を分類していくことにより、測位システム内のすべての基地局装置を効率良く分類することができ、主局の数を最小限に留めることができる。したがって、複数の主局を配置した場合でも、すべての基地局装置における時刻を統一して補正することができるとともに、同期信号の干渉が発生する可能性を低減することができる。結果として、移動端末装置100から送信された端末信号の複数の基地局装置における受信時刻をいずれか1つの基地局装置における時刻にそろえて、移動端末装置100の正確な位置を特定することができる。
ところで、本実施の形態においては、上述したように複数の基地局装置における時刻を補正していずれか1つの基地局装置における時刻に合わせることが可能となる。この前提として、主局および従局における同期信号の送受信が適正に実行されている必要がある。すなわち、各主局から送信される同期信号が互いに干渉することがなければ、それぞれの主局における時刻が多少ずれていても、測位装置300において、いずれか1つの基地局装置の時刻に補正することができる。しかし、主局における時刻が大きくずれると、それぞれの主局から送信される同期信号が互いに干渉することがあり、正確な補正係数の算出ができなくなる虞がある。そこで、本実施の形態に係る測位装置300には、主局タイマ比較部370および主局タイマ調整部380が設けられている。以下、主局タイマ比較部370および主局タイマ調整部380による主局の時刻調整の具体例について説明する。
ここでは、主局および従局が例えば図12に示すように配置されているものとする。図12において、黒丸は主局を示し、白丸は従局を示す。すなわち、基地局装置B3、B6、B8、B11、およびB13が主局であり、他の基地局装置が従局である。この主局と従局の配置においては、任意の2つの主局の組み合わせについて、直接通信可能(例えばB11とB13)か、または少なくとも1つの共通の基地局装置と通信可能(例えばB3とB6が共通してB4と通信可能)となっている。したがって、各主局から送信される同期信号の干渉が生じなければ、すべての基地局装置における時刻を統一基準の下で補正することができる。
時刻の補正は、測位装置300の補正係数算出部340が補正係数を算出し、それぞれの基地局装置における時刻と基準となる1つの基地局装置における時刻との関係式を求めることで可能となる。このとき、主局タイマ比較部370は、補正係数を用いた関係式から、すべての主局による同期信号の送信時刻を統一基準の下で監視する。すなわち、主局タイマ比較部370は、各主局による同期信号の送信時刻をいずれか1つの基地局装置における時刻に補正した上で、それぞれの送信時刻間の間隔を監視する。そして、主局タイマ比較部370は、それぞれの送信時刻間の間隔が所定の範囲内に収まるか否かを判定する。
具体的には、例えば図13の上図に示すように、初期状態では、主局選択部320からの指示により、各主局B3、B6、B8、B11、およびB13が20ms間隔で同期信号を送信しているものとする。各主局は、それぞれのタイマ部240で独立して計時しながら、周期的に同期信号を送信するが、一定時間経過後、それぞれの主局における時刻のずれにより、図13の下図に示すように、各主局からの同期信号の送信タイミングが互いにずれてくる。主局タイマ比較部370は、この送信タイミングのずれを補正係数算出部340によって求められる関係式に基づいて監視し、送信タイミングのずれが所定の閾値以上となったか否かを判定する。
図12に示した基地局装置の配置の場合、図13における主局B3およびB6の間の送信間隔401は、これらの主局から送信された同期信号がいずれも従局B4またはB5によって受信されているため、従局B4またはB5における受信時刻を用いた関係式から求められる。同様に、主局B3およびB8の間の送信間隔402は、従局B5における受信時刻を用いた関係式から求められ、主局B8およびB11の間の送信間隔403は、従局B9における受信時刻を用いた関係式から求められる。また、主局B11およびB13の間の送信間隔404は、これらの主局間における同期信号の送受信時刻を用いた関係式から求められる。したがって、主局タイマ比較部370は、各主局からの同期信号の実際の送信間隔を求めることができる。そして、主局タイマ比較部370は、実際の送信間隔と送信間隔の初期値である20msまたは20msの倍数とを比較し、両者の差が所定範囲内であるか否かを判定する。
