JP2009100746A - 治療ターゲットとしての新規ユビキチンリガーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、ユビキチンリガーゼの新規の基質ターゲッティングサブユニットをコードするヌクレオチドの発見、同定および特徴づけに関する。
【解決手段】
本発明は、ユビキチンリガーゼの新規の基質ターゲッティングサブユニット、すなわち、FBP1、FBP2、FBP3、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24、およびFBP25をコードするヌクレオチド、トランスジェニックマウス、ノックアウトマウス、宿主細胞発現系、ならびに本発明のヌクレオチドによりコードされるタンパク質を包含する。本発明はさらに、増殖性疾患を治療するためにユビキチンリガーゼおよびそれらの基質をターゲッティングするように設計された治療プロトコルならびに医薬組成物を包含する。
【選択図】なし

Description

1.はじめに
本発明は、ユビキチンリガーゼの新規な基質ターゲティングサブユニットをコードするヌクレオチド配列の発見、同定および特徴づけに関する。本発明は、ユビキチンリガーゼの新規な基質ターゲティングサブユニット、即ち、FBP1、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP17、FBP18、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、およびFBP25をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、トランスジェニックマウス、ノックアウトマウス、宿主細胞発現系、並びに本発明のヌクレオチドによってコードされるタンパク質を包含する。本発明は、癌、主要な日和見感染症、免疫疾患、特定の心血管疾患および炎症疾患といった増殖性および分化性疾患を治療するための、新規なユビキチンリガーゼの活性をモジュレートする潜在的治療薬(例えば、小分子、化合物または新規ユビキチンリガーゼの誘導体および類似体)を同定するスクリーニングアッセイに関する。本発明はさらに、増殖性疾患を治療するためにユビキチンリガーゼおよびその基質をターゲティングするように設計された治療プロトコルおよび医薬組成物を包含する。
2.発明の背景
2.1 細胞周期調節タンパク質
真核細胞の細胞周期は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼのファミリーによって調節される。セリン/トレオニンプロテインキナーゼは、その活性にサイクリンと呼ばれる調節サブユニットとの会合を必要とするため、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)と呼ばれている(非特許文献1)。Cdkは、各種の抗増殖性シグナルに応答して細胞周期の停止を仲介するCdk阻害剤(Cki)とも会合する。これまでに、配列相同性に基づいて、Ckiの2つのファミリー、即ち、p21、p27およびp57を含むCip/Kipファミリー並びにp15、p16、p18およびp20を含むInkファミリーが哺乳動物細胞で同定されている(非特許文献2)。
2.2 ユビキチン経路
ユビキチン介在型タンパク質分解は、p27、p53、p300、サイクリン、E2F、STAT-1、c-Myc、c-Jun、EGF受容体、IκBα、NFκBおよびβ-カテニンを含む多くの細胞性調節タンパク質の定時破壊を制御する非リソソーム性タンパク質分解の重要な経路である(非特許文献3の総説を参照されたい)。ユビキチンは、進化上高度に保存された76個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、全ての真核細胞中に豊富に存在する。ユビキチン経路では、ポリユビキチン鎖が標的基質へ共有結合した後、多機能性プロテアソーム複合体によって該標的が分解される(最近の総説については非特許文献3を参照されたい)。タンパク質のユビキチン化を調節する多くの過程が公知である。まず、ユビキチン活性化酵素(E1)がユビキチンと高エネルギーチオエステルを形成し、次いで多くのユビキチン結合酵素(UbcまたはE2)のうちの1つの反応性システイン残基へ転移される。最終的に、ユビキチンは、ユビキチンリガーゼ(E3)タンパク質を必要とする場合も必要としない場合もある反応において、標的タンパク質に含まれる反応性リシン残基のε-アミノ基へ転移される。数多くのユビキチンリガーゼが高レベルの基質特異性を確保している。
2.3 ユビキチン経路およびF-boxタンパク質によるG1期の調節
数種の生物においてなされた遺伝学的および生化学的研究では、細胞周期のG1期がユビキチン経路によって調節されることが判明している。サイクリン、Ckiおよび他のG1調節タンパク質のタンパク質分解は、酵母中では、ユビキチン結合酵素Ubc3(Cdc34とも呼ばれる)によって制御され、3つのサブユニット(Cdc53、Skp1および数多くのF-boxタンパク質のうちのいずれか1つ)から形成されるE3ユビキチンリガーゼによっても制御される(非特許文献4の総説を参照されたい)。F-boxタンパク質(FBP)は、サイクリンFで最初に同定されたモチーフ(F-box)を含むためこのように呼ばれており、Skp1との相互作用に必要である(非特許文献5)。さらに、F-boxタンパク質はまた、WD-40ドメインまたはロイシンリッチリピート(LRR)タンパク質-タンパク質相互作用ドメインのいずれかを含む。Cdc53(Cul Aとも呼ばれる)およびSkp1は、異なるF-boxタンパク質をそれぞれ含有する少なくとも3つの異なるE3の形成に関与していると考えられる。これらのリガーゼは、Skp1、Cul AおよびF-boxタンパク質からなる類似のタンパク質モジュールであり、SCFと呼ばれている。リガーゼとその基質との相互作用は、F-boxサブユニットを介して起こる。S. cerevisiaeにおいてこれまでに同定されている3つのSCFは以下の通りである:SCFCdc4(CkiであるSic1およびFar1、複製因子Cdc6、および転写アクチベーターGcn4を、F-boxタンパク質Cdc4を介して基質として動員)、SCFGrr1(G1サイクリンCln1およびCln2をF-boxタンパク質GRR1を介して基質として動員)、並びにSCFMet30(G1サイクリンCln3をF-boxタンパク質MET30を介して基質として動員;最近の総説については非特許文献3および非特許文献4を参照されたい)。
ヒトCki p27の細胞内レベルは分解によって主に調節され、p27の分解はユビキチン系によって制御されることが知られている(非特許文献6)。同様に、他のG1ヒト調節タンパク質(サイクリンE、サイクリンD1、p21、E2F、β-カテニン)の分解もユビキチン経路によって制御される(非特許文献6の総説を参照されたい)。しかしながら、G1制御タンパク質の分解に関与する特異的な酵素は未だ同定されていない。
S. cerevisiaeのcul Aに相同な6個の遺伝子(CUL1、2、3、4a、4bおよび5)からなるファミリーが、ESTデータベースを検索することで同定されている(非特許文献7)。ヒトSkp1およびF-boxタンパク質Skp2(5つのLRRを含む)は、in vivoでサイクリンAと会合する2つのタンパク質として同定されており、そのためS期キナーゼ会合タンパク質1および2と呼ばれている(非特許文献8)。
2.4 癌および他の増殖性疾患におけるユビキチン経路の調節解除(deregulation)
細胞が急速に増殖すると癌が発症する。細胞増殖は、正および負のシグナルの正味のバランスによって決定される。正のシグナルの方が強い場合、または負のシグナルが存在しない場合には、細胞は急速に増殖して癌が発症する。
通常、細胞は、どのようなタンパク質の量も厳密に制御しており、過剰なタンパク質または不要なタンパク質を排除している。そのために、細胞は、不要なタンパク質をユビキチンと呼ばれる長鎖分子によって特異的に標識している。これらの分子はその後、プロテアソームと呼ばれる複合体によって認識および破壊される。しかしながら、腫瘍中ではこのような機構の全てが正しく進行せず、正のシグナル(発癌性タンパク質)を過剰に蓄積させてしまうか、負の調節因子(腫瘍抑制タンパク質)の異常分解を引き起こしている。従って、腫瘍抑制タンパク質の不在下または過剰な発癌性タンパク質の存在下では、細胞は絶えず増殖を続け、腫瘍を形成する(非特許文献9;非特許文献10の総説を参照されたい)。例えば、p53腫瘍抑制因子(非特許文献11の総説を参照)、推定オンコジーンβ-カテニン(非特許文献12の総説を参照)並びにCki p27(非特許文献9;非特許文献10;非特許文献13の総説を参照)の異常なユビキチン介在型分解は腫瘍発生と相関しており、腫瘍中ではユビキチン化酵素をコードする一部の遺伝子に突然変異が生じている可能性があるとの仮説が開かれている。
最初の証拠からは、ヒトF-boxタンパク質が、その相同体が酵母中でG1調節タンパク質をユビキチン化することから、G1調節タンパク質のユビキチン化に関わっていることが明らかになっている(下記参照)。特定の腫瘍中では細胞周期調節タンパク質の分解が抑制されていないことが観察されており、調節解除されたユビキチンリガーゼが細胞周期調節因子の分解の変化に関わっている可能性がある。十分に解明されている例はユビキチンリガーゼMdm2の調節解除であり、過剰に発現することでその基質(腫瘍抑制因子p53)のレベルを低下させてしまっている。
HunterおよびPines, 1994, Cell 79:573 SherrおよびRoberts, 1999, Genes & Dev. 13:1501 Pagano, 1997, FASEB J. 11:1067 E. Pattonら, 1998, TIG. 14:6 Baiら, 1996, Cell 86:263 Paganoら, 1995, Science 269:682 Kipreosら, 1996, Cell 85:829 Zhangら, 1995, Cell 82:915 Ciechanover, 1998, EMBO J. 17:7151 Spataro, 1998, Br. J. Cancer 77:448 J. BrownおよびM. Pagano, 1997, Biochim. Biophys. Acta1332:1 Peifer, 1997, Science 275:1752 Lloyd, 1999, Am. J. Pathol. 154:313
3.発明の概要
本発明は、新規F-boxタンパク質、並びに増殖性および分化性疾患を治療するために新規F-boxタンパク質および該タンパク質と基質との相互作用をターゲティングするように設計された治療プロトコルおよび医薬組成物に関する。本発明はまた、新規F-boxタンパク質の基質を同定するスクリーニングアッセイ、並びに新規ユビキチンリガーゼおよびその基質との相互作用をモジュレートまたはターゲティングする薬剤を同定するスクリーニングアッセイに関する。本発明はさらに、既知のF-boxタンパク質の新規な基質(例えば、既知F-boxタンパク質Skp2の2つの新規な基質E2Fおよびp27)の同定に基づくスクリーニングアッセイに関する。本発明のスクリーニングアッセイを使用して、増殖性または分化性疾患、およびF-boxタンパク質の発現レベルまたは酵素活性レベルに関連する他の疾患を治療するための潜在的な治療薬を同定することが可能である。
本発明は、本発明者らによる、F-boxモチーフを有する新規ユビキチンガーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸の発見、同定および特徴づけに一部基づくものである。本明細書中に記載する、ユビキチンリガーゼ複合体の26個の新規な基質ターゲティングサブユニットFBP1、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25を、まず、ユビキチンリガーゼ複合体の成分との相互作用に基づいて同定し(FBP1、FBP2、FBP3a、FBP4、FBP5、FBP6およびFBP7の場合)、また、これらのタンパク質とDNAデータベースに含まれるヌクレオチド配列との配列比較によって同定した(FBP3b、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25の場合)。ユビキチンリガーゼ複合体のこれらの新規な基質ターゲティングサブユニットは、それぞれF-boxモチーフを含み、このモチーフを介してユビキチンリガーゼ複合体の他の成分と相互作用する。さらに、これらのFBPには、基質との相互作用に関与すると考えられるWD-40ドメインとLRRを含むものもあり、また、FBP中では未だ同定されていないが、ロイシンジッパー、リングフィンガー(ring finger)、へリックス・ループ・へリックスモチーフ、プロリンリッチモチーフおよびSH2ドメイン等のタンパク質-タンパク質相互作用モジュールを含む可能性があるものもある。本発明はまた、本発明者らによる、FBP特異的基質p27およびβ-カテニンの発見および同定、並びに新規FBP基質の同定方法に一部基づくものである。また、新規F-boxタンパク質をコードする遺伝子の一部についてはマッピングを行い、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、鼻咽頭癌、小細胞肺癌、胃肝細胞癌(gastric hepatocarcinoma)、バーキットリンパ腫および副甲状腺腫において高頻度で変化する染色体部位に位置することを見出した。最後に、本発明はまた、本発明者らによる、FBPタンパク質の野生型またはドミナントネガティブ体を発現するトランスジェニックマウスの作製、およびFBPノックアウトマウスの作製にも一部基づくものである。
本発明は、以下のヌクレオチド配列、このようなヌクレオチド配列を発現する宿主細胞、およびこのようなヌクレオチド配列の発現産物を包含する:(a)ヒトヌクレオチドを含む哺乳動物のFBP1、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP17、FBP18、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23およびFBP25をコードするヌクレオチド配列ならびにその遺伝子産物、(b)ユビキチンリガーゼ複合体の新規な基質ターゲティングサブユニットの一部をコードするヌクレオチド、およびこのようなヌクレオチド配列によって特定されるポリペプチド産物(例えば、F-boxモチーフ、基質結合ドメイン、WD-40ドメインおよびロイシンリッチリピート等が挙げられるが、これらに限定されない)、(c)ドメインの全てまたは一部が欠失または変化している新規ユビキチンリガーゼの突然変異体をコードするヌクレオチド、およびこのようなヌクレオチド配列によって特定されるポリペプチド産物、(d)新規ユビキチンリガーゼを含む融合タンパク質または別のポリペプチドに融合したそのドメインの1つをコードするヌクレオチド。
本発明はさらに、ユビキチンリガーゼ複合体の新規な基質ターゲティングサブユニットのアゴニストおよびアンタゴニスト、例えば、小分子、大分子、天然のF-box結合タンパク質と競合する突然変異体、および抗体、並びにユビキチンリガーゼの遺伝子発現の阻害に使用し得るヌクレオチド配列(例えば、アンチセンスおよびリボザイム分子、遺伝子調節もしくは置換構築物)またはユビキチンリガーゼの遺伝子発現の増強に使用し得るヌクレオチド配列(例えば、ユビキチンリガーゼ遺伝子を強力なプロモーター系の制御下に置く発現構築物)、およびユビキチンリガーゼ・トランスジーンを発現するトランスジェニック動物または新規ユビキチンリガーゼを発現しないノックアウト動物を包含する。
さらに、本発明は、ユビキチンリガーゼ活性をモジュレートする(即ち、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用する)化合物を同定するための、ユビキチンリガーゼ複合体の新規な基質ターゲティングサブユニットの遺伝子および/または遺伝子産物の使用方法に関する。このような化合物を薬剤として使用し、増殖性または分化性疾患(例えば、癌)を制御することができる。特に、本発明は、β-カテニンとFBP1との相互作用またはp27とSkp2との相互作用を阻害する方法を包含する。実際に、これらの相互作用を阻止し得る薬剤を使用して、細胞増殖および/または細胞成長をモジュレートすることが可能である。
さらに、本発明は、増殖性または分化性疾患に対する潜在的治療薬として、新規リガーゼの活性をモジュレートする、ユビキチンリガーゼ複合体の新規な基質ターゲティングサブユニットの誘導体および類似体を同定するスクリーニング方法を包含する。本発明は、ユビキチンリガーゼ複合体の新規成分(FBP1、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25またはこれらの誘導体、断片もしくはドメイン、例えば、F-boxモチーフを含む)と相互作用するタンパク質をスクリーニングする方法を提供する。本発明によれば、該スクリーニング方法では、タンパク質-タンパク質相互作用を同定する既知のアッセイ、例えば、ファージ展示アッセイまたは酵母ツーハイブリッドアッセイ系またはこれらの改変アッセイを利用することが可能である。
さらに、本発明は、FBP遺伝子配列および/またはFBP遺伝子産物配列を、増殖性疾患といったFBP関連疾患の診断評価、遺伝子検査および/または予後に利用する方法に関する。例えば、本発明は、増殖性疾患といったFBP関連疾患を診断する方法に関し、このような方法は、患者由来のサンプルにおけるFBP遺伝子発現を測定するか、または、このような疾患の有無もしくは発症と相関するFBP突然変異を、このような疾患を示すことが疑われる哺乳動物のゲノム中に検出することを含んでなるものである。特に、本発明は、被験体(例えば、ヒト患者)が、(i)図3〜図28のA部に示されているタンパク質またはその相同体をコードするFBP遺伝子の突然変異、(ii)FBP遺伝子の発現ミス、(iii)FBPタンパク質の発現ミスのうちの1つ以上を特徴とする疾患に罹患している危険性を判定する方法を包含する。
本発明を、ユビキチンリガーゼ複合体の新規な基質ターゲティングサブユニットの同定および特徴づけを示す実施例によって説明する。本発明の実施例にはさらに、(i)FBP1とβ-カテニンとの特異的相互作用、並びに(ii)既知のFBPであるSKp2と細胞周期調節タンパク質E2Fおよびp27との特異的相互作用の同定を示す。これらの相互作用によって、β-カテニンがFBP1の特異的な基質であり、一方、E2Fおよびp27がSkp2の基質であることが示唆される。実際に、本発明の実施例からは、β-カテニンがFBP1の特異的な基質であり、p27がSkp2の基質であることが明らかである。新規なFBPと相互作用するタンパク質の同定は、本明細書に記載の方法を用いて、または別のアプローチによって行うことができる。
3.1 定義
本明細書において用語「F-boxモチーフ」とは、F-box含有タンパク質とSkp1との相互作用に必要であるとして同定された約40個のアミノ酸のストレッチをいう。F-boxモチーフに共通の配列が、Baiら、1996, Cell 86:263-274(非特許文献5)に記載されており、この全体を参照により本明細に組み入れる。
本明細書において用語「F-boxタンパク質」(FBP)とは、F-boxモチーフを含むペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をいう。
FBPはユビキチンリガーゼ複合体の基質-標的化サブユニットであるが、本明細書において用語「ユビキチンリガーゼ」とはF-boxモチーフを含みSkp1と相互作用するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をいう。
本明細書において用語「FBP遺伝子産物と機能的に等価」とは、内因性FBP遺伝子産物の生物学的活性を少なくとも1つ示す遺伝子産物をいう。例えば、機能的に等価のFBP遺伝子産物としては、Skp1と相互作用してユビキチンリガーゼ複合体と会合することができるものがある。このようなユビキチンリガーゼ複合体は、サイクリンまたはckiタンパク質などの特定の細胞周期調節タンパク質をユビキチン化しうる。
本明細書において用語「標的化する」とは、遺伝子発現、酵素活性、または他の細胞因子との相互作用を阻害、ブロックまたは妨げることを意味する。
本明細書において用語「治療薬」とは、増殖性疾患または関連疾患を軽減するか、またはそのような疾患の治療を補助する分子、化合物または療法(treatment)のいずれかをいう。
本明細書において用語「WD-40ドメイン」、「ロイシンリッチリピート」、「ロイシンジッパー」、「リングフィンガー」、「ヘリックス-ループ-ヘリックスモチーフ」、「プロリンリッチモチーフ」および「SH2ドメイン」とは、タンパク質-タンパク質相互作用の媒介に関与する可能性のあるドメインをいう。「WD-40ドメイン」とは、トリプトファンおよびアスパラギン酸残基に富み、3量体Gタンパク質のβサブユニットに共通に見られる40アミノ酸リピートの共通配列をいう(Neerら、1994, Nature 371:297-300および該文献中の引用文献を参照:これらの全体を参照により本明細書に組み入れる)。「LRR」または「ロイシンリッチリピート」はロイシンに富んだ配列であり、また、タンパク質-タンパク質相互作用の媒介に関与することが知られている(KobeおよびDeisenhofer, 1994, Trends. Biochem. Sci. 19:415-421を参照;該文献は参照によりその全体を本明細書に組み入れる)。「ロイシンジッパー」ドメインとは、7残基ごとにロイシン残基を有するアミノ酸のストレッチを含んでなるドメインであり、転写因子の大きなファミリーに存在するものをいう(Landshultzら、1988, Science 240:1759-64; Sudolら、1996, Trends Biochem. 21:1-3およびKochら、1991, Science 252:668-74を参照)。
4.図面の説明
(図面の説明については下記を参照のこと)
5.詳細な説明
本発明は、新規F-boxタンパク質、およびF-boxタンパク質の新規基質に関する。本発明は、新規F-boxタンパク質の基質を同定するように設計された並びにF-boxタンパク質およびそれらの基質の相互作用および/または活性をモジュレーションする小分子および化合物を同定するように設計されたスクリーニングアッセイに関する。
本発明は、新規F-boxタンパク質の基質を同定するための及び潜在的治療剤を同定するためのスクリーニングアッセイに関する。本発明は更に、新規および公知の両方のF-boxタンパク質の新規基質の同定に基づくスクリーニングアッセイに関する。本発明のスクリーニングアッセイは、増殖性疾患の治療用に新規ユビキチンリガーゼを標的化する及び対応基質との相互作用を標的化するように設計されたプロトコールで及び医薬組成物として使用しうる潜在的治療剤を同定するために用いることができる。1つの特定の実施形態においては、本発明は、本出願人らにより同定された新規基質β-カテニン、p27およびE2FとFBPとの相互作用を標的化するスクリーニングアッセイおよび潜在的治療剤に関する。
本発明は更に、該新規F-boxタンパク質をコードするヌクレオチド、タンパク質およびペプチドの用途、ならびに新規ユビキチンリガーゼに対する抗体(これは、例えば、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用しうる)、ユビキチンリガーゼの活性または発現を抑制するアンタゴニスト、またはユビキチンリガーゼ活性を活性化する若しくはその発現を増強するアゴニストを含む。また、該新規ユビキチンリガーゼおよびタンパク質をコードするヌクレオチドは、それらの活性を調節または模擬し従って癌および腫瘍形成の治療において潜在的に有効な化合物の同定に有用である。
特に、以下の小節に記載する発明は、該新規ユビキチンリガーゼの機能的ドメイン(例えば、F-boxモチーフ、基質結合ドメインおよびロイシンリッチリピート)に対応するFBP1、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25ポリペプチドまたはペプチド、突然変異型、末端切断型または欠失型(例えば、その1以上の機能的ドメインまたは部分が欠失しているもの)、ユビキチンリガーゼ融合タンパク質、そのような産物をコードするヌクレオチド配列、ならびにそのようなユビキチンリガーゼ産物を産生しうる宿主細胞発現系を含む。
本発明は、FBP1、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FB7P、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25またはそれらの誘導体、断片もしくは類似体を含む該ユビキチンリガーゼ複合体の新規成分と相互作用するペプチドおよびタンパク質に関するスクリーニング方法を提供する。好ましくは、該スクリーニング方法は、後記で更に詳しく説明する酵母ツーハイブリッドアッセイ系またはその変法である。当技術分野で公知の任意の方法、例えば、後記の改変された酵母ツーハイブリッドアッセイ系、複合体中のタンパク質に結合する抗体による免疫沈降およびそれに続く該免疫沈降タンパク質のサイズ分画による分析(例えば、変性または非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるもの)、ウエスタン分析、非変性ゲル電気泳動などにより、タンパク質の誘導体(例えば、断片)および類似体を、結合相手に対する結合に関してアッセイすることができる。
本発明は、該新規ユビキチンリガーゼの活性をモジュレーションする物質を同定するためのスクリーニングアッセイに関する。本発明は、該新規ユビキチンリガーゼの活性をモジュレーションする小分子、化合物、組換えタンパク質、ペプチド、核酸、抗体などをスクリーニングして増殖性または分化性疾患の治療用の潜在的治療剤を同定するためのin vivoおよびin vitroの両方のアッセイを含む。1つの実施形態においては、本発明は、該新規ユビキチンリガーゼと相互作用するタンパク質に関するスクリーニング方法を提供する。
本発明はまた、抗体および抗イディオタイプ抗体、アンタゴニストおよびアゴニスト、ならびに該ユビキチンリガーゼ遺伝子の発現を抑制する化合物またはヌクレオチド構築物(転写因子インヒビター、アンチセンスおよびリボザイム分子または遺伝子もしくは調節配列置換構築物)あるいは該ユビキチンリガーゼの発現を促進する化合物またはヌクレオチド構築物(例えば、ユビキチンリガーゼコード配列がプロモーター、プロモーター/エンハンサーなどの発現制御要素に機能しうる形で連結された発現構築物)を含む。本発明はまた、ヒト形態(またはその突然変異体)を発現するように又は動物の内因性ユビキチンリガーゼの発現を抑制もしくは「ノックアウト」するように遺伝子操作された宿主細胞および動物に関する。
最後に、ユビキチンリガーゼタンパク質産物および融合タンパク質産物 [すなわち、該タンパク質の融合体、または該タンパク質のドメイン(例えば、F-boxモチーフ)]、抗体および抗イディオタイプ抗体(Fabフラグメントを含む)、アンタゴニストまたはアゴニスト(ユビキチン化経路をモジュレーションする化合物を含む)を、増殖性または分化性疾患の治療に使用することができる。したがって、本発明はまた、癌および腫瘍形成を治療するための医薬製剤および方法を含む。
本発明の種々の態様を以下の小節において更に詳しく説明する。
5.1 FBP遺伝子
本発明は、7個の新規ヌクレオチド配列およびそれらの断片、FBP1、FBP2、FBP3a、FBP4、FBP5、FBP6およびFBP7、核酸 [それらの遺伝子産物とSkp1(ユビキチンリガーゼ複合体の成分)との相互作用により同定された新規遺伝子であるもの]を含む核酸分子を提供する。本発明は更に、FBP1、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP17、FBP18、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25のヌクレオチド配列(同定されたFBP遺伝子の核酸配列を本明細書中に記載する)を含む14個の新規核酸分子を提供する。
本明細書で用いる「FBP遺伝子」は以下を意味する:
(a)図3(配列番号1)に示すFBP1のDNA配列、図4(配列番号3)に示すFBP2のDNA配列、図5(配列番号5)に示すFBP3aのDNA配列、図6(配列番号23)に示すFBP3bのDNA配列、図7(配列番号7)に示すFBP4のDNA配列、図8(配列番号9)に示すFBP5のDNA配列、図9(配列番号11)に示すFBP6のDNA配列、図10(配列番号13)に示すFBP7のDNA配列、図11(配列番号25)に示すFBP8のDNA配列、図12(配列番号27)に示すFBP9のDNA配列、図13(配列番号29)に示すFBP10のDNA配列、図14(配列番号31)に示すFBP11のDNA配列、図15(配列番号33)に示すFBP12のDNA配列、図16(配列番号35)に示すFBP13のDNA配列、図17(配列番号37)に示すFBP14のDNA配列、図18(配列番号39)に示すFBP15のDNA配列、図19(配列番号41)に示すFBP16のDNA配列、図20(配列番号43)に示すFBP17のDNA配列、図21(配列番号45)に示すFBP18のDNA配列、図22(配列番号47)に示すFBP19のDNA配列、図23(配列番号49)に示すFBP20のDNA配列、図24(配列番号51)に示すFBP21のDNA配列、図25(配列番号53)に示すFBP22のDNA配列、図26(配列番号55)に示すFBP23のDNA配列、図27(配列番号57)に示すFBP24のDNA配列、図28(配列番号59)に示すFBP25のDNA配列を含有する核酸分子;
(b)図3A(配列番号2)に示すFBP1のアミノ酸配列、図4A(配列番号4)に示すFBP2のアミノ酸配列、図5A(配列番号6)に示すFBP3aのアミノ酸配列、図6A(配列番号24)に示すFBP3bのアミノ酸配列、図7A(配列番号8)に示すFBP4のアミノ酸配列、図8A(配列番号10)に示すFBP5のアミノ酸配列または図9A(配列番号12)に示すFBP6のアミノ酸配列、図10(配列番号14)に示すFBP7のアミノ酸配列、図11(配列番号26)に示すFBP8のアミノ酸配列、図12(配列番号28)に示すFBP9のアミノ酸配列、図13(配列番号30)に示すFBP10のアミノ酸配列、図14(配列番号32)に示すFBP11のアミノ酸配列、図15(配列番号34)に示すFBP12のアミノ酸配列、図16(配列番号36)に示すFBP13のアミノ酸配列、図17(配列番号38)に示すFBP14のアミノ酸配列、図18(配列番号40)に示すFBP15のアミノ酸配列、図19(配列番号42)に示すFBP16のアミノ酸配列、図20(配列番号44)に示すFBP17のアミノ酸配列、図21(配列番号46)に示すFBP18のアミノ酸配列、図22(配列番号48)に示すFBP19のアミノ酸配列、図23(配列番号50)に示すFBP20のアミノ酸配列、図24(配列番号52)に示すFBP21のアミノ酸配列、図25(配列番号54)に示すFBP22のアミノ酸配列、図26(配列番号56)に示すFBP23のアミノ酸配列、図27(配列番号58)に示すFBP24のアミノ酸配列、図28(配列番号60)に示すFBP25のアミノ酸配列を含有するポリペプチドをコードする任意のDNA配列;
(c)配列番号2、4、6、8、10、12または14あるいは図15中のアミノ酸配列のいずれかをコードするDNA配列の相補体に、高度にストリンジェントな条件(例えば、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、65℃におけるフィルター結合DNAに対するハイブリダイゼーション、および0.1 x SSC/0.1% SDS中、68℃での洗浄)(Ausubel. F.M.ら編, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Green Publishing Associates, Inc., and John Wiley & sons, Inc., New Yorkのp.2.10.3)下でハイブリダイズする任意のDNA配列;および/または
(d)配列番号2、4、6、8、10、12または14あるいは図15中のアミノ酸配列のいずれかをコードするDNA配列の相補体に、それほどストリンジェントでない条件(例えば、中等度にストリンジェントな条件、例えば、0.2 x SSC/0.1% SDS中、42℃での洗浄)(Ausubel. F.M.ら編, 1989, 前掲)下でハイブリダイズし、FBP遺伝子産物と機能的に等価な遺伝子産物をコードする任意のDNA配列。
本発明のFBP遺伝子配列は、他の哺乳動物F-boxタンパク質、Skp2、エロンガンA、サイクリンF、マウスMd6をコードする既に記載されている遺伝子(Pagano, 1997,(非特許文献3); Zhangら, 1995,(非特許文献8); Baiら, 1996,(非特許文献5); Skowyaら, 1997, 前掲を参照されたい)を含まないと理解される。さらに、本発明の核酸分子は、GenBank受託番号AC002428、AI457595、AI105408、H66467、T47217、H38755、THC274684、AI750732、AA976979、AI571815、T57296、Z44228、Z45230、N42405、AA018063、AI751015、AI400663、T74432、AA402415、AI826000、AI590138、AF174602、Z45775、AF174599、THC288870、AI017603、AF174598、THC260994、AI475671、AA768343、AF174595、THC240016、N70417、T10511、AF174603、EST04915、AA147429、AI192344、AF174594、AI147207、AI279712、AA593015、AA644633、AA335703、N26196、AF174604、AF053356、AF174606、AA836036、AA853045、AI479142、AA772788、AA039454、AA397652、AA463756、AA007384、AA749085、AI640599、THC253263、AB020647、THC295423、AA434109、AA370939、AA215393、THC271423、AF052097、THC288182、AL049953、CAB37981、AL022395、AL031178、THC197682およびTHC205131中のヌクレオチド配列だけからなる核酸分子を含まないと理解される。
本発明のFBP配列は、真核性ゲノム、好ましくは哺乳動物ゲノム、より好ましくはヒトまたはマウスゲノムに由来する。したがって、本発明のヌクレオチド配列は、酵母ゲノムに由来するものを含まない。特定の実施形態においては、本発明のヌクレオチドは、F-boxモチーフを含有しSkp1に結合する遺伝子産物をコードする、配列番号1、3、5、7、9、11もしくは13または図14に示すDNA配列に高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする哺乳動物ゲノムに由来する任意のDNA配列を含む。特定の実施形態においては、本発明のヌクレオチドは、F-boxモチーフとWD-40、ロイシンリッチ領域、ロイシンジッパーモチーフまたは他のタンパク質-タンパク質相互作用ドメインを含む群から選ばれる別のドメインとを含有しSkp-1に結合する遺伝子産物をコードする、配列番号1、3、5、7、9、11もしくは13に高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする哺乳動物ゲノムに由来する任意のDNA配列を含み、少なくとも300または400ヌクレオチド長である。
FBP配列には、例えば、真核性ゲノムDNA(cDNA)またはcDNA配列が含まれうる。したがって、ある与えられたアミノ酸配列をコードする核酸に言及する場合には、該核酸は、cDNA分子である必要がないばかりでなく、例えば、その与えられたアミノ酸配列をコードするようにプロセシングされるmRNA種が転写されるcDNA配列を意味することもあると理解されるべきである。
本発明で用いるFBP遺伝子はまた、DNA配列(a)〜(d)の縮重変異体を意味しうる。
本発明はまた、前段落のDNA配列(a)〜(d)にハイブリダイズし従って該DNA配列の相補体である哺乳動物核酸に由来する核酸分子(好ましくはDNA分子)を含む。そのようなハイブリダイゼーション条件は、前記のとおり高度にストリンジェントであるか、またはそれほど高度にはストリンジェントでない。該核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)である場合には、高度にストリンジェントな条件は、例えば、6xSSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、37℃(14塩基のオリゴの場合)、48℃(17塩基のオリゴの場合)、55℃(20塩基のオリゴの場合)および60℃(23塩基のオリゴの場合)での洗浄を意味しうる。これらの核酸分子は、例えば、FBP遺伝子の調節において(FBP遺伝子核酸配列の増幅反応におけるプライマーのために及び/又はそのようなプライマーとして)有用なFBP遺伝子アンチセンス分子をコードするか又はそのような分子として作用しうる。FBP遺伝子の調節に関しては、そのような技術は、例えば、癌に関連した細胞増殖を阻止するためにFBP調節経路を調節するのに用いることができる。さらにそのような配列は、FBP遺伝子の調節に同様に有用なリボザイムおよび/または三重らせん配列の一部として使用することができる。さらにまた、そのような分子は、例えば、FBP関連疾患(例えば、増殖性または分化性疾患、例えば、腫瘍形成または癌)を引き起こす原因となる特定のFBP対立遺伝子の存在を検出しうる診断方法の成分として使用することができる。
