JP2009120532A - 糖及び糖鎖認識機構を利用する物質送達用及びバイオイメージング用バイオナノカプセル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】糖鎖もしくはレクチンを提示した、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)タンパク質を構成要素とするバイオナノカプセル。
【選択図】図1
Description
「糖鎖もしくはレクチンを提示した、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)タンパク質を構成要素とするバイオナノカプセル。」
ZZタグは、Lys(K)が豊富であり、後でビオチン化する際に側鎖のアミノ基がビオチン化できるため、ビオチンを数多く結合させることができるために好ましい(図13、図14参照)。ZZタグ以外にも、Lys(K)残基の豊富なペプチドを導入したB型肝炎ウイルスタンパク質改変体は、ビオチン化の効率が高くなるために好ましい。なお、ビオチン化されたアミノ酸(位置)の検出は、必要であればB型肝炎ウイルスタンパク質またはその改変体をトリプシンなどのプロテアーゼで消化し、LC-MS、MS/MSなどで解析することにより決定できる。
-(CH2CH2O)n-
(式中、nは2〜500、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜50、さらに好ましくは4〜10の整数を示す。)
1つの好ましい実施形態において、本発明のビオチン化剤の好ましいスペーサーはポリアルキレングリコール構造を有する。該ポリアルキレングリコール構造は、エステル、アミドまたはチオエーテル結合を介して、好ましくはアミド結合を介してビオチンおよびB型肝炎ウイルスタンパク質またはその改変体と各々結合するのが好ましい。
X-(CH2)m1-NH-{CO(CH2)nNH}m2-(ビオチニル)
(式中、Xはスルホコハク酸イミドオキシカルボニル基、コハク酸イミドオキシカルボニル基、テトラフルオロフェノキシカルボニル、シアノメチルオキシカルボニル、p-ニトロフェニルオキシカルボニル、I, Br, Clなどのアミノ基と反応してアミド(NHCO)またはアミノアルキル基を形成可能な活性エステル残基、ハロゲン原子を表す。m1は2〜6の整数を表し、m2は0〜50、好ましくは1〜10、より好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜3の整数を示す。)
実施例1
糖鎖提示型ZZ-BNCの作製法
1)ビオチン及び蛍光標識ZZ-BNCの作製法
ZZ-BNC(特開2004−2313号公報、実施例D参照) 1 mg に1 mg/ml NHS-Rhodamine(PIERCE)若しくはNHS-Cy7(GE Healthcare) 100μl(100μg,0.1μmol)及び 6.7 mg/ml EZ-Link Sulfo-NHS-LC-LC-Biotin(PIERCE) 100μl(0.67 mg 1.34μmol)を混和して室温で1時間 反応させた。Sephadex G-25 Fine (GE Healthcare)を充填したEcono-Pac Disposable Chromatography Columns(BIO-RAD)に、反応させたサンプルを投入し、フラクションを回収し、蛍光色のあるフラクションをまとめ、サンプルとして回収した。
回収サンプルをAmicon Ultra-4 Ultracel-100k(MILLIPORE)を用いて2380Gで10分遠心し、限外濾過により1mlまで濃縮した。濃縮したSampleを吸光度測定及びEZ Biotin Quantitation Kit(PIERCE)を用いて定量した(濃度:0.3〜0.4 mg/ml(タンパク質量)、Rhodamine若しくはCy7提示量:220〜330個/BNC、Biotin提示量:440〜770個/BNC)。サンプルを100 μg(タンパク質量)ずつ分注し、0.25g/ml スクロースを20 μl加えて(Final 5%)凍結乾燥し、−20度で保存した。