この結果、実際の送信間隔と初期値との差が所定範囲内であれば、複数の主局から送信される同期信号の干渉が生じることはなく、同期信号を用いた測位装置300における補正係数の算出により、各基地局装置の時刻を十分に補正することが可能である。一方、実際の送信間隔と初期値との差が所定範囲外であれば、実際の送信間隔が過小または過大であるため、複数の主局から送信される同期信号の干渉が生じる可能性があり、同期信号を用いた時刻の補正ができないことがある。このため、実際の送信間隔と初期値との差が所定範囲外となった場合は、主局タイマ調整部380がそれぞれの主局におけるタイマ部240を調整し、それぞれの主局から同期信号が送信される送信間隔が初期値と等しくなるようにされる。
これにより、複数の主局から送信される同期信号が干渉することを未然に防止することができ、常に主局から送信された同期信号を用いた補正係数の算出が可能となる。結果として、複数の基地局装置における時刻をいずれか1つの基地局装置における時刻に補正することができ、移動端末装置100から送信された端末信号の受信時刻を統一された基準の時刻に補正した上で移動端末装置100の正確な位置を特定することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、任意の2つの主局の組み合わせについて、直接通信可能か、または少なくとも1つの共通の基地局装置と通信可能となるように主局を選択し、主局から送信される同期信号の送信時刻および受信時刻に基づいて各基地局装置における時刻の補正係数を算出し、移動端末装置から送信された端末信号の受信時刻を統一された基準の時刻に補正する。このため、各基地局装置が独立して計時している時刻をいずれか1つの基地局装置における時刻に補正することができ、測位システム内のすべての基地局において計時される時刻が同期するように確実に補正し、移動端末の測位精度の低下を防止することができる。
なお、上記一実施の形態においては、測位装置300が基地局装置200−1〜200−7とは別体として設けられるものとしたが、測位装置300がいずれか1つの基地局装置200−1〜200−7に一体的に設けられていても良い。また、上記一実施の形態においては、図7に示した主局選択処理の際、最少接続局が複数存在すればすべての最少接続局を最初に選択し、主局の数が最も少なくなる組み合わせを選択するものとしたが、いずれか1つの最少接続局から決定された主局を最終的な主局の組み合わせとしても良い。この場合には、主局の数を最少にできない可能性があるが、主局選択処理に要する時間の短縮を図ることができる。さらに、上記一実施の形態において説明した時刻補正処理および主局選択処理をコンピュータが読み取り可能な形式で記述したプログラムを作成し、このプログラムをコンピュータに実行させることにより、基地局装置における時刻の補正や基地局装置の主局および従局への分類を実行することも可能である。
以上の一実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)複数の基地局において独立に計時される時刻を補正する時刻補正装置であって、
共通の基地局と通信可能な位置に配置された2つの基地局を主局として選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された2つの主局において計時される時刻を示すそれぞれの同期信号が送信された送信時刻およびそれぞれの同期信号が共通の基地局によって受信された受信時刻を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された送信時刻および受信時刻に基づいて2つの主局によって計時される時刻のずれを補正する補正係数を算出する算出手段と
を有することを特徴とする時刻補正装置。
(付記2)前記選択手段は、
共通の基地局と通信可能な位置に配置された2つの基地局に加えて、互いが直接通信可能な位置に配置された2つの基地局を主局として選択することを特徴とする付記1記載の時刻補正装置。
(付記3)前記取得手段は、
直接通信可能な2つの主局における同期信号の送信時刻および受信時刻を取得することを特徴とする付記2記載の時刻補正装置。
(付記4)前記選択手段は、
前記複数の基地局のうち主局として選択される基地局の数が最小となるように主局を選択することを特徴とする付記1記載の時刻補正装置。
(付記5)前記選択手段は、
選択した2つの主局に対して、それぞれ異なる同期信号の送信タイミングを指示することを特徴とする付記1記載の時刻補正装置。
(付記6)前記選択手段によって選択された2つの主局による同期信号の送信タイミングを監視する監視手段と、