本発明はまた、
(a)前記のFBPコード配列および/またはそれらの相補体(すなわちアンチセンス)のいずれかを含有するDNAベクター、
(b)前記のFBPコード配列の発現を指令する調節要素に機能しうる形で連結された該コード配列のいずれかを含有するDNA発現ベクター、
(c)宿主細胞内での前記のFBPコード配列の発現を指令する調節要素に機能しうる形で連結された該コード配列のいずれかを含有する遺伝的に操作された宿主細胞を含む。
本発明で用いる調節要素には、誘導および非誘導プロモーター、エンハンサー、オペレーター、および発現を駆動し調節する当業者に公知の他の要素が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような調節要素には、サイトメガロウイルスhCMV前初期遺伝子、SVアデノウイルスの初期または後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージAの主要オペレーターおよびプロモーター領域、Fd外皮タンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、および酵母接合因子のプロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明は更に、本明細書中に開示するDNA配列のいずれかの断片を含む。
1つの実施形態においては、本発明のFBP遺伝子配列は哺乳動物遺伝子配列であり、ヒト配列が好ましい。
さらにもう1つの実施形態においては、本発明のFBP遺伝子配列は、図2、4〜9または15に示すアミノ酸配列に対応するポリペプチド部分(すなわち、それらのアミノ酸配列に対してアミノ酸配列類似性を示すポリペプチド部分)を含有するFBP遺伝子産物をコードする遺伝子配列であり、該対応部分は、FBP遺伝子産物の全長にわたり平均して、示されている配列に対して約50%以上の同一性を示す。
特定の実施形態においては、F-boxをコードする核酸は、配列番号1、3、5、23、7、9、11、13、15、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57または59のcDNA配列、それぞれ図3B、4B、5B、6B、7B、8B、9B、10B、11B、12B、13B、14B、15B、16B、17B、18B、19B、20B、21B、22B、23B、24B、25B、26B、27Bまたは28Bのヌクレオチド配列もしくはそれらのコード領域、またはF-boxタンパク質(例えば、配列番号2、4、6、24、8、10、12、14、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、68または60の配列を有する又はそれぞれ図3A、4A、5A、6A、7A、8A、9A、10A、11A、12A、13A、14A、15A、16A、17A、18A、19A、20A、21A、22A、23A、24A、25A、26A、27Aまたは28Aに示すとおりのタンパク質)をコードする核酸を含む。
本発明は更に、本発明のFBP1、FBP2、FBP3a、FBP4、FBP5、FBP6またはFBP7をコードするヌクレオチド配列(それぞれ配列番号1、3、5、7、9、11および13)のヌクレオチド断片を提供する。そのような断片は、FBP遺伝子配列の少なくとも8ヌクレオチド(すなわち、ハイブリダイズ可能な部分)よりなる。他の実施形態においては、該核酸は、F-box配列の(連続した)少なくとも25ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチドまたは200ヌクレオチド、あるいは完全長F-boxコード配列よりなる。もう1つの実施形態においては、該核酸は、35、200または500ヌクレオチド長より小さい。核酸は一本鎖または二本鎖でありうる。本発明はまた、前記配列にハイブリダイズ可能な又は相補的な核酸に関する。特定の態様においては、F-box遺伝子の少なくとも10、25、50、100もしくは200ヌクレオチドまたは全コード領域に相補的な配列を含む核酸を提供する。
本発明は更に、核酸のヒトゲノムヌクレオチド配列に関する。特定の実施形態においては、F-boxをコードする核酸は、または配列番号1、3、5、7、9、11もしくは13のゲノム配列またはそれらのコード領域、またはFBPタンパク質(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12または14の配列を有するタンパク質)をコードする核酸を含む。本発明は、FBP遺伝子配列の少なくとも8ヌクレオチド(すなわち、ハイブリダイズ可能な部分)よりなる精製された核酸を提供する。他の実施形態においては、該核酸は、FBP遺伝子配列の(連続した)少なくとも25ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチドまたは200ヌクレオチド、あるいは完全長FBP遺伝子コード配列よりなる。もう1つの実施形態においては、該核酸は、35、200または500ヌクレオチド長より小さい。核酸は一本鎖または二本鎖でありうる。本発明はまた、前記配列にハイブリダイズ可能な又は相補的な核酸に関する。特定の態様においては、FBP遺伝子配列の少なくとも10、25、50、100もしくは200ヌクレオチドまたは全コード領域に相補的な配列を含む核酸を提供する。
本明細書に開示するFBP遺伝子配列と共に用いる当技術分野でよく知られた分子生物学的技術により、本明細書に開示するヒトFBPヌクレオチド配列に加えて、他のFBP遺伝子配列を同定し容易に単離することが、過度な実験を行うことなく可能である。例えば、配列番号1、3、5、7、9、11または13に開示するものと同一または異なる遺伝子座の追加的なヒトFBP遺伝子配列を容易に単離することができる。例えば、FBP遺伝子産物のドメインの1以上に対してかなりの相同性を有する及びFBP遺伝子産物と機能的に等価な遺伝子産物をコードするタンパク質をコードするヒトゲノム内の他の遺伝的または物理的位置に、遺伝子が存在しうる。さらに、他の種において存在する相同FBP遺伝子配列を同定し、容易に単離することができる。
本発明のFBPヌクレオチド配列には更に、配列番号1、3、5、7、9、11または13のFBPヌクレオチド配列にコードされるポリペプチドに対して少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%またはそれより高いアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が含まれる。
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の同一性(%)を決定するためには、それらの配列を最適な比較目的のために整列(アライメント)させる(例えば、第2のアミノまたは核酸配列に対する最適なアライメントのために第1アミノ酸または核酸配列の配列内にギャップを導入することができる)。ついで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1配列内の位置が、第2配列内の対応位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占められている場合には、それらの分子はその位置において同一である。それらの2つの配列の間の同一性(%)は、それらの配列により共有される同一位置の数の関数である [すなわち、同一性(%)=(同一重複位置の数/重複位置の合計数)x 100]。1つの実施形態においては、それらの2つの配列は同じ長さである。
また、2つの配列間の同一性(%)の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成されうる。2つの配列の比較に用いる数学的アルゴリズムの好ましい非限定的具体例としては、KarlinおよびAltschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載のとおりに修飾されたKarlinおよびAltschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズムが挙げられる。そのようなアルゴリズムは、Altschulら, 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組込まれる。本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム(スコア = 100、語長 = 12)でBLASTヌクレオチド検索を行うことができる。本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム(スコア = 50、語長 = 3)でBLASTタンパク質検索を行うことができる。比較のためにギャップを含むアライメントを得るためには、Altschulら, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載のとおりにGapped BLASTを用いることができる。あるいは、分子間の遠縁関係を検出する反復検索を行うために、PSI-Blastを使用することができる(Altschulら, 1997, 前掲)。BLAST、Gapped BLASTおよびBSI-Blastプログラムを使用する場合には、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォールトパラメーターを用いることができる(http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。2つの配列の比較に用いる数学的アルゴリズムのもう1つの好ましい非限定的具体例としては、KarlinおよびAltschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載のとおりに修飾されたKarlinおよびAltschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズムが挙げられる。そのようなアルゴリズムは、Altschulら, 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組込まれる。本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム(スコア = 100、語長 = 12)でBLASTヌクレオチド検索を行うことができる。本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム(スコア = 50、語長 = 3)でBLASTタンパク質検索を行うことができる。比較のためにギャップを含むアライメントを得るためには、Altschulら, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載のとおりにGapped BLASTを用いることができる。あるいは、分子間の遠縁関係を検出する反復検索を行うために、PSI-Blastを使用することができる(Altschulら, 1997, 前掲)。BLAST、Gapped BLASTおよびBSI-Blastプログラムを使用する場合には、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォールトパラメーターを用いることができる(http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。2つの配列の比較に用いる数学的アルゴリズムのもう1つの好ましい非限定的具体例としては、MyersおよびMiller, 1988, CABIOS 4:11-17のアルゴリズムが挙げられる。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)内に組込まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを使用する場合には、PAM120重量残余表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティーを使用することができる。
2つの配列間の同一性(%)は、ギャップを許容する又は許容しない前記と同様の技術を用いて決定することができる。同一性(%)を計算する場合には、典型的には、厳密なマッチだけを計数する。
本明細書に開示する配列と同じ遺伝的または物理的位置に存在するFBP遺伝子配列の同定および単離に関しては、そのような配列は、例えば、標準的な配列決定および細菌人工染色体(BAC)技術を用いて容易に得ることができる。
ヒトまたは他の種(例えば、マウス)におけるFBP遺伝子ホモログのクローニングに関しては、本明細書に開示されている単離されたFBP遺伝子配列を標識し、それを使用して、関心のある生物(例えば、マウス)に由来する適当な細胞または組織(例えば、脳組識)から得られたmRNAから構築されたcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。該cDNAライブラリーが、該標識配列が由来する生物型とは異なる生物に由来する場合には、用いるハイブリダイゼーション条件は、より低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件であるべきである。
あるいは、同様に適当なストリンジェンシーの条件を用いて、関心のある生物に由来するゲノムライブラリーをスクリーニングするために、該標識断片を使用することができる。低いストリンジェンシーの条件は、当業者によく知られており、該ライブラリーおよび該標識配列が由来する具体的な生物に応じて、予測可能に様々なものとなろう。そのような条件に関する指針については、例えば、Sambrookら, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, N.Y.; およびAusbelら, 前掲を参照されたい。さらに、本明細書に開示する任意のFBP遺伝子産物内のアミノ酸配列に基づき設計された2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマープールを使用するPCRを行うことにより、FBP遺伝子ホモログを、例えばヒト核酸から単離することができる。
該PCR産物をサブクローニングし配列決定して、該増幅配列がFBP遺伝子核酸配列の配列を表すことを確認することができる。ついで該PCR断片を使用して、種々の方法により完全長cDNAクローンを単離することができる。例えば、該増幅断片を標識し、バクテリオファージDNAライブラリーのスクリーニングに使用することができる。あるいは、該標識断片を使用して、ゲノムライブラリーのスクリーニングによりゲノムクローンを単離することができる。
また、完全長cDNA配列を単離するために、PCR技術を用いることができる。例えば、適当な細胞源または組織源(すなわち、FBP遺伝子を発現することが知られている又はその疑いがあるもの、例えば、生検により又は死後に得られた血液サンプルまたは脳組識サンプル)から、標準的な方法に従いRNAを単離することができる。第1鎖合成の開始のために該増幅断片の最も5'側の末端に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、RNA上で逆転写反応を行うことができる。ついで、得られたRNA/DNAハイブリッドを、標準的なターミナルトランスフェラーゼ反応を用いてグアニンで「尾部伸長(tailed)」させ、該ハイブリッドをRNアーゼHで消化し、ついでポリ-Cプライマーで第2鎖合成を開始させることができる。このようにして、該増幅断片の上流のcDNA配列を容易に単離することができる。用いることができるクローニング方法の総説としては、例えば、Sambrookら(前掲)を参照されたい。
さらにFBP遺伝子配列を使用して、突然変異FBP遺伝子対立遺伝子を同定することができる。例えば腫瘍形成に関与する又は癌を引き起こす増殖性または分化性疾患などのFBP遺伝子疾患の症状に寄与する遺伝子型を有することが知られている又はそのように提案されている個体から、そのような突然変異対立遺伝子を単離することができる。ついで突然変異対立遺伝子および突然変異対立遺伝子産物を、後記の治療、診断および予後系において使用することができる。また、例えば腫瘍形成に関与する又は癌を引き起こす増殖性または分化性疾患などのFBP疾患に関連している可能性があるFBP遺伝子調節(例えば、プロモーター)の欠損を検出するために、そのようなFBP遺伝子配列を使用することができる。
一本鎖高次構造多型(SSCP)突然変異検出技術、サザンブロットおよび/またはPCR増幅技術により、FBP対立遺伝子を同定することができる。プライマーは、プロモーター領域を含む全FBP配列の重複領域を増幅するように常套手段により設計することができる。1つの実施形態においては、第1コード領域が突然変異に関してスキャンされうるようエキソン-イントロン境界を包含するようにプライマーを設計する。正常および罹患個体のリンパ球から単離したゲノムDNAを、PCR鋳型として使用する。一本鎖高次構造多型(SSCP)突然変異検出技術により及び/又は配列決定により、正常および罹患個体由来のPCR産物を比較する。SSCP分析は以下のとおりに行うことができる。2.5M dNTP(Pharmacia)、10mM Tris-HCl(pH8.8)、50mM KCl、1mM MgCl2、0.01%ゼラチン(最終濃度)中、10pmolの各プライマー、0.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Promega)、1 Ciの[32P]dCTP(NEN; 比活性3000Ci/mmol)を加えて、100ngのゲノムDNAを10 lの反応において増幅する。変性(94℃)、アニーリング(プライマーの融解温度に応じて56℃〜64℃)および伸長(72℃)の30サイクルをサーマルサイクラー(MJ Research, Boston, MA, USA)内で行い、ついで72℃で7分間の最終伸長を行った。2μlの該反応混合物を0.1% SDS、10mM EDTA中で希釈し、ついで20mM NaOHを含有する配列決定停止溶液と1:1で混合した。サンプルを95℃で5分間加熱し、氷上で3分間冷却し、ついで3 lを、5%(v/v)グリセロールを含有する6%アクリルアミド/TBEゲル上にローディングする。ゲルを室温で8Wで12〜15分間移動させる。増感スクリーン付きの-70℃のフィルムに種々の時間にわたりさらすことにより、オートラジオグラフィーを行う。ついで突然変異FBP遺伝子産物の機能の喪失または改変を引き起こす突然変異を確認することができる。
あるいは、突然変異FBP遺伝子のcDNAを、例えばPCRを用いて単離することができる。この場合、突然変異FBP対立遺伝子を保持すると推定される個体において発現されることが知られている又はその疑いのある組織から単離したmRNAにオリゴ-dTオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ、新たな鎖を逆転写酵素で伸長させることにより、第1 cDNA鎖を合成することができる。ついで、正常遺伝子の5'末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを使用して、該cDNAの第2鎖を合成する。ついで、これらの2つのプライマーを使用して、該産物をPCRにより合成し、適当なベクター内にクローニングし、DNA配列分析に付す(当業者によく知られた方法により行うことができる)。突然変異FBP対立遺伝子のDNA配列を正常FBP対立遺伝子のDNA配列と比較することにより、該突然変異DFBP遺伝子産物の機能の喪失または改変を引き起こす突然変異を確認することができる。
あるいは、突然変異FBP対立遺伝子を保持する疑いのある又はそれを保持することが知られている個体から得られたDNAを使用して、ゲノムライブライーを構築することができる。あるいは、突然変異FBP対立遺伝子を発現することが知られている又はその疑いのある組織由来のRNAを使用して、cDNAライブラリーを構築することができる。ついで、損なわれていないFBP遺伝子またはその任意の適当な断片を標識し、そのようなライブラリー中の対応突然変異FBP対立遺伝子を同定するためのプローブとして使用することができる。ついで、当業者によく知られた方法に従い、該突然変異FBP遺伝子配列を含有するクローンを精製し、配列分析に付すことができる。
また、例えば、突然変異FBP対立遺伝子を保持する疑いのある又はそれを保持することが知られている個体において該突然変異FBP対立遺伝子を発現することが知られている又はその疑いのある組織から単離したRNAから合成したcDNAを使用して、発現ライブラリーを構築することができる。このようにして、突然変異していると推定される組織により産生された遺伝子産物を発現させ、後記第5.3節に記載のとおりに正常なFBP遺伝子産物に対して産生させた抗体と共に標準的な抗体スクリーニング技術を用いてスクリーニングすることができる(スクリーニング技術に関しては、例えば、HarlowおよびLane編, 1988, "Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harborを参照されたい)。
FBPタンパク質の誘導体および類似体をコードする核酸ならびにアンチセンス核酸を、前記方法により単離することができる。本発明で用いる「F-boxタンパク質の断片または部分をコードする核酸」は、FBPの列挙されている断片または部分だけをコードする核酸を意味し、連続配列としてのFBPタンパク質のその他の連続的部分を意味しないと解釈されるものとする。
同一または異なる種の他のFBP遺伝子核酸の間で保存された(すなわちそれに相同な)領域を含むFBP遺伝子核酸の断片も提供する。1以上のFBPドメインをコードする核酸を、前記方法により単離することができる。
FBP突然変異が、(例えば、ミスセンスまたはフレームシフト突然変異の結果として)変化した機能を有する発現遺伝子産物を与える場合、抗FBP遺伝子産物抗体のポリクローナルセットは該突然変異FBP遺伝子産物と交差反応すると考えられる。そのような標識抗体との反応により検出されたライブラリークローンを精製し、配列分析に付すことができる(当業者によく知られた方法に従い行うことができる)。
5.2 FBP遺伝子のタンパク質およびポリペプチド
図1および2に記載の並びに図3〜28のB部に記載のアミノ酸配列は、FBP遺伝子産物を表す。FBP1遺伝子産物(本明細書中では「FBP1タンパク質」と称されることがある)には、前記第5.1節に記載のFBP1遺伝子配列にコードされる遺伝子産物が含まれる。同様に、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25遺伝子産物(本明細書中ではFBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25タンパク質と称される)には、FBP2、FBP3、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25遺伝子にコードされる遺伝子産物が含まれる。本発明においては、FBP遺伝子産物をコードする核酸配列は、哺乳動物ゲノムを含む真核性ゲノムに由来する。好ましい実施形態においては、FBP遺伝子産物をコードする核酸配列はヒトまたはマウスゲノムに由来する。
FBP遺伝子産物またはそのペプチド断片は、種々の用途のために製造することができる。例えば、抗体の産生のために、あるいは診断および予後アッセイにおいて、あるいはユビキチン化経路に関与しそれにより細胞周期調節および増殖性疾患に関与する他の細胞または細胞外遺伝子産物の同定のために、そのような遺伝子産物またはそのペプチド断片を使用することができる。
また、本発明のFBP遺伝子産物には、機能的に等価な(定義に関しては第5.1節を参照されたい)遺伝子産物に相当するタンパク質が含まれうる。本発明のFBP遺伝子産物は、既に同定されている哺乳動物F-boxタンパク質Skp2、サイクリンF、エロンガンAまたはマウスMd6(Pagano, 1997,(非特許文献3); Zhangら, 1995,(非特許文献8); Baiら, 1996,(非特許文献5); Skowyraら, 1997, 前掲を参照されたい)を含まない。
機能的に等価なFBP遺伝子産物は、前記第5.1節に記載されているFBP遺伝子配列にコードされるアミノ酸配列内の及び/又はそれに隣接するアミノ酸残基における欠失(内部欠失を含む)、付加(融合タンパク質を与える付加を含む)または置換を含有していてもよいが、それらは、機能的に等価なFBP遺伝子産物を与える点で「サイレント」な変化を与えるものである。アミノ酸の置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいて行うことができる。例えば、無極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれる。負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。
あるいは、機能を変化させたい場合には、改変したFBP遺伝子産物が産生されるように、欠失または非同類的な改変を設計することができる。そのような改変は、例えば、FBP遺伝子産物の生物学的機能の1以上を改変しうる。さらに、そのような改変は、選択した宿主細胞内での発現、大規模化に、より適したFBP遺伝子産物を産生するように選択することができる。例えば、ジスルフィド架橋を除去するために、システイン残基を欠失させたり又は別のアミノ酸残基で置換することができる。
FBP遺伝子産物、そのペプチド断片およびその融合タンパク質は、当技術分野においてよく知られた手法を用いる組換えDNA技術により製造することができる。したがって、FBP遺伝子配列を含有する核酸を発現させることによる本発明のFBP遺伝子ポリペプチド、ペプチド、融合ペプチドおよび融合ポリペプチドの製造方法を、本明細書に記載する。FBP遺伝子産物コード配列と適当な転写・翻訳制御シグナルとを含有する発現ベクターを構築するためには、当業者によく知られた方法を用いることができる。これらの方法には、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術およびin vivo遺伝子組換えが含まれる。例えば、Sambrookら(前掲)およびAusubelら(前掲)に記載の技術を参照されたい。あるいは、FBP遺伝子産物配列をコードしうるRNAを、例えば合成装置を使用して化学的に合成することができる。例えば、"Oligonucleotide Synthesis", 1984, Gait編, IRL Press, Oxfordに記載の技術を参照されたい。
本発明のFBP遺伝子コード配列を発現させるためには、種々の宿主-発現ベクター系を使用することができる。そのような宿主-発現系は、関心のあるコード配列の産生およびそれに続く精製をもたらしうる運搬体を表すが、適当なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされると本発明のFBP遺伝子産物をin situで示しうる細胞をも表す。これらには、FBP遺伝子産物コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis))などの微生物;FBP遺伝子産物コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);FBP遺伝子産物コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;FBP遺伝子産物コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)に感染した又はFBP遺伝子産物コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を保持する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
細菌系においては、発現されるFBP遺伝子産物に関して意図される用途に応じて、多数の発現ベクターを有利に選択することができる。例えば、そのようなタンパク質を大量生産したい場合には(例えば、FBPタンパク質の医薬組成物用、あるいはFBPタンパク質に対する抗体の産生用)、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を指令するベクターが望ましいかもしれない。そのようなベクターには、大腸菌(E. coli)発現ベクターpUR278(Rutherら, 1983, EMBO J. 2, 1791)(このベクターにおいては、FBP遺伝子産物コード配列を、lacZコード領域に対してインフレームでベクター内に個々に連結して、融合タンパク質が産生されるようにすることができる);pIN(InouyeおよびInouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13, 3101-3109; Van HeekeおよびSchuster, 1989, J. Biol. Chem. 264, 5503-5509)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために、pGEXベクターを使用することができる。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズに対する吸着およびそれに続く遊離グルタチオンの存在下での溶出により溶解細胞から容易に精製されうる。pGEXベクターは、該クローン化標的遺伝子産物がGST部分から遊離されるようにトロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計する。
昆虫系においては、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用して、外来遺伝子を発現させる。該ウイルスはSpodoptera frugiperda細胞内で増殖する。FBP遺伝子コード配列を該ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)内に個々にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置することができる。FBP遺伝子コード配列の挿入に成功すれば、ポリヘドリン遺伝子の不活性化および非包埋(non-occluded)組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子にコードされるタンパク質性外皮を欠くウイルス)の産生がもたらされるであろう。ついでこれらの組換えウイルスを使用して、Spodoptera frugiperda細胞に感染させ、該細胞内で該挿入遺伝子を発現させる(例えば、Smithら, 1983, J. Virol. 46, 584; Smith, 米国特許第4,215,051号を参照されたい)。
哺乳動物宿主細胞においては、いくつかのウイルスに基づく発現系を用いることができる。発現ベクターとしてアデノウイルスを用いる場合には、関心のあるFBP遺伝子コード配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体(例えば、後期プロモーターおよび三成分リーダー配列)に連結することができる。ついでこのキメラ遺伝子を、in vitroまたはin vivo組換えによりアデノウイルスゲノム内に挿入することができる。該ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)内への挿入によって、感染宿主内でFBP遺伝子産物を発現しうる生存可能な組換えウイルスが生じるであろう(例えば、LoganおよびShenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659を参照されたい)。また、挿入されたFBP遺伝子産物コード配列の効率的な翻訳のためには、特異的な開始シグナルも必要かもしれない。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。完全なFBP遺伝子(それ自身の開始コドンおよび隣接配列を含む)を適当な発現ベクター内に挿入する場合には、追加的な翻訳制御シグナルは不要かもしれない。しかしながら、FBP遺伝子コード配列の一部だけを挿入する場合には、外因性翻訳制御シグナル(これは恐らくATG開始コドンを含むであろう)を準備しなければならない。さらに、インサート全体の翻訳が保証されるよう、該開始コドンは所望のコード配列のリーディングフレームと一致しなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の両方の種々の起源に由来するものであってもよい。適当な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含有させることにより、発現効率を増加させることができる(Bittnerら, 1987, Methods in Enzymol. 153:516-544を参照されたい)。
また、所望の特定の様態で挿入配列の発現をモジュレートする又は該遺伝子産物を修飾しプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、該タンパク質の機能に重要かもしれない。種々の宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。発現される外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングが保証されるよう、適当な細胞系または宿主系を選択することができる。この目的には、一次転写産物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞組織を有する真核生物宿主細胞を使用することができる。そのような哺乳動物宿主細胞には、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびWI38が含まれるが、これらに限定されるものではない。
組換えタンパク質の長期にわたる高収率生産のためには、安定な発現が好ましい。例えば、FBP遺伝子産物を安定に発現する細胞系を遺伝子操作することができる。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを使用する代わりに、適当な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)で制御されるDNA、および選択マーカーを用いて宿主細胞を形質転換し得る。外来DNAの導入後、遺伝子操作された細胞を富化培地中で1〜2日間増殖させ、ついで選択培地への交換を行う。該組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞が該プラスミドをその染色体内に安定に組込むこと及び細胞増殖巣を形成するまで増殖することを可能にする。そしてそれをクローニングし、細胞系にまで増殖させることができる。この方法は、FBP遺伝子産物を発現する細胞系を遺伝子操作するために有利に用いることができる。そのような遺伝子操作された細胞系は、FBP遺伝子産物の内因性活性に影響を及ぼす化合物のスクリーニングおよび評価において特に有用かもしれない。
限定するものではないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら, 1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(SzybalskaおよびSzybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48, 2026)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら, 1980, Cell 22, 817)遺伝子を含むいくつかの選択系を、それぞれtk-、hgprt-またはaprt-細胞において使用することができる。また、以下の遺伝子に関する選択の基礎として、代謝拮抗物質耐性を利用することができる:メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら,, 1980, Natl. Acad. Sci. USA 77, 3367; O'Hareら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78, 1527)、ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(MulliganおよびBerg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78, 2072)、アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Colberre-Garapinら, 1981, J. Mol. Biol. 150, 1)、およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreら, 1984, Gene 30, 147)。