(i)蛍光標識β-D-Galactose提示型ZZ-BNCの作製法(その1)
1 mg/ml NeutrAvidin Biotin Binding Protein(PIERCE)と1 mg/ml β-D-Galactose-PAA-biotin (GlycoTech)をmol比で4:1若しくは4:2若しくは4:4の割合で混和し、室温で30分反応させた。混和したサンプルにNeutrAvidin Biotin Binding Proteinに対して2倍モル量のビオチン及び蛍光標識ZZ-BNCを加えて、室温で30分反応させた。
1 mg/ml NeutrAvidin Biotin Binding Protein(PIERCE)と1 mg/ml β-D-Galactose-sp-biotin (GlycoTech)をmol比で1:1若しくは1:2若しくは1:4の割合で混和し、室温で30分反応させた。混和したサンプルにNeutrAvidin Biotin Binding Proteinに対して2倍モル量のビオチン及び蛍光標識ZZ-BNCを加えて、室温で30分反応させた。
1 mg/ml NeutrAvidin Biotin Binding Protein(PIERCE)と1 mg/ml Sialyl Lex-PAA-biotin (GlycoTech)をmol比で4:1若しくは4:2若しくは4:4の割合で混和し、室温で30分反応させた。混和したサンプルにNeutrAvidin Biotin Binding Proteinに対して2倍モル量のビオチン及び蛍光標識ZZ-BNCを加えて、室温で30分反応させた。
1 mg/ml NeutrAvidin Biotin Binding Protein(PIERCE)と1 mg/ml Sialyl Lex-sp-biotin (GlycoTech)をmol比で1:1若しくは1:2若しくは1:4の割合で混和し、室温で30分反応させた。混和したサンプルにNeutrAvidin Biotin Binding Proteinに対して2倍モル量のビオチン及び蛍光標識ZZ-BNCを加えて、室温で30分反応させた。
1 mg/ml NeutrAvidin Biotin Binding Protein(PIERCE)と1 mg/ml Lewis B-Tetrasaccharide BP-probe (ポリマー型、GlycoTech)をmol比で1:1の割合で混和し、室温で30分反応させた。混和したサンプルにNeutrAvidin Biotin Binding Proteinに対して0.2〜4倍モル量のビオチン及び蛍光標識ZZ-BNCを加えて、室温で30分反応させた。これらの溶液に、Lewis B-Tetrasaccharide中のフコースを特異的に認識する、ヒイロチャワンタケレクチン結合アガロースビーズ溶液を加えて10分間反応させた後、低速遠心にてビーズを回収した。得られたビーズを洗浄し、Laemmli’s sample bufferで処理した後、Western Blotに供した。Anti-BNC抗体を用いて、ブロットを行ったところ、ZZ-BNCタンパク質のバンドが観察された。このことからLewis B-Tetrasaccharide BP-probeは、ZZ-BNC表面に提示されていることが明らかとなった(図1)。以上から、同様な製法による上記β-D-Galactose提示型ZZ-BNC及びSialyl Lex提示型ZZ-BNCについてもZZ-BNC表面に糖鎖が提示されていると考えられた。さらに、このようにして得られた糖鎖提示型ZZ-BNCについて、Zetasizerにより粒子径を測定したところ、直径50nm前後であることが判明した(図2)。
蛍光標識糖鎖提示型ZZ-BNCによる培養細胞のイメージング、並びに、DNA及び蛍光ビーズ封入糖鎖提示型ZZ-BNCによる培養細胞への物質送達
(i) 培養細胞のイメージング