前記監視手段によって監視された送信タイミングが所定の範囲外にあるときに、2つの主局によって計時される時刻を調整する調整手段と
をさらに有することを特徴とする付記1記載の時刻補正装置。
(付記7)前記算出手段は、
前記取得手段によって取得された送信時刻および受信時刻と主局および共通の基地局の間の距離とを用いて補正係数を算出することを特徴とする付記1記載の時刻補正装置。
(付記8)移動端末から送信された端末信号が複数の基地局それぞれにおいて受信された端末信号受信時刻を取得する端末時刻取得手段と、
前記端末時刻取得手段によって取得されたそれぞれの端末信号受信時刻を前記算出手段によって算出された補正係数によって補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正されて得られた時刻を用いて前記移動端末の位置を特定する測位手段と
をさらに有することを特徴とする付記1記載の時刻補正装置。
(付記9)複数の基地局において独立に計時される時刻を補正する時刻補正プログラムであって、コンピュータに、
共通の基地局と通信可能な位置に配置された2つの基地局を主局として選択する選択ステップと、
前記選択ステップにて選択された2つの主局において計時される時刻を示すそれぞれの同期信号が送信された送信時刻およびそれぞれの同期信号が共通の基地局によって受信された受信時刻を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得された送信時刻および受信時刻に基づいて2つの主局によって計時される時刻のずれを補正する補正係数を算出する算出ステップと
を実行させることを特徴とする時刻補正プログラム。
(付記10)複数の基地局において独立に計時される時刻を補正する時刻補正方法であって、
共通の基地局と通信可能な位置に配置された2つの基地局を主局として選択する選択ステップと、
前記選択ステップにて選択された2つの主局において計時される時刻を示すそれぞれの同期信号が送信された送信時刻およびそれぞれの同期信号が共通の基地局によって受信された受信時刻を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得された送信時刻および受信時刻に基づいて2つの主局によって計時される時刻のずれを補正する補正係数を算出する算出ステップと
を有することを特徴とする時刻補正方法。
(付記11)複数の基地局を同期信号を送信する主局と同期信号を送信しない従局とに分類する基地局分類プログラムであって、コンピュータに、
前記複数の基地局間がそれぞれ通信可能であるか否かを調査し、各基地局が通信可能な接続局の数を取得する調査ステップと、
前記調査ステップにおける調査の結果、接続局の数が最小の最少接続局を選択する選択ステップと、
前記選択ステップにて選択された最少接続局の接続局であって接続局の数が最大の基地局を主局に分類するとともに、この主局のすべての接続局を従局に分類する第1分類ステップと、
前記第1分類ステップ後に未分類の基地局のうち、既分類の基地局と通信可能な基地局であって未分類の接続局の数が最大の基地局を主局に分類するとともに、この主局のすべての接続局を従局に分類する第2分類ステップと
を実行させることを特徴とする基地局分類プログラム。
(付記12)前記選択ステップは、
複数の最少接続局がある場合に、1つずつ順に最少接続局を選択し、
前記第1分類ステップは、
前記選択ステップにて選択されるそれぞれの最少接続局に関して別々に分類を繰り返し、
前記第2分類ステップは、
前記第1分類ステップにおける分類ごとに別々に分類を繰り返し、最終的に主局に分類された基地局の数が最小となる分類を採用することを特徴とする付記11記載の基地局分類プログラム。
(付記13)複数の基地局を同期信号を送信する主局と同期信号を送信しない従局とに分類する基地局分類方法であって、
前記複数の基地局間がそれぞれ通信可能であるか否かを調査し、各基地局が通信可能な接続局の数を取得する調査ステップと、
前記調査ステップにおける調査の結果、接続局の数が最小の最少接続局を選択する選択ステップと、
前記選択ステップにて選択された最少接続局の接続局であって接続局の数が最大の基地局を主局に分類するとともに、この主局のすべての接続局を従局に分類する第1分類ステップと、
前記第1分類ステップ後に未分類の基地局のうち、既分類の基地局と通信可能な基地局であって未分類の接続局の数が最大の基地局を主局に分類するとともに、この主局のすべての接続局を従局に分類する第2分類ステップと
を有することを特徴とする基地局分類方法。