あるいは、発現される融合タンパク質に特異的な抗体を使用することにより、任意の融合タンパク質を容易に精製することができる。例えば、Janknechtらが記載している系は、ヒト細胞系内で発現された非変性融合タンパク質の簡便な精製を可能にする(Janknechtら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 8972-8976)。この系においては、関心のある遺伝子をワクシニア組換えプラスミド内にサブクローニングして、該遺伝子のオープンリーディングフレームを、6個のヒスチジン残基よりなるアミノ末端タグに翻訳的に融合させる。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞からの抽出物をNi2+ニトリロ酢酸-アガロースカラム上にローディングし、ヒスチジンタグ標識タンパク質をイミダゾール含有バッファーで選択的に溶出させる。
また、FBP遺伝子産物をトランスジェニック動物内で発現させることも可能である。任意の種の動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、小型ブタ(micro-pig)、ヤギ、ヒツジならびにヒトではない霊長類、例えばヒヒ、サルおよびチンパンジーを含むが、これらに限定されるものではない)を用いて、FBPトランスジェニック動物を作出することができる。本明細書で用いる「トランスジェニック」なる語は、異なる種由来のFBP遺伝子配列を発現する動物(例えば、ヒトFBP配列を発現するマウス)、ならびに内因性(すなわち、同じ種の)FBP配列を過剰発現するように遺伝子操作された動物、またはもはや内因性FBP遺伝子配列を発現しないように遺伝子操作された動物(すなわち、「ノックアウト」動物)、およびそれらの子孫を指す。
特に、本発明は、FBP1ノックアウトマウスに関する。本発明はまた、F-boxドメインが欠失したヒト突然変異FBP1およびSkp2遺伝子配列を発現するように遺伝子操作されたマウスに加えて、ヒト野生型FBP1およびSkp2遺伝子配列を発現するトランスジェニックマウスに関する。トランスジェニック動物のファウンダー(始祖)系を得るために動物内にFBP遺伝子トランスジーンを導入するためには、当技術分野で公知の任意の技術を用いることができる。そのような技術には、前核マイクロインジェクション(HoppeおよびWagner, 1989, 米国特許第4,873,191号)、生殖細胞系内へのレトロウイルス媒介遺伝子導入(Van der Puttenら, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 6148-6152)、胚性幹細胞における遺伝子ターゲッティング(Thompsonら, 1989, Cell 56, 313-321)、胚のエレクトロポレーション(Lo, 1983, Mol. Cell. Biol. 3, 1803-1814)、および精子媒介遺伝子導入(Lavitranoら, 1989, Cell 57, 717-723)が含まれるが、これらに限定されるものではない(そのような技術の総説としては、Gordon, 1989, Transgenic Animals, Intl. Rev. Cytol. 115, 171-229を参照されたい)。
FBPトランスジーンを含有するトランスジェニック動物クローンを製造するためには、当技術分野で公知の任意の技術、例えば、静止するよう誘導された培養された胚、胎児または成体の細胞由来の核の除核卵母細胞内への核導入(Campbellら, 1996, Nature 380, 64-66; Wilmutら, Nature 385, 810-813)を用いることができる。
本発明は、全ての細胞内にFBPトランスジーンを保有するトランスジェニック動物、および全てではないがいくつかの細胞内に該トランスジーンを保有する動物(すなわち、モザイク動物)を提供する。該トランスジーンは、単一のトランスジーンとして又はコンカテマー(例えば、頭頭型タンデム(head-to-head tandem)または頭尾型タンデム(head-to-tail tandem))として組込まれうる。また、例えばLaskoら(Laskoら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 6232-6236)の教示に従い、該トランスジーンを特定の細胞型内に選択的に導入し、該細胞型内で活性化させることができる。そのような細胞型特異的活性化に必要な調節配列は、関心のある特定の細胞型に左右されるが、当業者には明らかであろう。FBPトランスジーンの組織特異的発現を指令するために使用しうる調節配列の具体例には、膵臓腺房細胞内で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftら, 1984, Cell 38:639-646; Ornitzら, 1986, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409; MacDonald, 1987, Hepatology 7:42S-51S)、膵臓β細胞内で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, Nature 315:115-122)、リンパ球様細胞内で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら, 1984, Cell 38:647-658; Adamsら, 1985, Nature 318:533-538; Alexanderら, 1987, Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444)、肝臓内で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら, 1987, Genes and Devel. 1:268-276)、肝臓内で活性なαフェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら, 1985, Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648; Hammerら, 1987, Science 235:53-58)、肝臓内で活性なα1-抗トリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら, 1987, Genes and Devel. 1:161-171)、骨髄性細胞内で活性なβグロビン遺伝子制御領域(Magramら, 1985, Nature 315:338-340; Kolliasら, 1986, Cell 46:89-94)、脳内の稀突起神経膠細胞内で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら, 1987, Cell 48:703-712)、骨格筋内で活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Shani, 1985, Nature 314:283-286)、ならびに視床下部内で活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら, 1986, Science 234:1372-1378)が含まれるが、これらに限定されるものではない。哺乳動物細胞内で増殖するウイルスのゲノムから単離したプロモーター(例えば、ワクシニアウイルス7.5K、SV40、HSV、アデノウイルスMLP、MMTV、LTRおよびCMVプロモーター)、および組換えDNAまたは合成技術により作成されたプロモーターを使用することができる。
FBP遺伝子トランスジーンを内因性FBP遺伝子の染色体部位内に組込むことを望む場合には、遺伝子ターゲッティングが好ましい。簡単に説明すると、そのような技術を利用しようとする場合には、内因性FBP遺伝子に相同ないくつかのヌクレオチド配列を含有するベクターを、染色体配列との相同組換えを介した組換え、および該内因性FBP遺伝子のヌクレオチド配列の機能の破壊のために設計する。また、例えばGuらの教示(Guら, 1994, Science 265, 103-106)に従い、該トランスジーンを特定の細胞型内に選択的に導入して、その細胞型内のみにおいて該内因性FBP遺伝子を不活性化することができる。そのような細胞型に特異的な不活性化に必要な調節配列は、関心のある特定の細胞型に左右されるが、当業者には明らかであろう。
トランスジェニック動物を作出したら、標準的な技術を用いて組換えFBP遺伝子の発現をアッセイすることができる。該トランスジーンの組込みが生じたか否かをアッセイするために、サザンブロット分析またはPCR技術により初期スクリーニングを行って動物組織を分析し得る。また、該トランスジェニック動物の組織内での該トランスジーンのmRNA発現のレベルを、該動物から得た組織サンプルのノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション分析およびRT-PCR(逆転写酵素PCR)を含む(これらに限定されるものではない)技術を用いて評価することができる。また、FBP遺伝子を発現する組織のサンプルを、該FBPトランスジーン産物に特異的な抗体を使用して免疫組織化学的に評価することができる。
組織特異的トランスジーンを保持するトランスジェニックマウスを使用して、該無傷動物におけるFBP遺伝子発現の作用を試験することができる。1つの実施形態においては、乳腺内にヒトFBP1トランスジーンを保持するトランスジェニックマウスを使用して、マウスの乳房の発達および腫瘍形成におけるFBPの役割を評価することができる。他の実施形態においては、ヒトFBP1ドミナントネガティブ突然変異体(F-box欠失体)を乳腺内で過剰発現するトランスジェニックマウスを作出することができる。特定の実施形態においては、例えば、MMTV LTRプロモーター(マウス乳癌ウイルス長末端反復配列)を使用して、乳腺内の該トランスジーンの組込みを指令することができる。MMTV LTRプロモーターの配列をFBP1遺伝子の最初のATGの上流にあるヌクレオチド配列に融合させることにより、MMTV/FBP1融合遺伝子を構築することができる。また、SV40ポリアデニル化領域を、FBP1コード領域の下流にある配列に融合させることができる。トランスジェニックマウスは、当技術分野で公知の方法(Gordon, 1989, Transgenic Animals, Intl. Rev. Cytol. 115, 171-229)により作出する。簡単に説明すると、未熟B6D2F1雌マウスを過剰排卵させ、CD-1雄マウスと交配させる。翌朝、該雌マウスを膣栓の存在に関して検査し、受精卵を回収し、それにプラスミドベクターをマイクロインジェクションする。約2000個の該物質のコピーを各前核内にマイクロインジェクションする。脾臓からのDNAの抽出およびMMTV/FBP1をプローブとして使用するサザンハイブリダイゼーションにより、始祖動物のスクリーニングを行う。尾部DNAのPCRにより、子孫のスクリーニングを行う。トランスジェニック系統を確立したら、種々の器官においてノーザンブロットおよびRT-PCR分析により該トランスジーンの発現パターンを判定して、それを後の病理学的変化と相関させる。
ついで、得られたトランスジェニック動物を、腫瘍形成におけるFBP遺伝子の役割に関して検査することができる。1つの実施形態においては、例えば、乳癌モデルとして使用するために、FBPトランスジーンを構築することができる。そのようなマウスにおけるFBP1遺伝子の過剰発現はβ-カテニンのユビキチン化および分解を増加させ、腫瘍抑制表現型を与えると予想される。逆に、FBP1欠失突然変異体の過剰発現は、β-カテニンの安定化をもたらし、乳腺上皮の増殖を誘導すると予想される。例えば第5.4節、第5.5節および第7節に記載のアッセイにより、雌および雄の両方のトランスジェニックマウスにおいて、これらの表現型を試験することができる。
他の特定の実施形態においては、FBP1トランスジーンをTリンパ球内で発現するトランスジェニックマウスを作出する。この実施形態においては、CD4陽性および陰性の両方のT細胞内での発現を駆動するCD2プロモーターを、FBP遺伝子(例えば、野生型および突然変異FBP1遺伝子)の最初のATGの上流に位置する配列に融合させることにより、CD2/FBP1融合遺伝子を構築する。また、該構築物は、FBP遺伝子の下流にSV40ポリアデニル化領域を含有しうる。前記のとおり、トランスジェニックマウスの作出および試験の後、FBPトランスジーンの発現を検査する。該トランスジーンを胸腺および脾臓内で発現させる。野生型FBP1の過剰発現は或る表現型を与えると予想される。例えば、FBP1トランスジェニックマウスの予想される可能な表現型には、IKBαの分解の増加、NFKBの活性化の増加、または細胞増殖の増加が含まれる。逆に、F-boxドメインを欠くドミナントネガティブ突然変異体FBP1の過剰発現は反対の作用(例えば、IKBαの安定性の増加、NFKBの活性化の減少、または細胞増殖の減少)を及ぼすと予想されうる。そのようなトランスジェニック表現型は、例えば第5.4節および第5.5節に記載のアッセイにより試験することができる。
他の特定の実施形態においては、トランスジェニックマウスのTリンパ球内でSKP2遺伝子を発現させる。逆に、F-box欠失形態は、ドミナントネガティブ体として作用し、p27を安定化し、T細胞活性化を抑制する。CD2/SKP2融合遺伝子の構築およびトランスジェニックマウスの製造は、CD2/FBP融合遺伝子に関して前記したとおりである。ただし、この場合、FBP1 cDNAの代わりに、CD2プロモーターにより制御される野生型および突然変異SKP2 cDNAを使用する。始祖およびそれらの子孫を、SKP2トランスジーンおよび突然変異SKP2トランスジーンの存在および発現に関して分析する。脾臓および胸腺内の該トランスジーンの発現を、ノーザンブロットおよびRT-PCRにより分析する。
他の特定の実施形態においては、マウスのFBP1遺伝子座の不活性化によりトランスジェニックマウスを構築する。相同組換えによるマウスのFBP1遺伝子座の不活性化は、以下の4つの段階を含む:1)FBP1に関するターゲッティングベクターの構築、2)ES +/-細胞の作製、3)ノックアウトマウスの製造、および4)表現型の特性決定。マウスFBP1遺伝子を同定し単離するために、129 SVマウスゲノムファージライブラリーを使用する。バクテリオファージを適当な密度で平板培養する。アガロースディッシュの表面上にナイロンメンブレンを穏やかに重層することにより、プラークのパターンのインプリントを得ることができる。該プラークパターンの厳密なレプリカにおける毛細管作用により、バクテリオファージ粒子およびDNAを該フィルターにトランスファーする。変性後、該DNAをベーキングにより該フィルターに結合させ、ついで32P-標識FBP1 cDNAとハイブリダイズさせる。過剰なプローブを洗い落とし、ついで該フィルターをオートラジオグラフィーに暴露する。該フィルムを元の寒天プレートと整列させることにより同定したハイブリダイズプラークを、純粋なプラーク調製物を得るための二次および三次スクリーニング用に拾う。この方法を用いて、関心のある領域(例えば、F-boxをコードする領域)に及ぶ陽性ファージを単離する。PCR、サザンハイブリダイゼーション、制限マッピング、サブクローニングおよびDNA配列決定を用いて、野生型FBP1遺伝子の部分構造を決定することができる。
相同組換えによりFbp1遺伝子座を不活性化するために、Fbp1遺伝子座内のエキソン3がアンチセンス配向で選択マーカー(例えば、neoR遺伝子)により置換された遺伝子ターゲッティングベクターを構築することができる。エキソン3は、Fbp1とSkp1との相互作用に重要であることが知られているF-boxモチーフをコードする。該ターゲッティング構築物は、選択マーカー遺伝子の両端に位置する相同な短いアームおよび長いアームを有する。該ベクターアームの一方は、効率的な増幅が保証されるように比較的短い(2kb)。なぜなら、相同組換えESクローンはPCRによりスクリーニングされるからである。もう一方のアームは、相同組換えの頻度を最大にするように>6kbである。該ベクターの長い相同性アームの末端に含まれるチミジンキナーゼ(tk)遺伝子は、該ターゲッティングベクターをランダムに組込むESクローンに対する追加的な陰性選択マーカー(ガンシクロビルを使用する)を提供する。線状DNAを使用すると相同組換えが頻繁に生じるため、ES細胞のトランスフェクションの前に該ターゲッティングベクターを線状化する。胚性幹細胞クローンのエレクトロポレーションおよび二重薬物選択の後、PCRおよびサザン分析を用いて、相同組換えがFBP1遺伝子座で生じたか否かを判定する。PCRによるスクリーニングが有利である。なぜなら、この方法では、サザン分析の場合より多数のコロニーを分析することができるからである。また、PCRスクリーニングは陰性クローンの迅速な排除を可能にし、そのため、組換え体の同定を行う間の全クローンの供給およびそれに続く凍結を回避できる。相同組換えの検出のためのこのPCR方法は、該ターゲッティング構築物に特異的であるが該内因性遺伝子座内に存在しない配列(例えば、ネオマイシン遺伝子または他の選択マーカーの配列)に一方のプライマーがアニーリングし、そして該構築物の外部であるが該内因性遺伝子座の内部の領域に他方のプライマーがアニーリングするように選択したプライマー対の使用に基づく。相同組換え事象(相同な短いアームおよび相同な長いアームの両方におけるもの)が生じたこと、および該組換え中に遺伝子重複事象が全く生じなかったことを確認するために、サザン分析を用いる。
そのようなFBP1ノックアウトマウスを使用して、細胞調節および増殖の制御におけるFbp1の役割を試験することができる。1つの実施形態においては、Fbp1を欠損するそのようなマウスの表現型は、細胞過形成および増大した腫瘍形成である。もう1つの実施形態においては、FBP1ヌルマウス表現型には、β-カテニン活性の増加、β-カテニンの安定化、細胞増殖の増加、IK-Baの蓄積、NF-KB活性の減少、免疫応答不全、炎症または細胞死もしくはアポトーシス活性の増加が含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、FBP1遺伝子の欠失は胚の致死を引き起こし得る。この場合、FBP1対立遺伝子におけるヘテロ接合マウスを、前記アッセイを用いて試験することができ、ヌルFBPマウスの胚を、前記アッセイを用いて試験することができる。
また、FBPトランスジーンを保持するトランスジェニックマウスを使用して、FBP遺伝子の発現および/またはFBP1遺伝子もしくは遺伝子産物の合成もしくは活性をモジュレートしうる化合物に関してスクリーニングすることができる。そのような化合物およびスクリーニング方法は記載されている。
5.3 F-boxタンパク質およびそれらの誘導体に対する抗体の作製
本発明では、F-boxモチーフ、その断片もしくは他の誘導体またはその類似体を免疫原として使用して、そのような免疫原に免疫特異的に結合する抗体を作製することができる。そのような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、FabフラグメントおよびFab発現ライブラリーが含まれるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態においては、ヒトFBPタンパク質に対する抗体を製造する。他の実施形態においては、FBPのドメイン(例えば、F-boxドメインまたは基質結合ドメイン)に対する抗体を製造する。
FBPもしくは誘導体または類似体に対するポリクローナル抗体の製造には、当技術分野で公知の種々の方法を用いることができる。特定の実施形態においては、FBP1、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25の配列、またはそれらの部分配列によりコードされるFBPのエピトープに対するウサギポリクローナル抗体を得ることができる(Pagano, M., 1995, "From peptide to purified antibody", Cell Cycle: Materials and Methods, M. Pagano編, Spring-Verlag. 217-281)。抗体の製造のために、天然FBPまたはその合成体もしくは誘導体(例えば、断片)の注射により種々の宿主動物(ウサギ、マウス、ラットなどを含むが、これらに限定されるものではない)を免疫することができる。免疫応答を増強するために、宿主種に応じて種々のアジュバントを使用することができる。そのようなアジュバントには、フロイント(完全および不完全)、無機ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リゾレシチン)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールおよび潜在的に有用なヒトアジュバント、例えばBCG(カルメット−ゲラン杆菌(bacille Calmette-Guerin))およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
FBP配列またはその類似体に対するモノクローナル抗体の製造には、培養物中の連続的継代細胞系による抗体分子の産生をもたらす任意の技術を用いることができる。例えば、KohlerおよびMilstein(1975, Nature 256:495-497)により最初に開発されたハイブリドーマ技術、ならびにトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら, 1983, Immunology Today 4:72)およびヒトモノクローナル抗体を産生させるためのEBV-ハイブリドーマ技術(Coleら, 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)が挙げられる。本発明のさらなる実施形態においては、最近の技術(PCT/US90/02545)を用いて無菌動物においてモノクローナル抗体を製造することができる。本発明によると、ヒト抗体を使用することが可能であり、ヒトハイブリドーマを使用することにより(Coteら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2026-2030)、あるいはヒトB細胞をEBVウイルスによりin vitroで形質転換することにより(Coleら, 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp.77-96)、ヒト抗体を得ることができる。実際、本発明では、FBPに特異的なマウス抗体分子に由来する遺伝子と適当な生物学的活性のヒト抗体分子に由来する遺伝子とを一緒にスプライシングさせることによる「キメラ抗体」の製造用に開発された技術(Morrisonら, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851-6855; Neubergerら, 1984, Nature 312:604-608; Takedaら, 1985, Nature 314:452-454)を用いることができる。そのような抗体は本発明の範囲内である。
本発明によると、一本鎖抗体の製造に関して記載されている技術(米国特許第4,946,778号)を、FBP特異的一本鎖抗体の製造に適合することができる。本発明のさらなる実施形態においては、FBP、誘導体または類似体に対する所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ簡便な同定を可能にするFab発現ライブラリーの構築に関して記載されている技術(Huseら, 1989, Science 246:1275-1281)を用いる。
抗体分子のイディオタイプを含有する抗体フラグメントを、公知技術により産生させることができる。例えば、そのようなフラグメントには、該抗体分子のペプシン消化により産生されうるF(ab')2フラグメント;F(ab')2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより産生されうるFab'フラグメント;該抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することにより産生されうるFabフラグメント;およびFvフラグメントが含まれるが、これらに限定されるものではない。
抗体の製造においては、当技術分野で公知の技術、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により、所望の抗体に関するスクリーニングを行うことができる。例えば、FBPの特異的ドメインを認識する抗体を選択するために、そのようなドメインを含有するFBP断片に結合する産物に関して、産生したハイブリドーマをアッセイすることができる。第1 FBP相同体には特異的に結合するが異なるFBP相同体には特異的に結合しない抗体を選択する場合には、第1 FBP相同体に対する陽性結合と、第2 FBP相同体に対する結合の欠如とに基づいて、選択を行うことができる。
FBPのドメイン(例えば、F-boxモチーフ)に特異的な抗体も提供する。
前記の抗体は、本発明のFBP配列の局在化および活性に関する当技術分野で公知の方法、例えば、これらのタンパク質のイメージング、適当な生理的サンプル中のそのレベルの測定などのための方法、診断方法などにおいて使用することができる。
本発明の他の実施形態(後記を参照されたい)においては、該結合ドメインを含有する抗FBP抗体およびそのフラグメントを治療剤として使用する。
5.4 F-boxタンパク質と相互作用する及び/又はそれらの酵素活性を妨害する薬物の同定のためのスクリーニングアッセイ
FBP1、FBP2、FBP3a、FBP3b、FBP4、FBP5、FBP6、FBP7、FBP8、FBP9、FBP10、FBP11、FBP12、FBP13、FBP14、FBP15、FBP16、FBP17、FBP18、FBP19、FBP20、FBP21、FBP22、FBP23、FBP24およびFBP25を含むユビキチンリガーゼ複合体の新規成分は、細胞タンパク質と相互作用して、細胞増殖を調節する。本発明の1つの態様は、該新規ユビキチンリガーゼと相互作用するポリペプチドもしくはペプチドまたは他の化合物(例えば、ユビキチンリガーゼ活性の潜在的基質)を同定するために該新規成分の断片、誘導体および類似体をアッセイおよびスクリーニングするための方法を提供する。本発明はまた、該新規FBPと他のサブユニットまたは多数のユビキチンリガーゼ複合体(例えば、Skp1)またはユビキチン化酵素(該新規FBPと相互作用するもの)との相互作用をモジュレートまたは抑制する化合物を同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。
さらに他の実施形態においては、該新規ユビキチンリガーゼまたは該ユビキチンリガーゼ複合体の公知成分(例えば、Skp1)と、新規または公知基質との相互作用を抑制またはモジュレートするポリペプチドまたはペプチドまたは他の化合物を同定するために、本発明のアッセイを用いることができる。1つの具体例においては(これに限定されるものではない)、公知ユビキチンリガーゼ成分Skp2とその新規基質p27との相互作用を妨害するペプチドまたはタンパク質を同定するために、本明細書に記載のスクリーニングアッセイを用いることができる。他の例においては、FBP1とその新規基質β-カテニンとの相互作用を妨害する化合物を、該スクリーニングアッセイを用いて同定する。他の例においては、Skp2と別の推定基質E2Fとの相互作用を妨害する化合物を、該スクリーニングアッセイを用いて同定する。更に他の例においては、FBP1と別の推定基質IKBαとの相互作用を妨害する化合物を、該スクリーニングアッセイを用いて同定する。
さらに他の実施形態においては、該新規FBPの酵素アクチベーターを抑制または活性化するポリペプチドまたはペプチドを同定するために、本発明のアッセイを用いることができる。
5.4.1 タンパク質-タンパク質相互作用についてのアッセイ
本発明のユビキチンリガーゼ複合体の新規成分と相互作用するタンパク質誘導体、類似体および断片を、酵母ツーハイブリッドアッセイ系(FieldsおよびSong, 1989, Nature 340:245-246ならびに米国特許第5,283,173号)により同定することができる。該相互作用は酵母内でスクリーニングされるため、この系内で検出される分子間タンパク質相互作用は、哺乳動物細胞内の条件を模擬した生理学的条件下で生じる(Chienら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88:9578-9581)。
改良された酵母ツーハイブリッド系による相互作用タンパク質の同定は、転写調節因子の再構成(該転写調節因子の半分にそれぞれが融合した2つのタンパク質の相互作用によるもの)に依存して転写されるレポーター遺伝子の発現の検出に基づく。「ベイト(bait)」(すなわち、本発明のユビキチンリガーゼ複合体の新規成分またはその誘導体もしくは類似体)および「プレイ(prey)」(該ベイトと相互作用する能力に関して試験すべきタンパク質)タンパク質を、それぞれDNA結合ドメインに対する及び転写調節ドメインに対する(またはその逆)融合タンパク質として発現させる。種々の特定の実施形態においては、該プレイは、少なくとも約50、約100、約500、約1,000、約5,000、約10,000または約50,000のコンプレキシティーを有するか、あるいは約25〜約100,000、約100〜約100,000、約50,000〜約100,000、または約100,000〜約500,000の範囲内のコンプレキシティーを有する。例えば、該プレイ集団は、あるタンパク質の突然変異体をコードする1つ以上の核酸(例えば、ヌクレオチド配列内の部位特異的突然変異誘発または別の突然変異作製方法により作製されるもの)であってもよい。好ましくは、該プレイ集団は、DNA(例えば、cDNAもしくはゲノムDNAまたは合成により製造されたDNA)によりコードされるタンパク質である。例えば、mRNA由来のcDNAの集団の未特性決定サンプルからのcDNA配列を含むキメラ遺伝子から、該集団を発現させることができる。
特定の実施形態においては、ランダムペプチドを発現する組換え生物学的ライブラリーをプレイ核酸源として使用することができる。
一般に、該ベイトおよびプレイ集団のタンパク質は、予備選択された配列に隣接する各タンパク質を含む(好ましくはキメラコード配列の組換え発現による)融合(キメラ)タンパク質として提供される。一方の集団において、予備選択配列はDNA結合ドメインである。該DNA結合ドメインは、プロモーター内のDNA配列を特異的に認識する限りあらゆるDNA結合ドメインであってよい。例えば、該DNA結合ドメインは、転写アクチベーターまたはインヒビターのものである。他方の集団においては、予備選択配列は、転写アクチベーターまたはインヒビターのそれぞれアクチベーターまたはインヒビタードメインである。該調節ドメイン単独(タンパク質配列との融合体ではない)および該DNA結合ドメイン単独(タンパク質配列との融合体ではない)は、好ましくは、検出可能な形では相互作用しない(該アッセイにおける偽陽性を避けるためである)。該アッセイ系は更に、転写アクチベーター(またはインヒビター)のDNA結合ドメインの結合部位を含有するプロモーターに機能しうる形で連結されたレポーター遺伝子を含む。したがって、本発明のこの方法においては、プレイ融合タンパク質に対するユビキチンリガーゼ融合タンパク質の結合は、該レポーター遺伝子の発現を活性化(または抑制)する転写アクチベーター(またはインヒビター)の再構成をもたらす。
該レポーター遺伝子ヌクレオチド配列に機能しうる形で連結されたプロモーターは、該ヌクレオチド配列の天然または非天然プロモーターであってよく、該融合タンパク質のDNA結合ドメイン部分により認識されるDNA結合部位は、該プロモーターに固有のものであっても(該プロモーターが、通常、そのような結合部位を含有する場合)、固有でないものであってもよい。
あるいは、所望の遺伝子の転写活性化結合部位を欠失させ、GAL4結合部位で置換することができる(Bartelら, 1993, BioTechniques 14:920-924; Chasmanら, 1989, Mol. Cell. Biol. 9:4746-4749)。該レポーター遺伝子は、好ましくは、特異的相互作用の存在に応答して細胞内でオンまたはオフとなるように転写アクチベーターにより調節されて発現される検出可能または選択可能なマーカーをコードする配列を含有する。好ましくは、転写アクチベーターのバックグラウンドレベルの不存在下(例えば、突然変異体である細胞内、または転写アクチベーターを欠損する細胞内)で、該アッセイを行うことができる。
該アッセイにおいて使用する活性化ドメインおよびDNA結合ドメインは、多種多様な転写アクチベータータンパク質に由来するものであってもよい。ただし、これらの転写アクチベーターは、分離可能な結合ドメインおよび転写活性化ドメインを有していなければならない。例えば、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のGAL4タンパク質(Maら, 1987, Cell 48:847-853)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のGCN4タンパク質(Hope & Struhl, 1986, Cell 46:885-894)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のARD1タンパク質(Thukralら, 1989, Mol. Cell. Biol. 9:2360-2369)、およびヒトエストロゲン受容体(Kumarら, 1987, Cell 51:941-951)は、分離可能なDNA結合ドメインおよび活性化ドメインを有する。該融合タンパク質において用いられるDNA結合ドメインおよび活性化ドメインは、同一の転写アクチベーターに由来する必要はない。特定の実施形態においては、GAL4またはLEXA DNA結合ドメインを使用する。他の特定の実施形態においては、GAL4または単純ヘルペスウイルスVP16(Triezenbergら, 1988, Genes Dev. 2:730-742)活性化ドメインを使用する。特定の実施形態においては、GAL4のアミノ酸1〜147(Maら, 1987, Cell 48:847-853; Ptashneら, 1990, Nature 346:329-331)がDNA結合ドメインであり、VP16のアミノ酸411〜455(Triezenbergら, 1988, Genes Dev. 2:730-742; Cressら, 1991, Science 251:87-90)が活性化ドメインを含む。
好ましい実施形態においては、酵母転写因子GAL4がタンパク質-タンパク質相互作用により再構成され、該宿主株はGAL4に関する突然変異体である。他の実施形態においては、DNA結合ドメインがAce1Nおよび/または活性化ドメインがAce1(それぞれ、Ace1タンパク質のDNA結合ドメインおよび活性化ドメイン)である。Ace1は、二価銅の存在下でCUP1オペロンからの転写を活性化する酵母タンパク質である。CUP1は、銅をキレート化するメタロチオネインをコードし、CUP1タンパク質の発現は、それが生じなければ宿主細胞に対し毒性である銅の存在下での増殖を可能にする。また、レポーター遺伝子は、再構成されたAce1N転写アクチベーターの結合に際して酵素β-ガラクトシダーゼ(これは通常の色素産生アッセイにより検出可能である)を発現するCUP1-lacZ融合体であってもよい(Chaudhuriら, 1995, FEBS Letters 357:221-226を参照されたい)。他の特定の実施形態においては、ヒトエストロゲン受容体のDNA結合ドメインを使用し、レポーター遺伝子は、1個または3個のエストロゲン受容体応答エレメントにより駆動される(Le Douarinら, 1995, Nucl. Acids. Res. 23:876-878)。DNA結合ドメインおよび転写アクチベーター/インヒビタードメインはそれぞれ、好ましくは、該融合タンパク質を発現させようとする細胞内で機能的である核局在化シグナル(Ylikomiら, 1992, EMBO J. 11:3681-3694, DingwallおよびLaskey, 1991, TIBS 16:479-481を参照されたい)を有する。
コードされるタンパク質の単離を促進するために、融合構築物は更に、アフィニティータグ、例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼもしくはマルトース結合タンパク質または利用可能な抗体のエピトープをコードする配列を、アフィニティー精製(例えば、それぞれグルタチオン、マルトース、または該エピトープに特異的な特定の抗体に対する結合)用に含有していてもよい(Allenら, 1995, TIBS 20:511-516)。他の実施形態においては、該融合構築物は更に、細菌細胞内での融合タンパク質の組換え生産用の細菌プロモーター配列を含む。