1)蛍光標識β-D-Galactose提示型ZZ-BNCによる哺乳類肝細胞のイメージング
10%FBS含有DMEMで培養したMH1C1(ラット肝臓癌細胞株)を35 mm径plateに播種し、37度で12時間培養した。培養細胞上清に、Rhodamine標識β-D-Galactose提示型ZZ-BNCまたは陰性コントロールとしてビオチン化Rhodamine標識ZZ-BNCを5μg(粒子分のタンパク質として)添加して、37度で12時間培養した。Hoechst 33342 (Invitrogen)を終濃度0.5μg/mlになるように添加して、37度で30分間インキュベートした後、PBS(-)で細胞を洗浄後、4%PFA(パラフォルムアルデヒド)を添加して、室温で10分間固定した。封埋剤(90% グリセリン、100mM Tris-HCl pH8.0、0.1% p-Phenylendiamine)を加え、共焦点レーザー顕微鏡下で蛍光を観察した。その結果、陰性コントロールであるビオチン化Rhodamine標識ZZ-BNCに比べ、Rhodamine標識β-D-Galactose提示型ZZ-BNCは、標的細胞へと特異的に送達された(図3)。これは、哺乳類肝細胞表面に広く発現するアシアロ糖タンパク質受容体をBNC表面のβ-D-Galactoseが認識して取り込まれたためと考えられた。
10%FBS含有EMEMで培養したA549(ヒト肺癌細胞株)を35mm径Plateに播種し、37度で24時間培養した。一方、A549細胞を35mm径Plateに播種し、11時間培養した後、Recombinant Human IL-1beta(BioVision)を終濃度1ng/mlになるよう添加して13時間培養することで、Sialyl Lexの標的となるセレクチンをA549細胞表面に発現誘導させた。各々の培養細胞に、Rhodamine標識Sialyl Lex提示型ZZ-BNCまたは陰性コントロールとしてビオチン化Rhodamine標識ZZ-BNCを粒子量(タンパク質量)として2μg若しくは5μg添加して37度で1時間、3時間、6時間、12時間、24時間インキュベートした。各時間の細胞にHoechst 33342 (Invitrogen)を終濃度0.5μg/mlになるように添加して37度で30分間インキュベートした。PBS(-)で細胞を洗浄後、4%PFAを添加して室温で10分間インキュベートした後、封埋剤(90% グリセリン、100mM Tris-HCl pH8.0、0.1% p-Phenylendiamine)を加え、共焦点レーザー顕微鏡下で観察した。その結果、Recombinant Human IL-1betaを添加したA549細胞に対して、陰性コントロールであるRhodamine標識ZZ-BNCに比べ、Rhodamine標識Sialyl Lex提示型 ZZ-BNCは特異的に集積した。未処理のA549に対しては何れも集積しなかった。これは、炎症部位の哺乳類細胞の表面に発現するセレクチンをBNC表面のSialyl Lexが認識して取り込まれたためと考えられた。
1)DNA封入β-D-Galactose提示型ZZ-BNCによる哺乳類肝細胞への遺伝子導入
1.5 mg 脂質を含有するCoatsome EL-01-D(日本油脂)1バイアルに250 μg/mlのDNA(プラスミド:CLONTECH社のEGFP発現ベクター) 1 ml溶液を加えて溶解させて室温で15分間反応させた。β-D-Galactose提示型ZZ-BNC100 μg(BNC由来タンパク質量として)に対して脂質量が100 μgになるように混和して室温で15分間反応させた(終容量1mL)。MH1C1(ラット肝臓癌細胞株)を10%FBS含有DMEMを含む35mm径plateに播種し、37度で24時間インキュベートした。上記BNCを100 μl(10μg BNC含有)ずつ細胞に添加して37度で48時間培養した。細胞培養液を調製した後、蛍光光度計を用いてDNAから生成されたGFP由来の蛍光を測定した。その結果、陰性コントロールであるビオチン化ZZ-BNCに比べてβ-D-Galactose提示型ZZ-BNCの方が、標的細胞への高い遺伝子導入効率を示した。