相互作用アッセイが行われる宿主細胞は、レポーター遺伝子の転写が起こり、そしてそれを検出しうる任意の原核性または真核性細胞であってよく、哺乳動物(例えば、サル、マウス、ラット、ヒト、ウシ)細胞、ニワトリ、細菌または昆虫細胞を含み(これらに限定されるものではない)、好ましくは酵母細胞である。結合ドメイン融合タンパク質、転写活性化ドメイン融合タンパク質およびレポーター遺伝子産物をコードしそれらを発現しうる発現構築物は、該発現構築物を含有する細胞の接合により又は細胞融合、形質転換、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションなどにより、宿主細胞内に与えられる。
酵母内での2つの融合タンパク質集団の発現のための種々のベクターおよび宿主株が公知であり、使用可能である(例えば、米国特許第5,1468,614号; Bartelら, 1993, "Using the two-hybrid system to detect protein-protein interactions", Cellular Interactions in Development, Hartley編, Practical Approach Series xviii, IRL Press at Oxford University Press, New York, NY, pp.153-179; FieldsおよびSternglanz, 1994, Trends In Genetics 10:286-292を参照されたい)。
内因性レポーター遺伝子活性を欠損していない場合には、該レポーター遺伝子において変異している細胞を公知方法により選択したり、あるいは該細胞を公知の遺伝子破壊方法により標的レポーター遺伝子において突然変異させた後、該レポーター遺伝子を導入することができる(Rothstein, 1983, Meth. Enzymol. 101:202-211)。
特定の実施形態においては、種々の融合タンパク質集団をコードするプラスミドを、1以上のレポーター遺伝子を含有する単一の宿主細胞(例えば、一倍体酵母細胞)内に共形質転換により同時に導入して、タンパク質-タンパク質相互作用に関するアッセイを行うことができる。あるいは、好ましくは、それらの2つの融合タンパク質集団を、接合(例えば、酵母細胞の場合)または細胞融合(例えば、哺乳動物細胞の場合)により、単一の細胞内に導入する。接合型アッセイにおいては、それぞれ結合ドメイン融合発現構築物(好ましくはプラスミド)と活性化(またはインヒビター)ドメイン融合発現構築物(好ましくはプラスミド)とを用いて形質転換された反対の接合型の一倍体酵母細胞の接合が、両方の構築物を同じ二倍体細胞内に送達するであろう。酵母株の接合型は、HO遺伝子による形質転換により遺伝子操作することができる(HerskowitzおよびJensen, 1991, Meth. Enzymol. 194:132-146)。
好ましい実施形態においては、2つの異なる型の宿主細胞である酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)a型株およびα型株を使用して、酵母相互作用接合アッセイを行う。該宿主細胞は、好ましくは、少なくとも2つのレポーター遺伝子(それらは各々、例えば転写アクチベーターのDNA結合ドメインに対する1以上の結合部位を有する)を含有する。該アクチベータードメインおよびDNA結合ドメインは、それらの2つの対応するタンパク質集団から生成したキメラタンパク質の各部分である。宿主細胞の1つの株(例えば、a株)は、ヌクレオチド配列のライブラリーとGAL4などの転写アクチベーターのDNA結合ドメインとの融合体を含有する。この宿主細胞の組において発現されたハイブリッドタンパク質は、該レポーター遺伝子構築物内のプロモーターまたはエンハンサー領域内のDNA結合部位を認識しうる。第2の酵母宿主細胞組(例えば、α株)は、転写アクチベーターの活性化ドメインに融合したDNA配列のライブラリーの融合体をコードするヌクレオチド配列を含有する。
他の実施形態においては、該融合構築物を相同組換えにより酵母染色体内に直接導入する。これらの目的のための相同組換えは、酵母の栄養増殖に必須ではない酵母配列(例えば、MER2、MER1、ZIPI、REC102またはME14遺伝子)により媒介される。
また、バクテリオファージベクターを使用して、DNA結合ドメインおよび/または活性化ドメイン融合タンパク質を発現させることができる。ライブラリーは、一般には、プラスミドベクターからの場合よりバクテリオファージベクターからの場合の方が、より迅速かつ簡便に調製されうる。
特定の実施形態においては、本発明は、1以上のタンパク質-タンパク質相互作用を検出する方法を提供する。該方法は、(a)本発明の新規ユビキチンリガーゼ成分またはその誘導体もしくは類似体を、酵母細胞(第1接合型のものであり、本発明の新規ユビキチンリガーゼ成分の配列とDNA結合ドメインとを含有する第1融合タンパク質を含む)の第1集団内で組換え的に発現させ [前記の酵母細胞の第1集団は、該DNA結合ドメインにより認識される1つ以上のDNA結合部位により駆動されるプロモーターに機能しうる形で連結された第1ヌクレオチド配列を含有し、第1融合タンパク質と第2融合タンパク質(該第2融合タンパク質は転写活性化ドメインを含む)との相互作用が第1ヌクレオチド配列の転写の増加をもたらす]、(b)第1ヌクレオチド配列の前記転写の増加が第2融合タンパク質の不存在下で生じる第1集団内の酵母細胞を排除するために陰性選択を行い、(c)複数の第2融合タンパク質(各第2融合タンパク質はタンパク質の断片、誘導体または類似体の配列と転写アクチベーターの活性化ドメインとを含み、該活性化ドメインは、前記の各第2融合タンパク質において同一である)を、第1接合型とは異なる第2接合型の酵母細胞の第2集団内で組換え的に発現させ、(d)前記の酵母細胞の第1集団を前記の酵母細胞の第2集団と接合させて、二倍体酵母細胞の第3集団を生成させ(二倍体酵母細胞の第3集団は、該DNA結合ドメインにより認識されるDNA結合部位により駆動されるプロモーターに機能しうる形で連結された第2ヌクレオチド配列を含有し、第1融合タンパク質と第2融合タンパク質との相互作用が第2ヌクレオチド配列の転写の増加を引き起こし、第1および第2ヌクレオチド配列は同一または異なっていてもよい)、そして(e)第1および/または第2ヌクレオチド配列の前記の転写の増加を検出して、第1融合タンパク質と第2融合タンパク質との相互作用を検出することを含む。
5.4.2 F-boxタンパク質と、潜在的基質などの既知のタンパク質との相互作用を同定するアッセイ
サイクリンファミリーメンバーやCki抑制タンパク質などの細胞周期調節タンパク質の細胞内の量はユビキチン経路により調節されている。哺乳動物の細胞周期調節のユビキチン化に関与する酵素は知られていない。酵母では、SCF複合体は細胞周期調節因子のユビキチンリガーゼを示す。本発明の新規F-boxタンパク質などのユビキチンリガーゼ複合体のF-box成分は、ユビキチンリガーゼ複合体の標的の特異性を決定する。そこで本発明は、F-boxタンパク質核酸、タンパク質または誘導体への特異的な結合について既知の分子を、結合を誘導するような条件下でスクリーニングするアッセイを提供し、それによりFBPタンパク質に特異的に結合する分子が同定される。
特定の実施形態において、本発明はF-boxタンパク質であるFBP1とCul1/Skp1複合体との相互作用、およびそれがβ-カテニンの安定性を調節するのに果たす役割を調べる方法を提供する。タンパク質間の相互作用は、第8節の実験において詳しく記載されたように、これらのタンパク質に特異的な抗体を用いてin vivoおよびin vitroで検出しうる。
その他の特定の実施形態において、本発明は、F-boxタンパク質であるSkp2と細胞周期の進行に関与する転写因子であるE2F-1との相互作用を検出する方法を提供する。昆虫細胞をSkp2およびE2F-1を共発現するバキュロウイルスにより感染させ、細胞抽出物を調製してタンパク質−タンパク質相互作用に関して分析しうる。第7節で詳細に記載されたように、このアッセイはSkp2などの既知のF-boxタンパク質に対する潜在的な標的(E2Fなど)を同定するのに用いられて成功している。このアッセイを用いて、Skp2のその他の標的、ならびに新規なF-boxタンパク質の標的も同定しうる。
その他の特定の実施形態において、Skp2と細胞周期調節サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)インヒビターであるp27との相互作用を検出する方法が提供される。Skp2とp27との相互作用を、p27のような細胞周期調節因子との相互作用を含むSkp2活性のモジュレーターを同定するためにターゲッティングし得る。P27などのSkp2特異的基質のユビキチン化は、Skp2活性をモジュレートする試験化合物の能力を測定する手段として用いうる。本発明のスクリーニングアッセイのその他の実施形態において、第9節に記載の免疫枯渇アッセイ(immunodepletion assay)を用いて、Skp2/p27相互作用のモジュレーターを同定しうる。特に第9節では、p27を基質として用いて、in vitroでユビキチン化活性を検出する方法を記載しており、それはp27のSkp2依存性ユビキチン化のモジュレーターを同定するためにも用いうる。本発明のスクリーニングアッセイのその他の実施形態において、第5.7.1.節に記載のように、アンチセンスオリゴヌクレオチドをSkp2活性のインヒビターとして用いうる。p27のユビキチン化/分解、およびSkp2/p27相互作用について同定されたそのようなモジュレーターは、抗癌治療において有用でありうる。
本発明は、ユビキチンリガーゼ活性化の成分の1つとして新規F-boxタンパク質(またはその断片)を有するユビキチンリガーゼ複合体を、ユビキチン化の潜在的基質として既知の細胞周期調節分子を用いてスクリーニングする方法を更に提供する。例えばFBP核酸を発現するように遺伝子操作された細胞を用いて、推定ユビキチン−リガーゼ基質分子も発現する細胞中に、野生型またはドミナントネガティブ突然変異体のどちらかのFBPタンパク質を組換え的に生産しうる。本発明の新規FBPの基質となりうる候補は、IKBα、β-カテニン、myc、E2F-1、p27、p21、サイクリンA、サイクリンB、cycD1、サイクリンEおよびp53などの潜在的基質が含まれるが、これらに限定されない。次にその抽出物を使用して、F-boxタンパク質とそれらの基質との結合を試験したり(ウェスタンブロットイムノアッセイによる)、FBPの存在により潜在的基質のレベルが増加または減少するかどうかを試験し得る。
5.5 F-boxタンパク質の活性をモジュレートする化合物を同定するアッセイ
本発明は、以下の小節に記載のin vitroおよびin vivoアッセイ系に関し、それを用いて既知のFBPと、新規基質およびユビキチンリガーゼ複合体の新規成分との相互作用をモジュレートする化合物または組成物を同定しうる。本発明のスクリーニングアッセイは、新規なFBPと、それらの同定された基質およびユビキチンリガーゼ複合体の成分との相互作用をモジュレートする化合物または組成物を同定するためにも用いうる。
FBPの発現および活性を破壊または調節する能力について、潜在的試薬をスクリーニングする方法は、新規なFBP、該FBPとユビキチンリガーゼ複合体のその他の成分との相互作用、ならびに既知FBPおよび潜在的基質に関する本出願人の発見に基づいて設計しうる。例えば候補となりうる化合物は、FBPとSkp1の相互作用、またはSkp2とE2F-1、Skp2とp27、またはFBP1/Cul1/Skp1複合体とβ-カテニンとの特異的相互作用をモジュレートする能力についてスクリーニングされうる。原則的に、当業者に既知の方法の多くは、本発明のアッセイの設計に容易に適合しうるものである。
本発明のスクリーニングアッセイは、FBPの発現および活性のモジュレーターを同定する、高効率スクリーニングおよびアッセイも包含する。本実施形態に従って、以下に記載の系はキットに調合することができる。その目的で、FBP、ならびにユビキチンリガーゼ複合体およびユビキチン化の経路の成分を発現する細胞、またはその細胞溶解物は、バイアル、チューブ、マイクロタイターウェルプレート、ビンなど、多様な容器に充填しうる。その他の試薬(例えば、陽性対照サンプル、陰性対照サンプル、バッファー、細胞培養培地など)は別の容器に入れてキットと共に提供しうる。
本発明は、FBP遺伝子およびその遺伝子産物に結合するか、そうでなければ直接相互作用するタンパク質およびその他の化合物の同定に有用なスクリーニング方法を提供する。スクリーニング方法は当技術分野でよく知られている(例えば1996年10月31日発行のPCT国際公開番号WO 96/34099号を参照。これはその全文を参照により本明細書中に組み入れる。)該タンパク質および化合物は、同定された遺伝子およびタンパク質とin vivoで相互作用して医薬的および治療的な介入の新たなターゲットを提供しうる内因性細胞成分、ならびに結合能力を有するために医薬剤の候補となりうる組換え、合成、その他には外因性化合物を含む。このように、一連の実施形態において、細胞溶解物または組織のホモジェネートを、正常なまたは突然変異体のFBP遺伝子およびFBPタンパク質の1つに結合するタンパク質またはその他の化合物についてスクリーニングしうる。
あるいは、任意の天然に存在するおよび/または合成による多様な外因性化合物(例えば、小分子またはペプチドのライブラリーなど)を結合能力ついてスクリーニングしてもよい。これらの方法はすべて、FBPタンパク質または断片を試験化合物と混合し、結合が起こるように時間を置いて、結合した複合体についてアッセイするというステップを含む。そのような方法はすべて、実質的に純粋なFBPタンパク質、実質的に純粋な機能的ドメインの断片、融合タンパク質、抗体、およびそれらの作成方法および使用方法についての本発明の開示により可能となる。
5.5.1. F-boxタンパク質アゴニストおよびアンタゴニストについてのアッセイ
FBP核酸、F-boxタンパク質および誘導体をスクリーニングアッセイに用いて、FBP核酸、タンパク質または誘導体に特異的に結合し、それゆえFBPのアゴニストまたはアンタゴニストとしての潜在的用途を有する分子、特に細胞増殖に影響を及ぼす分子を検出しうる。好ましい実施形態において、そのようなアッセイをおこなって、抗癌剤または薬剤開発のリード化合物として潜在的有用性を有する分子をスクリーニングする。従って本発明は、FBP核酸、タンパク質、または誘導体に特異的に結合する分子を検出するアッセイを提供する。例えば、FBP核酸を発現する組換え細胞を用いて、これらのアッセイにおいてFBPタンパク質を組換え的に生産し、FBPタンパク質に結合する分子についてスクリーニングしうる。同様の方法を用いて、FBP誘導体または核酸に結合する分子についてスクリーニングしうる。以上のことを行うために用いうる方法は、当技術分野で一般的に知られている。本発明のアッセイは、まず小規模(すなわち試験管で)最適化した後、高効率のアッセイに拡大しうる。本発明のスクリーニングアッセイは、細胞溶解物または精製成分を用いてin vitro、すなわち試験管で行いうる。本発明のスクリーニングアッセイは、培養物中の無傷細胞および動物モデルにおいても行いうる。本発明に従って、本明細書に記載されたようにFBPの活性をin vitroでモジュレートすることが示されている試験化合物を、培養細胞および動物モデルなどのin vivoで更にアッセイして、該試験化合物がin vivoでも同様の作用を有するか否か、また該試験化合物が細胞周期の進行、正/負のレギュレーターの蓄積または分解、細胞増殖などに及ぼす作用を判定する。
本発明に従って、スクリーニングアッセイを、新規なF-boxタンパク質の活性のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する分子を検出するように設計しうる。本発明のこの態様に従って、試験化合物をアッセイ系に添加して、新規FBPの活性、すなわち基質のユビキチン化、ユビキチンリガーゼ複合体のその他の成分との相互作用などに及ぼす影響を測定しうる。これらのアッセイは、該試験化合物の存在下および不在下の両方において実施するものとする。
本発明に従って、試験化合物の存在下または不在下での新規FBPのユビキチン化活性は、ユビキチン化経路の精製成分を用いてin vitroで測定してもよいし、または組織培養細胞もしくは組織サンプルから得られた粗細胞抽出物を用いて測定してもよい。本発明の態様のその他の実施形態において、スクリーニングは、ウサギ網状赤血球溶解液(RRL)系などのin vitro翻訳系に試験薬物を添加した後、確立されている分析法を行うことによって実施し得る。その他の代替法として、上述の方法によって互いに相互作用することが測定された、精製された成分または部分的に精製された成分を、試験薬物を添加して/添加せずに、それらの相互作用が自然に起こるような条件下に置いて、既に確立されている相互作用を分析する手順で該試験薬物の影響を評価しうる。このアプローチにおいては、精製された成分または部分的に精製された成分を、ユビキチンリガーゼ複合体およびユビキチン経路の成分を発現する細胞の抽出物の画分化により調製するか、またはクローン化遺伝子、cDNAまたはその断片の発現により得ることができ、その後発現された物質は場合により精製してもよい。
in vitroの選択方法が広範囲であるなかで、数種類の方法が試験薬物のスクリーニングに特に有利および/または有用であると思われる。それらは、2個以上のユビキチンリガーゼ複合体成分の結合相互作用または標的となる基質との相互作用を測定する方法、相互作用する成分の1つである酵素の活性を測定する方法、ならびに「レポーター」タンパク質、すなわち1種の成分の制御下に置かれた酵素またはその他の検出もしくは選択可能なタンパク質の活性または発現を測定する方法などであるが、それらに限定されない。
2個以上の成分同士の結合相互作用は、多様な方法で測定しうる。1つのアプローチとしては、容易に検出できる標識で成分の1種を標識し、それをその他の成分(1種または複数種)と共に、それらが自然に相互作用するような条件下において、結合した標識成分を未結合標識成分から分離するステップを行い、その後結合成分の量を測定することである。結合反応での試験薬物の影響は、該薬物の存在下で結合する標識成分の量と、該薬物の不在下で結合する量とを比較することにより測定しうる。
その他の実施形態において、スクリーニングは、ライブラリーメンバーと固相に固定されたFBPタンパク質(または核酸もしくは誘導体)とを接触させ、該タンパク質(または核酸もしくは誘導体)に結合するライブラリーメンバーを回収することにより行いうる。「パニング(panning)」技術という、このようなスクリーニング方法の例が、Parmley & Smith, 1988, Gene 73:305-318; Fowlkesら, 1992, BioTechniques 13:422-427; PCT公開番号 WO 94/18318号; および先に引用した文献において例示として記載されている。
その他の実施形態において、相互作用するタンパク質またはペプチドを酵母において選択するツーハイブリッド系(Fields & Song, 1989, Nature 340:245-246; Chienら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:9578-9582)を用いて、FBPタンパク質または誘導体に特異的に結合する分子を同定しうる。
あるいは試験方法は、標的基質のユビキチン化などの酵素活性の測定法に依存してもよい。新規FBPの基質が同定されるか、または既知FBPの新規な推定基質(Skp2、E2Fおよびp27の新規基質など)が同定されたら、これらの成分を、ユビキチンリガーゼ複合体のユビキチンリガーゼ活性に対する試験化合物の作用を判定するためのアッセイで使用することが可能である。
一実施形態においては、スクリーニングアッセイは、試験化合物の存在下および不在下において精製系と共に実施し得る。精製された基質を、試験化合物の存在下または不在下において、精製されたユビキチンリガーゼ複合体、ユビキチン結合酵素、ユビキチン活性化酵素、およびユビキチンと共にインキュベートする。基質のユビキチン化はイムノアッセイにより分析する(Paganoら、1995, Science 269: 682-685参照)。簡単に説明すると、50mM Tris pH7.5、5mM MgCl2、2mM ATPγ-S、0.1mM DTT、および5μMビオチニル化ユビキチン中に50〜200ngのタンパク質を含む反応溶液中で基質のユビキチン化をin vitroで実施し得る。全反応溶液(30μl)を試験化合物の存在下または不在下で25℃にて最高3時間インキュベートし、次に分析のために8%SDSゲルまたは4〜20%の勾配ゲル上にローディングする。該ゲルを泳動させ、タンパク質を電気泳動によりニトロセルロースにトランスファーする。基質のユビキチン化はイムノブロッティングにより検出し得る。ユビキチン化基質は、エクストラアビジン(Extravidin)‐HRP(Sigma)を用いて、または基質特異的抗体、およびECL検出系(NEN)を用いることにより可視化し得る。
他の実施形態においては、基質のユビキチン化を、試験化合物の存在下および不在下にて無傷の培養細胞または動物モデルにおいてアッセイし得る。例えば、試験化合物を動物モデル、または動物組織サンプルから得た粗抽出物、に直接投与して、試験化合物の存在下および不在下における基質のユビキチン化を測定し得る。これらのアッセイについて、試験化合物を添加する宿主細胞を遺伝子工学的に操作して、ユビキチンリガーゼ経路および標的基質のFBP成分を発現させ得る。その場合の発現は、一過性、誘導性もしくは構成的、または安定であり得る。本発明のスクリーニング方法のために、多種多様な宿主細胞を使用することができ、それには、限定するものではないが、組織培養細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、および細菌が含まれる。各細胞種はそれぞれ利点と欠点を有する。ヒト組織細胞の一次培養物などの哺乳動物細胞は、本発明のアッセイを行うのに好ましい細胞種でありうるが、これらの細胞種は培養が困難な場合がある。細菌および酵母は比較的容易に培養を行うことができるが、哺乳動物細胞とは異なった形でタンパク質をプロセシングする。このユビキチン化アッセイは以下の通りに実施し得る。まず、ヒトもしくは動物組織由来の抽出物を調製する。ユビキチン化酵素を維持している動物組織サンプルを調製するために、1gの組織を切断し、Brinkmann Polytronホモジナイザー(PT 3000, Westbury, NY)を使用して15,000rpmにて1mlの2つの氷冷蒸留水中でホモジネートしうる。そのサンプルを3回凍結・解凍する。その溶解物を4℃にて45分間、Beckman JA-20.1ローター(Beckman Instruments, Palo Alto, CA)において15,000rpmにて回転させる。上清を回収し、-80℃にて凍結する。この全抽出物の調製方法はユビキチン化酵素を維持する(Lodaら、1997, Nature Medicine 3: 231-234、その全文を参照により本明細書に組み入れる)。
精製された組換え基質をアッセイ系に添加し、30μlのユビキチン化ミックス(100μgのタンパク質組織ホモジネート、50mM Tris-HCl(pH8.0)、5mM MgCl2、および1mM DTT、2mM ATP、10mMクレアチンホスホキナーゼ、10mMクレアチンリン酸、および5μMビオチニル化ユビキチンを含む)中、37℃にて種々の時間でインキュベートする。次に基質を抗体またはアフィニティークロマトグラフィーにより再度精製する。基質のユビキチン化は、該基質に特異的な抗体またはエクストラアビジン−HRPを用いたイムノアッセイにより測定する。
さらにショウジョウバエ(Drosophila)を、FBPと表現型的に相互作用する遺伝子を検出するためのモデル系として使用し得る。例えば、ショウジョウバエ(Drosophila)の眼におけるFBPの過剰発現により小さく不完全な眼となる。該ハエゲノムの突然変異誘発を行い、次に突然変異誘発により小さく不完全な眼の表現型が抑制もしくは増強されたハエを選択し得る。このようなハエの突然変異遺伝子はFBPと相互作用/結合するタンパク質をコードすると考えられる。上述の方法により同定された活性化合物を培養細胞および/もしくは動物モデルにおいて試験し、in vivoにおけるFBP活性(例えば、細胞増殖、基質の蓄積に対する作用など)のブロッキング作用を試験する。
他の種々の実施形態において、スクリーニングは一般的に知られている多くの方法のうちの1つにより達成し得る。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示している以下の参照文献を参照のこと:ParmleyおよびSmith, 1989, Adv. Exp. Med. Biol. 251: 215-218;ScottおよびSmith, 1990, Science 249: 386-390;Fowlkesら、1992, BioTechniques 13: 422-427;Oldenburgら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5393-5397;Yuら、1994, Cell 76: 933-945;Staudtら、1988, Science 241: 577-580;Bockら、1992, Nature 355: 564-566;Tuerkら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 6988-6992;Ellingtonら、1992, Nature 355: 850-852;米国特許第5,096,815号、米国特許第5,223,409号、および米国特許第5,198,346号(いずれもLadnerら);RebarおよびPabo, 1993, Science 263: 671-673;ならびにPCR公開番号WO94/18318号。
化合物、ペプチド、および小分子をスクリーニングアッセイで使用して、候補アゴニストおよびアンタゴニストを同定し得る。一実施形態においては、ペプチドライブラリーを使用して、本発明のFBPのアゴニストまたはアンタゴニストについてスクリーニングし得る。ランダムもしくはコンビナトリアル・ペプチドもしくは非ペプチドライブラリーなどの多様なライブラリーをFBPと特異的に結合する分子についてスクリーニングしてもよい。例えば、化学的に合成されたライブラリー、組換えライブラリー(ファージディスプレイライブラリーなど)、およびin vitro翻訳系ライブラリーを利用し得る、多くのライブラリーが当技術分野で公知である。
化学的に合成されたライブラリーの例は、以下に示す文献に記載されている:Fodorら、1991, Science 251: 767-773;Houghtenら、1991, Nature 354: 84-86;Lamら、1991, Nature 354: 82-84;Medynski、1994, Bio/Technology 12: 709-710;Gallopら、1994, J. Medicinal Chemistry 37(9): 1233-1251;Ohlmeyerら、1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10922-10926;Erbら、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422-11426;Houghtenら、1992, Biotechniques 13: 412;Jayawickremeら、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 1614-1618;Salmonら、1993, Proc. Natl. Acd. Sci. USA 90: 11708-11712;PCT公開番号WO93/20242号、ならびにBrennerおよびLerner, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5381-5383。
ファージディスプレイライブラリーの例は、以下に示す文献に記載されている:ScottおよびSmith, 1990, Science 249: 386-390;Devlinら、1990, Science, 249: 404-406;Christianら、1992, J. Mol. Biol. 227: 711-718;Lenstra, 1992, J. Immunol. Meth. 152: 149-157;Kayら、1993, Gene 128: 59-65;ならびにPCT公開番号WO94/18318号(1994年8月18日公開)。
in vitro翻訳系ライブラリーには、限定されるものではないが、以下に記載されるものが含まれる:PCT公開番号WO91/05058号(1991年4月18日公開)、およびMattheakisら、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 9022-9026。
非ペプチドライブラリーの例としては、ベンゾジアゼピンライブラリー(例えばBuninら、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 4708-4712参照)が使用に適し得る。ペプトイドライブラリー(Simonら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 9367-9371)もまた使用し得る。使用し得るライブラリーの他の例としては、ペプチド中のアミド官能基をペルメチル化し、化学的に変化させたコンビナトリアルライブラリーを作製することについて、Ostreshら(1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11138-11142)により記載されている。
5.5.2 F-boxタンパク質と他のタンパク質との相互作用をモジュレートする化合物の同定についてのアッセイ
第5.4節に詳述したように、基質もしくは相互作用タンパク質を同定したら、次に、かかるタンパク質とF-boxタンパク質との相互作用のモジュレーターについてアッセイすることができる。本発明は、かかる相互作用のアゴニストおよびアンタゴニストの検出方法を提供する。
一実施形態において、本発明は第7節および図10にて同定されるF-boxタンパク質であるSkp2とE2F-1との間の相互作用のモジュレーター(インヒビターもしくはアゴニストなど)を同定するための方法を包含する。かかる方法には、モジュレーター活性についてのin vivoおよびin vitroアッセイが含まれる。例えば、in vivoアッセイにおいては、昆虫細胞を、Skp2およびE2F-1、ならびにSkp2/E2F-1相互作用の潜在的なモジュレーターを共発現するバキュロウイルス(複数種)により共感染させ得る。本発明のスクリーニング方法は、上述の第5.5.1節に記載のSkp2の酵素活性を阻害する試験化合物の能力を測定するin vitroアッセイを包含する。第7節に詳述し、図10に示すように、細胞抽出物を調製し、タンパク質−タンパク質相互作用についてゲル電気泳動により分析し、そしてイムノブロッティングにより検出し得る。あるいは、in vitroタンパク質−タンパク質相互作用アッセイを使用してもよい。精製された組換えSkp2、E2F-1、および推定アゴニストもしくはアンタゴニスト分子を、結合が起こり得る条件下にて、例えば37℃にて30分間、一緒にインキュベートする。タンパク質−タンパク質複合体の形成は、本明細書の第7節に記載のようなゲル分析により検出し得る。このアッセイを使用して、既知FBP(Skp2など)と新規基質との相互作用のモジュレーターを同定し得る。
他の実施形態においては、本発明は、F-boxタンパク質/Skp1相互作用のモジュレーターの同定方法を提供する。かかるアゴニストおよびアンタゴニストはin vivoもしくはin vitroにおいて同定し得る。例えば、F-boxタンパク質/Skp1相互作用のモジュレーターを同定するin vitroアッセイにおいて、精製されたSkp1および新規なFBPを、結合が起こり得る条件下にて、例えば37℃にて30分間、一緒にインキュベートする。並行反応においては、上述の第5.5.1節に記載の潜在的なアゴニストもしくはアンタゴニストを、boxタンパク質/Skp1インキュベーションの前、もしくはその間に添加する。タンパク質−タンパク質相互作用は、本明細書の第7節に記載のようなゲル分析により検出し得る。FBP活性のモジュレーターおよびFBPと他のタンパク質との相互作用のモジュレーターは、本明細書の第5.7節に記載の方法を用いて治療薬として使用し得る。
これらのアッセイは、以下に記載するin vitroアッセイを含む、本明細書に記載のスクリーニング方法のいずれかを利用して実施し得る。スクリーニングは、試験薬剤をユビキチン経路の成分を発現する無傷細胞に添加し、続いて目的の成分を既に確立されている任意の方法で試験することによって実施する。あるいは、スクリーニングは、試験薬剤をin vitro翻訳反応に添加し、続いて確立された分析法を行うことにより実施してもよい。他の代替法としては、上述の方法により互いに相互作用すると判定された、精製もしくは部分精製成分を、それらの間の相互作用が通常起こり得る条件下に配置し、試験薬剤を添加するおよび添加しないで、相互作用を分析するための既に確立されている方法を使用して試験薬剤の影響を評価してもよい。このアプローチにおいては、精製もしくは部分精製成分を、ユビキチンリガーゼ複合体および経路の成分を発現する細胞の抽出物を分画することにより調製してもよいし、あるいはクローン化遺伝子もしくはcDNAまたはその断片の発現により得てもよく、その後場合により発現物質の精製を行ってもよい。
幅広いカテゴリーのin vitro選択方法の中で、いくつかのタイプの方法が試験薬剤のスクリーニングに対して特に都合よくおよび/かつ有用であると考えられる。これらの方法には、限定するものではないが、ユビキチンリガーゼ複合体の2種以上の成分間の結合相互作用または標的基質との相互作用を測定する方法、相互作用成分の1種である酵素の活性を測定する方法、ならびに「レポーター」タンパク質(すなわち、上記1種の成分の制御下に置かれている、酵素または検出可能もしくは選択可能な他のタンパク質)の活性もしくは発現を測定する方法、が含まれる。
2種以上の成分間の結合相互作用は、種々の方法で測定し得る。一つのアプローチでは、容易に検出可能な標識により成分のうちの1種を標識し、それらが通常相互作用する条件下で他の成分と共に配置し、結合した標識成分を未結合標識成分から分離する分離ステップを行い、続いて結合した成分の量を測定する。結合反応中に含まれる試験薬剤の作用は、該薬剤の存在下で結合する標識成分量をその不在下で結合する量と比較することにより判定し得る。
このタイプの方法における分離ステップは種々の方法で達成し得る。一つのアプローチにおいて、標識成分の結合パートナー(1種もしくは複数)を固相上に固定化してから結合反応を行うことができ、そしてその結合反応の後に未結合標識成分を固相の洗浄により除去し得る。固相への結合パートナーの結合は、当業者に公知の種々の方法で達成することができ、限定するものではないが、化学的架橋、プラスチック表面への非特異的付着、固相に結合させた抗体との相互作用、結合パートナーに結合させたリガンド(ビオチンなど)と、固相に結合させたリガンド結合タンパク質(アビジンもしくはストレプトアビジンなど)との相互作用などが含まれる。
あるいは、溶液中で標識成分がその結合パートナーと相互作用可能になった後で分離ステップを行ってもよい。標識成分とその結合パートナーとのサイズの相違によってこのような分離が可能になる場合には、結合反応の生成物を、未結合標識成分の通過は可能だが、その結合パートナーもしくはパートナーと結合した標識成分は通過できない細孔を有するウルトラフィルターを通過させることにより、精製を達成し得る。精製はまた、標識成分の結合パートナーを溶液から捕捉することのできる任意の試薬、例えば、結合パートナーに対する抗体、結合パートナーに既に結合させたリガンドと相互作用することができるリガンド結合タンパク質などを用いて達成してもよい。
5.6 F-boxタンパク質、誘導体およびモジュレーターの診断的使用のための方法および組成物
細胞周期調節物質は腫瘍遺伝子の産物(サイクリン、β-カテニンなど)または腫瘍抑制遺伝子の産物(cki、p53など)である。従って、ユビキチンリガーゼ複合体の部分であるFBPは、腫瘍遺伝子または腫瘍抑制遺伝子の産物(これらの遺伝子産物に応じてこれら産物は細胞周期調節タンパク質の細胞発生量を調節する)であり得る。
FBPタンパク質、その類似体、誘導体および部分配列、FBP核酸(およびこれらに相補性の配列)、抗FBP抗体は診断における用途を有する。FBPおよびFBP核酸をアッセイに用いて、腫瘍発生、癌腫、腺種などを含む増殖性または分化性障害を検出、予知または診断することができる。本発明の新規なFBP核酸は、核型異常およびヘテロ接合性の損失に関連する染色体部位に位置している。本発明のFBP1核酸は、染色体位置10q24にマッピングされ、位置決めされ、その損失がヒト前立腺腫瘍および小細胞胚癌(SCLC)の10%において実証されており、腫瘍抑制遺伝子がこの位置に存在することを示唆した。加えて、7%までの小児急性T細胞白血病は、t(10;14)(q24;q11)またはt(7;10)(q35;q24)の何れかである切断点としての10q24を伴う転座を随伴する。9q34領域(そこにFBP2が位置する)は、ヒト卵巣癌および膀胱癌におけるヘテロ接合性の損失(LOH)の部位であることが示されている。本発明のFBP2核酸は、ヒト卵巣癌および膀胱癌におけるヘテロ接合性の損失(LOH)の部位であることが示されている染色体位置9q34にマッピングされ、位置決めされる。本発明のFBP3核酸は、ヒトSCLCの約75%においてヘテロ接合性の損失を有する推定上の腫瘍抑制遺伝子を含有することが知られている領域である染色体位置13q22にマッピングされ、位置決めされる。本発明のFBP4核酸は、ヒト乳癌および鼻咽頭癌を含む様々な腫瘍における核型異常の部位であることが知られている染色体位置5p12にマッピングされ、位置決めされる。本発明のFBP5核酸は、ヒト卵巣癌、乳癌、胃癌、肝臓癌、バーキットリンパ腫、神経膠腫および上皮小体腺腫におけるヘテロ接合性損失の部位であることが知られている領域である染色体位置6q25-26にマッピングされ、位置決めされる。本発明のFBP7核酸は、乳癌および結腸癌における転移期への進行および上皮小体腺腫におけるヘテロ接合性損失に関連する腫瘍抑制遺伝子を含有する領域である染色体位置15q15にマッピングされ、位置決めされる。
本発明の分子を免疫アッセイのようなアッセイに用いて、FBP発現に影響を与える様々な状態、疾患および障害を検出、予知、診断または監視することができ、あるいはそれらの治療を監視することができる。特に、このような免疫アッセイは、患者から誘導されたサンプルを免疫特異的結合が起こり得るような条件下で抗FBP抗体と接触させ、該抗体による免疫特異的結合の量を検出または測定することを含む方法によって行われる。特定の態様において、組織切片における抗体のこのような結合を用いて、異常FBP局在化またはFBPの異常レベル(例えば低または非存在)を検出することができる。特定の実施形態において、FBPに対する抗体を用いて患者の組織または血清サンプルをFBPの存在についてアッセイすることができ、この場合、FBPの異常レベルは疾患状態の指標である。「異常レベル」とは、その身体の部分からまたは障害を持たない被験者からの類似するサンプル中に存在するレベルまたは該サンプル中に存在することを示す標準レベルに対して上昇または低下したレベルを意味する。
使用できる免疫アッセイとしては、いくつか挙げるとすると、ウェスターンブロット、免疫組織化学的放射線免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫沈殿アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集素アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射性測定アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免役アッセイのような技術を用いる競合的または非競合的アッセイ系があるが、これらに限定されるものではない。
FBP遺伝子および相補的配列を含む関連する核酸配列および部分配列もまた、ハイブリダイゼーションアッセイに用いることができる。FBP核酸配列および約8以上のヌクレオチドを含むその部分配列を、ハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。ハイブリダイゼーションアッセイを用いて、上記のようにFBP発現および/または活性の異常変化に関連する状態、障害または疾患状態を検出、予知、診断または監視することができる。特に、このようなハイブリダイゼーションアッセイは、核酸を含有するサンプルをハイブリダイゼーションが起こり得るような条件下でFBP DNAまたはRNAにハイブリダイズできる核酸プローブと接触させ、生じたハイブリダイゼーションを検出または測定することを含む方法によって行われる。
特定の実施形態において、FBPタンパク質、FBP RNAまたはFBP機能活性(例えばユビキチンリガーゼターゲット結合活性、F-boxドメイン結合活性、ユビキチンリガーゼ活性など)のレベルの低下を検出することにより、あるいはFBP発現または活性の低下を引き起こすFBP RNA、DNAまたはFBPタンパク質の突然変異(例えばFBP核酸の転座、FBP遺伝子またはタンパク質の切断、野生型FBPに対するヌクレオチドまたはアミノ酸配列の変化など)を検出することにより、細胞の過剰増殖を伴う疾患および障害を診断することができ、あるいはそれらの疑わしい存在をスクリーニングすることができ、あるいはこのような障害を発生させる素質を検出することができる。このような疾患および障害としては、以下の5.7.3の節に記載するものが挙げられるが、それらに限定されるものではない。例として、FBPタンパク質のレベルは免役アッセイにより検出でき、FBP RNAのレベルはハイブリダイゼーションアッセイ(例えばノーザンブロット、in situハイブリダイゼーション)により検出でき、FBP活性はin vivoまたはin vitroで形成されたE3ユビキチンリガーゼ複合体におけるユビキチンリガーゼ活性を測定することによりアッセイでき、F-boxドメイン結合活性は当該技術分野で一般的に知られている結合アッセイによりSkp1タンパク質への結合を測定することによりアッセイでき、FBP核酸における転座、欠失および点突然変異はサザンブロッティング、FISH、RFLP分析、SSCP、FBP遺伝子の少なくとも大部分にわたる断片を好ましく生成させるプライマーを用いるPCR、患者から得られたFBPゲノムDNAまたはcDNAの配列決定などにより検出できる。
好ましい実施形態において、患者のサンプル中のFBP mRNAまたはタンパク質レベルが検出または測定され、この場合、レベルの低下は該患者が悪性または過剰増殖性障害を有すること、またはこれを生じる素質を有することを示し;これらのレベルの低下は、その身体の部分からの、または場合によっては悪性または過剰増殖性障害を持たない被験者からの類似のサンプル中に存在するレベルに対するものである。
別の特定の実施形態において、FBPタンパク質、FBP RNAまたはFBP機能活性(例えばユビキチンリガーゼ活性、Skp1結合活性など)のレベルの上昇を検出することにより、あるいはFBPの発現または活性の上昇を引き起こすFBP RNA、DNAまたはタンパク質の突然変異(例えばFBP核酸の転座、その遺伝子またはタンパク質の切断、野生型FBPに対するヌクレオチドまたはアミノ酸配列の変化など)を検出することにより、細胞増殖の欠乏を伴う疾患および障害または細胞増殖の治療が望まれる疾患および障害が診断され、またはそれらの疑わしい存在をスクリーニングすることができ、そのような障害を発生させる素質を検出できる。このような疾患および障害としては、以下の5.7.3節に記載するものが挙げられるが、それらに限定されるものではない。例として、FBPタンパク質のレベル、FBP RNAのレベル、ユビキチンリガーゼ活性、FBP結合活性、および転座または点突然変異の存在を上記のように決定することができる。
特定の実施形態において、患者のサンプル中のFBP mRNAまたはタンパク質のレベルが検出または測定され、この場合、レベルの上昇は、該患者が発育不全または退行性もしくは低増殖性障害を有すること、またはこれを生じる素質を有することを示し;これらのレベルの上昇は、身体の部分からの、または場合によっては発育不全、退行性障害または低増殖性障害を持たない被験者からの類似のサンプル中に存在するレベルに対するものである。
1個またはそれ以上の容器内に、抗FBP抗体、および場合により該抗体に対する標識された結合パートナーを含む、診断用キットも提供される。あるいは、該抗FBP抗体を(検出可能なマーカー、例えば化学発光性、酵素的、蛍光性または放射性部分で)標識することができる。1個またはそれ以上の容器内に、FBP RNAにハイブリダイズすることができる核酸プローブを含むキットも提供される。特定の実施形態において、キットは、1個またはそれ以上の容器内に、適切な反応条件下でFBP核酸の少なくとも一部の増幅[例えばポリメラーゼ連鎖反応(例えばInnisら, 1990, PCR Protocols, Academic Press, Inc., San Diego, CA参照)、リガーゼ連鎖反応(EP 320,308参照)、Qレプリカーゼの使用、環状プローブ反応または当該技術分野で公知の他の方法による]を開始させることが可能な1対のプライマー(例えばそれぞれ6〜30ヌクレオチドの大きさの範囲にある)を含むことができる。キットは場合により、例えば標準またはコントロールとして使用するための、所定量の精製FBPタンパク質または核酸を、容器内にさらに含むことができる。
5.7 F-boxタンパク質、誘導体およびモジュレーターの治療的使用のためめの方法および組成物
以下に、F-boxタンパク質を増殖性障害の治療に使用するための方法および組成物を説明する。FBP活性を活性化または向上させる化合物により腫瘍遺伝子疾患の症状を改善することができ、これにより増殖性障害および癌を改善することができる。
ある場合に、FBPの活性を上昇または増強させる化合物および方法を用いて、増殖および腫瘍遺伝子疾患の症状を治療することができる。このようなケースは、例えば少なくとも一部はFBP遺伝子発現レベルの低下またはFBP遺伝子産物活性の異常レベルによってもたらされる増殖性障害を伴うことがある。例えば、ユビキチンリガーゼ複合体(その基質はサイクリンファミリーのメンバーのような正の細胞周期調節物質である)のFBP成分の活性低下または発現不足は、細胞増殖の増加を生じさせるであろう。このように、遺伝子発現レベルおよび/またはこのようなFBP遺伝子産物活性の増大は、増殖性疾患症状の改善をもたらすであろう。
別の場合、FBPの活性を上昇または増強させる化合物を用いて、FBP基質分子のような、細胞周期の制御に関連する他の遺伝子および遺伝子産物の発現または活性の欠乏に起因する増殖および腫瘍遺伝子疾患の症状を治療することができる。例えば、サイクリンファミリーのメンバーのような正の細胞周期ポジティブ分子の発現または活性の上昇はその過剰活性を生じさせ、これによって細胞増殖の上昇がもたらされ得る。ユビキチンリガーゼ複合体(その基質はこのような正の細胞周期調節物質である)のFBP成分の発現または活性を上昇させる化合物は、この欠陥分子のユビキチン化をもたらし、これによってその分解の増加を生じさせるであろう。このような欠陥に起因する疾患の症状は、その障害をFBP活性の上昇により補う化合物によって改善することができる。FBP遺伝子発現レベルおよび遺伝子産物活性レベルを上昇させる技術は、以下の5.7節で論じられる。
あるいは、FBP活性を低下または不活性化する化合物および方法を治療的に用いて、増殖および腫瘍遺伝子疾患の症状を改善することができる。例えば、増殖性疾患は、少なくとも一部は、FBP遺伝子の過剰活性をもたらす欠陥のあるFBP遺伝子または遺伝子産物によって引き起こされうる。このような欠陥のある遺伝子産物がユビキチンリガーゼ複合体(そのターゲットは細胞周期阻害分子である)の成分、例えばCkiである場合、過剰活性なFBPは細胞周期阻害分子のレベルの低下、従って細胞増殖の上昇をもたらすであろう。このような場合、FBP機能を低下または不活性化させる化合物および方法を用いて該疾患の症状を治療することができる。
別の場合、FBP基質分子のような、FBPの活性を低下させる化合物および方法を用いて、細胞周期制御に関連する他の遺伝子および遺伝子産物の発現または活性の欠乏に起因する障害を治療することができる。例えば、細胞周期の負の調節分子、例えばCkiの発現または活性の欠乏は、その過少活性をもたらし、従って細胞増殖の上昇をもたらすことができる。FBP成分(その基質はこのような分子である)のレベルおよび/または活性の低下はユビキチン化を低下させ、従ってこのような欠陥分子のレベルを上昇させるであろう。従って、このようなFBP分子の発現および/または活性の低下を目的とする化合物および方法を、欠陥遺伝子または遺伝子産物を補うことによる疾患症状の治療に使用できるであろう。
ターゲット遺伝子発現レベルまたはターゲット遺伝子産物活性レベルを低下させる技術は、以下の5.7節で論じられる。
5.7.1 阻害性アンチセンス、リボザイムおよび三重ヘリックス分子ならびに同
定されたアゴニストおよびアンタゴニストの治療的使用
別の実施形態において、ある種のFBP障害、例えば腫瘍形成または癌を引き起こす増殖性または分化性障害は、周知のアンチセンス、遺伝子「ノックアウト」リボザイムおよび/または三重ヘリックス法と共にFBP遺伝子配列を用いてFBP遺伝子発現のレベルおよび/またはFBP遺伝子産物活性を低下させてFBP遺伝子発現レベルを低下させることによって改善することができる。FBP遺伝子の活性、発現または合成をモジュレートする能力(癌のようなFBP障害の症状を回復させる能力を含む)を示し得る化合物の中で優れているものは、アンチセンス、リボザイムおよび三重ヘリックス分子である。このような分子は、損なわれていないターゲット遺伝子活性、または適切ならば突然変異ターゲット遺伝子活性のいずれかを低下または阻害するように設計することができる。このような分子を調製および使用する技術は当業者に周知である。例えば、アンチセンスターゲッティングSKP2 mRNAは、以下のX節(図X)で説明するようにSKP2基質p27を安定化させる。
アンチセンスRNAおよびDNA分子は、標的mRNAにハイブリダイズさせ、タンパク質の翻訳を阻止することによりmRNAの翻訳を直接遮断するように作用する。アンチセンス法は、ターゲット遺伝子mRNAに相補的であるオリゴヌクレオチドの設計を必要とする。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは相補的な標的遺伝子mRNA転写物に結合して翻訳を阻止するであろう。絶対的な相補性は好ましいが、必須ではない。
本明細書において、RNAの一部に「相補的な」配列とは、そのRNAとハイブリダイズして安定な2本鎖分子を形成できるのに充分な相補性を有する配列を意味し;従って二重鎖アンチセンス核酸の場合、2本鎖DNAの1本鎖を試験することができ、あるいは3本鎖形成をアッセイすることができる。ハイブリダイズする能力はアンチセンス核酸の相補性の程度および長さの双方に依存するであろう。一般的に、ハイブリダイズする核酸が長いほどRNAとの塩基ミスマッチが多くなり得るが、依然として安定な2本鎖(場合によっては3本鎖)を形成する。当業者は、標準的な手順を用いてハイブリダイズした複合体の融点を決定することにより、許容されるミスマッチ度を確認できる。
一つの実施形態において、FBP遺伝子の非コード領域に相補性のオリゴヌクレオチドをアンチセンス法に用いて、内因性FBP mRNAの翻訳を阻害できる。アンチセンス核酸は、少なくとも7ヌクレオチドの長さであるべきであり、6〜約50ヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドであることが好ましい。特定の態様において、オリゴヌクレオチドは少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチドまたは少なくとも50ヌクレオチドである。
本発明の実施形態において、図2および4〜9に示すように、F-boxモチーフをコードする核酸に相補性のオリゴヌクレオチド。
ターゲット配列の選択とは無関係に、in vitro研究を最初に行って、アンチセンスオリゴヌクレオチドが遺伝子発現を阻害する能力を定量することが好ましい。これらの研究には、オリゴヌクレオチドのアンチセンス遺伝子阻害と非特異的な生物学的効果とを区別するコントロールを利用することが好ましい。これらの試験によりターゲットRNAまたはタンパク質のレベルと内部コントロールRNAまたはタンパク質のレベルとを比較することも好ましい。加えて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて得られた結果をコントロールオリゴヌクレオチドを用いて得られた結果と比較することが考慮される。コントロールオリゴヌクレオチドは試験オリゴヌクレオチドとほぼ同じ長さのものであること、およびオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列は、アンチセンス配列との差がターゲット配列への特異的ハイブリダイゼーションの防止に必要であるよりも大きくないことが好ましい。
オリゴヌクレオチドはDNAもしくはRNA、またはそれらのキメラ混合物または誘導体もしくは改変バージョン、1本鎖または2本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドを塩基部分、糖部分またはリン酸塩バックボーンで修飾して、例えばその分子、ハイブリダイゼーションなどの安定性を改善することができる。オリゴヌクレオチドは、他の付属基、例えばペプチド(例えばin vivoで宿主細胞受容体をターゲッティングするため)、または細胞膜を通過する輸送を容易にする物質(例えばLetsingerら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86, 6553-6556; Lemaitreら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. 84, 648-652; PCT公開番号WO88/09810、1988年12月15日公開参照)、または血液−脳関門(例えばPCT公開番号WO89/10134、1988年4月25日公開参照)、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤(例えばKrolら, 1988, BioTechniques 6, 958-976参照)、または介在物質(例えばZon, 1988, Pharm. Res. 5, 539-549参照)を含むことができる。この目的のために、オリゴヌクレオチドを別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発開裂剤などにコンジュゲートさせることができる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾された塩基部分を含むことができ、この塩基部分は、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノエチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6-ジアミノプリンを含む群から選択されるが、これらに限定されるものではない。
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロースおよびヘキソースからなる群から選択される少なくとも1種の修飾糖部分を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
また別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート(S-ODN)、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステルおよびホルムアセタールまたはこれらの類似体からなる群から選択される少なくとも1種の修飾ホスフェートバックボーンを含む。
また別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはアノマーオリゴヌクレオチドである。アノマーオリゴヌクレオチドは、相補RNAと特異的2本鎖ハイブリッドを形成し、このハイブリッドでは通常の単位とは異なり、各ストランドが互いに平行に並んでいる(Gautierら, 1987, Nucl. Acids Res. 15, 6625-6641)。このオリゴヌクレオチドは2-0-メチルリボヌクレオチド(Inoueら, 1987, Nucl. Acids Res. 15, 6131-6148)、またはキメラRNA-DNA類似体(Inoueら, 1987, FEBS Lett. 215, 327-330)である。
本発明のオリゴヌクレオチドは当該技術分野で公知の標準的方法により、例えば自動DNAシンセサイザー(Biosearch, Applied Biosystemsなどから市販されているようなもの)を用いて合成できる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドはSteinら (1988, Nucl. Acids Res. 16, 3209) の方法により合成することができ、メチルチオホスホネートオリゴヌクレオチドは制御された孔質ガラス重合体支持体(Sarinら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85, 7448-7451)などを使用して調製することができる。
領域配列をコードするターゲット遺伝子に相補性のアンチセンスヌクレオチドを使用できるであろうが、転写された非翻訳領域に相補性のものが最も好ましい。
本発明の一つの実施形態において、特定のターゲットmRNAがアンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(S-ODN)とハイブリダイズした後でそれらがRNAse Hで消化されるので、遺伝子発現のダウンレギュレーションが達成される。どのアンチセンスS-ODNがより成功するかを推測するための法則はないので、最良の戦略は完全に経験的であり、幾つかのS-ODNを試してみることからなる。アンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(S-ODN)を、問題のmRNAの特定領域をターゲットするように設計する。アンチセンスS-ODNのごちゃ混ぜの配列からなるコントロールS-ODNもまた、同一のヌクレオチド含有量を保証し、かつ、もしかして核酸含有量に寄与うる相違を最小限にするように設計する。全てのS-ODNはOligos Etc. (Wilsonville, OR)により合成されうる。研究目的のアッセイまたはex vivo遺伝子療法プロトコルのような培養細胞に適用する場合、アンチセンス分子の有効性を試験するために、細胞を100mmの組織培養プレート上で60〜80%コンフルエンスになるまで増殖させ、PBSですすぎ、8mlのOpti-MEM、52.8リットルのリポフェクチンおよび最終濃度200nMのS-ODNからなるリポフェクション混合物を重層する。リポフェクションはリポフェクチン試薬およびOpti-MEM (Gibco BRL)を用いて行われる。細胞をリポフェクションミックスの存在下に5時間インキュベートする。インキュベーションに続いて、培地を完全DMEMと交換する。リポフェクション後、種々の時点で細胞を収穫し、ウェスタンブロットによりタンパク質レベルを分析する。
アンチセンス分子は、ターゲット遺伝子を発現する細胞、すなわちin vivoで直接に被験者に、またはex vivo遺伝子療法プロトコルのような培養中の細胞を標的にすべきである。多数の方法がアンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送達するために開発されており;例えばアンチセンス分子を組織部位に直接注射することができ、または所望の細胞を標的にするように設計された改変アンチセンス分子(例えばターゲット細胞表面上で発現される受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に結合されたアンチセンス)を全身的に投与することができる。
しかしながら、内因性mRNAの翻訳を抑制するのに充分なアンチセンスの細胞内濃度を得ることはしばしば困難である。従って、好ましいアプローチでは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強いpol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下に置かれた組み換えDNA構築物が利用される。このような構築物を用いてターゲット細胞を患者にトランスフェクトすることで、内因性ターゲット遺伝子転写物と相補性塩基対を形成するのに十分な量の1本鎖RNAの転写が生じ、これによってターゲット遺伝子mRNAの翻訳が阻止される。例えば、ベクターを、例えばそれが細胞によって取り込まれ、アンチセンスRNAの転写を指令するように導入することができる。このようなベクターはエピソームに留まることができ、またはそれが転写されて所望のアンチセンスRNAを生成させる限り、染色体的に組み込まれるようになることができる。このようなベクターは、当該技術分野で標準的な組み換えDNA技術の方法により構築することができる。ベクターは、哺乳動物細胞中での複製および発現に用いられる、当該技術分野で公知のプラスミド、ウイルスまたはその他であってよい。アンチセンスRNAをコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞中で作用する当該技術分野で公知の任意のプロモーターによるものであってよい。このようなプロモーターは誘導性または構成的であってよい。このようなプロモーターとしては、SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon, 1981, Nature 290, 304-310)、ラウスニワトリ肉腫の3長末端反復に含まれるプロモーター(Yamamotoら, 1980, Cell 22, 787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78, 1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら, 1982, Nature 296, 39-42)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。任意の型のプラスミド、コスミド、YACまたはウイルスベクターを用いて、組織部位に直接導入できる組み換えDNA構築物を調製することができる。あるいは、所望の組織に選択的に感染するウイルスベクターを用いることができ、この場合投与は別の経路で(例えば全身的に)行ってもよい。
また、ターゲット遺伝子mRNA転写物を触媒的に開裂するように設計されたリボザイム分子を用いて、ターゲット遺伝子mRNAの翻訳、従ってターゲット遺伝子産物の発現を阻止することができる(例えばPCT国際公開WO90/11364、1990年10月4日公開;247節、1222-1225参照)。本発明の実施形態において、FBP遺伝子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドは、図2および4〜9に示すように、F-boxモチーフをコードする核酸に相補性であるように設計される。
リボザイム分子は、RNAの特異的開列を触媒できる酵素的RNA分子である。(概説についてはRossi, 1994, Current Biology 4, 467-471参照)。リボザイム作用の機構は、相補的ターゲットRNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、次いで内部核溶解的開裂イベントを伴う。リボザイム分子の組成はターゲット遺伝子mRNAに相補的な1個またはそれ以上の配列を含む必要があり、mRNA開裂の原因である周知の触媒的配列を含む必要がある。この配列については、例えば米国特許弟5,093,246号を参照のこと。これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
mRNAを部位特異的認識配列で開裂させるリボザイムを用いてターゲット遺伝子mRNAを破壊することができるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、ターゲットmRNAと相補的塩基対を形成する隣接領域によって規定される位置でmRNAを開裂させる。唯一の必要条件は、ターゲットmRNAが2つの塩基の次の配列:5’-UG-3’を有することである。ハンマーヘッドリボザイムの構築および生成は当該技術分野で周知であり、Myers, 1995, Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, New York(特に第833頁の図4参照)およびHaseloff & Gerlach, 1988, Nature, 334, 585-591(これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)にさらに充分に説明されている。
好ましくは、リボザイムは、開裂認識部位がターゲット遺伝子mRNAの5’末端付近に位置するように、すなわち有効性を高め、かつ非機能性mRNA転写物の細胞内蓄積を最小限にするように遺伝子工学的に操作される。
本発明のリボザイムはまた、RNAエンドリボヌクレアーゼ(以下、「Cech型リボザイム」)、例えばテトラヒメナ・サーモフィラ(Tetrahymena thermophila)(IVSまたはL-19 IVS RNAとして知られている)中に自然に存在するもの、およびThomas Cechおよび共同研究者(Zaugら, 1984, Science, 224, 574-578; ZaugおよびCech, 1986, Science 231, 470-475; Zaugら, 1986, Nature, 324, 429-433; University Patents Inc.による公開国際特許出願番号WO88/04300; Been & Cech, 1986, Cell, 47, 207-216)により広範囲にわたって説明されているものを含む。Cech型リボザイムは、ターゲットRNA配列にハイブリダイズし、その後でターゲットRNAの開裂が生じる8塩基対活性部位を有する。本発明は、ターゲット遺伝子中に存在する8塩基対活性部位配列をターゲットする、これらのCech型リボザイムを包含する。
アンチセンス法におけるように、リボザイムは修飾オリゴヌクレオチド(安定性改善、ターゲッティングなどのため)から構成されていてよく、ターゲット遺伝子をin vivoで発現する細胞に送達されるべきである。好ましい送達方法は、強い構成性pol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下にリボザイムを「コードする」DNAを用いることを含み、それによってトランスフェクトされた細胞は、内因性ターゲット遺伝子メッセージを破壊し、翻訳を阻止するのに充分な量のリボザイムを生成することになる。アンチセンス分子と異なりリボザイムは触媒的であるので、有効であるためにはより低い細胞内濃度が要求される。
内因性ターゲット遺伝子発現はまた、標的化相同的組換えを用いてターゲット遺伝子またはそのプロモーターを不活性化または「ノックアウト」することにより減少させることができる(例えばSmithiesら, 1985, Nature 317, 230-234; Thomas & Capecchi, 1987, Cell 51, 503-512; Thompsonら, 1989, Cell 5, 313-321参照;これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。例えば、内因性ターゲット遺伝子(ターゲット遺伝子のコード領域または調節領域の何れか)に相同なDNAが隣接した突然変異非機能性ターゲット遺伝子(または全く無関係なDNA配列)を、選択マーカーおよび/または負の選択マーカーと共にまたはそれなしで用いて、in vivoでターゲット遺伝子を発現する細胞をトランスフェクトすることができる。標的化相同性組換えによるDNA構築物の挿入は、ターゲット遺伝子の不活性化をもたらす。このような手法は特にES(胚幹)細胞への改変に適しており、これを用いて不活性ターゲット遺伝子を有する動物子孫を生じさせることができる(例えばThomas & Capecchi, 1987およびThompson, 1989、上記、参照)。しかしながら、組み換えDNA構築物が、適切なウイルスベクターを用いてin vivoで必要な部位に直接に投与されるか、または該部位を標的とすることを条件として、この手法をヒトへの使用に適合させることができる。
あるいは、ターゲット遺伝子の調節領域(すなわちターゲット遺伝子プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補性のデオキシリボヌクレオチド配列をターゲッティングして、身体におけるターゲット細胞中のターゲット遺伝子の転写を阻止する三重ヘリックス構造を形成させることにより、内因性ターゲット遺伝子発現を減少させることができる。(一般的に、Helene, 1991, Anticancer Drug Des., 6(6), 569-584; Heleneら, 1992, Ann. N.Y. Acad. Sci., 660, 27-36; およびMaher, 1992, Bioassays 14(12), 807-815参照。)
転写を阻止するための三重ヘリックスの形成に用いるべき核酸分子は、1本鎖であり、デオキシリボヌクレオチドから構成されるべきである。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成はHoogsteenの塩基対合則(これは一般的に、2本鎖の一方の鎖上に存在すべきプリンまたはピリミジンの何れかの相当大きいストレッチを必要とする)により三重ヘリックスの形成を促進するように設計される必要がある。ヌクレオチド配列は、ピリミジンに基づくものであってよく、これは、生成する三重ヘリックスの3本の会合した鎖を横切るTATおよびCGC+トリプレットを生じさせるであろう。ピリミジン富化分子は、2本鎖のうちの1本鎖のプリン富化領域に対し、この鎖と平行方向の塩基相補性を提供する。加えて、プリンに富んだ核酸分子、例えばG残基のストレッチを有するものを選択することができる。これらの分子は、GC対に富んだDNA2本鎖分子と三重ヘリックスを形成するであろう。この場合、プリン残基の大半は、標的2本鎖のうちの1本鎖に位置し、3本鎖中の3本の鎖を横切るGGCトリプレットを生成させる。
あるいは、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を作り出すことにより、三重ヘリックスを形成するためにターゲッティングされ得る可能性のある配列を増加させてもよい。スイッチバック分子は、交互に5’-3’、3’-5’様式で合成され、その結果、それらは2本鎖の最初の1本の鎖と塩基対合し、次いでもう一方の鎖と塩基対合することになり、2本鎖分子の一方の鎖上に存在すべきプリンまたはピリミジンの何れかの相当大きなストレッチの必要性が排除される。
本明細書に記載したアンチセンス、リボザイムおよび/または三重ヘリックス分子を突然変異遺伝子発現の阻害に利用する場合、この技術は、正常なターゲット遺伝子対立遺伝子により産生されるmRNAの転写(3重ヘリックス)および/または翻訳(アンチセンス、リボザイム)を非常に効率的に低下または阻害するので、正常なターゲット遺伝子産物の存在濃度が正常な表現型のために必要であるよりも低くてもよいという可能性が生じうる。したがって、このような場合、ターゲット遺伝子活性の実質的に正常なレベルの維持を保証するため、正常なターゲット遺伝子活性を示すターゲット遺伝子ポリペプチドをコードして発現する核酸分子であって、利用されるどのようなアンチセンス、リボザイムまたは三重ヘリックス治療に対しても感受性をもつ配列を含まない核酸分子を、以下の5.7.2節に記載するような遺伝子療法により細胞内に導入できる。あるいは、ターゲット遺伝子が細胞外タンパク質をコードする場合、ターゲット遺伝子活性の必要レベルを維持するために、正常なターゲット遺伝子タンパク質を共に投与することが好ましい。
本発明のアンチセンスRNAおよびDNA、リボザイムならびに三重ヘリックス分子は、上記のようにDNAおよびRNA分子の合成のための当該技術分野で公知の任意の方法により合成できる。これらの方法としては、例えば固相ホスホラミダイト(phosphoramidite)化学合成のような当該技術分野で周知の、オリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオチドを化学的に合成する技術が挙げられる。あるいは、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のin vitroおよびin vivo転写によりRNA分子を生成させることができる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターのような好適なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込む広範囲のベクター中に導入することができる。あるいは、用いられるプロモーターに応じてアンチセンスRNAを構成的または誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物を、細胞系に安定して導入することができる。
5.7.2 遺伝子交換療法