また、Sialyl Lex提示型ZZ-BNCをβ-D-Galactose提示型ZZ-BNCの替りに使用したところ、糖鎖依存的にRecombinant Human IL-1betaを添加したA549細胞にのみGFP遺伝子の発現が確認された。以上から、DNA封入糖鎖提示型ZZ-BNCは、糖鎖依存的に標的培養細胞に遺伝子導入できる事が判明した。さらに、DNAの替りに蛍光ビーズを封入した糖鎖提示型ZZ-BNCは、糖鎖依存的に標的培養細胞に蛍光ビーズ送達できる事も判明している。
蛍光標識糖鎖提示型ZZ-BNCによる生体内イメージング、並びに、DNA封入糖鎖提示型ZZ-BNCによる生体内への物質送達
(i) Cy7標識β-D-Galactose提示型ZZ-BNCによる肝臓のイメージング
上記Cy7標識β-D-Galactose提示型ZZ-BNC、または陰性コントロールとしてビオチン化Cy7標識ZZ-BNCを、マウス(BALBcA/Jcl)に粒子量(タンパク質量)として10μg静脈内投与して0時間〜48時間の間1時間ごとにマウス肝臓若しくは肝癌腫瘍部をOV100 In vivo imaging system(Olympus)で観察した。また、ラット(Wister)に粒子量(タンパク質量)として同じバイオナノカプセルを500μg静脈内投与して0時間〜48時間の間1時間ごとにラット肝臓を同じくOV100 In vivo imaging system(Olympus)で観察した。その結果、ビオチン化Cy7標識ZZ-BNCは肝臓組織に投与後3−4時間で集積し12時間後には排除されていたが、Cy7標識β-D-Galactose提示型ZZ-BNCは投与後3−4時間の集積度は高く、かつ12時間後においても排除されていなかった。この結果から、糖鎖提示型ZZ-BNCは生体内における任意の部位(臓器や細胞)を標的化できるものと考えられた。
上記方法に基づきホタルルシフェラーゼ遺伝子発現ベクター(Promega社)を封入したβ-D-Galactose提示型ZZ-BNCを作製した。陰性コントロールとして、同DNAを封入したビオチン化ZZ-BNCを用意した。マウス(BALBcA/Jcl)に粒子量(タンパク質量)として50μg静脈内投与して72時間後、マウス肝臓及び腫瘍臓器を摘出し、常法に従って組織抽出液を作製し、ルシフェリン(Promega社)を用いて各組織での単位タンパク質量あたりのルシフェラーゼ遺伝子の発現量を化学発光を利用して定量した。その結果、β-D-Galactose提示型ZZ-BNCを投与されたマウス肝臓において、他の臓器よりも高いルシフェラーゼの発現が確認された。また、陰性コントロールのビオチン化ZZ-BNCを投与されたマウスの肝臓におけるルシフェラーゼの発現量は極めて低かった。
M. tuberculosis(DIFCO)を終濃度6.0 mg/mlで添加し、完全フロイントアジュバント(CFA, Sigma)でエマルジョン化(100%, v/v)したヒトIRBPペプチド(GPTHLFQPSLVLDMAKVLLD)200 μgをC57BL/6マウスに皮下免疫した。追加のアジュバントとして同様にCFAでエマルジョン化(0.1%, v/v)した百日咳毒(PTX)0.1 μgを腹腔内投与した。細隙燈顕微鏡で観察し、グレード2ぶどう膜炎(Experimental Autoimmune Uveoretinitis: EAU)マウスとした(Namba K, Ogasawara K, 2000, Thurau SR, Chan CC 1997)。本マウスに於いて、網膜全域の血管内皮細胞にE-セレクチンの強い発現が確認されている。上記方法で作製したCy7標識Sialyl Lex提示型ZZ-BNCおよびその陰性コントロールとしてCy7標識ビオチン化ZZ-BNCを粒子量(タンパク質量)として10μg静脈内投与し、4時間後に2% (wt/vol) エバンスブルー色素(Sigma) 100μlを静脈投与し、10分後に屠殺した。網膜全載(retinal wholemounts)をChan-Lingら(Chan-Ling, Microsc. Res. Techn., 1997)の方法に従い調製した。全網膜組織を4%(v/w)パラホルムアルデヒドで60分間固定後スライドガラスへマウントし、共焦点レーザー顕微鏡(FV1000, Olympus)で観察した。その結果、Cy7標識ビオチン化ZZ-BNCに比べてCy7標識Sialyl Lex提示型ZZ-BNCの方が網膜血管内皮細胞周囲の炎症部位へ特異的に集積した。