正常なFBP遺伝子発現および/またはFBP遺伝子産物活性のレベルの上昇に関して、5.1節に記載したFBP遺伝子核酸配列を、例えば癌のような増殖性障害の治療に利用することができる。このような治療は、例えば遺伝子交換療法の形態で施すことができる。詳細には、正常FBP遺伝子、または正常FBP遺伝子機能を示すFBP遺伝子産物の産生を指令するFBP遺伝子の一部の1つまたはそれ以上のコピーを、ベクターを用いて患者の適切な細胞中に挿入できる。このようなベクターとしては、細胞中にDNAを導入する他の粒子、例えばリポソームに加えて、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
全ての組織で発現されるFBP遺伝子、または好ましくは脳内で発現されるFBP1遺伝子のような選択的に発現されるFBP遺伝子に関し、このような遺伝子交換療法は、FBP遺伝子配列を患者のこれら細胞型に送達可能であるべきである。従って、一つの実施形態において、当業者に周知の技術(例えばPCT公開番号WO89/10134、1988年4月25日公開)を用いて、FBP遺伝子配列が血液脳関門を容易に通過できるようにし、またこれらの配列を脳内細胞に送達することができるようにする。血液脳関門を通過できる送達に関して、例えば上記のようなウイルスベクターが好ましい。
別の実施形態において、送達の技術は、このようなFBP遺伝子配列を、該FBP遺伝子配列が発現されることになる細胞の部位に直接投与することを含む。
FBP遺伝子発現および/またはFBP遺伝子産物活性の全体的なレベルを上昇させるために使用できる追加の方法は、適切なFBP発現性細胞、好ましくは自己細胞を、FBP障害の症状を改善するのに充分な数の位置および回数で患者に導入することを含む。このような細胞は組換え細胞であっても非組換え細胞であってもよい。
患者内でのFBP遺伝子発現の全体的レベルを上昇させるために投与できる細胞の中には、FBP遺伝子を正常に発現する細胞がある。
あるいは、細胞、好ましくは自己細胞を遺伝子工学的に操作して、FBP遺伝子配列を発現させることができ、次いで患者の、FBP障害または増殖性もしくは分化性障害、例えば癌および腫瘍形成の症状の改善のために適切な位置に導入できる。あるいは、損なわれていないFBP遺伝子を発現する、MHCマッチ個体由来の細胞を使用することができ、このような細胞としては、例えば脳細胞が挙げられる。FBP遺伝子配列の発現は、適切な遺伝子調節配列によって制御され、必要な細胞型でのこのような発現を可能にする。このような遺伝子調節配列は当業者に周知である。このような細胞に基づく遺伝子療法技術は当業者に周知であり、例えばAnderson、米国特許弟5,399,349号が参照される。
投与されるべき細胞が非自己細胞である場合、導入された細胞に対する宿主免疫反応の発生を防ぐ周知の技術を用いて、これらの細胞を投与できる。例えば、隣接した細胞外環境との成分の交換を可能にするが、導入された細胞を宿主免疫系によって認識させないカプセル封入形態で、これらの細胞を投与することができる。
加えて、FBP遺伝子産物活性をモジュレートすることのできる化合物、例えば上記5.5節で説明したような技術により同定されたものを、当業者に周知の標準的技術を用いて投与することができる。投与されるべき化合物が脳細胞との相互作用を伴う場合、投与技術は血液脳関門の通過を可能にする周知の技術を含むべきである。
5.7.3 増殖性細胞障害のターゲッティング
ユビキチンリガーゼ活性に関連する特定の増殖性および腫瘍形成性疾患に関して、本発明の方法により治療または予防できる疾患としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:ヒト肉腫および癌腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、軟骨腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌腫、膵臓癌腫、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌腫、基底細胞癌腫、腺癌、汗腺癌腫、皮脂腺癌腫、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、上顎癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィムス腫、子宮頚部癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴覚神経腫、突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば急性リンパ球性白血病、および急性骨髄球性白血病、(骨髄芽球性、前骨髄芽球性、骨髄骨球性、単球性および赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病);および真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム・マクログロブリン血症およびH鎖病。
細胞増殖の欠乏を伴う疾患または障害、あるいは細胞増殖が治療または予防のために望まれ、FBP機能の阻害により治療または予防できる疾患または障害としては、例えば創傷の治癒を促進するため、あるいは退行、病変または損傷した組織などの再生を促進するための、退行性障害、発育不全、低増殖性障害、身体的外傷、病変および創傷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
5.8 医薬製剤及び投与方法
FBP遺伝子発現又は遺伝子産物活性に影響を与えると判定された化合物を、細胞増殖性疾患の治療又は軽減のために治療上有効量で患者に投与することができる。治療上有効量とは、そのような疾患の症状の軽減をもたらすのに十分な化合物の量をいう。
5.8.1 有効量
そのような化合物の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物において標準的製薬学的手法を用いて、例えば、LD50(集団の50%を致死させる用量)及びED50(集団の50%で治療上有効量)を決定することによって判定することができる。毒性作用と治療作用との間の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50で表せる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を用いることもできるが、感染していない細胞に対して起こりうるダメージを最小化し、それによって副作用を低減するために、そのような化合物を作用組織部位へ標的化する送達系を設計する配慮を行うべきである。
細胞培養アッセイ及び動物研究から得たデータは、ヒトで用いるための投薬量の範囲を決定するのに使用できる。そのような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性が殆どないか又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内である。投薬量は、採用される剤形及び利用される投与経路によって、この範囲内で変動しうる。本発明の方法で用いる任意の化合物について、治療上有効量は、最初に細胞培養アッセイから概算できる。細胞培養で決定されるIC50(すなわち、最大限の半分の症状抑制を達成する被験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、用量を動物モデルで決定できる。そのような情報は、ヒトでの有用な用量をより正確に決定するのに使用できる。血漿中の濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定できる。
5.8.2 製剤化及び使用
本発明に従って用いるための医薬組成物は、1以上の生理学的に許容可能な担体又は賦形剤を用いて従来の方法で製剤化できる。
従って、前記化合物並びにそれらの生理学的に許容可能な塩及び溶媒和物は、(口又は鼻のいずれかを通した)吸入、又は経口、バッカル、非経口若しくは直腸投与による投与用に製剤化できる。
経口投与については、医薬組成物は、例えば、結合剤(例えば、予めゼラチン化されたトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、微結晶セルロース又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、かたくり粉又は澱粉グリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの医薬的に許容可能な賦形剤を用いる従来の手段によって製造される錠剤又はカプセル剤の剤形をとりうる。錠剤は、当業界で周知の方法で被覆してもよい。経口投与用の液体製剤は、例えば、液剤、シロップ剤又は懸濁剤の剤形をとるか、又は使用の前に水又は他の好適なビヒクルと共に構成するための乾燥製品として提供されうる。そのような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は食用硬化油脂);乳化剤(例えば、レクチン又はアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油状エステル、エチルアルコール又は分画食用油脂);及び保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはp−ヒドロキシ安息香酸プロピル又はソルビン酸)などの医薬的に許容可能な添加物と共に従来手段によって製造できる。製剤は、適当なバッファー塩類、香味剤、着色剤及び甘味剤を含んでいてもよい。
経口投与用製剤は、活性化合物を制御放出するように適当に製剤化することができる。
バッカル投与については、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤又はロゼンジ剤の剤形をとりうる。
吸入による投与については、本発明による使用のための化合物は、適当な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適当な気体)を用いた加圧パック又はネブライザーからのエアゾールスプレー供与の剤形で便利に送達される。加圧エアゾールの場合、投薬単位は、定量された量を送達するためのバルブを設けることによって決定できる。吸入器で用いる、例えば、ゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物及び乳糖又は澱粉などの適当な粉末基剤からなる粉末混合物を含めて製剤化できる。
化合物は、注射、例えば、ボーラス注射又は継続的輸液による非経口投与用に製剤化できる。注射用製剤は、保存剤が添加された単位剤形(例えば、アンプル中又は複数用量容器中)で提供できる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤又は乳剤などの剤形をとり、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化薬剤を含むことができる。あるいは、有効成分は、使用前に適当なビヒクル(例えば、滅菌された病原菌を含まない水)と共に構成するための粉末剤形にできる。
化合物は、例えば、カカオ脂又は他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を含む、座剤又は保持浣腸剤などの直腸用組成物に製剤化できる。
上記の製剤の他に、化合物は、デポ製剤として製剤化することもできる。そのような長期に作用する製剤は、埋め込み(例えば、皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射によって投与できる。従って、例えば、化合物は、適当な重合性若しくは疎水性材料(例えば、許容可能なオイル中の乳剤として)又はイオン交換樹脂と共に製剤化できるか、又は徐々に溶解する誘導体(例えば、徐々に溶解する塩)として製剤化できる。
組成物は、所望ならば、有効成分を含む1以上の単位剤形を入れることができるパック又はディスペンサー装置で提供できる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの、金属フォイル又はプラスチックフォイルからなっているものでもよい。パック又はディスペンサー装置には、投与用の指示書が添付されていてもよい。
6. 実施例:新規なユビキチンリガーゼF-boxタンパク質及び遺伝子の同定及び特徴付け
下記研究は、ユビキチン化経路に対する新規な特異的基質を集める働きをしうる新規F-boxタンパク質を同定するために行った。幾つかの生物に関する研究は、幾つかのFBP類が重要な細胞性調節タンパク質(例えば、サイクリン、cdk阻害剤、β−カテニン、IKBaなど)の制御された分解に決定的な役割を果たすことを示した。これらのFBP類は、3つの基本的サブユニット(すなわち、(S.セレビシエでCdc53と呼ばれ、ヒトでCul1と呼ばれる)クリン(cullin)サブユニット;Skp1;及び多くのFBP類の1つ)によって形成されるユビキチンタンパク質SCFリガーゼのサブユニットである。SCFリガーゼは、ユビキチン結合酵素(Ubc3又はUbc4のいずれか)を、異なるFBP類によって集められる特異的基質に標的化させる。概略的には、Ubcは、クリンサブユニットによってリガーゼに結合され、基質はFBPサブユニットと相互作用する。FBP類は、クリンサブユニットに直接結合できるけれども、クリンのN末端とFBPのF-boxと同時に結合できる、第4のサブユニット、Skp1の存在が、複合体を安定化する。従って、ユビキチンリガーゼ複合体の基質特異性は、F-boxサブユニットによって与えられる。
6.1 新規F-box遺伝子の同定及び特徴付けに用いられる材料及び方法
酵母ツーハイブリッドスクリーニング
F-boxタンパク質をコードするヒト遺伝子をクローニングするために、改変された酵母ツーハイブリッド系(Vidalら, 1996, Proc. Nat. Acad. Sci., 93:10315-20;Vidalら, 1996 Proc. Nat. Acad. Sci., 93:10321-26)を用いて、Skp1と結合するタンパク質を同定した。この改変系は、3つの異なるGal4結合部位プロモーターから発現される3つのリポーター遺伝子をうまく利用し、それによって、擬陽性相互作用の数を減らす。この複数リポーター遺伝子アッセイは、真の相互作用の同定を促進する。
ヒトSkp1を、新規F-boxタンパク質及びCdc4の推定されるヒトホモログなどのSkp1と相互作用するタンパク質を探索するためのbaitとして用いた。それぞれ酵母GAL4のDNA結合ドメイン(DB, aa 1-147)及び転写活性化ドメイン(AD, aa 768-881)をコードし、選択マーカーとしてLEU2及びTRP1を含む、プラスミドpPC97-CYH2及びpPC86を用いた(Chevray及びNathans, 1992, Proc. Nat. Acad. Sci., 89:5789-93;前記Vidalら)。
下記のPCR産物の相同的組み換えによって、Skp1とDBとの間のイン-フレーム(in-flame)融合物を得た。下記2つのオリゴヌクレオチドを設計し、Gene Link Inc.社から精製されたプライマーとして入手した:
Figure 2009100746
Figure 2009100746
(配列番号81)。5'プライマーは、skp1遺伝子の5'配列と隣接するpPC97-CYH2プラスミド(下線付き)のDB中に位置する配列に対応する。3'プライマーは、skp1遺伝子の3'配列と隣接するpPC97-CYH2プラスミド(下線付き)のポリリンカーのそばに位置する配列に対応する。これらのプライマーを以下の成分を含むPCR反応物中に用いた:100 ngのDNA鋳型(skp1 pETプラスミド)、1μMの各プライマー、0.2 mM dNTP、2 mM MgCl2、10 mM KCl、20 mMトリス塩酸 pH 8.0、0.1%トリトンX-100、6 mM (NH4)2SO4、10μg/mlヌクレアーゼフリーBSA、1単位のPfu DNAポリメラーゼ(94℃で4分、50℃で1分、72℃で10分で28サイクル)。約100 ngのPCR産物を、Bg1II及びSalIで予め消化した100 ngのpPC97-CYH2プラスミドの存在下又は不存在下で、酵母細胞(MaV103株;Vidalら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:10315-10320;Vidalら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:10321-10326)中へ形質転換した。相同的組み換えの結果として、skp1のcDNAによって相同的に組み換えられたpPC97-CYH2プラスミドを含む酵母細胞のみが、ロイシン不存在下で増殖した。6個のコロニーを単離し、報告されたように(前記Vidalら)Skp1の発現を免疫ブロッティングすることによって分析した。対照コロニー以外の、6個のコロニー全部が、我々のアフィニティー精製した抗Skp1抗体によって認識されるMr36,000融合タンパク質を発現した。
ADドメイン下流のフレームにcDNA断片をクローニングすることによってAD融合物を作製し、構築物を配列決定、免疫ブロット法、及びSkp1との相互作用によって確認した。pPC86-Skp2s(pPC86)は、pPC86-Skp2、及びpPC86-Skp2-CT(Skp2のaa 181-435)を含む。Skp2はSkp1の既知の相互作用体(Zhangら, 1995, Cell, 82:915-25(非特許文献8))なので、前者の融合物は、我々の陽性対照を示し;後者の融合物はSkp1との相互作用に必要なF-boxを欠いているので、これを陰性対照として用いた。
DB-Skp1融合物を有するMaV103株を、標準酢酸リチウム法を用いて、pPC86中の活性化T細胞cDNAライブラリー(Alala2;Huら, Genes & Dev. 11:2701-14)によって形質転換した。形質転換体を、先ず合成完全(SC)-Leu-Trpプレート上にプレーティングし、次いで二日後に、20 mMの3−アミノトリアゾール(3-AT)を含む(SC)-Leu-Trp-Hisプレート上にレプリカを載せた。さらに3〜4日間インキュベートして増殖させた酵母コロニーを一次陽性として拾い上げ、さらに3種のリポーターアッセイで試験した:i)20 mM 3-ATを補充したSC-Leu-Trp-Hisプレート上での増殖;ii)ガラクトシダーゼ活性;及びiii)逆選択法として、0.2%の5−フルオロオロト酸を含むSC-Leu-Trpプレート上でのURA3活性化。スクリーニングされた3×106個の酵母形質転換体のうち、ADプラスミドは、3種全てのアッセイ後に陽性コロニーとして選択された15個からレスキューされた。MaV103細胞を、レスキューされたADプラスミドとDBskp1融合物、又はレスキューされたADプラスミドと対照としてcDNAインサートを含まないpPC97-CYH2ベクターのいずれかによって再度形質転換した。3種のリポーターアッセイ全てで繰り返し陽性であると試験されたクローン由来の11個のADプラスミド(非常に強い相互作用体)、及び3種のリポーターアッセイの全てではなくそのうちの幾つかで陽性であったクローン由来の4種の追加のADプラスミド(強い相互作用体)を回収し、自動ABI373DNAシーケンシングシステムによって配列決定した。
完全長のFBP類のクローニング
FBP4及びFBP5をコードする2つのクローンは、完全長であると思われるが、FBP1、FBP2、FBP3及びFBP7をコードする4種の他のcDNAの完全長クローンを、製造業者の指示書に従ってMarathon-Ready cDNAライブラリー(Clonthec社製、カタログNo. 7406, 7445, 7402)を用いたRACEによって得た。FBP6をコードする完全長クローンは得られなかった。完全長クローンに対する基準は、以下のうちの少なくとも2つを含む:i)既知のF-boxタンパク質に関係する配列を与えるORFの同定;ii)推定されるメチオニン開始コドンでのコンセンサスKozak翻訳開始配列の存在;iii)推定される開始コドンの上流ではなく、同じリーディングフレーム中での停止コドンの同定;iv)3種の異なるcDNAライブラリーを用いるRACEによってクローンのサイズをさらに増加できないこと。
酵母抽出物由来のタンパク質の免疫ブロット法による分析
酵母細胞を中間対数増殖期まで増殖させ、回収し、洗浄し、約109細胞/mlの細胞密度でバッファー(50 mMトリス、pH8.0、20%グリセロール、1 mM EDTA、0.1%トリトンX-100、5 mM MgCl2、10 mMβ−メルカプトエタノール、1 mM PMSF、1 mg/mlロイペプチン、 1 mg/mlペプスタチン)中に再懸濁した。ガラスビーズ存在下で40℃で10分間激しく攪拌することによって細胞を破壊した。12,000 rpm、40℃で15分間遠心分離することによって破片をペレット化した。約50 gのタンパク質を上記の免疫ブロット法にかけた(前記Vidalら, 1996a;前記Vidalら, 1996b)。
タンパク質モチーフのDNAデータベース検索及び分析
FBP遺伝子との相同性を有するEST(発現された配列タグ)を、BLAST、PSI-BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)及びTGIシーケンス・サーチ(TGI Sequence Search)(http://www.tigr.org/cgi-bin/BlastSearch/blast_tig.cgi)を用いて同定した。少なくとも100 bps中95%を超えてオーバーラップしたEST類をSequencher 3.0を用いて新規な連続的ORF中にアセンブルした。プロファイルスキャン・サーバー(ProfileScan Server)(http://www.isrec.isb-sib.ch/software/PFSCAN_form.html)、ブロックス・サーチャー(BLOCKS Sercher)(http://www.blocks.fhere.org/blocks_search.html)及びIMBジェナ(IMB Jena)(http://genome.imb-jena.de/cgi-bin/GDEWWW/menu.cgi)によって、タンパク質ドメインを同定した。
F-box突然変異体の構築
リーディング・フレームを保存する適当な制限酵素で削除することによって、デルタ−F-box突然変異体[(ΔF)FBP1、残基32-179;(ΔF)FBP2、残基60-101;(ΔF)FBP3a、残基40-76;(ΔF)FBP4、残基55-98]を得た。BspEI及びXbaI制限酵素によってDNA断片(ヌクレオチド338-997)を除去し、それをヌクレオチド457-997を含むPCR断片で置換することによって(ΔF)Skp2突然変異体を得た。最終構築物は残基113-152を欠損したタンパク質をコードしていた。QuikChange 部位指定突然変異誘発キット(Stratagene社製)のポリメラーゼ連鎖反応を用いたオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発によってロイシン51〜アラニンFBP3a突然変異体[FBP3a(L51A)]及びトリプトファン76〜アラニンFBP3a突然変異体[FBP3a(W76A)]を作製した。全ての突然変異体の全体を配列決定した。
組み換えタンパク質
以下のヒトタンパク質をコードするcDNA断片:Flagタグ付きFBP1、Flagタグ付き(ΔF)FBP1、Flagタグ付きFBP3a、Skp2、HAタグ付きCul1、HAタグ付きCul2、β−カテニン、Hisタグ付きサイクリンD1、Skp1、Hisタグ付きSkp1、Hisタグ付きエロンジン(Elongin)Cを、バキュロウイルス発現ベクターpBacpak-8(Clonetech社製)中に挿入し、バキュロゴールド(BaculoGold)トランスフェクションキット(Pharmingen社製)を用いて線状化されたバキュロウイルスDNAを有するSf9細胞中にコトランスフェクションした。組み換えウイルスを用いて、5B細胞を感染させ、上記の免疫ブロット法によってそれらのコードされたタンパク質の発現をアッセイした。製造業者の指示書に従ってニッケル−アガロース(Invitrogen社製)によってHis-タンパク質を精製した。
抗体
以下のアミノ酸ペプチド:(C)DGEKDTYSYLA(配列番号82)をウサギ及びマウスに注射することによって抗Cul1抗体を生産した。このペプチドは、ヒトCul1のカルボキシ末端に対応しているが、他のクリンでは保存されていない。以下のアミノ酸ペプチド:(C)ESSFSLNMNFSSKRTKFKITTSMQ(配列番号83)をウサギに注射することによって抗Cul2抗体を生産した。このペプチドは、ヒトCul2のカルボキシ末端から87個のアミノ酸に位置づけられるが、他のクリンでは保存されていない。ヒトSkp1のカルボキシ末端に対応する、ペプチド(C)EEAQVRKENQW(配列番号84)をウサギに注射することによって抗Skp1抗体を生産した。このペプチドをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合させるために、システイン残基(C)を付加した。抗体は全て、記載(Pagano, M.編, 1995,「ペプチドから精製抗体まで(From Peptide to Purified Antibody)」, Cell Cycle: Materials and Methods中, Spring-Verlag社発行, 217-281)のように、生産し、アフィニティー精製(AP)し、特徴付けした。簡単にいえば、その配列が高い抗原指数(高い親水性、良好な表面確率、良好な柔軟性、及び良好な二次構造)を示すペプチドを選択した。ウサギ及びマウスに、完全フロイントアジュバントと混合されたペプチド−KLHを注射した。続いて、35S−メチオニン標識HeLa抽出物の免疫沈降によって、有意な免疫反応性が検出されるまで、2週間毎に、それらに不完全フロイントアジュバント中ペプチドを注射した。これらの抗血清は、ヒト抽出物及び組み換えタンパク質を含む抽出物の両方で予測されたサイズのバンドを認識した。
Zymed Inc.社と共同でUbc3に対するモノクローナル抗体(Mab)を生産し、特徴付けした。サイクリンBに対するMab(カタログNo. sc-245)は、Santa Cruz社から入手し;p21(カタログNo. C24420)及びp27(カタログNo. K25020)に対するMabはTransduction lab.社から入手した。(Mabs)サイクリンE、(Faha, 1993, J. of Virology 67:2456);ヒトp27、Skp2、Cdk2に対するAPウサギ抗体(Pagano, 1992, EMBO J. 11:761)、及びサイクリンA(Pagano, 1992, EMBO J. 11:761)、及びホスホ部位p27特異的抗体は、入手したか又は標準方法によって生産した。明示している場合は、N末端Skp2ペプチドに対するAPヤギ抗体(Santa Cruz社製、カタログNo.sc-1567)を用いた。ラット抗HA抗体は、Boehringer Mannheim社(カタログNo.1867423)から入手し、ウサギ抗HA抗体は、Santa Cruz社(カタログNo.sc-805)から入手し、マウス抗Flag抗体はKodak社(カタログNo.IB13010)から入手し、ウサギ抗Flag抗体は、Zymed社(カタログNo.71-5400)から入手し、抗Skp1及び抗β−カテニンマウス抗体は、Transduction Laboratories社(それぞれ、カタログNo.C19220及びP46020)から入手した。ヒトサイクリンD1に対するMab(クローンAM29、カタログNo.33-2500)の製造、精製及び特徴付けを、Zymed Inc.社と共同で行った。ヒトサイクリンD1に対する抗血清は、記載のように製造した(Ohtsuboら, 1995, Mol Cel Biol, 15:2612-2624)。
抽出調製物及び細胞同調化
細胞溶解バッファー中に1μmのオカダ酸を存在させること以外は前記(Pagano, 1993, J. Cell Biol. 121:101)と同様にタンパク質抽出を行った。ヒト肺線維芽細胞IMR-90を、48時間の血清飢餓培養によってG0/G1で同調させ、血清を再添加することによって再度刺激して細胞周期を再開させた。HeLa細胞を記載された(Pagano, 1992, EMBO J. 11:761)ように有糸分裂シェイクオフによって同調させた。フローサイトメトリーによって同調をモニターした。in vitroでのユビキチン化及び分解アッセイについては、48時間のロバスタチン処理によってG1 HeLa細胞を得て、下記のようにタンパク質抽出を行った。
免疫沈降法及び免疫ブロッテイング法
3〜5倍量の標準細胞溶解バッファー(Paganoら, 1992, Science 255, 1144-1147)を添加することによって細胞抽出物を調製し、免疫沈降法の条件は記載(Jenkins及びXiong, 1995;Paganoら, 1992a Science 255, 1144-1147)のとおりであった。記載(Tamら, 1994 Oncogene 9, 2663)のようにウエット・ブロッティングによって、タンパク質をゲルからニトロセルロース膜(Novex社製)に移した。フィルターを、製造業者の指示書に従って化学発光(DuPont-NEN社製)検出システムを用いた免疫ブロッティング法にかけた。
in vitroでのユビキチン化アッセイのためのタンパク質抽出
対数的に増殖しているHeLa-S3細胞を、6×105細胞/mlの密度で回収した。約4 mlのHeLa S3細胞ペレットを、20 mMトリス塩酸(pH7.2)、2 mM DTT、0.25 mM EDTA、10μg/mlロイペプチン、及び10μg/mlペプスタチンからなる氷冷されたバッファー6ml中に懸濁した。この懸濁液を、使用前に十分にすすいで氷上で冷却した細胞用窒素破壊ボンベ(Parr, Moline, IL社製、カタログNo.4639)に移した。ボンベのチャンバーを窒素タンクにつなぎ、ゆっくりと圧力を1000 psiまでもっていった。チャンバーを同圧力下で30分間氷上に放置し、次いで圧力をゆっくりと緩めた。材料をエッペンドルフチューブに移し、10,000 gのマイクロ遠心分離機中で10分間遠心分離した。上清(S-10)を、より少量のサンプルに分割し、−800℃で凍結した。
in vitroでのユビキチン化
記載(Lyapina, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:7451)のようにユビキチン化アッセイを行った。簡単にいえば、抗Flag抗体によって免疫沈降されたFlagタグ付きFBPを含む免疫ビーズを、精製された組み換えヒトE1及びE2酵素(Ubc2、Ubc3又はUbc4)と共に、ビオチン化ユビキチンを含む反応混合物に添加した。次いで、HRP−ストレプトアビジンによってブロッティングすることによってサンプルを分析した。E1及びE2酵素並びにビオチン化ユビキチンは記載(Pagano, 1995, Science 269:682)のように製造した。
一時的トランスフェクション
以下のヒトタンパク質をコードするcDNA断片を、そのC末端にFlagタグをイン-フレームで有する哺乳動物発現ベクターpcDNA3(Invitrogen社製)中に挿入した。細胞を、製造業者の指示書に従ってFuGENEトランスフェクション試薬(Boehringer社製、カタログNo.1-814-443)によってトランスフェクションした。
免疫蛍光法
カバーガラス上で単層増殖しているトランスフェクションされた細胞を、PBSですすぎ、4℃で10分間PBS中4%パラホルムアルデヒドで固定し、次いで、PBS中0.25%トリトンX-100を用いて10分間透過化処理した。他の固定化プロトコールは、それに遜色のない結果を与えた。記載(Pagano, 1994, Genes & Dev., 8:1627)のように1μg/mlウサギ抗Flag抗体を用いて免疫蛍光染色を行った。
ノーザンブロット分析
Clontech 社から入手したヒト複合組織mRNAを用いてノーザンブロットを行った。無作為プライマーDNA標識キット(Gibco BRL社製)を用いて[アルファ−32P]dCTP(Amersham Inc.社製)によってプローブを放射標識した(2×106cpm/ml)。55-60℃で0.2×SSC、0.1%SDSで洗浄を行った。FBP1及びFBP3aプローブは、2種のHindIII制限断片(それぞれ、ヌクレオチド1-571及び1-450)であり、FBP2、FBP4、及びFBP1プローブは、それらそれぞれの完全長cDNAであり、β−ACTINプローブはClontech 社から入手した。
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
ツーハイブリッドスクリーニングから得られたcDNAプローブによるλFIX II胎盤ヒトゲノムライブラリー(Stratagene社製)の高ストリンジェンシースクリーニング(65℃、0.2×SSC、0.1%SDSで洗浄)によってゲノムクローンを単離した。高ストリンジェンシーサザンハイブリダイゼーション及び部分的配列分析によってファージクローンを確認した。精製された全体ファージDNAを標識し、記載(M. Pagano編, 1994, 「細胞周期:材料及び方法」中, 29)のようにFISHを行った。
6.2 結果
6.2.1 新規F-boxタンパク質及びそれらのin vivo活性の特徴付け
酵母ツーハイブリッドシステムの改良バージョンを用いてヒトSkp1の相互作用体を探索した。baitとしてGal4 DB-Skp1融合タンパク質を有するMaV103酵母株を、preyとしてGal4 AD融合タンパク質を発現する活性化T細胞cDNAライブラリーによって形質転換した。初期選択及び再形質転換工程の後、3種の異なるリポーターアッセイを用いてヒトSkp1と特異的に相互作用する13種の陽性クローンを得た。配列分析後、この13種のレスキューされたcDNAが、全てFBP類をコードする7種の異なるオープンリーディングフレームに由来することを見出した。これらの新規なFBP類を以下のように命名した:図3に示されるFBP1(配列番号1);図4に示されるFBP2(配列番号3);図5に示されるFBP3a(配列番号5);図7に示されるFBP4(配列番号7);図8に示されるFBP5(配列番号9);図9に示されるFBP6(配列番号11);図10に示されるFBP7(配列番号13)。7種のFBP類の1つであるFBP1(配列番号1)は、我々のスクリーニングが進行中に他の研究者らによっても同定された(Margottinら, 1998, Molecular Cell, 1:565-74)。
National Center for Biotechnology Information及びThe Institute for Genomic Researchを通じて利用可能なデータベースで、BLASTプログラムを用いてF-boxを含むと予測されるヒトタンパク質を検索した。これらの予測されるヒトFBP類由来のF-boxモチーフのアラインメントを図1に示す。上記に開示されたF-box由来のヌクレオチド配列と、利用可能な配列(ジェンバンク受託番号:
Figure 2009100746
Figure 2009100746
およびTHC205131)をアラインすることによって19種のこれまで特徴付けされていないヒトFBP類を同定した。
このように同定された19種のこれまで特徴付けされていないFBPヌクレオチド配列を以下のように命名した:図6に示されるFBP3b(配列番号23);図11に示されるFBP8(配列番号25);図12に示されるFBP9(配列番号27);図13に示されるFBP10(配列番号29);図14に示されるFBP11(配列番号31);図15に示されるFBP12(配列番号33);図16に示されるFBP13(配列番号35);図17に示されるFBP14(配列番号37);図18に示されるFBP15(配列番号39);図19に示されるFBP16(配列番号41);図20に示されるFBP17(配列番号43);図21に示されるFBP18(配列番号45);図22に示されるFBP19(配列番号47);図23に示されるFBP20(配列番号49);図24に示されるFBP21(配列番号51);図25に示されるFBP22(配列番号53);図26に示されるFBP23(配列番号55);図27に示されるFBP24(配列番号57);及び図28に示されるFBP25(配列番号59)。これらの予測されるヒトFBP類由来のF-boxモチーフのアラインメントを図1Aに示す。これらの配列のうち、同定された14種のFBPヌクレオチド配列(すなわち、FBP3b(配列番号23)、FBP8(配列番号25)、FBP11(配列番号31)、FBP12(配列番号33)、FBP13(配列番号35)、FBP14(配列番号37)、FBP15(配列番号39)、FBP17(配列番号43)、FBP18(配列番号45)、FBP20(配列番号49)、FBP21(配列番号51)、FBP22(配列番号53)、FBP23(配列番号55)、及びFBP25(配列番号59))は、これまでアセンブルされたことがなく(assembled)、新規な核酸分子を示した。残りの5種の配列(すなわち、FBP9(配列番号27)、FBP10(配列番号29)、FBP16(配列番号41)、FBP19(配列番号47)、及びFBP24(配列番号57))は、すでにアセンブルされており、データベースに開示されているが、F-boxタンパク質としてこれまで認識されなかった。
ヒトFBP類のコンピューター分析は、幾つかの興味深い特徴を明らかにした(図2のFBP類の略図を参照されたい)。3種のFBP類がWD-40ドメインを含み;幾つかのFBP類がLRR類を含み、6種のFBP類が、ロイシンジッパー、リングフィンガー、ヘリックス−ループ−ヘリックスドメイン、プロリンリッチモチーフ及びSH2ドメインなどの、FBP類中で同定されたことがない他の潜在的なタンパク質−タンパク質相互作用モジュールを含んでいる。
ヒトFBPファミリーの例として、幾つかのFBP類のさらに詳細な特徴付けを行った。新規FBP類とヒトSkp1との間の相互作用の特異性を確認するために、8種のin vivo翻訳されたFBP類を、ニッケル−アガロースビーズに予め結合されたHisタグ付きSkp1への結合を試験した。対照として、ただ一つの既知のヒトSkp1ホモログであるエロンジンCを用いた。7種のFBP類全ては、His−Skp1ビーズに結合できるが、Hisタグ付きエロンジンCビーズには結合できない(図29)。Hisタグ付きエロンジンCビーズに結合する少量のFBP類は、ニッケル−アガロースビーズに結合された非関連タンパク質(Hisタグ付きp27)を、プルダウン(pull-down)アッセイで用いる場合にも存在するので、これは非特異的結合を示していると思われる(例として、図29のレーン12を参照されたい)。
F-box欠損突然変異体(ΔF)FBP1、(ΔF)FBP2、(ΔF)FBP3a、及びF-boxの保存されたアミノ酸残基中に単一点突然変異を含む突然変異体、FBP3a(L51A)及びFBP3a(W76A)を構築した。F-boxを欠損した突然変異体及び点突然変異を有する突然変異体は、Skp1に結合するそれらの能力を失っており(図29)、ヒトFBP類は、Skp1に特異的に結合するためにはそれらのF-boxの完全性が必要であることが確認された。
FBP1、FBP2、FBP3a、FBP4及びFBP7が、in vivoでヒトSkp1及びCul1と相互作用するか否か(Skp2は相互作用することが知られている)を判定するために、Flagタグ付き-FBP1、-(ΔF)FBP1、-FBP2、-(ΔF)FBP2、-FBP3a、-(ΔF)FBP3a、-FBP4及び-FBP7をHeLa細胞中で発現させ、それから細胞抽出物を作成し、抗Flag抗体による免疫沈降法にかけた。Cul1、Cul2(もう一つのヒトクリン)、及びSkp1に対する特異的抗体による免疫ブロット法で検出されるように、抗Flag抗体は、Cul1及びSkp1と共沈するが、野生型FBP類を発現する細胞からの抽出物中にもっぱら存在するCul2とは共沈しない(図29及びデータは示さない)。これらのデータは、酵母の場合と同様に、ヒトSkp1/クリン複合体は多くのFBP類の足場(scaffold)を形成することを示す。
FBP類がSkp1/Cul1複合体と結合することは、FBP類がユビキチン連結活性と関係している可能性と一致している。この可能性を試験するため、Flagタグ付きFBPをヒトSkp1及びCul1と共にHeLa細胞中で発現させた。抽出物を、抗Flag抗体による免疫沈降法に付し、ヒトユビキチン活性化酵素(E1)及びヒトUbcの存在下でユビキチンリガーゼ活性をアッセイした。試験した全ての野生型FBP類は、ユビキチン化タンパク質の高分子量スメア特徴をつくり出すユビキチンリガーゼ活性と関係していたが、FBP突然変異体類では関係していなかった(図30)。リガーゼ活性は、N−エチルマレイミド(NEM)感受性であり(図30、レーン2)、Ubc4及びE1の両者の存在を必要とした。ヒトUbc3を用いてUbc4による結果と同様の結果が得られたが、Ubc2は、これらのSCFのユビキチンリガーゼ活性を維持できなかった(図30、レーン12、13)。
間接的免疫蛍光法を用いて、FBP1、FBP2、FBP3a、FBP4及びFBP7の細胞小器官の分布を、ヒト細胞で研究した。Flagタグ付加型のこれらのタンパク質を、HeLa、U2OS及び293T細胞中で発現させ、抗Flag抗体による免疫蛍光染色に付した。FBP1、FBP4及びFBP7は、細胞質中及び核中の両方に分布していることが見出されたが、FBP2は、主に細胞質中で、FBP3aは主に核中で検出された。図32は、例として、HeLa細胞中で観察されたFBP1、FBP2、FBP3a、FBP4の細胞小器官局在を示している。(ΔF)FBP1、(ΔF)FBP2、(ΔF)FBP3a突然変異体の局在は、それぞれの野生型タンパク質の局在と同じであり(図32)、このことはF-box及びF-box依存性のSkp1への結合が、FBP類の細胞小器官局在を決定しないことを示す。免疫蛍光染色法は、生化学的細胞小器官分画法の結果と一致していた。
6.2.2 新規のユビキチンリガーゼ遺伝子転写産物のノーザンブロット分析
複数の正常ヒト組織(心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格、筋肉、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球、図33を参照せよ)から得たポリ(A)+mRNAについてRNAブロット分析を行った。FBP1 mRNA転写産物(約7kbの大きなバンドと約3.5および約2.5kbの2つの小さなバンド)が試験に供した16種のヒト組織の全てで発現されていたが、脳および精巣ではより優勢であった。精巣は、小さい方のFBP1 mRNA型を7kb型より多くはないかもしれないが同等の量で発現していた唯一の組織であった。FBP2転写産物(〜7.7kbおよび〜2.4kb)は試験した全ての組織で発現されていたが、FBP2転写物どうしの比率は組織によっていくらか差異が認められた。約4kbのFBP3a転写産物は試験した全ての組織に存在し、より小さな約3kbと2kbの2種のFBP3a型は、特に精巣で、より長時間露光させることによって目視できるようになった。約4.8kbのFBP4転写産物は試験した正常ヒト組織の全てで認められたが、心臓と膵臓では特に豊富であった。最後に、新たなFBPの発現パターンを、mRNA種(〜4kbの大きなバンドおよび〜8.5kbの小さなバンド)は全ての組織で認められるが特に胎盤で豊富なFBP1の発現パターンと比較した。
6.2.3 ヒトFBP遺伝子の染色体上の位置
ある種の腫瘍では細胞性調節タンパク質(例えば、p53、p27、β-カテニン)の分解が抑制されていないことが観察されており、これは調節を解除されたユビキチンリガーゼがこの変化した分解においてある役割を果たしているという仮説を示唆するものである(A. Ciechanover, 1998, Embo. J. 17:7151に総説されている)。例としてよく理解されているものはMDM2の分解であり、このMDM2は、ユビキチンリガーゼ(これはその過剰発現がその基質である癌抑制因子p53を不安定化するものである)をコードする癌原遺伝子である(BrownとPagano, 1997, Biochim. Biophys. Acta, 1332:1, 1998に総説されている)。ヒトFBP遺伝子の染色体位置をマップするため、およびこれらの位置が腫瘍または遺伝性疾患で変化しているとして知られている遺伝子座と合致していないか決定するために、蛍光in situ ハイブリダイゼーション法(FISH)を用いた。FBP1遺伝子がマップされ、それは10q24(図34A)に位置づけられ、FBP2は9q34(図34B)、FBP3aは13q22(図34C)、FBP4は5p12(図34D)、FBP5は6q25-26(図34E)に位置づけられた。FBP遺伝子(特にFBP1、FBP3a、およびFBP5)は、腫瘍で高頻度に変化を受けている染色体上の遺伝子座にある(参照および詳細はOnline Mendelian Inheritance in Manデータベース、http://www3.ncbi.nlm.nih.gov/omim/を参照せよ)。とりわけ、10q24(FBP1が位置する)の欠失がヒト前立腺癌および小細胞肺癌(SCLC)の約10%に認められ、このことはこの位置における腫瘍抑制遺伝子の存在を示唆している。さらに、急性T細胞白血病の小児の7%もが10q24を限界点t(10;14)(q24;q11)またはt(7;10)(q35;q24)のいずれか、として含む転座を伴っている。まれではあるが、9q34領域(FBP2が位置する)が、ヒト卵巣癌および膀胱癌において異型接合の欠失(LOH)の部位であることが示されている。LOHはその領域でも観察される。最後に、6q25-26(FBP5が位置する)はヒトの卵巣癌、乳癌、および胃癌、肝癌、バーキットリンパ腫、および副甲状腺腫において異型接合の欠失の部位であることが示されている。
7. 実施例:FBP1はβ-カテニンの安定性を調節する
β-カテニンのタンパク分解作用の調節が解除されることは悪性腫瘍化と関連している。アフリカツメガエル(Xenopus Slimb)およびショウジョウバエ FBP1はWnt/β-カテニンシグナル伝達経路をネガティブに調節する(JiangとStruhl, 1998, 前掲;MarikawaとElinson, 1998)。ユビキチンリガーゼ複合体はその基質と物理的に会合するので、本実施例における研究はFBP1がβ-カテニンと相互作用しうるかを決定するためにデザインした。その結果、FBP1はin vivoでのβ-カテニンの安定性を調節する新規のユビキチンリガーゼ複合体を形成することが示された。従って、β-カテニンをユビキチン化する新規のユビキチンリガーゼ複合体の構成成分としてのFBP1の同定によって、本発明の方法を用いるアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、および新規の基質のスクリーニングに用いることのできる新規の標的が提供される。これらのアッセイで同定される分子は癌および増殖性疾患に対する治療用薬剤として有用なものとなる可能性がある。
7.1 FBP1機能の同定のための材料と方法
組換えタンパク質、F-box変異体の構築、抗体、一過性トランスフェクション、免疫沈降、イムノブロッティング、細胞培養、および抽出物の調製
方法の詳細は上述の第6.1節に記載されている。
7.2 結果
7.2.1 ヒトFBP1はβ-カテニンと相互作用する
FlagをタグづけしたFBP1およびβ-カテニンウイルスを用いて昆虫細胞に同時感染させ、抽出物を免疫沈降法、次いでイムノブロッティングによって分析した。β-カテニンは抗Flag抗体によって同時免疫沈降したが(図35A)、このことはインタクトな細胞中ではβ-カテニンとFBP1が物理的に相互作用することを示している。酵母FBP Cdc4とその基質Sic 1との結合がSkp1の存在によって安定化されることが示されている(Skowyraら, 1997, Cell, 91, 202-219)。ヒトSkp 1の同時発現はFBP1とβ-カテニンの相互作用の強度に影響を与えなかった。FBP1/β-カテニン相互作用の特異性を試験するために、細胞をヒトサイクリンD1とFBP1ウイルスで同時感染させた。このサイクリンの選択は、ヒトサイクリンD1がSkp2ユビキチンリガーゼ複合体と複合体を形成することができることによったものである(Skp1-Cul1-Skp2; Yuら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:11324-9)。FBP1/β-カテニン複合体の形成を示すために用いたものと同じ条件下で、サイクリンD1はFlagをタグづけしたFBP1と同時免疫沈降させることはできず、抗サイクリンD1抗体はFBP1を同時免疫沈降させることもできなかった(図35B、レーン1-3)。Skp1(図35B、レーン4-6)またはCdk4をFBP1およびサイクリンD1と同時発現させてもサイクリンD1とFBP1との会合を刺激しなかった。
次いでHAをタグづけしたβ-カテニンおよびFlagをタグづけしたFBP1(野生型または変異型)を担う哺乳動物発現プラスミドをヒト293細胞中に同時トランスフェクションさせた。β-カテニンは、野生型または(ΔF)FBP1変異体のいずれかと同時発現させると抗Flag免疫沈降物中に検出され(図35C、レーン4-6)、このことはヒト細胞中のβ-カテニンとFBP1の間に形成された複合体の存在を確認するものである。
7.2.2 F-boxを欠失させたFBP1変異体はin vivoでβ-カテニンを安定化する
(ΔF)FBP1のβ-カテニンとの会合は、(ΔF)FBP1がin vivoで一方ではSkp1/Cul1複合体と結合し得ないことにより、他方ではβ-カテニン結合能を保持し続けることによってドミナントネガティブ変異体として作用する可能性を示唆している。HAをタグづけしたβ-カテニンはFlagをタグづけした(ΔF)FBP1と、または別のF-box欠失FBPである(ΔF)FBP2と同時発現させた。FBP2もSkp1相互作用剤についての我々のスクリーニングで得られたものであり;FBP1と同様に、いくつかのWD-40ドメインを含んでいる。(ΔF)FBP1の存在によってβ-カテニンのより多量の蓄積が特異的に起こる(図36A)。この蓄積がβ-カテニンの安定性の増大によるものかを決定するために、我々はパルスチェイス分析を用いてβ-カテニンの半減期を測定した。ヒト293細胞を、HAをタグづけしたβ-カテニン単独でまたは野生型もしくは変異型FBP1と組み合わせてトランスフェクトした。野生型のFpb1がβ-カテニンの分解にほとんど影響がなかったのに対し、F-boxを欠失させた変異体はβ-カテニンの半減期を1時間から4時間へと延長した(図36B)。
FBP1はまた、HIV-1 Vpuタンパク質によって誘導されるCD4の分解にも関与している(Margottinら, 前掲)。VpuはFBP1をCD4に補給し、(ΔF)FBP1はVpu介在CD4調節を阻害することが示されている。さらに、FBP1-ユビキチンリガーゼ複合体もIKBαaの安定性を制御する(Yaronら, 1998, Nature, 396:590)。従って、FBP1とβ-カテニン、Vpuタンパク質、CD4、およびIKBαaとの間の相互作用は、本発明の方法を用いるアゴニスト、アンタゴニスト、リガンド、および新規基質のスクリーニングに用いることのできる標的となる可能性がある。
8. 実施例:FBP Skp2の基質としてp27を同定する方法
哺乳動物のG1 サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)インヒビターp27の分解は細胞の休止状態から増殖状態への移行に必要である。p27のユビキチン化と分解はp27のサイクリン/Cdk複合体によるリン酸化に依存している。S期に入るために不可欠なF-boxタンパク質であるSkp2はp27をリン酸化依存性の様式で特異的に認識する。さらに、in vivoとin vitroの双方において、Skp2はリン酸化されたp27のユビキチン化および分解を行なう機構の律速成分である。従って、p27の分解は、マイトジェン刺激後のSkp2およびサイクリン双方の蓄積によって2重に制御されている。
本実施例は、Skp2とp27のin vitroでの相互作用を同定するために用いた新規アッセイ法を開示するものである。第1に、p27を基質として用いて行うin vitroユビキチン化アッセイについて記載する。第2に、抗Skp2抗体を用いて細胞抽出物からSkp2を枯渇させ、p27ユビキチンリガーゼ活性への影響をアッセイする。精製Skp2をその免疫枯渇させた抽出物に戻し入れ、p27ユビキチン化および分解を復活させる。またドミナントネガティブ変異体でありp27のユビキチン化および分解を妨害する(ΔF)Skp2の使用をも開示する。
本明細書に記載のアッセイ法は細胞増殖を阻害する化合物の試験に用いることができる。それらのアッセイ法は第5.5節に記載の分子、化合物、ペプチド、またはその他の作用剤の存在または不在の条件下で行うことができる。相互作用またはユビキチン化活性を、増強または阻害のどちらかを行う作用剤は、最終産物の形成の増加又は減少によって同定することができる。そのような作用剤を、例えば、Skp2により調節されるp27のユビキチン化および分解をin vivoで阻害するために用いることができる。これらのアッセイによって同定された分子は癌および増殖性疾患に対する治療薬となりうる潜在的有用性がある。
ドミナントネガティブ変異体、例えば変異体(ΔF)Skp2、およびSKP2 mRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドはp27のユビキチン化および分解を妨害し、癌に対する遺伝子治療に用いることができる。本明細書に記載のアッセイ法はまた、新規FBPタンパク質の新規基質の同定、ならびに新規ユビキチンリガーゼ複合体-基質相互作用および活性のモジュレーターの同定にも用いることができる。
8.1 Skp2基質としてのp27を同定するための材料と方法
in vitroユビキチン化アッセイのためのタンパク質の抽出
約4mLのHeLa S3細胞ペレットを、20mM Tris-HCl(pH7.2)、2mM DTT、0.25mM EDTA、10μg/mLのロイペプチン、および10μg/mLのペプスタチンからなる6mLの氷冷バッファー中で懸濁した。その懸濁液を、十分に洗い使用前に氷上で冷却した細胞窒素-破壊ボンベ(cell nitrogen-disruption bomb)(Parr, Moline, 米国イリノイ州, カタログ#4639)に移した。そのボンベのチャンバーを窒素タンクと接続し圧を緩徐に1000psiまで上げた。そのチャンバーを同じ圧で氷上に30分間置き、次いで圧を徐々に下げた。材料をエッペンドルフ試験管に移し、微量遠心機で10,000gで10分間遠心した。上清(S-10)をより少量のサンプルに分け、−80℃で凍結した。細胞窒素破壊ボンベ抽出物の使用に基づくこの抽出物調製法は、in vitroでp27をユビキチン化する活性を、これまでに報告されている方法(Paganoら, 1995, Science 269:682-685)よりも良く保持している。
試薬と抗体
ユビキチンアルデヒド(Hershko & Rose, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:1829-33)、メチルユビキチン(Hershko & Heller, 1985, Biochim. Biophys. Res. Commun. 128:1079-86)、およびp13ビーズ(Brizuelaら, 1987, EMBO J. 6:3507-3514)は文献記載のとおり調製した。β,γ-イミドアデノシン-50-三リン酸(AMP-PNP)、スタウロスポリン、ヘキソキナーゼ、およびデオキシグルコースはSigmaから;ロバスタチンはMerckから;フラボピリドールはHoechst Marion Rousselから入手した。ホスホ部位p27特異的抗体はZymed Inc.と共同して、187位にホスホトレオニン(T)を持つヒトp27のカルボキシ末端に対応するホスホペプチドNAGSVEQTPKKPGLRRRQT(配列番号85)をウサギに注射することによって作製した。次いで血清から、ホスホ-および非ホスホ-ペプチドクロマトグラフィーの双方を用いる2ラウンドのアフィニティークロマトグラフィーで抗体を精製した。その他の抗体は全て第6.1節に記載されている。
免疫枯渇アッセイ
免疫枯渇アッセイには、3μLのSkp2抗血清を15μLのAffi-Prep Protein-Aビーズ(BioRad)に4℃で90分間吸着させた。そのビーズを洗い、次いで40μLのHeLa抽出物(タンパク質の量は約400μg)と混合(4℃、2時間)した。ビーズを遠心で除去し、上清を0.45μMicrospinフィルター(Millipore)でろ過した。免疫沈降およびイムノブロットは報告されているとおりに行った(M. Paganoら, 1995, 前掲)。精製GST-Skp2に対するウサギポリクローナル抗体を、Zymed Inc.(カタログ#51-1900)と共同して、報告されているとおりに作製し、アフィニティー精製(AP)した(M. Pagano, Cell Cycle-Materials and Methods, M. Pagano編, (Springer, NY, 1995), 第24章中の記載;E. HarlowとD. Lane, Using antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 1998中の記載)。ヒトCul1およびサイクリンEに対するモノクローナル抗体(Mab)(Fahaら, 1993, J. of Virology 67:2456);ヒトp27、Skp1(Latresら, 1999, Oncogene 18:849)、Cdk2(Paganoら, 1992, Science 255:1144)に対するAPウサギ抗体、およびホスホ部位p27特異的抗体。サイクリンBに対するMabはSanta Cruz(カタログ#sc-245)から;p21に対するMab(カタログ#C24420)およびp27に対するMab(カタログ#K25020)はTransduction Labから;抗Flagウサギ抗体はZymed(カタログ#71-5400)から入手した。N末端Skp2ペプチドに対するAPヤギ抗体(Santa Cruz, カタログ#sc-1567)を用いた。
Skp2 F-box変異体の構築
(ΔF)Skp2変異体はBspEIおよびXbaI制限酵素でDNA断片(ヌクレオチド338-997)を除去し、それをヌクレオチド457-997を含むPCR断片で置換して得た。最終構築物は残基113-152を欠くタンパク質をコードしていた。
組換えタンパク質
下記のヒトタンパク質をコードするcDNA断片:FlagタグづけしたFBP1、Flagタグづけした(ΔF)FBP1、FlagタグづけしたFBP3a、Skp2、HAタグづけしたCul1、HAタグづけしたCul2、β-カテニン、HisタグづけしたサイクリンD1、Skp1、HisタグづけしたSkp1、HisタグづけしたエロンゲンCをバキュロウイルス発現ベクターpBacpak-8(Clonetech)中に挿入し、直鎖化したバキュロウイルスDNAとともにBaculoGoldトランスフェクションキット(Pharmingen)を用いてSf9細胞中に同時トランスフェクションした。HisタグづけしたヒトサイクリンEおよびHAタグづけしたCdk2を発現しているバキュロウイルスはD. Morgan(Desai, 1992, Molecular Biology of the Cell 3:571)によって供給されたものである。組換えウイルスを用いて5B細胞を感染させ、そのウイルスがコードするタンパク質の発現を上述のイムノブロッティングによってアッセイした。Hisタンパク質はニッケル-アガロース(Invitrogen)で製造者の説明書に従って精製した。適切なバキュロウイルスの同時発現によって異なる複合体を形成し、Skp1とサイクリンEの5'のHisタグを用いてニッケル-アガロースクロマトグラフィーで精製した。特に断らない限りは、組換えタンパク質は下記の量でインキュベーションに添加した:サイクリンE/Cdk2, 約0.5 pmol;Skp1, 約0.5pmol;Skp2, 約0.1pmol;FBP1, 約0.1pmol;FBP3a, 約0.1pmol;Cul1, 約0.1pmol。精製調製物中のSkp1/Skp2、Skp1/FBP1、Skp1/FBP3aおよびSkp1/Cul1の重量モル比は約5であった。
抽出物の調製と細胞の同調、一過性トランスフェクション、免疫沈降およびイムノブロッティング
方法は上述の第6.1節に記載されているとおりに行った。
8.2 結果
8.2.1 p27 in vitro ユビキチン化アッセイ
例示としてのin vitroユビキチン化アッセイにおいては、対数増殖期のHeLa-S3細胞を6 x 10個/mLの密度で集めた。報告されている方法で細胞を70μMロバスタチンと48時間処理することによってG1期で停止させる(O'Connor & Jackman, 1995, Cell Cycle-Materials and Methods, M. Pagano編, Springer, NY, 第6章中の記載)。1μLのin vitroで翻訳された[35S]p27を10μLのユビキチン化混液中で30℃で種々の時間(0-75分)インキュベートするが、その混液は:40mM Tris pH7.6、5mM MgCl、1mM DTT、10% グリセロール、1μM ユビキチンアルデヒド、1mg/mL メチルユビキチン、10mM クレアチンリン酸、0.1mg/mL クレアチンホスホキナーゼ、0.5mM ATP、1μM オカダ酸、20-30μg HeLa細胞抽出物を含むものである。p27からユビキチンの鎖を排除してしまうイソペプチダーゼを阻害するために、ユビキチンアルデヒドをユビキチン化反応液中に添加することができる。メチルユビキチンの添加は細胞抽出物中に存在するユビキチンと競合し、p27ユビキチン鎖を終結させる。そのような鎖は高分子量スメア(なすりつけたように尾を引くバンド)の代わりに別個のバンドとして出現する。これらのより短いポリユビキチン鎖はプロテアソームに対してのアフィニティーがより低く、従ってより安定である。反応をβ-メルカプトエタノールを含有するLaemmliサンプルバッファーで停止させ、産物を変性条件下でプロテインゲル上で分析することができる。
ポリユビキチン化p27はオートラジオグラフィーで同定される。p27分解アッセイは、(i)メチル化ユビキチンおよびユビキチンアルデヒドが除かれていたこと;(ii)HeLa抽出物の濃度が約7μg/mLであること;(iii)抽出物が低張での溶解によって調製されるものであること(Paganoら, 1995, Science 269:682)、を除いては同様の方法で行われ、この方法は窒素ボンベ破壊法よりもプロテアソーム活性をよく保存する。メチルユビキチンの不在下では、p27のユビキチン化活性の代わりにp27分解活性を測定することができる。
これらのサンプルはp27に対する抗体で免疫沈降し、次いで抗ユビキチン抗体で免疫沈降し、8% SDSゲルにかける。このアッセイによって見出される高分子量の分子種はユビキチン化されたものである。対照として、13個のリシンの全てを欠くp27変異体を用いた。このp27変異体はユビキチン化されず、8% SDSゲル上ではより大きい分子量の位置に動く。
8.2.2 p27-Skp2相互作用アッセイおよびp27-Skp2免疫枯渇アッセイ
Skp1/cullin複合体への酵母およびヒトFBPによる特異的基質の補給はリン酸化依存性である。従って、IκBα由来のペプチドとβ-カテニンはFBP1に特異的に結合し、それはリン酸化依存的である(Yaron、 1998、 Nature 396:590; Winstonら、 1999、 Genes Dev. 13:270)。187の位置にホスホトレオニンを持つp27ホスホペプチドについてそのヒトFBPに対する結合能をアッセイした。そのFBPは、Skp2およびFBP1、FBP2、FBP3a、FBP4、FBP5、FBP6、およびFBP7を含むもので、上記の第6節に記載のとおり、Skp1をバイト(bait)として用いる2-ハイブリッドスクリーニングを用いることによって単離されたものである。これらのFBPのうちの4種は、基質相互作用ドメインとなりうるもの、例えばFBP1およびFBP2ではWD-40ドメイン、Skp2およびFBP3aではロイシンリッチリピートなどを含んでいる。ホスホ-p27ペプチドはセファロースビーズに固定化し、これらの7種のin vitroで翻訳されたFBPとともにインキュベートした(図37A)。1種のFBP、Skp2のみがホスホ-T187 p27ペプチドと結合することができた。次いで、p27ペプチド(リン酸化したものまたはリン酸化していないもののいずれか)に連結されたビーズ、または無関係のホスホペプチドをHeLa細胞抽出物とともにインキュベートした。安定的にビーズと会合しているタンパク質を、イムノブロッティングによって試験した。Skp2およびその会合タンパク質、Skp1およびCul1、はホスホ-p27ペプチドには結合するが、対照ペプチドには結合しないタンパク質として容易に検出された (図37B)。
p27のSkp2への会合をさらに調べるために、in vitroで翻訳されたp27を、Skp1/Skp2複合体、サイクリンE/Cdk2複合体、または双方の複合体の組み合わせのいずれかとともに、p27がサイクリンE/Cdk2によってT187でリン酸化される条件下でインキュベートした(Montagnoli、 A.ら、 1999、 Genes & Dev. 13:1181)。次いで、サンプルを抗-Skp2抗体で免疫沈降させた。p27はサイクリンE/Cdk2複合体の存在下でSkp2のみにより共免疫沈降された(図37C)。注目すべきことに、同じ条件下でT187をアラニンに変えたp27変異体であるp27(T187A)は抗-Skp2抗体では共免疫沈降しなかった。最後に、本発明者らはSkp2およびp27のin vivoでの会合を試験した。HeLa細胞およびIMR90ヒト2倍体線維芽細胞抽出物を、Skp2に対する2種の異なる抗体で免疫沈降させ、次いでイムノブロッティングを行った。p27とCul1はSkp2免疫沈降物において特異的に検されたが、サイクリンD1およびサイクリンB1は検出されなかった(図38)。重要なことは、ホスホ-T187部位p27特異的抗体を用いて本発明者らはSkp2結合p27がT187の位置でリン酸化されていることを示したことである(図38、レーン2、下のパネル)。さらに、抗-ペプチドp27抗体はSkp2を特異的に共免疫沈降した。これらの結果は、p27とSkp2との安定な相互作用が高度に特異的であり、p27のT187の位置でのリン酸化に依存していることを示している。
p27の細胞サイクル段階特異的ユビキチン化および分解をそのまま再現する、p27ユビキチン化を調べる無細胞アッセイが開発されている(Montagnoliら、 上述の文献)。このアッセイを用いると、p27-ユビキチン連結活性は、非同調的に増殖させた細胞からの抽出物中ではG1-停止細胞からの抽出物に比べて高かった(図39A、レーン2および4)。これまでの知見(Montagnoli、 A.ら、 上述の文献)と合致して、サイクリンE/Cdk2の添加はp27のユビキチン化を双方のタイプの抽出物中で刺激した(図39A、レーン3および5)。しかし、この刺激はG1-停止細胞からの抽出物中では増殖期の細胞からの抽出物中と比べてはるかに低く、このことはサイクリンE/Cdk2に加えてp27-ユビキチン連結系の他の何らかの構成成分がG1での律速要素となっていることを示唆している。この構成成分はSkp2であろうと考えられるが、それは他のSCFサブユニットとは対称的にSkp2のレベルがG1細胞からの抽出物中では非同調細胞からの抽出物中より低く、それがp27のレベルと逆相関しているからである(図39Bおよび43)。このことから、Skp2がp27ユビキチンリガーゼ活性の律速成分であるかどうか決定するために試験した。組換え精製Skp1/Skp2複合体のみをG1抽出物に添加してもp27ユビキチン化を有意には刺激しなかった(図39A、レーン6)。これに対して、Skp1/Skp2複合体およびサイクリンE/Cdk2複合体を組み合わせて添加するとG1抽出物中でのp27ユビキチン化が強く刺激された(図39A、レーン7)。同様に、Skp1/Skp2およびサイクリンE/Cdk2を組み合わせて添加すると、分解アッセイで測定したときp27のタンパク分解作用が強く刺激された(図39A、レーン13-16)。これらの実験に用いられたSkp1/Skp2複合体は、バキュロウイルスのHisをタグ付けしたSkp1およびSkp2を同時発現している昆虫細胞から単離したものであるので(そして、ニッケル-アガロースクロマトグラフィーで同時精製したものである)、His-Skp1と同時精製された昆虫由来のF-boxタンパク質が、G1抽出物中でのp27ユビキチン化の刺激に関与している可能性がある。この可能性は、同様な量のHisをタグ付けしたSkp1(昆虫細胞中にてSkp2の不在下で発現され、同じ方法で精製されたものである)の添加ではサイクリンE/Cdk2の存在下でp27ユビキチン化が刺激されないことを示すことによって排除することができる(図39A、レーン8)。さらに、本発明者らはFBP1およびFBP3aのいずれもがG1抽出物中でのp27ユビキチン連結の刺激においてSkp2にとって替わることができないことを見出した(図39A、レーン9-12)。G1抽出物中でのSkp1/Skp2およびサイクリンE/Cdk2を組み合わせた添加によるp27-ユビキチン化の刺激は、野生型p27を用いた場合にのみ観察されうるものでp27(T187A)変異体では観察されず(レーン17-20)、このことはp27のT187でのリン酸化はSkp2が媒介するp27のユビキチン化に必要であることを示している。これらの知見は、サイクリンE/Cdk2複合体およびSkp1/Skp2複合体の双方がG1期におけるp27ユビキチン化および分解のための律速要素であることを示している。
p27ユビキチン連結におけるSkp2の必要性をさらに調べるために、非同調性増殖細胞の抽出物からSkp2に対する抗体を用いた免疫枯渇法によってSkp2を特異的に除去した。免疫枯渇法で大部分のSkp2はこれらの抽出物から効率的に除去され、p27-ユビキチン連結活性(図40A、レーン4)ならびにp27分解活性の顕著な低減が生じた。この効果は下記の観察結果によって示されるとおり特異的なものであった:(i) あらかじめ免疫した血清を用いた同様の処理ではp27-ユビキチン化は阻害されなかった(図40A、レーン3);(ii) 抗-Skp2抗体を組換えGST-Skp2とともにあらかじめインキュベーションすると、抽出物からのp27-ユビキチン化活性の免疫枯渇を防ぐが(レーン5)、対照のタンパク質では防がなかった(レーン4);(iii) Skp2を枯渇させた抽出物中でのp27-ユビキチン化活性はHis-Skp1/Skp2複合体の添加によって回復するが(図40B、レーン3)、His-Skp1(レーン2)、His-Skp1/Cul1複合体(レーン4)、またはHis-Skp1/FBP1では回復しなかった。
次いで本発明者らはSkp2をHeLa抽出物から免疫沈降させ、この免疫沈降物がp27ユビキチン化活性を含んでいるか試験した。抗-Skp2ビーズはサイクリンE/Cdk2の存在下でp27ユビキチン化を誘導し得たが、あらかじめ免疫した(PI)血清を用いて作製した免疫沈降物では誘導し得なかった(図40C、レーン2および3)。精製組換えE1ユビキチン活性化酵素、および精製組換えUbc3の添加ではSkp2免疫沈降物のp27ユビキチン化を保持する能力を顕著に増大させることはなく(図40C、レーン5)、それはおそらくp27のin vitroでの翻訳に用いられたウサギ網赤血球溶解物中にそれらのタンパク質が双方とも存在するためであろう。
8.2.3 F-boxを欠失させたSkp2変異体はin vivoでp27を安定化する
Skp2はin vivoでのユビキチンが媒介するp27の分解をも標的とする。F-boxを欠失させたFBP1変異体である(ΔF)FBP1はin vivoで支配的な陰性変異体として作用し、これはおそらくF-boxがなければSkp1/Cul1複合体と結合することができないが、その基質との結合能は保持されるからであろう。従って、ひとたび細胞内で発現されれば、(ΔF)FBP1はβ-カテニンおよびIKBαをマスクしそれらの安定化をもたらす。F-boxを欠失させたSkp2変異体である(ΔF)Skp2を構築した。p27は、マウス細胞中で単独でまたは(ΔF)Skp2もしくは(ΔF)FBP1と共に発現させた(図41を参照せよ)。(ΔF)Skp2の存在によって、p27がより多量に蓄積された。この蓄積がp27の安定性の増大によるものであるか調べるために、p27の半減期をパルスチェイス分析(詳細は上述の第8節を参照せよ)を用いて測定した。(ΔF)Skp2はp27の半減期を1時間未満から約3時間へと延長した。これらの実験ではトランスフェクションの効率は約10%であるので、(ΔF)Skp2は同時発現されたヒト外因性p27の安定性のみに影響を及ぼし、マウス内因性p27の安定性には影響しなかった。
8.2.4 Skp2アンチセンス実験
Skp2レベルの減少が内因性p27の量に影響を及ぼすか調べるためにSkp2 mRNAをアンチセンスオリゴヌクレオチドで標的化した。2種の異なるアンセンスオリゴはSkp2タンパク質レベルの減少を誘導したが、対照のオリゴデオキシヌクレオチドでは減少は誘導されなかった(図42)。Skp2の減少と同時に、内因性p27タンパク質レベルの顕著な増加が見られた。ヒドロキシ尿素またはアフィジコリン処理によってG1/S移行をブロックされた細胞中でも同様な結果が得られた(レーン9-16)。従って、Skp2アンチセンスオリゴのp27に対する効果は、Skp2レベルの減少によって可能となるG1におけるブロックの2次的結果ではなかった。
アンチセンス実験はYu、 1998、 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:11324に記載のとおり行った。簡潔に記せば、ホスホロチオエート骨格およびC-5 プロピンピリミジンを含んでいる4種のオリゴデオキシヌクレオチドを合成した(Yale大学のKeck Biotechnology Resource Laboratory):(1) 5'-CCTGGGGGATGTTCTCA -3' (配列番号86) (ヒトSkp2 cDNA ヌクレオチド180-196のアンチセンス方向);(2) 5'-GGCTTCCGGGCATTTAG-3'(配列番号87)[(1)をスクランブルした対照];(3) 5'-catctggcacgattcca-3'(配列番号88)(Skp2 cDNAヌクレオチド1137-1153のアンチセンス方向);(4) 5'-CCGCTCATCGTATGACA-3'(配列番号89)[(3)をスクランブルした対照]。オリゴヌクレオチドはCytofectin GS(Glen Research)を製造者の使用説明書に従って用いてHeLa細胞中に移送した。次いでその細胞をトランスフェクションの16時間から18時間後に回収した。