上記方法でGFP発現プラスミド(CLONTECH社)を封入したSialyl Lex提示型ZZ-BNCおよび同DNA封入ビオチン化ZZ-BNC を各10 μg(BNCのタンパク質量として)ずつ、EAUマウスの静脈内に投与して1週間後、2% (wt/vol) エバンスブルー色素(Sigma) 100μlを静脈投与し、10分後に屠殺した。網膜全載(retinal wholemounts)をChan-Lingら(Chan-Ling, Microsc. Res. Techn., 1997)の方法に従い調製した。全網膜組織を4%(v/w)パラホルムアルデヒドで60分間固定後スライドガラスへマウントし、共焦点レーザー顕微鏡(FV1000, Olympus)で遺伝子発現を観察した。その結果、陰性コントロールに比べ、Sialyl Lex提示型ZZ-BNCは、網膜血管内皮細胞周囲の炎症部位におけるGFP遺伝子の高い発現が確認された。
ウシ・タイプ2コラーゲン(Cosmo-Bio, Tokyo, Japan)を0.1M酢酸に溶解(4mg/mL)し、50 μlを同量の完全H37Raアジュバンド(Difco, Detroit, MI)に懸濁させたもの(計100 μl)を、9週齢のDBA/1Jマウスの皮下に投与した。3週後に同様に調整したものを皮下に投与し、ブーストをかける事によりCIAマウスを作成した。本マウスにおいてCy7標識Sialyl Lex提示型ZZ-BNCおよびその陰性コントロールとしてCy7標識ビオチン化ZZ-BNCを、粒子量として10μg静脈内投与し、0時間〜48時間の間1時間ごとにマウス関節炎症部位をOV100 In vivo imaging system(Olympus)で観察した。その結果、陰性コントロールに比べてCy7標識Sialyl Lex提示型ZZ-BNCの方がマウス関節炎症部位へ特異的に高度に集積した。さらに、CIAマウスの替りにエールリッヒ担癌ラット(Wister系)に粒子量として500μg静脈内投与し観察した場合にも、炎症部位特異的なBNCの集積が担癌部位において観察された。
上記方法でGFP発現プラスミド(CLONTECH社)を封入したSialyl Lex提示型ZZ-BNCおよび同DNA封入ビオチン化ZZ-BNC を各10 μg(BNCのタンパク質量として)ずつ、エールリッヒ担癌マウスの静脈内に投与して1週間後、腫瘍部位をIV 100 Intravital Laser Scanning Microscope(Olympus)を用いて観察し、GFP由来の蛍光の存在を評価した。その結果、陰性コントロールに比べ、Sialyl Lex提示型ZZ-BNCは、腫瘍部位での高いGFP遺伝子発現が確認された。
レクチン提示型ZZ-BNCの作製法
1)ビオチン化ZZ-BNCの作製法
超純水を用いてSulfo-NHS-Biotin(Pierce)を溶解して10 mMの溶液を作製し、1mlの1 mg/ml zz-BNC溶液に74.2 μlを加えて常温で1時間反応させた。1M Tris-HCl pH8.5溶液を50 μl加えて反応を停止させた。反応液をZeba Desalt Spin Column (Pierce)に供し、溶出液を分取した。各分画中のビオチン濃度を定量し、ZZ-BNCに該当する分画を集め、タンパク質濃度を定量した。ビオチン化ZZ-BNCを100 μgずつ分注し、0.25g/ml スクロース溶液を20 μl加えて凍結乾燥した。上記計算の結果、ZZ-BNCを構成するZZ-HBsAgタンパク質1分子あたり、7〜8分子のビオチンが結合していた。動的光散乱を用いて各ZZ-BNCの粒子径およびゼータ電位を測定したところ、ZZ-BNCとビオチン化ZZ-BNCの間で大差はなかった(粒子径約40 nm, ゼータ電位約50 mV)。