9. 実施例:FBPと細胞周期調節タンパク質(例えばSkp2とE2F)との相互作用を同定するためのアッセイ
下記の研究は公知のFBP、Skp2の、新規の基質を同定するために行った。
図44に示すとおり、E2F-1はSkp2と物理的に会合するが、p53およびサイクリンBを含むアッセイしたユビキチン経路の他の基質は会合しなかった。Skp2とE2F-1(レーン1、4、および5)、またはSkp2とヘキサヒスチジンp53(His-p53)(レーン2、6、7、10、および11)、またはSkp2とHis-サイクリンB(レーン3、8、9、12、および13)を同時発現しているバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞の抽出物は、Skp2に対する抗血清で直接的にイムノブロットするか(レーン1-3)、またはまずSkp2に対する抗血清でイムノブロットするか(レーン1-3)もしくはまず指示された抗体で免疫沈降させ、次いでSkp2に対する抗血清でイムノブロットを行った(レーン4-13)。免疫沈降に用いた抗体は:正常精製マウス免疫グロブリン(IgG)(レーン4、6、10、および12)、精製マウスモノクローナル抗-E2F-1抗体(KH-95、Santa Cruzから入手)(レーン5)、精製マウスモノクローナル抗-p53抗体(DO-1、Oncogene Scienceから入手)(レーン7)、精製ウサギIgG(レーン8)、精製ウサギポリクローナル抗-サイクリンB抗体(レーン9)、精製マウスモノクローナル抗-His抗体(クローン34660、Quiagenから入手)(レーン11および13)である。
図44Bに示すとおり、Skp2は物理的にE2F-1と会合するが、ユビキチン経路の他の基質(p53およびサイクリンB)とは会合しない。Skp2とE2F-1(レーン1-3)、またはSkp2とHis-p53(レーン4-6)、またはSkp2とHis-サイクリンB(レーン7-9)を同時発現しているバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞抽出物は、指示されたタンパク質に対する抗体で直接的にイムノブロットするか(レーン1、4、および7)、またはまず指示された抗血清で免疫沈降させ次いで指示されたタンパク質に対する抗体でイムノブロットした(レーン2、3、5、6、8、および9)。免疫沈降に用いる抗血清は、抗-Skp2血清(レーン2、5、および8)、ならびに正常ウサギ血清(NRS)(レーン3、6、および9)である。
図44Cに示すとおり、E2F-1はSkp2と物理的に会合するが、別のF-boxタンパク質(FBP1)とは会合しない。Skp2とE2F-1(レーン1、3、および4)、またはFlagをタグ付けしたFBP1とE2F-1(レーン2、5、および6)を同時発現しているバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞抽出物はマウスモノクローナル抗-E2F-1抗体で直接的にイムノブロットするか(レーン1と2)、またはまず指示された抗体で免疫沈降を行い、次いでマウスモノクローナル抗-E2F-1抗体でイムノブロットした(レーン3-6)。免疫沈降に用いられた抗体は、抗-Skp2血清(レーン3)、NRS(レーン4)、精製ウサギポリクローナル抗-Flag(レーン5)、精製ウサギIgG(レーン6)である。
本実施例に用いた方法論はいかなるFBPの新規基質の同定にも適用することができ、そのようなFBPとしては、限定はされないがFBP1、 FBP2、 FBP3a、 FBP3b、 FBP4、 FBP5、 FBP6、 FBP7、 FBP8、 FBP9、 FBP10、 FBP11、 FBP12、 FBP13、 FBP14、 FBP15、 FBP16、 FBP17、 FBP18、 FBP19、 FBP20、 FBP21、 FBP22、 FBP23、 FBP24、 およびFBP25などの本発明のFBPが含まれる。
本発明は記載の特定の実施形態によってその範囲を限定すべきではなく、それらの実施形態は本発明の個々の態様の単なる例示であり、機能的に同等な方法および構成成分は本発明の範囲に包含される。本明細書に記載のものに加えて行いうる本発明の各種の改変は、前述の記載および添付の図面から当業者には明白なものとなろう。そのような改変は添付の特許請求の範囲内にあることを意図したものである。
本明細書に引用した参照文献の全てを参照により本明細書に組み込むこととする。
ヒトF-boxタンパク質FBP1(配列番号15)、FBP2(配列番号16)、FBP3a(配列番号17)、FBP3b(配列番号78)、FBP4(配列番号18)、FBP5(配列番号19)、FBP6(配列番号20)、FBP7(配列番号21)、Skp2(配列番号22)、FBP8(配列番号61)、FBP9(配列番号62)、FBP10(配列番号63)、FBP11(配列番号64)、FBP12(配列番号65)、FBP13(配列番号79)、FBP14(配列番号66)、FBP15(配列番号67)、FBP16(配列番号68)、FBP17(配列番号69)、FBP18(配列番号70)、FBP19(配列番号71)、FBP20(配列番号72)、FBP21(配列番号73)、FBP22(配列番号74)、FBP23(配列番号75)、FBP24(配列番号76)、FBP25(配列番号77)における保存されたF-boxモチーフアミノ酸残基のアライメントである。既知のFBP、Skp2のF-boxと、2ハイブリッドスクリーニング(ポンド記号で示す)またはBLASTサーチ(クロスで示す)によって同定されたFBPのF-boxとのアライメントをClustal W法(Mac Vector(登録商標))を用いて行い、手動で再調整した。少なくとも15種類のF-boxにおいて同一の残基を濃い灰色で、似通っている残基を薄い灰色で影をつけている。アステリスク1つは、ポリAテイルが後に続く終止コドンがcDNA中に存在することを示す。一方、潜在的全長クローンにはアステリスク2つを付している。図の下に付したアステリスクはFBP3aにおいて変異したアミノ酸残基を示す(図29参照)。 FBPを模式的に示したものである。ヒトFBPにおける推定のタンパク質-タンパク質相互作用ドメインを示す(説明のためのキーボックスを参照されたい)。2ハイブリッドスクリーニングによって同定されたFBPにポンド記号を付し、BLASTサーチよって同定されたFBPにクロスを付している。ダブルスラッシュは、対応するcDNAが5'末端で不完全であることを示し、アステリスクはポリAテイルが後に続く終止コドンがcDNA中に存在することを示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP1(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号1)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号1)を示す。 Dは、対応するcDNA(配列番号1)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP2(配列番号4)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号3)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号3)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP3a(配列番号6)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号5)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号5)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP3b(配列番号24)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号23)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号23)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP4(配列番号8)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号7)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号7)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP5(配列番号10)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号9)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号9)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP6(配列番号12)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号11)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号11)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP7(配列番号14)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号13)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号13)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP8(配列番号26)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号25)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号25)を示す。 Dは、対応するcDNA(配列番号25)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP9(配列番号28)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号27)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号27)を示す。 Dは、対応するcDNA(配列番号27)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP10(配列番号30)のアミノ酸配列を示す。Bは、対応するcDNA(配列番号29)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP11(配列番号32)のアミノ酸配列を示す。Bは、対応するcDNA(配列番号31)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP12(配列番号34)のアミノ酸配列を示す。Bは、対応するcDNA(配列番号33)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP13(配列番号36)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号35)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP14(配列番号38)のアミノ酸配列を示す。Bは、対応するcDNA(配列番号37)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP15(配列番号40)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号39)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP16(配列番号42)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号41)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP17(配列番号44)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号43)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号43)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP18(配列番号46)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号45)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号45)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP19(配列番号48)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号47)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号47)を示す。 Dは、対応するcDNA(配列番号47)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP20(配列番号50)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号49)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP21(配列番号52)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号51)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号51)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP22(配列番号54)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号53)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号53)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP23(配列番号56)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号55)を示す。 Cは、対応するcDNA(配列番号55)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP24(配列番号58)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号57)を示す。 Aは、ヒトF-boxタンパク質FBP25(配列番号60)のアミノ酸配列を示す。 Bは、対応するcDNA(配列番号59)を示す。 FBPは、そのF-boxを介してSkp1と特異的に相互作用する。FBPのcDNA(野生型および変異型)は、35S-メチオニンの存在下、in vitro(IVT)で転写および翻訳された。同量のIVTタンパク質(各レーンの一番上に示す)を、Hisタグを付したSkp1(レーン1、3、4、6〜10、12、15、17、19および21)、Hisタグを付したエロンギン C(レーン2、5、11、14、16、18、19および22)またはHisタグを付したp27(レーン12)のいずれかを予め結合させたニッケル-アガロースビーズを用いるヒスチジン-タグプルダウンアッセイに付した。結合したIVTタンパク質をSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによって分析した。パネル左側の矢印は、示したFBPを指している。タンパク質標準品の見かけの分子量をパネルの右側に示す。 FBP1、FBP2、FBP3a、FBP4およびFBP7は、in vivoで内因性Skp1およびCullを有する新規SCFを生成する。HeLa細胞を、FBP1(レーン1)、(ΔF)FBP1(レーン2)、FBP4(レーン3)、FBP7(レーン5)、FBP2(レーン7)、(ΔF)FBP2(レーン8)、FBP3a(レーン9)、(ΔF)FBP3a(レーン10)のFlag-タグ付けしたものをコードする哺乳動物発現プラスミドで、または空ベクター(レーン4および6)でトランスフェクトした。細胞を溶解し、抽出物をウサギ抗-Flag抗体による免疫沈降に付した(レーン1〜8)。次に免疫沈降物を、示したように、マウス抗-Cullモノクローナル抗体、ウサギ抗-Skp1ポリクローナル抗体またはウサギ抗-Cul2ポリクローナル抗体を用いてイムノブロッティングした。トランスフェクトされていないHeLa細胞からの抽出物25μgを含む最後のレーン(レーン9)は、マーカーとして使用される組換えCull、Skp1またはCul2タンパク質を含む。酵母cullin Cdc53および哺乳動物Cul4aについて既に記載されているように、CullおよびCul2に対する抗体で検出された、より移動度の小さいバンドは、ユビキチン様分子のこれら二つのcullinへの共有結合によって生じた可能性が高い。 ユビキチンリガーゼ活性に関連するFBP1、FBP2、FBP3a、FBP4およびFBP7。HeLa細胞を、ヒトSkp1、CullならびにFlagでタグ付けしたFBP1(レーン3)、(ΔF)FBP1(レーン4)、FBP2(レーン2および5)、(ΔF)FBP2(レーン6)、FBP7(レーン7)、FBP3a(レーン8および13)、(ΔF)FBP3a(レーン9)、無関係のフラグでタグ付けしたタンパク質(Irf3、レーン10)およびFBP4(レーン11および12)をコードする哺乳動物発現プラスミド、または空ベクター(レーン1)でトランスフェクトした。細胞を溶解し、抽出物をウサギ抗-Flag抗体による免疫沈降に付した。免疫沈降物を、精製した組換えE1およびUbc4(レーン1〜11)またはUbc2(レーン12および13)ならびにビオチン化したユビキチンを含む反応混合物の存在下でインキュベートした。レーン2における反応にはNEMも含まれていた。ユビキチン化したタンパク質をHRP-ストレプトアビジンを用いたブロッティングによって可視化した。パネル左側の括弧は、該反応において産生したユビキチン化タンパク質のスメアを記したものである。アステリスクは、煮沸に耐性のあるE1とコンジュゲート形成したユビキチンを示す。 図32は、FBPの細胞内局在性を示す。HeLa細胞を、Flagタグを付したバージョンのFBP1(a-b)、FBP2(c-d)、FBP3a(e-f)、FBP4(g-h)、(DF)FBP2(i-j)、または(ΔF)FBP3a(k-l)をコードする哺乳動物発現プラスミドでトランスフェクトした。24時間後、細胞を免疫蛍光に供し、ウサギ抗Flag抗体でFBPを(a,c,e,g,i,k)、ビスベンズイミドで核を(b,d,f,h,j,l)それぞれ染色した。 ヒト組織におけるFBP転写物の量を示す。異なるヒト組織に由来する、電気泳動的に分画されたポリ(A)+ mRNAを含む膜を、FBP1、FBP2、FBP3a、FBP4、SKP2、およびβ-アクチンのcDNAから調製した特異的プローブとハイブリダイズさせた。図の左側の矢印は、本文中で記述された主要な転写物を指す。 図34A-Eは、FBP遺伝子のFISH局在性を示す。ゲノムプローブを含む精製ファージDNAをジゴキシゲニンdUTPでラベルし、Cy3-結合抗体で検出した。ゲノムプローブ遺伝子座(赤)に対応するシグナルが、DAPI-アクチノマイシンD染色正常ヒト染色体(青-白)に対してみられた。パネルAは、FBP1の10q24への局在を、パネルBは、FBP2の9q34への局在を、パネルCはFBP3aの13q22への局在を、パネルDはFBP4の5p12への局在を、そして、パネルEはFBP5の6q25-26への局在を示す。矢印は、FBP-特異的FISHシグナルを指す。 図35A-Cは、FBP1のβ-カテニンとの会合を示す。A.β-カテニンを、単独で(レーン1)またはFlagタグを付したFBP1と共に(レーン2)、発現するバキュロウイルス感染昆虫細胞をウサギ抗-Flag抗体(rα-Flag)により免疫沈降(IP)させ、続いて抗-Flag(mα-Flag)および抗β-カテニンマウス抗体でイムノブロッティングを、指示通りに行った。レーン3およびレーン4は、感染昆虫細胞由来の抽出物25μgを含むものを同じ抗体でイムノブロットした。B. Skp1の非存在下(レーン1〜3)または存在下(レーン4〜6)で、サイクリンD1、Flag-FBP1を発現するバキュロウイルス感染昆虫細胞由来の抽出物を、正常ウサギIgG(r-IgG、レーン1および4)、ウサギ抗-Flag抗体(rα-Flag、レーン2および5)、またはウサギ抗-サイクリンD1抗体(rα-D1、レーン3および6)で免疫沈降した。免疫沈降物を抗-Flag(mα-Flag)およびサイクリンD1(mα-D1)マウス抗体により、指示通りにイムノブロットした。最後のレーンは、感染昆虫細胞由来の代表的な抽出物25μgを含むものを同じ抗体でイムノブロットした。C.293細胞を、HAタグを付したβ-カテニンをコードする哺乳動物発現プラスミドを、単独で、あるいはFlagタグを付したFBP1またはFlagタグを付した(ΔF)FBP1のいずれかと組み合わせて、トランスフェクトした。細胞を溶解し、抽出物をウサギ抗-Flag抗体で免疫沈降に供し(rα-Flag、レーン4〜6)、ラット抗HA(α-HA)およびマウス抗Flag(mα-Flag)抗体で指示通りにイムノブロットした。最初の3つのレーンは、トランスフェクトした293細胞由来の抽出物25μgを含むものを、同じ抗体でイムノブロットした。高レベルのβ-カテニン発現ベクターをトランスフェクトし、β-カテニンのFBP1および(ΔF)FBP1との会合を、β-カテニンレベルとは独立に決定した。 図36A-Bは、ドミナントネガティブ(ΔF)FBP1変異体によるβ-カテニンの安定化を示す。A. ヒト293細胞を、HAタグを付したβ-カテニンをコードする哺乳動物発現プラスミドを、単独でまたはFlagタグを付したFBP1またはFlagタグを付した(ΔF)FBP2のいずれかと組み合わせて、トランスフェクトした。細胞を溶解し、抽出物をラット抗HAおよびラット抗Flag(rα-Flag)抗体で指示通りにイムノブロットした。B. β-カテニンの代謝回転速度のパルス追跡分析である。HAタグを付したβ-カテニンを、空のベクター、FBP1、または(ΔF)FBP1と組み合わせて、293細胞に共トランスフェクトした。24時間後、細胞を35S-メチオニンで30分間標識し、指示した時間にわたり追跡した。抽出物を、続いて、ラット抗HA抗体での免疫沈降に供した。 図37A〜Cは、リン酸化p27のSkp2への結合を示す。A. in vitroで翻訳した[35S]FBPを、ホスホペプチドNAGSVEQT*PKKPGLRRRQT(位置187にホスホスレオニン(T*)を有するヒトp27のカルボキシ末端に相当)に結合したビーズとの結合反応に使用したものを示すパネルである。ビーズをRIPAバッファーで洗浄し、結合したタンパク質を溶出して、電気泳動およびオートラジオグラフィーに供した(上のパネル)。下のパネル:用いたin vitroで翻訳した[35S]FBPの10%量。B. HeLa細胞抽出物をホスホp27ペプチド(レーン2)、非リン酸化以外は同一のp27ペプチド(レーン1)、または対照ホスホペプチドAEIGVGAY*GTVYKARDPHS(位置17のホスホチロシン(Y*)を有するヒトCdk4のアミノ末端ペプチドに相当)(レーン3)に結合したビーズとともにインキュベートした。ビーズをRIPAで洗浄し、結合したタンパク質を、各パネルの左側に指示したタンパク質に対する抗体でイムノブロットした。HeLa抽出物の一部(25μg)を対照として使用した(レーン4)。Cul1においてより遅く移動したバンドは、他のcullin 48に関して既に記述されたように、ユビキチン様分子の共有結合により生じることが考えられる。C. 1μlのin vitroで翻訳した[35S]野生型p27(WT、レーン1〜4)またはp27(T187A)変異体(T187A、レーン5〜6)を、30℃で10μlのキナーゼバッファー中で30分間インキュベートした。指示した点で、〜2.5pmolの組換え精製サイクリンE/Cdk2、または〜1pmolのSkp2(Skp1/Skp2複合体中)を添加した。続いてサンプルを、Skp2に対する抗体が共有結合された6μlのプロテイン-Aビーズとともにインキュベートした。ビーズをRIPAバッファーで洗浄し、結合したタンパク質を電気泳動とオートラジオグラフィーに供した。レーン1〜6:Skp2結合タンパク質;レーン7および8:用いたin vivoで翻訳した[35S]タンパク質の7.5%量。 in vivoでのSpk2のp27への結合を示す。HeLa細胞からの抽出物(レーン1〜2および5〜6)、またはIMR90線維芽細胞(レーン9〜10)を、Skp2に対する種々のアフィニティー精製(AP)抗体または精製した対照IgG画分にて免疫沈降した。抽出物を、レーン1:ヤギIgG(G-IgG)にて;レーン2:N-末端Skp2ペプチドに対するAPヤギ抗体(G-α-Skp2)にて;レーン5および9:ウサギIgG(R-IgG)にて;レーン6および10;Skp2に対するAPウサギ抗体(R-α-Skp2)にて、免疫沈降した。免疫沈降物を、各パネルの左側に指示したタンパク質に対する抗体にてイムノブロットした。下のパネルのレーン1〜4は、p27リン酸化部位特異的抗体と共にイムノブロットした。レーン3、7、および11は細胞抽出物を25μg含み、レーン4、8および12は、マーカーとして使用される関連組換えタンパク質を含む。いくつかのマーカーの移動度が異なるのは、組換えタンパク質上にタグが存在するためである。 図39は、Skp2およびサイクリンE/CDK2複合体が、G1抽出物のp27ユビキチン化における律速段階となることを示す。A. in vitroでのp27の、連結(レーン1〜12および17〜20)および分解(13〜16)を、同調していない増殖(Asyn.ext.、レーン2〜3)またはG1停止(G1 ext.,レーン4〜20)のHeLa細胞からの抽出物に対して行った。レーン1は抽出物を含まない。精製組換えタンパク質を指示通りに添加した。野生型p27(レーン1〜18)またはp27(T187A)変異体(T187A、レーン19〜20)を用いて反応させた。レーン1〜8、9〜12、および17〜20は、3つの別々に行った実験で得られたものである。パネルの左側のカッコは、ポリユビキチン化p27に対応する>27,000バンドのラダーを示す。*印は、大部分のサンプルに存在する非特異的バンドを示す。B. 同調していないHeLa細胞(レーン1)またはG1停止したHeLa細胞(レーン2)から得た抽出物中の、Skp2およびp27のレベルのイムノブロット分析を示す。 図40A〜Cは、Skp2がp27ユビキチンライゲーション活性に必要であることをを示す。A. 免疫デプリーション(immunodepletion)を示す。同調していないHeLa細胞からの抽出物を無処理で(レーン2)、または免疫前の血清で(レーン3)、2μgの精製GSTと共にプレインキュベーションした抗Skp2抗体で(レーン4)、または2μgの精製GSTSkp2と共にプレインキュベーションした抗Skp2抗体で(レーン5)、免疫デプリーションを行った。レーン1は抽出物を含まない。サンプル(30μgのタンパク質)を、サイクリンE/Cdk2の存在下でのp27ユビキチン化についてアッセイした。パネルの左側のカッコは、ポリユビキチン化p27に対応する>27,000バンドのラダーを示す。*印は、全てのサンプルに存在する非特異的バンドを示す。B. 再構築を示す。Skp2を免疫デプリーションしたサンプル中でのp27ユビキチン化活性の回復を、指示した精製タンパク質を添加して試験した。全てのサンプルは、30μgのSkp2を免疫デプリーションした抽出物(Skp2-depl.ext.)およびサイクリンE/Cdk2を含んでいた。C. 免疫精製を示す。同調していないHeLa細胞をウサギ抗-Skp2抗体(レーン3および5)または免疫前の血清(PI、レーン2および4)で免疫沈降させた。全抽出物(レーン1)および免疫ビーズ(レーン2〜5)に、p27、精製組換えサイクリンE/Cdk2およびユビキチン化反応混合物を添加した。レーン4および5のサンプルに精製組換えE1およびUbc3を添加した。全てのサンプルをp27のユビキチン化に関してアッセイした。 図41A〜Bは、in vivoでのp27の分解におけるSkp2の役割を示す。A. in vivoでのドミナントネガティブ(ΔF)Skp2変異体によるp27の安定化を示す。NIH-3T3細胞に、ヒトp27をコードする哺乳動物発現プラスミドを、単独で(レーン2)、またはp27と(ΔF)Skp2(レーン3)または(ΔF)FBP1(レーン4)のいずれかと組み合わせて、トランスフェクトした。レーン1:トランスフェクトしなかった細胞を示す。細胞を溶解させ、抽出物をp27、Skp2またはFlag(Flagタグを付した(ΔF)FBP1検出用)に対する抗体でのイムノブロットに供した。外因性ヒトp27タンパク質は内因性マウスp27よりも遅く移動した。B. p27の代謝回転速度のパルス追跡分析を示す。空のベクター、または(ΔF)Skp2と組み合わせて、ヒトp27を、NIH-3T3細胞にトランスフェクトした。24時間後、細胞を[35S]-メチオニンで20分間標識し、指示した時間にわたり追跡した。続いて抽出物を、マウス抗-p27抗体での免疫沈降に付した。 図42は、SKP2 mRNAを標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドによる細胞内p27の安定化を示す。HeLa細胞を16〜18時間、SKP2 mRNAの2種類の異なる領域を標的とした2種類の異なるアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS)で処理した。レーン2、6、12および16:N末端SKP2領域(NT)を標的としたAS;レーン4および8:C末端SKP2領域(CT)を標的としたAS;レーン1、3、5、7、11および15:対照オリゴヌクレオチド対(Ctrl)。レーン1〜4および5〜8は2つの別の実験に由来する。レーン11〜12および15〜16:HeLa細胞を、ヒドロキシ尿素またはアフィジコリン処理のいずれかでそれぞれ24時間処理し、G1/Sで停止させた。続いて細胞をオリゴデオキシヌクレオチドでトランスフェクトし、12時間後に(細胞が再びG1に入る前に)溶解し、Skp2(上のパネル)およびp27(下のパネル)でイムノブロットした。レーン9および13:トランスフェクトしていないHeLa細胞;レーン10および14:トランスフェクトした細胞と同様の薬剤で処理したトランスフェクトしていない細胞。 図43A〜Cは、p27分解過程におけるSkp2の作用のタイミングを示す。IMR90線維芽細胞を、血清除去によりG0/G1で同調し、血清で再活性化し、指示した間隔でサンプリングした。タンパク質抽出物を、指示したタンパク質に対する抗体を使用してイムノブロットにより分析した。Skp2二量体(doublet)はリン酸化により生成すると考えられる。なぜなら、該二量体は、オカダ酸(okadaic acid)の存在下で細胞を溶解した時のみ、12.5%のゲルを使用すると、必ず観察されたからである。B.ノコダゾール(nocodazole)を使用して有糸分裂を阻止したHeLa細胞を取り出し、新鮮な培地中に放出し、指示した間隔でサンプリングした。タンパク質抽出物を、指示したタンパク質に対する抗体を使用してイムノブロットにより分析した。C. G1(ノコダゾール阻止から解放して3時間後) (レーン1)およびS-期(ノコダゾール阻止から解放して12時間後)(レーン2)のHeLa細胞から得た抽出物を、抗-p27抗体(上の2つのパネル)を使用して、または抗-Skp2抗体(下の3つのパネル)を使用して免疫沈降し、指示したタンパク質に対する抗体を使用してイムノブロットした。 図44A〜Cは、Skp2/E2Fの相互作用アッセイのウエスタンブロット分析を示す。これらの実験は、第8節の実施例において詳述する。

Claims (24)

  1. 配列番号4、6、8、10、12、14、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58または60のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子。
  2. F-boxタンパク質またはその断片をコードする単離された核酸分子であって、
    a) 高度にストリンジェントな条件下で配列番号3、5、7、9、11または13のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、かつ
    b) Cdc4、Grr1、Met30、Skp2、サイクリンF、エロンガンAまたはマウスMd6からなる既知のF-boxタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含まない、ヌクレオチド配列を有する、前記核酸分子。
  3. 哺乳動物ゲノムに由来するものであり、
    a) 高度にストリンジェントな条件下で配列番号3、5、7、9、11または13のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、かつ
    b) F-boxモチーフを含みかつSkp1と結合する遺伝子産物をコードする、単離された核酸配列。
  4. 配列番号23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57または59のヌクレオチド配列を有する、F-boxタンパク質をコードする単離された核酸分子。
  5. 請求項1、2、3または4記載のヌクレオチド配列を含有するヌクレオチドベクター。
  6. 請求項1、2、3または4記載のヌクレオチド配列を、宿主細胞内で該ヌクレオチド配列の発現を制御するヌクレオチド調節配列に機能的に結合された状態で含有する発現ベクター。
  7. 請求項1、2、3または4記載のヌクレオチド配列を、宿主細胞内で該ヌクレオチド配列の発現を制御するヌクレオチド調節配列に機能的に結合された状態で含有する、遺伝子操作された宿主細胞。
  8. 請求項1、2、3または4記載の核酸を含むトランスジーンをもつ細胞を含有するトランスジェニック動物。
  9. 請求項1、2、3または4記載のヌクレオチド配列を含む遺伝子座が不活化された動物。
  10. 配列番号4、6、8、10、12、14、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58または60のアミノ酸配列を有する、単離されたF-boxタンパク質。
  11. 請求項10記載のポリペプチドと免疫特異的に結合する抗体。
  12. 患者サンプルにおけるFBP遺伝子発現を測定することを含んでなる、増殖性および分化性関連疾患の診断方法。
  13. 増殖性および分化性疾患の治療に有用な化合物をスクリーニングする方法であって、化合物を、配列番号2、4、6、8、10、12、14、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58または60のアミノ酸配列を有するF-boxタンパク質またはその断片を発現している細胞およびその基質に接触させ、F-boxタンパク質活性の変化を検出することを含んでなる、前記方法。
  14. F-boxタンパク質活性の変化が、F-boxタンパク質と1種以上のタンパク質との相互作用における変化を検出することにより検出される、請求項13記載の方法。
  15. 1種以上のタンパク質のうちの1種がF-boxタンパク質の基質である、請求項14記載の方法。
  16. 1種以上のタンパク質のうちの少なくとも1種がユビキチン経路の成分である、請求項13記載の方法。
  17. 1種以上のタンパク質のうちの1種がSkp1である、請求項13記載の方法。
  18. F-boxタンパク質がFbp1であり、基質がβ-カテニンまたはIKBαである、請求項13記載の方法。
  19. F-boxタンパク質活性の変化が、前記基質のユビキチン化または分解における変化を検出することにより検出される、請求項13記載の方法。
  20. 哺乳動物の増殖性または分化性疾患を治療する方法であって、哺乳動物に、該疾患の症状が軽減されるようにFBP遺伝子または遺伝子産物の合成、発現または活性をモジュレートする化合物を投与することを含んでなる、前記方法。
  21. 前記疾患が乳癌である、請求項20記載の方法。
  22. 前記疾患が卵巣癌である、請求項20記載の方法。
  23. 前記疾患が前立腺癌である、請求項20記載の方法。
  24. 前記疾患が小細胞肺癌である、請求項20記載の方法。
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