ここではモデルのレクチンとして、ビオチン化leukoagglutinating phytohemagglutinin(L4-PHA, 生化学工業)を用いた。該レクチンとストレプトアビジン(生化学工業)がモル比にて1:1となるように混和し、5分間常温で反応させた。更に、同溶液をレクチン:ストレプトアビジン:ZZ-HBsAgタンパク質が1:1:1となるようにビオチン化ZZ-BNC溶液に添加し、30分間常温で反応させた。レクチンがZZ-BNC表面に提示されていることを確認するため、反応が完了した溶液中にanti-BNC抗体結合ビーズ(ダイナボット社IMx同梱品)を添加して免疫沈降を行った。回収したビーズを洗浄し、Laemmli’s sample bufferで熱処理した後、Western Blotに供した。Streptavidinを用いてBlot中のビオチン分子を検出したところ、ビオチン化ZZ-BNCタンパク質およびビオチン化レクチンの分子量に該当する位置にバンドが観察された(粒子径に関しては図4上、Blotに関しては図4下)。また、ビオチン化ZZ-BNCに提示されているレクチンを定量するため、Quarts Crystal Microbalance (アズワン)を用いて結合量を算定したところ、1個のZZ-BNCの表面に約36個のストレプトアビジンと約6個のレクチンが提示されていることが判明した。
蛍光標識レクチン提示型ZZ-BNCによる培養細胞のイメージング、並びに、DNA・蛍光ビーズ封入レクチン提示型ZZ-BNCによる培養細胞へのDNA・蛍光ビーズ送達
L4-PHAレクチンの標的分子であるβ(1→6)結合型N-アセチルグルコサミンを多量に発現するN-acetyltransferase V(GnT-V)安定発現MKN45ヒト胃癌細胞(高転移性癌細胞モデル:MKN45-GnT-V)、同じくGnT-Vを過剰発現するWiDrヒト大腸癌細胞(高転移性大腸癌細胞モデル:WiDr-GnT-V)、及び、陰性コントロール細胞としてGnT-Vを過剰発現していないMKN45細胞及びWiDr細胞(図5上の左:細胞抽出液を用いたL4-PHAレクチン結合タンパク質の検出;図5下:L4-PHAレクチンを用いた蛍光法による細胞観察)を24穴primaria細胞培養プレート(Falcon)に1×104個撒種し、24時間培養した。
ルシフェラーゼ発現プラスミドpCMV-Luc(Promega社)を封入したL4-PHA提示型ZZ-BNCを作製した。また、陰性コントロールとして同DNA封入ビオチン化ZZ-BNCを作製した。具体的には、DNA溶液を超純水で希釈し、250μg/mlにした。この溶液1 mlを用いて凍結乾燥カチオン性リポソームCoatsome-EL-1-D(日本油脂)を溶解し、DNA-リポソーム複合体(リポプレックス)を得た。このリポプレックス溶液67μlに33μlの超純水を加えて全量を100 μlとし、この全量を用いて100 μgの凍結乾燥ビオチン化ZZ-BNCを溶解し、DNA封入ビオチン化ZZ-BNCを得た。その後、上記方法に従ってDNA封入L4-PHA提示型ZZ-BNCとした。次に、上記細胞に各BNC 1μg(BNCのタンパク質量として)を投与し、37℃にて3時間培養して細胞をリン酸緩衝液で洗浄した後、更に72時間培養した。その後、細胞抽出液を調製して、ルシフェラーゼアッセイキット(Promega)を用いて、細胞内ルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、L4-PHA提示型ZZ-BNCは、L4-PHAとβ(1→6)結合型N-アセチルグルコサミンの親和性により、β(1→6)結合型N-アセチルグルコサミンを発現する高転移性癌細胞に特異的にDNAを送達できることが判明した(図7)。
培養細胞への巨大物質送達モデルとして、蛍光ビーズ(Rhodamine標識polysteleneビーズ、4%水溶液、粒径100 nm:Invitrogen)を用いた。蛍光ビーズ溶液を超純水で希釈し、2 mlの1%ビーズ溶液を作製した。この溶液2 mlを用いて、凍結乾燥アニオン性リポソームCoatsome EL-1-A(日本油脂)1バイアルを溶解して、蛍光ビーズ封入リポソームを作製した。作製したリポソーム溶液3.28μlを超純水で100 μlにメスアップし、凍結乾燥済みビオチン化ZZ-BNC 100 μgを溶解することで蛍光ビーズ封入ビオチン化ZZ-BNCを得た。その後、上記方法に従って蛍光ビーズ封入L4-PHA提示型ZZ-BNCとした。陰性コントロールとして、蛍光ビーズ封入ビオチン化ZZ-BNCを用意した。次に、上記細胞に各BNC 1μg(BNCのタンパク質量として)を投与し、37℃にて3時間培養して、細胞をリン酸緩衝液で洗浄した後、4% パラホルムアルデヒド含有リン酸緩衝液を用いて細胞を15分間常温で固定した後、共焦点レーザースキャン顕微鏡FV-1000(オリンパス)を用いて蛍光ビーズ由来の蛍光を観察した。その結果、L4-PHA提示型ZZ-BNCは、L4-PHAとβ(1→6)結合型N-アセチルグルコサミンの親和性により、β(1→6)結合型N-アセチルグルコサミンを発現する高転移性癌細胞に特異的に蛍光ビーズを送達できることが判明した。
蛍光標識レクチン提示型ZZ-BNCによる生体内高転移性腫瘍イメージング、及び、DNA封入レクチン提示型ZZ-BNCによる生体内高転移性腫瘍部位へのDNA送達
高転移性大腸癌モデル細胞であるWiDr-GnT-V細胞1×106個を、50% MatriGel(BD Bioscience)含有Dulbecco’s Minimal Eagle’s Medium 100μl中で懸濁し、ヌードマウス(5週齢、オス:日本クレア)背部皮下に移植し、腫瘍モデル(Xenograftヌードマウス)を作製した。2〜3週間後、腫瘍直径が1 cm程度に達した後、実験に供した。陰性コントロール動物として、通常のWiDr細胞を腫瘍として同様に保持するXenograftヌードマウスを作製した。次に、体重1gあたりDiD標識L4-PHA提示型ZZ-BNC 1 μg(BNC由来のタンパク質量として)を、尾静脈より投与して、蛍光の腫瘍への集積をin vivo imaging system OV100(オリンパス)を用いて経時的に観察した。その結果、DiD標識L4-PHA提示型ZZ-BNCは、高転移性腫瘍へ特異的に集積した。本集積は経時的なものであり、投与後から徐々に集積量が増大していき、24時間で最大に達することも判明した(図8)。
上記の方法によりルシフェラーゼ発現プラスミドpCMV-Luc(Promega社)を封入したL4-PHA提示型ZZ-BNCを作製し、上記腫瘍モデル(Xenograftヌードマウス)に体重1gあたりDNA封入L4-PHA提示型ZZ-BNC 1 μg(BNC由来のタンパク質量として)を、尾静脈より投与して、5日後に腫瘍組織を摘出した。ホモジェナイザーを用いて組織を破砕し、破砕液中のルシフェラーゼ活性を、ルシフェラーゼアッセイキットを用いて測定した。その結果、腫瘍破砕液中のルシフェラーゼ活性は、陰性コントロール動物由来の腫瘍に比べ、高転移性腫瘍で格段に上昇していた。
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- 糖鎖もしくはレクチンを提示した、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)タンパク質を構成要素とするバイオナノカプセル。
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2007
- 2007-11-14 JP JP2007296127A patent/JP2009120532A/ja active Pending
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